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  • 特開-迷光防止フィルム 図1
  • 特開-迷光防止フィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132916
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】迷光防止フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20240920BHJP
   G02B 1/118 20150101ALI20240920BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G02B5/00 B
G02B1/118
G02B5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027461
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023043211
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】川原 友泰
(72)【発明者】
【氏名】中井 祐介
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
2K009
【Fターム(参考)】
2H042AA01
2H042AA09
2H042AA22
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA14
2H148CA24
2K009AA01
2K009AA12
2K009BB14
2K009DD15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は可視光および近赤外光の各反射率が低減された迷光防止フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の迷光防止フィルム10Aは、その表面に形成された、凸部間の平均間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造3を有し、550nmの可視光の8度全反射率が0.50%以下であり、かつ、800nmの近赤外光の8度全反射率が1.0%以下である。好適例において、550nmの可視光の5度正反射率が0.10%以下であってもよく、800nmの近赤外光の5度正反射率が0.30%以下であってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
迷光防止フィルムであって、
前記迷光防止フィルムの表面に形成された、凸部間の平均間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造を有し、
550nmの可視光の8度全反射率が、0.50%以下であり、かつ、
800nmの近赤外光の8度全反射率が、1.0%以下である、迷光防止フィルム。
【請求項2】
550nmの可視光の5度正反射率が、0.10%以下であり、かつ、
800nmの近赤外光の5度正反射率が、0.30%以下である、請求項1に記載の迷光防止フィルム。
【請求項3】
算術平均粗さRaが0.010μm以上1.00μm未満であり、周期Smが10~300μmである凹凸構造をさらに有し、
前記凹凸構造上に、前記微細凹凸構造が形成された、請求項1または2に記載の迷光防止フィルム。
【請求項4】
前記凹凸構造の前記周期Smが、70~200μmである、請求項3に記載の迷光防止フィルム。
【請求項5】
前記微細凹凸構造が形成された表面の反対側に粘着層をさらに有し、
前記粘着層が、可視光および/または近赤外光を遮蔽することができる、請求項1または2に記載の迷光防止フィルム。
【請求項6】
前記微細凹凸構造が形成された表面の反対側の粘着層を介して接着されたフィルムまたはシートをさらに有し、
前記フィルムまたは前記シートが、可視光および/または近赤外光を遮蔽することができる、請求項1または2に記載の迷光防止フィルム。
【請求項7】
前記微細凹凸構造が形成された表面の反対側にインキ層をさらに有し、
前記インキ層が、可視光および/または近赤外光を遮蔽することができる、請求項1または2に記載の迷光防止フィルム。
【請求項8】
前記微細凹凸構造が形成された表面の水との接触角が30度以下である、請求項1または2に記載の迷光防止フィルム。
【請求項9】
請求項1または2に記載の迷光防止フィルムを光学機器の内部に設置する迷光防止対策方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迷光防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器の内部で発生する迷光は、カメラの撮影画像にフレアやゴーストを発生させることがあり、また、分光光度計のような計測機器の測定誤差の原因となる。反射光を吸収することで迷光を低減ないし防止できる迷光防止フィルムが提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-332907号公報
【特許文献2】特表2021-509487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2の各フィルムにおいては、可視光および近赤外光の各反射率を低減することに改善の余地がある。
【0005】
本発明は、可視光および近赤外光の各反射率が低減された迷光防止フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]迷光防止フィルムであって、前記迷光防止フィルムの表面に形成された、凸部間の平均間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造を有し、550nmの可視光の8度全反射率が、0.50%以下であり、かつ、800nmの近赤外光の8度全反射率が、1.0%以下である、迷光防止フィルム。
[2]550nmの可視光の5度正反射率が、0.10%以下であり、かつ、800nmの近赤外光の5度正反射率が、0.30%以下である、[1]に記載の迷光防止フィルム。
[3]算術平均粗さRaが0.010μm以上1.00μm未満であり、周期Smが10~300μmである凹凸構造をさらに有し、前記凹凸構造上に、前記微細凹凸構造が形成された、[1]または[2]に記載の迷光防止フィルム。
[4]前記凹凸構造の前記周期Smが、70~200μmである、[3]に記載の迷光防止フィルム。
[5]前記微細凹凸構造が形成された表面の反対側に粘着層をさらに有し、前記粘着層が、可視光および/または近赤外光を遮蔽することができる、[1]~[4]のいずれかに記載の迷光防止フィルム。
[6]前記微細凹凸構造が形成された表面の反対側の粘着層を介して接着されたフィルムまたはシートをさらに有し、前記フィルムまたは前記シートが、可視光および/または近赤外光を遮蔽することができる、[1]~[5]のいずれかに記載の迷光防止フィルム。
[7]前記微細凹凸構造が形成された表面の反対側にインキ層をさらに有し、前記インキ層が、可視光および/または近赤外光を遮蔽することができる、[1]~[6]のいずれかに記載の迷光防止フィルム。
[8]前記微細凹凸構造が形成された表面の水との接触角が30度以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の迷光防止フィルム。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の迷光防止フィルムを光学機器の内部に設置する迷光防止対策方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、可視光および近赤外光の各反射率が低減された迷光防止フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】迷光防止フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2】迷光防止フィルムの他の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語の意味は以下の通りである。
「可視光」とは、波長400nm~780nmの範囲の光を意味する。
「近赤外光」とは、波長800~2500nmの範囲の光を意味する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0010】
本発明の迷光防止フィルムは、その表面に形成された凸部間の平均間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造を有し、550nmの可視光の8度全反射率が、0.50%以下であり、かつ、800nmの近赤外光の8度全反射率が、1.0%以下である。
このように本発明の迷光防止フィルムにおいては、可視光および近赤外光の各反射率が低減されている。550nmの可視光の8度全反射率は0.50%以下であるが、0.4%以下が好ましく、0.3%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましい。800nmの近赤外光の8度全反射率は1.0%以下であるが、0.9%以下が好ましく、0.8%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。
【0011】
好適例に係る迷光防止フィルムにおいては、550nmの可視光の5度正反射率は0.20%以下であり、かつ、800nmの近赤外光の5度正反射率は0.50%以下である。
550nmの可視光の5度正反射率は0.20%以下であるが、0.10%以下が好ましく、0.07%以下がより好ましく、0.05%以下がさらに好ましい。800nmの近赤外光の5度正反射率は0.50%以下であるが、0.30%以下が好ましく、0.20%以下がより好ましく、0.10%以下がさらに好ましい。
【0012】
以下、本発明のいくつかの実施形態例について図面を参照しながら説明する。ただし、以下の説明は代表的な例に関するものであり、本発明は以下の記載に限定されない。
各図面の寸法比は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なったものである。また、以下の図面において、同一の構成については同じ符号を用いて示し、重複する構成について説明を省略することがある。
【0013】
図1に示す迷光防止フィルム10Aは、基材1と、微細凹凸構造3と、粘着層5とを有する。微細凹凸構造3は、基材1の面1aに形成されている。粘着層5は、基材1の面1bに設けられている。
【0014】
基材1の材料は、可視光、赤外線および近赤外光を透過する材料であれば特に限定されない。基材の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン、メチルメタクリレート-スチレン共重合体等のスチレン樹脂;セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルスルフォン樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリウレタン樹脂;ガラス等が挙げられる。なかでも、可視光および近赤外光の透過率に優れることから、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0015】
基材1の厚さは10~500μmが好ましく、30~100μmがより好ましい。基材1の厚さが前記数値範囲内の下限値以上であると、機械的強度に優れた迷光防止フィルムが得られやすい。基材1の厚さが前記数値範囲内の上限値以下であると、曲面への成形性に優れた迷光防止フィルムが得られやすい。
【0016】
基材の製造方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、キャスト成形法等の製造方法等が挙げられる。なかでも、生産性に優れることから、押出成形法、キャスト成形法が好ましい。
基材の表面には、密着性、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性、意匠性等の特性を改良する目的として、コーティング処理、コロナ処理、印刷処理等が施されていてもよい。
【0017】
迷光防止フィルム10Aは、基材1の面1aに形成された凸部間の平均間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造3、いわゆるモスアイ構造を持つ。迷光防止フィルム10Aには、微細凹凸構造3により反射防止性能が付与される。
【0018】
微細凹凸構造3は、複数の凸部13および複数の凸部13間に形成される凹部とからなる。
微細凹凸構造の隣接する凸部13間の平均間隔は可視光の波長以下である。該平均間隔としては、20nm~400nmが好ましく、80nm~250nmがより好ましい。微細凹凸構造の隣接する凸部13間の平均間隔が前記数値範囲内の下限値以上であると、陽極酸化ポーラスアルミナの複数の細孔を転写して凸部13を形成する場合に凸部13を形成しやすい。また、微細凹凸構造の隣接する凸部13間の平均間隔が前記数値範囲内の上限値以下であると、陽極酸化ポーラスアルミナの複数の細孔を転写して凸部13を形成する場合に、細孔間隔を大きくするための電圧を抑制することができ、陽極酸化ポーラスアルミナを工業的に製造しやすい。微細凹凸構造の隣接する凸部13間の平均間隔が250nm以下であると、不要な回折光の発生を抑制できる。
隣接する凸部13間の平均間隔は、電子顕微鏡観察を用いて、隣接する凸部13間の間隔(凸部13の中心から隣接する凸部13の中心までの距離)を無作為に10点測定し、これらの値を平均した値とする。
【0019】
凸部13の平均高さは100nm~500nmが好ましく、150nm~400nmがより好ましい。凸部13の平均高さが前記数値範囲内の下限値以上であると、最低反射率や可視光や近赤外光の反射率の上昇を抑制することができ、反射防止性能に優れる。凸部13の平均高さが前記数値範囲内の上限値以下であると、凸部13を形成しやすく、また、凸部13の耐擦傷性に優れる。
凸部13の平均高さは、電子顕微鏡観察を用いて、凸部13の最頂部と隣接する凹部の最底部との間の垂直距離を無作為に10点測定し、これらの値を平均した値とする。
【0020】
凸部13のアスペクト比(凸部13の平均高さ/隣接する凸部13間の平均間隔)は、0.8~5.0が好ましく、1.2~4.0がより好ましく、1.5~3.0がさらに好ましい。凸部13のアスペクト比が前記数値範囲内の下限値以上であると、反射防止性能に優れる。また、凸部13のアスペクト比が前記数値範囲内の上限値以下であると、凸部13を形成しやすく、凸部13の耐擦傷性に優れる。
【0021】
凸部の形状としては、例えば、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状、円柱形状等が挙げられる。これらの凸部13の形状は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの凸部13の形状の中でも、空気から微細凹凸構造を形成する材料表面まで連続的に屈折率を増大させて、低反射率と低波長依存性を両立させた反射防止性能を発現させることができることから、高さ方向と直交する方向の凸部13断面積が最頂部から深さ方向に連続的に増加する形状が好ましく、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状がより好ましい。 凸部は、微細な複数の凸部が合一して1つの凸部となったものであってもよい。
【0022】
微細凹凸構造の形成方法としては、例えば、下記の方法A1-A3が挙げられる。
・方法A1:微細凹凸構造の反転構造を表面に有するモールドを用いて射出成形またはプレス成形を行い、基材の表面に直接微細凹凸構造を形成する方法。
・方法A2:微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと、基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟持した状態にて、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて硬化樹脂層を形成した後、硬化樹脂層とモールドとを分離する方法。
・方法A3:微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと、基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟持し、活性エネルギー線硬化性組成物にモールドの微細凹凸構造を転写してからモールドを分離した後、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて硬化樹脂層を形成する方法。
微細凹凸構造の製造方法の中でも、微細凹凸構造の転写性に優れ、表面組成の自由度に優れることから、方法A2、方法A3が好ましく、方法A2がより好ましい。
【0023】
モールドとしては、例えば、リソグラフィ法によって表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたモールド、レーザー加工によって表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたモールド、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールド、微細凹凸構造を有するマザーモールドから電鋳法等で複製されたレプリカモールドが挙げられる。これらのモールドの中でも、反射防止性能に優れ、低コストで大面積の微細凹凸構造を形成しやすいことから、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドが好ましい。
【0024】
リソグラフィ法としては、例えば、電子ビームリソグラフィ法、レーザー干渉リソグラフィ法等が挙げられる。
リソグラフィ法によって表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたモールドの製造方法としては、例えば、基材の表面にフォトレジスト膜を塗布し、紫外線レーザー、電子線、X線等で露光し、現像することによって、レジストパターンからなる微細凹凸構造を表面に有するモールドを得る方法;前記レジストパターンを介して基材をドライエッチング等によって選択的にエッチングし、レジストパターンを除去して、微細凹凸構造が基材の表面に直接形成されたモールドを得る方法等が挙げられる。
【0025】
複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドの製造方法としては、例えば、アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸のような電解液を用い、所定の電圧にて陽極酸化する方法等が挙げられる。
【0026】
陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドの製造方法としては、例えば、アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸等を電解液として所定の電圧にて陽極酸化する方法が挙げられる。
アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸等を電解液として所定の電圧にて陽極酸化する方法によれば、陽極酸化処理と孔径拡大処理とを組み合わせることで、断面が矩形でなく三角形や釣鐘型である細孔も高純度アルミニウムに形成可能となる。さらに、陽極酸化処理および孔径拡大処理の時間、回数、条件等を適宜調節することにより、細孔最奥部の角度を鋭くすることも可能となる。
陽極酸化ポーラスアルミナが表面に形成されたモールドの製造方法としては、例えば、特開2015-129706号公報に記載された方法等が挙げられる。
【0027】
モールドの形状としては、例えば、平板状、ベルト状、ロール状等が挙げられる。これらのモールドの形状の中でも、連続的に微細凹凸構造を転写することができ、基材の生産性に優れることから、ベルト状、ロール状が好ましい。
【0028】
微細凹凸構造は、より簡便に微細凹凸構造を形成することができることから、硬化樹脂層からなることが好ましい。
硬化樹脂層は、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる層である。
【0029】
活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線を照射することで重合反応が進行し、硬化する組成物である。
活性エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等が挙げられる。これらの活性エネルギー線の中でも、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化性に優れることから、紫外線、電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0030】
活性エネルギー線硬化性組成物は、重合性化合物、重合開始剤、および、必要に応じて、他の添加剤を含むことが好ましい。
【0031】
重合性化合物としては、例えば、分子中にラジカル重合性結合およびカチオン重合性結合の少なくとも1種を含むモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等を有する単官能モノマー、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等を有する多官能モノマー等が挙げられる。ラジカル重合性結合を有するモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリルとは、アクリル、メタクリルの総称である。
【0033】
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマー等が挙げられる。カチオン重合性結合を有するモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
分子中にラジカル重合性結合およびカチオン重合性結合の少なくとも1種を含むオリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、例えば、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル化合物;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;ポリオール(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;カチオン重合型エポキシ化合物;側鎖に前記ラジカル重合性結合を有するモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。分子中にラジカル重合性結合およびカチオン重合性結合の少なくとも1種を含むオリゴマーまたは反応性ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、電子線重合開始剤、熱重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他の添加剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、非反応性のポリマー、酸化防止剤、離型剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、光安定剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤が挙げられる。他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
微細凹凸構造の表面に撥水性を付与する場合、疎水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性組成物として、フッ素含有化合物、シリコーン系化合物を用いることが好ましい。撥水性を付与するとは、微細凹凸構造と水との接触角を120度以上とすることを言う。撥水性であれば、撮影機器や測定機器に用いる場合に、温度変化や高湿度環境で曇りが発生した場合であっても、素早く乾燥することで検出感度や視認性の低下を抑制できる。
【0037】
微細凹凸構造の表面に親水性を付与する場合、親水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性組成物として、四官能以上の多官能(メタ)アクリレートと二官能以上の親水性(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。親水性を付与するとは、微細凹凸構造と水との接触角を30度以下とすることを言う。親水性であれば、撮影機器や測定機器に用いる場合に、温度変化や高湿度環境での曇りを抑制し、検出感度や視認性の低下を抑制できる。
【0038】
活性エネルギー線硬化性組成物の組成は特に限定されない。例えば、特開2013-175733号公報、特開2015-129947号公報に記載された組成を参考にすることができる。
【0039】
モールドと基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を挟持する方法としては、例えば、モールドと基材との間に活性エネルギー線硬化性組成物を配置した状態でモールドと基材とを押圧することによって、モールドの微細凹凸構造に活性エネルギー線硬化性組成物を注入する方法等が挙げられる。
【0040】
(粘着層)
図1に示す迷光防止フィルム10Aのように、好適例に係る迷光防止フィルムは、微細凹凸構造が形成された表面の反対側に粘着層をさらに有してもよい。粘着層は、迷光防止フィルムに接着性を付与する機能を担う。粘着層は、例えば、粘着剤組成物を硬化することで形成できる。好適な粘着剤組成物は、アクリル系樹脂を含む。アクリル系樹脂は、特に限定されず、種々のアクリル系樹脂を使用できる。迷光防止フィルムを曲面に適用するために、粘着剤組成物は2回以上段階的に硬化できること、つまり、多段硬化性を示すものであってもよい。
【0041】
該粘着層は、可視光および/または近赤外光を遮断するために着色剤を含んでもよい。可視光および/または近赤外光を遮蔽することができれば、可視光、近赤外光の反射率をさらに低減できる。
【0042】
着色剤は、顔料、染料等のいずれの色材であってもよいが、顔料を好適に用いることができる。具体的には、例えば、黒系色材としては、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、松煙等)、グラファイト(黒鉛)、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライト等)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素等が挙げられる。なかでも、コスト、入手性の観点から、カーボンブラックが好ましい。黒系色材は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
着色層には、上記以外に必要に応じて添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、難燃剤等が添加できる。
【0044】
(凹凸構造上に形成された微細凹凸構造)
好適例に係る迷光防止フィルムは、算術平均粗さRaが0.010μm以上1.00μm未満であり、周期Smが10~300μmである凹凸構造をさらに有してもよい。該凹凸構造上に、微細凹凸構造を形成することで、可視光および近赤外光の各反射率をさらに低減できる。
【0045】
図2に示す迷光防止フィルム10Bは、基材1と、凹凸構造2と、微細凹凸構造4と、粘着層5とを有する。凹凸構造2は基材1の面1aに形成され、微細凹凸構造4は凹凸構造2上に形成されている。
【0046】
凹凸構造2の算術平均粗さRaは0.010μm以上1.00μm未満であるが、0.050~0.90μmが好ましく、0.10~0.80μmがより好ましい。該算術平均粗さRaが前記数値範囲内の下限値以上であると、光沢が極めて少なくなり、反射も抑制できる。よって迷光を防止できる。該算術平均粗さRaが前記数値範囲内の上限値以下であると、モールドから活性エネルギー線硬化性組成物が硬化した凹凸構造を離形しやすいため、生産性が向上する。また、必要以上の散乱を抑制でき、反射も低くなる。よって迷光を防止できる。
算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2001(ISO 4287:1997)によって測定される値である。
【0047】
凹凸構造2の周期Smは10~300μmであるが、70~200μmが好ましく、80~150μmがより好ましい。該周期Smが前記数値範囲内の下限値以上であると、光沢が極めて少なくなり、反射も抑制できる。よって迷光を防止できる。該周期Smが前記数値範囲内の上限値以下であると、モールドから活性エネルギー線硬化性組成物が硬化した凹凸構造を離形しやすく生産性が向上する。また、必要以上の散乱を抑制でき、反射も低くなる。よって迷光を防止できる。
周期は、JIS B 0601:2001(ISO 4287:1997)によって測定される値である。
【0048】
凹凸構造2および微細凹凸構造3の形成方法としては、凹凸構造上に形成された微細凹凸構造の反転構造を有するスタンパをモールドとして用いる以外は、上述の方法A1-A3と同じ方法が挙げられる。
スタンパは、例えば、アルミニウム基材の被加工面をブラスト処理した後、該処理面を陽極酸化することで製造できる。スタンパの製造に関して、ブラスト処理および陽極酸化の詳細は、例えば、国際公開第2013/099935号を参照できる。
【0049】
凹凸構造2の算術平均粗さRaは、吐出ノズルの先端からブラスト処理されるアルミニウム基材の表面までの距離rや、研磨材を吐出する吐出圧力等のブラスト処理条件によって調節できる。具体的には、距離rおよび/または吐出圧力を大きくすると、算術平均粗さRaは大きくなる傾向にあり、距離rおよび/または吐出圧力を小さくすると、算術平均粗さRaは小さくなる傾向にある。
【0050】
凹凸構造2の周期Smは、ブラスト処理においてアルミニウム基材に研磨材を吐出する密度によって調整することができ、研磨材の吐出密度は吐出ノズルの移動速度や研磨材の供給量等によって調節できる。具体的には、ブラストの操作ピッチを疎にすると周期Smは大きくなる傾向にあり、ブラストの操作ピッチを密にすると周期Smは小さくなる傾向にある。また、研磨材の粒子径を大きくすると周期Smは大きくなる傾向にあり、粒子径を小さくすると周期Smは小さくなる傾向にある。
【0051】
(インキ層)
好適例に係る迷光防止フィルムは、微細凹凸構造が形成された表面の反対側にインキ層をさらに有してもよい。該インキ層が、可視光および/または近赤外光を遮蔽することができれば、可視光、近赤外光の反射率をさらに低減できる。
【0052】
インキ層は、樹脂インキを含む層である。
インキ層は、単層構造でもよいし多層構造でもよい。一例において、異なる色のインキ層が複数、基材の裏面に形成され、写真、絵柄、文字、数字等の印刷画像を構成し得る。
【0053】
樹脂インキは、樹脂と、着色剤と、溶剤とを含む。また、樹脂インキは、必要に応じて添加剤をさらに含んでいてもよい。
樹脂インキは油性と水溶性とに大別できる。本発明に用いる樹脂インキは、油性でもよいし水溶性でもよいが、基材との馴染みに優れる点で、油性が好ましい。
油性インキや水溶性インキとしては、印刷画像の形成に用いられる公知のインキを用いることができる。また、市販品を用いてもよい。以下に油性インキおよび水溶性インキに含まれる各成分の一例について詳細に説明する。
【0054】
油性インキ:
油性インキに含まれる樹脂としては、例えばアクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。 油性インキに含まれる着色剤としては、例えばアゾ系金属錯塩、フタロシアニン等の染料;カーボンブラック、有機顔料等の顔料が挙げられる。
油性インキに含まれる溶剤は、ケトン、アルコール、酢酸エチル等の有機溶剤である。特に浸透性を有するアルコールが好ましく、光透過性基材12との界面での屈折率差を小さくできる。
油性インキに含まれる添加剤としては、例えば。導電性付与剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤が挙げられる。
【0055】
水溶性インキ:
水溶性インキに含まれる樹脂としては、例えばアクリル系のブロック共重合体が挙げられる。
水溶性インキに含まれる着色剤としては、例えばアニオン性アゾ染料、フタロシアニン等の染料;カーボンブラック、有機顔料等の顔料が挙げられる。
水溶性インキに含まれる溶剤は、水である。また、水には、乾燥防止剤の役割を果たすグリセリンやグリコール、浸透剤の役割を果たすアルコールやグリコールエーテルなどが含まれていてもよい。特に、水に浸透剤が含まれていれば、基材との界面での屈折率差を小さくできる。
水溶性インキに含まれる添加剤としては、例えばアルコールアミン、水酸化ナトリウム等のpH調整剤;EDTA等のキレート化剤;ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等の界面活性剤;防菌防カビ剤が挙げられる。
【0056】
インキ層の印刷方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、インクジェット印刷、熱転写(インクリボン)印刷、レーザープリンタ印刷等の無版印刷;スクリーン印刷等の孔版印刷;オフセット印刷等の平版印刷;活版印刷、フレキソ印刷等の凸版印刷;グラビア印刷等の凹版印刷が挙げられる。また、印鑑やはんこ等を用いてインキ層を形成してもよく、単なる描画によりインキ層を形成してもよい。
【0057】
(フィルム、シート)
好適例に係る迷光防止フィルムは、微細凹凸構造が形成された表面の反対側に、粘着層を介して接着されたフィルムまたはシートをさらに有してもよい。該フィルムまたは該シートが、可視光および/または近赤外光を遮蔽することができれば、可視光、近赤外光の反射率をさらに低減できる。可視光および/または近赤外光を遮蔽するために前記粘着層と同様の着色剤を含むフィルム、シートが好ましい。
【0058】
フィルムおよびシートの材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン、メチルメタクリレート-スチレン共重合体等のスチレン樹脂;セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルスルフォン樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0059】
以上いくつかの実施形態例を示して実施形態について説明したが、本発明は本明細書に開示の実施形態例に限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。本明細書に開示の実施形態は、その他の様々な形態で実施可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更が可能である。
【実施例0060】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0061】
<測定方法>
(算術平均粗さRaおよび周期Smの測定)
JIS B 0601:2001(ISO 4287:1997)に準拠して迷光防止フィルム上の粗い凹凸構造の算術平均粗さRaおよび周期Smを求めた。測定には、触針粗さ計(株式会社東京精密製「SUPERCOM1400LCD」)を用いた。
【0062】
(モスアイ構造を含む反射防止層の微細凹凸構造の寸法)
転写面が形成されたモスアイ構造を含む反射防止層の縦断面または表面に白金を蒸着し、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM-7400F」)を用いて加速電圧:3.00kVの条件でモスアイ構造を含む反射防止層の転写面を観察した。得られた画像から、転写面に形成されたモールドの微細凹凸構造に由来する凸部の周期および凸部の高さを10箇所で測定し、平均値を求めた。
【0063】
(反射率)
分光光度計(株式会社島津製作所製、「UV-2450」)を用いて入射角5度の条件下、波長380nm~900nmの範囲でモスアイ構造を含む反射防止層の表面(微細凹凸構造面)の正反射率を測定した。分光光度計(株式会社日立ハイテク製、「UH-4150」)を用いて入射角8度の条件下、波長380nm~900nmの範囲でモスアイ構造を含む反射防止層の表面(微細凹凸構造面)の全反射率を測定した。
【0064】
<実施例1>
(モールドの製造)
純度99.99%のアルミニウムインゴットを、外径200mm、内径155mm、長さ350mmに切断し、圧延痕のない円筒状のアルミニウム基材を用意した。得られたアルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で10分間陽極酸化を行った。得られたアルミニウム基材を、30℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った(孔径拡大処理工程)。その後、アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った(酸化皮膜成長工程)。この孔径拡大処理工程と酸化皮膜成長工程とを合計4回繰り返し、最後に孔径拡大処理工程を行って、設計上では平均間隔100nm、深さ200nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状のモールドを得た。
【0065】
(活性エネルギー線硬化性組成物の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート25質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート25質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート25質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのエチレンオキサイド変性化合物25質量部を混合した。更に、第1の光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)1質量部、第2の光重合開始剤(商品名「イルガキュア819」、BASF社製)0.5質量部を加えて混合し、活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0066】
(モスアイ構造を含む反射防止層の製造)
得られたロール状のモールドを回転させ、モールドの外周面に沿ってモールドの回転方向にセルローストリアセテート基材(商品名「TD80UL」、富士フイルム(株)製、厚さ80μm)を走行させながら、モールドの外周面と走行している基材との間に、活性エネルギー線硬化性組成物を供給し、紫外線を照射し活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させた。得られた硬化物をモールドから剥離し、モスアイ構造を含む反射防止層を製造した。モスアイ構造を含む反射防止層を形成した基材の裏面に透明粘着層(OCA)を介して黒色アクリル板に貼合し、反射率を測定した。(表2、実施例1-(1))。
【0067】
(迷光防止フィルムの製造)
モスアイ構造を含む反射防止層を黒色ポリエステルフィルム「ルミラーR#25-X36」に粘着層を介して貼り付けることで迷光防止フィルムを得た。得られた迷光防止フィルムの表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、周期100nm、高190nmの微細凸部が形成されていた。また、反射率も測定した。(表2、実施例1-(2))。
【0068】
<実施例2>
(スタンパの製造)
純度99.99%のアルミニウムインゴットを、外径200mm、内径155mm、長さ350mmに切断した圧延痕のない円筒状のアルミニウム基材を用意した。次に、鋭利な形状を有さない球状の研磨材としてガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ株式会社製、「J220」、粒度範囲45―75μm)を用いて、吐出圧力0.05MPa、操作ピッチ2.5mm、吐出ノズルの移動速度20m/分、吐出ノズルの先端からブラスト処理されるアルミニウム基材の表面までの距離500mmの条件でブラスト処理した。ついで、ブラスト処理した得られたアルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で10分間陽極酸化を行った。得られたアルミニウム基材を、30℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った(孔径拡大処理工程)。その後、アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った(酸化皮膜成長工程)。この孔径拡大処理工程と酸化皮膜成長工程とを合計4回繰り返し、最後に孔径拡大処理工程を行って、ロール状のスタンパを得た。
【0069】
(活性エネルギー線硬化性組成物の調製)
実施例1と同じ手法により同組成の活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0070】
(モスアイ構造を含む反射防止層の製造)
実施例2に係るロール状のスタンパを用いた以外は、実施例1と同じ手法によりモスアイ構造を含む反射防止層を作製した。モスアイ構造を含む反射防止層を形成した基材の裏面に透明粘着層(OCA)を介して黒色アクリル板に貼合し、反射率を測定した。(表2、実施例2-(1))。
【0071】
(迷光防止フィルムの製造)
実施例2に係るモスアイ構造を含む反射防止層を用いた以外は、実施例1と同じ手法により迷光防止フィルムを作製した。
迷光防止フィルムの表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、周期100nm、高190nmの微細凸部が形成されていた。また、迷光防止フィルムの表面を触針粗さ計で測定し、その結果を算術平均粗さRaおよび周期Smとした。また、反射率も測定した。(表2、実施例2-(2))。
【0072】
<実施例3、4>
スタンパの製造時におけるブラスト条件を表1に示す通りに変更した以外は、実施例2と同様にしてモスアイ構造を含む反射防止層、迷光防止フィルムを製造した。表1に示す研磨材に関し、J90はポッターズ・バロティーニ株式会社製のガラスビーズであり、その粒度範囲は125~180μmである。J100はポッターズ・バロティーニ株式会社製のガラスビーズであり、その粒度範囲は106~150μmである。
反射率について、実施例1、2の結果より、モスアイ構造を含む反射防止層を形成した基材の裏面に透明粘着層(OCA)を介して黒色アクリル板に貼合して測定した場合と、迷光防止フィルムとしての測定した場合とで、測定値に有意差はないことがわかった。そのため実施例3、4では、モスアイ構造を含む反射防止層を形成した基材の裏面に透明粘着層(OCA)を介して黒色アクリル板に貼合した場合のみ測定した。
【0073】
【表1】
【0074】
<比較例1>
株式会社渋谷光学製品の遮光・反射防止黒色フィルムSNR-T50を分析対象とした。
【0075】
<比較例2>
株式会社渋谷光学製品の遮光・反射防止黒色フィルムSBIR-Sを分析対象とした。
【0076】
<結果>
各例の550nmの可視光の8度全反射率、800nmの近赤外光の8度全反射率、550nmの可視光の5度正反射率、800nmの近赤外光の5度正反射率の測定結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
実施例1~4の迷光防止フィルムにおいては、550nmおよび800nmにおける各5度正反射率反射率および各8度全反射率が良好であった。
対して、比較例1、2のフィルムにおいては、550nmおよび800nmにおける各5度正反射率反射率および各8度全反射率が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、可視光および近赤外光の各反射率が低減された迷光防止フィルムが提供される。本発明の迷光防止フィルムを光学機器の内部に設置することで、迷光を効果的に低減ないし防止し、フレアやゴーストの発生を防止できる。
【符号の説明】
【0080】
1 基材
2 凹凸構造
3 微細凹凸構造
4 微細凹凸構造
5 粘着層
10 迷光防止フィルム
13 凸部
図1
図2