IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-基板の下面に対するガス整流部材 図1
  • 特開-基板の下面に対するガス整流部材 図2
  • 特開-基板の下面に対するガス整流部材 図3
  • 特開-基板の下面に対するガス整流部材 図4
  • 特開-基板の下面に対するガス整流部材 図5
  • 特開-基板の下面に対するガス整流部材 図6
  • 特開-基板の下面に対するガス整流部材 図7
  • 特開-基板の下面に対するガス整流部材 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133317
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】基板の下面に対するガス整流部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01L21/306 R
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024115415
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2021025510の分割
【原出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】橋本 佑介
(72)【発明者】
【氏名】東島 治郎
(72)【発明者】
【氏名】緒方 信博
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】二俣 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】中澤 貴士
(57)【要約】
【課題】本開示は、エッチング処理の面内均一性を高めることが可能な基板処理装置を説明する。
【解決手段】基板処理装置は、基板を支持する支持部と、基板の下面と離間しつつ対向するベース部材と、ベース部材及び支持部を回転させる回転部と、ガス供給部と、ガス供給部から供給されたガスを整流するガス整流部とを備える。ガス整流部は、基板の下面と対向する先端部を含む棒状部材と、先端部を取り囲むように配置された整流部材とを含む。先端部は、先端部の外周面から外方に突出した後に下方に向けて延びるように外周面に設けられた折り返し部を含む。整流部材は、内周縁が先端部の外周面と離間するように配置された底壁部と、先端部が折り返し部と先端部の外周面との間に位置するように底壁部の内周部から上方に延びる突出部と、底壁部と離間した状態で水平方向に沿って延びる水平整流部と、水平整流部と底壁部とを接続する複数の柱部とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に膜が形成されている基板を支持するように構成された支持部と、
前記支持部に支持されている前記基板の下面と離間しつつ対向するように構成され、貫通孔が設けられたベース部材と、
前記ベース部材及び前記支持部を回転させるように構成された回転部と、
前記支持部に支持されている前記基板の上面にエッチング液を供給するように構成された薬液供給部と、
ガス供給部と、
前記ガス供給部から供給されたガスを整流して、前記支持部に支持されている前記基板の下面と前記ベース部材との間の空間に整流後のガスを排出するように構成されたガス整流部とを備え、
前記ガス整流部は、
前記支持部に支持されている前記基板の下面と対向し且つ前記貫通孔内に配置された先端部を含み、上下方向に沿って延びる棒状部材と、
前記先端部を取り囲むように配置された環状の整流部材とを含み、
前記先端部は、前記先端部の外周面から外方に突出した後に下方に向けて延びるように前記外周面に設けられた、環状の折り返し部を含み、
前記整流部材は、
内周縁が前記先端部の外周面と離間するように配置された、環状の底壁部と、
先端部が前記折り返し部と前記先端部の外周面との間に位置するように前記底壁部の内周部から上方に延びる、環状の突出部と、
前記折り返し部よりも外方で且つ前記底壁部の上方において、前記底壁部と離間した状態で水平方向に沿って延びる、環状の水平整流部と、
前記水平整流部と前記底壁部とを接続し、前記先端部の周方向に沿って並ぶ複数の柱部とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
水平方向における前記折り返し部と前記水平整流部との離間距離は2mm~10mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記整流部材は、前記折り返し部と前記水平整流部との間に位置するようにこれらの一方に設けられた、環状のカバー部をさらに含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記貫通孔は前記ベース部材の中央部に設けられており、
前記底壁部の外周縁が前記貫通孔に接続されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の柱部は、前記整流部材の回転軸方向から見て、当該回転軸の周方向及び径方向の双方に対して斜めに延びている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
制御部をさらに備え、
前記薬液供給部は、
前記エッチング液を吐出するように構成されたノズルと、
前記支持部に支持されている前記基板の上方において前記ノズルを水平方向に沿って移動させるように構成された駆動部とを含み、
前記制御部は、前記駆動部及び前記ガス供給部を制御して、前記ノズルから前記基板の中央部に前記エッチング液を吐出する際の前記ガス整流部へのガスの供給量が、前記ノズルから前記基板の外周部に前記エッチング液を吐出する際の前記ガス整流部へのガスの供給量よりも少なくなるように、前記エッチング液の前記基板への吐出位置に応じて前記ガス供給部からのガスの供給量を調節する処理を実行するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記中央部は、前記基板の中心からの半径が60mm~90mmまでの範囲である、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記駆動部を制御して、前記ノズルを往復移動させることにより前記基板の中心近傍と前記基板の周縁部との間に対して前記エッチング液を供給させる処理を実行するように構成されている、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記駆動部を制御して、前記ノズルから前記基板の中央部に前記エッチング液を吐出する際の前記ノズルの移動速度を150mm/sec以下とする処理を実行するように構成されている、請求項6~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記ガス供給部を制御して、前記ガス整流部へのガスの供給量を前記基板の回転数に応じて調節する処理を実行するように構成されている、請求項6~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
上面に膜が形成されている基板の下面とベース部材とが離間しつつ対向するように、支持部で前記基板を支持する第1の工程と、
前記ベース部材及び前記支持部を回転させることにより、前記基板を回転させる第2の工程と、
回転中の前記基板の上面にエッチング液を供給しつつ、ガス整流部にガスを供給することにより、上面にエッチング液が供給されている基板の下面と前記ベース部材との間の空間に、前記ガス整流部による整流後のガスを排出させる第3の工程とを含み、
前記ガス整流部は、
前記支持部に支持されている前記基板の下面と対向し且つ前記ベース部材に設けられている貫通孔内に配置された先端部を含み、上下方向に沿って延びる棒状部材と、
前記先端部を取り囲むように配置された環状の整流部材とを含み、
前記先端部は、前記先端部の外周面から外方に突出した後に下方に向けて延びるように前記外周面に設けられた、環状の折り返し部を含み、
前記整流部材は、
内周縁が前記先端部の外周面と離間するように配置された、環状の底壁部と、
先端部が前記折り返し部と前記先端部の外周面との間に位置するように前記底壁部の内周部から上方に延びる、環状の突出部と、
前記折り返し部よりも外方で且つ前記底壁部の上方において、前記底壁部と離間した状態で水平方向に沿って延びる、環状の水平整流部と、
前記水平整流部と前記底壁部とを接続し、前記先端部の周方向に沿って並ぶ複数の柱部とを含む、基板処理方法。
【請求項12】
水平方向における前記折り返し部と前記水平整流部との離間距離は2mm~10mmである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記整流部材は、前記折り返し部と前記水平整流部との間に位置するようにこれらの一方に設けられた、環状のカバー部をさらに含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記貫通孔は前記ベース部材の中央部に設けられており、
前記底壁部の外周縁が前記貫通孔に接続されている、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の柱部は、前記整流部材の回転軸方向から見て、当該回転軸の周方向及び径方向の双方に対して斜めに延びている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第3の工程は、ノズルから前記基板の中央部に前記エッチング液を吐出する際の前記ガス整流部へのガスの供給量を、前記ノズルから前記基板の外周部に前記エッチング液を吐出する際の前記ガス整流部へのガスの供給量よりも少なくすることを含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記中央部は、前記基板の中心からの半径が60mm~90mmまでの範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の工程は、前記ノズルを往復移動させることにより前記基板の中心近傍と前記基板の周縁部との間に対して前記エッチング液を供給することを含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記第3の工程は、前記ノズルから前記基板の中央部に前記エッチング液を吐出する際の前記ノズルの移動速度を150mm/sec以下とすることを含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第3の工程は、前記ガス整流部へのガスの供給量を前記基板の回転数に応じて調節することを含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項11~20のいずれか一項に記載の方法を基板処理装置に実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、基板処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板保持手段に保持された基板を鉛直軸回りに回転させつつ、基板の下面に対して洗浄・乾燥処理を施す基板処理装置を開示している。当該装置は、基板保持手段に保持された基板の下面に対向配置されるベース部材と、ベース部材と基板の下面との間の空間に気体を噴出する気体噴出口と、気体噴出口の上方を覆うように設けられた遮断部材とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-135178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチング処理の面内均一性を高めることが可能な基板処理装置、基板処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基板処理装置の一例は、基板を支持するように構成された支持部と、支持部に支持されている基板の下面と離間しつつ対向するように構成され、貫通孔が設けられたベース部材と、ベース部材及び支持部を回転させるように構成された回転部と、支持部に支持されている基板の上面にエッチング液を供給するように構成された薬液供給部と、ガス供給部と、ガス供給部から供給されたガスを整流して、支持部に支持されている基板の下面とベース部材との間の空間に整流後のガスを排出するように構成されたガス整流部とを備える。ガス整流部は、支持部に支持されている基板の下面と対向し且つ貫通孔内に配置された先端部を含み、上下方向に沿って延びる棒状部材と、先端部を取り囲むように配置された環状の整流部材とを含む。先端部は、先端部の外周面から外方に突出した後に下方に向けて延びるように外周面に設けられた、環状の折り返し部を含む。整流部材は、内周縁が先端部の外周面と離間するように配置された、環状の底壁部と、先端部が折り返し部と先端部の外周面との間に位置するように底壁部の内周部から上方に延びる、環状の突出部と、折り返し部よりも外方で且つ底壁部の上方において、底壁部と離間した状態で水平方向に沿って延びる、環状の水平整流部と、水平整流部と底壁部とを接続し、先端部の周方向に沿って並ぶ複数の柱部とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る基板処理装置、基板処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体によれば、エッチング処理の面内均一性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、基板処理装置の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、ガス整流部の一例の近傍を拡大して示す断面図である。
図3図3は、整流部材の一例を、図2のIII-III線に沿って切断して示す断面図である。
図4図4は、基板処理装置の主要部の一例を示すブロック図である。
図5図5は、コントローラのハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図6図6は、基板処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図7図7は、整流部材の他の例を水平面に沿って切断して示す断面図である。
図8図8は、ガス整流部の他の例の近傍を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
【0009】
[基板処理装置]
まず、図1図3を参照して、基板処理装置1の一例の構成について説明する。基板処理装置1は、例えば、基板Wの上面Waに処理液Lを供給することで、基板Wの上面Waに形成される膜Fをエッチング処理するように構成されている。膜Fは、例えば、窒化チタン、酸化チタン、チタン、タングステン、タンタル、窒化タンタル、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、ルテニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムなどの金属膜で構成されていてもよい。
【0010】
基板Wは、円板状を呈してもよいし、多角形など円形以外の板状を呈していてもよい。基板Wは、一部が切り欠かれた切欠部を有していてもよい。切欠部は、例えば、ノッチ(U字形、V字形等の溝)であってもよいし、直線状に延びる直線部(いわゆる、オリエンテーション・フラット)であってもよい。基板Wは、例えば、半導体基板(シリコンウエハ)、ガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)基板その他の各種基板であってもよい。基板Wの直径は、例えば200mm~450mm程度であってもよい。
【0011】
基板処理装置1は、図1に示されるように、回転保持部10と、ガス整流部20と、薬液供給部30と、リンス液供給部40と、ガス供給部50と、コントローラCtr(制御部)とを含む。
【0012】
回転保持部10は、回転軸11(回転部)と、駆動機構12(回転部)と、ベース部材13と、複数の支持ピン14(支持部)と、複数の把持機構15(支持部)とを含む。回転軸11は、鉛直方向に沿って延びる中空の管状部材である。回転軸11は、中心軸Ax周りにおいて回転可能に構成されている。駆動機構12は、回転軸11に接続されている。駆動機構12は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、回転軸11を回転させるように構成されている。駆動機構12は、例えば電動モータ等の動力源であってもよい。
【0013】
ベース部材13は、例えば円環状を呈する平板であり、水平に沿って延びている。すなわち、ベース部材13の中央部には、貫通孔13aが形成されている。ベース部材13の内周部は、回転軸11の先端部に接続されている。そのため、ベース部材13は、回転軸11の中心軸Ax周りに、回転軸11の回転に伴って回転するように構成されている。
【0014】
複数の支持ピン14は、ベース部材13の上面から上方に向けて突出するようにベース部材13に設けられている。複数の支持ピン14の数は、例えば3~6個程度であってもよい。複数の支持ピン14は、これらの先端と基板Wの下面Wbとが当接することで、基板Wを略水平に支持するように構成されている。複数の支持ピン14は、例えば、円柱形状を呈していてもよいし、錐台状を呈していてもよい。複数の支持ピン14は、ベース部材13の外周部の近傍において、上方から見て全体として円形状をなすように略等間隔に配置されていてもよい。
【0015】
複数の把持機構15は、ベース部材13から上方に向けて突出するようにベース部材13に設けられている。複数の把持機構15の数は、例えば3個程度であってもよい。複数の把持機構15は、いわゆるメカニカルチャックであり、基板Wの周縁部を把持可能に構成されている。複数の把持機構15は、ベース部材13の外周部の近傍において、上方から見て全体として円形状をなすように略等間隔に配置されていてもよい。
【0016】
基板Wが、支持ピン14及び把持機構15に支持されている状態において、基板Wは、ベース部材13から離間しつつベース部材13の上方において保持される。すなわち、基板Wが、支持ピン14及び把持機構15に支持されている状態において、基板Wの下面Wbは、ベース部材13と対向する。
【0017】
また、上記のように、複数の支持ピン14及び複数の把持機構15はベース部材13に設けられており、ベース部材13は回転軸11に接続されている。そのため、駆動機構12が回転軸11を回転駆動させると、ベース部材13、複数の支持ピン14及び複数の把持機構15が回転する。したがって、基板Wが、複数の支持ピン14に支持され且つ複数の把持機構15に把持されている状態で、駆動機構12が回転軸11を回転駆動させると、ベース部材13等と共に、基板Wも回転する。
【0018】
ガス整流部20は、ガス供給部50から供給されたガスを整流して、支持ピン14及び把持機構15に支持されている基板Wの下面Wbとベース部材13との間の空間Vに整流後のガスを排出するように構成されている。ガス整流部20は、図1及び図2に示されるように、棒状部材100と、整流部材200とを含む。
【0019】
棒状部材100は、回転軸11及び貫通孔13aと離間した状態で、回転軸11内及び貫通孔13a内を上下方向(鉛直方向)に沿って延びている。そのため、図2に詳しく例示されるように、棒状部材100の外周面と、回転軸11の内周面との間には、隙間Dが形成されている。棒状部材100は、例えば、円柱状を呈していてもよいし、円筒状を呈していてもよい。棒状部材100が円筒状を呈している場合、棒状部材100から基板Wの下面Wbに向けて、リンス液、ガスなどが供給されてもよい。
【0020】
棒状部材100は、支持ピン14及び把持機構15に支持されている基板Wの下面Wbと対向し且つ貫通孔13a内に配置された先端部101を含む。先端部101の上端は、ベース部材13よりも上方に位置していてもよい。先端部101の外周面には、環状(例えば円環状)を呈する折り返し部102が設けられている。
【0021】
折り返し部102は、先端部101の外周面から外方に突出した後に下方に向けて延びている。そのため、折り返し部102の断面は、略J字状を呈している。先端部101と折り返し部102との組み合わせにより、上方が閉鎖され且つ下方に向けて開放された、環状の有底凹部が構成されている。
【0022】
整流部材200は、全体として環状(例えば円環状)を呈しており、先端部101を取り囲むように配置されている。整流部材200は、図2の例において、棒状部材100(先端部101)とは別体とされている。整流部材200は、図2及び図3に例示されるように、底壁部201と、突出部202と、水平整流部203と、複数の柱部204とを含む。
【0023】
底壁部201は、水平方向に沿って延びる板状体であり、中央部に貫通孔が設けられた環状(例えば円環状)を呈している。底壁部201の内周縁は、先端部101の外周面から離間している。底壁部201は、の外周縁は、ベース部材13の貫通孔13aに取り付けられている。そのため、底壁部201は、先端部101とベース部材13との間に配置されている。
【0024】
突出部202は、底壁部201の内周部(内周縁の近傍)から上方に延びる筒状体である。そのため、突出部202は、環状(例えば円筒状)を呈している。突出部202の先端部(上端部)は、先端部101の外周面と折り返し部102の内周面との間の空間(有底凹部)内に位置している。そのため、先端部101、折り返し部102、底壁部201及び突出部202によって、隙間Dと連通する流路FLが形成されている。流路FLは、隙間Dから上方に向けて延びた後(図2の矢印Ar1参照)、略180°反転して下方に向かい(図2の矢印Ar2参照)、底壁部201と折り返し部102との間の隙間に向けて略90°進路を変えている(図2の矢印Ar3参照)。
【0025】
水平整流部203は、底壁部201の上方において底壁部201と離間した状態で水平方向に沿って延びる板状体であり、中央部に貫通孔が設けられた環状(例えば円環状)を呈している。水平整流部203は、水平方向において、折り返し部102よりも外方に位置している。そのため、水平整流部203と折り返し部102との間において、上方に向けて開放された環状の開口部OPが形成されている。したがって、流路FLから排出されたガス(図2の矢印Ar3参照)の一部は、この開口部OPにおいて渦流を形成する(図2の矢印Ar4参照)。水平整流部203と折り返し部102との離間距離は、例えば、2mm~10mm程度であってもよいし、4mm~8mm程度であってもよい。
【0026】
複数の柱部204は、底壁部201と水平整流部203とを接続するように、上下方向(鉛直方向)に沿って延びている。複数の柱部204の数は、例えば3~12個程度であってもよい。複数の柱部204は、先端部101の周方向に沿って並んでいてもよい。この場合、底壁部201、水平整流部203及び複数の柱部204によって、これらで囲まれる複数の貫通孔204aが形成される。流路FLから排出されたガス(図2の矢印Ar3参照)のうち他の一部(渦流を形成していない部分)は、複数の貫通孔204aを通じて、基板Wの下面Wbとベース部材13との間の空間Vに、水平方向に沿って排出される(図2の矢印Ar5参照)。
【0027】
複数の柱部204は、例えば、角柱形状を呈していてもよいし、円柱形状を呈していてもよいし、錐台状を呈していてもよいし、上下方向における中央部が窪んだ形状を呈していてもよい。複数の柱部204は、ベース部材13の外周部の近傍において、上方から見て全体として円形状をなすように略等間隔に配置されていてもよい。
【0028】
薬液供給部30は、基板Wにエッチング液L1を供給するように構成されている。エッチング液L1は、例えば、基板Wの上面Waの膜Fを除去するためのアルカリ性又は酸性の薬液を含んでいてもよい。アルカリ性の薬液は、例えば、SC-1液(アンモニア、過酸化水素及び純水の混合液)などを含んでいてもよい。酸性の薬液は、例えば、SC―2液(塩酸、過酸化水素水及び純水の混合液)、SPM(硫酸及び過酸化水素水の混合液)、HF/HNO液(フッ酸及び硝酸の混合液)などを含んでいてもよい。
【0029】
薬液供給部30は、液源31と、ポンプ32と、バルブ33と、ノズル34と、配管35と、駆動源36(駆動部)とを含む。液源31は、エッチング液L1の供給源である。ポンプ32は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源31から吸引したエッチング液L1を、配管35及びバルブ33を介してノズル34に送り出すように構成されている。
【0030】
バルブ33は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、配管35における流体の流通を許容する開状態と、配管35における流体の流通を妨げる閉状態との間で遷移するように構成されている。ノズル34は、吐出口が基板Wの上面Waに向かうように基板Wの上方に配置されている。ノズル34は、ポンプ32から送り出されたエッチング液L1を、吐出口から基板Wの上面Waに向けて吐出するように構成されている。
【0031】
配管35は、上流側から順に、液源31、ポンプ32、バルブ33及びノズル34を接続している。駆動源36は、ノズル34に対して直接的又は間接的に接続されている。駆動源36は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、基板Wの上方において、水平方向又は鉛直方向に沿ってノズル34を移動させるように構成されている。
【0032】
リンス液供給部40は、基板Wにリンス液L2を供給するように構成されている。リンス液L2は、例えば、基板Wの上面Waに供給されたエッチング液L1や、エッチング液L1による膜Fの溶解成分などを、基板Wから除去する(洗い流す)ための液である。リンス液L2は、例えば、純水(DIW:deionized water)、オゾン水、炭酸水(CO水)、アンモニア水などを含んでいてもよい。
【0033】
リンス液供給部40は、液源41と、ポンプ42と、バルブ43と、ノズル44と、配管45と、駆動源46とを含む。液源41は、リンス液L2の供給源である。ポンプ42は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源41から吸引したリンス液L2を、配管45及びバルブ43を介してノズル44に送り出すように構成されている。
【0034】
バルブ43は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、配管45における流体の流通を許容する開状態と、配管45における流体の流通を妨げる閉状態との間で遷移するように構成されている。ノズル44は、吐出口が基板Wの上面Waに向かうように基板Wの上方に配置されている。ノズル44は、ノズル34と同様に、ポンプ42から送り出されたリンス液L2を、吐出口から基板Wの上面Waに向けて吐出するように構成されている。
【0035】
配管45は、上流側から順に、液源41、ポンプ42、バルブ43及びノズル44を接続している。駆動源46は、ノズル44に対して直接的又は間接的に接続されている。駆動源46は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、基板Wの上方において、水平方向又は鉛直方向に沿ってノズル44を移動させるように構成されている。
【0036】
ガス供給部50は、ガス源51と、流量調節部52と、配管53とを含む。ガス源51は、不活性ガス(例えば窒素ガス)、乾燥空気などを貯留しており、ガスの供給源として機能する。流量調節部52は、ガス源51から隙間Dまで延びる配管53に設けられている。流量調節部52は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、当該配管53の開閉及び開度調節を行うように構成されている。
【0037】
コントローラCtrは、図4に示されるように、機能モジュールとして、読取部M1と、記憶部M2と、処理部M3と、指示部M4とを有する。これらの機能モジュールは、コントローラCtrの機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、コントローラCtrを構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものに限られず、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)により実現されるものであってもよい。
【0038】
読取部M1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体RMからプログラムを読み取るように構成されている。記録媒体RMは、基板処理装置1の各部を動作させるためのプログラムを記録している。記録媒体RMとしては、例えば、半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクであってもよい。なお、以下では、基板処理装置1の各部は、回転保持部10、薬液供給部30、リンス液供給部40、ガス供給部50等を含みうる。
【0039】
記憶部M2は、種々のデータを記憶するように構成されている。記憶部M2は、例えば、読取部M1において記録媒体RMから読み出したプログラム、外部入力装置(図示せず)を介してオペレータから入力された設定データなどを記憶してもよい。
【0040】
処理部M3は、各種データを処理するように構成されている。処理部M3は、例えば、記憶部M2に記憶されている各種データに基づいて、基板処理装置1の各部を動作させるための動作信号を生成するように構成されていてもよい。
【0041】
指示部M4は、処理部M3において生成された動作信号を基板処理装置1の各部に送信するように構成されている。
【0042】
コントローラCtrのハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成されていてもよい。コントローラCtrは、図5に示されるように、ハードウェア上の構成として回路C1を含んでいてもよい。回路C1は、電気回路要素(circuitry)で構成されていてもよい。回路C1は、例えば、プロセッサC2と、メモリC3と、ストレージC4と、ドライバC5と、入出力ポートC6とを含んでいてもよい。
【0043】
プロセッサC2は、メモリC3及びストレージC4の少なくとも一方と協働してプログラムを実行し、入出力ポートC6を介した信号の入出力を実行することで、上述した各機能モジュールを実現するように構成されていてもよい。メモリC3及びストレージC4は、記憶部M2として機能してもよい。ドライバC5は、基板処理装置1の各部をそれぞれ駆動するように構成された回路であってもよい。入出力ポートC6は、ドライバC5と基板処理装置1の各部との間で、信号の入出力を仲介するように構成されていてもよい。
【0044】
基板処理装置1は、一つのコントローラCtrを備えていてもよいし、複数のコントローラCtrで構成されるコントローラ群(制御部)を備えていてもよい。基板処理装置1がコントローラ群を備えている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコントローラCtrによって実現されていてもよいし、2個以上のコントローラCtrの組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrが複数のコンピュータ(回路C1)で構成されている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコンピュータ(回路C1)によって実現されていてもよいし、2つ以上のコンピュータ(回路C1)の組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrは、複数のプロセッサC2を有していてもよい。この場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのプロセッサC2によって実現されていてもよいし、2つ以上のプロセッサC2の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0045】
[基板処理方法]
続いて、図6を参照して、基板Wの上面Waに形成されている膜Fを基板処理装置1によってエッチング処理する方法(基板処理方法)について説明する。
【0046】
まず、図示しない搬送機構により、基板Wを支持ピン14上に載置する。この状態で、コントローラCtrが把持機構15を制御して、把持機構15が基板Wの周縁部を把持する。これにより、基板Wが、支持ピン14及び把持機構15に支持される(図6のステップS11参照)。
【0047】
次に、コントローラCtrは、駆動機構12を制御して、所定の回転数で回転軸11を回転させる。このとき、回転軸11、ベース部材13、支持ピン14及び把持機構15と共に、基板Wも回転する(図6のステップS12参照)。
【0048】
次に、コントローラCtrは、薬液供給部30を制御して、回転中の基板Wの上面Waに向けてエッチング液L1を供給させる(図6のステップS13参照)。これにより、エッチング液L1は、遠心力によって基板Wの外周縁に向けて上面Waに沿って流れた後、基板Wの外周縁から外方に振り切られる。その結果、基板Wの上面Waに形成されている膜Fのエッチング処理が進行する。
【0049】
エッチング液L1の供給時に、コントローラCtrは、ガス供給部50も制御して、隙間D及び流路FLを通じて、ガス整流部20(整流部材200)から、基板Wの下面Wbとベース部材13との間の空間Vに対してガスを供給させる。このとき、ガスは、図2に例示されるように、隙間Dから流路FLに流入すると(図2の矢印Ar1参照)、略180°反転して(図2の矢印Ar2参照)、さらに略90°向きを変えて流れる(図2の矢印Ar3参照)。その後、ガスの一部は、開口部OPにおいて渦流を形成する(図2の矢印Ar4参照)。一方、ガスの他の一部は、複数の貫通孔204aを通じて、基板Wの下面Wbとベース部材13との間の空間Vに向けて、水平方向に沿って排出され(図2の矢印Ar5参照)、基板Wの外周縁に至るまで流れる。
【0050】
次に、コントローラCtrは、リンス液供給部40を制御して、回転中の基板Wの上面Waに向けてリンス液L2を供給させる(図6のステップS14参照)。これにより、リンス液L2は、遠心力によって基板Wの外周縁に向けて上面Waに沿って流れた後、基板Wの外周縁から外方に振り切られる。その結果、基板Wの上面Waからエッチング液L1や膜Fの溶解物が洗い流される。このとき、コントローラCtrは、ガス供給部50も制御して、ガス整流部20(整流部材200)から空間Vに対してガスを供給させてもよい。
【0051】
次に、コントローラCtrは、駆動機構12を制御して、基板Wの回転を維持させる。これにより、基板Wからリンス液L2が振り切られ、基板Wの乾燥が行われる(図6のステップS15参照)。以上により、基板Wの処理が完了する。なお、ウォータマーク等の発生を抑制するために、基板Wへのリンス液L2の供給後、有機溶剤(例えば、イソプロピルアルコールなど)を基板Wの上面Waに供給し、その後に基板Wの乾燥が行われてもよい。
【0052】
[作用]
以上の例によれば、ガスのうち上記他の一部は、複数の貫通孔204aを通じて、基板Wの下面Wbとベース部材13との間の空間Vに向けて、水平方向に沿って排出される(図2の矢印Ar5参照)。すなわち、ガスのうち上記他の一部は、複数回向きを変えることにより、主として水平方向に沿って流れやすくなる。これにより、ガスが基板Wの下面Wbに向かい難くなるので、基板Wがガスによって局所的に冷却され難くなる。その結果、エッチング処理の面内均一性を高めることが可能となる。
【0053】
以上の例によれば、ガスの上記一部は、開口部OPにおいて渦流を形成する。これにより、基板Wの下面Wbとベース部材13との間の空間Vのうち整流部材200の上方の部分においてもガスが流動するので、空間Vの広域にガスが供給される。したがって、基板Wの下面Wbに対する異物の付着や、エッチング液の基板Wの下面Wbへの回り込みを抑制しつつ、エッチング処理の面内均一性を高めることが可能となる。
【0054】
以上の例によれば、水平方向における折り返し部102と水平整流部203との離間距離が2mm~10mm程度に設定されうる。当該離間距離が2mm以上である場合、開口部OPからガスが上方に噴出され難くなり、開口部OPにおいてガスの渦流が形成されやすくなる傾向にある。当該離間距離が10mm以下である場合、開口部OPにおいて形成されるガスの渦流が拡径され難くなり、渦流による基板Wの部分的な冷却を抑制できる傾向にある。
【0055】
以上の例によれば、貫通孔13aがベース部材13の中央部に設けられており、底壁部201の外周縁が貫通孔13aに接続されている。そのため、整流部材200が、ベース部材13、支持ピン14、把持機構15及び基板Wと共に回転する。すなわち、整流部材200は、基板Wに対して相対的に静止した状態となる。そのため、基板Wの下面Wbとベース部材13との間の空間Vに対してガス整流部20から吹き出されたガスは、基板Wの下面Wbにおいて放射状に流れやすくなる。したがって、基板Wの下面Wbに対する異物の付着をより抑制することが可能となる。
【0056】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0057】
(1)貫通孔13aはベース部材13の中央部から偏心した位置に設けられていてもよい。
【0058】
(2)底壁部201の外周部が貫通孔13aに接続されておらず、底壁部201の内周部が棒状部材100に接続されていてもよい。すなわち、整流部材200が回転しなくてもよい。
【0059】
(3)図7に例示されるように、複数の柱部204は、整流部材200の回転軸方向から見て、当該回転軸の周方向及び径方向の双方に対して斜めに延びていてもよい。この場合、複数の柱部204によってガスが整流され、基板Wの下面Wbとベース部材13との間の空間Vに対して、ガスが排出されやすくなる。そのため、基板Wの下面Wbに対する異物の付着をより抑制することが可能となる。なお、柱部204は、図7に示される例のように翼型を呈していてもよいし、平板状を呈していてもよい。換言すれば、整流部材200は、シロッコファンに類する構造であってもよいし、ターボファンに類する構造であってもよい。
【0060】
(4)図8に例示されるように、整流部材200は、折り返し部102と水平整流部203との間に位置するようにこれらの一方に設けられた、環状のカバー部205をさらに含んでいてもよい。この場合、開口部OPの大きさをカバー部205によって調節することが可能となる。すなわち、開口部OPにおいて形成される渦流の径を調節することが可能となる。なお、カバー部205は、折り返し部102及び水平整流部203の一方に対して着脱可能に構成されていてもよいし、固着されていてもよい。
【0061】
(5)図6のステップS13において、コントローラCtrがガス供給部50を制御することにより、エッチング液L1の基板Wへの吐出位置に応じてガス供給部50からのガスの供給量が調節されてもよい。具体的には、ノズル34から基板Wの中央部にエッチング液L1が吐出される際のガス供給部50からのガスの供給量が、ノズル34から基板Wの外周部にエッチング液L1が吐出される際のガス供給部50からのガスの供給量よりも少なくなるように、駆動源36及びガス供給部50が制御されてもよい。この場合、基板Wの中央部がエッチングされているときのガスの供給量が相対的に少なくなるので、エッチング処理の進行度合いが、基板Wの中央近傍と外周部とで近づく。そのため、エッチング処理の面内均一性をより高めることが可能となる。なお、基板Wの「中央部」は、例えば、基板Wの中心からの半径が60mm~90mmまでの範囲であってもよい。
【0062】
(6)図6のステップS13において、コントローラCtrが薬液供給部30を制御することにより、ノズル34を往復移動させながら基板Wの中心近傍と基板の周縁部との間に対してエッチング液L1を供給させてもよい。この場合、エッチング液L1が基板全体に均一に供給されやすくなる。そのため、エッチング処理の面内均一性を高めることが可能となる。
【0063】
(7)図6のステップS13において、コントローラCtrが薬液供給部30を制御することにより、ノズル34から基板Wの中央部にエッチング液L1を吐出する際のノズル34の移動速度が150mm/sec以下に設定されてもよい。この場合、一般的な処理レシピと比較して、基板Wの中央部がエッチングされているときのノズル34の移動速度が相対的に小さいので、基板Wの中央部が比較的長時間エッチング処理される。そのため、エッチング処理の進行度合いが、基板Wの中央近傍と外周部とで近づく。したがって、エッチング処理の面内均一性をより高めることが可能となる。
【0064】
(8)図6のステップS13において、コントローラCtrがガス供給部50を制御することにより、ガス整流部20へのガスの供給量が基板Wの回転数に応じて調節されてもよい。この場合、例えば、基板Wの回転数が小さいほど、ガス整流部20へのガスの供給量が小さくなるように設定される。基板Wの回転数が小さい場合には、基板Wの下面Wbとベース部材13との間の空間Vに生ずる負圧が小さくなり、空間V内に異物が吸引され難くなっているので、ガス整流部20へのガスの供給量が小さくても、基板Wの下面Wbに対する異物の付着が抑制される傾向にある。しかも、ガス整流部20へのガスの供給量が小さい場合には、基板Wがガスによって冷却され難くなる。したがって、エッチング処理の面内均一性も高まる傾向にある。例えば、基板Wの回転数が250rpm程度の場合には、ガス整流部20へのガスの供給量が20m/min程度であってもよい。基板Wの回転数が1000rpm程度の場合には、ガス整流部20へのガスの供給量が40m/min程度であってもよい。すなわち、基板Wの回転数と、ガスの供給量とは、指数関数的な対応関係にあってもよい。
【0065】
[他の例]
例1.基板処理装置の一例は、上面に膜が形成されている基板を支持するように構成された支持部と、支持部に支持されている基板の下面と離間しつつ対向するように構成され、貫通孔が設けられたベース部材と、ベース部材及び支持部を回転させるように構成された回転部と、支持部に支持されている基板の上面にエッチング液を供給するように構成された薬液供給部と、ガス供給部と、ガス供給部から供給されたガスを整流して、支持部に支持されている基板の下面とベース部材との間の空間に整流後のガスを排出するように構成されたガス整流部とを備える。ガス整流部は、支持部に支持されている基板の下面と対向し且つ貫通孔内に配置された先端部を含み、上下方向に沿って延びる棒状部材と、先端部を取り囲むように配置された環状の整流部材とを含む。先端部は、先端部の外周面から外方に突出した後に下方に向けて延びるように外周面に設けられた、環状の折り返し部を含む。整流部材は、内周縁が先端部の外周面と離間するように配置された、環状の底壁部と、先端部が折り返し部と先端部の外周面との間に位置するように底壁部の内周部から上方に延びる、環状の突出部と、折り返し部よりも外方で且つ底壁部の上方において、底壁部と離間した状態で水平方向に沿って延びる、環状の水平整流部と、水平整流部と底壁部とを接続し、先端部の周方向に沿って並ぶ複数の柱部とを含む。
【0066】
ところで、エッチング処理に際して、基板の下面への異物の付着を抑制することや、エッチング液が基板の周縁から回り込んで下面に付着するのを抑制することなどを目的として、基板の下面とベース部材との間の空間にガスを供給することがある。このとき、上記の整流部材がない状態で、基板の下面とベース部材との間の空間にガスが供給されると、例えば装置の機械加工の精度などの要因により、基板の下面において気流の偏りが生ずることがある。この状態で基板の上面にエッチング液を供給して、基板の上面の膜をエッチングすると、エッチング液の化学反応の進行にも偏りが生じ、基板の面内におけるエッチング後の膜厚の均一性に影響を与えることも考えられる。
【0067】
しかしながら、例1の場合、ガス供給部からガス整流部に供給されたガスは、先端部の外周面と突出部との間の隙間を通った後にその向きを変えて、突出部と折り返し部との間の隙間を通り、さらにその向きを水平方向に変える。そのため、水平方向に向きを変えたガスの一部が、水平整流部と底壁部との間の隙間を通った後に、基板の下面とベース部材との間の空間に排出される。したがって、ガス整流部から排出されたガスは、複数回向きを変えることにより、主として水平方向に沿って流れやすくなる。これにより、ガスが基板の下面に向かい難くなるので、基板がガスによって局所的に冷却され難くなる。その結果、エッチング処理の面内均一性を高めることが可能となる。
【0068】
また、例1の場合、水平整流部が折り返し部よりも外方に位置している。そのため、ガス整流部は、水平整流部と折り返し部との間において、上方に向けて開放された環状の開口部を有している。したがって、水平方向に向きを変えたガスの他の一部は、この開口部において渦流を形成する。これにより、基板の下面とベース部材との間の空間のうち整流部材の上方の部分においてもガスが流動するので、当該空間の広域にガスが供給される。したがって、基板の下面に対する異物の付着や、エッチング液の基板の下面への回り込みを抑制しつつ、エッチング処理の面内均一性を高めることが可能となる。
【0069】
例2.例1の装置において、水平方向における折り返し部と水平整流部との離間距離は2mm~10mmであってもよい。当該離間距離が2mm以上である場合、ガス整流部の開口部からガスが上方に噴出され難くなり、ガス整流部の開口部においてガスの渦流が形成されやすくなる傾向にある。当該離間距離が10mm以下である場合、ガス整流部の開口部において形成されるガスの渦流が拡径され難くなり、渦流による基板の部分的な冷却を抑制できる傾向にある。
【0070】
例3.例1又は例2の装置において、整流部材は、折り返し部と水平整流部との間に位置するようにこれらの一方に設けられた、環状のカバー部をさらに含んでいてもよい。この場合、ガス整流部の開口部の大きさをカバー部によって調節することが可能となる。
【0071】
例4.例1~例3のいずれかの装置において、貫通孔はベース部材の中央部に設けられており、底壁部の外周縁が貫通孔に接続されていてもよい。この場合、整流部材が、ベース部材、支持部及び基板と共に回転する。すなわち、整流部材は、基板に対して相対的に静止した状態となる。そのため、基板の下面とベース部材との間の空間に対してガス整流部から吹き出されたガスは、基板の下面において放射状に流れやすくなる。したがって、基板の下面に対する異物の付着をより抑制することが可能となる。
【0072】
例5.例4の装置において、複数の柱部は、整流部材の回転軸方向から見て、当該回転軸の周方向及び径方向の双方に対して斜めに延びていてもよい。この場合、複数の柱部によってガスが整流され、基板の下面とベース部材との間の空間に対して、ガスが排出されやすくなる。そのため、基板の下面に対する異物の付着をより抑制することが可能となる。
【0073】
例6.例1~例5のいずれかの装置は、制御部をさらに備え、薬液供給部は、エッチング液を吐出するように構成されたノズルと、支持部に支持されている基板の上方においてノズルを水平方向に沿って移動させるように構成された駆動部とを含み、制御部は、駆動部及びガス供給部を制御して、ノズルから基板の中央部にエッチング液を吐出する際のガス整流部へのガスの供給量が、ノズルから基板の外周部にエッチング液を吐出する際のガス整流部へのガスの供給量よりも少なくなるように、エッチング液の基板への吐出位置に応じてガス供給部からのガスの供給量を調節する処理を実行するように構成されていてもよい。ところで、ガス整流部の開口部において生ずる渦流によって基板の中央近傍が冷却される程度と、水平整流部と底壁部との間の隙間から吹き出されたガスによって基板の外周部が冷却される程度とに、差が存在することがありうる。しかしながら、例7によれば、基板の中央部がエッチングされているときのガスの供給量が相対的に少なくなるので、エッチング処理の進行度合いが、基板の中央近傍と外周部とで近づく。そのため、エッチング処理の面内均一性をより高めることが可能となる。
【0074】
例7.例6の装置において、中央部は、基板の中心からの半径が60mm~90mmまでの範囲であってもよい。
【0075】
例8.例6又は例7の装置において、制御部は、駆動部を制御して、ノズルを往復移動させることにより基板の中心近傍と基板の周縁部との間に対してエッチング液を供給させる処理を実行するように構成されていてもよい。この場合、エッチング液が基板全体に均一に供給されやすくなる。そのため、エッチング処理の面内均一性を高めることが可能となる。
【0076】
例9.例6~例8のいずれかの装置において、制御部は、駆動部を制御して、ノズルから基板の中央部にエッチング液を吐出する際のノズルの移動速度を150mm/sec以下とする処理を実行するように構成されていてもよい。ところで、例6で述べたように、基板の中央近傍が冷却される程度と、基板の外周部が冷却される程度とに、差が存在することがありうる。しかしながら、例9によれば、基板の中央部がエッチングされているときのノズルの移動速度が相対的に小さいので、基板の中央部が比較的長時間エッチング処理される。そのため、エッチング処理の進行度合いが、基板の中央近傍と外周部とで近づく。したがって、エッチング処理の面内均一性をより高めることが可能となる。
【0077】
例10.例6~例9のいずれかの装置において、制御部は、ガス供給部を制御して、ガス整流部へのガスの供給量を基板の回転数に応じて調節する処理を実行するように構成されていてもよい。この場合、例えば、基板の回転数が小さいほど、ガス整流部へのガスの供給量が小さくなる。基板の回転数が小さい場合には、基板の下面とベース部材との間の空間に生ずる負圧が小さくなり、当該空間内に異物が吸引され難くなっているので、ガス整流部へのガスの供給量が小さくても、基板の下面に対する異物の付着が抑制される傾向にある。しかも、ガス整流部へのガスの供給量が小さい場合には、基板がガスによって冷却され難くなる。したがって、エッチング処理の面内均一性も高まる傾向にある。
【0078】
例11.基板処理方法の一例は、上面に膜が形成されている基板の下面とベース部材とが離間しつつ対向するように、支持部で基板を支持する第1の工程と、ベース部材及び支持部を回転させることにより、基板を回転させる第2の工程と、回転中の基板の上面にエッチング液を供給しつつ、ガス整流部にガスを供給することにより、上面にエッチング液が供給されている基板の下面とベース部材との間の空間に、ガス整流部による整流後のガスを排出させる第3の工程とを含む。ガス整流部は、支持部に支持されている基板の下面と対向し且つベース部材に設けられている貫通孔内に配置された先端部を含み、上下方向に沿って延びる棒状部材と、先端部を取り囲むように配置された環状の整流部材とを含む。先端部は、先端部の外周面から外方に突出した後に下方に向けて延びるように外周面に設けられた、環状の折り返し部を含む。整流部材は、内周縁が先端部の外周面と離間するように配置された、環状の底壁部と、先端部が折り返し部と先端部の外周面との間に位置するように底壁部の内周部から上方に延びる、環状の突出部と、折り返し部よりも外方で且つ底壁部の上方において、底壁部と離間した状態で水平方向に沿って延びる、環状の水平整流部と、水平整流部と底壁部とを接続し、先端部の周方向に沿って並ぶ複数の柱部とを含む。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【0079】
例12.例11の方法において、水平方向における折り返し部と水平整流部との離間距離は2mm~10mmであってもよい。この場合、例2の装置と同様の作用効果が得られる。
【0080】
例13.例11又は例12の方法において、整流部材は、折り返し部と水平整流部との間に位置するようにこれらの一方に設けられた、環状のカバー部をさらに含んでいてもよい。この場合、例3の装置と同様の作用効果が得られる。
【0081】
例14.例11~例13のいずれかの方法において、貫通孔はベース部材の中央部に設けられており、底壁部の外周縁が貫通孔に接続されていてもよい。この場合、例4の装置と同様の作用効果が得られる。
【0082】
例15.例14の方法において、複数の柱部は、整流部材の回転軸方向から見て、当該回転軸の周方向及び径方向の双方に対して斜めに延びていてもよい。この場合、例5の装置と同様の作用効果が得られる。
【0083】
例16.例11~例15のいずれかの方法において、第3の工程は、ノズルから基板の中央部にエッチング液を吐出する際のガス整流部へのガスの供給量を、ノズルから基板の外周部にエッチング液を吐出する際のガス整流部へのガスの供給量よりも少なくすることを含んでいてもよい。この場合、例6の装置と同様の作用効果が得られる。
【0084】
例17.例16の方法において、中央部は、基板の中心からの半径が60mm~90mmまでの範囲であってもよい。
【0085】
例18.例16又は例17の方法において、第3の工程は、ノズルを往復移動させることにより基板の中心近傍と基板の周縁部との間に対してエッチング液を供給することを含んでいてもよい。この場合、例8の装置と同様の作用効果が得られる。
【0086】
例19.例16~例18のいずれかの方法において、第3の工程は、ノズルから基板の中央部にエッチング液を吐出する際のノズルの移動速度を150mm/sec以下とすることを含んでいてもよい。この場合、例9の装置と同様の作用効果が得られる。
【0087】
例20.例16~例19のいずれかの方法において、第3の工程は、ガス整流部へのガスの供給量を基板の回転数に応じて調節することを含んでいてもよい。この場合、例10の装置と同様の作用効果が得られる。
【0088】
例21.コンピュータ読み取り可能な記録媒体の一例は、例11~例20のいずれかの方法を基板処理装置に実行させるためのプログラムを記録していてもよい。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。本明細書において、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、一時的でない有形の媒体(non-transitory computer recording medium)(例えば、各種の主記憶装置又は補助記憶装置)又は伝播信号(transitory computer recording medium)(例えば、ネットワークを介して提供可能なデータ信号)を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…基板処理装置、10…回転保持部、11…回転軸(回転部)、12…駆動機構(回転部)、13…ベース部材、13a…貫通孔、14…支持ピン(支持部)、15…把持機構(支持部)、20…ガス整流部、30…薬液供給部、34…ノズル、36…駆動源(駆動部)、50…ガス供給部、100…棒状部材、101…先端部、102…折り返し部、200…整流部材、201…底壁部、202…突出部、203…水平整流部、204…柱部、205…カバー部、Ctr…コントローラ(制御部)、D…隙間、F…膜、FL…流路、L1…エッチング液、OP…開口部、RM…記録媒体、V…空間、W…基板、Wa…上面、Wb…下面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の下面に対して供給されるガスを整流するための、環状を呈するガス整流部材であって、
環状の底壁部と、
前記底壁部の内周部から上方に延びる、環状の突出部と、
前記底壁部の上方において、前記底壁部と離間した状態で水平方向に沿って前記底壁部の外方に向けて延びる、環状の水平整流部と、
前記水平整流部の内周部と前記底壁部の外周部とを接続し、前記ガス整流部材の中心軸の周方向に沿って並ぶ複数の柱部とを備える、ガス整流部材
【請求項2】
前記複数の柱部は、前記中心の延在方向から見て、前記中心軸の周方向及び径方向の双方に対して斜めに延びている、請求項に記載のガス整流部材
【請求項3】
前記水平整流部の内周部は、水平方向において前記突出部の先端部と離隔しており、それにより、前記水平整流部の内周部と前記突出部の先端部との間において開口部が形成されている、請求項1又は2に記載のガス整流部材。
【請求項4】
前記基板の下面の下方に配置された状態において、前記底壁部は、前記中心軸の延在方向から見たときに、前記底壁部の内周縁が前記基板の中心を囲むように位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載のガス整流部材。
【請求項5】
複数の柱部は、前記中心軸の延在方向から見たときに全体として円形状をなすように、前記中心軸の周方向において略等間隔に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のガス整流部材。
【請求項6】
前記水平整流部の内周部から径方向内方に向けて延びるように前記水平整流部の内周部に設けられたカバー部材をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のガス整流部材。