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特開2024-133980微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置
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  • 特開-微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133980
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/12 20060101AFI20240926BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240926BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20240926BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C12N1/12 A
C12M1/00 E
C12M1/04
C12N1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044029
(22)【出願日】2023-03-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム「低CO2と低環境負荷を実現する微細藻バイオリファイナリーの創出」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】安保 貴永
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029DB16
4B029DF04
4B065AA83X
4B065BC06
4B065BC14
(57)【要約】
【課題】微細藻類の培養に適した供給量となるように二酸化炭素の供給量を制御できる微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置の提供。
【解決手段】本発明の微細藻類の培養方法は、COを透過する非多孔質膜を用い培養液SにCOを含むガス(G1)を供給するガス供給工程、特定のガス(G2)を非多孔質膜から排出するガス排出工程、ガス(G1)及びガス(G2)中のCO濃度及びO濃度の少なくとも一方を測定する測定工程、測定結果に基づきガス(G1)の供給量を調節する調節工程を有する。本発明の微細藻類の培養装置1は、培養槽10、非多孔質膜を用い培養液Sにガス(G1)を供給するガス供給手段20、非多孔質膜からガス(G2)を排出する排出手段40、ガス(G1)及びガス(G2)中のCO濃度及びO濃度の少なくとも一方を測定する測定手段60,70、測定結果に基づきガス(G1)の供給量を調節する調節手段30を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細藻類を含む培養液に浸漬された、二酸化炭素を透過する非多孔質膜を用いて、前記培養液に二酸化炭素を含むガス(G1)を供給するガス供給工程と、
ガス(G2)を前記非多孔質膜から排出するガス排出工程と、
前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する第一の測定工程と、
前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する第二の測定工程と、
前記第一の測定工程及び前記第二の測定工程の測定結果に基づき、前記ガス供給工程における前記培養液への前記ガス(G1)の供給量を調節する調節工程と、を有し、
前記ガス(G2)は、前記非多孔質膜に供給された前記ガス(G1)のうち、前記非多孔質膜を透過しないガスと、前記培養液中に溶存しているガスのうち、前記非多孔質膜を透過したガスとを含む、微細藻類の培養方法。
【請求項2】
前記調節工程では、前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度と前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合、又は、前記ガス(G1)中の酸素濃度と前記ガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合は、前記培養液への前記ガス(G1)のガス供給量を減らす、請求項1に記載の培養方法。
【請求項3】
前記調節工程では、前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度と前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合、又は、前記ガス(G1)中の酸素濃度と前記ガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合は、前記培養液への前記ガス(G1)のガス供給量を増やす、請求項1に記載の培養方法。
【請求項4】
微細藻類を含む培養液を収容する培養槽と、
前記培養液に浸漬された、二酸化炭素を透過する非多孔質膜を用いて、前記培養液に二酸化炭素を含むガス(G1)を供給するガス供給手段と、
ガス(G2)を前記非多孔質膜から排出する排出手段と、
前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する第一の測定手段と、
前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する第二の測定手段と、
前記第一の測定手段及び前記第二の測定手段による測定結果に基づき、前記ガス供給手段における前記培養液への前記ガス(G1)の供給量を調節する調節手段と、を備え、
前記ガス(G2)は、前記非多孔質膜に供給された前記ガス(G1)のうち、前記非多孔質膜を透過しないガスと、前記培養液中に溶存しているガスのうち、前記非多孔質膜を透過したガスとを含む、微細藻類の培養装置。
【請求項5】
前記調節手段では、前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度と前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合、又は、前記ガス(G1)中の酸素濃度と前記ガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合は、前記培養液への前記ガス(G1)のガス供給量を減らす、請求項4に記載の培養装置。
【請求項6】
前記調節手段では、前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度と前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合、又は、前記ガス(G1)中の酸素濃度と前記ガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合は、前記培養液への前記ガス(G1)のガス供給量を増やす、請求項4に記載の培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微細藻類は他の植物に比べて増殖速度が速く、生物体全体を利用できることから、近年、二酸化炭素の固定や有用物質の生産等の分野で注目されている。具体的に、光エネルギーにより二酸化炭素を固定化し、バイオ燃料に変換する能力を有する微細藻類の利用に対する期待が高まっており、微細藻類の培養について様々な研究が行われている。
【0003】
微細藻類の培養は、培養液に二酸化炭素を気体の状態で供給して行われるのが一般的である。
しかし、二酸化炭素の供給量が過剰となると、微細藻類が消費しきれなかった余剰な二酸化炭素は培養液から大気へ拡散されることとなり、地球温暖化の原因となる。そのため、最適な量の二酸化炭素を培養液に供給することが求められている。
また、培養液中の溶存酸素濃度が高すぎると培養が妨げられることがあるため、最適な溶存酸素濃度の培養液中で微細藻類を培養することが求められる。
【0004】
ガス濃度を制御する方法として、例えば特許文献1には、分離膜を用いて原料ガスを、酸素濃度及び二酸化炭素濃度の少なくとも一方が増加した富裕化ガスと、減少した貧化ガスとに分離し、富裕化ガス又は貧化ガスを吸収空間に連続的に供給するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-48259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、微細藻類の培養に適した供給量となるように二酸化炭素の供給量を制御することは困難である。
本発明は、微細藻類の培養に適した供給量となるように二酸化炭素の供給量を制御できる微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、非多孔質膜を用いて二酸化炭素を培養液に供給し、かつ、非多孔質膜に供給されるガス及び非多孔質膜から排出されるガス中の、二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定し、測定結果に基づいて二酸化炭素の供給量を調節することで、微細藻類の培養の進行状態をモニタリングでき、微細藻類の培養に適した供給量となるように二酸化炭素の供給量を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は下記の態様を有する。
[1] 微細藻類を含む培養液に浸漬された、二酸化炭素を透過する非多孔質膜を用いて、前記培養液に二酸化炭素を含むガス(G1)を供給するガス供給工程と、
ガス(G2)を前記非多孔質膜から排出するガス排出工程と、
前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する第一の測定工程と、
前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する第二の測定工程と、
前記第一の測定工程及び前記第二の測定工程の測定結果に基づき、前記ガス供給工程における前記培養液への前記ガス(G1)の供給量を調節する調節工程と、を有し、
前記ガス(G2)は、前記非多孔質膜に供給された前記ガス(G1)のうち、前記非多孔質膜を透過しないガスと、前記培養液中に溶存しているガスのうち、前記非多孔質膜を透過したガスとを含む、微細藻類の培養方法。
[2] 前記調節工程では、前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度と前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合、又は、前記ガス(G1)中の酸素濃度と前記ガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合は、前記培養液への前記ガス(G1)のガス供給量を減らす、前記[1]の微細藻類の培養方法。
[3] 前記調節工程では、前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度と前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合、又は、前記ガス(G1)中の酸素濃度と前記ガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合は、前記培養液への前記ガス(G1)のガス供給量を増やす、前記[1]の微細藻類の培養方法。
【0009】
[4] 微細藻類を含む培養液を収容する培養槽と、
前記培養液に浸漬された、二酸化炭素を透過する非多孔質膜を用いて、前記培養液に二酸化炭素を含むガス(G1)を供給するガス供給手段と、
ガス(G2)を前記非多孔質膜から排出する排出手段と、
前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する第一の測定手段と、
前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する第二の測定手段と、
前記第一の測定手段及び前記第二の測定手段による測定結果に基づき、前記ガス供給手段における前記培養液への前記ガス(G1)の供給量を調節する調節手段と、を備え、
前記ガス(G2)は、前記非多孔質膜に供給された前記ガス(G1)のうち、前記非多孔質膜を透過しないガスと、前記培養液中に溶存しているガスのうち、前記非多孔質膜を透過したガスとを含む、微細藻類の培養装置。
[5] 前記調節手段では、前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度と前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合、又は、前記ガス(G1)中の酸素濃度と前記ガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合は、前記培養液への前記ガス(G1)のガス供給量を減らす、前記[4]の微細藻類の培養装置。
[6] 前記調節手段では、前記ガス(G1)中の二酸化炭素濃度と前記ガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合、又は、前記ガス(G1)中の酸素濃度と前記ガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合は、前記培養液への前記ガス(G1)のガス供給量を増やす、前記[4]の微細藻類の培養装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、微細藻類の培養に適した供給量となるように二酸化炭素の供給量を制御できる微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の微細藻類の培養装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置の一実施形態を挙げ、図1を適宜参照しながら詳述する。
なお、以下の説明で用いる各図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
本発明において、微細藻類とは、光合成機能を有する単細胞生物であり、体長(細胞の長径)が100μm以下のものをいう。
本発明で培養される微細藻類としては特に制限されないが、例えばユーグレナ属、コッコミクサ属、ナンノクロロプシス属、マイクロクロロプシス属、藍藻類、原核緑藻類、紅藻類、灰色藻類、クリプト藻類、渦鞭毛藻類、黄金色藻類、珪藻類、褐藻類、黄緑藻類、ハプト藻類、ラフィド藻類(緑色鞭藻類)、クロララクニオン藻類、ミドリムシ藻類(ユーグレナ)、プラシノ藻類、緑藻類、車軸藻類が挙げられる。これらの中でも、多くの栄養素を含み、食品、化粧品等に好適に利用できる観点から、ユーグレナ属、コッコミクサ属、ナンノクロロプシス属、マイクロクロロプシス属が好ましい。
【0014】
[微細藻類の培養装置]
図1に、本発明の微細藻類の培養装置の一例を示す。
図1に示す微細藻類の培養装置1は、培養槽10と、ガス供給手段20と、調節手段30と、排出手段40と、循環手段50と、第一の測定手段60と、第二の測定手段70とを備える。
【0015】
培養槽10は、微細藻類を含む培養液Sを収容する槽である。
培養槽10としては、微細藻類の培養を閉鎖系で行う場合は閉鎖系の培養槽を用い、微細藻類の培養を開放系で行う場合は開放系の培養槽を用いればよい。
ここで、「閉鎖系」とは、培養槽内の環境が培養槽の外の環境と遮断されていることを意味する。培養液Sに供給された二酸化炭素が水面から気相へ放出されにくい点、培養槽の外の環境に微細藻類の培養が影響を受けにくい点、ゴミ等の異物混入を防止できる点では、閉鎖系の培養槽が好ましい。
【0016】
閉鎖系の培養槽としては、例えばフォトバイオリアクター型水槽が挙げられる。フォトバイオリアクター型水槽には、半密閉水槽と、密閉水槽があり、具体的には平板型水槽、チューブ型水槽、太陽光集光型水槽、内部照射型水槽が挙げられる。
開放系の培養槽としては、例えばオープンポンド型水槽が挙げられる。オープンポンド型水槽としては、具体的にはレースウェイ型水槽が挙げられる。また、培養槽10に代えて、池等で微細藻類の培養を行ってもよい。
また、培養槽10として、微細藻類の培養を開放系と密閉系の両方で行うことができる、ハイブリッド水槽を用いてもよい。
【0017】
培養槽10に収容される培養液Sとしては、培養する微細藻類の種類に応じて適宜、決定すればよい。
【0018】
ガス供給手段20は、培養液Sに浸漬された、二酸化炭素を透過する非多孔質膜を用いて、培養液Sに二酸化炭素を含むガス(G1)を供給する手段である。
ガス(G1)としては、二酸化炭素を99.9体積%以上含む高純度ガス(高純度二酸化炭素ガス)、二酸化炭素と二酸化炭素以外のガス(以下、「他のガス」ともいう。)とを含む混合ガス等が挙げられる。
他のガスとしては、酸素、窒素、水素、亜硫酸ガス、亜硝酸ガス、硝酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
混合ガスとして、石炭火力発電所、ごみ焼却場、セメント工場、製鉄所等の化石燃料を使用する施設等から排出される排ガスを用いてもよい。排ガスを用いれば、温室効果ガスの排出を軽減できる。
【0019】
この例のガス供給手段20は、二酸化炭素を透過する非多孔質膜(図示略)を備えた膜モジュール21と、非多孔質膜にガス(G1)を供給するガス供給配管22とを有する。
ガス供給手段20では、非多孔質膜を透過した二酸化炭素を培養液Sに溶解させて供給する。
【0020】
非多孔質膜は、膜モジュール21の状態で培養液Sに浸漬している。
膜モジュール21の形態としては特に制限されないが、例えば、複数の非多孔質膜同士が一定間隔離れて配置されたシート状物と、このシート状物を支持する一対のハウジングとを備えたものが挙げられる。なお、非多孔質膜が複数束ねられて非多孔質膜束を形成し、複数の非多孔質膜束同士が一定間隔離れて配置されてシート状物を形成していてもよい。
【0021】
非多孔質膜は、ガス(G1)から二酸化炭素を分離しつつ、ガス(G1)から分離した二酸化炭素を培養液S中に溶存させつつ供給するものである。
非多孔質膜としては、二酸化炭素を透過できるものであれば特に制限されない。また、高分子膜であってもよいし、セラミックス、金属等の無機系材料からなる膜であってもよいが、加工性とコストの観点で高分子膜が好ましく、高分子材料、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂から選ばれる1種以上を含む材料からなる高分子膜がより好ましい。
非多孔質膜には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃化剤等の添加物が添加されていてもよい。
【0022】
非多孔質膜の平均膜厚は、0.5~1.3μmが好ましく、0.7~1.2μmがより好ましい。
なお、本明細書において「平均膜厚」とは、非多孔質膜等の測定サンプルの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、この画像を解析して測定サンプルの膜厚を複数箇所(5箇所以上)で測定し、その平均値を求めたものである。
【0023】
非多孔質膜の形態としては特に制限されず、中空糸膜、平膜等、用途に応じた形状とすることができる。中でも、高比表面積を有する中空糸膜が好ましい。
また、非多孔質膜は、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。複層構造の具体例としては、多孔質である支持層(多孔質層)と非多孔質である均質層(非多孔質層)を有する複合膜が挙げられる。この複合膜は、均質層と支持層との二層複合膜でもよく、均質層が2つの支持層で挟まれた三層複合膜でもよい。また、均質層及び支持層の数は前記のものには限定されず、それらの合計が4層以上の複合膜であってもよい。
非多孔質膜としては、ガス選択透過性を有する、具体的には二酸化炭素を透過する三層複合膜が好ましい。
【0024】
均質層は、非多孔質であり、二酸化炭素を透過する層である。
均質層を構成するポリマーとしては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン重合体等をハードセグメントとし、ブタジエン重合体、エチレン-ブチレン共重合体、イソプレン重合体又はエチレン-プロピレン共重合体等をソフトセグメントとするブロック共重合体;スチレンと、ブタジエン、エチレン-ブチレン、イソプレン又はエチレン-プロピレンとのランダム共重合体が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンのみを用いて得られるポリマーでもよく、オレフィンと他のモノマーとのコポリマーでもよい。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン等が挙げられる。
均質層を構成するポリマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィン系樹脂とをブレンドした重合体が好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィン系樹脂との質量比は、スチレン系熱可塑性エラストマー:ポリオレフィン系樹脂=5:95~99:1が好ましく、50:50~99:1がより好ましく、70:30~95:5がさらに好ましい。
【0025】
均質層には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃化剤等の添加物が添加されていてもよい。
均質層の平均膜厚は、0.5~1.3μmが好ましく、0.7~1.2μmがより好ましい。
【0026】
支持層は、多孔質であり、均質層を支持する層であり、かつ、二酸化炭素を透過する層である。
支持層を構成するポリマーとしては、例えばポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンのみを用いて得られるポリマーでもよく、オレフィンと他のモノマーとのコポリマーでもよい。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、高密度ポリエチレン、高立体規則性ポリプロピレンが挙げられる。
【0027】
支持層には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、着色剤、難燃化剤等の添加物が添加されていてもよい。
支持層の平均膜厚は、10~200μmが好ましく、15~100μmがより好ましい。
支持層の空孔率は、支持層全体(100体積%)に対して、30~80体積%が好ましく、20~60体積%がより好ましい。
支持層の細孔の大きさは特に限定されず、十分な二酸化炭素の透過性と機械的強度が満足される大きさであればよい。
【0028】
ガス供給配管22は、非多孔質膜にガス(G1)を供給する配管である。
ガス供給配管22は、膜モジュール21の一方のハウジング(図示略)に接続されている。ガス(G1)はハウジングを介して非多孔質膜に供給される。ガス(G1)に含まれる二酸化炭素は、非多孔質膜にてガス(G1)から分離され、非多孔質膜を透過して培養液S中に拡散される。非多孔質膜は培養槽10に収容された培養液Sに浸漬しているので、非多孔質膜を透過した二酸化炭素は直接、培養液S中に拡散される。その際、気泡が発生しにくいので、気体状の二酸化炭素が培養液Sに溶解しやすい。すなわち、二酸化炭素は溶存二酸化炭素として培養液Sに供給される。
【0029】
排出手段40は、ガス(G2)を非多孔質膜から排出する手段である。
ガス(G2)は、非多孔質膜に供給されたガス(G1)のうち、ガス(G1)から分離されない、すなわち、非多孔質膜を透過しないガス(以下、「ガス(G21)」ともいう。)と、培養液S中に溶存しているガスのうち、非多孔質膜を透過したガス(以下、「ガス(G22)」ともいう。)とを含む。
ガス(G1)が混合ガスであり、例えば混合ガスが窒素や酸素を含む場合、窒素や酸素は二酸化炭素に比べると非多孔質膜を透過しにくいものの、窒素や酸素の一部は混合ガスから分離され、非多孔質膜を透過することがある。混合ガスから分離されず、非多孔質膜を透過しなかった窒素や酸素が、ガス(G1)のうちのガス(G21)に相当する。
培養液S中に溶存しているガスのうちのガス(G22)としては、例えば微細藻類の光合成によって培養液S中に発生し培養液S中に溶存している酸素、培養液S中に過剰に溶存している二酸化炭素等が挙げられる。
また、高純度ガスや混合ガスに不純物が含まれている場合、不純物もガス(G2)と共に非多孔質膜から排出される。
さらに、非多孔質膜に供給されるガス(G1)に含まれる水分が、非多孔質膜中で凝縮した凝縮水もガス(G2)と共に非多孔質膜から排出される。
【0030】
排出手段40は、ガス排出配管41を備える。
ガス排出配管41は、非多孔質膜からガス(G2)を排出する配管である。
ガス排出配管41は、膜モジュール21の他方のハウジング(図示略)に接続されている。ガス(G2)はハウジングを介して非多孔質膜から排出される。
ガス排出配管41には、配管の開閉によりガス(G2)の排出量を調節する調節手段42が設けられていてもよい。調節手段42としては、例えば、配管の開閉を行う開閉機構が挙げられ、具体的には、電磁弁、電動弁、エアー駆動弁、手動弁等の弁が挙げられる。
なお、本明細書において、ガス(G2)の排出量を調節する調節手段42を「第二の調節手段」ともいう。
【0031】
第一の測定手段60は、ガス(G1)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する手段である。
この例の第一の測定手段60はガス供給配管22に取り付けられており、ガス供給配管22を通過するガス(G1)、すなわち非多孔質膜に供給される前のガス(G1)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する。
第一の測定手段60としては、ガス中の二酸化炭素濃度又は酸素の濃度を測定できるものであれば特に限定されないが、例えば二酸化炭素濃度計、酸素濃度計等のガス分析計等が挙げられる。
【0032】
第二の測定手段70は、ガス(G2)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する手段である。
この例の第二の測定手段70はガス排出配管41に取り付けられており、ガス排出配管41を通過するガス(G2)、すなわち非多孔質膜から排出されたガス(G2)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する。
第二の測定手段70としては、ガス中の二酸化炭素濃度又は酸素の濃度を測定できるものであれば特に限定されないが、例えば二酸化炭素濃度計、酸素濃度計等のガス分析計等が挙げられる。
【0033】
調節手段30は、第一の測定手段60及び第二の測定手段70による同様なガス成分の測定結果に基づき、ガス供給手段20における培養液Sへのガス(G1)の供給量を調節する手段である。
なお、本明細書において、ガス(G1)の供給量を調節する調節手段30を「第一の調節手段」ともいう。
【0034】
調節手段30では、ガス(G1)中の二酸化炭素濃度とガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合、又は、ガス(G1)中の酸素濃度とガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合は、培養液Sへのガス(G1)のガス供給量を減らす。
また、調節手段30では、ガス(G1)中の二酸化炭素濃度とガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合、又は、ガス(G1)中の酸素濃度とガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合は、培養液Sへのガス(G1)のガス供給量を増やす。
【0035】
調節手段30としては、例えばガス供給配管22に設けられた、配管の開閉を行う開閉機構が挙げられる。開閉機構としては、例えば電磁弁、電動弁、エアー駆動弁、手動弁等の弁が挙げられる。
【0036】
循環手段50は、培養液Sの一部を培養槽10から抜き出し、抜き出した培養液Sを再度、培養槽10へ供給する手段である。
循環手段50により、培養槽10中の培養液Sが循環する。培養液Sが循環する際に生じる水流により、培養液Sは撹拌される。培養液Sを循環させて撹拌する方法は、外部から力を加えて培養液Sを撹拌する方法、例えば撹拌翼を用いて培養液Sを撹拌する方法に比べて、培養液S中の溶存酸素が大気へ拡散されるのを抑制できる。
【0037】
循環手段50は、循環配管51と、ポンプ52とを備える。
循環配管51は、培養液Sを循環させる配管である。
この例の循環配管51は、一端が培養槽10の壁に設けられた排出口11に接続され、他端が培養槽10の壁に設けられた供給口12に接続されており、培養液Sは排出口11から供給口12まで循環する。
ポンプ52は、循環配管51の途中に設けられている。
【0038】
[微細藻類の培養方法]
以下、本発明の第一の態様の微細藻類の培養方法の一例について説明する。なお、以下に説明する微細藻類の培養方法は、図1に示す微細藻類の培養装置1を用いた微細藻類の培養方法の一例である。
本実施形態の微細藻類の培養方法は、以下に示すガス供給工程と、ガス排出工程と、第一の測定工程と、第二の測定工程と、調節工程と、循環工程とを有する。
【0039】
ガス供給工程は、微細藻類を含む培養液Sに浸漬された、二酸化炭素を透過する非多孔質膜を用いて、培養液Sに二酸化炭素を含むガス(G1)を供給する工程である。
本実施形態では、培養液Sに浸漬された、膜モジュール21に備わる非多孔質膜にガス供給配管22からガス(G1)を供給し、非多孔質膜を透過した二酸化炭素を培養液Sに溶解させて供給する。非多孔質膜は培養槽10に収容された培養液Sに浸漬しているので、非多孔質膜を透過した二酸化炭素は直接、培養液S中に拡散される。その際、気泡が発生しにくいので、気体状の二酸化炭素が培養液Sに溶解しやすい。加えて、気泡が発生しにくいので、培養液S中の溶存酸素が大気へ拡散されるのを抑制でき、培養液S中の溶存酸素濃度を調整しやすい。
【0040】
ガス排出工程は、ガス(G2)を非多孔質膜から排出する工程である。
高純度ガスや混合ガスに不純物が含まれている場合、不純物もガス(G2)と共に非多孔質膜から排出される。
また、非多孔質膜に供給されるガス(G1)に含まれる水分が、非多孔質膜中で凝縮した凝縮水もガス(G2)と共に非多孔質膜から排出される。
これらガス(G2)、不純物、凝縮水は、排出手段40のガス排出配管41を通過して培養槽10の系外へと排出される。このとき、調節手段42によりガス(G2)等の排出量を調節してもよい。
【0041】
第一の測定工程は、ガス(G1)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する工程である。
本実施形態では、ガス供給配管22に取り付けられた第一の測定手段60により、ガス供給配管22を通過するガス(G1)、すなわち非多孔質膜に供給される前のガス(G1)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する。
【0042】
第二の測定工程は、ガス(G2)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する工程である。
本実施形態では、ガス排出配管41に取り付けられた第二の測定手段70により、ガス排出配管41を通過するガス(G2)、すなわち非多孔質膜から排出されたガス(G2)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定する。
【0043】
調節工程は、第一の測定工程及び第二の測定工程の同様なガス成分の測定結果に基づき、ガス供給工程における培養液Sへのガス(G1)の供給量を調節する工程である。
具体的には、ガス(G1)中の二酸化炭素濃度とガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合、又は、ガス(G1)中の酸素濃度とガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合は、調節手段30により培養液Sへのガス(G1)の供給量を減らす。
一方、ガス(G1)中の二酸化炭素濃度とガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を下回る場合、又は、ガス(G1)中の酸素濃度とガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を上回る場合は、調節手段30により培養液Sへのガス(G1)のガス供給量を増やす。
【0044】
上述したように、ガス(G1)中の二酸化炭素は非多孔質膜を透過し、培養液S中に溶解した状態で培養液S中に拡散される。よって、ガス(G1)中の二酸化炭素濃度の値からガス(G2)中の二酸化炭素濃度の値を差し引いた値は、二酸化炭素が非多孔質膜を透過し培養液S中に溶解した量、すなわち培養液Sの溶存二酸化炭素濃度を示す。ガス(G1)中の二酸化炭素濃度とガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を上回るということは、培養液S中の溶存二酸化炭素濃度が高く、ガス(G1)の供給量が適切な量よりも多いことを意味する。逆に、ガス(G1)中の二酸化炭素濃度とガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が閾値を下回るということは、培養液S中の溶存二酸化炭素濃度が低く、ガス(G1)の供給量が適切な量よりも少ないことを意味する。
よって、ガス(G1)中の二酸化炭素濃度とガス(G2)中の二酸化炭素濃度との差の絶対値が、閾値を上回る場合はガス(G1)の供給量を減らし、閾値を下回る場合はガス(G1)のガス供給量を増やす。
【0045】
ガス(G2)中の酸素濃度の値からガス(G1)中の酸素濃度の値を差し引いた値により、光合成の状況を把握できる。
なお、上述したように、酸素は二酸化炭素に比べると非多孔質膜を透過しにくいものの、酸素も非多孔質膜を透過することがあり、温度や濃度等の条件により平衡を保つように物質移動が起こる。培養液S中に溶存酸素が高濃度に存在する場合、すなわち、光合成が活発に行われている場合は、溶存酸素は培養液S中から非多孔質膜の中に透過しやすくなる。一方、培養液S中の溶存酸素濃度が低い場合、ガス(G1)中に酸素が含まれていると、培養液S側に酸素が透過しやすくなる。
よって、ガス(G2)中の酸素濃度の値からガス(G1)中の酸素濃度の値を差し引いた値が、大きくなれば光合成が良好であり、小さくなれば光合成が不良であると判断することが可能である。
【0046】
ガス(G2)中の酸素濃度とガス(G1)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を下回るということは、培養液S中の溶存酸素濃度が低い、すなわち、光合成が進行しておらず、ガス(G1)の供給量が適切な量よりも多いことを意味する。逆に、ガス(G2)中の酸素濃度とガス(G1)中の酸素濃度との差の絶対値が閾値を上回るということは、培養液S中の溶存酸素濃度が高い、すなわち、光合成が進行しており、ガス(G1)の供給量が適切な量よりも少ないことを意味する。
よって、ガス(G1)中の酸素濃度とガス(G2)中の酸素濃度との差の絶対値が、閾値を下回る場合はガス(G1)の供給量を減らし、閾値を上回る場合はガス(G1)のガス供給量を増やす。
【0047】
循環工程は、培養液Sの一部を培養槽10から抜き出し、抜き出した培養液Sを再度、培養槽10へ供給する工程である。
循環工程では、ポンプ52を稼働させて、培養槽10の壁に設けられた排出口11から培養液Sの一部を抜き出し、抜き出した培養液Sを再度、培養槽10へ供給し、培養液Sを循環させる。培養液Sが循環する際に生じる水流により、培養液Sは撹拌される。培養液Sが撹拌されることで、培養液Sに供給された二酸化炭素を培養液S中により均一に行きわたらせることができる。
【0048】
微細藻類の培養は、閉鎖系で行ってもよいし、開放系で行ってもよい。培養液Sに供給された二酸化炭素が水面から気相へ放出されにくい点、培養槽10の外の環境に微細藻類の培養が影響を受けにくい点、ゴミ等の異物混入を防止できる点では、微細藻類の培養を閉鎖系で行うことが好ましい。
培養温度は4~40℃が好ましく、15~35℃がより好ましい。
微細藻類に照射する光は太陽光でもよいし、人工光でもよいし、これらを併用してもよい。
【0049】
[作用効果]
以上説明した、本発明の微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置では、培養液に浸漬された非多孔質膜を用いて二酸化炭素を培養液に供給するに際して、非多孔質膜に供給されるガス(G1)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方と、非多孔質膜から排出されるガス(G2)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方とを測定するので、その測定結果から培養液中の溶存二酸化炭素濃度又は溶存酸素濃度を精度よく把握でき、微細藻類による光合成の程度、すなわち培養の進行状態をモニタリングできる。加えて、測定結果に応じて培養液へのガス(G1)の供給量を調節するので、微細藻類の培養に適した供給量となるように二酸化炭素の供給量を制御できる。
なお、溶存二酸化炭素濃度又は溶存酸素濃度は大気解放された分は若干あるが、二酸化炭素の供給量、培養温度等の培養条件を適宜調整すれば、培養液中の溶存二酸化炭素濃度又は溶存酸素濃度を精度よく把握できると考えられる。
【0050】
ところで、培養の進行状態のモニタリングは、培養液中の溶存二酸化炭素濃度又は溶存酸素濃度を測定することでも可能であるが、培養槽が大きくなるほど測定精度が低下しやすい。また、培養液から排出されるガスを捕集して二酸化炭素濃度又は酸素濃度を測定することでも培養の進行状態をモニタリングできるが、ガスの捕集は困難である。
対して、本発明であれば、簡便な方法で、培養液中の溶存二酸化炭素濃度又は溶存酸素濃度を精度よく把握でき、容易に培養の進行状態をモニタリングできる。
本発明により培養された微細藻類は、例えば食品、化粧品、バイオ燃料等に利用される。
【0051】
なお、本発明の微細藻類の培養方法及び微細藻類の培養装置は、上述した実施形態に限定されない。
図示例の微細藻類の培養装置1は、1つの培養槽10を備えているが、複数の培養槽を設置して微細藻類を同時に培養してもよい。
複数の培養槽を設置する場合、各培養槽では、同じ種類の微細藻類を培養してもよいし、異なる種類の微細藻類を培養してもよい。また、少なくとも1つの培養槽では培養を閉鎖系で行い、残りの培養槽では培養を開放系で行ってもよい。
また、図示例の微細藻類の培養装置1では、1つの培養槽10に、1つの膜モジュール21が浸漬しているが、培養槽10の大きさに応じて、複数の膜モジュール21を浸漬させてもよい。複数の膜モジュール21を浸漬させる場合、各膜モジュール21に備わる非多孔質膜に供給されるガス(G1)の供給量を、上述した方法により調節することが好ましい。
【0052】
また、上述した実施形態では、ガス供給配管22を通過するガス(G1)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定しているが、ガス供給配管22を通過する前、すなわち、ガス供給配管22に供給される前のガス(G1)、例えばガスタンクやガスボンベ等の容器に収容された状態のガス(G1)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定してもよい。
また、上述した実施形態では、ガス排出配管41を通過するガス(G2)中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定しているが、ガス排出配管41を通過した後、ガス排出配管41から放出されたガス(G2)を回収して、二酸化炭素濃度及び酸素濃度の少なくとも一方を測定してもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、循環手段50を用いて培養液Sを循環させ、そのときに発生する水流で培養液Sを撹拌しているが、培養液Sに刺激を与えにくく、培養液S中の溶存二酸化炭素及び溶存酸素が大気へ拡散しにくい程度であれば、循環手段50に代えてスターラー等の撹拌手段を用いて培養液Sを撹拌してもよい。
【0054】
さらに、微細藻類の培養装置は、培養液へ照射される光の光合成光量子束密度を制御する光照射制御手段を備えていてもよい。光照射制御手段としては、寒冷紗、遮光ネット、遮光フィルム;太陽光を効率的に集める装置(太陽光採光装置)等が挙げられる。
また、微細藻類の培養装置は、培養液のpHを測定するpH計をさらに備えていてもよい。
また、微細藻類の培養装置は、培養液S中の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素計(DO計)をさらに備えていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 微細藻類の培養装置
10 培養槽
11 排出口
12 供給口
20 ガス供給手段
21 膜モジュール
22 ガス供給配管
30 調節手段(第一の調節手段)
40 排出手段
41 ガス排出配管
42 調節手段(第二の調節手段)
50 循環手段
51 循環配管
52 ポンプ
60 第一の測定手段
70 第二の測定手段
S 培養液
図1