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特開2024-133308半導体装置を製造する方法、光吸収積層体、及び仮固定用積層体
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  • 特開-半導体装置を製造する方法、光吸収積層体、及び仮固定用積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133308
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】半導体装置を製造する方法、光吸収積層体、及び仮固定用積層体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240920BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240920BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L21/78 P
C09J7/30
C09J201/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114948
(22)【出願日】2024-07-18
(62)【分割の表示】P 2020557831の分割
【原出願日】2019-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2018223456
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】西戸 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 笑
(72)【発明者】
【氏名】大山 恭之
(72)【発明者】
【氏名】川守 崇司
(72)【発明者】
【氏名】赤須 雄太
(72)【発明者】
【氏名】白坂 敏明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直也
(72)【発明者】
【氏名】早坂 剛
(57)【要約】
【課題】支持部材に対して仮固定された半導体部材を加工する工程を含む、半導体装置を製造する方法に関して、加工後の半導体部材を、簡易な処理によって支持部材から容易に分離できる方法を提供すること。
【解決手段】支持部材に対して仮固定材層を介して仮固定された半導体部材を加工する工程と、仮固定用積層体に対して支持部材側からインコヒーレント光を照射し、それにより半導体部材を支持部材から分離する工程と、をこの順に備える、半導体装置を製造する方法が開示される。仮固定材層の一部又は全部が、光を吸収して熱を発生する光吸収層である。支持部材のインコヒーレント光に対する透過率が90%以上である。仮固定材層のインコヒーレント光に対する透過率が3.1%以下である。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と該支持部材上に設けられた仮固定材層とを備える仮固定用積層体であって、前記仮固定材層が、前記仮固定材層の少なくとも一方の最表面を含む硬化性樹脂層を有する、仮固定用積層体を準備する工程と、
半導体基板及び該半導体基板の一方の面側に設けられた再配線層を有する半導体部材を、前記再配線層が前記硬化性樹脂層側に位置する向きで、前記仮固定材層を介して前記支持部材に対して仮固定する工程と、
前記支持部材に対して仮固定された前記半導体部材を加工する工程と、
前記仮固定用積層体に対して前記支持部材側からインコヒーレント光を照射し、それにより前記半導体部材を前記支持部材から分離する工程と、
をこの順に備え、
前記仮固定材層の一部又は全部が、光を吸収して熱を発生する光吸収層であり、
前記支持部材の前記インコヒーレント光に対する透過率が90%以上であり、
前記仮固定材層の前記インコヒーレント光に対する透過率が3.1%以下である、
半導体装置を製造する方法。
【請求項2】
前記インコヒーレント光が赤外線を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インコヒーレント光の光源がキセノンランプである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記仮固定材層が、前記硬化性樹脂層とは別の層として設けられた金属層を前記光吸収層として有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属層の前記インコヒーレント光に対する透過率が3.1%以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光吸収層が、第一層及び第二層の2層を有し、前記支持部材側から前記第一層及び前記第二層の順に積層されており、
前記第一層がタリウム、白金、ニッケル、チタン、タングステン及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含み、
前記第二層が銅、アルミニウム、銀及び金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
支持部材と、該支持部材上に設けられた光吸収層と、を有し、
前記支持部材のキセノンランプから照射されるインコヒーレント光に対する透過率が90%以上であり、
前記光吸収層が金属層であり、前記金属層のキセノンランプから照射されるインコヒーレント光に対する透過率が3.1%以下である、
光吸収積層体。
【請求項8】
前記光吸収層の厚みが75nm以上である、請求項7に記載の光吸収積層体。
【請求項9】
前記光吸収層が、第一層及び第二層の2層を有し、前記支持部材側から前記第一層及び前記第二層の順に積層されており、
前記第一層がタリウム、白金、ニッケル、チタン、タングステン及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含み、
前記第二層が銅、アルミニウム、銀及び金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む、請求項7又は8に記載の光吸収積層体。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載の光吸収積層体と、硬化性樹脂層と、を備え、
前記光吸収積層体の金属層と前記硬化性樹脂層とが、前記光吸収積層体の支持部材側からこの順に積層され、それにより前記金属層及び前記硬化性樹脂層を有する仮固定材層が形成されている、
仮固定用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を製造する方法、光吸収積層体、及び仮固定用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造において、半導体ウェハ等の半導体部材に集積回路を組み入れた後で、半導体部材を加工することがある。半導体部材には、例えば、裏面の研削、又はダイシングのような加工処理が施される。半導体部材は、通常、支持部材に仮固定された状態で加工され、その後で半導体部材が支持部材から分離される。例えば、特許文献1は、半導体部材を支持部材から分離する方法として、半導体部材を仮固定材層を介して支持部材に仮固定し、加工処理後に加熱しながら半導体部材を支持部材から物理的に分離する方法を開示している。特許文献2、3は、仮固定材層にレーザーを照射することによって、半導体部材を支持部材から分離する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-126803号公報
【特許文献2】特開2016-138182号公報
【特許文献3】特開2013-033814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、支持部材に対して仮固定された半導体部材を加工する工程を含む、半導体装置を製造する方法に関して、加工後の半導体部材を、簡易な処理によって支持部材から容易に分離できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る半導体装置を製造する方法は、
支持部材と該支持部材上に設けられた仮固定材層とを備える仮固定用積層体であって、前記仮固定材層が、前記仮固定材層の少なくとも一方の最表面を含む硬化性樹脂層を有する、仮固定用積層体を準備する工程と、
半導体基板及び該半導体基板の一方の面側に設けられた再配線層を有する半導体部材を、前記再配線層が前記硬化性樹脂層側に位置する向きで、前記仮固定材層を介して前記支持部材に対して仮固定する工程と、
前記支持部材に対して仮固定された前記半導体部材を加工する工程と、
前記仮固定用積層体に対して前記支持部材側からインコヒーレント光を照射し、それにより前記半導体部材を前記支持部材から分離する工程と、
をこの順に備える。
前記仮固定材層が、光を吸収して熱を発生する光吸収層を有する。前記光吸収層が、前記硬化性樹脂層の一部として、又は、前記硬化性樹脂層とは別の層として設けられる。前記支持部材の前記インコヒーレント光に対する透過率が90%以上である。前記仮固定材層の前記インコヒーレント光に対する透過率が3.1%以下である。
【0006】
上記方法によれば、インコヒーレント光の照射という簡易な処理によって、加工後の半導体部材を支持部材から容易に分離することができる。インコヒーレント光の照射は、コヒーレント光であるレーザーの照射と比較して大きな照射面積を確保し易いため、簡易に行うことができる。仮固定材層が特定の透過率を有する支持部材及び光吸収層を組み合わせを含むことによって、インコヒーレント光の照射であっても、半導体部材を、支持部材から容易に分離する状態にすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、支持部材に対して仮固定された半導体部材を加工する工程を含む、半導体装置を製造する方法に関して、加工後の半導体部材を、簡易な処理によって支持部材から容易に分離できる方法が提供される。本発明の方法は、比較的エネルギー量の小さいインコヒーレント光であっても、加工後の半導体部材を支持部材から容易に分離できる。エネルギー量の小さいインコヒーレント光を用いることにより、半導体部材の再配線層のような微細な構造の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)、(b)及び(c)は半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式図である。
図2】光吸収積層体の一実施形態を示す模式図である。
図3】(a)、(b)は半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式図である。
図4】(a)、(b)は半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式図である。
図5】(a)、(b)及び(c)は半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本明細書中で参照される各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。重複する説明は省略されることがある。
【0011】
本明細書における数値及びその範囲も、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基等の他の類似表現についても同様である。
【0013】
半導体装置を製造するために、半導体部材を加工する間、半導体部材を支持部材に対して仮固定するための仮固定用積層体が準備される。図1は、仮固定用積層体のいくつかの実施形態を示す断面図である。図1に示される仮固定用積層体1は、支持部材10と、支持部材10上に設けられた仮固定材層30とを有する。仮固定材層30は、硬化性樹脂層31を有する。硬化性樹脂層31は、仮固定材層30の支持部材10とは反対側の最表面Sを含む。加えて、仮固定材層30は、硬化性樹脂層31とは別の層として設けられた光吸収層32、又は、硬化性樹脂層31の一部として設けられた光吸収層31Bを有する。光吸収層32,31Bは、光を吸収して熱を発生する層である。
【0014】
図1(a)に示された仮固定用積層体1の仮固定材層30は、支持部材10とは反対側の最表面Sを含む硬化性樹脂層31と、硬化性樹脂層31とは別の層として設けられた光吸収層32とを有する。言い換えると、支持部材10上に、光吸収層32及び硬化性樹脂層31がこの順に積層されている。
【0015】
図1(b)に示された仮固定用積層体1の仮固定材層30は、光吸収層31Bをその一部として含む硬化性樹脂層31からなる。ここでの硬化性樹脂層31は、最表面Sを含む光吸収層31Bと、光吸収層31Bの支持部材10側に設けられた、実質的に非発熱性の硬化性樹脂層31Aとを有する。
【0016】
図1(c)に示された仮固定用積層体1の仮固定材層30の場合、図1(b)と同様の光吸収層31Bに加えて、光吸収層32が硬化性樹脂層31とは別の層として更に設けられている。硬化性樹脂層31とは別の層として設けられた光吸収層32に代えて、硬化性樹脂層31の一部を構成する光吸収層が硬化性樹脂層31Aと支持部材10との間に更に設けられてもよい。
【0017】
仮固定用積層体1は、例えば、支持部材10上に各層を順次形成することによって得ることができる。硬化性樹脂層及び光吸収層を有する積層フィルムを準備し、それらを支持部材10上に積層してもよい。図2に例示される光吸収積層体を準備し、これを用いて仮固定用積層体1を得ることもできる。図2に示される光吸収積層体3は、支持部材10と、支持部材10上に設けられた光吸収層32とを有する。光吸収層32が、支持部材10に隣接する金属層であってもよい。光吸収層32としての金属層の、キセノンランプから照射されるインコヒーレント光に対する透過率が3.1%以下、3.0%以下、2.5%以下、又は1.5%以下であってもよく、0%以上であってもよい。図1の仮固定用積層体1を、光吸収積層体と、硬化性樹脂層とから構成される積層体とみなすこともできる。例えば、図1の仮固定用積層体1を、光吸収積層体3の光吸収層32上に硬化性樹脂層32形成する工程を含む方法によって製造することができる。
【0018】
図3図4及び図5は、仮固定用積層体を用いて半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す工程図である。ここでは図1(a)の仮固定用積層体1を用いた方法が例示されるが、他の構成の仮固定用積層体を用いて同様に半導体装置を製造することもできる。図3~5に示される方法は、半導体部材45を仮固定材層30を介して支持部材10に対して仮固定する工程(図3)と、支持部材10に対して仮固定された半導体部材45を加工する工程(図4(a))と、加工された半導体部材45を封止する封止層50を形成する工程(図4(b))と、仮固定用積層体1に対して支持部材10側からインコヒーレント光Aを照射し、それにより半導体部材45を支持部材10から分離する工程(図4(b))と、をこの順に備える。半導体部材45は、半導体基板40及び半導体基板40の一方の面側に設けられた再配線層41を有する。半導体部材45は、再配線層41が硬化性樹脂層31側に位置する向きで硬化性樹脂層31上に配置される。半導体部材45を仮固定材層30を介して支持部材10に対して仮固定する工程は、硬化性樹脂層31上に、再配線層41が硬化性樹脂層31側に位置する向きで半導体部材45を配置することと、硬化性樹脂層31を硬化させることとを含んでもよい。
【0019】
仮固定用積層体1を構成する支持部材10及び仮固定材層30は、仮固定用積層体1に対して照射されるインコヒーレントに対する特定の透過率を有する。支持部材10のインコヒーレント光に対する透過率は、90%以上である。仮固定材層30のインコヒーレント光に対する透過率は、3.1%以下である。支持部材10の透過率が高く、且つ、仮固定材層30の透過率が低いことにより、低いエネルギー量のインコヒーレント光の照射であっても、半導体部材45を支持部材10から容易に分離することができる。インコヒーレント光のエネルギー量が低いと、半導体部材45の再配線層41又は他の周辺部材が、光照射による損傷を受け難い。同様の観点から、支持部材10のインコヒーレント光に対する透過率が、60%以上、又は70%以上であってもよく、100%以下であってもよい。仮固定材層30のインコヒーレント光に対する透過率が、3.0%以下、2.5%以下、又は1.5%以下であってもよく、0%以上であってもよい。
【0020】
支持部材10は、高い透過率を有し、半導体部材45の加工時に受ける負荷に耐え得る板状体である。支持部材10の例としては、無機ガラス基板、透明樹脂基板が挙げられる。
【0021】
支持部材10の厚みは、例えば、0.1~2.0mmであってよい。支持部材10の厚みが0.1mm以上であると、ハンドリングが容易となる傾向にある。支持部材10の厚みが2.0mm以下であると、材料費を抑制することができる傾向にある。
【0022】
仮固定材層30の半導体部材45が仮固定される側の最表面Sは、硬化性樹脂層31の表面である。例えば、硬化性樹脂層31上に半導体部材45が載せられた状態で硬化性樹脂層31を硬化させることにより、半導体部材45を支持部材10に対して仮固定することができる。言い換えると、半導体部材45が、硬化した硬化性樹脂層31cを有する仮固定材層30を介して支持部材10に対して一時的に接着され得る。
【0023】
光吸収層32は、光を吸収して熱を発生する層である。光吸収層32が設けられることにより、仮固定材層30は容易に低い透過率を有することができる。
【0024】
硬化性樹脂層31は、熱又は光によって硬化する硬化性樹脂組成物を含む層である。硬化前の硬化性樹脂層31は、半導体部材45を圧着等によって貼り付けることが可能な程度の接着性を有する。硬化した硬化性樹脂層31cは、半導体部材45が加工される間、半導体部材45を保持する。本明細書において、硬化性樹脂層31を構成する導電性粒子以外の成分は、全て硬化性樹脂組成物の成分とみなされる。
【0025】
硬化性樹脂層31の厚みは、応力緩和の観点から、例えば、50μm以下、40μm以下、又は30μm以下で0.1μm以上であってもよく、50μm以下、40μm以下、又は30μm以下で1μm以上であってもよい。
【0026】
硬化した硬化性樹脂層31cの25℃における貯蔵弾性率が、5~100MPaであってもよい。硬化した硬化性樹脂層31cの25℃における貯蔵弾性率が5MPa以上であると、支持部材10が撓むことなく半導体部材45を保持し易い。また、半導体部材45を支持部材から分離した時に、硬化性樹脂層31cが半導体部材45上に残さを残し難い傾向にある。硬化した硬化性樹脂層31cの25℃における貯蔵弾性率が100MPa以下であると、半導体部材45の位置ずれを小さくできる傾向にある。同様の観点から、硬化した硬化性樹脂層31cの25℃における貯蔵弾性率は、5.5MPa以上、6MPa以上、又は6.3MPa以上で100MPa以下であってもよく、5.5MPa以上、6MPa以上、又は6.3MPa以上で90MPa以下であってもよく、5.5MPa以上、6MPa以上、又は6.3MPa以上で80MPa以下であってもよく、5.5MPa以上、6MPa以上、又は6.3MPa以上で70MPa以下であってもよく、5.5MPa以上、6MPa以上、又は6.3MPa以上で65MPa以下であってもよい。本明細書において、硬化した硬化性樹脂層31cの貯蔵弾性率は、昇温速度5℃/分、周波数1Hz、引張モードの条件で測定される粘弾性測定によって求められる値を意味する。
【0027】
硬化した硬化性樹脂層31cの25℃における貯蔵弾性率は、例えば、後述の炭化水素樹脂の含有量を大きくする、高いTgを有する炭化水素樹脂を適用する、絶縁性フィラーを硬化性樹脂組成物に添加するといった方法によって、増加させることができる。
【0028】
硬化した硬化性樹脂層31cの250℃における貯蔵弾性率が、0.70MPa以上、0.80MPa以上、0.85MPa以上、又は0.90MPa以上で2.00MPa以下であってもよく、0.70MPa以上、0.80MPa以上、0.85MPa以上、又は0.90MPa以上で2.00MPa以下であってもよく、0.70MPa以上、0.80MPa以上、0.85MPa以上、又は0.90MPa以上で1.90MPa以下であってもよく、0.70MPa以上、0.80MPa以上、0.85MPa以上、又は0.90MPa以上で1.80MPa以下であってもよく、0.70MPa以上、0.80MPa以上、0.85MPa以上、又は0.90MPa以上で1.75MPa以下であってもよい。
【0029】
硬化性樹脂層31を構成する硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、炭化水素樹脂とを含有していてもよい。炭化水素樹脂は、主骨格が炭化水素で構成される樹脂である。硬化性樹脂組成物が炭化水素樹脂を含んでいると、半導体部材45を硬化性樹脂層31に低温で貼り付け易い。
【0030】
硬化性樹脂層31の低温貼付性の観点から、炭化水素樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以下であってもよい。硬化性樹脂層31の良好な剥離性の観点から、炭化水素樹脂のTgが-100℃以上、又は-50℃以上であってもよい。
【0031】
炭化水素樹脂のTgは、示差走査熱量測定(DSC)によって得られる中間点ガラス転移温度値である。炭化水素樹脂のTgは、具体的には、昇温速度10℃/分、測定温度:-80~80℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度である。
【0032】
炭化水素樹脂は、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・スチレン共重合体、エチレン・ノルボルネン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、及びこれらの水素添加物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。これらの炭化水素樹脂は、カルボキシル基を有していてもよい。カルボキシル基は、例えば、無水マレイン酸等を用いた変性によって導入される。炭化水素樹脂は、スチレンに由来するモノマー単位を含むスチレン系樹脂を含んでいてもよい。スチレン系樹脂は、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)であってもよい。
【0033】
炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万~500万又は10万~200万であってよい。重量平均分子量が1万以上であると、仮固定材層30の耐熱性を確保し易くなる傾向にある。重量平均分子量が500万以下であると、仮固定材層30のフローの低下及び貼付性の低下を抑制し易い傾向にある。ここでの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0034】
炭化水素樹脂の含有量は、硬化性樹脂層31を構成する硬化性樹脂組成物の全質量100質量部に対して、40質量部以上、50質量部以上又は60質量部以上で90質量部以下であってもよく、40質量部以上、50質量部以上又は60質量部以上で85質量部以下であってもよく、40質量部以上、50質量部以上又は60質量部以上で80量部以下であってもよい。炭化水素樹脂の含有量がこれら数値範囲内にあると、薄く平坦な硬化性樹脂層31を形成し易い傾向にある。また、硬化性樹脂層31が、低温での良好な貼付性と、硬化後の適切な貯蔵弾性率を有し易い傾向がある。
【0035】
熱硬化性樹脂は、熱硬化反応により硬化性樹脂組成物を硬化させる成分である。熱硬化反応は、熱硬化樹脂と硬化剤との反応、熱硬化性樹脂の自己重合、又はこれらの組み合わせであることができる。熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、及びユリア樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化性樹脂は、耐熱性、作業性、及び信頼性により優れることから、エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0036】
エポキシ樹脂は、1以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ樹脂は、2以上のエポキシ基を有していてもよい。2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂等)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
【0037】
硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及びその硬化剤を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂及びその硬化剤の合計の含有量は、硬化性樹脂組成物の全質量100質量部に対して、10質量部以上、15質量部以上又は20質量部以上で60質量部以下であってもよく、10質量部以上、15質量部以上又は20質量部以上で50質量部以下であってもよく、10質量部以上、15質量部以上又は20質量部以上で40質量部以下であってよい。熱硬化性樹脂及びその硬化剤の合計の含有量がこれら範囲内にあると、薄く平坦な硬化性樹脂層を容易に形成できる傾向、及び、硬化した硬化性樹脂層31cの耐熱性がより優れる傾向がある。
【0038】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂の硬化剤を含んでいてもよい。エポキシ樹脂の硬化剤は、特に制限されないが、その例としては、アミン、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)、及びフェノール樹脂(フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂等)が挙げられる。
【0039】
熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の硬化反応を促進する硬化促進剤を更に含んでいてもよい。硬化促進剤の例としては、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール-テトラフェニルボレート、及び1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7-テトラフェニルボレートが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂及び硬化剤の合計量100質量部に対して、0.01~5質量部であってよい。硬化促進剤の含有量がこの範囲内であると、硬化性樹脂層の硬化性と硬化後の耐熱性がより優れる傾向にある。
【0041】
硬化性樹脂層31を構成する硬化性樹脂組成物は、重合性不飽和基を有する重合性モノマーと、重合開始剤とを含んでいてもよい。この場合も、硬化性樹脂組成物が上述の炭化水素樹脂を更に含んでいてもよい。
【0042】
重合性モノマーは、エチレン性不飽和基等の重合性不飽和基を有する化合物である。重合性モノマーは、1官能、2官能、又は3官能以上のいずれであってもよいが、充分な硬化性を得る観点から、2官能以上の重合性モノマーを用いてもよい。重合性モノマーの例としては、(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルピリジン、ビニルアミド、及びアリール化ビニルが挙げられる。重合性モノマーが、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリル酸であってもよい。(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0043】
単官能(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びモノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)スクシネート等の脂肪族(メタ)アクリレート;並びに、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、1-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(1-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
2官能(メタ)アクリレートの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、及びエトキシ化2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;並びに、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0045】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;並びに、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、及びクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等の芳香族エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
これらの(メタ)アクリレートは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの(メタ)アクリレートをその他の重合性モノマーと組み合わせてもよい。
【0047】
重合性モノマーの含有量は、硬化性樹脂層31を構成する硬化性樹脂組成物の質量100質量部に対して、10~60質量部であってよい。
【0048】
重合開始剤は、加熱又は紫外光等の照射によって重合性モノマーの重合反応を開始させる化合物である。例えば、重合性モノマーがエチレン性不飽和基を有する化合物である場合、重合開始剤は熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤又はこれらの組み合わせであってよい。
【0049】
熱ラジカル重合開始剤の例としては、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル;並びに、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2’-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0050】
光ラジカル重合開始剤の例としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンゾインケタール;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン;並びに、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシドが挙げられる。
【0051】
これらの熱及び光ラジカル重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
重合開始剤の含有量は、重合性モノマーの総量100質量部に対して、0.01~5質量部であってよい。
【0053】
硬化性樹脂層31を構成する硬化性樹脂組成物は、その他の成分として、絶縁性フィラー、増感剤、酸化防止剤等を更に含んでいてもよい。
【0054】
絶縁性フィラーは、硬化性樹脂組成物に低熱膨張性、低吸湿性を付与する目的で添加される。絶縁性フィラーの例としては、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、セラミック等の非金属無機フィラーが挙げられる。これらの絶縁性フィラーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
絶縁性フィラーの含有量は、硬化性樹脂層31を構成する硬化性樹脂組成物の全質量100質量部に対して、5~20質量部であってよい。絶縁性フィラーの含有量がこの数値範囲内にあると、硬化した硬化性樹脂層31cが優れた耐熱性及び良好な剥離性を有する傾向がある。
【0056】
増感剤の例としては、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ベンゾピレン、フルオランテン、ルブレン、ピレン、キサントン、インダンスレン、チオキサンテン-9-オン、2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、4-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、及び1-クロロ-4‐プロポキシチオキサントンが挙げられる。増感剤の含有量は、硬化性樹脂層31を構成する硬化性樹脂組成物の全質量100質量部に対して、0.01~10質量部であってもよい。
【0057】
酸化防止剤の例としては、ベンゾキノン、ハイドロキノン等のキノン誘導体、4-メトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール等のフェノール誘導体、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のアミノキシル誘導体、並びに、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、硬化性樹脂層31を構成する硬化性樹脂組成物の全質量100質量部に対して、0.1~10質量部であってもよい。
【0058】
硬化性樹脂層31は、例えば、支持フィルム及び支持フィルム上に形成された硬化性樹脂層を有する積層フィルムを予め準備し、これを光吸収層32に貼り付けることによって、光吸収層32上に設けられる。積層フィルムの光吸収層32への貼り付けは、ロールラミネーター、真空ラミネーター等を用いて、室温(20℃)で又は加熱しながら行うことができる。支持フィルム及び硬化性樹脂層を有する積層フィルムは、例えば、熱硬化性樹脂又は重合性モノマーと、有機溶剤と、必要によりその他の成分とを含む樹脂ワニスを支持フィルムに塗布することと、塗膜から有機溶剤を除去することとを含む方法によって得ることができる。あるいは、同様の樹脂ワニスを光吸収層32に直接塗布し、塗膜から有機溶剤を除去する方法によって、光吸収層32上に硬化性樹脂層31を形成してもよい。
【0059】
光吸収層32の一例は、光を吸収して熱を発生する導電体を含む導電体層である。光吸収層32としての導電体層を構成する導電体の例としては、金属、金属酸化物、及び導電性カーボン材料が挙げられる。金属は、クロム、銅、チタン、銀、白金、金等の単体金属であってもよいし、ニッケル-クロム、ステンレス鋼、銅-亜鉛等の合金であってもよい。金属酸化物の例としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛、及び酸化ニオブが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。導電体は、クロム、チタン、又は導電性カーボン材料であってよい。
【0060】
光吸収層32は、単層又は複数の層からなる金属層であってもよい。金属層は、インコヒーレント光に対する3.1%以下の透過率を有し易い。例えば、光吸収層32が銅層及びチタン層からなる金属層であってもよい。光吸収層32としての金属層は、真空蒸着及びスパッタリング等の物理気相成長(PVD)、プラズマ化学蒸着等の化学気相成長(CVD)によって形成された層であってもよいし、電解めっき又は無電解めっきによって形成されためっき層であってもよい。物理気相成長によれば、支持部材10が大きな面積を有していても、支持部材10の表面を覆う光吸収層32としての金属層を効率的に形成することができる。
【0061】
光吸収層32が単層の金属層である場合、光吸収層32が、タリウム(Ta)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)及び金(Au)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含んでいてもよい。
【0062】
光吸収層32が、第一層及び第二層の2層から構成され、支持部材10側から第一層及び第二層の順に積層されていてもよい。この場合、例えば、第一層が高い光吸収性を有し、第二層が高い熱膨張係数及び高い弾性率を有していると、特に良好な剥離性が得られ易い。この観点から、例えば、第一層がタリウム(Ta)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)及びクロム(Cr)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含んでいてもよく、第二層が銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)及び金(Au)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含んでいてもよい。第一層がチタン(Ti)、タングステン(W)及びクロム(Cr)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含んでいてもよく、第二層が銅(Cu)及びアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含んでいてもよい。
【0063】
光吸収層の他の例は、光を吸収して熱を発生する導電性粒子と、導電性粒子が分散したバインダー樹脂とを含有する層である。導電性粒子は、上述の導電体を含む粒子であってもよい。バインダー樹脂が硬化性樹脂組成物であってもよく、その場合、光吸収層は硬化性樹脂層31の一部を構成する。例えば、図1(b)の仮固定用積層体1における光吸収層31Bは、導電性粒子及び硬化性樹脂組成物を含む層であることができる。光吸収層を構成する硬化性樹脂組成物は、光吸収層以外の部分の硬化性樹脂層を構成する硬化性樹脂組成物と同様の成分を含むことができる。光吸収層を構成する硬化性樹脂組成物は、光吸収層以外の部分の硬化性樹脂層を構成する硬化性樹脂組成物と同じでも異なっていてもよい。光吸収層における導電性粒子の含有量は、光吸収層の導電性粒子以外の成分の総量、すなわち、バインダー樹脂又は硬化性樹脂組成物の質量100質量部に対して、10~90質量部であってよい。導電性粒子の含有量が大きいと、光吸収層がインコヒーレント光に対する3.1%以下の透過率を有し易い。透過率の観点から、導電性粒子の含有量は、20質量%以上、又は30質量%以上であってもよい。
【0064】
導電性粒子及びバインダー樹脂を含む光吸収層は、例えば、導電性粒子、バインダー樹脂及び有機溶剤を含有するワニスを支持部材上又は硬化性樹脂層上に塗布することと、塗膜から有機溶剤を除去することとを含む方法によって形成することができる。予め作製された光吸収層32を支持部材10上又は硬化性樹脂層上に積層してもよい。光吸収層及び硬化性樹脂層からなる積層体を支持部材上に積層してもよい。
【0065】
光吸収層32の厚みは、軽剥離性の観点から、1~5000nm又は100~3000nmであってよい。また、光吸収層32の厚みが50~300nmであると、光吸収層32が十分に低い透過率を有し易い。光吸収層32が単層又は複数の層からなる金属層である場合、光吸収層32(又は金属層)の厚みは、良好な剥離性の観点から、75nm以上、90nm以上、又は100nm以上であってもよく、1000nm以下であってもよい。特に光吸収層32が単層の金属層である場合、光吸収層32(又は金属層)の厚みは、良好な剥離性の観点から、100nm以上、125nm以上、150nm以上又は200nm以上であってもよく、1000nm以下であってもよい。光吸収層32が光吸収性が比較的低い金属(例えばCu、Ni)を含む金属層、又は、熱膨張係数が比較的低い金属(例えばTi)を含む金属層であっても、その厚みが大きいと、より良好な剥離性が得られ易い傾向がある。
【0066】
仮固定材層30の厚み(図1(a)の場合、光吸収層32と硬化性樹脂層31との合計の厚み)は、応力緩和の観点から、0.1~2000μm又は10~500μmであってよい。
【0067】
仮固定用積層体1を準備した後、図3(a)に示されるように、硬化性樹脂層31上に加工前の半導体部材45が載せられる。半導体部材45は、半導体基板40及び再配線層41を有する。半導体部材45は、外部接続端子を更に有していてもよい。半導体基板40は、半導体ウェハ、又は半導体ウェハを分割して得られた半導体チップであってよい。図3(a)の例では複数の半導体部材45が硬化性樹脂層31に載せられるが、半導体部材の数が1個であってもよい。
【0068】
半導体部材45の厚みは、半導体装置の小型化、薄型化に加えて、搬送時、加工工程等の際の割れ抑制の観点から、1~1000μm、10~500μm、又は20~200μmであってもよい。
【0069】
硬化性樹脂層31上に載せられた半導体部材45は、例えば真空プレス機又は真空ラミネーターを用いて硬化性樹脂層31に対して圧着される。真空プレス機を用いる場合、圧着の条件は、気圧1hPa以下、圧着圧力1MPa、圧着温度120~200℃、及び保持時間100~300秒間であることができる。真空ラミネーターを用いる場合、圧着の条件は、例えば、気圧1hPa以下、圧着温度60~180℃又は80~150℃、ラミネート圧力0.01~0.5Mpa又は0.1~0.5Mpa、保持時間1~600秒間又は30~300秒間であることができる。
【0070】
硬化性樹脂層31上に半導体部材45が配置された後、硬化性樹脂層31を熱硬化又は光硬化させることにより、半導体部材45が、硬化した硬化性樹脂層31cを有する仮固定材層30を介して、支持部材10に対して仮固定される。熱硬化の条件は、例えば、300℃以下又は100~200℃で、1~180分間又は1~60分間であってよい。
【0071】
続いて、図4(a)に示されるように、支持部材10に対して仮固定された半導体部材が加工される。図4(a)は、半導体基板の薄化を含む加工の例を示す。半導体部材の加工は、これに限定されず、例えば、半導体基板の薄化、半導体部材の分割(ダイシング)、貫通電極の形成、エッチング処理、めっきリフロー処理、スパッタリング処理、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0072】
半導体基板40の薄化は、グラインダー等を用いて、半導体基板40の再配線層41とは反対側の面を研削することによって行われる。薄化された半導体基板40の厚みは、例えば、100μm以下であってよい。
【0073】
半導体部材45の加工の後、図4(b)に示されるように、加工された半導体部材45を封止する封止層50が形成される。封止層50は、半導体素子の製造のために通常用いられる封止材を用いて形成することができる。例えば、封止層50を熱硬化性樹脂組成物によって形成してもよい。封止層50に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、例えば、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルジエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を含む。封止層50、及びこれを形成するための熱硬化性樹脂組成物が、フィラー、及び/又は難燃剤等の添加剤を含んでもよい。
【0074】
封止層50は、例えば、固形材、液状材、細粒材、又は封止フィルムを用いて形成される。封止フィルムを用いる場合、コンプレッション封止成形機、真空ラミネート装置等が用いられる。例えば、これら装置を用いて、40~180℃(又は60~150℃)、0.1~10MPa(又は0.5~8MPa)、かつ0.5~10分間の条件で熱溶融させた封止フィルムで半導体部材45を被覆することにより、封止層50を形成することができる。封止フィルムの厚みは、封止層50が加工後の半導体部材45の厚み以上になるように調整される。封止フィルムの厚みは、50~2000μm、70~1500μm、又は100~1000μmであってよい。
【0075】
封止層50を形成した後、図5(a)に示されるように、封止層50及び硬化性樹脂層31cを、半導体部材45を1個ずつ含む複数の部分に分割してもよい。
【0076】
図5(b)に示されるように、仮固定用積層体1に対して支持部材10側からインコヒーレント光Aを照射し、それにより半導体部材45を支持部材10から分離する。インコヒーレント光Aの照射によって、光吸収層32が光を吸収して熱を瞬間的に発生する。発生した熱によって、例えば、硬化した硬化性樹脂層31cの溶融、支持部材10と半導体部材45との間に生じる熱応力、及び光吸収層32の飛散が生じ得る。これらの現象のうち1つ又は2つ以上が主な原因となって、半導体部材45が支持部材10から容易に分離し得る。硬化性樹脂層31を構成する硬化性樹脂組成物が炭化水素樹脂を含み、硬化した硬化性樹脂層の25℃における貯蔵弾性率が5~100MPaであると、光吸収層32と硬化した硬化性樹脂層31のとの界面での剥離が起こり易い傾向がある。この傾向は、インコヒーレント光Aのエネルギー量が5~25J/cmの範囲である場合に特に顕著である。半導体部材45を支持部材10から分離するために、インコヒーレント光Aの照射とともに、半導体部材45に対して応力をわずかに加えてもよい。
【0077】
インコヒーレント光Aは、コヒーレントでない光であり、干渉縞が発生しない、可干渉性が低い、指向性が低いといった性質を有する電磁波である。インコヒーレント光は、光路長が長くなるほど、減衰する傾向を有する。レーザー光は、一般にコヒーレント光であるのに対して、太陽光、蛍光灯の光等の光は、インコヒーレント光である。インコヒーレント光は、レーザー光を除く光ということもできる。インコヒーレント光の照射面積は、一般にコヒーレント光(すなわち、レーザー光)よりも圧倒的に広いため、照射回数を少なくすることが可能である。例えば1回の照射により、複数の半導体部材45の分離を生じさせ得る。
【0078】
インコヒーレント光Aは、赤外線を含んでいてもよい。インコヒーレント光Aは、パルス光であってもよい。インコヒーレント光Aの光源は、特に制限されないが、キセノンランプであってよい。キセノンランプは、キセノンガスを封入した発光管での印加・放電による発光を利用したランプである。キセノンランプは、電離及び励起を繰り返しながら放電するため、紫外光領域から赤外光領域までの連続波長を安定的に有する。キセノンランプは、メタルハライドランプ等のランプと比較して始動に要する時間が短いため、工程に係る時間を大幅に短縮することができる。また、発光には、高電圧を印加する必要があるため、高熱が瞬間的に生じるが、冷却時間が短く、連続的な作業が可能な点でも、キセノンランプは有利である。
【0079】
キセノンランプの照射条件は、印加電圧、パルス幅、照射時間、照射距離(光源と仮固定材層との距離)、照射エネルギー等を含み、照射回数等に応じてこれらを任意に設定することができる。半導体部材45のダメージを低減する観点から、1回の照射で半導体部材45を分離できる照射条件を設定してもよい。
【0080】
分離した半導体部材45上に、硬化性樹脂層31cの一部が残さ31c’として付着することがある。付着した残さ31c’は、図5(c)に示されるように除去される。残さ31c’は、例えば溶剤で洗浄することにより除去される。溶剤としては、特に制限されないが、エタノール、メタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。残さ31c’の除去のために、半導体部材45を溶剤に浸漬させてもよいし、超音波洗浄を行ってもよい。100℃以下程度の低温で半導体部材45を加熱してもよい。
【0081】
以上例示された方法により、加工された半導体部材45を備える半導体素子60が得られる。得られた半導体素子60を他の半導体素子又は半導体素子搭載用基板に接続することにより半導体装置を製造することができる。
【実施例0082】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0083】
(検討1)
1-1.硬化性樹脂層
水添スチレン・ブタジエンエラストマー(商品名:ダイナロン2324P、JSR株式会社)をトルエンに溶解して、濃度40質量%のエラストマー溶液を調製した。80質量部の水添スチレン・ブタジエンエラストマーを含むエラストマー溶液と、1,9-ノナンジオールジアクリレ-ト(商品名:FA-129AS、日立化成株式会社)20質量部と、パーオキシエステル(商品名:パーヘキサ25O、日油株式会社)1質量部とを混合して、樹脂ワニスを得た。
【0084】
得られた樹脂ワニスを、精密塗工機を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社、厚み:38μm)の離型処理面に塗工した。塗膜を80℃で10分間の加熱により乾燥して、厚み約100μmの硬化性樹脂層を形成した。
【0085】
1-2.光吸収層
支持部材として、40×40mmのサイズを有するスライドガラス、すりガラス板、及びシリコンウェハを準備した。各支持部材上に、スパッタリングによりチタン層、銅層の順で形成して、チタン層(厚み:20nm)/銅層(厚み:200nm)の2層からなる光吸収層を形成した。スパッタリングにおいて、逆スパッタリングによる前処理の後、RFスパッタリングによってチタン層及び銅層を形成した。逆スパッタリング(前処理)及びRFスパッタリングの条件は以下のとおりである。
逆スパッタリング(前処理)
・Ar流速:1.2×10-2Pa・m/s(70sccm)
・RF電力:300W
・時間:300秒間
RFスパッタリング
・Ar流速:1.2×10-2Pa・m/s(70sccm)
【0086】
1-3.透過率
支持部材及び光吸収層のキセノンランプから照射される光に対する透過率を測定した。光吸収層の透過率を、実質的に仮固定材層の透過率とみなすことができる。透過率は、後述の剥離試験に使用したキセノンランプと同じキセノンランプと、分光放射光度計(USR-45、ウシオ電機株式会社)を使用して測定した。分光放射光度計の検出端子を、キセノンランプの光照射部から5cmの距離の位置に設置した。検出端子によってキセノンランプから照射される光を直接検出し、検出された光の光量をベースラインとした。次に、分光放射光度計の検出端子とキセノンランプの間に測定対象物を設置し、キセノンランプから照射され、測定対象物を透過した透過光を検出端子で検出した。検出された透過光の光量のベースラインに対する割合を、透過率とした。波長300~800nmの範囲の光の合計の光量に関する透過率を、以下の式により計算した。
透過率(%)={(透過光の波長300~800nmにおける全光量)/(ベースラインの波長300~800nmにおける全光量)}×100
光吸収層に関しては、支持部材及び光吸収層を有する積層体の透過率を、支持部材側に配置されたキセノンランプからの光によって測定した。光吸収層に入射する光の光量を、ベースライン及び支持部材の透過率から算出し、これに対する透過光の光量の割合を、光吸収層の透過率とした。
【0087】
1-4.剥離試験
各支持部材上に形成された光吸収層上に、40mm×40mmのサイズに切り出した硬化性樹脂層を配置した。真空ラミネートによって光吸収層に硬化性樹脂層を密着させて、支持部材/光吸収層/硬化性樹脂層の積層構成を有する仮固定用積層体を得た。仮固定用積層体の硬化性樹脂層上に、半導体チップ(サイズ:10mm×10mm、厚み:150μm)を配置した。180℃で1時間の加熱により硬化性樹脂層を硬化させて、支持部材に対して仮固定された半導体チップを有する剥離試験用の試験体を得た。
【0088】
各試験体に対して、仮固定用積層体の支持部材側から、キセノンランプでパルス光を照射した。光の照射条件は以下のとおりである。キセノンランプとして、Xenon社製のS2300を用いた。この装置の波長範囲は270nm~近赤外領域である。照射距離は、光源であるキセノンランプと支持部材との間の距離である。
・印加電圧:3700V
・パルス幅:200μs
・照射距離:50mm
・照射回数:1回
・照射時間:200μs
キセノンランプによる光照射の後、試験体の状態を観察し、以下の基準で剥離性を評価した。表1に評価結果が示される。
A:半導体チップが光照射だけで仮固定用積層体から自然に剥離した、又は、半導体チップと硬化性樹脂層との間にピンセットを差し込むことによって、半導体チップが、破損することなく仮固定用積層体から剥離した。
B:半導体チップと硬化性樹脂層との間にピンセットを差し込んでも半導体チップを仮固定用積層体から剥離しなかった。
【0089】
【表1】
【0090】
(検討2)
光吸収層を構成する銅層、チタン層の厚みを表2に示すように変更したこと以外は「検討1」と同様の手順で、支持部材としてスライドガラスを有する試験体を作製した。比較例3では光吸収層を設けず、支持部材上に直接、硬化性樹脂層を積層した。比較例4では光吸収層としてチタン層のみ形成した。得られた試験体の剥離性を、「検討1」と同様の剥離試験で評価した。光吸収層の透過率を「検討1」と同様の方法で測定した。評価結果が表2に示される。
【0091】
【表2】
【0092】
(検討3)
表3に示される単層又は2層の金属層から構成される光吸収層を、支持部材としての厚み1300μmのスライドガラス上にスパッタリングにより形成した。表中、光吸収層の構成は、スライドガラス側からの積層順で示されており、例えば、「Ti(50)/Cu(200)」は、厚み50nmのチタン層、厚み200nmの銅層がスライドガラス側からこの順で積層されたことを意味する。実施例1、3及び4は検討2の実施例1、3及び4と同じである。光吸収層上に、「検討1」と同じ手順で、支持部材/光吸収層/硬化性樹脂層の積層構成を有する仮固定用積層体を作製した。更に、「検討1」と同様の手順で、支持部材に対して仮固定された半導体チップを有する剥離試験用の試験体を作製した。光吸収層の透過率を「検討1」と同様の方法で測定した。
【0093】
準備した各試験体に対して、仮固定用積層体の支持部材側から、キセノンランプでパルス光を照射した。光の照射条件は以下のとおりである。キセノンランプを有する照射装置として、Novacentrix社製のPulseForge1300を用いた。照射距離は、光源であるキセノンランプと支持部材との間の距離である。パルス幅を150μsから10μsずつ順次増加させ、半導体チップが光照射だけで仮固定用積層体から自然に剥離するパルス幅の最小値を記録した。パルス光の照射は、試験体を交換しながら行われ、個別の試験体に対する照射回数は1回とした。半導体チップが剥離するパルス幅の最小値が表3に示される。
・印加電圧:800V
・パルス幅:150~700μs
・照射距離:6mm
・照射回数:1回
半導体チップが剥離するパルス幅の最小値に基づいて、以下の基準により剥離性を評価した。
AAA:150μs
AA:160μs以上350未満
A:350μs以上700μs以下、または、光吸収層の溶解による剥離(A(Melt))
B:700μs以下で剥離不可
【0094】
【表3】
【0095】
検討1、2及び3の結果から、透過率90%以上の支持部材と透過率3.1%以下の光吸収層との組み合わせを含む仮固定用積層体を用いることにより、半導体部材を仮固定した後、キセノンランプからのインコヒーレント光の照射によって半導体部材を容易に支持部材から分離できることが確認された。
【符号の説明】
【0096】
1…仮固定用積層体、10…支持部材、30…仮固定材層、31…硬化性樹脂層、31c…硬化した硬化性樹脂層、32…光吸収層、40…半導体基板、41…再配線層、45…半導体部材、50…封止層、60…半導体素子、S…仮固定材層の最表面。
図1
図2
図3
図4
図5