(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134274
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20240926BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240926BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20240926BHJP
C23C 16/509 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/31 C
C23C16/34
C23C16/509
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044492
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 宗仁
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA18
4K030BA40
4K030FA03
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4K030JA16
5F045AA08
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5F045AB33
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5F058BF37
5F058BJ05
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】基板表面の凹部にウェットエッチング耐性と埋め込み性に優れたシリコン窒化膜を形成する、技術を提供する。
【解決手段】成膜方法は、基板表面の凹部にシリコン窒化膜を形成する工程を有する。前記シリコン窒化膜を形成する工程は、シリコン含有ガスの吸着を阻害する吸着阻害ガスをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、前記シリコン含有ガスを前記基板表面に供給する工程と、前記シリコン含有ガスの吸着物を窒化する窒化ガスをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、を有する。前記窒化ガスは、N
2ガスを含む。前記シリコン窒化膜を形成する工程は、前記シリコン含有ガスの吸着を促進する吸着促進ガスを前記基板表面に供給する工程を有し、前記吸着阻害ガスの供給と前記シリコン含有ガスの供給と前記窒化ガスの供給とを含む処理を1回以上行うことと、前記吸着促進ガスの供給を1回以上行うことと、を複数回繰り返し行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面の凹部にシリコン窒化膜を形成する工程を有する、成膜方法であって、
前記シリコン窒化膜を形成する工程は、シリコン含有ガスの吸着を阻害する吸着阻害ガスをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、前記シリコン含有ガスを前記基板表面に供給する工程と、前記シリコン含有ガスの吸着物を窒化する窒化ガスをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、を有し、
前記窒化ガスは、N2ガスを含み、
前記シリコン窒化膜を形成する工程は、前記シリコン含有ガスの吸着を促進する吸着促進ガスを前記基板表面に供給する工程を有し、前記吸着阻害ガスの供給と前記シリコン含有ガスの供給と前記窒化ガスの供給とを含む処理を1回以上行うことと、前記吸着促進ガスの供給を1回以上行うことと、を複数回繰り返し行う、成膜方法。
【請求項2】
前記吸着促進ガスは、NH2基を含有する、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記吸着促進ガスは、NH3ガス、N2H4ガス、N2H2ガス、CH3NHNH2ガス、CH3NH2ガスから選択される少なくとも1つを含む、請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記シリコン窒化膜を形成する工程は、前記シリコン含有ガスの吸着物を改質する改質ガスのプラズマを生成して前記基板表面に供給する工程を有し、
前記改質ガスは、H2ガスを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記改質ガスの供給は、前記シリコン含有ガスの供給の後、前記窒化ガスの供給の前に行われる、請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記改質ガスは、不活性ガスを更に含む、請求項4に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記シリコン窒化膜を形成する工程は、前記吸着促進ガスをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記シリコン窒化膜を形成する工程は、前記吸着促進ガスをプラズマ化することなく前記基板表面に供給する工程と、前記吸着促進ガスをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記シリコン窒化膜を形成する工程は、前記吸着促進ガスをプラズマ化することなく前記基板表面に供給する工程と、前記吸着促進ガスをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、を複数回繰り返し行う、請求項8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記吸着阻害ガスは、ハロゲンガス、非ハロゲンガス、又は前記ハロゲンガスと前記非ハロゲンガスの混合ガスの少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記シリコン窒化膜を形成する工程は、前記ハロゲンガスと前記非ハロゲンガスの混合ガスをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、前記ハロゲンガスと前記非ハロゲンガスの一方のみをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、を有する、請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記シリコン窒化膜を形成する工程は、前記ハロゲンガスと前記非ハロゲンガスの混合ガスをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、前記ハロゲンガスと前記非ハロゲンガスの一方のみをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、を交互に複数回繰り返し行う、請求項11に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記ハロゲンガスはCl2ガスであり、前記非ハロゲンガスはN2ガスである、請求項10に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記シリコン含有ガスは、シリコンとハロゲンを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項15】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器の内部で前記基板を保持する保持部と、
前記処理容器の内部にガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部によって供給するガスをプラズマ化するプラズマ生成部と、
前記ガス供給部と前記プラズマ生成部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、請求項1~3に記載のいずれか1項に記載の成膜方法を実施する制御を行なう、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、基板表面の凹部にシリコン窒化膜を埋め込む技術が開示されている。特許文献1には、NH3ガスを基板表面に供給することでNH2基からなる吸着サイトを凹部の全体に形成する工程と、Cl2ガスを基板表面に供給することで凹部の上部に非吸着サイトを形成すると共に凹部の下部に吸着サイトを残す工程と、シリコン含有ガスを基板表面に供給する工程と、をこの順番で実施することが記載されている。特許文献2には、吸着阻害ガスとして、ハロゲンガスだけではなく非ハロゲンガスを使用することが記載されている。
【0003】
特許文献3には、基板表面にシリコン窒化膜を形成する技術が開示されている。特許文献3には、具体例として、ジクロロシラン(DCS:SiH2Cl2)ガスを基板表面に供給する工程と、H2ガスとN2ガスからなる改質ガスをプラズマ化して基板表面に供給する工程と、NH3ガスからなる窒化ガスをプラズマ化することなく基板表面に供給する工程と、をこの順番で繰り返し実施することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-10950号公報
【特許文献2】特開2022-111765号公報
【特許文献3】特開2020-113743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一態様は、基板表面の凹部にウェットエッチング耐性と埋め込み性に優れたシリコン窒化膜を形成する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の成膜方法は、基板表面の凹部にシリコン窒化膜を形成する工程を有する。前記シリコン窒化膜を形成する工程は、シリコン含有ガスの吸着を阻害する吸着阻害ガスをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、前記シリコン含有ガスを前記基板表面に供給する工程と、前記シリコン含有ガスの吸着物を窒化する窒化ガスをプラズマ化して前記基板表面に供給する工程と、を有する。前記窒化ガスは、N2ガスを含む。前記シリコン窒化膜を形成する工程は、前記シリコン含有ガスの吸着を促進する吸着促進ガスを前記基板表面に供給する工程を有し、前記吸着阻害ガスの供給と前記シリコン含有ガスの供給と前記窒化ガスの供給とを含む処理を1回以上行うことと、前記吸着促進ガスの供給を1回以上行うことと、を複数回繰り返し行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、基板表面の凹部にウェットエッチング耐性と埋め込み性に優れたシリコン窒化膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る成膜方法を示す断面図である。
【
図2】
図2は、成膜工程の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、例1~例4の成膜条件を示す図である。
【
図4】
図4は、例5~例9の成膜条件を示す図である。
【
図5】
図5は、例8の成膜条件で得られた基板のSEM写真である。
【
図6】
図6は、例1と例2の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のWERと深さの関係を示す図である。
【
図7】
図7は、例1~例4の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のGPCと深さの関係を示す図である。
【
図8】
図8は、例5~例7の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のGPCと深さの関係を示す図である。
【
図9】
図9は、例6、例8及び例9の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のGPCと深さの関係を示す図である。
【
図10】
図10は、例1、例2及び例8の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のGPCと深さの関係を示す図である。
【
図11】
図11は、例1、例2及び例8の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のGPC
X-250と深さの関係を示す図である。
【
図12】
図12は、例1、例2及び例8の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のWER
0とGPC
0-250の関係を示す図である。
【
図13】
図13は、一実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0010】
図1を参照して、一実施形態に係る成膜方法について説明する。成膜方法は、
図1に示すように、基板表面Waの凹部Wbにシリコン窒化膜Wcを形成する工程を有する。この工程を以下、成膜工程とも称する。基板Wは、本実施形態ではシリコンウェハであるが、化合物半導体ウェハであってもよい。基板Wは、基板表面Waに凹部Wbを有する。凹部Wbは、本実施形態ではトレンチであるが、ビアホールであってもよい。
【0011】
成膜工程は、ボイド及びシームの発生を抑制すべく、V字の断面形状を維持しつつ凹部Wbの内部にシリコン窒化膜Wcを充填する。成膜工程は、詳しくは後述するが、V字の断面形状を維持すべく、吸着阻害ガスを基板表面Waに供給する工程を有する。吸着阻害ガスは、シリコン含有ガスの吸着を阻害する。
【0012】
吸着阻害ガスは、基板表面Waに吸着する。吸着阻害ガスの吸着物Wdが、シリコン含有ガスの吸着を阻害する非吸着サイトを形成する。非吸着サイトは、基板表面Waからの深さが深いほど、密度が薄くなる。その結果、基板表面Waからの深さが深いほど、シリコン含有ガスの吸着が進みやすい。よって、V字の断面形状を維持しつつ凹部Wbの内部にシリコン窒化膜Wcを充填できる。非吸着サイトの密度分布は、吸着阻害ガスの供給時間などで制御する。
【0013】
図2を参照して、成膜工程の一例について説明する。成膜工程は、
図2に示すように、例えばステップS101~S108を有する。
図2において、kとmは1以上の整数であり、nは2以上の整数である。ステップS101~S108の順番は、
図2に示す順番には限定されない。なお、ステップS101~S108の全てを実施しなくてもよい。例えばステップS103は無くてもよい。また、図示しないステップが有ってもよい。図示しないステップとしては、例えばパージガスの供給とガスの流量調整が挙げられる。パージガスは、処理容器の内部に残留するガスと置換される。
【0014】
本開示の技術は、詳しくは後述するが、窒化ガスの供給(ステップS104)においてN2ガスを用いる。これにより、窒化ガスとしてNH3ガスを用いる場合に比べて、シリコン窒化膜Wcの膜質を改善でき、ウェットエッチング耐性を向上できる。但し、詳しくは後述するが、窒化ガスとしてN2ガスを用いると、埋め込み性が低下する。そこで、吸着阻害ガスの供給(ステップS101)を再度実施する前に、吸着促進ガスの供給(ステップS106)を実施する。これにより、V字の断面形状を維持でき、埋め込み性を向上できる。
【0015】
ステップS101は、吸着阻害ガスをプラズマ化して基板表面Waに供給することを有する。吸着阻害ガスは、基板表面Waに吸着する。吸着阻害ガスの吸着物Wdが、シリコン含有ガスの吸着を阻害する非吸着サイトを形成する。非吸着サイトは、基板表面Waからの深さが深いほど、密度が薄くなる。非吸着サイトの密度分布は、吸着阻害ガスの供給時間などで制御する。
【0016】
吸着阻害ガスは、例えば、ハロゲンガス、非ハロゲンガス、又はハロゲンガスと非ハロゲンガスの混合ガスの少なくとも1つを含む。ハロゲンガスは、例えばF2ガス、Cl2ガス又はHFガスであり、好ましくはCl2ガスである。非ハロゲンガスは、例えばN2ガスである。塩素(Cl)又は窒素(N)は、シリコン含有ガスの吸着サイトに吸着しやすく、シリコン含有ガスの吸着を阻害しやすい。
【0017】
なお、ステップS101の実施回数に応じて、ステップS101の処理条件を変更してもよく、例えば吸着阻害ガスの供給時間を変更してもよい。成膜工程の前期では、凹部Wbのアスペクト比(深さ/開口幅)が大きく、凹部Wbの深さ方向に非吸着サイトの密度差を大きくつける必要がある。そこで、成膜工程の前期では、吸着阻害ガスとして、吸着阻害効果の高いCl2ガスを第1設定時間の間供給する。これにより、V字の断面形状を維持しやすい。
【0018】
一方、成膜工程の後期では、凹部Wbのアスペクト比(深さ/開口幅)が小さくなるため、凹部Wbの深さ方向に非吸着サイトの密度差が小さくなってもV字の断面形状を維持しやすい。そこで、成膜工程の後期では、吸着阻害ガスを第2設定時間の間供給する。第2設定時間は、第1設定時間と同じか、第1設定時間よりも短い。これにより、V字の断面形状を維持しつつ、スループットを向上させることができる。
【0019】
図示しないが、ステップS101は、ハロゲンガスと非ハロゲンガスの混合ガスをプラズマ化して基板表面Waに供給する第1の工程と、ハロゲンガスと非ハロゲンガスの一方のみをプラズマ化して基板表面Waに供給する第2の工程と、を有してもよい。この場合、ステップS101は、第1の工程と第2の工程とを交互に複数回繰り返し行ってもよい。
【0020】
成膜工程の前期では、混合ガスにおけるCl2ガスの分圧をN2ガスの分圧を高くすることにより、Cl2ガスの吸着阻害効果がN2ガスの吸着阻害効果よりも相対的に高い状態としてもよい。一方、成膜工程の後期では、混合ガスにおけるN2ガスの分圧をCl2ガスの分圧を高くすることにより、N2ガスの吸着阻害効果がCl2ガスの吸着阻害効果よりも相対的に高い状態としてもよい。分圧の代わりに、又は分圧に加えて、供給時間を調整してもよい。
【0021】
ステップS101の条件は、例えば下記の通りである。
時間:0.05秒~6秒、
RF電力:10W~500W、
圧力:0.1Torr(13.3Pa)~50Torr(6.7kPa)、
温度:350℃~600℃。
【0022】
ステップS102は、シリコン含有ガスを基板表面Waに供給することを有する。基板表面Waからの深さが深いほど、吸着阻害ガスの吸着物Wdの密度が薄くなるので、シリコン含有ガスの吸着物であるシリコン含有層の密度が厚くなる。従って、V字の断面形状を維持しつつ凹部Wbの内部にシリコン窒化膜Wcを充填でき、ボイド及びシームの発生を抑制できる。
【0023】
シリコン含有ガスは、シリコン(Si)を含有していればよいが、ハロゲンを含有していることが好ましい。ハロゲンは、例えば塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)である。シリコン含有ガスは、例えばジクロロシラン(DCS:SiH2Cl2)ガスである。なお、シリコン含有ガスは、モノクロロシラン(MCS:SiH3Cl)ガス、トリクロロシラン(TCS:SiHCl3)ガス、シリコンテトラクロライド(STC:SiCl4)ガス、又はヘキサクロロジシラン(HCDS:Si2Cl6)ガスなどでもよい。
【0024】
ステップS102の条件は、例えば下記の通りである。
時間:1秒~10秒、
圧力:0.1Torr(13.3Pa)~50Torr(6.7kPa)、
温度:350℃~600℃。
【0025】
ステップS103は、改質ガスをプラズマ化して基板表面Waに供給することを有する。改質ガスは、シリコン含有層を改質する。シリコン含有層はシリコン(Si)に加えてハロゲンを含有しており、改質ガスはシリコン含有層に含まれるハロゲンを除去する。これにより、Siの未結合手(Dangling Bond)を形成できる。その結果、Si含有層を活性化でき、Si含有層の窒化を促進できる。改質ガスは、H2ガスを含む。改質ガスは、H2ガスに加えて、不活性ガスを含んでもよい。不活性ガスは、Arガスなどの希ガス、又はN2ガスである。改質ガスの供給(ステップS103)は、シリコン含有ガスの供給(ステップS102)の後であって窒化ガスの供給(ステップS104)の前に行われることが好ましい。
【0026】
ステップS103の条件は、例えば下記の通りである。
時間:1秒~10秒、
RF電力:100W~3kW、
圧力:0.1Torr(13.3Pa)~50Torr(6.7kPa)、
温度:350℃~600℃。
【0027】
ステップS104は、窒化ガスをプラズマ化して基板表面Waに供給することを有する。窒化ガスは、シリコン含有層を窒化する。窒化ガスは、N2ガスを含む。窒化ガスは、N2ガスに加えて、不活性ガスを含んでもよい。不活性ガスは、Arガスなどの希ガスである。詳しくは後述するが、窒化ガスとして、NH3ガスではなく、N2ガスを用いることで、シリコン窒化膜Wcの膜質を改善でき、ウェットエッチング耐性を向上できる。
【0028】
ステップS104の条件は、例えば下記の通りである。
時間:1秒~10秒、
RF電力:100W~3kW、
圧力:0.1Torr(13.3Pa)~50Torr(6.7kPa)、
温度:350℃~600℃。
【0029】
ステップS105は、ステップS101~S104を設定回数(k回)実施したか否かをチェックする。kは、本実施形態では1であるが、2以上の整数であってもよい。実施回数がk回に達していない場合、ステップS101~S104が再度実施される。一方、実施回数がk回に達している場合、ステップS106が実施される。
【0030】
ステップS106は、吸着促進ガスを基板表面Waに供給することを有する。吸着促進ガスは、シリコン含有ガスの吸着を促進する。吸着促進ガスは、プラズマ化してもよいし、プラズマ化しなくてもよい。吸着阻害ガスの供給(ステップS101)を再度実施する前に、吸着促進ガスの供給(ステップS106)を実施することで、V字の断面形状を維持でき、埋め込み性を向上できる。
【0031】
吸着促進ガスは、NH2基を含有することが好ましい。NH2基は、シリコン含有ガスの吸着サイトとして機能する。ステップS104では、NH3ガスの代わりにN2ガスを用いることでNH2基が減る。ステップS106では、NH2基を基板表面Waの全体に吸着でき、凹部Wbの深さ全体に亘って吸着できる。よって、その後にステップS101を実施することで、凹部Wbの深さ方向に吸着サイトの密度差をつけやすく、埋め込み性を改善できる。
【0032】
吸着促進ガスは、例えば、NH3ガス、N2H4ガス、N2H2ガス、CH3NHNH2ガス、CH3NH2ガスから選択される少なくとも1つを含む。吸着促進ガスは、NH2基を含有するガスに加えて、Arガスなどの希ガスを含んでもよい。また、吸着促進ガスは、NH2基を含有するガスに加えて、炭化水素基を含有するガスを含んでもよい。
【0033】
ステップS106の条件は、例えば下記の通りである。
時間:1秒~10秒、
RF電力:0W~500W
圧力:0.1Torr(13.3Pa)~50Torr(6.7kPa)、
温度:350℃~600℃。
【0034】
ステップS107は、ステップS106を設定回数(m回)実施したか否かをチェックする。mは、本実施形態では1であるが、2以上の整数であってもよい。実施回数がm回に達していない場合、ステップS106が再度実施される。一方、実施回数がm回に達している場合、ステップS108が実施される。
【0035】
ステップS108は、ステップS101~S104を設定回数(k回)実施することと、ステップS106を設定回数(m回)実施することと、を設定回数(n回)実施したか否かをチェックする。nは、2以上の整数であればよい。実施回数がn回に達していない場合、ステップS101以降の処理が再度実施される。一方、実施回数がn回に達している場合、今回の処理が終了される。
【0036】
図3~
図12を参照して、実験データについて説明する。
図3~
図4に、例1~例9の成膜条件を示す。例1~例9では、
図3又は
図4に示す工程を左側から右側に順番に実施することをn回繰り返し行った。例1~例9において、kは1であり、mは1であり、nは300であった。
図3及び
図4において、S101直前の工程、S103直前の工程、S104直前の工程、及びS106直前の工程は、ガスの流量を調整する工程である。
図3及び
図4において、「プラズマ」が「ON」であることはガスをプラズマ化したことを意味し、「プラズマ」が「OFF」であることはガスをプラズマ化しなかったことを意味する。例1~例7が参考例であり、例8~例9が実施例である。代表的に例8の成膜条件で得られた基板WのSEM写真を
図5に示す。
図5に示すように、例8によれば、凹部Wbの内部にシリコン窒化膜Wcを充填する際に、ボイド及びシームの発生を抑制できた。
【0037】
先ず、
図6を参照して、例1と例2の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のWERと深さの関係について説明する。WERは、希フッ酸(HF濃度:0.5体積%)によるシリコン窒化膜のエッチング速度である。WERが小さいほど、膜質が良い。例1では窒化ガスとしてN
2ガスを用いたのに対し、例2では窒化ガスとしてNH
3ガスを用いた。
図6から、窒化ガスとしてNH
3ガスの代わりにN
2ガスを用いることで、WERを小さくでき、膜質を向上できることがわかる。
【0038】
次に、
図7を参照して、例1~例4の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のGPCと深さの関係について説明する。GPCは、1サイクル当たりのシリコン窒化膜の成膜速度である。深さが深いほどGPCが大きければ、断面形状がV字になる。例3では、ステップS101を省略した点を除き、例1と略同じ条件で成膜工程を実施した。例4では、ステップS101を省略した点を除き、例2と略同じ条件で成膜工程を実施した。
【0039】
図7において、例2と例4を比較することで、窒化ガスとしてNH
3ガスを用いる場合、吸着阻害ガスの供給(ステップS101)を実施すれば、吸着促進ガスの供給(ステップS106)が無くても、V字の断面形状を得られることが分かる。一方、例1と例3の結果から、窒化ガスとしてN
2ガスを用いる場合、吸着阻害ガスの供給(ステップS101)を実施しても、V字の断面形状を得られないことが分かる。
【0040】
図6と
図7の結果から、窒化ガスとしてN
2ガスを用いる場合、窒化ガスとしてNH
3ガスを用いる場合に比べて、シリコン窒化膜Wcの膜質を改善でき、ウェットエッチング耐性を向上できる反面、埋め込み性が低下することが分かる。そこで、本開示の技術は、窒化ガスとしてN
2ガスを用いることと、吸着促進ガスの供給を実施することとを組み合わせることで、ウェットエッチング耐性と埋め込み性を両立する。
【0041】
次に
図8を参照して、例5~例7の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のGPCと深さの関係について説明する。例5では吸着促進ガスの供給(ステップS106)を実施しなかったのに対し、例6~例7では吸着促進ガスの供給(ステップS106)を実施した。
図8から、吸着促進ガスの供給(ステップS106)を実施することで、GPCが大きくなることが分かる。なお、例5~例7では、いずれも、窒化ガスはN
2ガスであった。また、例5~例7では、いずれも、吸着阻害ガスの供給(ステップS101)は実施しなかった。
【0042】
図8において、例6と例7を比較することで、吸着促進ガスをプラズマ化すれば、GPCを大きくでき、スループット(単位時間当たりの処理枚数)を向上できることが分かる。一方、吸着促進ガスをプラズマ化しなければ、深さ方向に関係なく、GPCを一定の割合で大きくできることが分かる。なお、GPCを一定の割合で大きくできれば、吸着阻害ガスの供給(ステップS101)によってV字の断面形状を得るうえで有利である。
【0043】
次に
図9を参照して、例6、例8及び例9の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のGPCと深さの関係について説明する。例6、例8及び例9は、
図4に示すように吸着阻害ガスの供給時間(S101の時間)を除き同じ条件で成膜工程を実施した。
図9から、吸着阻害ガスの供給時間を長くすることで、GPCを小さくできることが分かる。
【0044】
次に
図10と
図11を参照して、例1、例2及び例8の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のGPCと深さの関係について説明する。なお、
図11において、GPC
X-250とは、深さ250nmにおけるGPCを1としたときの、深さXnmにおけるGPCの比率のことである。
図10及び
図11から、特に
図11から、窒化ガスとしてN
2ガスを用いる場合に、吸着阻害ガスの供給(ステップS101)と、吸着促進ガスの供給(ステップS106)を実施することで、V字の断面形状を得られることが分かる。
【0045】
次に
図12を参照して、例1、例2及び例8の成膜条件で得られたシリコン窒化膜のWER0とGPC
0-250の関係について説明する。
図12において、WER
0は、深さ0nmにおけるWERである。また、
図12において、GPC
0-250とは、深さ250nmにおけるGPCを1としたときの、深さ0nmにおけるGPCの比率のことである。
図12から、例8によれば、例1と例2の中間的な物性のシリコン窒化膜を得られることが分かる。
【0046】
図13を参照して、一実施形態に係る成膜装置について説明する。成膜装置は、処理容器1、保持部2、シャワーヘッド3、排気部4、ガス供給部5、プラズマ生成部8、制御部9等を有する。
【0047】
処理容器1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有している。処理容器1は、基板Wを収容する。処理容器1の側壁には、基板Wを搬入又は搬出するための搬入出口11が形成されている。搬入出口11は、ゲートバルブ12により開閉される。処理容器1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト13が設けられている。排気ダクト13には、内周面に沿ってスリット13aが形成されている。排気ダクト13の外壁には、排気口13bが形成されている。排気ダクト13の上面には、絶縁体部材16を介して処理容器1の上部開口を塞ぐように天壁14が設けられている。排気ダクト13と絶縁体部材16との間はシールリング15で気密に封止されている。区画部材17は、保持部2とカバー部材22が後述する処理位置へと上昇した際、処理容器1の内部を上下に区画する。
【0048】
保持部2は、処理容器1の内部で基板Wを水平に保持する。保持部2は、基板Wに対応した大きさの円板状に形成されており、支持部材23に支持されている。保持部2は、AlN等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル合金等の金属材料で形成されており、内部に基板Wを加熱するためのヒータ21が埋め込まれている。ヒータ21は、ヒータ電源(図示せず)から給電されて発熱する。そして、保持部2の上面の近傍に設けられた熱電対(図示せず)の温度信号によりヒータ21の出力を制御することで、基板Wが所定の温度に制御される。保持部2には、上面の外周領域及び側面を覆うようにアルミナ等のセラミックスにより形成されたカバー部材22が設けられている。
【0049】
保持部2の底面には、保持部2を支持する支持部材23が設けられている。支持部材23は、保持部2の底面の中央から処理容器1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器1の下方に延び、その下端が昇降機構24に接続されている。昇降機構24により保持部2が支持部材23を介して、
図13で示す処理位置と、その下方の二点鎖線で示す基板Wの搬送が可能な搬送位置との間で昇降する。支持部材23の処理容器1の下方には、鍔部25が取り付けられている。処理容器1の底面と鍔部25との間には、ベローズ26が設けられている。ベローズ26は、処理容器1内の雰囲気を外気と区画し、保持部2の昇降動作にともなって伸縮する。
【0050】
処理容器1の底面の近傍には、昇降板27aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)の支持ピン27が設けられている。支持ピン27は、処理容器1の下方に設けられた昇降機構28により昇降板27aを介して昇降する。支持ピン27は、搬送位置にある保持部2に設けられた貫通孔2aに挿通されて保持部2の上面に対して突没可能となっている。支持ピン27を昇降させることにより、搬送機構(図示せず)と保持部2との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0051】
シャワーヘッド3は、処理容器1の内部にガスをシャワー状に供給する。シャワーヘッド3は、金属製であり、保持部2に対向するように設けられており、保持部2とほぼ同じ直径を有している。シャワーヘッド3は、本体部31及びシャワープレート32を有する。本体部31は、処理容器1の天壁14に固定されている。シャワープレート32は、本体部31の下に接続されている。本体部31とシャワープレート32との間には、ガス拡散空間33が形成されている。ガス拡散空間33には、処理容器1の天壁14及び本体部31の中央を貫通するようにガス導入孔36が設けられている。シャワープレート32の周縁部には下方に突出する環状突起部34が形成されている。環状突起部34の内側の平坦部には、ガス吐出孔35が形成されている。保持部2が処理位置に存在した状態では、保持部2とシャワープレート32との間に処理空間38が形成され、カバー部材22の上面と環状突起部34とが近接して環状隙間39が形成される。
【0052】
排気部4は、処理容器1の内部を排気する。排気部4は、排気口13bに接続された排気配管41と、排気配管41に接続された真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気機構42とを有する。処理に際しては、処理容器1内のガスがスリット13aを介して排気ダクト13に至り、排気ダクト13から排気配管41を通って排気機構42により排気される。
【0053】
ガス供給部5は、処理容器1の内部に各種のガスを供給する。ガス供給部5は、例えばシャワーヘッド3を介して処理容器1の内部に各種のガスを供給する。ガス供給部5は、ガス源51及びガスライン52を含む。ガス源51は、例えばマスフローコントローラ、バルブ(いずれも図示せず)を含む。供給するガスは、
図2に示す吸着阻害ガス、シリコン含有ガス、窒化ガス、改質ガス及び吸着促進ガスを含む。供給するガスは、パージガスを含んでもよい。各種のガスは、ガス源51からガスライン52及びガス導入孔36を介してガス拡散空間33に導入される。
【0054】
プラズマ生成部8は、ガス供給部5によって供給するガスをプラズマ化する。成膜装置は例えば容量結合プラズマ装置であって、保持部2が下部電極として機能し、シャワーヘッド3が上部電極として機能する。保持部2は、コンデンサ(図示せず)を介して接地されている。ただし、保持部2は、例えばコンデンサを介さずに接地されていてもよく、コンデンサとコイルを組み合わせた回路を介して接地されていてもよい。シャワーヘッド3は、プラズマ生成部8に接続されている。
【0055】
プラズマ生成部8は、高周波電力(以下、「RF電力」ともいう。)をシャワーヘッド3に供給する。プラズマ生成部8は、RF電源81、整合器82及び給電ライン83を有する。RF電源81は、RF電力を発生する電源である。RF電力は、プラズマの生成に適した周波数を有する。RF電力の周波数は、例えば低周波数帯の450KHzからマイクロ波帯の2.45GHzの範囲内の周波数である。RF電源81は、整合器82及び給電ライン83を介してシャワーヘッド3の本体部31に接続されている。整合器82は、RF電源81の内部インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるための回路を有する。
【0056】
なお、プラズマ生成部8は、上部電極となるシャワーヘッド3にRF電力を供給するものとして説明したが、これに限られるものではない。下部電極となる保持部2にRF電力を供給する構成であってもよい。プラズマ生成部8は、容量結合プラズマに限らず、誘導結合プラズマ又はリモートプラズマなど他のプラズマを生成するものであってもよい。
【0057】
制御部9は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置等を備える。CPUは、ROM又は補助記憶装置に格納されたプログラムに基づいて動作し、成膜装置の動作を制御する。制御部9は、排気部4とガス供給部5とプラズマ生成部8を制御し、
図2に示す成膜方法を実施する制御を行なう。
【0058】
以上、本開示に係る成膜方法及び成膜装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0059】
W 基板
Wa 基板表面
Wb 凹部
Wc シリコン窒化膜