(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134506
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】立体造形方法及び立体造形装置
(51)【国際特許分類】
B22F 5/10 20060101AFI20240926BHJP
B22F 10/14 20210101ALI20240926BHJP
【FI】
B22F5/10
B22F10/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199303
(22)【出願日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2023044384
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】孫 允晟
(72)【発明者】
【氏名】辻 真人
(72)【発明者】
【氏名】早川 翔太
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA14
4K018BA08
4K018BD04
4K018CA44
4K018DA03
4K018DA50
4K018EA51
4K018FA01
4K018HA01
4K018KA53
(57)【要約】
【課題】造形品質を向上する。
【解決手段】立体造形方法は、内部に空洞81を有する造形物62を製造する方法であって、造形物62は、空洞81と造形物62の外部とを接続する開口部82を含み、粉末50で造形物62を造形する造形工程S3と、開口部82から空洞81に第二の粉末52を充填する充填工程S6と、充填工程S6にて空洞81に第二の粉末52を充填されたグリーン体63を焼結する焼結工程S8と、開口部82から空洞81内の第二の粉末52を除去する除去工程S9と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞を有する造形物を製造する方法であって、
前記造形物は、前記空洞と前記造形物の外部とを接続する開口部を含み、
第一の粉末で前記造形物を造形する造形工程と、
前記開口部から前記空洞に第二の粉末を充填する充填工程と、
前記充填工程にて前記空洞に前記第二の粉末を充填された前記造形物を焼結する焼結工程と、
前記開口部から前記空洞内の前記第二の粉末を除去する除去工程と、
を含む、
立体造形方法。
【請求項2】
前記第一の粉末が金属である請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項3】
前記第二の粉末の融点は、前記焼結工程の焼結温度より高い請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項4】
前記造形工程は、
前記第一の粉末で粉末層を形成する工程と、
前記粉末層に造形液を付与する工程と、を含む、請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項5】
前記焼結工程で、
前記空洞から前記開口部を介して前記第二の粉末の一部が排出される請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項6】
前記開口部の径は、前記空洞の径より小さい請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項7】
前記開口部は、前記造形物の側面に設けられる請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項8】
前記開口部は、前記空洞の長手方向の端部に設けられる、
請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項9】
前記造形物は、複数の前記開口部を含む、
請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項10】
前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部を含み、
前記第1の開口部は、前記第2の開口部より小さい、
請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項11】
前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部を含み、
前記第1の開口部と前記第2の開口部は、前記空洞を介して対向している、
請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項12】
前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部を含み、
前記第1の開口部は、前記第2の開口部の一部から延伸する軸上にある、
請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項13】
前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部と第3の開口部と第4の開口部を含み、
前記第1の開口部と前記第2の開口部は、前記空洞を介して対向し、
前記第3の開口部と前記第4の開口部は、前記空洞を介して対向する、
請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項14】
前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部と第3の開口部と第4の開口部を含み、
前記第1の開口部は、前記第2の開口部の一部から延伸する軸上にあり、
前記第3の開口部は、前記第4の開口部の一部から延伸する軸上にある、
請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項15】
前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部と第3の開口部と第4の開口部を含み、
前記第2の開口部の中心から第1の開口部に向かって延伸する軸と、
前記第4の開口部の中心から第3の開口部に向かって延伸する軸と、
は、直交する、
請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項16】
前記造形物は、複数の前記開口部を含み、
前記複数の開口部のそれぞれは、前記空洞の中心から等距離の位置に設けられる、
請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項17】
前記造形物は、前記開口部の前記空洞側及び前記外部側の少なくとも一方の端部にテーパが設けられる
請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項18】
前記空洞が前記造形物内に形成される流路であり、
前記開口部が前記流路の入口と出口である、
請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項19】
内部に空洞を有する造形物を製造する装置であって、
前記造形物は、前記空洞と前記造形物の外部とを接続する開口部を含み、
第一の粉末で前記造形物を造形する造形部と、
前記開口部から前記空洞に第二の粉末を充填する充填部と、
前記充填部により前記空洞に前記第二の粉末を充填された前記造形物を焼結する焼結部と、
前記開口部から前記空洞内の前記第二の粉末を除去する除去部と、
を備える、
立体造形装置。
【請求項20】
内部に空洞を有する造形物を製造する方法であって、
前記造形物は、前記空洞と前記造形物の外部とを接続する開口部と、前記開口部とは別の充填用開口と、前記充填用開口を封止する封止部材と、を含み、
第一の粉末で前記造形物を造形する造形工程と、
前記充填用開口から前記空洞に第二の粉末を充填し、充填後に前記充填用開口を前記封止部材により封止する充填工程と、
前記充填工程にて前記空洞に前記第二の粉末を充填された前記造形物を焼結する焼結工程と、
前記開口部から前記空洞内の前記第二の粉末を除去する除去工程と、
を含む、
立体造形方法。
【請求項21】
前記造形工程の後、かつ、前記充填工程の前に、前記造形物から余剰の粉末を除去する粉除去工程を含み、
前記粉除去工程では、前記空洞内の前記余剰の粉末は前記充填用開口を介して除去される、
請求項20に記載の立体造形方法。
【請求項22】
内部に空洞を有する造形物を製造する方法であって、
前記造形物は、前記空洞と前記造形物の外部とを接続する開口部と、前記開口部とは別の粉除去用開口と、前記粉除去用開口を封止する封止部材と、を含み、
第一の粉末で前記造形物を造形する造形工程と、
前記造形物から余剰の粉末を除去する粉除去工程と、
前記造形物を焼結する焼結工程と、
を含み、
前記粉除去工程では、前記空洞内の前記余剰の粉末は前記粉除去用開口を介して除去され、除去後に前記粉除去用開口が前記封止部材により封止される、
立体造形方法。
【請求項23】
前記空洞の体積に対して、前記開口部の面積の比率が0.013以上である、
請求項6に記載の立体造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形方法及び立体造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体積層による三次元造形方式(粉体積層造形方式)では、粉末層に造形液を付与するバインダージェット(BJ)方式などが知られている。
【0003】
特許文献1には、グリーン体の内部に形成される空洞内に粉末を充填し、空洞にオブジェクトを取り付けた状態で、焼結する手法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、焼結中にグリーン体の変形等により造形品質が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、造形品質の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点に係る立体造形方法は、内部に空洞を有する造形物を製造する方法であって、前記造形物は、前記空洞と前記造形物の外部とを接続する開口部を含み、第一の粉末で前記造形物を造形する造形工程と、前記開口部から前記空洞に第二の粉末を充填する充填工程と、前記充填工程にて前記空洞に前記第二の粉末を充填された前記造形物を焼結する焼結工程と、前記開口部から前記空洞内の前記第二の粉末を除去する除去工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、造形品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の一実施形態に係る立体造形装置の概略構成を示すブロック図
【
図5】本発明の一実施形態に係る立体造形方法のフローチャート
【
図19】造形物の内部空洞にジャイロイド構造を設けた一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
以下の説明では、造形物62は、第一の粉末を含むものである。造形物62は、複数の造形層61が積層されて形成される集合体であり、かつ造形が完成する前の状態のものである。粉末50は、金属を含み、例えば金属としてアルミニウムやアルミニウム合金を用いることができる。また、粉末50は、他の金属で生成されてもよいし、セラミック等の金属以外の材料を用いてもよい。また、造形物62に乾燥処理が施され、余剰の粉末50を除去されたものを「グリーン体63」と呼ぶ。さらに、グリーン体63に脱脂、焼結の各処理が施された後の完成品を「立体造形物64」と呼ぶ。
【0011】
また、以下の説明では、第二の粉末52は、造形物62の造形に用いられる粉末50とは別の種類の粉末である。また、第二の粉末52は、焼結工程の際にグリーン体63の内部の空洞81に充填される。また、第二の粉末52の融点は、焼結工程の焼結温度より高い。第二の粉末52は、第一の粉末50より融点が高い。例えば、第一の粉末50は、金属を含み、例えばアルミニウムやアルミニウム合金を用いた場合、第二の粉末52は、ジルコニア、ルミナなどを用いてもよい。
【0012】
また、以下の説明で用いる「混合粉」は、粉混合部2により混合された複数の粉末をさす。混合粉は、新しい粉末(以下、「新粉」と示す)と回収された粉末(以下、「回収粉
」と示す)を含む。新粉は、造形部3で造形に用いられていない粉末である。また、回収粉は、新粉は、造形部3で造形に用いられた粉末である。また、回収粉は、造形部3から回収されてもよいし、粉除去部5から回収されてもよい。「混合比」とは、混合粉に含ま
れる新粉と回収粉の割合を示す。「混合比」としては、体積比や重量比など、任意の種類
の比率を適用できる。
【0013】
図1は、造形物62とグリーン体63の一例を示す模式図である。
図1(A)は、造形物62を示す模式図である。
図1(B)は、グリーン体63を示す模式図である。
【0014】
図1(A)では、造形槽12内に複数の粉末50がY方向及びZ方向に配置されている。造形槽12内の複数の粉末50の一部に造形液60が付与されることにより造形層61を形成し、造形層61がZ方向に積層されることによって造形物62が形成される。複数の粉末50のうち、造形物62以外の領域は、造形液60が付与されていない領域となる。
【0015】
造形槽12を乾燥部4により乾燥処理し、さらに粉除去部5により造形液60が付与されていない領域から粉末50を除去することによって、
図1(B)に示すグリーン体63を得る。
【0016】
これによって、グリーン体63は、内部に空洞81を有し、この空洞81とグリーン体63の外部とを接続する開口部82を含む。以下、グリーン体63の形状は、内部に空洞81と開口部82を含むものとして説明する。
【0017】
<立体造形装置の基本構成>
図2~
図4を参照して実施形態に係る立体造形装置1の基本構成について説明する。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る立体造形装置1の概略構成を示すブロック図である。本発明の一実施形態に係る立体造形装置1として、粉末層51の面上の造形領域に造形液60を付与するバインダージェット(BJ)方式について説明する。BJ方式では、粉末層51に選択的に造形液60を付与して固め、焼結することによって、立体造形物を造形することができる。造形液60は、例えばバインダーなどの樹脂や溶媒などのインクが含まれる。
【0019】
立体造形装置1は、粉混合部2と、造形部3と、乾燥部4と、粉除去部5と、充填部6と、焼結部7と、除去部8と、回収部9と、制御部100と、を備える。
【0020】
粉混合部2は、粉末50を混合する。これによって、造形部3に供給する粉末としての混合粉を生成する。粉混合部2は、未だ造形に利用されていない新しい粉末(新粉)と、既に造形に利用されて回収部9により回収された粉末(回収粉)とを混合する。また、粉混合部2は、制御部100からの制御指令に基づき、所望の混合比で混合粉を混合して、造形部3に供給することができる。
【0021】
造形部3は、粉末50を含む造形物62を造形する。粉末50は、少なくとも粉混合部2から供給される混合粉を含む。本実施形態では、造形部3は、BJ方式によって造形を行う。なお、造形部3で利用された粉末50の一部は、回収粉として回収部9で回収される。より具体的には、造形部3は、粉末層51を形成する。なお、粉末層51は、平坦化された層でもよい。また、粉末層51に対して造形液60を付与した層を造形層61が形成される。造形層61は、造形液60が付与されることによって粉末50が結合された層状造形物である。なお、粉末層51及び造形層61は、それぞれ一層のものをいう。
【0022】
ここで、
図3を参照して、造形部3の動作の一例を説明する。
図3は、造形部3の構成の一例を示す図である。
【0023】
なお、以下の説明において、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向である。X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。X方向は、平坦部31の回転軸の軸方向である。Y方向は、平坦部31の移動方向であり、粉末槽10における供給槽11、造形槽12、及び余剰粉末槽15の配列方向である。Z方向は、供給ステージ13および造形ステージ14の昇降方向である。また、以下では説明の便宜上、Z正方向側を上側、Z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0024】
造形部3は、粉末槽10と、積層ユニット30と、付与部40と、を備える。
【0025】
粉末槽10は、粉末50を含む粉末層51を造形する。付与部40は、粉末層51に造形液60を付与し、造形層61を形成する。造形部3では、複数の造形層61が積層され造形物62が造形される。
【0026】
粉末槽10は、供給槽11、造形槽12、供給ステージ13、造形ステージ14および余剰粉末槽15を含む。粉末槽10は、箱型の形状となっている。供給槽11、造形槽12、および余剰粉末槽15の3つの上面が開放されている。
【0027】
粉末槽10の供給槽11は、粉末50を造形槽12に供給する槽である。また、供給槽11は、造形槽12に供給するための粉末50を保持する。供給槽11の底部は、供給ステージ13が設けられている。供給ステージ13は鉛直方向(Z方向)に昇降する。供給ステージ13の側面は、供給槽11の内側面に接するように配置されている。
【0028】
粉末槽10の造形槽12は、供給槽11から造形に必要となる粉末50が供給される。造形槽12には、粉末層51および造形層61が形成される。さらに、造形槽12には、複数の造形層61が積層され造形物62が造形される。
【0029】
供給槽11と造形槽12の底部は、それぞれ供給ステージ13と造形ステージ14が設けられ、鉛直方向(Z方向)に昇降する。造形ステージ14の側面は、造形槽12の内側面に接するように配置されている。 供給ステージ13および造形ステージ14の上面は水平に保たれている。
【0030】
粉末槽10の余剰粉末槽15は、粉末層51を形成する際に平坦部31によって平坦化された粉末50のうち、余剰となる粉末50を保持する槽である。余剰粉末槽15の底部には、粉末50を吸引する手段を設けても良いし、余剰粉末槽15が取り外せる手段としてもよい。余剰粉末槽15は造形槽12の隣に配置されている。余剰粉末槽15に保持される余剰の粉末50は、上述の任意の手法を適用して回収部9により回収され、回収部9から粉混合部2に回収粉として再供給される。
【0031】
供給槽11に保持される粉末50は、例えば造形部3の造形開始前や、供給槽11の粉末50の量が減少したときなどの任意のタイミングで、粉混合部2によって混合粉が供給されて適宜補充される。なお、粉末槽10は、供給槽11と造形槽12の2つの槽を有する構成を例示したが、供給槽11を設けずに造形槽12に粉混合部2から粉末50を直接供給してもよい。
【0032】
粉混合部2から供給槽11に粉末50を搬送する方法としては、スクリュを利用したスクリューコンベア方式や、エアーを利用した空気輸送方式等が挙げられる。
【0033】
なお、粉末槽10は、単一の箱体の内部空間をY方向に沿って3つの空間に区分して、供給槽11、造形槽12、及び余剰粉末槽15を形成する。このほか、粉末槽10の構成は供給槽11、造形槽12、及び余剰粉末槽15をそれぞれ別の箱体で形成してもよい。この場合、供給槽11と造形槽12とのY方向に対向する面と、造形槽12と余剰粉末槽15とのY方向に対向する面とを密着するよう設置するのが好ましい。これにより、各槽間での粉末50を移動させる際に粉末50が外部に漏れるのを抑制でき、粉末50の移動をより確実にできる。また、造形部3にて造形された造形物が含まれる造形槽12を乾燥部4や粉除去部5に搬送することを容易にできる。
【0034】
また、積層ユニット30は、平坦部31、粉末除去部32を有する。
【0035】
積層ユニット30の平坦部31は、造形層61や粉末層51を平坦化する。平坦部31は、回転体としてリコータを回転することにより造形層61を平坦化する。平坦部31は、回転駆動することによって、供給槽11の供給ステージ13の粉末50が造形槽12に供給され、粉末層51を形成する。平坦部31は、造形ステージ14のステージ面(粉末50が積載される面)に沿ってY方向に往復移動する。より具体的には、平坦部31は、供給槽11の外側から供給槽11および造形槽12の上方を通過するようにして水平移動する。これにより、粉末50が造形槽12上へと移送供給され、平坦部31が造形槽12上を通過しながら粉末50を平坦化することで粉末層51が形成される。平坦部31は、造形槽12および供給槽11の内寸よりも長い部材である。なお、平坦部31は板状部材としてブレードまたはバーを用いてもよい。
【0036】
積層ユニット30の粉末除去部32は、平坦部31に付着した粉末50を除去する。粉末除去部32は、平坦部31の周面に接触した状態で、平坦部31とともに移動する。
【0037】
付与部40は、キャリッジ41とヘッド42を含む。
【0038】
ヘッド42は、粉末層51に造形液60を付与する。ヘッド42は、例えば、インクジェットヘッドであり、複数のノズルを配列したノズル列が配置されている。シアンの造形液、マゼンタの造形液、イエローの造形液、ブラックの造形液を付与させることにより、カラーの造形物を形成してもよいし、1色の造形液を複数のノズルからそれぞれ付与してもよい。造形液60の付与の方式としては、インクジェット方式やディスペンサー方式としてもよい。
【0039】
ヘッド42は、キャリッジ41に少なくとも1つ以上搭載され、モータおよびガイド部材等によって、X(主走査)、Y(副走査)、Z方向に往復移動する。
以上が、造形部3の動作の一例の説明である。
【0040】
図2に戻り、立体造形装置1を説明する。
乾燥部4は、造形部3により造形された造形物62を乾燥する。具体的には、乾燥部4は、造形物62に含まれる造形液60に含まれる溶媒等を乾燥する。乾燥部4では、造形部3にて造形した造形物62を含む造形槽12を加熱及び減圧し、乾燥させる。これにより、造形液60に含まれるバインダーで粉末50が固着した状態になる。
【0041】
粉除去部5は、乾燥部4により乾燥した造形物62から余分な粉末50を除去する。粉除去部5は、例えば空気を吹き付けて飛ばすなどの任意の手法を用いる。粉除去部5では、造形槽12から造形液60が付与されずに固着していない粉末50を除去する。これにより、粉除去部5で、バインダーで固着された状態の立体物、すなわちグリーン体(G体)63が得られる。なお、粉除去部5で除去された粉末50は、回収粉として回収部9で回収される。
【0042】
充填部6は、粉除去部5で得られたグリーン体63の内部の空洞81に第二の粉末52を充填する。充填部6は、例えば中空状の管などを開口部82から空洞81内に挿入し、この管を介して第二の粉末52を挿入する。これよって、第二の粉末52を空洞81内に充填することができる。なお、充填部6における空洞81内への第二の粉末52の充填手法は、上記手法以外の任意の手法を適用してもよい。
【0043】
焼結部7は、グリーン体63を焼結して最終的な立体造形物(S体)64を生成する。焼結部7は、例えば焼結炉にて、グリーン体63からバインダーを除き(脱脂)、焼結する。特に本実施形態では、焼結部7は、充填部6により内部の空洞81に第二の粉末52が充填された状態のグリーン体63を脱脂、焼結する。
【0044】
除去部8は、焼結部7により脱脂、焼結処理が行われた後の立体造形物64の空洞81から、残留している第二の粉末52を除去する。除去部8は、例えば空気を吹き付けて第二の粉末52を飛ばすなどの任意の手法を用いることができる。
【0045】
回収部9は、造形部3の粉末50の少なくとも一部を回収粉として回収する。また、回収部9は、粉除去部5から粉末50を回収する。回収部9は、粉混合部2に回収粉を供給する。
【0046】
制御部100は、立体造形装置1の各部の上述の動作を制御する。
【0047】
図4は、制御部100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4に示すように、立体造形装置1の制御部100は、CPU101(Central Processing Unit)、制御を実行させるためのプログラムその他の固定データを格納するROM102(Read Only Memory)、造形データ等を一時格納するRAM103(Random Access Memory)が含まれる。また、外部のコンピュータ等の造形データ作成装置104から造形データを受信する。造形データ作成装置104は、最終形態の立体造形物64を造形層61にスライスした造形データを作成する。制御部100は、造形層61毎に造形の動作をする。なお、造形データ作成装置104は、立体造形装置1と別体としてもよいし、一体としてもよい。また、制御部100は、立体造形装置1の内部にあってもよいし、立体造形装置1の外部にあってもよい。
【0048】
<立体造形方法>
図5は、本発明の一実施形態に係る立体造形方法のフローチャートである。
図5に示すフローチャートは、本実施形態に係る立体造形装置1により実施される立体造形物64の一連の造形動作の流れを示す。
【0049】
ステップS1では、制御部100は、造形データ作成装置104から造形データを受信する。制御部100は、造形データに基づく制御指令を、立体造形装置1の各要素に出力する。
【0050】
ステップS2では、粉混合部2により、ステップS1にて制御部100から入力された制御指令に基づき、所定の混合比で新粉と回収粉とが混合されて混合粉が作成される。粉混合部2で混合された混合粉は造形部3に供給され、造形物62を造形するための粉末50として用いられる。なお、粉末50は混合粉とせず、新粉のみ、もしくは回収粉のみをとしてもよい。
【0051】
ステップS3では、造形部3により、ステップS1にて制御部100から入力された制御指令に基づき、ステップS2で粉混合部2から供給された粉末50を用いて造形物62が作成される(造形工程)。造形工程は、第一の粉末50で粉末層51を形成する工程と、粉末層51に造形液60を付与する工程が含まれる。特に本実施形態では、造形部3は、粉末50を用いて、内部の空洞81と、空洞81から外部に繋がる開口部82とを有する造形物62を造形する。造形物62が収容される造形槽12は、造形部3から乾燥部4に搬送される。また、造形部3において造形槽12から溢れた余剰粉は回収部9により回収され、粉混合部2に供給される。
【0052】
ステップS4では、乾燥部4により、ステップS3にて造形された造形物62が乾燥される。乾燥部4は、制御部100からの制御指令に応じた乾燥温度や乾燥時間で造形物を乾燥する。乾燥完了後の造形物62が収容される造形槽12は、乾燥部4から粉除去部5に搬送される。
【0053】
ステップS5では、粉除去部5により、ステップS4にて乾燥された造形物62から余剰の粉末50(余剰粉)が除去されて、グリーン体63が作成される(粉除去工程)。余剰粉が除去されたグリーン体63は、粉除去部5から充填部6に搬送される。また、余剰粉は回収部9により回収され、粉混合部2に供給される。
【0054】
ステップS6では、充填部6により、ステップS5にて作成されたグリーン体63の空洞81に開口部82を介して第二の粉末52が充填される(充填工程)。充填部6は、例えば中空状の管などを開口部82から空洞81内に挿入し、この管を介して第二の粉末52を挿入する。これよって、第二の粉末52を空洞81内に充填することができる。なお、ステップS6の充填工程では、充填部6の代わりに、作業員が手動で第二の粉末52を空洞81に充填してもよい。第二の粉末52が充填されたグリーン体63は、充填部6から焼結部7に搬送される。
【0055】
ステップS7では、焼結部7により、ステップS6にて第二の粉末52が充填されたグリーン体63の脱脂処理が行われる(脱脂工程)。この処理により、グリーン体63から造形液60のバインダー成分が除去される。
【0056】
ステップS7の脱脂工程では、例えば焼結部7に含まれる脱脂装置を用いてグリーン体63を脱脂する。具体的には、グリーン体63を樹脂の熱分解温度以上で加熱すると、グリーン体63に含まれる樹脂が脱脂される。脱脂工程の詳細としては、例えば、アクリル系材料を含む樹脂成分を、その熱分解温度より高く、かつ、純アルミニウム、アルミニウム合金材料の融点もしくは固相線温度よりも低い温度で分解させる。グリーン体63に含まれる樹脂成分によっては、加熱保持する温度を複数設定することも可能である。もしくは、加熱ではなく、グリーン体63を溶媒に浸漬することで、樹脂を抽出する溶媒抽出による脱脂法を適用してもよい。
【0057】
ステップS8では、焼結部7により、ステップS6にて空洞81に第二の粉末52が充填され、ステップS7に脱脂処理が行われたグリーン体63の焼結処理が行われる(焼結工程)。焼結工程中として、例えば焼結開始後、焼結終了までの間、空洞81から開口部82を介して第二の粉末52の一部が排出される。焼結処理によってグリーン体63が焼結されて立体造形物64が生成される。焼結処理後の空洞81に第二の粉末52が充填された状態の立体造形物64は、焼結部7から除去部8に搬送される。
【0058】
ステップS8の焼結工程では、例えば焼結部7に含まれる焼結装置を用いて、脱脂されたグリーン体63を焼結する。具体的には、脱脂工程より高い温度でグリーン体63を加熱することで、純アルミニウムまたはアルミ合金材料が一体化された立体造形物64(グリーン体の焼結体)を得られる。ここでアルミ合金材料とは、Al-Cu、Al-Mn、Al-Mg、Al-Si、Al-Si-Mg、Al-Si-Cu、Al-Zn-Mg、Al-Li系合金、もしくは、これらに類する合金材料が含まれる。
【0059】
焼結工程の詳細としては、脱脂後のグリーン体63を1℃/h(時間)~200℃/hでアルミ液相線と固相線の間の温度まで昇温させた後、1~10時間ほど温度保持する。より具体的な最高到達温度としては、アルミ液相を10~50%発生させる温度であることが望ましい。なお、昇温速度は途中で変えてもよい。脱脂工程と焼結工程は、真空、Ar、H2、N2等の雰囲気下である。加熱した後、装置内を冷却して、焼結体を取り出す。
【0060】
例えば、AlSi10Mgとアクリル樹脂を含むグリーン体63を脱脂する場合、アクリル樹脂が分解する温度以上、かつ、AlSi10Mgの固相線温度(約570℃)以下にて加熱する。更に、焼結する場合は、グリーン体63を固相線温度(約570℃)以上、液相線温度(約600℃)以下の温度で、1~10時間加熱する。
【0061】
なお、ステップS8の脱脂工程と、ステップS9の焼結工程は、例えば本実施形態の焼結部7のように同一の脱脂・焼結装置を用いて、連続して実施してもよいし、脱脂装置と焼結装置とを別々に用いて実施してもよい。
【0062】
ステップS9では、除去部8により、ステップS8にて焼結処理が行われた立体造形物64の空洞81から第二の粉末52が除去される(除去工程)。除去部8は、例えば空気を吹き付けて第二の粉末52を飛ばすなどの任意の手法を用いて、空洞81から第二の粉末52を除去することができる。なお、ステップS9の除去工程では、除去部8の代わりに、作業員が手動で空洞81から第二の粉末52を除去してもよい。また、除去工程では、グリーン体セッター、セラミック簿ブロックセッター、造形物外部のセラミック粉体セッターなどのその他保持体の除去も併せて行うのが好ましい。ステップS9の処理が完了すると本制御フローを終了する。
【0063】
図6は、造形物の構造の第一例を示す模式図である。
図6(A)は、造形物の断面図、
図6(B)は、空洞81から開口部82を介して第二の粉末の一部52Aが排出される模式図である。造形物には、内部の空洞81と、この空洞81と造形物の外部とを接続する単一の開口部82とが設けられている。空洞81には、第二の粉末52が充填されている。
【0064】
図6(A)のように、第二の粉末52が開口部82を介して空洞81に充填された状態でグリーン体63が焼結部7により焼結される。焼結が終わると、
図6(B)に示すように立体造形物64が生成される。焼結中は、グリーン体63の外形の収縮に伴って、内部の空洞81の容積も縮小する。したがって、収縮に伴って空洞81に充填可能な第二の粉末52の量も変化する。特に本実施形態では、グリーン体63の空洞81の収縮に伴って、空洞81内に収まりきらなくなった第二の粉末の一部52Aが、開口部82からグリーン体63の外部へ排出される。これにより、グリーン体63の外形の収縮による影響を抑制し、造形品質を向上できる。
【0065】
また、開口部82は、空洞81の径より小さい。そして、開口部82は、グリーン体63の側面に設けられる。さらに、開口部82は、空洞81の長手方向の端部に設けられる。例えば、空洞81はY方向が長手方向となるように形成される。開口部82は空洞81のY負方向側の端部に形成される。開口部82は、空洞81の収縮度合いが大きい長手方向側に形成されるので、開口部82から第二の粉末52が外部に排出しやすくなる。
【0066】
ここで、造形物62の内部の空洞81に第二の粉末52を充填することの利点を説明する。脱脂工程において脱脂されたグリーン体63は非常に脆くなり、所定の応力によってグリーン体63は崩れてしまう虞がある。また焼結中のグリーン体63は非常に脆いので、グリーン体63は、変形や破損などの課題が生じる。
【0067】
特に、造形物62が内部に空洞81を有する形状である場合に、この課題は顕著である。そこで本実施形態に係る立体造形装置1では、内部に空洞81を有する立体造形物64を造形する場合には、充填工程において、グリーン体63の内部の空洞81を第二の粉末52で充填する。これにより、焼結工程におけるグリーン体63の強度を向上させ、グリーン体63の変形や破損を防止できる。
【0068】
ただし、焼結工程中にグリーン体63が緻密化して収縮していくのに対し、第二の粉末52は収縮しない。そのため、焼結工程の開始から終了まで第二の粉末52の全てが、グリーン体63の空洞81にとどまっている場合、空洞81が膨張してグリーン体63を変形させてしまう虞がある。
【0069】
そこで本実施形態では、造形物62に、第二の粉末52が排出する開口部82を設けておく。具体的には、造形物62の内部の空洞81から外部に繋がる開口部82を予め造形部3により設けておく。これにより、焼結工程中にグリーン体63が収縮する際には、グリーン体63の収縮に合わせて第二の粉末52が流動し、開口部82から第二の粉末の一部52Aが排出する。これによって、空洞81に充填される第二の粉末52の影響によってグリーン体63の変形や破損の発生を防止することができる。
【0070】
第二の粉末52は、粉末50より高い融点であることが好ましい。粉末50として、アルミニウムやアルミニウム合金を用いた場合、第二の粉末52として、セラミックを用いることが好ましく、アルミナ(融点2072度)やジルコニア(融点2715℃)を用いるのが特に好ましい。
【0071】
また、空洞81に充填した第二の粉末52は、焼結時の収縮に伴い空洞81から開口部82を通ってグリーン体63の外部に排出される必要があるため、流動性が求められる。流動性を表す指標としては、真球度、粒度分布、安息角などがある。
【0072】
また、第二の粉末52は空洞81をできるだけ隙間なく埋めるのが好ましいため、粒径は小さいほど良い。以上が本実施形態で第二の粉末52に求められる特性である。
【0073】
なお、空洞81の形状は、製造したい部品にあわせて任意の形状としてよい。例えば立体造形物64がヒートシンクである場合には、空洞81はヒートシンク内部の流路を構成する。空洞81の容積が小さいほど、グリーン体63の収縮に伴い第二の粉末52の量が少なくなるため、変形や破損の発生を防止できる。また開口部82について、断面積は大きいほどよい。また、焼結工程により開口部82の形状も収縮するので、開口部82の径は、収縮後も維持できる程度の寸法が好ましい。
【0074】
立体造形物64がヒートシンクである場合には、ヒートシンクの流体の入口と出口を開口部82として兼用できる。この場合、開口部82は、部品を接続するために加工しやすい円形状が好ましい。また、開口部82の径は、例えば12mm程度が好ましい。このように開口部82を流体の入口と出口として兼用できると、造形データに逃げ穴を追加する作業が不要となり、造形効率を向上できる。
【0075】
本実施形態に係る立体造形方法は、内部に空洞81を有する造形物62を製造する方法であって、造形物62は、空洞81と造形物62の外部とを接続する開口部82を含み、粉末50で造形物62を造形する造形工程S3と、造形工程S3にて造形された造形物62の開口部82から空洞81に第二の粉末52を充填する充填工程S6と、充填工程S6にて空洞81に第二の粉末52を充填されたグリーン体63を焼結する焼結工程S8と、開口部82から空洞81内の第二の粉末52を除去する除去工程S9と、を含む。第二の粉末52の融点は、焼結工程S8における焼結温度より高い。
【0076】
この構成により、充填工程S6において造形物62の空洞81に第二の粉末52が充填された後に焼結工程S8で焼結されるので、焼結工程中にグリーン体63が収縮し、空洞81を変形させるような応力が発生する場合でも、空洞81に充填されている第二の粉末52によって変形を抑制できる。また、焼結工程中にグリーン体63が収縮に伴って空洞81も収縮する。このため、空洞81に充填された第二の粉末52の逃げ道がない場合には、空洞81の縮小に伴って空洞内部の第二の粉末52によって空洞81の内壁が外部側に押圧されるため、グリーン体63が外側に湾曲するように変形する虞がある。これに対して本実施形態では、空洞81の収縮に伴って、第二の粉末52の一部52Aが開口部82を介してグリーン体63の外部に排出される。これにより、焼結工程中にグリーン体63と空洞81が収縮する場合も、空洞81に適量の第二の粉末52が充填された状態を維持することができるので、グリーン体63の変形や破損を防止できる。
【0077】
また、開口部82は、焼結工程中に第二の粉末52の一部52Aが排出されればよく、形状は制約されない。したがって、本実施形態に係る立体造形方法によれば、造形品質を向上できる。
【0078】
なお、本実施形態に係る立体造形装置1は、造形工程を実施する造形部3と、充填工程S6を実施する充填部6と、焼結工程S8を実施する焼結部7と、除去工程S9を実施する除去部8と、を備えるので、本実施形態に係る立体造形方法と同様の効果を奏することができる。
【0079】
次に、複数の抜け穴を設ける構成について
図7乃至9を用いて説明する。
【0080】
図7は、造形物の構造の第二例を示す模式図である。
図7は、
図6に対し、複数の抜け穴として2つの開口部82、83を設けている。これによって、グリーン体63が収縮するときに第二の粉末52への圧力を分散できる。
図7(A)は、YZ軸方向の断面図であり、
図7(B)はY負方向側から見た側面図である。
【0081】
図7(A)に示すように、開口部83は、開口部82より小さい。開口部82、83は、空洞81を介して対向している。
図7(B)に示すように、開口部82、83の断面形状は真円であり、開口部83の円形状は開口部82の円形状より小さい。開口部82、83の断面形状は真円の他、楕円、多角形等でもよい。開口部82は、開口部83の一部から延伸する軸上にある。開口部82、83の位置は、一方の開口部82の軸線方向に沿って他方の開口部83を投影したとき、他方の開口部83の一部または全部が一方の開口部82と重なりあう位置が好ましい。例えば、開口部83は、開口部82の投影と一部が重なり合っている。これによって、第二の粉末52が同一軸(
図7ではY方向)の対となる方向から排出できる。
【0082】
さらに、例えば空洞81が左右対称形状である場合は、開口部82、83の形状および径は同じであることが好ましく、同軸上にあることが好ましい。空洞81が左右対称形状でない場合、空洞81の形状に合わせて、開口部82、83の形状や径を調整することが好ましい。形状や径を同じにする、もしくは、調整することによって、第二の粉末52の排出する量と速度を均等にできる。
【0083】
図8は、造形物の構造の第三例を示す模式図である。
図8(A)は、YZ軸方向の断面図であり、
図8(B)はY負方向側から見た側面図であり、
図8(C)はZ正方向側から見た平面図である。
【0084】
図8は、
図6及び7に対し、複数の抜け穴として4つの開口部82、83、84、85を設けている。4つの開口部のうち第一の対となる2つの開口部82、83が対向して配置され、第二の対となる2つの開口部84、85が対向して配置される。
【0085】
図8(B)に示すように第一の対となる2つの開口部82、83は、一方の開口部82の軸線方向に沿って他方の開口部83を投影したとき、他方の開口部83の一部または全部が一方の開口部82と重なりあう。また、
図8(C)に示すように、開口部85は、開口部84より小さい。開口部84,85は、空洞81を介して対向している。
図8(A)に示すように、開口部84は、開口部85の一部から延伸する軸上にある。また、第二の対となる2つの開口部84、85は、一方の開口部84の軸線方向に沿って他方の開口部85を投影したとき、他方の開口部85の一部または全部が一方の開口部84と重なりあう。
【0086】
また、
図8では4つの抜け穴として2対の抜け穴を設ける構成としたが、開口部の数は偶数個であればよく、例えば6つや8つなどでもよい。つまり、複数の対になった開口部のそれぞれにおいて、一方の開口部の軸線方向に沿って他方の開口部を投影したとき、他方の開口部の一部または全部が一方の開口部と重なりあえばよい。
【0087】
この構成により、焼結工程において、複数の方向から第二の粉末52を排出することが可能となる。
【0088】
また、第一の対となる2つの開口部82、83の中心を結ぶ直線と、第二の対となる2つの開口部84、85の中心を結ぶ直線が直交することが好ましい。この構成により、焼結工程S8において、グリーン体63の多くの収縮方向に対して第二の粉末52を逃がしやすくできる。
【0089】
なお、
図8では4つの抜け穴、すなわち2対の開口部の対向方向がそれぞれY方向(空洞81の長手方向)及びZ方向(空洞81の短手方向)となる構成を例示したが、さらに対向方向がX方向となる別の対の開口部を設けてもよい。
【0090】
図9は、造形物の構造の第四例を示す模式図である。
図9は、YZ軸方向の断面図である。
図9は、
図6乃至8に対し、複数の抜け穴として3つの開口部86、87、88を設けてもよい。なお、
図9では3つの開口部を設ける構成を例示したが、開口部の数は奇数個であればよく、例えば5つや7つなどでもよい。
【0091】
開口部86、87、88のそれぞれは、空洞81の中心Oから等距離の位置に設けられる。この構成により、焼結工程において、グリーン体63の収縮に伴い開口部から逃がす第二の粉末52の量を均一にできる。
【0092】
以上より、複数の開口部により、焼結工程において収縮時に第二の粉末52が抜けようとする際、空洞81の一箇所への応力の集中を防ぐことができるので、第二の粉末52を逃がしやすくでき、グリーン体63の収縮をより一層均一にできる。
【0093】
次に、テーパを設ける構成について
図10、11を用いて説明する。
【0094】
図10は、造形物の構造の第五例を示す模式図である。
図10(A)は、YZ軸方向の断面図であり、
図10(B)は、
図10(A)中の点線円Aの部分の拡大図である。
図10は
図6に対し、開口部82の空洞81側の端部にテーパ89が設けられる。
【0095】
テーパ89を設けることで、第二の粉末52の閉塞を緩和し、排出が促される。
【0096】
図10(B)には、テーパ89の傾斜角度として角度θが示される。角度θは開口部82の軸線方向からのびる水平線から所定の角度をもって設けられる。テーパ89の寸法は大きい方が好ましく、最大で空洞81からグリーン体63表面まで連続しても良い。
【0097】
図11は、造形物の構造の第六例を示す模式図である。
図11は、YZ軸方向の断面図である。
図11に示すように、開口部82の外部側の端部にテーパ90が設けられるのが好ましい。この場合、開口部82は、テーパ90によって空洞81の内側から外側にかけて、広がるように形成される。つまり、空洞81の内側から外側にかけて開口部82の断面積が大きくなっている。
【0098】
この構成により、第二の粉末52とグリーン体63壁面との抵抗が小さくなるため、第二の粉末52が容易に排出できる。また、第二の粉末52を空洞81に充填しやすくできる。
【0099】
テーパ89、90が設けられることにより、焼結工程S8において第二の粉末52が留まらず、排出しやすくできる。
【0100】
図12は、造形物の構造の第七例を示す模式図である。
図12は、YZ軸方向の断面図である。
図12の例では、グリーン体63の形状が、脱脂、焼結処理を行う際の設置姿勢において、グリーン体63の外壁から一部がY方向(水平方向)に突出する突出部63Cを有する形状である。このような形状の場合、上記の各例のように空洞81に第二の粉末52を充填する手法は、脱脂、焼結処理において突出部63Cに作用しないため、突出部63Cの変形や破損が生じる虞がある。
【0101】
そこで
図12に示すように、突出部63Cの下方に保持体91を併用する構成としてもよい。これにより、突出部63Cの姿勢を保持体91によって維持できるので、脱脂工程S7や焼結工程S8における突出部63Cの変形や破損も抑制でき、グリーン体63全体の変形や破損の防止の効果をさらに向上できる。
【0102】
なお、脱脂工程S7や焼結工程S8では、突出部63Cもグリーン体63と同様に収縮するため、突出部63CのZ方向の位置が変動する状況が考えられる。この点を考慮して、保持体91は造形物62と同じ材料の粉末50で形成されるのが好ましい。これにより、脱脂、焼結工程中に保持体91も突出部63Cやグリーン体63と同様に収縮するので、突出部63Cとの相対的な位置関係を維持することができ、突出部63Cの姿勢を保持体91によって継続して維持することが可能となる。さらに、焼結温度で融解して突出部63Cと融着しないように、保持体91のうち突出部63Cとの接触面(
図12の例では上面)は、第二の粉末52と同じ材料で形成されるのが好ましい。
【0103】
次に、造形物に封止部材63Bを設ける構成について
図13~
図19を用いて説明する。なお、以下の説明では、
図7に示した造形物の構造の第二例、すなわち複数の抜け穴として2つの開口部82、83が設けられる造形物に基づき説明するが、第二例以外の造形物の構造を適用してもよい。
【0104】
図13は、造形物の構造の第八例を示す模式図である。
図13に示すように、第八例の造形物(グリーン体63)は、本体63Aと、本体63Aは別体の封止部材63Bとを備える。本体63Aには、開口部82、83とは別の充填用開口92が設けられる。封止部材63Bは、充填用開口92を封止することができる。
【0105】
本体63A及び封止部材63Bは、共に第一の粉末50で造形される。例えば本体63A及び封止部材63Bは、ステップS3の造形工程において造形物62の一部として造形し、ステップS4の乾燥工程及びステップS5の粉除去工程を経てグリーン体63の一部として作成することができる。
【0106】
図13(A)に示すように、ステップS6の充填工程では、第一段階として、充填用開口92からグリーン体63の本体63A内部の空洞81に第二の粉末52が充填される。充填用開口92は、開口部82、83より開口面積が大きく形成される。本実施形態で例示するように造形物の本体63Aの外形と空洞81の空間形状とが共に直方体形状の場合には、本体63Aの直方体形状の六面のうち、開口部82、83が設けられる一対の対向面を除く四面のうちの任意の一面の全体が開口するよう形成し、この開口を充填用開口92として用いるのが好ましい。
図13の例では、充填用開口92は本体63Aの六面のうちZ正方向側に向く面に形成され、充填用開口92の形状はZ方向視において空洞81の内周面に沿った矩形状に形成される。このように充填用開口92を設けることにより、開口部82、83を介して第二の粉末52を充填する場合と比較して、充填工程において空洞81に第二の粉末52をより短時間で充填することができるので、充填作業をより簡易にできる。
【0107】
また、
図13(A)に示すように、ステップS6の充填工程では、第二段階として、空洞81への第二の粉末52の充填後に、充填用開口92は封止部材63Bにより封止される。封止部材63Bは、本体63Aのうち充填用開口92が設けられる端面63A1と面接触可能な平面63B1を有する。平面63B1の形状は少なくとも充填用開口92の外縁より外側に延在するよう形成されるのが好ましい。
図13の例では、封止部材63Bの平面63B1の形状は、本体63Aの直方体形状の六面のうち充填用開口92が設けられるZ正方向側を向く面の形状(端面63A1の外縁形状)と同一の矩形状である。また、
図13の例では、封止部材63Bは、一対の主面がZ方向を向き、Z負方向側を向く一方の主面が平面63B1である平板状部材である。封止部材63BのZ方向視における外縁形状は、本体63Aの外縁形状と同一形状となるよう形成される。このように封止部材63Bを形成することにより、封止部材63Bによって充填用開口92の全体を完全に塞ぐことができるので、開口部82、83とは別の充填用開口92を設ける構造においても、上述の第一例~第七例と同様に、ステップS8の焼結工程において空洞81に充填された第二の粉末52を開口部82、83から排出できる。
【0108】
また、
図13(B)に示すように、上述のように形成された封止部材63Bによって本体63Aの充填用開口92を封止した状態でステップS8の焼結工程を実施すると、封止部材63Bは充填用開口92の外縁部分と接合され、本体63Aと一体的な立体造形物64となる。このとき、
図13の例では、封止部材63BのZ方向視における外縁形状は、本体63Aの外縁形状と同一形状となるよう形成されているので、本体63Aと封止部材63Bとの接合部分を面一にでき、違和感のない一体構造とできる。
【0109】
また、
図13に示す充填用開口92及び封止部材63Bを設ける構造では、ステップS5の粉除去工程では、空洞81内の余剰の粉末50は充填用開口92を介して除去するのが好ましい。これにより、開口部82、83より開口面積が大きい充填用開口92を介して空洞81内の余剰の粉末50を除去できるので、粉除去工程において空洞81内から余剰の粉末50をより短時間で除去することも可能となり、充填工程に加えて粉除去作業もより簡易にできる。
【0110】
図14は、造形物の構造の第九例を示す模式図である。
図15は、
図14(C)中のA-A断面図である。
図14、
図15に示すように、第九例の造形物(グリーン体63)では、
図13の第八例に対して封止部材63Bの抜け止め構造が設けられる。
【0111】
図14、
図15に示すように、第九例では、本体63Aのうち充填用開口92が設けられる端面63A1からZ正方向側に立設される一対の立設部63A4、63A5が設けられる。一対の立設部63A4、63A5は、端面63A1の矩形状の四辺のうち一対の対辺に該当する部分に設けられ、
図14の例では開口部82、83がそれぞれ設けられる側面63A2、63A3に沿ってX方向に延在して設けられる。一方、封止部材63Bは、一対の立設部63A4、63A5の間に篏合するようY方向の幅寸法が形成される。
【0112】
一対の立設部63A4、63A5において、それぞれ対向する本体63Aの中心側の対向面には、それぞれ立設部63A4、63A5の延在方向に沿って溝63A6、63A7が設けられる。一方、封止部材63Bには、対向面と対向する側面に、側面の長手方向に沿って筋63B2、63B3が設けられている。筋63B2、63B3は、それぞれ溝63A6、63A7と篏合可能に形成される。また、溝63A6、63A7は、立設部63A4、63A5のX方向の端部まで設けられ、これによりX方向から筋63B2、63B3を篏入可能に設けられる。
【0113】
図14(A)に示すように、ステップS6の充填工程では、第一段階として、充填用開口92からグリーン体63の本体63A内部の空洞81に第二の粉末52が充填される。
【0114】
図14(B)に示すように、ステップS6の充填工程では、第二段階として、空洞81への第二の粉末52の充填後に、封止部材63Bの筋63B2、63B3が、本体63Aの溝63A6、63A7に例えばX正方向側から篏入される。これにより封止部材63Bが本体63Aの一対の立設部63A4、63A5の間で充填用開口92を徐々に塞ぎつつX負方向側に摺動される。
【0115】
図14(C)に示すように、ステップS6の充填工程では、第三段階として、封止部材63BがさらにX負方向側に摺動されて、本体63AのX負方向側の端部まで到達して、最終的に充填用開口92が封止部材63Bにより封止される。
【0116】
図15に示すように、充填用開口92が封止部材63Bにより封止された状態では、封止部材63Bの筋63B2、63B3が、本体63Aの溝63A6、63A7に篏合されているので、封止部材63Bが本体63Aに対してZ正方向に相対的に移動することが防止できる。つまり、
図15に点線円A、Bで示す部分、すなわち、封止部材63BのY方向の両端において、筋63B2が溝63A6に篏合されている部分Aと、筋63B3が溝63A7に篏合されている部分Bとが、封止部材63Bの抜け止め構造として機能する。
【0117】
このように封止部材63Bの抜け止め構造を設けることにより、ステップS8の焼結工程においてグリーン体63側が収縮するときに、空洞81内に充填される第二の粉末52が本体63Aと封止部材63Bとの接触面を経由して漏れてしまうことを防止できる。これにより、焼結工程中に本体63Aと封止部材63Bとの隙間に第二の粉末52が介在することを防止でき、第二の粉末52による本体63Aと封止部材63Bとの接合への影響を低減できる。この結果、焼結工程における本体63Aと封止部材63Bとの接合をより確実にできる。
【0118】
なお、
図14、
図15に示す封止部材63Bの抜け止め構造は一例であり、造形工程で造形可能な形状であれば他の構造でもよい。他の抜け止め構造としては、例えば軽圧入やねじ締結などの構造が挙げられる。
【0119】
図16は、造形物の構造の第十例を示す模式図である。
図16に示すように、第十例の造形物では、
図14、
図15の第九例に対して、封止部材63Bが本体63Aの一面の全体ではなく一部となるように設けられる。
【0120】
図16の例では、封止部材63Bと本体63Aとの抜け止め構造は第九例と同様であるが、封止部材63BのX方向の寸法が、本体63Aの充填用開口92が設けられる面のX方向の寸法より短い。
【0121】
第十例においても、第九例と同様の抜け止め構造が設けられるので、第九例と同様の効果を奏することができる。
【0122】
図17は、封止部材63Bの抜け止め手法の第一例を示す図である。
図17では、第八例の造形物を用いた焼結工程の一例が例示されている。
図17に示すように、焼結工程の際には、グリーン体63は焼結容器93の内部に収容されて焼結処理が施される。
図17の例では、グリーン体63は、封止部材63Bが本体63Aの充填用開口92を封止した状態で、封止部材63Bが本体63Aに対して焼結容器93の底面93A側に配置されるように天地反転して載置される。さらに、焼結容器93内に、本体63Aと封止部材63Bとの接触面を覆う高さまで第二の粉末52が充填される。
【0123】
図17に示す構成によって焼結処理を行えば、造形物に第九例や第十例のような抜け止め構造を設けない場合でも、ステップS8の焼結工程においてグリーン体63が収縮するときに、空洞81内に充填される第二の粉末52が本体63Aと封止部材63Bとの接触面を経由して漏れてしまうことを防止できる。
【0124】
図18は、封止部材63Bの抜け止め手法の第二例を示す図である。
図18でも、第八例の造形物を用いた焼結工程におけるグリーン体63の載置例が例示されており、
図17とは異なり焼結容器93の図示が省略されている。
【0125】
図18の例でも、グリーン体63は、封止部材63Bが本体63Aの充填用開口92を封止した状態で、封止部材63Bが本体63Aに対して焼結容器93の底面93A側に配置されるように天地反転して載置される(
図17参照)。さらに、このときグリーン体63のうち上側を向く面、すなわち本体63Aの底面63A8の上におもり94が載置される。これにより、グリーン体63は焼結容器93の底面93A側(
図18の図面下側)に荷重をかけられた状態となる。
【0126】
図18に示す構成によって焼結処理を行えば、造形物に第九例や第十例のような抜け止め構造を設けない場合でも、ステップS8の焼結工程においてグリーン体63が収縮するときに、空洞81内に充填される第二の粉末52が本体63Aと封止部材63Bとの接触面を経由して漏れてしまうことを防止できる。
【0127】
なお、
図18ではおもり94を載置する手法を例示したが、グリーン体63が焼結容器93の底面93A側に荷重をかけられた状態で設置できる構成であれば他の手法を適用してもよい。例えば焼結容器93の天面93B(
図17参照)を上下方向に可動する構成として、天面93Bを下降させてグリーン体63を下方に押圧する構成などが挙げられる。
【0128】
図19は、造形物の内部空洞81にジャイロイド構造95を設けた一例を示す図である。
図13~
図18の第八例から第十例では、ステップS6の充填工程において空洞81の第二の粉末52の充填を簡易とすることを主な目的として封止部材63Bを設けている。一方、ステップS5の粉除去工程において、空洞81内の余剰の粉末50の除去を簡易とする目的のみで封止部材63Bを設けてもよい。
【0129】
例えば
図19に示すように造形物の内部の空洞81にジャイロイド(Gyroid)構造95を設ける構成では、空洞81はジャイロイド構造95によってその形状を保持できる。このため、ステップS8の焼結工程において造形物の変形を抑制するために必ずしも第二の粉末52を空洞81に充填しておく必要が無い。一方で、空洞81内にジャイロイド構造95を設ける構成では、空洞81内部が複雑な形状となるので、ステップS5の粉除去工程において空洞81内の余剰の粉末50を除去するのに手間がかかり所要時間が比較的長くなる。
【0130】
このため、
図19に例示する構造でも、封止部材63Bを本体63Aと別体とすることで、開口部82、83より開口面積が大きい粉除去用開口96を本体63Aに設け、粉除去用開口96により空洞81を開口させることができる。この粉除去用開口96は、第八例から第十例の充填用開口92に対応する。そして、
図19の例では、ステップS5の粉除去工程では、空洞81内の余剰の粉末50は粉除去用開口96を介して除去され、除去後に粉除去用開口96が封止部材63Bにより封止される。また、
図19の例では、ステップS6の充填工程は行われず、空洞81内に第二の粉末52を充填されない状態、かつ、本体63Aの粉除去用開口96が封止部材63Bにより封止された状態で、ステップS8の焼結工程が行われる。このため、ステップS9の除去工程も行われない。
【0131】
したがって、
図19の例では、開口部82、83より開口面積が大きい粉除去用開口96を介して空洞81内の余剰の粉末50を除去できるので、粉除去工程において空洞81内から余剰の粉末50を除去する時間を大幅に削減することが可能となり、粉除去作業をより簡易にできる。
【0132】
次に、
図20を参照して、開口部82の適切な大きさについて説明する。
【0133】
図20は、開口部82の穴径の成立範囲を示す図である。
図20の横軸は開口部82に設けるテーパ角度を示し、縦軸は開口部82の穴の総面積と空洞81の体積との比率(穴の総面積/空洞の体積)を示す。ここで「穴の総面積」とは、開口部82の穴の軸心方向から視たときの断面の面積を意味する。開口部82が複数設けられる場合には、すべての穴の断面積の合計値となる。
【0134】
「テーパ角度」と、「穴の総面積/空洞の体積」と、をそれぞれ複数の組み合わせとして複数の試験用造形物を造形し、焼結工程後の造形物の変形度合いを確認した。
図20中の各プロットが複数の試験用造形物に対応し、各プロットの種類が変形度合いの結果を示す。丸のプロットは「変形無し」の結果、すなわち焼結工程後の造形物にゆがみなどの変形が生じなかったことを示す。三角形のプロットは「変形小(形状補正で対応可能)」、すなわち焼結工程後の造形物に多少の変形が生じたが、予め造形するモデルの形状を補正するなどの形状補正処理により変形分をカバーできる程度の変形であったことを示す。四角形のプロットは「変形大」の結果を示す。
【0135】
図20の結果より、内部空洞81の体積に対して、開口部82の面積の比率を0.013以上(開口部の面積÷内部空洞の体積≧0.013)とすると良いことが示された。比率を0.013以上とすることで、焼結時の第二の粉末52の収縮阻害による変形を抑えることができる。変形に対しては、予め造形するモデルの形状を補正することが有効である。
【0136】
さらに、
図20の結果より、上述の比率を0.029以上とすることで、焼結時の第二の粉末52の収縮阻害による変形は発生しないことが示された。このため、例えば、取り付け面など高い面精度を必要とする箇所を造形物とする場合については、比率を0.029以上とすることが好ましい。
【0137】
図21は、造形部の変形例を示す図である。
図21に示す変形例に係る造形部3Aは、
図2に示した造形部3の供給槽11に替えて、粉末供給部70が含まれる。
図3と共通する説明については、適宜説明を省略する。
【0138】
粉末供給部70は、造形槽12の粉末層51に粉末50を供給する。粉末供給部70は、水平方向(Y1及びY2方向)に移動可能で、造形槽12の上方を走査して、造形槽12に粉末50を供給する。
【0139】
粉末供給部70は、ホッパー71と、振動源72と、トラフ73を含む。
【0140】
ホッパー71は、造形槽12に供給する粉末50を保持する。
【0141】
トラフ73は、粉末50を造形槽12に供給する。トラフ73は、ホッパー71で保持される粉末50を造形槽12に供給する供給路である。トラフ73は、X方向への長さ(幅)が、造形槽12のX方向への長さ(幅)と同じであることが好ましい。振動源72は、トラフ73を振動させる。トラフ73が振動源72より振動することで、トラフ73の開口部から粉末50が造形槽12に落下する。
【0142】
なお、造形部3Aは、付与部40、積層ユニット30、余剰粉末槽15が含まれる。造形部として粉末供給部70は、粉末を供給することによって、粉末50を含む粉末層51を造形する。付与部40は、粉末層51に造形液60を付与し、造形層61を形成する。造形部3Aは、複数の造形層61が積層され造形物が造形される。
【0143】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0144】
上記実施形態では、単一の立体造形装置1を例示して説明したが、複数の装置を具備する立体造形システムでもよい。立体造形システムは、立体造形装置1の各構成要素である粉混合部2、造形部3、乾燥部4、粉除去部5、充填部6、焼結部7、除去部8、回収部9、及び制御部100にそれぞれ対応する、粉混合装置、造形装置、乾燥装置、粉除去装置、充填装置、焼結装置、除去装置、回収装置、及び制御装置を具備する。立体造形システムでは、複数の装置が相互に通信可能に接続され、複数の装置が連動して立体造形動作を行うことができる。
【0145】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 内部に空洞を有する造形物を製造する方法であって、
前記造形物は、前記空洞と前記造形物の外部とを接続する開口部を含み、
第一の粉末で前記造形物を造形する造形工程と、
前記開口部から前記空洞に第二の粉末を充填する充填工程と、
前記充填工程にて前記空洞に前記第二の粉末を充填された前記造形物を焼結する焼結工程と、
前記開口部から前記空洞内の前記第二の粉末を除去する除去工程と、
を含む、
立体造形方法。
<2> 前記第一の粉末が金属である前記<1>に記載の立体造形方法。
<3> 前記第二の粉末の融点は、前記焼結工程の焼結温度より高い前記<1>または<2>に記載の立体造形方法。
<4> 前記造形工程は、
前記第一の粉末で粉末層を形成する工程と、
前記粉末層に造形液を付与する工程と、を含む、前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<5> 前記焼結工程で、
前記空洞から前記開口部を介して前記第二の粉末の一部が排出される前記<1>~<4>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<6> 前記開口部の径は、前記空洞の径より小さい前記<1>~<5>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<7> 前記開口部は、前記造形物の側面に設けられる前記<1>~<6>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<8> 前記開口部は、前記空洞の長手方向の端部に設けられる、
前記<1>~<7>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<9> 前記造形物は、複数の前記開口部を含む、
前記<1>~<8>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<10> 前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部を含み、
前記第1の開口部は、前記第2の開口部より小さい、
前記<1>~<9>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<11> 前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部を含み、
前記第1の開口部と前記第2の開口部は、前記空洞を介して対向している、
前記<1>~<10>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<12> 前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部を含み、
前記第1の開口部は、前記第2の開口部の一部から延伸する軸上にある、
前記<1>~<11>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<13> 前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部と第3の開口部と第4の開口部を含み、
前記第1の開口部と前記第2の開口部は、前記空洞を介して対向し、
前記第3の開口部と前記第4の開口部は、前記空洞を介して対向する、
前記<1>~<12>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<14> 前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部と第3の開口部と第4の開口部を含み、
前記第1の開口部は、前記第2の開口部の一部から延伸する軸上にあり、
前記第3の開口部は、前記第4の開口部の一部から延伸する軸上にある、
前記<1>~<13>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<15> 前記開口部として少なくとも第1の開口部と第2の開口部と第3の開口部と第4の開口部を含み、
前記第2の開口部の中心から第1の開口部に向かって延伸する軸と、
前記第4の開口部の中心から第3の開口部に向かって延伸する軸と、
は、直交する、
前記<1>~<14>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<16> 前記造形物は、複数の前記開口部を含み、
前記複数の開口部のそれぞれは、前記空洞の中心から等距離の位置に設けられる、
前記<1>~<15>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<17> 前記造形物は、前記開口部の前記空洞側及び前記外部側の少なくとも一方の端部にテーパが設けられる
前記<1>~<16>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<18> 前記空洞が前記造形物内に形成される流路であり、
前記開口部が前記流路の入口と出口である、
前記<1>~<17>のいずれか一項に記載の立体造形方法。
<19> 内部に空洞を有する造形物を製造する装置であって、
前記造形物は、前記空洞と前記造形物の外部とを接続する開口部を含み、
第一の粉末で前記造形物を造形する造形部と、
前記開口部から前記空洞に第二の粉末を充填する充填部と、
前記充填部により前記空洞に前記第二の粉末を充填された前記造形物を焼結する焼結部と、
前記開口部から前記空洞内の前記第二の粉末を除去する除去部と、
を備える、
立体造形装置。
<20> 内部に空洞を有する造形物を製造する方法であって、
前記造形物は、前記空洞と前記造形物の外部とを接続する開口部と、前記開口部とは別の充填用開口と、前記充填用開口を封止する封止部材と、を含み、
第一の粉末で前記造形物を造形する造形工程と、
前記充填用開口から前記空洞に第二の粉末を充填し、充填後に前記充填用開口を前記封止部材により封止する充填工程と、
前記充填工程にて前記空洞に前記第二の粉末を充填された前記造形物を焼結する焼結工程と、
前記開口部から前記空洞内の前記第二の粉末を除去する除去工程と、
を含む、
立体造形方法。
<21> 前記造形工程の後、かつ、前記充填工程の前に、前記造形物から余剰の粉末を除去する粉除去工程を含み、
前記粉除去工程では、前記空洞内の前記余剰の粉末は前記充填用開口を介して除去される、
前記<20>に記載の立体造形方法。
<22> 内部に空洞を有する造形物を製造する方法であって、
前記造形物は、前記空洞と前記造形物の外部とを接続する開口部と、前記開口部とは別の粉除去用開口と、前記粉除去用開口を封止する封止部材と、を含み、
第一の粉末で前記造形物を造形する造形工程と、
前記造形物から余剰の粉末を除去する粉除去工程と、
前記造形物を焼結する焼結工程と、
を含み、
前記粉除去工程では、前記空洞内の前記余剰の粉末は前記粉除去用開口を介して除去され、除去後に前記粉除去用開口が前記封止部材により封止される、
立体造形方法。
<23> 前記空洞の体積に対して、前記開口部の面積の比率が0.013以上である、
前記<6>に記載の立体造形方法。
【符号の説明】
【0146】
1 立体造形装置
3 造形部
6 充填部
7 焼結部
8 除去部
50 粉末(第一の粉末)
52 第二の粉末
62 造形物
63 グリーン体
63B 封止部材
64 立体造形物
81 空洞
82 開口部
92 充填用開口
96 粉除去用開口
S3 造形工程
S5 粉除去工程
S6 充填工程
S8 焼結工程
S9 除去工程
【先行技術文献】
【特許文献】
【0147】