(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013349
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】集電体から活物質層を分離する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20240125BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240125BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240125BHJP
C22B 15/00 20060101ALI20240125BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20240125BHJP
C11D 7/50 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01M10/54
H01M4/66 A
H01M4/62 Z
C22B15/00
C22B1/00 601
C11D7/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115374
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】光岡 宏明
(72)【発明者】
【氏名】河口 聡史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡子
【テーマコード(参考)】
4H003
4K001
5H017
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
4H003DA15
4H003ED26
4K001AA02
4K001AA04
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA19
4K001AA27
4K001AA41
4K001BA22
4K001DB38
5H017AA03
5H017AS02
5H017BB13
5H017BB14
5H017EE01
5H031BB02
5H031EE04
5H031RR02
5H050AA00
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB20
5H050GA01
5H050GA12
5H050GA13
(57)【要約】
【課題】集電体から活物質層を効率的に分離できる方法の提供。
【解決手段】集電体と、集電体上に配置された、結着剤および活物質を含む活物質層とを有する電極と、フッ素系溶剤とを接触させて、集電体から活物質層を分離する、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体上に配置された、結着剤および活物質を含む活物質層とを有する電極と、
フッ素系溶剤とを接触させて、前記集電体から前記活物質層を分離する、方法。
【請求項2】
前記フッ素系溶剤が、含フッ素オレフィン、含フッ素エーテルおよび含フッ素飽和炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ素系溶剤が、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、メトキシパーフルオロヘプテン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、および、エチルノナフルオロイソブチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記集電体が、銅からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記結着剤が、ポリフッ化ビニリデンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記電極を前記フッ素系溶剤に浸漬させることによって、前記電極と前記フッ素系溶剤とを接触させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記電極を前記フッ素系溶剤に浸漬した状態で、前記フッ素系溶剤に振動を与える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記振動が、超音波振動である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
次いで、分離された前記集電体を回収し、回収した前記集電体から前記フッ素系溶剤を除去する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電体から活物質層を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンやスマートフォンなどの家電製品、電気自動車やハイブリッドカーなどの自動車およびその他産業用分野においてリチウムイオン二次電池に代表される二次電池の需要は増加している。このため、資源の有効利用および原料確保の観点から、使用済みの二次電池を構成する集電体および活物質から有価金属を回収し、リサイクルすることが求められている。
【0003】
特許文献1には、正極活物質としてコバルトを含む使用済みのリチウムイオン二次電池を350~1000℃で焙焼し、次に破砕した後、破砕物を、JISZ8801標準篩420~1000μmで篩分けして、篩下を回収することからなる、使用済みのリチウムイオン二次電池からコバルトを回収する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の方法では、破砕・篩分けなどの処理により集電体および活物質が脆化または微粉化するため、有価金属の回収率が低下する場合があった。そのため、より一層効率的に、集電体などを分離できる方法が求められていた。
【0006】
本発明は、集電体から活物質層を効率的に分離できる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の方法を提供する。
【0008】
〔1〕
集電体と、上記集電体上に配置された、結着剤および活物質を含む活物質層とを有する電極と、
フッ素系溶剤とを接触させて、上記集電体から上記活物質層を分離する、方法。
〔2〕
上記フッ素系溶剤が、含フッ素オレフィン、含フッ素エーテルおよび含フッ素飽和炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、〔1〕に記載の方法。
〔3〕
上記フッ素系溶剤が、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、メトキシパーフルオロヘプテン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、およびエチルノナフルオロイソブチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、〔1〕に記載の方法。
〔4〕
上記集電体が、銅からなる、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の方法。
〔5〕
上記結着剤が、ポリフッ化ビニリデンである、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の方法。
〔6〕
上記電極を上記フッ素系溶剤に浸漬させることによって、上記電極と上記フッ素系溶剤とを接触させる、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の方法。
〔7〕
上記電極を上記フッ素系溶剤に浸漬した状態で、上記フッ素系溶剤に振動を与える、〔6〕に記載の方法。
〔8〕
上記振動が、超音波振動である、〔7〕に記載の方法。
〔9〕
次いで、分離された上記集電体を回収し、回収した上記集電体から上記フッ素系溶剤を除去する、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、集電体から活物質層を効率的に分離できる方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<集電体から活物質層を分離する方法>
本発明の方法は、集電体と、集電体上に配置された、結着剤および活物質を含む活物質層とを有する電極と、フッ素系溶剤とを接触させて、集電体から活物質層を分離する、方法である。
【0011】
本発明の方法の詳細な作用機序は明らかではないが、本発明者らはフッ素系溶剤と電極とを接触させることにより、活物質層に含まれる結着剤の少なくとも一部が膨潤、または溶解し、結着力が低下することで、集電体から活物質層を効率的に分離できると推測している。
【0012】
(電極)
電極は、集電体と、上記集電体上に配置された、結着剤および活物質を含む活物質層を有する。
【0013】
集電体を構成する材料としては、金属、カーボン、導電性高分子、導電性ガラスなどが挙げられる。なかでも、金属が好ましい。
金属としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、鉄、金、白金およびこれらの合金(ステンレス、鋼など)が挙げられる。なかでも、集電体から活物質層を分離しやすい観点で、銅が好ましい。
なお、リチウムイオン二次電池の正極に用いる集電体としてはアルミニウムが好ましく、負極に用いる集電体としては銅が好ましい。
集電体は、表面処理されていてもよい。
集電体の形状としては、シート状、網状、円柱状、コイル状、多孔質状などが挙げられる。
集電体の厚みは、5~150μmが好ましい。
【0014】
活物質層は、集電体上に配置され、結着剤および活物質を含む。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリオレフィンおよびポリアクリロニトリルが挙げられる。
また、結着剤は、親水性基を有する重合体であってもよい。
上記重合体が有する親水性基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シラノール基、アミノ基およびリン酸基が挙げられる。
親水性基を有する重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリ(p-スチレンスルホン酸)、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールが挙げられる。
上記結着剤のなかでも、ポリフッ化ビニリデン、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、および、ポリ(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。また、結着剤としては、スチレン-ブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースとの混合物も好ましい。
結着剤は、1種単独または2種以上で用いてもよい。
結着剤の含有量は、活物質層の全質量に対して、0.1~30質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましい。
【0015】
活物質としては、例えば、リチウムイオン二次電池に用いられる、正極活物質および負極活物質が挙げられる。
正極活物質としては、リチウム含有遷移金属リン酸塩、リチウムと遷移金属との複合酸化物およびリチウムと遷移金属との複合硫化物が挙げられる。
リチウム含有遷移金属リン酸塩としては、LiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4およびLiNiPO4が挙げられる。
リチウムと遷移金属との複合酸化物としては、LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2、LiMn2O4などの遷移金属が1種の複合酸化物、LiFeMnO4、LiNi(1-x)CoxO2、LiMn1-yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2などの遷移金属元素が2種の複合酸化物、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2などの遷移金属元素が3種以上の複合酸化物が挙げられる。リチウムと遷移金属との複合硫化物としては、LiMoS2およびLiTiS2が挙げられる。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0016】
負極活物質としては、炭素材料、ケイ素材料、導電性高分子、金属および金属酸化物が挙げられる。
ケイ素材料としては、ケイ素、酸化ケイ素およびケイ素合金が挙げられる。導電性高分子としては、ポリアセチレンおよびポリピロールが挙げられる。金属としては、スズ、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタンが挙げられる。
炭素材料としては、活性炭、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、カーボンファイバーなどの非晶質炭素、黒鉛(グラファイト)などの結晶性炭素が挙げられる。
負極活物質としては、黒鉛または難黒鉛化性炭素が好ましい。
上記負極活物質の一部または全部に、リチウムまたはリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
【0017】
活物質の平均粒子径は、0.01~100μmが好ましく、0.1~50μmがより好ましい。
正極活物質の平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmが好ましく、0.1~35μmがより好ましく、2~30μmがさらに好ましい。
負極活物質の平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmが好ましく、0.1~20μmがより好ましく、2~10μmがさらに好ましい。
活物質の平均粒子径は、活物質層を電子顕微鏡で観察して、10個の活物質の粒子径を測定して、それらを算術平均して求める。
【0018】
活物質は、1種単独または2種以上で用いてもよい。
活物質の含有量は、活物質層の全質量に対して、70~99.9質量%が好ましく、85~99質量%がより好ましい。
【0019】
活物質層は、さらに導電剤を含んでいてもよい。
導電剤としては、アセチレンカーボンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックおよびサーマルランプブラックなどのカーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。
導電剤は、1種単独または2種以上で用いてもよい。
導電剤の含有量は、活物質層の全質量に対して、0.1~3質量%が好ましく、0.1~1質量%がより好ましい。
【0020】
(フッ素系溶剤)
フッ素系溶剤は、炭素原子、フッ素原子、水素原子、任意の酸素原子、および、任意の塩素原子から構成される化合物である。上記化合物の炭素原子の数は、1~30が好ましく、1~12がより好ましい。上記化合物のフッ素原子の数は2~20が好ましい。上記化合物の酸素原子の数は0~5が好ましく、0または1がより好ましい。上記化合物の水素原子の数は、1~10が好ましく、2~8がより好ましい。上記化合物は、環式化合物および非環式化合物のいずれであってもよく、非環式化合物が好ましい。
【0021】
フッ素系溶剤としては、含フッ素オレフィン、含フッ素エーテルおよび含フッ素飽和炭化水素が挙げられ、含フッ素オレフィンまたは含フッ素エーテルが好ましく、地球温暖化係数が小さい観点で、含フッ素オレフィンがより好ましい。
【0022】
含フッ素オレフィンは、フッ素原子、および、炭素-炭素二重結合を有する化合物である。含フッ素オレフィンは、塩素原子またはエーテル結合を有していてもよい。例えば、炭素原子、水素原子およびフッ素原子から構成され、炭素-炭素二重結合を有するハイドロフルオロオレフィン(以下、「HFO」ともいう。)、ならびに、炭素原子、水素原子、フッ素原子および塩素原子から構成され、炭素-炭素二重結合を有するハイドロクロロフルオロオレフィン(以下、「HCFO」ともいう。)が挙げられる。
HFOとしては、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(以下、「HFO-1336mzz」ともいう。)が挙げられる。
HCFOとしては、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(以下、「HCFO-1233yd」ともいう。)、および、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(以下、「HCFO-1233zd」ともいう。)が挙げられる。
HFOおよびHCFO以外の含フッ素オレフィンとしては、例えば、炭素原子、水素原子、酸素原子およびフッ素原子から構成され、炭素-炭素二重結合およびエーテル結合を有する化合物が挙げられ、具体的には、5-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテン、4-メトキシペルフルオロ-3-へプテン、4-メトキシペルフルオロ-2-ヘプテン、3-メトキシペルフルオロ-2-ヘプテン、3-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテン等のメトキシパーフルオロヘプテン(以下、「MPHE」ともいう。)、および、エトキシパーフルオロへプテン等が挙げられる。
MPHEは、4-メトキシペルフルオロ-2-ヘプテン、5-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテンおよび4-メトキシペルフルオロ-3-ヘプテンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることも好ましい。
本明細書において、含フッ素オレフィンが幾何異性体を有する場合、E体およびZ体のいずれであってもよい。HFOおよびHCFOについてはZ体が好ましく、炭素原子、水素原子、酸素原子およびフッ素原子から構成され、炭素-炭素二重結合およびエーテル結合を有する化合物についてはE体が好ましい。
なお、本明細書において、幾何異性体が存在する化合物について、特段の断りがない限り、化合物名またはその化合物の略称を用いた場合には、Z体およびE体から選ばれる少なくとも1種を示し、化合物名または化合物の略称の後ろに(E)または(Z)を付した場合には、その化合物の(E)体または(Z)体を表す。具体的には、HCFO-1233yd(Z)の表記は、HCFO-1233ydのZ体であることを示す。
幾何異性体を有する含フッ素オレフィンとしては、HCFO-1233yd、HCFO-1233zd、および、HFO-1336mzzが挙げられる。
【0023】
含フッ素エーテルは、炭素原子、フッ素原子、水素原子およびエーテル結合を有し、炭素-炭素二重結合を有さない化合物である。含フッ素エーテルは、さらに、その他基を有していてもよい。その他基としては、フッ素原子以外のハロゲン原子が挙げられる。
含フッ素エーテルとしては、ハイドロフルオロエーテル(以下、「HFE」ともいう。)が挙げられる。
HFEとしては、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテルとメチルノナフルオロイソブチルエーテルとの混合物(以下、「HFE-449s1」ともいう。)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(以下、「HFE-347pc-f」ともいう。)、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテルとエチルノナフルオロイソブチルエーテルとの混合物(以下、「HFE-569sf2」ともいう。)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、ジフルオロメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)ペンタン、エチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、エチル1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエーテル、メチル1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエーテル、メチル2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、メチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、メチル1,1,2,2,3,3,3-オクタフルオロプロピルエーテル、ジフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、ジフルオロメチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、メチル1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルエーテル、メチル1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルプロピルエーテル、ジフルオロメチル2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルエーテル、および、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエーテルが挙げられる。
【0024】
含フッ素飽和炭化水素としては、炭素原子、フッ素原子および水素原子から構成される飽和化合物(以下、「HFC」ともいう。)が挙げられる。
HFCとしては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン、および、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタンが挙げられる。
【0025】
フッ素系溶剤の沸点は、30~150℃が好ましい。沸点が30℃以上である場合、室温における揮発量を抑制でき、取り扱いやすい。沸点が150℃以下である場合、フッ素系溶剤を使用後に回収しやすい。
なお、本明細書において、沸点は、標準沸点を意味する。
【0026】
フッ素系溶剤は、炭素原子、水素原子、酸素原子およびフッ素原子から構成され、炭素-炭素二重結合およびエーテル結合を有する化合物(例えば、MPHE)、HCFO、HFO、HFEおよびHFCからなる群から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましく、HCFO-1233yd、HCFO-1233zd、HFO-1336mzz、MPHE、HFE-347pc-f、HFE-449s1およびHFE-569sf2からなる群から選ばれる少なくとも1種からなることがより好ましく、HCFO-1233yd(Z)(沸点:約54℃)、HCFO-1233zd(Z)(沸点:39℃)、HFO-1336mzz(Z)(沸点:33.4℃)、MPHE(製品名OPTEON(登録商標)SF10の沸点:110℃)、HFE-347pc-f(沸点:56℃)、HFE-449s1(沸点:61℃)およびHFE-569sf2(沸点:76℃)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなることがさらに好ましく、HCFO-1233yd(Z)、HCFO-1233zd(Z)、HFO-1336mzz(Z)およびMPHEからなる群から選ばれる少なくとも1種からなることが特に好ましい。
【0027】
フッ素系溶剤は、1種単独または2種以上で用いてもよい。
フッ素系溶剤の使用量は、電極と十分に接触させられる程度の量であればよく、電極のサイズなどに合わせて適宜調整できる。
【0028】
電極と、フッ素系溶剤とを接触させる方法としては、電極をフッ素系溶剤に浸漬する方法、および、電極にフッ素系溶剤を吹き付ける方法(例えば、スプレー噴霧)が挙げられる。
電極をフッ素系溶剤に浸漬する方法は、電極を加温したフッ素系溶剤に浸漬する方法が好ましい。その際のフッ素系溶剤の液温は、30℃からフッ素系溶剤の沸点までの範囲が好ましい。
また、電極をフッ素系溶剤に浸漬した状態で、振動、撹拌などの物理的処理を施してもよく、振動を与えることが好ましい。振動は、超音波振動が好ましい。なお、電極をフッ素系溶剤に所定時間浸漬させた後、電極が浸漬されているフッ素系溶剤に上記物理的処理を施してもよい。
振動を与える方法としては、電極をフッ素系溶剤に浸漬させた状態で上記フッ素系溶剤に超音波を照射する方法、フッ素系溶剤中で電極を揺動する方法、ならびに、電極およびフッ素系溶剤を含む容器を揺動する方法が挙げられる。
接触時間は、1分間~24時間が好ましい。
【0029】
本発明の方法は、集電体から活物質層を分離した後に、必要に応じて、分離した集電体を回収し、回収した集電体からフッ素系溶剤を除去する処理をしてもよい。
除去する処理としては、溶剤置換処理、自然乾燥処理、真空乾燥処理、加熱処理およびそれらを組み合わせた処理が挙げられる。
また、除去されたフッ素系溶剤を回収して、再利用してもよい。
【0030】
本発明の方法における分離された集電体は、フッ素系溶剤が少ない方が好ましい。
分離された集電体のフッ素系溶剤の含有量は、集電体の全質量に対して、1000質量ppm以下が好ましく、10質量ppm以下がより好ましい。下限は、例えば、0質量%である。
フッ素系溶剤の含有量は、例えば、テドラーバッグに、分離された集電体を入れて封をした後、所定量の空気を導入して40℃にて24時間静置する。静置後のテドラーバッグ内の気体をガスクロマトグラフィーを用いて測定することにより、分離された集電体のフッ素系溶剤の含有量を求めることができる。
【0031】
<被処理物>
被処理物としては、上記電極が挙げられ、二次電池の電極が好ましく、リチウムイオン二次電池の正極またはリチウムイオン二次電池の負極がより好ましい。
二次電池は、化学電池であり、充放電可能な電池である。
二次電池としては、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム蓄電池、リチウムイオン二次電池およびナトリウム二次電池が挙げられ、リチウムイオン二次電池が好ましい。
リチウムイオン二次電池は、正極活物質および正極集電体を含む正極と、負極活物質および負極集電体を含む負極とを含む。正極活物質、正極集電体、負極活物質および負極集電体は、上記電極が含み得る上記活物質および上記集電体から適宜選択できる。
また、リチウムイオン二次電池に対して本発明の方法を実施する場合、被処理物は、正極と負極とを含む状態で実施してもよく、正極と負極とが別々の状態で実施してもよい。
また、被処理物は、リチウムイオン二次電池から公知の方法で回収される電極であってもよい。例えば、放電後のリチウムイオン二次電池を開封し、リチウムイオン二次電池に含まれる電解質等を洗浄液(例えば、有機溶剤)で洗浄した後に得られるシート状の電極であってもよい。
【0032】
本発明の方法によって分離された、集電体と活物質層とは、さらに、精製処理に施されてもよい。
精製処理としては、加熱処理、粉砕処理、抽出処理などの金属リサイクルに用いられる処理が挙げられ、集電体および活物質を構成する金属材料を回収するための処理が好ましい。金属材料としては、集電体および活物質を構成する金属材料、ならびに、充放電によって生成する金属材料であってもよい。
また、回収された金属材料は、電極または他の部材として再利用するために用いられることが好ましい。
【実施例0033】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。本発明はこれらの例に限定されない。例1~7が本発明の方法の実施例である。
【0034】
(電極A)
電極Aの作製においては、活物質としてグラファイト(100g(使用量)、富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬)、導電剤としてアセチレンカーボンブラック(1g(使用量)、富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬)、結着剤としてスチレンブタジエンゴム(2.5g(使用量)、富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬)、および、カルボキシメチルセルロースナトリウム(2.5g(使用量)、富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬)、を水に分散させてペーストを作製し、得られたペーストを、乾燥後の活物質層の厚みが200μmになるようにドクターブレード法により集電体である銅箔(アズワン社製、電解銅箔、7.5cm×25cm)に塗布し、150℃で1時間乾燥させて、電極Aを得た。
【0035】
(電極B)
電極Bの作製においては、活物質としてグラファイト(100g(使用量)、富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬)、導電剤としてアセチレンカーボンブラック(1g(使用量)、富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬)、および、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(5g(使用量)、富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬)をN-メチル-2-ピロリドンに溶解させてペーストを作製し、得られたペーストを、乾燥後の活物質層の厚みが200μmになるようにドクターブレード法により集電体である銅箔(アズワン社製、電解銅箔、7.5cm×25cm)に塗布し、150℃で1時間乾燥させて、電極Bを得た。
【0036】
(本発明の方法)
得られた各電極を、2cm×5cmに切断して試験片とした。以下に示す各フッ素系溶剤に上記試験片を、25℃にて24時間浸漬した後、さらに5分間、35Hz、200Wの超音波振動を与えた。
上記処理後の試験片をフッ素系溶剤から取り出し、以下の評価基準に従って集電体から活物質層を分離できたか否かを目視で評価した。
A:集電体上から活物質層をほとんど残らず、分離できた。
B:活物質層の一部が集電体上に残存したが、さらに上記処理後の電極を乾燥(25℃、24時間)したところ、集電体から活物質層をほとんど残らず、分離できた。
なお、いずれの例においても処理後の集電体のフッ素系溶剤の残存量は、処理後の集電体の全質量に対して、10質量ppm以下であった。
【0037】
(フッ素系溶剤)
・HCFO-1233yd:製品名AMOLEA(登録商標)AS-300(1233yd(Z)と1233yd(E)の質量比を90/10以上で混合された組成物) AGC社製
・HCFO-1233zd(Z):製品名CELEFINE(登録商標)1233Z セントラル硝子社製
・HFO-1336mzz(Z):製品名Formacel(登録商標)1100 ケマーズ社製
・MPHE:製品名OPTEON(登録商標)SF-10 ケマーズ社製
・HFE-347pc-f:製品名アサヒクリンAE-3000 AGC社製
・HFE-449s1:製品名Novec(登録商標)7100 スリーエムジャパン社製
・HFE-569sf2:製品名Novec(登録商標)7200 スリーエムジャパン社製
【0038】
以下の表に評価結果を示す。
【0039】
【0040】
いずれの例においても、集電体から活物質層を効率的に分離できた。
フッ素系溶剤が含フッ素オレフィンである場合、より効率的に分離できた。