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  • 特開-研磨パッドおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132923
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】研磨パッドおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20240920BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B24B37/24 Z
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024030446
(22)【出願日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】10-2023-0034884
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】505232852
【氏名又は名称】エスケー エンパルス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK enpulse Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1043,Gyeonggi-daero,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do 17784, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ジ、ミンギョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ジャンウォン
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158DA12
3C158EB28
3C158EB29
3C158ED00
5F057AA24
5F057AA47
5F057BA11
5F057DA02
5F057EB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環境配慮性に優れるとともに、CMP工程で求められるレベルの研磨率を達成できる物性を有する研磨パッドを提供する。
【解決手段】トップパッド層10を含む研磨パッド100に関するものであって、前記研磨パッド100は、ASTM D 6866規格によって測定されたバイオマス総含有量が1重量%~50重量%であることにより、環境配慮性に優れ得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス含有組成物から製造されたトップパッド層を含み、
ASTM D 6866規格によって測定されたバイオマス総含有量が1重量%~50重量%である、研磨パッド。
【請求項2】
前記トップパッド層のバイオマス含有量が、トップパッド層の総重量を基準に2重量%~70重量%である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記バイオマス含有組成物が、バイオマス含有ウレタンプレポリマーを含み、
前記バイオマス含有ウレタンプレポリマーが、イソシアネート原料と、バイオポリオールを含むポリオール原料とを含むウレタンプレポリマー組成物から製造されたものである、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記バイオマス含有ウレタンプレポリマーのバイオマス含有量が、バイオマス含有ウレタンプレポリマーの総重量を基準に4重量%~80重量%である、請求項3に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記バイオポリオールが、バイオポリマーポリオールおよびバイオモノマーポリオールからなる群より選択される1種以上を含む、請求項3に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記バイオポリマーポリオールが、バイオポリエーテルポリオール、バイオポリエステルポリオール、バイオポリカーボネートポリオール、およびバイオポリカプロラクタムポリオールからなる群より選択される1種以上を含む、請求項5に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記バイオモノマーポリオールが、バイオエチレングリコール、バイオジエチレングリコール、バイオ1,2-プロピレングリコール、バイオ1,3-プロパンジオール、バイオ2-メチル-1,3-プロパンジオール、バイオ1,3-ブタンジオール、バイオ1,4-ブタンジオール、バイオ2,3-ブタンジオール、バイオn-ブタノール、バイオイソブタノール、バイオ1,5-ペンタンジオール、バイオ2-オクタノール、バイオ1,9-ノナンジオール、バイオ1,10-デカンジオール、バイオジエチレングリコール、およびバイオイソソルビドからなる群より選択される1種以上を含む、請求項5に記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記イソシアネート原料が、トルエンジイソシアネート(TDI)および4,4'-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項3に記載の研磨パッド。
【請求項9】
前記イソシアネート原料が、バイオイソシアネートを含む、請求項3に記載の研磨パッド。
【請求項10】
イソシアネート原料およびバイオポリオールを含むポリオール原料を含むウレタンプレポリマー組成物からバイオマス含有ウレタンプレポリマーを製造する段階と、
前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー、硬化剤および発泡剤を含むバイオマス含有組成物を準備する段階と、
前記バイオマス含有組成物を硬化してトップパッド層を製造する段階とを含み、
ASTM D 6866規格によって測定されたバイオマス総含有量が1重量%~50重量%である、研磨パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、半導体素子の化学的機械平坦化(CMP)工程に用いられる研磨パッドに関するもので、具体的に、バイオマス成分を含んで環境配慮性を有する研磨パッドおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程中、化学的機械研磨(CMP)工程は、ウェーハのような半導体基板をヘッドに付着し、定盤(platen)上に固定された研磨パッドの表面に接触するようにした状態で、前記定盤と前記ヘッドとを相対運動させ、半導体基板表面の凹凸部分を平坦化する工程である。
【0003】
このようなCMP工程において、前記研磨パッドは、半導体基板の表面加工品質に大きな影響を与えるため、安定した物性を有することが求められる。特に、前記研磨パッドに含まれている成分とその物性によってCMP工程の研磨率が敏感に変わり得るため、研磨パッドに含まれている成分とその物性を最適化することが必要である。
【0004】
一方で、近年気候変動などの環境問題が発生するにつれ、「炭素中立」などのESG(Environment、Social、Governance)経営により、企業が、持続発展可能な社会を構築するための社会的責任を担うべきという世論が形成されている。そこで、各種企業においては、石油系原料の代わりに植物などに由来するバイオマス(biomass)原料を適用して多様な製品を製造しようとする試みがなされている。
【0005】
このような流れに合わせて、石油系原料を用いて製造されていた研磨パッドにも、バイオマス原料を適用して環境配慮性を高めようとする試みが必要である。さらには、前記バイオマス原料が適用されても、CMP工程で求められるレベルの研磨率を達成するようにし得る物性を有する研磨パッドの提供が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2018-0044771号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実現例は、環境配慮性に優れるとともに、CMP工程で求められるレベルの研磨率を達成するようにできる物性を有する研磨パッドを提供することとする。
【0008】
また、実現例は、前記研磨パッドを効率良く製造し得る研磨パッドの製造方法を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための実現例によると、バイオマス含有組成物から製造されたトップパッド層を含み、ASTM D 6866規格によって測定されたバイオマス総含有量が1重量%~50重量%である研磨パッドを提供する。
【0010】
他の実現例によると、イソシアネート原料およびバイオポリオールを含むポリオール原料を含むウレタンプレポリマー組成物からバイオマス含有ウレタンプレポリマーを製造する段階と、前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー、硬化剤および発泡剤を含むバイオマス含有組成物を準備する段階と、前記バイオマス含有組成物を硬化してトップパッド層を製造する段階と、を含み、ASTM D 6866規格によって測定されたバイオマス総含有量が1重量%~50重量%である研磨パッドの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
実現例による研磨パッドは、バイオマス原料を含む組成物を用いて製造されるが、バイオマス原料の成分および含有量等を最適化して、研磨パッドに含有されたバイオマス含有量を特定の範囲内に制御したものであって、これにより環境配慮性に優れるとともに、CMP工程で求められる物性(例えば、硬度、モジュラス等)を示すことができる。
【0012】
したがって、実現例による研磨パッドを用いてCMP工程を行うと、高い研磨率を示すとともに、表面加工品質に優れた半導体基板(例えばウェーハ)を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実現例による研磨パッドを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実現例により発明を説明する。なお、実現例は、以下に開示される内容に限定されるものではなく、発明の要旨が変更されない限り、様々な形態に変形され得る。
【0015】
本明細書において、ある構成要素が他の構成要素の上/下に形成されるか、もしくは互いに連結または結合されるという記載は、これらの構成要素間に直接、または、また他の構成要素を介して間接的に形成、連結または結合されることを全て含む。また、各構成要素の上/下に関する基準は、対象を観察する方向に応じて変わり得るものと理解するべきである。
【0016】
本明細書において「含む」という記載は、特定の特性、領域、段階、工程、要素および/または成分を具体化するためのものであり、特に反する記載がない限り、他の特性、領域、段階、工程、要素および/または成分の存在や付加を除外するものではない。
【0017】
本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件等を示す全ての数字および表現は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語により修飾されるものと理解し得る。
【0018】
<研磨パッド>
実現例はトップパッド層を含み、必要に応じて接着層およびサブパッド層をさらに含む研磨パッドを提供する。このような実現例による研磨パッドは、バイオマス原料を含む組成物を用いて製造されるが、バイオマス原料の成分および含有量などを最適化して、研磨パッドに含有されているバイオマス含有量が特定範囲内に制御された特徴を有するものであって、これについて図1を参照して具体的に説明すると、以下の通りである。
【0019】
前記バイオマスとは、生物から得られるエネルギー源であって、具体的に、木、花、トウモロコシ、サトウキビ、草、クジラ油、鳥類などの動植物資源、または、畜産糞尿、生ごみ、おがくずなどの有機性廃資源から得られ、バイオ炭素(放射性炭素(C14))を含むエネルギー源のことを意味し得る。
【0020】
一方、以下に記載のバイオマス(バイオ炭素)含有量は、ASTM D 6866規格に基づいて測定された値を意味し得る。前記ASTM D 6866規格は、放射性炭素年代測定(Radiometric dating)法、または加速質量分析(Accelerator Mass Spectrometry、AMS)法を用いて、固体サンプル、液体サンプル、または気体サンプルのバイオマス(バイオ炭素)含有量を測定する標準分析方法である。
【0021】
前記放射性炭素年代測定方法は、以下の過程を含み得る。具体的に、前処理(例えば、異物除去)がなされたサンプル(試験片)を特殊真空装置に投入し燃やして二酸化炭素を作る。次いで、溶融リチウム(molten lithium)を混合して炭化リチウム(lithium carbide)を作って冷却し、炭化リチウムを水と反応させてアセチレンガスを作る。その後、アセチレンガスを精製し、シリカアルミナ中和剤(silica-alumina catalyst)を使用してベンゼンに転換する。次いで、92%炭素のベンゼンをシンチレーション化学物質と混合し、液体シンチレーションカウンター(liquid scintillation counter)で約2日間放射性を測定する。
【0022】
前記加速質量分析方法は以下の過程を含み得る。具体的に、前処理(例えば、異物除去)がなされたサンプル(試験片)を燃やして精製された二酸化炭素にした後、特殊ガラス製の真空室にて水素と反応させて黒鉛を作る。次いで、100%炭素の黒鉛を加速質量分析器に置き、約30分間放射性を測定する。
【0023】
[トップパッド層]
実現例による研磨パッド100に含まれるトップパッド層10は、研磨対象である半導体基板(例えば、ウェーハ)を研磨する役割をする。このようなトップパッド層10は、バイオマス含有組成物(トップパッド層形成用組成物)から製造される。具体的に、前記トップパッド層10は、バイオマス原料を含む組成物(A)を用いて製造(形成)されるものであり、この際、前記バイオマス原料は、バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)であり得る。
【0024】
前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)は、バイオ含有ポリオール原料とイソシアネート原料との反応により得られるプレポリマー(prepolymer)であり得る。具体的に、バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)は、バイオポリオールを含むポリオール原料(A11)とイソシアネート原料(A12)とを含むウレタンプレポリマー組成物から製造されたものであり得る。
【0025】
前記バイオポリオール(bio-polyol)を含むポリオール原料(A11)は、バイオマスに由来してバイオ炭素を含むが、2以上の水酸基(OH)を有するバイオポリオールを含むポリオール原料であれば特に限定されない。具体的に、前記ポリオール原料(A11)は、バイオポリマーポリオール(A111)およびバイオモノマーポリオール(A112)からなる群より選択される1種以上を含むバイオポリオールを含み得る。例えば、前記バイオポリオールは、前記バイオポリマーポリオール(A111)単独、または前記バイオモノマーポリオール(A112)単独からなるか、または前記バイオポリマーポリオール(A111)と前記バイオモノマーポリオール(A112)との混合物からなり得る。
【0026】
前記バイオポリマーポリオール(A111)は、バイオマスに由来してバイオ炭素を含むが、2以上の水酸基(OH)を有する多分子バイオポリオールであれば特に限定されない。具体的に、バイオポリマーポリオール(A111)は、バイオポリエーテルポリオール、バイオポリエステルポリオール、バイオポリカーボネートポリオール、およびバイオポリカプロラクタムポリオールからなる群より選択される1種以上を含み得る。前記バイオポリマーポリオール(A111)が、前記多分子バイオポリオールを含むことにより、ウレタンプレポリマー組成物の粘度を下げて工程性を確保しながら、柔軟性、弾性復元力、永久変形率、耐候性、耐加水分解性などに優れた研磨パッド(100)を提供し得る。例えば、前記バイオポリマーポリオール(A111)としては、SKケミカル社のECOTRION(登録商標) H2000またはECOTRION H1000;SK pucore社のBI-550またはB-1184;BASF社のSovermol(登録商標)1102、Sovermol 1005、Sovermol 805、またはSovermol 815;NOROO社のBP-04またはBP-05;Croda社のPriplast(登録商標)2033またはPriplast 1838;ALLESSA社のVelvetol H500、Velvetol H1000、Velvetol H2000、またはVelvetol H2700;または、これらの組み合わせを使用し得る。
【0027】
前記バイオポリマーポリオール(A111)は、重量平均分子量が400~3000g/molであり、具体的には、450~2700g/mol、500~2300g/mol、600~1800g/mol、700~1500g/mol、または800~1200g/molであり得る。また、前記バイオポリマーポリオール(A111)は、水酸基価(OH-value)が35~250mgKOH/gであり、具体的には、45~230mgKOH/g、60~200mgKOH/g、70~180mgKOH/g、80~150mgKOH/g、または90~130mgKOH/gであり得る。前記バイオポリマーポリオール(A111)の重量平均分子量および水酸基価がそれぞれ前記範囲内であることにより、柔軟性、弾性復元力、永久変形率、耐候性、耐加水分解性などに優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0028】
このようなバイオポリマーポリオール(A111)は、バイオポリマーポリオール(A111)総重量を基準としたバイオマス含有量(バイオポリマーポリオール(A111)に含まれているバイオ炭素含有量)が20~100重量%であり、具体的には、25~100重量%、40~100重量%、50~100重量%、60~100重量%、70~100重量%、または80~100重量%であり得る。前記バイオポリマーポリオール(A111)のバイオマス含有量が前記範囲内であることにより、CMP工程で求められる物性を有するとともに、環境配慮性に優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0029】
前記バイオモノマーポリオール(A112)は、バイオマスに由来してバイオ炭素を含むが、2以上の水酸基(OH)を有する単分子バイオポリオールであれば特に限定されない。具体的に、バイオモノマーポリオール(A112)は、バイオエチレングリコール(bio ethylene glycol)、バイオジエチレングリコール(bio diethylene glycol)、バイオ1,2-プロピレングリコール(bio 1,2-propylene glycol)、バイオ1,3-プロパンジオール(bio 1,3-propanediol)、バイオ2-メチル-1,3-プロパンジオール(bio 2-methyl-1,3-propanediol)、バイオ1,3-ブタンジオール(bio 1,3-butanediol)、バイオ1,4-ブタンジオール(bio 1,4-butanediol)、バイオ2,3-ブタンジオール(bio 2,3-butanediol)、バイオn-ブタノール(bio n-butanol)、バイオイソブタノール(bio isobutanol)、バイオ1,5-ペンタンジオール(bio 1,5-pentanediol)、バイオ2-オクタノール(bio 2-octanol)、バイオ1,9-ノナンジオール(bio 1,9-nonanediol)、バイオ1,10-デカンジオール(bio 1,10-decanediol)、バイオジエチレングリコール(bio diethylene glycol)、およびバイオイソソルビド(bio isosorbide)からなる群より選択される1種以上を含み得る。前記バイオモノマーポリオール(A112)が、前記単分子バイオポリオールを含むことにより、ウレタンプレポリマー組成物の架橋密度を高め、硬度、耐久性などに優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0030】
前記バイオモノマーポリオール(A112)は、重量平均分子量が50~200g/molであり、具体的には、55~180g/mol、60~150g/mol、65~130g/mol、70~100g/mol、または75~90g/molであり得る。前記バイオモノマーポリオール(A112)の重量平均分子量が前記範囲内であることにより、硬度、耐久性などに優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0031】
このようなバイオモノマーポリオール(A112)は、バイオモノマーポリオール(A112)の総重量を基準としたバイオマス含有量(バイオモノマーポリオール(A112)に含まれているバイオ炭素含有量)が100重量%であり得る。前記バイオモノマーポリオール(A112)のバイオマス含有量が前記範囲内であることにより、CMP工程で求められる物性を有するとともに、環境配慮性に優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0032】
前記ポリオール原料(A11)は、前記バイオポリオールの外に、石油系ポリオールをさらに含み得る。具体的に、前記ポリオール原料(A11)は、石油系ポリマーポリオールおよび石油系モノマーポリオールからなる群より選択される1種以上を含み得る。前記石油系ポリマーポリオールは、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、およびポリカプロラクタムポリオールからなる群より選択される1種以上を含み得る。前記石油系モノマーポリオールは、従来公知のエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、n-ブタノール、イソブタノール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-オクタノール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、およびイソソルビドからなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0033】
前記ポリオール原料(A11)が、前記バイオポリオール(a)と前記石油系ポリオール(b)のいずれも含む場合、それらの混合比(a:b)は、1:0.65~1:3のモル比、1:0.65~1:1.5のモル比、1:0.65~1:1.25のモル比、1:0.65~1:0.92のモル比、1:0.68~1:0.90のモル比、1:0.72~1:0.88のモル比、1:0.75~1:0.86のモル比、または1:0.80~1:0.85のモル比であり得る。前記混合比が前記範囲内であることにより、CMP工程で求められる物性を有するとともに、環境配慮性に優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0034】
一方、前記イソシアネート原料(A12)は、従来公知の石油系イソシアネート(A121)を含むものであれば特に限定されない。具体的に、前記イソシアネート原料(A12)は、石油系芳香族ジイソシアネート、石油系脂肪族ジイソシアネートおよび石油系脂環式ジイソシアネートからなる群より選択される1種以上を含み得る。より具体的に、前記イソシアネート原料(A12)は、石油系芳香族ジイソシアネートおよび石油系脂環式ジイソシアネートからなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0035】
例えば、前記イソシアネート原料(A12)は、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(naphthalene-1,5-diisocyanate)、パラ-フェニレンジイソシアネート(p-phenylene diisocyanate)、トリジンジイソシアネート(tolidine diisocyanate)、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'-diphenylmethane diisocyanate)、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate)、4,4'-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(4,4'-methylenedicyclohexyl diisocyanate)、およびイソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0036】
好ましくは、前記イソシアネート原料(A12)は、トルエンジイソシアネート(TDI)および4,4'-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)からなる群より選択される1種以上を含み得る。前記イソシアネート原料(A12)が前記トルエンジイソシアネート(TDI)、前記4,4'-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)、またはそれらの混合物を含むことにより、硬質部(Hard segment)が形成され、求められるレベルの硬度を有する研磨パッド100を提供し得る。前記トルエンジイソシアネート(TDI)(x)と、前記4,4'-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)(y)とを混合使用する場合、これらの混合比(x:y)は特に限定されないが、具体的に3:1~20:1の重量比、5:1~18:1の重量比、7:1~16:1の重量比、または8:1~13:1の重量比であり得る。
【0037】
一方、前記イソシアネート原料(A12)は、バイオイソシアネート(A122)を含み得る。具体的に、前記イソシアネート原料(A12)は、前記石油系イソシアネート(A121)と前記バイオイソシアネート(A122)とを含み得る。前記バイオイソシアネート(A122)は、バイオマスに由来してバイオ炭素を含むが、2以上のイソシアネート基(NCO)を有するバイオイソシアネートであれば特に限定されない。具体的に、前記バイオイソシアネート(A122)は、バイオ1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(bio 1,5-pentamethylene diisocyanate)を含み得る。例えば、前記バイオイソシアネート(A122)としては、STABiO(登録商標)D-370N、またはD-376Nを用い得る。
【0038】
前記バイオイソシアネート(A122)は、イソシアネート末端基含有量(NCO%)が20重量%~30重量%であり、具体的に21重量%~28重量%、22重量%~26重量%、または23重量%~25重量%であり得る。前記バイオイソシアネート(A122)のNCO%が前記範囲内であることにより、硬度、耐久性などに優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0039】
このようなバイオイソシアネート(A122)は、バイオイソシアネート(A122)の総重量を基準としたバイオマス含有量(バイオイソシアネート(A122)に含まれているバイオ炭素含有量)が50重量%~100重量%であり、具体的に55重量%~95重量%、60重量%~90重量%、63重量%~80重量%、または65重量%~75重量%であり得る。前記バイオイソシアネート(A122)のバイオマス含有量が前記範囲内であることにより、CMP工程で求められる物性を有するとともに、環境配慮性に優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0040】
一方、前記ポリオール原料(A11)(z)および前記イソシアネート原料(A12)(w)を反応させることにおいて、これらの反応比(z:w)は特に限定されないが、トップパッド層10の全体的な物性を考慮すると、具体的に1:2~1:14の重量比、1:3~1:12の重量比、1:4~1:10の重量比、または1:5~1:8の重量比であり得る。
【0041】
また、前記ポリオール原料(A11)および前記イソシアネート原料(A12)の総モル数に対するバイオ含有原料のモル数の比(M)は、0.11~0.93、0.11~0.90、0.12~0.85、0.12~0.80、0.13~0.75、0.13~0.70、0.14~0.65、0.14~0.60、0.15~0.55、0.15~0.50、0.16~0.45、0.16~0.42、または0.17~0.38であり得る。具体的に、前記比(M)は、下記式1により算出された値であり得る。前記比(M)が前記範囲内であることにより、CMP工程で求められる物性を有するとともに、環境配慮性に優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0042】
[式1]
M=(MBP1+MBI1)/(MBP1+MP2+MBI1+MI2
前記式1において、
BP1は、ウレタンプレポリマー組成物に含まれているバイオポリオールのモル数(総モル数)であり、
P2は、ウレタンプレポリマー組成物に含まれている石油系ポリオールのモル数(総モル数)であり、
BI1は、ウレタンプレポリマー組成物に含まれているバイオイソシアネートのモル数(総モル数)であり、
I2は、ウレタンプレポリマー組成物に含まれている石油系イソシアネートのモル数(総モル数)である。
【0043】
このようなポリオール原料(A11)とイソシアネート原料(A12)との反応により得られる前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)は、バイオマス(バイオ炭素)含有量が4重量%~80重量%であり得る。具体的に、バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)の総重量を基準とした前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)のバイオマス含有量は、4重量%~78重量%、7重量%~76重量%、8重量%~74重量%、9重量%~72重量%、10重量%~69重量%、25重量%~67重量%、または45重量%~65重量%であり得る。前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)のバイオマス含有量が前記範囲内であることにより、CMP工程で求められる物性を有するとともに、環境配慮性に優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0044】
前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)は、重量平均分子量が500~1500g/molであり、具体的には、600~1400g/mol、700~1300g/mol、または800~1200g/molであり得る。また、前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)は、イソシアネート末端基含有量(NCO%)が6重量%~14重量%であり、具体的に、6.5重量%~13重量%、7重量%~12重量%、7.5重量%~11重量%、または8重量%~10重量%であり得る。前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)の重量平均分子量およびNCO%がそれぞれ前記範囲内であることにより、CMP工程において研磨率に優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0045】
一方、前記トップパッド層10を形成するための前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)を含む組成物(A)は、硬化剤(A2)および発泡剤(A3)をさらに含み得る。
【0046】
前記硬化剤(A2)は、前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)と硬化反応をする化合物を含み得る。具体的に、前記硬化剤(A2)は、芳香族アミン、脂肪族アミン、芳香族アルコールおよび脂肪族アルコールからなる群より選択される1種以上を含み得る。より具体的に、前記硬化剤(A2)は、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(4,4'-methylenebis(2-chloroaniline))、ジエチルトルエンジアミン(diethyltoluenediamine)、ジアミノジフェニルメタン(diaminodiphenylmethane)、ジメチルチオトルエンジアミン(dimethylthio-toluene diamine)、プロパンジオールビス(p-アミノ安息香酸)(propanediolbis p-aminobenzoate)、ジアミノジフェニルスルホン(diaminodiphenylsulfone)、m-キシリレンジアミン(m-xylylenediamine)、イソホロンジアミン(isophoronediamine)、エチレンジアミン(ethylenediamine)、ジエチレントリアミン(diethylenetriamine)、トリエチレンテトラアミン(triethylenetetramine)、ポリプロピレンジアミン(polypropylenediamine)、ポリプロピレントリアミン(polypropylenediamine)、およびビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)メタン(bis(4-amino-3-chlorophenyl)methane)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0047】
前記硬化剤(A2)の含有量は、前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)100重量部に対して15重量部~55重量部であり、具体的に20重量部~50重量部、25重量部~45重量部、または30重量部~40重量部であり得る。前記硬化剤(A2)の含有量が前記範囲内であることにより、物性に優れた研磨パッド100を実現する上でさらに有利であり得る。
【0048】
一方、前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)と前記硬化剤(A2)との反応比(硬化反応比)は特に限定されないが、具体的に1:0.5~1:1.3の当量比、1:0.6~1:1.2の当量比、1:0.7~1:1.1の当量比、または1:0.8~1:1の当量比であり得る。前記反応比で硬化反応が行われることにより硬化反応が最適化され、CMP工程で求められる物性(硬度、モジュラス等)を有する研磨パッド100を提供し得る。
【0049】
前記発泡剤(A3)は、前記トップパッド層10内に気孔構造を形成するためのものであって、固相発泡剤、液相発泡剤および気相発泡剤(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等のガス)からなる群より選択される1種以上を含み得る。具体的に、前記発泡剤(A3)は、膨張可能な粒子を含有する固相発泡剤であるものが好ましい。
【0050】
前記膨張可能な粒子は、熱または圧力等により膨張が可能な特性を有する粒子であって、前記トップパッド層10を製造する過程で加えられる熱または圧力によって、最終トップパッド層内における大きさが決定され得る。具体的に、前記膨張可能な粒子は、熱膨張した(expanded)粒子、未膨張(unexpanded)粒子、またはこれらの組み合わせを含み得る。前記熱膨張した粒子は、熱によって予め膨張された粒子であり、前記トップパッド層10の製造過程で加えられる熱または圧力によって膨張して、最終サイズが決定される粒子を意味し得る。このような膨張可能な粒子は、樹脂材質の外皮と、前記外皮で封入された内部に存在する膨張誘発成分とを含み得る。
【0051】
前記樹脂材質の外皮は、熱可塑性樹脂を含み得る。具体的に、前記熱可塑性樹脂は、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、メタクリロニトリル系共重合体、およびアクリル系共重合体からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0052】
前記膨張誘発成分は、炭化水素化合物、クロロフルオロ化合物およびテトラアルキルシラン化合物からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0053】
具体的に、前記炭化水素化合物は、エタン(ethane)、エチレン(ethylene)、プロパン(propane)、プロペン(propene)、n-ブタン(n-butane)、イソブタン(isobutene)、n-ブテン(n-butene)、イソブテン(isobutene)、n-ペンタン(n-pentane)、イソペンタン(isopentane)、ネオペンタン(neopentane)、n-ヘキサン(n-hexane)、ヘプタン(heptane)、および石油エーテル(petroleum ether)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0054】
前記クロロフルオロ化合物は、トリクロロフルオロメタン(trichlorofluoromethane、CClF)、ジクロロジフルオロメタン(dichlorodifluoromethane、CCl)、クロロトリフルオロメタン(chlorotrifluoromethane、CClF)、およびジクロロテトラフルオロエタン(CCl)からなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0055】
前記テトラアルキルシラン化合物は、テトラメチルシラン(tetramethylsilane)、トリメチルエチルシラン(trimethylethylsilane)、トリメチルイソプロピルシラン(trimethylisopropylsilane)、およびトリメチル-n-プロピルシラン(trimethyl-n-propylsilane)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0056】
このような固相発泡剤は、平均粒径が5μm~200μmであり、具体的に10μm~100μm、15μm~70μm、または20μm~45μmであり得る。なお、固相発泡剤が前記膨張可能な粒子であって、前記熱膨張した粒子を含む場合、前記平均粒径は、前記熱膨張した粒子自体の平均粒径を意味し得る。また、前記固相発泡剤が前記膨潤可能粒子であって、前記未膨張粒子を含有する場合、前記平均粒径は、熱または圧力によって膨張した後の粒子の平均粒径を意味し得る。
【0057】
前記固相発泡剤の含有量は、前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)100重量部に対して0.5重量部~10重量部であり、具体的に0.7重量部~8重量部、0.9重量部~6重量部、または1重量部~5重量部であり得る。前記固相発泡剤の含有量が前記範囲内であることにより、物性に優れた研磨パッドを実現する上でさらに有利であり得る。
【0058】
その外に、前記トップパッド層10を形成するための前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)を含む組成物(A)は、界面活性剤、反応速度調整剤などの添加剤をさらに含み得る。
【0059】
前記界面活性剤は特に限定されないが、具体的にはシリコーン系界面活性剤であり得る。
【0060】
前記反応速度調節剤は特に限定されないが、具体的には、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルブタンジアミン、2-メチル-トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ビス(2-メチルアミノエチル)エーテル、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N,N,N''-ペンタメチルジエチルジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、n-エチルモルホリン、N,N-ジメチルアミノエチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、2-メチル-2-アザノルボルネン、ジブチルスズジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチルスズジアセタート、ジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(2-エチルヘキサノアート)、およびジブチルスズジメルカプチドからなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0061】
このようなバイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)を含む組成物(A)から製造されたトップパッド層10は、バイオマス(バイオ炭素)含有量が2重量%~70重量%であり得る。具体的に、トップパッド層10の総重量を基準とした前記トップパッド層10のバイオマス含有量は、3重量%~65重量%、5重量%~60重量%、6重量%~58重量%、7重量%~56重量%、8重量%~54重量%、20重量%~52重量%、または35重量%~50重量%であり得る。前記トップパッド層10のバイオマス含有量が前記範囲内であることにより、CMP工程で求められる物性を有するとともに、環境配慮性に優れた研磨パッド100を提供し得る。
【0062】
前記トップパッド層10の厚さは特に限定されないが、具体的に0.5~5mm、0.8~4mm、1~3mm、または1.5~2.5mmであり得る。また、前記トップパッド層10の硬度(ショアD)は特に限定されないが、具体的に45~70、50~68、53~65、または56~60であり得る。また、前記トップパッド層10に形成される平均ポア(pore)サイズは特に限定されないが、具体的に10~40μm、15~35μm、18~30μm、または20~25μmであり得る。前記トップパッド層10の厚さ、硬度および平均ポアサイズがそれぞれ前記範囲内であることにより、CMP工程が安定して行われるとともに、研磨パッド100の軽量化を実現し得る。
【0063】
[接着層]
実現例による研磨パッド100にさらに含まれる接着層20は、前記トップパッド層10と前記サブパッド層30との間に設けられ、トップパッド層10とサブパッド層30とを結合させる役割をする。さらに、前記接着層20は、前記トップパッド層10に供給される研磨スラリーがサブパッド層30に流出するのを防止する役割も果たし得る。このような接着層20は、ホットメルト接着剤組成物を用いて製造(形成)し得る。
【0064】
前記ホットメルト接着剤組成物は、従来公知のホットメルト接着剤を含み得る。具体的に前記ホットメルト接着剤は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0065】
このような接着層20の厚さは特に限定されないが、具体的に5~30μm、10~30μm、20~27μm、または23~25μmであり得る。前記接着層20の厚さが前記範囲内であることにより、トップパッド層10とサブパッド層30との間の結合力(接着力)を、求められるレベルに確保し得る。
【0066】
[サブパッド層]
実現例による研磨パッドにさらに含まれるサブパッド層30は、前記トップパッド層10下部に設けられ、トップパッド層10を安定的に支持しながら、トップパッド層10に加えられる衝撃を吸収および/または分散させる役割をする。このようなサブパッド層30は、不織布、スウェードまたは多孔質パッドを用いて製造(形成)し得る。
【0067】
前記サブパッド層30の厚さは特に限定されないが、具体的に0.5mm~4mm、0.6mm~3.5mm、0.8mm~3mm、または1mm~2mmであり得る。また、前記サブパッド層30の硬度(アスカーC)は特に限定されないが、具体的に55~90、60~85、65~80、または70~75であり得る。前記サブパッド層30の厚さおよび硬度がそれぞれ前記範囲内であることにより、トップパッド層10を安定的に支持しながら、研磨パッドの軽量化を実現し得る。
【0068】
このような実現例による研磨パッド100は、前記トップパッド層10がバイオマス含有組成物から製造されることにより、環境配慮性に優れ得る。また、実現例による研磨パッド100は、前記トップパッド層10の製造に用いられる前記バイオマス含有組成物に含まれるポリマー原料およびイソシアネート原料それぞれの組成および含有量が最適に制御され、バイオマス含有量を特定範囲で含むものであって、これによりCMP工程で求められる物性を有することとなり、研磨率、切削率などに優れ得る。
【0069】
具体的に、実現例による研磨パッド100は、研磨パッド100の総重量を基準としたバイオマス(バイオ炭素)含有量が1重量%~50重量%であり得る。より具体的に、研磨パッド100の総重量を基準とした前記研磨パッド100のバイオマス総含有量は、2重量%~50重量%、3重量%~50重量%、4重量%~50重量%、5重量%~50重量%、6重量%~50重量%、7重量%~50重量%、8重量%~50重量%、2重量%~45重量%、3重量%~42重量%、4重量%~38重量%、4.5重量%~36重量%、5重量%~34重量%、8重量%~32重量%、15重量%~33重量%、または25重量%~32重量%であり得る。前記研磨パッド100のバイオマス含有量が前記範囲内であることにより、CMP工程において研磨率、切削率などに優れるとともに、環境配慮性の非常に高い研磨パッド100を提供し得る。
【0070】
一方、実現例による研磨パッド100は、圧縮率(%)が0.3%~1.8%、0.4%~1.6%、0.5%~1.5%、0.6%~1.4%、または0.8%~1.3%であり得る。
【0071】
また、実現例による研磨パッド100は、CMP工程研磨率(Å/分)が1900~4200Å/分、2500~4150Å/分、3000~4100Å/分、3500~4050Å/分、または、4000~4040Å/分であり得る。
【0072】
また、実現例による研磨パッド100は、研磨パッド切削率(μm/hr)が31~42μm/hr、31.5~41μm/hr、33~40.5μm/hr、35~40μm/hr、または38~39.5μm/hrであり得る。
【0073】
<研磨パッドの製造方法>
実現例は、前述の研磨パッドを効率良く製造し得る研磨パッドの製造方法を提供する。具体的に、実現例による研磨パッドの製造方法は、イソシアネート原料と、バイオポリオールを含むポリオール原料とを含むウレタンプレポリマー組成物から、バイオマス含有ウレタンプレポリマーを製造する段階と、前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー、硬化剤および発泡剤を含むバイオマス含有組成物を準備する段階と、前記バイオマス含有組成物を硬化してトップパッド層を製造する段階と、を含み、ASTM D 6866規格によって測定されたバイオマス総含有量が1重量%~50重量%であり得る。
【0074】
具体的に、前記バイオマス含有ウレタンプレポリマーを製造する段階は、前記ポリオール原料および前記イソシアネート原料を含むウレタンプレポリマー組成物を反応器に投入して反応させる過程からなり得る。前記反応条件は特に限定されないが、反応温度は70℃~90℃(具体的に75℃~85℃)であり、反応時間は1時間~4時間(具体的に2時間~3時間)であり得る。なお、前記ポリオール原料と前記イソシアネート原料のそれぞれに関する説明は、前述のポリオール原料(A11)と前述のイソシアネート原料(A12)に関する説明と同一であるため省略する。
【0075】
前記バイオマス含有組成物を準備する段階は、前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー、硬化剤および発泡剤を各々の注入ラインに充填し、これらが混合されるようにする過程からなり得る。前記混合は、具体的に、1000~10000rpm、2500~8500rpm、または4000~7000rpmの速度で行われ得る。なお、前記発泡剤は、前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー注入ラインとは別の注入ラインを介して混合されるか、または前記バイオマス含有ウレタンプレポリマーがその注入ラインに充填される前に、バイオマス含有ウレタンプレポリマーと予め混合され得る。また、前記バイオマス含有ウレタンプレポリマー、前記硬化剤および前記発泡剤のそれぞれに関する説明は、前述のバイオマス含有ウレタンプレポリマー(A1)、前述の硬化剤(A2)および前述の発泡剤(A3)に関する説明と同一であるため省略する。
【0076】
前記トップパッド層を製造する段階は、前記バイオマス含有組成物をモールドに投入して硬化反応させる過程からなり得る。前記硬化反応条件は特に限定されないが、硬化反応温度は60℃~130℃(具体的に75℃~100℃)であり、モールド圧力は50~260kg/m(具体的に80~180kg/m)であり得る。
【0077】
実現例による研磨パッドの製造方法は、前記トップパッド層を製造した後、接着層およびサブパッド層を製造する段階をさらに含み得る。また、トップパッド層表面を切削する工程、トップパッド層表面に溝を加工する工程、研磨パッド検査工程、または研磨パッド包装工程などをさらに含むことができ、これらの工程には研磨パッドを製造する通常の方法が適用され得る。
【0078】
(実施例)
以下、実施例により本実現例をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実現例の範囲が限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
[実施例1-1:バイオマス含有ウレタンプレポリマー製造]
イソシアネート原料として、トルエンジイソシアネート(TDI)165gおよび4,4'-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)25gと、ポリオール原料として、バイオポリマーポリオール(ECOTRION H1000、SKケミカル社(分子量1000g/mol、水酸基価(OH-value)102.0~124.7、バイオポリマーポリオール総重量基準バイオマス含有量100重量%))285gおよびジエチレングリコール25gとを4口フラスコに投入した後、80℃にて3時間反応させ、NCO%が9%のバイオマス含有ウレタンプレポリマーを製造した。
【0080】
[実施例1-2:トップパッド層製造]
不活性ガス注入ラインが備えられているキャスティング装置において、プレポリマータンクに前記実施例1-1で製造されたバイオマス含有ウレタンプレポリマーを充填し、硬化剤タンクにビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)メタン(Bis(4-amino-3-chlorophenyl)methane)(石原ケミカル社)を充填し、不活性ガスとして窒素(N)を適用した。一方、前記ウレタンプレポリマー100重量部に対して固相発泡剤(Akzonobel社)1重量部と、シリコーン系界面活性剤(Evonik社)1重量部とを別途のライン(line)で投入して前記ウレタンプレポリマーと混合(mixing)するようにした。
【0081】
各々の投入ラインを介して各原料をミキシングヘッド(Mixing Head)に一定速度で投入しながら撹拌した。この際、前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とは1:1の当量比で投入し、不活性ガスである窒素(N)は0.5~1.5L/分の速度で注入した。撹拌した原料を80℃に予熱したモールド(1000mm×1000mm×3mm)に10kg/分の吐出速度で吐出した後、キャスティングして成形体を得た。その後、前記成形体の上端および下端をそれぞれ0.5mm厚さに切削して、厚さ2mmのトップパッド(トップパッド層)(比重0.82g/cc、平均ポアサイズ23.6μm)を得た。
【0082】
[実施例1-3:研磨パッド製造]
ポリエステル繊維不織布にポリウレタン樹脂が含浸されているサブパッド(厚さ:1.1mm)を用意した。次いで、ホットメルト接着剤を用いて前記実施例1-2で製造したトップパッドと前記サブパッドとを結合することにより、トップパッド層/接着層/サブパッド層の構造を有する研磨パッド(厚さ:3.32mm)を製造した。
【0083】
(実施例2)
[実施例2-1:バイオマス含有ウレタンプレポリマー製造]
イソシアネート原料として、トルエンジイソシアネート(TDI)180gおよび4,4'-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)25gと、ポリオール原料として、バイオポリマーポリオール(ECOTRION H1000、SKケミカル社(分子量1000g/mol、水酸基価102.0~124.7、バイオポリマーポリオール総重量基準バイオマス含量100重量%))265gおよびバイオ1,3-プロパンジオール(分子量76g/mol、バイオ1,3-プロパンジオール総重量基準バイオマス含有量100重量%)25gと、を4口フラスコに投入した後、80℃にて3時間反応させ、NCO%が9%であるバイオマス含有ウレタンプレポリマーを製造した。
【0084】
[実施例2-2:トップパッド層製造]
前記実施例1-1で製造されたウレタンプレポリマーの代わりに、前記実施例2-1で製造されたウレタンプレポリマーを適用することを除いては、実施例1-2と同様の過程を経て、トップパッド(トップパッド層)(比重0.81g/cc、平均ポアサイズ23.1μm)を製造した。
【0085】
[実施例2-3:研磨パッド製造]
前記実施例1-2で製造されたトップパッドの代わりに前記実施例2-2で製造されたトップパッドを適用することを除いては、実施例1-3と同様の過程を経て、トップパッド層/接着層/サブパッド層の構造を有する研磨パッド(厚さ:3.32mm)を製造した。
【0086】
(実施例3)
[実施例3-1:バイオマス含有ウレタンプレポリマー製造]
イソシアネート原料として、トルエンジイソシアネート(TDI)175gおよび4,4'-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)25gと、ポリオール原料として、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(Polytetramethylene ether glycol)260gおよびバイオ1,3-プロパンジオール(分子量76g/mol、バイオ1,3-プロパンジオール総重量基準バイオマス含有量100重量%)25gと、を4口フラスコに投入した後、80℃にて3時間反応させ、NCO%が9%のバイオマス含有ウレタンプレポリマーを製造した。
【0087】
[実施例3-2:トップパッド層製造]
前記実施例1-1で製造されたウレタンプレポリマーの代わりに、前記実施例3-1で製造されたウレタンプレポリマーを適用することを除いては、実施例1-2と同様の過程を経て、トップパッド(トップパッド層)(比重0.82g/cc、平均ポアサイズ23.4μm)を製造した。
【0088】
[実施例3-3:研磨パッドの製造]
前記実施例1-2で製造されたトップパッドの代わりに、前記実施例3-2で製造されたトップパッドを適用することを除いては、実施例1-3と同様の過程を経て、トップパッド層/接着層/サブパッド層の構造を有する研磨パッド(厚さ:3.32mm)を製造した。
【0089】
(比較例1)
[比較例1-1:バイオマス含有ウレタンプレポリマー製造]
イソシアネート原料として、4,4'-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)30gおよびバイオイソシアネート(STABiOD-376N、三井化学社(分子量350g/mol,バイオイソシアネート総重量基準バイオマス含有量67重量%))365gと、ポリオール原料として、バイオポリマーポリオール(ECOTRION H1000、SKケミカル社(分子量1000g/mol、水酸基価102.0~124.7、バイオポリマーポリオール総重量基準バイオマス含有量100重量%))60gおよびバイオ1,3-プロパンジオール(分子量76g/mol、バイオ1,3-プロパンジオール総重量基準バイオマス含有量100重量%)45gと、を4口フラスコに投入した後、80℃にて3時間反応させ、NCO%が9%であるバイオマス含有ウレタンプレポリマーを製造した。
【0090】
[比較例1-2:トップパッド層製造]
前記実施例1-1で製造されたウレタンプレポリマーの代わりに前記比較例1-1で製造されたウレタンプレポリマーを適用することを除いては、実施例1-2と同様の過程を経て、トップパッド(トップパッド層)(比重0.81g/cc、平均ポアサイズ23.1μm)を製造した。
【0091】
[比較例1-3:研磨パッド製造]
前記実施例1-2で製造されたトップパッドの代わりに前記比較例1-2で製造されたトップパッドを適用することを除いては、実施例1-3と同様の過程を経て、トップパッド層/接着層/サブパッド層の構造を有する研磨パッド(厚さ:3.32mm)を製造した。
【0092】
(比較例2)
[比較例2-1:バイオマス含有ウレタンプレポリマー製造]
イソシアネート原料として、トルエンジイソシアネート(TDI)140gおよび4,4'-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)20gと、ポリオール原料として、ポリテトラメチレンエーテルポリオール(Polytetramethylene ether glycol)340gと、を4口フラスコに投入した後、80℃にて3時間反応させ、NCO%が9%のバイオマス未含有ウレタンプレポリマーを製造した。
【0093】
[比較例2-2:トップパッド層製造]
前記実施例1-1で製造されたウレタンプレポリマーの代わりに、前記比較例2-1で製造されたウレタンプレポリマーを適用することを除いては、実施例1-2と同様の過程を経て、トップパッド(トップパッド層)(比重0.81g/cc、平均ポアサイズ22.2μm)を製造した。
【0094】
[比較例2-3:研磨パッド製造]
前記実施例1-2で製造されたトップパッドの代わりに、前記比較例2-2で製造されたトップパッドを適用することを除いては、実施例1-3と同様の過程を経て、トップパッド層/接着層/サブパッド層の構造を有する研磨パッド(厚さ:3.32mm)を製造した。
【0095】
(試験例1:バイオマス含有量分析)
ASTM D 6866規格(放射性炭素年代測定方法適用)に基づき、ウレタンプレポリマー、トップパッド層および研磨パッドのそれぞれに含まれているバイオマス(バイオ炭素)の含有量(サンプルサイズ:縦5cm、横5cm)を分析し、その結果を下記表1に示す。
【0096】
【0097】
前記表1を参照すると、実現例による研磨パッドである実施例1~3は、バイオマス含有量が、研磨パッド総重量基準1重量%~50重量%、トップパッド層総重量基準2重量%~70重量%およびウレタンプレポリマー総重量基準で4重量%~80重量%の範囲をいずれも満足するのに対して、比較例1および2は、バイオマス含有量が前記範囲を満足しないことが確認できる。
【0098】
(試験例2:物性評価)
実施例1~3および比較例1~2でそれぞれ製造したトップパッド、サブパッドおよび研磨パッドの物性を下記のように評価し、その結果を下記表2に示す。
【0099】
1.硬度
トップパッド(厚さ:2mm、縦:5cm、横:5cm)とサブパッド(厚さ:1.1mm、縦:5cm、横:5cm)のそれぞれを25℃にて12時間保管後、硬度計を用いてショアD硬度およびアスカーC硬度を測定した。
【0100】
2.引張強度
トップパッド(厚さ:2mm、縦:1cm、横:4cm)を対象に、万能試験計(UTM)を用いて50mm/分の速度で破断直前の最高強度値を測定した。
【0101】
3.伸び率
トップパッド(厚さ:2mm、縦:1cm、横:4cm)を対象に、万能試験計(UTM)を用いて50mm/分の速度で破断直前の最大変形長を測定した後、最初長さに対する最大変形長の比(百分率(%))を算出して伸び率を測定した。
【0102】
4.圧縮率
研磨パッド(厚さ:3.32mm、縦:25mm、横:25mm)を対象に、ダイヤルシックネスゲージ(Dial Thickness Gauge、YASUDA社、129-E)機器を使用して、85g錘を30秒間載せた後、測定した厚さ(A)と追加の800g錘と(85g錘+800g錘)を3分間載せた後、測定した厚さ(B)の変化量を算出して圧縮率((A-B)/A*100)を測定した。
【0103】
5.研磨率
CMP装置の定盤上に研磨パッドを固定し、シリコンウェーハ(直径:300mm)のシリコン酸化膜を下にセットしてCMP工程を行った。具体的に、研磨荷重が4.0psiとなるように調整し、研磨パッド上にか焼シリカスラリーを250ml/分の速度で投入しながら、定盤を150rpmで60秒間回転させて、シリコン酸化膜を研磨した。研磨後、シリコンウェーハをキャリアから外し、回転式脱水器(spin dryer)に取り付け、精製水で洗浄した後、窒素で15秒間乾燥した。乾燥したシリコンウェーハを、分光干渉式厚み測定器(Kyence社、SI-F80R)を用いて研磨前後の厚さ差を測定しており、下記式2に従って研磨率を算出した。
[式2]
研磨率(Å/分)=シリコンウェーハ(シリコン酸化膜)の研磨厚み(Å)/研磨時間(分)
【0104】
6.研磨パッド切削率
研磨パッドを最初10分間脱イオン水でプレコンディショニングした後、1時間脱イオン水を噴射しながら再度コンディショニングを行い、研磨パッドの厚さ変化を測定した。この際、コンディショニングにはCTS社のAP-300HM装置を使用し、コンディショニング圧力は6lbfで、回転速度は100~110rpmで、コンディショニングに使用されるディスクはサソル社のLPX-DS2を適用した。
【0105】
【0106】
前記表2を参照すると、バイオマス総含有量が実現例の範囲内に制御された実施例1~3の研磨パッドは、全体的な物性に優れるのに対し、実現例の範囲から外れた比較例1の研磨パッドは物性が著しく低下することを確認できる。また、実施例1~3の研磨パッドは、バイオポリオール原料を用いて製造されても、石油系ポリオール原料を用いて製造された比較例2の研磨パッドと同等以上の物性を示すことを確認できる。これにより、実現例は、物性に優れながら環境配慮性を示す研磨パッドの提供が可能であることがわかる。
【符号の説明】
【0107】
100:研磨パッド
10:トップパッド層
20:接着層
30:サブパッド層
図1