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  • 特開-被覆粒状肥料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132945
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】被覆粒状肥料
(51)【国際特許分類】
   C05G 5/30 20200101AFI20240920BHJP
   C05G 5/12 20200101ALI20240920BHJP
【FI】
C05G5/30
C05G5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035017
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2023041812
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 啓人
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA01
4H061AA02
4H061BB15
4H061CC13
4H061DD18
4H061EE35
4H061FF08
4H061FF14
4H061FF15
4H061GG27
4H061HH03
4H061LL15
(57)【要約】
【課題】肥料成分の溶出期間をより長くすることができる被覆粒状肥料を提供する。
【解決手段】粒状肥料と、当該粒状肥料を被覆するウレタン樹脂を含む第1ウレタン樹脂層と、前記第1ウレタン樹脂層の外側に設けられた無機粒子を含む第1無機層と、を備える、被覆粒状肥料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状肥料と、当該粒状肥料を被覆するウレタン樹脂を含む第1ウレタン樹脂層と、前記第1ウレタン樹脂層の外側に設けられた無機粒子を含む第1無機層と、を備える、被覆粒状肥料。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との重合物である、請求項1に記載の被覆粒状肥料。
【請求項3】
前記無機粒子はタルクを含む、請求項1または2に記載の被覆粒状肥料。
【請求項4】
前記無機粒子は粒子径が0.5μm以上30μm以下である、請求項1または2に記載の被覆粒状肥料。
【請求項5】
前記第1ウレタン樹脂層は、実質的にウレタン樹脂からなる請求項1または2に記載の被覆粒状肥料。
【請求項6】
前記第1無機層を被覆するウレタン樹脂を含む第2ウレタン樹脂層と、前記第2ウレタン樹脂層の外側に設けられた無機粒子を含む第2無機層と、をさらに備える、請求項1または2に記載の被覆粒状肥料。
【請求項7】
前記第2ウレタン樹脂層は、実質的にウレタン樹脂からなる請求項6に記載の被覆粒状肥料。
【請求項8】
請求項1に記載の被覆粒状肥料の製造方法であって、
前記粒状肥料をポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含む組成物で被覆する工程と、
前記ポリイソシアネート成分と前記ポリオール成分とを重合させて前記第1ウレタン樹脂層を形成する工程と、
前記第1ウレタン樹脂層の外側に前記1無機層を形成する工程と、をこの順で有する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂を含む被覆層を有する無機粒子含有の被覆粒状肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省力型の肥料として、植物の成長に合わせて肥料成分の溶出を所定の期間持続できる肥効調節型の肥料が求められている。被覆層を有する被覆粒状肥料は、肥料成分の溶出を制御することができる利点がある。また、肥料製造時の作業性や肥料成分の溶出特性の調節を目的として、被膜層に無機粒子を含有させてもよいことが知られている(例えば、特開2010-202482号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-202482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、肥料成分の溶出期間をより長くすることができる被覆粒状肥料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下を含む。
〔1〕 粒状肥料と、当該粒状肥料を被覆するウレタン樹脂を含む第1ウレタン樹脂層と、前記第1ウレタン樹脂層の外側に設けられた無機粒子を含む第1無機層と、を備える、被覆粒状肥料。
〔2〕 前記ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との重合物である、〔1〕に記載の被覆粒状肥料。
〔3〕 前記無機粒子はタルクを含む、〔1〕または〔2〕に記載の被覆粒状肥料。
〔4〕 前記無機粒子は粒子径が0.5μm以上30μm以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の被覆粒状肥料。
〔5〕 前記第1ウレタン樹脂層は、実質的にウレタン樹脂からなる〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の被覆粒状肥料。
〔6〕 前記第1無機層を被覆するウレタン樹脂を含む第2ウレタン樹脂層と、前記第2ウレタン樹脂層の外側に設けられた無機粒子を含む第2無機層と、をさらに備える、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の被覆粒状肥料。
〔7〕 前記第2ウレタン樹脂層は、実質的にウレタン樹脂からなる〔6〕に記載の被覆粒状肥料。
〔8〕 〔1〕に記載の被覆粒状肥料の製造方法であって、
前記粒状肥料をポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含む組成物で被覆する工程と、
前記ポリイソシアネート成分と前記ポリオール成分とを重合させて前記第1ウレタン樹脂層を形成する工程と、
前記第1ウレタン樹脂層の外側に前記1無機層を形成する工程と、をこの順で有する、製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、より長い肥料成分の溶出期間を有する被覆粒状肥料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一形態の被覆粒状肥料を模式的に示す断面図である。
図2図1の領域Aを拡大して示す図である。
図3】比較例1~7の被覆粒状肥料を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の被覆粒状肥料は、粒状肥料と、当該粒状肥料の表面に設けられたウレタン樹脂を含む第1ウレタン樹脂層と、前記第1ウレタン樹脂層の外側に設けられた無機粒子を含む第1無機層とを備える。本発明の被覆粒状肥料は、上記のような第1ウレタン樹脂層と第1無機層とを備えることにより、肥料成分の溶出期間をより長くすることができる。本発明の被覆粒状肥料においては、第1無機層が第1ウレタン樹脂層の外側に存在することにより、第1無機層が溶出制御層としてより機能し、肥料成分の溶出期間をより長くすることができるものと解される。
【0009】
本発明の被覆粒状肥料は、第n無機層を被覆する第(n+1)ウレタン樹脂層をさらに有していてもよい。本発明の被覆粒状肥料は、第(n+1)ウレタン樹脂層の外側に設けられた第(n+1)無機層をさらに有していてもよい。被覆粒状肥料におけるウレタン樹脂層の層数をx(xは整数)、無機層の層数をy(yは整数)とすると、無機層の外側にウレタン樹脂層がある形態の場合はx=y+1であり、無機層の外側にウレタン樹脂層がない形態の場合はx=yである。特に、無機層の外側にウレタン樹脂層がある形態の場合は、被覆肥料からの無機層の脱離を抑制できるため、x=y+1であることが好ましい。nは1以上y以下の整数である。yは、1以上の整数であり、好ましくは2以上の整数である。yは、例えば10以下の整数である。以下、「ウレタン樹脂層」という場合は特定のウレタン樹脂層に限定されることはなく、また「無機層」という場合には特定の無機層に限定されることはない。本明細書においては、被覆粒状肥料が有する、全てのウレタン樹脂層と全ての無機層とを合わせて、被覆層と称することがある。
【0010】
本発明の被覆粒状肥料の一形態として、xが2でありyが2の形態、xが3でありyが2である形態等が挙げられる。かかる二つの形態は、第1無機層を被覆するウレタン樹脂を含む第2ウレタン樹脂層と、前記第2ウレタン樹脂層の外側に設けられた無機粒子を含む第2無機層と、をさらに備える。
【0011】
図1は、xが3でありyが2の形態の被覆粒状肥料を模式的に示す断面図である。被覆粒状肥料1は、粒状肥料10と、粒状肥料10を被覆する第1ウレタン樹脂層21と、第1ウレタン樹脂層21の外側に設けられた無機粒子を含む第1無機層31と、第1無機層31を被覆する第2ウレタン樹脂層22と、第2ウレタン樹脂層22の外側に設けられた第2無機層32と、第2無機層32を被覆する第3ウレタン樹脂層23と、を有する。
【0012】
本明細書において、ウレタン樹脂層はウレタン樹脂を含む層であり、ウレタン樹脂層は、ウレタン樹脂層の全体質量に対するウレタン樹脂の含有量が好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。また、ウレタン樹脂層として、無機粒子を実質的に含まない、実質的にウレタン樹脂からなるウレタン樹脂層が最も好ましい。ここで、本発明の被覆粒状肥料の一形態においては、無機層の形成の過程で、無機粒子を添加する際に、無機粒子が隣接するウレタン樹脂層に微量混入する場合がある。本明細書においては、このように、無機鉱物が微量混入したウレタン樹脂層についても、実質的にウレタン樹脂からなるウレタン樹脂層と称する。
【0013】
本明細書において、無機層は無機粒子を含む層であり、その断面において無機粒子が50%以上の面積比率で存在する層のことをいう。本明細書において、無機層は、その断面において無機粒子が90%以上の面積比率で存在する層であることが好ましく、無機粒子のみを含む材料から製造される、無機粒子からなる層であることがより好ましい。ここで、本発明の被覆粒状肥料の一形態においては、無機層の形成の過程で、隣接するウレタン樹脂層からウレタン樹脂が無機粒子に含浸する場合がある。本明細書においては、このように、ウレタン樹脂が含浸した無機層についても、無機粒子からなる無機層と称する。ここで断面とは、被覆粒状肥料の中心を通る断面の一部とし、他の断面とかかる断面との間で無機粒子の存在比率が近似するとみなすことができる場合は、無機粒子が50%以上の面積比率で存在することを他の断面で確認することもできる。図1に示す断面は、被覆粒状肥料1の中心を通る断面である。図1に示す断面において、無機層31、32は、無機粒子を50%以上の面積比率で存在する層である。無機層31,32の断面における無機粒子の面積比率は、例えば走査電子顕微鏡(例えばSU3800、日立ハイテクサイエンス(株)製)を用いて、BSEモードで断面画像を観察することで無機層を特定し、無機層中の無機粒子の面積比率を目視にて算出することにより確認することができる。
【0014】
被覆粒状肥料において、各ウレタン樹脂層の厚さは、好ましくは1~100μmであり、より好ましくは2~80μmである。被覆粒状肥料において、各無機層の厚さは、好ましくは1~30μmであり、より好ましくは2~25μmである。図2は、図1の領域Aを拡大して示す図である。第1ウレタン樹脂層21の厚さはa1で示される距離であり、第2ウレタン樹脂層22の厚さはa2で示される距離であり、第3ウレタン樹脂層23の厚さはa3で示される距離である。第1無機層31の厚さはb1で示される距離であり、第2無機層32の厚さはb2で示される距離である。各層の厚さは10点の位置における厚さの平均値とする。
【0015】
被覆粒状肥料について、層数xのウレタン樹脂層の厚さの合計値は、好ましくは10~100μmであり、より好ましくは15~80μmである。被覆粒状肥料について、層数yの無機層の厚さの合計値は、好ましくは1~30μmであり、より好ましくは2~25μmである。
【0016】
被覆粒状肥料について、粒状肥料10の粒径(D50)は特に限定されるものではないが、通常は0.1~15mmであり、好ましくは2~5mmであり、より好ましくは2~4mmである。これらは篩いを用いることにより、前記範囲内で任意の粒径を選択することができる。また該粒状肥料の形状は球状、角状、円柱状いずれでもかまわないが、球状に近いものが好ましい。なお、本明細書において、粒状肥料の粒径は、投影面積円相当最大径の個数基準のメディアン径(D50)を意味し、投影面積円相当最大径は顕微鏡法で測定される値とする。
【0017】
被覆粒状肥料の粒径は特に限定されるものではないが、通常粒径は0.1~15mmの範囲である。なお、本明細書において、被覆粒状肥料の粒径は、投影面積円相当最大径の個数基準のメディアン径(D50)を意味し、投影面積円相当最大径は顕微鏡法で測定される値とする。
【0018】
<ウレタン樹脂層>
ウレタン樹脂層はウレタン樹脂を含む。ウレタン樹脂層に用いられるウレタン樹脂は、好ましくはポリイソシアネート成分とポリオール成分との重合物である。
【0019】
ポリイソシアネート成分としては、芳香族ポリイソシアネートを含むことが望ましい。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略称することがある)、トルエンジイソシアネート(以下、TDIと略称することがある)、キシリレンジイソシアネート(以下、XDIと略称することがある)、トリジンイソシアネート(以下、TODIと略称することがある)、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(以下、TMXDIと略称することがある)、ナフタレンジイソシアネート(以下、NDIと略称することがある)、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートを挙げることができ、必要に応じてこれらの混合物を用いることができる。この中でも、ベンゼン環やナフタレン環を有する芳香族ポリイソシアネート化合物が好ましく、一層優れた徐放性能が得られる観点からは、イソシアネート基を有するベンゼン環を2以上有する芳香族ポリイソシアネートが好ましい。このような芳香族ポリイソシアネートにおいて、各ベンゼン環に直接結合しているイソシアネート基の数は1つであってよく、2つ以上であってもよい。このような芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、MDI、TDIまたはこれらから誘導されるオリゴマー体(ポリメリックMDI、ポリメリックTDI等)が好適に用いられる。
【0020】
ポリイソシアネート成分に占める芳香族ポリイソシアネートの割合は、一層優れた徐放性能が得られる観点からは、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。また、ウレタン樹脂中のポリイソシアネート成分の割合は、10~50質量%以上が好ましく、15~40質量%以上がより好ましい。
【0021】
ポリオール成分としては、例えば、ポリメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリル酸ポリオール、ヒマシ油等の脂肪酸エステル、ポリカーボネートポリオール並びに天然ポリオール及びその変性物等が挙げられ、これらのポリオール成分のうち1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、ポリオール成分として、脂肪族ポリエステルポリオールとポリメチレングリコールとを組み合わせて用いてもよい。これらのポリオール成分が有する水酸基の数は、2個以上であれば限定されることはなく、例えば3個であってもよい。
【0022】
ウレタン樹脂の原料として用いられるポリイソシアネート成分が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである場合、原料において、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との合計量に対して、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートは通常10~49質量%の範囲が好ましい。
【0023】
ウレタン樹脂の原料において、ポリオール成分における水酸基のモル数と、ポリイソシアネート成分におけるイソシアネート基のモル数との比率は、好ましくは1:0.9~1:1.3であり、より好ましくは1:1~1:1.2である。
【0024】
ポリオール成分は、好ましくは脂肪族ポリエステルポリオールを含む。ポリオール成分における脂肪族ポリエステルポリオールの合計含有量は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上である。
【0025】
脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば分子の何れかの末端が下記の式(1)又は式(2)の構造である脂肪族ポリエステルポリオールが挙げられる。
-[O-C(=O)-CHR-(CH)]-OH (1)
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、pは0~9の整数を表し、mは1以上の整数を表す。〕
-[O-C(=O)-Q-C(=O)-O-(CH)]-OH (2)
〔式中、Qは炭素数1~10アルキレン基を表し、rは2~10の整数を表し、nは1以上の整数を表す。〕
【0026】
分子の何れかの末端が式(1)の構造である脂肪族ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子ポリオールにラクチドモノマー又はラクトンモノマーを開環重合させることにより得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。ラクトンモノマーとしては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロ
ラクトン等が挙げられる。
【0027】
分子の何れかの末端が式(2)の構造である脂肪族ポリエステルポリオールとしては、
例えば、低分子ジオールとジカルボン酸とを縮重合させることにより得られる縮合系ポリエステルポリオールが挙げられる。そのような縮合系ポリエステルポリオールとしては、具体的にはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等の低分子ポリオールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸とを縮重合させることにより得られるものが挙げられる。
【0028】
脂肪族ポリエステルポリオールは、式(1)又は式(2)で示される末端構造を1分子中に2~3個有するポリエステルポリオール、即ち水酸基をポリエステルポリオール1分子当り2~3個の割合で有するポリエステルポリオールであることが好ましい。またポリエステルポリオールは、平均分子量が200~5000の範囲であることが好ましい。尚、本発明において複数種の化合物を含む混合物における平均分子量は、数平均分子量を意味する。ポリマーにおける数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、末端基定量法等の一般的な方法によって求めることができる。
【0029】
ポリエステルポリオールは、低分子ポリオールとε-カプロラクトンを開環重合させることにより得られるポリカプロラクトンポリオールであってもよい。ポリカプロラクトンポリオールは1分子中に(1-オキソヘキサ-1,6-ジイル)オキシ構造(-C(=O)-CH-CH-CH-CH-CH-O-)を1以上有するポリオールである。ポリカプロラクトンポリオールは、出発原料として用いる低分子ポリオールの種類およびε‐カプロラクトンの重合度により、得られるポリカプロラクトンポリオールの種類が異なる。1分子中の水酸基の数が2又は3個であるポリカプロラクトンポリオール(ポリカプロラクトンジオール又はポリカプロラクトントリオール)の典型的な構造を下記の式(3)及び式(4)に示す。
【0030】


〔上記の式中、mは0以上の整数、nは1以上の整数、Rは2価の有機残基(例えば、
エチレン基、テトラメチレン基等)を表す。〕
【0031】


〔上記の式中、mおよびpは0以上の整数、nは1以上の整数、Rは3価の有機残基(例えば、プロパン-1,2,3-トリイル基等)を表す。〕
【0032】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、(株)ダイセル製の「Placcel 205」、「Placcel 303」、「Placcel 305」、「Placcel 308」、「Placcel 309」、「Placcel 312」、「Placcel 320」等が例示される。
【0033】
(ヒマシ油)
ポリオール成分は、好ましくはヒマシ油を含む。ヒマシ油とはリシノレイン酸のトリグリセリドを主成分とする脂肪酸エステルであり、本明細書においては、ヒマシ油はリシノレイン酸の一部又は全部が12-ヒドロキシステアリン酸に置き換わった脂肪酸エステルも包含する。ポリオール成分としてヒマシ油を含む場合、ポリオール成分中のヒマシ油の含有量は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~40質量%である。
【0034】
(その他の成分)
ウレタン樹脂層はウレタン樹脂以外の成分を含んでいてもよい。ウレタン樹脂以外の成分としては、触媒、抗菌剤、着色剤、ワックス等が挙げられる。
【0035】
<無機層>
無機層は無機粒子を含む。無機粒子を構成する無機化合物の種類は適宜選択することができるため限定されるものではないが、例えば、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)、アルミナ-シリカ複合酸化物、TiO、SnO、BaTiO、ZrO、酸化鉄、雲母状酸化鉄、スズ-インジウム酸化物(ITO)などの酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶;タルク、クレー、モンモリロナイト、粘土、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ジルコニア、ジルコン、ベントナイト、マイカ(雲母)、珪灰石、方解石などの鉱物資源由来物質またはそれらの人造物などを使用することができる。なお、2種類以上の無機化合物を併用して無機粒子を調製する場合、2種類以上の無機化合物を混合して無機粒子を調製する、あるいは、一方の無機化合物をもう一方の無機化合物で被覆して無機粒子を調製することができる。無機粒子としては、取扱性や入手性の観点から、タルクが好ましく用いられる。
【0036】
使用する無機粒子の形状は限定されるものではなく、例えば、球状(略球状や真球状)、繊維状、針状(例えば、テトラポット状など)、平板状、多面体形状、羽毛状、不定形形状などから適宜選択することができる。無機粒子の粒子径は、例えば0.4~50μmであり、好ましくは0.5~30μmである。なお、本明細書において、無機粒子の粒子径は、体積基準のメディアン径(D50)を意味し、例えば、レーザ回折式粒子径測定装置(Mastersizer 3000、Malvern Analytical社製)を用いて、レーザー回折法により測定される。
【0037】
<粒状肥料>
粒状肥料は、肥料成分を含有する。粒状肥料は、肥料成分そのものが単独で造粒されたものであってもよく、また、肥料成分を担体に保持させた粒状物であってもよい。
【0038】
かかる肥料成分としては、例えば、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石灰窒素、ホルムアルデヒド加工尿素(UF)、アセトアルデヒド加工尿素(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素(IBDU)及びグアニール尿素(GU)等の窒素質肥料成分;過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン、腐植酸リン、焼成リン、重焼リン、苦土過リン酸、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム及び塩リン安等のリン酸質肥料成分;塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム及びリン酸カリウム等のカリウム質肥料成分;珪酸カルシウム等の珪酸質肥料成分;硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウム等のマグネシウム質肥料成分;生石灰、消石灰及び炭酸カルシウム等のカルシウム質肥料成分;硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン及び鉱さいマンガン等のマンガン質肥料成分;ホウ酸及びホウ酸塩等のホウ素質肥料成分;並びに、鉄鋼スラグ等の含鉄肥料成分が挙げられ、これらの肥料成分は1種を単独で用いてもよく、また2種以上の肥料成分を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
肥料成分を保持させるために用いられる担体としては、例えば、カオリナイト等のカオリン鉱物、モンモリロナイト、スメクタイト、タルク、蝋石、シリカ、含水珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ゼオライト及び酸性白土等の鉱物質担体;セルロース、籾殻、澱粉及び大豆粉等の植物質担体;乳糖、蔗糖、デキストリン、食塩及びトリポリリン酸ナトリウム等の水溶性担体;アジピン酸ジデシル、綿実油及びパーム油等の液体担体等が挙げられ、これらの担体は、肥料成分を保持した粒状物ができる形態であれば、単独で用いられてもよく、また2種以上の担体を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本実施形態に用いられる肥料成分を含有する粒状肥料は、通常の粒状物の造粒方法により肥料成分そのものを単独造粒するか、肥料成分と担体とを混合して造粒することにより得られる。かかる造粒方法としては例えば、押出造粒法、流動層式造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法、パン造粒法、被覆造粒法及び吸着造粒法が挙げられる。
【0041】
<保護層>
本実施形態の被覆粒状肥料は、最外層に保護層をさらに有していてもよい。保護層を有することにより、散布時の機械強度が改善され、かつ肥料成分の溶出期間をより長くすることができる。保護層は、抗菌剤や植物硬化油を含むことができる。抗菌剤としては例えば25℃における水溶解度が1000ppm以下である抗菌剤が挙げられ、具体的には例えば、3-ヨード-2-プロパルギルブチルカルバミン酸、2,3,3-トリヨードアリルアルコール、1-ブロム-3-エトキシカルボニルオキシ-1,2-ジヨード-1-プロ
ペン、ジヨードメチル-p-トリルスルホン及び4-クロルフェノキシ-(3-ヨードプロパギル)オキシメタン等の有機ヨウ素化合物、並びに、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン化合物が挙げられる。
【0042】
植物硬化油とは、不飽和脂肪酸成分を含む植物性油脂に水素を添加して不飽和結合を飽和させて得られる油脂であり、具体的には例えば、硬化ナタネ油、硬化パーム核油、硬化ピーナツ油、硬化ヒマシ油、硬化ホホバ油、硬化綿実油、硬化ヤシ油及び硬化大豆油が挙げられる。
【0043】
保護層は、粒状肥料の表面にウレタン樹脂層と無機層とが設けられた被覆粒状肥料に対して、抗菌剤と植物硬化油とを別々に被覆することによって形成できる。また抗菌剤と植物硬化油を予め混合し、該混合物を用いて、粒状肥料の表面に被覆層が設けられた粒状物を被覆することにより形成することが、抗菌剤と植物硬化油との均一分散性や、製造効率の点から好ましく、前記した粒状肥料を流動状態又は転動状態により被覆層を形成した後、該流動状態又は該転動状態を維持したまま、次いで、抗菌剤と植物硬化油と被覆させることが好ましく、抗菌剤と植物硬化油とは混合して、溶液または均一な分散液の状態で同時に被覆させることがより好ましい。
【0044】
保護層における抗菌剤と植物硬化油との含有割合は質量比で、通常0.5:99.5~10:90であり、好ましくは1:99~5:95である。本実施形態の被覆粒状肥料全量に対する保護層の含有量は、通常0.1~10質量%、好ましくは2~10質量%である。
【0045】
保護層は、さらに固結防止材や浮上防止材のようなその他の成分を含むことができる。固結防止材や浮上防止材は、抗菌剤や植物硬化油を含む保護層の外側に添加してもよい。固結防止材としては、具体的には例えば、クレーが挙げられる。浮上防止材としては、具体的には例えば、直鎖ベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0046】
<製造方法>
本実施形態において、被覆粒状肥料の製造方法は、粒状肥料をポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含む組成物で被覆する工程と、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを重合させて第1ウレタン樹脂層を形成する工程と、第1ウレタン樹脂層の外側に第1無機層を形成する工程とを有する。例えば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分、そして必要により触媒とを混合して未硬化ウレタン樹脂を作製し、これを流動状態又は転動状態にある被覆対象の粒状肥料に添加することにより、粒状肥料を未硬化ポリウレタン樹脂で被覆することができる。
【0047】
ここで使用する触媒としては、例えば、酢酸カリ、酢酸カルシウム、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジクロライド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチオチン酸、オクチル酸第一チン、ジ-n-オクチルチンジラウレート、イソプロピルチタネート、ビスマス2-エチルヘキサノエート、ホスフィン、Znネオデカノエート等の有機金属、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルジドデシルアミン、N-ドデシルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-エチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、テトラブチルチタネート、オキシイソプロピルバナデート、n-プロピルジルコネート、2,4,6‐トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジアザビシクロノネン(DBN)等のアミン触媒が挙げられる。
【0048】
粒状肥料を流動状態又は転動状態とする装置としては、加温された空気が下方から送風される噴流塔装置、加温装置が付設された回転パンまたはドラム装置等の公知の装置が使用可能である。未硬化ウレタン樹脂の添加方法としては、各成分を混合した後にすばやく添加するか、各成分を別々に添加する方法のいずれでもよい。その後、粒状肥料の流動状態又は転動状態を維持して、ポリイソシアネート成分におけるイソシアネート基とポリオール成分における水酸基との反応を進行させ、粒状肥料の表面の未硬化ウレタン樹脂を重合させて第1ウレタン樹脂層を形成する。このときの反応温度としては通常0~200℃の範囲であり、好ましくは50~150℃の範囲である。この一回の操作にて形成されるウレタン樹脂層の厚みが通常0.1~20μmとなるように、添加する未硬化ウレタン樹脂の添加量を調整するのが好ましい。第1ウレタン樹脂層の厚みが更に必要である場合は、上記の操作を繰り返すことにより、第1ウレタン樹脂層の厚みを増加させればよい。
【0049】
次に、第1ウレタン樹脂層を最表面に有する粒状肥料を被覆対象として、第1ウレタン樹脂層の外側に第1無機層を形成する。第1無機層は、第1ウレタン樹脂層の形成と同様に、被覆対象の粒状肥料を流動状態又は転動状態として、ここに無機粒子を添加することにより形成することができる。この時の温度としては通常0~150℃、好ましくは20~100℃の範囲である。無機層の断面における無機粒子の面積比率は、無機層を形成するときに用いられる無機層形成材料中の無機粒子の含有比率に等しいとみなすことができる。無機粒子の含有比率が50質量%以上の材料を用いて形成された層は無機層とみなすことができる。
【0050】
上記の第1ウレタン樹脂層と同様の方法によりウレタン樹脂層を形成する工程と、第1無機層と同様の方法により無機層を形成する工程とを交互に繰り返すことにより、所望の数のウレタン樹脂層と無機層とを形成することができる。
【0051】
また、60~130℃の範囲に加熱溶融した抗菌剤と植物硬化油の混合物を添加して、加熱条件下で転動状態を維持することにより、保護層を形成することができる。
【0052】
更に、固結防止材と浮上防止材を添加して、加熱条件下で転動状態を維持することにより、保護層の外側に固結防止材と浮上防止材を粉衣することができる。
【0053】
被覆層全量に対するウレタン樹脂層の総含有量は、好ましくは50~95質量%、より好ましくは50~90質量%である。被覆層全量に対する無機層の総含有量は、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%である。本実施形態の被覆粒状肥料において、被覆粒状肥料全量に対する被覆層の含有量は、好ましくは3~30質量%であり、より好ましくは5~25質量%である。
【実施例0054】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0055】
実施例1~12はウレタン樹脂層と無機層とが交互に形成された被覆層を備える被覆粒状肥料であり、比較例1~7は、無機粒子を分散させたウレタン樹脂からなる被覆層を備える被覆粒状肥料とした。ウレタン樹脂層の形成に用いられるウレタン樹脂材料は、下記に示すポリイソシアネート成分とポリオール成分とを用いた。ウレタン樹脂層に添加する無機粒子、又は無機層の形成に用いられる無機粒子は、下記に示す無機粒子を用いた。
【0056】
[ポリイソシアネート成分]
MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「Sumidur44S」、住化コベストロウレタン(株)製)
[ポリオール成分]
PEP1:「エチレングリコール/アジピン酸」の縮合体(「ニッポラン4002」、東ソー(株)製、平均分子量1000)
PEP2:「メチルペンタンジオール/アジピン酸」の縮合体(「P-510」、クラレ(株)製、平均分子量500)
PEP3:「ブタンジオール/アジピン酸」の縮合体(「ニッポラン4009」、東ソー(株)製、平均分子量1000)
PEP4:「ヘキサンジオール/アジピン酸」の縮合体(「ニッポラン164」、東ソー(株)製、平均分子量1000)
PEP5:「ヘキサンジオール/セバシン酸」の縮合体(「URIC SE-2606」、伊藤製油(株)製、平均分子量2600)
PEP6:直鎖ポリカプロラクトン(「Placcel 212」、ダイセル化学工業社製)
PEP7:ポリエステルポリオール(「URIC H-62」、伊藤製油(株)製)
ヒマシ油:ヒマシ油(工業用一号ヒマシ油、豊国製油(株)製)
[無機粒子]
タルクa:タルク(「ミクロエースP-2」、日本タルク(株)製、粒子径7μm)
タルクb:タルク(「SG-95」、日本タルク(株)製、粒子径2.1μm)
タルクc:タルク(「ミクロエースP-3」、日本タルク(株)製、粒子径5μm)
タルクd:タルク(「MS-P」、日本タルク(株)製、粒子径14μm)
タルクe:タルク(「ミクロエースL-1」、日本タルク(株)製、粒子径5μm)
タルクf:タルク(「ミクロエースP-4」、日本タルク(株)製、粒子径4.5μm)
【0057】
[実施例1]
ポリエステルポリオール成分であるPEP1(21.9部)とPEP2(27.3部)とを70℃にて加熱溶融し、70℃に加温したヒマシ油(23.0部)と混合し、ポリオール混合物を得た。粒状尿素[大粒尿素、粒径(D50)約3mm](1000部)を回転槽に仕込み、転動状態にして、該粒状尿素を熱風により約70℃まで加熱した後、流動パラフィン[(株)MORESCO製、商品名:モレスコホワイトP-350P](10.0部)を添加し、5分間転動状態を継続した。(以下、操作Aと称する。)
【0058】
次に、70℃に加温した前述のポリオール混合物と70℃に加温したMDI(27.8部)を素早く攪拌混合した未硬化ウレタンを添加し、8分間以上、加熱条件下で転動状態を維持した。更に、未硬化ウレタンの添加、及び加熱条件下での転動状態の維持を繰り返して、添加した未硬化ウレタンの総量が50.0部になるまで行った。これにより、第1ウレタン樹脂層を得た。(以下、操作1と称する。)
【0059】
次に、タルクa(10.0部)を添加し、4分間以上、加熱条件下で転動状態を維持した。これにより、第1ウレタン樹脂層の表面に第1無機層を得た。(以下、操作2と称する。)
【0060】
次に、添加した未硬化ウレタンの総量を40.0部とした点以外は、操作1と同様にして、第1無機層の表面に第2ウレタン樹脂層を得た。それを室温付近まで冷却し、実施例1の被覆粒状肥料を得た。上記において、第1ウレタン樹脂層の形成の際に添加した未硬化ウレタンの総量50.0部、第1無機層の形成の際に添加したタルクaの10.0部、第2ウレタン樹脂層の形成の際に添加した未硬化ウレタンの総量40.0部は、いずれも粒状尿素の質量を1000部とした場合の質量を意味する。以下においても、特に断りがない限り、「部」で表記する未硬化ウレタンの添加量、および無機粒子の添加量は、粒状尿素の質量を1000部とした場合の質量を意味する。
【0061】
[実施例2]
実施例1と同様にして操作Aを行った。添加した未硬化ウレタンの総量を20.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、また、実施例1と同様にして操作2を行い、更に、添加した未硬化ウレタンの総量を30.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第1ウレタン樹脂層、第1無機層及び第2ウレタン樹脂層を得た。
次に、実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を30.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第2無機層及び第3ウレタン樹脂層を得た。それを室温付近まで冷却し、実施例2の被覆粒状肥料を得た。
【0062】
[実施例3]
実施例1と同様にして操作Aを行った。添加した未硬化ウレタンの総量を20.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、また、実施例1と同様にして操作2を行い、更に、添加した未硬化ウレタンの総量を20.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第1ウレタン樹脂層、第1無機層及び第2ウレタン樹脂層を得た。
次に、実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第2無機層及び第3ウレタン樹脂層を得た。
次に、実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を20.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第3無機層及び第4ウレタン樹脂層を得た。それを室温付近まで冷却し、実施例3の被覆粒状肥料を得た。
【0063】
[実施例4]
実施例1と同様にして操作Aを行った。添加した未硬化ウレタンの総量を20.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、また、実施例1と同様にして操作2を行い、更に、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第1ウレタン樹脂層、第1無機層及び第2ウレタン樹脂層を得た。
次に、実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第2無機層及び第3ウレタン樹脂層を得た。
次に、実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第3無機層及び第4ウレタン樹脂層を得た。
次に、実施例1と同様にして操作2を行い、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第4無機層及び第5ウレタン樹脂層を得た。それを室温付近まで冷却し、実施例4の被覆粒状肥料を得た。
【0064】
[実施例5]
実施例1と同様にして操作Aを行った。添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、また、実施例1と同様にして操作2を行い、更に、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第1ウレタン樹脂層、第1無機層及び第2ウレタン樹脂層を得た。
次に、実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第2無機層及び第3ウレタン樹脂層を得た。
次に、実施例1と同様にして操作2を行い、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外点は実施例1と同様にして操作1を行い、第3無機層及び第4ウレタン樹脂層を得た。
次に、実施例1と同様にして操作2を行い、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第4無機層及び第5ウレタン樹脂層を得た。
次に、実施例1と同様にして操作2を行い、第5無機層を得た。それを室温付近まで冷却し、実施例5の被覆粒状肥料を得た。
【0065】
[実施例6]
実施例1と同様にして操作Aを行った。添加した未硬化ウレタンの総量を20.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、また、使用したタルクの総量を5.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、更に、添加した未硬化ウレタンの総量を20.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第1ウレタン樹脂層、第1無機層及び第2ウレタン樹脂層を得た。
次に、使用したタルクの総量を5.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第2無機層及び第3ウレタン樹脂層を得た。
次に、使用したタルクの総量を5.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第3無機層及び第4ウレタン樹脂層を得た。
次に、使用したタルクの総量を5.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、添加した未硬化ウレタンの総量を20.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第4無機層及び第5ウレタン樹脂層を得た。それを室温付近まで冷却し、実施例6の被覆粒状肥料を得た。
【0066】
[実施例7]
実施例1と同様にして操作Aを行った。添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、また、使用したタルクの総量を2.86部とした点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、更に、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第1ウレタン樹脂層、第1無機層及び第2ウレタン樹脂層を得た。
次に、使用したタルクの総量を2.86部とした点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第2無機層及び第3ウレタン樹脂層を得た。
次に、使用したタルクの総量を2.86部とした点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第3無機層及び第4ウレタン樹脂層を得た。
次に、使用したタルクの総量を2.86部とした点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第4無機層及び第5ウレタン樹脂層を得た。
次に、使用したタルクの総量を2.86部とした点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第5無機層及び第6ウレタン樹脂層を得た。
次に、使用したタルクの総量を2.86部とした点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第6無機層及び第7ウレタン樹脂層を得た。
次に、使用したタルクの総量を2.86部とした点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、添加した未硬化ウレタンの総量を10.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第7無機層及び第8ウレタン樹脂層を得た。それを室温付近まで冷却し、実施例7の被覆粒状肥料を得た。
【0067】
[実施例8]
実施例1と同様にして操作Aを行った。添加した未硬化ウレタンの総量を20.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、また、タルクb(10.0部)を使用した点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、更に、添加した未硬化ウレタンの総量を30.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第1ウレタン樹脂層、第1無機層及び第2ウレタン樹脂層を得た。
次に、タルクb(10.0部)を使用した点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を30.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第2無機層及び第3ウレタン樹脂層を得た。それを室温付近まで冷却し、実施例8の被覆粒状肥料を得た。
【0068】
[実施例9]
実施例1と同様にして操作Aを行った。添加した未硬化ウレタンの総量を20.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、また、タルクc(10.0部)を使用した点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、更に、添加した未硬化ウレタンの総量を30.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第1ウレタン樹脂層、第1無機層及び第2ウレタン樹脂層を得た。
次に、タルクc(10.0部)を使用した点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を30.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第2無機層及び第3ウレタン樹脂層を得た。それを室温付近まで冷却し、実施例9の被覆粒状肥料を得た。
【0069】
[実施例10]
実施例1と同様にして操作Aを行った。添加した未硬化ウレタンの総量を20.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、また、タルクd(10.0部)を使用した点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、更に、添加した未硬化ウレタンの総量を30.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第1ウレタン樹脂層、第1無機層及び第2ウレタン樹脂層を得た。
次に、タルクd(10.0部)を使用した点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を30.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第2無機層及び第3ウレタン樹脂層を得た。それを室温付近まで冷却し、実施例10の被覆粒状肥料を得た。
【0070】
[実施例11]
ジアザビシクロノネン(DBN)0.025部をポリオール混合物中に混合した以外は実施例1と同様にして操作Aを行った。添加した未硬化ウレタンの総量を30.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、また、タルクe(10.0部)を使用した点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、更に、添加した未硬化ウレタンの総量を40.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第1ウレタン樹脂層、第1無機層及び第2ウレタン樹脂層を得た。
次に、タルクe(10.0部)を使用した点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を30.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第2無機層及び第3ウレタン樹脂層を得た。それを室温付近まで冷却し、実施例11の被覆粒状肥料を得た。
【0071】
[実施例12]
ジアザビシクロノネン(DBN)0.025部をポリオール混合物中に混合した以外は実施例1と同様にして操作Aを行った。添加した未硬化ウレタンの総量を26.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、また、タルクe(10.0部)を使用した点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、更に、添加した未硬化ウレタンの総量を39.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第1ウレタン樹脂層、第1無機層及び第2ウレタン樹脂層を得た。
次に、タルクe(10.0部)を使用した点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を39.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第2無機層及び第3ウレタン樹脂層を得た。
次に、タルクe(10.0部)を使用した点以外は実施例1と同様にして操作2を行い、また、添加した未硬化ウレタンの総量を26.0部とした点以外は実施例1と同様にして操作1を行い、第3無機層及び第4ウレタン樹脂層を得た。それを室温付近まで冷却した。
次に、105℃に加熱溶融したヒマシ硬化油[(株)伊藤製油製]と2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[(株)住化エンバイロメンタルサイエンス製]を30:1の質量比で混合した混合物を31.0部添加し、3分間以上、加熱条件下で転動状態を維持して保護層を得た。それを室温付近まで冷却した。
次に、直鎖ベンゼンスルホン酸ナトリウム[竹本油脂(株)製、商品名:ニューカルゲン SX-C]3.0部を添加して、3分間以上、加熱条件下で転動状態を維持することにより、保護層の外側に浮上防止材を粉衣した。それを室温付近まで冷却し、実施例12の被覆粒状肥料を得た。
【0072】
[実施例13~23]
実施例13~23では、それぞれ実施例1~11と同様にして、各ウレタン樹脂層及び無機層を得る。
次に、105℃に加熱溶融したヒマシ硬化油[(株)伊藤製油製]と2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[(株)住化エンバイロメンタルサイエンス製]を30:1の質量比で混合した混合物を31.0部添加し、3分間以上、加熱条件下で転動状態を維持して保護層を得る。それを室温付近まで冷却し、実施例13~23の被覆粒状肥料をそれぞれ得る。
【0073】
[実施例24~34]
実施例24~34では、それぞれ実施例13~23と同様にして、各ウレタン樹脂層、無機層、及び保護層を得る。
次に、直鎖ベンゼンスルホン酸ナトリウム[ライオン(株)製、商品名:ライポン PS―260]3.0部とケイ酸アルミニウム[近江鉱業(株)製、商品名:特雪Bクレー]7.0部の混合物を添加して、3分間以上、加熱条件下で転動状態を維持することにより、保護層の外側に固結防止材と浮上防止材を粉衣する。それを室温付近まで冷却し、実施例24~34の被覆粒状肥料を得る。
【0074】
[実施例35~51]
操作Aにおいて、ポリオール混合物として表3に記載の成分を表3に記載の質量部で用いた点、及び操作1において、MDIを表3に記載の質量部で用いた点以外は実施例34と同様にして、実施例35~51の被覆粒状肥料を得る。
【0075】
[実施例52~69]
実施例52~69では、それぞれ実施例34~51の保護層の製造時に、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンを用いない以外は実施例34~51と同様にして、実施例52~69の被覆粒状肥料を得る。
【0076】
[実施例70~105]
実施例70~105では、それぞれ実施例34~69の操作2において、タルクa(10.0部)を使用する以外は実施例34~69と同様にして、実施例70~105の被覆粒状肥料を得る。
【0077】
[実施例106~187]
実施例106~187では、それぞれ実施例24~105の保護層の製造後、ケイ酸アルミニウムを用いない以外は、実施例24~105と同様にして、実施例106~187の被覆粒状肥料を得る。
【0078】
[比較例1~7]
ウレタン樹脂層形成の際に、未硬化ウレタンに加えて表2に記載のタルクを表2に記載の質量部で添加した点以外は、実施例1と同様にして、タルクが分散したウレタン樹脂層を有する、比較例1~7の被覆粒状肥料を得た。図3は、比較例1~7の被覆粒状肥料を模式的に示す断面図である。被覆粒状肥料4は、粒状肥料10と、粒状肥料10を被覆するウレタン樹脂層40を有する。被覆粒状肥料4において、ウレタン樹脂層40は、タルク41が分散した層である。被覆粒状肥料4において、被覆層はタルクが分散したウレタン樹脂層40から構成される。
【0079】
[評価]
<溶出期間の測定>
サンプル瓶に、供試する被覆粒状肥料2.5g(60~80粒)を入れて、ここに水100mlを加え、25℃で静置した。7日ごとに、サンプル瓶中の水0.6mlを取り、尿素濃度を測定した。測定した尿素濃度に基づき供試した被覆粒状肥料からの尿素の溶出率を計算した。溶出率が80%を超えている場合には、そのデータが得られたサンプルのインキュベート日数の一の位を四捨五入した日数を溶出期間とした。測定された溶出期間を表1及び表2に示す。
【0080】
表1及び表2に示す「ウレタン樹脂層形成材料を100部とする」とは、ウレタン樹脂層の形成に用いられた材料の合計含有量を100部とするという意味である。すなわち、実施例1~12ではウレタン樹脂層の形成に用いられたのは「ウレタン樹脂材料」のみであることから「ウレタン樹脂材料」の合計含有量を意味し、比較例1~7ではウレタン樹脂層の形成に用いられた「ウレタン樹脂材料」と「無機粒子」であることから「ウレタン樹脂材料」と「無機粒子」の合計含有量を意味する。実施例12では、ポリオール混合物中にジアザビシクロノネン(DBN)を添加して「未硬化ウレタン」を準備した。このように未硬化ウレタン中にポリオール混合物以外の添加物を含む場合には、添加物を含む質量を「ウレタン樹脂材料」の質量とする。また、表1及び表2に示す「無機層形成材料」とは、無機層の形成に用いられた材料を意味し、実施例1~12では無機層の形成に用いられたのは「無機粒子」のみであることから「無機粒子」の合計含有量を意味する。
【0081】
表1及び表2においては、「ウレタン樹脂材料の合計含有量」と「タルクの合計含有量」について、粒状尿素の質量を100部とした場合の値を表す。ここで、「ウレタン樹脂材料の合計含有量」は被覆層の形成に用いられたウレタン樹脂材料のみの合計含有量であり、「タルクの合計含有量」は被覆層の形成に用いられたタルクのみの合計含有量であり、ウレタン樹脂層の形成に用いられたタルクと無機層の形成に用いられたタルクの合計含有量を意味する。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
図1
図2
図3