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特開2024-132915光学用部材、撮影機器モジュールおよび画像表示装置モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132915
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】光学用部材、撮影機器モジュールおよび画像表示装置モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/118 20150101AFI20240920BHJP
【FI】
G02B1/118
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027451
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023040384
(32)【優先日】2023-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】川原 友泰
(72)【発明者】
【氏名】中井 祐介
【テーマコード(参考)】
2K009
【Fターム(参考)】
2K009AA01
2K009BB14
2K009BB24
2K009BB27
2K009CC24
(57)【要約】
【課題】本発明は、可視光透過域および近赤外光透過域の両方での反射を防止できる光学用部材を提供することを目的とする。
【解決手段】一例に係る光学用部材10Aは、可視光透過域3と近赤外光透過域5とが同一面内にある透明基板1と、表面に凸部間の平均間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造を持つフィルム7とを有し、フィルム7が、可視光透過域3および近赤外光透過域5の両方を覆うように透明基板1の面1a側に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光透過域と近赤外光透過域とが同一面内にある透明基板と、
表面に凸部間の平均間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造を持つフィルムと、
を有し、
前記フィルムが、前記可視光透過域および前記近赤外光透過域の両方を覆うように前記透明基板の少なくとも一方の面側に配置されている、光学用部材。
【請求項2】
前記フィルムの視感反射率が、0.5%以下であり、かつ、
前記フィルムの波長900nmにおける反射率が、1.0%以下である、請求項1に記載の光学用部材。
【請求項3】
前記フィルムの視感反射率が、0.5%以下であり、かつ、
前記フィルムの1550nmにおける反射率が、5.0%以下である、請求項1に記載の光学用部材。
【請求項4】
前記透明基板の前記近赤外光透過域と前記フィルムの間に粘着層をさらに有する、請求項1に記載の光学用部材。
【請求項5】
撮影機器と、保護部材とを備えた撮影機器モジュールであって、
前記保護部材が、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学用部材であり、
前記撮影機器が、前記可視光透過域に配置されている、撮影機器モジュール。
【請求項6】
画像表示装置と、保護部材とを備えた画像表示装置モジュールであって、
前記保護部材が、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学用部材であり、
前記画像表示装置が、前記可視光透過域に配置されている、画像表示装置モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用部材、撮影機器モジュールおよび画像表示装置モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
可視光の波長以下の周期間隔を有する微細凹凸構造は、反射防止効果、ロータス効果等を発現する。特に、モスアイ構造と呼ばれる微細凹凸構造は、空気の屈折率から物品の材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となり得る(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、基板と、基板の少なくとも一方の面に設けられた反射防止層とを有する、赤外線センサカバーが開示されている。
特許文献2には、光透過性を有する反射防止物品が開示されている。該反射防止物品は、視認側に位置する第1の表面および前記表面とは反対側の第2の表面に複数の凸部を有する。前記凸部間の平均間隔は400nm以下であり、前記第1の表面における凸部の高さH1と凸部の底部の幅W1との比(H1/W1)が1.3以上であり、前記第2の表面における、凸部の高さH2と凸部の底部の幅W2との比(H2/W2)が、H1/W1よりも大きい。
【0004】
ところで、可視光カメラ、ディスプレイ、近赤外線センサ等の光学機器の保護のために樹脂、ガラス等の透明な前面板が用いられることがある。
例えば、特許文献3には、透明基板の一方の主面の周辺部に遮光領域を有する透明基板が開示されている。該遮光領域は、第1の遮光領域と第2の遮光領域を含む。これら領域の境界を不明確とすることで、意匠性の高い表示装置を得るための透明基板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-124279号公報
【特許文献2】国際公開第2010/150514号
【特許文献3】国際公開第2018/105602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、スマートフォン等の光学機器において、可視光カメラ、ディスプレイおよび近赤外線センサを透明基板の同一面内に有する製品が増えている。
しかし、可視光カメラ、ディスプレイ、近赤外線センサ等と前面板との間に空気層が形成されることで界面反射が生じる結果、視認性、検出感度が低下する。従来の反射防止技術では、可視光透過域および近赤外光透過域の両方での反射を防止できない。
【0007】
本発明は、透明基板の可視光透過域および近赤外光透過域の両方での反射を防止できる光学用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]可視光透過域と近赤外光透過域とが同一面内にある透明基板と、
表面に凸部間の平均間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造を持つフィルムと、
を有し、
前記フィルムが、前記可視光透過域および前記近赤外光透過域の両方を覆うように前記透明基板の少なくとも一方の面側に配置されている、光学用部材。
[2]前記フィルムの視感反射率が、0.5%以下であり、かつ、
前記フィルムの波長900nmにおける反射率が、1.0%以下である、[1]に記載の光学用部材。
[3]前記フィルムの視感反射率が、0.5%以下であり、かつ、
前記フィルムの1550nmにおける反射率が、5.0%以下である、[1]または[2]に記載の光学用部材。
[4]前記透明基板の前記近赤外光透過域と前記フィルムの間に粘着層をさらに有する、[1]~[3]のいずれかに記載の光学用部材。
[5]撮影機器と、保護部材とを備えた撮影機器モジュールであって、
前記保護部材が、[1]~[4]のいずれかに記載の光学用部材であり、
前記撮影機器が、前記可視光透過域に配置されている、撮影機器モジュール。
[6]画像表示装置と、保護部材とを備えた画像表示装置モジュールであって、
前記保護部材が、[1]~[4]のいずれかに記載の光学用部材であり、
前記画像表示装置が、前記可視光透過域に配置されている、画像表示装置モジュール。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可視光透過域および近赤外光透過域の両方での反射を防止できる光学用部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】光学用部材の一例を模式的に示す上面図である。
図2図1の光学用部材のII-II断面図である。
図3】光学用部材の一例を模式的に示す上面図である。
図4図3の光学用部材のIV-IV断面図である。
図5】光学用部材の一例を模式的に示す上面図である。
図6図5の光学用部材のVI-VI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
用語の意味は以下の通りである。
「可視光」とは、波長400~780nmの範囲の光を意味する。
「近赤外光」とは、波長800~2500nmの範囲の光を意味する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0012】
以下、本発明のいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、以下の説明は代表的な例に関するものであり、本発明は以下の記載に限定されない。
各図面の寸法比は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なったものである。また、以下の図面において、同一の構成については同じ符号を用いて示し、重複する構成について説明を省略することがある。
【0013】
図1および図2に示す光学用部材10Aは、可視光透過域3と近赤外光透過域5とが同一面内にある透明基板1と、表面に凸部間の平均間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造を持つフィルム7と、透明基板1とフィルム7の間に粘着層9を有する。
フィルム7は、可視光透過域3および近赤外光透過域5の両方を覆うように透明基板1の少なくとも一方の面1a側に配置されている。
他の例に係る光学用部材においては、フィルム7は、透明基板1のもう一方の面1b側に配置されていてもよい。
さらに他の例に係る光学用部材においては、フィルム7は、透明基板1の面1aおよび面1bの両側に配置されていてもよい。
【0014】
(透明基板)
透明基板の材料は、可視光、赤外線および近赤外光を透過する材料であれば特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂材料、ガラスが挙げられる。なかでも、可視光、赤外線および近赤外光の各透過率に優れることから、ガラス、樹脂が好ましい。平滑性や光学歪みが少ない点ではガラスがより好ましい。曲面への成形性や軽量性の点では樹脂がより好ましい。
【0015】
図1および図2に示すように、光学用部材10Aにおいては、透明基板1の一方の面1aに部分的に印刷処理が施されている。透明基板1の面1aに部分的に設けられた印刷層8は、図1に示すように視認可能であるため意匠性を光学用部材10Aに付与できる。
透明基板1とフィルム7の間の印刷層8は、粘着層9で透明基板1とフィルム7を接着することで保護できる。そのため、印刷層8の耐久性が向上する。
【0016】
その他、透明基板の表面には、密着性、耐擦傷性等の特性を改良する目的として、コーティング処理、コロナ処理等が施されていてもよい。透明基板の形状は、光学用部材の用途に応じて、適宜選択することができる。
【0017】
透明基板には、可視光透過域と近赤外光透過域とが同一面内にある。光学部材10Aにおいては、同一面内で区画された可視光透過域3と近赤外光透過域5が、透明基板1の面1bに形成されている。可視光透過域および近赤外光透過域は、例えば、可視光透過性の透明基板に、近赤外光を透過する遮光層を部分的に設けることで、透明基板の同一面内に形成できる。
【0018】
図2に示すように光学用部材10Aにおいては、透明基板1の一方の面1aに遮光層4を部分的に設けることで、可視光透過域3および近赤外光透過域5が形成されている。透明基板1の面1aに部分的に設けられた遮光層4は、図1に示すように近赤外光透過域5として視認される。
該遮光層は1層構造でもよく、複数種の層からなる多層構造でもよい。遮光層は透明基板の一方の面に形成してもよく、透明基板の両面に形成してもよい。
【0019】
遮光層は、赤外線透過材料を含む樹脂組成物を透明基板上で硬化することで形成できる。赤外線透過材料としては、赤外線透過能を有する顔料が挙げられる。顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれであってもよい。無機顔料としては、例えば、酸化鉄、酸化チタン、複合酸化物系が挙げられる。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料等の金属錯体系顔料が挙げられる。
顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。遮光層の赤外線透過材料の含有割合は、所望の光学特性に応じて自由に変更できる。
【0020】
樹脂組成物は、その硬化方式により、光硬化型、熱硬化型、2種以上の液体を混合することにより硬化するもの、溶媒を乾燥させることにより硬化するものが挙げられる。
樹脂成分としては、例えば、ワニス(油ワニスおよび/または酒精ワニス)、塗料用樹脂、汎用プラスチック、またはエンジニアリングプラスチックが挙げられる。樹脂成分としては、赤外線の吸収が少ない材料が好ましい。塗料用樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。汎用プラスチックまたはエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性PPO樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。
樹脂組成物は、溶媒や分散媒を含んでもよい。樹脂組成物を透明基板に塗工する作業性を向上させるためにこれらの材料は、樹脂組成物中に適切に配合される。
【0021】
遮光層の厚さは0.5~20μmが好ましく、2~10μmがより好ましい。遮光層の厚さが前記数値範囲内の下限値以上であると、透過率のムラを抑制できる。遮光層の厚さが前記数値範囲内の上限値以下であると、応力による層間の膜剥がれを防ぎやすい。
【0022】
遮光層を除いた透明基板の厚さは1~50mmが好ましく、2~30mmがより好ましい。透明基板の厚さが前記数値範囲内の下限値以上であると、機械的強度に優れた光学用部材が得られやすい。透明基板の厚さが前記数値範囲内の上限値以下であると、視認性に優れた光学用部材が得られやすい。
【0023】
透明基板の形状は特に限定されない。透明基板は平板状であってもよく、曲面状であってもよく、曲面に追従性のあるフレキシブル形状であってもよい。
【0024】
(微細凹凸構造を持つフィルム)
フィルム7は、その表面7aに凸部間の平均間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造、いわゆるモスアイ構造を持つ。フィルム7には、その微細凹凸構造により反射防止性能が付与される。微細凹凸構造は、複数の凸部および複数の凸部間に形成される凹部とからなる。
【0025】
微細凹凸構造の隣接する凸部間の平均間隔は可視光の波長以下である。該平均間隔としては、20nm~400nmが好ましく、80nm~250nmがより好ましい。微細凹凸構造の隣接する凸部間の平均間隔が20nm以上であると、陽極酸化ポーラスアルミナの複数の細孔を転写して凸部を形成する場合に凸部を形成しやすい。また、微細凹凸構造の隣接する凸部間の平均間隔が400nm以下であると、陽極酸化ポーラスアルミナの複数の細孔を転写して凸部を形成する場合に、細孔間隔を大きくするための電圧を抑制することができ、陽極酸化ポーラスアルミナを工業的に製造しやすい。微細凹凸構造の隣接する凸部間の平均間隔が250nm以下であると、不要な回折光の発生を抑制できる。
隣接する凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察を用いて、隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を無作為に10点測定し、これらの値を平均した値とする。
【0026】
凸部の平均高さは、150nm~1000nmが好ましく、300nm~800nmがより好ましく、350nm~600nmがさらに好ましい。凸部の平均高さが150nm以上であると、最低反射率や可視光や近赤外光の反射率の上昇を抑制することができ、反射防止性能に優れる。凸部の平均高さが300nm以上であると、900nm付近の近赤外光の反射率上昇を抑制できる。さらに、凸部の平均高さが350nm以上であると1550nm付近までの近赤外光の反射率上昇を抑制できる。凸部の平均高さが1000nm以下であると、凸部を形成しやすく、また、凸部の耐擦傷性に優れる。
凸部の平均高さは、電子顕微鏡観察を用いて、凸部の最頂部と隣接する凹部の最底部との間の垂直距離を無作為に10点測定し、これらの値を平均した値とする。
【0027】
凸部のアスペクト比(凸部の平均高さ/隣接する凸部間の平均間隔)は、0.8~5.0が好ましく、1.2~4.0がより好ましく、1.5~3.0がさらに好ましい。凸部のアスペクト比が0.8以上であると、反射防止性能に優れる。また、凸部のアスペクト比が5.0以下であると、凸部を形成しやすく、凸部の耐擦傷性に優れる。
【0028】
凸部の形状としては、例えば、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状、円柱形状等が挙げられる。これらの凸部の形状は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの凸部の形状の中でも、空気から微細凹凸構造を形成する材料表面まで連続的に屈折率を増大させて、低反射率と低波長依存性を両立させた反射防止性能を発現させることができることから、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最頂部から深さ方向に連続的に増加する形状が好ましく、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状がより好ましい。
凸部は、微細な複数の凸部が合一して1つの凸部となったものであってもよい。
【0029】
フィルムの視感反射率は0.5%以下が好ましく、0.4%以下がより好ましく、0.3%以下がさらに好ましく、0.2%以下が特に好ましい。フィルムの視感反射率が前記上限値以下であると、可視光透過域での反射を充分に防止できる。
フィルムの視感反射率は、実施例に記載の方法によって求められる値である。
【0030】
波長900nmにおける反射率は1.0%以下が好ましく、0.8%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、0.3%以下が特に好ましい。フィルムの波長900nmにおける反射率が前記上限値以下であると、近赤外光透過域での反射を充分に防止できる。
波長900nmにおける反射率は、実施例に記載の方法によって求められる値である。
【0031】
波長1550nmにおける反射率は5.0%以下が好ましく、3.0%以下がより好ましく、2.0%以下がさらに好ましく、1.0%以下が特に好ましい。フィルムの波長1550nmにおける反射率が前記上限値以下であると、近赤外光透過域での反射を充分に防止できる。
波長1550nmにおける反射率は、実施例に記載の方法によって求められる値である。
【0032】
好適例において、フィルムの視感反射率は0.5%以下であり、かつ、該フィルムの波長900nmにおける反射率は1.0%以下である。
また、他の好適例において、フィルムの視感反射率は0.5%以下であり、かつ、フィルムの1550nmにおける反射率は5.0%以下である。
【0033】
フィルムの厚さは10~500μmが好ましく、30~100μmがより好ましい。フィルムの厚さが前記数値範囲内の下限値以上であると、機械的強度に優れた光学用部材が得られやすい。フィルムの厚さが前記数値範囲内の上限値以下であると、視認性に優れた光学用部材が得られやすい。
【0034】
微細凹凸構造の形成方法としては、例えば、下記の方法A1-A3が挙げられる。
・方法A1:微細凹凸構造の反転構造を表面に有するモールドを用いて射出成形またはプレス成形を行い、基材の表面に直接微細凹凸構造を形成する方法。
・方法A2:微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと、基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟持した状態にて、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて硬化樹脂層を形成した後、硬化樹脂層とモールドとを分離する方法。
・方法A3:微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと、基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟持し、活性エネルギー線硬化性組成物にモールドの微細凹凸構造を転写してからモールドを分離した後、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて硬化樹脂層を形成する方法。
微細凹凸構造の製造方法の中でも、微細凹凸構造の転写性に優れ、表面組成の自由度に優れることから、方法A2、方法A3が好ましく、方法A2がより好ましい。
【0035】
モールドとしては、例えば、リソグラフィ法によって表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたモールド、レーザー加工によって表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたモールド、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールド、微細凹凸構造を有するマザーモールドから電鋳法等で複製されたレプリカモールドが挙げられる。これらのモールドの中でも、反射防止性能に優れ、低コストで大面積の微細凹凸構造を形成しやすいことから、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドが好ましい。
【0036】
リソグラフィ法としては、例えば、電子ビームリソグラフィ法、レーザー干渉リソグラフィ法等が挙げられる。
リソグラフィ法によって表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたモールドの製造方法としては、例えば、基材の表面にフォトレジスト膜を塗布し、紫外線レーザー、電子線、X線等で露光し、現像することによって、レジストパターンからなる微細凹凸構造を表面に有するモールドを得る方法;前記レジストパターンを介して基材をドライエッチング等によって選択的にエッチングし、レジストパターンを除去して、微細凹凸構造が基材の表面に直接形成されたモールドを得る方法等が挙げられる。
【0037】
複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドの製造方法としては、例えば、アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸のような電解液を用い、所定の電圧にて陽極酸化する方法等が挙げられる。
【0038】
陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドの製造方法としては、例えば、アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸等を電解液として所定の電圧にて陽極酸化する方法が挙げられる。
アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸等を電解液として所定の電圧にて陽極酸化する方法によれば、陽極酸化処理と孔径拡大処理とを組み合わせることで、断面が矩形でなく三角形や釣鐘型である細孔も高純度アルミニウムに形成可能となる。さらに、陽極酸化処理および孔径拡大処理の時間、回数、条件等を適宜調節することにより、細孔最奥部の角度を鋭くすることも可能となる。
陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドの製造方法としては、例えば、特開2015-129706号公報に記載された方法等が挙げられる。
【0039】
モールドの形状としては、例えば、平板状、ベルト状、ロール状等が挙げられる。これらのモールドの形状の中でも、連続的に微細凹凸構造を転写することができ、基材の生産性に優れることから、ベルト状、ロール状が好ましい。
【0040】
微細凹凸構造は、より簡便に微細凹凸構造を形成することができることから、硬化樹脂層からなることが好ましい。
硬化樹脂層は、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる層である。
【0041】
活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線を照射することで重合反応が進行し、硬化する組成物である。
活性エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等が挙げられる。これらの活性エネルギー線の中でも、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化性に優れることから、紫外線、電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0042】
活性エネルギー線硬化性組成物は、重合性化合物、重合開始剤、および、必要に応じて、他の添加剤を含むことが好ましい。
【0043】
重合性化合物としては、例えば、分子中にラジカル重合性結合およびカチオン重合性結合の少なくとも1種を含むモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。これらの重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等を有する単官能モノマー、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等を有する多官能モノマー等が挙げられる。これらのラジカル重合性結合を有するモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリルとは、アクリル、メタクリルの総称である。
【0045】
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマー等が挙げられる。これらのカチオン重合性結合を有するモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
分子中にラジカル重合性結合およびカチオン重合性結合の少なくとも1種を含むオリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、例えば、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル化合物;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;ポリオール(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;カチオン重合型エポキシ化合物;側鎖に前記ラジカル重合性結合を有するモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。これらの分子中にラジカル重合性結合およびカチオン重合性結合の少なくとも1種を含むオリゴマーまたは反応性ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、電子線重合開始剤、熱重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他の添加剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、非反応性のポリマー、酸化防止剤、離型剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、光安定剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤が挙げられる。他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
微細凹凸構造の表面に撥水性を付与する場合、疎水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性組成物として、フッ素含有化合物、シリコーン系化合物を用いることが好ましい。撥水性を付与するとは、微細凹凸構造と水との接触角を120°以上とすることを言う。撥水性であれば、撮影機器や画像表示装置の光学材料として用いる場合に、温度変化や高湿度環境で曇りが発生した場合であっても、素早く乾燥することで検出感度や視認性の低下を抑制できる。
【0049】
微細凹凸構造の表面に親水性を付与する場合、親水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性組成物として、四官能以上の多官能(メタ)アクリレートと二官能以上の親水性(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。親水性を付与するとは、微細凹凸構造と水との接触角を40℃以下、好ましくは30°以下とすることを言う。親水性であれば、撮影機器や画像表示装置の光学部材として用いる場合に、温度変化や高湿度環境での曇りを抑制し、検出感度や視認性の低下を抑制できる。
【0050】
活性エネルギー線硬化性組成物の組成は特に限定されない。例えば、特開2013-175733号公報、特開2015-129947号公報に記載された組成を参考にすることができる。
【0051】
モールドと基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟持する方法としては、例えば、モールドと基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を配置した状態でモールドと基材とを押圧することによって、モールドの微細凹凸構造に活性エネルギー線硬化性組成物を注入する方法等が挙げられる。
【0052】
基材の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン、メチルメタクリレート-スチレン共重合体等のスチレン樹脂;セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルスルフォン樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリウレタン樹脂;ガラス等が挙げられる。なかでも、可視光および近赤外光の透過率に優れることから、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂が好ましい。画像表示装置に用いた場合の視認性や、近赤外センサに用いた場合の精度に優れることから、面内位相差が20nm以下のアクリル樹脂、セルロース樹脂がより好ましい。透明基板にガラスを用いた場合に、飛散防止性を付与できる点でポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0053】
基材の形態は特に限定されない。例えば、フィルム、シート等の形態が挙げられる。なかでも生産性、取り扱い性に優れることから、フィルム、シートが好ましい。
基材の製造方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、キャスト成形法等の製造方法等が挙げられる。なかでも、生産性に優れることから、押出成形法、キャスト成形法が好ましい。
【0054】
基材の表面には、密着性、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性、意匠性等の特性を改良する目的として、コーティング処理、コロナ処理、印刷処理等が施されていてもよい。
【0055】
(粘着層)
図1および図2に示す光学用部材10Aのように、好適例に係る光学用部材は粘着層9をさらに有する。粘着層は、透明基板およびフィルムを接着する機能を担う。一実施形態として、粘着層は可視光を一部遮断する機能を担ってもよく、その場合は可視光の透過率は30%以上70%以下が好ましい。粘着層は、例えば、粘着剤組成物を硬化することで形成できる。好適な粘着剤組成物は、アクリル系樹脂を含む。アクリル系樹脂は、特に限定されず、種々のアクリル系樹脂を使用できる。
光学用部材を曲面に適用するために、粘着剤組成物は2回以上段階的に硬化できること、つまり、多段硬化性を示すものであってもよい。
【0056】
(作用機序)
以上一例を用いて説明した光学用部材においては、微細凹凸構造を持つフィルムが、可視光透過域および近赤外光透過域の両方を覆うように透明基板の少なくとも一方の面側に配置されている。よって、可視光透過域および近赤外光透過域の両方での反射を防止できる。光学用部材によれば、光学機器の前面板として使用すると、可視光域、近赤外光域の両領域の光の反射を抑制できる。そのため、前面板による視認性の向上に寄与し、また、解像度の低下、検出感度の低下、映り込み、フレアやゴーストの発生を防止できる。
【0057】
(用途)
光学用部材は、カメラ等の撮影機器や画像表示装置のような光学機器の保護部材として有用である。光学用部材の透明基板の可視光透過域には、カメラ等の撮影機器や画像表示装置が配置される。また、光学用部材の近赤外光透過域には、赤外線センサのようなセンサが配置される。
【0058】
例えば、撮影機器と保護部材とを備えた撮影機器モジュールの保護部材に、光学用部材を適用できる。該撮影機器モジュールにおいては、撮影機器は可視光透過域に配置されている。
他にも、画像表示装置と、保護部材とを備えた画像表示装置モジュールの保護部材に、光学用部材を適用できる。該画像表示装置モジュールにおいては、画像表示装置が可視光透過域に配置されている。
【0059】
(他の形態例)
図3および図4に示す光学部材10Bは、透明基板1とフィルム7と粘着層9とを有する。光学部材10Bにおいては、フィルム7の微細凹凸構造と反対側の表面7bに遮光層4および印刷層8がそれぞれ部分的に設けられている。
フィルム7の表面7bに部分的に設けられた遮光層4は、図3に示すように近赤外光透過域5として視認される。
フィルム7の表面7bに部分的に設けられた印刷層8は、図3に示すように視認可能であるため、意匠性を付与できる。
【0060】
図5および図6に示す光学部材10Cは、透明基板1とフィルム7と粘着層9とを有する。光学部材10Cにおいては、フィルム7の微細凹凸構造が形成された表面7aに印刷層8が部分的に設けられている。
フィルム7の表面7aに部分的に設けられた印刷層8は、図5に示すように視認可能であるため光学用部材10Cに意匠性を付与できる。
【0061】
微細凹凸構造7の表面7aの濡れ性(表面張力)は38mN/m以上が好ましい。表面7aの濡れ性が38mN/m以上であれば、意匠性や遮光性を付与する目的で印刷層8を施す際に、微細凹凸構造上へのインクのハジキを抑制しやすい。そのため、印刷が容易であり、インクと微細凹凸構造の密着性が良好となる。
【0062】
以上いくつかの実施形態例を示して一実施形態について説明したが、本発明は本明細書に開示の実施形態例に限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。本明細書に開示の実施形態は、その他の様々な形態で実施可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更が可能である。
【実施例0063】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0064】
<ロール状のモールド1の製造>
純度99.99%のアルミニウムインゴットを外径200mm、内径155mm、長さ350mmに切断し、圧延痕のない円筒状のアルミニウム基材を用意した。該アルミニウム基材の円筒外周面を0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流電圧40V、温度16℃の条件で10分間陽極酸化を行った。得られた酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合溶液に浸漬し、酸化被膜を除去した(酸化被膜除去工程)。得られたアルミニウム基材を0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流電圧40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った(陽極酸化処理工程)。得られた酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、30℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った(孔径拡大処理工程)。この陽極酸化処理工程と孔径拡大処理工程とを合計5回繰り返すことで、設計上では平均間隔100nm、深さ200nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状のモールド1を得た。
【0065】
<円盤状のモールド2、3、4、5の製造>
純度99.99%のアルミニウムインゴットを直径55mm、厚み3mmの円盤状に切断、表面を研磨処理し、圧延痕のないアルミニウム基材の円盤プレートを用意した。該アルミニウム基材の円盤面を0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流電圧40または80V、温度16℃の条件で陽極酸化を行った(陽極酸化処理工程)。得られた酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、30℃の9.55質量%リン酸水溶液に浸漬して、細孔径拡大処理を行った(孔径拡大処理工程)。この陽極酸化処理工程と孔径拡大処理工程とを合計5回繰り返すことで、陽極酸化アルミナが表面に形成された円盤状のモールドを得た。陽極酸化工程の直流電圧、陽極酸化処理および孔径拡大処理の時間、回数を適宜調節することにより、平均間隔と深さの異なるモールド2、3、4、5をそれぞれ得た。
【0066】
<活性エネルギー線硬化性組成物の調製>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート25質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート25質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート25質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのエチレンオキサイド変性化合物25質量部を混合し、さらに、第1の光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)1質量部、第2の光重合開始剤(商品名「イルガキュア819」、BASF社製)0.5質量部を加えて混合し、活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0067】
<微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(1)>
ロール状のモールド1を回転させ、モールドの外周面に沿ってモールドの回転方向にポリエチレンテレフタレート基材(商品名「U403」東レ(株)製、厚さ50μm)を走行させながら、モールドの外周面と走行している基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を供給した。その後、紫外線を照射することで、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた。硬化物をモールドから剥離し、微細凹凸構造(モスアイ構造)を持つ反射防止フィルム(1)を製造した。得られた反射防止フィルムの表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、周期100nm、高さ200nmの微細凸部が形成されていた。
【0068】
<微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(2)>
ロール状のモールド1を回転させ、モールドの外周面に沿ってモールドの回転方向にトリアセチルセルロース基材(商品名「KC4UA」、コニカミノルタ(株)製、厚さ40μm)を走行させながら、モールドの外周面と走行している基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を供給した。その後、紫外線を照射することで、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた。硬化物をモールドから剥離し、微細凹凸構造(モスアイ構造)を持つ反射防止フィルム(2)を製造した。得られた反射防止フィルムの表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、周期100nm、高さ200nmの微細凸部が形成されていた。
【0069】
<微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(3)>
ロール状のモールド1を回転させ、モールドの外周面に沿ってモールドの回転方向にアクリル基材(商品名「ORV-40UT」、大倉工業(株)製、厚さ40μm)を走行させながら、モールドの外周面と走行している基材との間に、活性エネルギー線硬化性組成物を供給した。紫外線を照射することで、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた。硬化物をモールドから剥離し、微細凹凸構造(モスアイ構造)を持つ反射防止フィルム(3)を製造した。得られた反射防止フィルムの表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、周期100nm、高さ200nmの微細凸部が形成されていた。
【0070】
<微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(4)>
円盤状のモールド2とポリエチレンテレフタレート基材(商品名「U403」東レ(株)製、厚さ50μm)を重ね合わせ、モールドと基材の間に活性エネルギー線硬化性組成物を供給した。その後、紫外線を照射することで、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた。硬化物をモールドから剥離し、微細凹凸構造(モスアイ構造)を持つ反射防止フィルム(4)を製造した。得られた反射防止フィルムの表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、周期100nm、高さ300nmの微細凸部が形成されていた。
【0071】
<微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(5)>
円盤状のモールド3とポリエチレンテレフタレート基材(商品名「U403」東レ(株)製、厚さ50μm)を重ね合わせ、モールドと基材の間に活性エネルギー線硬化性組成物を供給した。その後、紫外線を照射することで、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた。硬化物をモールドから剥離し、微細凹凸構造(モスアイ構造)を持つ反射防止フィルム(5)を製造した。得られた反射防止フィルムの表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、周期150nm、高さ350nmの微細凸部が形成されていた。
【0072】
<微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(6)>
円盤状のモールド4とポリエチレンテレフタレート基材(商品名「U403」東レ(株)製、厚さ50μm)を重ね合わせ、モールドと基材の間に活性エネルギー線硬化性組成物を供給した。その後、紫外線を照射することで、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた。硬化物をモールドから剥離し、微細凹凸構造(モスアイ構造)を持つ反射防止フィルム(6)を製造した。得られた反射防止フィルムの表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、周期150nm、高さ400nmの微細凸部が形成されていた。
【0073】
<微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(7)>
円盤状のモールド5とポリエチレンテレフタレート基材(商品名「U403」東レ(株)製、厚さ50μm)を重ね合わせ、モールドと基材の間に活性エネルギー線硬化性組成物を供給した。その後、紫外線を照射することで、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた。硬化物をモールドから剥離し、微細凹凸構造(モスアイ構造)を持つ反射防止フィルム(7)を製造した。得られた反射防止フィルムの表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、周期150nm、高さ500nmの微細凸部が形成されていた。
【0074】
<実施例1>
微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(1)を、黒アクリル樹脂板(商品名「アクリライトEX502」、三菱ケミカル社製)の一方の面に粘着層を介して貼りつけた。その後、反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
<実施例2>
微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(2)を、黒アクリル樹脂板の一方の面に粘着層を介して貼りつけた。その後、反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
<実施例3>
微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(3)を、黒アクリル樹脂板の一方の面に粘着層を介して貼りつけた。その後、反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
<実施例4>
微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(4)を、黒アクリル樹脂板の一方の面に粘着層を介して貼りつけた。その後、反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
<実施例5>
微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(5)を、黒アクリル樹脂板の一方の面に粘着層を介して貼りつけた。その後、反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
<実施例6>
微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(6)を、黒アクリル樹脂板の一方の面に粘着層を介して貼りつけた。その後、反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
<実施例7>
微細凹凸構造を持つ反射防止フィルム(7)を、黒アクリル樹脂板の一方の面に粘着層を介して貼りつけた。その後、反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
<比較例1>
多層構造を含む反射防止層を有する反射防止フィルム(商品名「FHC-FV4ARS+HN01A」、東山フィルム(株)製)を、黒アクリル樹脂板の一方の面に粘着層を介して貼りつけ、反射率を測定した。得られた評価結果を、表1に示す。
【0082】
<比較例2>
反射防止フィルムを貼合していない黒アクリル樹脂板の反射率を測定した。
【0083】
<測定方法>
微細凹凸構造を持つフィルムの190~900nmの範囲の反射率を、分光光度計(機種名「UV―2450」、(株)島津製作所)を用いて、入射角5°、正反射で測定した。視感度反射率は、JIS R3106に準拠して算出した。表1に900nmの反射率と視感反射率を示す。
微細凹凸構造を持つフィルムの300~2500nmの範囲の反射率を分光光度計(機種名「UH-4150」、(株)日立製作所製)を用い、入射角8°、全反射で測定した。表1に1550nmの反射率を示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1から分かるように、実施例1、2、3、4、5、6、7で得られた微細凹凸構造を有するフィルムは視感反射率、900nm反射率、1550nm反射率が優れた。一方で、比較例1のARフィルムは900nm、1550nmの反射率が劣った。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、可視光透過域および近赤外光透過域の両方での反射を防止できる光学用部材が提供される。
【符号の説明】
【0087】
1 透明基板
3 可視光透過域
4 遮光層
5 近赤外光透過域
7 微細凹凸構造を持つフィルム
8 印刷層
9 粘着層
10 光学用部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6