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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133458
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ケーブル状態管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240925BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20240925BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01R31/58
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086756
(22)【出願日】2024-05-29
(62)【分割の表示】P 2023125978の分割
【原出願日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2021152404
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】南畝 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】深作 泉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 文乃
(72)【発明者】
【氏名】西村 慶
(72)【発明者】
【氏名】杉山 剛博
(72)【発明者】
【氏名】今井 規之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 高宏
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ケーブルの断線進行状態を管理し、装置の故障を効率的に抑制する。
【解決手段】ケーブル状態管理システム1は、管理対象装置である産業用ロボット110に配線されているケーブル2の断線進行状態を管理するケーブル状態管理装置400と、産業用ロボットを利用する装置ユーザに属するユーザ側データ管理装置120と、装置ユーザに属するユーザ端末130と、を備え、ケーブル状態管理装置は、ユーザ側データ管理装置からネットワークを介して取得したケーブルの抵抗値の時系列的な変化を表す抵抗値データと産業用ロボットの動作状況を表す動作データとの少なくとも一方を基に推定したケーブルの断線進行状態データ及び断線進行状態データと動作データとを基に予測したケーブルの寿命を示すケーブル寿命予測データを記憶しており、ユーザ端末は、ネットワークを介して断線進行状態データとケーブル寿命予測データとの少なくとも一方にアクセスする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象装置に配線されているケーブルの断線進行状態を管理するケーブル状態管理装置と、前記管理対象装置を利用する装置ユーザに属する装置ユーザ側データ管理装置と、前記装置ユーザに属する端末装置と、を備えたケーブル状態管理システムであって、
前記ケーブル状態管理装置には、前記装置ユーザ側データ管理装置からネットワークを介して取得した前記ケーブルの抵抗値の時系列的な変化を表す抵抗値データと前記管理対象装置の動作状況を表す動作データとの少なくとも一方を基に推定した前記ケーブルの断線進行状態を示す断線進行状態データ、及び前記断線進行状態データと前記動作データとを基に予測した前記ケーブルの寿命を示すケーブル寿命予測データが記憶されており、
前記端末装置は、前記ネットワークを介して前記断線進行状態データと前記ケーブル寿命予測データとの少なくとも一方にアクセス可能に構成されている、
ケーブル状態管理システム。
【請求項2】
前記ケーブル状態管理装置は、前記端末装置からのデータ要求信号を受信したときに、前記断線進行状態データ、または前記ケーブル寿命予測データを前記端末装置に送信する、
請求項1に記載のケーブル状態管理システム。
【請求項3】
前記端末装置は、表示部を有し、
前記表示部には、前記ケーブル状態管理装置から送信された前記断線進行状態データ、または前記ケーブル寿命予測データが表示される、
請求項1に記載のケーブル状態管理システム。
【請求項4】
前記ケーブル状態管理装置には、前記断線進行状態データ、または前記ケーブル寿命予測データを基に前記管理対象装置に配線されている前記ケーブルの交換が行われたときに、前記ケーブルが交換済みであることが記憶される、
請求項1記載のケーブル状態管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル状態管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場内の生産ライン等に設置される産業用ロボットでは、急な故障により生産ラインがストップしてしまうことを抑制するため、定期的なメンテナンス(以下、定期メンテナンスという)が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
産業用ロボットでは、可動部である関節を通るようにケーブルが配線されている。このようなケーブルでは、可動部において繰り返し屈曲・捻回されるため、メンテナンス時にケーブルの健全性、すなわち、ケーブルにおける断線進行状態を検査することが行われている。ケーブルにおける断線進行状態は、例えば、ケーブルの導体抵抗を測定することで判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-190663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の定期メンテナンスは、多くの場合、産業用ロボットを使用しているロボットユーザによって実施される。そのため、産業用ロボットを製造しているロボットメーカや、ケーブルを製造しているケーブルメーカにおいては、実機でのケーブルの断線進行状態を知ることができなかった。
【0006】
しかしながら、ケーブルの断線等の不具合は、生産ラインのストップなど大きな損害を生じるおそれがある。このようなケーブルの不具合に起因した産業用ロボットの故障を抑制するために、ケーブルの断線進行状態を遠隔地からでも高精度に管理することが求められる。このように、ケーブルの断線進行状態をより手厚く管理することで、例えば、断線進行状態に応じてケーブルの交換を適宜に促す等の安全上の措置を講じることができ、ケーブルの不具合に起因した産業用ロボットの故障を効率的に抑制可能になる。
【0007】
そこで、本発明は、ケーブルの断線進行状態を手厚く管理でき、ケーブルの不具合に起因した装置の故障を効率的に抑制可能なケーブル状態管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、管理対象装置に配線されているケーブルの断線進行状態を管理するケーブル状態管理装置と、前記管理対象装置を利用する装置ユーザに属する装置ユーザ側データ管理装置と、端末装置と、を備えたケーブル状態管理システムであって、前記装置ユーザ側データ管理装置及び前記端末装置がネットワークを介して前記ケーブル状態管理装置に接続されており、前記端末装置は、前記管理対象装置を製造する装置メーカに属する装置メーカ端末または前記ケーブルを製造するケーブルメーカに属するケーブルメーカ端末であり、前記ケーブル状態管理装置には、前記装置ユーザ側データ管理装置から取得した前記ケーブルの抵抗値の時系列的な変化を表す抵抗値データ及び前記管理対象装置の動作状況を表す動作データが記憶されており、前記端末装置は、前記ケーブル状態管理装置に記憶された前記抵抗値データと前記動作データとの少なくとも一方を基に前記ケーブルの断線進行状態を推定する処理と、前記断線進行状態を示す断線進行状態データと前記動作データとを基に前記ケーブルの寿命を予測する処理と、を前記ケーブル状態管理装置に行わせることが可能に構成されている、ケーブル状態管理システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーブルの断線進行状態を手厚く管理でき、ケーブルの不具合に起因した装置の故障を効率的に抑制可能なケーブル状態管理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係るケーブル状態管理システムの概略構成図である。
図2】ケーブルの長手方向に垂直な断面の一例を示す断面図である。
図3】ケーブルの断線進行状態の推定を説明する図である。
図4】動作周波数を2Hzとして屈曲を繰り返した際の抵抗値の動作周波数とその高次周波数の抵抗値変動成分の変化を示すグラフ図である。
図5】(a),(b)は、抵抗値検出部の一例を示す回路図である。
図6】ケーブル状態データベースの一例を示す図である。
図7】ケーブル状態管理システムの制御フローを示すフロー図である。
図8】設定処理のフロー図である。
図9】データ取得処理のフロー図である。
図10】断線進行状態推定処理のフロー図である。
図11】ケーブル寿命予測処理のフロー図である。
図12】データ出力処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るケーブル状態管理システムの概略構成図である。図1に示すように、ケーブル状態管理システム1は、管理対象装置の配線として用いられているケーブル2の断線進行状態を管理するシステムである。
【0013】
ここでは、ケーブル2を配線する装置(=管理対象装置)が産業用ロボット110である場合を説明する。産業用ロボット110は、工場等に設けられ任意の製造工程に用いられるものであり、可動部としての関節部111を複数有している。以下、産業用ロボット110の使用しているユーザをロボットユーザ(本発明の装置ユーザに相当)、産業用ロボット110を製造しているメーカをロボットメーカ(本発明の装置メーカに相当)、ケーブル2を製造しているメーカをケーブルメーカという。
【0014】
(ケーブル2)
ケーブル2は、断線進行状態を管理するケーブル(=管理対象ケーブル)であって、産業用ロボット110の可動部である関節部111を通るように配線された可動部用のケーブルである。可動部である関節部111を動作させると、ケーブル2には、関節部111の動作に応じた屈曲や捻回が加えられる。ケーブル2は、例えば、産業用ロボット110の関節部111を駆動させるモータ等への給電を行う電源線や、産業用ロボット110に設けられた不図示のカメラやセンサ用の信号線等として用いられるものである。
【0015】
なお、ケーブル2は、少なくとも1本であり、複数本でもよい。複数本のケーブル2の場合、すべてのケーブル2を管理対象ケーブルとして設定してもよいし、複数本の中から一部のケーブル2を管理対象ケーブルとして設定してもよい。後者の「複数本の中から一部のケーブル2」に関し、複数本のケーブル2の中から断線し易いと思われるケーブル2を数本(1本も含む)、選定するとよい。このように構成することにより、管理対象ケーブルを必要最小限とすることができ、ケーブル状態管理システム1のシステム上の負荷を軽減することができる。
【0016】
図2は、ケーブル2の長手方向に垂直な断面の一例を示す断面図である。図2に示すように、ケーブル2は、例えば、4本の電線21と、4本の電線21とスフ糸やジュート糸等からなる糸状の介在22とを撚り合わせたケーブルコア23の周囲にらせん状に巻きつけられた押さえ巻きテープ24と、押さえ巻きテープ24の周囲を覆うように被覆されたシース25と、を有している。各電線21は、銅または銅合金からなる複数本の金属素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体21aと、導体21aの周囲を被覆している絶縁体21bと、をそれぞれ有している。なお、図2の構造はあくまで一例であり、例えば電線21の本数など、ケーブル2の具体的な構造は特に限定されない。すなわち、電線21は、1本でもよいし、数本でもよいし、数十本以上でもよい。なお、電線21が1本の場合は、介在22、押さえ巻きテープ24、及びシース25を無くす場合が多い。この場合、ケーブル2と電線21は、同じものを示す。
【0017】
(ケーブル2の断線進行状態を推定する方法)
本実施の形態において、ケーブル2の断線進行状態を推定する方法について説明する。ケーブル2を繰り返し屈曲(あるいは捻回)させると、導体21aを構成する複数本の金属素線のいずれかに断線が発生する。そして、ケーブル2を繰り返し屈曲(あるいは捻回)させる動作を継続すると、断線している金属素線の本数が徐々に増加していく。本明細書でいう「ケーブル2の断線進行状態」とは、導体21aを構成する複数本の金属素線のうちどの程度が断線しているかという断線割合、すなわち、導体21aを構成している複数本の金属素線の本数のうち、断線している金属素線の本数が何本であるか、を表している。なお、ケーブル2の断線進行状態は、複数本の金属素線の全ての本数に対する断線している金属素線の本数の比率(%)で示すことでもよい。
【0018】
このようなケーブル2の断線進行状態は、例えば、ケーブル2の導体21aの抵抗値を測定することによって推定することが可能である。しかし、導体21aを構成する金属素線の断線本数が少ない状態では抵抗値の変動が非常に小さいため、環境温度や周囲機器の動作状況(サーボモータなど)に応じたノイズ影響が大きくなり、単純に導体21aの抵抗値を測定するだけでは、ケーブル2の断線進行状態を精度よく判断することが困難な場合がある。
【0019】
ここで、図3に示すように、屈曲角度をプラスマイナス90°として、1秒の周期で周期的にケーブル2を繰り返し屈曲した場合を検討する。この場合、周期的に繰り返し動作させる周波数(以下、動作周波数という)は、1Hzとなる。
【0020】
ケーブル2を繰り返し屈曲させると、導体21aの金属素線の断線箇所(図示の符号21c)の間隔が屈曲に応じて周期的に変形し、それに応じて導体21aの抵抗値が周期的に変動する。この際、導体21aの抵抗値は、動作周波数と等しい周波数で変動することになる。よって、図3に示すように、ケーブル2を周期的に繰り返し動作させた際の導体21aの抵抗値の時系列的な変化を検出しておき、検出した抵抗値のデータ(以下、抵抗値データという)における動作周波数の抵抗値変動成分を抽出し、抽出した抵抗値変動成分の大きさ(後述する図4における抵抗値変動の振幅)に基づいて、ケーブル2の導体21aにおいて金属素線に断線が発生しているかどうかを推定することが可能になる。なお、この推定方法については、本出願人の日本特許出願である特願2020-164272に詳しい。
【0021】
本発明者らがさらに検討を進めたところ、導体21aを構成する複数本の金属素線の断線が進み、金属素線の断線本数が増えると、上記の抵抗値データにおいて、動作周波数のn倍(nは2以上の自然数)の周波数である高次周波数においても動作周波数と同様に抵抗値変動成分が増加することを確認した。そして、本発明者らは、この周波数スペクトルの変化を断線進行状態の指標にできることを見出した。
【0022】
一例として、動作周波数を1Hzとして屈曲を繰り返した際の抵抗値変動成分の大きさとその高次周波数(2Hz、3Hz、4Hz、・・・)の抵抗値変動成分の大きさの変化を図4(a)に示す。また、図4(a)における領域Aの拡大図を図4(b)に示す。図4(a),(b)の例では、屈曲回数が約5000回で動作周波数である1Hzの抵抗値変動成分の大きさ(抵抗値変動の振幅)が急激に大きくなっており、初期の断線が発生したと判断することができる。また、破線Bにて示されるように、屈曲回数が増えて導体21aを構成する金属素線の断線本数が多くなり、ケーブル2の屈曲部の複数個所で断線が発生すると、断線本数に比例して低次から高次にかけて徐々に高次周波数の抵抗値変動成分が発生し、またその抵抗値変動成分が大きくなる。よって、動作周波数の各高次周波数の抵抗値変動成分の大きさを抽出し、抽出した各高次周波数の抵抗値変動成分の大きさを予め設定した閾値とそれぞれ比較し、閾値を超えた周波数の次数を抽出することで、ケーブル2の断線進行状態を推定すること(すなわち、導体21aを構成する複数本の金属素線のうち、断線した金属素線の本数を把握すること)が可能である。
【0023】
産業用ロボット110に配線されたケーブル2に適用する場合、まず、可動部としての関節部111を周期的に繰り返し屈曲(あるいは捻回)させた際の導体21aの抵抗値の時系列的な変化を測定し、抵抗値データとして取得する。この際、ケーブル2に含まれる全ての電線21の導体21aの抵抗値データを取得してもよいし、特定の電線21(例えば4本中1本の電線21)の導体21aの抵抗値データを取得してもよい。さらには、ケーブル2中に断線進行状態を推定するための断線検知線(あるいはダミー線)を設けておき、この断線検知線を構成する導体の抵抗値データを取得するようにしてもよい。
【0024】
その後、得られた抵抗値データにおける動作周波数の抵抗値変動成分、及びその高次周波数の抵抗値変動成分を抽出し、抽出したこれらの抵抗値変動成分の大きさに基づいて、ケーブル2の断線進行状態を推定する。なお、ケーブル2の断線進行状態を推定する具体的な方法については、上述した周波数スペクトルを用いる方法に限定されるものではなく、例えば、導体21aの抵抗値を単純に測定する方法を用いることも可能である。
【0025】
(ロボットユーザサイト100)
図1に戻り、ケーブル状態管理システム1は、ロボットユーザに属するロボットユーザサイト100と、ロボットメーカに属するロボットメーカサイト200と、ケーブルメーカに属するケーブルメーカサイト300と、後述するケーブル状態管理装置400とを、インターネット等のネットワーク500を介して相互に通信可能に接続するよう構成されている。
【0026】
ロボットユーザサイト100は、複数の産業用ロボット110と、ユーザ側データ管理装置(本発明の装置ユーザ側データ管理装置に相当)120と、ユーザ端末130と、ユーザモバイル端末140と、を有している。複数の産業用ロボット110は、産業用ロボット110の各関節部111の動作の制御等を行う制御装置としてのロボット制御装置(ロボットコントローラ)112をそれぞれ有している。ロボット制御装置112は、CPU等の演算素子、RAMやROM等のメモリ、ソフトウェア、インターフェイス等を適宜組み合わせて構成されている。
【0027】
本実施の形態では、ロボット制御装置112には、抵抗値検出部150が搭載されている。抵抗値検出部150は、可動部(ここでは関節部111)を周期的に繰り返し動作させた際の導体21aの抵抗値の時系列的な変化を検出するものである。ロボット制御装置112は、定期メンテナンス時等に、あらかじめ設定された検査用の動作シーケンスに従って、産業用ロボット110の可動部(ここでは関節部111)を周期的に繰り返し動作させる機能を有している。
【0028】
なお、本実施の形態では、産業用ロボット110に付随するロボット制御装置112に抵抗値検出部150を搭載したが、産業用ロボット110の内部基板等に抵抗値検出部150を搭載してもよく、抵抗値検出部150は、検出した抵抗値データをユーザ側データ管理装置120に出力可能に構成されていればよい。抵抗値検出部150をロボット制御装置112(または産業用ロボット110そのもの)に搭載することで、従来のように、ケーブル2の端末部を取り出して抵抗値を測定するといった作業が必要なくなり、定期メンテナンス時等の作業性が向上する。また、従来のようにケーブル2の端末部を取り出す場合は厳密には産業用ロボット110に配線された状態と異なる状態となってしまうが、本実施の形態によれば、産業用ロボット110に配線された状態で測定が可能となるため、より使用状態に近い状態で測定を行い、後述する断線進行状態等を精度よく推定可能になる。
【0029】
図5(a)は、抵抗値検出部150の一例を示す回路図である。図5(a)に示す抵抗値検出部150は、ケーブル2の導体21aの抵抗値を測定する抵抗値測定部150aと、A/Dコンバータ157と、を有している。
【0030】
抵抗値測定部150aは、直流信号源(例えば、直流定電圧源)151、入力抵抗152および抵抗値検出器153を備えている。なお、直流信号源151として直流定電流源を用いる場合は、入力抵抗152は不要である。直流信号源151は、入力抵抗152を介してケーブル2に直流信号(ここでは直流電圧)を印加する。これに応じて、ケーブル2からは、図3に示したような動作周波数の抵抗値変動成分を含んだ変調信号(例えば電圧信号)が出力される。抵抗値検出器153は、例えば、この変調信号を所定のゲインで増幅することで、導体21aの抵抗値の時系列的な変化を検出する。抵抗値検出器153で検出された抵抗値の時系列的な変化は、抵抗値検出器153からの出力信号としてA/Dコンバータ157へ出力され、A/Dコンバータ157によりデジタル信号に変換される。そのデジタル信号に変換されたデータである抵抗値データが、ユーザ側データ管理装置120に出力される。
【0031】
なお、抵抗値検出部150の具体的な構成はこれに限定されず、適宜変更可能である。例えば、図5(b)に示すように、抵抗値測定部150aとA/Dコンバータ157との間に、周波数解析部150bを有していてもよい。
【0032】
周波数解析部150bは、所謂ロックインアンプであり、キャリア信号生成器154、ミキサ155およびロウパスフィルタ156を備えている。一例として動作周波数の抵抗値変動成分を抽出する場合、キャリア信号生成器154は、例えば、動作周波数と等しいキャリア周波数ωcを有し、かつ抵抗値の変動と同じ位相のキャリア信号を生成する。ミキサ155は、このキャリア信号と、抵抗値検出器153からの出力信号とを乗算(言い換えれば同期検波)することで、直流成分の信号と2×ωc成分の信号とが重畳された信号を出力する。ロウパスフィルタ156は、ミキサ155からの出力信号から2×ωc成分の信号を遮断し直流成分のみを通過させる。この直流成分の信号である強度は、動作周波数の抵抗値変動成分の大きさを表す。なお、図5に示すキャリア信号生成器154において、sin(ωct)は、ωc=2πfであるとした場合に動作周波数の抵抗値変動成分を抽出することができる。周波数解析部150bを有することで、抵抗値検出部150に、所望の周波数の抵抗値変動成分(動作周波数の抵抗値変動成分及びその高次周波数の抵抗値変動成分(n×ωcのキャリア周波数からなるn次周波数の抵抗値変動成分))を抽出する機能を付加することができ、後述する断線進行状態推定処理部405での周波数解析処理を省略することが可能になる。
【0033】
図1に戻り、ユーザ側データ管理装置120は、ケーブル2の断線進行状態を推定するためのデータ(=主要データ)を管理するためのものである。本実施の形態では、ケーブル2の断線進行状態を推定するためのデータ(=主要データ)は、少なくとも、抵抗値検出部150から入力された抵抗値データと、産業用ロボット110の各関節部111の動作状況のデータである動作データと、に相当する。ユーザ側データ管理装置120は、ネットワーク500を介して、後述するケーブル状態管理装置400と相互に通信可能に構成されている。
【0034】
ユーザ側データ管理装置120は、主要データである抵抗値データや動作データを含む各データの入出力処理等を行う制御部121と、記憶部122と、を有している。ユーザ側データ管理装置120は、サーバ装置等のコンピュータにより構成されており、CPU等の演算素子、RAMやROM等のメモリ、ハードディスク等の記憶装置、ソフトウェア、インターフェイス等を適宜組み合わせて構成されている。
【0035】
制御部121は、定期メンテナンス時等に、ロボット制御装置112に搭載された抵抗値検出部150から抵抗値データを取得すると共に、ロボット制御装置112から動作データを取得し、記憶部122の更新前データ記憶部122aに記憶する。なお、動作データについては、前回の抵抗値データの取得時から、今回の抵抗値データの取得時までの累計の動作データを得るとよい。制御部121は、例えば、ロボット制御装置112における産業用ロボット110の動作制御用の制御データを基に、動作データを得るように構成されてもよい。なお、ここではロボット制御装置112から動作データを取得しているが、これに限らず、例えば、産業用ロボット110の関節部111にセンサ等を設け、当該センサ等の検出結果から直接(つまりロボット制御装置112を介さずに)動作データを得るように構成することも可能である。また、動作データは、各関節部111の屈曲回数、屈曲状況のデータ(曲げ半径、曲げ角度、曲げ速度などのデータ)、捻回回数、捻回状況のデータ(捻回部の長さ、捻回角度、捻回速度など)等を含む。なお、例えば、屈曲のみが行われる関節部111に対しては捻回回数や捻回状況データは省略可能であり、各関節部111の具体的な動作等に応じて使用する動作データの項目は適宜設定可能である。
【0036】
なお、抵抗値データや動作データは、ケーブル2が配線されている関節部111毎(可動部毎)に取得されてもよいし、最も動作条件が厳しい1か所のみで取得されてもよい。なお、複数の関節部111について抵抗値データを取得する場合、例えば、関節部111毎に、動作周波数を異ならせることで、複数の関節部111の抵抗値データを一括して取得することも可能である。この点の詳細については後述する。
【0037】
更新前データ記憶部122aは、後述するケーブル状態管理装置400によるデータ更新処理が行われる前の主要データ(抵抗値データや動作データ)を記憶する。制御部121は、データ更新処理が行われた後に、更新前データ記憶部122aに記憶された主要データ(抵抗値データや動作データ)を、更新後データ記憶部122bに移行する。更新後データ記憶部122bに記憶された各種の主要データは、圧縮処理等が施されてもよいし、所定期間経過後の主要データを適宜消去するように構成されていてもよい。例えば、更新後データ記憶部122bに主要データを移行したときから所定の期間(例えば、数日、数か月、または数年などの期間)にある主要データは、更新後データ記憶部122bで記憶されたままとし、その所定の期間が経過した主要データは、更新後データ記憶部122bから消去されるように構成されていてもよい。このように、所定の期間に記憶された主要データは、後述するケーブル状態記憶部401で記憶された抵抗値データや動作データのバックアップデータとして利用することもできる。
【0038】
また、制御部121は、抵抗値データや動作データを取得した後に、ケーブル状態管理装置400に、データ更新処理を要求する更新信号を送信するように構成されてもよい。これにより、ケーブル状態管理装置400によるデータ更新処理を、実際のデータ取得に合わせて素早く行うことが可能になり、よりスムーズな運用が可能になる。
【0039】
ユーザ端末130は、ロボットユーザに属する端末装置であり、例えば、パーソナルコンピュータにより構成される。ユーザ端末130は、ネットワーク500を介して、後述するケーブル状態管理装置400と相互に通信可能に構成されている。ユーザ端末130は、ネットワーク500を介して、ケーブル状態管理装置400のケーブル状態記憶部401に記憶された後述する断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データ(以下、寿命予測データともいう)にアクセス可能に構成されていてもよい。ただし、後述するケーブル状態管理装置400のアクセス制限処理により、ユーザ端末130からは、そのユーザ端末130が属するロボットユーザに係るケーブル2(すなわち、ロボットユーザが使用している産業用ロボット110で用いられているケーブル2)の断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データのみにアクセス可能となっている。なお、ロボットユーザが使用している産業用ロボット110で用いられているケーブル2の断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データは、ロボットメーカ端末201やケーブルメーカ端末301を介してユーザ端末130へ送信されることであってもよい。また、ユーザ端末130は、ユーザ側データ管理装置120の各種設定を行うことができるよう構成されていてもよく、また、記憶部122に記憶された抵抗値データ等の主要データを閲覧可能に構成されていてもよい。
【0040】
ユーザモバイル端末140は、ロボットユーザに属する端末装置であり、ユーザ端末130と同様に、ユーザ側データ管理装置120の各種設定を行うことができるよう構成されていてもよく、また、記憶部122に記憶された抵抗値データ等の主要データを閲覧可能に構成されていてもよい。ユーザモバイル端末140は、定期メンテナンスを行う作業員が所持できるため、ユーザモバイル端末140を有することで、取得した抵抗値データ等の主要データが正しいかをその場で確認することが可能になる。なお、ユーザモバイル端末140は、ユーザ側データ管理装置120を介して、あるいは直接ネットワーク500を介して、ケーブル状態管理装置400にアクセスし、ロボットユーザサイト100に属するケーブル2の断線進行状態データやケーブル寿命予測データを閲覧できるように構成されていてもよい。これにより、作業員がロボットユーザサイト100に属するケーブル2の断線進行状態やケーブル寿命を適時把握でき、ケーブル2の交換等をスムーズに行うことが可能になる。なお、ユーザモバイル端末140は必須ではなく、省略可能である。
【0041】
なお、図1では図示を省略し1つのロボットユーザサイト100のみを示しているが、実際には、複数のロボットユーザサイト100がネットワーク500に接続されており、各ロボットユーザサイト100に属するユーザ側データ管理装置120及びユーザ端末130がネットワーク500を介してケーブル状態管理装置400に相互に通信可能に接続されている。
【0042】
(ロボットメーカサイト200)
ロボットメーカサイト200は、産業用ロボット110を製造しているロボットメーカに属するサイトであり、ロボットメーカ端末201を有している。ロボットメーカ端末201は、ネットワーク500を介してケーブル状態管理装置400に相互に通信可能に接続されており、ケーブル状態管理装置400のケーブル状態記憶部401に記憶された断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データにアクセス可能に構成されている。ただし、後述するケーブル状態管理装置400のアクセス制限処理により、ロボットメーカ端末201からは、そのロボットメーカ端末201が属するロボットメーカが製造した産業用ロボット110に係るケーブル2(つまり、ロボットメーカが製造した産業用ロボット110を使用している各ロボットユーザに係るケーブル2)の断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データのみにアクセス可能となっている。
【0043】
なお、図1では図示を省略し1つのロボットメーカサイト200のみを示しているが、実際には、複数のロボットメーカサイト200がネットワーク500に接続されており、各ロボットメーカサイト200に属するロボットメーカ端末201がネットワーク500を介してケーブル状態管理装置400に相互に通信可能に接続されている。なお、ロボットメーカ端末201は、本発明の装置メーカ端末に相当する。
【0044】
(ケーブルメーカサイト300)
ケーブルメーカサイト300は、産業用ロボット110に用いられているケーブル2を製造しているケーブルメーカに属するサイトであり、ケーブルメーカ端末301を有している。ケーブルメーカ端末301は、ネットワーク500を介してケーブル状態管理装置400に相互に通信可能に接続されており、ケーブル状態管理装置400のケーブル状態記憶部401に記憶された断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データにアクセス可能に構成されている。
【0045】
本実施の形態では、ケーブルメーカ端末301がホスト端末として用いられる。そのため、後述するケーブル状態管理装置400のアクセス制限処理において、ケーブルメーカ端末301に対しては、全てのロボットメーカの断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データへのアクセスが許可されている。すなわち、ケーブルメーカ端末301からは、ケーブル状態記憶部401に記憶された全てのデータおよび全ての情報に対してアクセス可能である。さらに、ケーブルメーカ端末301は、ケーブル状態管理装置400の各種設定を行うことや、データ取得処理を実施させる更新信号を送信することが可能に構成されていてもよい。
【0046】
(ケーブル状態管理装置400)
ケーブル状態管理装置400は、ケーブル2の断線進行状態を表す断線進行状態データを記憶しているケーブル状態記憶部401と、制御部402とを有している。ケーブル状態管理装置400は、サーバ装置等のコンピュータにより構成されており、CPU等の演算素子、RAMやROM等のメモリ、ハードディスク等の記憶装置、ソフトウェア、インターフェイス等を適宜組み合わせて構成されている。また、ケーブル状態管理装置400は、ロボットユーザサイト100、ロボットメーカサイト200、ケーブルメーカサイト300のうちのどのサイトに属していてもよいが、実質的にケーブルメーカが管理する装置であるため、ケーブルメーカサイト300に属していることがよい。
【0047】
ケーブル状態管理装置400の制御部402は、設定処理部403、データ取得処理部404、断線進行状態推定処理部405、ケーブル寿命予測処理部406、及びアクセス制限処理部407を有している。
【0048】
(設定処理部403)
設定処理部403は、ケーブル状態管理装置400の各種設定を行うものである。設定処理部403では、例えば、データ取得処理部404によるデータ取得処理の方法や取得時間の設定等、各種制御に係る情報の設定を行うことができる。また、設定処理部403では、ケーブル状態記憶部401に記憶する各種情報の登録・更新・削除等が可能である。ケーブル状態記憶部401に記憶する情報としては、例えば、下記の情報が挙げられる。各種情報の入力等には、不図示の入力装置、あるいはケーブルメーカ端末301を用いることができる。
・ケーブル2の製品情報(品番、長さ、導体外径、撚線本数など)
・ケーブル2が使用されている産業用ロボット110の情報(型番、製造元ロボットメーカの識別番号や名称など)
・ロボットユーザの情報(識別番号や名称、所在地や産業用ロボット110の使用エリアなどの事業所の情報など)
・後述するホスト入力情報(確認済断線本数、異常データ有無など)
【0049】
(データ取得処理部404)
データ取得処理部404は、ネットワーク500を介してユーザ側データ管理装置120と通信を行い、ユーザ側データ管理装置120の記憶部122(更新前データ記憶部122a)に記憶された抵抗値データ及び動作データを取得する。取得した抵抗値データ及び動作データは、ケーブル状態記憶部401に記憶される(すなわち、ケーブル状態記憶部401に記憶されたデータベースが更新される)。データ取得処理部404がデータ取得処理を行うタイミングは適宜設定可能であり、例えば、毎日設定された時間にデータ取得処理を行うよう構成されてもよい。また、データ取得処理部404は、ケーブルメーカ端末301から更新信号を受信したときに、一括してデータ取得処理を行う(例えば、全て、あるいは指定されたロボットユーザに対して一括してデータ取得処理を行う)ように構成されていてもよい。さらに、データ取得処理部404は、各ロボットユーザサイト100に属するユーザ側データ管理装置120から更新信号を受信したときに、各ロボットユーザに対して個別にデータ取得処理を行うように構成されていてもよい。
【0050】
(断線進行状態推定処理部405)
断線進行状態推定処理部405は、データ取得処理部404で取得した抵抗値データに基づき、ケーブル2の断線進行状態を推定する。本実施の形態では、断線進行状態推定処理部405は、可動部である関節部111を周期的に繰り返し動作させる周波数を動作周波数としたとき、少なくとも、抵抗値データにおける動作周波数の抵抗値変動成分の大きさに基づいて、ケーブル2の断線進行状態を推定する。
【0051】
より具体的には、断線進行状態推定処理部405は、まず、抵抗値データの周波数解析を行い、動作周波数の抵抗値変動成分、及び動作周波数のn倍の高次周波数の抵抗値変動成分を抽出する周波数解析処理を行う。その後、抽出した動作周波数の抵抗値変動成分の大きさ、及び動作周波数のn倍の高次周波数の抵抗値変動成分の大きさを基に、ケーブル2の導体21aに断線が発生しているか否か、及び、どの程度の金属素線が断線しているかを推定する。例えば、動作周波数の抵抗値変動成分の大きさが閾値より大きいときに断線が発生したと推定する。また、例えば、高次周波数の抵抗値変動成分の大きさのそれぞれを閾値と比較し、動作周波数の何倍までの高次周波数において、その抵抗値変動成分の大きさが閾値より大きくなっているかを確認することによって、断線進行状態を推定する。断線進行状態推定処理部405は、その推定結果を断線進行状態データとしてケーブル状態記憶部401に記憶する。
【0052】
なお、例えば、上述のように、複数の関節部111について一括して抵抗値データを取得すべく、関節部111毎に動作周波数を異ならせた場合には、各関節部111の動作周波数に対応した抵抗値変動成分(動作周波数及びその高次周波数の各抵抗値変動成分)の大きさを求め、得られた各抵抗値変動成分の大きさに基づいて各関節部111の位置での断線進行状態を推定することになる。なお、断線進行状態推定処理部405で断線進行状態を推定する具体的な方法はこれに限定されず、例えば、導体21aの抵抗値を単純に測定し、当該測定結果に基づいてケーブル2の断線進行状態を推定することも可能である。
【0053】
断線進行状態推定処理部405がケーブル2の断線進行状態を推定するタイミングについては、適宜設定可能であるが、例えば、データ取得処理部404がデータ取得処理を行った後(すなわちケーブル状態記憶部401に記憶されたデータベースが更新された後)に、データの更新が行われたケーブル2の断線進行状態を推定するよう構成することができる。
【0054】
ここでは、断線進行状態推定処理部405がケーブル状態管理装置400に搭載されている場合を説明したが、これに限らず、断線進行状態推定処理部405は、ホスト端末であるケーブルメーカ端末301に搭載されていてもよい。この場合、ケーブルメーカ端末301に搭載された断線進行状態推定処理部405が、ネットワーク500を介してケーブル状態管理装置400から抵抗値データを取得し、その取得した抵抗値データを基に断線進行状態の推定を行い、その推定結果である断線進行状態データをケーブル状態管理装置400に送信して、ケーブル状態記憶部401に記憶させることになる。
【0055】
(ケーブル寿命予測処理部406)
ケーブル寿命予測処理部406は、データ取得処理部404で取得した動作データと、断線進行状態推定処理部405で推定した断線進行状態データとを基に機械学習を行い、ケーブル2の寿命を予測する。より具体的には、ケーブル寿命予測処理部406は、動作データに含まれる各パラメータ(例えば、屈曲回数や屈曲角度等の屈曲状況)に対する断線進行状態データの相関性を、機械学習により自ら学習するための学習アルゴリズム等のソフトウェアを含む。学習アルゴリズムは特に限定されず、公知の学習アルゴリズムを用いることができ、例えば、3層以上の層をなすニューラルネットワークを用いた、いわゆるディープランニング等を用いることができる。ケーブル寿命予測処理部406が学習するものは、可動部である関節部111の動作データ(すなわちケーブル2の屈曲・捻回条件)と、ケーブル2の断線進行状態と相関性を表すモデル構造に相当する。
【0056】
ケーブル寿命予測処理部406は、動作データ及び断線進行状態データを基に、説明変数(動作データ)と目的変数(断線進行状態データ)とを含むデータ集合に基づく学習を反復実行し、両者の相関性を自動的に解釈する。なお、学習の開始時には相関性は未知の状態であるが、学習を進めるに従って説明変数(動作データ)に対する目的変数(断線進行状態データ)の相関性を徐々に解釈し、その結果として得られた学習済みモデルを用いることで、説明変数(動作データ)に対する目的変数(断線進行状態データ)の相関性を解釈可能になる。
【0057】
そして、ケーブル寿命予測処理部406は、学習の結果である学習済みモデルに基づいて、目的変数(断線進行状態データ)があらかじめ設定された寿命設定値(導体21aが断線したと判定する断線進行状態データの値)に到達する説明変数(動作データ)を予測し、産業用ロボット110の過去の使用状態等(関節部111の駆動頻度等)等を考慮して、寿命に到達する時期、すなわちケーブル寿命を予測する。なお、ここでいう「ケーブル寿命」とは、断線進行状態データ(導体21aにおける金属素線の断線割合)が、予め設定した寿命と判断する断線割合に到達する時期を意味する。ケーブル寿命予測処理部406が予測したケーブル寿命は、ケーブル寿命予測データとしてケーブル状態記憶部401に記憶される。
【0058】
なお、ここでは、目的変数として断線進行状態データ(すなわち導体21aにおける金属素線の断線割合)を用いたが、これに限らず、目的変数としては、導体21aの断線を予測できるものであればよく、例えば、抵抗値データ中の特定の周波数成分(動作周波数やそのn倍の高次周波数の各抵抗値変動成分)の大きさを用いてもよいし、単純に導体21aの抵抗値を用いてもよい。なお、本明細書でいう「予め設定したケーブル寿命」は、例えば、ケーブル2を構成する導体21aの抵抗値増加率(導体21aの初期抵抗値に対する抵抗値の増加率)が20%を超えた状態に設定され、この際の断線進行状態(導体21aにおける金属素線の断線割合)は、例えば80%以上(=寿命と判断する断線割合)となる。
【0059】
また、寿命の予測に用いる「寿命と判断する断線割合」は、ケーブル2毎、産業用ロボット110毎、ロボットユーザ毎、あるいはロボットメーカ毎に、異なる割合に設定してもよい。これにより、例えば、特に安全マージンを大きくとる必要がある産業用ロボット110に対しては、「寿命と判断する断線割合」を小さくして安全側の判断とすること等が可能となり、管理対象となるケーブル2毎に個別に安全マージンを設定することが可能になる。
【0060】
また、本実施の形態では、ケーブル寿命予測処理部406がケーブル状態管理装置400に搭載されている場合を説明したが、これに限らず、ケーブル寿命予測処理部406は、上述の断線進行状態推定処理部405と同様に、ホスト端末であるケーブルメーカ端末301に搭載されていてもよい。この場合、ケーブルメーカ端末301に搭載されたケーブル寿命予測処理部406が、ネットワーク500を介してケーブル状態管理装置400から動作データを取得すると共に、断線進行状態推定処理部405を搭載した装置等から断線進行状態データを取得し、取得したこれら動作データ及び断線進行状態データを基にケーブル寿命の予測を行い、その結果であるケーブル寿命予測データをケーブル状態管理装置400に送信して、ケーブル状態記憶部401に記憶させることになる。
【0061】
(アクセス制限処理部407)
本実施の形態に係るケーブル状態管理システム1では、複数のユーザ端末130、複数のロボットメーカ端末201、及びケーブルメーカ端末301が、ケーブル状態記憶部401に記憶された断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データにアクセス可能に構成されている。しかし、例えば、任意のロボットメーカに他のロボットメーカに係る産業用ロボット110の技術的なデータを公開することは問題となる場合がある。そこで、本実施の形態では、アクセス制限処理部407により、ロボットユーザ、ロボットメーカ、及びケーブルメーカに、それぞれ異なるアクセスレベルを設定し、必要のないデータへのアクセスを抑制するように構成している。
【0062】
より具体的には、アクセス制限処理部407は、各ロボットメーカ端末201に対して、当該ロボットメーカ端末201が属するロボットメーカが製造した産業用ロボット110に係るケーブル2の断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データのみにアクセス可能となるように、アクセス制限を行う。また、アクセス制限処理部407は、各ユーザ端末130に対して、当該ユーザ端末130が属するロボットユーザが使用している産業用ロボット110に係るケーブル2の断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データのみにアクセス可能となるように、アクセス制限を行う。
【0063】
そして、アクセス制限処理部407は、ケーブルメーカ端末301に対しては、アクセス制限を行わない。すなわち、アクセス制限処理部407は、ケーブルメーカ端末301に対して、全てのロボットメーカの断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データへのアクセスを許可する。
【0064】
アクセス制限処理部407は、アクセス元がどのロボットユーザに属するユーザ端末130であるか、あるいは、どのロボットメーカに属するロボットメーカ端末201であるか、あるいはケーブルメーカ端末301であるかを、IPアドレスにより特定してもよい。また、ケーブル状態管理装置400へのアクセスの際にIDとパスワードの入力を要求するようにし、入力されたIDからアクセス元を特定してもよい。アクセス制限処理部407は、特定したアクセス元に基づき、アクセス元がロボットユーザ(ユーザ端末130)である場合は、当該ロボットユーザに係る情報のみにアクセス可能とし、アクセス元がロボットメーカ(ロボットメーカ端末201)である場合は、当該ロボットメーカに係る情報のみにアクセス可能とし、アクセス元がケーブルメーカ(ケーブルメーカ端末301)である場合は、全ての情報へのアクセスを可能とする。アクセス制限処理部407は、例えば、後述するケーブル状態データベースDBにおけるロボットユーザの情報(名称や識別番号等)や、ロボットメーカの情報(名称や識別番号等)に応じて、アクセス可能な情報を抽出し、アクセス元に提供するように構成される。
【0065】
(ケーブル状態管理装置400における他の要素)
図示していないが、ケーブル状態管理装置400は、推定したケーブル2の断線進行状態データが所定以上であるとき、当該ケーブル2を使用しているロボットユーザ、製造元のロボットメーカ、及びケーブルメーカの少なくとも1つに、警告を発する警告部を有していてもよい。警告部は、例えば、ユーザ端末130、ロボットメーカ端末201、及びケーブルメーカ端末301に警告信号を送信したり、予め登録しておいたメールアドレスにメールを送信したりすることで、警告を発する。警告部は、現在から予測したケーブル2の寿命までの期間が所定日数以下である場合に、警告を発するように構成されてもよい。
【0066】
また、ケーブル状態管理装置400は、ケーブル状態管理装置400と各端末130,201,301間の通信を暗号化する暗号通信処理部をさらに有していてもよい。暗号通信処理部は、例えば、ロボットユーザ、ロボットメーカ、及びケーブルメーカのみで符号・複合化が可能な暗号化処理等を行う。
【0067】
ケーブル状態管理装置400は、断線進行状態データ及びケーブル寿命予測データに基づいて、管理対象装置(ここでは、産業用ロボット110)に配線された管理対象ケーブル(ここでは、ケーブル2)を新しい管理対象ケーブルに交換した際に、管理対象装置に配線されていた管理対象ケーブルを交換したことをケーブル状態記憶部401に記憶させるリセット処理を行うためのリセット処理部を有していてもよい。リセット処理部では、少なくとも、管理対象装置に配線されていた管理対象ケーブルが新しい管理対象ケーブルに交換されたときに、管理対象装置に配線されていた管理対象ケーブルが交換済みであることを交換情報としてケーブル状態記憶部401に記憶させる。
【0068】
リセット処理では、交換前に管理対象装置に配線されていた管理対象ケーブルに関する各データを、ケーブル状態記憶部401から削除せずに旧データとして記憶させたままの状態としておくとよい。旧データは、ケーブル状態記憶部401に記憶させたままの状態にしておくことで、管理対象装置に新しく配線された管理対象ケーブルや管理対象装置に既に配線されている他の管理対象ケーブルの断線進行状態データやケーブル寿命予測データを取得するための機械学習等に利用することができる。
【0069】
リセット処理部にてリセット処理が行われた後、管理対象装置に新しく配線された管理対象ケーブルに関する設定処理が行われることがよい。
【0070】
(ケーブル状態データベースDB)
ケーブル状態記憶部401には、ケーブル状態の管理対象となる全てのケーブル2についての各種データが1つのデータベースに統合され記憶される。以下、このデータベースをケーブル状態データベースDBと呼称する。ケーブル状態データベースDBの一例を図6に示す。
【0071】
図6に示すように、ケーブル状態データベースDBは、ケーブル状態の管理対象となる全てのケーブル2についてのデータを格納したデータベースであり、ロボット情報、ユーザ情報、ケーブル情報、動作データ、抵抗値データ、断線進行状態データ、ケーブル寿命予測データ、ホスト端末入力情報、データ更新日等を含む。
【0072】
ロボット情報は、ケーブル2を適用している産業用ロボット110の情報であり、ロボットメーカの情報(名称や識別番号等)や、産業用ロボット110の型番等を含む。ユーザ情報は、産業用ロボット110を使用しているロボットユーザの情報であり、ロボットユーザの情報(名称や識別番号等)、産業用ロボット110を使用している事業所の情報(所在地や使用エリア等)等を含む。
【0073】
ケーブル情報は、産業用ロボット110(=管理対象装置)に配線されるケーブルであって、管理対象となるケーブル2(=管理対象ケーブル)の情報であり、品番、長さ、導体外径、導体21aの撚線本数等を含む。ケーブル2の複数の電線21が管理対象となっている場合、電線21を識別するための情報(電線番号や絶縁体21bの色等)を含んでもよい。また、産業用ロボット110に含まれる複数のケーブル2が管理対象となっている場合、ケーブル2を識別するための情報(ケーブル番号やシース25の色等)を含んでもよい。
【0074】
動作データは、管理対象とする可動部の動作情報であり、ケーブル寿命の予測に用いられる情報である。また、動作データは、ユーザ側データ管理装置120から取得された情報である。動作データは、管理対象となる関節部111毎に、屈曲捻回回数、曲げ半径、曲げ角度、曲げ速度、捻回部の長さ、捻回角度、捻回速度等の動作情報を含む。なお、図示の例では、1本のケーブル2に対して複数の関節部111を管理対象とする場合を示しているが、管理対象となる関節部111は1つでもよい。また、動作データは、動作データの取得日時の情報を含んでもよい。
【0075】
抵抗値データは、ケーブル2の導体21aの抵抗値の情報であり、断線進行状態の推定に用いられる情報である。また、動作データは、ユーザ側データ管理装置120から取得された情報である。抵抗値データは、管理対象となる関節部111毎に、動作周波数、動作周波数の抵抗値変動成分(1次成分)、動作周波数のn倍の抵抗値変動成分(n次成分、nは2以上の自然数)等を含む。図6では図示を省略しているが、抵抗値データの各抵抗値変動成分の値等については、過去の履歴も含んでいるとよい。また、抵抗値データは、抵抗値検出部150で検出した実測データ(実測データそのもの、あるいは、実測データのファイルへのリンクやファイル名等の情報)を含んでいてもよい。さらに、抵抗値データは、抵抗値データの取得日時の情報を含んでもよい。
【0076】
断線進行状態データは、断線進行状態推定処理部405が推定したケーブル2の断線進行状態のデータであり、より具体的には、断線進行状態推定処理部405が推定した導体21aの断線割合である。例えば、断線進行状態データが50%である場合、導体21aを構成する金属素線の半分が断線していることが推定されている。図示していないが、断線進行状態データは、ケーブル2の断線進行状態の推定日時の情報を含んでもよい。
【0077】
ケーブル寿命予測データは、ケーブル寿命予測処理部406が予測したケーブル2の寿命(ケーブル寿命)のデータであり、予め設定した寿命と判断する断線割合に到達する時期を示す情報である。したがって、ケーブル寿命予測データは、ケーブル2の交換を促す目安となる。図示していないが、ケーブル寿命予測データは、ケーブル寿命の予測を行った日時の情報を含んでもよい。また、「ケーブル寿命と判断する断線割合」をケーブル2毎(あるいは、産業用ロボット110毎、ロボットユーザ毎、ロボットメーカ毎)に異なる割合に設定する場合、ケーブル寿命予測データは、ケーブル寿命の予測に用いた「寿命と判断する断線割合」の情報を含んでもよい。
【0078】
ホスト端末入力情報は、ホスト端末であるケーブルメーカ端末301から入力された情報であり、ケーブルメーカによる詳細なメンテナンス等を行った際のメンテナンス結果や、ケーブルメーカがデータを確認した際に異常が認められるか否か等の情報を含んでいる。本実施の形態では、ホスト端末入力情報は、実際にメンテナンスで確認した断線本数である確認済断線本数、及び、異常データの有無の情報を含んでいる。確認済断線本数の情報を有することで、例えば、断線進行状態データの推定が精度よく行われているかを検証可能になる。また、異常データの有無の情報を有することで、例えば、異常データを含む場合には、当該ケーブル2に係る抵抗値データ等をケーブル寿命予測処理部406による機械学習に用いない等の対応が可能になる。なお、ホスト端末入力情報は、図示の項目に限定されず、他の項目を適宜含んでもよい。
【0079】
このように、本実施の形態では、ケーブル状態管理装置400は、ケーブル2を配線した可動部(関節部111)の動作データ、ケーブル2の抵抗値データ、断線進行状態データ、及びケーブル寿命予測データが、ロボットユーザ毎及びロボットメーカ毎にデータベース化されたケーブル状態データベースDBを有している。
【0080】
ケーブル2の寿命(ケーブル寿命)を精度よく予測するためには、多くのデータが必要になるが、従来多くの場合は、メンテナンス時のデータ等はロボットユーザで管理されるのみであり、多くのデータを集積することが困難であった。なお、例えば、ロボットメーカやケーブルメーカが出張して産業用ロボット110のメンテナンスを行うことで、多くのデータを収集することも考えられるが、手間やコストを考慮すると現実的ではなかった。これに対して、本実施の形態によれば、動作データと抵抗値データとを紐づけて多くのデータをケーブル状態データベースDBに集積でき、ケーブル2のケーブル寿命の予測精度の向上が図れる。
【0081】
(制御フロー)
(メインルーチン)
図7は、ケーブル状態管理システム1における制御フローを示すフロー図である。なお、図7および後述する図8~12において、実線で示す矢印は、制御の流れを表しており、破線で示す矢印は、信号やデータの入出力を表している。図7に示すように、ケーブルメーカ端末301は、例えば、データ取得処理を行う時刻であるデータ取得時刻の設定や、ホスト端末入力情報の入力等を行う際に、ケーブル状態管理装置400に設定信号を送信する(ステップS100)。ケーブル状態管理システム1は、ステップS201にて、設定信号が入力されたかを判定し、YES(Y)と判定された場合、ステップS202にて設定処理を実行する。設定処理の詳細については後述する。ステップS201でNO(N)と判定された場合、ステップS203に進む。
【0082】
ケーブルメーカ端末301は、抵抗値データや動作データの更新を行う際に、ケーブル状態管理装置400に更新信号を送信する(ステップS101)。また、ユーザ側データ管理装置120は、抵抗値データや動作データを取得した際等に、ケーブル状態管理装置400に更新信号を送信する(ステップS301)。ステップS203では、ケーブル状態管理装置400のデータ取得処理部404が、更新信号が入力されたかを判定する。ステップS203でYESと判定された場合、ステップS205にてデータ取得処理を行った後に、ステップS206に進む。データ取得処理の詳細については後述する。ステップS203でNOと判定された場合、ステップS204にて、現在時刻がデータ取得時刻であるかを判定する。ステップS204でYESと判定された場合、ステップS205にてデータ取得処理を行った後に、ステップS206に進む。ステップS204でNOと判定された場合、データ取得処理等をスキップしてステップS208に進む。なお、ここでは、毎日データ取得時刻になるとデータ取得処理が行われるように制御する場合を示しているが、ステップS204は省略可能である。なお、ステップS204を省略する場合、ステップS203でNOと判定された際にステップS208に進むようにすればよい。
【0083】
その後、ステップS206にて断線進行状態推定処理、ステップS207にてケーブル寿命予測処理を順次行い、ステップS208に進む。断線進行状態推定処理やケーブル寿命予測処理の詳細については後述する。なお、ここでは、データ取得処理を行った際に、断線進行状態推定処理とケーブル寿命予測処理とを実行するように構成しているが、例えば、ケーブルメーカ端末301からの指示信号の入力等に応じて断線進行状態推定処理やケーブル寿命予測処理を適宜実行できるようにしてもよい。
【0084】
ケーブルメーカ端末301は、ケーブル2の断線進行状態やケーブル寿命を確認する際に、ケーブル状態管理装置400にデータ要求信号を送信する(ステップS102)。同様に、ユーザ端末130やロボットメーカ端末201は、ケーブル2の断線進行状態やケーブル寿命を確認する際に、ケーブル状態管理装置400にデータ要求信号を送信する(ステップS303,S401)。なお、ロボットユーザでは、モバイルユーザ端末140からケーブル状態管理装置400にデータ要求信号を送信するようにしてもよい。
【0085】
ステップS208では、ケーブル状態管理装置400が、データ要求信号が入力されたかを判定する。ステップS208でYESと判定された場合、ステップS209にてデータ出力処理を行い、その後、リターンする。データ出力処理の詳細については後述する。ステップS208でNOと判定された場合、ステップS209にてデータ出力処理を行わずにリターンする。
【0086】
(設定処理)
図8に示すように、ステップS202の設定処理では、まず、ケーブルメーカ端末301で入力された設定データが、ケーブルメーカ端末301からケーブル状態管理装置400に送信される(ステップS110)。ケーブル状態管理装置400の設定処理部403は、受信した設定データに応じて、各種の設定を行う(ステップS211)。その後、ステップS211での各種の設定に伴い、ケーブル状態データベースDBの更新処理等の適宜な処理を行い(ステップS212)、リターンする。
【0087】
(データ取得処理)
図9に示すように、ステップS205のデータ取得処理では、まず、ケーブル状態管理装置400のデータ取得処理部404が、データを取得するユーザ側データ管理装置120に、データ更新信号を送信する(ステップS221)。
【0088】
ユーザ側データ管理装置120では、データ取得処理と並行して、ステップS302のデータ送受信処理が行われている。このデータ送受信処理において、ユーザ側データ管理装置120は、まず、ステップS321にて、ケーブル状態管理装置400からデータ更新信号が入力されたかを判定する。ステップS321でNOと判定された場合、リターンする。ステップS321でYESと判定された場合、ステップS322にて、更新前データ記憶部122aに更新前の抵抗値データ(実測値、すなわち周波数解析が行われていない抵抗値の時系列的な変化を示すデータ)や動作データが存在するかを判定する。ステップS322にてNOと判定された場合、ステップS323にてケーブル状態管理装置400に更新済信号を送信した後、リターンする。ステップS322にてYESと判定された場合、ステップS324にて、更新前データ記憶部122aに記憶されたデータ更新前のデータ(抵抗値データ(実測値)や動作データ)をケーブル状態管理装置400に送信する。その後、ステップS325にて、ユーザ側データ管理装置120では、ケーブル状態管理装置400に送信した抵抗値データ(実測値)や動作データを更新前データ記憶部122aから更新後データ記憶部122bに移動させ、更新後のデータとして更新後データ記憶部122bに記憶させる。その後、リターンする。なお、更新後データ記憶部122bに記憶させた更新後のデータ(抵抗値データ(実測値)や動作データ)は、更新後データ記憶部122bにて圧縮や所定期間の記憶・削除等の処理がなされる。
【0089】
データ取得処理に戻り、ステップS221で更新信号を送信した後、ステップS222にて、更新済信号が入力されたかを判定する。ステップS222にてYESと判定された場合、新たな抵抗値データや動作データが存在しないことになるため、データ取得を行わずにリターンする。
【0090】
ステップS222にてNOと判定された場合、ユーザ側データ管理装置120から抵抗値データや動作データを受信した後、ステップS223にて、データ取得処理部404が、受信した抵抗値データをケーブル状態記憶部401に記憶する。本実施の形態では、データ取得処理において抵抗値データの実測値がやり取りされるが、周波数解析済の抵抗値データ(動作周波数及びその高次周波数の抵抗値変動成分)をやり取りする場合、ステップS223では、抵抗値データのケーブル状態データベースDBへの登録が行われる。
【0091】
その後、ステップS224にて、データ取得処理部404が、受信した動作データをケーブル状態データベースDBに登録する。この際、ケーブル状態の管理に必要な動作データのみを抽出する処理を適宜行ってもよい。その後、リターンする。
【0092】
(断線進行状態推定処理)
図10に示すように、ステップS206の断線進行状態推定処理では、まず、ステップS231にて、ケーブル状態管理装置400の断線進行状態推定処理部405が、データ取得処理で取得した抵抗値データの周波数解析を行い、ステップS232にて、動作周波数及びその高次周波数の抵抗値変動成分を取得し、ケーブル状態データベースDBに登録する。なお、断線進行状態推定処理部405で抵抗値データの周波数解析を行う際には、ある程度まとまった抵抗値の時系列データが必要である。そのため、図示していないが、ステップS231を行う前に、周波数解析を行うために必要な抵抗値データが取得されているかどうかを確認する処理を行うことがよい。
【0093】
その後、ステップS233にて、動作周波数及びその高次周波数の抵抗値変動成分の大きさと、あらかじめ設定した閾値とをそれぞれ比較し、ステップS234にて、閾値を超えた周波数の次数を抽出する。その後、ステップS235にて、比較結果からケーブル2の断線進行状態(導体21aにおける金属素線の断線割合)を推定する。その後、ステップS236にて、推定したケーブル2の断線進行状態を、断線進行状態データとしてケーブル状態データベースDBに登録(あるいは更新)し、リターンする。
【0094】
図示していないが、断線進行状態推定処理部405は、断線進行状態データが登録(あるいは更新)されたことを通知すべく、対応するロボットユーザのユーザ端末130やロボットメーカのロボットメーカ端末201に通知信号を送信してもよい。
【0095】
(ケーブル寿命予測処理)
図11に示すように、ステップS207のケーブル寿命予測処理では、まず、ステップS241にて、ケーブル状態管理装置400のケーブル寿命予測処理部406が、ステップS205で得た動作データ及びステップS206で得た断線進行状態データを基に機械学習を行って学習済みモデルを更新する。その後、ステップS242にて、更新した学習済みモデルを用いてケーブル2の寿命(ケーブル寿命)を予測する。その後、予測したケーブル2のケーブル寿命を、ケーブル寿命予測データとしてケーブル状態記憶部401に登録(あるいは更新)し、リターンする。
【0096】
図示していないが、ケーブル寿命予測処理部406は、ケーブル寿命予測データが登録(あるいは更新)されたことを通知すべく、対応するロボットユーザのユーザ端末130やロボットメーカのロボットメーカ端末201に通知信号を送信してもよい。
【0097】
(データ出力処理)
図12に示すように、ステップS209のデータ出力処理では、まず、ステップS251にて、ケーブル状態管理装置400のアクセス制限処理部407が、入力されたデータ要求信号の送信元を特定する。送信元を特定方法としては、例えば、送信元のIPアドレスや、ログインの際のID等を用いて特定する方法等を適宜用いることができる。その後、ステップS252にて、ステップS251で特定した送信元がユーザ端末130であるかを判定する。ステップS252でYESと判定された場合、ステップS253にて、ケーブル状態データベースDBから送信元のロボットユーザに係るケーブル2のデータX(断線進行状態データXやケーブル寿命予測データX等の要求されたデータX)を抽出する。その後、ステップS254にて、ステップS253で抽出したデータを、ユーザ端末130に送信する。その後、リターンする。ロボットユーザは、ユーザ端末130で断線進行状態データXやケーブル寿命予測データXを受信する。このとき、断線進行状態データXやケーブル寿命予測データXは、ユーザ端末130の表示部に表示される(ステップS351)。ロボットユーザは、受信したデータを用いて産業用ロボット110の予知保全(=管理対象ケーブルの交換等)を実施する。なお、産業用ロボット110の予知保全は、受信したデータに基づいて必要に応じて実施することでもよい。
【0098】
ステップS252でNOと判定された場合、ステップS255にて、ステップS251で特定した送信元がロボットメーカ端末201であるかを判定する。ステップS255でYESと判定された場合、ステップS256にて、ケーブル状態データベースDBから送信元のロボットメーカに係るケーブル2のデータY(断線進行状態データYやケーブル寿命予測データY等の要求されたデータY)を抽出する。この際、例えば、特定のロボットユーザ(ただし、送信元のロボットユーザが製造する産業用ロボット110を使用しているロボットユーザに限る)に係るデータのみを抽出可能としてもよい。その後、ステップS257にて、ステップS256で抽出したデータYを、ロボットメーカ端末201に送信する。その後、リターンする。ロボットメーカは、ロボットメーカ端末201で断線進行状態データYやケーブル寿命予測データYを受信する。このとき、断線進行状態データYやケーブル寿命予測データYは、ロボットメーカ端末201の表示部に表示される(ステップS451)。ロボットメーカは、受信したデータを用いて各ロボットユーザの産業用ロボット110の予知保全(=管理対象ケーブルの交換等)を実施するか、あるいは予知保全の実施をサポートする。なお、産業用ロボット110の予知保全、あるいは予知保全のサポートは、受信したデータに基づいて必要に応じて実施することでもよい。
【0099】
ステップS255でNOと判定された場合、ステップS258にて、ステップS251で特定した送信元がケーブルメーカ端末301であるかを判定する。ステップS258でNOと判定された場合、送信元がユーザ端末130、ロボットメーカ端末201、ケーブルメーカ端末301のいずれでもないことになるため、データ出力を行わずにリターンする。ステップS258でYESと判定された場合、ステップS259にて、ケーブル状態データベースDBの全てのデータZ(断線進行状態データZやケーブル寿命予測データZ等の要求されたデータZ)を、ケーブルメーカ端末301に送信する。この際、例えば、特定のロボットユーザやロボットメーカに係るデータのみを抽出して送信可能としてもよい。その後、リターンする。ケーブルメーカは、ケーブルメーカ端末301で断線進行状態データZやケーブル寿命予測データZを受信する。このとき、断線進行状態データZやケーブル寿命予測データZがケーブルメーカ端末301の表示部に表示される(ステップS151)。
【0100】
図12(ステップS209)のデータ出力処理の後、リセット処理を行ってもよい。リセット処理では、管理対象ケーブル(ケーブル2)を交換した際に、管理対象ケーブルが交換済みであることを交換情報としてケーブル状態記憶部401に記憶する。また、リセット処理では、交換前に配線されていた管理対象ケーブルに関する各データを、ケーブル状態記憶部401から削除せずに旧データとして記憶させたままの状態としておくとよい。この旧データは、例えば、他の管理対象ケーブルの断線進行状態データやケーブル寿命予測データを取得するための機械学習等に利用することができる。さらに、リセット処理部にてリセット処理が行われた後、管理対象装置に新しく配線された管理対象ケーブルに関する設定処理が行われてもよい。
【0101】
(ケーブル状態管理システム1の運用)
上述したケーブル状態管理システム1を用いて実現されるサービス(ケーブル状態管理サービスという)は、基本的にケーブルメーカにより提供される。ロボットメーカやロボットユーザは、ケーブルメーカに対してサービス提供に係る契約を行い、提供されるサービスに対する対価をケーブルメーカに支払う。例えば、ケーブル状態管理を行うケーブル2の本数に応じて1か月あたりの対価を設定したり、断線進行状態データやケーブル寿命予測データ等のデータを提供する件数であるデータ提供件数に応じて対価を設定したりするなど、適宜な費用管理を行うことができる。
【0102】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るケーブル状態管理システム1では、ケーブル2の断線進行状態を表す断線進行状態データを記憶しているケーブル状態記憶部401を有するケーブル状態管理装置400と、産業用ロボット110を利用するロボットユーザに属しており、ケーブル2の断線進行状態を推定するための主要データを管理するユーザ側データ管理装置120と、産業用ロボット110を製造するロボットメーカに属するロボットメーカ端末201と、ケーブル2を製造するケーブルメーカに属するケーブルメーカ端末301と、を備え、ユーザ側データ管理装置120、ロボットメーカ端末201、及びケーブルメーカ端末301は、ネットワーク500を介してケーブル状態管理装置400に接続されており、少なくとも、ロボットメーカ端末201及びケーブルメーカ端末301は、ケーブル状態記憶部401に記憶された断線進行状態データにアクセス可能に構成されている。
【0103】
このように構成することで、ロボットユーザだけでなく、ロボットメーカとケーブルメーカもケーブル2の断線進行状態を遠隔地からでも高精度に管理することが可能となり、ロボットユーザとロボットメーカとケーブルメーカの三者でケーブル2の断線進行状態を手厚く管理することが可能になる。その結果、ロボットメーカやケーブルメーカにおいても、ケーブル2の断線進行状態を監視して、断線進行状態に応じてケーブル2の交換を適宜に促す等の安全上の措置を講じることができ、ケーブル2の不具合に起因した産業用ロボット110の故障を効率的に抑制することが可能になる。
【0104】
また、従来は産業用ロボット110の使用現場でIoT(Internet of Things)データを蓄積してケーブル2の断線進行状態の推定やケーブル寿命の予測をしようとする様々な試みが行われているが、様々な理由で実用には至っていなかった。本実施の形態によれば、複数のロボットユーザ、あるいは複数のロボットメーカにわたってケーブル2の状態に関わるデータ(抵抗値データや動作データ等)を容易に収集して蓄積することができ、また、蓄積したデータを活用して遠隔地でも高精度にケーブル2の断線進行状態の推定やケーブル寿命の予測を行うことが実現可能になる。
【0105】
(変形例)
上記実施の形態では、ケーブル2の抵抗値データを実測し、その実測値に基づいてケーブル2の断線進行状態を推定したが、ケーブル2の抵抗値データを実測せずに、動作データのみに基づいてケーブル2の断線進行状態を推定するよう構成することも可能である。この場合、ケーブル寿命予測処理部406において、予め精度の高い学習済モデル(動作データに対する断線進行状態データの学習済モデル)を構築しておき、この学習済モデルを用いて、動作データからケーブル2の断線進行状態を推定すればよい。なお、抵抗値データを実測する(つまり産業用ロボット110に抵抗値検出部150を搭載した)ロボットユーザと、動作データのみを測定する(産業用ロボット110に抵抗値検出部150を搭載していない)ロボットユーザの両方が、ネットワーク500を介してケーブル状態管理装置400に接続されていてもよく、入力されるデータに応じて断線進行状態の推定方法を設定するように構成してもよい。また、動作データを測定しないロボットユーザが含まれてもよい。ケーブル2の断線進行状態の推定やケーブル寿命の予測に用いる抵抗値データは、ケーブル2を構成する導体21a以外の部材において検出される抵抗値が用いられることであってもよい。
【0106】
また、上記実施の形態では、ケーブル状態管理装置400に対する抵抗値データや動作データの入力先が、ユーザ側データ管理装置120のみである場合について説明したが、これに限らず、ロボットメーカ端末201やケーブルメーカ端末301からケーブル状態管理装置400に抵抗値データや動作データを入力できるよう構成してもよい。これにより、例えば、出張等でロボットメーカやケーブルメーカが実測した抵抗値データや動作データを持ち帰り、データ整理等の適宜な処理を施した上で、ロボットメーカ端末201やケーブルメーカ端末301からデータ入力をすることが可能となり、利便性が向上する。
【0107】
また、上記実施の形態では、断線進行状態を管理するケーブルである管理対象ケーブルが配線される管理対象装置として、産業用ロボット110である場合を説明したが、産業用ロボット110に限定されない。つまり、ケーブル2を適用する装置は、ケーブル2が繰り返し屈曲・捻回・揺動等の動作を受けるケーブル(=管理対象ケーブル)が適用されるものであればよく、例えば、産業用ロボット110以外の工場設備でもいいし、さらには自動車等でもよい。特に、近年、自動車においては、インターネットを介した通信が可能なものがあり、当該通信を利用して抵抗値データや動作データをケーブル状態管理装置400に送信するよう構成できる。例えば、自動車の場合、足回りのケーブル(例えば、電動パーキング用ケーブル、ABSセンサ用ケーブル、又は電気ブレーキ用ケーブル)に本発明を適用し、自動車に周期的な振動(例えば、高速道路走行時の振動)が加わった際に、周期的に揺動を受けるケーブルの抵抗値データを測定する。この場合、振動の周期(ケーブルが揺動する周期)に対応する周波数が、動作周波数に相当することになる。よって、測定した抵抗値データから動作周波数及びその高次周波数の抵抗値変動成分を抽出し、抽出したそれぞれの抵抗値変動成分の大きさと閾値とを比較することで、ケーブルの断線進行状態を推定することができる。
【0108】
また、上記実施の形態では、ロボットユーザサイト100において、ユーザ端末130とユーザ側データ管理装置120とが別体に構成されている場合について説明したが、これらユーザ端末130とユーザ側データ管理装置120とが一体に構成されていてもよい。さらに、産業用ロボット110に付随するロボット制御装置112が、直接ネットワーク500を介してケーブル状態管理装置400に接続されていてもよい。この場合、ユーザ側データ管理装置120としての機能が、ロボット制御装置112に搭載される(つまり、ロボット制御装置112が、ユーザ側データ管理装置120としての機能を兼ね備える)ことになる。
【0109】
また、上記実施の形態では、ケーブルメーカがケーブル状態管理装置400の管理を行う場合について説明したが、ケーブル状態管理装置400の管理は、ケーブルメーカ以外の専門の業者が行ってもよい。
【0110】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0111】
[1]管理対象装置(110)の配線として用いられているケーブル(2)の断線進行状態を管理するケーブル状態管理システム(1)であって、前記ケーブル(2)の断線進行状態を表す断線進行状態データを記憶しているケーブル状態記憶部(401)を有するケーブル状態管理装置(400)と、前記管理対象装置(110)を利用する装置ユーザに属する装置ユーザ側データ管理装置(120)と、前記管理対象装置(110)を製造する装置メーカに属する装置メーカ端末(201)と、前記ケーブル(2)を製造するケーブルメーカに属するケーブルメーカ端末(301)と、を備え、前記ケーブル状態管理装置(400)に接続されており、少なくとも、前記装置メーカ端末(201)及び前記ケーブルメーカ端末(301)は、前記ケーブル状態記憶部(401)に記憶された前記断線進行状態データにネットワーク(500)を介してアクセス可能に構成されている、ケーブル状態管理システム(1)。
【0112】
[2]前記ケーブル(2)を周期的に繰り返し動作させた際の前記ケーブル(2)の抵抗値の時系列的な変化を検出可能な抵抗値検出部(150)を備え、前記装置ユーザ側データ管理装置(120)は、前記抵抗値検出部(150)の検出結果である抵抗値データを記憶する記憶部(122)を有し、前記ケーブル状態管理装置(400)は、前記装置ユーザ側データ管理装置(120)の前記記憶部(122)に記憶された前記抵抗値データを取得するデータ取得処理部(404)を有し、前記ケーブルの断線進行状態は、前記データ取得処理部(404)が取得した前記抵抗値データを基に推定される、[1]に記載のケーブル状態管理システム(1)。
【0113】
[3]前記ケーブル状態管理装置(400)は、前記ケーブル(2)を周期的に繰り返し動作させる周波数を動作周波数としたとき、少なくとも、前記抵抗値データにおける前記動作周波数の抵抗値変動成分の大きさに基づいて、前記ケーブルの断線進行状態を推定する断線進行状態推定処理部(405)を有する、[2]に記載のケーブル状態管理システム(1)。
【0114】
[4]前記抵抗値検出部(150)は、前記管理対象装置(110)あるいは当該管理対象装置(110)に付随する前記管理対象装置(110)の制御装置(112)に搭載されており、前記抵抗値データを前記装置ユーザ側データ管理装置(120)に出力可能に構成されている、[2]または[3]に記載のケーブル状態管理システム(1)。
【0115】
[5]前記装置ユーザ側データ管理装置(120)は、前記ケーブル(2)の動作状況のデータである動作データを前記記憶部(122)に記憶するように構成されており、前記ケーブル状態管理装置(400)の前記データ取得処理部(404)は、前記装置ユーザ側データ管理装置(120)の前記記憶部(122)に記憶された前記動作データを取得するように構成されており、前記ケーブル状態管理装置(400)は、前記動作データと前記断線進行状態データとを基に機械学習を行い、前記ケーブル(2)の寿命を予測すると共に、予測した前記ケーブル(2)の寿命をケーブル寿命予測データとして前記ケーブル状態記憶部(401)に記憶するケーブル寿命予測処理部(406)を有し、少なくとも、前記装置メーカ端末(201)及び前記ケーブルメーカ端末(301)は、前記ケーブル状態記憶部(401)に記憶された前記ケーブル寿命予測データにアクセス可能に構成されている、[2]乃至[4]の何れか1項に記載のケーブル状態管理システム(1)。
【0116】
[6]前記ケーブル状態管理装置(400)には、ネットワーク(500)を介して、それぞれ異なる前記装置メーカに属する複数の前記装置メーカ端末(201)が接続されており、前記ケーブル状態管理装置(400)は、前記各装置メーカ端末(201)に対して、当該装置メーカ端末(201)が属する前記装置メーカが製造した前記管理対象装置(110)に係る前記ケーブル(2)の前記断線進行状態データのみにアクセス可能となるように、アクセス制限を行うアクセス制限処理部(407)を有する、[1]乃至[5]の何れか1項に記載のケーブル状態管理システム(1)。
【0117】
[7]前記アクセス制限処理部(407)は、前記ケーブルメーカ端末(301)に対して、全ての前記装置メーカの前記断線進行状態データへのアクセスを許可する、[6]に記載のケーブル状態管理システム(1)。
【0118】
[8]前記管理対象装置(110)は、産業用ロボット(110)であり、前記装置メーカは、前記産業用ロボット(110)を製造するロボットメーカである、[1]乃至[7]の何れか1項に記載のケーブル状態管理システム(1)。
【0119】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0120】
1…ケーブル状態管理システム
2…ケーブル
21…電線
21a…導体
100…ロボットユーザサイト
110…産業用ロボット(管理対象装置)
111…関節部(可動部)
112…ロボット制御装置(制御装置)
120…ユーザ側データ管理装置(装置ユーザ側データ管理装置)
122…記憶部
130…ユーザ端末(装置ユーザ端末)
150…抵抗値検出部
200…ロボットメーカサイト
201…ロボットメーカ端末(装置メーカ端末)
300…ケーブルメーカサイト
301…ケーブルメーカ端末
400…ケーブル状態管理装置
401…ケーブル状態記憶部
402…制御部
403…設定処理部
404…データ取得処理部
405…断線進行状態推定処理部
406…ケーブル寿命予測処理部
407…アクセス制限処理部
500…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12