(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134359
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】移動体制御システム、情報処理装置、移動体およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240926BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G05D1/02 P
G08B25/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044618
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100110607
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 進也
(72)【発明者】
【氏名】諸星 博
【テーマコード(参考)】
5C087
5H301
【Fターム(参考)】
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA21
5C087BB20
5C087DD02
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5C087GG83
5H301AA03
5H301AA06
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5H301KK02
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5H301KK08
5H301KK09
5H301KK18
5H301KK19
5H301QQ04
(57)【要約】
【課題】 移動体制御システムを提供すること。
【解決手段】 移動体制御システム100は、互いにネットワーク102を介して通信する、1以上の移動体152,162と、これらを制御する情報処理装置110とを含む。情報処理装置110は、1以上の移動体152,162による探索の対象となるエリアWの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、エリアWに関する気象情報とを記憶する記憶部324と、記憶部324に記憶されたエリア情報および気象情報に基づいて、探索する指定エリアを決定するエリア決定部316と、エリア決定部316により決定された指定エリアに基づいて、1以上の移動体のうちの少なくとも1つの移動体の移動を制御する制御部320とを含む。移動体152,162は、指定エリアを移動中、事象の発生Fを検知する検知部356と、検知部により事象の発生Fを検知した場合に、通知を行う通知部358とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにネットワークを介して通信する、1以上の移動体と、前記1以上の移動体を制御する情報処理装置とを含む移動体制御システムであって、前記情報処理装置は、
前記1以上の移動体による探索の対象となるエリアの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、前記エリアに関する気象情報とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記エリア情報および前記気象情報に基づいて、探索する指定エリアを決定するエリア決定部と、
前記エリア決定部により決定された指定エリアに基づいて、前記1以上の移動体のうちの少なくとも1つの移動体の移動を制御する制御部と
を含み、前記移動体は、
前記指定エリアを移動中、事象の発生を検知する検知部と、
前記検知部により事象の発生を検知した場合に、通知を行う通知部と
を含む、移動体制御システム。
【請求項2】
前記エリア決定部は、
前記記憶部に記憶されたエリア情報および気象情報に基づいて、探索の候補となる候補エリアを決定し、
前記候補エリアに対するユーザの選択を受け付けた場合に選択された前記候補エリアを前記指定エリアとして決定する、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項3】
前記事象の発生は、火災の発生であり、
前記情報処理装置の前記記憶部は、前記エリア情報としての過去の火災発生履歴の情報と、前記気象情報としての天候および湿度の情報とを記憶し、
前記エリア決定部は、前記過去の火災発生履歴の情報と、前記天候および湿度の情報とに基づいて、前記指定エリアを決定する、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項4】
前記エリア決定部により決定される前記指定エリアにおける移動パターンを決定する移動パターン決定部
をさらに含む、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項5】
前記移動体は、
残電力量を管理する電力管理部
を含み、前記移動体制御システムは、
前記少なくとも1つの移動体の前記残電力量が所定条件を満たす場合に、前記少なくとも1つの移動体の探索を中断して充電基地に戻し、充電を行わせ、前記探索の中断の位置から探索を再開させる制御部
をさらに含む、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項6】
前記事象の発生は、火災の発生であり、
前記移動体は、
温度センサと、
撮像装置、GPS受信機および煙センサからなる群から選択された少なくとも1つのモジュールと
を含み、前記通知部は、前記温度センサが所定以上の温度を検知した場合に、前記GPS受信機が測位した位置情報、前記撮像装置により撮像された画像情報および前記煙センサにより検知された煙情報からなる群から選択された少なくとも1つの情報を、前記情報処理装置に送信し、
前記情報処理装置は、
前記少なくとも1つの移動体から送信される前記少なくとも1つの情報に基づいて、前記火災の発生の位置および規模を特定する火災特定部
を含む、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項7】
前記移動体は、
前記移動体の位置を特定する位置特定部と、
前記情報処理装置から送信される前記指定エリアの情報を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記指定エリアにおいて、前記位置特定部が特定した位置情報に基づいて駆動制御する駆動制御部と
をさらに含む、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項8】
前記1以上の移動体は、少なくとも1つの無人飛行体と少なくとも1つの無人地上移動体とを含み、前記無人地上移動体と前記無人飛行体とは、所定の距離内にある場合に互いに通信する、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項9】
前記1以上の移動体は、少なくとも1つの無人飛行体と、少なくとも1つの無人地上移動体とを含み、前記移動体各々は、
自身の位置を特定する位置特定部
を含み、前記通知部は、前記位置特定部により特定された位置を示す位置情報を前記情報処理装置に送信し、前記情報処理装置の前記制御部は、前記無人飛行体または前記無人地上移動体の位置情報に基づいて、前記無人地上移動体または前記無人飛行体の位置を制御する、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項10】
前記エリア決定部は、所定のアルゴリズムに基づいて、前記少なくとも1つの移動体に対し探索を指定する前記指定エリアを決定する、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項11】
前記事象の発生は、火災の発生であり、
前記移動体制御システムは、さらに、
前記火災の発生の通知に応答して、火災対応計画および火災対応計画の遂行のためのルートを生成する計画生成部
をさらに含む、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの移動体を操作する操作部
を含む、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項13】
前記操作部は、ハプティック・デバイスであることを特徴とする、請求項12に記載の移動体制御システム。
【請求項14】
前記1以上の移動体は、無人飛行体および無人地上移動体のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項15】
互いにネットワークを介して1以上の移動体と通信し、前記1以上の移動体を制御する情報処理装置であって、前記情報処理装置は、
前記1以上の移動体による探索の対象となるエリアの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、前記エリアに関する気象情報とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記エリア情報および前記気象情報に基づいて、探索する指定エリアを決定するエリア決定部と、
前記エリア決定部により決定された指定エリアに基づいて、前記1以上の移動体のうちの少なくとも1つの移動体の移動を制御する制御部と、
前記少なくとも1つの移動体から送付される、前記指定エリアを移動中に検知した事象の発生の情報を受信する受信部と、
前記事象の発生を受信した場合に、管理者に対し事象の発生を報告する報告部と
を含む、情報処理装置。
【請求項16】
ネットワークを介して情報処理装置と通信し、前記情報処理装置の制御の下、動作する移動体であって、
自身の位置を特定する位置特定部と、
探索の対象となるエリアの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、前記エリアに関する気象情報とに基づいて決定された指定エリアに基づく前記情報処理装置からの指示に応答して、前記位置特定部により特定された位置情報に基づいて移動するよう駆動制御する駆動制御部と、
前記指定エリアを移動中、事象の発生を検知する検知部と、
前記検知部により事象の発生を検知した場合に、通知を行う通知部と
を含む、移動体。
【請求項17】
互いにネットワークを介して1以上の移動体と通信し、前記1以上の移動体を制御する情報処理装置を実現するためのプログラムであって、コンピュータに、
前記1以上の移動体による探索の対象となるエリアの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、前記エリアに関する気象情報とを記憶する記憶部、
前記記憶部に記憶された前記エリア情報および前記気象情報に基づいて、探索する指定エリアを決定するエリア決定部、
前記エリア決定部により決定された指定エリアに基づいて、前記1以上の移動体のうちの少なくとも1つの移動体の移動を制御する制御部
前記少なくとも1つの移動体から送付される、前記指定エリアを移動中に検知した事象の発生の情報を受信する受信部、および、
前記事象の発生を受信した場合に、管理者に対し事象の発生を報告する報告部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に関し、より詳細には、移動体制御システム、情報処理装置、移動体およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温暖化などの気象の変化により地球上の各地での山火事が発生している。日本においても、平成27年~令和元年の間の平均として1年間に約1.2千件発生しており、約700ヘクタールが焼損し、約3.6億円の損害額が発生している。山火事は、一旦広がると消火に莫大な労力が発生し、被害も大きくなる傾向がある。また、山林が回復するためには何十年もの年月が必要であり、回復のためのコストも莫大になる傾向がある。そのため、山火事の発生を早期に発見し、延焼を防止する必要性が高い。
【0003】
近年のドローンなどの無人飛行体技術の発達より、上述した山火事を含む災害に関して、ドローンを用いて避難誘導し、防災報知を行うシステムが既に知られている。
【0004】
例えば、特開2021-166074号公報(特許文献1)は、災害時の避難を促進することを目的とした技術を開示する。特許文献1は、自機を飛行させる飛行部と、災害の原因となる事象の発生および当該災害を受ける地域を示す防災情報を取得する取得部と、各々時間帯にそれぞれ対応付けられた複数の飛行経路を示す経路情報を記憶する経路記憶部と、取得された防災情報が示す地域を飛行する飛行経路を決定する決定部であって、記憶されている経路情報が示す複数の飛行経路のうち、取得された防災情報が示す事象が発生した時間帯に対応付けられた飛行経路を決定する決定部と、決定された飛行経路に沿った飛行の飛行制御を行う制御部と、取得された防災情報が示す災害に関する報知を飛行制御による飛行中に行う報知部と備える、飛行体の構成を開示する
【0005】
上記特許文献1の従来技術によれば、気象条件によって発生し、大規模災害につながる事象である山火事が発生した場合に退避を促進することができる。しかしながら、上記特許文献1の従来技術は、火事等を見つけ出した後に避難報知を行うという事後的な対応であって、見つけ出す観点で開示するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記点に鑑みてなされたものであり、移動体を用いて、気象条件に関連して発生する事象の発見することを可能とする移動体制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示では、上記課題を解決するために、下記特徴を有する移動体制御システムを提供する。本移動体制御システムは、互いにネットワークを介して通信する、1以上の移動体と、1以上の移動体を制御する情報処理装置とを含む。情報処理装置は、1以上の移動体による探索の対象となるエリアの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、前記エリアに関する気象情報とを記憶する記憶部を含む。情報処理装置は、また、記憶部に記憶されたエリア情報および気象情報に基づいて、探索する指定エリアを決定するエリア決定部を含む。情報処理装置は、さらに、エリア決定部により決定された指定エリアに基づいて、1以上の移動体のうちの少なくとも1つの移動体の移動を制御する制御部を含む。移動体は、指定エリアを移動中、事象の発生を検知する検知部と、検知部により事象の発生を検知した場合に通知を行う通知部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
上記構成により、移動体を用いて、気象条件に関連して発生する事象の発見することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態による防災システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態による防災システムを構成する移動体制御サーバおよび気象情報提供サーバとして用いることができるパーソナル・コンピュータ(PC)のハードウェア構成図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における管理者端末として用いることができるスマートフォンのハードウェア構成図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における移動体のハードウェア構成図である。
【
図5】
図5は、本実施形態による防災システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、本実施形態による防災システムで実行される移動体制御処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施形態による防災システムで実行されるエリアおよび移動パターン決定処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本実施形態による防災システムにおいて管理されるエリア情報を説明する図である。
【
図9】
図9は、本実施形態による防災システムにおいてエリア情報および気象情報を記憶するテーブルを説明する図である。
【
図10】
図10は、本実施形態において決定される移動体の移動パターンを説明する図である。
【
図11】
図11は、他の実施形態による防災システムで実行される移動体制御処理を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、別の実施形態による防災システムの全体構成を示す図である。
【
図13】
図13は、別の実施形態による防災システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】
図14は、別の実施形態によるハプティック・デバイスで実行される移動体の操作処理を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、別の実施形態において、各種操作デバイスに対して推奨エリアを保持するテーブルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明するが、実施形態は、説明される具体的な実施形態に限定されるものではない。本開示の実施形態は、種々の変更および改変を受け入れる余地がある点に留意されたい。
【0011】
本開示によれば、互いにネットワークを介して通信する、1以上の移動体と、1以上の移動体を制御する情報処理装置とを含む、移動体制御システムが提供される。情報処理装置は、1以上の移動体による探索の対象となるエリアの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、エリアに関する気象情報とを記憶する記憶部を備える。情報処理装置は、また、記憶部に記憶されたエリア情報および気象情報に基づいて、探索する指定エリアを決定するエリア決定部を備える。情報処理装置は、さらに、エリア決定部により決定された指定エリアに基づいて、1以上の移動体のうちの少なくとも1つの移動体の移動を制御する制御部を備える。移動体は、指定エリアを移動中、事象の発生を検知する検知部を備える。移動体は、さらに、検知部により事象の発生を検知した場合に、通知を行う通知部を備える。
【0012】
上記構成により、移動体を用いて、事象が発生する可能性の高いエリアを優先的に探索することが可能となり、ひいては、事象の発生を効率的かつ可能な限り早期に発見することが可能となる。
【0013】
ここで、特定の実施形態において、事象の発生は、火災の発生である。情報処理装置の記憶部は、エリア情報としての過去の火災発生履歴の情報と、気象情報としての天候および湿度の情報とを記憶することができる。エリア決定部は、過去の火災発生履歴の情報と、天候および湿度の情報とに基づいて、指定エリアを決定することができる。過去の火災発生履歴から繰り返し発生しやすいエリアが判別でき、湿度が低い場合には自然発火の可能性が高くなる。上記の構成により、火災が発生しやすい箇所を効率的に探索することにより、早期に火災の発生を発見することが可能となる。
【0014】
好ましい実施形態では、情報処理装置は、エリア決定部により決定される指定エリアにおける移動パターンを決定する移動パターン決定部をさらに備える。このように、適した移動パターンを決定することにより、火災の探索の時間および消費電力の観点から効率化を図ることが可能となる。
【0015】
特定の実施形態において、上記移動体は、残電力量を管理する電力管理部を備える。移動体制御システムは、移動体の残電力量が所定条件を満たす場合に、移動体による探索を中断して充電基地に戻し、充電を行わせ、同一の移動体または異なる移動体に対し、探索の中断の位置から探索を再開させる制御部を備えてもよい。長時間の移動が行われる場合であっても、移動体に自動的かつ継続的に探索を行わせることが可能となる。
【0016】
特定の実施形態において、事象の発生は、火災の発生であり、移動体は、温度センサと、撮像装置、GPS受信機および煙センサからなる群から選択された少なくとも1つのモジュールとを含む。通知部は、温度センサが所定以上の温度を検知した場合に、GPS受信機が測位した位置情報、撮像装置により撮像された画像情報および煙センサにより検知された煙情報からなる群から選択された少なくとも1つの情報を情報処理装置に送信する。情報処理装置は、少なくとも1つの移動体から送信される少なくとも1つの情報に基づいて、火災の発生の位置および規模を特定する火災特定部を備えてもよい。これらの情報を利用することで、火災位置および規模の予測精度を向上させることが可能となる。
【0017】
特定の実施形態において、移動体は、移動体の位置を特定する位置特定部と、情報処理装置から送信される指定エリアの情報を受信する受信部と、受信部により受信された指定エリアにおいて、位置特定部が特定した位置情報に基づいて駆動制御する駆動制御部とをさらに備える。
【0018】
上記1以上の移動体は、無人飛行体および無人地上移動体のうちの少なくとも1つを含んでもよい。特定の実施形態において、1以上の移動体は、少なくとも1つの無人飛行体と少なくとも1つの無人地上移動体とを含む。無人飛行体による空中からの事象の発生の検知が難しい場合でも、地上付近での事象の発生を無人地上移動体によって早期に検知することが可能となる。また、無人地上移動体と無人飛行体とは、所定の距離内にある場合に互いに通信することができる。無線環境が悪い場合でも、近傍の上空に位置する無人飛行体を経由して情報処理装置と通信することで、探索を継続することが可能となる。
【0019】
特定の実施形態において、移動体各々は、自身の位置を特定する位置特定部を含み、通知部は、位置特定部により特定された位置を示す位置情報を前記情報処理装置に送信する。情報処理装置の制御部は、無人飛行体または無人地上移動体の位置情報に基づいて、無人地上移動体または無人飛行体の位置を制御することができる。無人飛行体は、大まかな事象の発生の位置情報を空中から特定することができるところ、併せて地上から無人地上移動体を事象の発生位置に近づけることによって、事象の位置や規模を離れた場所にある情報処理装置を通じて把握することが可能となる。
【0020】
特定の実施形態においては、エリア決定部は、所定のアルゴリズムに基づいて、(例えば最も高い優先度を有するエリア)を少なくとも1つの移動体に対し探索を指定する指定エリアとして決定することができる。他の実施形態では、エリア決定部は、記憶部に記憶されたエリア情報および気象情報に基づいて、探索の候補となる候補エリアを決定し、候補エリアに対するユーザの選択を受け付けた場合に選択された候補エリアを指定エリアとして決定する。エリア決定部は、所定のアルゴリズムに基づいて、管理者に提案する複数の候補エリアを決定してもよい。
【0021】
特定の実施形態では、事象の発生は、火災の発生であり、移動体制御システムは、さらに、火災の発生の通知に応答して、火災対応計画および火災対応計画の遂行のためのルートを生成する計画生成部をさらに含む。
【0022】
好ましい実施形態では、移動体制御システムは、少なくとも1つの移動体を操作する操作部を含む。特定の実施形態では、操作部は、ハプティック・デバイス、キーボード、コントローラ、ポインティングデバイスまたはこれらの組み合わせである。
【0023】
本開示によれば、互いにネットワークを介して1以上の移動体と通信し、1以上の移動体を制御する情報処理装置が提供される。情報処理装置は、上記記憶部と、上記エリア決定部と、上記制御部と、少なくとも1つの移動体から送付される、指定エリアを移動中に検知した事象の発生の情報を受信する受信部と、事象の発生を受信した場合に管理者に対し事象の発生を報告する報告部とを備えてもよい。
【0024】
本開示によれば、ネットワークを介して情報処理装置と通信し、情報処理装置の制御の下、動作する移動体が提供される。移動体は、上記検知部と、上記通知部と、自身の位置を特定する位置特定部とを備えてもよい。移動体は、また、探索の対象となるエリアの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、エリアに関する気象情報とに基づいて決定された指定エリアに基づく情報処理装置からの指示に応答して、位置特定部により特定された位置情報に基づいて移動するよう駆動制御する駆動制御部を備える。
【0025】
本開示によれば、上記情報処理装置を実現するためのプログラムが提供される。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本実施形態による移動体制御システムについて、1以上の無人飛行体および1以上の無人地上移動体を含む1以上の移動体と、1以上の移動体を制御する移動体制御サーバとを含み、森林エリアにおける火災の発生を検知する防災システムを一例として、より詳細に説明する。しかしながら、本実施形態による移動体制御システムは、森林火災の発生を検知する防災システムに限定されるものではなく、森林火災以外の火災、火災以外の災害に対するものであってもよいし、火災や災害以外の事象を検知の対象とするものであってもよい。
【0027】
図1は、本実施形態による防災システム100の全体構成を示す図である。
図1に示すように、防災システム100は、それぞれネットワーク102に接続される、移動体を制御するための移動体制御サーバ110と、気象情報を提供する気象情報提供サーバ120と、本実施形態による移動体制御システムのユーザである管理者が操作する管理者端末130と、無人飛行体としての複数のドローン152a,152b…(
図1においては、一部のドローンのみに符番が付されている)と、無人地上移動体としての複数のクローラ162a,162b…(
図1においては、一部のクローラのみ符番が付されている)とを含み構成される。
【0028】
移動体制御サーバ110は、火災の発生を検知するための監視の対象となる森林エリアWに関する情報などを保持し、典型的には、森林火災の発生を監視する管理者サイトにサーバやパーソナル・コンピュータの形で配備される。しかしながら、これに限定されず、移動体制御サーバ110は、クラウド上で稼働する仮想マシンとして提供されてもよい。
【0029】
気象情報提供サーバ120は、気象情報を提供しており、特に、監視対象の森林エリアWに関する気象情報を提供する。気象情報提供サーバ120は、例えば、特定の地域または所定面積を有するメッシュ単位で各地点の気象情報(気温などの観測値や予報値)を提供する外部の気象情報提供サービスのサーバであってもよい。その場合に、移動体制御サーバ110は、外部サービスから対象の森林エリアWに関連する気象情報の提供を受けてもよい。あるいは、気象情報提供サーバ120は、管理者サイトにおいて独自に実装されたものであってもよい。
【0030】
管理者端末130は、管理者が操作するパーソナル・コンピュータ、タブレット・コンピュータ、スマートフォンなどの端末である。管理者は、管理者端末130を操作して、移動体制御サーバ110にアクセスし、各種設定や探索エリアの選択、移動体に対する探索の指示などの操作を実行することができる。
【0031】
ドローン152(複数のドローンを総称して符番152で参照する)は、外部制御または自律制御される無人の飛行体であり、本実施形態における移動体の一例である。ドローン152は、充電設備を備えるドローン基地150で待機しており、移動体制御サーバ110からの指示に応答して、森林エリアWを巡回監視する。ドローン152は、撮像装置や各種センサを備える。なお、各ドローン152は、バッテリを備えており、電池残量が所定以下になった場合には、ドローン基地150に戻り、充電設備にて充電を行う。このように、上空監視において複数ドローンを組み合わせて運用活用することにより、航空機よりもはるかに安価にかつ簡便に広大な面積を監視することが可能となる。
【0032】
クローラ162(複数のクローラを総称して符番162で参照する)は、外部制御または自律制御される、無人で地上を走行する小型不整地移動体であり、本実施形態における移動体の一例である。森林火災において、特に森林が密集している地域については、上空から検知が難しい場合がある。例えば、種火が地面近くに存在したり、枯れた木の根が地中で燃えかかっていたりする場合などである。特に過去に火災発生したエリアついては、燃え広がる前に火災検知できることが望ましい。クローラ162を用いることにより、ドローン152による空中からの火災検知に加えて、地面付近を走行して巡回することによって、火災の発生の早期検知の精度を向上させることが可能となる。なお、クローラ162の形態は、森林内を走行または歩行により移動することが可能であれば、特に限定されるものではなく、キャタピラ型、多脚型、車輪型のクローラなどこれまで知られた如何なるものを用いることができる。クローラ162は、充電設備を備えるクローラ基地160で待機しており、移動体制御サーバ110からの指示に応答して、森林エリアWを巡回監視する。クローラ162も、撮像装置や各種センサを備える。
【0033】
ドローン152の台数およびクローラ162の台数は、それぞれ、任意であり、1台または複数台用いてもよい。防災システム100は、好ましくは、ドローン152およびクローラ162の両方を移動体として含むが、これに限定されず、ドローン152のみで構成されてもよいし、または、クローラ162のみで構成されてもよい。
【0034】
ネットワーク102は、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、インターネットなどの公衆回線網、4G、5G、6Gなどの移動体通信網、ドローン用無線通信、およびこれらの組み合わせなどを含んでもよい。ドローン152およびクローラ162は、例えば、73MHz帯のラジコン操縦用微弱無線、169Mhz帯や2.4GHzや5.7Ghz帯の無人移動体画像伝送システム、920MHz帯の特定小電力無線局、1.2Ghz帯の携帯局、2.4Ghz帯の省電力データ通信システムなどを用いてネットワーク102に接続することができるが、4G、5G、6Gなどの移動体通信網を介してネットワーク102に接続されてもよい。なお、許可される周波数帯は、各国で異なる。
【0035】
本防災システム100においては、移動体制御サーバ110は、森林エリアWの情報を格納しており、気象情報提供サーバ120から提供される気象情報と併せて分析する。これによって、監視対象の複数のエリアの中から、優先的に巡回監視すべきエリアまたはその候補を決定し、必要に応じて管理者に提示することができる。自動決定または提示した結果に基づく管理者からの選択に応答して、移動体に巡回監視させる指定エリアを決定し、指定のエリアの巡回監視を、複数のドローン152および複数のクローラ162のいずれか1以上のものに指令し、開始させる。指令に応答して、所定数のドローン152またはクローラ162またはその組み合わせが、ドローン基地150またはクローラ基地160から、指定エリアに向かい、火災の検知を試みながら、エリア内を巡回する。巡回中、火災が検知された場合には、ドローン152またはクローラ162は、ネットワーク102を介して、移動体制御サーバ110に火災の発生を通知する。移動体制御サーバ110は、さらに、移動体からの火災の発生の通知に応答して、管理者端末130に通知することができる。これにより管理者は、森林火災への初期対応を迅速に行うことが可能となる。
【0036】
以下、本実施形態による防災システム100について詳細に説明する前に、防災システム100を構成する各装置のハードウェア構成を説明する。
【0037】
図2は、本実施形態による防災システム100を構成する移動体制御サーバ110および気象情報提供サーバ120として用いることができるパーソナル・コンピュータ(PC)のハードウェア構成図である。
図2は、PC(サーバ)のハードウェア構成図である。ここでは、サーバ200のハードウェア構成について説明する。
【0038】
図2に示されているように、サーバ200は、コンピュータによって構築されており、
図2に示されているように、CPU201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、HD204、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ205、ディスプレイ206、外部機器接続I/F(Interface)208、ネットワークI/F209、データバス210、キーボード211、ポインティングデバイス212、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ214、メディアI/F216を備えている。
【0039】
これらのうち、CPU201は、サーバ200全体の動作を制御する。ROM202は、IPL等のCPU201の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。HD204は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ205は、CPU201の制御にしたがってHD204に対する各種データの読み出しまたは書き込みを制御する。ディスプレイ206は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、または画像などの各種情報を表示する。外部機器接続I/F208は、各種の外部機器を接続するためのインタフェースである。この場合の外部機器は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタ等である。ネットワークI/F209は、通信ネットワークを利用してデータ通信をするためのインタフェースである。データバス210は、
図2に示されているCPU201等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0040】
また、キーボード211は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス212は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。DVD-RWドライブ214は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW213に対する各種データの読み出しまたは書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-R等であってもよいし、他の任意の記録媒体であってもよく、特に限定されるものではない。メディアI/F216は、フラッシュメモリ等の記録メディア215に対するデータの読み出しまたは書き込み(記憶)を制御する。
【0041】
図3は、本実施形態における管理者端末として用いることができるスマートフォンのハードウェア構成図である。
図3に示されているように、スマートフォン220は、CPU221、ROM222、RAM223、EEPROM224、CMOSセンサ225、撮像素子I/F226、加速度・方位センサ227、メディアI/F229、GPS受信部231を備えている。
【0042】
これらのうち、CPU221は、スマートフォン220全体の動作を制御する。ROM222は、CPU221やIPL等のCPU221の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM223は、CPU221のワークエリアとして使用される。EEPROM224は、CPU221の制御にしたがって、スマートフォン用プログラム等の各種データの読み出しまたは書き込みを行う。CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ225は、CPU221の制御に従って被写体(主に自画像)を撮像して画像データを得る内蔵型の撮像手段の一種である。なお、CMOSセンサではなく、CCD(Charge Coupled Device)センサ等の撮像手段であってもよい。撮像素子I/F226は、CMOSセンサ405の駆動を制御する回路である。加速度・方位センサ227は、地磁気を検知する電子磁気コンパスやジャイロコンパス、加速度センサ等の各種センサである。メディアI/F229は、フラッシュメモリ等の記録メディア228に対するデータの読み出しまたは書き込み(記憶)を制御する。GPS受信部231は、GPS衛星からGPS信号を受信する。
【0043】
また、スマートフォン220は、遠距離通信回路232、CMOSセンサ233、撮像素子I/F234、マイク235、スピーカ236、音入出力I/F237、ディスプレイ238、外部機器接続I/F(Interface)239、近距離通信回路240、近距離通信回路240のアンテナ240a、およびタッチパネル241を備えている。
【0044】
これらのうち、遠距離通信回路232は、通信ネットワークを介して、他の機器と通信する回路である。CMOSセンサ233は、CPU221の制御に従って被写体を撮像して画像データを得る内蔵型の撮像手段の一種である。撮像素子I/F234は、CMOSセンサ233の駆動を制御する回路である。マイク235は、音を電気信号に変える内蔵型の回路である。スピーカ236は、電気信号を物理振動に変えて音楽や音声などの音を生み出す内蔵型の回路である。音入出力I/F237は、CPU221の制御に従ってマイク235およびスピーカ236との間で音信号の入出力を処理する回路である。ディスプレイ238は、被写体の画像や各種アイコン等を表示する液晶や有機EL(Electro Luminescence)などの表示手段の一種である。外部機器接続I/F239は、各種の外部機器を接続するためのインタフェースである。近距離通信回路240は、NFC(Near Field Communication)やBluetooth(登録商標)等の通信回路である。タッチパネル241は、利用者がディスプレイ248を押下することで、スマートフォン220を操作する入力手段の一種である。
【0045】
また、スマートフォン220は、バスライン230を備えている。バスライン230は、
図3に示されているCPU221等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0046】
図4は、本実施形態における、ドローン152およびクローラ162などの移動体250のハードウェア構成図である。
図4に示されているように、移動体250は、CPU251、ROM252、RAM253、記憶部254、無線I/F255、メディアI/F256、拡張I/F257を備える。
【0047】
これらのうち、CPU251は、移動体250全体の動作を制御する。ROM252は、CPU251やIPL等のCPU251の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM253は、CPU251のワークエリアとして使用される。記憶部254は、CPU251の制御にしたがって、ドローン用またはクローラ用プログラム等の各種データの読み出しまたは書き込みを行う。無線I/F255は、無線を介した通信を制御する。移動体250は、無線I/F255を通じて他の移動体(他のドローンや他のクローラ)および移動体制御サーバ110とネットワーク接続し、各種の情報をやり取りすることが可能である。メディアI/F256は、フラッシュメモリ等の記録メディアに対するデータの読み出しまたは書き込み(記憶)を制御する。拡張I/F257は、拡張機能を提供するモジュールとの接続用のインタフェースである。
【0048】
また、移動体250は、拡張I/F257を介して接続される各種装置を備え、駆動装置260、撮像装置261、測距センサ262、各種センサ263、GPS受信機264および電力部265を含む。
【0049】
これらのうち駆動装置260は、キャタピラや車輪などの走行装置、脚機構などの移動に使用する機構を制御する。撮像装置261は、CMOSセンサやCCDカメラであり、CPU251の制御に従って、周辺環境を撮像して画像データを得る撮像手段の一種である。撮像装置261は、例えば、通常のカメラや全天球カメラであってもよい。測距センサ262は、超音波方式またはTOF(Time of Flight)方式の測距センサであり、正面の対象物までの距離を測定する。
【0050】
各種センサ263としては、熱源を検知するための赤外線温度センサを含み、その他、例えば、ドローン152であれば、煙濃度を測定する煙センサを含んでもよい。煙センサとしては、煙粒子または煙分子(煙に含まれるガス成分およびにおい分子を含む)の濃度または存在を検知するセンサであってよく、より具体的には、光電式感知型煙センサ、イオン化式感知型煙センサ、半導体式や水晶振動子式のにおいセンサなどを挙げることができる。なお、火事の検知は、赤外線温度センサによって行ってもよいし、撮像装置で撮像した画像から画像認識処理により火災を検知してもよい。赤外線温度センサを用いる場合には、所定温度(例えば70度)に閾値を設定して、火災の発生を検知してもよい。その他、移動体152,162の周辺の環境情報として、温度や湿度を計測する温湿度センサおよび風速センサを有してもよい。
【0051】
GPS受信機264は、GPS衛星からGPS信号を受信する。電力部265は、バッテリから移動体へ電力を供給する。ドローン152およびクローラ162は、その移動が、長距離、長時間となる場合が多いところ、例えば、所定以下のバッテリ残量になった場合に、探索を中止し、基地に戻り充電を行ってもよい。充電後、同一の移動体が中断位置に戻って巡回を再開してもよく、あるいは、異なる移動体が引き継いで巡回を再開してもよい。
【0052】
また、また森林内では、障害物がある可能性も高いところ、
図4には示さないが、移動体250、例えば、クローラ162は、障害物を除去するために、ロボットアームなどのマニピュレータを備えてもよい。
【0053】
以上、本実施形態の防災システム100の全体構成および防災システム100を構成する装置のハードウェア構成について説明してきた。以下、引き続き、防災システム100の機能構成200について、
図5に示す機能ブロック図に基づいて説明する。なお、
図5には、移動体制御サーバ110の機能ブロック310と、移動体(ドローン152/クローラ162)の機能ブロック350とが示されている。
【0054】
本実施形態による移動体制御サーバ110の機能ブロック310は、UI部312と、決定部314と、制御部320と、気象情報取得部322と、情報記憶部324と、火災特定部326と、計画生成部328と、通信部330とを含み構成される。
【0055】
気象情報取得部322は、気象情報提供サーバ120と通信し、気象情報提供サーバ120から対象のエリアに関連する気象情報を取得し、情報記憶部324に格納する。気象情報は、特に限定されるものではないが、天候および湿度の情報などの情報を挙げることができる。
【0056】
情報記憶部324は、探索の対象となる複数のエリアに関するエリア情報と、気象情報取得部322により取得された複数のエリアに関する気象情報とを記憶する。情報記憶部324は、より具体的には、エリア情報としての探索の対象となるエリアにおける過去の事象の発生履歴、一例として過去の火災発生履歴の情報と、気象情報としての天候および湿度の情報とを記憶してもよい。また、情報記憶部324は、気象情報取得部322が気象情報提供サーバ120から取得した情報の他、移動体(ドローン152/クローラ162)が計測した移動体周辺の環境情報(例えば、温度、湿度、風速を含む)を上記気象情報として記憶してもよい。情報記憶部324は、本実施形態における記憶部を構成する。
【0057】
決定部314は、情報記憶部324に格納された情報に基づいて、探索に関する各種の決定を行う。決定部314は、より具体的には、エリア決定部316と、移動パターン決定部318とを含み構成される。
【0058】
エリア決定部316は、情報記憶部324に記憶されたエリア情報および気象情報に基づいて、探索の候補となる候補エリアを決定する。エリア決定部316は、より具体的には、情報記憶部324に記憶された、過去の火災発生履歴の情報と、天候および湿度の情報とに基づいて、候補エリアを決定する。エリア決定部は、所定のアルゴリズムに基づいて、候補エリア、好ましくは最も高い優先度を有する候補エリア(火災の発生する確率を評価するスコアが高く、優先して探索するべきエリア)を、移動体に探索させる指定エリアとして決定することができる。他の実施形態では、エリア決定部316は、所定のアルゴリズムに基づいて、管理者に提案する複数の候補エリアを、例えば各々の優先度のスコアとともに計算し、複数の候補エリアおよび各々の優先度のスコアを管理者端末130上で提示し、管理者からの複数の候補エリアからの選択に応答して、移動体に探索させる指定エリアとして決定してもよい。
【0059】
移動パターン決定部318は、エリア決定部316により決定される候補エリアにおける移動パターンを決定する。移動体による探索による火災の発見の精度は、探索にかける時間あるいはエリア内の移動距離とトレードオフの関係にあるところ、移動パターンは、上述した優先度などに応じて適切に火災の発見の精度を設定するためのものである。例えば、移動パターンとしては、優先度が相対的に低い場合の精度の向上ではなく時間または距離を短縮することを優先した移動パターンや、優先度が相対的に高い場合の時間または距離よりも精度の向上を優先した移動パターンなどがある。その他、移動パターンとしては、地形とその場での風速に対応して残電池容量で最大限移動できるよう最適化されるパターンも考えられる。移動パターンについては、より詳細に後述する。
【0060】
UI部312は、管理者端末130からのアクセスに応答して、各種操作を行うためのグラフィカル・ユーザ・インタフェースを提供する。例えば、管理者は、管理者端末130のアプリケーションまたはブラウザを用いて、移動体制御サーバ110にアクセスし、各種操作を行うことが可能となる。UI部312は、例えば、上述したように、探索の優先度の高い候補エリアを管理者に提示してその選択を受けたり、火災の発生の通知を受信した場合に、管理者に対し火災の発生やその情報を報告したりするために用いられる。UI部312は、本実施形態における報告部を構成する。管理者は、受け取った情報に基づいて、避難や消化対策を取ることが可能となる。
【0061】
制御部320は、エリア決定部316により決定された候補エリアに基づいて、ドローン152およびクローラ162のうちの少なくとも1つの移動体の移動を制御する。制御する移動体は、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、いずれの移動体を選択するかは任意である。例えば、UI部312が、エリア決定部316により決定された、優先して探索すべき1以上の候補エリアを管理者端末130に表示し、管理者は、その表示された1以上の候補エリアの中から、探索する指定エリアの選択することができる。候補エリアは、例えば優先度に従ってランク付けされてもよい。この場合、上述した指定エリアは、UI部312により優先度とともに提案された複数の候補エリアの中から管理者の選択を受けて決定されたものとなる。あるいは、エリア決定部316により決定された候補エリアに基づいて、その候補エリアの中から自動で指定エリアが決定されてもよい。制御部320は、候補エリアに基づいてユーザにより選択された指定エリアまたは自動で決定した指定エリアについて、選択した移動体の移動を制御する。
【0062】
移動体の具体的な制御については、特に限定されるものではないが、例えば、移動体に対し、飛行ルートや走行ルートが指定されたり、通過するべき中継地点などが指定されたりする。
【0063】
制御部320は、現時点の気象情報に基づく分析結果から、例えば、特定のエリアが火災の発生する危険性が高いエリアとしてエリア決定部316により指定エリアとして決定された場合、そのエリアの巡回監視を優先的または重点的に実施する。巡回監視の優先的な実施は、その指定エリアの巡回の時間的な順序が他のエリアより早いこと、巡回の頻度が、他のエリアより高くなることまたはその両方を意味し得る。巡回監視の重点的な実施は、当該エリアへの滞留時間が長くなることを意味する。
【0064】
また、好ましい実施形態においては、制御部320は、移動体の残電力量が所定条件を満たす場合に、少なくとも1つの移動体の探索を中断して充電基地に戻し、充電を行わせるとともに、充電後の同一の移動体または基地に待機している異なる移動体に探索の中断の位置から探索を再開させることができる。
【0065】
火災特定部326は、少なくとも1つの移動体から送信される情報に基づいて、火災の発生の位置および規模を特定する。計画生成部328は、移動体からの火災の発生の通知に応答して、火災対応計画および火災対応計画の遂行のためのルートを生成する。火災の発生の位置および規模の特定や火災対応計画の策定や遂行のための最適なルートの作成は、例えば人工知能を用いて、過去の山火事を記録するデータベースに基づいて自動生成されてもよい。火災特定部326により特定された火災の位置や規模は、例えば、UI部312により、管理者端末130上で表示することができる。
【0066】
通信部330は、移動体から送付される、指定エリアを移動中に検知した事象の発生の情報を、ネットワーク102を介して受信する。また、通信部330は、上記制御部320が、少なくとも1つの移動体の移動を制御する際に、各種指令や制御情報を移動体250に送信することができる。
【0067】
引き続き、
図5を参照しながら、移動体側の構成について説明する。本実施形態による移動体250の機能ブロック350は、受信部352と、制御部354と、検知部356と、通知部358と、電力管理部360と、位置特定部362とを含み構成される。
【0068】
受信部352は、移動体制御サーバ110から送信される指定エリアの情報を受信する。位置特定部362は、GPS受信機を用いて、移動体自身の位置を特定する。制御部354は、受信部352により受信された指定エリアにおいて、位置特定部が特定した位置情報に基づいて駆動制御する。制御部354は、本実施形態における駆動制御部を構成する。検知部356は、指定エリアを移動中、事象の発生の検知を試みる。これにより、指定エリアを巡回監視する。通知部358は、検知部356により事象の発生を検知した場合に、移動体制御サーバ110に対し通知を行う。電力管理部360は、残電力量を管理する。
【0069】
移動体250は、上述したようにハードウェアとして、赤外線温度センサなどの温度センサ、通常のカメラや好ましくは全天球カメラなどの撮像装置261、GPS受信機264および煙センサからなる群から選択された少なくとも1つのモジュールを含み得る。通知部358は、温度センサが所定以上の温度を検知した場合に、GPS受信機264が測位した位置情報、撮像装置261により撮像された画像情報および煙センサにより検知された煙情報からなる群から選択された少なくとも1つの情報を、移動体制御サーバ110に送信する。
【0070】
上記構成において、例えば、ドローン152が、指定エリアを移動中に、赤外線センサで熱源(所定温度以上のもの)を検知すると、GPS受信機264によって受信した情報から熱源位置を特定する。また備える撮像装置261によって当該位置付近の画像(静止画、動画またはその両方)を撮影する。これらの熱源位置情報および画像情報の情報は、ドローン152から移動体制御サーバ110へ送信される。移動体制御サーバ110上では、人工知能による火災対応計画の立案および火災対応計画の提示を行う。さらに、移動体制御サーバ110は、火災対応計画の遂行のための消防施設から熱源位置までの最短ルートや段取りを計算し、管理者端末130や、他の消防隊の携帯端末や車両端末上のディスプレイ上で提示・表示することができる。
【0071】
以下、
図6~
図10を参照しながら、本実施形態における防災システム100において実行される、移動体を用いた防災のための制御についてより詳細に説明する。
【0072】
図6は、本実施形態による防災システム100で実行される、移動体制御処理を示すフローチャートである。
図6に示す処理は、ステップS100から開始される。ステップS101では、移動体制御サーバ110は、探索すべきエリアおよび移動パターンを決定する。ステップS101で実行されるエリアおよび移動パターン決定処理は、
図7を参照しながら後述する。ステップS102では、移動体制御サーバ110は、ステップS101での決定に基づいて、所定の移動体に対し、探索を指示し、ステップS103へ処理を進める。指示には、例えば、移動体が移動する移動パターンやルートなどが含まれ得る。ここで、選択される移動体は、任意であり、設定に応じて、いずれかのドローン152、いずれかのクローラ162または、その両方が探索を開始する。
【0073】
移動体250は、ステップS200で、待機しており、ステップS102の移動体制御サーバ110からの指示に応答して、ステップS201で、移動体250側の探索処理が開始される。なお、説明する実施形態では、説明の便宜上、ステップS101で、一つの移動体250に対して指示が行われ、その一つの移動体250に注目して処理を説明する。
【0074】
ステップS201では、移動体250は、探索を開始する。ステップS202では、移動体250は、指定エリアを移動中、熱源を発見したか否かを判定する。例えば、赤外線センサにて所定の閾値温度以上の場所を発見したり、または撮像装置261にて撮像された画像から画像認識により熱源を発見したりした場合は、ステップS202で、熱源を発見したと判定される。ステップS202で、熱源を発見していないと判定された場合(NO)は、ステップS203へ処理を進める。
【0075】
ステップS203では、移動体250は、電力管理部360により、電力残量が充分にあるか否かを判定する。ステップS203で、電力残量が、所定の閾値以上あり、充分であると判定された場合(YES)は、ステップS202へ処理が戻される。ステップS202で、熱源を発見したと判定された場合(YES)は、ステップS204へ処理が進められる。
【0076】
ステップS204では、移動体250は、熱源の位置を特定し、熱源を視野に収めて撮影する。熱源の特定は、例えば、赤外線温度センサにより熱源を検出した際の移動体250のGPSで測位した位置であってよい。撮影される画像情報は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。また、熱源の撮影画像に加えて、周辺の撮影画像を取得してもよい。ステップS205では、移動体250は、特定した熱源位置および撮影した撮影画像とともに熱源発見の報告を移動体制御サーバ110に送信する。ステップS206では、移動体250は、探索を終了し、基地に帰還する。あるいは、電力残量があることを条件として、熱源の周辺の観測を継続してもよいし、報知動作に移行してもよい。
【0077】
一方、ステップS202で、電力残量が、所定の閾値未満あり、充分ではないと判定された場合(NO)は、ステップS207へ処理が分岐される。ステップS207では、移動体250は、探索を中断し、基地に帰還する。移動体250は、基地に帰還した後、ステップS200に戻り、適宜、移動体制御サーバ110に帰還したことを報告し、待機状態に移行する。移動体制御サーバ110は、充電が完了した同一の移動体または別の電力残量が充分にある他の移動体に探索を再開させてもよい。
【0078】
移動体制御サーバ110側の処理に戻ると、ステップS103では、移動体制御サーバ110は、熱源発見の報告があったか否かを判定する。ステップS103で、熱源発見の報告が未だない場合(NOの間)は、ステップS103へ処理がループされる。一方、移動体250が熱源を発見した場合、ステップS205で熱源位置および撮影画像とともに熱源発見の報告が移動体制御サーバ110に送信される。
【0079】
ステップS103で、熱源発見の報告を受信したと判定された場合(YES)は、ステップS104へ処理が進められる。ステップS104では、移動体制御サーバ110は、受信した熱源位置情報および撮影画像情報を管理者と共有するための処理を行う。例えば、管理者は、スマートフォン上で通知を受け取ったり、メールを受信したりする。管理者は、管理者端末130を用いて移動体制御サーバ110にアクセスすることにより、熱源位置情報を地図上で確認したり、撮影画像を閲覧したりすることが可能となる。これにより、管理者は、熱源位置情報および撮影画像に基づいて、火災の発生を確認し、消防隊の派遣など適切な対策を講じることが可能となる。
【0080】
また、好ましい実施形態では、ステップS105では、移動体制御サーバ110は、計画生成部328により、火災対応計画の立案および火災対応計画の提示を行う。ステップS106では、立案した火災対応計画を遂行するための熱源位置までの最短ルートを検索し、管理者に提示し、本処理を終了する。管理者は、管理者端末130を用いて移動体制御サーバ110にアクセスすることにより、火災対応計画および最短ルート参照する。これにより、より簡単に消防隊の派遣など適切な対策を講じることが可能となる。
【0081】
図7は、本実施形態による防災システム100で実行される、
図6に示したステップS101で呼び出される、候補エリアおよび移動パターン決定処理を示すフローチャートである。
図7に示す処理は、
図6に示したステップS101で呼び出されたことに応答して、ステップS300から開始される。
【0082】
ステップS301では、移動体制御サーバ110は、探索の対象となる複数のエリアのエリア情報を取得し、テーブルに記録する。
【0083】
図8は、本実施形態による防災システム100において管理されるエリア情報を説明する図である。ドローン152に巡回監視させるエリア情報については、予め所定のテーブル情報をファイルなどとして移動体制御サーバ側で管理者により定義され、準備され、予め取得されており、ステップS301では、移動体制御サーバ110は、ファイルを読み込むことによって、エリア情報を記憶したテーブルをメモリ上に用意する。例えば、探索の対象となる森林エリア全体ついては、森林の地図情報(緯度および経度に対応づけられる)が準備され、探索の対象となる複数のエリア各々がその地図上で設定される。
図8中には、エリアA~Dが示されており、各エリアには、たとえば、緯度および経度によって境界線が画定される。クローラ162を走行させるエリアについても、ドローン152の場合と同様に画定される。
【0084】
管理者は、ドローンで巡回監視すべきエリアを設定することができる。また、その際に、過去の火災履歴や天候の情報、エリアの利用状況に関する情報(火気取り扱いがある場所など)から、設定する、優先的または重点的して巡回監視するべきエリアを設定するようにしてもよい。また、ドローン152は、無人操縦による飛行も可能あり、このため、予め人家が密集している場所を飛行しないよう安全面に配慮して、上記エリアを設定することが望ましい。
【0085】
再び
図7を参照すると、ステップS302では、移動体制御サーバ110は、探索の対象となる複数のエリアについて、気象情報提供サーバ120から気象情報を取得し、テーブルに記録する。気象情報としては、天候(晴れ/曇り/雨など)、湿度、風速および風向を挙げることができ、また気象情報は、観測値または予報値であってもよい。
【0086】
図9は、本実施形態による防災システム100においてエリア情報および気象情報を記憶するテーブルを説明する図である。
図9に示すように、管理テーブルは、エリアの名称と、過去の火災発生件数と、天候と、湿度と、風速と、風向と、移動パターンと、移動時間帯とのカラムを含む。ここで、過去の火災発生件数については、当該エリアにおいて過去に発生した火災の履歴を集計したものを保持する。森林火災については、発生原因が様々であるところ、火災の発生し易さを評価することができる。天候、湿度、風速および風向については、上述した気象情報提供サーバ120から取得した気象情報に基づく値を保持する。
【0087】
例えば、気象情報提供サーバ120が、所定面積を有するメッシュ単位で各地点の気象情報を提供している場合であって、あるメッシュ内にエリアが存在する場合は、そのメッシュの気象情報を当該エリアの情報として用いることができる。エリアが、複数のメッシュにまたがる場合は、それら複数のメッシュの気象情報の集計値(最頻値、平均など任意の集計方法を行うことができる。)を当該エリアの情報として用いることができる。
【0088】
図9に示す管理テーブルには、「火気取り扱い場所を含む」のカラムが設けられている。これは、例えば、対象エリアが公園である場合などに、火気厳禁のエリアなのかそうではないかなどの情報に応じた値を保持する。消防庁統計資料によれば日本における出火原因の1位は、たき火30.2%と火入れ17.5%となっている。レジャーによる火の取り扱い(火気取り扱い場所)を事前に登録することで、そのエリアの優先度に評価において重みを設定することができる。なお、管理テーブルにある移動時間帯については後述し、移動パターンについても、後述する決定処理で決定される。
【0089】
再び
図7を参照すると、ステップS303では、移動体制御サーバ110は、探索の対象となる複数のエリアのエリア情報および気象情報に基づいて、優先的または重点的に探索する候補エリアを決定する。ここで、候補エリアは、管理テーブルの情報をスコア付けして、候補として複数のエリアを決定する(そして、管理者に候補エリアの中から、探索させる指定エリアを選択させる)ようにしてもよいし、テーブルの情報をスコア付けして、探索させる指定エリアを自動で決定してもよい。
【0090】
自動判断のアルゴリズムの例としては、例えば、
(1)過去に火災が1回以上起こったエリアを、湿度が低い順に巡回監視するようスケジュールする;
(2)過去に火災が1回以上起こっており、湿度が所定閾値(例えば30%)以下のエリアを巡回監視するよう設定する;
(3)湿度が所定閾値(例えば30%)以下のエリアをすべて抽出し、風速が早い順に巡回監視するようスケジュールする;
などが考えられる。なお、
図6に示す処理は、上述したように、決定された1つのエリアに焦点を当てたフローとなっており、複数のエリアの探索がスケジュールされる場合は、決定したエリアごとに
図6に示す処理が繰り返されればよい。
【0091】
なお、上述したスケジュールに関連し、管理者は、ドローン152およびクローラ162を巡回させる時間帯を指定するようにしてもよい。
図9に示すテーブルでは、移動時間帯としてAM(午前)/PM(午後)が設定されている。しかしながら、移動時間帯の指定方法は、特に限定されるものではなく、具体的な時間帯(例えば1:00~7:00のように)を設定してもよいし、日時(12月1日~12月3日)といった複数日を指定してもよい。なお、長期間の移動となる場合は、ドローン152やクローラ162が基地に戻り充電して巡回に復帰するなどの動作が必要となる場合がある。その場合は、複数台のドローン152やクローラ162を交代で巡回させるようにしてもよい。
【0092】
また、上記条件のほか、過去に山火事が発生した天候(気象)の情報を組み合わせて、より複雑な条件を設定する(例えば、晴の日が所定日数継続した場合に山火事が発生した履歴があるような場合に、所定日数以上晴の日が継続することを条件とするなど)ことで、より危険な状態であることを事前に予測し、その特定危険日に集中的に巡回監視することができる。これによって、より効率的な巡回監視を可能とすることができる。あるいは、過去の発生個所を優先的または重点的に監視すると共に、移動体が収集した環境情報(温度、湿度、風速)と過去データと照らし合わせて過去に火災が発生したときと近似値である場合は、重点的または優先的に監視することもできる。
【0093】
再び
図7を参照すると、ステップS304では、移動体制御サーバ110は、探索の対象となる複数のエリアのエリア情報および気象情報に基づいて、各エリアでの移動体の移動パターンを決定する。ドローン152の移動パターンは、エリア各々に対して個別に設定することができる。移動パターンにより飛行距離が異なるところ、長時間の移動が想定されるエリアに対しては、移動距離が少ないパターンを選択すると好ましい。また過去の火事履歴が少ないエリア(優先度の低いエリア)に対しては、距離が短く、時間を要しないパターンを設定するとよい。一方、過去の火災履歴が多いエリアや森林が密集しており地面での火種が検知しにくいエリア(優先度の高いエリア)については、距離が長く、時間を要するが、より網羅的に巡回監視可能なパターンを設定するとよい。
【0094】
図10は、本実施形態において決定される移動体の移動パターンを説明する図である。
図10(A)は、エリアの外周部における向かい合う両端間を略等間隔で往復しながら進行する移動パターンを示す。
図10(B)は、エリアの外周部における向かい合う両端をジグザグ(斜めに)に往復しながら進行する移動パターンを示す。
図10(C)は、エリアの外周部に沿って巡回する移動パターンを示す。
図10(D)は、エリアの一角から対角へ横断する移動パターンを示す。
図10(A)は、最も移動距離が長く、時間を要するが、火災の発見の見逃しが少ない移動パターンであり、
図10(A)、
図10(B)、
図10(C)および
図10(D)の順に、移動時間短く、時間が短くなる。
【0095】
なお、各エリアに設定する移動パターンは、1つに限定されず、同一エリアに対し複数のパターンを、例えば順序付けて、設定してもよい(例えば、エリアAについて、
図10(D)のパターンで行ったあと、その後、
図10(A)のパターンで行うなど)。また、クローラ162についても、ドローン152の飛行と同様のパターンを用いて、地上を巡回監視させることができる。なお、上空を飛行するドローン152と比較して、地上を走行するクローラ162の場合、崖、岩、川や湖、湿地など移動に制約がある場合があるところ、クローラ162の実際の移動は、基本的には決定された移動パターンに沿いつつそのような制約を考慮して移動するものであってよい。また、移動パターンとしては、地形とその場での風速に対応して残電池容量で最大限移動できるよう最適化されるパターンがあってもよい。
【0096】
また、同一エリアに対し、ドローン152の場合とクローラ162の場合とで別の移動パターンを設定してもよい。さらに、ドローン152の場合とクローラ162の場合とで、別個の移動時間帯を設定し、異なるタイミングで巡回監視してもよい。クローラの場合も同様に、長時間の移動となる場合には、電力量が所定値以下となった場合に、クローラ基地160に戻って充電を行うこととし、充電後の同一のクローラ162または異なるクローラ162が巡回監視に復帰してもよい。
【0097】
再び
図7を参照すると、ステップS304の後は、ステップS305で、本決定処理を終了し、
図6における呼び出し元のステップS101の次のステップに戻される。
【0098】
なお、上述した説明では、火災の発見以降の移動体の動作について、単に基地に復帰するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、移動体250は、火災発見後、報知動作に移ってもよい。例えば、移動体250が、さらに音声発信部(例えばスピーカ)や光発信部(例えばランプ)を備えている場合、火災を検知した場合に自動で、あるいは、管理者から指示があったことに応答して、火災発生を報知する音声メッセージを現地で発信したり、発光して外部に危険を知らせるなどの報知動作を実施してもよい。また、報知動作の他、移動体の性能にもよるが、能力を有する場合は、初期消火のための消火剤を搭載し、自己のセンサにより消火剤を投下または散布するといった火災の初期対応を実施してもよい。
【0099】
また、森林内部に入りこむ場合には、無線の通信状況が悪い場合も考えられるところ、ドローン152およびクローラ162が、所定の距離内にある場合に互いに通信するように構成してもよい。例えば、クローラ162の上空に位置するドローン152との無線通信を行って各種の制御を行うようにしてもよい。
【0100】
以下、
図11を参照しながら、ドローン152およびクローラ162を連携させてより効率的に火災を発見するための他の実施形態について説明する。
図11は、他の実施形態による防災システムで実行される移動体制御処理を示すフローチャートである。
図11に示す処理は、ステップS400から開始される。ステップS401では、移動体制御サーバ110は、
図7を参照して説明したように、探索すべきエリアおよび移動パターンを決定する。ステップS402では、移動体制御サーバ110は、ステップS101での決定に基づいて、所定のクローラ162に対し、探索を指示し、ステップS403へ処理を進める。ここで、いずれかのクローラ162の探索の開始が指示される。
【0101】
クローラ162は、待機しており、ステップS402の移動体制御サーバ110からの指示に応答して、ステップS500で、クローラ162側の探索処理が開始される。
【0102】
ステップS500では、クローラ162は、探索を開始する。ステップS501では、クローラ162は、指定エリアを移動中、熱源を発見したか否かを判定する。ステップS501で、熱源を発見していないと判定された場合(NO)は、ステップS501をループする。ステップS501で、熱源を発見したと判定された場合(YES)は、ステップS502へ処理が進められる。なお、ここでの説明では、電力の残量が少なくなった場合に基地に帰還する制御は割愛している。
【0103】
ステップS502では、クローラ162は、熱源の位置を特定し、熱源を視野に収めて撮影する。ステップS503では、クローラ162は、特定した熱源位置(例えばGPS受信機264から特定される位置)および撮像装置261により撮影した撮影画像とともに熱源発見の報告を移動体制御サーバ110に送信する。ステップS504では、クローラ162は、探索を終了し、基地に帰還する。あるいは、電力残量があることを条件として、熱源の周辺の観測を継続してもよいし、報知動作に移行してもよい。
【0104】
移動体制御サーバ110側の処理に戻ると、ステップS403では、移動体制御サーバ110は、熱源発見の報告があったか否かを判定する。ステップS403で、熱源発見の報告が未だない場合(NOの間)は、ステップS403へ処理がループされる。一方、クローラ162が熱源を発見した場合、ステップS503で熱源位置および撮影画像とともに熱源発見の報告が移動体制御サーバ110に送信される。ステップS403で、熱源発見の報告を受信したと判定された場合(YES)は、ステップS404へ処理が進められる。
【0105】
ステップS404では、移動体制御サーバ110は、受信した熱源位置情報および撮影画像情報を管理者と共有するための処理を行う。ステップS405では、移動体制御サーバ110は、所定のドローン152に対し、探索を指示し、ステップS406へ処理を進める。ここで、適切なドローン152の探索の開始が指示される。また、指示には、熱源を検知したクローラ162の位置座標が目的地として設定される。
【0106】
ドローン基地150は、待機しており、ステップS405の移動体制御サーバ110からの指示に応答して、ステップS600で、ドローン152側の探索処理が開始される。
【0107】
ステップS600では、ドローン152は、探索を開始する。ステップS601では、ドローン152は、指定エリアを移動中、指定の目的地である熱源に到着したか否かを判定する。ステップS602で、熱源に到着していないと判定された場合(NO)は、ステップS601をループする。ドローン152の現在位置が、目的地の所定範囲内に入った場合に到着したものと判断される。ステップS601で、指定の熱源に到着したと判定された場合(YES)は、ステップS602へ処理が進められる。なお、ここでの説明では、電力の残量が少なくなった場合に基地に帰還する制御は割愛している。
【0108】
ステップS602では、ドローン152は、撮影および煙濃度の測定を行う。撮影では、可能であれば熱源を視野に収めて撮影したり、熱源とされる位置の周辺を撮影したりすることができる。ステップS603では、ドローン152は、撮影した撮影画像および測定した煙濃度情報とともに周辺観察の報告を移動体制御サーバ110に送信する。ステップS604では、ドローン152は、は、探索を終了し、基地に帰還する。あるいは、電力残量があることを条件として、熱源の周辺の観測を継続してもよいし、報知動作に移行してもよい。
【0109】
移動体制御サーバ110側の処理に戻ると、ステップS406では、移動体制御サーバ110は、撮影画像および煙濃度情報を受信する。ステップS407では、移動体制御サーバ110は、受信した撮影画像情報および煙濃度情報を管理者と共有するための処理を行う。
【0110】
また、好ましい実施形態では、ステップS508では、移動体制御サーバ110は、計画生成部328により、火災対応計画の立案および火災対応計画の提示を行う。移動体制御サーバ110は、上記煙濃度情報などを用いることで、火災の規模を算出することが可能である。煙検出を用いた火災の発生の検知方法としては、例えば、特開2017-004101号公報(特許文献2など)が知られている。ステップS409では、立案した火災対応計画を遂行するための熱源位置までの最短ルートを検索し、管理者に提示し、本処理を終了する。
【0111】
なお、
図11に示す処理は、クローラ162が先行して巡回監視し、クローラ162による熱源発見に応答してドローン152が周辺観察のために派遣されるものとして説明した。しかしながら、これらの関係が逆であってもよい。ドローン152が先行して巡回監視し、ドローン152による赤外線センサを用いた熱源の発見や煙センサを用いた煙濃度が高い箇所の発見に応答してクローラ162が熱源の周辺観察のために派遣されてもよい。
【0112】
上記構成では、クローラ162およびドローン152の両方が位置情報を送信しており、空中のドローン152と地上のクローラ162の位置情報をリンクさせることが可能となる。例えば、火災位置上空を飛行するドローン152の位置情報は、「圏」といったある程度の広がりを含んだ精度となる。一方、クローラ162は、火災発生の位置との相対関係が把握しやすく、位置情報は「点」といえる。これにより、クローラの監視範囲である「点」と上空の監視範囲の「圏」を組み合わせることで、広範囲かつ正確な防災監視が可能となる。
【0113】
その他、上記位置情報のリンクによる、ドローン152およびクローラ162の連携方法としては、例えば、ドローン152の位置情報から、一番近い場所に位置するクローラ162をドローン152の位置情報に接近させるように移動制御してもよい。あるいは、ドローン152の位置情報の周囲にいる複数のクローラ162を、ドローン152の位置に近づけて同時に移動させる移動制御を行うようにしてもよい。これにより、効率的かつ安全に火災の位置特定および火災規模特定の精度を向上させることができる。
【0114】
上述した説明では、移動体250(ドローン152およびクローラ162)は、移動体制御サーバ110による指令の下、自律的に移動するものとして説明した。一方、例えば、初期からまたは自律移動の途中で、管理者または他の操作者が移動体250を操作するように構成してもよい。以下、
図12~
図15を参照しながら、管理者または他の操作者が移動体250を操作する、別の実施形態について説明する。なお、
図1~
図11に示した実施形態と同様の構成については、割愛し、以下、相違点を中心に説明する。
【0115】
図12は、別の実施形態による防災システム400の全体構成を示す図である。
図12に示すように、防災システム400は、移動体制御サーバ410と、気象情報提供サーバ420と、管理者端末430と、ドローン452と、クローラ462とに加えて、ネットワーク402に接続される操作装置であるハプティック・デバイス470を備える。
【0116】
ハプティック・デバイス470は、操作者Oが装着する表示装置であるヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)472に接続される。HMD472には、例えば移動体452,462から送信される撮影画像や、移動体452,462の各種センサの情報、動作状況に関する情報などが表示される。ハプティック・デバイス470の操作者Oは、HMD472に表示される表示画像を見ることにより、遠隔にある移動体452,462の状況を視覚的に把握しながら操作が可能である。
【0117】
HMD472は、方向センサおよび表示画面を有する。HMD472が操作者Oの頭部に固定されており、方向センサは、操作者Oの頭部とともに動き、操作者Oの頭部が動く方向を検知する。表示画面には、各種表示画像が表示される。表示画面は、操作者Oの目に対向するように画像を表示する。HMD472は、方向センサの検知結果に連動させて、表示画像の表示位置を変更することが可能である。なお表示装置は、HMD472に限定されるものではなく、デスクトップ型のディスプレイにおいてマウスなどのポインティングデバイスやキーボードを用いて表示位置を変更させるものであってもよい。
【0118】
本実施形態では一例として、表示画面に、移動体450の周囲の撮影画像を表示させる例を説明する。ハプティック・デバイス470のハンドル部によって操作者Oにより入力される位置・姿勢と同期した位置にカーソルが表示される。そして、HMD472を装着した操作者Oの頭部の動きに連動させて三次元的な表示位置は変更される。これにより操作者Oは、周囲の環境と移動体452,462を3次元的に位置や角度を変えながら見て操縦可能である。
【0119】
上記ハプティック・デバイス470により、例えば、測距センサにより障害物との距離が近い場合にコントローラを押し戻す触覚をユーザに与えたり、移動体452,462に風速センサを備えさせた場合に、風力センサからの風速検知の結果に基づき、風速が強い場合にはコントローラを押し戻す触覚をコントローラに与えたりするなどのハプティック・フィードバックを行うことができる。なお、ハプティック・デバイス470のハードウェア構成については、
図2に示すようなコンピュータと同様のハードウェア構成を備えればよい。
【0120】
以下、別の実施形態による防災システム400の機能構成500について、
図13に示す機能ブロック図に基づいて説明する。なお、
図13には、移動体制御サーバ410の機能ブロック510と、移動体452,462の機能ブロック550と、ハプティック・デバイス470の機能ブロック580が示されている。
【0121】
本実施形態による移動体制御サーバ410の機能ブロック510および移動体452,462の機能ブロック550は、
図5に示したものと同様であり、以下、ハプティック・デバイス470の機能ブロック580について説明する。ハプティック・デバイス470の機能ブロック580は、
図13に示すように、手動操作制御部582と、入力受付部590と、通信部592とを含み構成される。
【0122】
入力受付部590は、操作者による手動操作の指示を受け付ける。手動操作制御部582は、操作デバイス表示部584と、デバイス決定部586と、操作変換部588とを含み構成される。
【0123】
操作デバイス表示部584は、入力受付部590により手動操作指示を受け付けると、予め登録された操作デバイス(キーボード、ポインティングデバイス、コントローラ、ハプティック・デバイス470)を表示する。ドローン452やクローラ462の制御において、繊細な操作が必要な領域に対しては、事前にハプティック・デバイス470などの適切なデバイスが登録されてもよい。そして、移動体452,462がその領域に入った場合にその推奨デバイスを表示してもよい。
【0124】
デバイス決定部586は、入力受付部590からのデバイスの選択を受け付けると、選択されたデバイスの操作を操作変換部588に出力する。操作変換部588は、入力受付部590からのデバイス操作を受け付けると、デバイス決定部586から入力されたデバイスに応じて、移動体452,462を駆動制御するために制御信号に変換し、制御信号を通信部592に出力する。
【0125】
通信部592は、入力された制御信号を移動体452,462へ送信する。なお、ハプティック・デバイス470と、移動体452,462とは、ネットワーク402を介して直接通信してもよいし、移動体制御サーバ410を経由して通信を行ってもよい。
【0126】
図14は、別の実施形態によるハプティック・デバイスで実行される移動体452,462の操作処理を示すフローチャートである。
図14に示す処理は、ステップS700から開始される。
【0127】
ステップS701では、ハプティック・デバイス470は、入力受付部590により、手動操作指示を受け付けたか否かを判定する。ステップS701では、手動操作指示を受けるまでの間(NOの間)、ステップS701をループさせる。ステップS701で、手動操作指示を受け付けたと判定された場合(YES)は、ステップS702に進められる。
【0128】
ステップS702では、手動操作デバイスの選択画面を表示する。ステップS703では、操作デバイス表示部584により、予め登録された操作デバイス(キーボード、ポインティングデバイス、コントローラ、ハプティック・デバイス470)を表示する。
図15は、各種操作デバイスに対して推奨エリアを保持するテーブルを示す。上述したように、ドローン452やクローラ462の制御において、繊細な操作が必要な領域に対しては、例えば、
図15に示すように事前にハプティック・デバイス470などの適切なデバイスが登録されてもよい。そして、移動体452,462がその領域に入った場合にその推奨デバイスを提示してもよい。
【0129】
ステップS703で、ハプティック・デバイス470は、入力受付部590からデバイスの選択を受け付けると、その選択結果を操作変換部588に出力する。ステップS704では、ハプティック・デバイス470は、入力受付部590からデバイス操作を受け付けると、操作変換部588により、デバイス決定部586から入力されたデバイスに応じて移動体452,462を制御する制御信号に変換し、通信部592に出力する。ステップS705では、ハプティック・デバイス470は、通信部592により、制御信号を移動体へ送信する。
【0130】
ステップS706では、手動操作終了指示を受け付けたか否かを判定し、手動操作終了指示を受け付けるまで、ステップS704をループする。ステップS706で、手動操作終了指示を受け付けた判定された場合(YES)は、ステップS707で、本処理を終了する。
【0131】
以上、本開示の実施形態について説明したが、上述した実施形態によれば、移動体を用いて、事象が発生する可能性の高いエリアを探索し、事象の発生を効率的かつ可能な限り早期に発見することを可能とする移動体制御システム、情報処理装置、移動体およびプログラムを提供することが可能となる。
【0132】
上述した実施形態によれば、過去の森林火災の履歴および天候情報から優先的に巡回監視を行うべきエリアを特定し、好ましくは自動飛行や自動走行により、森林火災などの事象の発生を移動体によって検知することが可能となる。過去の森林火災の履歴および天候情報から森林火災などの事象の発生の可能性が高いエリアを優先的に巡回監視することにより、多くの人的な工数をかけず火災発生の元を特定することができる。
【0133】
広大な森林面積を地面のレイヤーで、人的に巡回監視して初期発見することが非効率的かつ困難である。また、森林が密集している場合には、初期の段階では無人飛行体上空から火種を見つけ出すことが困難な場合がある。また、天候状況によっては無人飛行体が安定して飛行できない場合も発生し得る。
【0134】
移動体として、無人飛行体を用いることにより、すべての気象条件下では無いが、地上探索と比較してはるかに効率よく全体を俯瞰的に監視することが可能となり、効果を飛躍的に高めることができる。上空監視においては複数の無人飛行体を組み合わせて運用活用することで、航空機よりもはるかに安価にかつ簡便に広大な面積を監視することが可能となる。また、無人地上移動体を組み合わせて用いることにより、無人地上移動体の監視範囲である「点」と、無人飛行体による上空の監視範囲の「圏」を組み合わせることで、広範囲かつ正確な防災監視が可能となる。
【0135】
上述した実施形態による防災システムによれば、大規模災害につながる森林火災や山火事などの事象の発生を可能な限り早期に発見することが可能となる。なお、本実施形態による移動体制御システムは、森林火災や山火事などの事象の発生に対して好適に適用可能であるが、防災を要する事象に一般に、本開示の移動体制御システムを適用してもよいことは言うまでもない。
【0136】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0137】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 互いにネットワークを介して通信する、1以上の移動体と、前記1以上の移動体を制御する情報処理装置とを含む移動体制御システムであって、前記情報処理装置は、
前記1以上の移動体による探索の対象となるエリアの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、前記エリアに関する気象情報とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記エリア情報および前記気象情報に基づいて、探索する指定エリアを決定するエリア決定部と、
前記エリア決定部により決定された指定エリアに基づいて、前記1以上の移動体のうちの少なくとも1つの移動体の移動を制御する制御部と
を含み、前記移動体は、
前記指定エリアを移動中、事象の発生を検知する検知部と、
前記検知部により事象の発生を検知した場合に、通知を行う通知部と
を含む、移動体制御システムである。
<2> 前記エリア決定部は、
前記記憶部に記憶されたエリア情報および気象情報に基づいて、探索の候補となる候補エリアを決定し、
前記候補エリアに対するユーザの選択を受け付けた場合に選択された前記候補エリアを前記指定エリアとして決定する、<1>に記載の移動体制御システムである。
<3> 前記事象の発生は、火災の発生であり、
前記情報処理装置の前記記憶部は、前記エリア情報としての過去の火災発生履歴の情報と、前記気象情報としての天候および湿度の情報とを記憶し、
前記エリア決定部は、前記過去の火災発生履歴の情報と、前記天候および湿度の情報とに基づいて、前記指定エリアを決定する、<1>または<2>に記載の移動体制御システムである。
<4>
前記エリア決定部により決定される前記指定エリアにおける移動パターンを決定する移動パターン決定部
をさらに含む、<1>~<3>のいずれかに記載の移動体制御システムである。
<5> 前記移動体は、
残電力量を管理する電力管理部
を含み、前記移動体制御システムは、
前記少なくとも1つの移動体の前記残電力量が所定条件を満たす場合に、前記少なくとも1つの移動体の探索を中断して充電基地に戻し、充電を行わせ、前記探索の中断の位置から探索を再開させる制御部
をさらに含む、<1>~<4>のいずれかに記載の移動体制御システムである。
<6> 前記事象の発生は、火災の発生であり、
前記移動体は、
温度センサと、
撮像装置、GPS受信機および煙センサからなる群から選択された少なくとも1つのモジュールと
を含み、前記通知部は、前記温度センサが所定以上の温度を検知した場合に、前記GPS受信機が測位した位置情報、前記撮像装置により撮像された画像情報および前記煙センサにより検知された煙情報からなる群から選択された少なくとも1つの情報を、前記情報処理装置に送信し、
前記情報処理装置は、
前記少なくとも1つの移動体から送信される前記少なくとも1つの情報に基づいて、前記火災の発生の位置および規模を特定する火災特定部
を含む、<1>~<5>のいずれかに記載の移動体制御システムである。
<7>
前記移動体は、
前記移動体の位置を特定する位置特定部と、
前記情報処理装置から送信される前記指定エリアの情報を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記指定エリアにおいて、前記位置特定部が特定した位置情報に基づいて駆動制御する駆動制御部と
をさらに含む、<1>~<6>のいずれかに記載の移動体制御システムである。
<8> 前記1以上の移動体は、少なくとも1つの無人飛行体と少なくとも1つの無人地上移動体とを含み、前記無人地上移動体と前記無人飛行体とは、所定の距離内にある場合に互いに通信する、<1>~<7>のいずれかに記載の移動体制御システムである。
<9> 前記1以上の移動体は、少なくとも1つの無人飛行体と、少なくとも1つの無人地上移動体とを含み、前記移動体各々は、
自身の位置を特定する位置特定部
を含み、前記通知部は、前記位置特定部により特定された位置を示す位置情報を前記情報処理装置に送信し、前記情報処理装置の前記制御部は、前記無人飛行体または前記無人地上移動体の位置情報に基づいて、前記無人地上移動体または前記無人飛行体の位置を制御する、<1>~<8>のいずれかに記載の移動体制御システムである。
<10> 前記エリア決定部は、所定のアルゴリズムに基づいて、前記少なくとも1つの移動体に対し探索を指定する前記指定エリアを決定する、<1>~<9>のいずれかに記載の移動体制御システムである。
<11> 前記事象の発生は、火災の発生であり、
前記移動体制御システムは、さらに、
前記火災の発生の通知に応答して、火災対応計画および火災対応計画の遂行のためのルートを生成する計画生成部
をさらに含む、<1>~<10>のいずれかに記載の移動体制御システムである。
<12>
前記少なくとも1つの移動体を操作する操作部
を含む、<1>~<12>のいずれかに記載の移動体制御システムである。
<13>
前記操作部は、ハプティック・デバイスであることを特徴とする、<12>に記載の移動体制御システムである。
<14> 前記1以上の移動体は、無人飛行体および無人地上移動体のうちの少なくとも1つを含む、<1>~<13>のいずれかに記載の移動体制御システム。
<15> 互いにネットワークを介して1以上の移動体と通信し、前記1以上の移動体を制御する情報処理装置であって、前記情報処理装置は、
前記1以上の移動体による探索の対象となるエリアの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、前記エリアに関する気象情報とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記エリア情報および前記気象情報に基づいて、探索する指定エリアを決定するエリア決定部と、
前記エリア決定部により決定された指定エリアに基づいて、前記1以上の移動体のうちの少なくとも1つの移動体の移動を制御する制御部と、
前記少なくとも1つの移動体から送付される、前記指定エリアを移動中に検知した事象の発生の情報を受信する受信部と、
前記事象の発生を受信した場合に、管理者に対し事象の発生を報告する報告部と
を含む、情報処理装置である。
<16>
ネットワークを介して情報処理装置と通信し、前記情報処理装置の制御の下、動作する移動体であって、
自身の位置を特定する位置特定部と、
探索の対象となるエリアの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、前記エリアに関する気象情報とに基づいて決定された指定エリアに基づく前記情報処理装置からの指示に応答して、前記位置特定部により特定された位置情報に基づいて移動するよう駆動制御する駆動制御部と、
前記指定エリアを移動中、事象の発生を検知する検知部と、
前記検知部により事象の発生を検知した場合に、通知を行う通知部と
を含む、移動体である。
<17>
互いにネットワークを介して1以上の移動体と通信し、前記1以上の移動体を制御する情報処理装置を実現するためのプログラムであって、コンピュータに、
前記1以上の移動体による探索の対象となるエリアの過去の事象発生履歴情報を含むエリア情報と、前記エリアに関する気象情報とを記憶する記憶部、
前記記憶部に記憶された前記エリア情報および前記気象情報に基づいて、探索する指定エリアを決定するエリア決定部、
前記エリア決定部により決定された指定エリアに基づいて、前記1以上の移動体のうちの少なくとも1つの移動体の移動を制御する制御部
前記少なくとも1つの移動体から送付される、前記指定エリアを移動中に検知した事象の発生の情報を受信する受信部、および、
前記事象の発生を受信した場合に、管理者に対し事象の発生を報告する報告部
として機能させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0138】
100,400…防災システム、102,402…ネットワーク、110,410…移動体制御サーバ、120,420…気象情報提供サーバ、130,430…管理者端末、150,450…ドローン基地、152,452…ドローン、160,460…クローラ基地、162,462…クローラ、310,350,510,550,580…機能ブロック、312…UI部、314…決定部、316…エリア決定部、318…移動パターン決定部、320…制御部、322…気象情報取得部、324…情報記憶部、326…火災特定部、328…計画生成部、352…受信部、354…制御部、356…検知部、358…通知部、360…電力管理部、362…位置特定部、330…通信部、ハプティック・デバイス470、472…HMD、582…手動操作制御部、584…操作デバイス表示部、586…デバイス決定部、588…操作変換部、590…入力受付部、592…通信部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0139】
【特許文献1】特開2021-166074号公報
【特許文献2】特開2017-004101号公報