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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133901
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】タッチセンサ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240926BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G06F3/041 490
G06F3/044 122
G06F3/044 127
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043909
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】及川 徳樹
(57)【要約】
【課題】タッチ検出電極の濃淡ムラを抑制できるタッチセンサおよびタッチセンサの製造方法を提供する。
【解決手段】タッチセンサは、基材上に形成された導電層を備え、導電層は、メッシュ状に配置された複数の金属細線により構成され且つ第1端部(11A)から第2端部(11B)まで電極長さL1に亘って延びるタッチ検出電極(11)を有し、複数の金属細線は、被めっき層と、金属めっき層を有し、第1端部(11A)と、電極長さL1の1/10だけ第1端部(11A)から第2端部(11B)側に離れた位置(P1)との間の領域(R1)における複数の金属細線の被めっき層の平均線幅Hmが、電極長さL1の1/2だけ第1端部(11A)から第2端部(11B)側に離れた位置(P2)における複数の金属細線の被めっき層の平均線幅Hsよりも狭い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成された導電層を備え、
前記導電層は、メッシュ状に配置された複数の金属細線により構成され且つ定められた伸長方向に沿って第1端部から第2端部まで定められた電極長さL1に亘って延びるタッチ検出電極と、
前記タッチ検出電極の前記第1端部に電気的に接続する接続端子と、
前記接続端子に電気的に接続する周辺配線を有し、
前記タッチ検出電極の複数の金属細線は、被めっき層と、前記被めっき層を覆う金属めっき層を有し、
前記第1端部と、前記電極長さL1の1/10だけ前記第1端部から前記伸長方向に沿って前記第2端部側に離れた位置との間の領域における前記複数の金属細線の前記被めっき層の平均線幅Hmが、前記電極長さL1の1/2だけ前記第1端部から前記伸長方向に沿って前記第2端部側に離れた位置における前記複数の金属細線の前記被めっき層の平均線幅Hsよりも狭いタッチセンサ。
【請求項2】
前記被めっき層における、前記平均線幅Hmと前記平均線幅Hsは、
Hs×0.80≦Hm<Hs×0.90
の関係を満たす請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記電極長さL1の1/2だけ前記第1端部から前記伸長方向に沿って前記第2端部側に離れた位置における前記複数の金属細線の平均線幅Msの、前記被めっき層の前記平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.25以上1.60以下である請求項1または2に記載のタッチセンサ。
【請求項4】
前記複数の金属細線の前記平均線幅Msは、1.50μm以上2.00μm以下である請求項3に記載のタッチセンサ。
【請求項5】
前記複数の金属細線の前記平均線幅Msの、前記被めっき層の前記平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.25以上1.45以下である請求項3に記載のタッチセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タッチ操作を検出するタッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タブレット型コンピュータおよびスマートフォン等の携帯情報機器を始めとした各種の電子機器において、指、スタイラスペン等を画面に接触または近接させる、いわゆるタッチ操作を検出するタッチセンサが用いられている。
【0003】
このようなタッチセンサは、例えば特許文献1に開示されるように、複数の金属細線により形成されたメッシュ状のタッチ検出電極、タッチ検出電極から引き出された周辺配線および周辺配線に接続される電極パッドを有することが多い。特許文献1では、タッチ検出電極、周辺配線および電極パッドを、いわゆるめっき法により形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5876351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているように、タッチ検出電極、周辺配線および電極パッドをめっき法により形成する場合には、例えば、タッチ検出電極、周辺配線および電極パッドに対応するパターンを有する被めっき層を基材上に形成した後で、基材をめっき液に浸漬することでタッチ検出電極、周辺配線および電極パッドに対するめっきの処理を一度に行う。この場合に、これらのパターン形状によっては、めっきにより形成される金属めっき層の線幅が不均一になることがあった。そのため、観察者がメッシュ状のタッチ検出電極を視認した際に濃淡ムラが生じることがあった。
【0006】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、タッチ検出電極の濃淡ムラを抑制できるタッチセンサおよびタッチセンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の構成によれば、上記目的を達成できる。
〔1〕 基材と、
基材上に形成された導電層を備え、
導電層は、メッシュ状に配置された複数の金属細線により構成され且つ定められた伸長方向に沿って第1端部から第2端部まで定められた電極長さLに亘って延びるタッチ検出電極と、
タッチ検出電極の第1端部に電気的に接続する接続端子と、
接続端子に電気的に接続する周辺配線を有し、
タッチ検出電極の複数の金属細線は、被めっき層と、被めっき層を覆う金属めっき層を有し、
第1端部と、電極長さLの1/10だけ第1端部から伸長方向に沿って第2端部側に離れた位置との間の領域における複数の金属細線の被めっき層の平均線幅Hmが、電極長さLの1/2だけ第1端部から伸長方向に沿って第2端部側に離れた位置における複数の金属細線の被めっき層の平均線幅Hsよりも狭いタッチセンサ。
〔2〕 被めっき層における、平均線幅Hmと平均線幅Hsは、
Hs×0.80≦Hm<Hs×0.90
の関係を満たす〔1〕に記載のタッチセンサ。
〔3〕 電極長さLの1/2だけ第1端部から伸長方向に沿って第2端部側に離れた位置における複数の金属細線の平均線幅Msの、被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.25以上1.60以下である〔1〕または〔2〕に記載のタッチセンサ。
〔4〕 複数の金属細線の平均線幅Msは、1.50μm以上2.00μm以下である〔3〕に記載のタッチセンサ。
〔5〕 複数の金属細線の平均線幅Msの、被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.25以上1.45以下である〔3〕に記載のタッチセンサ。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、タッチセンサが、基材と、基材上に形成された導電層を備え、導電層は、メッシュ状に配置された複数の金属細線により構成され且つ定められた伸長方向に沿って第1端部から第2端部まで定められた電極長さLに亘って延びるタッチ検出電極と、タッチ検出電極の第1端部に電気的に接続する接続端子と、接続端子に電気的に接続する周辺配線を有し、タッチ検出電極の複数の金属細線は、被めっき層と、被めっき層を覆う金属めっき層を有し、第1端部と、電極長さLの1/10だけ第1端部から伸長方向に沿って第2端部側に離れた位置との間の領域における複数の金属細線の被めっき層の平均線幅Hmが、電極長さLの1/2だけ第1端部から伸長方向に沿って第2端部側に離れた位置における複数の金属細線の被めっき層の平均線幅Hsよりも狭いため、タッチ検出電極の濃淡ムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係るタッチセンサの部分断面図である。
図2】実施の形態に係るタッチセンサの平面図である。
図3】実施の形態における第1導電層の一部を拡大して示す断面図である。
図4】実施の形態におけるタッチ検出電極の複数の金属細線の一部を拡大して示す平面図である。
図5】実施の形態におけるタッチ検出電極の金属細線の断面図である。
図6】実施の形態におけるタッチ検出電極の一部を拡大して示す平面図である。
図7】実施の形態における第1端部からの距離と被めっき層の平均線幅との関係の例を示すグラフである。
図8】実施の形態の変形例におけるタッチ検出電極の平面図である。
図9】実施の形態の変形例における第1端部からの距離と被めっき層の平均線幅との関係の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付の図面に示す好適な実施の形態に基づいて、この発明に係るタッチパネル用導電部材およびタッチパネルを詳細に説明する。
なお、以下において、数値範囲を示す表記「~」は、両側に記載された数値を含むものとする。例えば、「sが数値t1~数値t2である」とは、sの範囲は数値t1と数値t2を含む範囲であり、数学記号で示せばt1≦s≦t2である。
「直交」および「平行」等を含め角度は、特に記載がなければ、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
「透明」とは、光透過率が、波長400nm~800nmの可視光波長域において、少なくとも40%以上のことであり、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上のことである。光透過率は、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック--全光線透過率および全光線反射率の求め方」を用いて測定されるものである。
【0011】
実施の形態
図1に、この発明の実施の形態に係るタッチセンサの構成を示す。
タッチセンサは、互いに表裏を形成する第1面1Aと第2面1Bを有する基材1と、基材1の第1面1A上に配置された第1導電層2Aと、基材1の第2面1B上に配置された第2導電層2Bを備えている。基材1は、絶縁性を有しており、第1導電層2Aと第2導電層2Bは互いに電気的に絶縁される。また、基材1は可撓性を有しており、タッチセンサは基材1の可撓性に準じた可撓性を有している。また、基材1は透明な材料により構成されている。
【0012】
タッチセンサは、第1導電層2A側の面に図示しないカバー部材が接着され且つ第2導電層2B側の面に図示しない表示モジュールが接着されて、図示しないタッチパネル表示装置として使用され得る。この際に、カバー部材に接触または近接した使用者の指、スタイラスペン等が検出されて、使用者によるタッチ操作が検出される。
【0013】
図2に、タッチセンサの平面図を示す。
第1導電層2Aは、定められた伸長方向であるY方向に沿って定められた電極長さL1に亘って第1端部11Aから第2端部11Bまで延び且つY方向に直交するX方向に沿って配列された、タッチ操作を検出するための複数のタッチ検出電極11と、複数のタッチ検出電極11の第1端部11Aに電気的に接続された複数の接続端子12と、複数の接続端子12に電気的に接続された複数の周辺配線13と、複数の周辺配線13に電気的に接続する複数の接続パッド14を有している。複数の接続パッド14は、図示しない外部の機器に電気的に接続するために用いられる。
【0014】
第2導電層2Bは、定められた伸長方向であるX方向に沿って定められた電極長さL1に亘って第1端部21Aから第2端部21Bまで延び且つY方向に沿って配列された、タッチ操作を検出するための複数のタッチ検出電極21と、複数のタッチ検出電極21の第1端部21Aに電気的に接続された複数の接続端子22と、複数の接続端子22に電気的に接続された複数の周辺配線23と、複数の周辺配線23に電気的に接続する複数の接続パッド24を有している。複数の接続パッド24は、図示しない外部の機器に電気的に接続するために用いられる。
【0015】
第1導電層2Aの複数のタッチ検出電極11が配置される領域と、第2導電層2Bの複数のタッチ検出電極21が配置される領域は、X方向およびY方向の双方に対して直交するZ方向において基材1を挟んで重なり合っている。
【0016】
第1導電層2Aは、いわゆるめっき法により形成される。図3に示すように、第1導電層2Aは、基材1の第1面1A上に形成された被めっき層3と、被めっき層3がめっきされることにより形成され且つ被めっき層3を覆う金属めっき層4を有している。
【0017】
図4に示すように、タッチ検出電極11は、第1方向D1と第2方向D2に沿ってメッシュ状に配置された複数の金属細線Aにより構成されている。第1方向D1と第2方向D2とのなす角度は特に限定されないが、以下では説明の簡略化のために第1方向D1と第2方向D2は直交しているとする。
【0018】
金属細線Aは、金属細線Aが延びる第1方向D1または第2方向D2に直交する方向、すなわち、第2方向D2または第1方向D1において、線幅Mを有する。
【0019】
図5に示すように、金属細線Aは、基材1の第1面1A上に形成され且つ第1方向D1または第2方向D2に沿って延びる細線を形成する被めっき層3と、被めっき層3を覆う金属めっき層4を有している。細線状の被めっき層3は、この被めっき層3が延びる第1方向D1または第2方向D2に直交する方向、すなわち、第2方向D2または第1方向D1において、線幅Hを有する。ここで、図5は、第1方向D1に沿って延びる金属細線Aの、D2-Z面での断面を示している。
【0020】
ところで、被めっき層3に対してめっき処理を行う場合には、析出させたい金属イオンと金属イオンを金属に還元するための還元剤を含むめっき液中に被めっき層3が形成された基材1を浸漬させる。この場合に、めっき液の組成、めっき温度およびめっき時間等により、金属めっき層4の線幅および厚みを調整する。
【0021】
タッチ検出電極11の被めっき層3が全体に亘って同一の線幅Hを有している場合には、タッチ検出電極11に対応する被めっき層3と周辺配線13に対応する被めっき層3のように、パターン形状に大きな差がある被めっき層3に対してめっき処理を行うと、タッチ検出電極11における金属めっき層4の線幅Mが不均一になり、観察者がタッチ検出電極11を視認した際に濃淡ムラが生じることがあった。
【0022】
ここで、本発明のタッチセンサでは、図6に示すように、第1端部11Aと、電極長さL1の1/10の長さL2だけ第1端部11AからY方向に沿って第2端部11B側に離れた位置P1との間の領域R1における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hmは、電極長さL1の1/2の長さL3だけ第1端部11AからY方向に沿って第2端部11B側に離れた位置P2における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hsよりも狭い。
【0023】
なお、領域R1における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hmは、例えば、領域R1をY方向に沿ってさらに複数の部分領域、例えば5つの部分領域に分割し、それぞれの部分領域における2箇所等の複数個所の被めっき層3の線幅Hを計測し、計測された線幅Hを全て算術平均することにより計算できる。また、位置P2における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hsは、例えば、位置P2における複数の位置、例えば少なくとも2つの位置における被めっき層3の線幅Hを計測し、計測された線幅Hを全て算術平均することにより計算できる。
【0024】
発明者は、このようにして、領域R1における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hmを、位置P2における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hsよりも狭くすることにより、めっき処理によって最終的に形成される複数の金属細線Aの線幅Mがタッチ検出電極11の全体に亘って均一になり、観察者がタッチ検出電極11を視認した場合の濃淡ムラが抑制されることを見出した。
【0025】
例えば図7に示すように、第1端部11Aから第2端部11Bに向かって複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅が増加するように設計することで、領域R1における被めっき層3の平均線幅Hmを位置P2における被めっき層3の平均線幅Hsよりも狭くできる。ここで、図7は、第1端部11Aからタッチ検出電極11の伸長方向であるY方向に沿って第2端部11B側に離れた位置までの距離と、その位置における被めっき層3の平均線幅との関係の例を示している。なお、タッチ検出電極11の中央部よりも接続端子12の近傍で金属細線Aの線幅Mが広くなる傾向があるので、タッチ検出電極11の全体に亘って金属細線Aの線幅Mを均一にするために、例えば、第1端部11Aから長さL2の2倍程度の位置までは被めっき層3の線幅Hを急峻に変化させ、それ以降の第2端部11Bまでの線幅Hをなだらかに変化させるように被めっき層3の線幅Hを設計することが好ましい。
【0026】
さらに、領域R1における被めっき層3の平均線幅Hmと位置P1における被めっき層3の平均線幅Hsが次の不等式(1)の関係を満たすことにより、タッチ検出電極11の全体に亘って複数の金属細線Aをより均一に形成できる。
Hs×0.80≦Hm<Hs×0.90・・・(1)
【0027】
また、被めっき層3に対して析出する金属の量が多くなるほどタッチ検出電極11の電気抵抗が低下してタッチ検出の感度が向上するが、一方で、金属めっき層4に加えられる応力が大きくなり基材1から金属めっき層4が剥離しやすくなる。この観点から、電極長さL1の1/2の長さL3だけ第1端部11AからY方向に沿って第2端部11B側に離れた位置P2における複数の金属細線Aの平均線幅Msの、位置P1における被めっき層3の平均線幅Hsの比率Ms/Hsは、1.25以上1.60以下であることが好ましく、1.25以上1.45以下であることがより好ましい。
【0028】
また、同様の観点から、複数の金属細線Aの平均線幅Msは、1.50μm以上2.00μm以下であることが好ましい。
なお、第1端部11Aから特定の距離だけ離れた位置における複数の金属細線Aの平均線幅は、例えば、その位置においてランダムに選択された複数個所、例えば10箇所の金属細線Aの線幅Mの算術平均により計算できる。
【0029】
なお、図示しないが、第2導電層2Bにおけるタッチ検出電極21も、第1導電層2Aにおけるタッチ検出電極11と同様に、メッシュ状に配置された複数の金属細線Aにより構成されており、第1端部21Aから長さL2だけ離れた位置P1までの領域R1における被めっき層3の平均線幅Hmが、長さL3だけ第1端部21Aから離れた位置P2における被めっき層3の平均線幅Hsよりも狭い。
【0030】
そのため、第2導電層2Bのタッチ検出電極21も、第1導電層2Aのタッチ検出電極11と同様にして、めっき処理によって最終的に形成される複数の金属細線Aの線幅Mがタッチ検出電極21の全体に亘って均一になり、観察者がタッチ検出電極21を視認した際の濃淡ムラが抑制される。
【0031】
以上から、本発明の実施の形態に係るタッチセンサによれば、第1端部11Aと、電極長さL1の1/10だけ第1端部11AからY方向に沿って第2端部11B側に離れた位置P1との間の領域R1における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hmが、電極長さL1の1/2だけ第1端部11AからY方向に沿って第2端部11B側に離れた位置P2における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hsよりも狭いため、タッチ検出電極11の全体に亘って金属細線Aの線幅Mを均一に形成して、観察者がタッチ検出電極11を視認した際の濃淡ムラを抑制できる。
【0032】
なお、図7を用いて、第1端部11Aから第2端部11Bに向かって複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅が連続して単調に増加する例が説明されているが、例えば、第1端部11Aから第2端部11Bに向かって複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅がいわゆる階段状に増加してもよい。この場合でも、領域R1における細線状の被めっき層3の平均線幅Hmを位置P2における細線状の被めっき層3の平均線幅Hsよりも狭くして、観察者がタッチ検出電極11を視認した際の濃淡ムラを抑制できる。
【0033】
また、タッチ検出電極11の第1端部11Aに接続端子12が形成されることが説明されているが、例えば図8に示すように、さらに第2端部11Bに接続端子12を形成することもできる。この場合に、第1端部11Aと、第1端部11Aから長さL2だけY方向に沿って第2端部11B側に離れた位置P1との間の領域R1、または、第2端部11Bと、第2端部11Bから長さL2だけY方向に沿って第1端部11A側に離れた位置P3との間の領域R2における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hmは、長さL3だけ第1端部11Aおよび第2端部11Bから長さL3だけ離れた位置P2における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hsよりも狭い。
【0034】
この場合でも、接続端子12が第1端部11Aにのみ形成される場合と同様にして、めっき処理によって最終的に形成される複数の金属細線Aの線幅Mがタッチ検出電極11の全体に亘って均一になり、観察者がタッチ検出電極11を視認した際の濃淡ムラが抑制される。
【0035】
なお、例えば図9に示すように、第1端部11Aから、Y方向に沿って第1端部11Aから長さL3離れた位置P2までの範囲で被めっき層3の平均線幅が単調増加し、位置P3から、Y方向に沿って第1端部11Aから電極長さL1離れた位置まですなわち第2端部11Bまでの範囲で被めっき層3の平均線幅が単調減少するように設計することで、領域R1における被めっき層3の平均線幅Hmを位置P2における被めっき層3の平均線幅Hsよりも狭くできる。なお、タッチ検出電極11の中央部よりも接続端子12の近傍で金属細線Aの線幅Mが広くなる傾向があるので、タッチ検出電極11の全体に亘って金属細線Aの線幅Mを均一にするために、例えば、第1端部11Aおよび第2端部11Bから長さL2の2倍程度の位置までは被めっき層3の線幅Hを急峻に変化させ、それ以降のタッチ検出電極11の中央部までの線幅Hをなだらかに変化させるように被めっき層3の線幅Hを設計することが好ましい。
【0036】
以下では、実施の形態のタッチセンサの製造方法について説明する。
【0037】
まず、透明な基材1を準備し、例えばフォトリソグラフィの方法を用いて、図3および図6に示すように、基材1の第1面1A上に被めっき層3を形成する。被めっき層3は、タッチ検出電極11、接続端子12、周辺配線13および接続パッド14に対応する形状を有する。
【0038】
ここで、図4に示すように、第1端部11Aと、電極長さL1の1/10の長さL2だけ第1端部11AからY方向に沿って第2端部11B側に離れた位置P1との間の領域R1における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hmは、電極長さL1の1/2の長さL3だけ第1端部11AからY方向に沿って第2端部11B側に離れた位置P2における複数の金属細線Aの被めっき層3の平均線幅Hsよりも狭く設計される。なお、図示を省略するが、基材1の第2面1B上には、基材1の第1面1A上に形成された被めっき層3と同様の構成を有する被めっき層3を形成する。
【0039】
次に、第1面1A上および第2面1B上にそれぞれ被めっき層3が形成された基材1を、めっき液に浸漬した状態で、被めっき層3に対するめっき処理を行う。これにより、例えば図3および図6に示すように、被めっき層3に金属が析出し、金属めっき層4が形成される。このようにして、タッチセンサが製造される。
【0040】
以下では、実施の形態のタッチセンサを構成する各部材について説明する。
<基材1>
基材1は、第1導電層2Aおよび第2導電層2Bを支持できる部材であれば、その種類は特に制限されず、プラスチック基材、ガラス基材および金属基材が挙げられ、プラスチック基材が好ましい。
基材1としては、折り曲げ性に優れる点で、可撓性を有する基材が好ましい。可撓性を有する基材としては、上記プラスチック基材が挙げられる。
基材1の厚みは特に制限されず、25μm~500μmの場合が多い。
【0041】
基材1を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)(258℃)、ポリシクロオレフィン(134℃)、ポリカーボネート(250℃)、アクリルフィルム(128℃)、ポリエチレンナフタレート(269℃)、ポリエチレン(135℃)、ポリプロピレン(163℃)、ポリスチレン(230℃)、ポリ塩化ビニル(180℃)、ポリ塩化ビニリデン(212℃)、および、トリアセチルセルロース(290℃)等の融点が約290℃以下である樹脂が好ましく、PET、ポリシクロオレフィン、または、ポリカーボネートがより好ましい。なかでも、第1導電層2Aおよび第2導電層2Bとの密着性が優れることから、PETが特に好ましい。上記の( )内の数値は融点またはガラス転移温度である。
基材1の全光線透過率は、85%~100%が好ましい。全光透過率は、JIS(日本工業規格) K 7375:2008に規定される「プラスチック-全光線透過率および全光線反射率の求め方」を用いて測定される。
【0042】
基材1の好適態様の1つとしては、大気圧プラズマ処理、コロナ放電処理および紫外線照射処理からなる群から選択される少なくとも1つの処理が施された処理済基材が挙げられる。上述の処理が施されることにより、処理された基材1の表面にOH基等の親水性基が導入され、基材1と第1導電層2Aとの密着性および基材1と第2導電層2Bとの密着性が向上する。また、上述の処理の中でも、基材1と第1導電層2Aとの密着性および基材1と第2導電層2Bとの密着性がより向上する点で、大気圧プラズマ処理が好ましい。
【0043】
<下塗り層>
基材1と第1導電層2Aとの密着性および基材1と第2導電層2Bとの密着性を向上させるために、基材1と第1導電層2Aとの間および基材1と第2導電層2Bとの間に、それぞれ、下塗り層を配置することもできる。この下塗り層は、高分子を含んでおり、基材1と第1導電層2Aとの密着性および基材1と第2導電層2Bとの密着性がより向上する。
【0044】
下塗り層の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、高分子を含む下塗り層形成用組成物を基材上に塗布して、必要に応じて加熱処理を施す方法が挙げられる。また、高分子を含む下塗り層形成用組成物として、ゼラチン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、無機または高分子の微粒子を含むアクリル・スチレン系ラテックス等を使用してもよい。
【0045】
なお、必要に応じて、タッチセンサは、基材1と第1導電層2Aとの間および基材1と第2導電層2Bとの間に、それぞれ、他の層として、上述の下塗り層以外に、屈折率調整層を備えていてもよい。屈折率調整層として、例えば、屈折率を調整する酸化ジルコニウム等の金属酸化物の粒子が添加された有機層を使用できる。
【0046】
<第1導電層および第2導電層>
第1導電層2Aおよび第2導電層2Bは、金属または合金を形成材料とし、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、クロム、モリブデンまたはタングステンから形成することができる。第1導電層2Aおよび第2導電層2Bには、銅が含まれることが好ましいが、銅以外の金属、例えば、金、銀等が含まれていてもよい。また、金属と金属化合物の積層構造であってもよく、銅/酸化銅、銅/硫化銅等の積層構造の金属細線が使用できる。
【0047】
次に、第1導電層2Aおよび第2導電層2Bの形成方法について説明する。これらの形成方法としてめっき法が適宜利用可能である。
めっき法による第1導電層2Aおよび第2導電層2Bの形成方法について説明する。例えば、めっき触媒金属粒子を含有する感光性ポリマーをフォトリソグラフィ法でパターニングした被めっき層3にめっき処理する方法、官能基を有する感光性ポリマーをフォトリソグラフィ法でパターニングした後、触媒金属イオンを含む溶液により処理することで官能基に触媒金属を担持した被めっき層3にめっき処理する方法等が挙げられる。
【実施例0048】
(実施例1)
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容および処理手順は、本発明の主旨を逸脱しない限り適宜変更することができ、本発明の範囲は、以下の実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0049】
(被めっき層形成用組成物の調製)
以下の各成分を混合し、被めっき層形成用組成物を得た。
イソプロパノール 38質量部
ポリブタジエンマレイン酸(ブタジエンーマレイン酸交互共重合体、ブタジエン由来の繰り返し単位:マレイン酸由来の繰り返し単位=1:1(モル比)、ポリサイエンス社製) 4質量部
FAM-201(2官能アクリルアミド、富士フイルム株式会社製)
1質量部
IRGACURE-OXE02(オキシムエステル系重合開始剤、BASF社製)
0.05質量部
【0050】
(被めっき層前駆体層付き基材の作製)
基材として、厚みが50μmの両面易接着層付きポリエステルフィルム(コスモシャイン(登録商標)A4360、東洋紡株式会社製)を準備した。基材の一方の面に、上述の被めっき層形成用組成物を、厚みが0.3μm程度になるようバー塗布した。塗布後、温度120℃で1分間乾燥させ、被めっき層前駆体層付き基材を得た。そして、直ぐに、被めっき層前駆体層の表面に厚みが12μmのポリプロピレン製の保護フィルムを貼り付けた。
【0051】
(被めっき層付き基材の作製)
保護フィルムを貼り付けた被めっき層前駆体付き基材に対して、図2に示すような複数のタッチ検出電極11、複数の接続端子12、複数の周辺配線13および複数の接続パッド14に対応する露光パターンを有する露光マスクを配置した。
【0052】
タッチ検出電極11対応する露光パターンにおいて、タッチ検出電極11対応する露光パターンは、正方メッシュ状の開口パターン(ピッチ300μm)を有していた。また、複数の金属細線Aに対応するパターンの線幅は、第1端部11Aにおいて1.15μmであり、第1端部11Aから第2端部11Bに向かって徐々に広くなり、タッチ検出電極11の1/2の長さL3の位置P1において1.35μmであった。
【0053】
次に、被めっき層前駆体層付き基材に対して、露光マスクを通して高圧水銀灯にて30mJ/cm2でUV光を照射した。UV光を照射した後、被めっき層前駆体層付き基材から保護フィルムを剥離した。保護フィルムを剥離した被めっき層前駆体層付き基材を、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液にてシャワー洗浄してアルカリ現像処理を施し、メッシュ状の被めっき層付き基材を得た。形成された被めっき層は、タッチ検出電極11、接続端子12、周辺配線13および接続パッド14に対応する形状を有していた。
【0054】
第1端部11Aに対応する部分と、タッチ検出電極11に対応する部分全体の電極長さL1の1/10の長さL2だけ、第1端部11Aに対応する部分からY方向に沿って第2端部11B側に離れた位置P1との間の領域R1における複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmは、1.20μmであった。また、電極長さL1の1/2の長さL3だけ第1端部11Aに対応する部分からY方向に沿って第2端部11B側に離れた位置P2における複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsは、1.40μmであった。
【0055】
ここで、平均線幅Hmは、領域R1をY方向に沿って5つの分割領域に分割し、各分割領域中に位置する細線状の被めっき層の線幅Hを少なくとも2箇所ずつ測定して、合計10箇所以上の線幅Hを算術平均することにより計算した。また、平均線幅Hsは、位置P2における細線状の被めっき層の線幅Hを少なくとも2箇所測定し、それらの線幅Hの値を算術平均することにより計算した。
【0056】
<銅めっき層付き基材(タッチセンサ)の作製>
Pd触媒付与液オムニシールド1573アクチベータ(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製)を5.4体積%に純水で希釈し、0.1規定の塩化水素酸にてpH(水素イオン指数)を4に調整した水溶液に、被めっき層付き基板を、温度50℃にて10分間浸漬した。その後、純水にて2回洗浄した。
【0057】
次いで、被めっき層付き基材を、還元剤サーキューポジットPBオキサイドコンバータ60C(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製)の0.8体積%水溶液に、温度30℃にて5分間浸漬した。その後、純水にて2回洗浄してPd触媒処理を施した。次いで、Pd触媒処理を施した被めっき層付き基材を、サーキューポジット4500(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製)のM剤12体積%、A剤6体積%及びB剤10体積%を混合した無電解めっき液に、温度50℃にて40分間浸漬した。その後、純水にて洗浄することで被めっき層を覆う銅めっき層を金属めっき層として形成し、銅めっき層付き基材(タッチセンサ)を得た。このようにして得られたタッチセンサは、例えば図2に示すように、複数のタッチ検出電極11、複数の接続端子12、複数の周辺配線13および複数の接続パッド14を含む第1導電層2Aを有していた。
【0058】
得られたタッチセンサの領域R1における複数の金属細線Aの平均線幅Mmは2.00μmであり、位置P1における複数の金属細線Aの平均線幅Msは2.00μmであった。
【0059】
ここで、平均線幅Mmは、領域R1をY方向に沿って5つの分割領域に分割し、各分割領域中に位置する金属細線Aの線幅Mを少なくとも2箇所ずつ測定して、合計10箇所以上の線幅Mを算術平均することにより計算した。また、平均線幅Msは、位置P2における金属細線Aの線幅Mを少なくとも2箇所測定し、それらの線幅Mの値を算術平均することにより計算した。
【0060】
複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmは1.20μmであり、平均線幅Hsは1.40μmであるため、平均線幅Hmは平均線幅Hsよりも狭かった。また、複数の金属細線Aの平均線幅Msの複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.43であった。また、平均線幅Hs×0.80=1.12、平均線幅Hs×0.90=1.26であり、平均線幅HsおよびHmは不等式(1)を満たしていた。
【0061】
(実施例2)
被めっき層付き基材の作製の工程において、領域R1における細線状の被めっき層の平均線幅Hmを1.08μmとするような露光マスクを用いる以外は実施例1と同様にして実施例2のタッチセンサを製造した。領域R1における複数の金属細線Aの平均線幅Mmは1.80μmであった。複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmは1.08μmであり、平均線幅Hsは1.40μmであるため、平均線幅Hmは平均線幅Hsよりも狭かった。また、複数の金属細線Aの平均線幅Msの複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.43であった。また、平均線幅Hs×0.80=1.12、平均線幅Hs×0.90=1.26であり、平均線幅HsおよびHmは不等式(1)を満たしていなかった。
【0062】
(実施例3)
被めっき層付き基材の作製の工程において、領域R1における細線状の被めっき層の平均線幅Hmを1.32μmとするような露光マスクを用いる以外は実施例1と同様にして実施例3のタッチセンサを製造した。領域R1における複数の金属細線Aの平均線幅Mmは2.20μmであった。複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmは1.32μmであり、平均線幅Hsは1.40μmであるため、平均線幅Hmは平均線幅Hsよりも狭かった。また、複数の金属細線Aの平均線幅Msの複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.43であった。また、平均線幅Hs×0.80=1.12、平均線幅Hs×0.90=1.26であり、平均線幅HsおよびHmは不等式(1)を満たしていなかった。
【0063】
(実施例4)
被めっき層付き基材の作製の工程において、領域R1における細線状の被めっき層の平均線幅Hmを0.48μmとし且つ位置P2における細線状の被めっき層の平均線幅Hsを0.56μmとするような露光マスクを用い、銅めっき層付き基材(タッチセンサ)の作製の工程において、位置P2における複数の金属細線Aの平均線幅Msを0.80μmとした以外は実施例1と同様にして実施例4のタッチセンサを製造した。
【0064】
領域R1における複数の金属細線Aの平均線幅Mmは0.80μmであった。複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmは0.48μmであり、平均線幅Hsは0.56μmであるため、平均線幅Hmは平均線幅Hsよりも狭かった。また、複数の金属細線Aの平均線幅Msの複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.43であった。また、平均線幅Hs×0.80=0.45、平均線幅Hs×0.90=0.50であり、平均線幅HsおよびHmは不等式(1)を満たしていた。
【0065】
(実施例5)
被めっき層付き基材の作製の工程において、領域R1における細線状の被めっき層の平均線幅Hmを0.83μmとし且つ位置P2における細線状の被めっき層の平均線幅Hsを0.93μmとするような露光マスクを用い、銅めっき層付き基材(タッチセンサ)の作製の工程において、位置P2における複数の金属細線Aの平均線幅Msを1.15μmとした以外は実施例1と同様にして実施例5のタッチセンサを製造した。
【0066】
領域R1における複数の金属細線Aの平均線幅Mmは1.15μmであった。複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmは0.83μmであり、平均線幅Hsは0.93μmであるため、平均線幅Hmは平均線幅Hsよりも狭かった。また、複数の金属細線Aの平均線幅Msの複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.24であった。また、平均線幅Hs×0.80=0.74、平均線幅Hs×0.90=0.84であり、平均線幅HsおよびHmは不等式(1)を満たしていた。
【0067】
(実施例6)
被めっき層付き基材の作製の工程において、領域R1における細線状の被めっき層の平均線幅Hmを0.60μmとし且つ位置P2における細線状の被めっき層の平均線幅Hsを0.70μmとするような露光マスクを用い、銅めっき層付き基材(タッチセンサ)の作製の工程において、位置P2における複数の金属細線Aの平均線幅Msを1.00μmとした以外は実施例1と同様にして実施例6のタッチセンサを製造した。
【0068】
領域R1における複数の金属細線Aの平均線幅Mmは1.00μmであった。複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmは0.60μmであり、平均線幅Hsは0.70μmであるため、平均線幅Hmは平均線幅Hsよりも狭かった。また、複数の金属細線Aの平均線幅Msの複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.43であった。また、平均線幅Hs×0.80=0.56、平均線幅Hs×0.90=0.63であり、平均線幅HsおよびHmは不等式(1)を満たしていた。
【0069】
(実施例7)
被めっき層付き基材の作製の工程において、領域R1における細線状の被めっき層の平均線幅Hmを0.90μmとし且つ位置P2における細線状の被めっき層の平均線幅Hsを1.05μmとするような露光マスクを用い、銅めっき層付き基材(タッチセンサ)の作製の工程において、位置P2における複数の金属細線Aの平均線幅Msを1.50μmとした以外は実施例1と同様にして実施例7のタッチセンサを製造した。
【0070】
領域R1における複数の金属細線Aの平均線幅Mmは1.50μmであった。複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmは0.90μmであり、平均線幅Hsは1.05μmであるため、平均線幅Hmは平均線幅Hsよりも狭かった。また、複数の金属細線Aの平均線幅Msの複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.43であった。また、平均線幅Hs×0.80=0.84、平均線幅Hs×0.90=0.95であり、平均線幅HsおよびHmは不等式(1)を満たしていた。
【0071】
(実施例8)
被めっき層付き基材の作製の工程において、領域R1における細線状の被めっき層の平均線幅Hmを1.54μmとし且つ位置P2における細線状の被めっき層の平均線幅Hsを1.80μmとするような露光マスクを用い、銅めっき層付き基材(タッチセンサ)の作製の工程において、位置P2における複数の金属細線Aの平均線幅Msを2.50μmとした以外は実施例1と同様にして実施例8のタッチセンサを製造した。
【0072】
領域R1における複数の金属細線Aの平均線幅Mmは2.50μmであった。複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmは1.54μmであり、平均線幅Hsは1.80μmであるため、平均線幅Hmは平均線幅Hsよりも狭かった。また、複数の金属細線Aの平均線幅Msの複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.39であった。また、平均線幅Hs×0.80=1.44、平均線幅Hs×0.90=1.62であり、平均線幅HsおよびHmは不等式(1)を満たしていた。
【0073】
(実施例9)
被めっき層付き基材の作製の工程において、領域R1における細線状の被めっき層の平均線幅Hmを1.25μmとし且つ位置P2における細線状の被めっき層の平均線幅Hsを1.54μmとするような露光マスクを用い、銅めっき層付き基材(タッチセンサ)の作製の工程において、位置P2における複数の金属細線Aの平均線幅Msを2.50μmとした以外は実施例1と同様にして実施例9のタッチセンサを製造した。
【0074】
領域R1における複数の金属細線Aの平均線幅Mmは2.50μmであった。複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmは1.25μmであり、平均線幅Hsは1.54μmであるため、平均線幅Hmは平均線幅Hsよりも狭かった。また、複数の金属細線Aの平均線幅Msの複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.62であった。また、平均線幅Hs×0.80=1.23、平均線幅Hs×0.90=1.39であり、平均線幅HsおよびHmは不等式(1)を満たしていた。
【0075】
(実施例10)
被めっき層付き基材の作製の工程において、領域R1における細線状の被めっき層の平均線幅Hmを1.62μmとし且つ位置P2における細線状の被めっき層の平均線幅Hsを1.89μmとするような露光マスクを用い、銅めっき層付き基材(タッチセンサ)の作製の工程において、位置P2における複数の金属細線Aの平均線幅Msを2.70μmとした以外は実施例1と同様にして実施例10のタッチセンサを製造した。
【0076】
領域R1における複数の金属細線Aの平均線幅Mmは2.70μmであった。複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmは1.62μmであり、平均線幅Hsは1.89μmであるため、平均線幅Hmは平均線幅Hsよりも狭かった。また、複数の金属細線Aの平均線幅Msの複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.43であった。また、平均線幅Hs×0.80=1.51、平均線幅Hs×0.90=1.70であり、平均線幅HsおよびHmは不等式(1)を満たしていた。
【0077】
(比較例1)
被めっき層付き基材の作製の工程において、細線状の被めっき層の線幅Hがタッチ検出電極11に対応する部分の全体に亘って均一であり、その平均線幅を1.40μmとなるような露光マスクを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1のタッチセンサを製造した。
【0078】
領域R1における複数の金属細線Aの平均線幅Mmは2.33μmであった。複数の金属細線Aの被めっき層の領域R1における平均線幅Hmと位置P1における平均線幅Hsは等しく、それぞれ1.40μmであった。また、複数の金属細線Aの平均線幅Msの複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsに対する比率Ms/Hsは、1.43であった。また、平均線幅Hs×0.80=1.12、平均線幅Hs×0.90=1.26であり、平均線幅HsおよびHmは不等式(1)を満たさない。
【0079】
このようにして製造された実施例1~10および比較例1のタッチセンサに関して、以下に示す濃淡ムラ評価、導電性評価および密着性評価を行った。
(濃淡ムラ評価)
タッチセンサを黒い紙の上に配置し、基材に対して10度~30度の角度から光を当てた。この状態で基材の正面から1m離れた位置で5人の観察者の目視によりタッチ検出電極の濃淡ムラを観察した。濃淡ムラを、以下の基準で評価し、観察者が最も多い評価を最終的な評価結果とした。A評価は優れたレベルであり、B評価は実用上問題がないレベルであり、C評価は実用上問題があるレベルである。
A:濃淡ムラが観察できない。
B:濃淡ムラがわずかに観察できる。
C:濃淡ムラが観察できる。
【0080】
(導電性評価)
タッチセンサのタッチ検出電極11に対していわゆる4探針法により抵抗値を測定し、測定した抵抗値を測定端子間距離で除することにより、タッチ検出電極11の線抵抗値を測定した。より具体的には、タッチ検出電極11を構成する任意の1本の金属細線Aをその他の金属細線Aから切り離し、4本のマイクロプローブB1、B2、B3およびB4(マイクロサポート社製タングステンプローブ、直径0.50μm)を切り離された金属細線Aに接触させた。この際に、マイクロプローブB1およびB4を最も外側に配置し、マイクロプローブB2およびB3を互いに250.00μm間隔で且つマイクロプローブB1およびB4の間に配置した。この状態で、ソースメータ(KEITHLEY製ソースメータ、2400型汎用ソースメータ)を用いて、マイクロプローブB2およびB3の間の電圧が5mVとなるように、最も外側のマイクロプローブB1およびB4の間に定電流Iを印加した。
【0081】
次いで、抵抗値R=V/Iを測定し、得られた抵抗値RをマイクロプローブB2およびB3の間の距離で除して、線抵抗値を計算した。同様の操作をタッチ検出電極11における任意の10箇所の金属細線Aを用いて行い、得られた線抵抗値の算術平均を計算することで、最終的な線抵抗値を計算し、この線抵抗値に基づいて以下の基準でタッチ検出電極11の導電性評価を行った。A評価はタッチ検出電極11の導電性が優れていることを示し、B評価はタッチ検出電極11の導電性が良好なことを示し、C評価はタッチ検出電極11の導電性に実用上の問題がないことを示し、D評価はタッチ検出電極11の導電性に実用上の問題があることを示す。
A:線抵抗値が40Ω/mm未満。
B:線抵抗値が40Ω/mm以上50Ω/mm未満。
C:線抵抗値が50Ω/mm以上60Ω/mm未満。
D:線抵抗値が60Ω/mm以上。
【0082】
(密着性評価)
3M社製テープ610をタッチ検出電極11に接着した後で、そのテープを評価者の手で剥離し、剥離後のテープに金属めっき層が付着しているか否かを観察した。また、タッチ検出電極11にテープを接着する前と、タッチ検出電極11に接着したテープを剥離した後で、それぞれ導電性評価と同様の方法によりタッチ検出電極11の線抵抗値を測定した。次いで、タッチ検出電極11にテープを接着する前の線抵抗値とタッチ検出電極11に接着したテープを剥離した後の線抵抗値との比率により、試験前後の抵抗上昇率を算出した。剥離後のテープの観察結果と抵抗上昇率に基づいて、以下の基準によりタッチ検出電極11における金属めっき層の密着性評価を行った。A評価は金属めっき層が優れた密着性を有することを示し、B評価は金属めっき層が良好な密着性を有することを示し、C評価は金属めっき層の密着性に実用上の問題がないことを示し、D評価は金属めっき層の密着性に実用上の問題があることを示す。
A:金属めっき層の剥離が確認できない、且つ、抵抗上昇率が20%以下。
B:金属めっき層の剥離が確認できない、且つ、抵抗上昇率が50%以下。
C:金属めっき層の剥離が確認できない、且つ、抵抗上昇率が100%以下。
D:金属めっき層の剥離が確認できる。
【0083】
表1に、実施例1~10および比較例1に対する評価結果を示す。
【表1】
【0084】
表1に示すように、実施例1~10のタッチセンサは、濃淡ムラ評価がいずれもAまたはBであり、濃淡ムラが実用上問題ないことが分かる。実施例1~10では、領域R1における複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hmが位置P1における複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsよりも狭いために、タッチ検出電極11における金属細線Aの線幅Mが均一になったと考えられる。このように、実施例1~10では金属細線Aの線幅Mが均一であるため、観察者がタッチ検出電極11を観察した場合でも、実用上問題となる濃淡ムラが観察できなかったと考えられる。
【0085】
一方、比較例1のタッチセンサは、濃淡ムラ評価がCであった。比較例1のタッチセンサはタッチ検出電極11の全体に亘って被めっき層の線幅Hが均一であるため、最終的に形成される複数の金属細線Aの線幅Mが、接続端子12の近傍で過剰に広くなることで不均一になり、観察者がタッチ検出電極11を観察した際に、実用上問題があるほど濃淡ムラが生じたと考えられる。
【0086】
なお、濃淡ムラ評価に関して、実施例1および4~10ではAであるが、実施例2および3はBであった。実施例1および4~10は不等式(1)を満たしているが、実施例2および3は不等式(1)を満たしていない。そのため、実施例2および3では、金属細線Aの線幅Mが位置P1よりも接続端子12付近で比較的広くなり、濃淡ムラがわずかに生じたと考えられる。
【0087】
また、導電性評価に関して、実施例1~3および7~10ではAであるが、実施例4および5でC、実施例6でBであった。実施例4~6では、複数の金属細線Aの平均線幅Msが、0.80μm、1.15μm、1.00μmと、比較的狭いため、電流が比較的流れにくいと考えられる。
【0088】
また、密着性評価に関して、実施例1~7ではAであるが、実施例8でB、実施例9および10でCであった。実施例8~10では、複数の金属細線Aの平均線幅Msが、2.50μm、2.70μmと、比較的広いため、金属細線Aの金属めっき層に作用する応力が比較的大きく、金属めっき層が被めっき層から剥離しやすいと考えられる。また、実施例8と実施例9とを比較すると、複数の金属細線Aの平均線幅Msは同一だが、実施例9の方が、複数の金属細線Aの平均線幅Msと複数の金属細線Aの被めっき層の平均線幅Hsの比率Ms/Hsが大きい。すなわち、実施例9では、細線状の被めっき層を覆う金属めっき層の量が実施例8と比較して多く、金属めっき層がより大きな応力を受けるため、金属めっき層が剥離しやすいと考えられる。
【0089】
導電性評価と密着性評価の結果から、タッチ検出電極11の導電性とタッチ検出電極11における金属めっき層の密着性を確保するために、複数の金属細線Aの平均線幅Msは1.50μm以上2.00μm以下であることが好ましく、比率Ms/Hsは、1.25以上1.60以下であることが好ましく、1.25以上1.45以下であることがより好ましいと考えられる。
【0090】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上において、本発明のタッチセンサについて詳細に説明したが、本発明は、上述の実施態様に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0091】
1 基材、1A 第1面、1B 第2面、2A 第1導電層、2B 第2導電層、3 被めっき層、4 金属めっき層、11,21 タッチ検出電極、12,22 接続端子、13,23 周辺配線、14,24 接続パッド、A 金属細線、D1 第1方向、D2 第2方向、H,M 線幅、Hs 平均線幅、L1 電極長さ、L2,L3 長さ、P1,P2,P3 位置、R1,R2 領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9