(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013279
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】視聴予測装置
(51)【国際特許分類】
H04N 21/258 20110101AFI20240125BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240125BHJP
【FI】
H04N21/258
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115232
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】金子 豊
(72)【発明者】
【氏名】上村 真利奈
【テーマコード(参考)】
5C164
5L049
【Fターム(参考)】
5C164SC11P
5C164SC31S
5C164YA08
5C164YA10
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】対象ユーザの現在までの視聴傾向から長いスパンでの対象ユーザの視聴傾向を予測することを可能とする視聴予測装置を提供すること。
【解決手段】
放送又は配信されるコンテンツを視聴する視聴ユーザの将来の視聴傾向を予測する視聴予測装置が、個々の視聴ユーザの視聴傾向を示す属性データから前記個々の視聴ユーザのスコア値を算出するスコア計算部と、対象ユーザのスコア値に類似するスコア値を持つ所定数の視聴ユーザを抽出するマッチング部と、前記マッチング部が抽出した前記所定数の視聴ユーザの視聴履歴をつなぎ合わせて1つの時系列の擬似視聴履歴を生成する擬似視聴履歴生成部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送又は配信されるコンテンツを視聴する視聴ユーザの将来の視聴傾向を予測する視聴予測装置であって、
個々の視聴ユーザの視聴傾向を示す属性データから前記個々の視聴ユーザのスコア値を算出するスコア計算部と、
対象ユーザのスコア値に類似するスコア値を持つ所定数の視聴ユーザを抽出するマッチング部と、
前記マッチング部が抽出した前記所定数の視聴ユーザの視聴履歴をつなぎ合わせて1つの時系列の擬似視聴履歴を生成する擬似視聴履歴生成部と、
を備える視聴予測装置。
【請求項2】
複数の視聴ユーザの視聴情報を収集し、前記視聴履歴として蓄積する視聴履歴取得部と、
複数の視聴ユーザそれぞれの前記視聴履歴とユーザ属性から前記属性データを生成する属性データ生成部と、
をさらに備え、
前記視聴情報を収集しながら前記視聴履歴を更新するとともに視聴ユーザの将来の視聴傾向を予測する請求項1に記載の視聴予測装置。
【請求項3】
複数の視聴履歴をつなぎ合わせて生成された前記擬似視聴履歴から予測される将来の視聴時間を表示する擬似視聴履歴可視化部をさらに備え、
前記擬似視聴履歴可視化部は、前記予測される将来の視聴時間をグラフで示す請求項1又は請求項2に記載の視聴予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送又は配信されるコンテンツを視聴する視聴ユーザの将来の視聴傾向を予測する視聴予測装置に関する。具体的には、視聴予測装置において、蓄積された視聴履歴とユーザ属性から生成した属性データから、対象とする視聴ユーザの属性データに近い属性データを持つ視聴ユーザを見つけ、当該視聴ユーザの視聴履歴をつなげて一つの時系列の擬似的な視聴履歴データを作成することによって、対象とする視聴ユーザの将来の視聴時間や視聴時間帯、視聴番組のジャンルなどの視聴傾向を予測し、示すようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザの視聴意欲や利便性の向上や、ユーザが知らなかったテレビ番組などのコンテンツの発見を促すため、コンテンツ提供者は多くのコンテンツの中からユーザが興味を持つであろうと思われるコンテンツを提示するコンテンツ推薦システムを用いている。多くのコンテンツの中から対象ユーザに推薦すべきコンテンツを抽出する方法(フィルタリング手法)として、非特許文献1には、コンテンツ(内容)に基づくフィルタリング手法と、協調フィルタリング手法が開示されている。
【0003】
内容に基づくフィルタリング(content-based filtering)は、対象ユーザが過去に視聴したコンテンツ(又は対象ユーザが高評価を付けたコンテンツ)に類似したコンテンツを推薦する手法である。コンテンツの類似性を調べる方法としては、コンテンツに関連する出演者や制作者、ジャンルなどのコンテンツの属性データを文書とみなし、TF-IDF(Term Frequency-Inverse Document Frequency)などからそれぞれのコンテンツの特徴ベクトルを求め、特徴ベクトル間の距離を求める方法などがある。
【0004】
協調フィルタリング(collaborative filtering)は、対象ユーザと趣味嗜好が似ている他のユーザ(例えば、対象ユーザが過去に視聴したコンテンツと同じコンテンツを視聴した他のユーザ)を抽出し、そのユーザが視聴したコンテンツの中から対象ユーザが視聴していないコンテンツを推薦する手法である。協調フィルタリングは、対象ユーザと似た視聴傾向の他者の視聴履歴を利用することで、対象ユーザが知らなかったコンテンツを推薦できる特徴がある。そのため、セレンディピティ(予想外のものを発見すること。例えば、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値のあるものを偶然見つけること。)を与えるコンテンツ推薦システムに利用することができる。しかし、実際には、対象ユーザが、将来的にどのコンテンツを視聴するかを予測することはできない。
【0005】
対象ユーザが将来視聴するコンテンツを予測する手法として、特許文献1~特許文献3に開示された手法がある。
特許文献1には、購買履歴の購買間隔と購買状態から求めた購入後上昇確率を推定し、それが最大となるようにリコメンドすることで、短期的な収益増加でなく長期的な収益増加を見越した、顧客生涯価値(LTV:Lifetime Value of Customer)を高めるリコメンド手法が開示されている。
特許文献2には、複数のユーザの関心事から生成した関心事グラフから対象者の次の関心事を予測し推薦に用いる手法が開示されている。
特許文献3には、ターゲットユーザと嗜好が似ている革新者グループが利用したオブジェクトの中で、利用者数が多いほど小さな値とする人気度、どのくらい先行して利用したかを示す先行度、行動してからの経過時間により減衰する重要度を用いることで、ユーザが気づかない目新しいコンテンツを推薦する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】神嶌敏弘:「推薦システム-情報過多時代をのりきる」、情報の科学と技術、56巻10号、pp.452~457、2006
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4847919号公報(発明の名称:リコメンド装置、リコメンド方法、リコメンドプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体)
【0008】
【特許文献2】特許第5358024号公報(発明の名称:通信装置のユーザのプロファイルに導入される潜在的な将来の関心事を決定するための装置)
【0009】
【特許文献3】特許第5481295号公報(発明の名称:オブジェクト推薦装置、オブジェクト推薦方法、オブジェクト推薦プログラムおよびオブジェクト推薦システム)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
推薦システムは対象ユーザが将来どのようなコンテンツを視聴するかを予測するシステムと見なすことができる。コンテンツ提供者からすると、将来的に利用者がどのようなコンテンツに興味を持つかを知ることができると、今後のコンテンツの提供やコンテンツの制作等の参考になる。
【0011】
しかし、非特許文献1の内容に基づくフィルタリングは、対象者が過去に視聴したコンテンツと傾向が似たコンテンツを推薦する手法であり、現在、対象者が好んで視聴するコンテンツに類似するものを予測することはできるが、現在はあまり興味がないが、将来的に興味をもつような傾向が異なるコンテンツを予測することはできない。
また、同じく協調フィルタリングは、対象者と趣味嗜好が似た他の利用者の視聴コンテンツを利用することで、セレンディピティのあるコンテンツを推薦できる可能性はあるものの、推薦したコンテンツの中から実際にどのコンテンツに興味を持つかは、対象者がコンテンツを選択するまで分からない。
【0012】
さらに、特許文献1~特許文献3の手法では、近い将来の視聴コンテンツをある程度予測できるとしても、5年先、10年先といった長いスパンでの対象ユーザの視聴傾向を予測することまではできない。特に、ジャンル別の視聴時間などの長期的にマクロな予測をすることはできない。
【0013】
そこで、本発明は、対象ユーザの現在までの視聴傾向から、5年先、10年先といった長いスパンでの対象ユーザの視聴傾向を予測することを可能とする視聴予測装置を提供することを目的とする。
なお、ここでいう視聴傾向とは、1日や1カ月単位の視聴時間や、時間帯別の視聴時間、視聴するコンテンツのジャンルなどを含む。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る視聴予測装置は、個々の視聴ユーザの視聴傾向を示す属性データから前記個々の視聴ユーザのスコア値を算出するスコア計算部と、対象ユーザのスコア値に類似するスコア値を持つ所定数の視聴ユーザを抽出するマッチング部と、前記マッチング部が抽出した前記所定数の視聴ユーザの視聴履歴をつなぎ合わせて1つの時系列の擬似視聴履歴を生成する擬似視聴履歴生成部と、を備える。
【0015】
前記視聴予測装置が、複数の視聴ユーザの視聴情報を収集し、前記視聴履歴として蓄積する視聴履歴取得部と、複数の視聴ユーザそれぞれの前記視聴履歴とユーザ属性から前記属性データを生成する属性データ生成部と、をさらに備え、前記視聴情報を収集しながら前記視聴履歴を更新するとともに視聴ユーザの将来の視聴傾向を予測するようにしてもよい。
【0016】
視聴予測装置が、複数の視聴履歴をつなぎ合わせて生成された前記擬似視聴履歴から予測される将来の視聴時間を表示する擬似視聴履歴可視化部をさらに備え、前記擬似視聴履歴可視化部は、前記予測される将来の視聴時間をグラフで示すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対象とする視聴ユーザの将来の視聴傾向の予測値として、属性が似ている他の視聴ユーザの視聴履歴を用いた擬似視聴履歴を作成することが可能となる。そして、この擬似視聴履歴を用いることで、将来の視聴時間や時間帯別の視聴時間、将来的にどのようなジャンルを好んで視聴するようになるかなどを予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による視聴予測装置の実施形態の一例を示すブロック図である。
【
図5】擬似視聴履歴生成部3の動作フローを示す図である。
【
図6】マッチング部4の動作フローを示す図である。
【
図8】擬似視聴履歴可視化部5の視聴予測の出力例を示す図である。
【
図9】擬似視聴履歴可視化部5のジャンル別の視聴予測の出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施形態の一例について説明する。
なお、本実施形態の一例における「視聴」はテレビの放送番組の視聴を例に説明するが、これに限定されるものではなく、オンデマンドサービスなどの配信サービスの動画や音楽などのコンテンツの視聴や、各視聴ユーザが所持する録画機などで録画されたコンテンツの視聴であってもよい。
【0020】
図1は、本発明による視聴予測装置の実施形態の一例を示すブロック図である。
視聴予測装置100は、視聴履歴取得部1と、スコア計算部2と、擬似視聴履歴生成部3と、マッチング部4と、擬似視聴履歴可視化部5とを備える。また視聴予測装置100は、さらに、番組情報Aを蓄積する番組情報データベース6と、視聴履歴Bを蓄積する視聴履歴データベース7と、ユーザ属性Cを蓄積するユーザ属性データベース8と、スコアデータDを蓄積するスコアデータデータベース9とを備える。
【0021】
視聴予測装置100は、日常的な個々の視聴ユーザの視聴情報Vを収集する。本実施形態の一例では、視聴予測装置100がn人の視聴ユーザの視聴情報V(V0,V1,・・・,Vn-1)を収集し、個々の視聴ユーザは視聴ユーザ識別子ID(ID0,ID1,・・・,IDn-1)で管理されている。
そして、視聴予測装置100は、以下に詳述するように、指定された対象ユーザIに対して擬似視聴履歴を生成し、生成した擬似視聴履歴に基づいて視聴予測データEを出力する。
【0022】
(視聴履歴取得部1の説明)
視聴履歴取得部1は、個々の視聴ユーザの視聴情報V0~Vn-1を収集し、視聴履歴Bとして視聴履歴データベース7に蓄積する。
【0023】
(視聴情報Vの説明)
本実施形態の一例では、視聴情報V(V0~Vn-1)は、視聴日時情報と、放送チャンネル情報とから構成される。視聴情報Vの視聴中の放送チャンネル情報の収集方法は、本発明では特に限定されるものではないので詳しい説明は省略するが、例えば、テレビ用のリモコンから情報を読み取る方法や、専用のリモコンを用いる方法、テレビから選局情報を取得する方法、テレビの映像や音声データから、視聴中の放送チャンネルを認識する方法などを用いることができる。
【0024】
(番組情報Aの説明)
本実施形態の一例では、番組情報Aは、過去に放送された放送番組の電子番組表(EPG)データである。EPG情報には、放送日時、放送チャンネル、番組タイトル、番組ジャンルなどが保管されているが、番組情報Aとしては、これらに限定されるものではなく、例えば、テレビ番組の映像や音声から、テレビ番組を特定するための映像や音声の特徴量データなどを一緒に保管するようにしてもよい。
【0025】
(視聴履歴Bの説明)
本実施形態の一例では、視聴履歴Bは、視聴ユーザ識別子ID、視聴日時、放送チャンネル、番組タイトル、番組ジャンル情報を構成データとする。構成データの視聴日時の粒度は特に限定されるものではないが、本実施形態の一例では、1分毎のデータとする。すなわち、視聴履歴Bを蓄積する視聴履歴データベース7には、n人の視聴ユーザの1分毎に視聴した、日時、放送チャンネル、番組タイトル、番組ジャンルが蓄積されている。
視聴履歴取得部1は、視聴ユーザの視聴日時と放送チャンネルから番組情報Aを検索して、番組タイトルと番組ジャンルを取得し、視聴履歴Bを作成する。
【0026】
(ユーザ属性Cの説明)
ユーザ属性Cは、視聴ユーザの属性情報である。
図2に本実施形態の一例におけるユーザ属性Cの例を示す。本実施形態の一例では、それぞれ視聴ユーザ識別子IDで管理される各視聴ユーザの調査対象年毎に、性別、年齢、結婚の有無、家族人数、家族構成、好みの番組ジャンルがユーザ属性Cとして保管されている。なお、本発明のユーザ属性Cはこれらに限定されるものではなく、例えば、住所、家族の年齢、職業、世帯年収、1カ月の小遣いの額、最終学歴など、さまざまなユーザ情報が含まれていてもよい。
【0027】
(スコア計算部2の説明)
スコア計算部2は、視聴履歴Bとユーザ属性Cから、全視聴ユーザの1年毎の視聴傾向を示すスコア値を算出する。本実施形態の一例では1年毎の処理で説明するが、本発明は特にこの期間に限定されるものではなく、もっと短い6か月や、もっと長い2年などを処理単位期間としてもよい。
【0028】
スコア計算部2は、視聴履歴B及びユーザ属性Cから、各視聴ユーザの1年毎に、
図3に示すスコア算出のための属性データを作成する。この属性データは、各視聴ユーザの調査対象年毎に、性別(No.3)、年齢(No.4)、結婚の有無(No.5)、家族人数(No.6)、家族構成(No.7)、好みの番組ジャンル(No.8)、1日の平均視聴時間(No.9)、平日の1日平均視聴時間(No.10)、土日祝の1日平均視聴時間(No.11)、ジャンル別の1日平均視聴時間(No.12)、1時間ごとの時間帯別の1日平均視聴時間(No.13)を含んでいる。
図3の性別(No.3)~好みのジャンル(No.8)は、ユーザ属性Cから作成でき、No.9~No.13の各種の平均視聴時間は、視聴履歴Bから作成できる。
【0029】
次に、スコア計算部2は、
図3で示した属性データから、各視聴ユーザの1年毎のスコア値を算出する。本実施形態の一例では、スコア値として、主成分分析による因子得点を要素とするベクトルを用いる。
No.3~No.13の各属性データを表現できるパラメータ数は
図3に示したとおりであり、本実施形態の一例では、
図3に示すパラメータ数の合計である64パラメータで属性データを表現する。すなわち、64次元のパラメータにより、視聴履歴B及びユーザ属性Cにより算出した全視聴ユーザの年間の属性データを用いて主成分分析を行う。そして、各視聴ユーザの属性データの主成分得点(各視聴ユーザの属性データのスコア値)を要素とした64次元ベクトルを、調査対象の各年毎に算出して、スコアデータDを生成する。
【0030】
なお、スコア値の計算方法はこれに限定されるものではなく、例えば、好みの番組ジャンル(No.8)の各ジャンルを他の属性データ(No.8を除くNo.3~No.13)で一般化線形回帰モデルであるロジスティック回帰分析により回帰式を導き、スコアベクトルとすることでもよい。また、ロジスティック回帰分析の代わりにニューラルネットワークを用いてもよい。
【0031】
(スコアデータDの説明)
図4は本実施形態の一例でスコア計算部2が生成するスコアデータDを示している。
図4のスコアデータDの各行は調査対象年を示し、各列はそれぞれ視聴ユーザ識別子ID(ID
0,ID
1,・・・,ID
n-1)で管理される視聴ユーザを示している。表内のデータは、調査対象時の視聴ユーザの年齢とスコア値を示している。例えば、2013年の調査時にはID
0の視聴ユーザは34歳であり、スコア計算部2が算出したスコア値が0.3であることを示している。また、2013年にはID
1、ID
2、ID
3の視聴ユーザには視聴履歴がないことを示している。なお、本実施形態の一例では、スコア計算部2が出力するスコアは64次元のベクトルであるが、
図3では説明のため1次元のスコア値として示している。同様に、例えば、2018年の調査では、ID
0の視聴ユーザは39歳でありスコア値は0.2、ID
1の視聴ユーザは33歳でスコア値は0.6、ID
2の視聴ユーザの視聴履歴はなし、ID
3の視聴ユーザは38歳でスコア値は0.4であることを示している。
【0032】
(擬似視聴履歴生成部3の説明)
擬似視聴履歴生成部3は、指定された対象ユーザIの将来の視聴傾向の予測である擬似視聴履歴を、スコアデータDから作成する。
【0033】
(擬似視聴履歴の説明)
図7は本実施形態の一例での擬似視聴履歴を示した例である。本実施形態の一例における擬似視聴履歴は、対象ユーザIの属性データと類似する他の視聴ユーザの視聴履歴を接続した視聴履歴である。
図7は対象ユーザID
2の擬似視聴履歴の例を示している。この例では、現在は2022年であり、ID
2の視聴ユーザは33歳である。視聴ユーザ識別子ID
2には2020~2022年の視聴履歴があり、34歳以降は他の視聴ユーザの視聴履歴をつなぎ合わせている。すなわち、34~39歳はID
0の視聴ユーザ、40~42歳はID
3の視聴ユーザの視聴履歴をつなぎ合わせている。このように、本発明では属性データが近い他の視聴ユーザの視聴履歴を用いることで、将来の視聴傾向の予測値とする。
【0034】
図5は擬似視聴履歴生成部3の動作フローを示している。擬似視聴履歴生成部3は、対象ユーザIに対して、予め決められた年齢Yまでの擬似視聴履歴をM個生成する。
擬似視聴履歴生成部3は、指定された対象ユーザIの視聴ユーザ識別子IDのスコアデータDから、対象ユーザIの最大の年齢を検索し、その年齢+1の年齢を、次の接続先の視聴ユーザの属性データの条件として設定する(ステップS3-1)。また、性別、結婚の有無、家族人数、家族構成、好みの番組ジャンルなどを次の接続先の視聴ユーザ(接続先相手)の属性データの条件として設定することもできる。
次に、擬似視聴履歴生成部3は、マッチング部4を使って、設定した条件にマッチする接続先の視聴ユーザを検索し選択する(ステップS3-2)。
【0035】
(マッチング部4の説明)
図6はマッチング部4の動作フローを示している。マッチング部4は、指定された接続先相手の属性データの条件にマッチする視聴ユーザ候補の中から、対象ユーザのスコア値に近い、上位K個の接続先の視聴ユーザを選択する。
【0036】
(マッチング手段4の実施例1)
マッチング手段4の実施例1では、スコアベクトル間の距離を導入し、下記評価関数f(id,year)を最小化するidを求める。
【0037】
【0038】
ベクトルgの要素は、主成分分析の場合は因子得点を用い、ロジスティック回帰分析の場合は適当な属性(例えば、好みのジャンルのアンケート結果など)を目的変数にして求めた回帰係数を用いる。また、ベクトルgの要素数は、主成分分析の場合は64であり、ロジスティック回帰分析の場合は目的変数を何にするかによって変わり、好みのジャンルを目的変数とした場合はジャンル数の12となる。
【0039】
マッチング手段4の実施例1では、評価関数f(id,year)を最も小さくするようなK個のid(ID番号)に対応する視聴ユーザを接続先相手として選択する。
【0040】
(マッチング手段4の実施例2)
マッチング手段4の実施例2では属性のうち性別・年齢が同じデータを第一次候補とし、第一次候補の中から性別・年齢以外の属性データについて評価関数を適用して最終候補を選択するという性別・年齢を重視した条件付きで実施する。
評価関数において性別・年齢の属性スコア(a3,id,year,a4,id,year)で候補を選択した後、性別・年齢以外の属性スコアのみで評価関数を実行する(g(id,year)の次元を減らす)ことで接続先相手を選択する。
以下、実施例2を簡略化して年齢のみで第一次候補を選択する場合を例にとり、接続相手の選択及び擬似視聴履歴の生成の仕方を説明する。
【0041】
マッチング部4は始めにスコアデータDの中から、接続先相手の属性データの条件である年齢(年齢条件)の視聴履歴がある視聴ユーザを選択する(ステップS4-1)。例えば、
図4のスコアデータDで、対象ユーザIがID
2の場合、接続先相手の年齢条件が34歳になるので、34歳の視聴履歴が存在するID
0とID
1が接続先の視聴ユーザ候補として選択される。さらに、年齢条件以外の接続先相手の条件が存在する場合には、ID
0及びID
1のユーザ属性から当該条件に合う視聴ユーザを絞り込む。
【0042】
次に、マッチング部4は、S4-1で抽出された候補の視聴ユーザの中から、スコアデータDを使って、対象ユーザIのスコア値に近い上位K個の候補を選択する(ステップS4-2)。例えば、
図4のスコアデータDの場合、対象ユーザID
2の33歳のスコア値0.2に近い視聴ユーザとして、1位がID
0(34歳/0.3)、2位がID
1(34歳/0.5)となる。
【0043】
本実施形態の一例では、スコア値は64次元のベクトルであるため、スコア値の近さをスコアベクトル間のユークリッド距離により求める。なお、スコアベクトル間の距離の算出方法としては、ユークリッド距離に限定されるものではなく、コサイン距離(コサイン類似度)やマハラノビス距離など、異なる距離関数を用いることもできる。
【0044】
(擬似視聴履歴生成部3の説明(続き))
擬似視聴履歴生成部3は、マッチング部4が選択した、スコアが近い順のK個の視聴ユーザの中から接続先相手を1つ選択する(ステップS3-3)。接続先相手の選択方法としては、スコア値が最も高い視聴ユーザとする方法、K個の中からランダムに選択する方法、すでに使われている視聴ユーザを除いて選択する方法、スコア値で重みづけしてランダムに選択する方法などがあるが特に限定されるものではない。本実施形態の一例では、複数の擬似視聴履歴を作成する場合に、同じ視聴ユーザを利用することを避けるため、擬似視聴履歴生成部3の一連の処理の中でまだ使われていない視聴ユーザの中からスコア値が最大の視聴ユーザを選択する方法を用いる。結果として、
図4のスコアデータDの例ではID
2の視聴ユーザの接続先相手として、34歳のスコア値が0.2に近いID
0の視聴ユーザ(スコア値0.3)が選択されることになる。
【0045】
次に、擬似視聴履歴生成部3は、選択した視聴ユーザの継続する視聴履歴の最大年齢を調べ、その年齢が、作成する擬似視聴履歴の最大年齢Yに達したかどうかを判定する(ステップS3-4)。最大年齢Yに達していない場合(ステップS3-4で「No」)は、ステップS3-1に戻り、選択した視聴ユーザを対象ユーザIとして新たに設定し、次の接続先相手の選択を行う。
図4のスコアデータDの例で接続先相手としてID
0の視聴ユーザが選択された場合、ID
0の視聴ユーザの視聴履歴の最大年齢は39歳なので、次の接続先相手の年齢条件は40歳となる。
【0046】
擬似視聴履歴生成部3は、ステップS3-4で「Yes」の場合、対象ユーザIの1つの擬似視聴履歴の作成が完了したので、次の擬似視聴履歴を作成するかどうかを判定するため、作成した擬似視聴履歴の個数が予め指定した個数Mとなったかどうかを判定する(ステップS3-5)。作成した擬似視聴履歴の個数がMより小さい場合(ステップS3-5で「No」)には、ステップS3-1に戻り、改めて最初から対象ユーザIの擬似視聴履歴を作成する。ステップS3-5で「Yes」の場合には、対象ユーザIに対するM個の擬似視聴履歴の作成が完了したので、擬似視聴履歴生成部3の動作を終了する。
【0047】
以上、説明したように、擬似視聴履歴生成部3は、指定された対象ユーザIに対する擬似視聴履歴をM個出力する。
【0048】
(擬似視聴履歴可視化部5)
擬似視聴履歴可視化部5は、擬似視聴履歴生成部3から出力された、対象ユーザIの擬似視聴履歴と視聴履歴Bから、視聴時間などの視聴予測データEを作成し、出力する。
図8は、
図7の擬似視聴履歴の視聴時間(各ジャンルの視聴時間の合計)をグラフにした例を示している。同様に、
図9はジャンル別の視聴時間のグラフであり、ジャンル「アニメ」とジャンル「ニュース」の視聴時間をグラフにした例を示している。
【0049】
また、擬似視聴履歴可視化部5は、擬似視聴履歴生成部3から出力される複数の異なるM個の擬似視聴履歴を用いて、M個の平均の視聴時間や、ジャンル別の視聴時間を求めることもできる。
さらに、番組情報Aや視聴履歴Bに含まれる番組タイトルや番組概要などの情報から、出演者や地名などのキーワードを抽出することができる。これらを利用することで、擬似視聴履歴から、将来的にどのようなキーワードを受けとるかを表示することも可能である。
【0050】
本実施形態の一例によれば、対象とする視聴ユーザの将来の視聴傾向の予測値として、属性が似ている他の視聴ユーザの視聴履歴を用いた擬似視聴履歴を作成し、この擬似視聴履歴を用いることで、将来の視聴時間や時間帯別の視聴時間、将来的にどのようなジャンルを好んで視聴するようになるかなどを予測することが可能となるという優れた効果を奏する。
【0051】
上述の実施形態の一例は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変形及び変更ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態の一例に限るものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能であり、いくつかの変形例については、各部の説明のところに既に記載している。
【0052】
また、上述の実施形態の一例に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態の一例に記載されたものに限定されるものではない。
【0053】
さらに、上述した視聴予測装置100として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、視聴予測装置100の各部を実現する処理内容を記述したプログラムをコンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで視聴予測装置100を実現することができる。
【0054】
また、このようなプログラムは、コンピュータ読み取りが可能な媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取可能媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取可能媒体は、非一時的な記録媒体であってもよい。非一時的な記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 視聴履歴取得部
2 スコア計算部
3 擬似視聴履歴生成部
4 マッチング部
5 擬似視聴履歴可視化部
6 番組情報データベース
7 視聴履歴データベース
8 ユーザ属性データベース
9 スコアデータデータベース