(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132880
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電極及びその製造方法、並びに非水系蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 4/02 20060101AFI20240920BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240920BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240920BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/04 Z
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008461
(22)【出願日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2023042475
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大木本 美玖
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘規
(72)【発明者】
【氏名】鷹氏 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】野勢 大輔
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 拓也
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA19
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA29
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA19
5H050EA23
5H050FA02
5H050FA17
5H050GA01
5H050GA02
5H050GA12
5H050GA22
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】使用条件に関わらず、耐ブロッキング性に優れ、かつ絶縁体表面の平滑性に優れる電極の提供。
【解決手段】基体1001と、前記基体上に設けられた電極合材層1002と、前記電極合材層上に設けられた絶縁体層と、を有する電極であって、前記絶縁体層は、前記電極合材層上に設けられ、骨格及び空隙を有する多孔質層1003と、前記多孔質層上に設けられ、粒子を含む粒子層1004と、を有し、前記粒子の融点(Tma)又はガラス転移温度(Tga)は、前記多孔質層の融点(Tmb)又はガラス転移温度(Tgb)よりも高く、前記粒子の体積平均粒径(nm)は、前記空隙の平均直径(nm)よりも大きいことを特徴とする電極である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体上に設けられた電極合材層と、
前記電極合材層上に設けられた絶縁体層と、を有する電極であって、
前記絶縁体層は、
前記電極合材層上に設けられ、骨格及び空隙を有する多孔質層と、
前記多孔質層上に設けられ、粒子を含む粒子層と、を有し、
前記粒子の融点(Tma)又はガラス転移温度(Tga)は、前記多孔質層の融点(Tmb)又はガラス転移温度(Tgb)よりも高く、
前記粒子の体積平均粒径(nm)は、前記空隙の平均直径(nm)よりも大きいことを特徴とする電極。
【請求項2】
前記多孔質層は、前記骨格及び前記空隙の双方がともに連続した両相連続構造である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記粒子の体積平均粒径は、100nm以上1,000nm以下である、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記空隙の平均直径は、10nm以上200nm以下である、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記多孔質層の平均厚さは、5μm以上20μm以下であり、
前記粒子層の平均厚さは、0.5μm以上10μm以下である、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記骨格は、光硬化性樹脂の硬化物を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記硬化物は、架橋構造を有する、請求項6に記載の電極。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の電極を有することを特徴とする非水系蓄電素子。
【請求項9】
粒子層形成工程を含む電極の製造方法であって、
前記粒子層形成工程は、基体上に設けられた電極合材層上に形成された、骨格及び空隙を有する多孔質層上に、粒子層形成用液体組成物を塗布する粒子層形成用液体組成物塗布工程を含み、
前記粒子層における粒子の融点(Tma)又はガラス転移温度(Tga)は、前記多孔質層の融点(Tmb)又はガラス転移温度(Tgb)よりも高く、
前記粒子の体積平均粒径(nm)は、前記空隙の平均直径(nm)よりも大きいことを特徴とする電極の製造方法。
【請求項10】
前記電極合材層上に前記多孔質層を形成する多孔質層形成工程を含み、
前記多孔質層形成工程は、前記電極合材層上に塗布された多孔質層形成用液体組成物に対して光を照射する照射工程を含む、請求項9に記載の電極の製造方法。
【請求項11】
前記多孔質層形成工程は、多孔質層形成用溶媒を加熱して除去する多孔質層形成用液体組成物加熱工程を含み、
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程は、前記照射工程の後、かつ前記粒子層形成工程の前に行われる、請求項10に記載の電極の製造方法。
【請求項12】
前記多孔質層形成工程は、多孔質層形成用溶媒を加熱して除去する多孔質層形成用液体組成物加熱工程を含み、
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程は、前記粒子層形成工程と同時、又は前記粒子層形成工程よりも後に行われる、請求項10に記載の電極の製造方法。
【請求項13】
前記粒子層形成工程は、粒子層形成用溶媒を加熱して除去する粒子層形成用液体組成物加熱工程を含み、
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程と、前記粒子層形成用液体組成物加熱工程とは、同時に行われる、請求項12に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極及びその製造方法、並びに非水系蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子、例えばリチウムイオン二次電池等の二次電池は、携帯機器、ハイブリット自動車、電気自動車等へ搭載され、需要が拡大している。また、各種ウェアラブル機器や医療用パッチに搭載する薄型電池に対するニーズが高まってきており、二次電池に対する要求(高出力、高容量、及び高寿命等)が多様化している。
【0003】
二次電池における電極としては、例えば、電極における電極合材層の外表面に対して、イミド高分子等の耐熱性架橋樹脂由来のイオン透過性多孔質絶縁層を形成し、高容量でかつ充放電サイクルが良好な、安全性に優れたリチウム二次電池用電極が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、絶縁体表面の平滑性に優れるとともに、使用条件に関わらず耐ブロッキング性に優れる電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の電極は、以下の通りである。即ち、
基体と、
前記基体上に設けられた電極合材層と、
前記電極合材層上に設けられた絶縁体層と、を有する電極であって、
前記絶縁体層は、
前記電極合材層上に設けられ、骨格及び空隙を有する多孔質層と、
前記多孔質層上に設けられ、粒子を含む粒子層と、を有し、
前記粒子の融点(Tma)又はガラス転移温度(Tga)は、前記多孔質層の融点(Tmb)又はガラス転移温度(Tgb)よりも高く、
前記粒子の体積平均粒径(nm)は、前記空隙の平均直径(nm)よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、絶縁体表面の平滑性に優れるとともに、使用条件に関わらず耐ブロッキング性に優れる電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の電極(負極)の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の電極(正極)の一例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の電極の製造装置の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の電極の製造装置の他の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の電極の製造装置のさらに他の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の電極の製造方法の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、液体吐出装置の変形例の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の電極の製造装置としてのドラム状の中間転写体を用いた印刷部の一例を示す構成図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の電極の製造装置としての無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部の一例を示す構成図である。
【
図10】
図10は、本発明の非水系蓄電素子である全固体電池を搭載した移動体の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一般的に、リチウムイオン電池等の二次電池における電極としては、基体上に活物質を含む電極合材層を積層したものが使用されており、当該電極表面には、活物質由来の微細な凹凸が存在している。電極表面に傷や凹凸等の欠陥部が存在すると、当該欠陥部に特定の物質が堆積し、電極界面への物理的接触に起因する内部短絡やリーク等が発生し易くなり、サイクル特性等の性能低下につながることがある。そのため、デバイス性能において、電極表面の平滑性は非常に重要である。
このような課題を解決する手段として、上述の特許文献1に記載されたリチウムイオン二次電池用電極のように、電極合材層上にイオン透過性多孔質絶縁層を形成することで、短絡やリークを抑制し、電池のサイクル特性等の性能を向上させる技術が提案されている。しかしながら、上述の特許文献1に記載されたリチウムイオン二次電池用電極表面には、イオン透過性多孔質絶縁層由来の微細な凹凸が依然として存在し、電極表面の平滑性については改善の余地があった。
【0009】
上述の特許文献1に記載されたリチウムイオン二次電池用電極のように、電極最表層が樹脂由来の多孔質層であると、電極製造時においてブロッキングが生じるという問題があった。具体的には、樹脂由来の多孔質層を最表面に有する電極(電極シート)をロール状に巻き取る際に、当該多孔質層と他の層と間に接着(ブロッキング)が生じ、それに起因して電極(特にセパレータ)が損傷するという問題あった。また、電極最表層が樹脂由来の多孔質層であると、高温条件下及び/又は高圧条件下において、当該多孔質層が溶融することがあり、それに起因してブロッキングやセパレータの劣化等の問題も生じていた。そのため、電極最表層が耐ブロッキング性に優れることは非常に重要である。
【0010】
本発明者らが鋭意検討したところ、多孔質層上に、融点又はガラス転移点が高い粒子を含む粒子層を形成することにより、上記問題、即ち平滑性及び耐ブロッキングを解決できることを知見した。具体的には、以下の通りである。
上述の通り、多孔質層表面には、多孔質構造由来の微細な凹凸が存在しているところ、当該多孔質層表面を粒子層によって覆うことで、電極(特に絶縁体)表面の平滑性を向上させることができる。このことは、粒子層の表面粗さ(凹凸度合い)は、多孔質層の表面粗さに比して小さいことに起因する。
また、当該多孔質層表面を粒子層によって覆うことで、当該多孔質層と他の部材との物理的接触を防ぐことができ、結果として耐ブロッキング性を向上させることができる。
粒子層に含まれる粒子は、当該多孔質層の融点(Tmb)又はガラス転移温度(Tgb)に比し、高い融点(Tma)又は高いガラス転移温度(Tga)を有しているため、高温条件下及び/又は高圧条件下において、多孔質層が溶融し変性することを防ぐことができ、結果として耐ブロッキング性を向上させ、かつセパレータ(絶縁体)の劣化も抑制することができる。
【0011】
以下、図面を参照して本発明の電極について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
図1は、本発明の電極(負極)の一例を示す概略断面図である。
負極1000は、負極用基体1001と、負極用基体1001上に形成された負極合材層1002と、負極合材層1002上に形成された多孔質層1003と、多孔質層1003上に形成された粒子層1004とを有する。本明細書においては、当該多孔質層1003及び当該粒子層1004を合わせて、「絶縁体層」と称することもある。
【0013】
図2は、本発明の電極(正極)の一例を示す概略断面図である。
正極2000は、正極用基体2001と、正極用基体2001上に形成された正極合材層2002と、正極合材層2002上に形成された多孔質層2003と、多孔質層2003上に形成された粒子層2004とを有する。本明細書においては、当該多孔質層2003及び当該粒子層2004を合わせて、「絶縁体層」と称することもある。
【0014】
以下に、本発明の詳細を記載する。
【0015】
(電極)
本発明の電極は、基体と、電極合材層と、絶縁体層とを有し、必要に応じてその他の層を有していてもよい。
【0016】
<基体>
前記基体の材質としては、集電体として機能するような導電性を有するものであれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニッケル、アルミニウム、銅、チタン等の金属などが挙げられる。
当該基体の形状としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、基体の両表面に後述する電極合材層を形成できる点、及び複数の電極を積層させて電池容量を向上させることができる点から、板状又は箔状であることが好ましい。
当該基体としては、上述の金属に対してエッチングを行い、微細な孔を形成したエッチド箔や、リチウムイオンキャパシターに用いられる穴あき電極基体などを使用することもできる。さらには、ガラスやプラスチック等の平面基体上に、導体や半導体由来の薄膜、及び導電性電膜等を蒸着させたものを当該基体として用いてもよい。
【0017】
<電極合材層>
前記電極合材層は、前記基体上に設けられる、活物質を含む層であり、必要に応じて樹脂等のバインダ(結着剤)、導電助剤、電極合材層形成用分散剤、その他の成分などが含まれていてもよい。
本明細書において、正極に用いられる電極合材層は「正極合材層」、負極に用いられる電極合材層は「負極合材層」と称することがある。
本明細書において、正極の電極合材層に含まれる活物質は「正極活物質」、負極の電極合材層に含まれる活物質は「負極活物質」と称されることがある。
【0018】
前記電極合材層の形状としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、前記基体と同様の形状、即ち板状であることが好ましい。
【0019】
<<正極活物質>>
前記正極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出可能なものであれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカリ金属含有遷移金属化合物などが挙げられる。当該アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、リチウム含有遷移金属化合物、カルコゲン化合物、二酸化マンガンなどが挙げられる。
【0020】
当該リチウム含有遷移金属化合物としては、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄、及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素と、リチウムとを含む複合酸化物などが挙げられる。より具体的には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム含有遷移金属酸化物、LiFePO4等のオリビン型リチウム塩などが挙げられる。
当該リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物、又は当該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。当該異種元素としては、例えば、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bなどが挙げられる。これらの中でも、Mn、Al、Co、Ni、及びMgが好ましい。当該異種元素は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0021】
当該カルコゲン化合物としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどが挙げられる。
【0022】
これらの正極活物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
前記正極活物質としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該正極活物質の市販品としては、例えば、商品名で、ニッケル酸リチウム503H(JFEミネラル株式会社製)などが挙げられる。
【0024】
<<負極活物質>>
前記負極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出可能なものであれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料などが挙げられる。より具体的には、天然黒鉛、球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)などが挙げられる。
前記負極活物質としては、当該炭素材料以外にチタン酸リチウムも使用することができる。また、リチウムイオン二次電池に負極を供した場合に、当該リチウムイオン二次電池のエネルギー密度が高まる観点から、シリコン、錫、シリコン合金、錫合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化錫等の高容量材料も好適に使用することができる。
【0025】
前記負極活物質としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該負極活物質の市販品としては、例えば、商品名で、SCMG-XRs(リチウムイオン電池用人造黒鉛、昭和電工株式会社製)などが挙げられる。
【0026】
<<バインダ>>
前記電極合材層には、前記活物質以外にもバインダ(結着剤)が含まれていてもよい。
当該バインダとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Difluoride:PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene:PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
当該バインダとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上のモノマー又はポリマーを材料とした共重合体を用いてもよい。
これらのバインダは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
<<導電助剤>>
前記電極合材層には、前記活物質以外にも導電助剤が含まれていてもよい。
前記導電助剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料などが挙げられる。
前記導電助剤は、前記活物質と複合化されていてもよい。
【0028】
<<電極合材層形成用分散剤>>
前記電極合材層形成用分散剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高分子分散剤、界面活性剤、無機型分散剤などが挙げられる。
当該高分子分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸系分散剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系分散剤、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系分散剤、ポリエーテル系分散剤、ポリアルキレンポリアミン系分散剤などが挙げられる。
当該界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸系分散剤、四級アンモニウム塩系分散剤、高級アルコールアルキレンオキシド系分散剤、多価アルコールエステル系分散剤、アルキルポリアミン系分散剤などが挙げられる。
当該無機型分散剤としては、例えば、ポリリン酸塩系分散剤などが挙げられる。
【0029】
<<その他の成分>>
前記電極合材層におけるその他の成分としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などが挙げられる。
【0030】
[正極合材層の平均厚さ]
前記正極合材層の平均厚さとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができるが、10μm以上300μm以下であることが好ましく、40μm以上150μm以下であることがより好ましい。
当該正極合材層の平均厚さが10μm以上であると、リチウムイオン二次電池等の電気化学素子におけるエネルギー密度が向上するため好適である。
当該正極合材層の平均厚さが300μm以下であると、リチウムイオン二次電池等の電気化学素子の負荷特性が向上するため好適である。
【0031】
[負極合材層の平均厚さ]
前記負極合材層の平均厚さとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができるが、10μm以上450μm以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましい。
当該負極合材層の平均厚さが10μm以上であると、リチウムイオン二次電池等の電気化学素子のエネルギー密度が向上するため好適である。
当該負極合材層の平均厚さが450μm以下であると、リチウムイオン二次電池等の電気化学素子のサイクル特性が向上するため好適である。
【0032】
前記電極合材層の平均厚さの測定方法としては、特に制限はないが、例えば、以下の方法にて測定することができる。
[電極合材層の平均厚さの測定方法]
電極基体、電極合材層、絶縁体層が含まれるように電極を5mm角に切り出し、脱気処理した樹脂(2液混合、30分硬化型エポキシ樹脂、Devcon社製)に浸漬させ、40℃のオーブンで12時間硬化処理をする。十分に硬化した後、カミソリ、イオンミリング、マイクロミクロトーム等を用いて厚み方向に割断し、断面試料を作製する。得られた断面試料にクロスセクションポリッシャー(SM-09010、JEOL社製)を用いて、加速電圧5.0kV、ビーム電流120μAの条件にて、断面の仕上げ加工を行う。次に、走査型電子顕微鏡(Merlin、Carl Zeiss社製)を用いて、加速電圧2.0kV、倍率2500倍の条件にて、電極合材層の上端及び下端が含まれるような断面をランダムに撮影して得られた複数枚の画像をTIFF画像に取り込み、画像解析ソフト(Image-Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて、当該断面における電極合材層の面積と、当該断面における電極合材層の幅方向、すなわち電極基体と水平方向の長さを、画像解析により得られたスケールバー及び画素数から算出し、当該面積を当該幅方向の長さで除することにより膜厚を算出する。
なお「平均厚さ」は、得られた複数枚の画像のうち、10点を測定したものを平均して求める。
【0033】
前記電極合材層は、電極合材層形成用液体組成物によって作製することができる。なお、当該電極合材層の具体的な作製方法については、後述する。
【0034】
<<電極合材層形成用液体組成物>>
前記電極合材層形成用液体組成物は、活物質、分散媒、バインダ、導電助剤、電極合材層形成用分散剤、その他の成分を含有していてもよい。
なお、当該活物質、当該バインダ、当該導電助剤、当該電極合材層形成用分散剤、及び当該その他の成分は、上述の<電極合材層>の項目に記載のものと同じであるため説明を省略する。
【0035】
-分散媒-
前記分散媒としては、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等の水性分散媒、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、メシチレン、2-n-ブトキシメタノール、2-ジメチルエタノール、N,N-ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
前記電極合材層形成用液体組成物の25℃での粘度は、200mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることより好ましく、50mPa・s以下であることがさらに好ましい。
当該電極合材層形成用液体組成物の25℃での粘度が200mPa・s以下であると、液体吐出装置で吐出した際に、吐出不良が発生しにくくなるため好適である。
当該電極合材層形成用液体組成物の粘度の測定方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、JIS Z8803に準じて測定することができる。当該粘度の測定に用いる装置としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TV25型粘度計(コーンプレート型粘度計、東機産業株式会社製)などが挙げられる。
【0037】
<絶縁体層>
前記絶縁体層は、前記電極合材層上に設けられる層であり、多孔質層と粒子層とを有する。
【0038】
<<多孔質層>>
前記多孔質層は、前記電極合材層上に設けられ、骨格及び空隙を有する層であり、必要に応じて、多孔質層形成用分散剤、粘度調整剤、添加剤、その他の成分などが含まれていてもよい。
【0039】
前記多孔質層の構造としては、骨格及び空隙を有していれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、二次電池における電解質の浸透性やイオン導電性が担保される観点から、三次元方向に分岐した網目構造を有する骨格と、連通した空隙とを有することが好ましい。換言すると、当該多孔質層の構造としては、共連続構造(モノリス構造)、即ち当該骨格及び当該空隙の双方がともに連続した両相連続構造であることが好ましい。
なお、前記多孔質層をウェットオンウェット(wet-on-wet)方式で形成する場合に生じる、内部にポロジェンが含まれる空隙も、本明細書における「空隙」に含むものとする。
当該多孔質層が両相連続構造を有することによって、電解質の浸透性やイオン透過性がより向上し、二次電池のサイクル特性が向上するため好適である。
【0040】
前記多孔質層における骨格は、重合性化合物(モノマー)の硬化物を含むことが好ましく、重合性化合物の硬化物のみからなることがより好ましい。当該重合性化合物としては、光硬化性樹脂が好ましい。
【0041】
前記硬化物は、前記多孔質層の物理的強度が向上する観点から、架橋構造を有していることが好ましい。
【0042】
前記多孔質層における空隙の断面形状としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、略円形状、略楕円形状、略多角形状などが挙げられ、単独又は複数の形状が混在していてもよい。
【0043】
[空隙の平均直径]
本発明の電極において、前記多孔質層における空隙の平均直径は、後述する粒子層における粒子の体積平均粒径よりも小さい。ここで「平均直径」とは、前記多孔質層を面方向に対して直角に切断して得られる断面において、1つの空隙部分のうち最も長い線分の平均長さを示す。
当該多孔質層における空隙の平均直径としては、後述する粒子層における粒子の体積平均粒径よりも小さければ、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、10nm以上200nm以下であることが好ましい。当該空隙の平均直径が10nm以上であると、平滑性が向上し、多孔質層及び電極合材層への電解液浸透性が向上するため好ましい。当該空隙の平均直径が200nm以下であると、多孔質層の耐圧縮性が向上するため好ましい。また、空隙の平均直径が大きいと、粒子層の粒子が部分的に空隙に入り込み、その部分は膜厚が小さくなるため平滑性の低下が生じ、かつ膜厚が小さくなった部分では多孔質層がわずかに露出する場合があり、ブロッキングが生じるといった問題を解決することができる。
【0044】
前記多孔質層における空隙の平均直径の測定方法としては、特に制限はないが、例えば、以下の方法によって測定することができる。
[空隙の平均直径の測定方法]
多孔質層を5mm×10mmサイズの多孔質構造体として切り出し、四酸化オスミウム(VIII)(イーエム株式会社製)を用いてオスミウム染色する。前記水溶液が少量入った瓶の中に、水溶液に触れないように切り出した多孔質構造体を入れ、密閉した瓶の中で30分間静置し、染色する。その後、1時間ドラフト内で乾燥させることで染色したサンプルを得る。
十分に乾燥させた後、二液混合タイプのエポキシ樹脂(ITWパフォーマンスポリマーズ&フルイズジャパン製)で真空含浸する。その後、クライオFIB/SEM(日本FEI株式会社製)を用いて断面を切り出し断面観察する。この切り出し-観察操作を奥行き方向に10nmピッチで繰り返し実施し、複数枚の観察画像群を得る。得られた画像群をGeoDict(Math 2 Market GmbH社製)を用いて二値化および画像結合を行い、3μm四方の3D構造化した上で、構造内のエポキシ樹脂領域(空隙領域)の平均直径を算出する。なお、この際の二値化条件は、オスミウムによって染色された多孔質骨格領域と、オスミウムによって染色されていないエポキシ樹脂領域の境界が明確になる様に適切に設定することができる。
【0045】
[空隙率]
前記多孔質層における空隙率としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、30%以上60%以下であることが好ましく、35%以上60%以下であることがより好ましい。当該空隙率が30%以上であることによって、多孔質層のイオン透過性が向上するため好ましい。当該空隙率が60%以下であることによって、多孔質層の耐圧縮性が向上するため好ましい。
【0046】
[空隙の分布]
前記多孔質層における空隙の分布としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、電解液の浸透性に優れるという観点から厚み方向に均一に分布していることが好ましい。具体的には、領域(A)における空隙率と領域(B)における空隙率との差(以下、空隙率差と称することがある)が20%以内であることが好ましく、10%以内であることがより好ましい。
なお、当該領域(A)は、前記多孔質層を面方向に対して直角に切断して得られる断面において、前記多孔質層の最上端部から前記粒子層方向へ1μm分離れた領域を示す。
なお、当該領域(B)は、前記多孔質層を面方向に対して直角に切断して得られる断面において、前記多孔質層と前記粒子層との接触界線から、前記電極合材層方向へ1μm分離れた領域を示す。
【0047】
前記多孔質層における空隙率の測定方法としては、特に制限はないが、例えば、以下の方法によって測定することができる。
[空隙率の測定方法]
電極を5mm角に切り出し、不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填してオスミウム染色を施した後に、FIBで内部の断面構造を切り出し、SEMを用いて樹脂中の空隙率を測定する。また、前記空隙率差は、得られた二値化画像における領域(A)及び領域(B)をトリミングし、それぞれの空隙部の割合面積を算出することによって求める。
【0048】
[被覆率]
前記電極合材層に対する前記多孔質層の被覆率としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。当該被覆率が90%以上であると、多孔質層の耐圧縮性が向上するため好適である。
【0049】
図1及び
図2に示される通り、前記多孔質層の一部は、前記正極合材層又は前記負極合材層の一部と一体化されていてもよい。ここで「一体化」とは、部材が単に積層された状態ではなく、上層の一部が下層に入り込み、界面が明確でない状態で、上層を構成する物質の一部と、下層を構成する物質の一部とが結着している状態を示す。
【0050】
[多孔質層の平均厚さ]
本明細書における「多孔質層の平均厚さ」とは、
図1又は
図2における多孔質層1003又は多孔質層2003の上面から、負極活物質1002又は正極活物質2002の内部に存在する多孔質層の最下部までを含めた厚さを示す。
前記多孔質層の平均厚さとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、平滑性、耐ブロッキング性、及び多孔質層の絶縁性が向上する観点から、5μm以上が好ましい。
前記多孔質層の平均厚さとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、二次電池において正極と負極との間隔が狭まった結果、イオンの移動が容易となり、二次電池のサイクル特性が向上する観点から、20μm以下が好ましい。
【0051】
前記多孔質層の平均厚さの測定方法としては、特に制限はないが、例えば、以下の方法にて測定することができる。
[多孔質層の平均厚さの測定方法]
電極基体、電極合材層、絶縁体層が含まれるように電極を5mm角に切り出し、脱気処理した樹脂(2液混合、30分硬化型エポキシ樹脂、Devcon社製)に浸漬させ、40℃のオーブンで12時間硬化処理をする。十分に硬化した後、カミソリ、イオンミリング、マイクロミクロトーム等を用いて厚み方向に割断し、断面試料を作製する。得られた断面試料にクロスセクションポリッシャー(SM-09010、JEOL社製)を用いて、加速電圧5.0kV、ビーム電流120μAの条件にて、断面の仕上げ加工を行う。次に、走査型電子顕微鏡(Merlin、Carl Zeiss社製)を用いて、加速電圧2.0kV、倍率2500倍の条件にて、多孔質層の上端及び下端が含まれるような断面をランダムに撮影して得られた複数枚の画像をTIFF画像に取り込み、画像解析ソフト(Image-Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて、当該断面における多孔質層の面積と、当該断面における多孔質層の幅方向、すなわち電極基体と水平方向の長さを、画像解析により得られたスケールバーおよび画素数から算出し、当該面積を当該幅方向の長さで除することにより膜厚を算出する。
なお「平均厚さ」は、得られた複数枚の画像のうち、10点を測定したものを平均して求める。
【0052】
当該多孔質層の一部と、当該電極合材層の一部とが一体化している場合、当該多孔質層の平均厚みに対する0.5%以上の厚さ分が、当該電極合材層の内部に存在していることが好ましい。また、当該多孔質層の平均厚みに対する1.0%以上の厚さ分が、当該電極合材層の内部に存在していることが好ましい。
当該多孔質層の平均厚みに対する0.5%以上の厚さ分が、当該電極合材層の内部に存在していると、当該電極合材層と当該多孔質層との間にアンカー効果が得られ、圧縮による多孔質層の剥離やズレを抑制することができる。
【0053】
前記多孔質層は、多孔質層形成用液体組成物によって作製することができる。なお、当該多孔質層の具体的な作製方法については、後述する。
【0054】
<<<多孔質層形成用液体組成物>>>
前記多孔質層形成用液体組成物は、重合性化合物を含み、必要に応じて、多孔質層形成用溶媒、多孔質層形成用分散剤、重合開始剤、消泡剤、その他の成分などを含んでいてもよい。
当該多孔質層形成用液体組成物は、重合性化合物を主成分として含むことが好ましい。ここで「重合性化合物を主成分として含む」とは、当該重合性化合物の含有量が当該多孔質層形成用液体組成物全量に対して50質量%以上含まれていることを示す。
【0055】
―重合性化合物―
前記重合性化合物は、前記多孔質層における骨格を形成するための樹脂前駆体に該当し、光や熱等の刺激によって架橋性構造体の形成が可能な化合物である。
当該重合性化合物の具体例としては、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル、エン-チオール反応を活用した樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル重合を利用することで容易に構造体を形成することができる点で、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。
【0056】
前記重合性化合物としては、ラジカル重合性官能基を有するものが好ましい。当該ラジカル重合性官能基数としては、特に制限はなく、1官能、2官能、3官能以上のいずれであってもよい。また、当該ラジカル重合性官能基を有する重合性化合物は、モノマーであってもオリゴマーであってもよい。
これらの中でも、前記多孔質層の耐圧縮性が向上する観点から、ラジカル重合性官能基数が2以上の重合性化合物が好ましい。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
前記ラジカル重合性官能基数が1である重合性化合物としては、例えば、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
【0058】
前記ラジカル重合性官能基数が2である重合性化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどが挙げられる。
【0059】
前記ラジカル重合性官能基数が3以上である重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5-テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。
【0060】
前記重合性化合物を硬化させてなる硬化物のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。
当該硬化物のガラス転移温度(Tg)が100℃以上であると、前記多孔質層が高温時において変性することがなく、絶縁性が維持されるため好適である。
【0061】
―多孔質層形成用溶媒―
前記多孔質層形成用溶媒は、ポロジェンと称されることがある。当該ポロジェンは、前記多孔質層形成用液体組成物における成分、特に前記重合性化合物を溶解することができ、かつ重合の進行に伴い、当該重合性化合物が相分離することが可能な液状溶媒である。
当該ポロジェンの具体例としては、例えば、エーテル類、高級アルコール類、ラクトン類、エステル類、アミド類、炭化水素類などが挙げられる。
当該エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
当該高級アルコール類としては、例えば、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコールなどが挙げられる。
当該ラクトン類としては、例えば、γブチロラクトンなどが挙げられる。
当該エステル類としては、例えば、炭酸プロピレン、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチルなどが挙げられる。
当該アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
当該炭化水素類としては、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカンなどが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
―重合開始剤―
前記重合開始剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光ラジカル発生剤を使用することができる。
当該光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、α-ヒドロキシ-もしくは、α-アミノセトフェノン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、pp’-ジクロロベンゾフェン、pp’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、ゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾイン-n-プロピル等のベンゾインアルキルエ-テルやエステル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド又はチタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン又はキサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物又はジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。
前記光ラジカル発生剤以外にも、ビスアジド化合物等の光架橋型ラジカル発生剤や、熱でラジカルを発生させる熱重合開始剤、光照射により酸を発生する光酸発生剤などを使用することができる。
これらは1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
―その他の成分―
前記多孔質層形成用液体組成物におけるその他の成分としては、例えば、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどが挙げられる。これらの成分を含むことにより、電極のサイクル寿命が改善するため好ましい。
【0064】
<<粒子層>>
前記粒子層は、前記多孔質層上に設けられ、粒子を含む層であり、必要に応じて、粒子層形成用分散剤、バインダ、界面活性剤、その他の成分などが含まれていてもよい。
電極最表層として当該粒子層を有することで、電極(特に絶縁体)表面の平滑性を向上させることができる。また、当該多孔質層表面を当該粒子層によって覆うことで、当該多孔質層と他の部材との物理的接触を防ぐことができ、結果として耐ブロッキング性を向上させることができる。
【0065】
ここで、本明細書における「平滑性」は、電極の表面粗さ、即ち前記粒子層の表面粗さを測定することによって表すことができる。
前記粒子層の表面粗さとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、7μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。
前記粒子層の表面粗さが7μm以下であることにより、当該粒子層の厚みのばらつきに起因して、電池性能にばらつきが生じることを抑制することができる。また、粒子層における面上の凹凸における凸部からの剥離を抑制し、膜の耐久性を向上させることができ、結果として強度の高い絶縁体層を得ることができる。
【0066】
当該表面粗さは、特に制限なく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、レーザー顕微鏡を用いて測定することができる。当該レーザー顕微鏡としては、例えば、VK-X3000(倍率:50倍、株式会社キーエンス製)などが挙げられる。
【0067】
[多孔質層に対する粒子層の被覆率]
前記多孔質層上に設けられた前記粒子層の被覆率としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。
当該粒子層の被覆率が40%以上であると、前記多孔質層の表面を粒子層によって十分に覆うことができ、層全体にばらつきなく、耐熱性、表面耐摩耗性、及び耐久性を向上させることができ、結果として強度の高い絶縁体層を得ることができる。
特に、電池等の蓄電素子、燃料電池等の発電素子などの電池用途において、基体としての電極上に形成される絶縁体層として用いる場合、強度の高い絶縁体層を得ることができ、絶縁体層の薄膜化が可能となる。一般に、絶縁体層を薄膜化すると、厚膜と比べて機械的強度が低下し、絶縁体層においては、外部からの衝撃や素子内の圧力によって変形しやすくなるため絶縁性が維持できず、本来のセパレータの機能が担保できないという問題がある。しかしながら、本実施形態によれば、機械的強度が十分に高い絶縁体層を得ることができるため、薄膜であっても絶縁体層による機能を十分に得ることができる。
また、絶縁体層の薄膜化により、電極間の距離が短くなるため、電池内の電気抵抗(内部抵抗)が低下し、入出力特性などの高い電池性能を得ることも可能となる。
さらに、絶縁体層の薄膜化により、電池の大容量化や小型化が期待できる。
【0068】
[多孔質層に対する粒子層の被覆率の測定方法]
前記多孔質層に対する前記粒子層の被覆率の測定方法としては、特に制限はないが、例えば、以下の方法によって測定することができる。
多孔質層上の粒子層を、走査型電子顕微鏡(Merlin、Carl Zeiss社製)を用いて、例えば、加速電圧2.0kV、倍率2500倍の条件にて表面を観察する。このようにして、多孔質層上に形成された粒子層の反射電子像を得る。続いて、得られた画像をTIFF画像に取り込み、画像解析ソフト(Image-Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて二値化を行い、多孔質層上の粒子層の被覆率を算出する。なお、この際の二値化条件は、多孔質層領域と、粒子層領域の境界が明確になる様に適切に設定することができる。なお、多孔質層領域と粒子層領域の識別方法は、各領域が識別できれば特に制限されず、例えば、粒子層の色味、形状、大きさ等による識別、或いは元素分析マッピング等により識別する方法などがある。
【0069】
[融点及びガラス転移温度]
本明細書においては、当該粒子の融点を「Tma」と称し、当該粒子のガラス転移温度を「Tga」と称し、当該多孔質層の融点を「Tmb」と称し、当該多孔質構造層のガラス転移温度を「Tgb」と称することがある。
本発明の電極において、前記粒子の融点(Tma)又はガラス転移温度(Tga)は、前記多孔質層の融点(Tmb)又はガラス転移温度(Tgb)よりも高い。換言すると、前記粒子層に含まれる粒子の融点(Tma)は、前記多孔質層の融点(Tmb)よりも高く、前記粒子層に含まれる粒子のガラス転移温度(Tga)は、前記多孔質層のガラス転移温度(Tgb)よりも高い。当該粒子と当該多孔質層とがこのような関係性にあることで、高温条件下及び/又は高圧条件下において、多孔質層の溶融を防ぐことができ、結果として耐ブロッキング性を向上させ、かつセパレータ(絶縁体)の劣化も抑制することができる。
【0070】
前記粒子の融点(Tma)及びガラス転移温度(Tga)の測定方法、及び前記多孔質層の融点(Tmb)及びガラス転移温度(Tgb)の測定方法としては、特に制限はないが、例えば、以下の方法によって測定することができる。
[粒子の融点(Tma)の測定方法]
粒子又は多孔質層のガラス転移温度は、DSC(Q-2000、TAインスツルメント社製)を用いて測定する。具体的な測定方法としては、粒子又は多孔質層の固形分5mgをアルミニウム製の試料容器に入れて装置にセットし、窒素気流下において0℃まで冷却して5分間保持、10℃/minで400℃まで昇温を1サイクル目として熱履歴を除去する。その後、直ちに0℃まで冷却後に5分間保持し、10℃/minで400℃までの昇温を2サイクル目とする。2サイクル目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、切片が変化する開始温度と終了温度の中点法にてガラス転移温度Tgを、吸熱ピークの頂点にて融点Tmを求める。
上記方法にてTg又はTmが求められない場合は、Tgはなし、Tmは400℃以上若しくは主成分の文献値を採用する。例えば、アルミナであればTgなし、Tmは2000℃とする。
【0071】
本発明の電極において、前記粒子の体積平均粒径(nm)は、前記多孔質層における空隙の平均直径(nm)よりも大きい。このような関係性にあると、後述する粒子層形成用液体組成物を多孔質層上に塗布する工程において、当該粒子が当該空隙内に入り込むことで、表面が平滑な粒子層が形成できないといった問題を解消することができ好適である。同時に、当該粒子層形成用液体組成物が当該空隙内に染み込み過ぎてしまい、下層である多孔質層表面の一部が露出することにより、他の部材とのブロッキングが生じるといった問題を解消することができ好適である。
【0072】
前記粒子の体積平均粒径(nm)としては、前記多孔質層における空隙の平均直径(nm)よりも大きければ、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以上1,000nm以下であることが好ましい。
当該粒子の体積平均粒径が100nm以上であると、多孔質層の空隙を塞ぎにくく、イオン透過性を担保でき、かつ平滑性及び耐ブロッキング性に優れた粒子層を形成することができるため好適である。
当該粒子の体積平均粒径が1,000nm以下であると、より平滑性に優れた粒子層を形成することができるため好適である。
【0073】
前記粒子の体積平均粒径の測定方法としては、特に制限はないが、例えば、以下の方法によって測定することができる。
[粒子の体積平均粒径の測定方法]
前記固形分の粒子径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0074】
前記粒子としては、電気的な絶縁性が高いという観点から、無機粒子又は樹脂粒子であることが好ましい。
当該粒子としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、工業的に合成又は粉砕加工された粒子、セラミックス、鉱物資源由来の粒子などを使用することができる。
【0075】
当該無機粒子としては、酸化アルミニウム、二酸化チタン、チタン酸バリウム、二酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化マンガン、二酸化バナジウム、二酸化ケイ素、コージェライト、ステアタイト、フォルステライト、ムライト、ゼオライトなどが挙げられる。
これらの中でも、電気抵抗の大きさや安定性の観点から高純度の合成品が好ましく、特に高純度の酸化アルミニウム(α-アルミナ)がより好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0076】
前記無機粒子、及び前記樹脂粒子は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記酸化アルミニウムの市販品としては、例えば、商品名で、AKP-15、AKP-20、AKP-30、AKP-50、AKP-53、AKP-700、AKP-3000、AA-03、AA-04、AA-05、AA-07、AA-1.5、AKP-G07、AKP-G15(以上、住友化学株式会社製)、LS-235、LS-235C、LS-711、LS-711C、LS-500、LS-250(以上、日本軽金属株式会社製)、SERATH00610、SERATH02025(以上、キンセイマテック株式会社製)、TM-DA、TM-DAR、TM-5D(以上、大明化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0077】
前記樹脂粒子としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
前記樹脂粒子の市販品としては、例えば、商品名で、エポスタ―MX50W、エポスタ―MX100W、エポスタ―MX200W、エポスタ―MX300W、エポスタ―SS、エポスタ―S、エポスタ―FS、エポスタ―S6(以上、日本触媒社製)、テクポリマーSSX101(積水化成社製)、ファインスフェアFS-101、FS-102、FS-106、FS-107、MG-155、MG-651、PZP-1003(日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製)などが挙げられる。
【0079】
[粒子層の平均厚さ]
前記粒子層の平均厚さとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができるが、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。
当該粒子層の平均厚さが0.5μm以上であると、平滑性、かつ多孔質層を被覆してブロッキング抑制効果が得られるため好適である。
当該粒子層の平均厚さが10μm以下であると、平滑性、かつ高いイオン透過性を担保できるため好適である。
【0080】
前記粒子層の平均厚さの測定方法としては、特に制限はないが、例えば、以下の方法にて測定することができる。
[粒子層の平均厚さの測定方法]
電極基体、電極合材層、絶縁体層が含まれるように電極を5mm角に切り出し、脱気処理した樹脂(2液混合、30分硬化型エポキシ樹脂、Devcon社製)に浸漬させ、40℃のオーブンで12時間硬化処理をする。十分に硬化した後、カミソリ、イオンミリング、マイクロミクロトーム等を用いて厚み方向に割断し、断面試料を作製する。得られた断面試料にクロスセクションポリッシャー(SM-09010、JEOL社製)を用いて、加速電圧5.0kV、ビーム電流120μAの条件にて、断面の仕上げ加工を行う。次に、走査型電子顕微鏡(Merlin、Carl Zeiss社製)を用いて、加速電圧2.0kV、倍率2500倍の条件にて、粒子層の上端及び下端が含まれるような断面をランダムに撮影して得られた複数枚の画像をTIFF画像に取り込み、画像解析ソフト(Image-Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて、当該断面における粒子層の面積と、当該断面における粒子層の幅方向、すなわち電極基体と水平方向の長さを、画像解析により得られたスケールバーおよび画素数から算出し、当該面積を当該幅方向の長さで除することにより膜厚を算出する。
なお「平均厚さ」は、得られた複数枚の画像のうち、10点を測定したものを平均して求める。
【0081】
<<<粒子層形成用分散剤>>>
前記粒子層形成用分散剤としては、前記粒子を分散媒中に分散させることができれば、特に制限はなく、界面活性剤や高分子化合物などを使用することができる。
当該高分子化合物としては、前記粒子に対する親和性が高い吸着基と、前記分散媒に対して親和性の高い分散基とを有する共重合体(コポリマー)などを使用することができる。
【0082】
前記粒子層形成用分散剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該粒子層形成用分散剤の市販品としては、例えば、商品名で、メガファックF173、メガファックF444、メガファックF470(以上、DIC株式会社製)、マリアリムAAB-0851、マリアリムAFB-1521、マリアリムAKM-0531、マリアリムAWS-0851、マリアリムHKM-50A、マリアリムSC-0708A、マリアリムSC-0505K、マリアリムSC-1015F(以上、日油株式会社製)、ディスパーBYK103、ディスパーBYK2000(以上、BYK-Chemie社製)などが挙げられる。
【0083】
前記粒子層は、粒子層形成用液体組成物によって作製することができる。なお、当該粒子層の具体的な作製方法については、後述する。
【0084】
<<<粒子層形成用液体組成物>>>
前記粒子層形成用液体組成物は、粒子を含み、必要に応じて、粒子層形成用分散剤、分散媒、バインダ、消泡剤などを含んでいてもよい。
なお、当該粒子及び粒子層形成用分散剤は、上述の<<粒子層>>の項目に記載したものと同じであるため、記載を省略する。
【0085】
―バインダ―
前記粒子層形成用液体組成物におけるバインダは、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂などが挙げられる。
これらのバインダは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、当該バインダは、粒子層形成用液体組成物中に溶解していてもよいし、分散していてもよい。
なお、バインダの代わりに、バインダの前駆体を用いてもよい。当該バインダの前駆体としては、例えば、モノマーなどが挙げられる。このようなモノマーを含有し、必要に応じて、重合開始剤をさらに含有する液体組成物を吸収媒体(以下、基体という場合がある)上に塗布した後、加熱する、又は光を照射することにより、モノマーが重合し、機能膜の強度を向上させることができる。
【0086】
―粒子層形成用分散媒―
前記粒子層形成用分散媒は、粒子層形成用液体組成物中の無機粒子の分散溶媒や、液物性の調整因子として添加する。
前記粒子層形成用液体組成物中の当該粒子層形成用分散媒の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができる。
当該粒子層形成用分散媒の成分としては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができるが、非水溶媒又は非水系溶媒であることが好ましい。
【0087】
前記水系溶媒としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と極性溶媒との混合物などが挙げられる。
当該極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられる。これらの極性溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合してもよい。
【0088】
前記非水系分散媒としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラクタム、アルコール、スルホキシド、エステル、エーテル、グリコール、又はケトンなどが挙げられる。
当該ラクタムとしては、例えば、1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドンなどが挙げられる。
当該アルコールとしては、例えば、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
当該スルホキシドとしては、例えば、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
当該エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコールジアセタートなどが挙げられる。
当該エーテルとしては、例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどが挙げられる。
当該グリコールとしては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコールなどが挙げられる。
当該ケトンとしては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、ジイソブチルケトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
これらの非水系溶媒は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0089】
前記粒子層形成用液体組成物の調製方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粒子層形成用溶媒、粒子、分散剤を予備撹拌した後、分散機を使用して粒子分散液を得る。当該分散機としては、特に制限はないが、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、ビーズミル、キャビテーションミルなどが挙げられる。
【0090】
<電極の製造方法、及び電極の製造装置>
本発明の電極の製造方法は、粒子層形成工程を含む電極の製造方法であって、前記粒子層形成工程は、基体上に設けられた電極合材層上に形成された、骨格及び空隙を有する多孔質層上に、粒子層形成用液体組成物を付与する粒子層形成用液体組成物塗布工程を含む。
なお、当該粒子層形成工程における「粒子層」、並びに当該粒子層形成用液体組成物塗布工程における「基体」、「電極合材層」、「多孔質層」、及び「粒子層形成用液体組成物」等は、上述の(電極)の項目に記載のものと同様のものを使用することができ、重複する記載を省略する。
【0091】
換言すると、本発明の電極の製造方法は、粒子層形成工程を含み、必要に応じて、電極合材層形成工程、多孔質層形成工程、その他の工程を含んでいてもよい。
当該電極の製造方法は、電極の製造装置によって好適に実施することができる。
本発明に関する電極の製造装置は、粒子層形成手段を含み、必要に応じて、電極合材層形成手段、多孔質層形成手段、その他の手段を含んでいてもよい。
【0092】
<<電極合材層形成工程、及び電極合材層形成手段>>
前記電極合材層形成工程は、基体上に電極合材層形成用液体組成物を塗布し、電極合材層を形成する工程である。
当該電極合材層形成工程は、電極合材層形成手段によって好適に実施することができる。
前記電極合材層形成手段は、基体上に電極合材層形成用液体組成物を塗布し、電極合材層を形成する手段である。
前記電極合材層形成手段としては、基体上に電極合材層形成用液体組成物を塗布することができれば、特に制限はされないが、例えば、スプレー方式、ディスペンサー方式、ダイコーター方式、引き上げ塗工方式、カーテンコート方式、インクジェット方式等を用いた印刷機などが挙げられる。
【0093】
前記電極合材層形成工程、及び前記電極合材層形成手段には、それぞれ電極合材層形成用液体組成物加熱乾燥工程、及び電極合材層形成用液体組成物加熱乾燥手段が含まれることが好ましい。
当該電極合材層形成用液体組成物加熱乾燥工程は、基体上に電極合材層形成用液体組成物を塗布した後、当該電極合材層形成用液体組成物を乾燥させる工程である。
当該電極合材層形成用液体組成物加熱乾燥手段は、基体上に塗布された電極合材層形成用液体組成物を乾燥させる手段である。
【0094】
当該電極合材層形成用液体組成物加熱乾燥手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータなどが挙げられる。これらの中でも、塗布面を均一に加熱乾燥することができる点から、非接触であるものが好ましい。
当該電極合材層形成用液体組成物加熱乾燥工程の具体例としては、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータ等で塗工面を加熱する方法、ホットプレート、ドラムヒータなど塗工面の裏側から乾燥させる方法などが挙げられる。
【0095】
前記電極合材層形成用液体組成物加熱乾燥工程における加熱温度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、70℃以上150℃以下であることが好ましい。
当該加熱温度が70℃以上であると、電極合材層形成用液体組成物を十分に乾燥させることができ好適である。
当該加熱温度が150℃以下であると、前記基体や、前記電極合材層中に含まれる活物質の変性を抑制することができ好適である。
【0096】
<<多孔質層形成工程、及び多孔質層形成手段>>
前記多孔質層形成工程は、前記電極合材層上に骨格及び空隙を有する多孔質層を形成する工程である。当該多孔質層形成工程は、多孔質層形成用液体組成物塗布工程と、照射工程と、多孔質層形成用液体組成物加熱工程とを有することが好ましい。
前記多孔質層形成手段は、前記電極合材層上に骨格及び空隙を有する多孔質層を形成する手段である。当該多孔質層形成手段は、多孔質層形成用液体組成物塗布手段と、照射手段と、多孔質層形成用液体組成物加熱手段とを有することが好ましい。
当該多孔質層形成工程は、当該多孔質層形成手段によって好適に実施することができ、当該多孔質層形成用液体組成物塗布工程は、当該多孔質層形成用液体組成物塗布手段によって好適に実施することができ、当該照射工程は、当該照射手段によって好適に実施することができ、当該多孔質層形成用液体組成物加熱工程は、当該多孔質層形成用液体組成物加熱手段によって好適に実施することができる。
【0097】
―多孔質層形成用液体組成物塗布工程、及び多孔質層形成用液体組成物塗布手段―
前記多孔質層形成用液体組成物塗布工程は、前記電極合材層上に多孔質層形成用液体組成物を塗布する工程である。
前記多孔質層形成用液体組成物塗布手段は、前記電極合材層上に多孔質層形成用液体組成物を塗布する手段である。
前記多孔質層形成用液体組成物塗布手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート方式、キャスティング方式、マイクログラビアコート方式、グラビアコート方式、バーコート方式、ロールコート方式、ワイアーバーコート方式、ディップコート方式、スリットコート方式、キャピラリーコート方式、スプレーコート方式、ノズルコート方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式、反転印刷方式、インクジェット印刷方式等を利用した印刷機などを使用することができる。
【0098】
―照射工程、及び照射手段―
前記照射工程は、前記電極合材層上に塗布された多孔質層形成用液体組成物に対して光を照射する工程である。
前記照射手段は、前記電極合材層上に塗布された多孔質層形成用液体組成物に対して光を照射する手段である。
当該光としては、活性エネルギー線が好ましい。
【0099】
前記照射工程、及び前記照射手段における活性エネルギー線としては、多孔質層形成用液体組成物中の重合性化合物の重合反応を進めるために必要なエネルギーを付与できるものであれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線(UV)、電子線(EB)、X線(X-Ray)などが挙げられる。これらの中でも、硬化性に優れる観点から、紫外線(UV)が好ましい。
当該紫外線の光源としては、特に制限はなく、重合性化合物等の吸収スペクトルに応じて、適宜選択することができ、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、UV-LEDなどが挙げられる。
【0100】
前記照射手段として前記活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射装置を用いる場合、酸素など大気中の気体による照射強度低下や副反応が発生する観点から、不活性気体中もしくは真空中で照射可能な設備等が具備されていることが望ましい。
【0101】
前記照射工程における照度(ランプ強度、ランプ照度などとも称される)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、多孔質層形成用液体組成物の反応性の観点から、1.0W/cm2以上であることが好ましい。
【0102】
―多孔質層形成用液体組成物加熱工程、及び多孔質層形成用液体組成物加熱手段―
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程は、多孔質層形成用溶媒を加熱して除去する工程である。
前記多孔質層形成用液体組成物加熱手段は、多孔質層形成用溶媒を加熱して除去する手段である。
前記多孔質層形成用液体組成物加熱手段としては、上述の<<電極合材層形成工程、及び電極合材層形成手段>>の項目で記載した電極合材層形成用液体組成物加熱乾燥手段と同様のものを使用することができる、
【0103】
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程における加熱温度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、70℃以上150℃以下であることが好ましい。
当該加熱温度が70℃以上であると、ポロジェンを十分に除去することができ、かつ加熱により耐圧縮性が向上するため好適である。
当該加熱温度が150℃以下であると、ポロジェンの突沸を抑制しピンホールの発生を防ぐことができ、絶縁性が向上するため好適である。
【0104】
前記多孔質層形成工程において、前記多孔質層形成用液体組成物に対して活性エネルギー線を照射することにより、当該多孔質層形成用液体組成物中の重合性化合物の重合反応が誘起され、重合誘起相分離が誘起されることが好ましい。換言すると、当該重合反応によって得られる硬化物は、前記重合性化合物と、当該重合性化合物を溶解することができ、かつ重合の進行に伴い、当該重合性化合物が相分離することが可能な液状溶媒であるポロジェンとからなる多孔質層形成用液体組成物に対して、活性エネルギー線を照射することによって発生するスピノーダル分解を経て形成されることが好ましい。
ここで当該「スピノーダル分解」とは、核が形成することなく、濃度勾配に逆らった物質拡散によって組成の異なる2相(ポロジェン相と重合性化合物相)が形成されることを示す。
【0105】
以下に、前記多孔質層が形成されるメカニズムについて、その一例を示す。
前記多孔質層の形成過程において、重合前には、混合相(重合性化合物、重合開始剤、及びその他の添加剤を含めた混合相)と、ポロジェン溶剤(水又は有機溶剤相)との均一混合相の状態であり、重合が開始されると、重合初期から重合後期にかけて自発的に均一な2成分(重合性化合物とポロジェン溶剤)が、徐々にミクロ(緻密)に分離し固定化されるため連続した骨格(硬化物)が形成される。そして、加熱後、加熱前においてポロジェンが存在した部分に連続した空隙が形成されることによって、当該骨格及び当該空隙の双方がともに連続した両相連続構造を有する多孔質層が形成される。
【0106】
<<粒子層形成工程、及び粒子層形成手段>>
前記粒子層形成工程は、前記多孔質層上に粒子層形成用液体組成物を塗布し、粒子層を形成する工程である。当該粒子層形成工程には、粒子層形成用液体組成物塗布工程、及び粒子層形成用液体組成物加熱工程が含まれることが好ましい。
前記粒子層形成手段は、前記多孔質層上に粒子層形成用液体組成物を塗布し、粒子層を形成する手段である。当該粒子層形成手段には、粒子層形成用液体組成物塗布手段、及び粒子層形成用液体組成物加熱手段が含まれることが好ましい。
当該粒子層形成工程は、当該粒子層形成手段によって好適に実施することができ、当該粒子層形成用液体組成物塗布工程は、当該粒子層形成用液体組成物塗布手段によって好適に実施することができ、当該粒子層形成用液体組成物加熱工程は、当該粒子層形成用液体組成物加熱手段によって好適に実施することができる。
【0107】
―粒子層形成用液体組成物塗布工程、及び粒子層形成用液体組成物塗布手段―
前記粒子層形成用液体組成物塗布工程は、前記多孔質層上に粒子層形成用液体組成物を塗布する工程である。
前記粒子層形成用液体組成物塗布手段は、前記多孔質層上に粒子層形成用液体組成物を塗布する手段である。
当該粒子層形成用液体組成物塗布手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述の<<多孔質層形成工程、及び多孔質層形成手段>>の項目に記載した多孔質層形成用液体組成物塗布手段と同様のものを使用することができる。
【0108】
―粒子層形成用液体組成物加熱工程、及び粒子層形成用液体組成物加熱手段―
前記粒子層形成用液体組成物加熱工程は、粒子層形成用溶媒を加熱して除去する工程である。
前記粒子層形成用液体組成物加熱手段は、粒子層形成用溶媒を加熱して除去する手段である。
前記粒子層形成用液体組成物加熱手段としては、上述の<<電極合材層形成工程、及び電極合材層形成手段>>の項目で記載した電極合材層形成用液体組成物加熱乾燥手段と同様のものを使用することができる、
【0109】
前記電極は、前記電極合材層形成工程、前記多孔質層形成工程、及び前記粒子層形成工程の後、打ち抜き加工等によって所望の大きさに切断されて形成されてもよい。
【0110】
前記粒子層形成工程は、前記多孔質層形成工程の後に行われてもよいし、前記多孔質層形成工程と同時に行われてもよい。
なお、前記粒子層形成工程を、前記多孔質層形成工程の後に行う方法は、所謂、ウェットオンドライ(wet-on-dry)方式と称される方法である。前記粒子層形成工程と、前記多孔質層形成工程と同時又は並行して行う方法は、所謂、ウェットオンウェット(wet-on-wet)方式と称される方法である。
【0111】
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程は、前記照射工程の後、かつ前記粒子層形成工程の前に行われることが好ましい。
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程は、前記粒子層形成工程と同時、又は前記粒子層形成工程よりも後に行われることが好ましく、前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程と、前記粒子層形成用液体組成物加熱工程とは、同時に行われることがより好ましい。
【0112】
より具体的には、以下のパターン1~4のいずれであってもよい。
【0113】
-パターン1(wet-on-dry)方式-
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程が、前記照射工程の後、かつ前記粒子層形成工程の前に行われるパターン。
換言すると、前記照射工程、前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程、前記粒子層形成工程の順で行われるパターン。
【0114】
-パターン2(wet-on-wet)方式-
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程が、前記粒子層形成用液体組成物加熱工程と同時に行われるパターン。
換言すると、前記照射工程、前記粒子層形成用液体組成物塗布工程を順に行った後、前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程と、前記粒子層形成用液体組成物加熱工程とが同時に行われるパターン。
【0115】
-パターン3(wet-on-wet)方式-
前記粒子層形成工程が、前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程と並行して行われるパターン。
換言すると、前記照射工程の後に、前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程を行いつつ、前記粒子層形成用液体組成物塗布工程を行うことで、前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程と、前記粒子層形成用液体組成物加熱工程とが並行して行われるパターン。
【0116】
-パターン4(wet-on-wet)方式-
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程が、前記粒子層形成工程の後に行われるパターン。
換言すると、前記照射工程の後に、前記粒子層形成用液体組成物塗布工程、前記粒子層形成用液体組成物加熱工程を順に行った後、前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程を行うパターン。
【0117】
本発明に関する電極の製造方法、及び電極の製造装置の実施形態について、以下に記載する。
【0118】
[基体に電極合材層形成用液体組成物を直接的に付与することで電極合材層を形成する実施形態]
図3は、本実施形態の電極の製造装置の一例を示す模式図である。より具体的には、上述した電極合材層形成用液体組成物を用いて電極合材層を製造する装置の一例である。
電極合材層形成用液体組成物12Aは、液体吐出装置300のタンク307に貯蔵されており、当該タンク307からチューブ308を経由して液体吐出ヘッド306に供給される。なお、液体吐出装置の個数は、1個に限定されず、2個以上であってもよい。
電極合材層を製造する際には、ステージ310上に基体11を設置した後、液体吐出ヘッド306から、電極合材層形成用液体組成物12Aの液滴を基体11上に吐出する。このとき、ステージ310が移動してもよく、液体吐出ヘッド306が移動してもよい。吐出された電極合材層形成用液体組成物12Aは、電極合材層12となる。
また、液体吐出装置300は、電極合材層形成用液体組成物12Aが液体吐出ヘッド306から吐出されていない際に、乾燥を防ぐ目的でノズルをキャップする機構が設けられていてもよい。
【0119】
図4は、本実施形態の電極の製造装置の他の一例を示す模式図である。より具体的には、上述した電極合材層形成用液体組成物を用いて電極合材層を製造する装置の他の一例である。
電極の製造装置は、基体4上に、電極合材層形成用液体組成物を付与して電極合材層形成用液体組成物層を形成する印刷部10と、必要に応じて、加熱部30とを備える。電極製造装置は、基体4を搬送する搬送部5を備え、搬送部5は、印刷部10、加熱部30の順に基体4をあらかじめ設定された速度で搬送する。
【0120】
-印刷部10-
印刷部10は、基体4上に電極合材層を形成するための電極合材層形成用液体組成物を付与する電極合材層形成手段の一例である印刷装置1aと、電極合材層形成用液体組成物を収容する収容容器1bと、収容容器1bに貯留された電極合材層形成用液体組成物7を印刷装置1aに供給する供給チューブ1cを備える。
収容容器1bは、電極合材層形成用液体組成物7を収容し、印刷部10は、印刷装置1aから電極合材層形成用液体組成物7を吐出して、基体4上に電極合材層形成用液体組成物7を付与して電極合材層形成用液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器1bは、電極の製造装置と一体化した構成であってもよいが、電極の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、電極の製造装置と一体化した収容容器や、電極の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
収容容器1bや供給チューブ1cは、電極合材層形成用液体組成物7を安定して貯蔵及び供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0121】
-加熱部30-
加熱部30は、
図4に示すように、加熱装置3aを有し、印刷部10により形成した電極合材層形成用液体組成物層を加熱装置3aにより加熱して、残存する液体を乾燥させて溶媒を除去する加熱乾燥工程を行う。これにより電極合材層を形成することができる。加熱部30は、液体除去を減圧下で実施してもよい。
加熱温度や時間に関しては、電極合材層形成用液体組成物層に含まれる液体の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0122】
図5は、本実施形態の電極の製造装置のさらに他の一例を示す模式図である。
液体吐出装置300’は、ポンプ3101、バルブ311、及びバルブ312を制御することにより、電極合材層形成用液体組成物が液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。
また、液体吐出装置300’は、外部タンク313が設けられており、タンク307内の電極合材層形成用液体組成物が減少した際に、ポンプ3101、バルブ311、バルブ312、及びバルブ314を制御することにより、外部タンク313からタンク307に電極合材層形成用液体組成物を供給することも可能である。
前記電極の製造装置を用いると、基体の狙ったところに電極合材層形成用液体組成物を吐出することができる。
【0123】
図6は、本実施形態の電極の製造方法の一例を示す模式図である。より具体的には、本実施形態の電極合材層の製造方法の一例を示す模式図である。
電極の製造方法は、液体吐出装置を用いて、基体11上に、電極合材層形成用液体組成物12Aを順次吐出する工程を含む。
まず、細長状の基体11を準備する。そして、基体11を筒状の芯に巻き付け、電極合材層12を形成する側が、
図6中上側になるように、送り出しローラ304及び巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304及び巻き取りローラ305は、
図6中反時計回りに回転し、基体11は、
図6中右から左の方向に搬送される。そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305との間の基体11の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、
図3と同様にして電極合材層形成用液体組成物12Aの液滴を順次搬送される基体11上に吐出する。
なお、液体吐出ヘッド306は、基体11の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に複数個設置されていてもよい。
次に、電極合材層形成用液体組成物12Aの液滴が吐出された基体11は、送り出しローラ304及び巻き取りローラ305によって、加熱乾燥手段としての加熱機構309に搬送され、電極合材層12が形成される。
加熱機構309は、基体11の上下の何れか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0124】
また、
図7のように、液体吐出装置300A’及び液体吐出装置300B’を組み合わせて使用してもよい。即ち、タンクは、タンク307A及びタンク307Bに接続された外部タンク313A及び外部タンク313Bから電極合材層形成用液体組成物12Aを供給してもよく、液体吐出ヘッドは、複数のヘッド306A及びヘッド306Bを有してもよい。それに合わせて、チューブ308A及びチューブ308B、バルブ311A及びバルブ311B、並びにポンプ310A及び310Bを有していてもよい。
【0125】
[基体に電極合材層形成用液体組成物を間接的に付与することで電極合材層を形成する実施形態]
図8は、本実施形態の電極の製造装置としてのドラム状の中間転写体を用いた印刷部の一例を示す構成図である。
印刷部400’は、中間転写体4001を介して電極合材層形成用液体組成物層又は電極合材層を転写することで、基体上に電極合材層を形成するインクジェットプリンタである。
【0126】
印刷部400’は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004、及び清掃ユニット4005を備える。
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラム4000に支持された中間転写体4001に電極合材層形成用液体組成物を吐出し、中間転写体4001上に電極合材層形成用液体組成物層を形成する。各ヘッド101は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基体の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド101は、その下面にノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0127】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向して転写ニップ部を形成する。
前処理ユニット4002は、ヘッド101による電極合材層形成用液体組成物の吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、電極合材層形成用液体組成物の粘度を高めるための反応液を付与する。
吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上の電極合材層形成用液体組成物層から液体成分を吸収する。
加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上の電極合材層形成用液体組成物層を加熱する。電極合材層形成用液体組成物層を加熱することで、乾燥させて電極合材層を形成する。また、有機溶媒が除去されることで基体への転写性が向上する。
清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留した電極合材層形成用液体組成物やごみ等の異物を除去する。
【0128】
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基体が通過するときに、中間転写体4001上の電極合材層形成用液体組成物又は電極合材層が基体に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基体の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0129】
図9に示した印刷部400’’は、中間転写ベルト4006を介して電極合材層形成用液体組成物又は電極合材層を転写することで、基体上に電極合材層を形成するインクジェットプリンタである。
印刷部400’’は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド401から液体組成物の液滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上に電極合材層形成用液体組成物層を形成する。中間転写ベルト4006に形成された電極合材層形成用液体組成物層は、加熱ユニット4007によって加熱され、乾燥することで電極合材層を形成し、中間転写ベルト4006上で膜化する。
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化した電極合材層形成用液体組成物層は基体に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c、形状維持ローラ4009d、形状維持ローラ4009e、形状維持ローラ4009f、および複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、
図9中矢印方向に移動する。ヘッド401に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド401から電極合材層形成用液体組成物の液滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0130】
なお、本発明における多孔質層を形成する場合は、上述の[基体に電極合材層形成用液体組成物を直接的に付与することで電極合材層を形成する実施形態]及び[基体に電極合材層形成用液体組成物を間接的に付与することで電極合材層を形成する実施形態]の項目における「電極合材層形成用液体組成物」を「多孔質層形成用液体組成物」に置き換えるとともに、基体が加熱機構に供される前に「活性エネルギー線照射装置」を備えた構成にすればよい。
なお、本発明における粒子層を形成する場合は、上述の[基体に電極合材層形成用液体組成物を直接的に付与することで電極合材層を形成する実施形態]及び[基体に電極合材層形成用液体組成物を間接的に付与することで電極合材層を形成する実施形態]の項目における「電極合材層形成用液体組成物」を「粒子層形成用液体組成物」に置き換えた構成にすればよい。
【0131】
(非水系蓄電素子)
本発明の非水系蓄電素子は、電極、非水系電解質、セパレータ、及び外装を有することが好ましい。
なお、当該電極は、上述の(電極)の項目に記載したものと同じであるため、記載を省略する。また、当該セパレータは、上述の<絶縁体層>の項目に記載されたものとは異なり、前記絶縁体層とは別に設けられるものである。
【0132】
<非水系電解質>
前記非水系電解質としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非水電解液などが挙げられる。
当該非水電解液とは、電解質塩が非水溶媒に溶解している電解液を示す。
【0133】
<<非水溶媒>>
当該非水溶媒としては、当該電解質塩を溶解することができれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、非プロトン性有機溶媒を用いることが好ましい。
【0134】
前記非プロトン性有機溶媒としては、例えば、鎖状カーボネート、環状カーボネート等のカーボネート系有機溶媒などが挙げられる。これらの中でも、電解質塩の溶解力が高い観点から、鎖状カーボネートが好ましい。
当該鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)などが挙げられる。
当該環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げられる。
【0135】
前記カーボネート系有機溶媒以外の非水溶媒としては、例えば、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶媒、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶媒などが挙げられる。
当該環状エステルとしては、例えば、γ-ブチロラクトン(γBL)、2-メチル-γ-ブチロラクトン、アセチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。
当該鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(例えば、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル)、ギ酸アルキルエステル(例えば、ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル)などが挙げられる。
当該環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、アルキル-1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソランなどが挙げられる。
当該鎖状エーテルとしては、例えば、1,2-ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0136】
これらの非水溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0137】
前記鎖状カーボネートの含有量は、前記非水溶媒全量に対して40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。当該鎖状カーボネートの含有量が、当該非水溶媒全量に対して40質量%以上であると、非水電解液の多孔質層への浸透性やイオン拡散性が向上するため好適である。
【0138】
<<電解質塩>>
前記電解質塩としては、イオン伝導度が高く、前記非水溶媒に溶解することができれば特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
当該電解質塩を構成するカチオン成分としては、例えば、アルカリ金属塩などが挙げられる。
当該アルカリ金属塩としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドなどが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0139】
前記非水電解液における前記電解質塩の濃度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1mol/L以上4mol/L以下であることが好ましい。
【0140】
<セパレータ>
前記セパレータは、負極と正極との短絡を防ぐために、必要に応じて、負極と正極の間に設けられていてもよい。当該セパレータは、イオン透過性を有し、電子伝導性を持たない絶縁性であることが好ましい。
なお、当該セパレータは、上述の<絶縁体層>の項目に記載されたものとは異なり、前記絶縁体層とは別に設けられるものである。
【0141】
前記セパレータの材質としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
当該セパレータの構造としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であっても、積層構造であってもよい。
当該セパレータの大きさとしては、前記非水系蓄電素子に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
当該セパレータの材質としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトフロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、ポリエチレン系微多孔膜、ポリプロピレン系微多孔膜などが挙げられる。
【0142】
<外装>
前記外装は、前記電極と、前記非水系電解質と、前記セパレータとを封止することができれば特に制限はない。
【0143】
前記非水系蓄電素子の形状としては、特に制限はなく、例えば、平形の電極を積層したラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプなどが挙げられる。
【0144】
<非水系蓄電素子の製造方法、及び非水系蓄電素子の製造装置>
本発明の非水系蓄電素子の製造方法は、上述した電極の製造方法により電極を製造する電極製造工程と、当該電極を用いて非水系蓄電素子を製造する素子化工程と、を含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
本発明の非水系蓄電素子の製造装置は、上述した電極の製造装置により電極を製造する電極製造部と、当該電極を用いて非水系蓄電素子を製造する素子化部と、を有し、必要に応じて、更にその他の手段を有する。
【0145】
<<電極製造工程及び電極製造部>>
前記電極製造工程は、上記した電極の製造方法において説明した、電極合材層形成工程、多孔質層形成工程、及び粒子層形成工程を含み、必要に応じて、電極加工工程等のその他の工程を有する。
前記電極製造部は、上記した電極の製造装置において説明した、収容容器と、電極合材層形成手段、多孔質層形成手段、及び粒子層形成手段を含み、必要に応じて、電極加工手段等のその他の手段を有する。
前記電極製造工程及び前記電極製造部により、電極基体と、前記電極基体上に電極合材層と、前記電極合材層上に多孔質層と、前記多孔質層上に粒子層と、を有する電極を製造することができる。
【0146】
<<素子化工程及び素子化部>>
前記素子化工程は、前記電極を用いて非水系蓄電素子を製造する工程である。
前記素子化部は、前記電極を用いて非水系蓄電素子を製造する手段である。
電極を用いて非水系蓄電素子を製造する方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜公知の非水系蓄電素子の製造方法を選択することができ、例えば、対向電極の設置、巻回又は積層、容器への収容の少なくともいずれかを行い非水系蓄電素子とする方法が挙げられる。
なお、素子化工程としては、素子化の全工程を備える必要はなく、素子化の一部の工程を含むものであってもよい。
【0147】
<<電極加工工程及び電極加工部>>
前記電極加工部は、粒子層形成手段よりも下流において、電極合材層が形成された電極を加工する手段である。当該電極加工部は、裁断、折り畳み、及び貼り合わせの少なくとも1つを実施してもよい。当該電極加工部は、例えば、電極を裁断し、電極の積層体を作製することができる。当該電極加工部は、例えば、電極を巻回又は積層することができる。
当該電極加工部は、例えば、電極加工装置を有し、電極の裁断やつづら折り、積層や巻回を目的の電池形態に応じて実施する。
当該電極加工部によって行われる電極加工工程は、例えば、粒子層形成工程よりも下流において、電極を加工する工程である。当該電極加工工程は、裁断工程、折り畳み工程、及び貼り合わせ工程の少なくとも1つを含んでもよい。
【0148】
前記非水系蓄電素子の用途としては、特に制限はなく、例えば、ラップトップパソコン、スマートデバイス、電子ブックプレーヤー、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ、車両等の移動体などが挙げられる。これらの中でも、移動体が好ましい。
前記移動体としては、例えば、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、トラック、大型自動二輪車、普通自動二輪車などが挙げられる。
【0149】
[移動体]
図10に、本発明の非水系蓄電素子を搭載した移動体の一例を示す。
移動体550は、例えば電気自動車である。移動体550はモーター551と、電非水系蓄電素子552と、移動手段の一例としての車輪553を備える。
非水系蓄電素子552は、モーター551に電力を供給することでモーター551を駆動する。駆動されたモーター551は、車輪553を駆動させることができ、その結果、移動体550は移動することができる。
以上の構成によれば、正極と負極との短絡を防止するとともに、電池特性に優れる非水系蓄電素子からの電力により駆動するので、安全かつ効率よく移動体を移動させることができる。
移動体550は電気自動車に限られず、PHEVやHEV、又はディーゼルエンジンと電気化学素子とを併用して走行可能な機関車やバイクであってもよい。また移動体は、非水系蓄電素子のみ、又はエンジンと非水系蓄電素子とを併用して走行可能な、工場等で使用される搬送用ロボットであってもよい。また、移動体は、その物体全体が移動せず、一部のみが移動するもの、例えば、工場の製造ラインに配される、非水系蓄電素子のみ、又はエンジンと非水系蓄電素子とを併用してアーム等が動作可能な組立ロボットであってもよい。
【実施例0150】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り「質量部」及び「質量%」である。
【0151】
[実施例1]
(電極の作製)
<電極合材層の作製>
正極活物質としてのニッケル酸リチウム503H(JFEミネラル株式会社製)60部、分散媒としてのN-メチルピロリドン36部、及びバインダとしての樹脂(正極合材層形成用樹脂、商品名:PVDF 5130、ソルベイ社製)2部、導電性材料(ケッチェンブラック 600JD、デンカ製)2部を混錬して正極合材層形成用スラリーを得た。コンマコータ(商品名:コンマリバース、ヒラノテクシード社製)を用いて、正極用基体としてのアルミニウム箔の両面に当該正極合材層形成用スラリーを塗布した後、乾燥させた。
その後、ロールプレス装置(加熱式3トンロールプレス RH-0307-2525H、サンクメタル社製)を使用して、線圧100kN/mの圧力を加えて正極合材層を作製した。
【0152】
<負極合材層の作製>
負極活物質としてのSCMG-XRs(人造黒鉛、昭和電工株式会社製)グラファイト60部、分散媒としての水36部、及びバインダとしての樹脂(アクリル樹脂、商品名:AZ-9129、日本ゼオン社製)2部、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース((H01496B)HS-6、第一工業製薬製)2部を混錬して負極合材層形成用スラリーを得た。コンマコータ(商品名:コンマリバース、ヒラノテクシード社製)を用いて、負極用基体としての銅箔の両面に当該負極合材層形成用スラリーを塗布した後、乾燥させた。
その後、ロールプレス装置(加熱式3トンロールプレス RH-0307-2525H、サンクメタル社製)を使用して、線圧100kN/mの圧力を加えて負極合材層を作製した。
【0153】
<多孔質層の作製>
重合性化合物としてのEBECRYL4265(3官能脂肪族ウレタンアクリレート:ダイセル・オルネクス社製)30質量部、ポロジェンとしての2,6-ジメチル-4-ヘプタノン(東京化成工業社製)69.7質量部、光重合開始剤としてのOmnirad184(IGM Resins B.V.社製)0.3質量部を投入し、十分に撹拌した後に5μmのメンブレンフィルターにて粗大粒子を除去し、多孔質層形成用液体組成物を調製した。
液体吐出装置EV2500(株式会社リコー製)、及び液体吐出ヘッドMH5421F(株式会社リコー製)を用いて、電極合材層(正極合材層、及び負極合材層)上に多孔質層形成用液体組成物を塗布した。窒素雰囲気下にて、紫外線を照射してモノマーを重合させた後、120℃のホットプレートにて、塗布面と逆側とから1分間加熱してポロジェンの除去を行い、多孔質層を形成した。当該多孔質層の平均厚みは、液体吐出ヘッドからの多孔質層形成用液体組成物の吐出量により調節した。
【0154】
<粒子層の作製>
ビーズミル分散装置として、冷却ナノ粉砕機(NP-100、シンキー社製)のジルコニア製容器に、粒子としてのAKP-3000(酸化アルミニウム、粒径:0.7μm、住友化学株式会社製)40部、分散媒としてのジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業株式会社製)58.4部、及び分散剤としてのマリアリム(登録商標)HKM-50A(日油株式会社製)1.6部を投入し、粒子径0.2mmのジルコニアビーズを適宜投入して分散させた。
このとき、冷却ナノ粉砕機の分散条件は、-20℃、1分間、1500rpmで回転させた後に、1分間、400rpmで回転させる工程を1サイクルとして、3サイクル分散を行った。ジルコニアビーズを除去後、10μmのメンブレンフィルターにて粗大粒子を除去して、粒子層形成用液体組成物を調製した。
液体吐出装置EV2500(株式会社リコー製)、及び液体吐出ヘッドMH5421F(株式会社リコー製)を用いて、多孔質層上に粒子層形成用液体組成物を塗布した。120℃のホットプレートにて、塗布面と逆側から1分間加熱して分散媒の除去を行い、粒子層を形成した。当該粒子層の平均厚みは、液体吐出ヘッドからの粒子層形成用液体組成物の吐出量により調節した。
【0155】
[実施例2]~[実施例14]、及び[比較例1]~[比較例2]
以下表1~3に示す組成、含有量に変更したこと以外は、上述の[実施例1]における(電極の作製)と同様の方法にて電極を作製した。
【0156】
[実施例15]
上述の<多孔質層の作製>において、電極合材層上に多孔質層形成用液体組成物を塗布し、窒素雰囲気下にて、紫外線を照射して重合性化合物を重合させた後、ポロジェンの除去を行わず、ウェット状態の多孔質層上に、粒子層形成用液体組成物を塗布した。<粒子層の作製>における分散媒の除去工程にて、ポロジェンの除去も同時に行った。即ち、ウェットオンウェット積層プロセスを用いて電極を作製した。
【0157】
なお、表1~3に示す各成分の詳細は、以下の通りである。
-粒子-
・AKP-3000(高純度アルミナ、粒径:0.7μm、住友化学株式会社製)
・AKP-20(高純度アルミナ、粒径:0.4μm、住友化学株式会社製)
・AKP-50(高純度アルミナ、粒径:0.2μm、住友化学株式会社製)
・AA-1.5(アドバンストアルミナ、粒径:1.7μm、住友化学株式会社製)
・AKP-G07(高純度アルミナ、粒径:0.03μm、住友化学株式会社製)
-粒子層形成用分散剤-
・マリアリム(登録商標)HKM-50A(高分子ポリカルボン酸アンモニウム塩、日油株式会社製)
・マリアリム(登録商標)SC-0708A(高分子ポリカルボン酸、日油株式会社製)
・マリアリム(登録商標)AKM-0531(高分子ポリカルボン酸、日油株式会社製)
・DISPERBYK-118(リン酸ポリエステル溶液、BYK社製)
【0158】
[多孔質層の平均厚さの測定方法]
電極基体、電極合材層、絶縁体層が含まれるように電極を5mm角に切り出し、脱気処理した樹脂(2液混合、30分硬化型エポキシ樹脂、Devcon社製)に浸漬させ、40℃のオーブンで12時間硬化処理した。十分に硬化した後、カミソリ、イオンミリング、マイクロミクロトーム等を用いて厚み方向に割断し、断面試料を作製した。得られた断面試料にクロスセクションポリッシャー(SM-09010、JEOL社製)を用いて、加速電圧5.0kV、ビーム電流120μAの条件にて、断面の仕上げ加工を行った。次に、走査型電子顕微鏡(Merlin、Carl Zeiss社製)を用いて、加速電圧2.0kV、倍率2500倍の条件にて、多孔質層の上端及び下端が含まれるような断面をランダムに撮影して得られた複数枚の画像をTIFF画像に取り込み、画像解析ソフト(Image-Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて、当該断面における多孔質層の面積と、当該断面における多孔質層の幅方向、すなわち電極基体と水平方向の長さを、画像解析により得られたスケールバーおよび画素数から算出し、当該面積を当該幅方向の長さで除することにより膜厚を算出した。
なお「平均厚さ」は、得られた複数枚の画像のうち、10点を測定したものを平均して求めた。
【0159】
[空隙率の測定方法]
電極を5mm角に切り出し、不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填してオスミウム染色を施した後に、FIBで内部の断面構造を切り出し、SEMを用いて樹脂中の空隙率を測定した。また、前記空隙率差は、得られた二値化画像における領域(A)及び領域(B)をトリミングし、それぞれの空隙部の割合面積を算出することによって求めた。
【0160】
[粒子層の平均厚さの測定方法]
電極基体、電極合材層、絶縁体層が含まれるように電極を5mm角に切り出し、脱気処理した樹脂(2液混合、30分硬化型エポキシ樹脂、Devcon社製)に浸漬させ、40℃のオーブンで12時間硬化処理した。十分に硬化した後、カミソリ、イオンミリング、マイクロミクロトーム等を用いて厚み方向に割断し、断面試料を作製した。得られた断面試料にクロスセクションポリッシャー(SM-09010、JEOL社製)を用いて、加速電圧5.0kV、ビーム電流120μAの条件にて、断面の仕上げ加工を行った。次に、走査型電子顕微鏡(Merlin、Carl Zeiss社製)を用いて、加速電圧2.0kV、倍率2500倍の条件にて、粒子層の上端及び下端が含まれるような断面をランダムに撮影して得られた複数枚の画像をTIFF画像に取り込み、画像解析ソフト(Image-Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて、当該断面における粒子層の面積と、当該断面における粒子層の幅方向、すなわち電極基体と水平方向の長さを、画像解析により得られたスケールバーおよび画素数から算出し、当該面積を当該幅方向の長さで除することにより膜厚を算出した。
なお「平均厚さ」は、得られた複数枚の画像のうち、10点を測定したものを平均して求めた。
【0161】
[粒子の体積平均粒径の測定方法]
粒子径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した。
【0162】
<平滑性の評価>
実施例1~15、比較例1~2で得られた負極を、レーザー顕微鏡(VK-X3000、50倍、株式会社キーエンス製)を用いて表面粗さRaを測定した。当該測定値を以下評価基準によって、評価した。なお、「C」以上が実用可能範囲である。
―平滑性の評価基準―
A+:1μm未満
A :1μm以上3μm未満
B :3μm以上5μm未満
C :5μm以上7μm未満
D :7μm以上
【0163】
<耐ブロッキング性の評価>
実施例1~15、及び比較例1~2で得られた正極及び負極を、5cm四方にそれぞれ切り出し、当該正極における粒子層と、当該負極における粒子層とが接触するように重ね合わせた後、中心部に1.5cm四方のゴム片を置き、その上に重り(3kg)を置いた。120℃の恒温槽に入れて24時間放置した後、それぞれを剥離させた。粒子層表面の状態を目視し、以下評価基準によって、評価した。なお、「B」以上が実用可能範囲である。
-耐ブロッキング性の評価基準-
A:粒子層同士の接着が生じることなく、粒子層表面が傷つかない
B:粒子層同士の接着が僅かに生じるが、粒子層表面が傷つかない
C:粒子層同士の接着が生じ、粒子層表面に傷がつく
D:粒子層同士が強く接着し、剥離することができない
【0164】
<多孔質層に対する粒子層の被覆率の評価>
多孔質層および粒子層を含む電極表面を、走査型電子顕微鏡(Merlin、Carl Zeiss社製)を用いて、加速電圧2.0kV、倍率2500倍の条件にて観察した。このようにして、多孔質層上に形成された粒子層の反射電子像を得た。続いて、得られた画像をTIFF画像に取り込み、画像解析ソフト(Image-Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて二値化を行い、多孔質層上の粒子層の被覆率を算出した。なお、この際の二値化条件は、多孔質層領域と、粒子層領域の境界が明確になる様に適切に設定した。以下評価基準によって、評価した。なお、「B」以上が実用可能範囲である。
―被覆率の評価基準―
A+:99%以上
A :90%以上99%未満
B :60%以上90%未満
C :40%以上60%未満
D :40%未満
【0165】
<擦過性の評価>
実施例1~15、及び比較例1~2で得られた電極における擦過性をJIS K 7317に準じて測定した。装置は、HEIDON HHS2000S(新東科学製)を用いた。先端の球半径0.1mmのダイヤモンド性の先端部を試験片に対し90°の角度で取付、圧子に荷重をかけた状態で圧子を1.0mm/sの速度で移動させた。その後、キズができない最大荷重から擦過性を評価した。キズは、光学顕微鏡観察にて観察した際に、電極の表面が露出した部分をキズと判断した。以下評価基準によって、評価した。なお、「B」以上が実用可能範囲である。
-擦過性の評価基準-
A+:40gf以上
A :30gf以上40gf未満
B :25gf以上30gf未満
C :25gf未満
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1>
基体と、
前記基体上に設けられた電極合材層と、
前記電極合材層上に設けられた絶縁体層と、を有する電極であって、
前記絶縁体層は、
前記電極合材層上に設けられ、骨格及び空隙を有する多孔質層と、
前記多孔質層上に設けられ、粒子を含む粒子層と、を有し、
前記粒子の融点(Tma)又はガラス転移温度(Tga)は、前記多孔質層の融点(Tmb)又はガラス転移温度(Tgb)よりも高く、
前記粒子の体積平均粒径(nm)は、前記空隙の平均直径(nm)よりも大きいことを特徴とする電極である。
<2>
前記多孔質層は、前記骨格及び前記空隙の双方がともに連続した両相連続構造である、前記<1>に記載の電極である。
<3>
前記粒子の体積平均粒径は、100nm以上1,000nm以下である、前記<1>から前記<2>のいずれかに記載の電極である。
<4>
前記空隙の平均直径は、10nm以上200nm以下である、前記<1>から前記<3>のいずれかに記載の電極である。
<5>
前記多孔質層の平均厚さは、5μm以上20μm以下であり、
前記粒子層の平均厚さは、0.5μm以上10μm以下である、前記<1>から前記<4>のいずれかに記載の電極である。
<6>
前記骨格は、光硬化性樹脂の硬化物を含む、前記<1>から前記<5>のいずれかに記載の電極である。
<7>
前記硬化物は、架橋構造を有する、前記<6>に記載の電極である。
<8>
前記<1>から前記<7>のいずれかに記載の電極を有することを特徴とする非水系蓄電素子である。
<9>
粒子層形成工程を含む電極の製造方法であって、
前記粒子層形成工程は、基体上に設けられた電極合材層上に形成された、骨格及び空隙を有する多孔質層上に、粒子層形成用液体組成物を塗布する粒子層形成用液体組成物塗布工程を含み、
前記粒子層における粒子の融点(Tma)又はガラス転移温度(Tga)は、前記多孔質層の融点(Tmb)又はガラス転移温度(Tgb)よりも高く、
前記粒子の体積平均粒径(nm)は、前記空隙の平均直径(nm)よりも大きいことを特徴とする電極の製造方法である。
<10>
前記電極合材層上に前記多孔質層を形成する多孔質層形成工程を含み、
前記多孔質層形成工程は、前記電極合材層上に塗布された多孔質層形成用液体組成物に対して光を照射する照射工程を含む、前記<9>に記載の電極の製造方法である。
<11>
前記多孔質層形成工程は、多孔質層形成用溶媒を加熱して除去する多孔質層形成用液体組成物加熱工程を含み、
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程は、前記照射工程の後、かつ前記粒子層形成工程の前に行われる、前記<10>に記載の電極の製造方法である。
<12>
前記多孔質層形成工程は、多孔質層形成用溶媒を加熱して除去する多孔質層形成用液体組成物加熱工程を含み、
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程は、前記粒子層形成工程と同時、又は前記粒子層形成工程よりも後に行われる、前記<10>に記載の電極の製造方法である。
<13>
前記粒子層形成工程は、粒子層形成用溶媒を加熱して除去する粒子層形成用液体組成物加熱工程を含み、
前記多孔質層形成用液体組成物加熱工程と、前記粒子層形成用液体組成物加熱工程とは、同時に行われる、前記<12>に記載の電極の製造方法である。
【0170】
前記<1>から前記<7>のいずれかに記載の電極、前記<8>に記載の非水系蓄電素子、前記<9>から前記<13>のいずれかに記載の電極の製造方法によれば、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。