(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133011
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】試験測定装置、試験測定装置の動作方法及び試験測定装置の校正方法
(51)【国際特許分類】
G01R 13/20 20060101AFI20240920BHJP
G01R 23/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01R13/20 L
G01R23/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024039977
(22)【出願日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】63/452,154
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/452,155
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/591,468
(32)【優先日】2024-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】カン・タン
(57)【要約】
【課題】マルチ・チャンネル広帯域リアルタイム・スペクトラム・アナライザを実現する。
【解決手段】試験測定装置は、夫々が入力ポート、フィルタ40及びサンプラ42を有し、被試験信号を受信する1つ以上のチャンネルと、この1つ以上のチャンネルの中の1つのサンプラに接続された2つのパイプを有し、特定のサンプル・レートで被試験信号のデジタル・サンプルを生成する少なくとも1つのアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)と、1つ以上のプロセッサとを具え、1つ以上のプロセッサが、少なくとも1つのADC44の各パイプのデジタル・サンプルのスペクトルを取得する処理と、少なくとも1つのADC44の各パイプのデジタル・サンプルのスペクトルを使用して被試験信号のスペクトルを再構築する処理とを1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々が入力ポート、フィルタ及びサンプラを有し、被試験信号を受信する1つ以上のチャンネルと、
該1つ以上のチャンネルの中の1つのチャンネルの上記サンプラに接続された2つのパイプを有し、特定のサンプル・レートで上記被試験信号のデジタル・サンプルを生成する少なくとも1つのアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)と、
1つ以上のプロセッサと
を具え、
該1つ以上のプロセッサが、
上記少なくとも1つのADCの上記パイプの夫々の上記デジタル・サンプルのスペクトラムを取得する処理と、
上記少なくとも1つのADCの上記パイプの夫々の上記デジタル・サンプルの上記スペクトラムを使用して上記被試験信号のスペクトラムを再構築する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される試験測定装置。
【請求項2】
上記フィルタは、上記試験測定装置の目標帯域幅よりも大きく、サンプル・レートよりも狭い帯域幅を有する請求項1に記載の試験測定装置。
【請求項3】
上記デジタル・サンプルの上記スペクトルを使用する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記2本のパイプのスペクトルと上記開始周波数とを組み合わせて上記スペクトルを再構築する処理を含む請求項1に記載の試験測定装置。
【請求項4】
上記2つのパイプの上記スペクトルを組み合わせる処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、
上記2つのパイプのスペクトルの低周波成分から導出された周波数を用いて第1及び第2定数を導出する処理と、
上記2つのパイプの上記スペクトルの上記第1及び第2定数と上記低周波成分とを使用する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項3に記載の試験測定装置。
【請求項5】
上記開始周波数は、上記サンプル・レートの倍数と、上記サンプル・レートの倍数からナイキスト周波数を引いたものの間にある請求項3に記載の試験測定装置。
【請求項6】
上記開始周波数は、上記サンプル・レートと、上記サンプル・レートの倍数にナイキスト周波数を加えたものの間にある請求項3に記載の試験測定装置。
【請求項7】
試験測定装置の動作方法であって、
入力ポート、フィルタ及びサンプラを有する、上記試験測定装置のチャンネルを通して被試験信号を受信する処理と、
上記チャンネルの上記サンプラに接続された2つのパイプを有するアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を用いて、特定のサンプル・レートで上記被試験信号のデジタル・サンプルを生成する処理と、
上記ADCの上記2つのパイプの上記デジタル・サンプルのスペクトルを取得する処理と、
上記ADCの上記2つのパイプの上記デジタル・サンプルの上記スペクトルを使用して、上記被試験信号のスペクトルを再構築する処理と
を具える試験測定装置の動作方法。
【請求項8】
上記デジタル・サンプルの上記スペクトルを使用する処理が、上記2つのパイプの上記スペクトルの低周波成分から導出された周波数を用いて第1及び第2定数を導出する処理と、上記2つのパイプの上記スペクトルの上記第1及び第2定数と上記低周波成分を使用する処理とを有する請求項7に記載の試験測定装置の動作方法。
【請求項9】
広帯域信号アナライザとして動作する試験測定装置を校正する方法であって、
アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)の複数のパイプの特性を評価して上記パイプ夫々の周波数応答を生成する処理と、
少なくとも1つのADCの上記パイプ夫々のデジタル・サンプルのスペクトラムを取得する処理と、
上記パイプ夫々の上記周波数応答に基づいて上記デジタル・サンプルの上記スペクトラムを調整する処理と、
上記ADC夫々の全てのパイプの上記デジタル・サンプルの調整された上記スペクトラムを使用して被試験信号のスペクトラムを再構築する処理と
を具える試験測定装置の校正方法。
【請求項10】
上記パイプの特性を評価する処理が、
バンドパス(BP)フィルタに信号を印加する処理と、
サンプラを使用して上記BPフィルタからの信号をサンプリングする処理と、
上記BPフィルタからのサンプルを上記ADCの上記パイプの夫々に供給する処理と、
上記試験測定装置を使用して、上記パイプの夫々からサンプルを取得する処理と、
上記サンプルのスペクトルを取得して上記周波数応答を求める処理と
を有する請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定装置に関し、より詳細には、リアルタイム・スペクトラム・アナライザとして動作するように構成されたリアル等価時間(real-equivalent-time)オシロスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
有線・無線通信の高速化が進んでいる。例えば、400Gb(ギガ・ビット)及び800Gbイーサネット(登録商標)は、データ・センタ向けに展開及び開発されており、「バックホール」としてワイヤレス通信をサポートしている。5Gワイヤレスは展開されつつあり、6Gワイヤレスは開発中である。5Gも6Gも、高周波帯の可能性を探っている。例えば、5Gワイヤレスは、24GHzから300GHzのミリ波周波数帯域の可能性を探り、ワイヤレス6Gは、ミリ波とサブTHz(サブ・テラ・ヘルツ)の両方の可能性を探っている。試験装置の無線周波数(RF)レンジは、最大100GHz以上必要である。従来、ミキサは、ADCがアナログ信号をサンプリングしてデジタル信号に変換するため、高いRF帯域をより低い中間周波数(IF)帯域にダウン・コンバートするために使用されていた。測定装置が、広帯域の5G、6Gワイヤレス信号を分析するには、瞬時帯域幅(IBW:instantaneous bandwidth)とも呼ばれる10GHz以上の広いIF帯域幅をサポートする必要がある。
【0003】
図1に示すように、携帯端末10は、空域内の無線チャンネル14を介して基地局12と通信する。基地局12は、有線チャンネル18(例えば、光ケーブル)を介してサーバ16に接続される。2023年10月17日発行の米国特許第11,789,051号(以下、「タン(Tan)」という)は、参照することにより、その内容が本開示に援用されるが、リアル等価時間(Real-Equivalent-Time:RET)オシロスコープと呼ばれる新しいタイプの試験測定装置を紹介している。従来のリアルタイム(RT:real-time)オシロスコープ及び等価時間(ET:equivalent-time)サンプリング・オシロスコープは、もちろんのこと、RETオシロスコープは、バックホール内の有線信号を測定するのに利用できる。テクトロニクスのRSA7100シリーズRTSAなどのリアルタイム・スペクトラム・アナライザ(RTSA:real-time spectrum analyzer)やRTオシロスコープは、従来、フロントホールのワイヤレス信号を測定してきた。1つの解決策としては、RETオシロスコープの機能を使用すれば、有線信号と無線信号の両方を測定することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第11789051号明細書
【特許文献2】特表2023-515498号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「テクトロニクス社製オシロスコープ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2024年3月13日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes>
【非特許文献2】「テクトロニクス社製スペクトラムアナライザ(スペアナ)/シグナルアナライザ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2024年3月13日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/spectrum-analyzers>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
5Gワイヤレスが展開され、6Gワイヤレスの研究開発が進行中であるのにともって、「フロントホール」RF信号を測定するためのマルチ・チャンネル広帯域リアルタイム・スペクトラム・アナライザのニーズが高まっている。400Gbイーサネット(登録商標)信号などの「バックホール」のベースバンド信号も測定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
RETオシロスコープは、56ギガ・ボー(GBaud)PAM4(4値パルス振幅変調)などの高速イーサネット(登録商標)の信号を測定する機能を備えている。本願では、マルチ・チャンネル広帯域RTSAとして動作可能なバンドパス・フィルタを備えたRETオシロスコープについて説明する。以下では、試験測定装置のRTSA部分を広帯域信号アナライザ(WSA)と呼び、リアルタイム・スペクトラム・アナライザとして機能できることを前提としている。1台の計測器でRF信号とベースバンド信号の両方を測定でき、複数のチャンネルを備えているため、必要に応じて同時に測定できる。RETオシロスコープは、リアルタイム(RT)オシロスコープと比較して、低コスト、低消費電力、軽量という利点があるため、無線(ワイヤレス)チャンネルの特性評価など、5G/6G無線システムの試験アプリケーションにとって魅力的な代替ソリューションとなっている。本願では、広いIBWと高いRFレンジの無線信号を測定するために使用できるRETオシロスコープベースの計測器について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、5G/6G無線用の有線及び無線システムの図を示す。
【
図2】
図2は、リアルタイム(RT)オシロスコープの1チャンネルの実施形態を示す。
【
図3】
図3は、WSAとして使用される4チャンネルのRET(Real-Equivalent-Time)オシロスコープの実施形態を示す。
【
図4】
図4は、WSAとして使用されるRETオシロスコープ内のサンプラとアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)のパイプの関連付けの実施形態を示す。
【
図5】
図5は、1つのアナログ・チャンネルにおけるサンプラに関連付けられたADCパイプの実施形態を示す。
【
図6】
図6は、パイプのサンプリング時間配分の実施形態を示す。
【
図7】
図7は、バンドパス・フィルタの帯域幅の制約の実施形態を示す。
【
図8】
図8は、広帯域信号アナライザ(WSA)として使用されるRETオシロスコープのスペクトル再構築プロセスの入力及び出力の実施形態を示す。
【
図9】
図9は、RF帯域の第1周波数レンジの図を示す。
【
図11】
図11は、第1周波数レンジの場合に基づくサンプルのスペクトルの図を示す。
【
図12】
図12は、第2周波数レンジの場合に基づくサンプルのスペクトルの図を示す。
【
図13】
図13は、RETオシロスコープ上でシミュレートされた、高いRF周波数レンジを示すWSAの複数のフレームを示す。
【
図14】
図14は、RETオシロスコープ上でシミュレートされた、広帯域信号アナライザ(WSA)上の2トーンの複数のフレームを示す。
【
図15】
図15は、RETオシロスコープ上でシミュレートされた、WSA上のDCを示す複数のフレームを示す。
【
図16】
図16は、RETオシロスコープ用のソフトウェア・クロック・データ・リカバリ(CDR)の実施形態を示す。
【
図17】
図17は、ADCの2つの非理想的なパイプの周波数応答を示している。
【
図18】
図18は、ADC校正なしのWSAスペクトルのフレームを示している。
【
図19】
図19は、校正を伴うスペクトル再構築のための入力及び出力の別の実施形態を示す。
【
図20】
図20は、ADCを校正した場合のWSAスペクトルの複数のフレームを示している。
【
図21】
図21は、高周波信号に関するWSAの複数のフレームを示す。
【
図22】
図22は、2トーンの信号に関するWSAの複数のフレームを示す。
【
図23】
図23は、DC成分を持つ信号のWSAの複数のフレームを示す。
【
図24】
図24は、ADCパイプの周波数応答の特性評価に用いるステップ信号の実施形態を示す。
【
図25】
図25は、掃引正弦波信号を用いたWSAの振幅周波数応答の特性評価の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
RTオシロスコープでは、そのサンプル・レートは、DCから通過帯域の最大周波数までのアナログ帯域幅をサポートするのに十分な高さである。例えば、
図2に示されるように、4つのアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)22、24、26及び28は、RTオシロスコープの複数のチャンネルの中の1つのチャンネル20をサポートする。プロセッサ(この実施形態ではフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ30及び32)の夫々は、ADCからサンプルを受信する。このチャンネルのアナログ帯域幅は、110GHzである。各ADCは、62.5GS/s(ギガ・サンプル毎秒)でサンプリングし、合計で250GS/sのサンプル・レートを実現する。250/2=125は、110より大きいため、このサンプル・レートは、ナイキスト(Nyquist)のサンプリング定理に基づいて、RTサンプリングには十分である。ナイキストのサンプリング定理では、アナログ信号のサンプラは、信号の最高周波数成分の2倍以上のサンプル・レートを持つ必要がある。
【0010】
通常、高速ADCには複数のパイプがあり、例えば、1つのADCには4つのパイプ(つまり、4象限:4 quadrants)がある。各パイプは62.5/4=15.625GS/sのレートでサンプリングする。典型的な無線通信システムでは、RFレンジよりもIBW(瞬時帯域幅)が狭くなっている。例えば、5Gワイヤレスでは、3GHzから100GHz以上のRFレンジを使用し、典型的なIBWは、10GHz未満である。この説明では、110GHzのRFレンジ内における構造(デザイン)上の目標としてIBWを設定している。様々なRF及びIBW要件による別の目標も、それに応じて構造をスケール調整することで同様に達成できる。
【0011】
図3は、110GHzのRFレンジで12.5GHzのIBWをサポートするWSA機能を可能にする構造を示す。サンプラ(42など)の夫々は、DCから110GHzまでの周波数をサポートする。サンプラは、
図2に示すサンプラのような250GS/sをサポートするトラック・アンド・ホールド・ユニットを有する。
図3の各サンプラは、RETオシロスコープの構成における1つのADC(44など)の2つのパイプに接続される。4チャンネルRETオシロスコープには、1/2×4=2個のADCが必要である。これに対し、4チャンネルRTオシロスコープには、4×4=16個のADCが必要である。その比率は、1:8である。FPGA46は、ADCのパイプからの出力を受信する。1つ以上のプロセッサ(48など)は、試験測定装置を動作させるために、必要に応じてFPGA及びチャンネルの他の部分と相互作用する。
【0012】
図4は、4つのチャンネルを示しており、各チャンネルは、WSA機能を可能するバンドパス・フィルタ(50など)を有する。バンドパス・フィルタは、選択された帯域の信号をサンプラ52に渡す。次に、サンプラは、サンプルをADCの2つのパイプ(54など)に渡す。
図5は、1つのチャンネルのより一般的なバージョンを示す。
図5のアナログ・チャンネルは、ADCmのパイプi及びi+1を利用している。
【0013】
図6は、サンプリングの時間配分を示す。本願で用いる「パイプ遅延」という用語は、サンプラnをサポートするADCm内の2つのパイプであるパイプi及びパイプi+1の間の遅延を意味する。この例では、パイプ遅延は、1/250GS/s=4ピコ秒(ps)である。本願で用いる「パイプ・サンプル周期」という用語は、各パイプのサンプル周期を意味する。この例では、パイプのサンプル周期は、1/15.625GS/s=64ピコ秒である。パイプのサンプル周期は、パイプ遅延の16倍(=64ピコ秒/4ピコ秒)に等しくなる。
【0014】
このプロセスでは、次の2つの条件に基づいてパイプ遅延とパイプのサンプル・レートが選択される。条件1では、パイプ遅延の逆数が、WSAのRFレンジの目標の2倍以上である必要がある。条件2では、パイプのサンプル・レートが、WSAのIBWの目標よりも大きい必要がある。
【0015】
この例は、両方の条件を満たしている。条件1は、1/(4ピコ秒)=250GS/s>2×110GHz(110GHzがRFレンジの目標)であるため、満たされる。条件2は、15.625GHz>12.5GHzで満たされる。このとき、12.5GHzは、IBWの目標であり、fsは、各パイプのサンプル・レートを表す。
【0016】
このプロセスでは、次の条件に基づいてバンドパス(BP)フィルタが選択される。第1に、バンドパス・フィルタの帯域幅は、WSAのIBWの目標よりも広く、パイプのサンプル・レートよりも狭くなる。BPフィルタの通過帯域[f
1
pass, f
2
pass ]は、関心の対象周波数(frequency of interest)の帯域[f
1
interest, f
2
interest ]をカバーする。周波数の制約は、数式1に記述され、
図7に示されている。
[数式1]
f
1≦f
1
stop<f
1
pass≦f
1
interest<f
2
interest≦f
2
pass<f
2
stop≦f
2=f
1+f
s
【0017】
この例では、バンドパス・フィルタの帯域幅は、対象周波数の帯域幅12.5GHzと、パイプのサンプル・レートの15.625GHzの間にある。BPフィルタは、固定フィルタ又は可変フィルタ(tunable filter)から構成しても良く、フィルタ・バンクとして構成することができる。このプロセスでは、ローパス(LP)フィルタを特殊なBPフィルタとして扱う場合がある。BPフィルタは、装置内に組み込まれたフィルタで構成されるか、装置に接続されたプローブ又はその他のアクセサリとして追加されるても良い。
【0018】
各パイプのスペクトルは、アクイジション(波形データ取得)したサンプルについてのFFTによって得ることができる。スペクトルは、f
Nyquist=f
s/2に制限される。この例では、f
s/2=15.625GS/s、f
Nyquist=7.8125GHzである。
図8に示すスペクトル再構築アルゴリズムは、2本のパイプからのスペクトルと、開始周波数とを取り込み、再構築された信号のスペクトルを出力として生成する。その出力信号には、f
sの帯域幅があり、対象周波数の帯域よりも広くなっている。出力信号のスペクトルから、プロセスは、関心の対象の周波数f
interestを選択できる。
【0019】
図7及び数式1は、f
1とf
1+f
sとの間の周波数帯域のみが、BPフィルタ段を通過して、サンプラに入ることを示し、他の周波数成分は、BPフィルタによって除去されることを示す。スペクトル再構築アルゴリズムでは、2つのケースを考慮する必要がある。
図9は、ケース1を示しており、このとき、開始周波数f
1は、以下にあるように、サンプル・レートf
sの倍数と、f
sの倍数からナイキスト(Nyquist)周波数f
Nyquistを引いたものの間にある。
[数式2]
nf
s-f
Nyquist≦f
1<nf
s
nは整数
【0020】
図10は、ケース2を示しており、このとき、開始周波数f
1は、以下にあるように、サンプル・レートf
sの倍数と、f
sの倍数にナイキスト(Nyquist)周波数f
Nyquistを足したものの間にある。
[数式3]
nf
s≦f
1<nf
s+f
Nyquist
nは整数
【0021】
ケース1及びケース2について、パイプ0及びパイプ1が信号をサンプリングすると、
図11及び
図12にそれぞれ示されるように、
図9及び
図10に示す周波数成分が、DCからf
Nyquistまでにエイリアスされる。
【0022】
ケース1の場合、
図9のnf
sを中心とするスペクトルX
2、X
3は、
図11の低周波X
lowにエイリアスされ、
図9のnf
s+f
Nyquistを中心とするスペクトルX
0、X
1は、
図11の高周波X
highにエイリアスされる。
【0023】
次の変数の定義を使用する。
D:パイプ遅延。
P0:パイプ0のサンプルのスペクトル。
P0
low:fDCとnfs-f1の間のP0の下側成分。
flow:P0
lowの周波数、ベクトルである。
P0
high:nfs-f1とfNyquistの間のP0の上側成分。
fhigh:P0
highの周波数、ベクトルである。
P1:パイプ1のサンプルのスペクトル。
P1
low:fDCとnfs-f1の間のP1の下側成分。
P1
high:nfs-f1とfNyquistの間のP1の上側成分。
【0024】
ケース1については、
図9のスペクトル・セグメントX
2及びX
3の解を導出でき、その結果は、以下のものとなる。
【数4】
complex conjugate:複素共役
【0025】
図9のスペクトル・セグメントX
0及びX
1は、以下のように導出できる。
【数5】
数式4及び数式5は、再構築された信号のスペクトルを生成する。
【0026】
ケース1と同様に、このプロセスは、ケース2の解を導き出すことができる。
【0027】
本願発明者は、DCから110GHzまで掃引した信号をシミュレートした。このシミュレーションでは、2つのトーンを12.5GHz離して、スペクトル再構築アルゴリズムの結果を示している。2つのトーン信号を掃引(sweep)すると、シミュレーションは、ケース1とケース2の両方をカバーする。この数値の例は、RETオシロスコープ・ベースのWSAが、DCから110GHzまでのRFレンジと12.5GHzのIBWをサポートしていることを示している。アナログの2トーン信号のスペクトル、2つのパイプのそれぞれのスペクトル及び再構築された信号のスペクトルがプロットされる。
【0028】
図13は、開示された実施形態の動作をよりよく例示するために、アニメーション化された掃引に基づくフレームを示す。一番上のサブプロットは、アナログ信号の振幅スペクトルとそれに対応する位相を示している。中央の2つのサブプロットは、1つのADCのパイプ0とパイプ1のスペクトルと位相を示している。一番下のサブプロットは、一番上のサブプロットに示したアナログ信号スペクトルと一致する、再構築された信号スペクトルを示している。中央の2つのサブプロットに示された2本のパイプのスペクトルは、左側に点線58として示されるf
Nyquistによって、制約されている。
【0029】
図14は、上側のサブプロットに示されている、25GHz及び37.5GHzの2つのトーンについてのシミュレーションに基づくフレームを示す。これら2つのトーンは、2つのパイプで同じ周波数(6.25GHz)にエイリアスされる。このフレームでは、振幅と位相の両方のスペクトルが2つのパイプで異なり、中央の2つのサブプロットにパイプ0とパイプ1として示されている。スペクトル再構築アルゴリズムは、下側のサブプロットに示すように、上のサブプロットに示されているスペクトルと一致するアナログ・スペクトルを復元する。
【0030】
従来のRTSAは、DCをカバーしていない。RETオシロスコープは、
図15に示すようにDCをカバーする。
【0031】
図6に戻ると、これは、2本のパイプから取得した各チャンネルのRETオシロスコープ波形サンプルを示す。パイプのサンプル周期をT
s=1/f
sと表す。2つのパイプからのサンプルをインターリーブした時間シーケンスは、次のようになる。
{0,D,T
s,T
s+D,2T
s,2T
s+D,3T
s,3T
s+D,4T
s,4T
s+D,…}
【0032】
図16に示されるソフトウェア・クロック・リカバリは、タン(Tan)の特許と同様に動作する。RETオシロスコープは、高いエイリアシングを持つサンプルを取得する。RETオシロスコープは、サンプルから得られたアイ・ダイアグラムを使用して、60において、クロックとサンプリング時間をリカバリ(復元)する。次に、オシロスコープは、リカバリ・クロックとサンプリング時間を使用して、62において、サンプルをパターン波形の適切な時間位置に再割り当てする。ソフトウェア・クロック・リカバリでは、サンプルのタイミングを再割り当てするため、プロセスは、入力サンプルの順序を入れ替える。
【0033】
手短に言えば、RETオシロスコープ・ベースのWSAは、より多くのパイプを持つ構造を持つことができる。この構造は、他の数のアナログ・チャンネルにも拡張できる。RETオシロスコープには複数のチャンネルがあるため、1台のRETオシロスコープで、フロントホールのRF信号とバックホールのベースバンド信号とを同時に試験し、時間相関のあるサンプルを取得できる。
【0034】
SFDR(スプリアス・フリー・ダイナミック・レンジ)とノイズは、WSA/RTSAの重要な要件である。RETオシロスコープ・ベースの構造は、高いSFDR性能とノイズ性能のためには校正が必要となるミキサ・ベースのRTSAよりもハードウェア部品が少ない。RET/WSA装置を使用すると、校正の複雑さが軽減される。しかし、RET/WSA装置では、1つの校正の問題が発生する。
【0035】
ここまでは、BPフィルタ、サンプラ及びADCが「理想的な」デバイスとして機能すること、つまり理想的な周波数応答を持つことを前提としてきた。しかし、電子装置が理想的なデバイスとして機能することは、ほとんどない。従って、BPフィルタ、サンプラ、ADC及びWSAは、RFレンジ全体に対して校正を受ける必要がある。以下の説明では、理解を容易にし、混乱を避けるために、2つの信号経路を表し、BPフィルタ、サンプラ及びADCパイプを含むADCの2つのパイプを使用する。
【0036】
WSAの各アナログ・チャンネルのADCの2本のパイプは理想的ではなく、それらの不整合を補正する必要がある。この不整合(ミスマッチ)の校正は、スプリアスによって生じる相互変調歪み(IMD)を低減し、信号のスペクトラムをより正確にリカバリするのに有益である。校正は、2つのADCパイプの特性評価に依存している。特性評価プロセスでは、ステップ信号又はパルス信号を使用して、2つのパイプの周波数応答の特性を評価し、オプションで掃引正弦波を使用して振幅応答の特性をより正確に評価する。校正を伴う信号のスペクトル再構築プロセスを示すために、数値の例を提供する。
【0037】
上記の説明は、
図2のもののように、2つが、理想的な周波数応答を有する完全に整合したパイプであれば、完全な信号のスペクトルの再構築をもたらすことを示している。
【0038】
しかし、2つの不整合なパイプでは、周波数応答が異なる。例えば、
図17は、2本のパイプについての周波数応答H0及びH1を示している。パイプ0は、周波数が高くなるとパイプ1よりも減衰が大きくなる。また、どちらのパイプも平坦でない振幅の周波数応答を持っている。
【0039】
このWSAチャンネルに2トーンのアナログ信号を供給すると、2つのパイプからのエイリアスされたトーンは、振幅が異なる。例えば、このシミュレーションは、各パイプのサンプルが15.625GS/sとなるように構成され、2つのパイプ間の遅延は、上記の
図6に示すように4ピコ秒(ps)である。
【0040】
図18に示すように、90GHzにおける入力信号のトーンは、-6.021dBの大きさを有し、両パイプにおいて3.75GHzにエイリアスされる。パイプ0のトーンの振幅は-7.960dB、パイプ1のトーンの振幅は-7.635dBである。
図7で上述したスペクトル再構築アルゴリズムは、4つのトーンを生成する。2つのトーンは、90GHzと102.5GHzの正しい周波数にあるが、振幅が小さく、90GHzのトーンの振幅は、入力信号トーンの-6.021dBではなく、-8.462dBである。再構築アルゴリズムは、一番下のサブプロットに示す2つの追加のトーンを生成し、これらはIMD(相互変調歪み)を構成する。
【0041】
2つのパイプの不整合と非理想的な周波数応答は、3つの問題を引き起こする。まず、2つのパイプの不整合が、IMDを引き起こす。これは、SFDRに悪影響を及ぼす。第2に、2つのパイプ間の不整合により、スペクトルの再構築が不正確になる。第3に、2つのパイプの周波数応答が理想的でないと、スペクトルの再構築が不正確になる。
【0042】
個々のパイプには、これら3つの問題を全て解決するのに十分なサンプル・レートがない。2本のパイプからのデータを組み合わせ、校正データを使用することにより、
図19に示すアルゴリズムは、3つの問題を解決することができる。
【0043】
なお、
図19において、f
1は、先に規定したBPフィルタの制約条件を満たす開始周波数である。この例では、バンドパス・フィルタの帯域幅は、対象周波数の帯域幅12.5GHzとパイプのサンプル・レートの15.625GHzの間にある。BPフィルタは、固定又は可変(tunable)であり、フィルタ・バンクとして構成できる。
【0044】
各パイプのスペクトルは、取得したサンプルのFFTによって取得できる。スペクトルは、f
Nyquist=f
s/2に制限される。この例では、f
s=15.625GS/sが、サンプル・レートである。f
Nyquist=7.8125GHzが、ナイキスト周波数である。
図19に示す校正されたスペクトル再構築アルゴリズムは、2本のパイプからのスペクトルと、2本のパイプの特性を表す周波数応答と、開始周波数とを取り込み、再構築された信号のスペクトルを出力信号として生成する。この出力信号は、f
sの帯域幅を有し、これは、対象周波数の帯域よりも広くなっている。このスペクトル出力信号から、関心のある対象の周波数成分を選択できる。
【0045】
上述した
図7及び数式1は、f
1とf
1+f
sの間の周波数帯域のみがBPフィルタ段を通過してサンプラに入り、他の周波数成分は、BPフィルタによって除去されることを示している。数式1、2及び3に関して上述した周波数応答が整合している理想的な複数のADCパイプに適用されるプロセスは、ケース1とケース2で繰り返される。このプロセスは、校正を反映して数式4と数式5をアップデートし、数式6と数式7になる。
【0046】
次の表記を利用する。
D:パイプ遅延。
P0:パイプ0のサンプルのスペクトル。
P0
low:fDCとnfs-f1の間のP0の下側成分。
flow:P0
lowの周波数、ベクトルである。
flow
RfLow:X2の周波数、次のように定義されるベクトルである。
flow
RfLow=nfs-flow
flow
RfHigh:X3の周波数、次のように定義されるベクトルである。
flow
RfHigh=nfs+flow
H0:パイプ0の周波数応答。DCを含む全RFレンジをカバーしている。
H0
LC:flow
RfLowにおけるH0の複素共役。
H0
LB:flow
RfHighにおけるH0。
H1:パイプ1の周波数応答。DCを含む全RFレンジをカバーしている。
H1
LC:flow
RfLowにおけるH1の複素共役。
H1
LB:flow
RfHighにおけるH1。
P0
high:nfs-f1とfNyquistの間のP0の上側成分。
fhigh:P0
highの周波数、ベクトルである。
P1:パイプ1のサンプルのスペクトル。
P1
low:fDCとnfs-f1の間のP1の下側成分。
P1
high:nfs-f1とfNyquistの間のP1の上側成分。
fhigh
RfLow:X0の周波数、次のように定義されるベクトルである。
fhigh
RfLow=nfs+fhigh
fhigh
RfHigh:X1の周波数、次のように定義されるベクトルである。
fhigh
RfHigh=(n+1)fs-fhigh
H0
HC:fhigh
RfHighにおけるH0の複素共役。
H0
HB:fhigh
RfLowにおけるH0。
H1
HC:fhigh
RfHighにおけるH1の複素共役。
H1
LB:fhigh
RfLowにおけるH1。
【0047】
ケース1については、
図9のX
2及びX
3のスペクトル・セグメントの解は、次のように導出できる。
【数6】
【0048】
図9のX
0及びX
1のスペクトル・セグメントは、次のように導出できる。
【数7】
【0049】
数式6と数式7は、校正データを使用して、信号の再構築されたスペクトルを生成する。
【0050】
ケース2の解は、ケース1と同様に導出できる。
【0051】
数式6及び数式7を用いて、
図18の例について再構築されたスペクトルが
図20に示され、この再構築されたスペクトルは、入力信号のスペクトルに等しい。パイプ間の不整合(ミスマッチ)と2つのパイプの非理想的な周波数応答によるエラーは、校正によって補正されている。
【0052】
このプロセスでは、校正が適用され、シミュレーションの結果は、校正された例になる。
図21は、
図13と同様に、中央の2つのサブプロットの左側に点線で示したf
Nyquistで制約を受ける2本のパイプのスペクトルを示す。
図21に示すサブプロットでは、2本のパイプが整合していないため、2本のパイプ間でスペクトルの振幅が異なり、位相が異なっている。校正されたスペクトラム再構築アルゴリズムは、2つのパイプの不整合(ミスマッチ)と非理想的な応答を補正することにより、アナログのスペクトラムをリカバリ(復元)する。
【0053】
図22に示すフレームでは、
図14のフレームと比較して、2本のパイプについて、振幅のスペクトルと位相のスペクトルの両方が異なっている。スペクトラム再構築アルゴリズムは、アナログのスペクトラムを復元する。最後に、
図23に示すフレームは、直流成分を含む校正結果を示している。
【0054】
パイプ間の不整合を調整するために、スペクトルの再構築を利用する前に、2つのパイプの周波数応答の特性を評価する必要がある。特性評価の1つのプロセスとして、パルス発生器又はステップ信号発生器の使用することがある。このプロセスでは、パルス信号又はステップ信号自体の特性を評価して、基準として使用することができる。
図24は、ステップ信号を示す。RETオシロスコープ・モードで動作する計測器は、2本のパイプによってらパルス信号又はステップ信号をアクイジション(波形データ取得)する。RETオシロスコープ・モードでは、パルス信号又はステップ信号の等価時間サンプルがアクイジションされる。
図16に示すようにして、等価時間サンプルは、均一な間隔のサンプルを有するようにリサンプリングされる。
【0055】
上述したように、クロック・リカバリにより、等間隔のサンプルを持つパターン波形が得られる。等間隔のサンプルに対してFFTを行うことで、これらサンプルのスペクトルを得ることができる。得られたスペクトルと基準スペクトルの比がパイプの周波数応答になる。
【0056】
オプションで、このプロセスは、
図25に示されるように、パイプのより正確な大きさ応答を得るために、掃引正弦波信号発生器70を使用しても良い。掃引正弦波信号のエネルギーは、一度に1つの周波数に集中するため、信号対ノイズ比が高くなる。パワー・メータ(電力計)74は、掃引された正弦波信号を平準化(level)することができる。2つのパイプがサンプルをアクイジションする場合、正弦波信号の周波数が各パイプのナイキスト周波数を超えた場合、サンプルがエイリアシングされる可能性がある。エイリアシングは決定論的な方法で起こり、WSA72によって得られたエイリアシングされた周波数でのスペクトルの振幅を、パワー・メータから読み取られた振幅で除算して、2つのパイプの振幅応答の比率を76で得る。2つのパイプがスペクトルの振幅を安定して読み取ることができない、孤立した周波数(isolated frequencies)があることに注意されたい(例えば、正弦波信号が各パイプのナイキスト周波数の整数倍である場合)。隣接する周波数からの補間により、これらの孤立した周波数での周波数応答を得ることができる。
【0057】
このプロセスでは、バンドパス・フィルタの特性を個別に評価し、パイプの特性評価を組み合わせることができる。このアプローチでは、帯域幅フィルタを使用せずにパイプの特性評価を実行する。このプロセスでは、パイプと一緒にバンドパス・フィルタの特性評価を行うこともできる。このプロセスでは、校正信号をバンドパス・フィルタに供給する。
【0058】
得られる計測器は、RETオシロスコープとWSAの機能を組み合わせている。これにより、ユーザは、1つの計測器を、この回路の両方のために利用できる。校正プロセスを使用すると、バックホールとフロントホールの両方の全ての周波数にわたるアナログ信号の再構築がより正確になる。
【0059】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0060】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0061】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0062】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
実施例
【0063】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0064】
実施例1は、夫々が入力ポート、フィルタ及びサンプラを有し、被試験信号を受信する1つ以上のチャンネルと、該1つ以上のチャンネルの中の1つのチャンネルの上記サンプラに接続された2つのパイプを有し、特定のサンプル・レートで上記被試験信号のデジタル・サンプルを生成する少なくとも1つのアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)と、1つ以上のプロセッサとを具え、該1つ以上のプロセッサが、上記少なくとも1つのADCの上記パイプの夫々の上記デジタル・サンプルのスペクトラムを取得する処理と、上記少なくとも1つのADCの上記パイプの夫々の上記デジタル・サンプルの上記スペクトラムを使用して上記被試験信号のスペクトラムを再構築する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される。
【0065】
実施例2は、実施例1の試験測定装置であって、上記入力ポートは、電気的ポート、光学的ポート、無線ポートのいずれかを有する。
【0066】
実施例3は、実施例1又は2のいずれかの試験測定装置であって、上記パイプの夫々の上記デジタル・サンプルのスペクトラムを取得する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記パイプの夫々の上記デジタル・サンプルの高速フーリエ変換(FFT)を実行する処理を含む。
【0067】
実施例4は、実施例1から3のいずれかの試験測定装置であって、上記フィルタがバンドパス・フィルタを含む。
【0068】
実施例5は、実施例4の試験測定装置であって、上記バンドパス・フィルタは、上記試験測定装置の目標帯域幅よりも大きく、サンプル・レートよりも狭い帯域幅を有する。
【0069】
実施例6は、実施例1から5のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上のチャンネルは、複数のチャンネルを含む。
【0070】
実施例7は、実施例6の試験測定装置であって、上記少なくとも1つのADCは、2つのADCを含み、上記ADCの夫々は、2つ以上のパイプを有する。
【0071】
実施例8は、実施例1から7のいずれかの試験測定装置であって、上記デジタル・サンプルの上記スペクトルを使用する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記2本のパイプのスペクトルと上記開始周波数とを組み合わせて上記スペクトルを再構築する処理を含む。
【0072】
実施例9は、実施例8の試験測定装置であって、上記2つのパイプの上記スペクトルを組み合わせる処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記2つのパイプのスペクトルの低周波成分から導出された周波数を用いて第1及び第2定数を導出する処理と、上記2つのパイプの上記スペクトルの上記第1及び第2定数と上記低周波成分とを使用する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0073】
実施例10は、実施例8の試験測定装置であって、上記開始周波数は、上記サンプル・レートの倍数と、上記サンプル・レートの倍数からナイキスト周波数を引いたものの間にある。
【0074】
実施例11は、実施例8の試験測定装置であって、上記開始周波数は、上記サンプル・レートと、上記サンプル・レートの倍数にナイキスト周波数を加えたものの間にある。
【0075】
実施例12は、実施例1から11のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサは、上記ADC夫々のパイプを校正するように更に構成される。
【0076】
実施例13は、実施例11の試験測定装置であって、上記ADC夫々の上記パイプを校正する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記ADC夫々のパイプの夫々、フィルタ及び上記パイプの夫々に関連付けられたサンプラの中の1つ以上の特性を評価して、上記パイプの夫々の周波数スペクトラムを取得する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0077】
実施例14は、試験測定装置の動作方法であって、入力ポート、フィルタ及びサンプラを有する、上記試験測定装置のチャンネルを通して被試験信号を受信する処理と、上記チャンネルの上記サンプラに接続された2つのパイプを有するアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を用いて、特定のサンプル・レートで上記被試験信号のデジタル・サンプルを生成する処理と、上記ADCの上記2つのパイプの上記デジタル・サンプルのスペクトルを取得する処理と、上記ADCの上記2つのパイプの上記デジタル・サンプルの上記スペクトルを使用して、上記被試験信号のスペクトルを再構築する処理とを具える。
【0078】
実施例15は、実施例14の方法であって、上記デジタル・サンプルの上記スペクトルを使用する処理が、上記2つのパイプの上記スペクトルと開始周波数とを組み合わせる処理を含む。
【0079】
実施例16は、実施例15の方法であって、上記デジタル・サンプルの上記スペクトルを使用する処理が、上記2つのパイプの上記スペクトルの低周波成分から導出された周波数を用いて第1及び第2定数を導出する処理と、上記2つのパイプの上記スペクトルの上記第1及び第2定数と上記低周波成分を使用する処理とを有する。
【0080】
実施例17は、広帯域信号アナライザとして動作する試験測定装置を校正する方法であって、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)の複数のパイプの特性を評価して上記パイプ夫々の周波数応答を生成する処理と、少なくとも1つのADCの上記パイプ夫々のデジタル・サンプルのスペクトラムを取得する処理と、上記パイプ夫々の上記周波数応答に基づいて上記デジタル・サンプルの上記スペクトラムを調整する処理と、上記ADC夫々の全てのパイプの上記デジタル・サンプルの調整された上記スペクトラムを使用して被試験信号のスペクトラムを再構築する処理とを具える。
【0081】
実施例18は、実施例17の方法であって、上記パイプの特性を評価する処理が、バンドパス(BP)フィルタに信号を印加する処理と、サンプラを使用して上記BPフィルタからの信号をサンプリングする処理と、上記BPフィルタからのサンプルを上記ADCの上記パイプの夫々に供給する処理と、上記試験測定装置を使用して、上記パイプの夫々からサンプルを取得する処理と、上記サンプルのスペクトルを取得して上記周波数応答を求める処理とを有する。
【0082】
実施例19は、実施例17又は18のいずれかの方法であって、上記ADCの上記パイプの特性を評価する処理は、上記BPフィルタ、上記サンプラ及び上記ADCの中の1つ以上を一緒に又は別々に特性評価する処理を含む。
【0083】
実施例20は、実施例18の方法であって、パワー・メータを用いて上記信号を平準化する処理を更に含む。
【0084】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0085】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0086】
明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面に開示される全ての機能、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全てのステップは、そのような機能やステップの少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される機能の夫々は、特に明記されない限り、同じ、等価、又は類似の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。
【0087】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0088】
20 複数のチャンネルの中の1つ
22 アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)
24 アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)
26 アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)
28 アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)
30 FPGA1
32 FPGA2
40 バンドパス・フィルタ
42 サンプラ
50 バンドパス・フィルタ
52 サンプラ
54 ADCの2本のパイプ
60 アイ・ダイアグラムに基づくクロック・リカバリ工程
62 タイミング再割り当て工程
70 掃引正弦波信号発生器
72 広帯域シグナル・アナライザ(WSA)
74 パワー・メータ
76 2本のパイプの振幅応答の比率
P0 パイプ0のサンプルのスペクトル
P1 パイプ1のサンプルのスペクトル
H0 パイプ0の周波数応答
H1 パイプ1の周波数応答
f1 開始周波数
X 再構築された信号のスペクトル
【外国語明細書】