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特開2024-13344揚げ物衣用ミックス、及び揚げ物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013344
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】揚げ物衣用ミックス、及び揚げ物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20240125BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240125BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20240125BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115366
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 杏菜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優矢
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B025LB06
4B025LG04
4B025LG13
4B025LG18
4B025LG32
4B025LG53
4B025LG54
4B025LK03
4B025LP01
4B025LP10
4B025LP20
4B035LC01
4B035LE17
4B035LE19
4B035LG01
4B035LG12
4B035LG15
4B035LG35
4B035LG42
4B035LG44
4B035LK02
4B035LK15
4B035LP07
4B035LP21
4B035LP27
4B042AC03
4B042AD18
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK10
4B042AK12
4B042AK15
4B042AP05
4B042AP14
4B042AP19
(57)【要約】
【課題】オペレーションが容易な液状油脂で油ちょうした場合であっても、ノンフライ調理した場合であっても、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを揚げ物に付与でき、それらの風味を長時間維持できる揚げ物衣用ミックス及び揚げ物の製造方法を提供する。
【解決手段】バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される1種以上の成分(A)を0.1~30質量%、並びにナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される1種以上の成分(B)を0.01~5質量%を含有することを特徴とする揚げ物衣用ミックス、並びに液体材料、及び液体材料以外のバッター材料からなるバッター、又はブレッダーを用いて揚げ種を調製する工程、及び前記揚げ種を油ちょう、又はノンフライ調理する工程を含む揚げ物の製造方法であって、前記液体材料以外のバッター材料、又は前記ブレッダーが、前記1種以上の成分(A)を0.1~30質量%、及び前記1種以上の成分(B)を0.01~5質量%を含有することを特徴とする揚げ物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される1種以上の成分(A)を0.1~30質量%、並びに
ナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される1種以上の成分(B)を0.01~5質量%
を含有することを特徴とする揚げ物衣用ミックス。
【請求項2】
前記成分(A)が、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される2種以上である請求項1に記載の揚げ物衣用ミックス。
【請求項3】
前記成分(B)が、ナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される2種以上である請求項1又は2に記載の揚げ物衣用ミックス。
【請求項4】
ブレッダー用である、請求項1に記載の揚げ物衣用ミックス。
【請求項5】
液体材料、及び液体材料以外のバッター材料からなるバッター、又はブレッダーを用いて揚げ種を調製する工程、及び前記揚げ種を油ちょう、又はノンフライ調理する工程を含む揚げ物の製造方法であって、
前記液体材料以外のバッター材料、又は前記ブレッダーが、
バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される1種以上の成分(A)を0.1~30質量%、並びに
ナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される1種以上の成分(B)を0.01~5質量%
を含有することを特徴とする揚げ物の製造方法。
【請求項6】
前記液体材料以外のバッター材料、又は前記ブレッダーが、請求項1に記載の揚げ物衣用ミックスである請求項5に記載の揚げ物の製造方法。
【請求項7】
請求項1の揚げ物衣用ミックス、又は請求項5の揚げ物の製造方法を用いる、液状油脂で油ちょう、又はノンフライ調理した揚げ物にショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物の製造に用いる揚げ物衣用ミックス、及び揚げ物の製造方法に関し、特に、オペレーションが容易な液状油脂で油ちょうした場合であっても、ノンフライ調理(すなわち、油ちょう以外の加熱方法による揚げ物様の調理)した場合であっても、ショーニングで油ちょうしたような甘みとコクを揚げ物に付与できる揚げ物衣用ミックス、及びそのような揚げ物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、から揚げ、フリッター、フライドチキン等の揚げ物は、畜肉類、魚介類、野菜類等の具材に、小麦粉等の穀粉類及び/又は澱粉類を含むバッター又はブレッダーを付着させたものを油ちょうして製造される。これらの揚げ物に味や香りを付与する方法として、調味料やスパイスを添加したバッター又はブレッダーを用いることで、揚げ物衣に風味付けする方法がある。この方法は、具材に下味をつける前処理が不要である点で、大量調理のオペレーションにおいて有利である。
【0003】
油ちょうに用いる油脂については、揚げ物専門店等ではショートニング等の固形油脂を融解して用いる場合がある。中でも、水素添加油を含むショートニングを用いて油ちょうした揚げ物は、独特な甘みとコクが付与されることが知られている。一方で、スーパーマーケットのバックヤード等における調理では、一般的には風味があっさりした液状油脂が用いられている。ショートニングは、調理時に融解させなければならないため加熱するのに時間がかかったり、使用後のフライヤーや調理器具の清掃に手間がかかったりするため、オペレーションが容易な点からも液状油脂を使用する場合が多い。しかしながら、液状油脂を用いて油ちょうした場合、上述のように、揚げ物衣に風味付けをしても、ショートニングで油ちょうした際の甘みとコクが感じられなかったり、油ちょう直後はそれらの風味が感じられても、経時的に風味がなくなったりして、物足りない風味になってしまう。これは、ノンフライ調理(すなわち、油ちょう以外の加熱方法による揚げ物様の調理)した場合でも同様である。
【0004】
同様な課題にかかわる研究開発としては、例えば、特許文献1では、硬化油を加熱調理に用いた際に、食品に付与された、熟成されるねっとりとした甘さ、香味は「硬化油風味」と呼ばれる特有の良好な風味として知られているが、最近は健康志向への強まりから、トランス脂肪酸を多く含む硬化油が好まれない傾向があり、加熱調理用油脂においても、トランス酸含量を低減させた油脂が要望されていることから、加熱調理する際に使用する油脂において、トランス酸含量を低減させながら、且つ、従来硬化油を用いて加熱調理した際と同様の「硬化油風味」を付与することのできる加熱調理用油脂を提供することを目的として、ラード1~20重量%及び/又は実質的に融点20~40℃の硬化油1~20重量%並びに任意の非硬化油からなる加熱調理用油脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-005681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、特殊な油脂の開発であり、通常、スーパーマーケットのバックヤード等で使用される一般的な液状油脂に対応できる技術とはいえない。また、上述のような課題に対して、揚げ物の揚げ物衣を形成するためのバッター又はブレッダーの調製に用いられる組成物の面から検討された例は知られていない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、オペレーションが容易な液状油脂で油ちょうした場合であっても、ノンフライ調理した場合であっても、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを揚げ物に付与でき、それらの風味を長時間維持することができる揚げ物衣用ミックス、及びそのような揚げ物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、バッター又はブレッダーを調製するための揚げ物衣用ミックスの風味付けに用いる材料について種々検討した結果、特定の成分を所定の量で組み合わせることで、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち、上記目的は、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される1種以上の成分(A)を0.1~30質量%、並びにナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される1種以上の成分(B)を0.01~5質量%を含有することを特徴とする揚げ物衣用ミックスによって達成される。また、上記目的は、液体材料、及び液体材料以外のバッター材料からなるバッター、又はブレッダーを用いて揚げ種を調製する工程、及び前記揚げ種を油ちょうする工程を含む揚げ物の製造方法であって、前記液体材料以外のバッター材料、又は前記ブレッダーが、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される1種以上の成分(A)を0.1~30質量%、並びにナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される1種以上の成分(B)を0.01~5質量%を含有することを特徴とする揚げ物の製造方法によって達成される。なお、本発明において、「揚げ物」は、畜肉類及び畜肉加工品類、魚介類及び水産加工品類、野菜類等の具材に、小麦粉等の穀粉類及び/又は澱粉類を含むバッター、若しくはブレッダーを少なくとも付着させたものを油ちょう、又はノンフライ調理したものである。具体的には、天ぷら、から揚げ、竜田揚げ、フリッター、フライドチキン、メンチカツ、とんかつ、コロッケ等のことをいう。また、「バッター」は、小麦粉等の穀粉類及び/又は澱粉類、並びにその他の副資材を含むバッター材料に水等の液体材料を加えて均一にした揚げ物の製造に用いる流体を意味し、「ブレッダー」は、小麦粉等の穀粉類及び/又は澱粉類、並びにその他の副資材を混合した粉粒体を意味し、「揚げ物衣用ミックス」は、バッターを調製するためのバッター材料用の組成物、又はブレッダー用の組成物を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の揚げ物衣用ミックス、及び揚げ物の製造方法を用いることにより、オペレーションが容易な液状油脂で油ちょうした場合であっても、ノンフライ調理した場合であっても、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを有し、それらの風味が長時間維持される揚げ物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[揚げ物衣用ミックス]
本発明の揚げ物衣用ミックスは、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される1種以上の成分(A)を0.1~30質量%、並びにナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される1種以上の成分(B)を0.01~5質量%を含有することを特徴とする。揚げ物衣用ミックスは、バッター用であってもよく、ブレッダー用であってもよい。好ましくは、ブレッダー用である。成分(A)及び成分(B)を、それぞれ上記の範囲の量で含有する揚げ物衣用ミックスを用いて調製されたバッター、又は前記揚げ物衣用ミックスからなるブレッダーを用いることで、オペレーションが容易な液状油脂で油ちょうした場合であっても、ノンフライ調理した場合であっても、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを有し、それらの風味が長時間維持される揚げ物を製造することができる。本発明において、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令第二条の定義に準ずるものである。具体的には、「バターミルクパウダー」とは、バターミルク(バターを製造する際に生じた脂肪粒以外の部分のことを称する)から、ほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものを称し、「ホエイパウダー」とは、乳を乳酸菌で発酵させ、又は乳に酵素若しくは酸を加えてできた乳清からほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものを称し、「脱脂粉乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳又は生水牛乳の乳脂肪分を除去したものからほとんど全ての水分を除去し、粉末状にしたものを称する。また、ナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーは、一般的にスパイスとして使用されているものであり、「ナツメグパウダー」はニクヅクの種子全体又は仁を乾燥・粉砕し、粉末にしたものであり、「パプリカパウダー」は、パプリカを乾燥・粉砕し、粉末にしたものであり、「オニオンパウダー」は、玉ねぎを乾燥・粉砕し、粉末にしたものである。これらは、市販の製品を適宜使用することができる。本発明において、成分(A)及び成分(B)に用いる製品は、賦形剤等の目的で上述の原料以外のものを含んでいてもよい。なお、上述の原料以外のものを含む製品を用いる場合は、上記成分(A)及び成分(B)の量は、上述の原料のみの量に換算される。揚げ物衣用の組成物に、乳製品を配合する技術としては、例えば、国際公開2020/067314号に、油ちょう食品における食材と衣との結着性を向上できるバッター液、バッターミックス等を提供することを目的とし、水、ホエイタンパク質を含み、水分含有量が40~70質量%であり、総質量に対してホエイタンパク質が1質量%以上である、バッター液が開示されている。また、バターミルクフライドチキンの下味として、バターミルクパウダーを使用したレシピも公開されている。しかしながら、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、脱脂粉乳等の乳製品と、所定のスパイスを組み合わせることで、揚げ物に特殊な風味を付与することができることは一切知られていなかった。本発明においては、上記課題を解決できる材料を種々検討したところ、意外なことに、上記組み合わせによって、液状油脂で油ちょうした場合であっても、ノンフライ調理した場合であっても、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを揚げ物に付与でき、それらの風味を長時間維持することができることを見出した。後述する実施例に示す通り、その他の材料の組み合わせでは、上記効果は得られない。
【0012】
本発明において、成分(A)は、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される2種以上であることが好ましい。また、成分(A)は、バターミルクパウダー、及び/又はホエイパウダーであることが好ましい。本発明の揚げ物衣ミックスにおいて、成分(A)の含有量は、0.2~10質量%であることが好ましく、0.4~7質量%であることがより好ましく、0.6~3質量%がさらに好ましい。また、本発明において、成分(B)は、ナツメグパウダーを含むことが好ましい。また、成分(B)は、ナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される2種以上であることが好ましい。本発明の揚げ物衣ミックスにおいて、成分(B)の含有量は、0.02~4質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましい。ナツメグパウダー、オニオンパウダーの場合は、0.02~2質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましく、パプリカパウダーの場合は、0.2~4質量%であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましい。
【0013】
本発明の揚げ物衣ミックスにおいて、成分(A)及び成分(B)以外の材料は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はない。例えば、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉等の小麦粉、米粉、大麦粉、大豆粉、そば粉、ライ麦粉、ホワイトソルガム粉、トウモロコシ粉、これらの穀粉を加熱処理した加熱処理穀粉等の穀粉類;コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉等の澱粉、及びこれらの澱粉に物理的、化学的な加工を単独又は複数組み合わせて施した加工澱粉等の澱粉類が挙げられる。また、副資材としては、例えば、デキストリン、オリゴ糖、ぶどう糖、ショ糖、マルトース等の糖質類;植物性油脂、動物性油脂、加工油脂、粉末油脂等の油脂類;卵白粉、卵黄粉、全卵粉等の卵由来粉末;小麦たん白、エンドウ豆たん白、乳たん白(上述のバターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳を除く)、大豆たん白等のたん白素材;重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム等のガス発生剤、及び酒石酸、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等の酸性剤を含むベーキングパウダー等の膨張剤;カードラン、キサンタンガム、グアガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びカラギーナン等の増粘剤;食塩、グルタミン酸ナトリウム、粉末醤油等の調味料;酵母エキス、畜肉又は魚介由来エキス等のエキス類;グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;その他、かぼちゃ粉、色素、香料、香辛料(上述のナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーを除く)、酵素、種々の品質改良剤等が挙げられる。本発明において、成分(A)及び成分(B)以外の材料としては、穀粉類及び/又は澱粉類を含有することが好ましく、穀粉類を含有することがより好ましく、小麦粉(加熱処理小麦粉を含む)を含有することがさらに好ましい。穀粉類及び/又は澱粉類の含有量は、揚げ物衣用ミックスの総質量に基づいて、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0014】
[揚げ物の製造方法]
本発明の揚げ物の製造方法は、液体材料、及び液体材料以外のバッター材料からなるバッター、又はブレッダーを用いて揚げ種を調製する工程、及び前記揚げ種を油ちょう、又はノンフライ調理する工程を含む揚げ物の製造方法であって、前記液体材料以外のバッター材料、又は前記ブレッダーが、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される1種以上の成分(A)を0.1~30質量%、及びナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される1種以上の成分(B)を0.01~5質量%を含有することを特徴とする。前記揚げ種を調製する工程は、ブレッダーを用いることが好ましい。揚げ物を製造する際、前記液体材料以外のバッター材料、又は前記ブレッダーに、前記成分(A)及び前記成分(B)を、それぞれ上記範囲の量で含有させることで、上述の通り、オペレーションが容易な液状油脂で油ちょうした場合であっても、ノンフライ調理した場合であっても、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを有し、それらの風味が長時間維持される揚げ物を製造することができる。本発明の揚げ物の製造方法において、前記バッター、又は前記ブレッダーは、常法に従って用いることができる。例えば、バッターの場合は、まず、前記液体材料以外のバッター材料を適切な加水率で、水、だし汁、スープ、ジュース類等の液体材料と混合してバッターを調製する。液体材料としては、水を用いることが好ましい。バッター中の乳脂肪分は、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である。次いで、畜肉類及び畜肉加工品類、魚介類及び水産加工品類、野菜類を必要に応じて加工成形した具材を準備し、前記バッターに具材を浸漬する、又は前記バッターを具材に塗布する等により前記バッターを具材に付着させて揚げ種を調製する。前記バッターを付着させる前に、必要に応じて具材に打ち粉をまぶしてもよく、本発明の揚げ物衣用ミックスを打ち粉として使用することもできる。また、バッターを付着させたあとに、パン粉等を付着させてもよい。前記液体材料以外のバッター材料100質量部に対する液体材料の割合については、適度な粘度のバッターが得られれば特に制限はなく、例えば、上記揚げ物が、から揚げであれば70~130質量部(水分として)が好ましい。より好ましくは80~120質量部、さらに好ましくは90~110質量部である。また、ブレッダーの場合は、必要に応じて調味液に浸漬した前記具材に、前記ブレッダーをまぶしてもよく、前記具材にバッター(前記成分(A)及び成分(B)をそれぞれ上記範囲の量で含有していてもよい)を付着させた後に前記ブレッダーをまぶして揚げ種を調製してもよい。その後、得られた揚げ種を適切な温度のフライ油に投入し、適切な時間油ちょうする。本発明の製造方法において、前記油ちょうする工程に用いる油脂は、ショートニング等の固形油脂を融解したものでもよいが、上述の通り、オペレーションが容易な液状油脂で油ちょうしても、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを有する揚げ物を製造することができるので、前記油ちょうする工程は、常温で液状の液状油脂を用いて油ちょうする工程であることが好ましい。常温(具体的には25℃)で液状の液状油脂としては、特に制限はなく、単独又は複数の油脂の組み合わせでもよく、市販の液状油脂を適宜用いることができる。例えば、菜種油(キャノーラ油を含む)、オリーブ油、大豆油、コーン油、米油、ひまわり油、紅花油、綿実油、ゴマ油、パーム油、魚油等が挙げられる。また、遺伝子組換えの技術を用いて品種改良した植物から抽出したものであってもよく、例えば、菜種油、ヒマワリ油、紅花油、大豆油等では、オレイン酸含量を高めたハイオレイックタイプの品種から得られた油脂でもよい。また、水素添加油脂、グリセリンと脂肪酸のエステル化油、エステル交換油、分別油脂等も適宜使用することができる。前述したとおり、トランス脂肪酸を多く含む油脂が好まれないことから、水素添加油を実質的に含まないことが好ましい。一方、ノンフライ調理の場合は、上述のように調製した揚げ種を、必要に応じて、上記の液状油脂を噴霧等により付着させた後、例えば、市販のノンフライ調理器やノンフライ調理機能を有するオーブンを用いて調理することができる。
【0015】
本発明の揚げ物の製造方法において、前記液体材料以外のバッター材料、又は前記ブレッダーの好ましい態様は、上述の揚げ物衣用ミックスの場合と同様である。したがって、前記成分(A)は、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される2種以上であることが好ましく、成分(A)は、バターミルクパウダー、及び/又はホエイパウダーであることが好ましく、成分(A)の含有量は、0.2~10質量%であることが好ましく、0.4~7質量%であることがより好ましく、0.6~3質量%がさらに好ましい。また、成分(B)は、ナツメグパウダーを含むことが好ましく、成分(B)は、ナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される2種以上であることが好ましく、成分(B)の含有量は、0.02~4質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましい。ナツメグパウダー、オニオンパウダーの場合は、0.02~2質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましく、パプリカパウダーの場合は、0.2~4質量%であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましい。本発明の揚げ物の製造方法においては、前記バッターの調製の際、本発明の揚げ物衣用ミックスと、液体材料を混合して行なってもよく、前記液体材料以外のバッター材料として、上述の本発明の揚げ物衣用ミックスに含まれる各材料を、前記成分(A)及び前記成分(B)の含有量が、それぞれ上記範囲になるように、それぞれ個別に、又は一部が予め混合されたものを用いて、液体材料と混合して行なってもよい。また、前記ブレッダーの場合は、本発明の揚げ物衣用ミックスをそのまま用いても良く、前記成分(A)及び前記成分(B)の含有量が、それぞれ上記範囲になるように、それぞれ個別に、又は一部が予め混合されたものを用いて混合した粉粒体を用いてもよい。本発明の揚げ物の製造方法においては、容易にバッターを調製することができる点、又は容易にブレッダーを使用できる点で、前記液体材料以外のバッター材料、又は前記ブレッダーは、本発明の揚げ物衣用ミックスであることが好ましい。
【0016】
本発明の揚げ物の製造方法において、揚げ物には特に制限はなく、例えば、から揚げ、竜田揚げ、フリッター、フライドチキン、天ぷら、メンチカツ、とんかつ、コロッケ等が挙げられる。前記揚げ物は、本発明の効果が特に有効な、から揚げ、フライドチキンが好ましい。
【0017】
なお、上述の本発明の揚げ物衣用ミックス、及び揚げ物の製造方法の説明から理解できるように、本発明は、本発明の揚げ物衣用ミックス、及び本発明の揚げ物の製造方法を用いる、液状油脂で油ちょう、又はノンフライ調理した揚げ物にショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを付与する方法にも関する。本発明の方法の好ましい態様は、本発明の揚げ物衣用ミックス、及び揚げ物の製造方法の好ましい態様と同様である。
【実施例0018】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.揚げ物衣用ミックスの調製
揚げ物としてから揚げを選定し、表1~表4に示した配合で、各材料を混合し、各揚げ物衣用ミックスを調製した。
2.から揚げの製造
約100gサイズの鶏もも肉と、各揚げ物衣用ミックス15gをブレッダーとしてボウルにいれて混合し、鶏肉に各揚げ物衣用ミックスをまぶして付着させ、揚げ種を調製した。得られた揚げ種を170℃のフライ油(参考例1はショートニング(プレミックスオイル150、昭和産業株式会社)を使用し、それ以外は液状油脂(昭和キャノーラサラダ油、昭和産業株式会社)を使用した)で7分間油ちょうし、から揚げを製造した。
3.から揚げの評価
(1)外観
油ちょう直後の各から揚げの外観を観察し、以下の評価基準に従って評価した。評価は、訓練を受けた専門のパネル10名で行い、平均点を算出した。
3:焦げがなく、非常に良好
2:やや焦げがあるが、良好
1:焦げが多く、不良
(2)ショートニングで油ちょうしたような甘みとコク
油ちょう直後と、パックに入れて常温で3時間保管した後の各から揚げを喫食し、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクについて、参考例1を5点、比較例1を1点とし、以下の評価基準に従って評価した。評価は、訓練を受けた専門のパネル10名で行い、平均点を算出した。
5:ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクが強く感じられ、非常に良好
4:ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクが感じられ、良好
3:ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクがやや感じられ、やや良好
2:ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクがあまり感じられず、やや不良
1:ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクが感じられず、不良
評価結果を表1~4に示した。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
表1~4に示した通り、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される1種以上の成分(A)を0.1~25質量%、並びにナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される1種以上の成分(B)を0.03~5質量%を含有する揚げ物衣用ミックスからなるブレッダーを用いて揚げ種を調製し、液状油脂で油ちょうした実施例1~27のから揚げは、ショートニングで油ちょうした参考例1のような甘みとコクを有しており、外観も良好であった。一方、前記成分(A)も前記成分(B)も配合していない揚げ物衣用ミックスを用いた比較例1、及び前記成分(B)のみを配合した揚げ物衣用ミックスを用いた比較例2のから揚げでは、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクはほとんど感じられず、前記成分(A)のみを配合した揚げ物衣用ミックスを用いた比較例3、前記成分(A)の代わりに、それぞれミルク香料、粉末パーム油、及び粉末ラードを配合した揚げ物衣用ミックスを用いた比較例4、比較例5、及び比較例6のから揚げは、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクがやや感じられるものの、甘みの質がショートニングで油ちょうしたものとはやや異なっており、また前記成分(A)と比較して、特に3時間後の評価が低く、それらの風味が長時間維持されていなかった。前記成分(A)の配合量としては、35質量%配合した比較例7では、焦げが生じて外観の評価が低くなるとともに、食味にも影響し、甘みとコクの評価も低下したことから、上限は30質量%であると示唆された。また、前記成分(B)の配合量については、パプリカパウダーを2質量%配合した実施例24と、5質量%配合した実施例25を比較して、甘みとコクは同等であったが、外観の評価が実施例24の方が高かったことから、上限は5質量%であると示唆された。したがって、バターミルクパウダー、ホエイパウダー、及び脱脂粉乳からなる群から選択される1種以上の成分(A)を0.1~30質量%、並びにナツメグパウダー、パプリカパウダー、及びオニオンパウダーからなる群から選択される1種以上の成分(B)を0.01~5質量%を含有する揚げ物衣用ミックスを用いることで、液状油脂で油ちょうしても、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを有する揚げ物を製造することができることが示唆された。なお、前記成分(A)と前記成分(B)を1種類ずつ選択して配合した実施例1~5と、前記成分(A)と前記成分(B)の少なくとも一方を2種類選択して配合した実施例6~10を比較すると、実施例6~10の方が甘みとコクの評価が高かった。したがって、前記成分(A)と前記成分(B)は、少なくとも一方を2種類以上選択して配合することが好ましいことが示唆された。
【0024】
なお、表1の参考例1、及び表2の実施例6~10で調製した揚げ種をノンフライ調理器(ノンフライヤープラスHD9531/22、フィリップス)で調理し、から揚げを製造した。得られたから揚げについて、外観とショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを上述の方法で評価したところ、いずれの実施例も良好な評価が得られた。
【0025】
また、表1の参考例1、及び表2の実施例6~10の揚げ物衣用ミックス100質量部に、水130質量部を混合し、各バッターを調製した。約100gサイズの鶏もも肉を各バッターに浸漬し、鶏肉にバッターを付着させ、揚げ種を調製した。得られた揚げ種を170℃のフライ油(参考例1はショートニング(プレミックスオイル150、昭和産業株式会社)を使用し、それ以外は液状油脂(昭和キャノーラサラダ油、昭和産業株式会社)を使用した) で7分間油ちょうし、から揚げを製造した。得られたから揚げについて、外観とショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを上述の方法で評価したところ、いずれの実施例も良好な評価が得られた。ブレッダーを用いて製造した場合の方が、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクをより感じやすく、より良好であった。
【0026】
以上により、本発明の揚げ物衣用ミックスを用いることにより、オペレーションが容易な液状油脂で油ちょうした場合であっても、ノンフライ調理した場合であっても、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを有し、それらの風味が長時間維持される揚げ物を製造することができることが示された。
【0027】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、オペレーションが容易な液状油脂で油ちょうした場合であっても、ノンフライ調理した場合であっても、ショートニングで油ちょうしたような甘みとコクを有し、それらの風味が長時間維持される揚げ物を製造することができる。