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特開2024-134351測定光学系、信号処理装置、サーフェスエンコーダ、及び測定方法
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  • 特開-測定光学系、信号処理装置、サーフェスエンコーダ、及び測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134351
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】測定光学系、信号処理装置、サーフェスエンコーダ、及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20240926BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G01D5/347 110D
G01B11/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044609
(22)【出願日】2023-03-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・ウェブサイトのアドレス https://doi.org/10.3390/s22083010 掲載日 令和4年4月14日
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】高 偉
(72)【発明者】
【氏名】洪 一帆
(72)【発明者】
【氏名】松隈 啓
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 遼
【テーマコード(参考)】
2F065
2F103
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA03
2F065AA04
2F065DD02
2F065FF48
2F065GG04
2F065JJ05
2F065LL12
2F065LL36
2F065LL37
2F065LL42
2F103BA37
2F103BA43
2F103CA01
2F103CA04
2F103DA01
2F103EA03
2F103EA15
2F103EB03
2F103EB11
2F103EB16
2F103EB32
2F103EC13
2F103EC15
(57)【要約】
【課題】参照用の回折格子を用いることなく、物体と連動して変位する反射型回折格子の面内方向及び面外方向の変位を測定する。
【解決手段】測定光学系(1)は、透過型回折格子(104)と、反射型回折格子(105)と、第1光検出器(107)と、第2光検出器(110)と、を備えている。第1光検出器(107)は、透過型回折格子(104)が光源(101)からのレーザ光(L)を反射することにより生じる参照光(Lr)と透過型回折格子(104)を透過した0次回折光(L0)との干渉により生じる干渉光を検出する。第2光検出器(110)は、透過型回折格子(104)を透過した+1次回折光(L1+)と-1次回折光(L1-)との干渉により生じる干渉光を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折パターンが部分的に形成された透過型回折格子であって、光源からのレーザ光が前記回折パターンにより回折されずに自身を透過するように配置された透過型回折格子と、
前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光を回折させる反射型回折格子であって、0次回折光が前記回折パターンにより回折されずに前記透過型回折格子を透過し、+1次回折光及び-1次回折光が前記回折パターンにより回折されて前記透過型回折格子を透過するように配置された反射型回折格子と、
前記透過型回折格子が前記光源からの前記レーザ光を反射することにより生じる参照光と前記透過型回折格子を透過した前記0次回折光との干渉により生じる干渉光を検出する第1光検出器と、
前記透過型回折格子を透過した前記+1次回折光と前記-1次回折光との干渉により生じる干渉光を検出する第2光検出器と、を備えている、
測定光学系。
【請求項2】
前記光源と前記透過型回折格子との間において前記光源からのレーザ光の光路上に配置された偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタと前記透過型回折格子との間において前記偏光ビームスプリッタを透過した前記レーザ光の光路上に配置された1/4波長板と、
前記1/4波長板を透過し、前記偏光ビームスプリッタに反射された前記参照光と、前記透過型回折格子及び前記1/4波長板を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記0次回折光と、の共通光路上に配置されたミラーと、を更に備え、
前記第1光検出器は、前記ミラーにより反射された前記参照光及び前記0次回折光の共通光路上に配置されている、
請求項1に記載の測定光学系。
【請求項3】
前記光源と前記透過型回折格子との間において前記光源からのレーザ光の光路上に配置された偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタと前記透過型回折格子との間において前記偏光ビームスプリッタを透過した前記レーザ光の光路上に配置された1/4波長板と、
前記透過型回折格子及び前記1/4波長板を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記+1次回折光の光路上に配置された第1ミラーと、
前記透過型回折格子及び前記1/4波長板を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記-1次回折光の光路上に配置された第2ミラーと、
前記第1ミラーにより反射された前記+1次回折光の光路と前記第2ミラーにより反射された前記-1次回折光の光路との交差点に配置された第1ビームスプリッタと、を更に備え、
前記第2光検出器は、前記第1ビームスプリッタを透過した前記+1次回折光と、前記第1ビームスプリッタにより反射された前記-1次回折光と、の共通光路上、又は、前記第1ビームスプリッタにより反射された前記+1次回折光と、前記第1ビームスプリッタを透過した前記-1次回折光と、の共通光路上に配置されている、
請求項1に記載の測定光学系。
【請求項4】
前記反射型回折格子は、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸と直交する第1軸方向に変位可能であり、
前記反射型回折格子には、前記第1軸方向の周期性を有する凹凸構造が形成されており、
前記透過型回折格子には、前記回折パターンとして、前記+1次回折光が入射する領域に配置された第1凹凸構造であって、前記第1軸方向の周期性を有する第1凹凸構造と、前記-1次回折光が入射する領域に配置された第2凹凸構造であって、前記第1軸方向の周期性を有する第2凹凸構造と、が形成されており、
前記第1ミラーは、前記第1凹凸構造により回折されて前記透過型回折格子を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記+1次回折光の光路上に配置されており、
前記第2ミラーは、前記第2凹凸構造により回折されて前記透過型回折格子を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記-1次回折光の光路上に配置されている、
請求項3に記載の測定光学系。
【請求項5】
前記反射型回折格子は、更に、前記第1軸方向に直交する第2軸方向に変位可能であり、
前記反射型回折格子に形成された前記凹凸構造は、更に、前記第2軸方向の周期性を有し、
前記透過型回折格子には、前記回折パターンとして、更に、前記+1次回折光が入射する領域に配置された第3凹凸構造であって、前記第2軸方向の周期性を有する第3凹凸構造と、前記-1次回折光が入射する領域に配置された第4凹凸構造であって、前記第2軸方向の周期性を有する第4凹凸構造と、が形成されており、
当該測定光学系は、更に、
前記第3凹凸構造に回折されて前記透過型回折格子を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記+1次回折光の光路上に配置された第3ミラーと、
前記第4凹凸構造に回折されて前記透過型回折格子を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記-1次回折光の光路上に配置された第4ミラーと、
前記第3ミラーにより反射された前記+1次回折光の光路と前記第4ミラーにより反射された前記-1次回折光の光路との交差点に配置された第2ビームスプリッタと、
前記第2ビームスプリッタを透過した前記+1次回折光、及び、前記第2ビームスプリッタにより反射された前記-1次回折光の共通光路上、又は、前記第2ビームスプリッタにより反射された前記+1次回折光、及び、前記第2ビームスプリッタを透過した前記-1次回折光の共通光路上に配置された第3光検出器と、を備えている、
請求項4に記載の測定光学系。
【請求項6】
請求項1~5の何れ一項に記載の測定光学系と併用される信号処理装置であって、
前記第1光検出器から出力される第1干渉信号Izを取得する第1取得部と、
前記第1干渉信号Izから、その交流成分である第1交流成分Szを抽出する第1抽出部と、
前記第1交流成分Szから、下記式(1)に従って、前記反射型回折格子の変位であって、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸と平行な方向の変位Δzを算出する第1算出部と、
前記第2光検出器から出力される第2干渉信号Ixを取得する第2取得部と、
前記第2干渉信号Ixから、その交流成分である第2交流成分Sxを抽出する第2抽出部と、
前記第2交流成分Sxから、下記式(2)に従って、前記反射型回折格子の変位であって、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸方向と垂直な方向の変位Δxを算出する第2算出部と、を備えている、
信号処理装置。
【数1】

ここで、波長λは、前記レーザ光の波長であり、周期gは、前記透過型回折格子及び前記反射型回折格子の各々の回折パターンの周期である
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載の測定光学系を含むセンサヘッドを備えている、
サーフェスエンコーダ。
【請求項8】
回折パターンが部分的に形成された透過型回折格子であって、光源からのレーザ光が前記回折パターンにより回折されずに自身を透過するように配置された透過型回折格子と、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光を回折させる反射型回折格子であって、0次回折光が前記回折パターンにより回折されずに前記透過型回折格子を透過し、+1次回折光及び-1次回折光が前記回折パターンにより回折されて前記透過型回折格子を透過するように配置された反射型回折格子と、を用い、
前記透過型回折格子が前記光源からの前記レーザ光を反射することにより生じる参照光と前記透過型回折格子を透過した前記0次回折光との干渉により生じる干渉光を参照して、前記反射型回折格子の変位であって、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸と平行な方向の変位を算出する第1算出工程と、
前記透過型回折格子を透過した前記+1次回折光と前記-1次回折光との干渉により生じる第2干渉光を参照して、前記反射型回折格子の変位であって、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸方向と垂直な方向の変位を算出する第2算出工程と、を含んでいる、
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の変位を測定するための測定光学系及び測定方法に関する。また、そのような測定光学系からの信号を処理する信号処理装置に関する。また、そのような光学系を含むサーフェスエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の変位を測定するための光学系として、特許文献1に記載の変位測定装置が知られている。特許文献1に記載の変位測定装置においては、物体と連動して変位する測定用の回折格子において生じた回折光を、物体と連動して変位しない参照用の回折格子において生じた回折光と干渉させることによって、物体の3軸方向の変位を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-304039号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の変位測定装置は、測定用の回折格子の他に、参照用の回折格子を必要とする。このため、(1)部品点数が多く装置の小型化が困難である、(2)光学調整(例えば、測定用の二次元回折格子と参照用の二次元回折格子との位置合わせ)が困難である、(3)それらの結果、製造コスト及び運用コストが高価になる、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、参照用の回折格子を用いることなく、物体と連動して変位する回折格子の面内方向及び面外方向の変位を測定することが可能な技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る測定光学系は、回折パターンが部分的に形成された透過型回折格子であって、光源からのレーザ光が前記回折パターンにより回折されずに自身を透過するように配置された透過型回折格子と、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光を回折させる反射型回折格子であって、0次回折光が前記回折パターンにより回折されずに前記透過型回折格子を透過し、+1次回折光及び-1次回折光が前記回折パターンにより回折されて前記透過型回折格子を透過するように配置された反射型回折格子と、前記透過型回折格子が前記光源からの前記レーザ光を反射することにより生じる参照光と前記透過型回折格子を透過した前記0次回折光との干渉により生じる干渉光を検出する第1光検出器と、前記透過型回折格子を透過した前記+1次回折光と前記-1次回折光との干渉により生じる干渉光を検出する第2光検出器と、を備えている。
【0007】
また、本発明の一態様に係る測定方法は、回折パターンが部分的に形成された透過型回折格子であって、光源からのレーザ光が前記回折パターンにより回折されずに自身を透過するように配置された透過型回折格子と、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光を回折させる反射型回折格子であって、0次回折光が前記回折パターンにより回折されずに前記透過型回折格子を透過し、+1次回折光及び-1次回折光が前記回折パターンにより回折されて前記透過型回折格子を透過するように配置された反射型回折格子と、を用い、前記透過型回折格子が前記光源からの前記レーザ光を反射することにより生じる参照光と前記透過型回折格子を透過した前記0次回折光との干渉により生じる干渉光を参照して、前記反射型回折格子の変位であって、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸と平行な方向の変位を算出する第1算出工程と、前記透過型回折格子を透過した前記+1次回折光と前記-1次回折光との干渉により生じる第2干渉光を参照して、前記反射型回折格子の変位であって、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸方向と垂直な方向の変位を算出する第2算出工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、参照用の回折格子を用いることなく、物体と連動して変位する反射型回折格子の面内方向及び面外方向の変位を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る測定光学系の上面図である。
図2図1に示す測定光学系に含まれる透過型回折格子及び反射型回折格子の正面図である。
図3図1に示す測定光学系と併用される信号処理装置のブロック図である。
図4図1に示す測定光学系及び図3に示す信号処理装置を用いて測定した反射型回折格子の面内方向の変位と、参照用外部センサーを用いて測定した反射型回折格子の面内方向の変位と、の関係を示すグラフである。
図5図1に示す測定光学系及び図3に示す信号処理装置を用いて測定した反射型回折格子の面外方向の変位と、参照用外部センサーを用いて測定した反射型回折格子の面外方向の変位と、の関係を示すグラフである。
図6図1に示す測定光学系を含むサーフェスエンコーダの斜視図である。
図7図1に示す測定光学系の一変形例を示す側面図である。
図8図1に示す測定光学系に含まれる透過型回折格子及び反射型回折格子の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(測定光学系の構成)
本実施形態に係る測定光学系1の構成について、図1図2を参照して説明する。図1は、測定光学系1の上面図である。図2は、図1に示す測定光学系1に含まれる透過型回折格子104及び反射型回折格子105の正面図である。
【0011】
測定光学系1は、物体の2軸方向の変位を測定するための装置である。以下の説明においては、測定対象となる2つの方向のうち、一方の方向をX軸方向とし、他方の方向をZ軸方向とする。
【0012】
測定光学系1は、図1に示すように、光源101と、偏光ビームスプリッタ102と、1/4波長板103と、透過型回折格子104と、反射型回折格子105と、ミラー106と、第1光検出器107と、ミラー108+と、ミラー108-と、ビームスプリッタ109と、第2光検出器110と、を備えている。ミラー108+及びミラー108-の各々は、それぞれ、第1ミラー及び第2ミラーの一例である。測定光学系1は、反射型回折格子105と連動する物体の2軸方向の変位を測定するための装置である。以下の説明においては、測定対象となる2つの方向のうち、一方の方向をX軸方向とし、他方の方向をZ軸方向とする。また、X軸方向及びZ軸方向の両方と直交する方向をY軸方向とする。
【0013】
光源101は、コリメートレーザ光L(以下、単に「レーザ光L」と記載する)を生成するための手段である。図示した構成において、光源101において生成されるレーザ光Lは、Z軸正方向に進行するp偏光である。なお、本実施形態においては、光源101として、レーザダイオードを用いている。
【0014】
光源101において生成されたレーザ光Lの光路上には、偏光ビームスプリッタ102が配置されている。偏光ビームスプリッタ102は、p偏光を透過し、s偏光を反射する機能面102aを有する立方体状の光学素子である。偏光ビームスプリッタ102は、機能面102aの法線がZX面に含まれるように、且つ、機能面102aの法線とレーザ光Lの光軸との成す角が45度になるように配置される。光源101において生成されたレーザ光Lは、p偏光であるため、偏光ビームスプリッタ102(の機能面102a)を透過する。図示した構成において、偏光ビームスプリッタ102を透過したレーザ光Lは、z軸正方向に進行する。
【0015】
偏光ビームスプリッタ102を透過したレーザ光Lの光路上には、1/4波長板103が配置されている。1/4波長板103は、(1)一方の主面103aから入射したp偏光を円偏向に変換して透過し、(2)他方の主面103bから入射した円偏向をs偏光に変換して透過する機能を有する板状の光学素子である。1/4波長板103は、主面103a,103bがレーザ光Lの光軸と直交するように配置される。偏光ビームスプリッタ102を透過したレーザ光Lは、1/4波長板103によりp偏光から円偏向に変換され、1/4波長板103を透過する。図示した構成において、1/4波長板103を透過したレーザ光Lは、Z軸正方向に進行する。
【0016】
1/4波長板103を透過したレーザ光Lの光路上には、透過型回折格子104が配置されている。透過型回折格子104は、(1)中央部に一方の主面104a側から入射した光、及び、中央部に他方の主面104b側から入射した光を回折することなく透過し、(2)周辺部に他方の主面104b側から入射した光を回折して透過する機能を有する板状の光学素子(二次元回折格子)である。この機能を実現するために、透過型回折格子104の周辺部の主面104b側には、図2に示すように、ストライプ状(1軸型)の回折パターン104c±が形成されている。透過型回折格子104は、これらの主面104a,104bがレーザ光Lの光軸と直交するように配置される。1/4波長板103を透過したレーザ光Lは、主面104aの中央部に入射するため、回折パターン104c±により回折されることなく、透過型回折格子104を透過する。図示した構成において、透過型回折格子104を透過したレーザ光Lは、Z軸正方向に進行する。
【0017】
ただし、透過型回折格子104に入射するレーザ光Lの一部は、主面104aにおいて反射される。以下、透過型回折格子104により反射されたレーザ光Lのことを、参照光Lrとも記載する。図した構成において、透過型回折格子104において反射された参照光Lは、Z軸負方向に進行する。
【0018】
透過型回折格子104を透過したレーザ光Lの光路上には、反射型回折格子105が配置されている。反射型回折格子105は、一方の主面105aに入射した光を回折して反射する機能を有する板状の光学素子(二次元回折格子)である。この機能を実現するために、反射型回折格子105の主面105aには、図2に示すように、ストライプ状の回折パターン105bが形成されている。本実施形態では、回折パターン105bの周期は、回折パターン104c±の周期と等しく設定されている。反射型回折格子105は、この主面105aがレーザ光Lの光軸と直交するように配置される。この回折パターン105bがレーザ光Lを回折することによって、0次回折光(反射光)L0と±1次回折光L1±とが生じる。図示した構成において、反射型回折格子105(の回折パターン105b)において生じた0次回折光L0は、Z軸負方向に進行する。また、反射型回折格子105(の回折パターン105b)において生じた+1次回折光L1+は、Z軸負方向とX軸正方向との間の方向に進行し、反射型回折格子105(の回折パターン105b)において生じた-1次回折光L1-は、Z軸負方向とX軸負方向との間の方向に進行する。ここで、±1次回折光L1±の進行方向は、Z軸負方向に対して対称である。
【0019】
反射型回折格子105において生じた0次回折光L0は、上述した透過型回折格子104に主面104bの中央部から入射する。このため、反射型回折格子105において生じた0次回折光L0は、回折パターン104c±により回折されることなく、透過型回折格子104を透過する。図示した構成において、透過型回折格子104を透過した0次回折光L0は、Z軸負方向に進行する。
【0020】
透過型回折格子104により反射された参照光Lr、及び、透過型回折格子104を透過した0次回折光L0は、それぞれ、上述した1/4波長板103に主面103bから入射する。このため、透過型回折格子104により反射された参照光Lr、及び、透過型回折格子104を透過した0次回折光L0は、それぞれ、1/4波長板103により円偏向からs偏光に変換され、1/4波長板103を透過する。図示した構成において、1/4波長板103を透過した参照光Lr及び0次回折光L0は、それぞれ、z軸負方向に進行する。
【0021】
1/4波長板103を透過した参照光Lr及び0次回折光L0は、それぞれ、上述した偏光ビームスプリッタ102に入射する。1/4波長板103を透過した参照光Lr及び0次回折光L0は、それぞれ、s偏光であるため、偏光ビームスプリッタ102(の機能面102a)により反射される。図示した構成において、偏光ビームスプリッタ102において反射された参照光Lr及び0次回折光L0は、それぞれ、X軸正方向に進行する。
【0022】
偏光ビームスプリッタ102において反射された参照光Lr及び0次回折光L0の光路上には、ミラー106が配置されている。ミラー106は、反射面106aの法線がZX面に含まれるように、且つ、反射面106aの法線と参照光Lr及び0次回折光L0の光軸との成す角が45度になるように配置される。図示した構成において、ミラー106(の反射面106a)において反射された参照光Lr及び0次回折光L0は、Z軸正方向に進行する。なお、本実施形態においては、ミラー106として、プリズムを用いている。
【0023】
ミラー106において反射された参照光Lr及び0次回折光L0の光路上には、第1光検出器107が配置されている。第1光検出器107に入射する光は、参照光Lrと0次回折光L0との干渉によって生じる干渉光である。第1光検出器107は、この干渉光の強度を検出するための構成である。なお、本実施形態において、第1光検出器107として、フォトダイオードを用いている。
【0024】
第1光検出器107から出力される干渉信号Izの交流成分Szと、反射型回折格子105のZ軸方向の変位Δz(面外方向の変位)との間には、下記の式(1)の関係が存在する。このため、第1光検出器107から出力される干渉信号Izの交流成分Szから、下記の式(1)に従って、反射型回折格子105のZ軸方向の変位Δzを算出することができる。ここで、波長λは、レーザ光Lの波長である。
【数1】
【0025】
一方、反射型回折格子105において生じた±1次回折光L1±は、それぞれ、上述した透過型回折格子104に主面104bの周辺部から入射する。このため、反射型回折格子105において生じた±1次回折光L1±は、それぞれ、回折パターン104c±により回折され、反射型回折格子105を透過する。この回折によって、±1次回折光L1±の進行方向は、それぞれ、0次回折光L0の進行方向と平行になる。図示した構成において、透過型回折格子104を透過した±1次回折光L1±は、それぞれ、Z軸負方向に進行する。
【0026】
透過型回折格子104を透過した±1次回折光L1±は、それぞれ、上述した1/4波長板103に主面103bから入射する。このため、透過型回折格子104を透過した±1次回折光L1±は、それぞれ、1/4波長板103により円偏向からs偏光に変換され、1/4波長板103を透過する。図示した構成において、1/4波長板103を透過した±1次回折光L1±は、それぞれ、z軸負方向に進行する。
【0027】
1/4波長板103を透過した±1次回折光L1±は、それぞれ、上述した偏光ビームスプリッタ102に入射する。1/4波長板103を透過した±1次回折光L1±は、それぞれ、s偏光であるため、偏光ビームスプリッタ102(の機能面102a)により反射される。図示した構成において、偏光ビームスプリッタ102において反射された±1次回折光L1±は、それぞれ、X軸正方向に進行する。
【0028】
偏光ビームスプリッタ102において反射された±1次回折光L1±の光路上には、それぞれ、ミラー108±が配置されている。ミラー108+は、反射面108+aの法線がZX面に含まれるように、且つ、反射面108+aに対する+1次回折光L1+の入射角が45°以上となるように配置される。一方、ミラー108-は、反射面108-aの法線がZX面に含まれるように、且つ、反射面108-aに対する1次回折光L1-の入射角が反射面108+aに対する+1次回折光L1+の入射角と一致するように配置される。これにより、ミラー108+において反射された1次回折光L0+の光軸とミラー108-において反射された1次回折光L0-の光軸とが1点で交差する。なお、本実施形態においては、ミラー108±として、それぞれ、プリズムを用いている。
【0029】
ミラー108+において反射された1次回折光L0+の光軸とミラー108-において反射された1次回折光L0-の光軸との交差点には、ビームスプリッタ109が配置されている。ビームスプリッタ109は、(1)一方の主面109aに入射した光の一部分を反射すると共に、残りの部分を透過し、(2)他方の主面109bに入射した光の一部を反射すると共に、残りの部分を透過する機能を有する板状の光学素子である。ミラー108+において反射された+1次回折光L1+の一部は、ビームスプリッタ109の主面109aに入射し、ビームスプリッタ109を透過する。一方、ミラー108-において反射された1次回折光L1-の一部は、ビームスプリッタ109の主面109bに入射し、ビームスプリッタ109に反射される。ビームスプリッタ109の配置は、ビームスプリッタ109を透過した+1次回折光L1+の光軸とビームスプリッタ109において反射された1次回折光L1-の光軸とが一致するように決められる。
【0030】
ビームスプリッタ109を透過した+1次回折光L1+、及び、ビームスプリッタ109において反射された1次回折光L1-の光路上には、第2光検出器110が配置されている。第2光検出器110に入射する光は、+1次回折光L1+と1次回折光L1-との干渉によって生じる干渉光である。第2光検出器110は、この干渉光の強度を検出するための構成である。なお、本実施形態において、第2光検出器110として、フォトダイオードを用いている。
【0031】
第2光検出器110から出力される干渉信号Ixの交流成分Sxと、のX軸方向の変位Δx(面内方向の変位)との間には、下記の式(2)の関係が存在する。このため、第2光検出器110から出力される干渉信号Ixの交流成分Sxから、下記の式(2)に従って、反射型回折格子105のX軸方向の変位Δxを算出することができる。ここで、周期gは、回折パターン105bの周期、及び、回折パターン104c±の周期である。
【数2】
【0032】
(測定光学系の特徴と効果)
<特徴1>
本実施形態に係る測定光学系1は、以下の特徴を有している。
【0033】
(a)測定光学系1は、透過型回折格子104と、反射型回折格子105と、第1光検出器107と、第2光検出器110と、を備えている。
【0034】
(b)透過型回折格子104には、回折パターン104c±が部分的に形成されている。そして、透過型回折格子104は、光源101からのレーザ光Lが回折パターン104c±により回折されずに自身(透過型回折格子104)を透過するように配置されている。
【0035】
(c)透過型回折格子104を透過したレーザ光Lは、反射型回折格子105により回折される。そして、反射型回折格子105は、(1)この回折により生じる0次回折光が回折パターン104c±により回折されずに透過型回折格子104を透過し、(2)この回折により生じる+1次回折光及び-1次回折光が、それぞれ、回折パターン104c+及び回折パターン104c-により回折されて透過型回折格子104を透過するように配置されている。
【0036】
(d)第1光検出器107は、透過型回折格子104が光源101からのレーザ光Lを反射することにより生じる参照光Lrと透過型回折格子104を透過した0次回折光L0との干渉により生じる干渉光を検出する。
【0037】
(e)第2光検出器110は、透過型回折格子104を透過した+1次回折光L1+と-1次回折光L1-との干渉により生じる干渉光を検出する。
【0038】
上記の特徴により、本実施形態に係る測定光学系1は、以下の効果を奏する。
【0039】
すなわち、第1光検出器107から出力される干渉信号Izを参照して、反射型回折格子105のZ軸方向の変位Δz(面外方向の変位)を特定することができる。反射型回折格子105が物体と連動する場合には、その物体のZ軸方向の変位Δzを特定することができる。また、第2光検出器110から出力される干渉信号Ixを参照して、反射型回折格子105のX軸方向の変位Δx(面内方向の変位)を特定することができる。反射型回折格子105が物体と連動する場合には、その物体のX軸方向の変位Δxを特定することができる。
【0040】
しかも、本実施形態に係る測定光学系1においては、参照用の回折格子を必要としない。したがって、本実施形態に係る測定光学系1は、特許文献1に記載の測定光学系と比べて、(1)部品点数が少なく小型化が容易、(2)光学調整が容易、(3)それらの結果、製造コスト及び運用コストが低い、というメリットがある。
【0041】
<特徴2>
本実施形態に係る測定光学系1は、上述した特徴1に加えて、以下の特徴を有している。
【0042】
(a)測定光学系1は、更に、偏光ビームスプリッタ102と、1/4波長板103と、ミラー106と、を備えている。
【0043】
(b)偏光ビームスプリッタ102は、光源101と透過型回折格子104との間において光源101からのレーザ光Lの光路上に配置されている。また、1/4波長板103は、偏光ビームスプリッタ102と透過型回折格子104との間おいて偏光ビームスプリッタ102を透過したレーザ光Lの光路上に配置されている。
【0044】
(c)ミラー106は、1/4波長板103を透過し、偏光ビームスプリッタ102に反射された参照光Lrと、透過型回折格子104及び1/4波長板103を透過し、偏光ビームスプリッタ102により反射された0次回折光L0と、の共通光路上に配置されている。
【0045】
(d)第1光検出器107は、ミラー106により反射された参照光Lr及び0次回折光L0の共通光路上に配置されている。
【0046】
上記の特徴により、本実施形態に係る測定光学系1は、以下の効果を奏する。すなわち、参照光Lrと0次回折光L0とを適切に干渉させることができる。このため、反射型回折格子105のZ軸方向の変位Δzを適切に測定することができる。
【0047】
<特徴3>
本実施形態に係る測定光学系1は、上述した特徴1に加えて、以下の特徴を有している。
【0048】
(a)測定光学系1は、更に、偏光ビームスプリッタ102と、1/4波長板103と、ミラー108+(第1ミラー)と、ミラー108-(第2ミラー)と、ビームスプリッタ109(第1ビームスプリッタ)と、を備えている。
【0049】
(b)偏光ビームスプリッタ102は、光源101と透過型回折格子104との間において光源101からのレーザ光Lの光路上に配置されている。また、1/4波長板103は、偏光ビームスプリッタ102と透過型回折格子104との間において偏光ビームスプリッタ102を透過したレーザ光Lの光路上に配置されている。
【0050】
(c)ミラー108+は、透過型回折格子104及び1/4波長板103を透過し、偏光ビームスプリッタ102により反射された+1次回折光L1+の光路上に配置されている。また、ミラー108-は、透過型回折格子104及び1/4波長板103を透過し、偏光ビームスプリッタ102により反射された-1次回折光L1-の光路上に配置されている。
【0051】
(d)ビームスプリッタ109は、ミラー108+により反射された+1次回折光L1+の光路とミラー108-により反射された-1次回折光L1-の光路との交差点に配置されている。
【0052】
(e)第2光検出器110は、ビームスプリッタ109を透過した+1次回折光L1+と、ビームスプリッタ109により反射された-1次回折光L1-と、の共通光路上に配置されている。
【0053】
上記の特徴により、本実施形態に係る測定光学系1は、以下の効果を奏する。すなわち、反射型回折格子105のZ軸方向の位置に依らず、+1次回折光L1+と-1次回折光L1-と適切に干渉させることができる。このため、反射型回折格子105のX軸方向の変位Δxを適切に測定することができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、ビームスプリッタ109を透過した+1次回折光L1+と、ビームスプリッタ109により反射された-1次回折光L1-と、の共通光路上に、第2光検出器110を配置しているが、これに限定されない。例えば、ビームスプリッタ109を透過した-1次回折光L1-と、ビームスプリッタ109により反射された+1次回折光L1+と、の共通光路上に第2光検出器110を配置してもよい。
【0055】
<特徴4>
本実施形態に係る測定光学系1は、上述した特徴3に加えて、以下の特徴を有している。
【0056】
(a)反射型回折格子105は、透過型回折格子104を透過したレーザ光Lの光軸と直交するX軸方向(特許請求の範囲における「第1軸」)に変位可能である。
【0057】
(b)反射型回折格子105には、回折パターン105b、すなわち、X軸方向の周期性を有する凹凸構造が形成されている。
【0058】
(c)透過型回折格子104には、回折パターン104c+、すなわち、+1次回折光L1+が入射する領域に配置された第1凹凸構造であって、X軸方向の周期性を有する第1凹凸構造が形成されている。また、透過型回折格子104には、回折パターン104c-、すなわち、-1次回折光L1-が入射する領域に配置された第2凹凸構造であって、X軸方向の周期性を有する第2凹凸構造が形成されている。
【0059】
(d)ミラー108+は、回折パターン104c+により回折されて透過型回折格子104を透過し、偏光ビームスプリッタ102により反射された+1次回折光L1+の光路上に配置されている。また、ミラー108-は、回折パターン104c-により回折されて透過型回折格子104を透過し、偏光ビームスプリッタ102により反射された-1次回折光L1-の光路上に配置されている。
【0060】
上記の特徴により、本実施形態に係る測定光学系1は、以下の効果を奏する。すなわち、反射型回折格子105のX軸方向の変位Δxを、干渉信号Ixの交流成分Sxから上述した式(1)に従って算出することができる。
【0061】
(信号処理装置の構成)
測定光学系1と併用される信号処理装置2について、図3を参照して説明する。図3は、信号処理装置2の構成を示すブロック図である。
【0062】
信号処理装置2は、第1取得部21と、第1抽出部22と、第1算出部23と、第2取得部24と、第2抽出部25と、第2算出部26と、を備えている。
【0063】
第1取得部21は、第1光検出器107から第1干渉信号Izを取得するための構成である。第1取得部21が取得した第1干渉信号Izは、第1抽出部22に提供される。
【0064】
第1抽出部22は、第1干渉信号Izから、その交流成分である第1交流成分Szを抽出するための構成である。第1抽出部22が抽出した第1交流成分Szは、第1算出部23に提供される。
【0065】
第1算出部23は、上述した式(1)を用いて、第1交流成分Szから、反射型回折格子105のZ軸方向の変位Δzを算出するための構成である。
【0066】
第2取得部24は、第2光検出器110から第2干渉信号Ixを取得するための構成である。第2取得部24が取得した第2干渉信号Ixは、第2抽出部25に提供される。
【0067】
第2抽出部25は、第2干渉信号Ixから、その交流成分である第2交流成分Sxを抽出するための構成である。第2抽出部25が抽出した第2交流成分Sxは、第2算出部26に提供される。
【0068】
第2算出部26は、上述した式(2)を用いて、第2交流成分Sxから、反射型回折格子105のX軸方向の変位Δxを算出するための構成である。
【0069】
信号処理装置2を測定光学系1と併用することによって、反射型回折格子105のZ軸方向の変位Δz、及び、X軸方向の変位Δxを特定することができる。反射型回折格子105が物体と連動する場合には、その物体のZ軸方向の変位Δz、及び、X軸方向の変位Δxを特定することができる。
【0070】
なお、信号処理装置2の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各ブロック(第1取得部21、第1抽出部22、第1算出部23、第2取得部24、第2抽出部25、及び第2算出部26)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0071】
この場合、信号処理装置2は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上述した各ブロックの各機能が実現される。
【0072】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、信号処理装置2が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0073】
また、上記各ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。
【0074】
(実証実験)
発明者らは、上述した測定光学系1及び信号処理装置2を用いて反射型回折格子105の変位Δx,Δzを測定すると共に、精度が保証された参照用外部センサーを用いて反射型回折格子105の変位Δx,Δzを測定し、それぞれの測定結果を比較する実証実験を行った。本実証実験においては、光源101として、波長λが685nmであるコリメートレーザ光を発するレーザダイオードを用いた。また、透過型回折格子104としては、周期gが1000nmであるストライプ状の回折パターン104c±が形成された透過型回折格子を用いた。また、反射型回折格子105としては、周期gが1000nmであるドット状の回折パターン105bが形成された反射型回折格子を用いた。
【0075】
図4は、測定光学系1及び信号処理装置2を用いて測定した反射型回折格子105の変位Δx(面内方向の変位)と、参照用外部センサーを用いて測定した反射型回折格子105の変位Δxと、の関係を示すグラフである。図4から分かるように、変位Δxに関して、測定光学系1及び信号処理装置2を用いた測定の内挿誤差は±1nm以内であることが実証された。
【0076】
図5は、測定光学系1及び信号処理装置2を用いて測定した反射型回折格子105の変位Δz(面外方向の変位)と、参照用外部センサーを用いて測定した反射型回折格子105の変位Δzと、の関係を示すグラフである。図5から分かるように、変位Δzに関して、測定光学系1及び信号処理装置2を用いた測定の内挿誤差は±15nm以内であることが実証された。
【0077】
(測定光学系の応用例)
測定光学系1は、例えば、サーフェスエンコーダに適用することができる。サーフェスエンコーダは、例えば、半導体を製造する際に必要になるナノメートルオーダー又はサブナノメートルオーダーの超精密位置決めに利用される。
【0078】
測定光学系1は、サーフェスエンコーダのセンサヘッド3に搭載される。センサヘッド3の構成を図6に示す。図6は、センサヘッド3の構成を示す斜視図である。
【0079】
センサヘッド3は、測定光学系1の他に、ボード120と、Y手動ステージ121と、XZピエゾステージ122と、XZ手動ステージ123と、を備えている。
【0080】
測定光学系1を構成する光学部品のうち、反射型回折格子105以外の光学部品は、ボード120を介してY手動ステージ121に固定されている。操作者がY手動ステージ121を手動により操作することによって、測定光学系1を構成する光学部品のうち、反射型回折格子105以外の光学部品を、Y軸方向に移動(粗動)することができる。
【0081】
一方、反射型回折格子105は、XZピエゾステージ122を介してXZ手動ステージ123に固定されている。操作者がXZ手動ステージ123を手動により操作することによって、反射型回折格子105をXZ面内方向に移動(粗動)することができる。また、操作者がXZピエゾステージ122を電気制御により操作することによって、反射型回折格子105をXZ面内方向に移動(微動)することができる。
【0082】
変位の測定対象となる物体は、反射型回折格子105と共にXZピエゾステージ122に固定される。これにより、物体の変位を、反射型回折格子105の変位として測定することができる。
【0083】
(測定光学系の変形例)
測定光学系1の一変形例(以下、測定光学系1Aと記載する)について、図7図8を参照して説明する。図7は、測定光学系1Aの側面図である。図8は、図7に示す測定光学系1に含まれる透過型回折格子104及び反射型回折格子105の正面図である。
【0084】
測定光学系1Aは、反射型回折格子105のY軸方向の変位を測定可能にするべく、透過型回折格子104及び反射型回折格子105を変形すると共に、幾つかの光学部品を追加したものである。追加された光学部品は、ミラー111+、ミラー111-、ビームスプリッタ112(第2ビームスプリッタ)、及び第3光検出器113である。
【0085】
図1に示す測定光学系1の反射型回折格子105の主面105aには、図2に示すように、ストライプ状の回折パターン105b、すなわち、X軸方向の周期性を有する凹凸構造が形成されている。これに対して、図8に示す測定光学系1Aの反射型回折格子105の主面105aには、図8に示すように、ドット状の回折パターン105b、すなわち、X軸方向及びY軸方向の周期性を有する凹凸構造が形成されている。これにより、XZ面内方向に進行する±1次回折光L1±に加えて、YZ面内方向に進行する±1次回折光L1±が生じる。
【0086】
また、図1に示す測定光学系1の透過型回折格子104の主面104bにおいては、図2に示すように、XZ面内方向に進行する±1次回折光L1±が入射する領域にストライプ状の回折パターン104c±が形成されている。これに対して、図8に示す測定光学系1Aの透過型回折格子104の主面104bにおいては、これらの回折パターン104c±に加えて、YZ面内方向に進行する±1次回折光L1±が入射する領域にストライプ状の回折パターン104d+,104d-が形成されている。ここで、回折パターン104c±は、X軸方向の周期性を有する凹凸構造であるのに対して、回折パターン104d+,104d-は、X軸方向の周期性を有する凹凸構造である。
【0087】
ミラー108±及びビームスプリッタ109は、上述したとおり、回折パターン104c±を透過した±1次回折光L1±を第2光検出器110に導くための構成である。一方、ミラー111±及びビームスプリッタ112は、回折パターン104d±を透過した±1次回折光L1±を第3光検出器113に導くための構成である。ミラー111±及びビームスプリッタ112の配置及び機能は、ミラー108±及びビームスプリッタ109の配置及び機能と同様であるため、ここではその説明を割愛する。
【0088】
第3光検出器113から出力される干渉信号Iyの交流成分Syと、反射型回折格子105のY軸方向の変位Δyとの間には、上記の式(2)と同様の関係が存在する。このため、第3光検出器113から出力される干渉信号Iyの交流成分Syから、反射型回折格子105のY軸方向の変位Δyを算出することができる。
【0089】
(付記事項)
本明細書には、本発明の以下の態様が記載されている。ただし、本発明は、以下の態様に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態として開示した技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0090】
<態様1>
回折パターンが部分的に形成された透過型回折格子であって、光源からのレーザ光が前記回折パターンにより回折されずに自身を透過するように配置された透過型回折格子と、
前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光を回折させる反射型回折格子であって、0次回折光が前記回折パターンにより回折されずに前記透過型回折格子を透過し、+1次回折光及び-1次回折光が前記回折パターンにより回折されて前記透過型回折格子を透過するように配置された反射型回折格子と、
前記透過型回折格子が前記光源からの前記レーザ光を反射することにより生じる参照光と前記透過型回折格子を透過した前記0次回折光との干渉により生じる干渉光を検出する第1光検出器と、
前記透過型回折格子を透過した前記+1次回折光と前記-1次回折光との干渉により生じる干渉光を検出する第2光検出器と、を備えている、
測定光学系。
【0091】
<態様2>
前記光源と前記透過型回折格子との間において前記光源からのレーザ光の光路上に配置された偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタと前記透過型回折格子との間において前記偏光ビームスプリッタを透過した前記レーザ光の光路上に配置された1/4波長板と、
前記1/4波長板を透過し、前記偏光ビームスプリッタに反射された前記参照光と、前記透過型回折格子及び前記1/4波長板を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記0次回折光と、の共通光路上に配置されたミラーと、を更に備え、
前記第1光検出器は、前記ミラーにより反射された前記参照光及び前記0次回折光の共通光路上に配置されている、
態様1に記載の測定光学系。
【0092】
<態様3>
前記光源と前記透過型回折格子との間において前記光源からのレーザ光の光路上に配置された偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタと前記透過型回折格子との間において前記偏光ビームスプリッタを透過した前記レーザ光の光路上に配置された1/4波長板と、
前記透過型回折格子及び前記1/4波長板を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記+1次回折光の光路上に配置された第1ミラーと、
前記透過型回折格子及び前記1/4波長板を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記-1次回折光の光路上に配置された第2ミラーと、
前記第1ミラーにより反射された前記+1次回折光の光路と前記第2ミラーにより反射された前記-1次回折光の光路との交差点に配置された第1ビームスプリッタと、を更に備え、
前記第2光検出器は、前記第1ビームスプリッタを透過した前記+1次回折光と、前記第1ビームスプリッタにより反射された前記-1次回折光と、の共通光路上、又は、前記第1ビームスプリッタにより反射された前記+1次回折光と、前記第1ビームスプリッタを透過した前記-1次回折光と、の共通光路上に配置されている、
態様1に記載の測定光学系。
【0093】
<態様4>
前記反射型回折格子は、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸と直交する第1軸方向に変位可能であり、
前記反射型回折格子には、前記第1軸方向の周期性を有する凹凸構造が形成されており、
前記透過型回折格子には、前記回折パターンとして、前記+1次回折光が入射する領域に配置された第1凹凸構造であって、前記第1軸方向の周期性を有する第1凹凸構造と、前記-1次回折光が入射する領域に配置された第2凹凸構造であって、前記第1軸方向の周期性を有する第2凹凸構造と、が形成されており、
前記第1ミラーは、前記第1凹凸構造により回折されて前記透過型回折格子を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記+1次回折光の光路上に配置されており、
前記第2ミラーは、前記第2凹凸構造により回折されて前記透過型回折格子を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記-1次回折光の光路上に配置されている、
態様3に記載の測定光学系。
【0094】
<態様5>
前記反射型回折格子は、更に、前記第1軸方向に直交する第2軸方向に変位可能であり、
前記反射型回折格子に形成された前記凹凸構造は、更に、前記第2軸方向の周期性を有し、
前記透過型回折格子には、前記回折パターンとして、更に、前記+1次回折光が入射する領域に配置された第3凹凸構造であって、前記第2軸方向の周期性を有する第3凹凸構造と、前記-1次回折光が入射する領域に配置された第4凹凸構造であって、前記第2軸方向の周期性を有する第4凹凸構造と、が形成されており、
当該測定光学系は、更に、
前記第3凹凸構造に回折されて前記透過型回折格子を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記+1次回折光の光路上に配置された第3ミラーと、
前記第4凹凸構造に回折されて前記透過型回折格子を透過し、前記偏光ビームスプリッタにより反射された前記-1次回折光の光路上に配置された第4ミラーと、
前記第3ミラーにより反射された前記+1次回折光の光路と前記第4ミラーにより反射された前記-1次回折光の光路との交差点に配置された第2ビームスプリッタと、
前記第2ビームスプリッタを透過した前記+1次回折光、及び、前記第2ビームスプリッタにより反射された前記-1次回折光の共通光路上、又は、前記第2ビームスプリッタにより反射された前記+1次回折光、及び、前記第2ビームスプリッタを透過した前記-1次回折光の共通光路上に配置された第3光検出器と、を備えている、
態様4に記載の測定光学系。
【0095】
<態様6>
態様1~5の何れ一項に記載の測定光学系と併用される信号処理装置であって、
前記第1光検出器から出力される第1干渉信号Izを取得する第1取得部と、
前記第1干渉信号Izから、その交流成分である第1交流成分Szを抽出する第1抽出部と、
前記第1交流成分Szから、下記式(1)に従って、前記反射型回折格子の変位であって、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸と平行な方向の変位Δzを算出する第1算出部と、
前記第2光検出器から出力される第2干渉信号Ixを取得する第2取得部と、
前記第2干渉信号Ixから、その交流成分である第2交流成分Sxを抽出する第2抽出部と、
前記第2交流成分Sxから、下記式(2)に従って、前記反射型回折格子の変位であって、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸方向と垂直な方向の変位Δxを算出する第2算出部と、を備えている、
信号処理装置。
【数3】

ここで、波長λは、前記レーザ光の波長であり、周期gは、前記透過型回折格子及び前記反射型回折格子の各々の回折パターンの周期である。
【0096】
<態様7>
態様1~5の何れか一項に記載の測定光学系を含むセンサヘッドを備えている、
サーフェスエンコーダ。
【0097】
<態様8>
回折パターンが部分的に形成された透過型回折格子であって、光源からのレーザ光が前記回折パターンにより回折されずに自身を透過するように配置された透過型回折格子と、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光を回折させる反射型回折格子であって、0次回折光が前記回折パターンにより回折されずに前記透過型回折格子を透過し、+1次回折光及び-1次回折光が前記回折パターンにより回折されて前記透過型回折格子を透過するように配置された反射型回折格子と、を用い、
前記透過型回折格子が前記光源からの前記レーザ光を反射することにより生じる参照光と前記透過型回折格子を透過した前記0次回折光との干渉により生じる干渉光を参照して、前記反射型回折格子の変位であって、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸と平行な方向の変位を算出する第1算出工程と、
前記透過型回折格子を透過した前記+1次回折光と前記-1次回折光との干渉により生じる第2干渉光を参照して、前記反射型回折格子の変位であって、前記透過型回折格子を透過した前記レーザ光の光軸方向と垂直な方向の変位を算出する第2算出工程と、を含んでいる、
測定方法。
【符号の説明】
【0098】
1 測定光学系
101 光源
102 偏光ビームスプリッタ
103 1/4波長板
104 透過型回折格子
105 反射型回折格子
106 ミラー
107 光検出器
108+ ミラー(第1ミラー)
108- ミラー(第2ミラー)
109 ビームスプリッタ
110 光検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8