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特開2024-13408分析装置、分析方法及び分析用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013408
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】分析装置、分析方法及び分析用プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H01L21/302 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115468
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】波田 美耶子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 基延
(72)【発明者】
【氏名】南 雅和
(72)【発明者】
【氏名】坂口 有平
(72)【発明者】
【氏名】志水 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 哲雄
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004CB10
5F004CB15
5F004DB03
(57)【要約】
【課題】被処理物に対する処理量を精度良くモニタリングする。
【解決手段】被処理物Wを処理した際に生じる反応生成物の濃度又は分圧を測定する測定部2と、測定部2の出力値を用いて被処理物Wに対する処理量を算出する演算部3とを備え、測定部2は、反応生成物を含む測定対象ガスにレーザ光を照射するレーザ光源22と、測定対象ガスを透過したレーザ光を検出する光検出器23と、光検出器23の検出信号に基づいて反応生成物の濃度又は分圧を算出する信号処理部242とを有し、演算部3は、測定部2の出力値を時間積分した時間積分値を算出する時間積分部32と、測定部2の出力値を時間積分した時間積分値と被処理物に対する処理量との関係を示す関係データを格納する関係データ格納部31と、時間積分部32により得られた時間積分値と関係データとから被処理物に対する処理量を算出する処理量算出部33とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を処理するプロセスにおいて前記被処理物を処理した際に生じる反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を測定する測定部と、
前記測定部の出力値を用いて前記被処理物に対する処理量を算出する演算部とを備え、
前記測定部は、
前記反応生成物を含む測定対象ガスにレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記測定対象ガスを透過したレーザ光を検出する光検出器と、
前記光検出器の検出信号に基づいて前記反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を算出する信号処理部とを有し、
前記演算部は、
前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値を算出する時間積分部と、
前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値と前記被処理物に対する処理量との関係を示す関係データを格納する関係データ格納部と、
前記時間積分部により得られた時間積分値と前記関係データとから前記被処理物に対する処理量を算出する処理量算出部とを有する、分析装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記測定部の出力値の時間変化に基づいて、前記被処理物に対する処理速度が変化したことを判定する処理判定部をさらに備える、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記測定部の出力値の時間変化に基づいて、前記被処理物の面内における処理量のばらつきを算出するばらつき算出部をさらに備える、請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記測定部は、多重反射ミラーをさらに有し、
前記レーザ光源は、前記多重反射ミラーの間にレーザ光を入射させるものであり、
前記光検出器は、前記多重反射ミラーの間から出射した光を検出するものである、請求項1乃至3の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記測定部の出力値の時間変化に基づいて、前記被処理物に対する処理量の均一性を判定する均一性判定部をさらに備える、請求項1乃至4の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記均一性判定部は、前記測定部の出力値の時間変化における傾きに基づいて前記被処理物に対する処理量の均一性を判定する、請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
前記測定部は、前記被処理物に対する処理が行われていない状態でゼロ校正を行うゼロ校正機能を有する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記プロセスは、エッチングであり、
前記被処理物に対する処理量は、エッチング深さである、請求項1乃至7の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の分析装置の関係データの作成方法であって、
被処理物を処理するプロセスにおいて前記被処理物を処理し、
前記測定部の出力値を時間積分して時間積分値を算出し、
処理された前記被処理物の重量から処理量を算出し、
算出された時間積分値と、算出された処理量とから前記関係データを生成する、関係データの作成方法。
【請求項10】
被処理物を処理するプロセスにおいて前記被処理物を処理した際に生じる反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を測定する測定部を用いた分析方法であって、
前記測定部は、前記反応生成物を含む測定対象ガスにレーザ光を照射するレーザ光源と、前記測定対象ガスを透過したレーザ光を検出する光検出器と、前記光検出器の検出信号に基づいて前記反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を算出する信号処理部とを有するものであり、
前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値を算出し、前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値と前記被処理物に対する処理量との関係を示す関係データを用いて、前記被処理物に対する処理量を算出する、分析方法。
【請求項11】
被処理物を処理するプロセスにおいて前記被処理物を処理した際に生じる反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を測定する測定部を備える分析装置に用いられ、前記測定部の出力値を用いて前記被処理物に対する処理量を算出するための分析用プログラムであって、
前記測定部は、
前記反応生成物を含む測定対象ガスにレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記測定対象ガスを透過したレーザ光を検出する光検出器と、
前記光検出器の検出信号に基づいて前記反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を算出する信号処理部とを有し、
前記分析用プログラムは、
前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値を算出する時間積分部と、
前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値と前記被処理物に対する処理量との関係を示す関係データを格納する関係データ格納部と、
前記時間積分部により得られた時間積分値と前記関係データとから前記被処理物に対する処理量を算出する処理量算出部と、としての機能をコンピュータに発揮させる、分析用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体プロセス等のプロセスに用いられる分析装置、分析方法及び分析用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体プロセスの中で、例えばエッチングプロセスにおけるエンドポイント(エッチング深さ)をモニタするためには、例えば特許文献1に示すプロセス中のプラズマ発光を検出するプラズマ発光モニタ(OES;Optical Emission Spectrometer)が用いられている。
【0003】
しかしながら、OESでは、プラズマが作用することにより生じるプラズマ発光を検出しているため、プラズマを使用しないエッチングプロセスでは使用することができない。また、プロセスチャンバやOES等の個体差、取り付け位置の誤差、プロセスガスや反応生成物等による窓の汚れや発光種の状態等により、OESの出力値はプロセス毎、日毎、個体毎に異なる。このため、OESでは再現性の良いデータを取得することができず、OESの出力値を相対的に使用して、その変化の傾向からエンドポイントを決定している。
【0004】
その他、エンドポイントをモニタするために、非分散赤外線吸収法(NDIR;Non Dispersive Infrared)を用いた分析計(NDIR分析計)が用いられている。ところが、NDIR分析計では、エンドポイントを精度良く測定するには、分解能(感度)が足らない。特に近年では、半導体の微細化が進んでおり、半導体ノード(最小線幅)が小さくなるに連れて、分解能(感度)の不足による測定誤差が大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-170812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、被処理物を処理するプロセスにおける被処理物に対する処理量を精度良くモニタリングすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る分析装置は、被処理物を処理するプロセスにおいて被処理物を処理した際に生じる反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を測定する測定部と、前記測定部の出力値を用いて前記被処理物に対する処理量を算出する演算部とを備え、前記測定部は、前記反応生成物を含む測定対象ガスにレーザ光を照射するレーザ光源と、前記測定対象ガスを透過したレーザ光を検出する光検出器と、前記光検出器の検出信号に基づいて前記反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を算出する信号処理部とを有し、前記演算部は、前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値を算出する時間積分部と、前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値と前記被処理物に対する処理量との関係を示す関係データを格納する関係データ格納部と、前記時間積分部により得られた時間積分値と前記関係データとから前記被処理物に対する処理量を算出する処理量算出部とを有することを特徴とする。
【0008】
このような分析装置によれば、被処理物を処理するプロセスにおいて被処理物を処理した際に生じる反応生成物を、レーザ分光法により測定しているので、反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を精度良く測定することができる。そして、測定部の出力値を時間積分した時間積分値と被処理物に対する処理量との関係を用いて、被処理物に対する処理量を算出しているので、被処理物に対する処理量を精度良くモニタリングすることができる。
【0009】
前記演算部は、前記測定部の出力値の時間変化に基づいて、前記被処理物に対する処理速度が変化したことを判定する処理判定部をさらに備えることが望ましい。
この構成であれば、例えば同一の膜又は物質を処理している際に、測定部の出力値が変化した場合に、当該膜又は物質の処理速度が変化していることが分かる。
【0010】
上述したように、例えばエッチングプロセス等の半導体プロセスでは、被処理物の処理速度(エッチングレート)が面内においてばらつくことが考えられる。この面内におけるばらつきを算出するためには、前記演算部は、前記測定部の出力値の時間変化に基づいて、前記被処理物の面内における処理量のばらつきを算出するばらつき算出部をさらに備えることが望ましい。
【0011】
多重反射方式のレーザ分光法により反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値をより一層精度良く測定するためには、前記測定部は、多重反射ミラーを更に有し、前記レーザ光源は、前記多重反射ミラーの間にレーザ光を入射させるものであり、前記光検出器は、前記多重反射ミラーの間から出射した光を検出するものであることが望ましい。
【0012】
例えばエッチングプロセス等の半導体プロセスでは、被処理物の処理速度(エッチングレート)が面内においてばらつくことが考えられる。そして、この処理速度の面内分布は、反応生成物の発生具合により判別することができ、反応生成物の発生具合は、測定部の出力値から判別することができる。そのため、前記演算部は、前記測定部の出力値の時間変化に基づいて、前記被処理物に対する処理量の均一性を判定する均一性判定部をさらに備えることが望ましい。
【0013】
具体的な実施の態様としては、前記均一性判定部は、前記測定部の出力値の時間変化における傾きに基づいて被処理物に対する処理量の均一性を判定することが考えられる。
例えば、被処理物が第1層と、当該第1層の下にある第2層を有し、第1層のエッチングによる反応生成物の単位時間当たりの発生量と、第2層のエッチングによる反応生成物の単位時間当たりの発生量とが異なる場合を考える。この場合、エッチングレートの面内分布の均一性が高ければ、エッチングする層が第1層から第2層に変化する際に、測定部の出力値の時間変化における傾きの大きさは大きくなる。一方、エッチングレートの面内分布の均一性が低ければ、エッチングする層が第1層から第2層に変化する際に、測定部の出力値の時間変化における傾きの大きさは小さくなる。
【0014】
プロセスチャンバ内に付着している成分や光学窓の汚れ等による誤差要因を低減し、反応生成物を精度良く測定するためには、前記測定部は、前記被処理物に対する処理が行われていない状態でゼロ校正を行うゼロ校正機能を有することが望ましい。より具体的には、前記測定部は、プロセスチャンバ内に反応生成物が存在しない状態、例えば(1)被処理物に対する処理が行われておらず、且つ、プロセスチャンバが真空引きされている状態、又は、(2)被処理物に対する処理が行われておらず、且つ、プロセスチャンバ内に窒素やアルゴン等の不活性ガスを流している状態で、ゼロ校正を行うゼロ校正機能を有することが望ましい。
【0015】
前記レーザ光源には半導体レーザを用いることが考えられ、この半導体レーザは量子カスケードレーザであることが望ましい。
量子カスケードレーザは、室温で中赤外領域の波長を発振することが可能な唯一の実用的半導体レーザであり、多くのガス分子は中赤外領域に大きな吸収を持つため、分析計の向上を図ることができる。
【0016】
また、上述した分析装置の関係データの作成方法としては、例えばエリプソメータなどを用いて、処理された被処理物を複数点における処理量を測定し、それら複数点の処理量の平均値と測定部の出力値の時間積分値との相関を取る方法が考えられる。
しかしながら、複数点の処理量を測定する必要があり、作業が煩雑になるだけでなく、平均することにより誤差が生じる恐れがある。
そこで、本発明に係る分析装置の関係データの作成方法は、被処理物を処理するプロセスにおいて被処理物を処理し、前記測定部の出力値を時間積分して時間積分値を算出し、処理された前記被処理物の重量から処理量を算出し、算出された時間積分値と、算出された処理量とから前記関係データを生成することを特徴とする。
【0017】
このような分析装置の関係データの作成方法によれば、処理された被処理物の重量から処理量を算出しているので、関係データの作成が簡易となり、また、正確な関係データを作成することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る分析方法は、被処理物を処理するプロセスにおいて被処理物を処理した際に生じる反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を測定する測定部を用いた分析方法であって、前記測定部は、前記反応生成物を含む測定対象ガスにレーザ光を照射するレーザ光源と、前記測定対象ガスを透過したレーザ光を検出する光検出器と、前記光検出器の検出信号に基づいて前記反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を算出する信号処理部とを有するものであり、前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値を算出し、前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値と前記被処理物に対する処理量との関係を示す関係データを用いて、前記被処理物に対する処理量を算出することを特徴とする。
【0019】
加えて、本発明に係る分析用プログラムは、被処理物を処理するプロセスにおいて前記被処理物を処理した際に生じる反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を測定する測定部を備える分析装置に用いられ、前記測定部の出力値を用いて前記被処理物に対する処理量を算出するための分析用プログラムであって、前記測定部は、前記反応生成物を含む測定対象ガスにレーザ光を照射するレーザ光源と、前記測定対象ガスを透過したレーザ光を検出する光検出器と、前記光検出器の検出信号に基づいて前記反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を算出する信号処理部とを有し、前記分析用プログラムは、前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値を算出する時間積分部と、前記測定部の出力値を時間積分した時間積分値と前記被処理物に対する処理量との関係を示す関係データを格納する関係データ格納部と、前記時間積分部により得られた時間積分値と前記関係データとから前記被処理物に対する処理量を算出する処理量算出部と、としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このように構成した本発明によれば、被処理物を処理するプロセスにおける被処理物に対する処理量を精度良くモニタリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る分析装置を示す模式図である。
図2】同実施形態における測定部の信号処理装置及び演算部の機能構成図である。
図3】同実施形態におけるレーザ発振波長の変調方法を示す模式図である。
図4】同実施形態における発振波長、光強度I(t)、対数強度L(t)、特徴信号F(t)、相関値Sの一例を示す時系列グラフである。
図5】同実施形態の単独相関値及びサンプル相関値を用いた濃度又は分圧算出の概念図を示す図である。
図6】同実施形態の測定部の出力値とエッチングレートの相関と、従来のプラズマ発光モニタ(OES)の出力値とエッチングレートの相関を示す実験結果である。
図7】変形実施形態の測定部の信号処理装置及び演算部の機能構成図である。
図8】変形実施形態のエッチングの各段階と、それら各段階における測定部の出力値を示す図である。
図9】変形実施形態の(a)演算部の機能構成図、(b)処理判定を説明する図である。
図10】変形実施形態の(a)演算部の機能構成図、(b)ばらつき算出の説明図である。
図11】変形実施形態のエッチングの終点(エンドポイント)の算出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る分析装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0023】
本実施形態に係る分析装置100は、エッチングされる被処理物Wのエッチング深さをモニタリングするためのものである。この分析装置100は、被処理物Wをエッチングした際に生じる反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を測定し、その濃度、分圧またはこれらに関連する値を示す出力値を用いてエッチング深さを求めるものである。
【0024】
ここで、分析装置100は、図1に示すように、エッチングが行われるプロセスチャンバPCの排気管Hに組み込まれて設けられ、当該排気管Hを流れるガス(以下、測定対象ガス)に含まれる反応生成物を分析する構成としてある。なお、本実施形態では、排気管Hにはターボ分子ポンプTMP及びドライポンプDPが設けられており、分析装置100は、ターボ分子ポンプTMP及びドライポンプDPの間に設けられているが、これに限られない。
【0025】
具体的に分析装置100は、図1及び図2に示すように、被処理物Wをエッチングした際に生じる反応生成物の濃度、分圧又はこれらに関連する値を測定する測定部2と、測定部2の出力値を用いて被処理物Wのエッチング深さを算出する演算部3とを備えている。
【0026】
<測定部2の構成>
測定部2は、測定対象ガスに含まれる反応生成物(ここではSiF)の濃度を連続測定するものであり、例えば、赤外レーザ吸収変調法(特許6886507号参照;IRLAM(Infrared Laser Absorption Modulation))を用いたものである。
【0027】
具体的に測定部2は、図1及び図2に示すように、測定対象ガスを挟んで設けられた一対の多重反射ミラーM1、M2を有する測定セル21と、測定セル21にレーザ光を照射して、一対の多重反射ミラーM1、M2の間にレーザ光を入射させる半導体レーザ22と、一対の多重反射ミラーM1、M2の間から出射し、測定セル21を通過したレーザ光を検出する光検出器23と、光検出器23の検出信号に基づいて反応生成物の濃度又は分圧を算出する信号処理装置24とを有している。
【0028】
測定セル21は、内部に一対の多重反射ミラーM1、M2が設けられることにより、レーザ光を多重反射する所謂ヘリオットセルと呼ばれるものである。なお、測定セル21は、ヘリオットセルの他に、測定対象ガスを挟んで設けられた複数の多重反射ミラーを有するホワイトセルであっても良いし、測定対象ガスを取り囲む円環状の多重反射ミラーを有するリングセルであっても良い。
【0029】
半導体レーザ22は、量子カスケードレーザである。量子カスケードレーザは、多段量子井戸構造によるサブバンド間遷移を用いた半導体レーザであり、約4μm~約20μmの波長範囲において特定の波長のレーザ光を発振するものである。この半導体レーザ22は、与えられた電流(又は電圧)によって、発振波長を変調(変える)ことが可能なものである。
【0030】
光検出器23は、ここでは、比較的安価なサーモパイル等の熱型のものを用いているが、その他のタイプのもの、例えば、応答性がよいHgCdTe、InGaAs、InAsSb、PbSe等の量子型光電素子を用いても構わない。
【0031】
信号処理装置24は、バッファ、増幅器等からなるアナログ電気回路と、CPU、メモリ等からなるデジタル電気回路と、それらアナログ/デジタル電気回路間を仲立ちするADコンバータ、DAコンバータ等とを具備したものである。
【0032】
そして、信号処理装置24は、前記メモリの所定領域に格納した所定のプログラムに従ってCPUやその周辺機器が協働することによって、図2に示すように、半導体レーザ22の出力を制御する光源制御部241や、光検出器23の検出信号を受信し、その値を演算処理して測定対象成分の濃度、分圧又はこれらに関連する値を算出する信号処理部242としての機能を発揮する。なお、濃度又は分圧に関連する値には、例えば吸収強度などの濃度又は分圧と相関のある値を含む。
【0033】
以下に各部を詳述する。以下では信号処理部242が測定対象成分の濃度を算出する例を挙げて説明する。
【0034】
光源制御部241は、電流(又は電圧)制御信号を出力することによって半導体レーザ22の電流源(又は電圧源)を制御するものである。具体的に光源制御部241は、半導体レーザ22の駆動電流(又は駆動電圧)を所定周波数で変化させ、半導体レーザ22から出力されるレーザ光の発振波長を中心波長に対して所定周波数で変調させる(図3参照)。これによって、半導体レーザ22は、所定の変調周波数で変調された変調光を射出することになる。
【0035】
この実施形態においては、光源制御部241は駆動電流を三角波状に変化させ、発振周波数を三角波状に変調する(図4の「発振波長」参照)。実際には、発振周波数が三角波状になるように、駆動電流の変調を別の関数で行う。また、レーザ光の発振波長は、図3に示すように、測定対象成分の光吸収スペクトルのピークを中心波長として変調されるようにしてある。その他、光源制御部241は、駆動電流を正弦波状や鋸波状、または任意の関数状に変化させ、発振周波数を正弦波状や鋸波状、または任意の関数状に変調してもよい。
【0036】
信号処理部242は、対数演算部242a、相関値算出部242b、格納部242c、濃度算出部242d等からなる。
【0037】
対数演算部242aは、光検出器23の検出信号である光強度信号に対数演算を施すものである。光検出器23により得られる光強度信号の継時変化を示す関数I(t)は、図4の「光強度I(t)」のようになり、対数演算を施すことにより、図4の「対数強度L(t)」のようになる。
【0038】
相関値算出部242bは、測定対象ガスの測定時に得られるサンプル光の強度に関連する強度関連信号と複数の所定の特徴信号とのそれぞれの相関値を算出するものである。特徴信号とは、強度関連信号と相関を取ることで、強度関連信号の波形特徴を抽出するための信号である。特徴信号としては、例えば正弦波信号や、それ以外の強度関連信号から抽出したい波形特徴に合わせた様々な信号を用いることができる。ここでは、相関値算出部62は、対数演算された光強度信号(対数強度L(t))を強度関連信号として用いる。
【0039】
また、相関値算出部242bは、測定対象成分(本実施形態では反応生成物)の種類数及び干渉成分の種類数を合わせた数よりも大きい数の特徴信号F(t)(i=1,2,・・・,n)を用いて、下式(数1)により、サンプル光の強度関連信号と複数の特徴信号とのそれぞれの相関値である複数のサンプル相関値Sを算出するものである。なお、数1におけるTは、変調の周期である。
【0040】
【数1】
【0041】
相関値算出部242bは、サンプル相関値を算出する時、数1のように、サンプル光の強度関連信号L(t)と複数の特徴信号F(t)との相関値Sからリファレンス光の強度関連信号L(t)と複数の特徴信号F(t)との相関値であるリファレンス相関値Rを差し引く補正をしたサンプル相関値S’を算出することが望ましい。これにより、サンプル相関値に含まれるオフセットを除去し、測定対象成分及び干渉成分の濃度に比例した相関値となり、測定誤差を低減できる。なお、リファレンス相関値を差し引かない構成であっても良い。
【0042】
ここで、リファレンス光の取得タイミングは、サンプル光と同時、測定の前後又は任意のタイミングである。リファレンス光の強度関連信号又はリファレンス相関値は、予め取得して格納部242cに記憶させておいても良い。また、リファレンス光を同時に取得する方法は、例えば、光検出器23を2つ設けて、半導体レーザ22からの変調光をビームスプリッタなどにより分岐させて、一方をサンプル光測定用とし、他方をリファレンス光測定用とすることが考えられる。
【0043】
本実施形態では、相関値算出部242bは、複数の特徴信号F(t)として、正弦関数よりも対数強度L(t)の波形特徴を捉えやすい関数を用いている。測定対象成分及び1つの干渉成分を含むサンプルガスの場合には、2つ以上の特徴信号F(t)、F(t)を用いることが考えられ、2つの特徴信号F(t)、F(t)としては、例えば、吸収スペクトルの形に近いローレンツ関数に基づいた関数と、当該ローレンツ関数に基づいた関数の微分関数とを用いることが考えられる。また、特徴信号としては、ローレンツ関数に基づいた関数の代わりに、フォークト関数に基づいた関数、又はガウス関数に基づいた関数等を用いることもできる。このような関数を特徴信号に用いることで、正弦関数を用いた時よりもより大きな相関値を得ることができ、測定精度を向上させることができる。
【0044】
ここで、特徴信号は、直流成分を除去、すなわち変調周期で積分した時にゼロになるようにオフセットを調整することが望ましい。こうすることで、光強度の変動による強度関連信号にオフセットが乗った時の影響を除去することができる。なお、特徴信号の直流成分を除去する代わりに、強度関連信号の直流成分を除去してもよいし、特徴信号と強度関連信号の両方とも直流成分を除去してもよい。その他、特徴信号として、測定対象成分及び/又は干渉成分の吸収信号のサンプル値、またはそれらを模したものをそれぞれ用いてもよい。
【0045】
なお、2つの特徴信号F(t)、F(t)を互いに直交する直交関数列又は直交関数列に近い関数列とすることにより、対数強度L(t)の特徴をより効率的に抽出することができ、後述する連立方程式により得られる濃度を精度良くすることができる。
【0046】
格納部242cは、測定対象成分及び各干渉成分が単独で存在する場合のそれぞれの強度関連信号と複数の特徴信号F(t)とから求められた測定対象成分及び各干渉成分それぞれの単位濃度当たりの相関値である単独相関値を格納するものである。この単独相関値を求めるのに用いる複数の特徴信号F(t)は、相関値算出部242bで用いる複数の特徴信号F(t)と同一である。
【0047】
ここで、格納部242cは、単独相関値を格納する時、測定対象成分及び各干渉成分が単独で存在する場合の相関値からリファレンス相関値を差し引いた上で、単位濃度当たりに換算する補正をした単独相関値を格納することが望ましい。これにより、単独相関値に含まれるオフセットを除去し、測定対象成分及び干渉成分の濃度に比例した相関値となり、測定誤差を低減できる。なお、リファレンス相関値を差し引かない構成であっても良い。
【0048】
濃度算出部242dは、相関値算出部242bにより得られた複数のサンプル相関値を用いて測定対象成分の濃度を算出するものである。
【0049】
具体的に濃度算出部242dは、相関値算出部242bにより得られた複数のサンプル相関値と、格納部242cに格納された複数の単独相関値とに基づいて、測定対象成分の濃度を算出するものである。より詳細には、濃度算出部242dは、相関値算出部242bにより得られた複数のサンプル相関値と、格納部242cに格納された複数の単独相関値と、測定対象成分及び各干渉成分それぞれの濃度とからなる連立方程式を解くことにより、測定対象成分の濃度を算出するものである。なお、図5に濃度算出部242dにおける単独相関値及びサンプル相関値を用いた濃度又は分圧算出の概念図を示している。
【0050】
測定対象ガス中に1つの測定対象成分(ここではSiF)と1つの干渉成分とが含まれる場合には、濃度算出部242dは、相関値算出部242bが算出したサンプル相関値S’、S’と、格納部242cの単独相関値s1t、s2t、s1i、s2iと、測定対象成分及び各干渉成分それぞれの濃度Ctar、Cintとからなる以下の二元連立方程式を解く。なお、s1tは1番目の特徴信号における測定対象成分の単独相関値、s2tは2番目の特徴信号における測定対象成分の単独相関値、s1iは1番目の特徴信号における干渉成分の単独相関値、s2iは2番目の特徴信号における干渉成分の単独相関値である。
【0051】
【数2】
【0052】
これにより、上式(数2)の連立方程式を解くという簡単かつ確実な演算により、干渉影響が取り除かれた測定対象成分(反応生成物)の濃度Ctarを決定することができる。
【0053】
なお、干渉成分が2つ以上存在すると想定し得る場合でも、干渉成分の数だけ、単独相関値を追加して、成分種の数と同じ元数の連立方程式を解くことで、同様に干渉影響が取り除かれた測定対象成分の濃度を決定することができる。
【0054】
<演算部3の構成>
次に、測定部2の出力値を用いて被処理物Wのエッチング深さを算出する演算部3について説明する。ここで、測定部2の出力値は、信号処理部242により得られた反応生成物の濃度又は当該濃度に関連する値である。
【0055】
演算部3は、バッファ、増幅器等からなるアナログ電気回路と、CPU、メモリ等からなるデジタル電気回路と、それらアナログ/デジタル電気回路間を仲立ちするADコンバータ、DAコンバータ等とを具備したものである。
【0056】
そして演算部3は、前記メモリの所定領域に格納した所定の分析用プログラムに従ってCPUやその周辺機器が協働することによって、図2に示すように、エッチング深さ(処理量)を求めるための関係データを格納する関係データ格納部31と、測定部2の出力値を時間積分した時間積分値を算出する時間積分部32と、時間積分部32により得られた時間積分値と関係データとからエッチング深さ(処理量)を算出する深さ算出部(処理量算出部)33とを有している。
【0057】
関係データ格納部31は、測定部2の出力値を時間積分した時間積分値とエッチング深さとの関係を示す関係データを格納している。この関係データは、予め作成されて関係データ格納部31に格納される。
【0058】
ここで、関係データの作成方法について説明する。
まず、被処理物Wをエッチングし、測定部2の出力値を時間積分(0~t1)して時間積分値Gt1を算出する。
【0059】
また、エッチングされた被処理物Wの重量Wt1を測定し、初期重量Wとの差分(W-Wt1)を計算する。そして、被処理物(エッチングされた膜)の密度ρと、エッチングされた領域の面積Aとを用いて、エッチング深さdを以下の式により求める。
t1=(W-Wt1)/(ρ×A)
【0060】
次に、算出された時間積分値Gt1と、算出されたエッチング深さdt1とから関係データを生成する。この関係データは、上記の通り、時間t1までの1組のデータ(Gt1,dt1)を用いて作成することもできるし、複数時点(t1,t2,・・・tn)の複数組のデータ(Gt1,dt1)~(Gtn,dtn)を用いて作成することもできる。また、関係データは、被処理物Wの層構成や材質等の種類それぞれに合わせて作成しておくことが考えられる。
【0061】
時間積分部32は、測定部2の出力値を受け取り、その出力値を時間積分して時間積分値Gを算出するものである。ここで、時間積分部32は、エッチング開始からの経過時間Tで、測定部2の出力値を時間積分する。本実施形態における測定部2の出力値は、濃度算出部242dにより算出された濃度である。
【0062】
深さ算出部(処理量算出部)33は、時間積分部32により得られた時間積分値Gを受け取り、関係データ格納部31に格納された関係データから、エッチング深さdを算出するものである。なお、深さ算出部33により得られたエッチング深さdはディスプレイ等の表示部4に表示しても良いし、例えば別の装置にデータ送信する等のように、その他の態様で出力しても良い。その他、表示部4には、測定部2の出力値又はその経時変化を示すグラフを表示することもできるし、エッチングレートを表示することもできる。また、演算部3は、深さ算出部33により得られたエッチング深さdが所定の閾値を超える等の所定の条件を満たした場合にアラームを出す等の報知部を有しても良い。
【0063】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の分析装置100によれば、被処理物Wをエッチングした際に生じる反応生成物を、多重反射方式の半導体レーザ分光法により測定しているので、反応生成物の濃度又は分圧を精度良く測定することができる。そして、測定部2の出力値を時間積分した時間積分値とエッチング深さとの関係を用いて、エッチング深さを算出しているので、エッチング深さを精度良くモニタリングすることができる。
【0064】
特に本実施形態では、測定部2にIRLAMを用いているので、測定対象成分である反応生成物とは別の干渉成分による干渉影響を低減することができる。その結果、反応生成物の濃度を高精度に測定することができ、関係データを精度の良いものとし、また、エッチング深さを精度良く算出することができる。
【0065】
ここで、図6に、同実施形態の測定部(IRLAM)の出力値とエッチングレートの相関と、従来のプラズマ発光モニタ(OES)の出力値とエッチングレートの相関を示す実験結果を示す。「1st」と「2nd」とで同一のエッチング条件で同一構成の被処理物をエッチングし、それぞれにおいて、本実施形態の測定部2とエッチングレートとの相関(IRLAM vs ER)、従来のプラズマ発光モニタ(OES)とエッチングレートとの相関(OES vs ER)を求めた。
【0066】
本実施形態の測定部2では、エッチングレートと出力値との相関に再現性があることがわかり、また、エッチングレートと出力値の相関において常に直線性が良いことが分かる。このようにエッチングレートと出力値との相関に再現性があることから、エッチングレートの時間積分値(エッチング深さ)と出力値の時間積分値との相関にも再現性があることが分かる。一方で、従来のプラズマ発光モニタ(OES)では、エッチングレートと出力値との相関に再現性がなく、場合によっては、傾きの符号(±)が変化してしまう。
【0067】
<その他の実施形態>
例えば、図7に示すように、演算部3は、測定部2の出力値の時間変化に基づいて、エッチングの均一性を判定する均一性判定部34をさらに備えていても良い。この均一性判定部34は、測定部2の出力値の時間変化における傾きに基づいてエッチングの均一性を判定する。
【0068】
ここで、Si基板上にSiO膜が形成された半導体基板にレジスト膜を形成した被処理物をエッチングする場合には、エッチングレートの面内分布により、測定部2の出力値(ここでは、SiFの分圧)は、図8に示すようになる。
【0069】
図8において(1)(2)は、半導体基板においてSiO膜のみがエッチングされている状態であり、(3)は、半導体基板においてSiO膜だけでなくSi基板もエッチングされている状態である。また、(4)(5)は、半導体基板においてSiO膜のエッチングが終了しSi基板のみのエッチングが継続している状態である。(3)における出力値の時間変化における傾きにより、エッチングの均一性を判定することができる。(3)における出力値の時間変化における傾きが大きい場合には、エッチングの面内分布の均一性が高いことを示し、前記傾きが小さい場合には、エッチングの面内分布の均一性が低いことを示す。
【0070】
例えば、均一性判定部34は、エッチングする層が変化したことに起因する出力値の時間変化における傾きと、所定のしきい値とを比較し、エッチングの面内分布の均一性を判定することが考えられる。
【0071】
また、演算部3は、測定部2の出力値の時間変化に基づいて、被処理物に対する処理速度が変化したことを判定する処理判定部35をさらに備えていても良い。
【0072】
この処理判定部35は、例えばエッチングしている膜厚が既知の場合に、同一種の膜をエッチングしている最中の測定部2の出力値の時間変化に基づいて、エッチングレードが変化したことを判定する。具体的には、同一種の膜をエッチングしている最中は、エッチングの条件を変更しない限り測定部2の出力値が一定又は略一定であることが考えられる。このとき、処理判定部35は、図9に示すように、その出力値が所定値以上増加又は減少した場合に、エッチングレートが不安定であると判定する。なお、エッチングする膜が変わる遷移期間による出力値ではなく、同一種の膜がエッチングされている最中での出力値であることの判定は、出力値の時間積分値と関係データとからエッチング深さを求め、それと既知の膜厚とを比べることにより行うことができる。つまり、出力値の時間積分値と関係データとから求められたエッチング深さが既知の膜厚よりも小さければ、同一種の膜がエッチングされている最中であると判定できる。
【0073】
さらに、演算部3は、測定部2の出力値の時間変化に基づいて、被処理物の面内における処理量のばらつきを算出するばらつき算出部36をさらに備えていても良い。
【0074】
このばらつき算出部36は、図10に示すように、測定部2の出力値における第1安定区間(第1層のみのエッチング)と、当該安定区間に続く遷移区間(第1層及びその下の第2層のエッチング)と、当該遷移区間に続く第2安定区間(第2層のみのエッチング)とから、最大エッチング深さと、最小エッチング深さとを算出することができる。
【0075】
ここで、最大エッチングレートをx、最小エッチングレートをx、平均エッチングレートをxave、第1安定区間の終了時点をt、遷移区間の終了時点をtとすると、測定部2の出力値の時間積分値Gから第1層の膜厚hが求まり、以下の関係となる。
=h/x、t=h/x
これらの式から、t/t=x/x(t:t=x:x)となる。
これにより、t:t:tave=x:x:xaveであり、
、t、xaveが既知であり、tave=(t+t)/2であるから、x、xが算出できる。なお、xaveは、時間積分値及び関係データから求まる平均エッチング深さを時間で割ることにより求まるし、エッチレートと出力値との相関から求めても良い。
その結果、最大エッチング深さ(x×t)及び最小エッチング深さ(x×t)を算出するとこができ、エッチング深さのばらつきを判定することができる。
【0076】
また、演算部3は、図11に示すように、測定部2の出力値を一次微分又は二次微分することによって、エッチングの終点(エンドポイント)を算出するようにしても良い。ここでは、第1層(SiO)及び第2層(Si)を有する被処理物において、第1層(SiO)から第2層(Si)への遷移期間が終了した時点をエンドポイントとして検出する例を示している。
【0077】
前記実施形態の測定部2は、エッチングが行われていない状態でゼロ校正を行うゼロ校正機能を有している。より具体的には、測定部2は、プロセスチャンバPC内に反応生成物が存在しない状態、例えば(1)被処理物Wに対する処理が行われておらず、且つ、プロセスチャンバPCが真空引きされている状態、又は、(2)被処理物Wに対する処理が行われておらず、且つ、プロセスチャンバPC内に窒素やアルゴン等の不活性ガスを流している状態で、ゼロ校正を行うゼロ校正機能を有している。これにより、プロセスチャンバPC内に付着している成分や光学窓の汚れ等による誤差要因を低減し、反応生成物を精度良く測定することができる。
【0078】
また、前記実施形態の測定部2は、反応生成物の濃度又は濃度に関連する値を測定するものであったが、測定対象ガスにおける反応生成物の分圧又は分圧に関連する値を測定するものであっても良い。この場合、測定部2の出力値は、信号処理部242により得られた反応生成物の分圧又は当該分圧に関連する値である。
【0079】
さらに、前記実施形態では、測定部2をプロセスチャンバPCの排気管Hに組み込んで設けた構成であったが、排気管Hから分岐したバイパス管に設けた構成でも良いし、プロセスチャンバPCに排気管Hとは別に接続された測定用配管に設けた構成でも良い。また、プロセスチャンバPCの内部に一対の多重反射ミラーM1、M2を設けた構成としても良いし、プロセスチャンバPCの側壁や上壁等の囲繞壁に接続しても良い。
【0080】
その上、前記実施形態の測定部2の信号処理装置24と演算部3との機能を1つのコンピュータ(情報処理装置)に備えさせても良い。
【0081】
前記実施形態では、半導体プロセスとしてエッチング処理を例に挙げて、そのエッチング深さなどを算出する構成を説明したが、その他の半導体プロセス処理、例えば、成膜処理で生じる反応生成物を測定することにより成膜量などを算出する構成であっても良いし、プロセスチャンバ又はウェハ等の被処理物のクリーニングプロセスにおける処理量を算出する構成であっても良い。また、本発明は、有機ELや太陽電池等の製造プロセスに適用することも可能である。
【0082】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0083】
100・・・分析装置
W・・・被処理物
2・・・測定部
M1、M2・・・多重反射ミラー
22・・・半導体レーザ(レーザ光源)
23・・・光検出器
242・・・信号処理部
3・・・演算部
31・・・関係データ格納部
32・・・時間積分部
33・・・深さ算出部(処理量算出部)
34・・・均一性判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11