(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134407
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】光検出素子、眼球の傾き検出装置および網膜投影型表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20240926BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240926BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L31/10 E
G02B27/02 Z
G01B11/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044698
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細野 信人
【テーマコード(参考)】
2F065
2H199
5F149
【Fターム(参考)】
2F065AA37
2F065BB07
2F065CC16
2F065FF44
2F065GG04
2F065HH04
2F065HH12
2F065JJ01
2F065JJ08
2F065JJ15
2H199CA06
2H199CA29
2H199CA32
2H199CA47
2H199CA87
2H199CA96
5F149AA14
5F149AB01
5F149BA09
5F149BA30
5F149CB05
5F149DA11
5F149DA44
5F149FA05
5F149GA04
5F149JA11
5F149LA02
5F149LA03
5F149XB13
5F149XB43
(57)【要約】
【課題】主物質を変えずにバンドギャップエネルギーを変化させる。
【解決手段】ヘテロ構造を有する光検出素子であって、ゲート電極と、前記ゲート電極の一方の面側に設けられる絶縁層と、前記絶縁層と接続されたソース電極と、前記絶縁層と接続されたドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極による電圧印加でキャリアを誘起させるチャネル層と、前記チャネル層とともに量子トンネル効果が発生させるトンネルバリア層と、前記トンネルバリア層上において前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられ、原子層状材料を含む光吸収層と、を備え、前記トンネルバリア層は、複数の混合組成物である。
【選択図】
図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ構造を有する光検出素子であって、
ゲート電極と、
前記ゲート電極の一方の面側に設けられる絶縁層と、
前記絶縁層と接続されたソース電極と、
前記絶縁層と接続されたドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極による電圧印加でキャリアを誘起させるチャネル層と、
前記チャネル層とともに量子トンネル効果が発生させるトンネルバリア層と、
前記トンネルバリア層上において前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられ、原子層状材料を含む光吸収層と、
を備え、
前記トンネルバリア層は、複数の混合組成物である、
ことを特徴とする光検出素子。
【請求項2】
前記トンネルバリア層は、多元化合物成膜した層を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光検出素子。
【請求項3】
前記混合組成物は、
TaOxとSiO2、HfOxとSiO2、又はTiOxとSiO2の組み合わせの何れかを主材料とする
ことを特徴とする請求項1に記載の光検出素子。
【請求項4】
前記トンネルバリア層の膜厚は、5~20nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の光検出素子。
【請求項5】
前記ソース電極と前記ドレイン電極との一部は、前記トンネルバリア層の一部を覆う、
ことを特徴とする請求項1に記載の光検出素子。
【請求項6】
前記光吸収層は、前記トンネルバリア層の少なくとも一部を覆う、
ことを特徴とする請求項1に記載の光検出素子。
【請求項7】
光源と、
前記光源から射出された光を分割する光分割部と、
請求項1ないし6の何れか一項に記載の光検出素子と、を備え、
前記光検出素子は、前記光分割部で分割された光の少なくとも1つを受光する、
ことを特徴とする眼球の傾き検出装置。
【請求項8】
光源と、
請求項1ないし6の何れか一項に記載の光検出素子と、を備え、
前記光検出素子は、前記光源から射出された光の少なくとも一部を受光し、前記光の少なくとも一部を透過させる
ことを特徴とする眼球の傾き検出装置。
【請求項9】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の光検出素子を備える、
ことを特徴とする網膜投影型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出素子、眼球の傾き検出装置および網膜投影型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を電気に変換する計測デバイスとしてフォトディテクター(光検出器)がある。光電効果を利用した光電子増倍管(フォトマル)や光照射による電気抵抗変化を利用した硫化カドミウム素子などの光電動素子、半導体のpn接合を利用した光起電力型のフォトダイオードが、光量計測、イメージ計測、光通信、光信号検出の分野で広く使われており、これらの技術はすでに知られている。
【0003】
近年、光検出層としてグラフェン単層または積層グラフェンを用いてヘテロ構造とした光検出器が開示されており、これらの技術はすでに知られている。これらの技術によれば、グラフェンの持つ特有の電子移動度、電気伝導度、量子トンネル効果により、広範囲の波長検出が可能と言われている。
【0004】
特許文献1には、光吸収層に入射する光に応答して、光吸収層からチャネル層へのホットキャリアトンネリングによってチャネル層の電気コンダクタンスが変化する二層ヘテロ構造に基づく光検出器が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1によれば、バンドギャップエネルギーは単一物質の物性値で決まるため、検出する光の波長域を変更する場合、検出する光の波長域に対応した特性(バンドギャップ)を有する物質そのものを変更する必要があった。また、従来技術によれば、物質により決定される波長域が広いため、特定波長の検出に絞り込むことができなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、主物質を変えずにバンドギャップエネルギーを変化させることができる光検出素子、眼球の傾き検出装置および網膜投影型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ヘテロ構造を有する光検出素子であって、ゲート電極と、前記ゲート電極の一方の面側に設けられる絶縁層と、前記絶縁層と接続されたソース電極と、前記絶縁層と接続されたドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられ、前記ソース電極および前記ドレイン電極による電圧印加でキャリアを誘起させるチャネル層と、前記チャネル層とともに量子トンネル効果が発生させるトンネルバリア層と、前記トンネルバリア層上において前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられ、原子層状材料を含む光吸収層と、を備え、前記トンネルバリア層は、複数の混合組成物である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、主物質を変えずにバンドギャップエネルギーを変化させることができる光検出素子、眼球の傾き検出装置および網膜投影型表示装置を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1-1】
図1-1は、第1の実施の形態にかかる光検出素子の一例を示す断面図である。
【
図1-2】
図1-2は、光検出素子の一例を示す上面図である。
【
図2-1】
図2-1は、原子堆積成膜法(ALD法)の多元化合物成膜パルスを示す図である。
【
図2-2】
図2-2は、原子堆積成膜法(ALD法)の多元化合物成膜パルスを示す図である。
【
図3】
図3は、第2の実施の形態にかかる眼球の傾き検出装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3において眼球がある方向から光学ユニットを視た下面図である。
【
図5】
図5は、
図4のIII-III切断線における断面図である。
【
図6】
図6は、
図4のIII-III切断線における別の断面図である。
【
図7】
図7は、第3の実施の形態にかかる網膜投影型表示装置の構成の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、光検出素子、眼球の傾き検出装置および網膜投影型表示装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1-1は、第1の実施の形態にかかる光検出素子10の一例を示す断面図である。
図1-2は、光検出素子10の一例を示す上面図である。本実施形態にかかる光検出素子10は、光検出層としてグラフェンのヘテロ構造を用いたグラフェントランジスタである。
【0012】
図1-1および
図1-2に示すように、本実施の形態にかかる光検出素子10は、基板1、ゲート電極7、絶縁膜2(絶縁層の一例)、チャネル層3、トンネルバリア層8、ソース電極4、ドレイン電極5、光吸収層6を備える。
【0013】
基板1は、導電性を有するもの、例えば、高濃度にドーピングされたシリコン(Si)基板であっても良い。なお、基板1は、シリコン(Si)基板に限定するものではなく、導体であれば良い。例えば、ガラスベースで電極をゲート電極とする方式と、電極を排除しドーピングシリコンを用いてそれをバックゲートとする方式がある。
【0014】
ソース電極4およびドレイン電極5は、電圧Vdsを印加した状態で、基板1に電圧Vgsが印加されることで、チャネル層3にキャリアを誘起させて、ソースドレイン間電流Idsが流れる。光検出素子10は、電圧Vgsの値によって、ソースドレイン間電流Idsを変調することができ、これにより、トランジスタ(バックゲート型トランジスタ)として動作する。
【0015】
チャネル層3は、ソース電極4とドレイン電極5との間に設けられる。チャネル層3は、グラフェンである。なお、チャネル層3は、グラフェン以外にも、グラフェンと同様の原子層状材料であっても良い。例えば、二硫化モリブデン(MoS2)、二セレン化タングステン(WSe2)等に代表される遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC:Transition Metal DiChalcogenide)、黒リン、シリセン、ゲルマネンは、原子層状のため下地膜からの影響が大きいと予想されるため、グラフェンと同様の効果が期待できる。
【0016】
絶縁膜2は、絶縁部の一例である。絶縁膜2は、酸化シリコン(SiOx)膜とする。なお、絶縁膜2がSiOxの例を示したが、積層させる膜、エッチャントを適切に選択することで、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ハフニウム(HfOx)、酸化チタン(TiOx)、酸化タンタル(TaOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化イットリウム(YOx)等、ALD法で形成可能な酸化膜であれば形成可能である。また、トランジスタの絶縁部として絶縁膜2を形成する場合、絶縁膜2は、高誘電率を持つ酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ハフニウム(HfOx)等が好ましい。凹凸構造を有する絶縁膜2の形成方法としては、ALD法以外にも、陽極酸化法等で凹凸構造を形成しても良い。
【0017】
ソース電極4およびドレイン電極5は、例えば、Au、Cr/Au、Ti/Au、Ni/Au、Pd/Au、Cr/Ni/Au、Ti/Ni/AuやCr/Pd/Au、Ti/Pd/Auとする。CrおよびTiは、基板1との密着層として機能する。また、NiおよびPdは、例えば、チャネル層3がグラフェンだった場合、接触抵抗の低減層として機能する。
【0018】
トンネルバリア層8は、原子堆積成膜法(ALD法)による多元化合物成膜とする。多元化合物成膜とは、ナノラミネート構造を作らないよう1サイクル~数サイクルでソースラインを切り替えて材料組成を変えた成膜のことである。トンネルバリア層8は、膜厚を5~20nm程度とすることが好ましい。また、トンネルバリア層8は、膜厚が上述の範囲内且つ光透過性が90%以上であることが好ましい。トンネルバリア層8の膜厚を上記範囲内とすることで、グラフェンの持つ特有の量子トンネル効果を十分に得ることができる。加えて、トンネルバリア層8の膜厚を薄くすることで、光検出素子10の光透過性を向上させることができる。
【0019】
トンネルバリア層8の一部は、ソース電極4およびドレイン電極5の一部によって覆われている。
【0020】
光吸収層6は、ソース電極4とドレイン電極5との間に設けられ、試料と接触可能なグラフェン(原子層状材料の一例)を含む接触部の一例である。光吸収層6は、グラフェンであっても良いが、グラフェン以外にも、グラフェンと同様の原子層状材料であっても良い。例えば、二硫化モリブデン(MoS2)、二セレン化タングステン(WSe2)等に代表される遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC:Transition Metal DiChalcogenide)、黒リン、シリセン、ゲルマネンは、原子層状のため下地膜からの影響が大きいと予想されるため、グラフェンと同様の効果が期待できる。また、光吸収層6は、光透過性を得られる程度に薄く形成されていることが好ましい。例えば、光吸収層6としてグラフェンを用いる場合は、グラフェンが単層(1原子層)であり、光透過率が90%以上であることが好ましい。
【0021】
光吸収層6は、トンネルバリア層8の少なくとも一部を覆っている。光吸収層6、及びトンネルバリア層8が、十分な光透過性を得られる程度に膜厚が薄い構成であることにより、光を透過可能な光検出素子10を実現することができる。
【0022】
また、
図1-1および
図1-2に示すように、本実施の形態にかかる光検出素子10によれば、ゲート電極7が基板1の表面に配置されるため、光検出素子10の集積化および実装が容易になる。また、光検出素子10をアレイ化する場合に、個々の素子(光検出素子10)に個々のゲート電圧を印加可能であり、素子毎に基準電圧(ディラック電圧)の制御が可能である等の利点がある。
【0023】
本実施の形態にかかる光検出素子10によれば、光励起された光吸収層6にホットキャリアが生じる。ソース電極4とドレイン電極5との電極間の印加により、非対称なエネルギーバンドが生まれ、トンネルバリア層8とチャネル層3で量子トンネル効果が発生する。これにより、チャネル層3の下部に電荷が蓄積する。また、ゲート電極7は、電界を印加することにより、チャネル層3に流れる電流の最適化を図る。
【0024】
ところで、従来の光検出を目的としたグラフェンのヘテロ構造を用いた透明光検出デバイスにおいて、光吸収波長は、バンドギャップエネルギー(ev)によって異なる。従来、バンドギャップエネルギーは単一物質の物性値で決まるため、検出する光の波長域を変更する場合、検出する光の波長域に対応した特性(バンドギャップ)を有する物質そのものを変更する必要があった。また、従来のグラフェンのヘテロ構造を用いた透明光検出デバイスにおいては、物質により決定される波長域が広いため、特定波長の検出に絞り込むことができなかった。例えば、Ta2O5のバンドギャップは3.8ev~5.3evであり、光吸収波長域はE=hν=hc/λ[J]の関係より233nm~326nmであり、検出する光の波長域を変更することができない。
【0025】
また、光吸収層6、トンネルバリア層8、チャネル層3は透明であれば光路中に配置することができるが、物質によっては透明にはならない、という問題がある。
【0026】
そこで、本実施形態の光検出素子10においては、トンネルバリア層8の構成材料として原子堆積成膜法(ALD法)により成膜された多元化合物成膜を用いる。本実施形態の光検出素子10においては、多元化合物成膜を用いることで、主物質を変えずにバンドギャップエネルギー(ev)を変化させることができる。このため、本実施形態の光検出素子10においては、検出する光の波長域を変更する場合、検出する光の波長域に高感度に検出できる波長域の特性(バンドギャップ)を有する物質に変更することができる。
【0027】
さらに、本実施形態の光検出素子10においては、トンネルバリア層8の構成材料として原子堆積成膜法(ALD法)の多元化合物成膜を用いることで、物質の混合比割合により、任意にバンドギャップを変えることができ、検出する光の波長域の感度を変えることができる。
【0028】
トンネルバリア層8のバンドギャップとグラフェンであるチャネル層3の持つ特有の量子トンネル効果により、光の吸収波長範囲が決まる。一般に、チャネル層3にグラフェンを用いることにより広範囲検出が可能と言われている。ただし、適切なバンドギャップ(トンネルバリア層8)の設計が吸収波長に影響があることは先行研究からも明らかであり、このトンネルバリア層8の主物質を変えずにバンドギャップエネルギー(ev)を変化させることは、光の吸収波長を変えることができ、優位な効果がある。
【0029】
下記に一般的な酸化物材料でのバンドギャップと光吸収波長を示す。
Ta2O5:3.8~5.3eV → 233~326nm
TiO2 :3.2eV → 387.5nm
HfO2 :6eV → 206nm
SiO2 :8.9eV → 139nm
Fe2O3:2ev → 620nm
【0030】
本実施形態の光検出素子10においては、トンネルバリア層8のバンドギャップエネルギーの変更を、原子堆積成膜法(ALD法)の混合による多元化合物成膜にて実施する。ここでは、TaOxとSiO2を例に説明するが、これに限るものではない。他に、HfOxとSiO2、TiOxとSiO2でも、トンネルバリア層8のバンドギャップエネルギーを変えることによって、高感度に検出できる波長帯を変えることができる。
【0031】
ここで、
図2-1および
図2-2は原子堆積成膜法(ALD法)の多元化合物成膜パルスを示す図である。
図2-1および
図2-2は、Ta
2O
5とSiO
2の多元化合物成膜パルスを示すものである。
【0032】
図2-1に示す多元化合物成膜の例は、Ta
2O
5の1原子上にSiO
2の1原子を交互に製膜した例を示すものである。具体的には、Taプリカーサを投入し、パージする(不要なものを排気する)。次いで、O
3を投入して酸化反応を実施した後、パージする。次いで、Siプリカーサを投入し、パージする。次いで、O
3を投入して酸化反応を実施した後、パージする。
【0033】
図2-2に示す多元化合物成膜の例は、それぞれのプリカーサ(前駆体)を投入後、一括で酸化反応を実施した例を示すものである。具体的には、Taプリカーサを投入し、Siプリカーサを投入した後、パージする。次いで、O
3を投入して一括で酸化反応を実施した後、パージする。
【0034】
図2-1および
図2-2に示すようなステップを1サイクルとし、このサイクルの数を調整すれば希望する膜厚を成膜することができる。このようにすることで、AxByCzの結合状態となり、トンネルバリア層8の物性値を積極的に変えることができる。
【0035】
このように原子堆積成膜法(ALD法)の混合による多元化合物成膜で製膜されたものは、材料混合比を変更することによって、バンドギャップエネルギー(ev)を変化させることができる。
【0036】
このように本実施形態によれば、原子堆積成膜法(ALD法)の多元化合物成膜を用いることで、主物質を変えずにバンドギャップエネルギーを変化させることができる。さらにこの方法では、物質の混合比割合により、混合物質由来による範囲内ではあるが、任意のバンドギャップを作ることができる。このことにより、高感度に検出できる波長帯を変更することができる。
【0037】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0038】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の光検出素子を、眼球の傾き検出装置における受光部として用いる点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0039】
ここで、
図3は第2の実施の形態にかかる眼球の傾き検出装置150の全体構成の一例を示す図、
図4は
図3において眼球30がある方向から光学ユニット50を視た下面図、
図5は
図4のIII-III切断線における断面図である。
【0040】
眼球の傾き検出装置150は、光学ユニット50と、反射集束部材60と、眼鏡型支持体70と、処理部100と、を有する。眼鏡型支持体70は、レンズ71と、眼鏡フレーム72と、蔓部73と、継手74と、を含む。眼鏡フレーム72はレンズ71を支持する。継手74は、眼鏡フレーム72と蔓部73とを傾斜可能に接続する。蔓部73は、光学ユニット50を内部に収容することにより保持する。眼鏡型支持体70は、光学ユニット50に含まれる第1支持体を保持する保持部材の一例である。
【0041】
眼鏡型支持体70は、人間の頭部に装着可能である。眼鏡型支持体70が装着されると、光学ユニット50は、装着した人間の眼球30に近接した位置(眼前)に配置される。光学ユニット50は、光源11、光出射部13、第1受光部14、第2受光部12、ビームスプリッタ24(光源11から射出された光を分割する光分割部の一例)等を含むユニットである。光学ユニット50は、処理部100からの駆動信号Drに応じて光源11が射出するレーザ光L0を、光出射部13を通して反射集束部材60に向けて照射する。
【0042】
光検出素子10を適用する第1受光部14は、眼球30の瞳孔31による反射光L2の光強度を受光し、視線方向の検出に用いる受光信号Sを出力する。
【0043】
光検出素子10を適用する第2受光部12は、光源11から射出された光のうち、ビームスプリッタ24により分割された光の一部を受光し、光源11から出射される光量の制御に用いる光量監視信号Mを出力する。
【0044】
ここで、
図6は
図4のIII-III切断線における別の断面図である。特に、第2受光部12として第1の実施の形態の光検出素子を用いる場合、
図6に示すように、第2受光部12を光源11から射出され眼球30に照射される光の光路内に設けることができる。これにより、
図3に示すビームスプリッタ24などの構成を用いずに第2受光部12を配置することができるため、部品点数の低減及び装置全体の小型化を実現することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、光学ユニット50および処理部100を眼鏡型支持体70の蔓部73に収容する例を示すが、これに限定されるものではなく、ヘッドマウントディスプレイやヘッドギア型の保持構造体等を用いてもよい。
【0046】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0047】
第3の実施の形態は、第2の実施の形態の眼球の傾き検出装置150を、網膜投影型表示装置に備える点が、第2の実施の形態と異なる。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態または第2の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態または第2の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0048】
ここで、
図7は第3の実施の形態にかかる網膜投影型表示装置200の構成の一例を説明する図である。網膜投影型表示装置200は、RGB(Red、Green、Blue)レーザ光源61と、走査ミラー62と、平面ミラー63と、ハーフミラー64と、画像生成部65と、眼球の傾き検出装置150と、を有する。網膜投影型表示装置200は、網膜投影型表示装置200を装着した人間の網膜に画像を投影して表示する。網膜投影型表示装置200は、ヘッドマウントディスプレイの一例である。
【0049】
眼球の傾き検出装置150は、眼球30の傾き、つまり視線方向のフィードバック信号Fdを画像生成部65に送信する。画像生成部65は、走査ミラー62の振れ角制御機能と、RGBレーザ光源61の発光制御機能とを有している。また、画像生成部65は、眼球の傾き検出装置150から視線方向のフィードバック信号Fdを受信する。眼球の傾き検出装置150により取得された視線情報Eに応じて制御信号Ctを出力することにより、走査ミラー62の振れ角と、RGBレーザ光源61の発光を制御し、画像の投影角度、または画像内容を書き換える。これにより、視線方向の変化に追従(アイトラッキング)した画像を網膜33上に形成できる。
【0050】
なお、本実施形態では、網膜投影型表示装置200をウェアラブル端末であるヘッドマウントディスプレイとした一例を示したが、これに限定されない。例えば網膜投影型表示装置200は、人間の頭部に直接装着させるだけでなく、固定部等の部材を介して間接的に人の頭部に装着させるもの(頭部装着型表示装置)であってもよい。また、左右眼用に一対の網膜投影型表示装置200を設けた両眼式の網膜投影型表示装置としてもよい。
【0051】
本明細書において用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0052】
2 絶縁層
3 チャネル層
4 ソース電極
5 ドレイン電極
6 光吸収層
7 ゲート電極
8 トンネルバリア層
10 光検出素子
11 光源
24 光分割部
150 眼球の傾き検出装置
200 網膜投影型表示装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】