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特開2024-132946研磨用組成物、研磨方法、および半導体基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132946
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】研磨用組成物、研磨方法、および半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20240920BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20240920BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240920BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20240920BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035117
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2023039984
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】前 僚太
(72)【発明者】
【氏名】熊山 あかね
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158BA09
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED04
3C158ED05
3C158ED10
3C158ED16
3C158ED23
3C158ED26
3C158ED28
5F057AA28
5F057BA15
5F057BB19
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA22
5F057EA26
5F057EA28
5F057EA32
(57)【要約】
【課題】Low-k材料および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨することができ、かつ窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の選択比を適度なものとすることができる手段を提供する。
【解決手段】砥粒と、第四級ホスホニウム塩と、を含有し、pHが7.0未満であり、研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は-10mV以下である、研磨用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と、
第四級ホスホニウム塩と、
を含有し、pHが7.0未満であり、
研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は-10mV以下である、研磨用組成物。
【請求項2】
前記第四級ホスホニウム塩は、リン原子に結合する置換または非置換のアリール基およびリン原子に結合する置換または非置換のアルキル基の少なくとも一方を有する、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記第四級ホスホニウム塩は、リン原子に結合する置換または非置換のアルキル基を有する、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記第四級ホスホニウム塩は、テトラアルキルホスホニウムカチオンを有し、前記テトラアルキルホスホニウムカチオンが有するアルキル基の最大の炭素数は、2以上10以下である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記第四級ホスホニウム塩は、テトラn-ブチルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラエチルホスホニウムブロミドの少なくとも一方である、請求項4に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
前記砥粒は、アニオン変性コロイダルシリカである、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
pH調整剤をさらに含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
分散媒をさらに含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項9】
前記研磨用組成物中の酸化剤の濃度は、100質量ppm未満である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項10】
前記研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は、-40mV以上-15mV以下である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項11】
Low-k材料および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する用途で使用される、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項12】
前記Low-k材料は、SiOCである、請求項11に記載の研磨用組成物。
【請求項13】
前記窒化ケイ素の研磨速度に対する前記Low-k材料の研磨速度の比(Low-k材料/窒化ケイ素)が1.0以上2.0以下である、請求項11に記載の研磨用組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて、Low-k材料および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法。
【請求項15】
Low-k材料および窒化ケイ素を含む半導体基板を、請求項14に記載の研磨方法により研磨する工程を有する、半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、研磨方法、および半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI(Large Scale Integration)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(chemical mechanical polishing;CMP)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線(ダマシン配線)形成において頻繁に利用される技術である。
【0003】
多層配線形成工程における層間絶縁膜の材料として、配線間容量を抑えるために、低誘電率(Low-k)材料が採用されつつある。プラズマCVD法により形成されるSiOC(SiOにCをドープした、炭素含有酸化ケイ素)は、低誘電率(Low-k)材料として広く採用されている。
【0004】
SiOCを研磨するための技術として、特許文献1には、セリウムを含む砥粒と、ヒドロキシアルキルセルロースとを含有し、pHが6.0以上である研磨用組成物が開示されている。特許文献1によれば、このような構成とすることにより、SiOCの研磨速度を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-139349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近、SiOCに代表されるLow-k材料とSi(窒化ケイ素)とを共に含む基板が用いられるようになってきている。このような基板において、Low-k材料および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨しながら、適度な研磨速度の選択比(例えば、Low-k材料の研磨速度/Siの研磨速度=1.0以上2.0以下)で研磨するという要求が高まってきている。しかしながら、特許文献1に記載の研磨用組成物によると、かような要求を満足しないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、Low-k材料および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨することができ、かつ窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の選択比を適度なものとすることができる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、砥粒と、第四級ホスホニウム塩と、を含有し、pHが7.0未満であり、研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は-10mV以下である、研磨用組成物によって上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、Low-k材料および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨することができ、かつ窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の選択比を適度なものとすることができる手段が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、砥粒と、第四級ホスホニウム塩と、を含有し、pHが7.0未満であり、研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は-10mV以下である、研磨用組成物が提供される。かような本発明の研磨用組成物によれば、Low-k材料および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨することができ、かつ窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の選択比を適度なもの(例えば、Low-k材料の研磨速度/Siの研磨速度=1.0以上2.0以下)とすることができる。
【0011】
なぜ、本発明の研磨用組成物により、上記効果が得られるのか、詳細は不明であるが、以下のようなメカニズムであると考えられる。なお、当該メカニズムは推測によるものであり、本発明の技術的範囲が当該メカニズムにより制限されるものではない。
【0012】
Low-k材料の表面は一般に疎水性であるが、有機基を有する第四級ホスホニウム塩はLow-k材料に吸着しやすい。Low-k材料の表面のゼータ電位は、酸性条件下では0に近くなっているが、第四級ホスホニウム塩が吸着したLow-k材料の表面のゼータ電位は、正(プラス)に転ずる。これにより、-10mV以下という負のゼータ電位を有する砥粒が、ゼータ電位が正であるLow-k材料の表面により接触しやすくなり、砥粒の接触頻度が高まり研磨速度が高くなる。また、第四級ホスホニウム塩は、窒化ケイ素の表面にはあまり吸着せず、高い研磨速度を維持することができる。その結果、Low-k材料および窒化ケイ素の研磨速度が高くなり、かつ窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の選択比を適度な選択比(例えば、Low-k材料の研磨速度/Siの研磨速度=1.0以上2.0以下)とすることができる。
【0013】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態のみには限定されず、特許請求の範囲内で種々改変することができる。本明細書に記載される実施形態は、任意に組み合わせることにより、他の実施形態とすることができる。本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0014】
[砥粒]
本発明に係る研磨用組成物は、砥粒を含む。該砥粒は、研磨対象物を機械的に研磨する作用を有し、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度を向上させる。
【0015】
本発明の研磨用組成物において、砥粒は、-10mV以下のゼータ電位を有する。ここで、「ゼータ(ζ)電位」とは、互いに接している固体と液体とが相対運動を行なったときの両者の界面に生じる電位差のことである。砥粒のゼータ電位が-10mVを超える場合、Low-k材料および窒化ケイ素の研磨速度が低下する。
【0016】
本発明の研磨用組成物において、砥粒のゼータ電位は、-60mV以上-10mV以下であることが好ましく、-50mV以上-10mV以下であることがより好ましく、-45mV以上-15mV以下であることがさらに好ましく、-40mV以上-15mV以下であることが特に好ましい。砥粒がこのような範囲のゼータ電位を有していることにより、研磨対象物の研磨速度をより向上させることができる。ここで、研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位は、実施例に記載の方法により測定される値である。また、砥粒のゼータ電位は、下記で説明する砥粒が有するアニオン性基(特には有機酸基)の量、研磨用組成物のpH等により調整することができる。
【0017】
砥粒の種類としては、特に制限されず、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物が挙げられる。該砥粒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。該砥粒は、それぞれ市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0018】
砥粒の種類としては、好ましくはシリカであり、より好ましくはコロイダルシリカである。コロイダルシリカの製造方法としては、ケイ酸ソーダ法、ゾルゲル法が挙げられ、いずれの製造方法で製造されたコロイダルシリカであっても、本発明の砥粒として好適に用いられる。しかしながら、金属不純物低減の観点から、高純度で製造できるゾルゲル法により製造されたコロイダルシリカが好ましい。
【0019】
ゾルゲル法によるコロイダルシリカの製造は、従来公知の手法を用いて行うことができ、具体的には、加水分解可能なケイ素化合物(例えば、アルコキシシランまたはその誘導体)を原料とし、加水分解・縮合反応を行うことにより、コロイダルシリカを得ることができる。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、研磨用組成物中に含まれるコロイダルシリカは、好ましくはアニオン変性コロイダルシリカ(アニオン修飾コロイダルシリカ)であり、より好ましくは有機酸を表面に固定化したコロイダルシリカである。有機酸を表面に固定化したコロイダルシリカは、有機酸が固定化されていない通常のコロイダルシリカに比べて、研磨用組成物中でのゼータ電位の絶対値が大きい傾向がある。そのため、研磨用組成物中におけるコロイダルシリカのゼータ電位を負(例えば、-40mV以上-15mV以下の範囲)に調整しやすい。
【0021】
有機酸を表面に固定化したコロイダルシリカとしては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルミン酸基等の有機酸基を表面に固定化したコロイダルシリカが好ましく挙げられる。これらのうち、容易に製造できるという観点からスルホン酸、カルボン酸を表面に固定化したコロイダルシリカであるのが好ましく、スルホン酸を表面に固定化したコロイダルシリカであるのがより好ましい。
【0022】
コロイダルシリカの表面への有機酸の固定化は、コロイダルシリカと有機酸とを単に共存させただけでは果たされない。例えば、有機酸の一種であるスルホン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”, Chem. Commun. 246-247 (2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸を表面に固定化したコロイダルシリカ(スルホン酸変性コロイダルシリカ、スルホン酸修飾コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0023】
あるいは、有機酸の一種であるカルボン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”, Chemistry Letters, 3, 228-229 (2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2-ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸を表面に固定化したコロイダルシリカ(カルボン酸変性コロイダルシリカ、カルボン酸修飾コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0024】
砥粒の形状は、特に制限されず、球形状であってもよいし、非球形状であってもよい。非球形状の具体例としては、三角柱や四角柱などの多角柱状、円柱状、円柱の中央部が端部よりも膨らんだ俵状、円盤の中央部が貫通しているドーナツ状、板状、中央部にくびれを有するいわゆる繭型形状、複数の粒子が一体化しているいわゆる会合型球形状、表面に複数の突起を有するいわゆる金平糖形状、ラグビーボール形状等、種々の形状が挙げられ、特に制限されない。
【0025】
砥粒の大きさは特に制限されない。例えば、砥粒の平均一次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましく、12nm以上が特に好ましい。砥粒の平均一次粒子径が大きくなるにつれて、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度が向上する。また、砥粒の平均一次粒子径は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、20nm以下であることが特に好ましい。砥粒の平均一次粒子径が小さくなるにつれて、研磨用組成物を用いた研磨により欠陥が少ない表面を得ることが容易になる。すなわち、砥粒の平均一次粒子径は、5nm以上100nm以下であることが好ましく、8nm以上50nm以下であることがより好ましく、10nm以上30nm以下であることがさらに好ましく、12nm以上20nm以下であることが特に好ましい。なお、砥粒の平均一次粒子径は、例えば、BET法から算出した砥粒の比表面積(SA)を基に、砥粒の形状が真球であると仮定して算出することができる。本明細書では、砥粒の平均一次粒子径は、実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
【0026】
また、砥粒の平均二次粒子径は、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましく、25nm以上であることが特に好ましい。砥粒の平均二次粒子径が大きくなるにつれて、研磨中の抵抗が小さくなり、安定的に研磨が可能になる。また、砥粒の平均二次粒子径は、400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましく、50nm以下であることが最も好ましい。砥粒の平均二次粒子径が小さくなるにつれて、砥粒の単位質量当たりの表面積が大きくなり、研磨対象物との接触頻度が向上し、研磨速度がより向上する。すなわち、砥粒の平均二次粒子径は、10nm以上400nm以下であることが好ましく、15nm以上300nm以下であることがより好ましく、20nm以上200nm以下であることがさらに好ましく、25nm以上100nm以下であることが特に好ましく、25nm以上50nm以下であることが特に好ましい。なお、砥粒の平均二次粒子径は、例えばレーザー回折散乱法に代表される動的光散乱法により測定することができる。
【0027】
砥粒の平均会合度は、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましく、2.5以下であることが特に好ましい。砥粒の平均会合度が小さくなるにつれて、欠陥をより低減することができる。砥粒の平均会合度はまた、1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。この平均会合度とは、砥粒の平均二次粒子径の値を平均一次粒子径の値で除することにより得られる。砥粒の平均会合度が大きくなるにつれて、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度が向上する有利な効果がある。
【0028】
研磨用組成物中の砥粒のアスペクト比の上限は、特に制限されないが、2.0未満であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、研磨対象物表面の欠陥をより低減することができる。なお、アスペクト比は、走査型電子顕微鏡により砥粒粒子の画像に外接する最小の長方形をとり、その長方形の長辺の長さを同じ長方形の短辺の長さで除することにより得られる値の平均であり、一般的な画像解析ソフトウェアを用いて求めることができる。研磨用組成物中の砥粒のアスペクト比の下限は、特に制限されないが、1.0以上であることが好ましく、1.2以上がより好ましい。
【0029】
砥粒のレーザー回折散乱法により求められる粒度分布において、微粒子側から積算粒子質量が全粒子質量の90%に達するときの粒子の直径(D90)と全粒子の全粒子質量の10%に達するときの粒子の直径(D10)との比であるD90/D10の下限は、特に制限されないが、1.1以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましく、1.7以上であることがさらに好ましく、2.0以上であることが最も好ましい。また、研磨用組成物中の砥粒における、レーザー回折散乱法により求められる粒度分布において、微粒子側から積算粒子質量が全粒子質量の90%に達するときの粒子の直径(D90)と全粒子の全粒子質量の10%に達するときの粒子の直径(D10)との比D90/D10の上限は特に制限されないが、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましい。このような範囲であれば、研磨対象物表面の欠陥をより低減することができる。
【0030】
砥粒の大きさ(平均一次粒子径、平均二次粒子径、アスペクト比、D90/D10等)は、砥粒の製造方法の選択等により適切に制御することができる。
【0031】
砥粒の濃度(含有量)は特に制限されないが、研磨用組成物の総質量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%を超えることがさらにより好ましく、1.5質量%以上であることが特に好ましい。また、砥粒の濃度(含有量)の上限は、研磨用組成物の総質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。すなわち、砥粒の濃度(含有量)は、研磨用組成物の総質量に対して、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.8質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上15質量%以下、さらにより好ましくは1質量%を超えて10質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以上5質量%以下である。このような範囲であれば、コストを抑えながら、研磨速度を向上させることができる。なお、研磨用組成物が2種以上の砥粒を含む場合には、砥粒の濃度(含有量)は、これらの合計量を意味する。
【0032】
[第四級ホスホニウム塩]
本発明に係る研磨用組成物は、第四級ホスホニウム塩を含有する。上述したように、第四級ホスホニウム塩は、Low-k材料の表面のゼータ電位を正に転ずる効果を有し、Low-k材料の研磨速度を向上させ得る。
【0033】
本発明の効果がより向上するという観点から、本発明に係る第四級ホスホニウム塩は、リン原子に結合する置換または非置換のアリール基およびリン原子に結合する置換または非置換のアルキル基の少なくとも一方を有することが好ましい。当該アリール基およびアルキル基が有し得る置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルシリル基、脂肪族複素環基、アリール基、アルキル基等が挙げられる。なお、リン原子に結合するアルキル基は、アルキル基で置換されることはない。
【0034】
リン原子に結合するアリール基は、特に制限されず、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、テトラセニル基、フェナントリル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、ビフェニル基等の炭素数6~20のアリール基が挙げられる。
【0035】
リン原子に結合するアルキル基は、特に制限されず、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ドデシル基、イソドデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、2-エチルヘキシル基、4-ブチルオクチル基等の炭素数1~20の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~20の環状のアルキル基(シクロアルキル基)等が挙げられる。
【0036】
第四級ホスホニウム塩のさらに具体的な例としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムフルオリド、テトラブチルホスホニウムフルオリド、メチルトリフェニルホスホニウムフルオリド、エチルトリフェニルホスホニウムフルオリド、プロピルトリフェニルホスホニウムフルオリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムフルオリド、ドデシルトリフェニルホスホニウムフルオリド、ヘキサデシルトリ(n-ブチル)ホスホニウムフルオリド、テトラデシルトリフェニルホスホニウムフルオリド;
テトラn-ブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、エチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、プロピルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド;
テトラn-ブチルホスホニウムアセタート、エチルトリフェニルホスホニウムアセタート、テトラメチルホスホニウムアセタート;
テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルファート;
ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、(4-クロロベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(2-クロロベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニル(2-クロロベンジル)ホスホニウムクロリド、(クロロメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(2,4-ジクロロベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(1-ナフチルメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、テトラn-ブチルホスホニウムクロリド、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムクロリド;
アミルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド、(ブロモメチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、3-ブロモプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、シクロプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ヘプチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロミド、(2-ヒドロキシベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、(4-ニトロベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラn-オクチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、トリ(n-ブチル)ドデシルホスホニウムブロミド、トリ(n-ブチル)ヘキサデシルホスホニウムブロミド、トリ(n-ブチル)n-オクチルホスホニウムブロミド、トリフェニルプロピルホスホニウムブロミド、トリフェニル(テトラデシル)ホスホニウムブロミド;
エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、イソプロピルトリフェニルホスホニウムヨージド、メチルトリフェニルホスホニウムヨージド、テトラフェニルホスホニウムヨージド、トリ(n-ブチル)メチルホスホニウムヨージド;
ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボラート、μ-オキソ-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム]ビス(テトラフルオロボラート)、テトラn-ブチルホスホニウムベンゾトリアゾラート、テトラエチルホスホニウムテトラフルオロボラート、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルファート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボラート、トリブチル(2-メトキシエチル)ホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボラート、トリシクロヘキシルホスホニウムテトラフルオロボラート、アセトニルトリフェニルホスホニウムクロリド、アリルトリフェニルホスホニウムクロリド、trans-2-ブテン-1,4-ビス(トリフェニルホスホニウムクロリド)、(シアノメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(ホルミルメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、トリブチル(シアノメチル)ホスホニウムクロリド、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド、アリルトリフェニルホスホニウムブロミド、(4-カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(3-カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウムブロミド、シンナミルトリフェニルホスホニウムブロミド、(3,4-ジメトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド、2-ジメチルアミノエチルトリフェニルホスホニウムブロミド、2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、(1,3-ジオキソラン-2-イル)メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、4-エトキシベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド、メトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド、フェナシルトリフェニルホスホニウムブロミド、トリブチル(1,3-ジオキソラン-2-イルメチル)ホスホニウムブロミド、(3-トリメチルシリル-2-プロピニル)トリフェニルホスホニウムブロミド、トリフェニルプロパルギルホスホニウムブロミド、トリフェニルビニルホスホニウムブロミド、(N-メチル-N-フェニルアミノ)トリフェニルホスホニウムヨージド、(2-トリメチルシリルエチル)トリフェニルホスホニウムヨージド;
等が挙げられる。これら第四級ホスホニウム塩は、1種単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。また、第四級ホスホニウム塩は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0037】
これらの第四級ホスホニウム塩の中でも、リン原子に結合する置換または非置換の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を有する化合物が好ましい。より好ましくは、リン原子に結合する4つの有機基がすべてアルキル基であるテトラアルキルホスホニウムカチオンを有する化合物である。当該アルキル基は、直鎖状であることがさらに好ましい。当該テトラアルキルホスホニウムカチオンが有するアルキル基の最大の炭素数は、2以上10以下であることが特に好ましい。アルキル基の最大の炭素数がこの範囲であれば、Low-k材料への第四級ホスホニウム塩の吸着が適度なものとなり、Low-k材料表面のゼータ電位を正に転ずる効果が効率よく発揮され、所望の効果がより発揮される。
【0038】
テトラアルキルホスホニウムカチオンが有するアルキル基の最大の炭素数が1の場合、Low-k材料への吸着が起こりにくく、Low-k材料の研磨速度が向上し難い場合がある。
【0039】
テトラアルキルホスホニウムカチオンが有するアルキル基の最大の炭素数が10を超える場合、窒化ケイ素の表面に吸着しやすくなり、窒化ケイ素の保護膜のように作用し、窒化ケイ素の研磨速度が低下する場合がある。また、砥粒の凝集を引き起こす場合がある。
【0040】
以上の点から、本発明で用いられる第四級ホスホニウム塩は、テトラn-ブチルホスホニウムフルオリド、テトラn-ブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラn-ブチルホスホニウムアセタート、テトラn-ブチルホスホニウムクロリド、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラn-オクチルホスホニウムブロミド、トリ(n-ブチル)n-オクチルホスホニウムブロミド、トリ(n-ブチル)メチルホスホニウムヨージド、テトラn-ブチルホスホニウムベンゾトリアゾラート、テトラエチルホスホニウムテトラフルオロボラートがさらに好ましく、テトラn-ブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムブロミド、およびテトラn-オクチルホスホニウムブロミドからなる群より選択される少なくとも1種がさらにより好ましい。当該第四級ホスホニウム塩は、テトラn-ブチルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラエチルホスホニウムブロミドの少なくとも一方が特に好ましい。
【0041】
研磨用組成物中の第四級ホスホニウム塩の濃度(含有量)の下限は、0.001質量%(10質量ppm)以上であることが好ましく、0.005質量%(50質量ppm)以上であることがより好ましく、0.01質量%(100質量ppm)以上であることがさらに好ましい。また、研磨用組成物中の第四級ホスホニウム塩の濃度(含有量)の上限は、1質量%(10000質量ppm)以下であることが好ましく、0.5質量%(5000質量ppm)以下であることがより好ましく、0.3質量%(3000質量ppm)以下であることがさらに好ましく、0.1質量%(1000質量ppm)以下であることが特に好ましい。すなわち、研磨用組成物中の第四級ホスホニウム塩の濃度(含有量)は、0.001質量%(10質量ppm)以上1質量%(10000質量ppm)以下であることが好ましく、0.005質量%(50質量ppm)以上0.5質量%(5000質量ppm)以下であることがより好ましく、0.01質量%(100質量ppm)以上0.3質量%(3000質量ppm)以下であることがさらに好ましく、0.01質量%(100質量ppm)以上0.1質量%(1000質量ppm)以下であることが特に好ましい。
【0042】
なお、研磨用組成物が2種以上の第四級ホスホニウム塩を含む場合、第四級ホスホニウム塩の濃度(含有量)は、これらの合計量を意味する。
【0043】
[pHおよびpH調整剤]
本発明に係る研磨用組成物のpHは、7.0未満である。pHが7.0以上の場合、特に窒化ケイ素の研磨速度が低くなり、本発明の所望の効果を得ることができない。当該pHは、1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。また、当該pHは、6.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、4.5以下であることがさらに好ましい。すなわち、本発明に係る研磨用組成物のpHは、1.0以上6.0以下であることが好ましく、1.5以上5.0以下であることがより好ましく、2.0以上4.5以下であることがさらに好ましい。
【0044】
本発明に係る研磨用組成物は、pHを調整するためのpH調整剤を含むことが好ましい。pH調整剤は酸および塩基のいずれであってもよく、また、無機化合物および有機化合物のいずれであってもよい。pH調整剤は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0045】
pH調整剤として使用できる酸の具体例としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、およびリン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ジグリコール酸、2-フランカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、3-フランカルボン酸、2-テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸、およびフェノキシ酢酸等の有機酸が挙げられる。
【0046】
pH調整剤として使用できる塩基としては、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン、水酸化第四級アンモニウム等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、第2族元素の水酸化物、およびアンモニア等が挙げられる。
【0047】
pH調整剤の添加量は、特に制限されず、研磨用組成物が所望のpHとなるように適宜調整すればよい。また、研磨用組成物のpHは、例えばpHメーターにより測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0048】
[分散媒]
本発明に係る研磨用組成物は、分散媒をさらに含むことが好ましい。分散媒の例としては、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類等や、これらの混合物等が例示できる。これらのうち、分散媒としては水が好ましい。すなわち、本発明のより好ましい形態によると、分散媒は水を含む。本発明のさらに好ましい形態によると、分散媒は実質的に水からなる。なお、上記の「実質的に」とは、本発明の目的効果が達成され得る限りにおいて、水以外の分散媒が含まれ得ることを意図し、より具体的には、好ましくは90質量%以上100質量%以下の水と0質量%以上10質量%以下の水以外の分散媒とからなり、より好ましくは99質量%以上100質量%以下の水と0質量%以上1質量%以下の水以外の分散媒とからなる。最も好ましくは、分散媒は水である。
【0049】
研磨用組成物に含まれる成分の作用を阻害しないようにするという観点から、分散媒としては、不純物をできる限り含有しない水が好ましく、具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後、フィルターを通して異物を除去した純水や超純水、または蒸留水がより好ましい。
【0050】
[研磨用組成物の電気伝導度]
本発明に係る研磨用組成物の電気伝導度(EC)は、特に制限されないが、1mS/cm以上であることが好ましく、1.5mS/cm以上であることがより好ましい。また、本発明に係る研磨用組成物の電気伝導度(EC)は、20mS/cm以下であることが好ましく、15mS/cm以下であることがより好ましい。すなわち、本発明に係る研磨用組成物の電気伝導度(EC)は、1mS/cm以上20mS/cm以下であることが好ましく、1.5mS/cm以上15mS/cm以下であることがより好ましい。研磨用組成物の電気伝導度(EC)がこのような範囲であれば、Low-k材料および窒化ケイ素の研磨速度を高く維持でき、また、砥粒同士の反発を適切に調整し、安定性を確保することができる。研磨用組成物の電気伝導度は、pH調整剤等の種類および量等により調整することができ、電気伝導度の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
【0051】
[他の成分]
本発明の研磨用組成物は、必要に応じて、水溶性高分子、錯化剤、金属防食剤、防腐剤、防カビ剤、酸化剤、還元剤、界面活性剤等の研磨用組成物に用いられ得る公知の添加剤をさらに含有してもよい。これらの中でも、研磨用組成物は、防カビ剤を含むことが好ましい。本発明に係る研磨用組成物は、酸性である。このため、研磨用組成物は、防カビ剤を含むことがより好ましい。すなわち、本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、砥粒、第四級ホスホニウム塩、分散媒、ならびにpH調整剤および防カビ剤の少なくとも一方から実質的に構成される。ここで、「研磨用組成物が、砥粒、第四級ホスホニウム塩、分散媒、ならびにpH調整剤および防カビ剤の少なくとも一方から実質的に構成される」とは、砥粒、第四級ホスホニウム塩、分散媒、ならびにpH調整剤および防カビ剤の少なくとも一方の合計含有量が、研磨用組成物の総質量に対して、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意図する。好ましくは、研磨用組成物は、砥粒、第四級ホスホニウム塩、分散媒、pH調整剤、および防カビ剤から構成される(上記合計含有量=100質量%)。
【0052】
以下、好ましい他の成分である、防カビ剤(防腐剤)について説明する。また、酸化剤についても説明する。
【0053】
(防カビ剤)
本発明に係る研磨用組成物に添加し得る防カビ剤(防腐剤)としては、例えば、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンや5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、およびフェノキシエタノール等が挙げられる。これら防カビ剤(防腐剤)は、1種単独でもまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(酸化剤)
本発明に係る研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しないことが好ましい。研磨用組成物中に酸化剤が含まれていると、研磨対象物の表面を酸化して酸化膜を生じさせ、研磨時間が長くなってしまう虞がある。ここでいう酸化剤の具体例としては、過酸化水素(H)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等が挙げられる。なお、研磨用組成物が酸化剤を実質的に含有しないとは、少なくとも意図的には酸化剤を含有させないことをいう。したがって、原料や製法等に由来して微量の酸化剤が不可避的に含まれている研磨用組成物は、ここでいう酸化剤を実質的に含有しない研磨用組成物の概念に包含される。例えば、研磨用組成物中における酸化剤の濃度(含有量)は、好ましくは0.01質量%(100質量ppm)以下、より好ましくは0.01質量%(100質量ppm)未満、さらに好ましくは0.005質量%(50質量ppm)以下である。酸化剤の濃度(含有量)の下限は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.0005質量%(5質量ppm)以上である。
【0055】
[研磨用組成物の形態]
本発明に係る研磨用組成物は、典型的には研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。本発明に係る研磨用組成物は、例えば、希釈(典型的には、水により希釈)して研磨液として使用されるものでもよく、そのまま研磨液として使用されるものでもよい。すなわち、本発明に係る研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨に用いられる濃縮液(ワーキングスラリーの原液)との双方が包含される。上記濃縮液の濃縮倍率は、例えば、体積基準で2倍以上100倍以下程度とすることができ、通常は3倍以上50倍以下程度が適当である。
【0056】
[研磨対象物]
本発明に係る研磨対象物は、特に制限されず、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン(ポリシリコン)、n型またはp型不純物がドープされた多結晶シリコン、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)、n型またはp型不純物がドープされた非晶質シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素(SiCN)、金属、SiGe、炭素含有材料、低誘電率材料(Low-k材料)等が挙げられる。
【0057】
酸化ケイ素を含む研磨対象物の例としては、例えば、オルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOSタイプ酸化ケイ素膜(以下、単に「TEOS」「TEOS膜」とも称する)、HDP(High Density Plasma)膜、USG(Undoped Silicate Glass)膜、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜、BPSG(Boron-Phospho Silicate Glass)膜、RTO(Rapid Thermal Oxidation)膜等が挙げられる。
【0058】
金属としては、例えば、タングステン、銅、アルミニウム、コバルト、ハフニウム、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等が挙げられる。
【0059】
炭素含有材料としては、例えば、アモルファス炭素(アモルファスカーボン)、スピンオンカーボン(SOC)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ナノ結晶ダイヤモンド、グラフェン等のLow-k材料以外の材料が挙げられる。
【0060】
低誘電率材料(Low-k材料)は、酸化ケイ素よりも比誘電率kが低い材料であり、好ましくは比誘電率kが3.0以下の材料である。具体的には、炭化ケイ素(SiC)、炭素含有酸化ケイ素(SiOC)、メチル基を含有する酸化ケイ素、ベンゾシクロブテン(BCB)、フッ素化酸化ケイ素(SiOF)、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)、MSQ(メチルシルセスキオキサン)、HMSQ(ハイドライド-メチルシルセスキオキサン)、ポリイミド系ポリマー、アリーレンエーテル系ポリマー、シクロブテン系ポリマー、パーフロロシクロブテン(PFCB)等が挙げられる。
【0061】
研磨対象物は、市販品を用いてもよいし、または公知の方法により製造してもよい。
【0062】
これらの中でも、Low-k材料と、窒化ケイ素と、を含む研磨対象物が好ましい。よって、本発明の好ましい一実施形態によれば、研磨用組成物は、Low-k材料と、窒化ケイ素と、を含む研磨対象物を研磨する用途に用いられる。Low-k材料は、好ましくは炭素含有酸化ケイ素(SiOC)である。
【0063】
[研磨用組成物の製造方法]
本実施形態に係る研磨用組成物の製造方法は、特に制限されず、例えば、砥粒、第四級ホスホニウム塩、分散媒、および必要に応じて添加される他の添加剤を攪拌混合することにより得ることができる。各成分の詳細は上記の通りである。
【0064】
各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も、均一混合できれば特に制限されない。
【0065】
[研磨方法および半導体基板の製造方法]
上記のように、本実施形態に係る研磨用組成物は、Low-k材料および窒化ケイ素を有する研磨対象物の研磨に特に好適に用いられる。よって、本発明は、Low-k材料および窒化ケイ素と、を含む研磨対象物を、本実施形態に係る研磨用組成物で研磨する研磨方法を提供する。また、本発明は、Low-k材料および窒化ケイ素を含む半導体基板を、上記研磨方法により研磨することを有する、半導体基板の製造方法を提供する。
【0066】
研磨装置としては、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと回転数を変更可能なモーター等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
【0067】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0068】
研磨条件については、例えば、研磨定盤(プラテン)およびキャリア(ヘッド)の回転速度は、10rpm(0.17s-1)以上500rpm(8.33s-1)以下が好ましい。研磨対象物を有する基板にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.45kPa)以上10psi(68.9kPa)以下が好ましい。
【0069】
研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明に係る研磨用組成物で覆われていることが好ましい。
【0070】
本実施形態に係る研磨用組成物は、一液型であってもよいし、二液型をはじめとする多液型であってもよい。また、本発明に係る研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水等の希釈液を使って、例えば3倍以上に希釈することによって調製されてもよい。
【0071】
[研磨速度]
上記したように、本発明に係る研磨用組成物は、Low-k材料および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨することができる。
【0072】
本発明において、Low-k材料の研磨速度は、300Å/min以上であることが好ましく、400Å/min以上であることがより好ましく、450Å/min以上であることがさらに好ましい。また、窒化ケイ素の研磨速度は、300Å/min以上であることが好ましく、330Å/min以上であることがより好ましく、360Å/min以上であることがさらに好ましい。
【0073】
[選択比]
上記したように、本発明に係る研磨用組成物は、窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の比(選択比)を適切な範囲に制御することができる。
【0074】
本発明において、窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の比(Low-k材料/窒化ケイ素)は、1.0以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましい。また、窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の比(Low-k材料/窒化ケイ素)は、2.0以下であることが好ましく、1.9以下であることがより好ましく、1.7以下であることがさらに好ましい。すなわち、当該選択比は、1.0以上2.0以下であってもよく、1.0以上1.9以下であってもよく、1.0以上1.7以下であってもよい。また、当該選択比は、1.1以上2.0以下であってもよく、1.1以上1.9以下であってもよく、1.1以上1.7以下であってもよい。当該選択比が上記範囲を外れる場合、最終的に得られる研磨済研磨対象物の表面状態が劣る場合がある。
【0075】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【0076】
本発明は、下記態様および形態を包含する。
1.砥粒と、第四級ホスホニウム塩と、を含有し、pHが7.0未満であり、研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は-10mV以下である、研磨用組成物;
2.前記第四級ホスホニウム塩は、リン原子に結合する置換または非置換のアリール基およびリン原子に結合する置換または非置換のアルキル基の少なくとも一方を有する、上記1.に記載の研磨用組成物;
3.前記第四級ホスホニウム塩は、リン原子に結合する置換または非置換のアルキル基を有する、上記1.または2.に記載の研磨用組成物;
4.前記第四級ホスホニウム塩は、テトラアルキルホスホニウムカチオンを有し、前記テトラアルキルホスホニウムカチオンが有するアルキル基の最大の炭素数は、2以上10以下である、上記1.~3.のいずれかに記載の研磨用組成物;
5.前記第四級ホスホニウム塩は、テトラn-ブチルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラエチルホスホニウムブロミドの少なくとも一方である、上記1.~4.のいずれかに記載の研磨用組成物;
6.前記砥粒は、アニオン変性コロイダルシリカである、上記1.~5.のいずれかに記載の研磨用組成物;
7.pH調整剤をさらに含む、上記1.~6.のいずれかに記載の研磨用組成物;
8.分散媒をさらに含む、上記1.~7.のいずれかに記載の研磨用組成物;
9.前記研磨用組成物中の酸化剤の濃度は、100質量ppm未満である、上記1.~8.のいずれかに記載の研磨用組成物;
10.前記研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は、-40mV以上-15mV以下である、上記1.~9.のいずれかに記載の研磨用組成物;
11.Low-k材料および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する用途で使用される、上記1.~10.のいずれかに記載の研磨用組成物;
12.前記Low-k材料は、SiOCである、上記11.に記載の研磨用組成物;
13.前記窒化ケイ素の研磨速度に対する前記Low-k材料の研磨速度の比(Low-k材料/窒化ケイ素)が1.0以上2.0以下である、上記11.または12.に記載の研磨用組成物;
14.上記1.~13.のいずれかに記載の研磨用組成物を用いて、Low-k材料および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法;
15.Low-k材料および窒化ケイ素を含む半導体基板を、上記14.に記載の研磨方法により研磨する工程を有する、半導体基板の製造方法。
【実施例0077】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件下で行われた。なお、各物性は以下のようにして測定を行った。
【0078】
<砥粒の平均二次粒子径>
砥粒の平均二次粒子径は、動的光散乱式粒子径・粒度分布装置 UPA-UT151(日機装株式会社製)により、体積平均粒子径(体積基準の算術平均径;Mv)として測定した。
【0079】
<砥粒のゼータ電位>
研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位は、大塚電子株式会社製のゼータ電位測定装置(機器名「ELS-Z2」)を用いて測定した。
【0080】
<研磨用組成物のpH>
研磨用組成物のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、型番:LAQUA)により測定した。
【0081】
<研磨用組成物の電気伝導度>
研磨用組成物の電気伝導度(EC)は、卓上型電気伝導度計(株式会社堀場製作所製、型番:DS-71 LAQUA(登録商標))により測定した。
【0082】
<スルホン酸固定化コロイダルシリカ>
[製造例1]
以下の手順に従い、砥粒としてのスルホン酸修飾シリカ粒子(表面修飾シリカ1)を得た。
【0083】
(原料コロイダルシリカ分散液(非修飾シリカ粒子)の調製工程)
フラスコ内でメタノール4080g、水610gおよび29質量%アンモニア水溶液168gを混合し、液温を20℃に保ち、そこにメタノール135gとテトラメトキシシラン(TMOS)508gとの混合液を滴下時間25分で滴下した。その後、pH7以上の条件下で熱濃縮水置換を行い、19.5質量%のシリカゾルを1000g得た(平均二次粒子径:34nm)。
【0084】
(表面修飾工程)
続いて、上記で得られたシリカゾル1000g(シリカ固形分換算で195g)に対して、別途メタノール4.8gと混合した3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS、シランカップリング剤、製品名:KBM-803、信越化学工業株式会社製)1.2g(シリカ固形分の総質量に対するシランカップリング剤濃度:0.6質量%)を流速1mL/minで滴下した。その後加熱し、沸騰後3時間純水置換を行った。
【0085】
次いで、放冷のため、上記反応液を一晩静置し、30質量%過酸化水素水0.0343g(シランカップリング剤1モルに対して3モル)を加え、再び沸騰させた。その後、2時間純水置換を行った後、室温(25℃)まで冷却して、スルホン酸変性コロイダルシリカ(表面修飾シリカ1)を得た。
【0086】
[製造例2]
上記製造例1の(表面修飾工程)の項において、シランカップリング剤としての3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)の添加量を0.12g(シリカ固形分の総質量に対するシランカップリング剤濃度:0.06質量%)に変更したことを除いては、上記の製造例1と同様の手順でスルホン酸変性コロイダルシリカ(表面修飾シリカ2)を得た。
【0087】
(実施例1)
<研磨用組成物の調製>
分散媒としての水に対して、砥粒であるスルホン酸変性コロイダルシリカ(表面修飾シリカ1、平均二次粒子径:34nm)を、最終濃度が2質量%となるように加えた。さらに、テトラn-オクチルホスホニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)を、最終濃度が200質量ppmとなるように加え、攪拌混合を行った(攪拌温度:25℃、攪拌時間:20分)。硝酸を用いて研磨用組成物のpHを2.5に調整し、研磨用組成物を完成させた。
【0088】
(実施例2)
テトラn-オクチルホスホニウムブロミドの代わりに、テトラn-ブチルホスホニウムヒドロキシド(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0089】
(実施例3)
テトラn-オクチルホスホニウムブロミドの代わりに、テトラエチルホスホニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0090】
(比較例1)
第四級ホスホニウム塩を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0091】
(比較例2)
テトラn-オクチルホスホニウムブロミドの代わりに、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP、エチドロン酸、イタルマッチジャパン株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0092】
(比較例3)
砥粒を用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0093】
(比較例4)
砥粒として、上記製造例2で得られたスルホン酸変性コロイダルシリカ(表面修飾シリカ2、平均二次粒子径:34nm)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0094】
[評価]
研磨対象物(基板)として、300mmウェーハ(SiOC膜、アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製、製品名:BD2x 5kA Blanket)と、300mmウェーハ(Si(窒化ケイ素膜)、アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製、製品名:LP-SiN 3.5KA Blanket)とを、それぞれ60mm×60mmのチップに切断したクーポンを試験片とした。
【0095】
上記で得られた研磨用組成物を用いて、この準備した基板を以下の研磨条件でそれぞれ研磨し、研磨速度を測定した:
(研磨条件)
研磨機:EJ-380IN-CH(日本エンギス株式会社製)
研磨パッド:硬質ポリウレタンパッド(ニッタ・デュポン株式会社製、IC1010)
研磨圧力:2.0psi(1psi=6894.76Pa)
プラテン(定盤)回転数:60rpm
ヘッド(キャリア)回転数:60rpm
研磨用組成物の流量:100ml/min
研磨時間:30秒。
【0096】
(研磨速度)
膜厚は、光干渉式膜厚測定装置(株式会社SCREENホールディングス製、型番:ラムダエースVM-2030)によって求めて、研磨前後の膜厚の差を研磨時間で除することにより研磨速度を評価した(下記式参照)。SiOC膜およびSi膜の研磨速度は、ともに300Å/min以上が好ましい。
【0097】
【数1】
【0098】
(選択比)
選択比は、上記で得られたSiOC膜の研磨速度をSi膜(窒化ケイ素膜)の研磨速度で除することにより求めた。当該選択比は1.0以上2.0以下であることが好ましい。
【0099】
各実施例および各比較例の研磨用組成物の構成および評価結果を下記表1に示す。なお、表1中の「-」は、その剤を使用していないことを表す。
【0100】
【表1】
【0101】
上記表1から明らかなように、実施例の研磨用組成物を用いた場合、Low-k材料であるSiOCおよび窒化ケイ素の研磨速度がいずれも300Å/min以上であり、高い研磨速度が得られることがわかった。また、窒化ケイ素の研磨速度に対するSiOCの研磨速度の比(選択比)が1.0以上2.0以下となっており、適切な選択比が得られることがわかった。一方、比較例の研磨用組成物を用いた場合、SiOCの研磨速度が低く、特に比較例1および2の場合は、選択比が低下した。
【0102】
なお、上記表1は、Low-k材料(SiOC)を有する研磨対象物、および窒化ケイ素を有する研磨対象物を別々に研磨して得られた結果である。しかしながら、Low-k材料と、窒化ケイ素と、を共に有する研磨対象物を研磨した場合であっても、上記表1と同様の研磨速度および選択比の結果が得られると推測される。