(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133934
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240926BHJP
C23C 18/30 20060101ALI20240926BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B32B15/08 J
C23C18/30
H01B5/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043964
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和弘
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴広
【テーマコード(参考)】
4F100
4K022
【Fターム(参考)】
4F100AA37B
4F100AB01D
4F100AB17D
4F100AB40C
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK42A
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4K022CA06
4K022CA09
4K022CA21
4K022CA26
4K022DA01
(57)【要約】
【課題】耐久試験後の導電性細線の密着性に優れる導電性フィルムの提供。
【解決手段】透明基材と、上記透明基材上に配置され、導電性細線で構成されたメッシュパターンと、を有し、上記導電性細線は、上記透明基材側から順に、カーボンブラックを含む黒色層と、パラジウム含有層と、金属めっき層とを有する、導電性フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材上に配置され、導電性細線で構成されたメッシュパターンと、を有し、
前記導電性細線は、前記透明基材側から順に、カーボンブラックを含む黒色層と、パラジウム含有層と、金属めっき層とを有する、導電性フィルム。
【請求項2】
前記金属めっき層の線幅が1.0~2.5μmである、請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
前記黒色層の線幅が0.85~1.90μmである、請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
前記黒色層の線幅に対する前記金属めっき層の線幅の比率が、1超~1.1である、請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
前記黒色層の厚さが0.2~2.0μmである、請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項6】
前記黒色層に含まれる前記カーボンブラックの平均粒子径が10~120nmである、請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項7】
前記カーボンブラックの含有量が前記黒色層の全質量に対して2~20質量%である、請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性細線(導電性を示す細線状の配線)を有する導電性フィルムは、タッチパネル、太陽電池、および、EL(エレクトロルミネッセンス:Electro luminescence)素子等種々の用途に幅広く利用されている。特に、近年、携帯電話および携帯ゲーム機器へのタッチパネルの搭載率が上昇しており、多点検出が可能な静電容量方式のタッチパネル用の導電性フィルムの需要が急速に拡大している。
【0003】
導電性細線を有する導電性フィルムとして、例えば、特許文献1には、透明基材と、透明基材の一方の面に、無電解めっきの核となる金属粒子を含む無電解めっき用塗料組成物を含有する細線パターン部と、細線パターン部の透明基材の反対側の表面に設けられる無電解めっき層とを備える導電パターン付透明基板に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1を参照して、導電性細線で構成されたメッシュパターンを有する導電性フィルムを作製し、作製された導電性フィルムの特性について検討した結果、耐久試験を行った後の導電性フィルムにおいて、導電性細線の密着性が低下し、導電性細線が透明基材から剥離する場合があることを知見した。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、耐久試験後の導電性細線の密着性に優れる導電性フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
〔1〕透明基材と、上記透明基材上に配置され、導電性細線で構成されたメッシュパターンと、を有し、上記導電性細線は、上記透明基材側から順に、カーボンブラックを含む黒色層と、パラジウム含有層と、金属めっき層とを有する、導電性フィルム。
〔2〕上記金属めっき層の線幅が1.0~2.5μmである、〔1〕に記載の導電性フィルム。
〔3〕上記黒色層の線幅が0.85~1.90μmである、〔1〕または〔2〕に記載の導電性フィルム。
〔4〕上記黒色層の線幅に対する上記金属めっき層の線幅の比率が、1超~1.1である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の導電性フィルム。
〔5〕上記黒色層の厚さが0.2~2.0μmである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の導電性フィルム。
〔6〕上記黒色層に含まれる上記カーボンブラックの平均粒子径が10~120nmである、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の導電性フィルム。
〔7〕上記カーボンブラックの含有量が上記黒色層の全質量に対して2~20質量%である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の導電性フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐久試験後の導電性細線の密着性に優れる導電性フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の導電性フィルムの構成の一例を示す模式的断面図である。
【
図2】本発明の導電性フィルムが有するメッシュパターンの構成の一例を示す平面図である。
【
図3】実施例で作製した導電性フィルムが有するメッシュパターンの構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされるものであり、本発明はそのような実施形態に制限されない。また、以下に示す図は、本発明を説明するための概念的な図であり、各構成要素の位置関係、大きさ、厚さおよび形状等は、実際のものとは異なる。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、ある成分が2種以上存在する場合、その成分の「含有量」は、それら2種以上の成分の合計含有量を意味する。
本明細書において、1つの部材または組成物がある成分を「実質的に含まない」とは、対象成分の含有量が、その部材または組成物の全質量に対して0.1質量%以下であることを意味する。
【0012】
本明細書において、「g」および「mg」は、「質量g」および「質量mg」をそれぞれ表す。
本明細書において、「高分子」または「高分子化合物」は、重量平均分子量が2000以上である化合物を意味する。ここで、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)測定によるポリスチレン換算値として定義される。
【0013】
本明細書において、具体的な数値で表された角度、並びに、「平行」、「垂直」および「直交」等の角度に関する表記は、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
本明細書において、導電性細線または導電性細線を構成する各層の「幅方向」とは、基材の表面に沿った方向のうち、導電性細線が延在する方向に対して直交する方向を意味し、導電性細線または上記各層の「線幅」とは、幅方向における導電性細線または上記各層の全長を意味する。
【0014】
[導電性フィルム]
本発明に係る導電性フィルムは、透明基材と、透明基材上に配置された、導電性細線で構成されたメッシュパターンとを有し、導電性細線は、透明基材側から、カーボンブラックを含む黒色層と、パラジウム含有層と、金属めっき層とを有する。
【0015】
本発明者らは、透明基材と、導電性細線で構成されたメッシュパターンとを有する導電性フィルムの耐久性について検討した結果、導電性細線について、パラジウム含有層(以下、「Pd含有層」とも記載する。)および金属めっき層を有し、更に、透明基材とPd含有層との間にカーボンブラックを含む黒色層を挿入してなる積層構造を設けることによって、耐久試験後の導電性細線の密着性を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明者らは、Pd含有層および金属めっき層を有する導電性細線が透明基材上に配置されている導電性フィルムでは、時間の経過とともに導電性細線が剥離し易くなる現象が生じ得ることを知見している。それに対して、透明基材とPd含有層との間にカーボンブラックを含む黒色層を有する本発明の導電性フィルムでは、上記の導電性細線が剥離し易くなる現象を抑制できることを本発明者らは見出している。
以下、本明細書において、導電性フィルムに対して耐久試験を行った後の導電性細線の密着性が優れる場合、「本発明の効果が優れる」とも記載する。
【0016】
以下、本発明に係る導電性フィルム(以下、「本導電性フィルム」とも記載する。)について、図面を参照しながらより詳しく説明する。
図1は、本導電性フィルムの構成の一例を示す模式的断面図である。
図1に示す導電性フィルム10は、透明基材12と、透明基材12上に配置されている導電性細線20とを備える。導電性細線20は、透明基材12側から順に、黒色層22、Pd含有層24および金属めっき層26で構成される積層構造を有する。
透明基材12上に配置されている導電性細線20により、メッシュパターンが構成されている。すなわち、透明基材12上には、メッシュ状に配置されている導電性細線20と、導電性細線20が配置されていない非細線領域30とが存在している。
【0017】
図1に示す導電性フィルム10では、透明基材12の両面のそれぞれに、メッシュパターンを構成する導電性細線20が配置されている。ただし、本導電性フィルムは
図1に示す態様に制限されず、導電性細線は透明基材の表面の一方のみに配置されていてもよい。例えば、導電性細線は、タッチパネル等の表示装置に用いられた際、透明基材の視認側の表面(以下、「頂面」とも記載する。)のみに配置されていてもよいし、透明基材の表示素子側の表面(以下、「底面」とも記載する。)のみに配置されていてもよい。
導電性フィルムが、黒色層、Pd含有層および金属めっき層をこの順に有する導電性細線を透明基材の底面に配置されている場合、耐久試験後の導電性細線の密着性を向上でき、更に、外光が導電性フィルムに照射された際にPd含有層および/または金属めっき層による反射光が視認される現象(いわゆる「線見え」)を抑制することができる。
【0018】
図2は、本導電性フィルムが有するメッシュパターンの構成の一例を示す平面図である。
図2は、
図1に示す導電性フィルム10を、透明基材12の導電性細線20が配置されている表面の法線方向から観察した際の平面図である。
図2に示すように、導電性フィルム10の透明基材12の一方の表面には、導電性細線20により構成されるメッシュパターン28が配置されており、また、メッシュパターン28に囲まれ、それぞれが互いに離間している複数の非細線領域30が存在する。
なお、本導電性フィルムが有する導電性細線の配置形態および数、並びに、メッシュパターンの形状およびサイズは、
図1および
図2に示す態様に制限されない。本導電性フィルムが有するメッシュパターンの詳細については、後述する。
以下、単なる「メッシュパターン」との表記は、特に言及しない限り、本導電性フィルムが有する、導電性細線で構成されたメッシュパターンを意味する。
【0019】
導電性フィルムが有する各部材について、説明する。
【0020】
〔透明基材〕
透明基材は、メッシュパターンを支持できる部材であれば、その種類は特に制限されず、例えば、樹脂基材が挙げられる。
【0021】
本明細書において「透明基材」とは、全光線透過率が80%以上である基材を意味する。全光透過率は、JIS(日本工業規格) K 7375:2008に規定される「プラスチック-全光線透過率および全光線反射率の求め方」を用いて測定される。
透明基材の全光線透過率は、85~100%が好ましい。
【0022】
透明基材は、可撓性を有することが好ましい。可撓性を有する透明基材とは、折り曲げることができる透明基材を意味し、具体的には、折り曲げ曲率半径2mmで折り曲げても割れが生じない透明基材を意味する。可撓性透明基材は、3次元形状を形成できる加工性を有する。可撓性を有する透明基材としては、樹脂基材が挙げられる。
【0023】
透明基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)(258℃)、ポリシクロオレフィン(134℃)、ポリカーボネート(250℃)、アクリルフィルム(128℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN)(269℃)、ポリエチレン(PE)(135℃)、ポリプロピレン(163℃)、ポリスチレン(230℃)、ポリ塩化ビニル(180℃)、ポリ塩化ビニリデン(212℃)、および、トリアセチルセルロース(290℃)等の融点が約290℃以下である樹脂が好ましく、PET、ポリシクロオレフィン、または、ポリカーボネートがより好ましい。なかでも、導電性細線との密着性が優れることから、PETが更に好ましい。上記の( )内の数値は融点またはガラス転移温度である。
【0024】
透明基材を構成する材料は、透明基材上にメッシュパターンを形成する際、紫外線等の露光光を裏面側から通過させ、透明基材上に設けたフォトレジストを露光することが可能な材料であってもよい。
フォトレジストは、紫外線を用いて露光されるように設定されている場合が多く、フォトレジストの光波長感度特性、および、μmレベルのパターンの精確な加工性の点で、g線(436nm)が使用されることが特に多い。g線以外にも、i線(365nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、ARFエキシマレーザ(193nm)、および、F2エキシマレーザ(157nm)等の短波長の紫外線を利用する場合もある。
透明基材上に部材を形成する工程において、透明基材を通過させてフォトレジストを露光する処理を行う場合は、これらの露光光に対して良好な光透過性を有する透明基材を選定することが望ましい。或いは、透明基材を通過させてフォトレジストを露光する処理を行う場合、波長に応じた透明基材の光透過性に合わせて、フォトレジストの材料および露光用光源の波長をそれぞれ選択することが望ましい。
透明基材を構成する材料として、上記紫外線の透過性がより優れる点では、PET、ポリシクロオレフィンまたはアクリル樹脂が好ましい。
その他に、電子材料に用いた際の使用環境での耐久性がより優れる点では、PENまたはPETが好ましい。
【0025】
透明基材の厚さは特に制限されず、25~500μmの場合が多い。なお、導電性フィルムをタッチパネルに応用する際に、透明基材表面をタッチ面として用いる場合は、透明基材の厚さは500μmを超えていてもよい。
【0026】
〔メッシュパターン〕
メッシュパターンは、透明基材上にメッシュ状に配置された導電性細線により構成される部材である。導電性細線は、Pd含有層および金属めっき層を含む積層構造を有する細線状の部材であり、導電性フィルムの主な導電特性を担う。
導電性細線は、透明基材側から順に、黒色層、Pd含有層および金属めっき層で構成される積層構造を有する。
【0027】
メッシュ状とは、
図2に示すメッシュパターン28のように、交差する導電性細線20により構成され、それぞれが互いに離間している複数の非細線領域30を含む形状を意図する。
図2において、非細線領域30は、一辺の長さがLである正方形の形状を有しているが、メッシュパターンの導電性細線により区画される非細線領域は、他の形状であってもよく、例えば、多角形状(例えば、三角形、四角形(ひし形、長方形等)、六角形、および、ランダムな多角形)であってもよい。また、辺の形状は、直線以外の湾曲した形状であってもよいし、円弧状であってもよい。円弧状とする場合は、例えば、対向する二辺については、外方に凸の円弧状とし、他の対向する二辺については、内方に凸の円弧状としてもよい。また、各辺の形状を、外方に凸の円弧と内方に凸の円弧が連続した波線形状としてもよい。もちろん、各辺の形状を、サイン曲線にしてもよい。
【0028】
正方形の格子状である非細線領域30の一辺の長さLは特に制限されないが、1500μm以下が好ましく、1300μm以下がより好ましく、1000μm以下が更に好ましい。長さLの下限値は特に制限されないが、5μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、80μm以上が更に好ましい。非細線領域の一辺の長さが上述の範囲である場合には、更に透明性も良好に保つことが可能であり、導電性フィルムを表示装置の前面にとりつけた際に、違和感なく表示を視認することができる。
【0029】
可視光透過率の点で、メッシュパターンの開口率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、99%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、100%未満が挙げられる。
開口率とは、導電性フィルムのメッシュパターンが形成された側の透明基材の表面において、表面の全面積に対する導電性細線が配置されていない領域の割合(面積比)を意味する。
【0030】
導電性細線の線幅Waは、本発明の効果がより優れる点で、5.0μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、2.0μm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、本発明の効果および導電性フィルムの導電性がより優れる点で、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上が更に好ましい。
【0031】
導電性細線の厚さTaは、特に制限されないが、導電性フィルムの導電性がより優れる点で、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、10μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。
【0032】
導電性細線の線幅Waおよび厚さTaは、以下の方法で得られる。
まず、導電性フィルムの導電性細線側の表面に、スパッタリング法によりプラチナコーティング層を形成する。次いで、プラチナコーティング層を有する導電性フィルムを、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)加工により、幅方向および厚さ方向を含む平面に沿って切断し、断面切片を作製する。得られた切片の断面に対して、エネルギー分散型X線分光計(EDS)付きの透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)(例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Talos F200X S/TEM」等)を用いて元素分析を行うことにより、導電性細線の幅方向および厚さ方向を含む断面の元素マッピング画像が得られる。得られた導電性細線の断面の元素マッピング画像に基づいて、導電性細線の線幅および厚さが求められる。任意に選択した10箇所の導電性細線において、上記の方法で断面切片の作製、および、得られた断面の元素マッピング画像の取得を行い、測定された10点の線幅の算術平均値、および、測定された10点の厚さの算術平均値を算出することにより、導電性細線の線幅Waおよび厚さTaがそれぞれ求められる。
導電性細線の線幅Waおよび厚さTa、並びに、導電性細線を構成する各層の線幅および厚さのより詳細な測定方法は、後述する実施例に記載する。
【0033】
導電性細線の線抵抗値は、200Ω/mm未満が好ましい。なかでも、タッチパネルとして用いた際の操作性の点で、100Ω/mm未満がより好ましく、60Ω/mm未満が更に好ましい。下限は特に制限されないが、1Ω/mm以上が好ましい。
線抵抗値とは、4探針法で測定した抵抗値を測定端子間距離で除したものである。より具体的には、メッシュパターンを構成する任意の1本の導電性細線の両端を断線させてメッシュパターンから切り離した後に、4本(A、B、C、D)のマイクロプローブ(株式会社マイクロサポート製タングステンプローブ(直径0.5μm))を該切り離された導電性細線に接触させて、最外プローブA、Dにソースメーター(KEITHLEY製ソースメーター 2400型汎用ソースメーター)を用いて内部プローブB、C間の電圧Vが5mVになるように定電流Iを印加し、抵抗値Ri=V/Iを測定し、得られた抵抗値RiをB、C間距離で除して線抵抗値を求める。
【0034】
また、導電性細線は、導電性フィルムの外部の部材と電気的に接続していてもよく、電気的に接続していなくてもよい。導電性細線の一部は、外部と電気的に絶縁されたダミー電極であってもよい。
以下、導電性細線を構成する各層について説明する。なお、下記のそれぞれの層を形成する方法、および、導電性細線の作製方法については後ほど詳しく説明する。
【0035】
<黒色層>
本導電性フィルムは、カーボンブラックを含む黒色層を有する。
黒色層に含まれるカーボンブラックは、特に制限されず、公知のものが使用できる。
【0036】
黒色層に含まれるカーボンブラックの平均粒子径は、本発明の効果がより優れる点で、球相当径で5~1000nmが好ましく、10~120nmがより好ましく、20~80nmが更に好ましく、30~40nmが特に好ましい。なお、球相当径とは、同じ体積を有する球形粒子の直径であり、カーボンブラックの平均粒子径は、100個の対象物の球相当径を測定して、それらを算術平均した平均値として得られる。
また、カーボンブラックの平均一次粒子径は、カタログ値であってもよい。
【0037】
黒色層におけるカーボンブラックの含有量は、本発明の効果がより優れる点で、黒色層の全質量に対して、1~30質量%が好ましく、2~20質量%がより好ましく、5~20質量%が更に好ましく、10~15質量%が特に好ましい。
【0038】
黒色層は、樹脂を更に含むことが好ましい。
黒色層に含まれる樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビスマレイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、および、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)が挙げられる。
黒色層に含まれる樹脂としては、ポリウレタン系樹脂またはポリ(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。ポリウレタン系樹脂の形成材料としては、例えば、アイトロンZ-913-3(アイカ工業株式会社製)が挙げられる。ポリ(メタ)アクリル系樹脂の形成材料としては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレートが挙げられる。ポリエチレングリコールジアクリレートとしては、例えば、アロニックスM240(東亞合成株式会社製)を使用できる。
【0039】
黒色層に含まれる樹脂の重量平均分子量は特に制限されず、2000~1000000が好ましく、2000~750000がより好ましく、3000~500000が更に好ましい。
黒色層に含まれる樹脂は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
黒色層における樹脂の含有量は、黒色層の全質量に対して、65~95質量%が好ましく、75~90質量%がより好ましい。
【0040】
黒色層におけるPdの含有量は、黒色層の全質量に対して10質量%以下が好ましく、黒色層はPdを実質的に含まないことがより好ましい。下限は特に制限されず、0質量%であってよい。
また、黒色層における金属の含有量は、黒色層の全質量に対して10質量%以下が好ましく、黒色層は金属を実質的に含まないことがより好ましい。下限は特に制限されず、0質量%であってよい。
【0041】
黒色層には、必要に応じて、上述した成分以外の添加剤が含まれていてもよい。
添加剤としては、例えば、カーボンブラックとは異なる着色剤、UV吸収剤、および、光安定化剤が挙げられる。
黒色層における添加剤の含有量は、黒色層の全質量に対して、20質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。下限は特に制限されず、0質量%であってもよい。
【0042】
黒色層の線幅W1は、透過率がより優れる点で、2.00μm以下が好ましく、1.90μm以下がより好ましく、1.50μm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、0.80μm以上が好ましく、0.85μm以上がより好ましく、1.00μm以上が更に好ましい。
黒色層の厚さT1は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.1~3.0μmが好ましく、0.2~2.0μmがより好ましく、0.5~1.5μmが更に好ましい。
黒色層の線幅W1は、導電性細線の線幅Waの測定方法に準じて測定でき、黒色層の厚さT1は、導電性細線の厚さTaの測定方法に準じて測定できる。
【0043】
<パラジウム含有層>
パラジウム含有層(Pd含有層)は、導電性細線を構成する層であって、パラジウム(Pd)を含む層である。
Pd含有層に含まれるPd(以下、「Pd成分」とも記載する。)の形態は特に制限されず、Pd単体であってもよく、PdとPd以外の金属との混合物(Pd合金)であってもよい。Pd以外の金属としては、例えば、銀、銅、金およびニッケルが挙げられる。
なかでも、Pd含有層は、Pd単体を含むことが好ましい。
【0044】
Pd含有層に含まれるPd成分(好ましくはPd単体)は、固体粒子状のPd粒子であることが多い。Pd粒子の平均粒子径は、球相当径で10~1000nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。湿熱環境下における導電性細線の抵抗値の変化がより小さい点で、50~150nmが更に好ましい。なお、球相当径とは、同じ体積を有する球形粒子の直径であり、Pd粒子の平均粒子径は、100個の対象物の球相当径を測定して、それらを算術平均した平均値として得られる。
Pd粒子の形状は特に制限されず、例えば、球状、立方体状、平板状、8面体状、および、14面体状等の形状が挙げられる。また、Pd粒子が融着により一部または全体にわたって結合していてもよい。
【0045】
Pd含有層は、Pd成分が後述する高分子化合物中に分散してなる構造を有してもよく、高分子化合物中でPd成分が凝集して凝集体として存在してもよい。また、Pd含有層に含まれるPd成分の少なくとも一部同士が、後述するめっき処理に用いる金属イオンに由来する金属によって接合されていてもよい。
Pd含有層におけるPd成分の含有量は特に制限されず、導電性フィルムの導電性がより優れる点で、透明基材表面のPd含有層が配置されている領域の面積当たりのPd成分の含有量(Pd元素換算)が、1.0~20.0g/m2であることが好ましく、2.0~10.0g/m2であることがより好ましい。
【0046】
Pd含有層は、バインダー成分を含んでいてもよい。
Pd含有層に含まれるバインダー成分は特に制限されず、例えば、公知の高分子化合物が使用できる。
【0047】
Pd含有層に含まれる高分子化合物としては、疎水性高分子(非水溶性高分子)が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリジエン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系重合体、キトサン系重合体、および、ゼラチンからなる群から選ばれる少なくともいずれかの樹脂、または、これらの樹脂を構成する単量体からなる共重合体等が挙げられる。
また、高分子化合物は、後述する架橋剤と反応する反応性基を有することが好ましい。
高分子化合物は、粒子状であることが好ましい。つまり、Pd含有層は、特定高分子の粒子を含むことが好ましい。
高分子化合物は、例えば、特許第3305459号公報および特許第3754745号公報等を参照して合成できる。
【0048】
高分子化合物の重量平均分子量は特に制限されず、2000~1000000が好ましく、2000~750000がより好ましく、3000~500000が更に好ましい。
Pd含有層に含まれる高分子化合物は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
Pd含有層における高分子化合物の含有量は、Pd含有層の全質量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。上限値は特に制限されず、Pd成分以外の残部であってもよく、50質量%以下が好ましい。
【0049】
Pd含有層は、Pd以外の金属を含んでいてもよい。Pd以外の金属としては、例えば、銀、銅、金、ニッケル、および、鉄が挙げられる。
Pd以外の金属の含有量は、Pd含有層の全質量に対して、20質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0050】
Pd含有層には、必要に応じて、上述した成分以外の添加剤が含まれていてもよい。
添加剤としては、例えば、特開2009-004348号公報の段落0220~0241に記載されるような、帯電防止剤、造核促進剤、分光増感色素、界面活性剤、カブリ防止剤、硬膜剤、黒ポツ防止剤、レドックス化合物、モノメチン化合物、および、ジヒドロキシベンゼン類も挙げられる。
また、Pd含有層には、上述の高分子化合物同士を架橋するために使用される架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤が含まれることにより、特定高分子同士間での架橋が進行し、Pd含有層中の金属同士の連結が保たれる。
【0051】
一方、Pd含有層におけるカーボンブラックの含有量は、Pd含有層の全質量に対して10質量%以下が好ましく、Pd含有層はカーボンブラックを実質的に含まないことがより好ましい。下限は特に制限されず、0質量%であってよい。
また、Pd含有層における着色剤の含有量は、Pd含有層の全質量に対して5質量%以下が好ましく、Pd含有層は着色剤を実質的に含まないことがより好ましい。下限は特に制限されず、0質量%であってよい。
【0052】
Pd含有層の線幅W2は、本発明の効果および導電性がより優れる点で、0.5μm以上が好ましく、0.8μm以上がより好ましく、1.0μm以上が更に好ましい。線幅W2が上記下限値以上であると、金属めっき層との接着面積が増えるためと推測される。線幅W2の上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、2.5μm以下が好ましく、1.9μm以下がより好ましく、1.5μm以下が更に好ましい。線幅W2が上記上限値以下であると、Pd含有層と金属めっき層との間に発生する応力を抑制できるためと推測される。
Pd含有層の厚さT2は特に制限されないが、0.05~1.5μmが好ましく、0.1~0.8μmがより好ましく、0.2~0.5μmが更に好ましい。
Pd含有層の線幅W2は、導電性細線の線幅Waの測定方法に準じて測定でき、Pd含有層の厚さT2は、導電性細線の厚さTaの測定方法に準じて測定できる。
【0053】
<金属めっき層>
金属めっき層は、導電性細線を構成する層であって、上記Pd含有層の透明基材とは反対側に配置される層である。
【0054】
金属めっき層に含まれる金属は特に制限されず、公知の金属を用いることができる。
金属めっき層に含まれる金属としては、例えば、銀、銅、金、ニッケル、コバルトおよびパラジウムからなる群より選択される金属の単体、並びに、上記群より選択される2つ以上の金属の混合物(合金)が挙げられる。なかでも、導電性がより優れる点で、銀および銅の少なくとも一方が好ましく、銅単体、または、銅と銀、金、ニッケル、コバルトおよびパラジウムからなる群より選択される金属との銅合金がより好ましく、銅単体が更に好ましい。
【0055】
金属めっき層は、上記金属を主成分として含むことが好ましい。
金属めっき層が金属を「主成分として含む」とは、金属の含有量が金属めっき層の全質量に対して50質量%以上であることを意味する。金属めっき層における金属(より好ましくは銅または銅合金)の含有量は、金属めっき層の全質量に対して90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。上限値は特に制限されず、金属めっき層の全質量に対して100質量%であってよい。
【0056】
金属めっき層の線幅W3は、本発明の効果および導電性がより優れる点で、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、5.0μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、2.0μm以下が更に好ましい。
金属めっき層の厚さT3は、導電性がより優れる点で、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、3.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。
金属めっき層の線幅W3および厚さT3は、導電性細線の線幅Waおよび厚さTaの測定方法に準じて測定できる。
【0057】
また、本発明の効果がより優れる点で、黒色層の線幅W1に対する金属めっき層の線幅W3の比率(W3/W1)は、1.00~1.25が好ましく、1超~1.1がより好ましい。
【0058】
〔他の部材〕
導電性フィルムは、上述の透明基材、黒色層、導電性細線および透明絶縁部以外に他の部材を有してもよい。
導電性フィルムが有してもよい他の部材としては、黒化層、透明絶縁部、および、後述する導電性細線とは構成が異なる導電部が挙げられる。
【0059】
<黒化層>
導電性フィルムの導電性細線は、金属めっき層の透明基材とは反対側に配置されている黒化層を有していてもよい。即ち、導電性細線は、透明基材側から順に、上記黒色層と、パラジウム含有層と、金属めっき層と、黒化層とを有していてもよい。
黒化層は、透明基材の頂面(視認側の表面)に配置されている導電性細線での光の反射を防止し、視認性をより向上させる機能を有する。黒化層としては、例えば、黒色クロムめっき層、黒色ニッケルめっき層、および、黒色アルマイトめっき層等の公知の黒色めっき層が挙げられる。
これらの黒化層は、公知の黒色金属材料を用いるめっき処理により形成できる。
【0060】
<透明絶縁部>
導電性フィルムは、導電性細線が配置されている側の表面の導電性細線が配置されていない非細線領域に、透明絶縁部を有していてもよい。
透明絶縁部は、導電性細線と並んで配置され、導電性細線の幅方向において導電性細線と隣接していることが好ましい。
【0061】
透明絶縁部は、導電性の金属を含まず、導電性を示さない部材である。ここで、透明絶縁部が「金属を含まない」とは、透明絶縁部における金属の含有量が、透明絶縁部の全質量に対して0.1質量%以下であることを意味する。
透明絶縁部を構成する材料としては、高分子化合物が好ましい。高分子化合物としては、導電性細線に含まれる高分子化合物が挙げられる。透明絶縁部を構成する高分子化合物は、導電性細線に含まれる高分子化合物と同じあってもよく、異なっていてもよい。
【0062】
透明絶縁部の厚さは特に制限されず、1~15μmが好ましく、2~10μmがより好ましい。透明絶縁部の厚さは、導電性細線の厚さTaの測定方法に準じて測定できる。
透明絶縁部形成用組成物を用いて透明絶縁部を形成する方法は特に制限されない。例えば、導電性細線が配置されている側の透明基材の表面に上記組成物を塗布して、必要に応じて塗布膜に硬化処理を施し、透明絶縁部を形成する方法が挙げられる。
【0063】
〔導電性フィルムの製造方法〕
次に、本導電性フィルムの製造方法について説明する。
本導電性フィルムの製造方法は、上述した構成の導電性フィルムが製造できれば特に制限されない。本導電性フィルムの製造方法としては、例えば、公知の方法により透明基材の少なくとも一方の表面上に黒色層を形成する黒色層形成工程と、形成された黒色層上にPd含有層を形成するPd含有層形成工程と、形成されたPd含有層の表面上にめっき法により選択的に金属めっき層を形成する金属めっき層形成工程とを有する方法が挙げられる。
【0064】
<黒色層形成工程>
黒色層の形成方法は特に制限されず、透明基材上にパターン状の塗膜を形成する公知の方法が適用できる。黒色層の形成方法としては、例えば、カーボンブラック、樹脂および他の着色剤等の任意成分を含む黒色層形成用組成物を透明基材上にパターン印刷する方法、重合性化合物を更に含む黒色層形成用組成物を透明基材上の全面に印刷し、露光および現像してパターン状の黒色層を形成する方法、並びに、上記の黒色層形成用組成物を透明基材上の全面に印刷し、マスクパターンを介して紫外線またはレーザー等を照射して不要な部位を除去することにより、パターン状の黒色層を形成する方法が挙げられる。
【0065】
パターン印刷による黒色層の形成方法における具体的な方法としては、例えば、スクリーン印刷法、スクリーンオフセット法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インプリント印刷法、反転印刷法、および、インクジェット印刷法が挙げられる。中でも、スクリーン印刷法またはインクジェット印刷法が好ましい。
【0066】
黒色層形成工程に用いる黒色層形成用組成物は、カーボンブラックを含む。
黒色層形成用組成物におけるカーボンブラックの含有量は特に制限されないが、組成物の全固形分に対するカーボンブラックの含有量が、より好ましい範囲も含めて、上記の黒色層の全質量に対するカーボンブラックの含有量と同じであることが好ましい。
黒色層形成用組成物は、カーボンブラックに加えて、溶剤、上記の樹脂またはその前駆体、および、上記の添加剤からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0067】
黒色層形成用組成物は、取扱い性の点から、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤の種類は特に制限されず、水および有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、公知の有機溶剤(例えば、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤、ハロゲン系溶剤、および、炭化水素系溶剤等)が挙げられる。
黒色層形成用組成物における溶剤の含有量は特に制限されないが、組成物の全質量に対して、50~98質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、黒色層形成用組成物の取扱い性に優れるほか、厚さの制御が容易になるためである。
黒色層形成用組成物の調製方法は特に制限されず、例えば、上述した各成分を一括して混合する方法、および、各成分を段階的に混合する方法が挙げられる。
【0068】
<Pd含有層形成工程>
Pd含有層形成工程としては、黒色層形成工程により形成された黒色層上にPd含有層を形成する方法であれば、特に制限されず、公知の方法が採用される。
Pd含有層を形成する方法としては、例えば、Pd成分およびバインダー成分を含む組成物を黒色層上にパターン印刷することによりPd含有層を形成する方法、並びに、Pd成分およびバインダー成分を含む塗膜を透明基材の黒色層が形成された表面の全面に形成した後、レジストパターンを用いて黒色層が存在しない領域に形成された塗膜を除去することによりPd含有層を形成する方法が挙げられる。
Pd含有層を形成するための具体的なパターン印刷の方法としては、黒色層形成工程において挙げたパターン印刷方法が挙げられ、中でも、スクリーン印刷法またはインクジェット印刷法が好ましい。
【0069】
Pd含有層形成工程において、上記塗膜の形成またはパターン印刷に用いるPd含有層形成用組成物としては、例えば、Pd成分またはその前駆体と、バインダー成分と、任意に溶剤とを含む組成物が挙げられる。
Pd含有層形成用組成物に含まれるPd成分およびバインダー成分は、既に説明した通りである。Pd含有層形成用組成物は、Pdのコロイドを含んでいてもよい。また、Pd含有層形成用組成物は、Pd成分の前駆体としてPdイオンを含んでいてもよい。
【0070】
Pd含有層形成用組成物は、取扱い性の点から、溶剤を含むことが好ましい。Pd含有層形成用組成物に含まれる溶剤としては、黒色層形成用組成物が含んでいてもよい各種溶剤が挙げられる。
Pd含有層形成用組成物における溶剤の含有量は、特に制限されないが、上述の観点から、組成物の全質量に対して、50~98質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましい。
Pd含有層形成用組成物の調製方法は特に制限されず、例えば、上述した各成分を一括して混合する方法、および、各成分を段階的に混合する方法が挙げられる。
【0071】
<金属めっき層形成工程>
金属めっき層形成工程は、Pd含有層形成工程により形成されたPd含有層の表面上に選択的に金属めっき層を形成する工程であり、より具体的には、Pd含有層に対してめっき処理を施す工程である。
【0072】
めっき処理の方法は特に制限されず、例えば、無電解めっき(化学還元めっきまたは置換めっき)、および、電解めっきが挙げられ、無電解めっきが好ましい。
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる処理である。無電解めっきとしては、公知の無電解めっき技術が用いられる。
【0073】
めっき処理としては、例えば、銅めっき処理、銀めっき処理、ニッケルめっき処理、および、コバルトめっき処理が挙げられ、導電性細線の導電性がより優れる点で、銅めっき処理または銀めっき処理が好ましく、銅めっき処理がより好ましい。
めっき処理で用いられるめっき液に含まれる成分は特に制限されないが、溶剤(例えば水)の他に、めっき用の金属イオン、還元剤、金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)、および、pH調整剤がめっき液に含まれることが多い。めっき液には、これらに加えて、公知の添加剤が含まれていてもよい。
めっき液に含まれるめっき用の金属イオンの種類は析出させたい金属種に応じて適宜選択でき、例えば、銅イオン、銀イオン、ニッケルイオン、および、コバルトイオンが挙げられる。
【0074】
めっき処理の手順は特に制限されず、上記の透明基材上のPd含有層とめっき液とを接触させる方法であればよく、例えば、黒色層およびPd含有層を有する透明基材をめっき液に浸漬させる方法、および、透明基材の黒色層およびPd含有層が配置された表面にめっき液を塗布する方法が挙げられる。
Pd含有層とめっき液との接触時間は特に制限されず、導電性細線の導電性がより優れる点および生産性の点で、20秒間~30分間が好ましい。
【0075】
上記の黒色層形成工程、Pd含有層形成工程および金属めっき層形成工程を実施し、黒色層、Pd含有層および金属めっき層が順次積層してなる積層構造を有する導電性細線を形成することにより、メッシュパターンが透明基材上に設けられる。
【0076】
なお、本導電性フィルムの製造方法は、上記の黒色層形成工程、Pd含有層形成工程および金属めっき層形成工程を有する方法に制限されない。本導電性フィルムは、例えば、透明基材の全面に上記の黒色層形成用組成物を塗布し、形成された塗布層の全面に上記Pd含有層形成用組成物を塗布して積層体を形成し、形成された積層体に対してパターン露光および現像処理を行い、積層体の不要な領域を除去した後、黒色層およびPd含有層からなるパターン状積層体の表面にめっき法により選択的に金属めっき層を形成することによっても、製造できる。
【0077】
透明基材の両面に配置されたメッシュパターンを有する導電性フィルムは、上記の一連の工程を透明基材の両面に対して実施することにより、製造できる。その際に実施する各工程の順序は特に制限されず、例えば、本導電性フィルムは、透明基材の両面に上述の方法で黒色層およびPd含有層からなるパターン状の積層体を形成し、その後、形成されたそれぞれのPd含有層上に金属めっき層を形成することにより製造できる。また、本導電性フィルムは、透明基材の一方の表面に黒色層、Pd含有層および金属めっき層を順次形成した後、透明基材の他方の表面に黒色層、Pd含有層および金属めっき層を順次形成することによっても製造できる。
【0078】
〔導電性フィルムの用途〕
上述のようにして得られた導電性フィルムは、種々の用途に適用でき、タッチパネル(または、タッチパネルセンサー)、半導体チップ、各種電気配線板、FPC(Flexible Printed Circuits)、COF(Chip on Film)、TAB(Tape Automated Bonding)、アンテナ、多層配線基板、および、マザーボード等の用途に適用できる。なかでも、本導電性フィルムは、タッチパネル(静電容量式タッチパネル)に用いることが好ましい。
本導電性フィルムを有するタッチパネルにおいて、上述した導電性細線は、検出電極として有効に機能し得る。本導電性フィルムをタッチパネルに用いる場合、導電性フィルムと組み合わせて使用する表示パネルとしては、例えば、液晶パネル、および、OLED(Organic Light Emitting Diode)パネルが挙げられ、OLEDパネルとの組み合わせて用いることが好ましい。
【0079】
なお、導電性フィルムは、導電性細線とは別に、導電性細線とは構成が異なる導電部を更に有していてもよい。この導電部は、上述した導電性細線と電気的に接続して、導通していてもよい。導電部としては、例えば、上述した導電性細線に電圧を印加する機能を有する周辺配線、および、導電性フィルムと積層する部材の位置を調整するアライメントマークが挙げられる。
【0080】
本導電性フィルムの上記以外の用途としては、例えば、パーソナルコンピュータおよびワークステーション等の電子機器から発生する電波およびマイクロ波(極超短波)等の電磁波を遮断し、かつ静電気を防止する電磁波シールドが挙げられる。このような電磁波シールドは、パーソナルコンピュータ本体以外に、映像撮影機器および電子医療機器等の電子機器にも使用できる。
本導電性フィルムは、透明発熱体にも使用できる。
【0081】
本導電性フィルムは、取り扱い時および搬送時において、導電性フィルムと、粘着シートおよび剥離シート等の他の部材とを有する積層体の形態で用いられてもよい。剥離シートは、積層体の搬送時に、導電性フィルムにおける傷の発生を防止するための保護シートとして機能する。
また、導電性フィルムは、例えば、導電性フィルム、粘着シートおよび保護層をこの順で有する複合体の形態で取り扱われてもよい。
【0082】
本発明は、基本的に以上のように構成される。本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更を行ってもよい。
【実施例0083】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容および処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例に制限されない。
また、特に断らない限り、部および%は質量基準を意図する。
【0084】
[実施例1]
<黒色層形成用組成物の調製>
以下の成分を攪拌しながら混合し、黒色層形成用組成物1を調製した。
・カーボンブラック 4.7質量%
・アクリルモノマー(DPHA、ダイセル・オルネクス社製) 34.9質量%
・光重合開始剤(Omnirad907、IGM RESINS) 0.4質量%
・溶媒(2-ブタノン) 30.0質量%
・溶媒(シクロペンタノン) 30.0質量%
上記カーボンブラックは三菱ケミカル株式会社社製「RCF♯20」であり、その平均粒子径は50nmであった。
【0085】
<Pd含有層形成用組成物の調製>
以下の成分を攪拌しながら混合し、Pd含有層形成用組成物1を調製した。
・ナノパラジウム分散液(ルネッサンス・エナジー・リサーチ社製) 5.0質量%
・アクリルモノマー(DPHA、ダイセル・オルネクス社製) 75.0質量%
・光重合開始剤(Omnirad907,IGM RESINS) 1.0質量%
・分散剤(Solspers24000、ルーブリゾール社製) 1.0質量%
・溶媒2-ブタノン 18.0質量%
【0086】
<導電性フィルムの作製>
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(富士フイルム株式会社製)の表面にリップコーターを用いて黒色層形成用組成物1を塗布し、乾燥後、得られた塗膜の表面にリップコーターを用いてPd含有層形成用組成物1を塗布し、乾燥することにより、積層体を得た。
得られた積層体の表面に、
図3に示すパターンを有するネガ型マスクパターンを配置し、高圧水銀灯により波長365nmの紫外線をネガ型マスクパターンを介して積層体に照射して、パターン露光を行った。露光量は500mJ/cm
2であった。
次いで、マスクパターンを取り除いた後、露出した積層体の全面に、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(アルカリ現像液、液温30℃)にて60秒間、0.18MPa(1.8kgf/cm
2)の圧力でスプレー現像し、積層体の未露光部における黒色層形成用組成物1の塗膜およびPd層形成用組成物1の塗膜を溶解除去した。上記現像処理により、黒色層およびPd含有層からなる、
図3に示すパターン状の積層体を形成した。
【0087】
次いで、透明基材の他方の表面に対しても、上記の一連の工程を繰り返すことにより、黒色層およびPd含有層からなるパターン状の積層体を透明基材の両面に形成した。
【0088】
次いで、黒色層およびPd含有層からなるパターン状の積層体を両面に有する透明基材を、無電解銅めっき液スルカップPEA(上村工業株式会社製)に室温にて30分間浸漬した後、純水にて洗浄した。これにより、透明基材側から黒色層、Pd含有層および銅めっき層の順に有する導電性細線で構成されたメッシュパターンを透明基材の両面に有する導電性フィルム1を作製した。
【0089】
図3は、実施例1により作製された導電性フィルムが有するメッシュパターンの構成の一例を示す平面図である。
図3(a)に示す導電性フィルム40は、単位パターンPが面内の直交する2方向に配列してなるメッシュパターン42を有する。
図3(b)は、
図3(a)に示す単位パターンPの拡大平面図である。
図3(b)に示すように、単位パターンPは、2本の平行な線分と2本の平行な線分が互いに直交してなる形状を有する。単位パターンPを構成する4本の線分のそれぞれが、黒色層、Pd含有層および銅めっき層からなる導電性細線20である。
各単位パターンPにおいて、平行な2本の線分の中心間の距離は300μmであった。即ち、各単位パターンPには、4本の導電性細線に囲まれており、1辺が300μmから導電性細線の線幅Waを差し引いた差分である正方形の非細線領域が形成されていた。
また、互いに隣接する単位パターンP同士の距離は15μmであった。即ち、それぞれが同一直線上にある、1つの単位パターンPの線分と、その単位パターンPと隣接する単位パターンPの線分とは、互いに15μm離間していた。
【0090】
<導電性細線および各層の線幅および厚さの測定>
得られた実施例1の導電性フィルムを切断して、各辺が導電性細線の幅方向に直交または垂直になるような1cm角の正方形のサンプルを作製した。得られたサンプルのメッシュパターンが形成されている表面に、イオンスパッタ装置を用いて厚さ40nmのプラチナコーティング層を蒸着した。
次いで、プラチナコーティング層が形成されたサンプルを、FIB-SEM装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Helios600i」)を用いて加速電圧30kVの条件でFIB加工を行うことにより、線幅方向および厚さ方向を含む平面に沿って切断し、厚さ100nmの切片を作製した。
得られた切片の断面に対して、EDS付きTEM装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Talos F200X S/TEM」、加速電圧200kV)を用いて元素分析を行い、導電性細線の線幅方向および厚さ方向を含む断面の元素マッピング画像(以下、「断面画像」とも記載する。)を得た。
【0091】
上記の方法で得られた断面画像におけるプラチナコーティング層の元素分布に基づいて、導電性細線の線幅の最大値および厚さの平均値をそれぞれ計測した。
また、上記の方法で得られた断面画像の元素分布に基づいて、黒色層、Pd含有層および金属めっき層を識別した。具体的には、Pdの元素分布においてPdが検出される領域をPd含有層とした。次いで、Pdの元素分布においてPdが存在せず、かつ、Pd含有層よりも透明基材側にある領域を黒色層とした。また、黒色層の領域は、Cの元素分布においてCが存在する領域とも一致していた。次いで、Cuの元素分布においてCuが存在する領域であって、かつ、Pdの元素分布においてPdが存在しない領域を金属めっき層とした。
上記の方法で求めた黒色層、Pd含有層および金属めっき層のそれぞれの線幅の測定について、1つの断面画像において、厚さ方向の位置によって各層の線幅が異なる場合、或いは、幅方向の位置によって各層の厚さが異なる場合、以下の方法により、各層の線幅の代表値および厚さの代表値を決定した。
Pd含有層を例に説明すると、上記断面画像のPd元素分布において、Pdが検出される領域の幅方向の最大距離を、Pd含有層の線幅の代表値とした。また、上記断面画像のPd元素分布において、Pdが検出される領域の全幅を端から順に10分割し、各分割領域の厚さ方向の距離を測定し、得られた10の測定値を算術平均して得られた平均値を、Pd含有層の厚さの代表値とした。
黒色層の線幅および厚さ、並びに、金属めっき層の線幅および厚さのそれぞれの代表値も、上記の測定方法に準じて測定した。
【0092】
上記の方法に従って、上記のプラチナコーティング層付きサンプルにおける10箇所の異なる位置における導電性細線の切片を作製し、得られた切片の断面画像から、導電性細線および導電性細線が有する各層の線幅および厚さを求めた。得られた10点の線幅の代表値、および、10点の厚さの代表値を算術平均することにより、導電性細線の線幅Waおよび厚さTa、黒色層の線幅W1および厚さT1、Pd含有層の線幅W2および厚さT2、並びに、金属めっき層の線幅W3および厚さT3を、それぞれ算出した。実施例1の導電性フィルム1において得られた各層の線幅および厚さを、後述する表1に記載する。
なお、導電性細線の線幅Waは、黒色層の線幅W1、Pd含有層の線幅W2、および、金属めっき層の線幅W3のうち最大値と同じであり、導電性細線の厚さTaは、黒色層の厚さT1、Pd含有層の厚さT2、および、金属めっき層の厚さT3の合計値と同じであった。
【0093】
[実施例2~7、24]
黒色層の線幅W1および厚さT1、Pd含有層の線幅W2および厚さT2、並びに、金属めっき層の線幅W3および厚さT3が後述する表1に記載の数値になるように、黒色形成工程により形成する黒色層の線幅、Pd含有層形成工程により形成するPd含有層の線幅W2、および、金属めっき層形成工程におけるめっき液の浸漬時間等を変更したこと以外は、実施例1に記載の方法に従って、実施例2~7及び24の導電性フィルムを作製した。
【0094】
[実施例8~12]
黒色層形成用組成物1の調製に用いたカーボンブラックに代えて、平均粒子径が後述する表1に記載の数値であるカーボンブラックを用いたこと以外は、実施例3に記載の方法に従って、実施例8~12の導電性フィルムを作製した。
実施例8~12においては、旭カーボン株式会社製「SB935」等として市販されているカーボンブラックを用いた。
【0095】
[実施例13~17]
黒色層に含まれるカーボンブラックの含有量が後述する表1に記載の数値になるように、黒色層形成用組成物に含まれるカーボンブラックの含有量を調整したこと以外は、実施例3に記載の方法に従って、実施例13~17の導電性フィルムを作製した。
【0096】
[実施例18~23]
黒色層の厚さT1が後述する表1に記載の数値になるように、黒色層形成工程により印刷される黒色層形成用組成物1の印刷層の厚さを調整したこと以外は、実施例3に記載の方法に従って、実施例18~23の導電性フィルムを作製した。
【0097】
[比較例1]
黒色層形成工程を実施せず、Pd含有層形成工程において、パターン状のPd含有層を透明基材上に直接形成したこと以外は、実施例1に記載の方法に従って、比較例1の導電性フィルムを作製した。
【0098】
[比較例2]
カーボンブラックを使用せず、カーボンブラックを含まない黒色層形成用組成物を調製したこと以外は、実施例1に記載の方法に従って、比較例2の導電性フィルムを作製した。
【0099】
[評価]
各実施例および各比較例の導電性フィルムについて、以下の手順で、耐久試験を行った後、導電性細線の密着性を評価した。
【0100】
まず、導電性フィルムを、縦50mm、横50mmのサイズに切り出してサンプルを作製した。得られたサンプルを、ブラックパネルを備える実験槽の内部にて、JIS B 7753(2007)に記載の方法に準拠して、下記の条件で評価した。
・サンシャインカーボンアーク
・照度255W/m2(300~700nm)
・試験時間1,083h、(78.5W/m2)
・ブラックパネル温度:63℃
・槽内湿度:55%
【0101】
次いで、耐久試験を実施したサンプルの底面(導電性フィルムの上記光源側とは反対側の表面)に、3M社製テープ「610」(幅25.4mm)を長さ1cm以上にわたり接着した後、接着したテープをサンプルの底面から剥離した。
テープが接着していた領域に全体が含まれていた単位パターンP(換言すると、全ての導電性細線がテープに接着していた単位パターンP)のそれぞれについて、導電性細線の剥離箇所の有無を光学顕微鏡を用いて確認した。テープが接着していた領域に全体が含まれていた単位パターンPの総数に対する、導電性細線が1箇所でも剥離していた単位パターンPの個数の比率(単位パターンPの剥離率)を、下記計算式より算出した。
(剥離した単位パターンPの個数)/(単位パターンPの総数)×100(%)
【0102】
算出された単位パターンPの剥離率から、下記基準に基づいて、各実施例または各比較例の導電性フィルムにおける耐久試験後の導電性細線の密着性を評価した。
(評価基準)
A:剥離率が0%以上20%未満
B:剥離率が20%以上40%未満
C:剥離率が40%以上60%未満
D:剥離率が60%以上100%以下
【0103】
下記表1に、各例で製造された導電性フィルムの測定結果および評価結果をまとめて示す。
表中、「W3/W1」欄は、黒色層の線幅W1(μm)に対する金属めっき層の線幅W3(μm)の比率を示す。
【0104】
【0105】
上記表に示す結果から、各実施例で作製された本発明の導電性フィルムは、黒色層を有さない比較例1の導電性フィルム、および、カーボンブラックを有さない中間層を有する比較例2の導電性フィルムに比較して、耐久試験後の導電性細線の密着性が優れる導電性フィルムを提供できることが確認された。