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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132926
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ブロック共重合体及び有機膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/02 20060101AFI20240920BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08G81/02
C08G61/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031504
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2023039814
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】中林 千浩
(72)【発明者】
【氏名】原田 千寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸江
(72)【発明者】
【氏名】東原 知哉
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 伸
【テーマコード(参考)】
4J031
4J032
【Fターム(参考)】
4J031AA13
4J031AA20
4J031AA58
4J031AB01
4J031AC09
4J031AD01
4J031AE15
4J031AF26
4J032BA04
4J032BB01
4J032BC03
4J032CG01
(57)【要約】
【課題】従来工程より煩雑なデバイス作製工程を行わずとも、有機半導体材料と異種材料との接着性を改善するのに好適な有機半導体材料を提供する。
【解決手段】半導体特性と接着特性を有するブロック共重合体であって、π共役系ポリマー骨格を有する有機半導体ブロックと、ビニルポリマー骨格を有する接着性ブロックとを、連結基を介して結合してなることを特徴とするブロック共重合体。このブロック共重合体を用いた有機膜。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体特性と接着特性を有するブロック共重合体であって、π共役系ポリマー骨格を有する有機半導体ブロックと、ビニルポリマー骨格を有する接着性ブロックとを、連結基を介して結合してなることを特徴とするブロック共重合体。
【請求項2】
前記有機半導体ブロックが、下記式(I)または下記式(IV)で表されることを特徴とする請求項1に記載のブロック共重合体。
【化1】
(式(I)中、Aは、置換基を有していてもよいチオフェン環を有する単量体単位、または置換基を有していてもよいトリアリールアミン骨格を有する単量体単位を表す。
は、直接結合、直鎖又は分岐のアルキレン基、或いは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
は、水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基、或いは置換基を有していてもよいアリール基を表す。
nは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【化2】
(式(IV)中、Aは置換基を有していてもよいチオフェン環を有する単量体単位、または置換基を有していてもよいトリアリールアミン骨格を有する単量体単位を表す。
11及びR21はそれぞれ独立して、直接結合、直鎖又は分岐のアルキレン基、或いは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
nは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【請求項3】
前記式(I)中のAが、置換基としてアルキル基を有するチオフェン単位であることを特徴とする請求項2に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
前記式(IV)中のAが、置換基としてアルキル基を有するトリアリールアミン単位であることを特徴とする請求項2に記載のブロック共重合体。
【請求項5】
前記接着性ブロックが、下記式(II)で表されることを特徴とする請求項1に記載のブロック共重合体。
【化3】
(式(II)中、Rは、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。
は、直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)に置換されていてもよい。
は、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
は、直接結合、或いは直鎖又は分岐のアルキレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換さいれていてもよい。
mは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【請求項6】
前記接着性ブロックが下記式(III)で表されることを特徴とする請求項1に記載のブロック共重合体。
【化4】
(式(III)中、R~R11はそれぞれ独立して、水素原子又はヒドロキシル基を表す。ただし、R~R11のうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。 R12は、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換さいれていてもよい。
13は、直接結合、或いは直鎖または分岐のアルキレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換さいれていてもよい。
kは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【請求項7】
前記連結基が、トリアゾール環の2価基であることを特徴とする請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のブロック共重合体を用いた有機膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着特性を有する有機半導体ブロック共重合体であって、π共役系ポリマー骨格を有する有機半導体ブロックと、ビニルポリマー骨格を有する接着性ブロックとを、連結基を介して結合してなるブロック共重合体に関する。本発明はまた、このブロック共重合体を用いた有機膜に関する。
【背景技術】
【0002】
大面積化が可能で、超軽量かつフレキシブル性等を特徴とする有機電子デバイスの研究が活性化しており、有機トランジスタ、有機EL等のデバイス開発が注目されている。積層構造を持つ上記のデバイス開発においては、層間の接着性を高めて接触不良を解決することがデバイスの高性能化や耐久性改善の上での課題となっている。特に有機半導体材料の接着性不足による有機半導体層と異種材料層との層間接着性の改善が求められおり、その改善に向けた検討がなされている。
【0003】
非特許文献1には、基板上に電極材料をパターニングした後、ポリメタクリル酸メチル層、及びポリビニルアルコール層を作製し、これらを基板から引きはがした電極フィルムを有機半導体上に貼り付け、温水でポリビニルアルコール層を溶解除去することで、密着性に優れる電極/有機半導体層を有する有機トランジスタを作製することが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sci.Rep.2020,10,4702.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、デバイス作製工程が従来の工程と比べて複雑になる。また、作製工程でポリビニルアルコールや温水等の除去が不十分な場合、デバイス特性や長期安定性が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであって、従来工程より煩雑なデバイス作製工程を行わずとも、有機半導体材料と異種材料との接着性を改善するのに好適な有機半導体材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、π共役系ポリマー骨格を有する有機半導体ブロックとビニルポリマー骨格を有する接着性ブロックとを連結基を介して結合したブロック共重合体により、前記課題を解決できることを見出した。
【0008】
本発明は、このような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0009】
[1] 半導体特性と接着特性を有するブロック共重合体であって、π共役系ポリマー骨格を有する有機半導体ブロックと、ビニルポリマー骨格を有する接着性ブロックとを、連結基を介して結合してなることを特徴とするブロック共重合体。
【0010】
[2] 前記有機半導体ブロックが、下記式(I)または下記式(IV)で表されることを特徴とする[1]に記載のブロック共重合体。
【0011】
【化1】
【0012】
(式(I)中、Aは、置換基を有していてもよいチオフェン環を有する単量体単位、または置換基を有していてもよいトリアリールアミン骨格を有する単量体単位を表す。
は、直接結合、直鎖又は分岐のアルキレン基、或いは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
は、水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基、或いは置換基を有していてもよいアリール基を表す。
nは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【0013】
【化2】
【0014】
(式(IV)中、Aは置換基を有していてもよいチオフェン環を有する単量体単位、または置換基を有していてもよいトリアリールアミン骨格を有する単量体単位を表す。
11及びR21はそれぞれ独立して、直接結合、直鎖又は分岐のアルキレン基、或いは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
nは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【0015】
[3] 前記式(I)中のAが、置換基としてアルキル基を有するチオフェン単位であることを特徴とする[2]に記載のブロック共重合体。
【0016】
[4]前記式(IV)中のAが、置換基としてアルキル基を有するトリアリールアミン単位であることを特徴とする[2]に記載のブロック共重合体。
【0017】
[5] 前記接着性ブロックが、下記式(II)で表されることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載のブロック共重合体。
【化3】
【0018】
(式(II)中、Rは、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。
は、直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)に置換されていてもよい。
は、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
は、直接結合、或いは直鎖又は分岐のアルキレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換さいれていてもよい。
mは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【0019】
[6] 前記接着性ブロックが下記式(III)で表されることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載のブロック共重合体。
【0020】
【化4】
【0021】
(式(III)中、R~R11はそれぞれ独立して、水素原子又はヒドロキシル基を表す。ただし、R~R11のうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。
12は、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換さいれていてもよい。
13は、直接結合、或いは直鎖または分岐のアルキレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換さいれていてもよい。
kは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【0022】
[7] 前記連結基が、トリアゾール環の2価基であることを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載のブロック共重合体。
【0023】
[8] [1]~[7]のいずれか1項に記載のブロック共重合体を用いた有機膜。
【発明の効果】
【0024】
本発明のブロック共重合体は、接着性ブロックを有するため、それ自体が異種材料との接着性を有し、デバイス作製工程における工程数の削除、作製されたデバイス作製工程の信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0026】
なお、本発明において、アリーレン基とは、芳香族炭化水素環連結基であるアリーレン基と、芳香族複素環連結基であるヘテロアリーレン基との双方を意味する広義のアリーレン基である。アリール基についても同様である。
【0027】
<ブロック共重合体>
本発明のブロック共重合体は、半導体特性と接着特性を有するブロック共重合体であって、π共役系ポリマー骨格を有する有機半導体ブロックと、ビニルポリマー骨格を有する接着性ブロックとを、連結基を介して結合してなるブロック共重合体である。
本発明のブロック共重合体は、有機半導体ブロックによる良好な半導体特性と、接着性ブロックによる接着性とを兼備するものである。
ブロック共重合体を構成する各ブロックは相分離が起こる組み合わせであれば特に限定されないが、互いに非相溶であるブロック同士の組み合わせであることが好ましい。有機半導体ブロックと接着性ブロックとをナノレベルで相分離させることにより、有機半導体ブロック、接着性ブロックそれぞれの凝集を抑制することができる。このため、本発明のブロック共重合体からは、接着性ブロックに由来する接着特性を得ることができる。
【0028】
本発明のブロック共重合体中の有機半導体ブロックと接着性ブロックの合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、その上限は連結基を確保する観点から90質量%以下であることが好ましい。
なお、本発明のブロック共重合体は有機半導体ブロックの1種のみを含むものであってもよく、例えば下記式(I)における置換基の種類等の異なる2種以上の有機半導体ブロックを含むものであってもよい。また接着性ブロックや連結基についてもそれぞれ
1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0029】
<有機半導体ブロック>
有機半導体ブロックは、π共役系ポリマー骨格としてチオフェン環又はトリアリールアミン骨格を含む単量体単位を含むブロックであることが好ましく、下記式(I)または下記式(IV)で表されるブロックであることが好ましい。
【0030】
【化5】
【0031】
(式(I)中、Aは、置換基を有していてもよいチオフェン環を有する単量体単位、または置換基を有していてもよいトリアリールアミン骨格を有する単量体単位を表す。
は、直接結合、直鎖又は分岐のアルキレン基、或いは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
は、水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基、或いは置換基を有していてもよいアリール基を表す。
nは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【0032】
【化6】
【0033】
(式(IV)中、Aは置換基を有していてもよいチオフェン環を有する単量体単位、または置換基を有していてもよいトリアリールアミン骨格を有する単量体単位を表す。
11及びR21はそれぞれ独立して、直接結合、直鎖又は分岐のアルキレン基、或いは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
nは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【0034】
本発明に係る有機半導体ブロックが、上記式(I)で表されるブロックである場合、通常、本発明のブロック共重合体は有機半導体ブロックと接着性ブロックとを1つずつ有するブロック共重合体として構成される。また、本発明に係る有機半導体ブロックが、上記式(IV)で表されるブロックである場合、通常、本発明のブロック共重合体は、1つの有機半導体ブロックが2つの接着性ブロックの間に介在したブロック共重合体として構成される。
【0035】
[A、A
(置換基を有していてもよいチオフェン環を有する単量体単位)
A及びAの置換基を有していてもよいチオフェン環を含有する単量体単位を構成するチオフェン環を有するチオフェン系化合物としては、1個以上のチオフェン環を有するものであればよく、特に限定されない。
【0036】
チオフェン系化合物としては、単環のチオフェン環を有するものであってもよく、縮合環のチオフェン環を有するものであってもよく、2以上のチオフェン環が直接結合又は他の連結基を介して結合したものであってもよい。また、縮合環の場合、チオフェン環同士が縮合したものであってもよく、チオフェン環と、ベンゼン環等の他の環が縮合したものであってもよい。縮合環同士或いは縮合環とチオフェン環とが直接結合又は他の連結基を介して縮合したものであってもよい。
【0037】
また、チオフェン環を有する単量体が置換基を有する場合、該置換基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1~20の、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基等が挙げられる。これらのうち、ブロック共重合体の溶解性の観点から、炭素数4~20の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましい。
【0038】
以下にA及びAを構成するチオフェン系化合物の具体例を挙げるが、本発明に係るA及びA単位は、何らこれらのチオフェン系化合物に限定されるものではない。
【0039】
【化7】
【0040】
A及びAは、ブロック共重合体の溶解性の観点から置換基として炭素数4~20のアルキル基を有するチオフェン単位であることが好ましい。
【0041】
(置換基を有していてもよいトリアリールアミン骨格を有する単量体単位)
A及びAの置換基を有していてもよいトリアリールアミン骨格を有する単量体単位を構成するトリアリールアミン骨格を有するトリアリールアミン系化合物としては、1個以上のトリアリールアミン骨格を有するものであればよく、特に限定されない。
【0042】
トリアリールアミン系化合物としては、置換基を有していてもよいトリフェニルアミン、置換基を有していてもよいトリナフチルアミン、置換基を有していてもよいジフェニルナフチルアミン等が挙げられる。
【0043】
また、トリアリールアミン骨格を有する単量体が置換基を有する場合、該置換基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1~20の、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基等が挙げられる。これらのうち、ブロック共重合体の溶解性の観点から、炭素数4~20の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましい。
【0044】
以下にA及びAを構成するトリアリールアミン系化合物の具体例を挙げるが、本発明に係るA及びA単位は、何らこれらのトリアリールアミン系化合物に限定されるものではない。
【0045】
【化8】
【0046】
A及びAは、ブロック共重合体の溶解性の観点から置換基として炭素数4~20のアルキル基を有するトリフェニルアミン単位であることが好ましい。
【0047】
[R、R21、R22
前記式(I)のR及び前記式(IV)中のR21及びR22は、直接結合、直鎖又は分岐のアルキレン基、或いは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
【0048】
、R21及びR22の直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]等の炭素数1~20の直鎖アルキレン基が挙げられる。 分岐鎖状のアルキレン基としては、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等の炭素数2~20のアルキルメチレン基又はジアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等の炭素数3~20のアルキルエチレン基又はジアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等の炭素数4~20のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等の炭素数5~20のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。
上記のアルキル基のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)で置換されていてもよい。
【0049】
置換基を有していてもよいアリーレン基として、具体的にはフェニレン基等のアリーレン基、ピリジニレン基等のヘテロアリーレン基が挙げられる。該アリーレン基が有していてもよい置換基としては炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基等が挙げられる。
【0050】
これらのうち、R、R21及びR22としては、ブロック共重合体の溶解性の観点から炭素数1~10の、直鎖または分岐アルキル基、直鎖または分岐アルコキシ基等が好ましい。
なお、式(IV)中のR21とR22は同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0051】
[R
前記式(I)中、Rは、水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルコキシ基、或いは置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0052】
直鎖状のアルキル基としては、具体的には、メチル基[-CH]、エチル基[-CHCH]、プロピル基[-CHCHCH]、ブチル基[-CHCHCHCH]等の炭素数1~20の直鎖アルキル基が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、具体的には、-C(CH、-C(CHCH、-CH(CH)CHCH、-CH(CH)CH(CH、-C(CHCHCH等の炭素数3~20の分岐アルキル基が挙げられる。
【0053】
直鎖状のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基[-OCH]、エトキシ基[-OCHCH]、プロポキシ基[-OCHCHCH]、ブトキシ基[-OCHCHCHCH]等の炭素数1~20の直鎖アルコキシ基が挙げられる。 分岐鎖状のアルコキシ基としては、具体的には、-OC(CH、-OC(CHCH、-OCH(CH)CHCH、-OCH(CH)CH(CH、-OC(CHCHCH等の炭素数3~20の分岐アルコキシ基が挙げられる。
【0054】
置換基を有していてもよいアリール基として、具体的にはフェニル基等のアリール基、ピリジル基等のヘテロアリール基が挙げられる。該アリール基が有していてもよい置換基としては炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基等が挙げられる。
【0055】
これらのうち、Rとしては、ブロック共重合体の溶解性の観点から、置換基を有していてもよいフェニル基等のアリール基、ピリジル基等のヘテロアリール基等が好ましい。
【0056】
[n]
式(I)、(IV)中、nは2以上の自然数であり、後述の有機半導体ブロックの数平均分子量(Mn)を満たす数である。
【0057】
[分子量]
有機半導体ブロックは分子量によって半導体特性が異なる。光・電子機能材料として用いる場合、半導体特性の一例としての電荷移動度が良好な値が得られることから、有機半導体ブロックの数平均分子量(Mn)は2000g/mol以上であることが好ましく、4000g/mol以上であることがより好ましく、6000g/mol以上であることがより好ましい。有機半導体ブロックの数平均分子量(Mn)の上限については特に制限はないが、ブロック共重合体の溶解性および接着性付与の観点から100000g/mol以下が好ましく、50000g/mol以下がより好ましい。
【0058】
ここで、有機半導体ブロックの数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した数平均分子量(ポリスチレン換算)である。測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いることが好ましい。
【0059】
有機半導体ブロックは、分子量分布が大きいと、所望の範囲より分子量の小さいものが含まれ、所望の電荷移動度が得られなくなる恐れがある。このため、有機半導体ブロックの分子量分散度(Mw/Mn)は、1.0~4.0程度が好ましく、1.0~3.0程度がより好ましく、1.0~2.0程度が特に好ましい。なお、Mwは重量平均分子量を示す。
重量平均分子量(Mw)についても、数平均分子量(Mn)と同様にGPC測定により求められる。
【0060】
<接着性ブロック>
接着性ブロックは、ビニルポリマー骨格を含み、接着特性を有するブロックであれば特に限定されないが、下記式(II)または下記式(III)で表されるブロックであることが好ましい。
【0061】
(式(II)で表される接着性ブロック)
【0062】
【化9】
【0063】
(式(II)中、Rは、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。 Rは、直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)に置換されていてもよい。
は、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
は、直接結合、或いは直鎖又は分岐のアルキレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換さいれていてもよい。
mは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【0064】
[R
前記式(II)中、Rは、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。
【0065】
の直鎖状のアルキル基としては、具体的には、メチル基[-CH]、エチル基[-CHCH]、プロピル基[-CHCHCH]、ブチル基[-CHCHCHCH]等の炭素数1~20の直鎖アルキル基が挙げられる。 分岐鎖状のアルキル基としては、具体的には、-C(CH、-C(CHCH、-CH(CH)CHCH、-CH(CH)CH(CH、-C(CHCHCH等の炭素数3~20の分岐アルキル基が挙げられる。
【0066】
としては、接着性付与の観点から、水素原子又は炭素数1~5の直鎖アルキル基が好ましい。
【0067】
[R
前記式(II)中、Rは、直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)に置換されていてもよい。
【0068】
の直鎖状のアルキル基としては、具体的には、メチル基[-CH]、エチル基[-CHCH]、プロピル基[-CHCHCH]、ブチル基[-CHCHCHCH]、ペンチル基[-CHCHCHCHCH]、へキシル基[-CHCHCHCHCHCH]、へプチル基[-CHCHCHCHCHCHCH]、オクチル基[-CHCHCHCHCHCHCHCH]等の炭素数1~20の直鎖アルキル基が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、具体的には、-C(CH、-C(CHCH、-CH(CH)CHCH、-CH(CH)CH(CH、-C(CHCHCH等の炭素数3~20の分岐アルキル基が挙げられる。
【0069】
としては、接着性付与の観点から、炭素数1~50の直鎖アルキル基であって、該アルキル基中のメチレン基(-CH-)の1~24個が酸素原子(-O-)で置換されたものが好ましい。
【0070】
[R
前記式(II)中、Rは、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
【0071】
の直鎖状のアルキル基としては、具体的には、メチル基[-CH]、エチル基[-CHCH]、プロピル基[-CHCHCH]、ブチル基[-CHCHCHCH]、ペンチル基[-CHCHCHCHCH]、へキシル基[-CHCHCHCHCHCH]、へプチル基[-CHCHCHCHCHCHCH]、オクチル基[-CHCHCHCHCHCHCHCH]等の炭素数1~20の直鎖アルキル基が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、具体的には、-C(CH、-C(CHCH、-CH(CH)CHCH、-CH(CH)CH(CH、-C(CHCHCH等の炭素数3~20の分岐アルキル基が挙げられる。
【0072】
としては、ブロック共重合体合成および接着性付与の観点から、炭素数5~20の直鎖アルキル基であって、該アルキル基中のメチレン基(-CH-)の3~9個が、硫黄原子(-S-)及び/又はチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されたものが好ましい。
【0073】
[R
前記式(II)中、Rは、直接結合、或いは直鎖又は分岐のアルキレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換さいれていてもよい。
【0074】
の直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]等の炭素数1~20の直鎖アルキレン基が挙げられる。 分岐鎖状のアルキレン基としては、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等の炭素数2~20のアルキルメチレン基又はジアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等の炭素数3~20のアルキルエチレン基又はジアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等の炭素数4~20のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等の炭素数5~20のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。
【0075】
としては、ブロック共重合体合成および接着性付与の観点から、炭素数5~20の直鎖アルキレン基であって、該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)の2~8個が、酸素原子(-O-)及び/又はカルボニル基(-C(=O)-)に置換されたものが好ましい。
【0076】
[m]
式(II)中、mは2以上の自然数であり、後述の接着性ブロックの数平均分子量(Mn)を満たす数である。
【0077】
(式(III)で表される接着性ブロック)
【0078】
【化10】
【0079】
(式(II)中、Rは、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。 Rは、直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)に置換されていてもよい。
は、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
は、直接結合、或いは直鎖又は分岐のアルキレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)は酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換さいれていてもよい。
mは2以上の自然数である。
波線は、前記連結基との結合手を意味する。)
【0080】
[R~R11
前記式(III)中、R~R11は、それぞれ独立して、水素原子又はヒドロキシル基を表す。R~R11のうち、少なくとも1つはヒドロキシル基である。
~R11にヒドロキシル基が含まれることで、接着性発現が期待できる。
この観点から、R~R11のうちの少なくとも2つがヒドロキシル基であることが好ましい。R~R11のうちのヒドロキシル基の数はブロック共重合体の溶解性の観点から4以下であることが好ましい。
~R11のうちのヒドロキシル基の位置については特に制限はないが、接着性付与の観点から、式(III)中のフェニル基のm位及びp位であることが好ましい。
【0081】
[R12
前記式(III)中、R12は、水素原子、或いは直鎖又は分岐のアルキル基を表す。該アルキル基中のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されていてもよい。
【0082】
12の直鎖状のアルキル基としては、具体的には、メチル基[-CH]、エチル基[-CHCH]、プロピル基[-CHCHCH]、ブチル基[-CHCHCHCH]、ペンチル基[-CHCHCHCHCH]、へキシル基[-CHCHCHCHCHCH]、へプチル基[-CHCHCHCHCHCHCH]、オクチル基[-CHCHCHCHCHCHCHCH]等の炭素数1~20の直鎖アルキル基が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、具体的には、-C(CH、-C(CHCH、-CH(CH)CHCH、-CH(CH)CH(CH、-C(CHCHCH等の炭素数3~20の分岐アルキル基が挙げられる。
【0083】
12としては、ブロック共重合体合成および接着性付与の観点から、炭素数5~20の直鎖アルキル基であって、該アルキル基中のメチレン基(-CH-)の3~9個が、硫黄原子(-S-)及び/又はチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換されたものが好ましい。
【0084】
[R13
前記式(III)中、R13は、直接結合、或いは直鎖又は分岐のアルキレン基を表す。該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)が酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-C(=O)-)、或いはチオカルボニル基(-C(=S)-)に置換さいれていてもよい。
【0085】
13の直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]等の炭素数1~20の直鎖アルキレン基が挙げられる。
分岐鎖状のアルキレン基としては、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等の炭素数2~20のアルキルメチレン基又はジアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等の炭素数3~20のアルキルエチレン基又はジアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等の炭素数4~20のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等の炭素数5~20のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。
【0086】
13としては、ブロック共重合体合成および接着性付与の観点から、炭素数5~20の直鎖アルキレン基であって、該アルキレン基中のメチレン基(-CH-)の2~8個が、酸素原子(-O-)及び/又はカルボニル基(-C(=O)-)に置換されたものが好ましい。
【0087】
[k]
式(III)中、kは2以上の自然数であり、後述の接着性ブロックの数平均分子量(Mn)を満たす数である。
【0088】
[分子量]
接着性ブロックの数平均分子量(Mn)は1000~50000であることが好ましく、2000~20000程度であることが特に好ましい。接着性ブロックの数平均分子量が上記下限以上であればブロック共重合体への接着性付与が期待でき、上記上限以下であればブロック共重合体の溶解性を確保することができる。
【0089】
ここで、接着性ブロックの数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミテーョンクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した数平均分子量(ポリスチレン換算)である。測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いることが好ましい。
【0090】
[含有量]
本発明のブロック共重合体における接着性ブロックの含有量は、有機半導体ブロックと接着性ブロックの合計質量に対して5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。一方、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。接着性ブロックの含有量が上記下限値以上であれば十分な接着性を得ることができ、上記上限値以下であればブロック共重合体の有機半導体特性に優れたものとなる。
【0091】
<連結基>
本発明のブロック共重合体において、有機半導体ブロックと接着性ブロックとを結合する連結基としては、これらのブロック同士を連結することができるものであればよく、特に制限はないが、トリアゾール環の2価基(具体的には、1,2,3-トリアゾールの1位と4位に結合手を有するもの)、シクロへキセン環の2価基等の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
これらのうち、ブロック共重合体合成の観点から、トリアゾール環の2価基が好ましい。
【0092】
<ブロック共重合体の製造方法>
本発明のブロック共重合体の製造方法は特に限定されないが、クリック化学カップリング反応により製造することが好ましい。
【0093】
<クリック化学カップリング反応>
クリック化学カップリング反応は、アジド(N)化合物がアルキン基と反応して1,2,3-トリアゾールを形成する任意の方法を指す。クリック化学カップリング反応は、当業者に一般的に公知の任意のHuisgen実験手順を適用又は採用して実施し得る。
一般的に、前記クリック化学カップリング反応は、有機又は水性条件のいずれかでHuisgen反応に従って実施される。有機的な条件において、前記クリック化学カップリング反応は、典型的に、臭化銅(I)(CuBr)及びN,N,N’,N’,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)の存在下で実施される。この反応は、特に、有機溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、ジメチルスルホキシド(DMSO))中で、室温と反応混合物の還流温度の間を含む温度で、好ましくは無水条件下で行うとよい。
【0094】
本発明のブロック共重合体は、例えば、末端アジド基を有する有機半導体ブロックと末端アルキン基を有する接着性ブロックとのクリック化学カップリング反応で1,2,3-トリアゾールを形成することで製造することができる。末端アジド基を有する有機半導体ブロックと末端アルキン基を有する接着性ブロックは、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法により合成したものを用いてもよい。
【0095】
<相分離>
本発明のブロック共重合体は、前記有機半導体ブロックからなる連続相と、前記接着性ブロックからなる連続相とがラメラ状の相構造を形成している。ラメラ状の相構造により、半導体特性を有する有機半導体ブロックと、接着特性を有する接着性ブロックとがナノレベルで相分離していることにより、有機半導体ブロック、接着性ブロックそれぞれの凝集を抑えることができる。このため、本発明のブロック共重合体からは、異種材料に対する接着性を有する膜を得ることができる。
なお、該相構造は顕微鏡写真(例えば走査型プローブ顕微鏡)で観察することができる。
【0096】
<成膜方法>
本発明のブロック共重合体を成膜して本発明の有機膜を得るための成膜方法に特に制限はないが、湿式成膜法が好ましい。具体的にはスピンコート法などが挙げられる。この場合、スピンコートの条件は、ブロック共重合体溶液の粘度等を考慮して、定法に従い適宜決定すればよい。
また、ブロック共重合体溶液は、ブロック共重合体を溶解する溶媒を用いて、定法に従い調製すればよいが、溶媒の一例としては、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、トルエン、キシレン、THF等の1種又は2種以上の混合溶媒が挙げられる。
また、湿式成膜に供するブロック共重合体溶液のブロック共重合体濃度は5~40mg/mL程度であることが好ましい。
【0097】
<有機膜>
本発明の有機膜は、上述のとおり、本発明のブロック共重合体を用いて成膜して得られるものであり、有機半導体ブロック由来の有機半導体特性、電気化学特性、ないしは光学特性等を有することから、例えば、有機トランジスタ、有機EL、有機太陽電池、光センサー等として好適に用いることができる。
また、本発明の有機膜は、本発明のブロック共重合体の2種類以上を混合して成膜したものであってもよく、また、本発明のブロック共重合体の他、必要に応じてその他の成分が含まれてもよい。
その他の成分の例としては、有機半導体化合物、ドーパント、安定剤、硬化剤等が挙げられる。
【実施例0098】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
[合成例1:トリメチルシリル基末端ポリ(3-ヘキシルチオフェン)の合成]
【0100】
【化11】
【0101】
窒素雰囲気下において、30mL二口フラスコにブロモ-o-トリルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)0.128g(0.170mmol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)8mL、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(上記反応式において記載を省略した。)0.137g(0.332mmol)を加えて室温で30分攪拌し、ブロモ-o-トリル(ジフェニルホスフィンプロパン)ニッケル(II)溶液Aを調製した。
また、窒素雰囲気下において別の5mLバイアルにマグネシウム53mg(2.18mmol)、脱水THF1mL、1,2-ジブロモエタン数滴を加え、エチレンの発生を確認した後、(5-クロロ-1-ペンチニル)トリメチルシラン0.33mL(1.85mmol)を加えて、室温で終夜攪拌し、(5-クロロマグネシオ-1-ペンチニル)トリメチルシラン溶液Bを調製した。
窒素雰囲気下において別の300mL二口フラスコに2-ブロモ-3-ヘキシル-5-ヨード-チオフェン3.18g(8.52mmol)、脱水THF200mLを加え、0℃に冷却した。さらにイソプロピルマグネシウムクロリド-塩化リチウム錯体の1.2M THF溶液7.2mL(8.64mmol)を加えて、室温で30分攪拌し、2-ブロモ-5-クロロマグネシオ-3-ヘキシルチオフェン溶液Cを調製した。
溶液Cに、溶液Aを加えて室温で15分間重合させた後、溶液Bを加えて室温で1時間反応させ重合を停止させた。
【0102】
得られた反応溶液をメタノールに滴下し、析出物を得た。濾過で回収した析出物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥させることで目的物のトリメチルシリル基末端ポリ(3-ヘキシルチオフェン)を得た。
収量1.26g(収率89%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)13000g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.08、数平均分子量(H NMR)7900g/molであった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(400MHz,CDCl) δ 6.98(s),6.91(s),6.86(s),2.81(t,J=7.3Hz),2.52(t,J=7.8Hz),2.33(t,J=6.6Hz),1.73-1.67(m),1.51-1.36(m),0.92(s),0.1(s)
【0103】
[合成例2:エチニル基末端ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)の合成]
【0104】
【化12】
【0105】
窒素雰囲気下において、200mLフラスコに、上記合成例1で得たトリメチルシリル基末端ポリ(3-ヘキシルチオフェン)0.504g(63.8μmol)、脱水THF100mL、テトラブチルアンモニウムフロリドの1.0M THF溶液4mL(4mmol)を加え、50℃で4時間反応させた。得られた固体をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥させることで目的物のエチニル基末端ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を得た。
収量0.445g(収率88%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)13000g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.09、数平均分子量(H NMR)8400g/molであった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(400MHz,CDCl) δ 6.97(s),6.90(s),6.85(s),2.80(t,J=7.7Hz),2.54-2.48(m),2.30-2.26(m),2.00(t,J=2.5Hz),1.88(d,J=14.0Hz),1.74-1.66(m),1.41(d,J=13.1Hz),1.34(t,J=3.6Hz),0.91(t,J=6.8Hz)
【0106】
[合成例3:アジド基末端ポリ(アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル)(P2EEEA)の合成]
【0107】
【化13】
【0108】
窒素雰囲気下において、10mLフラスコにアクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル2.45g(13.0mmol)、8-アジドオクチル2-((ドデシルチオ)カルボノチオイル)チオ)プロパノエート0.103g(0.204mmol)、脱水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)3mL、アゾビスイソブチロニトリル9.5mg(57.9μmol)を加え、反応溶液に窒素バブリングを行った後に65℃で3時間反応させた。得られた反応溶液の濃縮液をメタノール中で半透膜を用いて精製した。半透膜内部の溶液から溶媒を留去し目的物のアジド基末端ポリ(アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル)(P2EEEA)を得た。
収量1.644g(収率64%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)9000g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.14、数平均分子量(H NMR)13000g/molであった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(400MHz,CDCl) δ 4.42-4.02(b),3.65-3.48(m),2.56-2.22(b),2.07-1.82(b),1.76-1.59(b),1.54-1.40(b),1.37-1.18(m)
【0109】
[実施例1]
[ポリ(3-ヘキシルチオフェン)-b-ポリ(アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル)(P3HT-b-P2EEEA)の合成]
【0110】
【化14】
【0111】
窒素雰囲気下において、30mLフラスコに上記合成例2で得たエチニル基末端ポリ(3-ヘキシルチオフェン)0.148g(17.7μmol)、上記合成例3で得たアジド基末端ポリ(アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル)0.251g(19.3μmol)、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン33.0mg(0.190mmol)、脱水THF10mLを加え凍結脱気を3回行った。続いて、臭化銅(I)27.0mg(0.188mmol)を加え60℃で4時間反応させた。
反応終了後、反応溶液にクロロホルムを加えアルミナカラムで銅を除去し、次いで高速液体クロマトグラフ(HPLC)にて目的物の分画を行った。HPLCにて得られた溶液から溶媒を留去し得られた固体をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥させることで目的物のポリ(3-ヘキシルチオフェン)-b-ポリ(アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル)(P3HT-b-P2EEEA)を得た。
収量0.156mg(収率42%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)23000g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.08であった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(400MHz,CDCl) δ 6.96(s),4.39-4.08(b),3.66-3.48(m),2.79(t,J=7.3Hz),2.41-2.22(b),1.99-1.81(b),1.71-1.65(m),1.44-1.34(m),1.19(t,J=6.9Hz),0.90(t,J=6.6Hz)
【0112】
[合成例4:アジド基末端ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)の合成]
【0113】
【化15】
【0114】
窒素雰囲気下において、10mLのフラスコにO,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール1.09g(2.99mmol)、8-アジドオクチル2-((ドデシルチオ)カルボノチオイル)チオ)プロパノエート0.111g(0.220mmol)、脱水トルエン1.5mL、アゾビスイソブチロニトリル7.2mg(43.8μmol)を加え、反応溶液に窒素バブリングを行った後に60℃で終夜反応させた。得られた反応溶液をメタノールに滴下し、析出物を得た。ろ過で回収した析出物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥させることで目的物のアジド基末端ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)を得た。
収量0.471g(収率39%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)3100g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.06、数平均分子量(H NMR)5300g/molであった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(400MHz,CDCl) δ 6.64-5.83(b),3.44-3.23(b),2.01-1.64(b),1.48-1.10(b),0.94-0.69(b),0.21-0.13(m)
【0115】
[合成例5:アジド基末端ポリ(4-ビニルカテコール)(PVC)の合成]
【0116】
【化16】
【0117】
窒素雰囲気下において、30mLフラスコに上記合成例4で得たアジド基末端ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)0.255g(48.2μmol)、脱水THF8mL、12M HCl水溶液0.88mL(10.6mmol)を加え、60℃で終夜反応させた。得られた反応溶液を酢酸エチルを用いて分液を行った。濃縮した酢酸エチル画分をヘキサンに滴下し目的物のアジド基末端ポリ(4-ビニルカテコール)(PVC)をデカンテーションで回収した。
収量98.7mg(収率89%)、数平均分子量(Mn)(H NMR)3000g/molであった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(400MHz,CDCl) δ 6.68-5.92(m),3.61-3.53(m),1.83-1.80(m),1.63-1.25(m),0.85(t,J =7.3Hz)
【0118】
[合成例6:ポリ(3-ヘキシルチオフェン)-b-ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)の合成]
【0119】
【化17】
【0120】
窒素雰囲気下において、30mLフラスコに上記合成例2で得たエチニル基末端ポリ(3-ヘキシルチオフェン)0.169g(20.1μmol)、上記合成例4で得たアジド基末端ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)0.125g(23.6μmol)、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン27.6mg(0.159mmol)、脱水THF10mLを加え凍結脱気を3回行った。続いて、臭化銅(I)27.6mg(0.192mmol)を加え60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応溶液にクロロホルムを加えアルミナカラムで銅を除去し、次いで高速液体クロマトグラフを実施した。得られた溶液をメタノールに滴下し、析出物を得た。ろ過で回収した析出物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥させることで目的物のポリ(3-ヘキシルチオフェン)-b-ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)を得た。
収量121mg(収率46%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)19000g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.06であった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 6.98(s),6.64-5.92(b),2.81(t,J=7.6 Hz),1.63-1.66(m),1.48-1.40 (m),1.39-1.32(m),1.26-1.19(s),1.06-0.81(m),0.26-0.11(m)
【0121】
[実施例2]
<ポリ(3-ヘキシルチオフェン)-b-ポリ(4-ビニルカテコール)(P3HT-b-PVC)の合成>
【0122】
【化18】
【0123】
窒素雰囲気下において、100mLフラスコに上記合成例6で得たポリ(3-ヘキシルチオフェン)-b-ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)79mg(4.16μmol)、脱水THF50mL、テトラブチルアンモニウムフロリドの1.0M THF溶液4mL(4mmol)を加え、室温で終夜反応させた。得られた反応溶液をメタノールに滴下し、析出物を得た。ろ過で回収した析出物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥させることで目的物のポリ(3-ヘキシルチオフェン)-b-ポリ(4-ビニルカテコール)(P3HT-b-PVC)を得た。
収量63.8mg(収率97%)、数平均分子量(H NMR)11000g/molであった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 7.06-6.85(b),3.00-2.65(b),1.86-1.61(b),1.51-1.39(b),1.39-1.29(b),1.26-1.18(m),1.03-0.65(b)
【0124】
[合成例7:tert-ブチルジメチルシリル基両末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)の合成]
【0125】
【化19】
【0126】
窒素雰囲気下において、100mLフラスコに((4-ブロモベンジル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン0.084g(0.19mmol))、2,4,6-トリメチルアニリン0.203g(1.50mmol)、4,4’-ジブロモビフェニル0.455g(0.15mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート0.064mg(0.06μmol)、脱酸素トルエン30mLを加え、反応溶液に窒素バブリングを行った。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.102g(0.11mmol)を加え80℃で終夜反応させた。次いで、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム二水和物を加え、80℃で1時間撹拌し、得られた反応溶液をメタノールに滴下し、ポリマーを沈殿させた。ろ過で回収した沈殿物をクロロホルムに溶解させ、溶液をアセトンに滴下した。得られた沈殿物をベンゼンに溶解させ凍結乾燥することで目的物のtert-ブチルジメチルシリル基両末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)を得た。
収量940mg(収率95%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)9600g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.84であった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 7.40(d,J=8.3 Hz),7.03(d,J=9.0Hz),6.96(s),4.67(s),2.34(s),2.04(s),0.93(s),0.09 (s)
【0127】
[合成例8:メチロール基両末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)の合成]
【0128】
【化20】
【0129】
窒素雰囲気下において、100mLフラスコに上記合成例7で得たtert-ブチルジメチルシリル基両末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)0.902g、THF30mL、テトラブチルアンモニウムフロリドの1.0M THF溶液1.8mL(1.8mmol)を加え、室温で終夜反応させた。得られた反応溶液をメタノールに滴下し、ポリマーを沈殿させた。ろ過で回収した沈殿物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥することで目的物のメチロール基両末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)を得た。
収量936mg(収率99%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)9600g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.84であった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 7.39(d,J=8.3 Hz),7.01(d,J=8.3Hz),6.94(s),4.59(s),2.32(s),2.02(s)
【0130】
[合成例9:アルキニル基両末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)の合成]
【0131】
【化21】
【0132】
窒素雰囲気下において、100mLフラスコに上記合成例8で得たメチロール基両末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)0.622g、THF50mL、トリエチルアミン2.8mL、5-ヘキシン酸塩化物の0.34M ジクロロメタン溶液15mL(8.8mmol)を加え、室温で1時間反応させた。得られた反応溶液をメタノールに滴下し、ポリマーを沈殿させた。ろ過で回収した沈殿物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥することで目的物のアルキニル基両末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)を得た。
収量536mg(収率86%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)8800g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.83であった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 7.40(d,J=8.3 Hz),7.02(d,J=8.3Hz),6.95(s),5.03 (s),2.49(t,J=7.6Hz),2.33(s),2.27-2.25(m),2.03(s),1.96(s),1.87(t,J=7.2 Hz)
【0133】
[合成例10:ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)-b-ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)-b-ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)の合成]
【0134】
【化22】
【0135】
窒素雰囲気下において、200mLフラスコに上記合成例9で得たアルキニル基両末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)0.406g、上記合成例4で得たアジド基末端ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)0.661g(0.107mmol)、臭化銅(I)0.069g(0.48mmol)、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン0.071g(0.41mmol)、THF60mLを加え、60℃で3時間反応させた。次いで、5-ヘキシン酸を加え60℃で30分反応させた。反応終了後、反応溶液にクロロホルムを加えアルミナカラムで銅を除去し、次いでシリカゲルクロマトグラフを行い、目的物であるポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)-b-ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)-b-ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)を得た。
収量736mg(収率69%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)21000g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.53であった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 7.39(d,J=7.6 Hz),7.01(s),6.94(s),6.71-5.78(b),2.43-2.21(b),2.09-1.89(b),1.40-1.18 (m),1.09-0.66(b),0.32-0.14(b)
【0136】
[実施例5]
<ポリ(4-ビニルカテコール)-b-ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)-b-ポリ(4-ビニルカテコール)(PVC-b-PTAA-b-PVC)の合成>
【0137】
【化23】
【0138】
窒素雰囲気下において、200mLフラスコに上記合成例10で得たポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)-b-ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)-b-ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)0.69g、THF100mL、テトラブチルアンモニウムフロリドの1.0M THF溶液10mL(10mmol)を加え室温で終夜反応させた。得られた反応溶液をメタノールに滴下し、ポリマーを沈殿させた。ろ過で回収した沈殿物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥することで目的物のポリ(4-ビニルカテコール)-b-ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)-b-ポリ(4-ビニルカテコール)を得た。
収量254mg(収率55%)、数平均分子量(Mn)(H NMR)14000g/molであった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 7.47-7.27(b), 7.20-6.62(b),2.47-2.19(b),2.15-1.83 (b),1.81-1.50(b),1.48-0.98(b),0.95-0.55(b)
【0139】
[合成例11:4’-ブロモ-N-メシチル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミンの合成]
【0140】
【化24】
【0141】
窒素雰囲気下において、200mLフラスコに2,4,6-トリメチルアニリン3.11g(23.0mmol)、4,4’-ジブロモビフェニル7.30g(23.3mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド3.56g(37.0mmol)、脱酸素トルエン50mLを加え、反応溶液に窒素バブリングを行った。次に[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物0.147g(0.180mmol)を加え還流させて終夜反応させた。続いて、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム二水和物を加え、1時間撹拌した。得られた反応溶液を水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムで有機層を脱水し、濾過を行った後、減圧下でろ液の濃縮を行った。得られた残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=1/1,v/v)により精製し、ヘキサンとトルエンで再結晶を行うことで目的物の4’-ブロモ-N-メシチル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミンを得た。
収量2.37g(収率38%)であった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(400MHz,CDCl) δ 7.48(d,J=8.8 Hz),7.37(dd,J =10.9,8.6Hz),6.95(s), 6.54(d,J=8.6Hz),5.20(s),2.32(s),2.19(s)
【0142】
[合成例12:tert-ブチルジメチルシリルエーテル基片末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)の合成]
【0143】
【化25】
【0144】
窒素雰囲気下において、100mLフラスコに((4-ヨードベンジル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン0.0822g(0.273mmol)、上記合成例11で得た4’-ブロモ-N-メシチル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン1.10g(3.00mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート0.056mg(0.195mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド0.858g(8.93mmol)、脱酸素トルエン30mLを加え、反応溶液に窒素バブリングを行った。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.102g(0.100mmol)を加え80℃で終夜反応させた。次いで、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム二水和物を加え、80℃で1時間撹拌し、得られた反応溶液をメタノールに滴下し、ポリマーを沈殿させた。ろ過で回収した沈殿物をクロロホルムに溶解させ、溶液をアセトンに滴下した。得られた沈殿物をベンゼンに溶解させ凍結乾燥することで目的物のtert-ブチルジメチルシリルエーテル基片末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)を得た。
収量584mg(収率68%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)5600g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.42であった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 7.39(d,J=8.3 Hz),7.01(d,J=8.3Hz),6.94(s),4.65 (s),2.32(s),2.02(s),0.91(s),0.08(s)
【0145】
[合成例13:メチロール基片末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)の合成]
【0146】
【化26】
【0147】
窒素雰囲気下において、200mLフラスコに上記合成例12で得たtert-ブチルジメチルシリルエーテル基片末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)0.550g、THF50mL、テトラブチルアンモニウムフロリドの1.0M THF溶液2.0mL(2.0mmol)を加え、室温で終夜反応させた。得られた反応溶液をアセトンに滴下し、ポリマーを沈殿させた。ろ過で回収した沈殿物をベンゼンに溶解させ凍結乾燥することで目的物のメチロール基片末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)を得た。
収量519mg(収率99%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)4900g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.37であった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 7.40(d,J=9.0 Hz),6.99(d,J=46.1Hz),6.95(s),4.60 (s),2.33(s),2.03(s)
【0148】
[合成例14:アルキニル基片末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)の合成]
【0149】
【化27】
【0150】
窒素雰囲気下において、200mLフラスコに上記合成例13で得たメチロール基片末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)0.503g、THF50mL、トリエチルアミン2.0mL、5-ヘキシン酸塩化物の0.69M ジクロロメタン溶液10mL(6.9mmol)を加え、室温で1時間反応させた。得られた反応溶液をメタノールに滴下し、ポリマーを沈殿させた。ろ過で回収した沈殿物をクロロホルムに溶解させ、溶液をメタノールに滴下した。得られた沈殿物をベンゼンに溶解させ凍結乾燥することで目的物のアルキニル基片末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)を得た。
収量419mg(収率93%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)8800g/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.83であった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 7.40(d,J=9.0 Hz),7.02(d,J=8.3Hz),6.95(s),5.03 (s),2.49(t,J=7.2Hz),2.33(s),2.26(td, J =7.1,2.8Hz),2.03(s),1.95(s),1.87 (t,J=7.2Hz)
【0151】
[合成例15:ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)-b-ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)の合成]
【0152】
【化28】
【0153】
窒素雰囲気下において、200mLフラスコに上記合成例14で得たアルキニル基片末端ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)0363g、上記合成例4で得たアジド基末端ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)0.552g(80 μmol)、臭化銅(I)0.105g(0.73mmol)、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン0.127g(0.73mmol)、THF60mLを加え、60℃で3時間反応させた。反応終了後、反応溶液にクロロホルムを加えアルミナカラムで銅を除去し、次いで高速液体クロマトグラフを実施した。得られた溶液をメタノールに滴下し、析出物を得た。ろ過で回収した析出物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥させることで目的物のポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)-b-ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)を得た。
収量357mg(収率41%)、数平均分子量(Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)9700/mol、分子量分散度(Mw/Mn)(THF GPC,ポリスチレン標準使用)1.36であった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 7.40(d,J=7.6 Hz),7.02(d,J=8.3Hz),6.96(s),6.72-5.73(b),2.34(s),2.03(s),1.12-0.82(b), 0.30-0.11(b)
【0154】
[実施例6]
<ポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)-b-ポリ(4-ビニルカテコール)(PTAA-b-PVC)の合成>
【0155】
【化29】
【0156】
窒素雰囲気下において、200mLフラスコに上記合成例15で得たポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)-b-ポリ(O,O-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)-4-ビニルカテコール)0321g、THF30mL、テトラブチルアンモニウムフロリドの1.0M THF溶液10mL(10mmol)を加え、室温で終夜反応させた。得られた反応溶液をメタノールに滴下し、ポリマーを沈殿させた。ろ過で回収した沈殿物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥することで目的物のポリ(2,4,6-トリメチル-N,N-ジフェニルアニリン)-b-ポリ(4-ビニルカテコール)を得た。
収量127mg(収率67%)、数平均分子量(Mn)(H NMR)7800g/molであった。
このもののNMR分析結果は以下の通りである。
H NMR(600MHz,CDCl) δ 7.41(d,J=6.9 Hz),7.04(d,J=6.9 Hz),6.97(s),2.35(s),2.04(s)
【0157】
[実施例3]
<接着性評価サンプル作製>
上記実施例1で得たP3HT-b-P2EEEAのクロロベンゼン溶液を調製した(溶液濃度:20mg/mL)。その溶液をガラス基板上に室温でドロップキャストしたものを接着性評価サンプルとした。
【0158】
<接着性評価>
接着性評価サンプルに対して粘着性のあるテープを貼り付け、これを急速に引きはがすテープテストを行い、下記基準で判定した。評価結果を表1に示す。
<判定基準>
○:テープテストによる膜の剥離が見られない。
×:テープテストによる膜の剥離が見られる。
【0159】
[実施例4]
実施例3において、溶質を上記実施例2で得たP3HT-b-PVCに変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0160】
[比較例1]
実施例3において、溶質を上記合成例2で得たP3HTに変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0161】
[比較例2]
実施例3において、溶質を上記合成例2で得たP3HTと上記合成例3で得たP2EEEAの混合物(30:70質量比)に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0162】
[比較例3]
実施例3において、溶質を上記合成例2で得たP3HTと上記合成例5で得たPVCの混合物(80:20重量比)、溶媒をテトラヒドロフランに変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0163】
[実施例7]
<接着性評価サンプル作製>
酸化スズ(IV)15質量%水分散液(Alfa Aesar社製)に超純水を加えることにより、7.5質量%の酸化スズ水分散液を調製した。
窒素雰囲気下において、ヨウ化鉛(II)の濃度が1.3mol/Lとなるように溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミドを加えた後、100℃で1時間加熱撹拌することにより、ペロブスカイト用塗布液1を調製した。
窒素雰囲気下において、ホルムアミジンヨウ化水素酸塩(FAI)、メチルアミン臭化水素酸塩(MABr)及びメチルアミン塩化水素酸塩(MACl)の合計濃度が0.54mol/L(質量比10:1:1.5)となるように溶媒としてイソプロピルアルコールを加えてペロブスカイト用塗布液2を調製した。
上記実施例5で得たPVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を調製した(溶液濃度:32mg/mL)。
ガラス基板上に、上述の酸化スズ(IV)水分散液をスピンコートにて塗布し、150℃で10分間加熱することにより、厚み50nmの酸化スズ層を形成した。窒素雰囲気下において、この基板に100℃に加熱したペロブスカイト用塗布液1をスピンコートし、100℃で10分間加熱することで、ヨウ化鉛層を形成した。この上にペロブスカイト用塗布液2をスピンコートし、150℃で20分加熱することにより、有機無機ハイブリッド型ペロブスカイト半導体化合物(厚み650nm)を形成した。さらに、この上に上述のPVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液をスピンコートし、90℃で5分加熱することにより、接着性評価サンプルを作製した。
【0164】
<接着性評価>
接着性評価サンプルに対して粘着性のあるテープを貼り付け、これを急速に引きはがすテープテストを行い、下記基準で判定した。評価結果を表2に示す。
<判定基準>
○:テープテストによる膜の剥離が見られない。
×:テープテストによる膜の剥離が見られる。
【0165】
[実施例8]
実施例7において、PVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を、PVC-b-PTAA-b-PVCに対して10質量%の4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(TPFB)を添加したPVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0166】
[実施例9]
実施例7において、PVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を、PVC-b-PTAA-b-PVCに対して25質量%のTPFBを添加したPVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0167】
[実施例10]
実施例7において、PVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を、PVC-b-PTAA-b-PVCに対して50質量%のTPFBを添加したPVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0168】
[実施例11]
実施例7において、PVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を、上記実施例6で得たPTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0169】
[実施例12]
実施例8において、PVC-b-PTAA-b-PVCに対して10質量%のTPFBを添加したPVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を、PTAA-b-PVCに対して10質量%のTPFBを添加したPTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0170】
[実施例13]
実施例9において、PVC-b-PTAA-b-PVCに対して25質量%のTPFBを添加したPVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を、PTAA-b-PVCに対して25質量%のTPFBを添加したPTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0171】
[実施例14]
実施例10において、PVC-b-PTAA-b-PVCに対して50質量%のTPFBを添加したPVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を、PTAA-b-PVCに対して50質量%のTPFBを添加したPTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0172】
[比較例4]
実施例7において、PVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を、ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA,Aldrich社製)のアニソール溶液に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0173】
[比較例5]
実施例8において、PVC-b-PTAA-b-PVCに対して10質量%のTPFBを添加したPVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を、PTAAに対して10質量%のTPFBを添加したPTAAのアニソール溶液に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0174】
[比較例6]
実施例9において、PVC-b-PTAA-b-PVCに対して25質量%のTPFBを添加したPVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を、PTAAに対して25質量%のTPFBを添加したPTAAのアニソール溶液に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0175】
[比較例7]
実施例10において、PVC-b-PTAA-b-PVCに対して50質量%のTPFBを添加したPVC-b-PTAA-b-PVCのジクロロベンゼン溶液を、PTAAに対して50質量%のTPFBを添加したPTAAのアニソール溶液に変更した以外は、同様にして接着性評価サンプルを作製し、接着性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0176】
【表1】
【0177】
表1において、実施例3、4のブロック共重合体では、テープテストによる膜の剥離は見られない。一方、比較例1ではテープテストによる膜の剥離が見られる。この結果から、実施例3、4のブロック共重合体では接着性ブロックの導入による接着性向上効果が認められることが分かる。
ブロック共重合体の有機半導体ブロックを構成する重合体と接着性ブロックを構成する重合体との混合物である比較例2、3においては、テープテストで膜の剥離が見られている。これらの混合物においては、混合物中で有機半導体ブロックが凝集したことで接着性の向上が見られなかったと考えられる。
一方、実施例3、4のブロック共重合体では、有機半導体ブロックと接着性ブロックとがナノレベルで相分離していることにより、有機半導体ブロックの凝集を抑制することができた。その結果、接着特性の向上が認められたと考えられる。
【0178】
【表2】
【0179】
表2において、本発明のブロック共重合体を用いた実施例7~14では、TPFBの添加の有無と添加量に依らず、テープテストによる膜の剥離は見られない。一方、比較例4~7では膜の剥離が認められた。
以上より、有機半導体ブロックと接着性ブロックとを連結基を介して結合した本発明のブロック共重合体により、接着性を向上できることが確認された。