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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132879
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】光学式濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20240920BHJP
   G01N 21/61 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
G01N21/03 B
G01N21/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008185
(22)【出願日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2023040150
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】一色 翔太
(72)【発明者】
【氏名】古屋 貴明
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ハンス
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB02
2G057AC03
2G057BA01
2G057DA03
2G057DA13
2G057DC07
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059CC05
2G059CC09
2G059CC13
2G059CC15
2G059EE01
2G059GG02
2G059HH01
2G059JJ03
2G059JJ14
2G059LL03
(57)【要約】
【課題】小型で測定精度が高い光学式濃度測定装置が提供される。
【解決手段】光学式濃度測定装置(1)は、基板(2)の主面(20)に設けられ、発光面から光を発する発光部(3)と、基板の主面に設けられ、受光面で光を受け取る受光部(4)と、発光部が発した光を受光部に導く導光部(5)と、を備え、導光部は、第1の反射部(51)と、第2の反射部(52)と、を備え、第1の反射部と第2の反射部とは、基板の主面に接続して設けられて、基板の主面を正面に見る俯瞰視で対向しており、第2の反射部は、2つの二次曲面で構成され、第1の反射部は、二次曲面である主反射面(53)と主反射面の一部に一体的に形成された2つの副反射面(54)とで構成され、副反射面はそれぞれ二次曲面である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面に設けられ、発光面から光を発する発光部と、
前記基板の主面に設けられ、受光面で前記光を受け取る受光部と、
前記発光部が発した前記光を前記受光部に導く導光部と、を備え、
前記導光部は、第1の反射部と、第2の反射部と、を備え、
前記第1の反射部と第2の反射部とは、前記基板の主面に接続して設けられて、前記基板の主面を正面に見る俯瞰視で対向しており、
前記第2の反射部は、2つの二次曲面で構成され、
前記第1の反射部は、二次曲面である主反射面と前記主反射面の一部に一体的に形成された2つの副反射面とで構成され、前記副反射面はそれぞれ二次曲面である、光学式濃度測定装置。
【請求項2】
前記第2の反射部から前記主反射面を正面に見る側面視で、前記主反射面に複数の光スポットが生じ、
左右方向に隣接する前記光スポットによって形成される列を複数有し、複数の前記列は上下方向に配置され、
隣接する異なる前記列のそれぞれの前記光スポットの中心同士が全て前記左右方向にずれている、請求項1に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項3】
前記第1の反射部から前記第2の反射部への光路及び前記第2の反射部から前記第1の反射部への光路の合計数がNである場合に、前記主反射面における光スポットの数は((N/2)-1)である、請求項1又は2に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項4】
前記合計数は8以上の4の倍数である、請求項3に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項5】
前記俯瞰視で、2つの前記副反射面の対称軸のそれぞれは、前記主反射面の対称軸に対して平行でない、請求項1又は2に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項6】
前記主反射面は球面である、請求項1又は2に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項7】
前記第2の反射部から前記主反射面を正面に見る側面視で、前記主反射面に複数の光スポットが生じ、
隣接する前記光スポットとの重なりが各光スポットの総強度の20%以下である、請求項1又は2に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項8】
前記第2の反射部から前記主反射面を正面に見る側面視で、前記主反射面に上下方向及び左右方向に複数の光スポットが生じ、
各光スポット同士の間隔Dは、前記第1の反射部の前記上下方向の長さをLz、前記第1の反射部の前記左右方向の長さをLxとすると、D≦Lz/5又はD≦Lx/5を満たす、請求項1又は2に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項9】
発光面から光を発する発光部と、
受光面で前記光を受け取る受光部と、
前記発光部が発した前記光を前記受光部に導く導光部と、を備え、
前記導光部は、第1の反射部と、第2の反射部と、を備え、
前記第1の反射部と第2の反射部とは、基板の主面に接続して設けられて、前記基板の主面を正面に見る俯瞰視で対向しており、
前記第2の反射部は、2つの二次曲面で構成され、
前記第1の反射部は、二次曲面である主反射面を有し、
前記発光部及び前記受光部は、前記基板の主面を正面に見る俯瞰視で前記第2の反射部に対向するように設けられる、光学式濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光学式濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガスの濃度を検出する光学式濃度測定装置が様々な分野で利用されている。光学式濃度測定装置は、例えば赤外線を放射する光源と、特定波長の赤外線を検出する検出器とを同一のケース内に備え、当該ケース内に被検出ガスが導入されるように構成される。
【0003】
ここで、小型で測定精度が高い光学式濃度測定装置を実現するために、一対のミラーを対向配置して、これらのミラーの間で光を多重反射させる多重反射セルが用いられることがある。同じサイズであっても、多重反射セルを用いることで光路長が長くなる。そのため、外乱の影響を小さくすることができ、小型で測定精度が高い光学式濃度測定装置を実現できる。例えば特許文献1は、一対のミラーの反射面に形成される光スポットが所定幅の細長領域に点在するように構成された多重反射セルを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-079586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載される多重反射セルは光源として半導体レーザを用いる。そのため、反射面に形成される光スポットは径が小さい。しかし、光源が例えばインコヒーレント光源であるLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)などである場合に、光が光源から放射状に射出され反射面において光スポットが広がる。そのため、光スポットの径が小さいことを前提とする特許文献1の多重反射セルを用いることは難しい。したがって、測定精度を低下させずに小型化できる、異なる構造の多重反射セルを用いた光学式濃度測定装置が求められている。
【0006】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、小型で測定精度が高い光学式濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一実施形態に係る光学式濃度測定装置は、
基板の主面に設けられ、発光面から光を発する発光部と、
前記基板の主面に設けられ、受光面で前記光を受け取る受光部と、
前記発光部が発した前記光を前記受光部に導く導光部と、を備え、
前記導光部は、第1の反射部と、第2の反射部と、を備え、
前記第1の反射部と第2の反射部とは、前記基板の主面に接続して設けられて、前記基板の主面を正面に見る俯瞰視で対向しており、
前記第2の反射部は、2つの二次曲面で構成され、
前記第1の反射部は、二次曲面である主反射面と前記主反射面の一部に一体的に形成された2つの副反射面とで構成され、前記副反射面はそれぞれ二次曲面である。
【0008】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記第2の反射部から前記主反射面を正面に見る側面視で、前記主反射面に複数の光スポットが生じ、
左右方向に隣接する前記光スポットによって形成される列を複数有し、複数の前記列は上下方向に配置され、
隣接する異なる前記列のそれぞれの前記光スポットの中心同士が全て前記左右方向にずれている。
【0009】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記第1の反射部から前記第2の反射部への光路及び前記第2の反射部から前記第1の反射部への光路の合計数がNである場合に、前記主反射面における光スポットの数は((N/2)-1)である。
【0010】
(4)本開示の一実施形態として、(3)において、
前記合計数は8以上の4の倍数である。
【0011】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記俯瞰視で、2つの前記副反射面の対称軸のそれぞれは、前記主反射面の対称軸に対して平行でない。
【0012】
(6)本開示の一実施形態として、(1)から(5)のいずれかにおいて、
前記主反射面は球面である。
【0013】
(7)本開示の一実施形態として、(1)から(6)のいずれかにおいて、
前記第2の反射部から前記主反射面を正面に見る側面視で、前記主反射面に複数の光スポットが生じ、
隣接する前記光スポットとの重なりが各光スポットの総強度の20%以下である。
【0014】
(8)本開示の一実施形態として、(1)から(7)のいずれかにおいて、
前記第2の反射部から前記主反射面を正面に見る側面視で、前記主反射面に上下方向及び左右方向に複数の光スポットが生じ、
各光スポット同士の間隔Dは、前記第1の反射部の前記上下方向の長さをLz、前記第1の反射部の前記左右方向の長さをLxとすると、D≦Lz/5又はD≦Lx/5を満たす。
【0015】
(9)本開示の一実施形態に係る光学式濃度測定装置は、
発光面から光を発する発光部と、
受光面で前記光を受け取る受光部と、
前記発光部が発した前記光を前記受光部に導く導光部と、を備え、
前記導光部は、第1の反射部と、第2の反射部と、を備え、
前記第1の反射部と第2の反射部とは、基板の主面に接続して設けられて、前記基板の主面を正面に見る俯瞰視で対向しており、
前記第2の反射部は、2つの二次曲面で構成され、
前記第1の反射部は、二次曲面である主反射面を有し、
前記発光部及び前記受光部は、前記基板の主面を正面に見る俯瞰視で前記第2の反射部に対向するように設けられる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一実施形態によれば、小型で測定精度が高い光学式濃度測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る光学式濃度測定装置の一部を透過させた斜視図である。
図2図2は、第1の反射部と第2の反射部の形状を説明するための図である。
図3図3は、第1の反射部における光スポットを説明するための図である。
図4図4は、第1の反射部と第2の反射部の間の光路の合計数が8の場合を示す図である。
図5図5は、第1の反射部と第2の反射部の間の光路の合計数が12の場合を示す図である。
図6図6は、第1の反射部と第2の反射部の間の光路の合計数が16の場合を示す図である。
図7図7は、第1の反射部と第2の反射部の間の光路の合計数が20の場合を示す図である。
図8図8は、第2の反射部における反射面の最凹部と、第1の反射部と第2の反射部の間の光路の合計数との関係を説明するための図である。
図9図9は、主反射面と副反射面の対称軸の関係を説明するための図である。
図10図10は、本開示の別の実施形態に係る光学式濃度測定装置の一部を透過させた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本開示の一実施形態に係る光学式濃度測定装置1の一部を透過させた斜視図である。光学式濃度測定装置1は、一例として20mm×10mm×10mmの小型の装置であって、ガスセンサとも称される。本実施形態において、光学式濃度測定装置1は、導入した気体を透過した赤外線に基づいて被検出ガスの濃度を測定する、NDIR(Non Dispersive InfraRed)方式の装置である。被検出ガスは、例えば二酸化炭素、水蒸気、メタン、プロパン、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、一酸化窒素、アンモニア、二酸化硫黄又はアルコール等である。
【0019】
光学式濃度測定装置1は、発光部3と、受光部4と、導光部5と、を備える。本実施形態のように、光学式濃度測定装置1は、基板2と、光学フィルタ6と、をさらに備えてよい。図1では、導光部5の一部を透過させて光学式濃度測定装置1の構成例を示しており、基板2の主面20に設けられた発光部3、受光部4及び光学フィルタ6が見えている。本実施形態において、主面20は、基板2の面積が最も大きい面のうちで導光部5が設けられる面である。
【0020】
以下、図1に示すように、xy平面が基板2の主面20と平行であるように、直交座標が設定される。直交座標は図2図9でも共通に用いられる。z軸方向は、基板2の主面20に垂直な方向である。z軸方向を上下方向と称することがある。また、z軸の正方向が上方向とされる。x軸方向及びy軸方向は、基板2の主面20の辺と平行である。基板2の主面20を正面から見る見方を、以下において俯瞰視と称することがある。俯瞰視の場合の視線方向はz軸負方向に対応する。
【0021】
基板2は、光学式濃度測定装置1の部品を実装し、実装された電子部品の電気的な接続を行う板状の部材である。基板2は、発光部3と、受光部4と、導光部5と、を主面20に設ける。また、基板2は、光学フィルタ6を主面20に設けてよい。基板2はさらに別の電子部品を実装してよい。例えば、基板2は主面20又は主面20と反対の面である底面に、発光部3及び受光部4の少なくとも一方を制御するコントローラを設けてよい。また、基板2は主面20又は底面に、ガス濃度算出における演算を実行する演算部を備えてよい。演算部は、読み込むプログラムに応じた機能を実行する汎用のプロセッサ及び特定の処理に特化した専用のプロセッサの少なくとも1つを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。演算部は、上記のコントローラと一体化されていてよい。
【0022】
発光部3は、被検出ガスの検出に用いられる光を発する部品である。発光部3は、被検出ガスによって吸収される波長を含む光を出力するものであれば特に制限されない。本実施形態において、発光部3が発する光は赤外線であるが、これに限定されない。本実施形態において、発光部3はLEDであって、発光面から光を発する。ここで発光面とは発光部3において気体と触れ合う面でかつ光学的な透過性を持つ材料でできている面である。別の例として発光部3はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ヒータ等であり得る。発光部3は、基板2の主面20において、後述する副反射面54の一方と対向する位置に設けられる。
【0023】
受光部4は、導入した気体を透過した光を受け取る部品である。受光部4は、被検出ガスによって吸収される波長を含む光の帯域に感度を有するものであれば特に制限されない。本実施形態において、受光部4が受け取る光は赤外線であるが、これに限定されない。本実施形態において、受光部4はフォトダイオード(Photodiode)であって、受光面で光を受け取る。また受光面とは受光部4において気体と触れ合う面でかつ光学的な透過性を持つ材料でできている面である。別の例として受光部4はフォトトランジスタ又はサーモパイル、焦電センサ、ボロメータ等であり得る。受光部4は、受け取った光を電気信号に変換して、変換した電気信号を出力する。電気信号は、例えば演算部に出力される。電気信号を受け取った演算部は、光の透過率等に基づいて被検出ガスの濃度を演算する。受光部4は、基板2の主面20において、後述する副反射面54の他方と対向する位置に設けられる。
【0024】
本実施形態において、受光部4は波長選択機能を有する光学フィルタ6を備えている。光学フィルタ6は、発光部3から出射されて導光部5で反射された光を透過させて受光部4の受光面に到達させる。ここで、光学フィルタ6は光路上に設けられればよく、受光部4が備える構成でなくてよい。また、光学式濃度測定装置1は光学フィルタ6を備えない構成であってよい。
【0025】
導光部5は、発光部3が発した光を受光部4に導く部材である。導光部5は、光学式濃度測定装置1の光学系である。導光部5は光学部材を備え、発光部3から受光部4への光路を構成する。換言すると、導光部5は、発光部3と受光部4とを光学的に接続させる。ここで、光学部材は例えばミラー及びレンズ等である。
【0026】
本実施形態において、導光部5は、第1の反射部51と、第2の反射部52と、を備える。図1に示すように、第1の反射部51と第2の反射部52とは、基板2の主面20に接続して設けられて、俯瞰視で対向している。また第1の反射部51と第2の反射部52とは、それぞれの相対位置関係を保持する機能を有した構造物に保持され、本構造物が基板2の主面20に接続する形態であってよい。
【0027】
図2は、第1の反射部51と第2の反射部52の形状を説明するための図である。図2は、図1の光学式濃度測定装置1から第1の反射部51及び第2の反射部52を抽出し、それぞれの表面の形状を線図で示している。第1の反射部51は、二次曲面である主反射面53と、2つの二次曲面である副反射面54で構成される。主反射面53は、本実施形態のように球面であることが好ましい。副反射面54は、主反射面53の一部に一体的に形成されており、図2の例において主反射面53の一部を切り取るように形成されている。ここで、二次曲面は、例えば放物面、楕円面、球面などを含み、回転軸対称性を備えてよい。また、第2の反射部52は、2つの二次曲面で構成される。例えば第2の反射部52は、第1の反射部51と対向する反射面において、2つの球面がつなぎ合わされた形状で構成されてよい。副反射面54を、主反射面53の一部を切り取るように形成することで、第1の反射部51は、1つの構造体で次の3つの機能を有する。1つ目の機能は、基板2の主面20に垂直な方向に発光部3から出射した光を基板2の主面20と平行な方向へ偏向する機能である。2つ目の機能は、第1の反射部51及び第2の反射部52の間で多重反射する機能である。3つ目の機能は、基板2の主面20と平行に走る光を基板2の主面20に垂直な方向にある受光部4に偏向する機能である。また、副反射面54を、主反射面53の一部を切り取るように形成することで、第1の反射部51は熱膨張の際に副反射面54と主反射面53の相対角度ずれを起こすことがない。また、副反射面54と主反射面53は付加的な接続構造体などを介することなく接続されており、主反射面53から副反射面54を切り取って残った主反射面53の部分を光の多重反射に用いることができる。そのため、第1の反射部51の反射面を最大限に有効利用することができ、結果として、測定精度を低下させずに光学式濃度測定装置1を小型化することができる。
【0028】
再び図1を参照すると、発光部3の近くにある副反射面54の一方は、発光部3から発せられた光を反射する。副反射面54の一方が反射した光は、第2の反射部52と主反射面53との間を複数回往復するように、第2の反射部52及び主反射面53で反射される。光路は、導光部5と基板2との間に設けられた、気体が導入されるセル(内部空間)を通過するように構成される。第2の反射部52と主反射面53との間の光路の具体例については後述する。受光部4の近くにある副反射面54の他方は、第2の反射部52からの光を反射して受光部4に導く。ここで、導光部5は光路の一部においてレンズを備える構成であってよい。また発光部3の近くにある副反射面54の一方と受光部4の近くにある副反射面54の他方は、二次曲面であるが同一の曲面でなくてよい。
【0029】
第1の反射部51の主反射面53及び副反射面54と、第2の反射部52の反射面を構成する材料は、例えば、金属、ガラス、セラミックス、ステンレス等であってよいが、この限りではない。検出感度向上の観点から、これらのミラーを構成する材料は、光の吸収係数が小さく反射率が高い材料で構成されることが好ましい。具体的には、アルミニウム、金、銀を含む合金、誘電体又はこれらの積層体のコーティングが施された樹脂筐体が好ましい。信頼性及び経時変化の観点から金又は金を含む合金層でコーティングされた樹脂筐体が好ましい。さらに、反射率を高め、かつ経年劣化を避けるために金属層の表面に誘電体積層膜を形成することが好ましい。樹脂筐体への蒸着又はめっきは、金属材料による形成と比較して、高生産性と軽量化の向上を図ることができる。さらに、基板2との熱膨張係数差が縮まり、熱変形が抑制され、感度の変動が抑制される。また、導光部5は切削加工で成形されてよく、生産性の観点から射出成型で成形されることが望ましい。
【0030】
図3は、第1の反射部51における光スポットを説明するための図である。光学式濃度測定装置1では、光スポットがある程度の広がりを有する場合でも、隣接する光スポットとの重なりが各光スポットの総強度の20%以下になるように、第1の反射部51と第2の反射部52の反射面が設計されている。換言すると、第1の反射部51の主反射面53を球面とし、第1の反射部51の副反射面54及び第2の反射部52の反射面を二次曲面とすることによって、限られた面積の反射面に効率的に光スポットを配置することが可能になる。また、隣接する光スポットとの重なりを無くし、各光スポット同士に間隔を有する設計は光学式濃度測定装置を小型化することに反する。そのため、各光スポット同士の間隔Dは、第1の反射部51のz軸方向の長さをLz、第1の反射部51のx軸方向の長さをLxとすると、D≦Lz/5又はD≦Lx/5を満たすことが好ましい。各光スポット同士の間隔Dは、D≦Lz/10又はD≦Lx/10を満たすことがさらに好ましい。各光スポット同士の間隔Dは、光強度が各光スポット内の最大強度に対して1/10以上である各領域に対して、最短距離になる線分のx軸方向の射影成分又はz軸方向の射影成分の長い方とする。
【0031】
図3の第1の反射部51は側面視で示されている。側面視は、第2の反射部52から第1の反射部51の主反射面53を正面に見る見方である。側面視の場合の視線方向はy軸正方向に対応する。図3に示すように、主反射面53に生じる光スポット(S1、S2及びS3)は複数であって、左右方向及び上下方向に並び、光スポットの中心が上下方向に揃っていない。つまり、左右方向に隣接する光スポットによって複数の列が形成され、複数の列が上下方向に配置され、隣接する異なる列のそれぞれの光スポットの中心同士が全て左右方向にずれている。ここで、側面視の場合に左右方向はx軸方向が対応する。また、上下方向はz軸方向が対応する。また、光スポットの中心は、各スポット内にて光強度が最大の位置である。図3の例では、光スポット(S1、S2及びS3)が、左右方向だけに並ぶのでなく、上下方向に2段に並んでいる。さらに上段の光スポットの中心は、下段の光スポットの中心に対して左右方向にずれるように配置されている。ここで、下段の光スポットは、発光部3側の副反射面54の光スポット(SE)と受光部4側の副反射面54の光スポット(SR)も含む。このような光スポットの配置によって、隣接する光スポットとの重なりが各光スポットの総強度に対し小さくなるように距離をとりながら、限られた反射面の面積において多くの光スポットが存在する構成が可能になる。
【0032】
ここで、第1の反射部51から第2の反射部52への光路及び第2の反射部52から第1の反射部51への光路の合計数がNである場合に、主反射面53における光スポットの数は((N/2)-1)である。この計算において、光路の数は、反射するまでの内部空間を直進する部分を1つとする。本実施形態に係る光学式濃度測定装置1では、第1の反射部51と第2の反射部52の間の光路の合計数が8以上の4の倍数であるように設計される。図4は、第1の反射部51と第2の反射部52の間の光路の合計数が8の場合を示す図である。図5は、第1の反射部51と第2の反射部52の間の光路の合計数が12の場合を示す図である。図6は、第1の反射部51と第2の反射部52の間の光路の合計数が16の場合を示す図である。図7は、第1の反射部51と第2の反射部52の間の光路の合計数が20の場合を示す図である。図3の例の主反射面53における光スポット(S1、S2及びS3)は、第1の反射部51と第2の反射部52の間の光路の合計数が8の場合に対応する。第1の反射部51と第2の反射部52の間の光路の合計数が増加すると、主反射面53における光スポットの数も増加する。本実施形態では、第1の反射部51と第2の反射部52の間の光路の合計数が12又は16の場合にも、主反射面53における複数の光スポットは、側面視で左右方向及び上下方向に並び、光スポットの中心が上下方向に揃っていないように配置される。すなわち、隣接する光スポットとの重なりを各光スポットの総強度に対し小さくしながら、限られた反射面の面積において高い密度で光スポットが配置される。このことによって、光学式濃度測定装置1を大型化させることなく、第1の反射部51と第2の反射部52の間の光路の合計数を増やす、すなわち光路長をさらに延ばすことができる。つまり、外乱の影響を小さくすることができ、小型で測定精度が高い光学式濃度測定装置1を実現できる。
【0033】
ここで、図8は、第2の反射部52における反射面の最凹部と、第1の反射部51と第2の反射部52の間の光路の合計数(N)との関係を説明するための図である。図8は、シミュレーションによる光路図を示しており、上図がN=8の場合であり、下図がN=16の場合である。図8に示すように、第1の反射部51と第2の反射部52の間の光路の合計数が増加すると、第2の反射部52における反射面の最凹部であるR1とR2と2点の最凹部の中間点との間隔が狭まっていく。第2の反射部52における反射面の最凹部は、基板2の主面20に垂直な方向であるz軸と平行な面と第2の反射部52の反射面との交点が2点となるときの交点をいう。光路の合計数が増えると、2点の最凹部であるR1とR2の間隔が狭くなる。最終的にR1とR2の間隔が0となり、第2の反射部52が1つの二次曲面となることで第2の反射部52と主反射面53との間を光が複数回往復できなくなる。この現象を解決するには光学式濃度測定装置1の幅方向(x軸方向)のサイズを拡大する必要がある。すなわち、光路長を延ばすと、光学式濃度測定装置1の幅方向(x軸方向)のサイズを拡大する必要が生じることがある。シミュレーションによって、少なくともN=20では、光学式濃度測定装置1のサイズを大きくすることなく、光路長を延ばすことが可能であることが確認された。
【0034】
図9は、主反射面53と副反射面54の対称軸の関係を説明するための図である。光学式濃度測定装置1は、俯瞰視で、2つの副反射面54の対称軸(L2)のそれぞれが、主反射面53の対称軸(L1)に対して平行でないことが好ましい。このような構成にすることで第2の反射部52上での光の反射箇所が、2つの副反射面54の対称軸(L2)のそれぞれが主反射面53の対称軸(L1)に対して平行であるときに比べて、第2の反射部52における反射面の最凹部であるR1とR2に近づく。収差は反射面の最凹部からの距離である入射高に対し2乗又は3乗の関係を有しているため、このような構成によって、球面収差の影響を低減することができる。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る光学式濃度測定装置1は、上記の構成によって、小型でありながら測定精度を高めることが可能である。
【0036】
実施形態を諸図面及び実施例に基づき説明したが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意すべきである。
【0037】
例えば別の実施形態として、主反射面53は、副反射面54が形成されていない構成を取り得る。例えば、図10は本開示の別の実施形態に係る光学式濃度測定装置1の一部を透過させた斜視図である。図10の例において、第1の反射部51は、二次曲面である主反射面53のみを有する。また、発光部3及び受光部4は、基板の主面を正面に見る俯瞰視で第2の反射部52に対向するように設けられる。図10の例において、発光部3及び受光部4は、発光面の反対側の面及び受光面の反対側の面が主反射面53に対向するように設けられており、副反射面54を介さず直接的に、第2の反射部52に光を受発光させる。また、図10において発光部3及び受光部4は、反射部51と反射部52に囲われている内部側に配置されている。別の構成として、反射部51の一部に穴を設けて、反射部51の後方(y軸正方向)に発光部3及び受光部4を配置し、副反射面54を介さず直接的に、第2の反射部52に光が受発光されてよい。
【符号の説明】
【0038】
1 光学式濃度測定装置
2 基板
3 発光部
4 受光部
5 導光部
6 光学フィルタ
20 主面
51 第1の反射部
52 第2の反射部
53 主反射面
54 副反射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10