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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132825
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】駆動伝達装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20240920BHJP
   F16H 55/17 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03G21/16 147
F16H55/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178153
(22)【出願日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2023039468
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】志賀 雄基
【テーマコード(参考)】
2H171
3J030
【Fターム(参考)】
2H171FA04
2H171GA12
2H171KA12
2H171KA22
2H171KA26
2H171KA27
2H171LA08
2H171LA11
2H171PA17
2H171PA19
3J030AC03
3J030BA01
3J030BA07
3J030BB18
3J030BC01
3J030BD02
3J030BD04
3J030CA10
(57)【要約】
【課題】回転軸部材に対する駆動伝達部材の組み付け性を向上させる。
【解決手段】駆動源から駆動力が伝達される駆動伝達部材23と、前記駆動伝達部材の挿入部23aに軸方向先端部31aが挿入された後に該挿入部に圧入される圧入部を備えた回転軸部材31と、を有する駆動伝達装置100において、前記回転軸部材には、前記圧入部を構成する軸方向に平行な圧入平面部33が設けられ、前記駆動伝達部材の前記挿入部は、圧入時に前記圧入平面部と接する内壁平面部41を備え、前記回転軸部材における前記圧入平面部よりも前記軸方向先端部に近い位置には、前記圧入平面部と平行で、該圧入平面部よりも前記回転軸部材の軸中心からの距離が小さく、かつ、前記圧入部を構成しない他の平面部32が設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から駆動力が伝達される駆動伝達部材と、
前記駆動伝達部材の挿入部に軸方向先端部が挿入された後に該挿入部に圧入される圧入部を備えた回転軸部材と、を有する駆動伝達装置において、
前記回転軸部材には、前記圧入部を構成する軸方向に平行な圧入平面部が設けられ、
前記駆動伝達部材の前記挿入部は、圧入時に前記圧入平面部と接する内壁平面部を備え、
前記回転軸部材における前記圧入平面部よりも前記軸方向先端部に近い位置には、前記圧入平面部と平行で、該圧入平面部よりも前記回転軸部材の軸中心からの距離が小さく、かつ、前記圧入部を構成しない他の平面部が設けられていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動伝達装置において、
前記駆動伝達部材の前記挿入部は、貫通孔で構成されており、かつ、該貫通孔の内部には、前記内壁平面部よりも前記回転軸部材の軸中心からの距離が小さい内壁面部分が存在しない構成を有することを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項1に記載の駆動伝達装置において、
前記圧入平面部は1つのみであることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
前記回転軸部材には、前記他の平面部と前記圧入平面部とを繋ぐ傾斜面が形成されていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項4に記載の駆動伝達装置において、
前記軸方向先端部の挿入方向最上流側に位置する前記他の平面部と前記傾斜面の角度が、前記駆動伝達部材の前記挿入部における入口側縁部の傾斜面と前記内壁平面部との角度以下であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項6】
請求項4に記載の駆動伝達装置において、
前記軸方向先端部の挿入方向最上流側に位置する前記他の平面部に対する前記傾斜面の高さが、前記駆動伝達部材の前記挿入部における入口側縁部の傾斜面の前記内壁平面部に対する高さ以下であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
前記圧入平面部の前記軸方向の長さは、前記他の平面部の前記軸方向の長さよりも長いことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
前記圧入平面部の前記軸方向の長さは、前記他の平面部の前記軸方向の長さ以下であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
前記駆動伝達部材の前記挿入部は、貫通孔で構成されており、
前記回転軸部材は、前記挿入部を貫通して圧入後に該挿入部の外部に位置する部分に、該挿入部から該回転軸部材が抜けるのを阻止する抜け止め部材が装着される溝を備え、
前記他の平面部は、前記軸方向における前記溝の位置よりも前記軸方向先端部側に位置する平面部分を含むことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
前記駆動伝達部材は、ベルトプーリであることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項11】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
前記駆動伝達部材は、ギヤであることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項12】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
前記駆動伝達部材は樹脂成形品であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項13】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
前記駆動伝達部材の前記挿入部は、貫通孔で構成されており、
前記貫通孔を前記軸方向から見たとき、前記回転軸部材の軸中心と前記回転軸部材の前記他の平面部との間の距離H1と、前記回転軸部材の軸中心と前記回転軸部材の前記圧入平面部との間の距離H2と、前記貫通孔の中心と前記内壁平面部との間の距離H3との関係は、H1≦H3<H2を満たす関係であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項14】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
前記回転軸部材は、前記駆動伝達部材の挿入部に対する前記回転軸部材の挿入位置を示す印を有することを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項15】
被駆動部材に駆動源の駆動力を伝達する駆動伝達装置を備え、記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、
前記駆動伝達装置として、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動伝達装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源から駆動力が伝達される駆動伝達部材と、前記駆動伝達部材の挿入部に軸方向先端部が挿入された後に該挿入部に圧入される圧入部を備えた回転軸部材と、を有する駆動伝達装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、回転軸部材に対し、軸方向に平行でかつお互いに平行な複数の平面部が軸方向の互いに異なる位置に形成され、駆動伝達部材の挿入部に圧入される圧入部が当該複数の平面部を含むように構成された駆動伝達装置が開示されている。この駆動伝達装置における駆動伝達部材の挿入部には、圧入時に回転軸部材の圧入部を構成する複数の平面部のそれぞれに対して接する複数の内壁平面部が設けられている。回転軸部材の圧入部は、その複数の平面部が挿入部内の複数の内壁平面部に接する状態になることで、駆動伝達部材の挿入部内に圧入され、保持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の駆動伝達装置においては、回転軸部材に対する駆動伝達部材の組み付け性について改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、駆動源から駆動力が伝達される駆動伝達部材と、前記駆動伝達部材の挿入部に軸方向先端部が挿入された後に該挿入部に圧入される圧入部を備えた回転軸部材と、を有する駆動伝達装置において、前記回転軸部材には、前記圧入部を構成する軸方向に平行な圧入平面部が設けられ、前記駆動伝達部材の前記挿入部は、圧入時に前記圧入平面部と接する内壁平面部を備え、前記回転軸部材における前記圧入平面部よりも前記軸方向先端部に近い位置には、前記圧入平面部と平行で、該圧入平面部よりも前記回転軸部材の軸中心からの距離が小さく、かつ、前記圧入部を構成しない他の平面部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、回転軸部材に対する駆動伝達部材の組み付け性を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
図2】同プリンタにおける反転搬送路の各ローラ対の駆動機構を模式的に示す斜視図。
図3】(a)は、反転搬送路における両面中間ローラ対の一方のローラ(駆動ローラ)の回転軸を軸方向から見た正面図。(b)は、同回転軸の軸方向先端部付近を拡大した側面図。
図4】(a)は、同回転軸に保持されるプーリを同回転軸の軸方向から見た正面図。(b)は、同プーリの軸方向に沿って切断した断面図。
図5】同プーリの挿入孔へ回転軸を挿入する前の状態を示す斜視図。
図6】(a)~(d)は、同プーリの挿入孔へ回転軸が挿入されてから圧入されるまでの動きを示す断面図。
図7図6(b)の状態における拡大図。
図8図6(c)の状態における拡大図。
図9図6(d)の状態における拡大図。
図10】圧入後の回転軸の溝に抜け止め部材が装着された状態を示す断面図。
図11】変形例1におけるプーリの一例を示す斜視図。
図12】変形例1における他の例のプーリの挿入孔に回転軸が圧入された状態を軸方向から見たときの正面図。
図13】同他の例のプーリの挿入孔に回転軸が圧入された状態を軸方向から見たときの斜視図。
図14】変形例2における回転軸の軸方向先端部付近を拡大した側面図。
図15】変形例2におけるプーリの挿入孔へ同回転軸を挿入する前の状態を示す斜視図。
図16】(a)~(b)は、同プーリの挿入孔へ同回転軸が挿入されてから圧入されるまでの動きを示す断面図。
図17】変形例3において、プーリの挿入孔の入口側縁部が回転軸の傾斜面に突き当たる直前の様子を示す拡大断面図。
図18】変形例4において、プーリの挿入孔の入口側縁部が回転軸の傾斜面に突き当たる直前の様子を示す拡大断面図。
図19】(a)は、プーリの入口側端面が回転軸の止め壁に当接するまでプーリが適切に押し込まれた状態を示す断面図。(b)はプーリの入口側端面が回転軸の止め壁に当接する前の途中でプーリの押し込みが止められた状態を示す断面図。
図20】変形例5の比較例に係る回転軸及びプーリを、先端側平面部及び後端側平面部が形成されている側とは反対側から見たときの平面図。
図21】変形例5における回転軸を、先端側平面部及び後端側平面部が形成されている側とは反対側から見たときの平面図。
図22】変形例5において、プーリの入口側端面が回転軸の止め壁に当接するまでプーリが適切に押し込まれた状態を、回転軸の先端側平面部及び後端側平面部が形成されている側とは反対側から見たときの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式で画像を形成する電子写真プリンタ(以下、単にプリンタという)について説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。
図1に示すプリンタは、モノクロプリンタであり、その装置本体には画像形成部2が設けられている。画像形成部2は、表面に画像を担持する像担持体としての感光体1と、感光体1の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラと、感光体1上の潜像を可視画像化する現像手段としての現像装置と、感光体1の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニングブレード等を備える。また、感光体1の周囲には表面を露光する露光手段としてのLEDヘッドアレイが配設されている。
【0010】
作像動作が開始されると、画像形成部2の感光体1が図1の反時計回りに回転駆動され、帯電ローラによって感光体1の表面が所定の極性に一様に帯電される。外部の機器から入力される画像情報に基づいて、LEDヘッドアレイから感光体1の帯電面に光が照射されて、感光体1の表面に静電潜像が形成される。このように感光体1上に形成された静電潜像に、現像装置によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0011】
また、作像動作が開始されると、転写ローラ7が回転駆動し、転写ローラ7に所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が印加されることによって、転写ローラ7と感光体1との間において転写電界が形成される。
【0012】
装置本体の下部では、給紙ローラ4が回転駆動を開始し、給紙カセット3からシートPが送り出される。送り出されたシートPは、搬送ローラ対5によって搬送され、レジストローラ対6によって搬送を一旦停止される。その後、所定のタイミングでレジストローラ対6の回転駆動が開始され、感光体1上のトナー画像が転写ローラ7との間の転写ニップに達するタイミングに合わせて、シートPが転写ニップへ搬送される。そして、転写電界によって、感光体1上のトナー画像がシートP上に転写される。また、シートPに転写しきれなかった感光体1上の残留トナーは、クリーニングブレードによって除去される。
【0013】
トナー画像が転写されたシートPは、定着装置8へと搬送され、定着装置8においてシートP上のトナー画像が当該シートPに定着される。そして、シートPは、排紙ローラ対9によって装置外に排出され、排紙トレイ上にストックされる。
【0014】
また、本実施形態のプリンタには、シートPの両面に画像形成を行うために、搬送方向を変更するための分岐爪10と、シートPを反転搬送路11へ送り出すための反転ローラ対12とが設けられている。なお、反転ローラ対12の一方のローラは排紙ローラ対9との兼用である。反転搬送路11には、両面入口ローラ対13、両面中間ローラ対14、両面出口ローラ対15が設けられている。
【0015】
シートPの両面に画像を形成する場合、シートPが定着装置8から排紙ローラ対9へ搬送されるまでの間に、分岐爪10の位置を切り替えるために分岐爪10を回動させる。これにより、一方の面に画像が形成されたシートPの搬送経路が変更され、そのシートPは排紙ローラ対9ではなく、反転ローラ対12へと送られる。
【0016】
反転ローラ対12へ送られたシートPは、シートPの後端が抜けきらないタイミングで逆方向へと搬送され、反転搬送路11へ送られる。 そして、シートPは、反転搬送路11上の両面入口ローラ対13、両面中間ローラ対14、両面出口ローラ対15によって、反転搬送路11を通り、シートPの表裏が反転した状態で再び転写ニップへと搬送される。そして、シートPの他面(裏面)にも画像が転写された後、定着装置8で定着され、排紙ローラ対9によって、装置外に排出される。
【0017】
図2は、反転搬送路11の各ローラ対13,14,15の駆動機構を模式的に示す斜視図である。
装置本体の駆動源からの駆動力は、アイドラギヤ16,17を介して、両面出口ローラ対15の一方のローラの軸端部に設けられた両面クラッチ18に伝達される。所定のタイミングで両面クラッチ18がオンになると、両面出口ローラ対15が回転駆動する。
【0018】
両面出口ローラ対15、両面中間ローラ対14、両面入口ローラ対13は、それぞれの軸端部に設けられるプーリ21,22,23,24及びこれらに張架されているタイミングベルト19,20を介して、互いに連動する構成となっている。したがって、駆動源からの駆動力により両面出口ローラ対15が回転すると、両面中間ローラ対14及び両面入口ローラ対13も連動して回転する。
【0019】
図3(a)は、両面中間ローラ対14の一方のローラ(駆動ローラ)の回転軸31を軸方向から見た正面図である。図3(b)は、この回転軸31の軸方向先端部付近を拡大した側面図である。
図4(a)は、両面中間ローラ対14の回転軸31に保持されるプーリ23を回転軸31の軸方向から見た正面図である。図4(b)は、このプーリ23の軸方向に沿って切断した断面図である。
【0020】
なお、ここでは、両面中間ローラ対14の回転軸部材である回転軸31と駆動伝達部材であるプーリ23とを組み付ける例で説明するが、両面中間ローラ対14及び両面出口ローラ対15とプーリ21,22,24とを組み付ける場合も同様に適用することができる。また、このようなローラの回転軸とプーリとの組み付けに限らず、本プリンタあるいは他の装置に備わっている回転軸部材と駆動伝達部材(プーリ以外のギヤなどの他の駆動伝達部材)との組み付けにも同様に適用することができる。
【0021】
回転軸31は、図3(b)に示すように、軸方向先端部31aから一定の範囲にわたって、2つの平面部32,33が軸方向の互いに異なる位置に配置された断面Dカット形状部を有している。これらの平面部32,33は、軸中心Cからの距離H1,H2が互いに異なるように形成されている。具体的には、軸方向先端部31aに近い方の先端側平面部32の軸中心Cからの距離H1は、軸方向先端部31aから遠い方の後端側平面部33の軸中心Cからの距離H2よりも小さいものとなっている。
【0022】
プーリ23には、断面Dカット形状部の回転軸31が挿入される挿入部としての貫通孔である挿入孔23aが設けられている。挿入孔23aの内壁面には、挿入孔23aに対する回転軸31の圧入時に回転軸31の圧入平面部である後端側平面部33と接する内壁平面部41が形成されている。この内壁平面部41とプーリ中心Fとの間の距離H3と、回転軸31の先端側平面部32と回転軸31の軸中心Cとの間の距離H1と、回転軸31の後端側平面部33と回転軸31の軸中心Cとの間の距離H2との関係は、以下の式(1)のように設定される。なお、プーリ23のプーリ中心Fは、圧入後には回転軸31の軸中心Cと一致することになる。
H1 ≦ H3 < H2 ・・・(1)
【0023】
次に、プーリ23の挿入孔23aに回転軸31の軸方向先端部31aが挿入されて回転軸31の圧入部がプーリ23の挿入孔23aに圧入されるときの動きについて説明する。
図5は、プーリ23の挿入孔23aへ回転軸31を挿入する前の状態を示す斜視図である。
図6(a)~(d)は、プーリ23の挿入孔23aへ回転軸31が挿入されてから圧入されるまでの動きを示す断面図である。
【0024】
回転軸31にプーリ23を組み付ける場合、図5及び図6(a)に示すように、回転軸31の軸方向先端部31aを図中矢印Aの向きに移動させるようにしてプーリ23の挿入孔23aに挿入する。このとき、回転軸31の先端側平面部32がプーリ23の挿入孔23a内の内壁平面部41に対して略平行となるように、回転軸31の回転位置を調整して、回転軸31の軸方向先端部31aをプーリ23の挿入孔23aに挿入する。これにより、図6(b)に示すように、回転軸31の先端側平面部32がプーリ23の挿入孔23a内の内壁平面部41との対向領域を通過する間、先端側平面部32が内壁平面部41と略平行な状態となるように、回転軸31の回転位置が規制される。
【0025】
回転軸31の先端側平面部32がプーリ23の挿入孔23a内の内壁平面部41との対向領域を通過するとき、図7に示すように、先端側平面部32と内壁平面部41との間には隙間Gが生じる。したがって、回転軸31をプーリ23の挿入孔23a内へスムーズに挿入することができる。
【0026】
そして、更に挿入が進むと、図6(c)に示すように、回転軸31の後端側平面部33がプーリ23の挿入孔23a内の内壁平面部41との対向領域へ進入する。このとき、図8に示すように、プーリ23の挿入孔23aの入口側縁部42(内壁平面部41の挿入方向Aの上流側端部)が、回転軸31の傾斜面34に突き当たる。そして、更に挿入が進むことで、プーリ23の入口側縁部42が回転軸31の傾斜面34上を摺動し、入口側縁部42が回転軸31の後端側平面部33に達する。
【0027】
本実施形態のプーリ23は、樹脂成形品であり、金属製である回転軸31よりも剛性が低い。そのため、プーリ23の入口側縁部42が回転軸31の傾斜面34上を摺動しながら後端側平面部33に達するまでの間、プーリ23は変形しながら圧入されることになる。なお、プーリ23が樹脂成形品であることで、例えば成形後に内壁平面部41の寸法(プーリ中心Fからの距離H3)を微調整することが容易であり、より組み付け性の高い部品を得ることができる。
【0028】
更に挿入(圧入)が進むと、図6(d)に示すように、プーリ23の入口側端面23bが回転軸31の止め壁35に当接する。これにより、図9に示すように、回転軸31の後端側平面部33がプーリ23の内壁平面部41と接する状態となるように圧入され、プーリ23が回転軸31に保持される。このような平面部33,41同士が接する状態で圧入されることで、回転軸31に対してその軸回りにプーリ23が回転することなく、また回転軸31に対してプーリ23が傾いたりすることなく、プーリ23は回転軸31に組み付けられる。
【0029】
本実施形態においては、図6(b)に示すように、回転軸31の先端側平面部32がプーリ23の挿入孔23a内の内壁平面部41との対向領域を通過する間、先端側平面部32が内壁平面部41と略平行な状態となるように、回転軸31の回転位置が規制される。このように回転軸31の回転位置が規制された状態のまま更に挿入されることで、後端側平面部33と内壁平面部41との間も略平行な状態に維持されながら挿入が進む。その結果、プーリ23の挿入孔23aに挿入された回転軸31を、回転軸31の後端側平面部33とプーリ23の内壁平面部41とが互いに平行な状態になるように回転させて、回転位置を調整するような作業が不要となり、回転軸31に対するプーリ23の組み付け性が良好なものとなる。
【0030】
しかも、本実施形態においては、回転軸31に備わっている2つの平面部32,33のうち、圧入部を構成する圧入平面部となるのは後端側平面部33であり、後端側平面部33よりも軸方向先端部31aに近い位置に形成される他の平面部である先端側平面部32は圧入部を構成しない。したがって、本実施形態において、プーリ23の挿入孔23aには、先端側平面部32に対応する内壁平面部が設けられていない。加えて、本実施形態では、図4(b)や図6(a)~(d)に示すように、プーリ23の挿入孔23aに回転軸31の軸方向先端部31aが挿入されてから圧入部(後端側平面部33)が挿入孔23aに圧入されるまでの間に先端側平面部32が対面する領域には、後端側平面部33に対応する内壁平面部41よりも回転軸31の軸中心C(プーリ中心F)からの距離が小さい内壁面部分が存在しない。
【0031】
このような構成によれば、プーリ23の挿入孔23aには、圧入がなされるまでの間に回転軸31の先端側平面部32が引っ掛かるような箇所が無くなるので、組み付け性を更に向上させることができる。
【0032】
しかも、本実施形態において、プーリ23の挿入孔23aは、その挿入孔23aのいずれの開口から回転軸31の軸方向先端部31aを挿入しても、上述したような構成が実現される。すなわち、プーリ23の挿入孔23aのいずれの開口から回転軸31の軸方向先端部31aを挿入しても、圧入がなされるまでの間に回転軸31の先端側平面部32が引っ掛かるような箇所が無いように構成される。そして、本実施形態のプーリ23は、対称形状であるため、プーリ23の挿入孔23aのいずれの開口から回転軸31の軸方向先端部31aを挿入しても、回転軸31にプーリ23を適正に組み付けることができる。したがって、プーリ23の向きを選ばずに適正に組み付けができるので、更に高い組み付け性が実現される。
【0033】
このようなプーリ23の向きを選ばずに適正に組み付けができる実現するには、本実施形態のように回転軸31の圧入部を構成する圧入平面部は後端側平面部33の1つだけであるのが好ましい。この構成によれば、プーリ23の向きを選ばずに適正に組み付けができる構成を容易に実現することができる。
【0034】
本実施形態では、後端側平面部33の軸方向長さW2が先端側平面部32の軸方向長さW1よりも長くなるように構成されている。これによれば、圧入平面部である後端側平面部33については、圧入によりプーリ23を保持する力が十分に発揮できる軸方向長さを確保する一方で、圧入平面部ではない先端側平面部32については、プーリ23の挿入孔23a内で回転軸31の回転を規制するのに十分な軸方向長さを確保できる範囲で、可能な限り短い軸方向長さとして軸方向の小型化を実現することができる。
【0035】
図10は、圧入後に、プーリ23が回転軸31から抜けるのを阻止するための抜け止め部材25が回転軸31の溝36に装着された状態を示す断面図である。
本実施形態において、回転軸31は、図10に示すように、プーリ23の挿入孔23aを貫通して圧入後に挿入孔23aの外部に位置する部分に、挿入孔23aから回転軸31が抜けるのを阻止する抜け止め部材25が装着される溝36を備えている。圧入後、この溝36に抜け止め部材25を装着することで、プーリ23は、抜け止め部材25と回転軸31の止め壁35とによって軸方向の移動が規制された状態で、回転軸31に保持される。
【0036】
本実施形態の先端側平面部32は、軸方向における溝36の位置よりも軸方向先端部31a側に位置する平面部分を含んでいる。このような平面部分が存在することで、回転軸31の軸方向先端部31aをプーリ23の挿入孔23aへ挿入し始めるときに、溝36のエッジ36aよりも先に先端側平面部32の当該平面部分が挿入孔23a内へ入り込む。これによれば、先端側平面部32の当該平面部分が挿入孔23a内の内壁平面部41に沿って挿入されることで、溝36のエッジ36aがプーリ23の挿入孔23aの入口縁部に引っ掛かる事態を回避することができる。その結果、より高い組み付け性を実現することができる。
【0037】
〔変形例1〕
次に、上述した実施形態の変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
図11は、本変形例1におけるプーリ23の一例を示す斜視図である。
図11の変形例1において、プーリ23の挿入孔23a内に形成される内壁平面部41には、軸方向に延びる切り欠き43が形成されている。これにより、図11の変形例1の内壁平面部41は、2つの平面部分41A,41Bに分割されている。このような構成とすることにより、回転軸31と内壁平面部41とが接触する面積を減らすことができ、挿入時や圧入時に必要とされる力を小さく抑えることができる。
【0038】
図12は、プーリ23の挿入孔23aに回転軸31が圧入された状態を軸方向から見たときの正面図である。
図13は、プーリ23の挿入孔23aに回転軸31が圧入された状態を軸方向から見たときの斜視図である。
図12及び図13は、プーリ23の挿入孔23a内に切り欠きが形成される本変形例1の他の例を示すものである。図12及び図13の変形例1は、後端側平面部33とともに回転軸31の圧入部を構成する曲面部37(後端側平面部33の軸方向位置に形成される曲面部37)と圧入時に接することになる挿入孔23aの内壁曲面部45に、軸方向に延びる切り欠き44が形成されている。これにより、図12及び図13の変形例1の内壁曲面部45は、2つの曲面部分45A,45Bに分割されている。このような構成とすることにより、回転軸31と内壁曲面部45とが接触する面積を減らすことができ、挿入時や圧入時に必要とされる力を小さく抑えることができる。
【0039】
〔変形例2〕
次に、上述した実施形態の他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
図14は、本変形例2における回転軸31の軸方向先端部付近を拡大した側面図である。
図15は、本変形例2におけるプーリ23の挿入孔23aへ回転軸31を挿入する前の状態を示す斜視図である。
図16(a)~(b)は、プーリ23の挿入孔23aへ回転軸31が挿入されてから圧入されるまでの動きを示す断面図である。
【0040】
本変形例2では、図14に示すように、回転軸31の後端側平面部33の軸方向長さW2が先端側平面部32の軸方向長さW1以下となるように、構成されている。すなわち、本変形例2は、圧入部である後端側平面部33の軸方向長さW2については、圧入によりプーリ23を保持する力が十分に発揮できる範囲内で可能な限り短くする。これによれば、プーリ23を回転軸31に圧入するときの圧入長さ(圧入量)を短くすることができる。よって、回転軸31に対するプーリ23の組み付け(圧入)にかかる時間を短縮することができる。
【0041】
また、本変形例2でも、回転軸31の先端側平面部32がプーリ23の挿入孔23a内の内壁平面部41との対向領域を通過するとき、図7に示したように、先端側平面部32と内壁平面部41との間に隙間Gが生じる。したがって、回転軸31をプーリ23の挿入孔23a内へスムーズに挿入することができる。このとき、本変形例2では、圧入部である後端側平面部33の軸方向長さW2を短くした分だけ、先端側平面部32の軸方向長さW1を長くすることができる。先端側平面部32は、上述したとおり、プーリ23の挿入孔23aに後端側平面部33を圧入する前に、回転軸31の後端側平面部33とプーリ23の内壁平面部41とが互いに略平行な状態になるように回転軸31の回転位置を調整する機能を果たす。本変形例2によれば、このような機能を果たす先端側平面部32の軸方向長さW1を長くしたことで、回転軸31の後端側平面部33とプーリ23の内壁平面部41とが圧入前に安定して略平行な状態になり、後端側平面部33と内壁平面部41との圧入をよりスムーズに行うことが可能となる。その結果、圧入時に力を掛けて入れやすくなり、組立性が向上する。
【0042】
〔変形例3〕
次に、上述した実施形態の更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例3」という。)について説明する。
図17は、本変形例3において、プーリ23の挿入孔23aの入口側縁部42(内壁平面部41の挿入方向Aの上流側端部)が回転軸31の傾斜面34に突き当たる直前の様子を示す拡大断面図である。
【0043】
本変形例3では、回転軸31に設けられている傾斜面34について、回転軸31の軸方向先端部の挿入方向最上流側に位置する先端側平面部32と傾斜面34との角度βが、プーリ23の入口側縁部42の傾斜面と内壁平面部41との角度α以下となるように、構成されている。なお、角度αは、入口側縁部42の傾斜面と内壁平面部41とが交わる点から挿入方向Aとは反対方向に延長した仮想線と、入口側縁部42の傾斜面とのなす角度とも言える。また、角度βは、先端側平面部32と傾斜面34とが交わる点から挿入方向Aとは反対方向に延長した仮想線と、傾斜面34とのなす角度とも言える。
【0044】
上述したとおり、先端側平面部32と圧入部となる後端側平面部33との間に段差があると、その段差が引っ掛かって組み付け性が阻害されるところ、傾斜面34を設けることで、段差が引っ掛かる事態を回避するものである。本変形例3のような構成であれば、プーリ23の挿入孔23aの入口側縁部42が回転軸31の傾斜面34に突き当たる箇所において、傾斜面34が入口側縁部42から受ける外力の方向と傾斜面34との角度が小さくなる。すなわち、傾斜面34が入口側縁部42から受ける外力の方向が傾斜面34に平行な方向により近いものとなる。そのため、挿入中にプーリ23の入口側縁部42が回転軸31の傾斜面34上を摺動する際の摩擦力が低下し、圧入時の負荷や引っ掛かりが低減する結果、より高い組み付け性を得ることができる。
【0045】
〔変形例4〕
次に、上述した実施形態の更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例4」という。)について説明する。
図18は、本変形例4において、プーリ23の挿入孔23aの入口側縁部42(内壁平面部41の挿入方向Aの上流側端部)が回転軸31の傾斜面34に突き当たる直前の様子を示す拡大断面図である。
【0046】
本変形例4では、回転軸31に設けられている傾斜面34について、回転軸31の軸方向先端部の挿入方向最上流側に位置する先端側平面部32に対する傾斜面34の高さH5が、プーリ23の入口側縁部42の傾斜面の内壁平面部41に対する高さH4以下となるように、構成されている。
【0047】
上述したとおり、先端側平面部32と圧入部となる後端側平面部33との間に段差があると、その段差が引っ掛かって組み付け性が阻害されるところ、傾斜面34を設けることで、段差が引っ掛かる事態を回避するものである。本変形例4のような構成であれば、プーリ23の挿入孔23aの入口側縁部42が傾斜面34に沿って圧入部である後端側平面部33に乗り上げる高さが低いため、圧入時の負荷や引っ掛かりが低減し、より高い組み付け性を得ることができる。
【0048】
〔変形例5〕
次に、上述した実施形態の更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例5」という。)について説明する。
組立作業者がプーリ23を押し込んでプーリ23の挿入孔23aに回転軸31を挿入する際、本来は、図19(a)に示すように、プーリ23の入口側端面23bが回転軸31の止め壁35に当接するまで、プーリ23を押し込む。しかしながら、図19(b)に示すように、回転軸31の後端側平面部33がプーリ23の内壁平面部41と接する状態となる前に、若しくは、回転軸31の後端側平面部33がプーリ23の内壁平面部41と接しているがプーリ23の入口側端面23bが回転軸31の止め壁35に当接していない状態で、組立作業者がプーリ23の押し込み(挿入)を止めてしまうことがある。これは、プーリ23をある程度の長さ分は挿入したのでこれ以上の押し込み(挿入)は不要だろうとか、力を入れてもプーリがそれ以上動かなくなったのでこれ以上の押し込み(挿入)は不要だろうとか、組立作業者が勝手に勘違いしてしまうことなどが原因である。
【0049】
特に、図20に示すように、先端側平面部32及び後端側平面部33が形成されている側とは反対側から回転軸31及びプーリを見ながら、組立作業者がプーリ23の挿入孔23aに回転軸31を挿入する場合には、回転軸31の止め壁35を視認できない。そのため、プーリ23の入口側端面23bが止め壁35に当接するまでプーリ23を押し込まずに(挿入せずに)、途中で押し込み(挿入)を止めてしまうおそれが高い。
【0050】
また、上述した変形例2で説明したように、非圧入部である先端側平面部32の軸方向長さW1が比較的長い構成では、プーリ23をある程度の長さ分は挿入したのでこれ以上の押し込み(挿入)は不要だろうと、組立作業者が勝手に勘違いしやすい。そのため、プーリ23の入口側端面23bが止め壁35に当接するまでプーリ23を押し込まずに(挿入せずに)、途中で押し込み(挿入)を止めてしまうおそれが高い。
【0051】
図21は、本変形例5における回転軸31を、先端側平面部32及び後端側平面部33が形成されている側とは反対側から見たときの平面図である。
本変形例5の回転軸31には、図21に示すように、回転軸31の周面上に(先端側平面部32及び後端側平面部33が形成されている側とは反対側から見える位置に)、プーリ23の挿入孔23aに対する回転軸31の挿入位置を示す印として、溝あるいはケガキ線38が形成されている。本変形例5では、例えば、この溝あるいはケガキ線38を止め壁35と同じ軸方向位置に形成される。また、印として、シールを貼付あるいは刻印により形成してもよい。
【0052】
これによれば、組立作業者は、この溝あるいはケガキ線38を視認することで、プーリ23をどこまで押し込むのかを把握することができる。その結果、組立作業者には、図22に示すように、プーリ23の入口側端面23bが少なくとも回転軸31上の溝あるいはケガキ線38の位置に達するまでプーリ23を押し込むように促すことができる。そして、組立作業者が溝あるいはケガキ線38の位置までプーリ23を押し込むと、プーリ23の入口側端面23bが回転軸31の止め壁35に当接した状態になる。したがって、本変形例5によれば、組立作業者がプーリ23の押し込みを途中で止めてしまうことを抑制することが可能である。
【0053】
以上に説明したものは一例であり、以下の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、駆動源から駆動力が伝達される駆動伝達部材(例えばプーリ23)と、前記駆動伝達部材の挿入部(例えば挿入孔23a)に軸方向先端部31aが挿入された後に該挿入部に圧入される圧入部を備えた回転軸部材(例えば回転軸31)と、を有する駆動伝達装置100において、前記回転軸部材には、前記圧入部を構成する軸方向に平行な圧入平面部(例えば後端側平面部33)が設けられ、前記駆動伝達部材の前記挿入部は、圧入時に前記圧入平面部と接する内壁平面部41を備え、前記回転軸部材における前記圧入平面部よりも前記軸方向先端部に近い位置には、前記圧入平面部と平行で、該圧入平面部よりも前記回転軸部材の軸中心Cからの距離が小さく、かつ、前記圧入部を構成しない他の平面部(例えば先端側平面部32)が設けられていることを特徴とするものである。
従来の駆動伝達装置において、回転軸部材の圧入部を構成する平面部が2つあり、回転軸部材の軸方向先端部に近い位置に形成される先端側平面部が、回転軸部材の軸方向先端部から遠い位置に形成される後端側平面部よりも、回転軸部材の軸中心からの距離が小さいものとなっている。これによれば、回転軸部材を駆動伝達部材の挿入部へ挿入するにあたり、回転軸部材の後端側平面部に先立って先端側平面部が圧入時に後端側平面部に接する後端側内壁平面部との対向領域に入り込むことになる。このように入り込むと、回転軸部材の先端側平面部が駆動伝達部材の挿入部内の後端側内壁平面部と略平行な状態となり、回転軸部材の回転位置が規制される。このように回転軸部材の回転位置が規制された状態のまま更に挿入されることで、後端側平面部が後端側内壁平面部と略平行な状態のまま後端側内壁平面部に到達し、圧入される。これによれば、駆動伝達部材の挿入部に後端側平面部を入れ込む前に、先端側平面部によって回転軸部材の後端側平面部と駆動伝達部材の後端側内壁平面部とが互いに略平行な状態になるように回転軸部材の回転位置を調整され、後端側平面部と後端側内壁平面部との圧入をスムーズに行うことができ、回転軸部材に対する駆動伝達部材の組み付け性が良好なものとなる。
ところが、従来の駆動伝達装置では、このような回転軸部材の回転位置を規制する機能を発揮する先端側平面部も圧入部を構成しているため、駆動伝達部材の挿入部には、後端側内壁平面部よりも挿入方向下流側(奥側)に、後端側内壁平面部よりも回転軸部材の軸中心からの距離が小さい先端側内壁平面部が存在する。そのため、後端側内壁平面部と先端側内壁平面部との間に段差が存在する。このような段差が存在するとし、先端側平面部が後端側内壁平面部の対向領域を通過するときの隙間により回転軸部材が軸回りで僅かに回転するだけで、この段差に先端側平面部が引っ掛かってしまい、組み付け性を悪化させる。
本態様において、回転軸部材には、圧入部を構成する圧入平面部よりも軸方向先端部に近い位置に、圧入平面部と平行で、かつ、圧入平面部よりも回転軸部材の軸中心からの距離が小さい他の平面部が設けられている。本態様における当該他の平面部も、駆動伝達部材の挿入部内の前記圧入平面部に対応する内壁平面部との対向領域を通過する際、当該他の平面部が当該内壁平面部と略平行な状態となるように、回転軸部材の回転位置を規制する機能を発揮することができる。したがって、本態様においても、従来と同様、圧入平面部とこれに対応する内壁平面部との圧入をスムーズに行うことができ、回転軸部材に対する駆動伝達部材の組み付け性が良好なものとなる。
しかも、本態様によれば、回動軸部材の前記他の平面部が圧入部を構成していないため、駆動伝達部材の挿入部には、当該他の平面部に対応する内壁平面部を設ける必要がない。そのため、当該他の平面部が引っ掛かっていた従来の段差を排除することができる。したがって、本態様によれば、駆動伝達部材の挿入部には、当該他の平面部が引っ掛かるような箇所が少なくなり又は無くなるので、従来よりも組み付け性を向上させることができる。
【0054】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記駆動伝達部材の前記挿入部は、貫通孔で構成されており、かつ、該貫通孔の内部には、前記内壁平面部よりも前記回転軸部材の軸中心からの距離が小さい内壁面部分が存在しない構成を有することを特徴とするものである。
これによれば、駆動伝達部材の挿入部のいずれの開口から回転軸部材の軸方向先端部を挿入しても、駆動伝達部材の挿入部に軸方向先端部が挿入されてから圧入部が挿入部に圧入されるまでの間に前記他の平面部が対面する領域には、圧入平面部に対応する内壁平面部よりも回転軸部材の軸中心からの距離が小さい内壁面部分が存在しない構成とすることが可能となる。したがって、駆動伝達部材の挿入部のいずれの開口から回転軸部材の軸方向先端部を挿入する場合でも、駆動伝達部材の挿入部には、圧入がなされるまでの間に回転軸部材の当該他の平面部が引っ掛かるような箇所が少なくなり又は無くなり、従来よりも組み付け性を向上させることができる。したがって、駆動伝達部材の向きを選ばずに適正に組み付けができ、より高い組み付け性を実現することができる。
【0055】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記圧入平面部は1つのみであることを特徴とするものである。
これによれば、駆動伝達部材の向きを選ばずに適正に組み付けができる構成を容易に実現することができる。
【0056】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記回転軸部材には、前記他の平面部(例えば先端側平面部32)と前記圧入平面部とを繋ぐ傾斜面34が形成されていることを特徴とするものである。
これによれば、前記他の平面部と前記圧入平面部との間に段差をなくすことができる。これにより、この段差が引っ掛かって組み付け性が阻害される事態を回避でき、より高い組み付け性を得ることができる。
【0057】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記軸方向先端部の挿入方向最上流側に位置する前記他の平面部と前記傾斜面の角度βが、前記駆動伝達部材の前記挿入部における入口側縁部の傾斜面と前記内壁平面部との角度α以下であることを特徴とするものである。
本態様によれば、挿入中に駆動伝達部材の挿入部の入口側縁部が回転軸部材の傾斜面上を摺動する際の摩擦力を小さく抑え、圧入時の負荷や引っ掛かりを低減させることが可能となり、より高い組み付け性を得ることができる。
【0058】
[第6態様]
第6態様は、第4態様において、前記軸方向先端部の挿入方向最上流側に位置する前記他の平面部に対する前記傾斜面の高さH5が、前記駆動伝達部材の前記挿入部における入口側縁部の傾斜面の前記内壁平面部に対する高さH4以下であることを特徴とするものである。
本態様によれば、駆動伝達部材の挿入部の入口側縁部が回転軸部材の傾斜面に沿って圧入平面部に乗り上げる高さを低く抑え、圧入時の負荷や引っ掛かりを低減させることが可能となり、より高い組み付け性を得ることができる。
【0059】
[第7態様]
第7態様は、第1乃至第6態様のいずれかにおいて、前記圧入平面部の前記軸方向の長さW2は、前記他の平面部の前記軸方向の長さW1よりも長いことを特徴とするものである。
これによれば、前記圧入平面部については、圧入により駆動伝達部材を保持する力が十分に発揮できる軸方向長さを確保する一方で、圧入平面部を構成しない前記他の平面部については、駆動伝達部材の挿入部内で回転軸部材の回転を規制するのに十分な軸方向長さを確保できる範囲で、可能な限り短い軸方向長さとして軸方向の小型化を実現することができる。
【0060】
[第8態様]
第8態様は、第1乃至第6態様のいずれかにおいて、前記圧入平面部の前記軸方向の長さW2は、前記他の平面部の前記軸方向の長さW1以下であることを特徴とするものである。
これによれば、圧入により駆動伝達部材を回転軸部材上に保持する力が十分に発揮できる範囲内で、圧入平面部の軸方向長さW2を可能な限り短くして、駆動伝達部材の挿入部に回転軸部材を圧入するときの圧入長さ(圧入量)を短くし、組み付け時間の短縮化を図ることができる。
また、他の平面部の軸方向長さW1を長くすることができるので、回転軸部材の圧入平面部と駆動伝達部材の内壁平面部とが圧入前に安定して略平行な状態になり、圧入をよりスムーズに行うことが可能となる。その結果、組立性が向上する。
【0061】
[第9態様]
第9態様は、第1乃至第8態様のいずれかにおいて、前記駆動伝達部材の前記挿入部は、貫通孔で構成されており、前記回転軸部材は、前記挿入部を貫通して圧入後に該挿入部の外部に位置する部分に、該挿入部から該回転軸部材が抜けるのを阻止する抜け止め部材25が装着される溝36を備え、前記他の平面部は、前記軸方向における前記溝の位置よりも前記軸方向先端部側に位置する平面部分を含むことを特徴とするものである。
このような平面部分が存在することで、回転軸部材の軸方向先端部を駆動伝達部材の挿入部へ挿入し始めるときに、溝のエッジよりも先に前記他の平面部の当該平面部分が挿入部内へ入り込む。これによれば、当該平面部分が挿入部内の内壁平面部に沿って挿入されることで、溝のエッジが駆動伝達部材の挿入部の入口縁部に引っ掛かる事態を回避することができる。その結果、より高い組み付け性を実現することができる。
【0062】
[第10態様]
第10態様は、第1乃至第9態様のいずれかにおいて、前記駆動伝達部材は、ベルトプーリであることを特徴とするものである。
これによれば、回転軸部材に対するベルトプーリの組み付け性を向上させることができる。
【0063】
[第11態様]
第11態様は、第1乃至第9態様のいずれかにおいて、前記駆動伝達部材は、ギヤであることを特徴とするものである。
これによれば、回転軸部材に対するギヤの組み付け性を向上させることができる。
【0064】
[第12態様]
第12態様は、第1乃至第11態様のいずれかにおいて、前記駆動伝達部材は樹脂成形品であることを特徴とするものである。
駆動伝達部材が樹脂成形品であることで、成形後に駆動伝達部材の挿入部内の内壁平面部の寸法(プーリ中心Fからの距離H3)を微調整することが容易であり、より組み付け性の高い部品を得ることができる。
【0065】
[第13態様]
第13態様は、第1乃至第12態様のいずれかにおいて、前記駆動伝達部材の前記挿入部は、貫通孔で構成されており、前記貫通孔を前記軸方向から見たとき、前記回転軸部材の軸中心と前記回転軸部材の前記他の平面部との間の距離H1と、前記回転軸部材の軸中心と前記回転軸部材の前記圧入平面部との間の距離H2と、前記貫通孔の中心と前記内壁平面部との間の距離H3との関係は、H1≦H3<H2を満たす関係であることを特徴とするものである。
これによれば、回転軸部材に対する駆動伝達部材の組み付け性が高い駆動伝達装置を提供することができる。
【0066】
[第14態様]
第14態様は、第1乃至第13態様のいずれかにおいて、前記回転軸部材は、前記駆動伝達部材の挿入部に対する前記回転軸部材の挿入位置を示す印(例えば溝あるいはケガキ線38)を有することを特徴とするものである。
これによれば、組立作業者は、この印を視認することで、駆動伝達部材をどこまで押し込むのかを把握することができる結果、組立作業者に、駆動伝達部材を適切な位置まで押し込むように促すことができる。よって、組立作業者が駆動伝達部材の押し込みを途中で止めてしまうことを抑制することが可能になる。
【0067】
[第15態様]
第15態様は、被駆動部材(例えば、両面入口ローラ対13、両面中間ローラ対14、両面出口ローラ対15)に駆動源の駆動力を伝達する駆動伝達装置を備え、記録媒体(例えばシートP)に画像を形成する画像形成装置(例えばプリンタ)において、前記駆動伝達装置として、第1乃至第14態様のいずれかの駆動伝達装置を用いることを特徴とするものである。
これによれば、組み付け性の高い画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 :感光体
2 :画像形成部
3 :給紙カセット
4 :給紙ローラ
5 :搬送ローラ対
6 :レジストローラ対
7 :転写ローラ
8 :定着装置
9 :排紙ローラ対
10 :分岐爪
11 :反転搬送路
12 :反転ローラ対
13 :両面入口ローラ対
14 :両面中間ローラ対
15 :両面出口ローラ対
19,20:タイミングベルト
21~24:プーリ
23a :挿入孔
23b :入口側端面
25 :抜け止め部材
31 :回転軸
31a :軸方向先端部
32 :先端側平面部
33 :後端側平面部
34 :傾斜面
35 :止め壁
36 :溝
36a :エッジ
37 :曲面部
38 :溝あるいはケガキ線
41 :内壁平面部
41A,41B:平面部分
42 :入口側縁部
43,44:切り欠き
45 :内壁曲面部
45A,45B:曲面部分
A :挿入方向
C :軸中心
F :プーリ中心
G :隙間
P :シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2019-020703号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22