(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132789
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】立体造形装置、立体造形方法、制御装置、及び回収装置
(51)【国際特許分類】
B22F 10/73 20210101AFI20240920BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20240920BHJP
B22F 10/14 20210101ALI20240920BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20240920BHJP
B22F 12/63 20210101ALI20240920BHJP
B22F 12/80 20210101ALI20240920BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240920BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240920BHJP
B22F 10/38 20210101ALN20240920BHJP
【FI】
B22F10/73
B22F1/14 500
B22F10/14
B22F12/90
B22F12/63
B22F12/80
B33Y30/00
B33Y50/02
B22F10/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122685
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2023043479
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】萬 恭明
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 健治
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018BA08
4K018BA20
4K018BC12
4K018BC40
4K018DA35
(57)【要約】
【課題】回収粉を利用する立体造形において、造形品質を向上する。
【解決手段】立体造形装置1は、金属の粉末50を含む造形物を造形する造形部3と、粉末50の少なくとも一部を回収粉として回収する回収部7と、少なくとも回収粉を含む混合粉を生成する粉混合部2と、少なくとも粉末50、回収粉、混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、新しい粉末と回収粉の混合比を制御する制御部8と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の粉末を含む造形物を造形する造形部と、
前記粉末の少なくとも一部を回収粉として回収する回収部と、
少なくとも前記回収粉を含む混合粉を生成する粉混合部と、
少なくとも前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、新しい前記粉末と前記回収粉の混合比を制御する制御部と、
を備える立体造形装置。
【請求項2】
前記造形部は、
前記粉末に対し造形液を付与する付与部を含む請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項3】
前記回収部は、
少なくとも前記造形部で使用された前記粉末の一部または、粉除去部で除去された粉末を回収する請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項4】
前記粉混合部は、
前記造形部で未使用の新粉と、前記回収粉とを混合する請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項5】
前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報は、
前記粉末の流動性、充填密度、粒度分布を含む請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項6】
前記制御部は、
更に前記造形部の造形条件に関する情報に基づき、前記混合比を制御する請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項7】
前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報を推定する状態推定部を備え、
前記制御部は、前記状態推定部により推定された前記情報に基づき前記混合比を制御する、
請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項8】
前記造形部の前記粉末の表面を撮影する撮影部を備え、
前記撮影部により撮影された画像に基づいて、前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報を判断する、
請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項9】
前記粉混合部は、前記混合粉を撹拌するモータを有し、
前記制御部は、前記モータの駆動力に基づいて、前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報を判断する、
請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項10】
前記立体造形装置は、精度、コスト、速度を含む動作を選択でき、
前記制御部は、選択された前記動作に応じて、前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報を判断する、
請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項11】
粉末を含む層を形成する形成部と、
前記層に対し造形液を付与する付与部と、
前記粉末の少なくとも一部を回収粉として回収する回収部と、
少なくとも前記回収粉を含む混合粉を生成する粉混合部と、
前記形成部の造形条件に関する情報に基づき新しい前記粉末と前記回収粉の混合比を制御する制御部と、
を備える立体造形装置。
【請求項12】
前記粉末は、金属を含む請求項11に記載の立体造形装置。
【請求項13】
前記形成部は、前記粉末の表面に沿って回転しながら走査されることによって、前記表面を平坦化し、粉末層を形成する平坦部を含み、
前記造形条件は、造形物の体積、前記平坦部の走査速度、前記平坦部の回転速度、及び前記粉末層の積層厚さのいずれかを含む、
請求項11に記載の立体造形装置。
【請求項14】
制御部は、
更に少なくとも前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、前記混合粉の混合比を制御する請求項11に記載の立体造形装置。
【請求項15】
金属の粉末を含む造形物を造形する造形ステップと、
前記粉末の少なくとも一部を回収粉として回収する回収ステップと、
少なくとも前記回収粉を含む混合粉を生成する粉混合ステップと、
少なくとも前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、新しい前記粉末と前記回収粉の混合比を制御する混合比調整ステップと、
を含む立体造形方法。
【請求項16】
前記造形物を焼結する焼結部を含む、
請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項17】
金属の粉末を含む造形物を造形する造形部と、
前記粉末の少なくとも一部を回収粉として回収する回収部と、
少なくとも前記回収粉を含む混合粉を生成する粉混合部と、を備える立体造形装置の動作を制御する制御装置であって、
少なくとも前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、新しい前記粉末と前記回収粉の混合比を制御する制御装置。
【請求項18】
金属の粉末を含む造形物を造形する造形装置で用いられた粉末の一部を回収粉として回収する回収装置であって、
少なくとも前記粉末、前記回収粉、少なくとも前記回収粉を含んで生成される混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、新しい前記粉末と前記回収粉の混合比を制御する制御部を備える、
回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形装置、立体造形方法、制御装置、及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体積層による三次元造形方式(粉体積層造形方式)では、粉末層の面上の造形領域に結合液(造形液)を付与するバインダージェット(BJ)方式や、放射エネルギー吸収剤を含む造形用溶液を付与するハイスピードシンタリング(HSS)方式などが知られている。
【0003】
これらの方式では、造形領域以外の粉末層の粉末は回収して、回収粉として再利用される場合がある。再利用される回収粉は、例えば造形工程の後の高温環境下での乾燥工程などの影響により、造形品質が影響を受ける場合がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、再利用した材料粉体(リサイクル材)の流動性を測定し、測定結果に基づいて再利用前の未使用状態の材料粉体(バージン材)の粒度分布を変更したり、バージン材にシリカ粒子を添加して、リサイクル材(回収粉)の流動性の低下を抑えたりすることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、回収粉を利用することによる造形品の品質低下を抑制する点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、回収粉を利用する立体造形において、造形品質を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一観点に係る立体造形装置は、金属の粉末を含む造形物を造形する造形部と、前記粉末の少なくとも一部を回収粉として回収する回収部と、少なくとも前記回収粉を含む混合粉を生成する粉混合部と、少なくとも前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、新しい前記粉末と前記回収粉の混合比を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
回収粉を利用する立体造形において、造形品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る立体造形装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る造形部の構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る造形部における造形プロセスを説明する模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る造形槽の断面を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るグリーン体の断面示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る粉混合部の概略構成の一例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る粉混合部の変形例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る制御部の機能ブロック図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る立体造形物の造形制御のフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態に係る混合比調整制御のフローチャートである。
【
図12】本発明の一実施形態に係る造形条件による粉末の状態への影響を説明する図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る流動性推定用の撮影画像の一例である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る充填密度推定用の撮影画像の一例である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る粒度分布計測用の撮影画像の一例である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る粉末及び粉末層と立体造形物の依存関係を示す図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る造形部の第一変形例を示す図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る造形部の第二変形例を示す図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係る混合比調整部の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
以下の説明では、造形部3に形成される粉末50の層を「粉末層51」と呼ぶ。粉末層51は、平坦化された層でもよい。また、粉末50は、金属を含み、例えばアルミニウムやアルミニウム合金であるが、他の金属を含んでもよい。また、粉末層51に対して造形液60を付与した層を「造形層61」を呼ぶ。造形層61は、造形液60が付与されることによって粉末50が結合された層状造形物である。なお、「粉末層51」及び「造形層61」は、それぞれ一層のものをいう。さらに、複数の造形層61が積層されて形成される集合体であり、かつ造形が完成する前の状態のものを「造形物」と呼ぶ。一方、複数の造形層61が積層されて造形が完成し、焼結されたものを「立体造形物」と呼ぶ。
【0012】
また、以下の説明で用いる「混合粉」は、粉混合部2により混合された複数の粉末をさす。混合粉は、新しい粉末(以下、「新粉」と示す)と回収された粉末(以下、「回収粉」と示す)を含む。新粉は、造形部3で造形に用いられていない粉末である。また、回収粉は、新粉は、造形部3で造形に用いられた粉末である。また、回収粉は、造形部3から回収された粉末でもよいし、粉除去部5から回収された粉末でもよいし、これらの組み合わせでもよい。「混合比」とは、混合粉に含まれる新粉と回収粉の割合を示す。「混合比」としては、体積比や重量比など、任意の種類の比率を適用できる。
【0013】
<立体造形装置の基本構成>
図1~
図7を参照して実施形態に係る立体造形装置1の基本構成について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る立体造形装置1の概略構成を示すブロック図である。本発明の一実施形態に係る立体造形装置1として、粉末層51の面上の造形領域にバインダー(造形液60)を付与するバインダージェット(BJ)方式について説明する。BJ方式では、粉末層51に選択的に造形液60を付与して固め、焼結することによって、任意形状の立体造形物を造形することができる。造形液60は、例えばバインダーなどの樹脂や溶媒などのインクが含まれる。
【0015】
立体造形装置1は、粉混合部2と、造形部3と、乾燥部4と、粉除去部5と、焼結部6と、回収部7と、制御部8と、を備える。
【0016】
粉混合部2は、粉末50を混合する。これによって、造形部3に供給する粉末50としての混合粉を生成する。粉混合部2は、未だ造形に利用されていない新しい粉末(新粉)と、既に造形に利用されて回収部7により回収された粉末(回収粉)とを混合する。また、粉混合部2は、制御部8からの制御指令に基づき、所望の混合比で混合粉を混合して、造形部3に供給することができる。
【0017】
造形部3は、粉末50を含む造形物を造形する。粉末50は、少なくとも粉混合部2から供給される混合粉を含む。本実施形態では、造形部3は、BJ方式によって造形を行う。なお、造形部3で利用された粉末50の一部は、回収粉として回収部7で回収される。
【0018】
乾燥部4は、造形部3により造形された造形物を乾燥する。具体的には、乾燥部4は、造形物に含まれる造形液60に含まれる溶媒等を乾燥する。乾燥部4では、造形部3にて造形した造形物を含む造形槽12を加熱及び減圧し、乾燥させる。これにより、造形液60に含まれるバインダーで粉末50が固着した状態になる。
【0019】
粉除去部5は、乾燥部4により乾燥した造形物から余分な粉末50を除去する。例えば空気を吹き付けて飛ばすなどの任意の手法を用いる。粉除去部5では、造形槽12から造形液60が付与されずに固着していない粉末50を除去する。これにより、粉除去部5で、バインダーで固着された状態の立体物、すなわちグリーン体(G体)62が得られる。なお、粉除去部5で、除去された粉末50は、回収粉として回収部7で回収される。
【0020】
焼結部6は、グリーン体62を焼結して最終的な立体造形物(S体)を生成する。焼結部6は、例えば焼結炉にて、グリーン体62からバインダーを除き(脱脂)、焼結する。
【0021】
回収部7は、造形部3の粉末50の少なくとも一部を回収粉として回収する。また、回収部7は、粉除去部5から粉末50を回収する。回収部7は、粉混合部2に回収粉を供給する。
【0022】
制御部8は、立体造形装置1の各部の動作を制御する。特に本実施形態では、制御部8は、粉末50の状態に関する情報と、造形部3の造形条件に関する情報との少なくとも一方に基づき、粉混合部2にて混合される粉末の混合比を制御する混合比調整制御を行う。制御部8は、混合比の情報を含む指令値(混合比指令)を粉混合部2に出力する。粉末50の状態に関する情報は、例えば、少なくとも新粉、回収粉、混合粉の1つ以上の状態に関する情報である。また、粉末50の状態に関する情報は、粉末の流動性、充填密度、粒度分布、モータの駆動力のいずれか1つ以上を含んでもいし、これらを組み合わせてもよい。造形条件は、造形物の体積、平坦部の走査速度、平坦部の回転速度、及び前記粉末層の積層厚さのいずれか1つ以上を含んでもいし、これらを組み合わせてもよい。また、これらの情報は、画像から判断してもよいし、既存の測定装置で測定してもよい。
【0023】
図2を参照して、BJ方式の造形部3の動作の一例を説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る造形部3の構成の一例を示す図である。
【0024】
なお、以下の説明において、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向である。X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。X方向は、平坦部31の回転軸の軸方向である。Y方向は、平坦部31の移動方向であり、粉末槽10における供給槽11、造形槽12、及び余剰粉末槽15の配列方向である。Z方向は、供給ステージ13および造形ステージ14の昇降方向である。また、以下では説明の便宜上、Z正方向側を上側、Z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0025】
図2に示すように、造形部3は、粉末槽10と、積層ユニット30と、付与部40と、を備える。
【0026】
粉末槽10は、粉末50を含む粉末層51を造形する。付与部40は、粉末層51に造形液60を付与し、造形層61を形成する。造形部3では、複数の造形層61が積層され造形物が造形される。
【0027】
粉末槽10は、供給槽11、造形槽12、供給ステージ13、造形ステージ14および余剰粉末槽15を含む。粉末槽10は、箱型の形状となっている。供給槽11、造形槽12、および余剰粉末槽15の3つの上面が開放されている。
【0028】
粉末槽10の供給槽11は、粉末50を造形槽12に供給する槽である。また、供給槽11は、造形槽12に供給するための粉末50を保持する。供給槽11の底部は、供給ステージ13が設けられている。供給ステージ13は鉛直方向(Z方向)に昇降する。供給ステージ13の側面は、供給槽11の内側面に接するように配置されている。
【0029】
粉末槽10の造形槽12は、供給槽11から造形に必要となる粉末50が供給される。造形槽12には、粉末層51および造形層61が形成される。さらに、造形槽12には、複数の造形層61が積層され造形物が造形される。
【0030】
供給槽11と造形槽12の底部は、それぞれ供給ステージ13と造形ステージ14が設けられ、鉛直方向(Z方向)に昇降する。造形ステージ14の側面は、造形槽12の内側面に接するように配置されている。 供給ステージ13および造形ステージ14の上面は水平に保たれている。
【0031】
粉末槽10の余剰粉末槽15は、粉末層51を形成する際に平坦部31によって平坦化された粉末50のうち、余剰となる粉末50を保持する槽である。余剰粉末槽15の底部には、粉末50を吸引する手段を設けても良いし、余剰粉末槽15が取り外せる手段としてもよい。余剰粉末槽15は造形槽12の隣に配置されている。余剰粉末槽15に保持される余剰の粉末50は、上述の任意の手法を適用して回収部7により回収され、回収部7から粉混合部2に回収粉として再供給される。
【0032】
供給槽11に保持される粉末50は、例えば造形部3の造形開始前や、供給槽11の粉末50の量が減少したときなどの任意のタイミングで、粉混合部2によって混合粉が供給されて適宜補充される。なお、粉末槽10は、供給槽11と造形槽12の2つの槽を有する構成を例示したが、供給槽11を設けずに造形槽12に粉混合部2から粉末50を直接供給してもよい。
【0033】
粉混合部2から供給槽11に粉末50を搬送する方法としては、スクリュを利用したスクリューコンベア方式や、エアーを利用した空気輸送方式等が挙げられる。
【0034】
なお、
図2の例では、粉末槽10は、単一の箱体の内部空間をY方向に沿って3つの空間に区分して、供給槽11、造形槽12、及び余剰粉末槽15を形成する構成を例示している。しかしながら粉末槽10の構成は
図2の例に限られない。例えば、供給槽11、造形槽12、及び余剰粉末槽15をそれぞれ別の箱体で形成する構成でもよい。この構成の場合、供給槽11と造形槽12とのY方向に対向する面と、造形槽12と余剰粉末槽15とのY方向に対向する面とを密着するよう設置するのが好ましい。これにより、各槽間での粉末50を移動させる際に粉末50が外部に漏れるのを抑制でき、粉末50の移動をより確実にできる。また、
図1を参照して説明したように、造形部3にて造形された造形物が含まれる造形槽12を乾燥部4や粉除去部5に搬送することを容易にできる。
【0035】
また、積層ユニット30は、平坦部31、粉末除去部32を有する。
【0036】
積層ユニット30の平坦部31は、造形層61や粉末層51を平坦化する。平坦部31は、粉末50の表面に沿って回転体としてのリコータを回転しながら走査することにより造形層61や粉末層51を平坦化する。平坦部31が回転駆動することによって、供給槽11の供給ステージ13の粉末50が造形槽12に供給され、粉末層51を形成する。平坦部31は、造形ステージ14のステージ面(粉末50が積載される面)に沿ってY方向に往復移動する。より具体的には、平坦部31は、供給槽11の外側から供給槽11および造形槽12の上方を通過するようにして水平移動する。これにより、粉末50が造形槽12上へと移送供給され、平坦部31が造形槽12上を通過しながら粉末50を平坦化することで粉末層51が形成される。平坦部31は、造形槽12および供給槽11の内寸よりも長い部材である。なお、平坦部31は板状部材としてブレードまたはバーを用いてもよい。
【0037】
積層ユニット30の粉末除去部32は、平坦部31に付着した粉末を除去する。粉末除去部32は、平坦部31の周面に接触した状態で、平坦部31とともに移動する。
【0038】
付与部40は、キャリッジ41とヘッド42を含む。
【0039】
ヘッド42は、粉末層51に造形液60を付与する。ヘッド42は、例えば、インクジェットヘッドであり、複数のノズルを配列したノズル列が配置されている。シアンの造形液、マゼンタの造形液、イエローの造形液、ブラックの造形液を付与させることにより、カラーの造形物を形成してもよいし、1色の造形液を複数のノズルからそれぞれ付与してもよい。造形液60の付与の方式としては、インクジェット方式やディスペンサー方式としてもよい。
【0040】
ヘッド42は、キャリッジ41に少なくとも1つ以上搭載され、モータおよびガイド部材等によって、X(主走査)、Y(副走査)、Z方向に往復移動する。
【0041】
また、特に本実施形態では、造形部3は撮影部16を備える。撮影部16は、粉末の表面を撮影する。撮影部16は、例えば造形槽12の上方に設置され、画角に造形槽12の上方開口部の全面が収まるように設置される。なお、撮影部16は、造形部3の内部の所定の位置として、粉末50の表面を撮影できる位置であれば特に位置は限定されない。また、撮影部16は、造形部3の外部に設置して粉末50の状態を撮影してもよい。撮影部16は、制御部8により動作を制御され、各種テストを実施するときの造形槽12上の粉末50の表面を撮影し、撮影した画像である画像情報を制御部8に出力する。撮影部16は、例えばデジタルカメラ、ビデオカメラ、CCD(Charge Coupled Device)、CMOSカメラ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Camera)等を用いる。撮影部16は、ステレオカメラとして異なる撮影位置から重複した撮影領域で測定対象物を撮影してもよい。また、撮像部の数は限定されず、複数台であってもよい。撮影部16は、三次元計測装置として、撮影した画像情報から粉末50の表面の点群を計測してもよい。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態に係る造形部3における造形プロセスを説明する模式図である。
図3を参照して、造形部3の動作について説明する。
【0043】
造形部3は、供給槽11に粉末50を満たした状態で造形を開始する。供給槽11の底面(供給ステージ13)を上昇させ、造形槽12の底面(造形ステージ14)を下降させる。供給槽11の底面上昇分だけ粉末50が供給槽11の上にあふれる。平坦部31を回転させながら供給槽11上から造形槽12上に走査される。これによって、供給槽11の上のあふれた粉末50が、造形槽12まで搬送され、造形槽12内に移動する。造形槽12には、造形槽12の底面下降分だけ粉末50が敷かれ、それ以上の粉はあふれる。次に、平坦部31が造形槽12より余剰粉末槽15へ走査される。これにより造形槽12からあふれた粉末50は、余剰粉末槽15内に投入される。余剰粉末槽15内の粉末50は、回収部7により回収される。
【0044】
その後、
図3に示すように付与部40のインクジェットヘッド42が造形槽12上を走査される。これによって、造形液60は、任意の画像パターンで造形槽12内の粉末50のうち最上位の粉末層51に付与される。これにより粉末層51に、粉末50に造形液60が浸透した造形層61が形成される。以上を一層分の動作として、これを何度も繰り返し積層する。最終的に、造形槽12の中に粉末50が満たされ、内部に選択的に造形液60が付与された領域(複数の積層された造形層61)がある状態となる。
【0045】
図4は、本発明の一実施形態に係る造形槽12の断面を示す模式図である。
図5は、本発明の一実施形態に係るグリーン体62の断面示す模式図である。
図4、
図5参照して、乾燥部4から粉除去部5までの工程について説明する。
【0046】
図4は造形部3で造形した後の造形槽12の断面をあらわしている。造形槽12の内部は、粉末50が満たされており、造形液60が付与された領域(造形層61)と、造形液60が付与されていない領域がある。造形液60が付与された直後は、造形液60が粉末50の粒子間に浸透しているだけで、固着していない。そこで、造形槽12を乾燥部4に入れて乾燥させる。造形液60の液体成分が蒸発し、造形液60に含まれるバインダー成分だけがあとに残り、粉末50の粒子どうしが固着した状態になる。
【0047】
粉除去部5にて、造形液60が付与されず固着しなかった領域の粉末50を造形層61から除去する。粉除去部5にて除去された粉末50は、回収部7により回収される。
図5は、造形槽12から造形層61の周囲の粉末50を除去、回収したあとに残った、造形物(グリーン体62)の断面をあらわす。
【0048】
図6を用いて、粉混合部2について説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る粉混合部2の概略構成の一例を示す図である。
【0049】
図6に示すように、粉混合部2は、撹拌タンク21と、モータ22と、スクリュ23と、タンク24、25と、回収粉用タンク25と、コック26、27、28と、混合粉取り出し口29とを有する。
【0050】
撹拌タンク21は、粉末50を保持および攪拌するタンクである。モータ22は、スクリュ23を駆動させる。スクリュ23は、撹拌タンク21の中に設置され、モータ22を駆動することにより、所定の回転速度で回転する。
【0051】
したがって、撹拌タンク21は、モータ22でスクリュ23を回転させることで、粉末を撹拌し、均一に混合する。撹拌タンク21内に保持されている混合粉の量や、新粉と混合粉の混合比等によって、制御部8からのスクリュ23の回転速度の指令値と、回転速度に必要なモータ22の駆動力が異なる場合がある。そこで、例えばスクリュ23を所定の回転速度で回転させるために要したモータ22の消費電力の情報を制御部8に送信する。そして、制御部8が消費電力の情報に基づきモータ22の駆動力を推定する。制御部8は、推定したモータ22の駆動力に基づき、粉末の状態に関する情報を決定する。
【0052】
新粉用タンク24は新粉が保持される。回収粉用タンク25は回収粉が保持される。新粉用タンク24と回収粉用タンク25の2つのタンクは、それぞれコック26、27を介して撹拌タンク21とつながっている。これにより、各々のタンク24、25から撹拌タンク21に粉を供給することができる。
【0053】
各コック26、27は、制御部8からの指令により、開閉する。これによって、粉混合部2は、混合粉の混合比を調節することができる。
【0054】
また、新粉用タンク24、回収粉用タンク25には重量測定機能がある。例えば、撹拌タンク21に粉を供給した前後の重量の差分から、撹拌タンク21に投入した粉の重さ、新粉と回収粉の重量比、などを測定する。なお、新粉及び回収粉の撹拌タンク21への投入量の計測手法は、例えば体積など、重量以外の情報に基づくものでもよい。
【0055】
混合粉取り出し口29は、撹拌タンク21の下部のコック28を介して、混合した粉末を取り出すことができる。制御部8からの指令により、コック28を開閉することによって、粉混合部2から造形部3への混合粉の供給量を調節することができる。
【0056】
ここで、回収粉を再利用する際の課題について補足する。造形で使用すると粉末50の状態が変化する。例えば、造形部3の造形槽12から回収した粉末50は、造形液60が微量でも付着している可能性があったり、造形中に空気にさらされることで酸化したりして、粉末50の状態が変化する。また、乾燥部4で高温にさらされた粉末50は粒子表面が改質して粉末50の状態が変化する。これらの変化により、造形部3や粉除去部5から回収された回収粉は、新粉と状態が異なる。よって、回収粉を再利用しても造形品質を向上する必要がある。
【0057】
このため、制御部8が、造形部3の造形条件に関する情報と、粉末50の状態に関する情報との少なくとも一方にもとづき、造形部3に供給する混合粉が所望の特性になるように、新粉及び回収粉の混合比を制御することが有効になる。
【0058】
図7は、本発明の一実施形態に係る粉混合部2の変形例を示す図である。
図7に示すように、粉混合部2は、複数種類の新粉を回収粉と共に撹拌して混合粉を生成する構成としてもよい。
【0059】
図7の粉混合部2は、
図6の回収粉用タンク25の他に、2種類の新粉がそれぞれ蓄積される第一新粉用タンク24A及び第二新粉用タンク24Bを有する。第一新粉用タンク24A及び第二新粉用タンク24Bは、それぞれコック26A、26B介して撹拌タンク21につながっている。制御部8からの指令により、各コック26A、26B、27の開閉を調整する。これにより2種類の新粉と、回収粉とを含む3種類の粉を所望の混合比で撹拌タンク21に供給して混合することができる。
【0060】
ここで、2種類の新粉は、特性の異なる2種類の粉である。例えば、所定の前処理をした粉と前処理をしていない粉の2種類の粉、粒径が異なる2種類の粉等、もしくは、これらを組み合わせでもよい。なお、
図7の例では新粉を2種類に増やす構成を例示しているが、3種類以上の複数種の新粉を回収粉と混合する構成でもよい。
【0061】
このように粉混合部2は、造形部3で未使用の2種類以上の新粉と、回収粉を混合する。制御部8は、2種類以上の新粉のそれぞれと、回収粉との混合比を制御する。これによって、造形品質が向上する。例えば、粒径が異なる粉末を混合した場合、1種類の粉径の新粉の場合よりも密度を高めることが容易になる。これは、径の大きい粒子間の隙間に、径の小さい粒子が入り込むことができるからである。密度を高めることができると、高強度の造形物ができる可能性が高くなる。
【0062】
特性の異なる2種類以上の新粉として、新粉Aと新粉Bを使って造形する際の課題について説明する。本実施形態の立体造形装置1を使って最初に造形する際は、回収粉は無く、新粉AとB(新粉AB)のみを混合して造形に使用する。例えば新粉Aと新粉Bは等しい重量で混合することとする。しかし、回収粉は、新粉Aと新粉Bの等しい重量とは限らない。粉末は造形中に散逸してしまい、完全に回収することが難しいため、新粉Aと新粉Bの回収率が異なる等が考えられる。このため、回収粉は、新粉ABの特性とは異なる可能性がある。よって、回収粉は新粉ABと特性が変化してしまうので、回収粉を再利用しても造形品質の向上が課題となる。
【0063】
このため、造形部3の造形条件に関する情報と、粉末50の状態に関する情報の少なくとも一方にもとづき、造形部3に供給する混合粉が所望の特性になるように、複数の新粉のそれぞれと、回収粉との混合比を決めることが有効になる。
【0064】
<混合比調整制御>
次に、
図8~
図15を参照して、本実施形態に係る混合比調整制御について説明する。
【0065】
図8は、本発明の一実施形態に係る制御部8の機能ブロック図である。制御部8は、造形制御部81と、造形条件記録部82と、状態推定部83と、混合比調整部84とを有する。
【0066】
造形制御部81は、造形部3の動作を制御する。造形制御部81は、例えば立体造形装置1の外部の造形データ作成装置104などから、造形対象の立体造形物に関する造形データが入力されると、造形データに基づいて造形部3の造形動作を計画する。そして、計画に基づく造形指令を造形部3に出力して、造形指令に基づき造形部3を動作させることによって、造形部3に所望の造形動作を行わせる。また、造形制御部81は、造形指令に含まれる造形部3の造形条件の情報を造形条件記録部82に出力する。
【0067】
造形条件記録部82は、造形条件に関する情報を記録する。具体的には、造形制御部81から入力された造形部3の造形条件に関する情報を記録して保存する。ここで、造形条件とは、例えば造形物の体積、平坦部31の走査速度、平坦部31の回転速度、粉末層51の積層厚さ、などの情報を含む。
【0068】
状態推定部83は、粉末50の状態に関する情報を推定する。例えば、状態推定部83には、撮影部16により撮影された粉末50の画像が入力され、画像に基づいて粉末50の状態に関する情報を推定する。なお、画像を用いず、既存の装置を用いて測定値に基づいて、粉末50の状態に関する情報を推定してもよい。また、状態推定部83には、粉混合部2のモータ22の消費電力も入力され、消費電力に基づいて粉末50の状態に関する情報を推定できる。状態推定部83は、粉末50の状態に関する情報(
図8では「粉末状態」と表記する)を混合比調整部84に出力する。
【0069】
混合比調整部84は、造形条件記録部82に記録されている造形条件の情報と、状態推定部83から入力される粉末50の状態に関する情報の少なくとも1つ以上に基づき、新粉と混合粉の混合比を調整する。混合比調整部84は、調整後の混合比で混合粉を生成するための混合比指令を粉混合部2に出力する。
【0070】
図9は、本発明の一実施形態に係る制御部8のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0071】
図9に示すように、立体造形装置1の制御部8は、CPU101(Central Processing Unit)、制御を実行させるためのプログラムその他の固定データを格納するROM102(Read Only Memory)、造形データ等を一時格納するRAM103(Random Access Memory)が含まれる。また、外部のコンピュータ等の造形データ作成装置104から造形データを受信する。 造形データ作成装置104は、最終形態の造形物を造形層61にスライスした造形データを作成する。制御部8は、造形層61毎に造形の動作を制御する。なお、造形データ作成装置104は、立体造形装置1と別体としてもよいし、一体としてもよい。また、制御部8は、立体造形装置1の内部にあってもよいし、立体造形装置1の外部にあってもよい。
【0072】
図10は、本発明の一実施形態に係る立体造形物の造形制御のフローチャートである。
図10に示すフローチャートは、立体造形装置1により実施される立体造形物の一連の造形動作の流れを示す。
【0073】
ステップS1では、立体造形装置1のユーザにより動作モードが選択される。ユーザは、例えば立体造形装置1の内部に設置される、または外部に通信可能に接続される入力装置を介して、所望の動作モードを選択する入力操作を行う。選択された動作モードの情報は制御部8の混合比調整部84に入力される。
【0074】
ここで、ユーザは、動作モードとして、例えば、形状精度優先モード、粉コスト優先モード、造形速度優先モードのいずれかを選択できる。選択された動作モードによって、同条件下であっても新粉, 回収粉の調整後の混合比を変化させることができる。このようなモード選択を実装することにより、ユーザに応じて最適な造形ができる。造形において、形状精度と粉コストと造形速度はトレードオフの関係にある。ユーザに応じて、動作モードのうち、どれを優先するかを選択できることは有効である。
【0075】
「形状精度優先モード」では、混合粉における新粉の割合を増やす。一般的に、粉末は再利用することで劣化し、造形品質の低下につながるからである。
【0076】
「粉コスト優先モード」では、混合粉における回収粉の割合を増やす。再利用することでコストが低減する。粉末は再利用することで劣化するので、回収粉の割合を増やすと造形品質の低下する可能性がある。しかしながら、例えば、平坦部31の速度を調節することで造形品質は一定に保つことができる。
【0077】
「造形速度優先モード」では、平坦部31が動作する際の粉末50の流動性が高くなるように混合粉の新粉または回収粉の割合を増やす。これによって平坦部31の速度をあげることができる。
【0078】
ステップS2では、混合比調整部84により、粉末50の状態に関する情報と、造形部3の造形条件に関する情報との少なくとも一方に基づき、新粉と回収粉の混合比が設定される(混合比調整ステップ)。混合比調整部84は、混合比調整制御のフローチャートの各処理を実施して、ステップS1にて選択された動作モードに適するように混合比を調整して設定することができる。なお、混合比調整制御では、
図11に示すサブルーチン処理を実行する。混合比調整制御の詳細については
図11を参照して後述する。もしくは、ステップS1にて動作モードを選択せず、
図11に従って混合比を設定しても良い。混合比調整部84は、設定した混合比の情報を含む混合比指令を粉混合部2に出力する。
【0079】
ステップS3では、粉混合部2により、ステップS2にて設定された混合比に基づき、新粉と回収粉とを混合する(粉混合ステップ)。粉混合部2で混合された混合粉を造形部3に供給する。
【0080】
ステップS4では、造形部3により、ステップS3で混合された混合粉を用いて造形物を造形する(造形ステップ)。ここで、造形制御部81により、造形部3の動作が制御される。造形物が収容される造形槽12は、造形部3から乾燥部4に搬送される。また、造形部3において造形槽12から溢れた余剰粉は回収部7により回収され、粉混合部2に供給される(回収ステップ)。
【0081】
また、ステップS4では、造形制御部81は、造形工程にて用いられた造形部3の造形条件に関する情報を造形条件記録部82に出力して、造形条件記録部82に記録する。造形条件記録部82に記録される造形条件とは、例えば造形物の体積、平坦部31の走査速度、平坦部31の回転速度、粉末層51の積層厚さ、などの情報を含む。
【0082】
ステップS5では、乾燥部4により、ステップS4にて造形された造形物が乾燥される。乾燥部4は、制御部8からの制御指令に応じた乾燥温度や乾燥時間で造形物を乾燥する。乾燥完了後の造形物が収容される造形槽12は、乾燥部4から粉除去部5に搬送される。
【0083】
ステップS6では、粉除去部5により、ステップS4にて乾燥された造形物から余剰粉が除去される。余剰粉は回収部7により回収される(回収ステップ)。余剰粉が除去された造形物は、粉除去部5から焼結部6に搬送される。また、余剰粉は回収部7により回収され、粉混合部2に供給される。
【0084】
ステップS7では、焼結部6により、ステップS6で余剰粉が除去された造形物が焼結される。ステップS7の処理が完了するとメインフローを終了する。
【0085】
図11は、本発明の一実施形態に係る混合比調整制御のフローチャートである。
図11に示す混合比調整制御の各処理(混合比調整ステップ)は、
図10のステップS2においてサブルーチン処理として実行される。
【0086】
ステップS11では、混合比調整部84により、ステップS1にて選択された動作モードに基づき目標値と許容範囲が設定される。許容範囲とは、例えば以下のステップS12~S14にて推定される粉末50の推定値について、目標値からの偏差を許容できる範囲である。例えば、「形状精度優先モード」が選択された場合、立体造形物の形状精度が向上するように粉末層51の充填密度の目標値を大きくする。この結果、混合粉における新粉の割合が相対的に増える設定をする。また、「粉コスト優先モード」が選択された場合、粉末50の流動性や粉末層51の流動性、充填密度の許容範囲を大きくする。この結果、混合粉における回収粉の割合が相対的に増える設定をする。また、「造形速度優先モード」が選択された場合、現在の混合粉の流動性に応じて、粉末層51の充填密度の許容範囲を大きく設定する。この結果、混合粉における新粉または回収粉の割合の下限値は、基準値より大きくなる。これにより、混合粉の流動性が相対的に高くなる。
【0087】
そして、制御部8は、ステップS1にて選択された動作モードに応じて、粉末50の混合比を変更するよう、混合比を制御する。選択された動作モードに応じて目標値と許容範囲を変更する構成とすることにより、ユーザに応じて最適な造形ができる。さらに、選択された動作モードによる制約の条件下での最適な混合比の調整もできる。
【0088】
ステップS12では、状態推定部83により、粉混合部2のモータ消費電力に基づき、粉末50の状態に関する情報を推定する。例えば、粉末50の状態に関する情報として混合粉または回収粉の流動性を推定し、混合比を決定する。状態推定部83による混合粉または回収粉の流動性は、モータ22の消費電力から推定される。なお、モータ22の消費電力は、モータ22の制御値(ON/OFFを制御するPWM比)や、モータ22の消費電流、などの情報も含まれる。
【0089】
ステップS12における流動性の推定手法は例えば以下のとおりである。撹拌タンク21に投入する新粉と回収粉の量と、モータ22の回転速度を一定にして、モータ22の消費電力を測定する。もしくは、撹拌タンク21に投入する混合粉の量を変化させて、モータ22の消費電力の変化量を測定する。次に、消費電力が所定の値以下か否か判断する。モータ22の消費電力と粉末50の流動性とは比例するので、モータ22の消費電力から流動性を推定できる。なお、モータ22の消費電力の変化量を測定する場合、全ての消費電力が所定の値以下になっているか否か判断する。
【0090】
モータ22の消費電力が所定の値以下の場合には、粉末50の流動性が高いと判断する。一方、モータ22の消費電力が所定の値より大きい場合には、流動性が低いと判断する。この手法の場合、流動性が高いと判断した場合には相対的に大きい推定値を選択し、流動性が低いと判断した場合には相対的に小さい推定値を選択することができる。
【0091】
このように粉混合部2のモータ消費電力などのモータ22の駆動力に基づき混合粉や回収粉の流動性を推定する。例えばモータ消費電力が一定になるように、新粉、回収粉の混合比を調整すれば、造形品質の向上に必要な流動性の範囲の粉末50を造形に使用できる。また、モータ消費電力は簡便に取得できるので、粉末50の状態に関する情報を簡便に推定できる。
【0092】
ステップS12において推定された混合粉または回収粉の流動性の推定値と、ステップS11にて設定された流動性の目標値との偏差が、ステップS11にて設定された許容範囲内である場合にはステップS13に進む。一方、偏差が許容範囲を越える場合には、ステップS15に進み、混合比調整部84により粉末50の混合比が調整される。なお、S12でモータ22の駆動力の推定を省略して、S13に進んでもよい。
【0093】
ステップS15では、流動性の推定値が目標値に対して許容範囲より高い場合、新粉の混合比を減らす。したがって、現在の粉末50の流動性から下がるように混合比を制御する。一方、流動性の推定値が目標値に対して許容範囲より低い場合、新粉の混合比を増やす。したがって、現在の粉末50の流動性から上がるように混合比を制御する。
【0094】
また、ステップS15では、複数の新粉を混合する構成の場合には、複数の新粉の混合比を変更してもよい。例えば、流動性を上げる場合には、相対的に流動性の高い方の新粉の比率を増やしてもよい。また、流動性を下げる場合には、相対的に流動性の低い方の新粉の比率を増やしてもよい。ステップS15の処理が完了すると、
図10のメインフローに戻る。
【0095】
ステップS13では、混合比調整部84により、造形部3の造形条件に関する情報に基づき、造形工程にて用いられる粉末50の特性が推定される。混合比調整部84は、例えば造形条件記録部82から直近の造形工程における造形条件に関する情報を取得し、粉末50の状態に関する情報を推定する。例えば、粉末50の粒度分布を推定する。
【0096】
ステップS13において推定された粉末50の粒度分布の推定値と、ステップS11にて設定された流動分布の目標値との偏差が、ステップS11にて設定された許容範囲内である場合にはステップS14に進む。一方、偏差が許容範囲を越える場合には、ステップS16に進み、混合比調整部84により粉末50の混合比が調整される。なお、S13で造形部3の造形条件に関する情報の推定を省略して、S14またはS16に進んでもよい。
【0097】
ステップS16では、新粉と回収粉の混合比を制御して、現在の粉末50の粒度分布を所望の範囲にする。また、ステップS16では、複数の新粉を混合する構成の場合には、複数の新粉の混合比を変更して、現在の粉末50の粒度分布が所望の範囲になるよう混合比を制御してもよい。ステップS16の処理が完了すると、
図10のメインフローに戻る。
【0098】
ステップS14では、状態推定部83により、造形部3で使用されている混合粉の状態を推定するためのテストが実施される。テストは、「流動性テスト(S14a)」、「充填密度テスト(S14b)」、「粒度分布テスト(S14c)」の3種類である。各テストは、まず、撮影部16が粉末50の表面を撮影する。次に、状態推定部83は、撮像画像に基づき粉末50の状態に関する情報を推定する。例えば、粉末50の状態に関する情報として混合粉の流動性、充填密度、粒度分布などが推定される。
【0099】
ここで、
図13~
図15を参照して、ステップS14にて実施される各テストS14a~S14cの概要について説明する。
【0100】
<流動性テスト(S14a)>
粉末50の流動性が基準値より悪すぎても良すぎても造形品質に影響する。粉末50の流動性が悪すぎると、平坦部31で粉末50が均一にならない。この場合、粉末層51の中に空隙ができたり、平坦部31の移動による剪断力で粉末層51にクラックが発生したりする。一方で、粉末50の流動性が良すぎると、粉末層51を積層していく度に下層の粉末50まで一緒に流動して、造形品質が低下する。このため、ステップS14aの流動性テストでは、撮影部16の撮影画像から粉末50の流動性を推定し、粉末50が所定の範囲になるように新粉と回収粉の混合比を決定する。
【0101】
図13を参照してステップS14aの流動性テストの概要を説明する。
図13は、本発明の一実施形態に係る流動性推定用の撮影画像の一例である。流動性テストでは、例えば平坦部31の走査速度または回転速度の1つ以上を変えて動作させた後、撮影部16が粉末50の表面を撮影する。撮影画像から粉末50の流動性を推定する。これにより、粉末50の表面のムラPがより確実に、より顕著に生じ、撮影画像からムラPの発生を判定しやすくなる。また、どの程度の平坦部31の走査速度や回転速度でムラPが生じるかを判定できるので、粉末50の流動性を推定できる。
図13(A)は、正常な粉末50の表面を撮影した画像の一例である。
図13(A)は、粉末50の表面は全体に亘って均一になっている。
【0102】
一方、
図13(B)は、正常ではない粉末50の表面を撮影した画像の一例である。
図13(B)は、粉末50の流動性が
図13(A)よりも悪い状態を示す。
図13(B)は、粉末50の表面にムラPが生じている。
【0103】
また、別方式の流動性テストでは、例えば平坦部31による動作の途中で、平坦部31が走査方向の一端から他端に到達する前のタイミングで平坦部31を停止させる。これにより、粉末層51のうち平坦部31と接触している部分の粉末50が走査方向に飛散するので、粉末50が飛散した状態の粉末50の表面を撮影した画像から粉末50の流動性を推定できる。
【0104】
粉末50の流動性が良くなるほど、平坦部31を停止させてときに粉末50が飛散する距離や面積は大きくなると考えられる。また、飛散した粉末50は表面上にムラとなって残るため、撮像画像から飛散の状況を判別できる。このため、例えば画像から、平坦部31の停止位置から走査方向に沿って最も遠くに到達した粉末50の距離や、飛散した粉末50の領域の面積などを測定すれば、粉末50の流動性を推定できる。例えば流動性が良くなるほど、飛散した粉末50の距離が大きくなり、また、飛散した粉末50の領域の面積が大きくなる。
【0105】
流動性テストの結果、粉末50の流動性が悪すぎる場合には、現在の粉末50の流動性から上がるように新粉と回収粉との混合比を制御する。一方、粉末50の流動性が良すぎる場合には、現在の粉末50の流動性から下がるように新粉と回収粉との混合比を制御する。
【0106】
図11のフローチャートでは、ステップS14aにおいて推定された粉末50の流動性の推定値と、ステップS11にて設定された流動性の目標値との偏差が、ステップS11にて設定された許容範囲内である場合にはステップS14bに進む。一方、偏差が許容範囲を越える場合には、ステップS15に進み、混合比調整部84により粉末50の混合比が調整される。
【0107】
ステップS15では、流動性の推定値が目標値に対して許容範囲より高い場合、すなわち推定された粉末50の流動性が良い場合、新粉の混合比を減らす。したがって、流動性が下がるように混合比を制御する。一方、流動性の推定値が目標値に対して許容範囲より低い場合、すなわち推定された粉末50の流動性が悪い場合、新粉の混合比を増やす。したがって、流動性が上がるように混合比を制御する。
【0108】
また、ステップS15では、複数の新粉を混合する構成の場合には、複数の新粉の混合比を変更してもよい。例えば、流動性を上げる場合には、相対的に流動性の高い方の新粉の比率を増やしてもよい。また、流動性を下げる場合には、相対的に流動性の低い方の新粉の比率を増やしてもよい。ステップS15の処理が完了すると、
図10のメインフローに戻る。
【0109】
<充填密度テスト(S14b)>
図14を参照してステップS14bの充填密度テストの概要を説明する。
図14は、本発明の一実施形態に係る充填密度推定用の撮影画像の一例である。ステップS14bの充填密度テストでは、造形液60を規定量よりも多くして付与し、所定の時間経過後の粉末50の表面を撮影する。撮影画像から充填密度を推定する。
【0110】
充填密度が高い場合、造形液60が浸透して細かな形状がつぶれてしまい、造形品質が悪化する。これは、粉末50と造形液60の濡れ性の向上、造形液60の粘度の低下等の特性変化が起きる可能性がある。
【0111】
一方で、充填密度が低い場合、造形液60の浸透による造形品質の悪化はない。しかし、粉末50と造形液60の濡れ性の低下、造形液60の粘度の向上等の特性変化が起きる可能性がある。
【0112】
造形液60の浸透は時間をかけて起き、特に乾燥部4で造形液60の粘度が低下し、浸透がすすむ。したがって、造形液60付与後に粉末50の表面を撮影しても、造形液60の浸透は判定できない。このため、充填密度テストでは、造形液60を規定量よりも多くして付与することで、造形液60の粉末50への浸透を加速させ、短時間で充填密度を判定する。このため、撮影部16の撮影画像から造形液60の粉末50へのにじみを判定し、充填密度を推定することによって、粉末50の混合比を決定する。これによって、粉末50の充填密度を所定の範囲に調整し、造形品質を向上させる。粉末50の混合比の決定と共に、造形液60を付与する量も調整してもよい。
【0113】
図14は、粉末50の表面に造形液60を付与し、10分後に撮影部16で撮影した画像を示す。
図14(A)は造形液60を規定量より2倍多く付与し、
図14(B)は造形液60を規定量より4倍多く付与した場合の画像である。造形液60の規定量を変えて撮影した2つの画像が、にじみが生じていない場合、充填密度が適切と判断する。2つの画像のうち1つ以上ににじみが生じた場合、充填密度が高いと判断する。例えば、
図14(A)ではテスト画像61Aである「A」の文字ににじみは生じていないが、
図14(B)ではテスト画像61Bである「A」の文字ににじみが生じている。したがって、
図14は、充填密度が高いと判断される。このように、充填密度テストでは、造形液60の量を規定量から変えて、滲みの程度を画像から判定する。これにより粉末50の充填密度を推定することができる。
【0114】
充填密度テストの結果、浸透度が大きい場合には、現在の粉末50の充填密度を下げるように新粉と回収粉との混合比を調整する。
【0115】
図11のフローチャートでは、ステップS14bにおいて推定された粉末50の充填密度の推定値と、ステップS11にて設定された充填密度の目標値との偏差が、ステップS11にて設定された許容範囲内である場合にはステップS14cに進む。一方、偏差が許容範囲を越える場合には、ステップS17に進み、混合比調整部84により粉末50の混合比が調整される。
【0116】
ステップS17では、充填密度の推定値が目標値に対して許容範囲より高い場合、すなわち推定された粉末50の充填密度が高く、浸透度が相対的に小さい場合、新粉の混合比を減らす。したがって、現在の粉末50の充填密度から下がり、浸透度が適正値まで増えるように混合比を制御する。一方、充填密度の推定値が目標値に対して許容範囲より低い場合、すなわち推定された粉末50の充填密度が低く、浸透度が相対的に大きい場合、新粉の混合比を増やす。したがって、現在の粉末50の充填密度から上がり、浸透度が適正値まで減るように混合比を制御する。
【0117】
また、ステップS17では、複数の新粉を混合する構成の場合、複数の新粉の混合比を変更してもよい。例えば、充填密度を上げる場合、相対的に充填密度の高い方の新粉の比率を増やし、充填密度を下げてもよい。また、相対的に充填密度の低い方の新粉の比率を増やしてもよい。ステップS17の処理が完了すると、
図10のメインフローに戻る。
【0118】
<粒度分布テスト(S14c)>
図15を参照してステップS14cの粒度分布テストの概要を説明する。
図15は、本発明の一実施形態に係る粒度分布計測用の撮影画像の一例である。ステップS14cの粒度分布テストでは、ガラス面17に粉末50を散布し、散布した粉末50を撮影する。撮影画像から、粉末50に含まれる粒子の大きさを測定し、粒度分布を推定する。
【0119】
粉末50の粒度分布は、造形物の欠陥の有無や強度、焼結の進行に影響し、造形品質に影響する。粉末50の粒度分布が所定の範囲以外の場合、造形品質が低下する。このため、撮影画像から粉末50の粒度分布を判定し、粒度分布が所定の範囲になるように新粉と回収粉の混合比を決定する。
【0120】
図15(A)は、粉末50をガラス面17上に散布し、拡大レンズに切り換えて撮影した画像の一例である。ガラス面17の下から光が当てられており、粉末50の粒子の1粒ずつを識別できるので、画像に含まれる粉末50の粒子の数をカウントできる。
図15(B)は、
図15(A)の画像を部分的に拡大した画像である。
図15(B)は、粒子50A、50Bの2つの粒子が拡大され、粒子の径がわかる。
図15(B)は、粒子50Aは撮像画像の7画素分の大きさの径であり、粒子50Bは4画素分の大きさの径である。このように撮像画像に含まれる粉末50の粒子のそれぞれの径の大きさを測定し、粒子の数をカウントし、ヒストグラムを作成することで、粒度分布が決定する。
【0121】
図11のフローチャートでは、ステップS14cにおいて推定された粉末50の粒度分布の推定値と、ステップS11にて設定された流動分布の目標値との偏差が、ステップS11にて設定された許容範囲内である場合には
図10のメインフローに戻る。一方、偏差が許容範囲を越える場合には、ステップS16に進み、混合比調整部84により粉末50の混合比が調整される。
【0122】
ステップS16では、新粉と回収粉の混合比を制御して、現在の粉末50の粒度分布が所望の粒度分布の範囲に混合比を制御する。また、ステップS16では、複数の新粉を混合する構成の場合には、複数の新粉の混合比を変更して、現在の粉末50の粒度分布が所望の粒度分布の範囲に混合比を制御してもよい。ステップS16の処理が完了すると、
図10のメインフローに戻る。
【0123】
なお、粒度分布テストで用いられるガラス面17は、例えば造形部3内の造形槽12とは異なる場所に設置される。また、ガラス面17は、撮影部16の画角の範囲内に設置されるか、または、粒度分布テストの際には撮影部16が移動して撮影可能な位置に設定される。
【0124】
また、本実施形態では、粉面画像から粒度分布を判別しやすくできるように、画像の背景が透明となるガラス面17上に粉末50を散布する構成を示したが、造形槽12の表面の粉面画像を用いてもよい。この場合、例えば周知の画像処理手法を用いて、粉面画像から表面の粉末50を抽出するなどの前処理を行えば、粒度分布の計測が可能である。
【0125】
このようにステップS14では、状態推定部83は、撮影部16により撮影された粉末50の表面の画像に基づいて、粉末50の状態に関する情報として、粉末50や粉末層51の流動性、充填密度、粒度分布を推定する。この構成により、撮影部16の撮像画像を用いて粉末50の状態を精度良く推定することが可能となり、また、簡易な構成、かつ低コストで推定できる。さらに、このように推定した粉末50の状態に関する情報に基づき、流動性、充填密度、及び粒度分布の1つ以上を所定の範囲になるように、混合比を決定する。これにより回収粉を再利用しても、造形品質が向上する。
【0126】
なお、ステップS14において状態推定部83が推定する粉末50の状態に関する情報は、粉末50の流動性、充填密度、粒度分布の少なくとも1つでもよいし、組み合わせてもよい。また、流動性、充填密度、粒度分布以外を推定する構成でもよい。また、粉末50の流動性、充填密度、粒度分布は、画像に基づいて推定したが、既存の測定装置を用いて測定してもよい。この場合、新粉、回収粉、混合粉の1つ以上を測定して、測定した値に基づいて混合比を決定しても良い。
【0127】
ステップS14において状態推定部83により実施される「流動性テスト(S14a)」、「充填密度テスト(S14b)」、「粒度分布テスト(S14c)」の3種類のテストは、実施されるタイミングは特に限定されないが、実際の造形作業の前に予め実施しておくのが好ましい。造形部3の実際の造形作業中にテストを実施するのは難しい場合がある。例えば流動性テストでは粉面に意図的にムラPを発生させやすくしたり、充填密度テストでは造形液60を通常より多く付与したり、粒度分布テストでは造形槽12とは別のガラス面17に粉末50を散布する、などの実施条件がある。タイミングとしては、例えば、立体造形装置1での造形開始前として、立体造形装置1を起動したときや、立体造形装置1が造形データ作成装置104から新たな造形データを受信したときなどがある。または、立体造形装置1での造形中として、一の立体造形物の造形が完了し、他の立体造形物の造形作業に遷移するとき、などが挙げられる。また、立体造形装置1の造形作業とは関係なく、周期的や任意のタイミング、またはユーザの操作指令に応じて各テストを実施してもよい。
【0128】
このように、
図11に示す混合比調整制御のフローチャートでは、混合比調整部84は、4種類の判定指標として(1)~(4)を用いて、新粉と回収粉との混合比が最適となるように混合比の調整を行う。
(1)ステップS11にて設定された動作モードに基づいて、混合比を決定する。
(2)ステップS12にて状態推定部83により推定された粉混合部2のモータ22の消費電力に基づく回収粉の流動性の情報から混合比を決定する。
(3)ステップS13にて造形条件記録部82に記録されている造形部3の造形条件の情報に基づいて、混合比を決定する。
(4)ステップS14にて状態推定部83により撮影部16の撮像画像に基づく粉末50の状態に関する情報として流動性、充填密度、及び粒度分布の1つ以上の情報から混合比を決定する。
【0129】
混合比調整部84は、判定指標(1)~(4)を参照して、現在の粉末50の特性を把握することができる。そして、粉末50が所望の特性となるように、新粉と回収粉との混合比を調整する。例えば、粉末50の流動性、充填密度、粒度分布などの粉末50の状態に関する情報について、それぞれ所定の範囲を定めておき、粉末50の状態に関する情報を所定の範囲にする。粉末50が所望の特性になるように混合比を調整することによって、造形品質が向上する。
【0130】
ここで、判定指標(3)を適用する効果について
図12を参照して説明する。
図12は、本発明の一実施形態に係る造形条件による粉末50の状態への影響を説明する図である。
図12(A)、(B)は、それぞれ積層厚さが102μm、66μmで粉末層51を形成したときの回収粉の粒度分布を示す。粒度分布の横軸は回収粉に含まれる粒子の径(μm)を示し、縦軸は粉子径ごとの回収粉全体に対する割合(体積%)である。すなわち縦軸は、回収粉全体の体積に対する粒子ごとの体積比を示す。また、粉除去部5の回収粉の粒度分布D1を実線で示し、造形部3の回収粉の粒度分布D2を点線で示す。
【0131】
造形部3で使用する混合粉の粒度分布と、平坦部31の走査速度及び回転速度、ならびに粉末層51の積層厚さの各造形条件とが同じであれば、造形部3で回収される粉末の粒度分布と、粉除去部5で回収される粉末の粒度分布は毎回ほぼ同じになる。このため、予めいろいろな造形条件で造形し、造形部3で回収される粉末の粒度分布、粉除去部5で回収される粉末の粒度分布を記録しておけば、実際の造形において、造形条件から造形部3及び粉除去部5のそれぞれで回収粉の粒度分布を推定できる。
【0132】
図12(A)は、造形部3で回収された粉末50の粒度分布D2と、粉除去部5で回収された粉末50の粒度分布D1とはほぼ同じになる。一方、
図12(B)は、造形部3で回収された粉末50の粒度分布D2では粒径の大きい粉末50の割合が多く、粉除去部5で回収された粉末50の粒度分布D1では粒径の小さい粉末50の割合が多い。このように、造形部3から回収した粉末50と粉除去部5から回収した粉末50の粒度分布D1、D2は異なる場合があり、それは積層厚さに依存する。
【0133】
なお、
図12では、造形部3の造形条件のうち粉末層51の積層厚さを変化させた場合の粒度分布への影響を例示したが、造形条件の他のパラメータである平坦部31の走査速度及び回転速度や、造形物の体積などを変化させた場合でも同様に粒度分布への影響が考えられる。また、粒度分布以外の充填密度や流動性などへの影響も生じ得る。
【0134】
したがって、上記の判定指標(3)のように、造形部3の造形条件を考慮することにより、粒度分布などの混合粉の状態の変化を把握することができるので、混合比をより適切に調整することが可能となる。
【0135】
判定指標(3)における造形条件に基づく粉末50の推定と混合比調整の手順は例えば以下のとおりである。まず、予め平坦部31の走査速度、平坦部31の回転速度、粉末層51の積層厚さと、その条件で造形したときに造形部3で回収される粉末50、粉除去部5で回収される粉末50、それぞれの粉末50の特性(ここでは例として粒度分布とする)の関係を調べておく。このように取得された造形条件と粉末50の特性との関係は、例えば混合比調整部84が持っておく。
【0136】
次に、このように取得した関係を用いて、
図11のステップS13にて、実際の造形条件において、造形部3で回収される粉末50の粒度分布と、粉除去部5で回収される粉末50の粒度分布を推定する。なお、予め調べておいた造形条件と全く同じ条件のデータがない場合は補間して推定してもよい。
【0137】
回収粉すべての粒度分布は、造形部3で回収される粉末50の粒度分布と、粉除去部5で回収される粉末50の粒度分布とを、それぞれの粉末50の量の比によって加重平均して求める。造形部3で回収される粉末50の量は、造形槽12からあふれる粉末50の量であり、供給槽11と造形槽12の底面の上下移動量から見積もることができる。粉除去部5で回収される粉末50の量は、造形槽12の体積から、造形物の体積を除いて見積もることができる。
【0138】
このようにして回収粉の粒度分布を推定することができ、それが所望の粒度分布になるように新粉を混ぜる量を決定する。すなわち、
図11のステップS16にて、回収粉の粒度分布が元の粒度分布から大きく変化している場合は新粉を所定の量から多く混ぜる。一方、回収粉の粒度分布が元の粒度分布から大きく変化していない場合は新粉を所定の量から減らして混ぜる。
【0139】
また、複数種類の新粉として、例えば粒径の異なる複数の新粉を混合している場合、それら複数の新粉の混合割合を調整し、所望の粒度分布になるようにする。
【0140】
なお、
図11のステップS13では、
図12の例に基づき、造形部3の造形条件から粉末50の粒度分布を推定する構成を例示したが、造形条件からは粒度分布の他、例えば充填密度や流動性等を推定することも可能である。例えばステップS13において、造形条件から充填密度を推定する構成を適用する場合、推定値と目標値との偏差が許容範囲を越えるときはステップS17に進むように
図11のフローチャートを変更してもよい。同様に、ステップS13において、造形条件から流動性を推定する構成を適用する場合、推定値と目標値との偏差が許容範囲を越えるときはステップS15に進むように
図11のフローチャートを変更してもよい。
【0141】
このような造形条件に基づく混合比の調整によって、回収粉を使用しても造形品質を向上できる。
【0142】
混合比調整部84は、調整後の混合比の情報を混合比指令として粉混合部2に出力する。
図10のステップS2では、混合比調整部84から入力された混合比指令に基づき所望の混合比が設定される。続いてステップS3では、混合比調整部84により調整後の所望の混合比となるよう混合粉が生成される。
【0143】
本実施形態に係る立体造形装置1の効果を説明する。立体造形装置1は、粉末50を含む造形物を造形する造形部3と、粉末50の少なくとも一部を回収粉として回収する回収部7と、回収粉を含む2種類以上の粉を混合する粉混合部2と、粉末50の状態に関する情報と、造形部3の造形条件に関する情報とに基づき、粉混合部2にて混合される2種類以上の粉の混合比を制御する制御部8と、を備える。
【0144】
本実施形態の立体造形装置1では、立体造形において、造形工程や乾燥工程の後に造形物の周囲の余剰粉を回収して、この回収粉を再利用する。回収粉は、流動性が低下するなど造形前の粉末と状態が変化する場合がある。一方、造形品質を一定に保持するためには、粉混合部2で新粉と回収粉とを混合して生成される混合粉は、所望の基準値を満たすことが望ましい。そこで、粉混合部2における新粉と回収粉の混合比を回収粉の状態に応じて適切に調整する必要がある。
【0145】
そこで本実施形態では、粉末50の状態に関する第一の情報と、造形部3の造形条件に関する第二の情報の二種類の情報を用いて、新粉と回収粉との混合比を調整する。このように複数種類の情報に基づき混合比を調整することにより、造形品質が向上する。
【0146】
なお、本実施形態では、制御部8の混合比調整部84は、粉末50の状態に関する情報と、造形部3の造形条件に関する情報との両方の情報を用いて、粉混合部2にて混合される2種類以上の粉の混合比を調整するが、混合比調整のために参照する情報は、粉末50の状態に関する情報と、造形部3の造形条件に関する情報の少なくとも一方でもよい。つまり、上述のステップS15において挙げた4つの判定指標(1)~(4)のうち少なくとも一部のみを用いて混合比の調整を行う構成でもよい。
【0147】
本実施形態の立体造形装置1では、制御部8の混合比調整部84が最適な新粉と回収粉の混合比に調整することによって、造形品質を向上できる。ここで
図16を参照して、粉末50及び粉末層51や混合比が立体造形に与える影響を説明する。
図16は、本発明の一実施形態に係る粉末50及び粉末層51と立体造形物の依存関係を示す図である。
【0148】
新粉と回収粉は、粉混合部2で任意の混合比で混合され、混合粉が生成される。このため、混合粉の状態に関する情報113としてかさ密度、流動性、粒度分布は、新粉の状態に関する情報110、回収粉の状態に関する情報111及び混合粉の混合比112に依存する。この混合粉を用いて造形部3にて粉末層51が形成される。このため、粉末層51の状態に関する情報115としてパッキング密度、結果有無は、混合粉の状態に関する情報113と、造形部3の造形条件に関する情報114として積層厚さ、走査速度、回転速度に依存する。造形物は、乾燥部4、粉除去部5、焼結部6を経て立体造形物が完成する。このため、造形物や立体造形物状態に関する情報116として密度、強度、形状精度は、混合粉の状態に関する情報113や粉末層51の状態に関する情報115に依存する。
【0149】
造形物及び立体造形物の状態に関する情報116を変動させる要因について説明する。回収粉の状態に関する情報111は、造形を繰り返すと劣化するため、大きくばらつく。新粉の状態に関する情報110は、回収粉の性状ほどはばらつかないが、製造ロットによってばらつく。混合粉の状態に関する情報113は、新粉の状態に関する情報110と回収粉の状態に関する情報111と混合比112に依存するが、これらは線形な関係ではない。つまり、仮に新粉の状態に関する情報110、回収粉の状態に関する情報111が正確にわかったとしても、混合粉の状態に関する情報113を正確に予測することは難しい。
【0150】
立体造形装置1は、造形物及び立体造形物の状態に関する情報116が許容範囲内におさまるように造形できればよい。
図16に示した依存関係を、あらかじめモデル化しておく(以降、「粉末50と立体造形物モデル」と呼ぶ)。混合比調整部84は、混合粉の状態に関する情報113及び粉末層51の状態に関する情報115が目標値となるように、混合比112を制御する。
【0151】
ここで、混合比調整部84が用いる4種類の判定指標(1)~(4)と、
図16との対応を説明する。
【0152】
判定指標(1)は、
図11のステップS11にて設定した動作モードにもとづく混合比の目標値と許容範囲である。
図16では、混合粉の状態に関する情報113及び粉末層51の状態に関する情報115の目標値を調整することや、造形条件に関する情報114の設定可能範囲を調整することに相当する。
【0153】
判定指標(2)は、
図11のステップS12にて推定した粉末50の流動性の情報である。
図16では、混合粉の状態に関する情報113もしくは回収粉の状態に関する情報111に相当する。
【0154】
判定指標(3)は、
図11のステップS13にて用いられる造形条件の情報である。
図16では、回収粉の状態に関する情報111に相当する。
【0155】
判定指標(4)は、
図11のステップS14にて推定された混合粉の流動性、充填密度、粒度分布である。
図16では、混合粉の状態に関する情報113と粉末層51の状態に関する情報115に相当する。
【0156】
混合比調整部84が混合比を最適なものに調整する具体的な方法を説明する。
【0157】
混合粉の状態に関する情報113及び粉末層51の状態に関する情報115の目標値と許容範囲、造形条件に関する情報114の設定値は、あらかじめ決められている。ステップS11で動作モードを選択されることで、これらの範囲が調整される。
【0158】
例えば「形状精度優先モード」が選択された場合、混合粉の状態に関する情報113の粒度分布の許容範囲が狭く設定され、粉末層51の状態に関する情報115のパッキング密度の目標値が高く設定される。これらの設定された値を満たすように混合比112が決められる。
【0159】
例えば「粉コスト優先モード」が選択された場合、混合粉の状態に関する情報113、粉末層51の状態に関する情報115の目標値、及び造形条件に関する情報114の設定値は許容範囲内で、回収粉を多くなるように混合比112が決められる。
【0160】
例えば「造形速度優先モード」が選択された場合、造形条件に関する情報114の走査速度の許容範囲が広く設定される。この設定を満たすように混合粉の状態に関する情報113や粉末層51の状態に関する情報115も考慮した混合比112が決められる。
【0161】
ステップS12で混合粉の状態に関する情報113として流動性を推定する。あるいは後述する「特性取得モード」に記載の方法で、回収粉の状態に関する情報111として流動性を測定する。測定した流動性と、目標値との差を求め、立体造形物モデルにもとづき、差が小さくなるように混合比112を変更する。
【0162】
ステップS13で造形部3の造形条件を記録されているので、回収粉の状態に関する情報111が推定できる。推定された回収粉の状態に関する情報111から、新粉との混合粉の状態に関する情報113が目標値と等しくなるように、立体造形物モデルにもとづき、混合比112を変更する。
【0163】
ステップS14で混合粉の状態に関する情報113と粉末層51の状態に関する情報115を推定するが、これらが目標値と等しくなるように、粉末50と立体造形物モデルにもとづき、混合比112を変更する。
【0164】
また、本実施形態の立体造形装置1は、粉末50の状態に関する情報を推定する状態推定部83を備える。制御部8の混合比調整部84は、状態推定部83により推定された情報に基づき混合比を調整する。この構成により、状態推定部83により推定された粉末50の状態に関する情報を用いて混合比の調整を行えるので、混合比をより適切な値に調整することが可能となる。
【0165】
<混合比調整制御の第一変形例>
なお、混合比調整制御は、粉混合部2が予め決められた割合で新粉または回収粉を混合するモードを有する構成でもよい。具体的には、新粉のみを用いる「校正モード」と、回収粉のみを用いて回収粉の特性を取得する「特性取得モード」と、を追加することもできる。
【0166】
(校正モード)
校正モードでは、粉混合部2は造形部3に新粉のみを供給する。そして、このときの新粉の状態に関する情報を取得する。例えば、ステップS14の各テストを実施して、撮影部16で撮影した画像から流動性、充填密度、粒度分布を推定する。また、ステップS12のように粉混合部2のモータ22の駆動力から流動性を推定する。新粉の状態に関する情報は既知であるものとして、推定した情報と、既知の情報とを比較することによって、状態推定部83を校正する。
【0167】
または、
図7に示した粉混合部2は、新粉Aのみを造形部3に供給する第1パターンと、新粉Bのみを造形部3に供給する第2パターンがある。それぞれのパターンで粉末50の状態に関する情報を推定して、状態推定部83を校正してもよい。
【0168】
このような校正モードを設けることにより、回収粉を利用しても、造形品質が向上する。
【0169】
ここで、状態推定部83が粉混合部2のモータ22の駆動力に基づいて流動性を推定することについて説明する。モータ22は使用するにつれて粉末の付着や摩耗等によって、駆動力と流動性との比例関係が変化し、推定誤差の原因となる。この誤差をなくすことができれば、推定精度があがる。
【0170】
ここで、新粉のみを撹拌した場合のモータ22の制御値や消費電流は、予め記録されている。
【0171】
まず、校正モードでは、粉混合部2の撹拌タンク21に新粉のみ投入される。次に、モータ22の制御値またはモータ22の消費電流を測定する。予め記録された値が測定された値と同じことが好ましい。一方、値が異なっていれば、補正係数を算出し、測定された値を補正する。
【0172】
新粉A、Bを用いる場合にも、第1パターン、第2パターンでそれぞれモータ22の制御値またはモータ22の消費電流を測定する。予め新粉A、新粉Bの流動性、制御値、及び消費電力は記録されている。第1パターン、第2パターンで測定された値が記録されたの値と異なっていれば、補正係数を算出し、測定された値を補正する。
【0173】
(特性取得モード)
特性取得モードでは、粉混合部2では回収粉のみを造形部3に供給する。そして、このときの回収粉の状態に関する情報を推定し、推定した情報をもとに回収粉の状態に関する情報を推定する。回収粉の状態に関する情報は、校正モードと同様に、ステップS14の各テスト、ステップS12の粉混合部2のモータ22の駆動力に基づいて推定される。推定した回収粉の状態に関する情報が混合粉の状態に関する情報に対して大きく変化していた場合、回収粉は破棄することが好ましい。
【0174】
このような特性取得モードを設けることにより、回収粉を再利用しても、造形品質が向上する。
【0175】
<混合比調整制御の第二変形例>
なお、混合比調整制御では、制御部8は、混合粉の状態に関する情報に応じて、造形部3の造形条件に制約を設ける構成でもよい。
【0176】
具体例としては、造形条件の設定範囲を、推定した粉末50の状態に関する情報に応じて変更する。例えば、ステップS12やステップS14で、流動性を取得する。流動性に応じて、流動性が高い場合は平坦部31の走査速度として最大値を高くし、流動性が低い場合は平坦部31の走査速度として最大値を低くする。
【0177】
このように粉末50の状態に関する情報に応じて造形部3の造形条件に制約を設けることによって、粉末50の状態に関する情報に合わない造形条件を設定することを防止し、造形品質を向上させる。
【0178】
混合粉の流動性は造形品質に影響する。このため、流動性によって平坦部31のリコート速度の最大値が変わる。そこで、ステップS14で撮影した画像や、ステップS12で消費電力に基づいて流動性を推定し、平坦部31の造形条件の最大値を変更する。これにより、粉末50の状態に関する情報に合わない造形条件を設定することを防止し、造形品質を向上させる。
【0179】
<混合比調整制御の第三変形例>
なお、混合比調整制御では、粉末50の状態に関する情報、または、造形部3の造形条件に関する情報を外部機器に送信する通信部を有し、制御部8は、通信部を介して外部機器から受信する指示に基づき混合比を制御する構成としてもよい。外部機器はクラウドとしてもよい。
【0180】
立体造形装置1は通信部を介して装置動作をサポートするサービス提供者と接続する。立体造形装置1からは、ステップS13の造形条件、ステップS14の画像、ステップS12の測定値などの情報を、外部機器に送信する。外部機器は、立体造形装置1から送信されてきた情報に基づいて、粉末50の状態に関する情報を推定し、混合比を決定する。そして、通信部を介して立体造形装置1に混合比を送信する。立体造形装置1は、送信された混合比に基づいて、混合粉を生成する。
【0181】
外部機器は、例えば予め造形条件、粉末50の状態に関する情報等を記録しておいてもよい。
【0182】
または、外部機器は、造形条件、粉末50の状態に関する情報の変化を予測するシミュレーションをしてもよい。送信された情報から、シミュレーションで回収粉の状態に関する情報の変化を予測し、最適な混合比を決定する。
【0183】
図17は、本発明の一実施形態に係る造形部の第一変形例3Aを示す図である。
図17に示す第一変形例に係る造形部3Aは、
図1に示した造形部3の供給槽11に替えて、粉末供給部70が含まれる。
図1と共通する説明については、適宜説明を省略する。
【0184】
粉末供給部70は、造形槽12の粉末層51に粉末50を供給する。粉末供給部70は、水平方向(Y1及びY2方向)に移動可能で、造形槽12の上方を走査して、造形槽12に粉末50を供給する。
【0185】
粉末供給部70は、ホッパー71と、振動源72と、トラフ73を含む。
【0186】
ホッパー71は、造形槽12に供給する粉末50を保持する。
【0187】
トラフ73は、粉末50を造形槽12に供給する。トラフ73は、ホッパー71で保持される粉末50を造形槽12に供給する供給路である。トラフ73は、X方向への長さ(幅)が、造形槽12のX方向への長さ(幅)と同じであることが好ましい。振動源72は、トラフ73を振動させる。トラフ73が振動源72より振動することで、トラフ73の開口部から粉末50が造形槽12に落下する。
【0188】
なお、造形部3Aは、
図1に示した造形部3と同様に、付与部40、積層ユニット30、余剰粉末槽15が含まれる。造形部として粉末供給部70は、粉末を供給することによって、粉末50を含む粉末層51を造形する。付与部40は、粉末層51に造形液60を付与し、造形層61を形成する。造形部3Aは、複数の造形層61が積層され造形物が造形される。
【0189】
図18は、本発明の一実施形態に係る造形部の第二変形例3Bを示す図である。
図18に示す第二変形例に係る造形部3Bは、
図1に示す造形部3と異なり、放射エネルギー吸収剤を含む造形用溶液を付与するハイスピードシンタリング(HSS)方式が適用される。
【0190】
第二変形例の造形部3Bでは、上記実施形態の造形部3とは異なり、付与部40Bは放射エネルギー吸収剤を含む造形液60Bを付与し、さらに、放射エネルギー源90が含まれる。
図1と同じ符号を付している手段については、適宜説明を省略する。
【0191】
付与部40Bは、粉末50を含む粉末層51に放射エネルギー吸収剤を含む造形液60Bを付与する。
【0192】
付与部40Bは、放射エネルギー源90が含まれる。放射エネルギー吸収剤を含む造形液60Bが付与された粉末層51の領域に対して、放射エネルギー源90を駆動させる。放射エネルギー源90は、放射エネルギー吸収剤を活性化させるものであればよく、例えば、光、電磁放射線等があげられる。なお、放射エネルギー源90は、ヘッド42のどちらか片方のみの設置でもよいし、左右に設置されてもよい。放射エネルギー源90はキャリッジ41に接続して、ヘッド42と一体となって駆動してもよい。もしくは、放射エネルギー源90はヘッド52とは別体として、個別に駆動させてもよい。
【0193】
放射エネルギー源90は、光源91と、反射部92が含まれる。
【0194】
光源91は、例えば、ハロゲンランプ、LED、LD、フラッシュランプ、キセノンランプ、球状灯等の光源があげられる。
【0195】
反射部92は、光源91から出射される光を反射する。例えば、反射部92は、一端が開口し、曲面を有する略ドーム形状であって、開口の領域内に光源91が配置されている。反射部92の曲面により、光源91から粉末層51に照射される光の面積が、反射部92の開口の面積よりも小さくなるように集光している。
【0196】
例えば、放射エネルギー吸収剤が、近赤外線染料(NIRD)、または近赤外線顔料(NIRP)である場合、例えば、約800nmから約1400nmまでの波長の電磁放射線を放射エネルギー源90から放射エネルギー吸収剤を含む造形液60Bが付与された粉末層51に照射する。これによって、放射エネルギー吸収剤が電磁放射線を吸収し、吸収したエネルギーを熱エネルギーに変換することができる。また、粉末50を含む粉末層51には放射エネルギー吸収剤に加え、着色剤を付与してもよい。
【0197】
図19は、本発明の一実施形態に係る混合比調整部の変形例84Aを示すブロック図である。
図8に示した混合比調整部84は、
図19に示す変形例に係る混合比調整部84Aに置き換えることもできる。
【0198】
混合比調整部84Aは機械学習プログラムを実装してもよい。混合比調整部84Aは、造形データと、粉面・粉特性情報および最適な立体造形装置1の各部の制御との対応を学習することで、類似造形データや類似装置状態(粉面状態、使用する粉特性)に対して最適な造形制御を実行することができる。機械学習プログラムは、データ蓄積部85、学習部86、推定部87を含む。
【0199】
データ蓄積部85は、造形物の形状、粉末50の状態に関する情報、造形槽12の状態に関する情報、立体造形装置1の造形条件、混合比とその造形結果(造形物の精度、密度、強度等の特性値、工程中や完成後の造形物破損や内部欠陥発生の有無等)等のデータを蓄積する。
【0200】
学習部86は、データ蓄積部85に蓄積されているデータから、例えば造形が失敗する確率の高い条件を検出するように学習する。学習部86に用いられるアルゴリズムは特に限定されず、ニュートラルネットワークによるディープラーニング、教師なし学習モデル、教師あり学習モデル、強化学習モデル等を適用できる。学習部86に用いられるアルゴリズムに入力される教師データは、例えば、撮影部16で撮影された画像、立体造形装置1の造形条件、及び、混合比である。
【0201】
推定部87は、学習済みの学習部86を利用して、混合比の妥当性を推定する。推定部87は、例えば画像、造形条件、混合比、などが入力される。推定部87は、所定の数値を出力する。数値は、例えば精度が劣化する可能性や造形物に内部欠陥が発生する可能性を0から10まで示したものとする。
【0202】
例えば、推定部87から高い数値が出力される場合は、造形品質が低下する可能性がある。
【0203】
例えば、推定部87から低い数値が出力される場合は、造形品質が一定基準を満たすものとされる。
【0204】
<撮影部16の変形例>
造形部3が備える撮影部16として3Dスキャナを用いてもよい。3Dスキャナを用いた方法について説明する。
【0205】
3Dスキャナは、例えばインレーザーを交差させた状態で対象物に照射し、その反射光をセンサーで取得した後、三角測量の原理を使って距離を計測する。このため、粉面をより正確に立体的な点群として観察可能となる。具体的には対象のエッジを鮮明に観察可能となる。
【0206】
つまり、
図14を参照して説明した充填密度テスト(S14b)においては、撮影部16として3Dスキャナを用いた場合には、デジタルカメラ、ビデオカメラ、CCDよりもより精密な撮影画像を得ることができるので、判定を間違えるリスクを低減できる。
【0207】
例えば、
図14の場合は「滲み」を測定するが、例えば滲みが発生している強いる部位、つまりインク(造形液60)が存在している部位と、インクが存在していない部位の境界にわずかな段差ができる。3Dスキャナでは、レーザを用い、かつ距離を測定するので、この段差を鮮明に抽出できる。このため、滲みがOK/NGとなる基準を正確に決めることができる。
【0208】
このように、撮影部16として3Dスキャナを用いることによって、粉混合部2において新粉と回収粉とを混合して混合粉を生成するときに、例えば新粉の混合量を最適化できる。これにより、無駄な新粉を使用することが無くなるので、SDGsに貢献できる。
【0209】
言い換えると、撮影部16としてデジタルカメラ、ビデオカメラ、CCDを用いた場合に比べ、3Dスキャナを用いることによって、滲みの境界の判定の精度が上がるので、無駄な新粉を使用することが無くなる。
【0210】
図13を参照して説明した流動性テスト(S14a)や、
図15を参照して説明した粒度分布テスト(S14c)についても、
図14の充填密度テスト(S14b)と同様に撮影部16として3Dスキャナを用いることにより、同様の効果を得ることができる。つまり、判定の精度が上がる。
【0211】
図13の流動性テスト(S14a)では、粉末50の表面に発生したムラPの面積や形状などを測定するが、ムラPが存在している部位と、ムラPが生じていない部分の境界にわずかな段差ができる。撮影部16として3Dスキャナを用いることによって、
図14の充填密度テスト(S14b)と同様に、判定の精度が上がる。
【0212】
図15の粒度分布テスト(S14c)では、撮影部16として3Dスキャナを用いることによるエッジ検出を鮮明に可能という利点を生かすことで、粒子50A、50Bの大きさをより正確に測定できるので、粒度分布の推定もより正確になる。
【0213】
よって、流動性テスト(S14a)や粒度分布テスト(S14c)においても、撮影部16として3Dスキャナを用いた場合には、テスト結果OK/NGとなる基準を正確に決めることができる。
【0214】
なお、撮影部16として3Dスキャナを用いる場合でも、
図11の混合比調整制御のフローチャートでは、ステップS14の各テスト以外の処理は、撮影部16としてデジタルカメラ、ビデオカメラ、CCDを用いる場合と同じでよい。
【0215】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0216】
上記実施形態では、単一の立体造形装置1を例示して説明したが、複数の立体造形装置1を具備する立体造形システムでもよい。立体造形システムでは、複数の立体造形装置1が相互に通信可能に接続され、複数の立体造形装置1が連動して動作を行うことができる。
【0217】
また、粉混合部2、造形部3、乾燥部4、粉除去部5、焼結部6、回収部7を含む立体造形装置に、造形制御部81、造形条件記録部82、状態推定部83、及び混合比調整部84を有する制御装置を接続しても良いし、制御装置を立体造形装置に含ませてもよい。
【0218】
<国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献>
本発明の各実施形態は、回収粉を利用して立体造形物を造形できるので、SDGsの目標12、13に貢献できる。
また粉末に含まれる金属としてアルミニウム、鉄、銅等が含まれる場合、リサイクルにも貢献できる。
【0219】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 金属の粉末を含む造形物を造形する造形部と、
前記粉末の少なくとも一部を回収粉として回収する回収部と、
少なくとも前記回収粉を含む混合粉を生成する粉混合部と、
少なくとも前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、新しい前記粉末と前記回収粉の混合比を制御する制御部と、
を備える立体造形装置。
<2> 前記造形部は、
前記粉末に対し造形液を付与する付与部を含む前記<1>に記載の立体造形装置。
<3> 前記回収部は、
少なくとも前記造形部で使用された前記粉末の一部または、粉除去部で除去された粉末を回収する前記<1>または<2>に記載の立体造形装置。
<4> 前記粉混合部は、
前記造形部で未使用の新粉と、前記回収粉とを混合する前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の立体造形装置。
<5> 前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報は、
前記粉末の流動性、充填密度、粒度分布を含む前記<1>~<4>のいずれか一項に記載の立体造形装置。
<6> 前記制御部は、
更に前記造形部の造形条件に関する情報に基づき、前記混合比を制御する前記<1>~<5>のいずれか一項に記載の立体造形装置。
<7> 前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報を推定する状態推定部を備え、
前記制御部は、前記状態推定部により推定された前記情報に基づき前記混合比を制御する、
前記<1>~<6>のいずれか一項に記載の立体造形装置。
<8> 前記造形部の前記粉末の表面を撮影する撮影部を備え、
前記撮影部により撮影された画像に基づいて、前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報を判断する、
前記<1>~<7>のいずれか一項に記載の立体造形装置。
<9> 前記粉混合部は、前記混合粉を撹拌するモータを有し、
前記制御部は、前記モータの駆動力に基づいて、前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報を判断する、
前記<1>~<8>のいずれか一項に記載の立体造形装置。
<10> 前記立体造形装置は、精度、コスト、速度を含む動作を選択でき、
前記制御部は、選択された前記動作に応じて、前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報を判断する、
前記<1>~<9>のいずれか一項に記載の立体造形装置。
<11> 粉末を含む層を形成する形成部と、
前記層に対し造形液を付与する付与部と、
前記粉末の少なくとも一部を回収粉として回収する回収部と、
少なくとも前記回収粉を含む混合粉を生成する粉混合部と、
前記形成部の造形条件に関する情報に基づき新しい前記粉末と前記回収粉の混合比を制御する制御部と、
を備える立体造形装置。
<12> 前記粉末は、金属を含む前記<11>に記載の立体造形装置。
<13> 前記形成部は、前記粉末の表面に沿って回転しながら走査されることによって、前記表面を平坦化し、粉末層を形成する平坦部を含み、
前記造形条件は、前記造形物の体積、前記平坦部の走査速度、前記平坦部の回転速度、及び前記粉末層の積層厚さのいずれかを含む、
前記<11>または<12>に記載の立体造形装置。
<14> 制御部は、
更に少なくとも前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、混合粉の混合比を制御する前記<11>~<13>のいずれか一項に記載の立体造形装置。
<15> 金属の粉末を含む造形物を造形する造形ステップと、
前記粉末の少なくとも一部を回収粉として回収する回収ステップと、
少なくとも前記回収粉を含む混合粉を生成する粉混合ステップと、
少なくとも前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、新しい前記粉末と前記回収粉の混合比を制御する混合比調整ステップと、
を含む立体造形方法。
<16> 前記造形物を焼結する焼結部を含む、
前記<1>~<14>のいずれか一項に記載の立体造形装置。
<17> 金属の粉末を含む造形物を造形する造形部と、
前記粉末の少なくとも一部を回収粉として回収する回収部と、
少なくとも前記回収粉を含む混合粉を生成する粉混合部と、を備える立体造形装置の動作を制御する制御装置であって、
少なくとも前記粉末、前記回収粉、前記混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、新しい前記粉末と前記回収粉の混合比を制御する制御装置。
<18> 金属の粉末を含む造形物を造形する造形装置で用いられた粉末の一部を回収粉として回収する回収装置であって、
少なくとも前記粉末、前記回収粉、少なくとも前記回収粉を含んで生成される混合粉の1つ以上の状態に関する情報に基づき、新しい前記粉末と前記回収粉の混合比を制御する制御部を備える、
回収装置。
【符号の説明】
【0220】
1 立体造形装置
2 粉混合部
22 モータ
3 造形部
31 平坦部
6 焼結部
7 回収部
8 制御部(制御装置)
82 造形条件記録部(記録部)
83 状態推定部
16 撮影部
50 粉末(混合粉)
51 粉末層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0221】