(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133995
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】廃棄物の分別方法及び分別装置、並びに、セメントクリンカの製造方法及び製造設備
(51)【国際特許分類】
B09B 3/30 20220101AFI20240926BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20240926BHJP
C10L 5/48 20060101ALI20240926BHJP
G01N 33/44 20060101ALI20240926BHJP
G01N 21/3563 20140101ALI20240926BHJP
C04B 7/44 20060101ALI20240926BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20240926BHJP
【FI】
B09B3/30
B09B5/00 M ZAB
C10L5/48
G01N33/44
G01N21/3563
C04B7/44
G01N21/359
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044053
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】古賀 明宏
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 知昭
(72)【発明者】
【氏名】上田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】丸屋 英二
【テーマコード(参考)】
2G059
4D004
4G112
4H015
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB20
2G059CC20
2G059EE01
2G059EE12
2G059GG10
2G059HH01
2G059JJ01
2G059KK04
2G059MM12
4D004BA03
4D004CA07
4D004DA16
4D004DA17
4G112KA03
4H015AA01
4H015AB01
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】燃料用の廃棄物がプラスチック以外の成分を含んでいても、燃焼装置の安定運転を継続することが可能な廃棄物の分別方法を提供すること。
【解決手段】プラスチックを含む燃料用の廃棄物の分別方法であって、第1廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと、第1廃棄物の発熱量の実測値Y’とを用いて、発熱量を予測するための検量線を作成する検量線作成工程と、第2廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる第2廃棄物の特徴量Xと検量線とを用いて、第2廃棄物の発熱量の予測値Yを得る予測工程と、予測値Yに基づいて、第2廃棄物を、第1分別廃棄物と第1分別廃棄物よりも発熱量の平均値が低い第2分別廃棄物とを含む複数の廃棄物群に分別する分別工程と、を有する、廃棄物の分別方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを含む燃料用の廃棄物の分別方法であって、
第1廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと、前記第1廃棄物の発熱量の実測値Y’とを用いて、発熱量を予測するための検量線を作成する検量線作成工程と、
第2廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと前記検量線とを用いて、前記第2廃棄物の発熱量の予測値Yを得る予測工程と、
前記予測値Yに基づいて、前記第2廃棄物を、第1分別廃棄物と前記第1分別廃棄物よりも発熱量の平均値が低い第2分別廃棄物とを含む複数の廃棄物群に分別する分別工程と、を有する、廃棄物の分別方法。
【請求項2】
前記廃棄物は、前記プラスチックと、紙、木屑、石、ガラス、金属、布及び皮からなる群より選ばれる少なくとも一つと、を含む、請求項1に記載の廃棄物の分別方法。
【請求項3】
前記特徴量Xは、1100~1700nmの波長範囲に含まれる近赤外線吸収強度を含む、請求項1に記載の廃棄物の分別方法。
【請求項4】
前記特徴量Xは、複数の近赤外線吸収情報を用いて加減乗除のいずれかを行うことによって算出される、請求項1に記載の廃棄物の分別方法。
【請求項5】
前記複数の近赤外線吸収情報は互いに異なる波長範囲において得られる、請求項4に記載の分別方法。
【請求項6】
前記検量線は、前記特徴量Xの範囲ごとに異なる複数の一次方程式を含む、請求項1に記載の廃棄物の分別方法。
【請求項7】
前記複数の一次方程式が下記式(1)及び式(2)を含み、前記特徴量Xをその最大値で規格化して0~1の数値範囲に換算したときに、換算値が下記式(1)と下記式(2)との境界が0.2~0.8の範囲に含まれる、請求項6に記載の廃棄物の分別方法。
Y=aX+b (1)
Y=a’X+b’ (2)
[但し、式(1)及び(2)中、a、a’、b、及びb’は、いずれも正又は負の数値であり、a’/aは2以上である。]
【請求項8】
搬送される前記第1廃棄物及び/又は前記第2廃棄物に対して近赤外線を含む電磁波を照射し、前記近赤外線吸収情報を含むスペクトルを取得する情報取得工程を有する、請求項1に記載の廃棄物の分別方法。
【請求項9】
セメント原料をセメントクリンカの製造設備における燃焼装置で加熱する加熱工程を有する、セメントクリンカの製造方法であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の分別方法で分別された前記複数の廃棄物群の少なくとも一つを前記燃焼装置の燃料に用いる、セメントクリンカの製造方法。
【請求項10】
前記燃焼装置は、仮焼炉及びセメントキルンを含み、
前記セメントキルンで使用される燃料が前記第1分別廃棄物を含み、前記仮焼炉で使用される燃料が前記第2分別廃棄物を含む、請求項9に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項11】
プラスチックを含む燃料用の廃棄物の分別装置であって、
廃棄物の近赤外線吸収情報を取得する情報取得部と、
第1廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと、前記第1廃棄物の発熱量の実測値Y’とを用いて発熱量を予測するための検量線を作成し、第2廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと前記検量線とを用いて、前記第2廃棄物の発熱量の予測値Yを得る情報処理部と、
前記予測値Yに基づいて、前記第2廃棄物を、第1分別廃棄物と前記第1分別廃棄物よりも発熱量の平均値が低い第2分別廃棄物とを含む複数の廃棄物群に分別する分別部と、を備える廃棄物の分別装置。
【請求項12】
前記情報取得部では、近赤外線を含む電磁波を照射する光源と前記近赤外線を検出する検出器とを用いて、前記第1廃棄物及び/又は前記第2廃棄物の前記近赤外線吸収情報を含むスペクトルを取得する、請求項11に記載の廃棄物の分別装置。
【請求項13】
前記廃棄物を破砕する破砕部と、前記破砕部で破砕することによって得られる前記第1廃棄物及び/又は前記第2廃棄物を搬送する搬送部と、を備え、
前記情報取得部は、前記搬送部で搬送される前記第1廃棄物及び/又は前記第2廃棄物の前記近赤外線吸収情報を取得する、請求項11に記載の廃棄物の分別装置。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項の分別装置と、燃焼装置と、を備え、前記複数の廃棄物群の少なくとも一つを前記燃焼装置の燃料に用いる、セメントクリンカの製造設備。
【請求項15】
前記燃焼装置がセメントキルン及び仮焼炉を含み、
前記分別装置で分別された前記第1分別廃棄物を前記セメントキルンの燃料に用い、前記第2分別廃棄物を前記仮焼炉の燃料に用いる、請求項14に記載のセメントクリンカの製造設備。
【請求項16】
複数のタンクの少なくとも一つのタンクから前記第1分別廃棄物がセメントキルンへ供給され、前記第1分別廃棄物を供給する前記タンクとは異なる、前記複数のタンクの少なくとも一つのタンクから前記第2分別廃棄物が仮焼炉へ供給される、請求項14に記載のセメントクリンカの製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の分別方法及び分別装置、並びに、セメントクリンカの製造方法及び製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の使用量削減や循環型社会構築のため、廃棄物を含む燃料を活用することが望まれている。廃棄物を含む燃料には、プラスチック、紙、及び木屑などのプラスチック以外の様々な成分が含まれることが多い。また、プラスチックとしても多様な種類がある。これらの成分の含有割合は、廃棄物の発生元や処理業者によって大きく異なるのが現状である。例えば高発熱量のプラスチックが多く含有されている廃棄物もあれば、低発熱量の紙及び木屑が多く含有されている廃棄物もある。
【0003】
このような廃棄物を燃料として使用する方法が検討されている。例えば、特許文献1では、廃プラスチックを燃料とした焼却炉を用いた発電システムにおいて、画像解析を用いて当該燃料の総発熱量を算出し、搬送コンベアの速度を制御することで、燃焼投入口に投入される燃料の発熱量を一定にし、焼却炉を安定して運転する技術が提案されている。
【0004】
特許文献2では、複数種類のプラスチックからなるプラスチック混合物の近赤外吸収スペクトルと、燃焼カロリーが既知の複数の基準試料の吸収スペクトルに基づいて予め定められた評価関数とに基づいて、プラスチック混合物の燃焼カロリーを算出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-060179号公報
【特許文献2】特開2001-091484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、プラスチックを主成分として含む発熱量の高い廃棄物が燃料として使用されている。今後は、プラスチック以外の紙及び木屑等の成分を多く含む発熱量が比較的低い廃棄物も、燃料として有効利用しようとする動きが加速するものと予想される。このため、廃棄物の発熱量の変動が大きくなって、廃棄物を熱源とする燃焼装置内の温度変動が生じ、運転調整の頻度が増加するものと考えられる。特に、廃棄物を含む燃料の使用量が増加すると、その影響も益々大きくなることが懸念される。
【0007】
このような懸念点を解消する方法として、燃料用の廃棄物の発熱量を予測して、予測結果に応じて運転調整を行うことが考えられる。ところが、特許文献1,2に記載された方法では、プラスチックとは異なるスペクトル特性を有する紙、木屑、石、ガラス等のプラスチック以外の成分を多量に含む廃棄物の発熱量を正確に予測することは困難である。このため、プラスチック以外の成分を含む廃棄物を燃料として十分に利用できなくなることが懸念される。
【0008】
そこで、本発明は、燃料用の廃棄物がプラスチック以外の成分を含んでいても、燃焼装置の安定運転を継続することが可能な廃棄物の分別方法及び分別装置を提供する。また本発明は、セメントクリンカの製造を安定的に継続することが可能なセメントクリンカの製造方法及び製造設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一つの側面において、プラスチックを含む燃料用の廃棄物の分別方法であって、第1廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと、第1廃棄物の発熱量の実測値Y’とを用いて、発熱量を予測するための検量線を作成する検量線作成工程と、第2廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと検量線とを用いて、第2廃棄物の発熱量の予測値Yを得る予測工程と、予測値Yに基づいて、第2廃棄物を、第1分別廃棄物と前記第1分別廃棄物よりも発熱量の平均値が低い第2分別廃棄物とを含む複数の廃棄物群に分別する分別工程と、を有する、廃棄物の分別方法を提供する。
【0010】
上記分別方法では、近赤外線吸収情報に基づいて検量線を作成し、当該検量線と特徴量Xを用いて発熱量の予測値Yを得ている。このため、第2廃棄物の発熱量を高い精度で予測することができる。そして、高い精度で予測された発熱量の予測値Yに基づいて分別する分別工程を有することから、第2廃棄物が、発熱量が大きく異なる種々の成分を含んでいても、第2廃棄物を燃料として用いたときに燃焼装置の安定運転を継続することができる。
【0011】
本発明は、一つの側面において、セメント原料をセメントクリンカの製造設備における燃焼装置で加熱する加熱工程を有する、セメントクリンカの製造方法であって、上記分別方法で分別された複数の廃棄物群の少なくとも一つを燃焼装置の燃料に用いる、セメントクリンカの製造方法を提供する。
【0012】
上記セメントクリンカの製造方法では、上記分別方法で分別された複数の廃棄物群の少なくとも一つを燃焼装置の燃料を用いる。複数の廃棄物群は、高い精度で予測された発熱量の予測値Yに基づいて分別されたものであることから、そのような廃棄物群を燃料として用いれば、燃焼装置の温度変動を抑制することできる。したがって、上記セメントクリンカの製造方法ではセメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。
【0013】
本発明は、一つの側面において、プラスチックを含む燃料用の廃棄物の分別装置であって、廃棄物の近赤外線吸収情報を取得する情報取得部と、第1廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと、第1廃棄物の発熱量の実測値Y’とを用いて発熱量を予測するための検量線を作成し、第2廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと検量線とを用いて、第2廃棄物の発熱量の予測値Yを得る情報処理部と、予測値Yに基づいて、第2廃棄物を、第1分別廃棄物と第1分別廃棄物よりも発熱量の平均値が低い第2分別廃棄物とを含む複数の廃棄物群に分別する分別部と、を備える廃棄物の分別装置を提供する。
【0014】
上記分別装置では、情報取得部及び情報処理部において、近赤外線吸収情報に基づいて検量線を作成し、当該検量線と特徴量Xを用いて発熱量の予測値Yを得ている。このため、第2廃棄物の発熱量を高い精度で予測することができる。分別部では高い精度で予測された発熱量の予測値Yに基づいて第2廃棄物を複数の廃棄物群に分別する。このような分別装置で分別された廃棄物群であれば、燃料として用いても、燃焼装置の安定運転を継続することができる。
【0015】
本発明は、一つの側面において、上記分別装置と、燃焼装置と、を備え、複数の廃棄物群の少なくとも一つを燃焼装置の燃料に用いる、セメントクリンカの製造設備を提供する。
【0016】
上記セメントクリンカの製造設備では、上記分別装置で分別された複数の廃棄物群の少なくとも一つを燃焼装置の燃料を用いる。複数の廃棄物群は、高い精度で予測された発熱量の予測値Yに基づいて分別されたものであることから、そのような廃棄物群を燃料として用いれば、燃焼装置の温度変動を抑制することできる。したがって、上記セメントクリンカの製造設備ではセメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料用の廃棄物がプラスチック以外の成分を含んでいても、燃焼装置の安定運転を継続することが可能な廃棄物の分別方法及び分別装置を提供することができる。また、セメントクリンカの製造を安定的に継続することが可能なセメントクリンカの製造方法及び製造設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】廃棄物の分別方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】廃棄物の分別装置の一例を模式的に示す図である。
【
図3】廃棄物の分別装置における情報取得部及び情報処理部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】廃棄物の分別方法における分別工程の一例を示すフローチャートである。
【
図5】セメントクリンカの製造設備の一例を模式的に示す図である。
【
図6】(A)は、実施例1の検量線作成用の廃棄物の特徴量Xと発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。(B)は、検証用の廃棄物の発熱量の予測値Yと実測値Y’との関係を示すグラフである。
【
図7】(A)は、実施例2の検量線作成用の廃棄物の特徴量Xと発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。(B)は、検証用の廃棄物の発熱量の予測値Yと実測値Y’との関係を示すグラフである。
【
図8】(A)は、実施例3の検量線作成用の廃棄物の特徴量Xと発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。(B)は、検証用の廃棄物の発熱量の予測値Yと実測値Y’との関係を示すグラフである。
【
図9】(A)は、実施例4の検量線作成用の廃棄物の特徴量Xと発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。(B)は、検証用の廃棄物の発熱量の予測値Yと実測値Y’との関係を示すグラフである。
【
図10】(A)は、実施例5の検量線作成用の廃棄物の特徴量Xと発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。(B)は、検証用の廃棄物の発熱量の予測値Yと実測値Y’との関係を示すグラフである。
【
図11】(A)は、実施例6の検量線作成用の廃棄物の特徴量Xと発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。(B)は、検証用の廃棄物の発熱量の予測値Yと実測値Y’との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、場合により図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。なお、上限値と下限値の間が「~」で示される数値範囲は、上限値及び下限値を含む数値範囲である。
【0020】
一実施形態に係る廃棄物の分別方法は、プラスチックを含む燃料用の廃棄物の分別方法であって、第1廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと、第1廃棄物の発熱量の実測値Y’とを用いて、発熱量を予測するための検量線を作成する検量線作成工程と、第2廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと検量線とを用いて、第2廃棄物の発熱量の予測値Yを得る予測工程と、予測値Yに基づいて、第2廃棄物を、第1分別廃棄物と第1分別廃棄物よりも発熱量の平均値が低い第2分別廃棄物とを含む複数の廃棄物群に分別する分別工程と、を有する。
【0021】
第1廃棄物は発熱量の実測値Y’が既知であるのに対し、第2廃棄物は発熱量が未知であってよい。第1廃棄物及び第2廃棄物の組成は同じであってよく、異なっていてもよい。第1廃棄物と第2廃棄物は、不要になって廃棄された物を含んでいればよく、含有成分としては、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、及びその他の汚物等が挙げられる。より具体的には、プラスチック、紙、木屑、石、ガラス、金属、布、及び皮等が挙げられる。このうち、プラスチックは比較的高い発熱量を有しており、その種類によっては5000kcal/kg以上の発熱量を有するものもある。例えば、プラスチックのうち、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)は、9000~11000kcal/kgの発熱量を有する。ポリウレタン(PU)は、約7000kcal/kg、エポキシ樹脂は、約7500kcal/kg、フェノール樹脂は約8000kcal/kg、ポリエチレンテレフタレート(PET)は約5500kcal/kgの発熱量を有する。
【0022】
一方、5000kcal/kg未満のプラスチックとして、ポリ塩化ビニル(PVC)が4000~5000kcal/kgの発熱量を有し、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)が約2500kcal/kgの発熱量を有する。第1廃棄物及び第2廃棄物はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を含んでいてもよい。プラスチック以外の廃棄物成分の発熱量は、通常は5000kcal/kg未満である。廃棄物は、このように種々の廃棄物成分を含むため、燃焼装置における温度変動の要因となり得る。上記分別方法では、このように種々の成分を含む廃棄物を複数に分別して、発熱量が互いに異なる複数の廃棄物群(分別廃棄物)を得ることによって、温度変動を抑制することができる。
【0023】
図2は、本実施形態の分別方法を実施するための分別装置の一例を示している。
図2の分別装置100は、プラスチックと、紙、木屑、石、ガラス、金属、布、及び皮からなる群より選ばれる少なくとも一つ以上を含む廃棄物の分別装置であって、プラスチックを含む第1廃棄物又は第2廃棄物を破砕する破砕部10と、破砕後のプラスチックを含む第1廃棄物又は第2廃棄物を搬送する搬送部12と、搬送部12で搬送しながら当該プラスチックを含む第1廃棄物又は第2廃棄物に近赤外線を含む電磁波を照射する光源14と、近赤外線の吸収情報を取得する情報取得部16と、近赤外線吸収情報又は第1廃棄物の発熱量の実測値Y’が入力され第1廃棄物及び第2廃棄物の特徴量X、又は検量線を算出し、第2廃棄物の特徴量Xと検量線から第2廃棄物の発熱量の予測値Yを出力する情報処理部20と、情報処理部20から出力される予測値Yに基づいて制御信号を出力する制御部30と、制御部30からの制御信号によって、第2廃棄物を、少なくとも、第1分別廃棄物と第1分別廃棄物よりも発熱量の平均値が低い第2分別廃棄物とを含む、複数の分別廃棄物に分別する分別部40と、を有する。なお、上記分別方法を、この分別装置を用いて行うことは必須ではなく、別の分別装置を用いて行ってもよい。また、上記分別装置は、上述の分別方法とは異なる分別方法で廃棄物を分別するように構成されていてもよい。
【0024】
上述の分別方法は、第1廃棄物及び/又は第2廃棄物を破砕する破砕工程を有していてよい。また、予測工程は、第2廃棄物の近赤外線吸収情報を取得する情報取得工程と、第2廃棄物の近赤外線吸収情報から特徴量Xを算出する特徴量算出工程と、前処理した近赤外線吸収情報に基づいて第2廃棄物の発熱量を予測する予測工程とに細分化することもできる。分別方法の一例は、
図1に示すように、発熱量が既知である第1廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと、第1廃棄物の発熱量の実測値Y’とを用いて発熱量を予測するための検量線を作成する検量線作成工程S1、第1廃棄物とは異なる第2廃棄物を破砕する破砕工程S2、情報取得工程S3、特徴量算出工程S4、予測工程S5、分別工程S6を有していてよい。
【0025】
検量線作成工程S1では、2つ以上の第1廃棄物の特徴量Xと、当該第1廃棄物の発熱量の実測値Y’とを用いて、検量線を作成する。特徴量Xは、発熱量と相関のある近赤外線吸収情報から得ることができる。特徴量Xは、所定の波長範囲における近赤外吸収スペクトルから求められる値であってよい。例えば、吸光度の最大値であってよいし、吸光度の最大値、平均値又は積分値であってもよい。本明細書では吸光度の積分値を積分強度と称する。また、吸光度の最大値とは、当該波長において近赤外線が最も吸収されていることを意味する。本明細書において、「近赤外線」は780~2500nmの波長範囲の電磁波である。
【0026】
特徴量Xは、複数の近赤外線吸収情報を用いて加減乗除のいずれかを行うことによって算出されてもよい。例えば、互いに異なる波長領域で求められる近赤外線吸収情報aと近赤外線吸収情報bとの和、差、積、商のいずれかであってもよいし、近赤外線吸収情報a,bの平均値であってもよい。「加減乗除のいずれか」とは、足し算と掛け算等、2種類以上の演算を行う場合も含まれる。
【0027】
特徴量Xを得るために用いられる近赤外吸収スペクトルの波長範囲は、好ましくは1100~1700nmである。この波長範囲には、廃棄物に含まれるプラスチックに起因する吸収ピークが検出されやすい。このため、検量線の決定係数を高くして、第2廃棄物の発熱量の予測値Yの精度十分に高くすることができる。
【0028】
特徴量Xを得るための近赤外線吸収情報は、特定波長付近の吸光度であってよい。特定波長の例としては、波長1130nm、1173nm、1200nm、1400nm、及び1660nm等が挙げられる。近赤外線吸収情報は、上記特定波長のみにおける吸光度であってよく、上記特定波長を含む波長範囲の吸光度の積分強度、波長範囲内の吸光度の最大値又は最小値であってもよい。波長範囲の幅は150nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。近赤外線吸収情報は、一つの情報のみから特徴量Xを得てもよいし、複数の情報を用いて上述の加減乗除のいずれかによって特徴量Xを得てもよい。例えば、2通りの波長範囲での近赤外線吸収強度の積分強度を個別に算出したのち、一方の積分強度を他方の積分強度で除した値を特徴量Xとしてよい。特徴量Xとして、近赤外線吸収情報を加減乗除した値を複数使用する場合は、必要に応じて特徴量X1、特徴量X2、のように区別して検量線の作成に使用してもよい。この場合、重回帰分析で検量線を作成してもよい。
【0029】
第1廃棄物の近赤外線の吸収情報は、
図2の分別装置100の破砕部10、搬送部12、光源14、及び情報取得部16を用いて得ることができる。破砕部10に備えられる破砕機としては、例えば、ミル、シュレッダー、クラッシャ等が挙げられる。破砕部10によって、粒径が例えば35mm以下の第1廃棄物を得る。このようなサイズの第1廃棄物に近赤外線を含む電磁波を照射することによって、高い相関性を有する検量線を得ることができる。これは、サイズが大きくなると、内部と表面で廃棄物の成分が大きく異なる場合があるためである。
【0030】
図3に示すように、分別装置100では、破砕部10で破砕された第1廃棄物11Aに近赤外線を含む電磁波を照射する光源14と近赤外線を検出する検出器16A(情報取得部16)とを用いて、プラスチックを含む第1廃棄物11Aの近赤外吸収スペクトル(吸収情報)を取得してよい。光源14としては、近赤外線を含む電磁波を照射可能なものであれば特に制限されない。例えば、ハロゲンランプ、赤外線LEDランプ、白熱電球、太陽光などが挙げられる。
【0031】
検出器16Aとしては、特徴量Xに採用した近赤外線吸収情報を検出できるものであれば特に制限されない。例えば、赤外線センサ、赤外線カメラ、マルチバンドカメラ、ハイパースペクトルカメラなどが挙げられる。この中で、高い波長分解能で近赤外スペクトルを測定可能なことから、ハイパースペクトルカメラを好適に用いることができる。ハイパースペクトルカメラは、例えば、RESONON社製のものや、HySpex社製のものを用いることができる。近赤外線吸収情報が近赤外吸収スペクトルを含むことによって、第1廃棄物11Aの発熱量の実測値Y’と相関の高い特徴量Xを得ることができる。
【0032】
検出器16Aで取得される近赤外吸収スペクトルの波長範囲は、800~2500nmであってよく、900~1700nmであってよい。これによって、第1廃棄物の発熱量の実測値Y’と相関の高い特徴量Xを得ることができ、第2廃棄物の発熱量の予測精度を向上することができる。必要に応じて、検出器16Aには、特定の波長の電磁波のみを透過するバンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタなどを装着し、検出器16Aに入射する電磁波の波長を調整してもよい。
【0033】
検量線作成工程S1は、特徴量Xを取得する前に、第1廃棄物11Aの近赤外線吸収情報を前処理する工程を有していてもよい。前処理は、トリミング、スムージング、2階微分、最大値による規格化、からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでいてよい。これによって、第2廃棄物の発熱量の予測精度を十分に高くすることができる。例えば、光源14等からのノイズの影響を低減するため、トリミングやスムージングを行ってもよい。また、2階微分や最大値による規格化を行うことによって、反射光の強度によってスペクトルが上下にシフトすることの影響を低減することができる。
【0034】
第1廃棄物11A(第2廃棄物11)に含まれる廃棄物を構成している分子(例えば、C-H、O-H)は、様々な運動をしており、運動している分子に赤外線を当てると運動状態に合わせて特定の波長の光のみが吸収される。例えば、ポリエチレンの場合、波長1200nm、1400nm、1725nm、1775nm、及び1850nm付近に特徴的なピークをもつ吸収スペクトルが得られる。このように近赤外領域には廃棄物に含まれる成分のピークが検出されることが多いことから、近赤外線吸収情報を用いることによって、高い精度で発熱量を予測することができる。情報取得部16は、近赤外線吸収情報を含む近赤外吸収スペクトルを取得することが好ましい。
【0035】
第1廃棄物11Aの近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと、第1廃棄物11Aの発熱量の実測値Y’とを用いて、第2廃棄物の発熱量を予測するための検量線を取得するには、種々の線形又は非線形回帰分析手法を用いることができる。例えば、線形回帰手法としては、特徴量Xに応じた任意の多項式モデルに対する最小二乗法近似、リッジ回帰、ラッソ回帰、及びエラスティックネット等が挙げられる。非線形回帰手法としては、k近傍法及び決定木法などが挙げられる。これらの中で、検量線を算出する際の計算負荷を低減する観点及びグラフ表示による解釈の容易さの観点から、最小二乗法による線形回帰を用いることが好ましい。この場合、検量線は、特徴量Xを説明変数、実測値Y’を目的変数とする単回帰分析によって得てもよい。第1廃棄物11Aとして、第2廃棄物と含有成分が似たものを用いることによって第2廃棄物の発熱量の予測精度を高くすることができる。
【0036】
第2廃棄物の発熱量の予測精度を十分に高くする観点から、第1廃棄物11Aの特徴量Xと実測値Y’の組み合わせは多い方がよく、第2廃棄物と同じくらいのばらつきを有することが好ましい。横軸を特徴量X、縦軸を実測値Y’とするX-Y’線図(グラフ)において、座標(X,Y’)のプロットは、好ましくは10個以上であり、より好ましくは30個以上であり、さらに好ましくは50個以上である。回帰分析によって求められる検量線の決定係数(R2)は、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.6以上である。決定係数が大きい方が第2廃棄物の発熱量の予測精度を一層高くすることができる。
【0037】
検量線は、特徴量Xの範囲を任意の閾値で複数に分けて、特徴量Xの範囲ごとに異なる複数の検量線を含んでいてもよい。これによって、第2廃棄物の発熱量の予測精度を一層高くすることができる。複数の検量線は、傾きが互いに異なる複数の一次方程式であってよい。
【0038】
複数の一次方程式(回帰式)は、下記式(1)及び式(2)を含んでよい。特徴量Xをその最大値で規格化して0~1の数値範囲に換算したときに、換算値が下記式(1)と下記式(2)との境界が好ましくは0.2~0.8の範囲に、より好ましくは0.3~0.7の範囲に含まれてもよい。これによって、一つの一次方程式では十分な相関が得られないときに、高い相関を有する検量線を得ることができる。したがって、第2廃棄物の発熱量の予測精度を十分に高くすることができる。最大値による規格化は、特徴量Xのデータ群を、そのうちの最大値を用いて正規化する方法である。
【0039】
Y=aX+b (1)
Y=a’X+b’ (2)
但し、式(1)及び(2)中、a、a’、b、及びb’は、いずれも正又は負の数値であり、a’/aは2以上であることが好ましい。
【0040】
a’/aは3以上であってよく、4以上であってもよい。これによって、一つの一次方程式では十分な相関が得られないときに、高い相関を有する検量線を得ることができる。b、b’は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。検量線作成工程S1ではこのようにして検量線を作成することができる。作成された検量線は、情報処理部20のストレージ76に記憶されていてもよい。
【0041】
破砕工程S2では、
図1に示すように第2廃棄物を例えば破砕部10で破砕する。破砕部10は第1廃棄物を破砕した機械と同じであってもよいし、異なっていてもよい。破砕工程S2によって、粒径が例えば35mm以下のプラスチックを含む廃棄物を得る。このようなサイズの第2廃棄物に近赤外線を含む電磁波を照射することによって、十分に高い精度で発熱量を予測することができる。
【0042】
一層高精度の予測結果を得る観点から、第2廃棄物(第1廃棄物)の粒径は30mm以下であってよく、25mm以下であってもよい。なお、第2廃棄物(第1廃棄物)の粒径は、二次元の画像で描かれる燃料に外接する外接円の直径として求めることができる。破砕部10の上流には、粗破砕機、風力選別機、磁選機等を設置して、廃棄物原料から金属等を除去してもよい。破砕工程を行うことは必須ではなく、受け入れられた廃棄物をそのまま搬送部12で搬送して情報取得部16で情報取得工程S3を行ってもよい。
【0043】
情報取得工程S3は、第2廃棄物の近赤外線吸収情報を取得する。
図3に示すように、情報取得工程S3では、近赤外線を含む電磁波を照射する光源14と近赤外線を検出する検出器16Aとを用いて、第2廃棄物11の近赤外線吸収情報を取得する。ここで、光源14と検出器16Aは、検量線作成工程S1で使用したものと同じ構成のものを用いてもよい。
【0044】
特徴量算出工程S4は、情報取得工程S3で得られた第2廃棄物の近赤外線吸収情報から、第2廃棄物11の発熱量の予測値Yを得るために用いる特徴量Xを算出する。第2廃棄物の特徴量Xは、第1廃棄物の特徴量Xと同じ方法で算出することができる。特徴量算出工程S4は、検量線作成工程S1と同様に、第2廃棄物11の近赤外線吸収情報を前処理する工程を含んでいてよい。検量線作成工程S1と特徴量算出工程S4とが同じ前処理を含むことによって、第2廃棄物11の発熱量の予測精度を十分に高くすることができる。第2廃棄物の特徴量Xの算出は、
図3に示す情報処理部20で行ってもよい。
【0045】
予測工程S5では、検量線作成工程S1で得られた検量線に、特徴量算出工程S4で得られた特徴量Xを代入し、第2廃棄物の発熱量の予測値Yを得る。第2廃棄物の発熱量の予測値Yの算出は、
図3に示す情報処理部20で行ってもよい。
【0046】
検量線作成工程S1、前処理工程S4及び予測工程S5は、
図3に示す情報処理部20で行うことができる。情報処理部20は、情報取得部16で得られた近赤外線吸収情報から第1廃棄物及び第2廃棄物の特徴量Xを算出する。情報取得部16は、通常のコンピュータシステムとして構成することができる。情報処理部20のハードウェア構成の一例は、
図3に示すように回路70を備える。回路70は、少なくとも一つのプロセッサ72、メモリ74、ストレージ76、及び入出力ポート78を有する。ストレージ76には、各機能を実現するためのコンピュータソフトウェア(例えば解析ソフト)が記録されていてもよい。
【0047】
情報処理部20は、プロセッサ72及びメモリ74等のハードウェア上に、このようなコンピュータソフトウェアを読み込ませることによって、プロセッサ72の制御の下で入出力ポート78及び入出力デバイス82が動作するように構成されてよい。ストレージ76は、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であってよい。ストレージ76には、第1廃棄物11Aの発熱量の実測値Y’及び検量線作成工程S1で得られた検量線が記憶されていてもよい。
【0048】
メモリ74は、ストレージ76からロードされたプログラム、データ及びプロセッサ72の演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ72は、メモリ74と協働し、情報取得部16で取得された近赤外吸収スペクトル等の近赤外線吸収情報の前処理、第1廃棄物及び第2廃棄物の特徴量Xの算出、第1廃棄物の特徴量Xと実測値Y’とから相関式の算出、第2廃棄物の特徴量Xと検量線から第2廃棄物の発熱量の予測値Yの算出等を行うプログラムを実行してよい。入出力ポート78は、プロセッサ72からの指令に応じ、制御部30及び入出力デバイス82等との間で電気信号の入出力を行う。
【0049】
図2及び
図3に示すように、情報処理部20は、第2廃棄物の発熱量の予測値Yを、制御部30に出力する。制御部30は、情報処理部20からの入力値に基づいて、
図2のダンパー41,42を操作する制御信号を出力する。制御部30は、情報処理部20と同様に、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、及び入出力ポート等を有していてよい。制御部30は、制御信号を導出し、当該制御信号を出力できる構成を有していればよい。なお、情報処理部20と制御部30を、別々のハードウェアとして構成することは必須ではなく、これらを一つのハードウェアとして構成してもよい。また、検量線作成工程S1と、前処理工程S4及び予測工程S5で、同じ情報処理部20を用いることは必須ではなく、同様の構成を有する別々の情報処理部を用いてもよい。
【0050】
分別工程S6は、
図2の分別部40で行うことができる。分別部40は、搬送部12に接続されたダンパー41,42と、第1分別廃棄物を貯留するタンク51と、第2分別廃棄物を貯留するタンク52を備える。この例では、第2廃棄物11を、第1分別廃棄物と第2分別廃棄物に分別している。なお、分別される分別廃棄物の数(廃棄物群の数)は特に限定されず、第2廃棄物11を発熱量の予測値Yに応じて3つ以上に廃棄物群に分別してもよい。
【0051】
タンク51に貯留される第1分別廃棄物における発熱量の予測値Yの平均値は5000kcal/kg以上である。タンク52に貯留される第2分別廃棄物における発熱量の予測値Yの平均値は5000kcal/kg未満である。ただし、タンク51に発熱量の予測値Yが5000kcal/kg未満の廃棄物が混入してもよい。タンク52に発熱量の予測値Yが5000kcal/kg以上の廃棄物が混入してもよい。第1分別廃棄物の発熱量の予測値Yの算術平均値が5000kcal/kg以上であり、第2分別廃棄物に発熱量の予測値Yの算術平均値が5000kcal/kg未満であればよい。予測値Yの平均値は、複数の予測値Yの算術平均値である。第1分別廃棄物と第2分別廃棄物の予測値Yの平均値の閾値は5000kcal/kgに限定されない。ただし、閾値を5000kcal/kgとすることによって、高い発熱量が必要な第1燃焼装置に導入される廃棄物を十分に多くすることができる。これによって、廃棄物を燃料として有効活用して、第1燃焼装置で消費される化石燃料の量を低減することができる。
【0052】
図2に示すようにタンク51,52には、それぞれ導出路51a,52aが接続されている。一旦タンク51,52に貯留された第1分別廃棄物,第2分別廃棄物は、導出路51a,52aを流通して下流の第1燃焼装置,第2燃焼装置まで搬送されてよい。搬送は、ベルトコンベア又はガス(空気)圧送によって行ってもよいし、重力落下によって行ってもよい。分別装置100と、燃焼装置とが別々の場所にある場合は、タンクから導出された各分別廃棄物を、燃焼装置の設置場所にあるタンクまでトラックを用いて運搬してもよい。なお、分別された全ての分別廃棄物を焼却炉等の廃棄物として用いなくてもよい。複数の分別廃棄物のうちの一種類、又は各分別廃棄物の一部を、他の用途に用いてもよい。
【0053】
分別工程S6の一例では、
図4に示されるフローチャートに沿って、分別部40で廃棄物を2つの廃棄物群に分別する。分別を開始する前は、ダンパー41,42が閉止されている(S11)。発熱量の予測値Yが5000kcal/kg以上である場合(S12)は、ダンパー41を開放し(S13)、第1分別廃棄物としてタンク51に導入する(S14)。発熱量の予測値Yが5000kcal/kg未満である場合は、ダンパー42を開放し(S15)、第2分別廃棄物としてタンク52に導入する(S16)。このようにして、廃棄物が、発熱量の予測値Yに応じて2つの分別廃棄物に分別される。
【0054】
複数の分別廃棄物は、一旦タンク51,52に貯留された後、第1燃焼装置及び第2燃焼装置で燃料として燃焼される。第1燃焼装置及び第2燃焼装置は焼却炉、ボイラー、セメントクリンカの製造設備における仮焼炉、又はセメントキルン等であってよい。第1分別廃棄物と第2分別廃棄物を別々の燃焼装置に導入することは必須ではなく、例えば、同一焼却炉の別々の場所から導入したり、個別に導入量を調節したりしてもよい。このようにして、焼却炉等の燃焼装置の安定運転を継続しながら、廃棄物を燃料として有効利用して、化石燃料の使用量を低減することができる。なお、燃焼装置(第1燃焼装置及び第2燃焼装置)では、廃棄物を、当該燃焼装置に備えられるバーナで燃焼してもよい。バーナで燃焼する場合も、当該廃棄物は当該燃焼装置で使用されることに変わりはない。
【0055】
一実施形態に係るセメントクリンカの製造方法は、セメント原料を仮焼炉で仮焼してセメントキルンで焼成する加熱工程を有し、加熱工程では、上述の分別方法で複数に分別された廃棄物を含む分別燃料(第1分別廃棄物、第2分別廃棄物)の少なくとも一つを用いて、セメントキルン及び仮焼炉の少なくとも一方の燃焼装置を加熱する。
【0056】
図5のセメントクリンカの製造設備300を用いて、上述のセメントクリンカの製造方法を行ってもよい。ただし、上記製造方法を、このセメントクリンカの製造設備300を用いて行うことは必須ではなく、別のセメントクリンカの製造設備を用いて行ってもよい。また、上記セメントクリンカの製造設備300は、上述のセメントクリンカの製造方法とは別の製造方法でセメントクリンカを製造するように構成されていてもよい。
【0057】
図5のセメントクリンカの製造設備300は、燃料の分別装置100と、セメントクリンカ製造装置200とを備える。セメントクリンカ製造装置200は、セメント原料が導入される導入口201と、導入口201から導入されたセメント原料を予熱する4つのサイクロンC1,C2,C3,C4(プレヒータ)と、セメント原料を仮焼する仮焼炉230と、予熱及び仮焼されたセメント原料を焼成してセメントクリンカを生成するセメントキルン240と、セメントキルン240で生成したセメントクリンカを冷却し、冷却されたセメントクリンカを導出するクリンカクーラ250とを備える。
【0058】
導入口201は、サイクロンC1とサイクロンC2との接続部に設けられている。導入口201から導入されるセメント原料は、例えば、焼却灰、石炭灰、石灰石、鉄源、スラグ及び廃棄物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。導入口201から導入される廃棄物はセメント原料であり燃料用には該当しない。導入口201から導入されたセメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2、サイクロンC3、ライジングダクト234、仮焼炉230、サイクロンC4を流通しながら加熱され、セメントキルン240の窯尻242に導入される。
【0059】
セメントキルン240の窯尻242と仮焼炉230はライジングダクト234で接続されている。ライジングダクト234には、ライジングダクト234内のキルン排ガスを抽気する抽気管236が接続されている。抽気管236の下流には、クーラー及びバグフィルタ等を有する塩素バイパス部237が設置されており、抽気管236で抽気された抽気ガス(キルン排ガス)に含まれるダストが回収されるようになっている。塩素バイパス部237でダストが除去された後のガスは、クリンカクーラ250と仮焼炉230と接続する循環ガスライン252に導入され、仮焼炉230に導入される。塩素バイパス部237を有することによって、セメントクリンカ製造装置200内から、塩素系化合物及びアルカリ等の揮発分を低減することができる。なお、変形例では、抽気管236は窯尻242に接続されていてもよいし、ライジングダクト234と窯尻242の境界部分に接続されていてもよい。
【0060】
セメントキルン240内の温度は、例えば、1400℃~1500℃である。セメントキルン240の一端に設けられたバーナ244には、タンク51から第1分別廃棄物と、化石燃料が供給される。化石燃料としては微粉炭等の石炭、石炭コークス、オイルコークス、重油等を用いることができる。本実施形態では、セメントキルン240の燃料として用いられる第1分別廃棄物が高い発熱量を有することから、化石燃料に対する第1分別廃棄物の割合を十分に高くすることができる。したがって、化石燃料の使用量を低減することができる。また、分別前の廃棄物に比べて第1分別廃棄物は発熱量の変動が小さい。このため、十分な量の第1分別廃棄物を燃料として用いつつ、セメントクリンカ製造装置200の安定運転を継続することができる。セメントクリンカ製造装置200の運転を一層安定化させる観点から、第1分別廃棄物の発熱量(実測値)の平均値は、5000kcal/kg以上であることが好ましい。これによって、得られるセメントクリンカの品質のばらつきを十分に低減することができる。なお、本明細書における発熱量は、高位発熱量である。
【0061】
セメントキルン240の運転制御は、セメントキルン240を回転させる際のトルク又は回転モータの消費電力を測定する測定部M、化石燃料の供給量を調節する調節部222、及び、測定部Mの測定値に基づいて調節部222を調節するための制御信号を出力する制御部224によって行ってもよい。このとき、第1分別廃棄物は、セメントキルン240の運転制御が可能な範囲で最大限の量をバーナ244に導入してよい。この場合、測定部Mの測定値が目標範囲になるように化石燃料の供給量を調節すればよい。これによって、第1分別廃棄物を有効活用しつつ、セメントキルン240の安定運転を継続することができる。ただし、変形例では、バーナ244への第1分別廃棄物の導入量は、第1分別廃棄物の発熱量の予測値Y、及び/又は、セメントキルン240の運転状況に応じて流量調節部51Vによって調節してもよい。また、第1分別廃棄物と化石燃料は、それぞれ異なるバーナに導入されてもよい。
【0062】
仮焼炉230内の温度は、例えば、850℃~900℃である。仮焼炉230には、タンク52から廃棄物を含む第2分別廃棄物と、化石燃料が供給される。化石燃料としては微粉炭、オイルコークス、重油等を用いることができる。仮焼炉230はセメントキルンよりも低温であることから、第1分別廃棄物よりも発熱量の平均値が低い第2分別廃棄物を導入しても、仮焼炉230の温度を十分安定的に維持することができる。
【0063】
仮焼炉230の運転制御は、仮焼炉230の温度を測定する測定部T、化石燃料の供給量を調節する調節部231、及び、測定部Tの測定値に基づいて調節部231を調節するための制御信号を出力する制御部232によって行ってもよい。このとき、第2分別廃棄物は、仮焼炉230の運転制御が可能な範囲で最大限の量を仮焼炉230に導入してよい。そして、測定部Tの測定値が目標範囲を維持するように化石燃料の供給量を調節する。これによって、第2分別廃棄物も仮焼炉230の燃料として有効活用しつつ、仮焼炉230の安定運転を継続することができる。ただし、変形例では、仮焼炉230への第2分別廃棄物の導入量は、第2分別廃棄物の発熱量の予測値Y、及び/又は、仮焼炉230の運転状況に応じて流量調節部52Vによって調節してもよい。第2分別廃棄物と化石燃料は、それぞれ仮焼炉230に取り付けられたバーナに導入されて、仮焼炉230内で燃焼されてもよい。
【0064】
流量調節部51V,52Vを制御することで、第1分別廃棄物と第2分別廃棄物とを一定の流量比率で、セメントクリンカ製造装置200に導入してもよい。これによって、セメントクリンカ製造装置200の運転を十分に安定化することができる。
【0065】
流量調節部51V,52Vは、それぞれ、バルブ及びその開度を制御する制御部(不図示)で構成されていてよい。例えば、ロードセル及びインパクトライン流量計等で供給量を測定し、フィードバック制御で各分別燃料の流量を調節してもよい。流量調節部51V,52Vは、それぞれ、第1分別廃棄物、第2分別廃棄物の流量を調節可能な構成であれば特に限定されない。
【0066】
第1分別廃棄物の導入先は、セメントクリンカ製造装置200の運転状況、及び、第1分別廃棄物及び第2分別廃棄物の在庫バランスに応じて、バーナ244から仮焼炉230(又は仮焼炉230に取り付けられたバーナ)に切り替えてもよい。第1分別廃棄物の導入先の切り替えは、例えば制御部30からの制御信号に基づいて三方弁51Tを操作して行うことができる。
【0067】
仮焼炉230で燃料として用いる廃棄物を、第2分別廃棄物から第1分別廃棄物に変更する際、第2分別廃棄物の導入量よりも少ない導入量で第1分別廃棄物を仮焼炉230に導入することが好ましい。第1分別廃棄物の方が第2分別廃棄物よりも発熱量の平均値が大きいため、このように調整することによって、仮焼炉230の温度変動を十分に抑制することができる。
【0068】
本実施形態のセメントクリンカの製造方法及びセメントクリンカの製造設備によれば、特徴量Xに基づいて得られた発熱量の予測値Yに基づいて種々の成分を含む廃棄物を分別し、分別して得られる分別廃棄物を燃焼装置の燃料として用いていることから、セメントクリンカの製造を安定的に継続することができる。また、セメントクリンカ製造装置の運転状態に応じて、各分別廃棄物の導入先を変更したり、導入量を調節したりして、柔軟な運転調整が可能となる。これによって、セメントクリンカの品質のばらつきも十分に低減することができる。さらに、化石燃料の消費量を低減し、廃棄物の有効利用を図ることができる。
【0069】
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、
図5のセメントクリンカの製造設備の例では分別装置100を備えているが、これに限定されない。例えば、廃棄物を3つ以上の廃棄物群に分別する分別装置を備えていてもよい。燃料の分別装置の説明内容は燃料の分別方法にも適用され、燃料の分別方法の説明内容は燃料の分別装置にも適用される。セメントクリンカの製造設備の説明内容はセメントクリンカの製造方法にも適用され、セメントクリンカの製造方法の説明内容はセメントクリンカの製造設備にも適用される。
【0070】
本開示は以下の内容を含む。
[1]プラスチックを含む燃料用の廃棄物の分別方法であって、
第1廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと、前記第1廃棄物の発熱量の実測値Y’とを用いて、発熱量を予測するための検量線を作成する検量線作成工程と、
第2廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと前記検量線とを用いて、前記第2廃棄物の発熱量の予測値Yを得る予測工程と、
前記予測値Yに基づいて、前記第2廃棄物を、第1分別廃棄物と前記第1分別廃棄物よりも発熱量の平均値が低い第2分別廃棄物とを含む複数の廃棄物群に分別する分別工程と、を有する、廃棄物の分別方法。
[2]前記廃棄物は、前記プラスチックと、紙、木屑、石、ガラス、金属、布及び皮からなる群より選ばれる少なくとも一つと、を含む、[1]に記載の廃棄物の分別方法。
[3]前記特徴量Xは、1100~1700nmの波長範囲に含まれる近赤外線吸収強度を含む、[1]又は[2]に記載の廃棄物の分別方法。
[4]前記特徴量Xは、複数の近赤外線吸収情報を用いて加減乗除のいずれかを行うことによって算出される、[1]~[3]のいずれか一つに記載の廃棄物の分別方法。
[5]前記複数の近赤外線吸収情報は互いに異なる波長範囲において得られる、[4]に記載の分別方法。
[6]前記検量線は、前記特徴量Xの範囲ごとに異なる複数の一次方程式を含む、[1]~[5]のいずれか一つに記載の廃棄物の分別方法。
[7]前記複数の一次方程式が下記式(1)及び式(2)を含み、前記特徴量Xをその最大値で規格化して0~1の数値範囲に換算したときに、換算値が下記式(1)と下記式(2)との境界が0.2~0.8の範囲に含まれる、[6]に記載の廃棄物の分別方法。
Y=aX+b (1)
Y=a’X+b’ (2)
[但し、式(1)及び(2)中、a、a’、b、及びb’は、いずれも正又は負の数値であり、a’/aは2以上である。]
[8]搬送される前記第1廃棄物及び/又は前記第2廃棄物に対して近赤外線を含む電磁波を照射し、前記近赤外線吸収情報を含むスペクトルを取得する情報取得工程を有する、[1]~[7]のいずれか一つに記載の廃棄物の分別方法。
[9]セメント原料をセメントクリンカの製造設備における燃焼装置で加熱する加熱工程を有する、セメントクリンカの製造方法であって、
上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の分別方法で分別された前記複数の廃棄物群の少なくとも一つを前記燃焼装置の燃料に用いる、セメントクリンカの製造方法。
[10]前記燃焼装置は、仮焼炉及びセメントキルンを含み、
前記セメントキルンで使用される燃料が前記第1分別廃棄物を含み、前記仮焼炉で使用される燃料が前記第2分別廃棄物を含む、[9]に記載のセメントクリンカの製造方法。
[11]プラスチックを含む燃料用の廃棄物の分別装置であって、
廃棄物の近赤外線吸収情報を取得する情報取得部と、
第1廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと、前記第1廃棄物の発熱量の実測値Y’とを用いて発熱量を予測するための検量線を作成し、第2廃棄物の近赤外線吸収情報から得られる特徴量Xと前記検量線とを用いて、前記第2廃棄物の発熱量の予測値Yを得る情報処理部と、
前記予測値Yに基づいて、前記第2廃棄物を、第1分別廃棄物と前記第1分別廃棄物よりも発熱量の平均値が低い第2分別廃棄物とを含む複数の廃棄物群に分別する分別部と、を備える廃棄物の分別装置。
[12]前記情報取得部では、近赤外線を含む電磁波を照射する光源と前記近赤外線を検出する検出器とを用いて、前記第1廃棄物及び/又は前記第2廃棄物の前記近赤外線吸収情報を含むスペクトルを取得する、[11]に記載の廃棄物の分別装置。
[13]前記廃棄物を破砕する破砕部と、前記破砕部で破砕することによって得られる前記第1廃棄物及び/又は前記第2廃棄物を搬送する搬送部と、を備え、
前記情報取得部は、前記搬送部で搬送される前記第1廃棄物及び/又は前記第2廃棄物の前記近赤外線吸収情報を取得する、[11]又は[12]に記載の廃棄物の分別装置。
[14]上記[11]~[13]のいずれか一つの分別装置と、燃焼装置と、を備え、前記複数の廃棄物群の少なくとも一つを前記燃焼装置の燃料に用いる、セメントクリンカの製造設備。
[15]前記燃焼装置がセメントキルン及び仮焼炉を含み、
前記分別装置で分別された前記第1分別廃棄物を前記セメントキルンの燃料に用い、前記第2分別廃棄物を前記仮焼炉の燃料に用いる、[14]に記載のセメントクリンカの製造設備。
[16]複数のタンクの少なくとも一つのタンクから前記第1分別廃棄物がセメントキルンへ供給され、前記第1分別廃棄物を供給する前記タンクとは異なる、前記複数のタンクの少なくとも一つのタンクから前記第2分別廃棄物が仮焼炉へ供給される、[14]又は[15]に記載のセメントクリンカの製造設備。
【実施例0071】
実施例を参照して本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
分別装置における、搬送部、光源、情報取得部及び情報処理部を構成する機器として以下のものを用いた。
・搬送部:可動式移動台(ベルトコンベア)
・近赤外線を含む電磁波を照射する光源:ハロゲンランプ
・情報取得部:ハイパースペクトルカメラ(RESONON社製、商品名:PikaNIR-320)
・情報処理部:パーソナルコンピュータ(制御・解析ソフト「SPECTRONON」をインストール済み)
【0073】
発熱量が既知の253種類の廃棄物試料を用意した。各廃棄物試料の発熱量の実測値Y’を、示差熱量計を用いて測定した。実測値Y’は、JIS Z 7302-2:1999「廃棄物固形化燃料-第2部:発熱量試験方法」に準拠して測定した高位発熱量である。253種類の廃棄物試料のそれぞれについて、ハイパースペクトルカメラで近赤外吸収スペクトルを測定した。測定にあたっては、各廃棄物試料(約100g)をアルミニウム製のバットに収容し、可動式移動台の上に設置した。可動式移動台の上方にハロゲンランプ及びハイパースペクトルカメラを設置した。ハロゲンランプから参照用試料に近赤外線を含む電磁波を照射しながら可動式移動台でバットを移動させ、この移動方向とは垂直方法にラインスキャンすることによってバット内の廃棄物試料の近赤外吸収スペクトル(測定波長域:880~1710nm)を取得した。
【0074】
解析ソフト(RESONON製SPECTRONON)を用いて、取得した廃棄物試料(253種類)の近赤外吸収スペクトルの前処理を行った。前処理では、まず近赤外吸収スペクトルのデータを波長960~1710nmの範囲に限定してノイズを低減した。その後、ノイズを低減した近赤外吸収スペクトル中の各波長の吸収強度をスペクトル中の吸収強度の最大値で除算した(最大値による規格化)。これによって、ベースラインの変動の影響を低減した。
【0075】
廃棄物試料(253種類)の前処理後の各近赤外吸収スペクトルから、波長1200~1250nmにおける吸光度の積分強度をそれぞれ算出した。これを実施例1の特徴量Xとした。廃棄物試料253種類のうち、無作為に選択した84種類を第1廃棄物として検量線作成用に用いた。残りの廃棄物試料(169種類)は、発熱量の予測値Yと実測値Y’の整合の検証に用いた。
【0076】
図6(A)は、検量線作成用の廃棄物試料(84種類)の特徴量Xを横軸に、発熱量の実測値Y’を縦軸にして両者の関係を示すグラフである。グラフには、最小二乗法によって求めた発熱量の実測値Y’と特徴量Xの回帰式を合わせて示した。回帰式は下記式(1A)のとおりであった。
Y’=-4450.4X+47741 (1A)
【0077】
図6(A)の結果から、特徴量Xと発熱量の実測値Y’との間には良好な相関性があることが確認された。この結果に基づいて、廃棄物の発熱量を予測に用いる検量線として、下記式(1B)を得た。
Y=-4450.4X+47741 (1B)
【0078】
検証用の廃棄物試料(169種類)を第2廃棄物とし、それぞれの特徴量Xと上記式(1B)を用いて発熱量の予測値Yを算出した。予測値Yは、検証用の廃棄物試料(169種類)のそれぞれの特徴量Xを上記式(1B)に代入することによって得た。
【0079】
図6(B)は、得られた発熱量の予測値Yと、検証用の廃棄物試料(169種類)の発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。
図6(B)に示すとおり、発熱量の予測値Yと発熱量の実測値Y’はグラフ中の対角線を中心に分布しており、良好な相関を有することが確認された。この結果から、特徴量X(波長1200~1250nmにおける吸光度の積分強度)と上記式(1B)の検量線によって、第2の廃棄物の発熱量を高い精度で予測できることが確認された。
【0080】
(実施例2)
発熱量が既知の240種類の廃棄物試料を用意した。実施例1と同じ方法及び機器を用いて、各廃棄物試料の発熱量の実測値Y’を測定するとともに、近赤外吸収スペクトルを測定した。そして、実施例1と同様の前処理を行った。すなわち、近赤外吸収スペクトルのデータを波長960~1710nmの範囲に限定してノイズを低減した後、最大値による規格化を行った。
【0081】
廃棄物試料(240種類)の前処理後の各近赤外吸収スペクトルから、波長1167~1182nmの範囲における吸光度の最大値を抽出した。これを実施例2の特徴量Xとした。廃棄物試料(240種類)のうち、無作為に選択した79種類を第1廃棄物として検量線作成用に用いた。残りの161種類は、発熱量の予測値Yと実測値Y’の整合の検証に用いた。
【0082】
図7(A)は、検量線作成用の廃棄物試料(79種類)の特徴量Xを横軸に、発熱量の実測値Y’を縦軸にして両者の関係を示すグラフである。グラフには、最小二乗法によって求めた発熱量の実測値Y’と特徴量Xの回帰式を合わせて示した。回帰式は下記式(2A)のとおりであった。
Y’=-68673X+70967 (2A)
【0083】
図7(A)の結果から、特徴量Xと発熱量の実測値Y’との間には良好な相関性があることが確認された。この結果に基づいて、廃棄物の発熱量を予測に用いる検量線として、下記式(2B)を得た。
Y=-68673X+70967 (2B)
【0084】
検証用の廃棄物試料(161種類)を第2廃棄物とし、それぞれの特徴量Xと上記式(2B)を用いて発熱量の予測値Yを算出した。予測値Yは、検証用の廃棄物試料(161種類)のそれぞれの特徴量Xを上記式(2B)に代入することによって得た。
【0085】
図7(B)は、得られた発熱量の予測値Yと、検証用の廃棄物試料(161種類)の発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。
図7(B)に示すとおり、発熱量の予測値Yと発熱量の実測値Y’はグラフ中の対角線を中心に分布しており、良好な相関を有することが確認された。この結果から、特徴量X(波長1167~1182nmの範囲における吸光度の最大値)と上記式(2B)の検量線によって、第2の廃棄物の発熱量を高い精度で予測できることが確認された。
【0086】
(実施例3)
発熱量が既知の163種類の廃棄物試料を用意した。実施例1と同じ方法及び機器を用いて、各廃棄物試料の発熱量の実測値Y’を測定するとともに、近赤外吸収スペクトルを測定した。そして、実施例1と同様の前処理を行った。すなわち、近赤外吸収スペクトルのデータを波長960~1710nmの範囲に限定してノイズを低減した後、最大値による規格化を行った。
【0087】
廃棄物試料(163種類)の前処理後の各近赤外吸収スペクトルから、波長1123~1138nmの範囲における吸光度の最大値を抽出した。これを実施例3の特徴量Xとした。廃棄物試料(163種類)のうち、無作為に選択した55種類を第1廃棄物として検量線作成用に用いた。残りの廃棄物試料(108種類)は、発熱量の予測値Yと実測値Y’の整合の検証に用いた。
【0088】
図8(A)は、検量線作成用の廃棄物試料(55種類)の特徴量Xを横軸に、発熱量の実測値Y’を縦軸にして両者の関係を示すグラフである。グラフには、最小二乗法によって求めた発熱量の実測値Y’と特徴量Xの回帰式を合わせて示した。回帰式は下記式(3A)のとおりであった。
Y’=-229204X+232655 (3A)
【0089】
図8(A)の結果から、特徴量Xと発熱量の実測値Y’との間には良好な相関性があることが確認された。この結果に基づいて、廃棄物の発熱量を予測に用いる検量線として、下記式(3B)を得た。
Y=-229204X+232655 (3B)
【0090】
検証用の廃棄物試料(108種類)を第2廃棄物とし、それぞれの特徴量Xと上記式(3B)を用いて発熱量の予測値Yを算出した。予測値Yは、検証用の廃棄物試料(108種類)のそれぞれの特徴量Xを上記式(3B)に代入することによって得た。
【0091】
図8(B)は、得られた発熱量の予測値Yと、検証用の廃棄物試料(108種類)の発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。
図8(B)に示すとおり、発熱量の予測値Yと発熱量の実測値Y’はグラフ中の対角線を中心に分布しており、良好な相関を有することが確認された。この結果から、特徴量X(波長1123~1138nmの範囲における吸光度の最大値)と上記式(3B)の検量線によって、第2の廃棄物の発熱量を高い精度で予測できることが確認された。
【0092】
(実施例4)
発熱量が既知の226種類の廃棄物試料を用意した。実施例1と同じ方法及び機器を用いて、各廃棄物試料の発熱量の実測値Y’を測定するとともに、近赤外吸収スペクトルを測定した。そして、実施例1と同様の前処理を行った。すなわち、近赤外吸収スペクトルのデータを波長960~1710nmの範囲に限定してノイズを低減した後、最大値による規格化を行った。
【0093】
廃棄物試料(226種類)の前処理後の各近赤外吸収スペクトルから、波長1400~1500nmの範囲における吸光度の積分強度をそれぞれ算出した。これを実施例4の特徴量Xとした。廃棄物試料(226種類)のうち、無作為に選択した73種類を第1廃棄物として検量線作成用に用いた。残りの廃棄物試料(153種類)は、発熱量の予測値Yと実測値Y’の整合の検証に用いた。
【0094】
図9(A)は、検量線作成用の廃棄物試料(73種類)の特徴量Xを横軸に、発熱量の実測値Y’を縦軸にして両者の関係を示すグラフである。グラフには、特徴量X=17において傾きが変化していた。このため、X≦17とX>17の2つの領域のそれぞれにおいて、最小二乗法によって発熱量の実測値Y’と特徴量Xの回帰式を求めた。その結果、それぞれの回帰式は下記式(4A-1)と下記式(4A-2)のとおりであった。
X≦17のとき、Y’=595.76×X-5108.2 (4A-1)
X>17のとき、Y’=3369.6×X-52528 (4A-2)
【0095】
図9(A)の結果から、特徴量Xと発熱量の実測値Y’との間には良好な相関性があることが確認された。この結果に基づいて、廃棄物の発熱量を予測に用いる検量線として、下記式(4B-1)と下記式(4B-2)を得た。
X≦17のとき、Y=595.76×X-5108.2 (4B-1)
X>17のとき、Y=3369.6×X-52528 (4B-2)
【0096】
検証用の廃棄物試料(153種類)を第2廃棄物とし、それぞれの特徴量Xと上記式(4B-1)を用いて発熱量の予測値Yを算出した。予測値Yは、検証用の廃棄物試料(153種類)のそれぞれの特徴量Xを、特徴量Xの値に応じて上記式(4B-1)又は上記式(4B-2)に代入することによって得た。
【0097】
図9(B)は、得られた発熱量の予測値Yと、検証用の廃棄物試料(153種類)の発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。
図9(B)に示すとおり、発熱量の予測値Yと発熱量の実測値Y’はグラフ中の対角線を中心に分布しており、良好な相関を有することが確認された。この結果から、特徴量X(波長1400~1500nmの範囲における吸光度の積分強度)と上記式(4B-1)及び上記式(4B-2)の検量線によって、第2の廃棄物の発熱量を高い精度で予測できることが確認された。
【0098】
(実施例5)
発熱量が既知の112種類の廃棄物試料を用意した。実施例1と同じ方法及び機器を用いて、各廃棄物試料の発熱量の実測値Y’を測定するとともに、近赤外吸収スペクトルを測定した。そして、実施例1と同様の前処理を行った。すなわち、近赤外吸収スペクトルのデータを波長960~1710nmの範囲に限定してノイズを低減した後、最大値による規格化を行った。
【0099】
廃棄物試料(112種類)の前処理後の各近赤外吸収スペクトルから、波長1631~1692nmの範囲における吸光度の積分強度をそれぞれ算出した。これを実施例5の特徴量Xとした。廃棄物試料(112種類)のうち、無作為に選択した36種類を第1廃棄物として検量線作成用に用いた。残りの廃棄物試料(76種類)は、発熱量の予測値Yと実測値Y’の整合の検証に用いた。
【0100】
図10(A)は、検量線作成用の廃棄物試料(36種類)の特徴量Xを横軸に、発熱量の実測値Y’を縦軸にして両者の関係を示すグラフである。グラフには、最小二乗法によって求めた発熱量の実測値Y’と特徴量Xの回帰式を合わせて示した。回帰式は下記式(5A)のとおりであった。
Y’=-3091.1X+43866 (5A)
【0101】
図10(A)の結果から、特徴量Xと発熱量の実測値Y’との間には良好な相関性があることが確認された。この結果に基づいて、廃棄物の発熱量を予測に用いる検量線として、下記式(5B)を得た。
Y=-3091.1X+43866 (5B)
【0102】
検証用の廃棄物試料(76種類)を第2廃棄物とし、それぞれの特徴量Xと上記式(5B)を用いて発熱量の予測値Yを算出した。予測値Yは、検証用の廃棄物試料(76種類)のそれぞれの特徴量Xを上記式(5B)に代入することによって得た。
【0103】
図10(B)は、得られた発熱量の予測値Yと、検証用の廃棄物試料(76種類)の発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。
図10(B)に示すとおり、発熱量の予測値Yと発熱量の実測値Y’はグラフ中の対角線を中心に分布しており、良好な相関を有することが確認された。この結果から、特徴量X(波長1631~1692nmの範囲における吸光度の積分強度)と上記式(5B)の検量線によって、第2の廃棄物の発熱量を高い精度で予測できることが確認された。
【0104】
(実施例6)
発熱量が既知の246種類の廃棄物試料を用意した。実施例1と同じ方法及び機器を用いて、各廃棄物試料の発熱量の実測値Y’を測定するとともに、近赤外吸収スペクトルを測定した。そして、実施例1と同様の前処理を行った。すなわち、近赤外吸収スペクトルのデータを波長960~1710nmの範囲に限定してノイズを低減した後、最大値による規格化を行った。
【0105】
廃棄物試料(226種類)の前処理後の各近赤外吸収スペクトルから、波長1400nmの吸光度を波長1200nmの吸光度で除した値をそれぞれ算出した。これを実施例6の特徴量Xとした。廃棄物試料(226種類)のうち、無作為に選択した77種類を第1廃棄物として検量線作成用に用いた。残りの廃棄物試料(169種類)は、発熱量の予測値Yと実測値Y’の整合の検証に用いた。
【0106】
図11(A)は、検量線作成用の廃棄物試料(77種類)の特徴量Xを横軸に、発熱量の実測値Y’を縦軸にして両者の関係を示すグラフである。グラフには、特徴量X=0.93付近において傾きが変化していた。このため、X≦0.93とX>0.93の2つの領域のそれぞれにおいて、最小二乗法によって発熱量の実測値Y’と特徴量Xの回帰式を求めた。その結果、それぞれの回帰式は下記式(6A-1)と下記式(6A-2)のとおりであった。
X≦0.93のとき、Y’=9178.2×X-3103.8 (6A-1)
X>0.93のとき、Y’=26731×X-19255 (6A-2)
【0107】
図11(A)の結果から、特徴量Xと発熱量の実測値Y’との間には良好な相関性があることが確認された。この結果に基づいて、廃棄物の発熱量を予測に用いる検量線として、下記式(6B-1)と下記式(6B-2)を得た。
X≦0.93のとき、Y=9178.2×X-3103.8 (6B-1)
X>0.93のとき、Y=26731×X-19255 (6B-2)
【0108】
検証用の廃棄物試料(169種類)を第2廃棄物とし、それぞれの特徴量Xと上記式(6B-1)を用いて発熱量の予測値Yを算出した。予測値Yは、検証用の廃棄物試料(153種類)のそれぞれの特徴量Xを、特徴量Xの値に応じて上記式(6B-1)又は上記式(6B-2)に代入することによって得た。
【0109】
図11(B)は、得られた発熱量の予測値Yと、検証用の廃棄物試料(169種類)の発熱量の実測値Y’との関係を示すグラフである。
図11(B)に示すとおり、発熱量の予測値Yと発熱量の実測値Y’はグラフ中の対角線を中心に分布しており、良好な相関を有することが確認された。この結果から、特徴量X(波長1400nmの吸光度を波長1200nmの吸光度で除した値)と上記式(6B-1)及び上記式(6B-2)の検量線によって、第2の廃棄物の発熱量を高い精度で予測できることが確認された。
10…破砕部、11A…第1廃棄物、11…第2廃棄物、12…搬送部、14…光源、16…情報取得部、16A…検出器、20…情報処理部、30…制御部、40…分別部、41,42…ダンパー、51,52…タンク、51T…三方弁、51V,52V…流量調節部、51a,52a…導出路、52V…流量調節部、70…回路、72…プロセッサ、74…メモリ、76…ストレージ、78…入出力ポート、82…入出力デバイス、100…分別装置、200…セメントクリンカ製造装置、201…導入口、222…調節部、224…制御部、230…仮焼炉、231…調節部、232…制御部、234…ライジングダクト、236…抽気管、237…塩素バイパス部、240…セメントキルン、242…窯尻、244…バーナ、250…クリンカクーラ、252…循環ガスライン、253…廃棄物試料、300…セメントクリンカの製造設備。