IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テクトロニクス・インコーポレイテッドの特許一覧

特開2024-133045試験測定アクセサリ、試験測定システム及び電流測定方法
<>
  • 特開-試験測定アクセサリ、試験測定システム及び電流測定方法 図1
  • 特開-試験測定アクセサリ、試験測定システム及び電流測定方法 図2
  • 特開-試験測定アクセサリ、試験測定システム及び電流測定方法 図3
  • 特開-試験測定アクセサリ、試験測定システム及び電流測定方法 図4
  • 特開-試験測定アクセサリ、試験測定システム及び電流測定方法 図5
  • 特開-試験測定アクセサリ、試験測定システム及び電流測定方法 図6
  • 特開-試験測定アクセサリ、試験測定システム及び電流測定方法 図7
  • 特開-試験測定アクセサリ、試験測定システム及び電流測定方法 図8
  • 特開-試験測定アクセサリ、試験測定システム及び電流測定方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133045
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】試験測定アクセサリ、試験測定システム及び電流測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01R15/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024041909
(22)【出願日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】63/453,025
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/604,102
(32)【優先日】2024-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー・エイ・キャンベル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジー・ニーリム
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジェイ・ハル
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AA07
2G025AB05
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】表皮効果によるシャントの抵抗値の周波数変化を最小化する。
【解決手段】試験測定18用のアクセサリ12には、被試験デバイス14を含む電流経路に配置するように構成されたシャントがあり、このシャントは、抵抗部として個別に絶縁された複数のワイヤからなるワイヤ束と、センス・リード線とを有し、ワイヤ束とセンス・リード線は、第1端部で電気的に接続され、第1電気接点は、第2端部でセンス・リード線に電気的に接続され、第2電気接点は、第2端部でワイヤ束のワイヤに電気的に接続されて、第1及び第2電気接点間で電圧降下を測定できるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験測定アクセサリであって、
被試験デバイスを含む電流経路に配置されるように構成されたシャントであって、個別に絶縁された複数のワイヤからなるワイヤ束を抵抗部分として有すると共にセンス・リード線を有し、上記ワイヤ束と上記センス・リード線が第1端部で電気的に接続された上記シャントと、
第2端部で上記センス・リード線に電気的に接続された第1電気接点と、
上記第2端部で上記ワイヤ束の上記ワイヤに電気的に接続される第2電気接点であって、上記第1及び第2電気接点の間で電圧降下を測定可能にする上記第2電気接点と
を具える試験測定用アクセサリ。
【請求項2】
上記センス・リード線は、上記ワイヤ束から独立しており、上記ワイヤ束が上記センス・リード線の周りを囲んでいる請求項1に記載の試験測定用アクセサリ。
【請求項3】
上記ワイヤ束及び上記センス・リード線が、導電性チューブに包まれ、上記ワイヤ束は、上記第2端部で上記導電性チューブに接続される請求項1に記載の試験測定用アクセサリ。
【請求項4】
上記ワイヤ束の個別に絶縁されたワイヤは、銅の抵抗温度係数の2分の1以下の抵抗係数と、銅の2倍以上のバルク抵抗率の少なくとも1つを有する抵抗性金属合金を含む請求項1に記載の試験測定用アクセサリ。
【請求項5】
試験測定システムであって、
被試験デバイスに接続されるプローブを有する試験測定装置と、
試験測定アクセサリと
を具え、
該試験測定アクセサリが、
被試験デバイスを含む電流経路に配置されるように構成されたシャントであって、個別に絶縁された複数のワイヤからなるワイヤ束を抵抗部分として有すると共にセンス・リード線を有し、上記ワイヤ束と上記センス・リード線が第1端部で電気的に接続された上記シャントと、
第2端部で上記センス・リード線に電気的に接続された第1電気接点と、
上記第2端部で上記ワイヤ束の上記ワイヤに電気的に接続される第2電気接点であって、上記第1及び第2電気接点の間で電圧降下を測定可能にする上記第2電気接点と
を有する試験測定システム。
【請求項6】
上記センス・リード線は、上記ワイヤ束から独立しており、上記ワイヤ束は、上記センス・リード線の周りを囲んでいる請求項5に記載の試験測定システム。
【請求項7】
上記シャントが、上記被試験デバイスが存在する基板に接続されように構成され、上記第1及び第2電気接点が上記基板上に存在している請求項5に記載の試験測定システム。
【請求項8】
上記シャントが、上記ワイヤ束及び上記センス・リード線を包む導電性チューブを更に有し、上記ワイヤ束は、上記導電性チューブに上記第2端部で接続される請求項5に記載の試験測定システム。
【請求項9】
被試験デバイス(DUT)の電流を測定する方法であって、
個別に絶縁された複数のワイヤからなるワイヤ束を抵抗部分として有すると共にセンス・リード線を有し、上記ワイヤ束と上記センス・リード線が第1端部で電気的に接続されたシャントと、第2端部で上記センス・リード線に電気的に接続された第1電気接点と、上記第2端部で上記ワイヤ束の上記ワイヤに電気的に接続される第2電気接点であって、上記第1及び第2電気接点の間で電圧降下を測定可能にする上記第2電気接点とを有する試験アクセサリを上記DUTの電流経路に電気的に接続する処理と、
上記第1及び第2電気接点間の電圧差を測定することにより、上記被試験デバイスの電流を求める処理と
を具える電流測定方法。
【請求項10】
上記試験アクセサリを電気的に接続する処理が、同軸リターン・パスを設けるために、上記ワイヤ束及び上記センス・リード線を包む導電性チューブを設ける処理を有する請求項9に記載の電流測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定装置に関し、より具体的には、電流を測定するために試験測定装置とともに使用される電流シャントに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイド・バンド・ギャップ(WBG)半導体を使用したスイッチング電源やモータ・ドライブ、雷やその他のアーク放電など、大きくて急速に変化する電流は、正確に測定することが難しいことで有名である。
【0003】
よく使用される方法の1つは、電流経路に直列抵抗器(「電流シャント抵抗器」、「電流シャント」又は「シャント」)を配置し、電流によって引き起こされる電圧降下を測定し、その抵抗値で除算することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-167815号公報
【特許文献2】特開2022-171633号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「シャント抵抗器(電流検出抵抗器)とは?」、エレクトロニクス豆知識、ローム株式会社、[online]、[2024年3月14日検索]、インターネット<https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/resistors/r_what14>
【非特許文献2】「リッツ線」、製品紹介、礎電線株式会社、[online]、[2024年3月14日検索]、インターネット<http://www.ishizuedensen.com/product/litz-wire/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電流シャント抵抗器のアプローチは、DC及び低周波数をうまく処理するが、周波数fcを超える周波数では、シャントの両端間の誘導性電圧降下が、抵抗性電圧降下を上回るので、周波数が高くなると悪影響が生じる。
【数1】
【0007】
大電流を測定する場合、シャントの電圧降下と電力損失を妥当な範囲内に維持するために、比較的小さなシャント抵抗値Rが必要であるが、このために、使用可能な帯域幅fcが、好ましくないほど低くなる。
【0008】
誘導性電圧降下は、同軸シャントを使用することで排除できるが、この場合、抵抗素子がシリンダ(cylinder:円柱、円筒)であって、そのリターン電流は、より大きな同心円状の外側シリンダを通過し、電圧測定リード線は、シャント内部の抵抗性シリンダから配線される。その対称性と外側のリターン電流経路により、シャントと外側のリターン経路の間の電流の循環によって生成される磁場は、シャント内の測定電圧に誘導性電圧降下を与える磁場を残さないように機能する。同軸シャントは、測定インダクタンス(測定される電圧降下に含まれるインダクタンス)を除去するが、シャントを通るより長い電流経路を必要とするため、挿入インダクタンス(被試験デバイス(DUT)の電流経路に挿入されるインダクタンス)が増加する。測定インダクタンスがない場合でも、同軸シャントは、シャント材料の表皮効果により、帯域幅が制限される。周波数が高くなると、導体内の電流の表皮深さが減少する。表皮の深さが抵抗性シリンダの厚さに近づくと、電流の低い周波数成分がシャントの内側に流れ、電圧が測定される内側の抵抗性電圧降下が小さくなる。
【0009】
シャントの使用可能な帯域幅を改善する別の方法は、従来のシャントの電圧測定リード線のリード・ドレス(lead dress:リード線の外装)に相殺相互インダクタンス(canceling mutual inductance)MCを追加することである。
【数2】
【0010】
これにより、特定のリターン電流経路を必要としないため、挿入インダクタンスが最小限に抑えられるが、相殺(MC=L)を達成するためのリード線の配置を決定するために、リターン電流経路を依然として知る必要があるため、実装が難しくなる。また、この相殺(キャンセル)アプローチは、表皮効果のために、高い周波数において悪影響を受ける。即ち、シャントを通る電流経路は、表皮の深さがシャントの厚さに近づくにつれて、物理的な位置がシフトし、MC、L及びRを変化させる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の実施形態は、試験測定装置で使用するための試験アクセサリを提供する。このアクセサリには、その両端間の電圧を測定可能にした電流シャント(又はシャント)が含まれ、周波数によるシャント抵抗値の表皮効果による変化が最小限に抑えられる。このシャントは、DUTの電流経路に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、試験測定装置、被試験デバイス(DUT)及びシャントを有する試験アクセサリを示す。
図2図2は、織りワイヤの一例を示す。
図3図3は、シャントの実施例を示す。
図4図4は、シャントの別の実施形態を示す。
図5図5は、端部が圧着される織りワイヤの実施形態を示す。
図6図6は、専用のセンス・リード線を有する電流シャントの実施形態を示す。
図7図7は、専用のセンス・リード線を有する電流シャントの別の実施形態を示す。
図8図8は、織りワイヤから選択されたセンス・リード線を有する電流シャントの実施例を示す。
図9図9は、織りワイヤから選択されたセンス・リード線を有する電流シャントの別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
いくつかの実施形態では、図1に示すように、試験測定システム10は、被試験デバイス(DUT)14に、アクセサリ(ACC)12をはんだ付けするか、又は、さもなければ直接接続する。試験測定装置18からの1つ以上のプローブ又はコネクタ16は、シャントに接続され、シャントの両端間の電圧降下を測定する。次に、試験測定装置は、その抵抗値で割り算することによって、電圧を電流に変換する。
【0014】
リッツ線などのワイヤ束(Wire bundle)は、RF配線、インダクタ、トランスの表皮効果の損失を最小限に抑えるためによく使用される。本願での使用において、また、図2に示されるように、用語「ワイヤ束」は、個別に絶縁され、撚り(twisted)、織り(woven)又は編組(braided)された22のようなワイヤの撚り線(strand:ストランド)の束20を指す。個々の撚り線の直径は、個々の撚り線の表皮効果を最小限に抑えるのに十分なほど小さい。撚り、織り又は編組は、各撚り線が同じ平均的な磁場に遭遇することを保証するのに役立ち、これによって、全電流の中の同じ部分を伝送する。リッツ線は、このタイプのワイヤ束の一例である。リッツ線は、抵抗損失を最小限に抑えることを目的として、一般的に銅又は銀メッキの銅撚り線で作られている。例えば、48AWGなどの実用的な撚り線サイズでは、銅製リッツ線が有用なのは、数MHzまでに制限される。
【0015】
実施形態としては、表皮効果で生じる周波数によるシャント抵抗値の変化を最小化するために、ワイヤ束を使用して構成されたシャントがある。ワイヤ束は、シャントの抵抗部分を形成する。ワイヤ束は、マンガン、ニクロム、又は、抵抗値の温度係数が小さくて、銅よりも意図的に高いバルク抵抗率を有する他の適切な抵抗性金属合金のワイヤ撚り線から構成されても良い。バルク抵抗率が高いほど、特定の皮膚の深さに対して動作周波数が比例して高くなり、このようなシャントは100MHz以上まで、表皮効果を回避できる。抵抗値の温度係数のレンジは、銅の温度係数(0.0039/°C)の半分以下のレンジを有し、0.00195/°C以下としても良い。バルク抵抗率のレンジは、銅(1.7×10-8Ωm)の2倍以上のレンジを有し、3.4×10-8Ωm以上としても良い。
【0016】
図3は、シャント30が、図2に示す20のようなワイヤ束を備え、これは、中央のセンス・ワイヤ(sense wire:検出ワイヤ)34の周囲に巻かれる(wound)か、撚られる(twisted)か、編組される(braided)か又は織られる(woven)かしており、また、導電性チューブ32の内部に配置されており、このとき、ワイヤ束が一端部(図示するように近い側の端部)でセンス・ワイヤに電気的に接続され、他端部で導電性チューブに電気的に接続される。これにより、同軸シャントが形成され、誘導性電圧降下を回避すると同時に、表皮効果による帯域幅の損失も最小限に抑えられる。センス・リード線(sense lead)34は、第1電気的接点36(本実施形態では、コネクタのピン)に接続される。ワイヤ束の遠い側の端部は、第2ピン38に接続される。このため、第1ピンと第2ピンの間の電圧降下を測定できる。全ての実施形態の電気接点は、ピン、コンタクト・パッド、トレース、直接のはんだ接続など、多種多様な形態をとることができる。
【0017】
本開示の別の実施形態によれば、シャントは、上記の例に基づく中央センス・ワイヤは維持するが、同軸電流リターン経路をなくし、これによって、DUTの電流経路中へのシャントの配置をより柔軟に行えるようにして、挿入インダクタンスを最小化できるようにする。これにより、形式的には、相殺相互インダクタンスを提供することとなり、表皮効果で生じる周波数によるMC、L及びRの変化が最小限に抑えられる。
【0018】
図4は、センス・ワイヤ44が、ワイヤ束の複数の個別の撚り線の1つから構成される別の実施形態を示す。ワイヤ束は、複数の撚り線の夫々が、ワイヤの長さに沿って正味で同じ磁場に遭遇するように努めるため、どの撚り線も、他の全ての撚り線に対して適切な相殺相互インダクタンスを提供する必要がある。このアプローチは、各端部でセンス・ワイヤを特定する必要がないため、実装が簡単かもしれない。全ての撚り線は、電流経路セグメント46の一端部で電気的に接続されている。ワイヤ束の他端において、1本の撚り線44が選択され、センス・リード線として独立して(別途)引き出される。撚り線44は、電流経路セグメント48とは接触しない。撚り線44以外のワイヤ束の他の全ての撚り線は、電流経路セグメント48と互いに電気的に接続される。もう1つ別のリード線42を設けて電流経路セグメント48に接続してもよく、その結果、ワイヤ束20の両端間の電圧降下は、リード線42と44の間の電圧差を測定することによって、手軽に測定できる。リード線44は、第1電気接点に接続し、リード線42は、第2電気接点に接続しても良い。いくつかの実施形態では、第1及び第2電気接点は、例えば、図3に示す正方形ピン・コネクタの2つのピンから構成される。いくつかの実施形態では、本願で説明する任意の変形例のうち、ワイヤ束20の両端部は、圧着(crimp:クリンプ)されても良い。図5は、複数のワイヤが互いに圧着される例を示す。いくつかの実施形態では、ワイヤ束20の両端部が、例えば、電流経路セグメント46、48に接続するためのコネクタも有しても良い。全ての実施形態の電気的接点や電流セグメントは、ピン、コンタクト・パッド、トレース、直接はんだ接続、電源プレーン、ビアからトレースなど、多種多様な形態をとることができる。
【0019】
図5は、互いに圧着(crimp)されたワイヤ束20を示している。ワイヤ束内のワイヤは、個々の絶縁スリーブを剥がして、各ワイヤの一部を裸ワイヤ50として露出させる。次に、これら裸ワイヤを圧着端子52内にスライドして入れる。圧着端子52には、ワイヤ束を基板に取り付けることができるように、54などのピンがある。更に、裸ワイヤの端部は、第2端部にあるセンス・リード線を除いて、一方の端部又は両端部で互いにはんだ付けしても良い。
【0020】
本願で説明する実施形態には、同軸リターン・パスが有るか又は無いかのどちらかと、別途の専用センス・リード線があるか又はワイヤ束のワイヤ撚り線から選択されたセンス・リード線かのどちらかとで、4つのバリエーションがある。図6図7は、別途のセンス・リード線34を有する実施形態の電流経路及び電圧センスの関係を示す図を示す。図6では、電流は左側から入り、60でワイヤ束の全ての撚り線に接続され、ワイヤ束シャント20を下って移動し、外側の導電性チューブ32を通って戻る(リターンする)。センス・ワイヤ34は、ワイヤ束20の中央を横断し、同軸シャントを形成する。ワイヤ束は、図の左側で、センス・ワイヤと電流の入力側に接続され、右側で導電性チューブに接続されていることに注意されたい。図6図9では、文字「I」は、電流の接続を示し、文字「V」は、電圧センス・リード線の接続を示す。
【0021】
図7は、中央のセンス・リード線34はあるものの、導電性チューブはない実施形態を示す。この実施形態によれば、ユーザは、電流リターン・パスを提供できる、又は、提供する必要がある。これは、DUTが、電流を流すワイヤの部分を既に必要としている場合に有利な場合がある。このワイヤ束シャントは、この電流を流すワイヤの部分を置き換えることができて、電流経路の長さを追加することがない。この実施形態は、同軸シャントの純粋な対称性を失う可能性があるが、ワイヤ束の構造は、センス・リード線の周りの均一な電流密度を保証して、誘導性の電圧ピックアップを最小限に抑える。
【0022】
図8図9は、ワイヤ束の複数のワイヤ撚り線の中の1つがセンス・リード線として機能する実施形態を示す。これらの図において、センス・リード線44は、ワイヤ束20から選択された1本以上のワイヤ撚り線に対応し、ワイヤ束の残りの選択されていないワイヤは電流を流す。センス・リード線は、撚り(twisted)線、編組(braided)線又は織り(woven:編み込み)線の中のいずれかであるため、ワイヤ束に沿って様々なパターン/方向をたどることがある。電流経路は、図の左側から、シャントの他方の端部まで、ねじれたり、ループするなど、ワイヤ束で形成される、何らかの形の経路で横断する。図8では、電流は、導電性チューブに沿って戻る(リターンする)。図9では、電流は、ユーザが提供する経路に沿って戻る(リターンする)。
【0023】
これらの実施形態のいずれも、また、図示していない他のものも、ワイヤ束に屈曲又は円弧があっても良いことに留意されたい。ワイヤ束は、多数の撚り線を使った撚りの特性により、本質的に非常に柔軟である。例えば、図3及び図4に示すように、ワイヤで180°のループを作り、PCB上の一対のスルーホールに、はんだ付けしても良い。ワイヤで90°の屈曲を形成し、PCBスルーホールから、端子ストリップ(terminal strip)に固定されるはんだラグ(solder lug)まで配線しても良い。ただし、ワイヤ束を特定の形状又は形態に限定することは、意図してはおらず、示唆するものでもない。
【0024】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0025】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0026】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0027】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。

実施例
【0028】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0029】
実施例1は、試験測定アクセサリであって、被試験デバイスを含む電流経路に配置されるように構成されたシャントであって、個別に絶縁された複数のワイヤからなるワイヤ束を抵抗部分として有すると共にセンス・リード線を有し、上記ワイヤ束と上記センス・リード線が第1端部で電気的に接続された上記シャントと、第2端部で上記センス・リード線に電気的に接続された第1電気接点と、上記第2端部で上記ワイヤ束の上記ワイヤに電気的に接続される第2電気接点であって、上記第1及び第2電気接点の間で電圧降下を測定可能にする上記第2電気接点とを具える。
【0030】
実施例2は、実施例1の試験測定用アクセサリであって、上記センス・リード線は、上記ワイヤ束から独立しており、上記ワイヤ束が上記センス・リード線の周りを囲んでいる。
【0031】
実施例3は、実施例1又は2のいずれかの試験測定用アクセサリであって、上記センス・リード線は、上記ワイヤ束の中の1本以上のワイヤから構成される。
【0032】
実施例4は、実施例1から3のいずれかの試験測定用アクセサリであって、上記ワイヤ束は、編組(braided)、織り(woven)、撚り(twisted)のいずれかである。
【0033】
実施例5は、実施例1から4のいずれかの試験測定用アクセサリであって、上記ワイヤ束が、リッツ線を有する。
【0034】
実施例6は、実施例1から5のいずれかの試験測定アクセサリであって、上記ワイヤ束及び上記センス・リード線が、導電性チューブに包まれ、上記ワイヤ束は、上記第2端部で上記導電性チューブに接続される。
【0035】
実施例7は、実施例1から6のいずれかの試験測定用アクセサリであって、上記第1及び第2電気接点は、コンタクト・パッド、直接のはんだ付け又はコネクタの一部の中の1つから構成される。
【0036】
実施例8は、実施例1から7のいずれかの試験測定アクセサリであって、上記ワイヤ束の個別に絶縁された複数のワイヤは、銅の抵抗温度係数の2分の1以下の抵抗係数と、銅の2倍以上のバルク抵抗率の少なくとも1つを有する抵抗性金属合金を含む。
【0037】
実施例9は、実施例8の試験測定用アクセサリであって、上記ワイヤ束の個別に絶縁された複数のワイヤは、銅合金、マンガニン(manganin:銅、マンガン及びニッケルの合金)、ニクロムのいずれかからなる抵抗性金属合金を含む。
【0038】
実施例10は、実施例1から9のいずれかの試験測定用アクセサリであって、上記第1及び第2端部のうち少なくとも1つに、コネクタ、圧着端子(crimp)の1つ以上を有し、上記ワイヤ束内の上記ワイヤを互いにはんだ付けしている。
【0039】
実施例11は、試験測定システムであって、被試験デバイスに接続されるプローブを有する試験測定装置と、試験測定アクセサリとを具え、該試験測定アクセサリが、被試験デバイスを含む電流経路に配置されるように構成されたシャントであって、個別に絶縁された複数のワイヤからなるワイヤ束を抵抗部分として有すると共にセンス・リード線を有し、上記ワイヤ束と上記センス・リード線が第1端部で電気的に接続された上記シャントと、第2端部で上記センス・リード線に電気的に接続された第1電気接点と、上記第2端部で上記ワイヤ束の上記ワイヤに電気的に接続される第2電気接点であって、上記第1及び第2電気接点の間で電圧降下を測定可能にする上記第2電気接点とを有する。
【0040】
実施例12は、実施例11の試験測定システムであって、上記第1電気的接点及び上記第2電気的接点が、上記プローブに接続するように構成されたコネクタ上に存在する。
【0041】
実施例13は、実施例11又は12のいずれかの試験測定システムであって、上記センス・リード線は、上記ワイヤ束から独立しており、上記ワイヤ束は、上記センス・リード線の周りを囲んでいる。
【0042】
実施例14は、実施例11から13のいずれかの試験測定用アクセサリであって、上記センス・リード線は、上記ワイヤ束の中の1本以上のワイヤから構成される。
【0043】
実施例15は、実施例11~14のいずれかの試験測定システムであって、上記シャントが、上記被試験デバイスが存在する基板に接続されように構成され、上記第1及び第2電気接点が上記基板上に存在している。
【0044】
実施例16は、実施例11から15のいずれかの試験測定システムであって、上記シャントが、上記ワイヤ束及び上記センス・リード線を包む導電性チューブを更に有し、上記ワイヤ束は、上記導電性チューブに上記第2端部で接続される。
【0045】
実施例17は、実施例11~16のいずれかの試験測定システムであって、上記ワイヤ束の上記第1及び第2端部の少なくとも一方が、コネクタ、圧着端子の1つ以上を有し、上記ワイヤ束内の複数の上記ワイヤを互いにはんだ付けしている。
【0046】
実施例18は、被試験デバイス(DUT)の電流を測定する方法であって、個別に絶縁された複数のワイヤからなるワイヤ束を抵抗部分として有すると共にセンス・リード線を有し、上記ワイヤ束と上記センス・リード線が第1端部で電気的に接続されたシャントと、第2端部で上記センス・リード線に電気的に接続された第1電気接点と、上記第2端部で上記ワイヤ束の上記ワイヤに電気的に接続される第2電気接点であって、上記第1及び第2電気接点の間で電圧降下を測定可能にする上記第2電気接点とを有する試験アクセサリを上記DUTの電流経路に電気的に接続する処理と、上記第1及び第2電気接点間の電圧差を測定することにより、上記被試験デバイスの電流を求める処理とを具えている。
【0047】
実施例19は、実施例18の電流の測定方法であって、上記試験アクセサリを電気的に接続する処理が、同軸リターン・パスを設けるために、上記ワイヤ束及び上記センス・リード線を包む導電性チューブを設ける処理を有する。
【0048】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0049】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0050】
明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面に開示される全ての機能、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全てのステップは、そのような機能やステップの少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される機能の夫々は、特に明記されない限り、同じ、等価、又は類似の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。
【0051】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0052】
10 試験測定システム
12 アクセサリ(ACC)
14 被試験デバイス(DUT)
16 コネクタ
18 試験測定装置
20 ワイヤ束
22 絶縁ワイヤ撚り線
30 シャント
32 導電性チューブ
34 中央センス・ワイヤ
36 第1電気接点(コネクタの第1ピン)
38 第2電気接点(コネクタの第2ピン)
42 第1リード線
44 第2リード線(センス・ワイヤ)
46 第1電流経路セグメント
48 第2電流経路セグメント
50 裸ワイヤ
52 圧着端子
54 ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】