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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134435
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】複合多芯ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20240926BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01B7/00 310
H01B7/18 D
H01B7/18 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044740
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢口 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】黄 得天
(72)【発明者】
【氏名】渡部 考信
(72)【発明者】
【氏名】工藤 紀美香
【テーマコード(参考)】
5G309
5G313
【Fターム(参考)】
5G309KA02
5G313AB01
5G313AB05
5G313AC03
5G313AC07
5G313AD07
5G313AE08
(57)【要約】
【課題】細径でかつ捻りや曲げに対する耐久性が高い複合多芯ケーブルを提供する。
【解決手段】複合多芯ケーブル1は、同軸線2と絶縁電線3を含む複数本の電線4を2層以上に撚り合わせて構成されたケーブルコア5と、ケーブルコア5の周囲を覆う一括シールド層7と、一括シールド層7の周囲を覆うシース8と、を備え、ケーブルコア5の空隙率が30%以下であり、一括シールド層7が、ケーブルコア5の撚り方向と同じ方向に複数本の金属素線を螺旋状に巻き付けて構成されており、ケーブルコア5の最外層を構成する電線4の撚りピッチP1と、最外層よりも一層内側の層の電線4の撚りピッチP2との比率P2/P1が、0.3以上0.6以下であり、ケーブルコア5の最外層を構成する電線4の撚りピッチP1と、一括シールド層7の金属素線の巻きピッチP3との差が2mm以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸線と絶縁電線を含む複数本の電線を2層以上に撚り合わせて構成されたケーブルコアと、
前記ケーブルコアの周囲を覆う一括シールド層と、
前記一括シールド層の周囲を覆うシースと、を備え、
前記ケーブルコアの空隙率が30%以下であり、
前記一括シールド層が、前記ケーブルコアの撚り方向と同じ方向に複数本の金属素線を螺旋状に巻き付けて構成されており、
前記ケーブルコアの最外層を構成する前記電線の撚りピッチP1と、前記最外層よりも一層内側の層の前記電線の撚りピッチP2との比率P2/P1が、0.3以上0.6以下であり、
前記ケーブルコアの前記最外層を構成する前記電線の撚りピッチP1と、前記一括シールド層の金属素線の巻きピッチP3との差が2mm以上である、
複合多芯ケーブル。
【請求項2】
前記シースの外径が1mm以上2mm以下である、
請求項1に記載の複合多芯ケーブル。
【請求項3】
前記ケーブルコアの前記最外層を構成する前記電線の層心径をPD1としたとき、P1/PD1が12以上18以下である、
請求項1に記載の複合多芯ケーブル。
【請求項4】
前記一括シールド層の層心径をPD3としたとき、P3/PD3が6以上14以下である、
請求項1に記載の複合多芯ケーブル。
【請求項5】
前記ケーブルコアの前記最外層は、複数本の前記絶縁電線を含み、前記絶縁電線同士が周方向に隣り合わないように配置されている、
請求項1に記載の複合多芯ケーブル。
【請求項6】
前記ケーブルコアの前記最外層は、2本の前記絶縁電線を含み、周方向において前記絶縁電線の間の一方に配置される前記同軸線の本数が、他方に配置される前記同軸線の本数と異なる、
請求項5に記載の複合多芯ケーブル。
【請求項7】
前記ケーブルコアは、第1同軸線と第1絶縁電線とを撚り合わせた内層と、前記内層の周囲に、前記第1同軸線よりも外径が大きい第2同軸線、及び前記第1絶縁電線よりも外径が大きい第2絶縁電線を螺旋状に撚り合わせた外層と、を有する2層構造となっている、
請求項1に記載の複合多芯ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合多芯ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
同軸線と絶縁電線と含む複数本の電線を撚り合わせ、その周囲にシールド層とシースとを設けた複合多芯ケーブルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-56649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡や医療用のカテーテルケーブル等として用いられる複合多芯ケーブルでは、患者の身体への負荷を低減するために、できるだけ外径が細いことが望まれる。しかしながら、外径を細くするために複数本の電線を強く束ね密集させてしまうと、複合多芯ケーブルの使用時に捻りや曲げが加えられた際に、電線間の隙間が少なく機械的ストレスの逃げ場がなくなってしまい、捻りや曲げに対する耐久性が低下してしまうおそれがあるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、細径でかつ捻りや曲げに対する耐久性が高い複合多芯ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、同軸線と絶縁電線を含む複数本の電線を2層以上に撚り合わせて構成されたケーブルコアと、前記ケーブルコアの周囲を覆うシールド層と、前記シールド層の周囲を覆うシースと、を備え、前記ケーブルコアの空隙率が30%以下であり、前記シールド層が、前記ケーブルコアの撚り方向と同じ方向に複数本の金属素線を螺旋状に巻き付けて構成されており、前記ケーブルコアの最外層を構成する前記電線の撚りピッチP1と、前記最外層よりも一層内側の層の前記電線の撚りピッチP2との比率P2/P1が、0.3以上0.6以下であり、前記ケーブルコアの前記最外層を構成する前記電線の撚りピッチP1と、前記シールド層の金属素線の巻きピッチP3との差が2mm以上である、複合多芯ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、細径でかつ捻りや曲げに対する耐久性が高い複合多芯ケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係る複合多芯ケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
図2】本発明の一変形例に係る複合多芯ケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
図3】屈曲試験を説明する図である。
図4】捻回試験を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る複合多芯ケーブル1の長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、複合多芯ケーブル1は、同軸線2と絶縁電線3を含む複数本の電線4を2層以上に撚り合わせて構成されたケーブルコア5と、ケーブルコア5を束ねるバインドテープ6と、バインドテープ6の周囲を覆う一括シールド層7と、一括シールド層7の周囲を覆うシース8と、を備えている。
【0012】
(電線4)
本実施の形態では、外径の異なる2種類の同軸線2と、外径の異なる2種類の絶縁電線3と、を用いており、合計4種類の電線4を複合して用いている。同軸線2は、信号伝送用の信号線として用いられ、絶縁電線3は、電源供給用の電源線として用いられる。なお、絶縁電線3の一部を信号線として用いてもよい。以下、2種類の同軸線2のそれぞれを、第1同軸線21及び第2同軸線22と呼称し、2種類の絶縁電線3のそれぞれを第1絶縁電線31及び第2絶縁電線32と呼称する。
【0013】
(同軸線2)
第1同軸線21は、後述するケーブルコア5の内層52に用いられており、第2同軸線22は、ケーブルコア5の外層51に用いられている。ここでは、2本の第1同軸線21と、6本の第2同軸線22を用いた。内層52に用いられる第1同軸線21は、外層51に用いられる第2同軸線22よりも外径が小さい。ここでは、第1同軸線21を44AWG(American Wire Gauge)とし外径を約0.23mmとし、第2同軸線22を40AWGとし外径を約0.36mmとした。
【0014】
第1及び第2同軸線21,22は、導体211,221と、導体211,221の周囲を覆う絶縁体212,222と、絶縁体212,222の周囲を覆うシールド層213,223と、シールド層213,223の周囲を覆うジャケット214,224と、を有している。導体211,221は、銅合金からなる複数本の金属素線を撚り合わせた撚線導体からなる。第1同軸線21では、外径約0.02mmの銅合金線を7本撚り合わせて外径約0.06mmの導体211を形成した。第2同軸線22では、外径約0.03mmの銅合金線を7本撚り合わせて外径約0.09mmの導体221を形成した。
【0015】
絶縁体212,222は、PFA(四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)等のフッ素樹脂からなる。第1同軸線21では、絶縁体212の厚さを約0.04mmとし、絶縁体212の外径を約0.14mmとした。第2同軸線22では、絶縁体222の厚さを約0.08mmとし、絶縁体222の外径を約0.24mmとした。
【0016】
シールド層213,223は、複数本の銅合金からなる金属素線を、絶縁体212,222の周囲に螺旋状に巻き付けた横巻きシールドからなる。第1同軸線21では、外径約0.02mmの銅合金線を24本用いて金属素線間の隙間が1本未満となるような密度で外径約0.18mmのシールド層213を形成した。第2同軸線22では、外径約0.03mmの銅合金線を27本用いて金属素線間の隙間が1本未満となるような密度で外径約0.3mmのシールド層223を形成した。
【0017】
シールド層213,223の巻き方向は、導体211,221の撚り方向と同じ方向とされる。これにより、捻回による負荷を分散して捻回に対する耐久性を向上できる。なお、巻き方向や撚り方向とは、同軸線2の一端からみたときに、一端側から他端側にかけて金属素線が回転している方向である。
【0018】
ジャケット214,224は、PFA等のフッ素樹脂からなる。ジャケット214,224の厚さは、それぞれ、約0.025mm、約0.027mmとした。
【0019】
(絶縁電線3)
【0020】
第1絶縁電線31は、ケーブルコア5の内層52に用いられており、第2絶縁電線32はケーブルコア5の外層51に用いられている。ここでは、2本の第1絶縁電線31と、2本の第2絶縁電線32を用いた。内層52に用いられる第1絶縁電線31は、外層51に用いられる第2絶縁電線32よりも外径が小さい。ここでは、第1絶縁電線31を34AWGとして外径を約0.28mmとし、第2絶縁電線32を32AWGとして外径を約0.35mmとした。
【0021】
第1及び第2絶縁電線31,32は、導体311,321と、導体311,321の周囲を覆う絶縁体312,322と、を有している。導体311,321は、銅合金からなる複数本の金属素線を撚り合わせた撚線導体からなる。より詳細には、第1絶縁電線31では、外径0.04mmの銅合金線を19本撚り合わせて外径約0.2mmの導体311を形成した。第2絶縁電線32では、外径0.05mmの銅合金線を19本撚り合わせて外径約0.25mmの導体321を形成した。絶縁体312,322は、PFA等のフッ素樹脂からなる。絶縁体312,322の厚さは、それぞれ、約0.04mm、約0.05mmとした。
【0022】
(ケーブルコア5)
本実施の形態では、複数本の電線4を2層に撚り合わせてケーブルコア5を構成している。ケーブルコア5の層のうち径方向外側の層を外層51と呼称し、径方向内側の層を内層52と呼称する。外層51は、本発明の「最外層」に相当し、内層52は、本発明の「最外層よりも一層内側の層」に相当する。
【0023】
本実施の形態では、ケーブル外径を小さくするために、ケーブルコア5は、比較的電線4を密集させた構成となっている。より具体的には、ケーブルコア5の空隙率は少なくとも30%以下とされている。なお、ケーブルコア5の空隙率とは、ケーブル長手方向に垂直な断面において、ケーブルコア5の外接円の面積に対する、空隙の面積(各電線4の間の領域の面積)の割合である。空隙の面積は、ケーブルコア5の外径から求めた外接円の面積から、ケーブルコア5を構成する各電線4の断面積を減じることで計算できる。また、複合多芯ケーブル1の断面を顕微鏡等で観察し、得られた断面画像から、各電線4間の空隙に相当する空隙の面積や、ケーブルコア5全体の面積(バインドテープ6で囲まれた領域の面積)を求めてもよい。
【0024】
ケーブルコア5において電線4を密集させ空隙率を30%以下と低くすると、ケーブル外径を小さくすることが可能になるものの、ケーブルコア5内での電線4の動きが規制されてしまい、捻回や屈曲に対する耐久性が低下してしまうおそれが生じる。そこで、本実施の形態では、ケーブルコア5の各層と一括シールド層7のピッチの関係を適切に調整することで、ケーブル外径を小さくしつつも、捻回や屈曲に対する耐久性の低下を抑制している。この点の詳細は後述する。
【0025】
内層52は、2本の第1絶縁電線31と2本の第1同軸線21とを撚り合わせて構成されている。第1絶縁電線31と第1同軸線21とは、周方向に交互に配置されている。
【0026】
外層51は、内層52の周囲に、2本の第2絶縁電線32と、6本の第2同軸線22とを螺旋状に撚り合わせて構成されている。第2絶縁電線32と第2同軸線22とは曲げやすさが異なるため、曲げやすさが異なる方向ができないように、第2絶縁電線32同士が周方向に隣り合わないように配置されることが望ましい。これにより、屈曲による負荷が偏って耐久性が低下してしまうことを抑制できる。また、本実施の形態では、周方向において第2絶縁電線32の間の一方に配置される第2同軸線22の本数が、他方に配置される第2同軸線22の本数と異なっている。そのため、第2絶縁電線32が、ケーブル中心を挟んで対向するようには配置されておらず、2本の第2絶縁電線32が非対称に配置されている。外層51の外径、すなわちケーブルコア5の外径は、約1.3mmである。ここでは、ケーブルコア5の空隙率は、約27.0%であった。なお、本実施の形態では、外層51は、周方向に隣り合う電線4同士、すなわち、2本の第2同軸線22、または第2同軸線22と第2絶縁電線32が互いに接触するように構成されている。
【0027】
内層52と外層51とは、撚り方向が同じ方向となっている。なお、撚り方向とは、複合多芯ケーブル1の一端からみたときに、一端から他端にかけて電線4が回転している方向である。内層52と外層51とを同じ撚り方向とすることで、複合多芯ケーブル1の捻回時に内層52と外層51とが共に緩んだり絞られたりすることとなり、負荷を分散して捻回に対する耐久性を高めることができる。なお、内層52及び外層51の撚り方向は、各電線4の導体211,221,311,321の撚り方向、及びシールド層213,223の巻き方向とも同じ方向となっている。
【0028】
また、本実施の形態では、ケーブルコア5の外層51の撚りピッチP1と、内層52の撚りピッチP2との比率P2/P1が、0.3以上0.6以下とされる。例えば、比率P2/P1が低くなる場合、外層51の撚りピッチP1が大きくなるか、内層52の撚りピッチP2が小さくなることが考えられる。比率P2/P1が0.3未満となる程度に外層51の撚りピッチP1が大きくなると、外層51において電線4がより直線に近い状態で配置されることになるために屈曲時に外層51を構成する電線4に断線が発生しやすくなってしまう。また、比率P2/P1が0.3未満となる程度に内層52の撚りピッチP2が小さくなると、内層52の撚りと同方向に捻回が加えられた際に座屈が生じやすくなり、内層52を構成する電線4に断線が発生しやすくなってしまう。
【0029】
同様に、比率P2/P1が大きくなる場合、外層51の撚りピッチP1が小さくなるか、内層52の撚りピッチP2が大きくなることが考えられる。比率P2/P1が0.6を超える程度に外層51の撚りピッチP1が小さくなると、外層51の撚りと同方向に捻回が加えられた際に座屈が生じやすくなり、外層51を構成する電線4に断線が発生しやすくなってしまう。そして、比率P2/P1が0.6を超える程度に内層52の撚りピッチP2が大きくなると、内層52において電線4がより直線に近い状態で配置されることになるために、屈曲時に内層52を構成する電線4に断線が発生しやすくなってしまう。つまり、比率P2/P1を0.3以上0.6以下とすることで、捻回と屈曲の両者に対する耐久性を向上することが可能になる。
【0030】
なお、外層51や内層52の撚りピッチP1,P2とは、外層51や内層52を構成する任意の電線4の周方向位置が同じとなる箇所のケーブル長手方向に沿った間隔である。本実施の形態においては、ケーブルコア5の外層51の層心径をPD1としたとき、P1/PD1は、12以上18以下とされる。なお層心径PD1は、長手方向に垂直な断面視で、ケーブル径方向における外層51の中心を通る円の直径であり、ケーブルコア5の外径から、1本の電線4の外径(ここでは、より外径が大きい第2同軸線22の外径)を減じた値である。ここでは、撚りピッチP1,P2をそれぞれ、15mm、6mmとした。また、P1/PD1は約15.59とした。
【0031】
(バインドテープ6)
バインドテープ6は、ケーブルコア5を束ねるためのものである。バインドテープ6は、ポリイミド等からなる樹脂テープからなり、ケーブルコア5の周囲に、その幅方向の一部が重なり合うように螺旋状に巻き付けられている。捻回時の負荷を分散するために、バインドテープ6の巻き方向は、ケーブルコア5の撚り方向と同じ方向であることが望ましい。ここでは、厚さ約0.01mmのポリイミドからなるバインドテープ6を用いた。
【0032】
(一括シールド層7)
一括シールド層7は、複数本の金属素線を螺旋状に巻き付けた横巻シールドから構成されている。一括シールド層7に用いる金属素線としては、銅合金線を用いることができる。ここでは、外径約0.05mmの銅合金線を82本用いて、外径約1.4mmの一括シールド層7を形成した。
【0033】
捻回時の負荷を分散するために、一括シールド層7の巻き方向は、ケーブルコア5の撚り方向と同じ方向とされる。なお、一括シールド層7の巻き方向とは、複合多芯ケーブル1の一端からみたときに、一端から他端にかけて金属素線が回転している方向である。なお、例えば、一括シールド層7の巻き方向を、ケーブルコア5の撚り方向と逆方向とした場合、ケーブルコア5が押さえつけられたような状態となり、屈曲時に断線が生じやすくなるおそれがある。よって、捻回と屈曲に対する耐久性を向上するという観点から、一括シールド層7の巻き方向は、ケーブルコア5の撚り方向と同じ方向とする。
【0034】
本実施の形態では、ケーブルコア5の外層51の撚りピッチP1と、一括シールド層7の金属素線の巻きピッチP3との差が2mm以上とされる。これは、両ピッチP1,P3の差が2mm未満であると、ケーブルコア5の外層51と略同じピッチで一括シールド層7の金属素線が巻き付けられることになるため、一括シールド層7を構成する金属素線が外層51を構成する電線4間の谷間部分に落ち込みやすくなってしまうためである。一括シールド層7を構成する金属素線が外層51を構成する電線4間の谷間部分に落ち込むと、金属素線の動きが規制されてしまい、屈曲時に一括シールド層7に断線が発生しやすくなってしまう。つまり、両ピッチP1,P3の差を2mm以上とすることで、屈曲に対する耐久性を向上することができる。
【0035】
なお、一括シールド層7の金属素線の巻きピッチP3とは、一括シールド層7を構成する任意の金属素線の周方向位置が同じとなる箇所のケーブル長手方向に沿った間隔である。本実施の形態では、一括シールド層7の層心径をPD3としたとき、P3/PD3が6以上14以下とされる。なお、層心径PD3は、長手方向に垂直な断面視で、ケーブル径方向における一括シールド層7の中心を通る円の直径である。
【0036】
(シース8)
シース8は、ケーブルコア5や一括シールド層7を保護するためのものである。シース8は、PFA等のフッ素樹脂から構成される。シース8の外径、すなわち複合多芯ケーブル1全体の外径は、1mm以上2mm以下である。ここでは、シース8の外径を約1.6mmとした。
【0037】
(変形例)
本実施の形態では、ケーブルコア5の外層51において、2本の第2絶縁電線32を隣接して配置しないようにしたが、図2に示す複合多芯ケーブル1aのように、ケーブルコア5の外層51において、2本の第2絶縁電線32を隣接して配置されていてもよい。また、ケーブルコア5に含まれる電線4の本数、同軸線2の本数、絶縁電線3の本数は、適宜変更可能である。また、外層51や内層52に含まれる同軸線2や絶縁電線3の本数についても、図示のものに限定されない。
【0038】
(屈曲試験と捻回試験の結果)
図1の複合多芯ケーブル1を試作して実施例1とし、屈曲試験と捻回試験を行った。また、外層51の撚りピッチP1を14mm、内層52の撚りピッチP2を5mmとし、一括シールド層7の巻きピッチP3を16.6mmとした図2の構造の複合多芯ケーブル1aを試作して実施例2とし、実施例1と同様に屈曲試験と捻回試験を行った。
【0039】
さらに、外層51の撚りピッチP1を14mm、内層52の撚りピッチP2を9mmとし、一括シールド層7の巻きピッチP3を9.3mmとした比較例1の複合多芯ケーブル、及び、外層51の撚りピッチP1を14mm、内層52の撚りピッチP2を5mmとし、一括シールド層7の巻きピッチP3を13.9mmとした比較例2の複合多芯ケーブルを作成した。比較例1,2のどちらとも、図2に示したように、外層51において第2絶縁電線32を隣接して配置する構造とした。そして、作成した比較例1,2について、実施例1,2と同様に屈曲試験と捻回試験を行った。
【0040】
屈曲試験では、図3に示すように、試験対象の複合多芯ケーブル1の下端に荷重W=100gfの錘を吊り下げ、複合多芯ケーブル1の左右に湾曲した形の曲げジグ100を配置した状態で、曲げジグ100に沿って左右方向に向けて所定の屈曲角Xの曲げを加えるように複合多芯ケーブル1を動かすことで行った。屈曲速度は30回/分とし、屈曲回数は左右方向への1往復を1回として複合多芯ケーブル1の屈曲を繰り返し、適宜回ごとに複合多芯ケーブル1の両端間での抵抗値を測定した。抵抗値の測定対象は、絶縁電線の導体311、321、同軸線の導体211,221及びシールド層213、223、及び一括シールド層7である。そして、屈曲試験中に測定した抵抗値の少なくとも1つが屈曲試験前の抵抗値(初期の抵抗値)に対して15%増加したときに破断したものとみなし、そのときの屈曲回数を屈曲試験寿命とした。実施例1,2及び比較例1,2について、屈曲角Xを90°、曲げ半径Rを7.5mmとした。そして、屈曲試験では、複合多芯ケーブル1に対して10万回屈曲を行い、屈曲試験寿命に達した場合を不合格(×)、屈曲試験寿命に達しなかった場合を合格(〇)とした。
【0041】
捻回試験では、図4に示すように、試験対象の複合多芯ケーブル1の一箇所を回転しない固定チャック101に取り付け、それより鉛直方向上側に所定の捻回長Lだけ隔てた別の箇所を回転チャック102に取り付け、複合多芯ケーブル1の下端に荷重W=150gfの錘を吊り下げる。この状態で回転チャック102を回転させることにより、複合多芯ケーブル1の固定チャック101と回転チャック102との間の部分に対して±180度の捻りを加える。回転チャック102は、まず+180度回転して元に戻し、-180度回転して元に戻すというように、矢印10a,10b,10c,10dの順に動かして1サイクルとする。捻回速度は、30回/分とし、捻回回数は各方向への1往復を1回としてカウントした。そして、複合多芯ケーブル1の捻回を繰り返して適宜回ごとに複合多芯ケーブル1の両端間で抵抗値を測定した。抵抗値の測定対象は、絶縁電線の導体311、321、同軸線の導体211,221及びシールド層213、223、及び一括シールド層7である。そして、捻回試験中に測定した抵抗値の少なくとも1つが捻回試験前の抵抗値(初期の抵抗値)に対して15%増加したときに破断したものとみなし、そのときの捻回回数を捻回試験寿命とした。捻回長Lは、実施例1,2及び比較例1,2について200mmとした。捻回試験では、複合多芯ケーブル1に対して10万回捻回を行い、捻回試験寿命に達した場合を不合格(×)、捻回試験寿命に達しなかった場合を合格(〇)とした。試験結果をまとめて表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すように、P2/P1が0.3以上0.6以下で、かつ、P1とP3との差が2mm以上という条件を満たす実施例1,2では、屈曲試験、捻回試験ともに合格となった。これに対して、P2/P1が0.3以上0.6以下という条件を満たさない比較例1では、屈曲試験は合格したものの、捻回試験において2万回以内の捻回回数で断線が発生してしまい不合格となった。また、P1とP3との差が2mm以上という条件を満たさない比較例2においても、屈曲試験は合格したものの、捻回試験において6万回~10万回の捻回回数で断線が発生してしまい不合格となった。この結果から、P2/P1が0.3以上0.6以下で、かつ、P1とP3との差が2mm以上という条件を満たすことで、屈曲と捻回に対して十分な耐久性が得られることが確認できた。
【0044】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る複合多芯ケーブル1では、ケーブルコア5の空隙率が30%以下であり、一括シールド層7が、ケーブルコア5の撚り方向と同じ方向に複数本の金属素線を螺旋状に巻き付けて構成されており、ケーブルコア5の最外層(外層51)を構成する電線4の撚りピッチP1と、最外層(外層51)よりも一層内側の層(内層52)の電線4の撚りピッチP2との比率P2/P1が、0.3以上0.6以下であり、ケーブルコア5の最外層(外層51)を構成する電線4の撚りピッチP1と、一括シールド層7の金属素線の巻きピッチP3との差が2mm以上である。このように構成することで、電線4を密集させて細径化を実現しつつも、捻りや曲げに対する耐久性が高い複合多芯ケーブル1を実現できる。
【0045】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0046】
[1]同軸線(2)と絶縁電線(3)を含む複数本の電線(4)を2層以上に撚り合わせて構成されたケーブルコア(5)と、前記ケーブルコア(5)の周囲を覆う一括シールド層(7)と、前記一括シールド層(6)の周囲を覆うシース(8)と、を備え、前記ケーブルコア(5)の空隙率が30%以下であり、前記一括シールド層(7)が、前記ケーブルコア(5)の撚り方向と同じ方向に複数本の金属素線を螺旋状に巻き付けて構成されており、前記ケーブルコア(5)の最外層を構成する前記電線(4)の撚りピッチP1と、前記最外層よりも一層内側の層の前記電線(4)の撚りピッチP2との比率P2/P1が、0.3以上0.6以下であり、前記ケーブルコア(5)の前記最外層を構成する前記電線(4)の撚りピッチP1と、前記一括シールド層(7)の金属素線の巻きピッチP3との差が2mm以上である、複合多芯ケーブル(1)。
【0047】
[2]前記シース(8)の外径が1mm以上2mm以下である、[1]に記載の複合多芯ケーブル(1)。
【0048】
[3]前記ケーブルコア(5)の前記最外層を構成する前記電線(4)の層心径をPD1としたとき、P1/PD1が12以上18以下である、[1]または[2]に記載の複合多芯ケーブル(1)。
【0049】
[4]前記一括シールド層(7)の層心径をPD3としたとき、P3/PD3が6以上14以下である、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の複合多芯ケーブル(1)。
【0050】
[5]前記ケーブルコア(5)の前記最外層は、複数本の前記絶縁電線(3)を含み、前記絶縁電線(3)同士が周方向に隣り合わないように配置されている、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の複合多芯ケーブル(1)。
【0051】
[6]前記ケーブルコア(5)の前記最外層は、2本の前記絶縁電線(3)を含み、周方向において前記絶縁電線(3)の間の一方に配置される前記同軸線(2)の本数が、他方に配置される前記同軸線(2)の本数と異なる、[5]に記載の複合多芯ケーブル(1)。
【0052】
[7]前記ケーブルコア(5)は、第1同軸線(21)と第1絶縁電線(22)とを撚り合わせた内層(52)と、前記内層(52)の周囲に、前記第1同軸線(21)よりも外径が大きい第2同軸線(22)、及び前記第1絶縁電線(31)よりも外径が大きい第2絶縁電線(32)を螺旋状に撚り合わせた外層(51)と、を有する2層構造となっている、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の複合多芯ケーブル(1)。
【0053】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…複合多芯ケーブル
2…同軸線
21…第1同軸線
22…第2同軸線
211,221…導体
212,222…絶縁体
213,223…シールド層
214,224…ジャケット
3…絶縁電線
31…第1絶縁電線
32…第2絶縁電線
311,321…導体
312,322…絶縁体
4…電線
5…ケーブルコア
51…外層
52…内層
6…バインドテープ
7…一括シールド層
8…シース
図1
図2
図3
図4