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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132835
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20240920BHJP
   G06F 11/07 20060101ALI20240920BHJP
   G06F 11/34 20060101ALI20240920BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G06F3/12 334
G06F3/12 310
G06F3/12 329
G06F3/12 373
G06F11/07 160
G06F11/07 140P
G06F11/34 152
H04N1/00 002A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190067
(22)【出願日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2023042293
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】松村 豊
【テーマコード(参考)】
5B042
5C062
【Fターム(参考)】
5B042JJ06
5B042JJ29
5B042MA08
5B042MA14
5B042MC25
5B042MC40
5C062AA05
5C062AB40
5C062AC55
5C062AC58
(57)【要約】
【課題】 機器に含まれるデバイスの異常を予測するシステム、方法およびプログラムを提供すること。
【解決手段】 対象機器に含まれる第1のデバイスの異常を予測するシステム100であって、第1のデバイスの所定期間内での総使用回数を求めることを含んで算出される、使用回数の第1の増分値に基づいて、当該第1のデバイスの異常を判定するデバイス異常判定部312を含む。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象機器に含まれる第1のデバイスの異常を予測するシステムであって、
前記第1のデバイスの所定期間内での総使用回数を求めることを含んで算出される、使用回数の第1の増分値に基づいて、当該第1のデバイスの異常を判定する判定手段
を含む、システム。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記対象機器に類似する機器に含まれる第2のデバイスに異常が発生した時点までの所定期間の前記第2のデバイスの所定期間内での総使用回数を求めることを含んで算出される、使用回数の第2の増分値との比較によって、前記第1のデバイスの異常を判定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記第1のデバイスの使用開始時点からの総使用回数を正規化することを含んで算出される、使用回数の正規化合計値と、前記第2の増分値とに基づく値を閾値とし、
前記第1の増分値が、前記閾値以上である場合に、前記第1のデバイスの異常に関する通知を行う、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記判定手段は、前記閾値を、前記正規化合計値と、前記第2の増分値との平均値として判定を行う、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記対象機器の設定情報と、他の機器の設定情報とを比較して、前記類似する機器を検索する検索手段
をさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記判定手段は、判定要求に応じて、前記第1のデバイスの異常を判定する処理を行う、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記判定手段は、あらかじめ設定されたタイミングで、前記第1のデバイスの異常を判定する処理を行う、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
対象機器に含まれる第1のデバイスの異常を予測する方法であって、
前記第1のデバイスの使用回数の増分値を算出するステップであって、前記第1のデバイスの所定期間内での総使用回数を求めることを含む、算出するステップと、
前記増分値に基づいて、前記第1のデバイスの異常を判定するステップと
を含む、方法。
【請求項9】
対象機器に含まれる第1のデバイスの異常を予測するコンピュータが実行するプログラムであって、前記プログラムは、前記コンピュータを
前記第1のデバイスの所定期間内での総使用回数を求めることを含んで算出される、使用回数の第1の増分値に基づいて、当該第1のデバイスの異常を判定する判定手段
として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器に含まれるデバイスの異常の予兆を検出するシステム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
技術の高度化、多様化に伴い、様々な機器において、異常の予測が重要になっている。例えば、メモリなどの記憶装置を備える画像形成装置において、メモリが異常すると画像形成装置自体も使えなくなるため、メモリの異常を予測することが求められる。
【0003】
この点につき、特開2022-027241号公報(特許文献1)では、機器が有するメモリの書き込み回数と機器のカウンタ情報を機器から受信する受信手段31と、受信手段が受信した書き込み回数に基づいて異常又は異常の可能性を判断する判断手段33と、判断手段が異常又は異常の可能性があると判断した場合、カウンタ情報に基づいて異常の原因となるソフトウェアを特定する特定手段32と、を有するシステムを開示している。特許文献1によれば、異常が検出された場合に異常の原因を特定できる情報処理システムが提供できる。
【0004】
ところで、特許文献1を始めとする従来技術では、デバイスの使用回数と、あらかじめ固定値として設定された閾値とを比較することで、異常を予測していた。しかしながら、異常は、使用頻度などの種々の条件によって発生するタイミングが変わるものであり、単にあらかじめ設定された閾値と比較するのみでは、必ずしも適切に異常を予測できるものではなかった。
【0005】
そのため、より的確にデバイスの異常を予測する技術が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、機器に含まれるデバイスの異常を予測するシステム、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、
対象機器に含まれる第1のデバイスの異常を予測するシステムであって、
前記第1のデバイスの所定期間内での総使用回数を求めることを含んで算出される、使用回数の第1の増分値に基づいて、当該第1のデバイスの異常を判定する判定手段
を含む、システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機器に含まれるデバイスの異常を予測するシステム、方法およびプログラムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態におけるシステム全体のハードウェアの概略構成を示す図。
図2】本実施形態のシステムを構成する各装置に含まれるハードウェア構成を示す図。
図3】本実施形態のシステムに含まれるソフトウェアブロック図。
図4】本実施形態のデバイス使用履歴記憶部に格納されるデータの例を示す図。
図5】本実施形態においてデバイスの異常を判定する処理を示すフローチャート。
図6】本実施形態において類似の機器を検索する処理を示すフローチャート。
図7】本実施形態において機器の類似を判定する例を示す図。
図8】本実施形態において算出される各機器の増分値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜その説明を省略するものとする。
【0011】
図1は、本実施形態におけるシステム100全体のハードウェアの概略構成を示す図である。図1では、例として、サーバ110と、画像形成装置120、130とが、インターネットやLANなどのネットワーク140を介して接続された環境を例示している。なお、システム100に含まれる画像形成装置120、130の台数は、図1に示したものに限らず、システム100に含まれる装置の台数に制限はない。また、サーバ110や画像形成装置120、130から、ネットワーク140へ接続する方法は、有線または無線のどちらでもよい。
【0012】
サーバ110は、本実施形態のサービスを提供する情報処理装置である。本実施形態のサーバ110は、システム100に含まれる機器の情報を取得して分析することで、他の機器の異常や異常を予測することができる。また、サーバ110は、予測した結果を機器のユーザや管理者などに通知することができる。
【0013】
画像形成装置120、130は、印刷要求を受けて印刷ジョブを行う情報処理装置である。また、画像形成装置120、130は、スキャン機能によって読み取った原稿をデータ化し、コピーしたり、他の装置に送信したりできる。
【0014】
以下で説明する実施形態では、画像形成装置120を、異常を予測する対象となる機器(以下、「対象機器」として参照する)とし、画像形成装置130を、対象機器の異常を予測する際に比較される機器とする。なお、以下では、対象機器である画像形成装置に含まれるハードディスクの異常を予測する例を以て実施形態を説明しているが、特に実施形態を限定するものではない。したがって、対象機器が画像形成装置以外の機器であってもよいし、記憶装置以外のデバイスの異常を予測するものであってもよい。
【0015】
次に、各装置のハードウェア構成について説明する。図2は、本実施形態のシステム100を構成する各装置に含まれるハードウェア構成を示す図である。サーバ110は、図2(a)に示すように、CPU210と、RAM220と、ROM230と、記憶装置240と、通信I/F250と、ディスプレイ260と、入力装置270とを含んで構成される。画像形成装置120、130は、図2(b)に示すように、CPU210と、RAM220と、ROM230と、記憶装置240と、通信I/F250と、ディスプレイ260と、入力装置270と、プリンタ装置280と、スキャナ装置290とを含んで構成される。
【0016】
まず、サーバ110について説明する。CPU210は、サーバ110の動作を制御するプログラムを実行し、所定の処理を行う装置である。RAM220は、CPU210が実行するプログラムの実行空間を提供するための揮発性の記憶装置であり、プログラムやデータの格納用、展開用として使用される。ROM230は、CPU210が実行するプログラムやファームウェアなどを記憶するための不揮発性の記憶装置である。
【0017】
記憶装置240は、サーバ110を機能させるOSや種々のソフトウェア、設定情報、各種データなどを記憶する、読み書き可能な不揮発性の記憶装置である。記憶装置240の一例としては、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などが挙げられる。
【0018】
通信I/F250は、サーバ110とネットワーク140とを接続し、ネットワーク140を介して他の装置との通信を可能にする。ネットワーク140を介した通信は、有線通信または無線通信のいずれであってもよく、TCP/IPなどの所定の通信プロトコルを使用し、各種データを送受信できる。
【0019】
ディスプレイ260は、各種データやサーバ110の状態などを、ユーザに対して表示する装置であり、例として、LCD(Liquid Crystal Display)などが挙げられる。入力装置270は、ユーザがサーバ110を操作するための装置であり、例として、キーボード、マウス、操作ボタンなどが挙げられる。なお、ディスプレイ260と入力装置270は、それぞれ別個の装置であってもよいし、タッチパネルディスプレイのような両方の機能を備えるものであってもよい。また、サーバ110は、必ずしもディスプレイ260と、入力装置270とを備えていなくてもよい。
【0020】
次に、画像形成装置120、130のハードウェア構成について説明する。なお、画像形成装置120、130のCPU210、RAM220、ROM230、記憶装置240、通信I/F250、ディスプレイ260、入力装置270は、図2(a)において説明したサーバ110のものと同様であるため、詳細は省略する。
【0021】
プリンタ装置280は、レーザ方式やインクジェット方式などによって、用紙に画像を形成する構成の装置である。スキャナ装置290は、印刷物の画像を読み取り、データ化する構成の装置である。また、例えば画像形成装置120は、スキャナ装置290とプリンタ装置280の協働により、印刷物のコピーを行うことができる。
【0022】
以上、本実施形態のシステム100を構成する各装置に含まれるハードウェア構成について説明した。次に、本実施形態における各ハードウェアによって実行される機能手段について、図3を以て説明する。図3は、本実施形態のシステム100に含まれるソフトウェアブロック図である。
【0023】
図3に示すように、サーバ110は、類似機器検索部311、デバイス異常判定部312、判定結果通知部313の各機能手段を含む。また、画像形成装置120、130は、デバイス使用履歴記憶部321を含む。
【0024】
類似機器検索部311は、本実施形態における検索手段を構成し、システム100に含まれる、対象機器に類似した機器を検索する手段である。本実施形態の類似機器検索部311は、対象機器において設定されている機能と、他の機器において設定されている機能とを比較して、一致する項目が多い機器を類似機器として抽出することができる。
【0025】
デバイス異常判定部312は、本実施形態における判定手段を構成し、対象機器に含まれるデバイス(第1のデバイスとして参照される)の異常を予測して判定する手段である。本実施形態のデバイス異常判定部312は、類似機器のデバイス(第2のデバイスとして参照される)が過去に異常が発生した際の使用状況と、対象機器のデバイスの使用状況とに基づいて、対象機器のデバイスの異常を予測することができる。
【0026】
判定結果通知部313は、本実施形態における通知手段を構成し、デバイス異常判定部312が判定した結果を、対象機器のユーザなどに通知する手段である。本実施形態の判定結果通知部313は、例えば、ネットワーク140を介して、機器のユーザや管理者に対してメールなどで通知することができる。また、判定結果通知部313は、対象機器となっている画像形成装置120に判定結果を通知してもよい。
【0027】
デバイス使用履歴記憶部321は、本実施形態における記憶手段を構成し、記憶装置240の動作を制御し、画像形成装置120、130のデバイスの使用履歴を記憶する手段である。ここで、本実施形態のデバイス使用履歴記憶部321について、図4を以て説明する。
【0028】
図4は、本実施形態のデバイス使用履歴記憶部321に格納されるデータの例を示す図である。図4に示すようにデバイス使用履歴記憶部321には、日付フィールドと、電源オン時間フィールドと、デバイス使用回数フィールドと、異常発生フィールドとが対応付けられたテーブルが記憶される。
【0029】
日付フィールドには、デバイスを使用した日付のデータが格納される。電源オン時間フィールドには、当該日付において画像形成装置120、130の電源をオンにしていた時間のデータが格納される。デバイス使用回数フィールドには、当該日付においてデバイスが使用された回数のデータが格納される。例えば、デバイスがハードディスクである場合には、デバイス使用回数フィールドには、ハードディスクへの書き込み回数を格納することができる。異常発生フィールドには、当該日付においてデバイスの異常の発生の有無のデータが格納される。
【0030】
説明を図3に戻す。図3に示したソフトウェアブロックは、CPU210が本実施形態のプログラムを実行することで、各ハードウェアを機能させることにより、実現される機能手段に相当する。また、各実施形態に示した機能手段は、全部がソフトウェア的に実現されても良いし、その一部または全部を同等の機能を提供するハードウェアとして実装することもできる。
【0031】
さらに、上述した各機能手段は、必ずしも全てが図3に示すような構成で含まれていなくてもよい。例えば、他の好ましい実施形態では、各機能手段は、サーバ110と、画像形成装置120との協働によって実現されてもよい。また、別の実施形態では、サーバ110がデバイス使用履歴記憶部321を含んでもよいし、画像形成装置120が類似機器検索部311、デバイス異常判定部312、判定結果通知部313のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0032】
次に、上述した各機能手段が実行する処理について、図5を以て説明する。図5は、本実施形態においてデバイスの異常を判定する処理を示すフローチャートである。システム100は、ステップS1000から処理を開始する。
【0033】
ステップS1001では、サーバ110は、デバイスの異常判定要求を受け付ける。なお、説明する実施形態において、ステップS1001の処理は必ずしも行われなくてもよく、例えば、判定要求がなくても、あらかじめ設定されたタイミングで定期的に異常判定処理を行うこととしてもよい。
【0034】
次にステップS1002では、類似機器検索部311は、類似機器を検索するために、対象機器の機器情報を取得する。ここで、ステップS1002で取得される機器情報は、例えば、機器を識別するIDや、各種設定情報などが挙げられるが、特に限定するものではない。
【0035】
続くステップS1003において、類似機器検索部311は、取得した対象機器の機器情報に基づいて、システム100に含まれる画像形成装置130のうち、対象機器に類似する機器を検索する。ここで、類似機器の検索について、図6を以て説明する。図6は、本実施形態において類似の機器を検索する処理を示すフローチャートである。
【0036】
類似機器検索部311は、ステップS2000から処理を開始する。なお、図6に示す各処理は、図5のステップS1003に相当する。類似機器検索部311は、ステップS2001において、nを1とする。次に、ステップS2002では、システム100に第nの検索対象機器があるか否かによって処理を分岐する。第nの検索対象機器がない場合(NO)、ステップS2008に進み、処理を終了する。第nの検索対象機器がある場合(YES)、ステップS2003に進む。
【0037】
ステップS2003では、第nの検索対象機器の機器情報を取得する。ここで、取得される機器情報は、画像形成装置130のデバイス使用履歴記憶部321に記憶されている履歴データ、機器を識別するID、各種設定情報などである。
【0038】
次にステップS2004では、デバイス使用履歴のデータに異常発生の履歴があるか否かによって処理を分岐する。異常発生の履歴がない場合(NO)、ステップS2007に進む。異常発生の履歴がある場合(YES)、ステップS2005に進む。
【0039】
ステップS2005において類似機器検索部311は、対象機器と、第nの検索対象機器との類似度を算出する。ステップS2005における類似度の算出は、図1のステップS1002で取得した設定情報と、ステップS2003で取得した設定情報との比較によって行うことができる。ここで、設定情報の比較に基づく機器の類似度の算出について、図7を以て説明する。図7は、本実施形態において機器の類似を判定する例を示す図である。
【0040】
図7は、異常判定の対象機器と、複数の検索対象機器との設定情報をまとめたテーブルである。なお、本実施形態の類似機器検索部311は、設定情報の比較に基づいて類似機器を検索し、決定するが、必ずしも図7に示したテーブルを生成しなくてもよい。すなわち、図7のテーブルは、説明の便宜のために示されたものである点に留意されたい。
【0041】
説明する実施形態の例において、類似機器検索部311は、判定対象項目となっている機器設定の項目に基づいて類似度を判定する。図7の例では、機器設定のうち、「省エネ設定」、「ファームウェア自動更新設定」、「システムリセット」、「省エネタイマー」の各項目が、判定対象項目となっている。説明する実施形態の例では、判定対象項目は、デバイスの異常に関連し得る項目とすることができる。一方で、デバイス異常との関連性が小さい機器設定、例えば、図7に示すような画像形成装置120、130の用紙トレイなどは、類似度の判定の対象から除外することができる。
【0042】
図7に示す例では、対象機器は、「省エネ設定」が「する」、「ファームウェア自動更新設定」が「する」、「システムリセット」が「しない」、「省エネタイマー」が「1分」として設定されている。
【0043】
これに対して、検索対象機器Aは、「省エネ設定」が「する」、「ファームウェア自動更新設定」が「する」、「システムリセット」が「しない」、「省エネタイマー」が「1分」として設定されている。したがって、判定対象項目の設定が、対象機器の設定とすべて同じであることから、検索対象機器Aの類似度は100%として算出される。
【0044】
また、検索対象機器Bは、「省エネ設定」が「する」、「ファームウェア自動更新設定」が「しない」、「システムリセット」が「する」、「省エネタイマー」が「1分」として設定されている。したがって、4つの判定対象項目のうち、2つが対象機器の設定と同じであることから、検索対象機器Bの類似度は50%として算出される。
【0045】
また、検索対象機器Cは、「省エネ設定」が「する」、「ファームウェア自動更新設定」が「する」、「システムリセット」が「する」、「省エネタイマー」が「1分」として設定されている。したがって、4つの判定対象項目のうち、3つが対象機器の設定と同じであることから、検索対象機器Cの類似度は75%として算出される。
【0046】
説明を図6に戻す。ステップS2005で類似度を算出した後、ステップS2006において、第nの検索対象機器を類似機器候補として記憶する。次にステップS2007で、nの値をインクリメントする。その後、ステップS2002に戻り、システム100に含まれる画像形成装置130全てに対して上述した各処理を繰り返す。
【0047】
なお、類似機器検索部311は、ステップS2006で記憶した類似機器候補のうち、最も類似度の高い機器を、類似機器として決定することができる。したがって、図7に示した例では、検索対象機器Aが類似機器として決定される。
【0048】
説明を図5に戻す。ステップS1003に相当する図6に示した処理によって、類似機器検索部311が類似機器を決定した後、ステップS1004に進む。ステップS1004では、類似機器の過去の異常発生時における使用回数の増分値を算出する。ここで、図8を参照して、本実施形態で算出される増分値について説明する。図8は、本実施形態において算出される各機器の増分値を示すグラフである。
【0049】
図8(a)は、類似機器における稼働日数-使用回数を示すグラフであり、f(x)で与えられる。図8(a)の横軸(x軸)が稼働日数、縦軸(y軸)が累積の使用回数を示している。また、例示する類似機器は、過去にxの時点で異常が発生したものとする。本実施形態における類似機器の増分値(第2の増分値として参照される)は、図8(a)におけるハッチングで示す領域の大きさに相当する。したがって、増分値D130は、例えば積分を含む以下の式(1)によって算出されてもよい。
【0050】
【数1】
【0051】
右辺の第1項は、f(x)をxからxまでの期間で積分したものである。ここで、xは、異常発生時xから任意の所定期間を遡った時点であり、任意の所定期間をxとする。したがって、右辺の第1項は、図8(a)におけるハッチングで示す領域と、濃い色で示す矩形領域とを合わせた領域の大きさを示している。
【0052】
また、右辺の第2項は、x時点の使用回数を、所定期間xで乗じたものである。したがって、右辺の第2項は、図8(a)における濃い色で示す矩形領域の大きさを示している。
【0053】
したがって、図8(a)におけるハッチングで示す領域に相当する増分値D130は、上記の式(1)のようにして与えられる。なお、増分値D130は、式(1)以外によって算出されてもよく、例えば、デバイスの所定期間x内での総使用回数を求めることによって算出されてもよい。この場合における総使用回数を求めることは、積分の上位概念として扱うことができ、積分を含み得る。
【0054】
説明を図5に戻す。ステップS1004において上記式(1)のようにして類似機器の増分値を算出した後、ステップS1005に進む。ステップS1005では、対象機器の全期間の使用回数の増分値を算出する。ここで、対象機器の使用回数の増分値について、図8(b)を参照する。
【0055】
図8(b)は、対象機器における稼働日数-使用回数を示すグラフであり、g(x)で与えられる。図8(b)の横軸(x軸)が稼働日数、縦軸(y軸)が累積の使用回数を示している。ここで、対象機器の使用回数の合計を正規化した値D120(正規化合計値として参照される)は、例えば積分を含む以下の式(2)のようにして算出されてもよい。
【0056】
【数2】
【0057】
ここで、xは、対象機器の使用開始時点から現在までの期間を示している。また、右辺の末尾の因子(x /x )は、後述する閾値算出のために、類似機器の増分値に合わせて正規化するためのものである。すなわち、対象機器の正規化合計値D120は、積分を含む先頭の因子によって算出される、図8(b)におけるハッチングで示す領域を、類似機器の増分値算出における所定期間に合わせて正規化したものである。なお、正規化合計値D120は、式(2)以外によって算出されてもよく、例えば、デバイスの使用開始時点から現在までの期間x内での総使用回数に、式(2)の右辺の末尾の因子を乗じることによって算出されてもよい。この場合における総使用回数を求めることは、積分の上位概念として扱うことができ、積分を含み得る。
【0058】
説明を図5に戻す。ステップS1005において上記式(2)のようにして対象機器の増分値を算出した後、ステップS1006に進む。ステップS1006では、対象機器の異常検知の閾値を算出する。異常検知の閾値DTHは、以下の式(3)のようにして算出される。
【0059】
【数3】
【0060】
上記式(3)に示すように、閾値DTHは、D130と、D120との平均値とすることができる。例えば、閾値を単に類似機器の増分値のみとすると、対象機器の使用回数の増分が大きい場合であっても、異常として検知されない場合がある。したがって、対象機器の平均的な使用頻度を加味した閾値とすることで、当該対象機器に適した閾値によって異常の予兆を検知できるため、より適切な異常検知を行うことができる。
【0061】
次に、ステップS1007では、所定期間xにおける対象機器の増分値D120’を算出する。ここで、所定期間xにおける対象機器の増分値D120’について、図8(c)を参照する。
【0062】
図8(c)は、対象機器における稼働日数-使用回数を示すグラフであり、g(x)で与えられる。図8(c)の横軸(x軸)が稼働日数、縦軸(y軸)が累積の使用回数を示している。本実施形態における対象機器の増分値D120’ (第1の増分値として参照される)は、図8(c)におけるハッチングで示す領域の大きさに相当する。したがって、増分値D120’は、例えば積分を含む以下の式(4)によって算出されてもよい。
【0063】
【数4】
【0064】
ここで、xc2は、現時点を示し、xc1は、xc2から所定期間xを遡った時点である。そのため、増分値D120’を示すハッチング領域は、式(1)と同様にして算出される。すなわち、増分値D120’は、上記式(4)のように、積分項の大きさと図8(c)の濃い色で示される矩形領域の大きさとの差分によって算出することができる。なお、増分値D120’は、式(4)以外によって算出されてもよく、例えば、デバイスの所定期間x内での総使用回数を求めることによって算出されてもよい。この場合における総使用回数を求めることは、積分の上位概念として扱うことができ、積分を含み得る。
【0065】
説明を図5に戻す。ステップS1007において、所定時間における対象機器の増分値D120’を算出した後、ステップS1008に進む。ステップS1008では、ステップS1007で算出した増分値D120’が、ステップS1006で算出した閾値DTH以上であるか否かによって処理を分岐する。増分値D120’が閾値DTH以上でない場合には(NO)、ステップS1010に進み、処理を終了する。
【0066】
一方で、増分値D120’が閾値DTH以上である場合には(YES)、ステップS1009に進む。このような場合、対象機器のデバイスの所定期間における使用量が、類似機器において過去に異常が発生したときと同様に増加していることから、対象機器においても同様に異常が発生する蓋然性が高い。したがって、ステップS1009では、デバイスに異常が生じる可能性がある旨を通知する。ステップS1009における通知は、例えば、ネットワーク140を介して行うことができる。その後、ステップS1010で処理を終了する。
【0067】
図5に示した処理によれば、デバイスの異常発生の予兆を適切に検知でき、機器を安定的に運用することができる。特に、機器の使用状況を加味した異常検知を判定するための閾値を設定することができ、これによって、機器ごとに適した閾値によって異常の予兆を検知することができる。特に、所定期間内における総使用回数を用いることで、特定のイベントの発生などに依らず、使用回数を時間的にならした実績に基づいて異常予兆を判定することができる(すなわち、例えば、同じ時間間隔において使用回数が多いデバイスと少ないデバイスとがあった場合に、前者のほうが異常が発生する可能性が高いものとして判定される)。したがって、本実施形態の処理によって、実際のデバイスの使用状況をより反映した異常予兆の検知を行うことができる。
【0068】
なお、図5において説明した実施形態の処理は、必ずしもサーバ110のみが行うものでなくてもよく、例えば、対象機器である画像形成装置120が、一部または全部の処理を行ってもよい。例として、サーバ110が算出した閾値DTHを画像形成装置120に送信し、画像形成装置120が所定期間における自装置の増分値D120’を算出して、比較することとしてもよい。
【0069】
以上、説明した本発明の実施形態によれば、機器に含まれるデバイスの異常を予測するシステム、方法およびプログラムを提供することができる。
【0070】
上述した本発明の実施形態の各機能は、C、C++、C#、Java(登録商標)等で記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、本実施形態のプログラムは、ハードディスク装置、CD-ROM、MO、DVD、フレキシブルディスク、EEPROM(登録商標)、EPROM等の装置可読な記録媒体に格納して頒布することができ、また他装置が可能な形式でネットワークを介して伝送することができる。
【0071】
上記で説明した実施形態の各機能は、一または複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュールなどのデバイスを含むものとする。
【0072】
以上、本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が推考しうる実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
100…システム、110…サーバ、120、130…画像形成装置、140…ネットワーク、210…CPU、220…RAM、230…ROM、240…記憶装置、250…通信I/F、260…ディスプレイ、270…入力装置、280…プリンタ装置、290…スキャナ装置、311…類似機器検索部、312…デバイス異常判定部、313…判定結果通知部、321…デバイス使用履歴記憶部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2022-027241号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8