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特開2024-134171GaN層とCu-Ga-O系層によるp-nヘテロ構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134171
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】GaN層とCu-Ga-O系層によるp-nヘテロ構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20240926BHJP
   C30B 19/12 20060101ALI20240926BHJP
   C30B 19/04 20060101ALI20240926BHJP
   C30B 29/22 20060101ALI20240926BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240926BHJP
   B01J 27/24 20060101ALI20240926BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20240926BHJP
   H01L 21/208 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L31/10 A
C30B19/12
C30B19/04
C30B29/22 Z
B01J35/02 J
B01J27/24 M
C01B3/04 A
H01L21/208 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044320
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(72)【発明者】
【氏名】藤 正督
(72)【発明者】
【氏名】瀬奈 ハディ
【テーマコード(参考)】
4G077
4G169
5F053
5F149
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BC50
4G077CG02
4G077CG07
4G077ED05
4G077ED06
4G077HA06
4G077QA04
4G169AA03
4G169BA48A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB11A
4G169BB11B
4G169BC17A
4G169BC17B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169CB81
4G169DA06
4G169EA08
4G169EB14Y
4G169EC28
4G169EE06
4G169EE09
4G169HA12
4G169HB06
4G169HC15
4G169HD06
4G169HE09
5F053AA03
5F053AA23
5F053AA50
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5F053BB26
5F053DD20
5F053FF01
5F053GG01
5F053HH04
5F053JJ01
5F053LL10
5F053RR04
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5F149AA03
5F149AB01
5F149AB07
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5F149CB02
5F149GA02
5F149GA06
5F149XB22
5F149XB40
(57)【要約】
【課題】
p型半導体とn型半導体両方とも直接遷移であって、簡便な成長法により、p-nヘテロ構造(p-n接合半導体)を提供すること。
【解決手段】
n型半導体の層と、p型半導体のCu-Ga-O系の層とが接合した積層を含むことを特徴とするp-nヘテロ構造であって、好ましくはn型半導体の層はGaN層1であり、好ましくはCu-Ga-O系はCuGaO2であり、照射される波長によって反転する電位の位置が異なるp-nヘテロ構造である。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体の層と、p型半導体のCu-Ga-O系の層とが接合した積層を含むことを特徴とするp-nヘテロ構造。
【請求項2】
n型半導体の層はGaN層であることを特徴とする請求項1に記載のp-nヘテロ構造。
【請求項3】
前記Cu-Ga-O系はCuGaOであることを特徴とする請求項1又は2に記載のp-nヘテロ構造。
【請求項4】
照射される波長によって反転する電位の位置が異なることを特徴とする請求項1又は2に記載のp-nヘテロ構造。
【請求項5】
照射される波長によって反転する電位の位置が異なることを特徴とする請求項3に記載のp-nヘテロ構造。
【請求項6】
n型半導体の層上に置かれた、Cu塩の溶融塩と酸化ガリウム(Ga)の混合物により、前記n型半導体の層上への液相エピタキシャル成長を行うことを特徴とするp-nヘテロ構造の製造方法。
【請求項7】
n型半導体の層はGaN層であることを特徴とする請求項6に記載のp-nヘテロ構造の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaN層とCu-Ga-O系層によるp-nヘテロ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、近年注目を集めているGaN基板はn型半導体であり、p型と組み合わせると様々な電子デバイスが可能になる。GaNを異種p型半導体と組み合わせるいわゆるヘテロ構造の報告例が少なく、MoSに限られている(他にもあるが良い性能が出ていない)。GaNは直接遷移バンドギャップ半導体であり、バンド構造も光照射下で水を水素と酸素に分解できるが、その効率が低い。また、バンドギャップが大きいため可視光を吸収できない。そこで、GaNとバンドギャップの小さいp型半導体を接合すれば可視光下で活性な光触媒が可能になると考えられるが、未だ良い組み合わせのp型半導体が見つかっていなかった。すなわち光触媒は様々な分野で期待されているが、未だ高効率な材料の報告例が少ない。
【0003】
特許文献1には、面発光型半導体レーザ装置についてp型である銅ガリウム酸化物(CuGaO)が、n型のGaAs基板上に、Al組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたn型に積層された構造が記載されている。
【0004】
非特許文献1には、デラフォサイトABO(A:Pt、Pd、Cu、Ag、およびB:Al、Ga、In、Sc、Fe、Y、La)の一般的な構造を有する酸化銅ガリウム(CuGaO)は、ウルツ鉱型結晶構造とp型の特徴を持つ可視光領域に直接バンドギャップを有することが記載されている。この材料は、その高い正孔移動度と安定性のおかげで、主に太陽電池吸収剤として使用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-113134号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Omata, T.; Nagatani, H.; Suzuki, I.; Kita, M.; Yanagi, H.; Ohashi, N. Wurtzite CuGaO2: A New Direct and Narrow Band Gap Oxide Semiconductor Applicable as a Solar Cell Absorber. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136 (9), 3378-3381. https://doi.org/10.1021/ja501614n.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
p-n接合はキャリアの寿命を長くする面で効果的だが、複雑な成長法を要し、良い組み合わせのp型半導体とn型半導体が見つかっていないという問題があった。そこで、本発明では、pとnの両方とも直接遷移(direct bandgap)であるとさらに光を吸収するロスが減るので、簡便な成長法により、p型CuGaOとn型GaNの組み合わせによるp-nヘテロ構造(p-n接合半導体、以下「CuGaO/GaN基板」と言う場合がある)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
[1]n型半導体の層と、p型半導体のCu-Ga-O系の層とが接合した積層を含むことを特徴とするp-nヘテロ構造である。
[2]n型半導体の層はGaN層であることを特徴とする[1]に記載のp-nヘテロ構造である。
[3]前記Cu-Ga-O系はCuGaOであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のp-nヘテロ構造である。
[4]照射される波長によって反転する電位の位置が異なることを特徴とする[1]又は[2]に記載のp-nヘテロ構造である。
[5]照射される波長によって反転する電位の位置が異なることを特徴とする[3]に記載のp-nヘテロ構造である。
[6]n型半導体の層上に置かれた、Cu塩の溶融塩と酸化ガリウム(Ga)の混合物により、前記n型半導体の層上への液相エピタキシャル成長を行うことを特徴とするp-nヘテロ構造の製造方法である。
[7]n型半導体の層はGaN層であることを特徴とする[6]に記載のp-nヘテロ構造の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるp-nヘテロ構造(p-n接合半導体)は、可視光光触媒として高い量子効率(AQE)を有し、オンオフだけでなく,照射波長に依存して光電流がプラスあるいはマイナスとなるフォトダイオードとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一つの実施形態である、GaN基板上に成長させたCuGaO膜(CuGaO/GaN基板)の3D鳥瞰図であって(a)微分干渉コントラスト光学顕微鏡、(b)レーザー共焦点イメージング顕微鏡によるものを、それぞれ示す図である。
図2】2μm×2μmのスキャン領域におけるGaN基板上のCuGaO膜(層)のAFMイメージを示す図である。
図3】(a)GaN基板上に成長させたCuGaO膜のXRDプロファイルと、そのCuGaO膜が基板上に成長したGaN基板、(b)エピタキシャル成長前後のGaN基板のラマンスペクトルを、それぞれ示す図である。
図4】GaN基板上に成長させCuGaO膜のXRDプロファイルを示す図である。
図5】るつぼ内部で合成された粉末試料のXRDプロファイルを示す図である。
図6】るつぼ内部で合成された粉末試料のSEMマイクログラフを示す図である。
図7】(a)GaN基板上のCuGaO膜のSEM断面像、(b)CuGaO膜表面のSEM顕微鏡像と対応する元素のEDSマッピング、(c)O Kα、(d)Cu Kα、(e)Ga Kαを、それぞれ示す図である。
図8】(a)GaN基板と、GaN基板上のCuGaのUV-Vis拡散反射率スペクトル、(b)GaN基板のバンドギャップ推定、(c)GaN基板上のCuGaOのバンドギャップ推定を、それぞれ示す図である。
図9】(a)粉末試料とCuGaO/GaN基板による光触媒の水素生成量、(b)CuGaO/GaN基板による水素発生の安定性試験のための3サイクル、(c)粉末試料とCuGaO/GaN基板による光触媒の酸素生成量を、それぞれ示す図である。
図10】光触媒安定性確認後のGaN基板上のCuGaO膜の光触媒性試験のXRDプロファイルを示す図である。
図11】GaN基板上のCuGaO膜表面上のPt助触媒のSEMマイクログラフを示す図である。
図12】水熱法によるCuGaO粉末のXRDプロファイルを示す図である。
図13】水熱法によるCuGaO等の光触媒の水素生成量を示す図である。
図14】GaN基板およびCuGaO/GaN基板のカソードルミネッセンススペクトルを示す図である。
図15】光(UV+VIS)のオンオフを伴う電流電位曲線の一例を示す図である。
図16】3種類の光に対するCuGaO/GaN基板の電流電位曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0012】
本発明ではCuGaOと、n型半導体として特に窒化ガリウム(GaN)のp-nヘテロ構造を創出した。GaNは、固有のn型機能を持つ直接バンドギャップ半導体でもあり、0.7~6.2eVの調整可能な直接バンドギャップと高い電子移動度(>10cm/Vs)を備えた、優れた電子的および光電子的特性を備えている。これらすべての優れた特性により、効率的な光触媒水分解反応のために、2つの直接バンドギャップ半導体のp-n接合を設計することができた。以下に、p-nヘテロ接合が水分解によって、水素/酸素生成反応にどのように有効であるかを示すが、CuGaOとGaNはいずれも水を効率的に分解することはできない。
【0013】
n型半導体として特に窒化ガリウム(GaN)が好ましいのは、前述した通りであるが、GaN層すなわちGaN基板について、好ましくは以下のようである。
ワイドバンドギャップ半導体であるGaNはそのバンドギャップは3.4eVであり、素材そのものの性能指数(εμeEc)で比較するとシリコンに対し1100倍以上の性能を示す、μ:電子移動度、E:破壊電界。 現在GaNは照明器具だけでなく周辺技術開発が進められており、従来のシリコン半導体を使用している箇所に、GaNを用いることで、電子機器のさらなる小型化や高効率化を実現できる。
なお、GaN層(基板)以外サファイヤ基板等を使用してもよい。
【0014】
CuCl2はCu塩としては、融点が498°Cであり比較的に低い温度で溶融する観点から、溶融塩として適宜に選択することができる。CuClは溶融塩と同時にCu源の役割を果たし、CuClが特に好ましい。
また、Gaについて、好ましくは以下のようである。Gaは他のガリウム源に比べ安価であり本発明ではCuと容易に反応することが判明した。
【実施例0015】
CuGaO厚膜2(図3、7参照)を、厚さ420μm、転位密度4.6×10cm-2、ミスカット角0.5°のGaNウェハ1(CuGaO膜2の下側にある、図3参照)のc面上に、液相エピタキシャル法により成長させた。11-20方向に向かって0.5°、ドナー濃度は3×1016cm-3であった。成長溶液と反応物を保持するためにアルミナるつぼを使用し、浴溶媒とCu源として純度99.9%のCuClを選択した。溶質として用いた5mmolのGa粉末(純度99.99%)を45mmolのCuClと混合した。CuClとGaの混合物を、予め1×2cmの長方形に切断したエピレディGaN基板上に置いた。るつぼを40℃/minの速度で800℃に加熱し、3時間保持した後、2℃/minの速度で室温まで冷却した。未反応粉末が基板の表面に存在しないことを確認するために、基板を水中で10分間超音波処理した。このようにして、ワンポット液相エピタキシャル成長法で実現したp-n接合半導体(p-nヘテロ構造)3を作製した。
【0016】
顕微鏡(SEM)、d原子間力顕微鏡(AFM)により、上面図と鳥瞰図のタッピングモードで観察した。532nmレーザーを使用した。X線回折(XRD)およびラマン分光法を使用して、成長中の膜および粉末の結晶構造と配向を特定した。横分解能2nm、加速電圧20kVのエネルギー分散型X線分光計(EDS)を搭載したSEMを組成分析に用いた。UV-Vis拡散反射分光法を用いてバンドギャップを推定した。
【0017】
光触媒の水素発生は、キセノン光源下で、50mg粉末または1cm×2cm基板に対して、0.5mLのCHOH、4.5mLのHOおよび133μLのHPtCl6HO(19.5mM)の溶液中で調べた。また、硝酸銀水溶液(0.05mol/L)からのO発生の光触媒反応を試験管内で行った。 両方の試験で、水に溶解した空気を除去するためにArガスを30分間バブリングした。 反応温度は、水浴を用いて室温に維持した。発生ガスの量は、ガスクロマトグラフ(熱伝導率検出器;H試験用のArキャリアガスを含むモレキュラーシーブ5Aカラムパッキング、およびO試験用のHeキャリアガス)によって測定した。見掛け量子効率(AQE)は、380nmの単色光源を用いて評価した。試料の活性表面積は、77KにおけるNの吸着等温線をブルナウアー・エメット・テラー(BET)法により測定した。FE-SEMに付着したカソードルミネッセンス(CL、LS-100-EM-TYPE2、HORIBA)を室温において15kV下で測定し、キャリア再結合率を推定した。
【0018】
図1には、DIC光学顕微鏡とレーザー顕微鏡によって観察された、GaN基板上で成長したCuGaO膜の3D鳥瞰図を示す。ピラミッドのような構造が、256μm×256μmのスキャン領域において、表面粗さの二乗平均平方根(RMS)が260nmであるGaN基板上の0001面に垂直に成長していることが分かった。その表面粗さはAFMの結果とよく一致しており、図2に示されるように、2μm×2μmのスキャン領域で277nmと評価された。
【0019】
GaN基板に起因する(0002)および(0004)のX線回折は、図3aで明らかである。しかしながら、基質の強度が非常に高いため、他のピークを確認することは困難である。したがって、XRDプロファイルの強度は、図4の対数スケールにプロットされる。図4で観察されたほとんどのXRD回折は、ウルツ鉱CuGaOに割り当てられていたが、未反応のGaのためにGaに関連するいくつかのマイナーピークも存在することは明らかである。
【0020】
リートベルト解析は、GaN基板の表面上のCuGaO:Ga=86.1%:13.9%のモル分率を示した。成長した基板のデジタル写真も挿入図に示されている(図3a参照)。基板の色彩(茶色)は、層のバンドギャップが2eVより小さいことを示唆している。るつぼ内部で合成された粉末は、図5の星印で示すように、少量の未反応Gaを有するスピネル結晶構造を有するCuGaの組成を有することが注目される。粉末のBET表面積は2.0592m/gであった。CuGaも光触媒特性のための別の興味深いp型材料であり、スピネルCuGaが粉末形態で合成されるのに対し、なぜウルツ鉱CuGaOがGaN基板上に成長するのかは必ずしも明らかではない。1つの理由は、CuGaがCuGaOよりも多くの酸化環境を必要とし、CuGaO層の核生成がバルクよりも窒化物基板上で起こりやすいという事実に起因する可能性がある。CuGa粉末のSEM顕微鏡像を図6に示す。
【0021】
GaN基板のラマンプロファイルは、568cm-1でのE、および786cm-1でのA(LO)の典型的なc面GaNラマンモードを示す。しかし、成長後、図3bに示すように、基板のラマンモードに加えて、CuGaOのM4ラマンモードが635nm-1に現れた。532nmレーザーの浸透深さが1μm未満であるという事実を考慮すると、成長後のGaNラマンピークの存在は、基板がCuGaO層によって完全に覆われていないか、または粒子のピラミッドのような形態のために、均一な厚さ構造の場合と比較して、名目上浸透深さが大きくなるためである。SEM断面像から、図7aの長方形(緑色)2´で示すように、基板上の層の厚さが約10μmであることが確認される。SEMによって観察された層の表面を図7bに示し、Cu Kα、Kα、およびO Kαの対応するEDS元素マッピング、層構造上の各元素の存在を確認する。図7cからO(酸素)、図7dからCu(銅)、図7eからGa(ガリウム)それぞれの存在が確認された。
【0022】
図8aは、成長前後のGaN基板のUV-Vis拡散反射率スペクトルを示す。吸収エッジと呼ばれる特定の波長未満の両方のサンプルでは、強い吸収が発生した。GaN基板の吸収端は380nmであるが、可視光領域にシフトし、CuGaOの成長後に670nmに達することは明らかである。吸収端よりも高い波長での顕著なテール吸光度は、バンドギャップに局所的な状態を形成する酸素/銅空孔または他のタイプの欠陥の存在のために観察されない。欠陥がないことは光触媒特性に有益であり、電子/正孔キャリアの寿命を延ばす。
【0023】
さらに、両方のサンプルの高い吸収強度は、電子遷移が直接的であることを示唆している。サンプルのバンドギャップは、Kubelka-Munk理論によって推定され、図8bおよび8cに要約される。推定バンドギャップは3.40eVで、GaN基板とGaN上のCuGaOの場合は、それぞれ1.84eVであった。エピタキシャル成長後のサンプル推定バンドギャップは、文献で報告されている値である1.47eVとよく一致していた。以上より、図7aの長方形(緑色)2´で示した、基板上の層の厚さが約10μmの膜(層)は、CuGaO膜(層)2であることが確認できた。
【0024】
光触媒の水分解による水素製造試験の結果を図9aに示す。p型粉末は照射下では活性がないが、p-nヘテロ構造CuGaO/GaN試料は正孔捕捉剤犠牲剤の存在下で水素を発生することが示されている。380nm単色光下で測定された見かけの量子効率(AQE)も、pnヘテロ構造サンプルの0%から1.1%に改善された。含浸法によりPt、RuO、Rh/Cr粒子などの各種助触媒を担持させることで、光触媒反応の効率を大幅に向上させることができる。CuGaO/GaN試料の安定性を図9bに示すように、周期光触媒試験により調べた。
【0025】
水素生成量は3サイクルで適度に類似していることが示され、長期的な光触媒活性に対するp-nヘテロ構造の可能性を示す。また、光触媒試験前後のXRD分析による試料の検査により、図10に示すように光照射下で光触媒がst可能であることを確認した。CuGaO層の表面へのPt助触媒の析出は、図11に示すように成功していることが確認される。 光触媒の水分解による酸素製造試験の結果を図9cに示す。p型粉末は電子捕捉剤としてAgイオンの存在下での水分解に有効であるが、CuGaO/GaN試料は6倍高い酸素発生率を示すことが明らかである。
【0026】
粉末に対して、CuGaO/GaN基板が水素と酸素の両方の生成率が高いのは、発明されたp-nヘテロ構造における電子と正孔の効果的な電荷分離に起因する可能性がある。AQEは2.9%で、比較的高い効率と考えられる。るつぼ内で作製したCuGa粉末の代わりにCuGaO/GaNをCuGaOと比較し、一方、水熱法によるCuGaOも合成した。図12に示すXRDプロファイルは、P63/mmcの空間群を持つ六方晶CuGaOとよく一致している。図13に示すように、CuGaOの光触媒の水素生成量は、CuGaよりもわずかに優れており、どちらもCuGaO/GaN基板よりもはるかに低かった。なお、水熱法によるCuGaOも合成は以下のようであった
CuGaOは、低温での古典的なアルコール還元法によって合成した。5ミリモルのGa(NO・xHOおよび5ミリモルのCu(NO・3HOを40mLの脱イオン水に溶解した。次いで、1M KOH水溶液を混合物にゆっくりと添加し、pHを7.5に調整した。その後、水熱前駆体を150mLの容器に移し、230℃で3時間反応させた。上澄みを捨てた後、集めた沈殿物を希アンモニア(5wt%)、硝酸溶液(5wt%)および脱イオン水で5回洗浄した。最後に、生成物をエタノールで3回洗浄することにより、純粋なCuGaOが得られた。
【0027】
図14は、GaN基板およびCuGaO/GaN基板のカソードルミネッセンススペクトルを示す。364.5nm(3.4eV)でのシャープな発光は、GaN基板のバンドギャップに対応する。CuGaO/GaN基板では、n型GaNからp型CuGaO層への電子の効率的な移動により、その強度は低くなる。電子/正孔の再結合が少ないほど、CLの強度は低くなる。p-n接合および平衡状態では、n型GaNの電子はp側に移動し、2つの半導体のフェルミ準位の違いによりp型CuGaOの正孔の一部を埋める。これにより、接合部で電気が発生する。光を照射すると、電子はVBから各半導体のCBに励起し、内部電場のために、電子はCuGaOのCBからGaNのCBに移動し、正孔はGaNのVBからCuGaOのVBに移動する。
【0028】
このようにして、光生成した電子-正孔対はp-n接合によって効果的に分離され、GaNのCBでは高濃度の電子が得られ、CuGaOのVBでは高濃度の正孔が得られる。説明されたメカニズムは、キャリアの電荷的なp-nヘテロ構造の有効性を説明している。以上を要約すると、CuGaO/GaN基板のp-nヘテロ構造は、水分解反応のために創出された。CuGaO層はGaN c面に対して垂直に成長した。禁止ギャップは可視領域、1.84eVにあることが示された。水分解反応の結果,水素発生は~800μmol/h、酸素発生は~120mmol/hであった。p-nヘテロ構造は、高効率な光触媒を獲得するための担体の電荷分離に有効であることが示された。
【0029】
ところで、図15に示すように、光触媒について光(UV+VIS)のオンオフを伴う電流電位曲線は、光(UV+VIS)がオンすなわちlightのとき、電流密度(電位)は上昇し、光(UV+VIS)がオフすなわちdarkのとき、電流密度(電位)は下降することを繰り返す。
【0030】
一方、CuGaO/GaN基板のp-nヘテロ構造は、以下に説明するように、照射する光の波長が異なるとp、n特性が反転する電位も異なる、すなわちp、n特性が反転する電位について波長依存性を有することが判明した。
図16に示すように、p-n接合半導体(p-nヘテロ構造)3は、電位0付近で、電流密度(電位)について光が紫外光+可視光(UV+VIS)であるとき、400nm以上であるとき、および420nm以上であるときを対比すると、前一者は電流電位曲線が降下したのに対して、後二者は電流電位曲線上昇していた。すなわち電位0付近で光オンオフ時の電流の流れが逆になっていた。これにより、CuGaO/GaN基板のp-nヘテロ構造は、照射される波長によって反転する電位の位置が異なった。すなわち反転する電位の位置に波長依存性のあることが分かった。なお、光が紫外光+可視光(UV+VIS)とは、光源の前にフィルターを使わず、光源から発生する紫外光+可視光全領域の波長の光の状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
可視光光触媒や、オンオフだけでなく、照射波長に依存して光電流がプラスあるいはマイナスとなるため、電気信号の多分岐素子や新しい光素子やセンサーへの応用が期待できる。
【符号の説明】
【0032】
1:GaN層(基板、ウエハ)
2:CuGaO膜(層)
2´:長方形(緑色)
3:CuGaO(CuGaO膜)/GaN基板のp-nヘテロ構造


図1
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