(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134197
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】電池用積層体の製造方法、および電池用積層体の製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240926BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240926BHJP
H01M 50/497 20210101ALI20240926BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240926BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20240926BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20240926BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20240926BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240926BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240926BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/058
H01M50/497
H01M50/414
H01M4/88 K
H01G11/06
H01G13/00 381
H01G11/84
H01M10/0585
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044385
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鷹氏 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】寺井 希
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H018
5H021
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB06
5E078LA07
5E082AB09
5H018AA01
5H018BB11
5H021BB00
5H021BB19
5H021BB20
5H021EE02
5H021EE26
5H028AA05
5H028BB00
5H028BB11
5H028BB19
5H028CC02
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM12
5H029AM16
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029CJ04
5H029CJ30
(57)【要約】
【課題】積層された電極のずれを低減可能な技術を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る電池用積層体の製造方法は、絶縁層形成部は、イオン導電性を有する絶縁層、多孔質構造を有する絶縁層、共連続構造を有する絶縁層、樹脂を主成分とする絶縁層、および架橋構造を有する絶縁層の少なくとも1つを形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層形成部は、イオン導電性を有する絶縁層、多孔質構造を有する絶縁層、共連続構造を有する絶縁層、樹脂を主成分とする絶縁層、および架橋構造を有する絶縁層の少なくとも1つを形成する、電池用積層体の製造方法。
【請求項2】
電池用積層体の製造装置による電池用積層体の製造方法であって、
前記電池用積層体の製造装置は、
搬送部により、電極が積層されるステージの積層面に搬送し、
アライメント部により、前記積層面上の前記電極をアライメントし、
前記アライメント部の少なくとも一部は、前記積層面に位置するよう配置され、
前記アライメント部は、前記搬送部により前記積層面に搬送された前記電極の端部と接触可能である、電池用積層体の製造方法。
【請求項3】
前記アライメント部は、前記ステージ上を移動可能であり、
前記電極の端部は、前記アライメント部が前記ステージ上を移動することにより、前記アライメント部と接触する、請求項2に記載の電池用積層体の製造方法。
【請求項4】
前記電極は、前記ステージ上または前記ステージ上に配置された他の電極上をスライド可能であり、
前記電極の端部は、前記電極が、前記ステージ上または前記ステージ上に配置された他の電極上をスライドすることにより、前記アライメント部と接触する、請求項2に記載の電池用積層体の製造方法。
【請求項5】
前記電池用積層体の製造装置は、センサ部により、前記電極が前記ステージに積層されたことを検出する、請求項2に記載の電池用積層体の製造方法。
【請求項6】
前記電池用積層体の製造装置は、制御部により、前記搬送部による搬送状態および前記センサ部による検出結果の少なくとも1つに基づき、前記アライメント部の動作を制御する、請求項5に記載の電池用積層体の製造方法。
【請求項7】
前記電池用積層体の製造装置は、摩擦低減部により、前記ステージに前記電極が積層された後に、前記電極との間に生じる摩擦力を低減させる、請求項2に記載の電池用積層体の製造方法。
【請求項8】
前記電池用積層体の製造装置は、絶縁層形成部により、絶縁層を形成する、請求項2に記載の電池用積層体の製造方法。
【請求項9】
前記電池用積層体の製造装置は、
絶縁層形成部により、絶縁層を形成し、
電極裁断部により、前記絶縁層形成部によって前記絶縁層が形成された前記電極を裁断する、請求項2に記載の電池用積層体の製造方法。
【請求項10】
電極が積層されるステージと、
前記電極を前記ステージの積層面に搬送する搬送部と、
前記積層面上の前記電極をアライメントするアライメント部と、を有し、
前記アライメント部の少なくとも一部は、前記積層面に位置するよう配置され、
前記アライメント部は、前記搬送部により前記積層面に搬送された電極の端部と接触可能であり、
前記アライメント部は、前記ステージ上を移動可能であり、
前記電極の端部は、前記アライメント部が前記ステージ上を移動することにより、前記アライメント部と接触する、電池用積層体の製造装置。
【請求項11】
前記電極は、前記ステージ上または前記ステージ上に積層された他の電極上をスライド可能であり、
前記電極の端部は、前記ステージ上または前記ステージ上に積層された他の電極上を前記電極がスライドすることにより、前記アライメント部と接触する、請求項10に記載の電池用積層体の製造装置。
【請求項12】
前記ステージを傾斜させる傾斜機構を有し、
前記電極は、前記傾斜機構による前記ステージの傾斜によって重力が働くことにより前記ステージ上をスライドする、請求項10に記載の製造装置。
【請求項13】
前記電極が前記ステージに配置されたことを検出するセンサ部をさらに有する、請求項10に記載の電池用積層体の製造装置。
【請求項14】
前記搬送部による搬送状態および前記センサ部による検出結果の少なくとも1つに基づき、前記アライメント部の動作を制御する制御部をさらに有する、請求項13に記載の電池用積層体の製造装置。
【請求項15】
前記電極が前記ステージに積層された後に、前記電極との間に生じる摩擦力を低減させる摩擦低減部をさらに有する、請求項10に記載の電池用積層体の製造装置。
【請求項16】
絶縁層形成部を有する、請求項10に記載の電池用積層体の製造装置。
【請求項17】
絶縁層形成部と、
前記絶縁層形成部により絶縁層が形成された前記電極を裁断する電極裁断部と、を有する、請求項10に記載の電池用積層体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用積層体の製造方法、および電池用積層体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の需要は高まっている。その中で、高効率かつ高品質な電池用積層体を製造する技術が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電極を収納容器に挿入する際のアライメント調整機構を不要とするために、収納容器に設けられた壁に電極を突き当てることによって電池用積層体を形成する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、突き当てられた端部が柔軟なため、突き当てた際にフィルムセパレータの柔軟性により積層された電極にずれが生じる懸念がある。
【0005】
本発明は、積層された電極のずれを低減可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電池用積層体の製造方法は、絶縁層形成部は、イオン導電性を有する絶縁層、多孔質構造を有する絶縁層、共連続構造を有する絶縁層、樹脂を主成分とする絶縁層、および架橋構造を有する絶縁層の少なくとも1つを形成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、積層された電極のずれを低減可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電池用積層体の製造装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】実施形態に係る絶縁層形成部の第1例を模式的に示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る絶縁層形成部の第2例を模式的に示す断面図である。
【
図4】実施形態に係る積層部の第1例を示す模式図であり、
図4(a)は断面図、
図4(b)は斜視図である。
【
図5】実施形態に係るアライメント部の形状例を模式的に示す上面図である。
【
図6】実施形態に係る積層部の動作の第1例を示す模式図であり、
図6(a)は断面図、
図6(b)は斜視図である。
【
図7】実施形態に係る積層部の第2例を示す模式図であり、
図7(a)は断面図、
図7(b)は斜視図である。
【
図8】実施形態に係る積層部の第3例を示す模式図である。
【
図9】実施形態に係る積層部の第4例を示す模式図である。
【
図10】実施形態に係る電池用電極の第1例を示す模式的斜視図である。
【
図11】実施形態に係る電池用電極の第1例を示す模式的断面図である。
【
図12】実施形態に係る電池用電極の第2例を示す模式的斜視図である。
【
図13】実施形態に係る電池用電極の第2例を示す模式的断面図である。
【
図14】実施形態に係る電池用電極の第3例を示す模式的断面図である。
【
図15】実施形態に係る多孔質絶縁層の一例を示す図であり、
図15(a)は平面図、
図15(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
以下の説明では、特定の方向や位置を示す用語(例えば「上」、「下」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。本明細書では、上下方向は、実施形態に係る電池用積層体の製造装置が備えるステージにおける電極が配置される面の法線に沿う方向である。また該ステージにおける電極が配置される面を上面という。この上方から対象をみることを上面視という。上方から視た対象の図を上面図という。上下方向と直交する方向を側方という。側方から視た対象の図を側面図という。但し、これらの用語は、参照した図面における相対的な方向や位置を、分かり易くするために用いているにすぎない。また断面図として、切断面のみを示す端面図を用いる場合がある。
【0011】
各図面において、方向表現として、X軸、Y軸、及びZ軸を有する直交座標を用いる。X軸に沿う方向をX方向、Y軸に沿う方向をY方向、Z軸に沿う方向をZ方向という。また、Z方向を上下方向として表現する。但し、これら方向表現は、本発明の実施形態の方向を限定しない。
【0012】
[実施形態]
<電池用積層体の製造装置1000の構成>
図1は、実施形態に係る電池用積層体の製造装置1000の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、電池用積層体の製造装置1000は、絶縁層形成部100と、電極裁断部200と、積層部300と、を有する。電池用積層体の製造装置1000は、ガイド部材8を介して供給される電極2000に対し、絶縁層形成部100により絶縁層を形成する。電池用積層体の製造装置1000は、絶縁層が形成された電極2000を電極裁断部200により裁断し、電極裁断部200により裁断された複数の電極を積層部300により積層する。電池用積層体の製造装置1000は、絶縁層形成部100と電極裁断部200とを有することで、絶縁層形成後に巻き取り作業や巻き取り電極の保管場所の確保等が必要なくなる。そのため、効率的かつ高品質な電池の生産が可能となる。
【0013】
(絶縁層形成部100)
図2~3は、絶縁層形成部100を模式的に示す断面図である。
図2は第1例を示し、
図3は第2例を示している。本実施形態では、絶縁層形成部100は、イオン導電性を有する絶縁層、多孔質構造を有する絶縁層、共連続構造を有する絶縁層、樹脂を主成分とする絶縁層、および架橋構造を有する絶縁層の少なくとも1つを形成することができる。
【0014】
図2~3に示すように、絶縁層形成部100は、必要に応じて、液体組成物付与工程部100-1、エネルギー付与工程部100-2および乾燥工程部100-3等を有してもよい。液体組成物付与工程部100-1は、電極2000上の少なくとも一部に重合性化合物および液体を有する液体組成物を付与し絶縁層を形成する。エネルギー付与工程部100-2は、液体組成物にエネルギーを付与することで重合性化合物の重合による多孔質絶縁層の形成を行う。乾燥工程部100-3は、液体組成物に含まれる溶媒を除去する。
【0015】
((液体組成物付与工程部100-1))
液体組成物付与工程部100-1は、電池用の電極2000上の少なくとも一部に重合性化合物および液体を有する液体組成物を付与する工程を実現する手段の一例である液体組成物付与装置1aと、液体組成物を収容している液体組成物収容容器1bと、液体組成物収容容器1bに貯留された液体組成物を液体組成物付与装置1aに供給する液体組成物供給チューブ1cと、を備える。
【0016】
液体組成物収容容器1bは、液体組成物5を収容しており、液体組成物付与工程部100-1は、液体組成物付与装置1aから液体組成物5を吐出して、電極2000上に液体組成物5を付与して薄膜状に形成する。
【0017】
液体組成物収容容器1bや液体組成物供給チューブ1cは、液体組成物5を安定して貯蔵および供給できるものであれば任意に選択可能である。液体組成物収容容器1bや液体組成物供給チューブ1cを構成する材料は、紫外光および可視光の比較的短波長領域において遮光性を有することが好ましい。これにより、液体組成物5が外光により重合開始されることが防止される。必要であれば、
図3に示すように液体組成物付与工程部100-1を複数個所設けて、別材料等を所望の位置に形成することも可能である。
【0018】
((エネルギー付与工程部100-2))
エネルギー付与工程部100-2は、
図2~3に示すように、液体組成物に対して熱、光等の活性エネルギー線を照射することにより重合性化合物を重合させる第一の照射手段の一例であるエネルギー付与装置を有する。エネルギー付与に関しては上記の通り熱、光のいずれの方式をとることが可能である。但し、エネルギー付与効率の観点から光によって付与をすることが好ましい。エネルギー付与効率が高いことによって、多孔質絶縁膜形成層に含まれる重合性化合物の重合を直ぐに生じさせ、流動性の少なく膜厚均一性の高い多孔質層の形成が可能となる。エネルギー付与装置は、液体組成物付与工程部100-1により形成された多孔質膜形成層にエネルギーを付与し多孔質絶縁層を形成させる。
【0019】
エネルギー付与装置が光照射装置2aの場合には、多孔質膜形成層に含まれる光重合開始剤の吸収波長に応じて適宜選択され、液体組成物層中の化合物の重合を開始および進行させられるものならば特に限定はなく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、LED等の紫外線光源が挙げられる。但し、短波長の光ほど一般に深部に到達しやすい傾向があるため、形成する多孔質膜の厚みに応じて光源を選択することが好ましい。
【0020】
また、エネルギー付与工程部100-2は、重合不活性気体循環装置2bを有してもよい。重合不活性気体循環装置2bによって、大気中に含まれる重合活性な酸素濃度を低下させ、多孔質膜形成層の表面近傍の重合性化合物の重合反応を阻害されることなく進行させることができる。重合不活性気体循環装置2bで用いられる重合不活性気体は上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えば窒素や二酸化炭素やアルゴン等が挙げられる。また、重合不活性気体の流量としては阻害低減効果が効果的に得られる事を考慮して、O2濃度が20%未満(大気よりも酸素濃度が低い環境)であることが好ましく、0%以上15%以下であることがより好ましく、0%以上5%以下であることが更に好ましい。また、重合不活性気体循環装置2bは安定した重合進行条件を実現させる為に、温度を調節できる温調手段が設けられていることが好ましい。
【0021】
((乾燥工程部100-3))
乾燥工程部100-3は、乾燥手段の一例である加熱可能な加熱装置3aを有する。乾燥工程部100-3は、形成された活物質形成層および多孔質膜形成層に残存する溶媒を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する。乾燥工程部100-3は、溶媒乾燥工程を減圧下で行ってもよい。なお、乾燥工程部100-3は、多孔質絶縁層に残存する光重合開始剤を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去してもよい。加熱装置3aは、上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えばIRヒーターや温風ヒーター等が挙げられる。また、加熱温度や加熱時間に関しては、多孔質絶縁層に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0022】
(電極裁断部200)
図1に示した電極裁断部200は、ロール状に巻かれた状態から巻き出されることで連続的に搬送される電極を、所望のサイズに裁断する機能を有する。電極裁断部200には、例えば刃物を使用した裁断機構や、トムソン刃やピナクル刃(登録商標)を用いた打ち抜き機構、レーザ加工装置等を使用できる。但し、電極裁断部200はこれらに限定されない。
【0023】
(積層部300)
図4~8を参照して、積層部300について説明する。
図4は、積層部300の第1例を示す模式図である。
図4(a)は断面図である。
図4(b)は斜視図である。
図5は、アライメント部7の形状の一例を模式的に示す上面図である。
【0024】
図4に示すように、積層部300は、電極が積層されるステージ14と、電極をステージ14に搬送する搬送部300-2と、積層面140上 の電極をアライメントするアライメント部7と、を有する。この「積層面140上の電極」とは、積層面140上であって、積層面に直接配置された電極と、積層面140上であって、積層面に積層された電極上に配置された電極を含む。積層部300は、第1の電極4と第2の電極15とを含む複数の電極を積層する。なお、本明細書の用語において、第1の電極4と第2の電極15とを区別しない場合には、単に「電極」と称する。
【0025】
本実施形態では、電極の端部は、電極が搬送部300-2から離隔した後に、アライメント部7と接触する。
図4に示す例では、第1の電極4の端部4aおよび第2の電極15の端部15aのそれぞれは、搬送部300-2から離隔した後に、アライメント部7と接触する。「搬送部300-2から離隔した後」は、具体的には、第1の電極4および第2の電極15のそれぞれが、搬送部300-2により搬送され、ステージ14上に配置されるために搬送部300-2から離隔した後を意味する。なお、
図4(b)において、8は第1の電極4の集電体を示し、10は多孔質絶縁層を示し、11は第2の電極15の集電体を示し、12は第2の電極15の活物質を示している。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において電極の端部とは、電極基体や、電極基体上に積層されることで電極基体と接着する電極合材層や絶縁層などといった機能層における電極平面と平行な面に対する側面、または電極基体の電極平面と平行な面に対する側面に接着した絶縁層などといった機能層、すなわち電極基体と、当該電極基体に接着した機能層の端部を表し、例えば先行技術文献1に記載の電極基体と接着していない袋状のセパレータの端部は含まれない。
本実施形態では、比較的剛直性の高い電極基体上に密着した電極の端部がアライメント部7と接触するため、電極の折れや曲がりの発生を抑制することができる。
【0026】
本実施形態では、電極が搬送部300-2から離隔した後に、電極の端部がアライメント部7と接触することにより、ステージ14上における電極の位置が調整、すなわちアライメントされる。ステージ14上に複数の電極が積層されると、複数の電極それぞれのステージ14上での位置がアライメントされる。これにより、積層された電極のずれを低減可能な技術を提供することができる。
【0027】
積層部300は、センサ部300-6、制御部300-7、電極保管部300-1および摩擦低減部300-8等を有してもよい。センサ部300-6は、電極がステージ14に配置されたことを検出する。制御部300-7は、搬送部300-2による搬送状態およびセンサ部300-6による検出結果の少なくとも1つに基づき、アライメント部7の動作を制御する。例えば、制御部300-7は、搬送部300-2やセンサ部300-6の情報を受けて、可動部7-1に制御信号を送信することができる。電極保管部300-1は、積層サイズに裁断された電極を保管する部材である。摩擦低減部300-8は、電極が前記ステージに積層された後に、前記電極との間に生じる摩擦力を低減させる。
【0028】
((ステージ14))
ステージ14は、その上に電極が配置されて積層される台である。電極の積層が可能であれば材質や形状に特に制限はない。但し、ステージ14は、平板状であることが好ましい。ステージ14は、平板状であることにより、搬送部300-2により電極が積層されたとき、または可動部7-1により電極が下方に押圧されたときに、電極の形状を保つことができる。
【0029】
ステージ14は、アライメント部7に対して相対的に上下方向(Z方向)へ移動可能であってもよい。アライメント部7に対して相対的に上下方向へ移動可能であることで、ステージ14上から突出したアライメント部7の長さを調節することができ、積層条件を調整することができる。例えば電極を積層するたびに、積層した電極の厚み分、ステージ14の高さを減少させることで、常に一定の高さで搬送部300-2により電極をステージ14上に配置可能となる。この結果、電極の配置条件を一定に保つことができる。このような動作を行うための構成としては、例えばステージ14が開口部を有し、アライメント部7が当該開口部を貫通するように設けられるものがある。
【0030】
ステージ14は、電池用積層体の製造装置1000に複数設けられてもよい。この場合、複数のステージ14は、入れ替えできるように移動可能な構成であることが好ましい。この移動には、例えば、インデックステーブルによる回転移動や、コンベヤによる並進移動等が挙げられる。
【0031】
((搬送部300-2))
搬送部300-2は、複数の電極をステージ14上に搬送する機能を有する。搬送部300-2は、ベルトコンベアや吸着機構を備えたアーム等により実現可能である。搬送部300-2は、例えば、吸着機構を備えたアームを有することで、ステージ上の定められた位置まで電極を搬送することができる。
【0032】
((アライメント部7))
本実施形態では、アライメント部7は、ステージ14上を移動可能である。アライメント部7がステージ14上をXY平面におけるいずれかの方向に移動することにより、電極の端部は、アライメント部7と接触する。アライメント部7は、搬送部300-2によって搬送される電極がステージ14上に積層された後に、電極端部と接触することで電極をアライメントする。上記機能が実現されるのであれば、アライメント部7の材質や形状に制限はない。
【0033】
図4(a)および
図4(b)に示す例では、アライメント部7は、ステージ14上において、4つの柱状部材71~74と、4つの柱状部材71~74のそれぞれに接続された駆動部と、を含む。4つの柱状部材71~74は、ステージ14上に配置される電極の周囲に位置するよう1つずつ配置される。駆動部は、制御部300-7からの制御信号に応じて、4つの柱状部材71~74のそれぞれをステージ14の中央に向けて進退移動、すなわちXY平面における往復移動をさせることができる。
【0034】
例えば、第1の電極4は、その端部4aが搬送部300-2から離隔した後に、周囲に配置されたアライメント部7と接触して位置調整されことにより、ステージ14の上面内または第2の電極15の上面内においてアライメントされる。また、第2の電極15は、その端部15aが搬送部300-2から離隔した後に、周囲に配置された4つの柱状部材71~74のうちの少なくとも2つと接触して位置調整されることにより、第1の電極4の上面内においてアライメントされる。
【0035】
ここで、
図5は、アライメント部7における4つの柱状部材71~74のうちの1つの柱状部材71の、上面視における形状を示している。
図5に示すように、アライメント部7の形状は、接触対象となる第1の電極4の接触部分に対応する形状であることが好ましい。アライメント部7がこのような形状を有することで、アライメント部7の押し込み量が第1の電極4の押し込み量へ正確に変換され、アライメントを正確に行うことができる。なお、柱状部材72~74においても、
図5に示した柱状部材71と同様に、第1の電極4の接触部分に対応する形状であることが好ましい。また、接触対象は第1の電極4に限らず、第2の電極15であってもよく、第1の電極4と第2の電極15の積層体でもよい。
【0036】
また、電極を積層する際に、アライメント部7が積層方向に高すぎると電極を積層するときに電極と接触する懸念がある。このため、アライメント部7の積層方向における高さは、可変であることが好ましい。また、複数の電極が所定の高さに積層される場合、アライメント部7の積層方向における高さは上記所定の高さ以上であることが好ましい。アライメント部7の積層方向における高さが可変な構成としては、前述のステージ14が、アライメント部7に対して相対的に上下方向 (Z方向)へ移動することで可変とする構成であってもよく、アライメント部7の一部が可動な構成を有することで、可変とする構成であってもよい。
【0037】
アライメント部7は、柱状部材に限らず様々な形状を有してもよい。アライメント部7は、電極に向かって、その一部が突出した形状を有してもよい。また、アライメント部7は、積層のときには柱状の形状を有し、所定のタイミングでその一部が電極に向かって突出するように、変形可能であってもよい。この突出する部分は、積層された電極を積層方向に押圧可能な機構を含んでもよい。このような機構には、突出する部分が積層方向に向かって移動する機構であってもよいし、突出する部分を含むアライメント部7自体が積層方向に移動する機構であってもよい。
【0038】
((電極保管部300-1))
図4において、電極保管部300-1は、積層サイズに裁断された電極を保管しておくための機能を有している。電極保管部300-1は、複数の電極の種類ごとに複数の電極保管部300-1が設けられてもよい。また、第1の電極4と第2の電極15が交互に積層される場合には、1つの電極保管部300-1が設けられてもよい。電池用積層体の製造装置1000が電極裁断部200を有する場合には、電極裁断部200により裁断された後の電極は、電極保管部300-1に保管される。材料や形状は上記機能が実現されるのであれば自由に選択可能である。
【0039】
((センサ部300-6))
センサ部300-6は、ステージ14上に電極が配置されたことを検出する。積層部300は、センサ部300-6による検出結果に基づき、アライメント部7を移動させるタイミング等を決定することができる。センサ部300-6には、例えばステージ14に積層された電極の重量による圧力を検出する圧力センサや、ステージ14上を撮影するカメラ等を使用できる。但し、センサ部300-6はこれらに限定されない。
【0040】
((制御部300-7))
制御部300-7は、搬送部300-2による搬送状態およびセンサ部300-6による検出結果の少なくとも1つに基づき、アライメント部7の動作を制御する。例えば、制御部300-7は、搬送部300-2やセンサ部300-6からの情報を入力し、アライメント部7に制御信号を送信する。積層部300は、制御部300-7により、アライメント部7の移動動作を制御することができる。なお、制御信号は、電気的な信号でも物理的な信号でもよい。
【0041】
制御部300-7の機能は、一または複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0042】
例えば、制御部300-7は、搬送部300-2の位置や、センサ部300-6により検出されたステージ14上に電極が配置されたことに関する情報に応じて、ステージ14またはアライメント部7を移動させる。例えば制御部300-7は、ステージ14上への電極の配置が終了する前に、アライメント部7における4つの柱状部材71~74のうちの少なくとも2つを移動させ、電極の端部と接触させることができる。
【0043】
((摩擦低減部300-8))
摩擦低減部300-8は、ステージ14に電極が配置された後に電極間に生じる摩擦力を低減させる。摩擦低減部300-8は、例えば、ステージ14を振動させる加振機構である。加振機構には、圧電素子やモータ等を使用できる。またステージ14に超音波を照射することでステージ14を振動させてもよい。
【0044】
例えば、電極端部とアライメント部7との接触によるアライメント時に電極間で摩擦が生じて電極または絶縁層などの機能層が破損する懸念がある。これを防ぐために、ステージ14を振動させることで電極を振動させつつ、アライメント部7によるアライメントを行うことができる。
【0045】
摩擦低減部300-8は、加振機構の他、積層された電極間や積層された電極とステージ間にエアーを吹き付ける噴射機構であってもよい。噴射機構により電極間にエアーを吹き付けつつ、アライメントを行うことで、アライメント時に電極間に生じる摩擦を低減することができる。電極間にエアーを吹き付けるとき、電極において膜厚の差異がある場合には、膜厚の厚い側に対して吹き付けることが好ましい。厚い側に吹き付けることで、エアーを吹き付けることによる電極の折れ曲がりといったダメージを低減できる。電極表面に設ける材料を摩擦が小さな部材に変更する等も効果的である。例えば、電極に多孔質絶縁層を設ける場合には、多孔質の骨格全てが一体となり連結しているため、材料の滑落が生じにくい表面部材を摩擦低減部300-8としてもよい。
【0046】
<積層部300の動作例>
図6は、積層部300の動作の一例を示す模式図である。
図6(a)は断面図、
図6(b)は斜視図である。
【0047】
例えば、第1の電極4および第2の電極15は、鉛直方向と直交する水平方向(XY方向)に設けられたステージ14上に交互に重ねて積層される。本実施形態では、ステージ14上に配置された4つの柱状部材71~74のそれぞれを移動させることで、第1の電極4の端部4aと第2の電極15の端部15a端部のそれぞれを接触させてアライメントする。
【0048】
アライメント部7の押し込み動作は、電極へのダメージを低減する観点では、1つの電極のステージ14への積層が終了するたびに行われることが好ましい。また生産性を高くする観点では、複数の電極のステージ14への積層が全て終了した後に行われることが好ましい。
【0049】
図6に示したアライメント部7における4つの柱状部材71~74は、アライメントのときに、4つの柱状部材71~74同士が端部で接触している。但し、アライメントのときに、4つの柱状部材71~74同士が端部で接触しない構成であってもよい。
【0050】
4つの柱状部材71~74それぞれが移動するタイミングや移動速度は、適宜制御可能である。4つの柱状部材71~74それぞれと電極とが接触するタイミングは、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、4つの柱状部材71~74それぞれの移動速度は、同じでもよいし、異なっていてもよい。生産性の点からは、4つの柱状部材71~74それぞれと電極とが接触するタイミングは同じであり、4つの柱状部材71~74それぞれの移動速度は同じであることが好ましい。電極へのダメージを低減する観点では、4つの柱状部材71~74それぞれと電極とが接触するタイミングは、異なっていることが好ましい。また、電極へのダメージを低減する観点では、4つの柱状部材71~74それぞれの移動速度は、移動開始のときの移動速度よりも接触するときの移動速度のほうが遅いほうが好ましい。なお、4つの柱状部材71~74それぞれの接触直前の移動速度は、電極と4つの柱状部材71~74それぞれとの接触により、電極が4つの柱状部材71~74それぞれの移動方向に対して、慣性を持たない程度の速度であることが好ましい。
【0051】
アライメント部7によるアライメントが終了した後、4つの柱状部材71~74それぞれは、配置された電極から離隔する。アライメント終了後のアライメント部7の動作は、アライメント終了後の電極がアライメント状態を維持されやすいような動作であることが好ましい。例えば、電極から4つの柱状部材71~74それぞれを離隔するときに、上述した摩擦低減部300-8により、4つの柱状部材71~74それぞれを振動させる。これにより、電極のアライメント状態を維持しつつ、4つの柱状部材71~74それぞれを電極から離隔させることができる。
【0052】
生産性を高くする観点では、4つの柱状部材71~74それぞれが電極から離隔するタイミングは、同じであることが好ましい。電極へのダメージを低減し、かつ生産性を高くする観点では、電極から4つの柱状部材71~74それぞれを離隔させるときの4つの柱状部材71~74それぞれの移動速度は、4つの柱状部材71~74それぞれが電極から離隔するときが遅く、その後速くすることが好ましい。
【0053】
<積層部300の他の例>
積層部300は、様々な変形が可能である。以下、積層部300の他の例について説明する。なお、既に説明した例と同じ構成、または実質的に同じ構成には、同じ符号を付し、その構成および機能についての重複する説明を適宜省略する。
【0054】
(第2例)
第2例では、電極は、ステージ14上またはステージ14上に積層された他の電極上をスライド可能であり、電極の端部は、ステージ14上またはステージ14上に積層された他の電極上を電極がスライドすることにより、アライメント部7と接触する点が、
図4~6に示した第1例と異なる。なお、「スライド」は、滑ること、または滑り運動をすることを意味する。「電極がステージ14上をスライドする」ことは、「電極がステージ14上を滑る」と換言されてもよい。
【0055】
図7は、積層部の第2例を示す模式図である。
図7(a)は断面図、
図7(b)は斜視図である。第2例に係る電池用積層体の製造装置は、ステージ14を傾斜させる傾斜機構300-9を有する。電極は、傾斜機構300-9によるステージ14の傾斜によって重力が働くことにより、ステージ14上をスライドすることができる。
【0056】
傾斜機構300-9は、ステージ14の一部を鉛直方向に昇降させることでステージ14の上面を傾斜させる機構である。但し、傾斜機構300-9は、ステージ14を傾斜させることができれば、昇降機構に限らず、揺動機構等を用いてもよい。またステージ14を予め傾斜させて配置する場合には、第2例に係る電池用積層体の製造装置は、必ずしも傾斜機構を有さなくてもよい。
【0057】
図7において、水平方向に対して傾斜して配置されたステージ14上に、第1の電極4および第2の電極15が交互に重ねられて積層される。第1の電極4および第2の電極15は、第1の電極4の端部4aおよび第2の電極15の端部15aのそれぞれがステージ14上に配置されたアライメント部7と接触することにより、アライメントされる。
【0058】
本実施形態では、ステージ14の傾斜角度をθとし、ステージ14の静止摩擦係数をμとし、ステージの動摩擦係数をμ'とすると、ステージ14の傾斜θ角度は、μ<tanθ、または、μ'<tanθのいずれか一方を満足してもよい。このようにすることで、ステージ14上に積層された電極が、重力の働きにより、ステージ14上においてスライドするため、端部4aおよび端部15aと、アライメント部7の接触が正確に行われ、アライメントの精度が高くなる。ステージ14は、常に傾斜していてもよい。また、ステージ14は、ステージ14上への電極の積層が終了した後、センサ部300-6の検出結果に基づく制御部300-7の制御信号に応じて傾斜動作を行ってもよい。
【0059】
また、電極が厚みの異なる厚膜部と薄膜部を有する場合には、電極へのダメージを低減する観点では、アライメント部7と電極との接触箇所は、厚膜となっている辺を含むことが好ましい。特に集電体(取り出し線)のいずれかの辺、または集電体の厚膜部と隣接しない辺は、アライメント時にアライメント部7に接触しない構成であることが好ましい。
【0060】
アライメント部7によるアライメント動作は、電極へのダメージを低減する観点では、ステージ14上への電極の積層が1枚終了するたびに行われることが好ましい。一方、生産性を高くする観点では、複数の電極のステージ14上への積層が全て終了した後に行われることが好ましい。
【0061】
また、電極の複数の辺がアライメント部7と接触することにより、アライメントを行う場合には、接触しうる複数の辺の全てが並行してアライメント部7と接触してもよい。あるいは、接触しうる一部の辺が異なるタイミングでアライメント部7と接触してもよいし、接触しうる全ての辺が異なるタイミングでアライメント部7と接触してもよい。電極に対するダメージを低減する観点では、接触しうる辺のうち長い辺から先にアライメント部7に接触させることが好ましい。
【0062】
(第3例)
第3例では、ステージ14上に少なくとも2つのアライメント部7が配置され、ステージ14の上面に略平行な面内における少なくとも2方向において、アライメント部7と電極の端部が接触する点が、第1~2例と異なる。
【0063】
図8は、積層部300の第3例を示す模式図である。アライメント部7は、柱状部材76~78を含む。柱状部材76~78は、それぞれの長手方向が相互に略直交するようにステージ14上に配置される。柱状部材76~78は、少なくとも2つのアライメント部7に対応する。
【0064】
第1の電極4および第2の電極15は、水平方向に対して傾斜して配置されたステージ14上に交互に重ねられて積層される。例えば、第1の電極4の端部4aが柱状部材76に接触することにより、ステージ14の上面と略平行な面内において、柱状部材76の長手方向と略直交する方向における第1の電極4のアライメントがアライメント部の移動により行われる。その後、第1の電極4の端部4bが傾斜機構により柱状部材77に接触することにより、ステージ14の上面と略平行な面内において、柱状部材77の長手方向と略直交する方向における第1の電極4のアライメントが行われる。端部4aの面と端部4bの面は、略直交する。また柱状部材76の長手方向と柱状部材77の長手方向は略直交する。
【0065】
柱状部材76~78の第1の電極4および第2の電極15それぞれへの接触方法、並びにアライメント終了後のアライメント部7の動作等は、第2例とほぼ同じであるため、ここでは重複する説明を省略する。このような構成とすることにより、アライメント時に、電極の少なくとも1辺以上にアライメント部を接触させずにアライメントを行うことができる。
【0066】
(第4例)
第4例では、アライメント部7の一部が変形可能である点が、第1~3例と異なる。
【0067】
図9は、積層部300の第4例を示す模式図である。例えば、アライメント部7の一部は、搬送部300-2により、電極がステージ14に搬送される前の状態に対して変形する。また、アライメント部7の一部は、変形前に対して断面積が変化するように変形する。アライメント部7の一部が変形することにより、ステージ14上に電極を積層するときに、電極が有する歪等によってアライメント部7から電極が脱離することを低減できる。また、変形したアライメント部7の一部が、積層された電極の上面を押圧することにより、積層された電極が浮き上がることを低減可能な技術を提供することができる。
【0068】
例えば、アライメント部7は、可動部7-1と非可動部7-2とを備える。アライメント部7は、可動部7-1が可動することにより、変形可能である。アライメント部7は、電極に設けられた位置決め孔に可動部7-1が挿入可能であって、該位置決め孔に非可動部7-2が挿入可能である状態と、該位置決め孔に可動部7-1が挿入できない状態であって、該位置決め孔に非可動部7-2が挿入可能な状態と、の間で変形する。アライメント部7は、上記目的を達成できるものであれば形状や材質は問わない。
【0069】
可動部7-1は、アライメント部7の一部に対応する。可動部7-1は、ステージ14上に電極を積層するときに、アライメント部7から電極が脱離することを低減する機能を有しており、形状は問わない。可動部7-1は、様々な変形によって実現可能である。また変形手段に関しても特に制限は無い。
【0070】
非可動部7-2は、電極をステージ14上に積層するときに、積層された電極を保持する機能を有しており、形状は問わない。側面の形状は、直線形状や、先細り形状、先太り形状、繰り返し凹凸を有する形状であるジグザグ形状、波形状等であってよい。この中でも積層後の電極のズレ発生の抑制の観点から直線形状であることが好ましい。また、繰り返し凹凸を有する形状である場合は、一周期が電極の正負極の周期と略一致していることが好ましい。
【0071】
図9において、アライメント部7a1は変形前の状態を示し、アライメント部7b1は変形後の状態を示している。
図9に示す例では、可動部7-1は、開閉動作可能な複数の爪と、該複数の爪を駆動させる駆動部と、を含む。可動部7-1は、駆動部により、制御部300-7からの制御信号に応じて、複数の爪を開閉動作させることができる。
図9に示すように、可動部7-1では、変形前には複数の爪が閉じた状態になり、変形後には複数の爪が開いた状態になる。
【0072】
例えば、電極には予め位置決め孔が設けられている。可動部7-1における複数の爪が閉じた状態では、可動部7-1は電極の位置決め孔に挿入可能である。位置決め孔に可動部7-1が挿入されるように、ステージ14に電極を積層し、積層後に電極をアライメントする。アライメントが終了した後、可動部7-1の複数の爪は開く。開いた状態における可動部7-1における複数の爪の高さは、ステージ上に積層された電極の最上面を押圧可能な高さに予め調整されている。従って、可動部7-1は、複数の爪を開くことにより、複数の爪で電極の積層された電極の最上面を押圧することができる。
【0073】
可動部7-1は、複数の爪が複数の電極を押さえることにより、非可動部7-2から複数の電極が外れない状態にして、複数の電極をステージ14上に固定することができる。アライメント部7は、電極保管部300-1から複数の電極を取り出す場合には、可動部7-1における複数の爪を閉じた状態にする。
【0074】
<電池用部材の製造方法>
本実施形態に係る電池用部材の製造方法について詳細に説明する。本実施形態では、電池用積層体の製造装置1000は、搬送部300-2により、電極が積層されるステージ14に電極を搬送して配置し、ステージ14上に配置されたアライメント部7により、電極をアライメントする。電極の端部は、電極が搬送部300-2から離隔した後に、アライメント部7と接触する。また、本実施形態に係る電池用積層体の製造方法は、
図1に示したように、絶縁層形成工程と電極裁断工程とを必要に応じて有してもよい。
【0075】
(搬送工程)
電極搬送工程は、電池用積層体を形成する少なくとも一方に絶縁層が設けられた第一の電極および第二の電極をステージ上に搬送する工程である。搬送工程を実現する方法としては、上記内容を実現できる手段であれば制限はない。
【0076】
(積層工程)
積層工程は、搬送工程後に少なくとも一方に絶縁層が設けられた第1の電極および第2の電極を積み重ねて電池用積層体を形成する工程である。上記工程では、第1の電極と電気化学的に対の化学反応可能な第2の電極を交互に積層していくことで、電池として機能する積層体となる。
【0077】
(アライメント工程)
アライメント工程は、ステージ14上に配置する電極を位置調整及び固定する工程である。これは、搬送部300-2から電極が離隔された後に、電極の端部とアライメント部7とを接触させることで実現される。良好な品質の電池用積層体を製造するためには、第1の電極と第2の電極を設計通りにズレなく積層していくことが重要である。もしズレが生じすると、電池用積層体の容量が低下する等の特性に不具合を生じさせる。
【0078】
本実施形態では、ズレを低減するために、第1の電極および第2の電極を交互に積み重ねるとき、または積み重ねた後に、電極の端部をステージ14上に配置されたアライメント部7と接触させてアライメントを行う。このアライメントは、電池用積層体に対して絶縁層が密着して一体化されていることで、電池用積層体と絶縁層を同時にアライメント可能となるため、実行可能である。電池用積層体において使用されるフィルムセパレータを使用した場合には、フィルムセパレータの端部をアライメント部と接触させても、フィルムセパレータが柔軟であるため、アライメントを行うことが困難な場合がある。また、電極の端部をアライメント部と接触させた場合には、電極のアライメントは可能だが、電極上に設置されたフィルムセパレータに滑りが生じ、フィルムセパレータのアライメントを行うことが困難な場合がある。このため、本実施形態に係る電池用積層体で使用される多孔質絶縁層は、電極と絶縁層とが一体となり、電極と絶縁層間で滑りを発生じさせないために、正確なアライメントが可能な部材となる。
【0079】
(裁断工程)
裁断工程はロールで連続に搬送される電極を所望のサイズに裁断する工程である。
【0080】
(絶縁層形成工程)
絶縁層の形成工程は、第1の電極である被付与物に対して有機層および無機層の少なくとも一方からなる絶縁性を形成する工程である。
図2~3に示したように、絶縁層形成部100による多孔質絶縁層形成工程は、第1の電極に対して液体組成物を付与し、液体組成物層を形成する液体付与工程を有し、必要に応じて液体組成物に活性エネルギー線を照射する工程や、液体組成物に含まれる溶媒を除去する除去工程等を有してもよい。
【0081】
(液体組成物付与工程)
液体組成物付与工程は、電極の少なくとも一部に重合性化合物および液体を有する液体組成物を付与する工程である。付与された液体組成物は、電極に液体組成物の液膜である液体組成物層を形成することが好ましい。液体組成物を付与する方法としては、ディスペンサー、ダイコーター、引き上げ塗工等により塗布される。また、スプレー、インクジェット印刷法等の液体吐出方法の方式も取ることができる。特にインクジェット印刷法を用いた場合は、所望のパターンを所望の膜厚で形成することができる為に、材料の無駄も極力抑えた上で自由な形状の絶縁層を形成可能となる為に好ましい。
【0082】
(エネルギー付与工程)
エネルギー付与工程は、液体組成物付与工程において付与された液体組成物に対して活性エネルギー線を照射する工程である。特に、重合誘起相分離を起こす液体組成物へのエネルギー付与工程は、最終的に製造される多孔質樹脂の空隙率を向上させ、これにより、例えば、多孔質樹脂における液体又は気体等の流体の取込性を向上させる。具体的には、液体組成物に対して活性エネルギー線を照射することにより、空隙率の高い多孔質樹脂を形作る上で基礎となる多孔質構造を有する多孔質前駆体を形成する。
【0083】
活性エネルギー線としては、重合性化合物の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中でも紫外線であることが好ましい。なお、特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
以下は、液体組成物がエネルギー付与工程により、多孔質前駆体を形成する理由について説明する。上記の通り、重合誘起相分離により多孔質樹脂を形成する場合、重合条件に基づいて多孔質樹脂の構造及び性質等が変化する。例えば、液体組成物に対して照射強度の強い活性エネルギー線を照射して重合性化合物の重合が促進される条件下で多孔質樹脂の形成を行った場合、相分離が十分に生じる前に重合が進行してしまい、空隙率の高い多孔質樹脂を製造することが困難になる傾向がある。そのため、空隙率の高い多孔質樹脂を形作る為に、照射される活性エネルギー線の照射強度は高すぎないように設定される。具体的には、活性エネルギー線の照射強度は、1W/cm2以下が好ましく、300mW/cm2未満がより好ましく、100mW/cm2以下が更に好ましい。但し、活性エネルギー線の照射強度が低すぎると、相分離が過度に進行することで多孔質構造のばらつきや粗大化が生じやすくなり、更に、照射時間も長くなって生産性が低下することから、10mW/cm2以上であることが好ましく、30mW/cm2以上であることがより好ましい。
【0084】
(乾燥工程)
乾燥工程は、液体組成物から分散媒又は液体分散媒又は液体を除去する工程である。分散媒又は液体を除去する方法としては特に限定されず、例えば、加熱することにより分散媒又は液体を除去する方法が挙げられる。このとき、減圧下で加熱することで分散媒又は液体の除去がより促進され、形成される活物質層および多孔質絶縁層における分散媒又は液体の残存を抑制できるので好ましい。
【0085】
<電池用積層体>
図10~15を参照して、本実施形態に係る電池用積層体について説明する。
図10~14は、実施形態に係る電池用電極の第1例を示す模式的斜視図である。
図11は、実施形態に係る電池用電極の第1例を示す模式的断面図である。
図12は、実施形態に係る電池用電極の第2例を示す模式的斜視図である。
図13は、実施形態に係る電池用電極の第2例を示す模式的断面図である。
図14は、実施形態に係る電池用電極の第3例を示す模式的断面図である。
図15は、実施形態に係る多孔質絶縁層の一例を示す図である。
図15(a)は平面図、
図15(b)は断面図である。
図10~15において、8は第1の電極の集電体を示している。9は第1の電極の活物質を示している。10は多孔質絶縁層を示している。10xは空隙を示している。13は、絶縁層保護層を示している。
【0086】
本実施形態に係る電池用積層体は、第1の電極と第2の電極を交互に積層した電極積層体であって、第1の電極が負極であった場合には、第2の電極は正極を指し、第1の電極が正極であった場合には、第2の電極は負極を指す。また、第1の電極と第2の電極の電極基体が重ならないように取り出す必要があり、取り出し方に制限はない。
【0087】
(電極)
電極では、負極と正極とを総称して電極と称し、負極用電極基体と正極用電極基体とを総称して電極基体と称し、負極合材層と正極合材層とを総称して電極合材層と称する。また、第1の電極が負極であった場合は第2の電極は正極を指し、第1の電極が正極であった場合は第2の電極は負極を指す。
【0088】
(電極基体)
負極用電極基体及び正極用電極基体は、平面性及び導電性を有する基体であれば、特に制限はなく、一般に蓄電素子である二次電池、キャパシタ、中でもリチウムイオン二次電池に好適に用いることができる、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔及び、それらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔や、リチウムイオンキャパシターに用いられる穴あき電極基体等を用いることができる。また、燃料電池のような発電素子で用いられるカーボンペーパー、繊維状の電極を不織又は織状で平面にしたものや、上記穴あき電極基体のうち微細な穴を有するものも使用できる。更に、太陽光素子の場合、上記に加えてガラスやプラスチックス等の平面基体上に、インジウム・チタン系の酸化物や亜鉛酸化物のような、透明な半導体薄膜を形成したものや、導電性電極膜を薄く蒸着したものを用いることができる。
【0089】
(電極合材層)
負極合材層及び正極合材層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活物質(負極活物質又は正極活物質)を少なくとも含み、必要に応じてバインダ(結着剤)、増粘剤、導電剤、分散剤、非水電解液、固体電解質、ゲル電解質、又は重合プロセスを経てゲル電解質となるモノマーの1つ以上等を含んでもよい。負極合材層及び正極合材層は、粉体状の活物質や触媒組成物を液体中に分散し、かかる液を電極基体上に塗布、固定、乾燥することによって形成されており、通常はスプレー、ディスペンサー、ダイコーターや引き上げ塗工を用いた印刷が用いられ、塗布後に乾燥して形成する。負極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を負極活物質として使用できる。そのような炭素材料として、天然黒鉛、球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。炭素材料以外の材料としては、チタン酸リチウムが挙げられる。又、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める観点から、シリコン、錫、シリコン合金、錫合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化錫等の高容量材料も負極活物質として好適に使用できる。
【0090】
ニッケル水素電池における上記活物質としては水素吸蔵合金としては、Zr-Ti-Mn-Fe-Ag-V-Al-WやTi15Zr21V15Ni29Cr5Co5Fe1Mn8等で代表されるAB2系或いはA2B系の水素吸蔵合金が例示される。正極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、アルカリ金属含有遷移金属化合物を正極活物質として使用できる。例えば、リチウム含有遷移金属化合物として、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄、及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素とリチウムとを含む複合酸化物が挙げられる。
【0091】
複合酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム含有遷移金属酸化物、LiFePO4等のオリビン型リチウム塩、二硫化チタン、二硫化モリブデン等のカルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物又は該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。異種元素としては、例えばNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、中でもMn、Al、Co、Ni及びMgが好ましい。異種元素は1種でもよく又は2種以上でもよい。これらの正極活物質は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ニッケル水素電池における上記活物質としては水酸化ニッケル等が挙げられる。負極又は正極のバインダには、例えば、PVDF、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。
【0092】
また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。又、これらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。電極合材層に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料等が用いられる。
【0093】
燃料電池での活物質は一般に、カソード電極やアノード電極の触媒として、白金、ルテニウム或いは白金合金等の金属微粒子をカーボン等の触媒担体に担持させたものを用いる。触媒担体の表面に触媒粒子を担持させるには、例えば触媒担体を水中に懸濁させ、触媒粒子の前駆体(例えば、塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅等の合金成分を含むもの等)を添加し、懸濁液中に溶解させアルカリを加え金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体表面に担持させた触媒担体を得る。かかる触媒担体を電極基体上に塗布し、水素雰囲気下等で還元させることで、表面に触媒粒子(活物質)が塗布された電極合材層を得る。
【0094】
太陽電池等の場合、活物質は、酸化タングステン粉末や酸化チタン粉末のほかSnO2、ZnO、ZrO2、Nb2O5、CeO2、SiO2、Al2O3といった酸化物半導体層が挙げられ、半導体層には、色素が担持させられており、例えば、ルテニウム・トリス型の遷移金属錯体、ルテニウム-ビス型の遷移金属錯体、オスミウム-トリス型の遷移金属錯体、オスミウム-ビス型の遷移金属錯体、ルテニウム-シス-ジアクア-ビピリジル錯体、フタロシアニン及びポルフィリン、有機-無機のペロブスカイト結晶等の化合物を挙げることができる。
【0095】
(絶縁層)
絶縁層は、正極と負極を隔離し、かつ正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材である。形成される絶縁層の膜厚は、正極と負極間の絶縁性が保持される限りは特に限定はされないが、1μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることが特に好ましい。上記よりも膜厚が薄い場合は正極と負極間の良好な絶縁性を維持することが難しい。また、上記よりも膜厚が厚い場合は良好なイオン導電性を確保することが難しい。 また、得られる絶縁層の有する空孔の大きさはイオン導電性を有する限り特に限定はされないが、電解液の浸透性の観点から0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。また、多孔質樹脂の空隙率としては、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。また、絶縁層は融点やTgを有する材料により形成されることで積層後に、積層上下に位置する絶縁層どうしを加熱接着し、積層体形成後の電極位置ずれを抑制することが出来る。
【0096】
(液体組成物)
液体組成物は絶縁層を形成する為に塗布される液体であり、有機及び/又は無機化合物及び溶媒又は分散液等を含む。上記有機及び/又は無機化合物及び溶媒又は分散液は、最終的に形成される有機層及び・又は無機層が絶縁性を有している限り、必要に応じて適宜選択可能である。
【0097】
例えば、絶縁性を有する無機材料としては、金属酸化物、金属窒化物、その他の金属微粒子が挙げられる。 金属酸化物として、Al2O3(アルミナ)、TiO2、BaTiO3、ZrO2などが好ましい。 金属窒化物として、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などが好ましい。 その他の金属微粒子として、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子、或いはベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイトなどの鉱物資源由来物質、又はそれらの人造物などが好ましい。 また、絶縁性を有する無機材料として、ガラスセラミック粉末が挙げられる。 ガラスセラミック粉末は、ZnO-MgO-Al2O3-SiO2系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラスセラミック、BaO-Al2O3-SiO2系セラミック粉末やAl2O3-CaO-SiO2-MgO-B2O3系セラミック粉末等を用いた非ガラス系セラミックが好ましい。更に、固体電解質として酸化物や又は硫化物などのセラミックスの固体電解質が利用できる。
【0098】
酸化物としては、LISICON型酸化物であるγ-Li3PO4、Li3BO4、0.75Li4GeO4-0.25Li2ZnGeO4固溶体、Li4SiO4-Zn2SiO4固溶体、Li4GeO4-Li3VO4固溶体、NASICON型酸化物であるLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3若しくはLi17al0.6Ge0.8Ti0.6(PO4)3、ペロブスカイト型構造である(Li、La)TiO3、ガーネット型酸化物であるLa5Li3Nb2O12、Li5La3TaO12、又はLi7La3Zr2O12が挙げられる。
【0099】
硫化物としては、Li4GeS4-Li3PS4固溶体、Li4SiS4-Li3PS4固溶体、Li3PS4-Li2S固溶体、Li2S-P2S5固溶体、Li2S-SiS2、Li10GeP2S12、Argyrodite型Li6PS5X(X=Cl、Br、I)、又はL7P3S11結晶が挙げられる。
【0100】
(ナトリウムイオン二次電池向けセラミックス固体電解質)
酸化物としては、NASICON型のNa1+xZr2SixP3-xO12(0≦x≦1)、又はβアルミナ型のNa2O-11Al2O3が挙げられる。硫化物としては、Na2S-P2S5、Na3PS4、Na3SbS4、Na2S-SiS2、又はNa2S-GeS2等が挙げられる。セレン化物としては、Na3PSe4等が挙げられる。これらはポリマーとの複合電解質として使用しても良い。これらの無機材料の粒径は、10μm以下、より好ましくは3μm以下であることが好ましい。
【0101】
以上の無機材料を液体に分散させ、無機層作製用液体組成物とする。 液体は、分散させる無機材料に適した液体を選定する。上記の無機材料を液体に分散させる際に、結着材料を添加する。 結着材料は、無機材料が絶縁層として保持させるため、無機材料の微粒子間を固着する機能を有する。 結着材料として、アクリル系樹脂、スチレンブタジエン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂などを用いることができる。 上記の無機層作製用インクを調合するときに、ホモジナイザーを用いて分散させてもよい。 ホモジナイザーは、高速回転せん断攪拌方式、高圧噴射分散方式、超音波分散方式、媒体攪拌ミル方式などを用いることができる。 上記の無機層作製用インクを調合するときに、必要に応じて分散材、界面活性剤などの添加剤を用いてもよい。 分散材、界面活性剤として、メガファック(DIC株式会社)、マリアリム(日油株式会社)、エスリーム(日油株式会社)、ソルスパース(Lubrizol)、ポリフロー(共栄社化学株式会社)などを用いることができる。 その他の添加剤として、粘度を調整するための増粘材であるプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースなどを用いることができる。
【0102】
更に、絶縁性を有する有機および無機材料の少なくとも一方としては、樹脂を使用することができる。樹脂を形成するために、樹脂及び該樹脂の前駆体の少なくとも何れか一方(樹脂および該樹脂の前駆体の少なくとも一方)を液体に溶解又は分散してなる樹脂層作製用液体組成物を用いる。 液体は、溶解又は分散させる樹脂に適した液体を選定する。 具体的には、水、炭化水素系液体、アルコール系液体、ケトン系液体、エステル系液体、エーテル系液体を用いることができる。 かかる樹脂及び該樹脂の前駆体としては、分子内に電離放射線や赤外線(熱)によって架橋性の構造を保有する樹脂類やオリゴマー類を液体に溶解せしめたものが好ましい。かかる樹脂及び該樹脂の前駆体としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂のうち低分子量のオリゴマー前駆体や、その一部に例えば脂肪族不飽和結合を有する炭化水素基で修飾したものが好ましく、例えばアクリル系共重合体の一部の側鎖にアリル基、アリルオキシ基、アクリロイル基、ブテニル基、シンナミル基、シンナモイル基、クロトメイル基、シクロヘキサジェニル基、インプロペニル基、メタクリロイル基、ペンテニル基、プロペニル基、スチリル基、ビニル基、ブタジェニル基などの不飽和結合を有するものなどが好ましい。
【0103】
更にポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、及びセルロース等についても分子量1万以下の比較的低分子量の分散前駆体やセルロースナノファイバーを用い、それらを電離放射線や赤外線によって加熱することにより定着後の不溶性・架橋性を高めることができる。
【0104】
更にこれらの前駆体は、架橋性を高めるために最大30重量部程度のアジド化合物を含有させても構わない。 例えば、3.3′-ジクロロ-4.4′-ジアジドジフェニルメタン、4.4′-ジアジドジフェニルエーテル、4.4′-ジアジドジフェニルジスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルホン、4-アジドカルコン、4-アジド-4′-ヒドロキシカルコン、4-アジド-4′-メトキシカルコン、4-アジド-4′-モルホリノカルコン、4-ジメチルアミノ-4′-アジドカルコン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-シクロヘキサノン、シンナミリデン-4-アジドアセトフェノン、4-アジドシンナミリデンアセトフェノン、4-アジド-4′-ジメチルアミノシンナミリデンアセトフェノン、シンナミリデン-4-アジドシンナミリデンアセトン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-シクロヘキサノン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデン-3-α-ヒドロキシ-4″-アジドベンジルインデン、9.4′-アジドベンジリデンフルオレン、9.4′-アジドシンナミリデンフルオレン、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-メトキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシエチルフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニルアミド、4.4′-ジアジドベンゾフェノン、4.4′-ジアジドスチルベン、4.4′-ジアジドカルコン、4.4′-ジアジドベンザルアセトン、6-アジド-2-(4'-アジドスチリル)ベンゾイミダゾール、3-アジドベンジリデンアニリン-N-オキシp~(4-アジドベンジリデンアミド)安息香酸、1.4-ビス(3′-アジ1ζスチリル)ベンゼン、3.3′-ジアジドジフェニルスルホン、4.4′-ジアジドジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0105】
なかでも特に2.6-ビス-(4′アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン等を好適に用いることができる。 これらの材料が溶解される溶媒は特に規定されるものではないが、上記化合物が溶解できて沸点や表面張力が後の塗布や乾燥工程に対して好適なものを単独又は混合して調整し用いることができる。
【0106】
樹脂で形成された樹脂層が内部に空隙を有する場合、実質的に電解質などのイオンの通過が可能となり、セパレータとしての機能や、熱的な暴走防止機能を付与することができるため好ましいものとなる。
【0107】
電解液の浸透性や保液性の観点で、イオン透過性のみならず微細な開口を有するものが望ましく、樹脂中に、発泡剤のような材料を含んで塗布後に加熱し、電解質などの溶解性塩を含み、塗布後、電解液に浸すことによって左記塩が溶解することにより開口や細孔が形成されることによってイオン透過性が発現されうる場合などが、より望ましいものとなる。 或いは、ブロック状の分子骨格により、塗布後、特定の相分離やミクロ相分離を形成し、微細開口を形成することによって、同様にイオン透過性が発現され、或いはインク組成中に揮発性の溶剤を含むことによって、印刷にひき続いた重合などで固―液相分離を引き起こし、その後、溶剤を除去(乾燥)することによって微細な網目状開口を得ることができる。特に重合によって固-液相分離(以下「重合誘起相分離」とも称する)を引き起こす液体組成物は、短時間でイオン透過性の高い多孔質樹脂構造体が得られる為に好ましい。
【0108】
樹脂は、ゲル電解質として樹脂と非水電解液、イオン液体、グライム、又は電解質塩とを含みしようしても良い。
【0109】
(多孔質絶縁層)
多孔質絶縁層は、正極と負極を隔離し、かつ正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材であり、樹脂を骨格とする共連続構造を有する。樹脂は、架橋樹脂であり、エネルギー照射によって重合可能な重合性化合物の重合物であることが好ましい。ここで、「共連続構造」とは、2種以上の物質が、それぞれ連続構造を有し、界面を形成しない構造を意味し、本実施形態においては、樹脂相と空孔相とが共に三次元分岐網目連続相となっている構造を意味する。このような構造は、例えば、後述する液体組成物を重合誘起相分離法によって重合することにより形成することができる。
【0110】
多孔質絶縁層が、三次元分岐網目構造を骨格とした共連続構造であることによって、高空隙かつ高強度な多孔質絶縁層を実現することが可能となる。すなわち、
図3(a)及び(b)に示すように、多孔質絶縁層10は多数の空孔10xを有しており、一の空孔10xが一の空孔10xの周囲の他の空孔10xと連結した連通性を有して三次元的に広がっている。
【0111】
多孔質絶縁層が共連続構造を有し、空孔同士が連通することで、電解質の浸み込みが十分に起き、イオンの移動を妨げることがない。共連続構造を有し、空孔が連通していることを確認する方法としては、例えば、多孔質絶縁層の断面を走査電子顕微鏡(SEM)等により画像観察し、空孔同士の繋がりが連続していることを確認する方法が挙げられる。また、空孔が連通していることで得られる物性の一つとして透気度が挙げられる。
【0112】
(走査電子顕微鏡(SEM)による画像観察、及び空隙率の測定)
多孔質絶縁層の空隙率としては、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。また、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。空隙率が30%以上であることで、多孔質絶縁層において液体や気体の浸み込みが十分に起き、物質分離や反応場といった機能を効率的に発現させることができる。また、多孔質絶縁層を蓄電素子における絶縁層として用いた場合、電解液の浸透性やイオンの透過性が向上し、蓄電素子内部の反応が効率的に進行する。また、空隙率が90%以下であることで、多孔質絶縁層の強度が向上する。
【0113】
具体的な方法としては、下記手順により求めることができる。多孔質絶縁層の空隙率の評価方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多孔質絶縁層に不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填し、オスミウム染色を施した後で、集束イオンビーム(FIB)で内部の断面構造を切り出し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて空隙率を測定する方法などが挙げられる。
【0114】
(透気度)
多孔質絶縁層の透気度としては、1,000秒/100mL以下が好ましく、500秒/100mL以下がより好ましく、300秒/100mL以下が更に好ましい。透気度は、JIS P8117に準拠して測定される透気度であり、例えば、ガーレー式デンソメーター(株式会社東洋精機製作所製)等を用いて測定することができる。一例として、透気度が1,000秒/100mL以下であることをもって空孔が連通していると判断してもよい。
【0115】
多孔質樹脂が有する孔の断面形状としては、略円形状、略楕円形状、略多角形状等の様々な形状及び様々な大きさであって構わない。ここで、孔の大きさとは、断面形状における最も長い部分の長さを指すものとする。孔の大きさは、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した断面写真から求めることができる。
【0116】
多孔質樹脂の有する孔の大きさとしては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択できるが、液体や気体の浸透性の観点から、0.01μm以上10μm以下が好ましい。空孔の大きさが0.1μm以上10μm以下であることで、多孔質絶縁層において液体や気体の浸み込みが十分に起き、物質分離や反応場といった機能を効率的に発現させることができる。また、後述するように、多孔質絶縁層を蓄電素子の絶縁層として用いる場合、空孔の大きさが10μm以下であることで、蓄電素子の内部で発生するリチウムデンドライドによる正極と負極の間の短絡を防止することができ、安全性が向上する。
【0117】
多孔質樹脂の有する孔の大きさ及び空隙率をこれらの範囲にする方法としては、特に限定されないが、例えば、液体組成物中における重合性化合物の含有量を上記の範囲に調整する方法、液体組成物中におけるポロジェンの含有量を上記の範囲に調整する方法、及び活性エネルギー線の照射条件を調整する方法などが挙げられる。
【0118】
多孔質絶縁層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0μm以上50.0μm以下が好ましく、5.0μm以上20.0μm以下がより好ましい。前記平均厚みが5.0μm以上であることで活物質の凹凸による短絡が生じにくく、20.0μm以下にすることで良好な電池特性が得られる。
【0119】
なお、このとき厚みとは、多孔質樹脂層のみからなる厚みであり、例えば、多孔質樹脂層の基材への染み込みが生じた場合は、多孔質樹脂層及び基材を含む層の厚みは含まれない。
【0120】
(多孔質絶縁層形成用液体組成物)
多孔質絶縁層形成用液体組成物は多孔質絶縁層を形成する為に塗布される液体であり、重合性化合物、及び液体を含み、更に必要に応じて、重合開始剤などのその他の成分を含む。多孔質絶縁層形成用液体組成物は、多孔質樹脂を形成し、前記液体組成物を撹拌しながら測定した波長550nmにおける光透過率が、30%以上であり、液体組成物を重合して作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値の上昇率が、1.0%以上である。多孔質絶縁層形成用液体組成物は、多孔質構造体を形成する。すなわち、液体組成物における重合性化合物の重合及び硬化により樹脂を骨格とする多孔質構造を有する樹脂構造体(「多孔質樹脂」又は「多孔質構造体」とも称する)を形成する。
【0121】
(重合性化合物)
重合性化合物は、重合することにより樹脂を形成し、液体組成物の組成及び特徴により多孔質樹脂を形成する。重合性化合物は、重合することにより重合物(樹脂)を形成する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の重合性化合物を選択することができるが、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有することが好ましい。
【0122】
重合性化合物としては、例えば、1官能、2官能、又は3官能以上のラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性オリゴマー等のラジカル重合性化合物;重合性官能基以外の官能基を更に有する機能性モノマー、機能性オリゴマーなどが好適に挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が好ましい。
【0123】
重合性化合物の重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基の少なくともいずれかが好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0124】
重合性化合物が、エネルギー照射によって重合可能であることが好ましく、熱又は光により重合可能であることがより好ましい。
【0125】
重合性化合物により形成される樹脂は、活性エネルギー線の付与(例えば、光の照射や加熱)等で形成される網目状の構造体を有する樹脂であることが好ましく、例えば、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂、エン-チオール反応により形成される樹脂などが好適に挙げられる。
【0126】
これらの中でも、反応性の高いラジカル重合を利用して構造体を形成することが容易な点から、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物により形成される樹脂であるアクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂がより好ましく、また、生産性の観点から、ビニル基を有する重合性化合物により形成される樹脂であるビニルエステル樹脂がより好ましい。
【0127】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、重合性化合の組み合わせとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、柔軟性付与のため、ウレタンアクリレート樹脂を主成分として他の樹脂を混合することが好ましい。なお、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくともいずれかを有する重合性化合物を、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物と称する。
【0128】
活性エネルギー線としては、液体組成物中の重合性化合物の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線などが挙げられる。これらの中でも紫外線が好ましい。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
【0129】
1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0130】
2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0131】
3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5-テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0132】
重合性化合物の含有量は、液体組成物全量に対して、5.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上50.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以上40.0質量%以下が更に好ましい。
【0133】
含有量が70.0質量%以下である場合、得られる多孔質体の空孔の大きさが数nm以下と小さくなりすぎず、多孔質体が適切な空隙率を有し、液体や気体の浸透が起きにくくなる傾向を抑制することができるので好ましい。また、前記含有量が5.0質量%以上である場合、樹脂の三次元的な網目構造が十分に形成されて多孔質構造が十分に得られ、得られる多孔質構造の強度も向上する傾向が見られるため好ましい。
【0134】
(液体)
液体は、ポロジェンを含み、更に必要に応じて、ポロジェン以外のその他の液体を含む。ポロジェンは、重合性化合物と相溶する液体であって、かつ、液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。液体組成物中にポロジェンが含まれることで、重合性化合物が重合した場合に、多孔質樹脂を形成する。また、光又は熱によってラジカル又は酸を発生する化合物(後述する重合開始剤)を溶解可能であることが好ましい。液体またはポロジェンは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。なお、本実施形態において、液体は重合性を有さない。
【0135】
ポロジェンの1種単独としての沸点又は2種類以上を併用した場合の沸点としては、常圧において、50℃以上250℃以下が好ましく、70℃以上200℃以下がより好ましく、120℃以上190℃以下が更に好ましい。沸点が50℃以上であることにより、室温付近におけるポロジェンの気化が抑制されて液体組成物の取扱が容易になり、液体組成物中におけるポロジェンの含有量の制御が容易になる。また、沸点が250℃以下であることにより、重合後のポロジェンを除去する工程における時間が短縮され、多孔質樹脂の生産性が向上する。また、多孔質樹脂の内部に残存するポロジェンの量を抑制することができるので、多孔質樹脂を物質間の分離を行う物質分離層や反応場としての反応層などの機能層として利用する場合に、品質が向上する。
【0136】
ポロジェンとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類;γブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類;N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;などを挙げることができる。また、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の比較的分子量の大きな液体も挙げることができる。また、アセトン、2-エチルヘキサノール、1-ブロモナフタレン等の液体も挙げることができる。なお、上記の例示された液体であれば常にポロジェンに該当するわけではない。
【0137】
ポロジェンとは、上記の通り、重合性化合物と相溶する液体であって、かつ液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。言い換えると、ある液体がポロジェンに該当するか否かは、重合性化合物及び重合物(重合性化合物が重合することにより形成される樹脂)との関係で決まる。
【0138】
また、液体組成物は、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればよいため、液体組成物作製時の材料選択の幅が広がり、液体組成物の設計が容易になる。液体組成物作製時の材料選択の幅が広がることで、多孔質構造の形成以外の観点で液体組成物に求められる特性がある場合に、対応の幅が広がる。例えば、液体組成物をインクジェット方式で吐出する場合、多孔質形成以外の観点として、吐出安定性等を有する液体組成物であることが求められるが、材料選択の幅が広いため、液体組成物の設計が容易になる。
【0139】
液体またはポロジェンの含有量としては、液体組成物全量に対して、30.0質量%以上95.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下がより好ましく、60.0質量%以上80.0質量%以下が更に好ましい。
【0140】
液体またはポロジェンの含有量が30.0質量%以上である場合、得られる多孔質体の空孔の大きさが数nm以下と小さくなりすぎず、多孔質体が適切な空隙率を有し、液体や気体の浸透が起きにくくなる傾向を抑制することができるので好ましい。また、前記液体乃至ポロジェンの含有量が95.0質量%以下である場合、樹脂の三次元的な網目構造が十分に形成されて多孔質構造が十分に得られ、得られる多孔質構造の強度も向上する傾向が見られるため好ましい。
【0141】
なお、液体組成物は、上記の通り、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればよいため、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さないその他の液体(ポロジェンではない液体)を追加的に含有していてもよい。
【0142】
その他の液体の含有量としては、液体組成物全量に対して10.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が更に好ましく、0質量%(含まれないこと)が特に好ましい。
【0143】
液体組成物中における重合性化合物の含有量とポロジェンの含有量の質量比(重合性化合物:ポロジェン)は、1.0:0.4~1.0:19.0が好ましく、1.0:1.0~1.0:9.0がより好ましく、1.0:1.5~1.0:4.0が更に好ましい。
【0144】
(重合開始剤)
液体組成物は、重合開始剤などのその他の成分を含んでもよい。重合開始剤は、光や熱等のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物の重合を開始させることが可能な材料である。重合開始剤としては、例えば、公知のラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、塩基発生剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0145】
光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル発生剤を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、商品名イルガキュアやダロキュアで知られるミヒラーケトンやベンゾフェノンのような光ラジカル重合開始剤、アセトフェノン誘導体などが挙げられる。
【0146】
具体的な化合物としては、例えば、α-ヒドロキシ-アセトフェノン、α-アミノアセトフェノン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、pp'-ジクロロベンゾフェン、pp'-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインn-プロピル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド;チタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン;キサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物;ジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。
【0147】
更に、ビスアジド化合物のような光架橋型ラジカル発生剤を同時に含有させても構わない。また、熱のみで重合させる場合は、通常のラジカル発生剤であるazobisisobutyronitrile(AIBN)等の熱重合開始剤を使用することができる。
【0148】
重合開始剤の含有量としては、十分な硬化速度が得られる点で、重合性化合物の総質量を100.0質量%とした場合に、0.05質量%以上10.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。
【0149】
液体組成物は、液体組成物中に分散物を含まない非分散系組成物であっても、液体組成物中に分散物を含む分散系組成物であってもよいが、非分散系組成物であることが好ましい。
【0150】
(重合誘起相分離)
多孔質樹脂は、重合誘起相分離により形成される。重合誘起相分離は、重合性化合物とポロジェンは相溶するが、重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物(樹脂)とポロジェンは相溶しない(相分離を生じる)状態を表す。相分離により多孔質体を得る方法は他にも存在するが、重合誘起相分離の方法を用いることで、網目構造を有する多孔質体を形成できるために、薬品や熱に対する耐性の高い多孔質体が期待できる。また、他の方法と比較して、プロセス時間が短く、表面修飾が容易といったメリットも挙げられる。
【0151】
次に、重合性化合物を含む液体組成物による、重合誘起相分離を用いた多孔質樹脂の形成プロセスについて説明する。重合性化合物は、光照射等により重合反応を生じて樹脂を形成する。このプロセスの間、成長中の樹脂におけるポロジェンに対する溶解度が減少し、樹脂とポロジェンの間における相分離が生じる。最終的に、樹脂は、ポロジェン等が孔を満たし、樹脂骨格による共連続構造を有する多孔質構造を形成する。これを乾燥すると、ポロジェン等は除去され、三次元網目構造の共連続構造を有する多孔質樹脂が残る。そのため、適切な空隙率を有する多孔質樹脂を形成するため、ポロジェンと重合性化合物との相溶性、及びポロジェンと重合性化合物が重合することにより形成される樹脂との相溶性が検討される。
【0152】
(光透過率)
液体組成物を撹拌しながら測定した波長550nmにおける光透過率は、30%以上である。ポロジェンと重合性化合物との相溶性は、前記光透過率により判断することができる。光透過率が30%以上である場合を、液体がポロジェンを含み、重合性化合物とポロジェンとが相溶の状態、30%未満である場合を、重合性化合物と液体とが非相溶の状態であると判断する。
【0153】
光透過率は、具体的には以下の方法により測定することができる。まず、液体組成物を石英セルに注入し、攪拌子を用いて300rpmで攪拌させながら、以下の条件により、液体組成物の波長550nmにおける光(可視光)の透過率を測定する。
・石英セル:スクリューキャップ付き特殊ミクロセル(商品名:M25-UV-2、ジーエルサイエンス株式会社製)
・透過率測定装置:Ocean Optics社製USB4000
・撹拌速度:300rpm
・測定波長:550nm
・リファレンス:石英セル内が空気の状態で、波長550nmにおける光の透過率を測定して取得する(透過率:100%)
【0154】
(ヘイズ値の上昇率)
液体組成物を重合して作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値の上昇率が、1.0%以上である。ポロジェンと重合性化合物が重合することにより形成される樹脂との相溶性は、前記ヘイズ値の上昇率により判断することができる。
【0155】
ヘイズ値の上昇率が1.0%以上である場合を、液体がポロジェンを含み、樹脂とポロジェンとが非相溶の状態、1.0%未満である場合を、樹脂と液体とが相溶の状態であると判断する。
【0156】
ヘイズ測定用素子におけるヘイズ値は、重合性化合物が重合することにより形成される樹脂とポロジェンとの相溶性が低いほど高くなり、相溶性が高いほど低くなる。また、ヘイズ値が高いほど重合性化合物が重合することにより形成される樹脂が多孔質構造を形成しやすくなることを示す。
【0157】
ヘイズ値の上昇率は、具体的には、前記液体組成物を重合して作製した平均厚み100μmのヘイズ測定用素子の重合前後におけるヘイズ値の上昇率であり、以下の方法により測定することができる。
【0158】
-ヘイズ測定用素子の作製-
まず、無アルカリガラス基板上に、スピンコートによりギャップ剤としての樹脂微粒子を基板上に均一分散させる。続いて、ギャップ剤を塗布した基板を、ギャップ剤を塗布していない無アルカリガラス基板と、ギャップ剤を塗布した面を挟むようにして互いに貼り合わせる。次に、液体組成物を、貼り合わせた基板間に毛細管現象を利用して充填し、「UV照射前ヘイズ測定用素子」を作製する。続いて、UV照射前ヘイズ測定用素子にUV照射して液体組成物を硬化させる。最後に基板の周囲を封止剤で封止することで「ヘイズ測定用素子」を作製する。ギャップ剤のサイズ(平均粒子径100μm)がヘイズ測定用素子の平均厚みに相当する。作製時の諸条件を以下に示す。
・無アルカリガラス基板:日本電気硝子製、40mm、t=0.7mm、OA-10G
・ギャップ剤:積水化学製、樹脂微粒子ミクロパールGS-L100、平均粒子径100μm
・スピンコート条件:分散液滴下量150μL、回転数1000rpm、回転時間30s
・充填した液体組成物量:160μL
・UV照射条件:光源としてUV-LEDを使用、光源波長362Nm、照射強度30mW/cm2、照射時間20s
・封止剤:TB3035B(Three Bond社製)
【0159】
-ヘイズ値(曇り度)の測定-
次に、作製したUV照射前ヘイズ測定用素子とヘイズ測定用素子を用いてヘイズ値(曇り度)を測定する。UV照射前ヘイズ測定用素子における測定値をリファレンス(ヘイズ値0)とし、ヘイズ測定用素子における測定値(ヘイズ値)のUV照射前ヘイズ測定用素子における測定値に対する上昇率を算出する。
【0160】
測定に用いる装置を以下に示す。
・ヘイズ測定装置:Haze meter NDH5000 日本電色工業株式会社製
【0161】
(粘度)
液体組成物の粘度としては、液体組成物を付与する際の作業性の観点から25℃において、1.0mPa・s以上150.0mPa・s以下が好ましく、1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下がより好ましく、1.0mPa・s以上25.0mPa・s以下が特に好ましい。液体組成物の粘度が1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であることにより、液体組成物をインクジェット方式に適用する場合においても、良好な吐出性が得られる。ここで、粘度は、例えば、粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)などを使用して測定することができる。
【0162】
(ハンセン溶解度パラメータ(HSP))
上記のポロジェンと重合性化合物との相溶性、及びポロジェンと重合性化合物が重合することにより形成される樹脂との相溶性は、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を通じて予測することができる。
【0163】
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)とは、2種の物質の相溶性を予測するのに有用なツールであって、チャールズハンセン(Charles M.Hansen)によって発見されたパラメータである。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、実験的及び理論的に誘導された下記3つのパラメータ(δD、δP、及びδH)を組み合わせることにより表される。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)の単位は、MPa0.5又は(J/cm3)0.5が用いられる。本実施形態では(J/cm3)0.5を用いた。
・δD:ロンドン分散力に由来するエネルギー。
・δP:双極子相互作用に由来するエネルギー。
・δH:水素結合力に由来するエネルギー。
【0164】
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、(δD,δP,δH)のように表されるベクトル量であり、3つのパラメータを座標軸とする3次元空間(ハンセン空間)上にプロットして表される。一般的に使用される物質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、データベース等の公知の情報源があるため、例えば、データベースを参照することによって、所望の物質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を入手することができる。データベースにハンセン溶解度パラメータ(HSP)が登録されていない物質は、例えばHansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)等のコンピュータソフトウェアを用いることによって、物質の化学構造や、後述するハンセン溶解球法からハンセン溶解度パラメータ(HSP)を計算することができる。2種以上の物質を含む混合物のハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、各物質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)に、混合物全体に対する各物質の体積比を乗じた値のベクトル和として算出される。なお、本実施形態では、データベース等の公知の情報源に基づいて入手される液体(ポロジェン)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を「液体のハンセン溶解度パラメータ」と表す。
【0165】
また、溶質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)と溶液のハンセン溶解度パラメータ(HSP)とに基づく相対的エネルギー差(RED)は、下記式で表される。
【数1】
【0166】
上記式中、Raは、溶質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)と溶液のハンセン溶解度パラメータ(HSP)との相互作用間距離を示し、Roは、溶質の相互作用半径を示す。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)間の相互作用間距離(Ra)は2種の物質の距離を示す。その値が小さいほど、3次元空間(ハンセン空間)内で、2種の物質がより接近することを意味し、互いに溶解する(相溶する)可能性がより高くなることを示す。
【0167】
2種の物質(溶質A及び溶液B)に対するそれぞれのハンセン溶解度パラメータ(HSP)が下記のようであると仮定すれば、Raは下記のように計算することができる。
・HSPA=(δDA、δPA、δHA)
・HSPB=(δDB、δPB、δHB)
・Ra=[4×(δDA-δDB)2+(δPA-δPB)2+(δHA-δHB)2]1/2
【0168】
Ro(溶質の相互作用半径)は、例えば、次に説明するハンセン溶解球法により決定することができる。
【0169】
(ハンセン溶解球法)
最初に、Roを求めたい物質と、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の数十種の評価用液体(上記の「液体(ポロジェン)」とは意味が区別される液体)とを準備し、各評価用液体に対する対象の物質の相溶性試験を行う。相溶性試験において、相溶性を示した評価用液体のハンセン溶解度パラメータ(HSP)と相溶性を示さなかった評価用液体のハンセン溶解度パラメータ(HSP)とを、ハンセン空間上に各々プロットする。プロットされた各評価用液体のハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づいて、相溶性を示した評価用液体群のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を包含し、相溶性を示さなかった評価用液体群のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を包含しないような仮想の球体(ハンセン球)をハンセン空間上に作成する。ハンセン球の半径が物質の相互作用半径R0、中心が物質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)となる。なお、相互作用半径R0及びハンセン溶解度パラメータ(HSP)を求めたい物質と、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の評価用液体との間における相溶性の評価基準(相溶したか否かの判断基準)は評価者自身が設定する。本実施形態における評価基準は後述する。
【0170】
-重合性化合物のハンセン溶解度パラメータ(HSP)及び相互作用半径-
本実施形態における重合性化合物のハンセン溶解度パラメータ(HSP)、及び重合性化合物の相互作用半径を、ハンセン溶解球法により決定する。なお、上記の通り、ハンセン溶解球法における相溶性の評価基準は評価者自身が設定するものであるため、下記基準により求められる本実施形態における重合性化合物のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を「重合性化合物のハンセン溶解度パラメータC」と表し、重合性化合物の相互作用半径を「重合性化合物の相互作用半径D」と表す。言い換えると、「重合性化合物のハンセン溶解度パラメータC」及び「重合性化合物の相互作用半径D」は、データベース等の公知の情報源に基づいて入手される「液体のハンセン溶解度パラメータ」と異なり、評価者自身が設定した相溶性の評価基準を含むハンセン溶解球法に基づいて入手される。
【0171】
重合性化合物のハンセン溶解度パラメータC及び重合性化合物の相互作用半径Dは、下記[1-1]及び上記した光透過率の測定方法に従い、重合性化合物の評価用液体に対する相溶性の評価(「重合性化合物、及び評価用液体を含む透過率測定用組成物を撹拌しながら測定した透過率測定用組成物の波長550nmにおける光の透過率」に基づく評価)により求められる。
【0172】
[1-1]透過率測定用組成物の調製
まず、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を求めたい重合性化合物と、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の数十種の評価用液体を準備し、重合性化合物、各評価用液体、及び重合開始剤を以下に示した比率で混合し、透過率測定用組成物を調製する。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の数十種の評価用液体は、下記記載の21種類の評価用液体を用いる。
【0173】
~透過率測定用組成物比率~
・ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を求めたい重合性化合物:28.0質量%
・ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の評価用液体:70.0質量%
・重合開始剤(Irgacure819、BASF社製):2.0質量%
【0174】
~評価用液体群(21種類)~
エタノール、2-プロパノール、メシチレン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、炭酸プロピレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、n-テトラデカン、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-エチルヘキサノール、ジイソブチルケトン、ベンジルアルコール、1-ブロモナフタレン
【0175】
-重合性化合物が重合することにより形成される樹脂のハンセン溶解度パラメータ(HSP)及び相互作用半径-
重合性化合物が重合することにより形成される樹脂のハンセン溶解度パラメータ(HSP)、及び重合性化合物が重合することにより形成される樹脂の相互作用半径はハンセン溶解球法により決定する。なお、上記の通り、ハンセン溶解球法における相溶性の評価基準は評価者自身が設定するものであるため、下記基準により求められる本実施形態における重合性化合物が重合することにより形成される樹脂のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を「樹脂のハンセン溶解度パラメータA」と表し、重合性化合物が重合することにより形成される樹脂の相互作用半径を「樹脂の相互作用半径B」と表す。言い換えると、「樹脂のハンセン溶解度パラメータA」及び「樹脂の相互作用半径B」は、データベース等の公知の情報源に基づいて入手される「液体のハンセン溶解度パラメータ」と異なり、評価者自身が設定した相溶性の評価基準を含むハンセン溶解球法に基づいて入手される。
【0176】
樹脂のハンセン溶解度パラメータA及び樹脂の相互作用半径Bは、下記[2-1]、及び上記したヘイズ値の上昇率の測定方法に従い、樹脂の評価用液体に対する相溶性の評価(「重合性化合物、及び評価用液体を含むヘイズ測定用組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値(曇り度)の上昇率」に基づく評価)により求められる。
【0177】
[2-1]ヘイズ測定用組成物の調製
まず、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を求めたい樹脂の前駆体(重合性化合物)と、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の数十種の評価用液体を準備し、重合性化合物、各評価用液体、及び重合開始剤を以下に示した比率で混合し、ヘイズ測定用組成物を調製する。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の数十種の評価用液体は、下記記載の21種類の評価用液体を用いる。
【0178】
~ヘイズ測定用組成物比率~
・ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を求めたい樹脂の前駆体(重合性化合物):28.0質量%
・ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が公知の評価用液体:70.0質量%
・重合開始剤(Irgacure819、BASF社製):2.0質量%
【0179】
~評価用液体群(21種類)~
エタノール、2-プロパノール、メシチレン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、炭酸プロピレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、n-テトラデカン、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-エチルヘキサノール、ジイソブチルケトン、ベンジルアルコール、1-ブロモナフタレン
【0180】
-樹脂と液体(ポロジェン)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づく相対的エネルギー差(RED)-
上記の通り、重合性化合物及び評価用液体を含むヘイズ測定用組成物を用いて作製したヘイズ測定用素子におけるヘイズ値(曇り度)の上昇率に基づいて決定される重合性化合物が重合することにより形成される樹脂のハンセン溶解度パラメータA、当該樹脂の相互作用半径B、並びにポロジェンのハンセン溶解度パラメータ、から下記式1に基づいて算出される相対的エネルギー差(RED)は、1.00以上であることが好ましく、1.10以上がより好ましく、1.20以上が更に好ましく、1.30以上が特に好ましい。
【数2】
【0181】
樹脂とポロジェンのハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づく相対的エネルギー差(RED)が1.00以上である場合、重合性化合物が液体組成物中において重合して形成される樹脂とポロジェンが相分離を起こしやすくなり、多孔質樹脂がより形成されやすくなるため好ましい。
【0182】
-重合性化合物と液体(ポロジェン)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づく相対的エネルギー差(RED)-
上記の通り、重合性化合物及び評価用液体を含む透過率測定用組成物を撹拌しながら測定した透過率測定用組成物の波長550nmにおける光の透過率に基づいて決定される重合性化合物のハンセン溶解度パラメータC、当該重合性化合物と評価用液体の相溶性に基づいて決定される重合性化合物の相互作用半径D、並びに液体のハンセン溶解度パラメータ、から下記式2に基づいて算出される相対的エネルギー差(RED)は、1.05以下であることが好ましく、0.90以下がより好ましく、0.80以下が更に好ましく、0.70以下が特に好ましい。
【数3】
【0183】
重合性化合物とポロジェンのハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づく相対的エネルギー差(RED)が1.05以下である場合、重合性化合物とポロジェンが相溶性を示しやすくなり、0に近づくに従ってより相溶性を示す。そのため、相対的エネルギー差(RED)が1.05以下であることで、重合性化合物をポロジェンに溶解させてから経時的に重合性化合物が析出しないような高い溶解安定性を示す液体組成物が得られる。重合性化合物がポロジェンに対する高い溶解性を有することで、液体組成物の吐出安定性を保つことができるため、例えば、インクジェット方式のような液体組成物を吐出する方式にも好適に本実施形態の液体組成物を適用することができる。また、相対的エネルギー差(RED)が1.05以下であることで、重合反応開始前の液体組成物の状態において重合性化合物とポロジェンの間における分離が抑制され、不規則又は不均一な多孔質樹脂の形成が抑制される。
【0184】
(液体組成物の製造方法)
液体組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、重合開始剤を重合性化合物に溶解させる工程、ポロジェンや他の成分を更に溶解させる工程、及び均一な溶液とするために撹拌する工程などを経て作製することが好ましい。
【0185】
<絶縁保護層>
前記絶縁保護層は積層時の電極端部強度を向上させ、
図1~
図3の様に電極活物質の周囲に設けることで絶縁層を形成する表面を平坦化し、上部に均一な厚みを有する絶縁層を形成することを可能にする。材料としては絶縁性を有するものであれば制限はなく、電極上の必要な任意の場所に設けることが可能である。
【0186】
<実験項>
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0187】
(負極の作製)
負極合材層形成用として、グラファイト97.0質量%、増粘剤(カルボキシメチルセルロース)1.0質量%、高分子(スチレンブタジエンゴム)2.0質量%、溶媒として水100.0質量%を加えて、負極塗料を作製した。この負極塗料を銅箔基体の両面に塗布・乾燥させて、負極合材層の目付量が片面9.0mg/cm2となる負極を得た。次にロールプレス機にて電極の堆積密度が1.6g/cm3になるようプレスし、使用する負極を得た。この時の負極の総膜厚は112.0umであった。最後に、
図10に示すように金型打ち抜き機(打ち抜き面積:60.0mm×30.0mm)を用いて負極を打ち抜いた。
【0188】
(正極の作製)
正極活物質としてニッケル酸リチウム(NCA)92.0質量%、導電材としてアセチレンブラック3.0質量%、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)5.0質量%を用意し、これらをN-メチルピロリドン(NMP)中に分散させて正極塗料を作製した。この正極塗料をアルミニウム箔基体の両面に塗布・後乾燥させて、正極合材層の目付量が片面15.0mg/cm2となる正極を得た。次にロールプレス機にて電極の体積密度が2.8g/cm3となるようにプレスし、使用する正極を得た。この時の正極の総膜厚は132.0umであった。最後に、
図10に示すように金型打ち抜き機(打ち抜き面積:60.0mm×30.0mm)を用いて正極を打ち抜いた。
【0189】
(実施例1)
-絶縁層形成液体組成物の調整-
以下に示す割合で材料を混合し絶縁層成液体組成物を調製した。重合性化合物としてトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製)を29.0質量%、溶媒(ポロジェン)としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業株式会社製)を70.0質量%、重合開始剤としてIrgacure184(BASF社製)を1.0質量%の割合で混合し、絶縁層形成用液体組成物を得た。
【0190】
-絶縁層の形成-
絶縁層形成用の液体組成物をダイコート印刷装置に充填した。
金型で打ち抜かれた正極に対し、液体組成物の吐出量を制御して、絶縁層を活物質上に膜厚20.0umになるよう正極合材層両面に形成した。その後、直ちに、N2雰囲気下において、塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm2、照射時間:20s)し、硬化させた。次に、温風乾燥炉を用い、硬化物を120℃で1分間加熱することで溶媒を除去し、絶縁層付き正極を得た。
【0191】
評価:
作製した電極を使用して、下記手順により積層体を作製した。
実施例1~4:
図4に示すようにステージ14上に正極および負極を3セット設置する。
比較例1:
図1に示すようにステージ14上に正極および負極の間に正極負極よりも大きいフィルムセパレータを挟みながら3セット設置する。設置後に
図5に示すようにステージ14上に設けられたアライメント部7と電極の端部を接触させ、アライメントを行った。
【0192】
得られた積層体に関して上下より500kPaの圧力をかけ、正極と負極間の抵抗値を測定することで積層ずれの有無を下記基準にて評価した。
〇:抵抗値20MΩよりも大きい
×:抵抗値20MΩ以下
表1にその結果を示す。
【0193】
(実施例2)
実施例1において、負極においても正極と同様の方法で絶縁層の形成を行った。その後、実施例1と同様に評価1を実施した。表1にその結果を示す。
【0194】
(実施例3)
実施例1において、絶縁層形成液体組成物の形成を下記に示す手順に変更し、正極負極共に絶縁層を形成した以外は、実施例1と同様にして絶縁層付き正極を得た。その後、実施例1と同様に評価1を実施した。表1にその結果を示す。
【0195】
-実施例3における絶縁層形成液体組成物の形成-
以下に示す割合で材料を混合し絶縁層成液体組成物を調製した。重合性化合物としてEBECRYL8402(ダイセル・オルネクス株式会社製)を29.0質量%、溶媒(ポロジェン)としてジイソブチルケトン(東京化成工業株式会社製)を70.0質量%、重合開始剤としてIrgacure184(BASF社製)を1.0質量%の割合で混合し、絶縁層形成用液体組成物を得た。積層後に積層体を0.2MPaで抑えながら120℃で1時間加熱圧着し、電極同士を接着可能なことを確認した。
【0196】
(実施例4)
実施例1において、絶縁層形成液体組成物の形成を下記に示す手順に変更した以外は、実施例1と同様にして絶縁層付き正極を得た。その後、実施例1と同様に評価1を実施した。表1にその結果を示す。
【0197】
-実施例4における絶縁層形成液体組成物の形成-
無機固体物としてα-アルミナ(一次粒子径(D50)が0.5μmで、比表面積が7.8g/m2)を40.0質量%、ジメチルスルホキシドとエチレングリコールの混合溶液(DMSO-EG)を58.0質量%、分散剤としてマリアリムHKM-150A(日油社製)を2.0質量%の比率で混ぜ合わせたプレ分散液を調製した。このプレ分散液を、ジルコニアビーズ(Φ2mm)と一緒に容器に入れ、冷凍ナノ粉砕機NP-100(シンキー社製)にて1500rpmで3分間の分散処理を行い、分散液を得た。得られた分散液から25μmのメッシュフィルターを用いてジルコニアビーズを取り除き、絶縁層形成液体組成物を作製した。
【0198】
(比較例1)
実施例1において、絶縁層の形成を行わず代わりにフィルムセパレータを絶縁層として用いた。それ以外は実施例1と同様に評価1を実施した。表1にその結果を示す。
【表1】
【0199】
電極一体型の絶縁層を使用することで、電極端部をステージ上に設けられた治具と接触させることによる電極アライメントが可能であることが示された。これは絶縁層の材料に依らず効果が得られることを示している。
【0200】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0201】
本実施形態は、蓄電素子である二次電池、キャパシタ、またはリチウムイオン二次電池等に適用可能であり、中でもリチウムイオン二次電池に好適に適用可能である。
【0202】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 絶縁層形成部は、イオン導電性を有する絶縁層、多孔質構造を有する絶縁層、共連続構造を有する絶縁層、樹脂を主成分とする絶縁層、および架橋構造を有する絶縁層の少なくとも1つを形成する、電池用積層体の製造方法である。
<2> 電池用積層体の製造装置による電池用積層体の製造方法であって、前記電池用積層体の製造装置は、搬送部により、電極が積層されるステージの積層面に搬送し、アライメント部により、前記積層面上の前記電極をアライメントし、前記アライメント部の少なくとも一部は、前記積層面に位置するよう配置され、前記アライメント部は、前記搬送部により前記積層面に搬送された前記電極の端部と接触可能である、電池用積層体の製造方法である。
<3> 前記アライメント部は、前記ステージ上を移動可能であり、前記電極の端部は、前記アライメント部が前記ステージ上を移動することにより、前記アライメント部と接触する、前記<2>に記載の電池用積層体の製造方法である。
<4> 前記電極は、前記ステージ上または前記ステージ上に配置された他の電極上をスライド可能であり、前記電極の端部は、前記電極が、前記ステージ上または前記ステージ上に配置された他の電極上をスライドすることにより、前記アライメント部と接触する、前記<2>または前記<3>に記載の電池用積層体の製造方法である。
<5> 前記電池用積層体の製造装置は、センサ部により、前記電極が前記ステージに積層されたことを検出する、前記<2>から前記<4>のいずれか1つに記載の電池用積層体の製造方法である。
<6> 前記電池用積層体の製造装置は、制御部により、前記搬送部による搬送状態および前記センサ部による検出結果の少なくとも1つに基づき、前記アライメント部の動作を制御する、前記<5>に記載の電池用積層体の製造方法である。
<7> 前記電池用積層体の製造装置は、摩擦低減部により、前記ステージに前記電極が積層された後に、前記電極との間に生じる摩擦力を低減させる、前記<2>から前記<6>のいずれか1つに記載の電池用積層体の製造方法である。
<8> 前記電池用積層体の製造装置は、絶縁層形成部により、絶縁層を形成する、前記<2>から前記<7>のいずれか1つに記載の電池用積層体の製造方法である。
<9> 前記電池用積層体の製造装置は、絶縁層形成部により、絶縁層を形成し、電極裁断部により、前記絶縁層形成部によって前記絶縁層が形成された前記電極を裁断する、前記<2>から前記<8>のいずれか1つに記載の電池用積層体の製造方法である。
<10> 電極が積層されるステージと、前記電極を前記ステージの積層面に搬送する搬送部と、前記積層面上の前記電極をアライメントするアライメント部と、を有し、前記アライメント部の少なくとも一部は、前記積層面に位置するよう配置され、前記アライメント部は、前記搬送部により前記積層面に搬送された電極の端部と接触可能であり、前記アライメント部は、前記ステージ上を移動可能であり、前記電極の端部は、前記アライメント部が前記ステージ上を移動することにより、前記アライメント部と接触する、電池用積層体の製造装置である。
<11> 前記電極は、前記ステージ上または前記ステージ上に積層された他の電極上をスライド可能であり、前記電極の端部は、前記ステージ上または前記ステージ上に積層された他の電極上を前記電極がスライドすることにより、前記アライメント部と接触する、前記<10>に記載の電池用積層体の製造装置である。
<12> 前記ステージを傾斜させる傾斜機構を有し、前記電極は、前記傾斜機構による前記ステージの傾斜によって重力が働くことにより前記ステージ上をスライドする、前記<10>または前記<11>に記載の製造装置である。
<13> 前記電極が前記ステージに配置されたことを検出するセンサ部をさらに有する、前記<10>から前記<12>のいずれか1つに記載の電池用積層体の製造装置である。
<14> 前記搬送部による搬送状態および前記センサ部による検出結果の少なくとも1つに基づき、前記アライメント部の動作を制御する制御部をさらに有する、前記<13>に記載の電池用積層体の製造装置である。
<15> 前記電極が前記ステージに積層された後に、前記電極との間に生じる摩擦力を低減させる摩擦低減部をさらに有する、前記<10>から前記<14>のいずれか1つに記載の電池用積層体の製造装置である。
<16> 絶縁層形成部を有する、前記<10>から前記<15>に記載の電池用積層体の製造装置である。
<17> 絶縁層形成部と、前記絶縁層形成部により絶縁層が形成された前記電極を裁断する電極裁断部と、を有する、前記<10>から前記<16>のいずれか1つに記載の電池用積層体の製造装置である。
【符号の説明】
【0203】
100 絶縁層形成部
100-1 液体組成物付与工程部
100-2 エネルギー付与工程部
100-3 乾燥工程部
200 電極裁断部
300 積層部
300-1 電極保管部
300-2 搬送部
300-6 センサ部
300-7 制御部
300-8 摩擦低減部
300-9 傾斜機構
1a 液体組成物付与装置
1b 液体組成物収容容器
1c 液体組成物供給チューブ
2a 光照射装置
2b 重合不活性気体循環装置
3a 加熱装置
4 第1の電極
4a、4b 端部
5 液体組成物
7、7a1、7b1 アライメント部
71~78 柱状部材
7-1 可動部
7-2 非可動部
8 ガイド部材
10a 第一の膜厚領域
10b 第二の膜厚領域
11 第2の電極
14 ステージ
140 積層面
15 第2の電極
15a 端部
16 位置決め孔
17 開口
1000 電池用積層体の製造装置
2000 電極
θ 傾斜角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0204】
【特許文献1】国際公開第2017/073677号明細書