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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134228
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】基板処理装置、及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
H01L21/304 643C
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044427
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫太郎
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA09
5F157AA14
5F157AA73
5F157AB02
5F157AB03
5F157AB13
5F157AB14
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB34
5F157AB90
5F157BB12
5F157BB32
5F157BB75
5F157BB79
5F157BE33
5F157BE34
5F157BE43
5F157BE44
5F157BE45
5F157BE46
5F157BE48
5F157CE89
(57)【要約】
【課題】基板に付着するパーティクルを除去する、技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板を処理液で処理する。基板処理装置は、前記基板を保持する保持部と、前記保持部で保持されている前記基板の表面に前記処理液を供給する液供給部と、前記基板を一の電極として前記処理液に電圧を印可し、前記処理液の電気分解を生じさせることで、前記基板の表面で気泡を発生させる電圧印加部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液で処理する、基板処理装置であって、
前記基板を保持する保持部と、
前記保持部で保持されている前記基板の表面に前記処理液を供給する液供給部と、
前記基板を一の電極として前記処理液に電圧を印可し、前記処理液の電気分解を生じさせることで、前記基板の表面で気泡を発生させる電圧印加部と、
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記電圧印加部は、前記基板を陰極として前記処理液に電圧を印可し、前記処理液の電気分解を生じさせることで、前記基板の表面で気泡を発生させる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記保持部を回転させる回転部を備える、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記電圧印加部は、前記基板に所望の電位を与える導電部を有する、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板は、前記処理液が供給される第1主面と、前記第1主面とは反対向きの第2主面と、を有し、
前記導電部は、前記基板の前記第2主面に接触する導電板を含む、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板は、前記処理液が供給される第1主面と、前記第1主面とは反対向きの第2主面と、を有し、
前記導電部は、前記基板の周縁を把持する把持部を含む、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記処理液は、電解質を含む水溶液である、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記電解質は、フッ酸(HF)、塩酸(HCl)、水酸化アンモニウム(NHOH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(C13NO)、過酸化水素(H)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、硝酸(HNO)、炭酸(HCO)、酢酸(CHCOOH)、クエン酸(C)、塩化ナトリウム(NaCl)から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板に対して光を照射する光源を備える、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板は、前記処理液が供給される第1主面と、前記第1主面とは反対向きの第2主面と、を有し、
前記光源は、前記基板の前記第1主面に対して垂直に前記光を照射する第1光源を含む、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記基板は、前記処理液が供給される第1主面と、前記第1主面とは反対向きの第2主面と、を有し、
前記光源は、前記基板の前記第1主面に対して斜めに前記光を照射する第2光源を含む、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記基板は、前記処理液が供給される第1主面と、前記第1主面とは反対向きの第2主面と、を有し、
前記光源は、前記基板の前記第2主面に対して斜めに前記光を照射する第3光源を含む、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記液供給部は、前記処理液を吐出するノズルと、前記ノズルに前記処理液を供給する供給ラインと、を有し、
前記電圧印加部は、前記ノズル又は前記供給ラインに、前記基板とは異なる電位である電極を有する、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項14】
基板を処理液で処理することを有する、基板処理方法であって、
前記基板に前記処理液を供給することと、
前記基板を一の電極として前記処理液に電圧を印可し、前記処理液の電気分解を生じさせることで、前記基板の表面で気泡を発生させることと、
を有する、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の基板処理装置は、基板上の貴金属膜を処理液でエッチングする。基板処理装置は、処理液に電圧を印可する陽極と陰極を備える。陽極に接触する処理液と、陰極に接触する処理液とは、基板上の離隔された位置に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-158300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、基板に付着するパーティクルを除去する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る基板処理装置は、基板を処理液で処理する。基板処理装置は、前記基板を保持する保持部と、前記保持部で保持されている前記基板の表面に前記処理液を供給する液供給部と、前記基板を一の電極として前記処理液に電圧を印可し、前記処理液の電気分解を生じさせることで、前記基板の表面で気泡を発生させる電圧印加部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板に付着するパーティクルを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る基板処理装置を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
図3図3は、処理液の電気分解の一例を示す図である。
図4図4は、導電部の一例を示す図である。
図5図5は、導電部の変形例を示す図である。
図6図6は、光照射の有無と、電解質の含有量と、電流が2mAになる電圧との関係の一例を示す図である。
図7図7は、図2に示す処理を施す前と後の基板表面の一例を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
先ず、図1を参照して、実施形態の基板処理装置1について説明する。図1に示すように、基板処理装置1は、基板Wを処理液Lで処理する。基板処理装置1は、本実施形態では基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式であるが、複数枚の基板Wを一括で処理するバッチ式であってもよい。枚葉式は、基板を水平に保持すると共に基板Wを回転させながら、基板Wに対して処理液を供給する。バッチ式は、一列に並ぶ複数枚の基板のそれぞれを鉛直に保持すると共に処理槽に貯留した処理液に浸漬することで、基板Wに対して処理液を供給する。
【0010】
基板処理装置1は、処理容器10と、処理容器10の内部で基板Wを保持する保持部20と、保持部20で保持されている基板Wの表面に処理液Lを供給する液供給部30と、基板Wを一の電極として処理液Lに電圧を印可し、処理液Lの電気分解を生じさせることで、基板Wの表面で気泡を発生させる電圧印加部40と、を備える。また、基板処理装置1は、保持部20を回転させる回転部50と、回転させている基板Wから振り切られる処理液Lを回収するカップ60と、を備える。基板処理装置1は、制御部90を備える。
【0011】
処理容器10は、保持部20とカップ60を内部に収容する。処理容器10は、処理容器10の側壁に設けられるゲート11と、ゲート11を開閉するゲートバルブ12と、を有する。基板Wは、搬送装置2によってゲート11を介して処理容器10の内部に搬入され、保持部20で保持される。次に、基板Wは、処理容器10の内部において処理液Lで処理される。その後、基板Wは、搬送装置2によってゲート11を介して処理容器10の外部に搬出される。
【0012】
保持部20は、処理容器10の内部に設けられる。保持部20は、基板Wを水平に保持するチャックを含む。チャックは、例えばメカニカルチャックである。メカニカルチャックは、基板Wの周縁を把持する把持部21を含む。把持部21は、基板Wの周方向に等間隔で複数設けられる。チャックは、本実施形態ではメカニカルチャックであるが、真空チャック又は静電チャックであってもよい。保持部20は、チャックと搬送装置2との間で基板Wを中継する図示しない複数本のリフトピンを有してもよい。
【0013】
液供給部30は、保持部20に保持されている基板Wの表面に処理液Lを供給する。処理液Lの種類は複数であってもよく、液供給部30は複数の処理液Lを順番に基板Wの表面に供給してもよい。処理液Lは、例えば、薬液と、薬液の残渣を除去するリンス液とを含む。処理液Lは、リンス液と置換される有機溶剤をさらに含んでもよい。有機溶剤は、例えばIPA(イソプロピルアルコール)である。
【0014】
液供給部30は、例えば処理液Lを吐出するノズル31と、ノズル31を移動させるノズル移動部32と、を有する。処理液L毎にノズル31が設けられてもよいし、一のノズル31が複数の処理液Lを順番に吐出してもよい。ノズル31は、本実施形態では基板Wの上面に処理液Lを供給するが、基板Wの下面、又は基板Wのベベル面に処理液Lを供給してもよい。ノズル移動部32は、ノズル31を水平方向と鉛直方向に移動させる。ノズル移動部32は、ノズル31を基板Wの径方向に移動可能である。
【0015】
液供給部30は、ノズル31に処理液Lを供給する供給ライン33を有する。供給ライン33の途中には、開閉バルブ34と流量計35と流量制御器36とが設けられる。開閉バルブ34と流量計35と流量制御器36の組み合わせは、処理液Lの種類ごとに設けられる。開閉バルブ34は、処理液Lの流路を開閉する。流量計35は、処理液Lの流量を計測する。流量制御器36は、処理液Lの流量を調整する。供給ライン33の途中には、図示しないヒータが設けられてもよい。
【0016】
電圧印加部40は、詳しくは後述するが、図3に示すように、基板Wを一の電極として処理液Lに電圧を印可し、処理液Lの電気分解を生じさせることで、基板Wの表面で気泡Bを発生させる。発生させた気泡Bは、基板Wの表面に付着したパーティクルPを基板Wの表面から引き剥がす。
【0017】
基板Wの表面は、凹凸パターンを有してもよい。近年、半導体の配線パターンの微細化が進んでおり、凹凸パターンの微細化が進んでいる。本実施形態によれば、気泡Bの発生を利用してパーティクルPを除去するので、微細な凹部に入り込んだ微細なパーティクルPをも除去できる。また、本実施形態によれば、基板表面のエッチングによってパーティクルPを除去する場合に比べて、基板表面のダメージを低減できる。さらに、本実施形態によれば、室温での処理が可能である。
【0018】
なお、パーティクルPの除去対象は、本実施形態では基板Wの上面であるが、基板Wの下面又はベベル面であってもよい。
【0019】
回転部50は、図1に示すように、保持部20を回転させることで、保持部20と共に基板Wを回転させる。回転部50は、保持部20が上端に設けられる鉛直な回転軸51と、回転軸51を回転させる回転駆動部52と、を有する。回転駆動部52は、図示しないモータを含む。回転駆動部52は、モータの回転駆動力を回転軸51に伝達させる図示しない伝達機構を有してもよい。
【0020】
カップ60は、保持部20に保持されている基板Wの周縁を囲み、基板Wの周縁から飛散する処理液Lを受ける。カップ60は、本実施形態では固定されており、回転軸51と共に回転させられないが、回転軸51と共に回転させられてもよい。カップ60の底壁には、カップ60の内部に溜まった液体を排出する排液管61と、カップ60の内部に溜まった気体を排出する排気管62とが設けられる。
【0021】
制御部90は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)などの演算部91と、メモリなどの記憶部92と、を備える。記憶部92には、基板処理装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部90は、記憶部92に記憶されたプログラムを演算部91に実行させることにより、基板処理装置1の動作を制御する。
【0022】
次に、図2を参照して、実施形態の基板処理方法について説明する。基板処理方法は、例えばステップS101~S105を有する。ステップS101~S105は、制御部90による制御下で実施される。
【0023】
先ず、搬送装置2が基板Wを処理容器10の内部に搬入する(ステップS101)。搬送装置2は、保持部20に基板Wを載置した後、処理容器10の内部から退出する。保持部20は、基板Wを保持する。回転部50は、保持部20を回転させることで、保持部20と共に基板Wを回転させる。
【0024】
次に、液供給部30が基板Wの表面に対して処理液Lを供給する(ステップS102)。例えば、ノズル31が、回転している基板Wの上面中心に処理液Lを供給する。処理液Lは、遠心力によって基板Wの上面全体に濡れ広がり、液膜を形成する。ノズル31は、複数の処理液Lを順番に供給してもよい。
【0025】
次に、電圧印加部40が基板Wを一の電極として処理液Lに電圧を印可する(ステップS103)。電圧の印可は、処理液Lの電気分解を生じさせることで、基板Wの表面で気泡Bを発生させる。気泡Bの発生によって、パーティクルPを除去できる。電圧の印可時間は、予め設定される。
【0026】
電圧の印可(ステップS103)は、少なくとも1つの処理液Lに対して行われればよく、全ての処理液Lに対して行われなくてよい。例えば、電圧の印可は、薬液に対して行われずに、薬液の残渣を除去するリンス液に対して行われる。あるいは、電圧の印可は、専用の液に対して行われてもよい。専用の液は、薬液よりも後、リンス液よりも前に、基板Wに対して供給される。
【0027】
次に、回転部50が、保持部20と共に基板Wを回転させ、基板Wに付着した処理液Lを振り切ることで、基板Wを乾燥させる(ステップS104)。その後、回転部50が基板Wの回転を停止する。基板Wの乾燥は、本実施形態ではスピン乾燥であるが、スピン乾燥には限定されない。
【0028】
最後に、搬送装置2が基板Wを処理容器10の外部に搬出する(ステップS105)。なお、ステップS101~S105の順番は、特に限定されない。例えば、有機溶剤の液膜が基板Wの上面に形成された状態で、基板Wの搬出(ステップS105)が行われ、その後に超臨界乾燥(ステップS104)が行われてもよい。
【0029】
次に、図3を参照して、処理液Lの電気分解の一例について説明する。図3に示すように、電圧印加部40は、基板Wを一の電極として処理液Lに電圧を印可し、処理液Lの電気分解を生じさせることで、基板Wの表面で気泡を発生させる。処理液Lが水を含む場合、陰極では下記式(1)の反応が進み、陽極では下記式(2)の反応が進む。
(1)2HO+2e→H+2OH
(2)2HO→O+4H+4e
上記式(1)に示すように、陰極では、水素ガスが生じる。また、上記式(2)に示すように、陽極では、酸素ガスが生じる。従って、陰極と陽極のそれぞれにおいて気泡が生じる。気泡の発生量と、電流の強さとには相関関係がある。電流の強さが大きいほど、気泡の発生量が多い。
【0030】
制御部90は、電流計41で電流を計測し、その計測値が設定値になるように処理液Lに印可する電圧を制御してもよい。設定値は、気泡の発生量が閾値以上になるように、つまり、処理後の基板Wの表面におけるパーティクル数が閾値以下になるように、予め実験で決められる。制御部90は、電圧計42で電圧値を計測してもよい。
【0031】
電圧印加部40は、基板Wを陰極として処理液Lに電圧を印可することが好ましい。基板Wを陽極として処理液Lに電圧を印可する場合に比べて、基板Wの表面の酸化を抑制でき、陽極と陰極の間の電気抵抗の増大を抑制できる。よって、設定値の電流を流すのに必要な電圧の増大を抑制できる。
【0032】
また、基板Wを陰極として処理液Lに電圧を印可すれば、上記式(1)から明らかなように基板Wの表面においてOHが生成する。その結果、基板Wの表面近傍において局所的に処理液LのpHが大きくなる。処理液LのpHが大きいほど、基板Wの表面とパーティクルPとの間に作用する斥力が大きく、パーティクルPの再付着を抑制できる。この効果は、処理液Lが酸性水溶液である場合に顕著である。
【0033】
電圧印加部40は、ノズル31又は供給ライン33(図3ではノズル31)に、基板Wとは異なる電位である電極43を有してもよい。基板Wが陰極である場合、電極43は陽極である。陽極をノズル31又は供給ライン33に設けることで、陽極を基板Wから離隔でき、基板Wの表面の酸化をより抑制でき、設定値の電流を流すのに必要な電圧の増大をより抑制できる。
【0034】
電極43の材質は、処理液Lに対して耐性を有する材質であれば特に限定されないが、例えば貴金属、又はカーボンである。貴金属は、例えば、金(Au)、白金(Pt)又はルテニウム(Ru)である。なお、電極43は、母材と、母材の処理液Lに接する面を保護する保護膜とで構成されてもよい。この場合、保護膜の材質が貴金属又はカーボンであればよく、母材の材質は特に限定されない。
【0035】
電圧印加部40によって電圧を印可する処理液Lは、電解質を含む水溶液であることが好ましい。電解質は、無機塩と有機塩のいずれでもよい。電解質は、例えば、フッ酸(HF)、塩酸(HCl)、水酸化アンモニウム(NHOH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(C13NO)、過酸化水素(H)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、硝酸(HNO)、炭酸(HCO)、酢酸(CHCOOH)、クエン酸(C)、塩化ナトリウム(NaCl)から選ばれる少なくとも1つを含む。電解質は、基板Wの表面を酸化しないものが好ましい。なお、処理液Lの溶媒は、水ではなくてもよく、IPA又はシンナー類でもよい。
【0036】
電圧印加部40によって電圧を印可する処理液Lにおける電解質の含有量は、例えば1.0ppmw~3.0×10ppmw(30wt%)であり、好ましくは1.0ppmw~1.0×10ppmw(1wt%)であり、より好ましくは2.0ppmw~1.0×10ppmwであり、特に好ましくは5.0ppmw~5.0×10ppmwである。電解質の含有量が1ppmw以上であれば、十分な電流を流すことができる。電解質の含有量が5.0×10ppmw以下であれば、基板Wの表面のダメージを抑制できる。
【0037】
図4及び図5に示すように、電圧印加部40は、基板Wに所望の電位を与える導電部45を有する。基板Wは、例えば、処理液Lが供給される第1主面Waと、第1主面Waとは反対向きの第2主面Wbと、を有する。第1主面Waが上面であり、第2主面Wbが下面である。
【0038】
図4に示すように、導電部45は、基板Wの第2主面Wbに接触する導電板45Aを含む。導電板45Aは、基板Wの第2主面Wbの少なくとも一部に接触していればよいが、基板Wの電位の均一性を向上すべく、基板Wの第2主面Wbの全体に接触していることが好ましい。後述するように第3光源73が基板Wの第2主面Wbに光を照射する場合、導電板45Aとして透明電極が用いられる。透明電極の材質は、例えばITO(Indium Tin Oxide)である。
【0039】
導電板45Aは、基板Wと共に搬送可能である。導電板45Aは、処理容器10の外部において基板Wと積層され、基板Wと共に処理容器10の内部に搬入される。その後、導電板45Aは、基板Wと共に回転しながら、基板Wに所望の電位を与える。導電板45Aは、基板Wと共に処理容器10の外部に搬出された後、処理容器10の外部において基板Wから分離される。導電板45Aは、再利用可能であり、別の基板Wと積層されてもよい。
【0040】
図5に示すように、導電部45は、基板Wの周縁に接触する把持部45Bを含んでもよい。把持部45Bは、保持部20の把持部21を兼ねる。把持部45Bは、基板Wの周縁に沿って間隔をおいて複数設けられてもよい。なお、導電部45は導電板45Aと把持部45Bの両方を含んでもよい。
【0041】
図4及び図5に示すように、基板Wの表面は、処理液Lに接触する第1領域と、導電部45に接触する第2領域と、を有する。例えば、図4では第1領域は上面であって第2領域は下面であり、図5では第1領域は上面であって第2領域は外周面である。第1領域の少なくとも一部と、第2領域の少なくとも一部とは、電流を通すべく、金属又は半導体で形成されている。
【0042】
第1領域の少なくとも一部と第2領域の少なくとも一部の少なくとも一方が半導体で形成される場合、基板処理装置1は光源70を備えることが好ましい。光源70は、基板Wに対して光を照射することで、半導体の表面において電子を励起する。これにより、設定値の電流を流すのに必要な電圧を低下できる。
【0043】
半導体がシリコン(Si)である場合、光の波長は1127nm以下であればよく、赤外光、可視光、及び紫外光のいずれも使用可能である。光の波長は短いほど好ましい。光源70による基板Wに対する光の照射と、電圧印加部40による処理液Lに対する電圧の印可とは、同時に行われる。
【0044】
光源70は、例えば第1光源71と第2光源72と第3光源73の少なくとも1つを含む。第1光源71は、基板Wの第1主面Waに対して垂直に光を照射する。第1光源71は、基板Wの第1主面Waに平行な面光源であることが好ましい。第1光源71の発光面の面積は、基板Wの第1主面Waの面積以上であってよい。基板Wの第1主面Waの全体に光を照射できる。
【0045】
第1光源71は、面光源ではなくてもよく、線光源であってもよい。線光源は、基板Wの半径以上の長さを有し、基板Wの第1主面Waの中心から、基板Wの第1主面Waの周縁まで光を照射する。この状態で、回転部50が保持部20と共に基板Wを回転させれば、基板Wの第1主面Waの全体に光を照射することが可能である。
【0046】
第2光源72は、基板Wの第1主面Waに対して斜めに光を照射する。ノズル31を避けて光を照射できる。
【0047】
第3光源73は、基板Wの第2主面Wbに対して斜めに光を照射する。回転軸51を避けて光を照射できる。
【0048】
図6に、光照射の有無と、電解質の含有量と、電流が2mAになる電圧との関係の一例を示す。図6では、シリコンウェハを水平に保持した状態で、シリコンウェハの上面に対してアンモニア水の供給と紫外光の照射を行うと共に、シリコンウェハを一の電極としてアンモニア水に電圧を印可した。アンモニア水の電解質はNHOHである。アンモニア水の電気分解では、電流が2mA以上になると、気泡が十分に発生することを目視で確認した。
【0049】
図6から、シリコンウェハに対して光を照射することで、電流が2mAになる電圧を大幅に低減できることが分かる。また、図6から、電解質の含有量を増やすことで、電流が2mAになる電圧を低減できることが分かる。さらに、図6から、シリコンウェハに対して光を照射する効果は、電解質の含有量を増やす効果よりも大きいことが分かる。
【0050】
図7に、図2に示す処理を施す前と後の基板表面のSEM写真を示す。図7では、ラインアンドスペース状の凹凸パターンを形成したシリコンウェハの上面に対してアンモニア水の供給と紫外光の照射を行うと共に、シリコンウェハを一の電極としてアンモニア水に電圧を印可した。印加した電圧は300Vであった。また、印加した電流は6mAであった。図7から、図2に示す処理によってパーティクルPを低減できたことが分かる。
【0051】
以上、本開示に係る基板処理装置、及び基板処理方法の実施形態等について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0052】
1 基板処理装置
20 保持部
30 液供給部
40 電圧印加部
L 処理液
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7