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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134581
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20240927BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20240927BHJP
   A21D 15/02 20060101ALI20240927BHJP
   A23D 9/013 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A23D9/00 502
A21D2/16
A21D15/02
A23D9/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044845
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野口 修
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG04
4B026DK10
4B026DP01
4B026DP03
4B026DX02
4B032DB02
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK10
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK54
4B032DL11
4B032DP08
4B032DP23
4B032DP33
4B032DP40
4B032DP73
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、液状油を豊富に含んでも、膨らみがよい生地が得られる油脂組成物を提供することである。また、本発明の目的は、当該油脂組成物が使用された、品温が低い状態で食されてもソフトな食感を有するベーカリー食品を提供することである。
【解決手段】ポリグリセリン脂肪酸エステルと液状油とを含有する油脂組成物であって、前記液状油の含有量が90~98.5質量%であり、前記油脂組成物の20℃における破断応力が50~1000gf/cmである、前記油脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリン脂肪酸エステルと液状油とを含有する油脂組成物であって、
前記液状油の含有量が90~98.5質量%であり、前記油脂組成物の20℃における破断応力が50~1000gf/cmである、前記油脂組成物。
【請求項2】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸全量に占める飽和脂肪酸の割合が80質量%以上である、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
発酵工程を伴うベーカリー食品用である、請求項1または2に記載の油脂組成物。
【請求項4】
品温が-10~10℃の状態で喫食されるベーカリー食品用である、請求項1または2に記載の油脂組成物。
【請求項5】
融液状態から静置冷却する、請求項1または2に記載の油脂組成物の製造方法。
【請求項6】
ベーカリー食品の製造方法であって、
請求項1または2に記載の油脂組成物を生地に練り込んだ後、発酵工程を採る、前記ベーカリー食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベーカリー食品の製造に適した油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食パン、菓子パン、デニッシュペストリー、ケーキ、クッキー、ビスケットなどのベーカリー食品は、小麦粉などの穀粉に油脂組成物が、練り込まれた、および/または、折り込まれた、生地が焼成されることにより製造される。焼きたてのベーカリー食品は、風味と食感が良好であり、総じて人気がある。しかし、近頃では、例えば、チルド状態で食するクリームパンやジャムパンが流行するなど、多様な食べ方に適したベーカリー食品が求められるようになってきている。
【0003】
チルド状態で食するベーカリー食品、特に、パン類やケーキ類は、常温で食されるベーカリー食品より総じてソフトな食感が求められる。例えば、特許文献1には、ソフトで老化の遅いパンを製造するために、液体油を40質量%以上含有し、かつ、25℃でのSFIが10以上である、製パン用油脂組成物が開示されている。しかし、液状油の割合が多くなると、ソフトな食感が付与されやすくなる一方で、生地に油が分散し難くなるので、パンの膨らみ(ボリューム)が乏しくなったり、くちゃついた(歯切れが非常に悪い)食感になったり、することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-47028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、品温が低い状態(0~10℃程度)で食されても、ソフトな食感を有するベーカリー食品の製造に適した油脂組成物の開発が求められている。
【0006】
本発明の目的は、液状油を豊富に含んでも、膨らみがよい生地が得られる油脂組成物を提供することである。また、本発明の目的は、当該油脂組成物が使用された、品温が低い状態で食されてもソフトな食感を有するベーカリー食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、液状油を主体とする、20℃における硬さが特定の範囲に調整された油脂組成物を使用することにより、チルド状態でもソフトな食感を有するベーカリー食品が得られることを見出した。これにより、本発明は完成された。すなわち、本発明は以下の態様であり得る。
【0008】
[1]ポリグリセリン脂肪酸エステルと液状油とを含有する油脂組成物であって、
前記液状油の含有量が90~98.5質量%であり、前記油脂組成物の20℃における破断応力が50~1000gf/cmである、前記油脂組成物。
[2]前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸全量に占める飽和脂肪酸の割合が80質量%以上である、[1]の油脂組成物。
[3]発酵工程を伴うベーカリー食品用である、[1]または[2]の油脂組成物。
[4]品温が-10~10℃の状態で喫食されるベーカリー食品用である、[1]または[2]の油脂組成物。
[5]融液状態から静置冷却する、[1]または[2]の油脂組成物の製造方法。
[6]ベーカリー食品の製造方法であって、
[1]または[2]の油脂組成物を生地に練り込んだ後、発酵工程を採る、前記ベーカリー食品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、液状油を豊富に含んでも、生地への分散性がよい油脂組成物を提供することができる。また、本発明によると、当該油脂組成物が使用された、品温が低い状態で食されてもソフトな食感を有するベーカリー食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。なお、以下で例示する好ましい形態やより好ましい形態などは、「好ましい」や「より好ましい」などの表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、「好ましい」や「より好ましい」などの表現にかかわらず各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。
【0011】
本発明の油脂組成物は、液状油を含有する。ここで、液状油は、食用に適する、10℃、24時間静置で流動性を有する(好ましくは清澄な)油脂であり、好ましくは5℃、24時間静置で流動性を有する(好ましくは清澄な)油脂である。より好ましくは日本農林規格(JAS)の冷却試験において0℃5.5時間清澄な(いわゆる、サラダ油規格を満たす)油脂である。このような液状油としては、例えば、ナタネ油、米油、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、紅花油、オリーブ油などが挙げられる。本発明の油脂組成物に占める液状油の含有量は、90~98.5質量%であり、好ましくは92~97.5質量%であり、より好ましくは93.5~96.8質量%であり、さらに好ましくは94.5~96.5質量%である。
【0012】
本発明の好ましい形態の1つによれば、油脂組成物は、液状油以外の食用に適する油脂を含んでもよい。液状油以外の油脂としては、例えば、50℃以上の融点を有する油脂、具体例としては、パームステアリンや(極度)硬化油が挙げられる。油脂組成物に占める50℃以上の融点を有する油脂の含有量は、好ましくは0~5質量%であり、より好ましくは0~3質量%であり、さらに好ましくは0~2質量%であり、ことさらに好ましくは0~1質量%である。油脂組成物に占める50℃以上の融点を有する油脂の含有量が上記範囲程度であると、油脂組成物のベーカリー生地への練り込み適性の向上が見込まれる一方で、ベーカリー食品の品温が低い状態でもベーカリー食品のソフトな食感を損なう可能性が極めて低い。
【0013】
本発明の油脂組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する。本発明の油脂組成物は、少なくともポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することにより、20℃での破断応力が50~1000gf/cmであるゲル状ないし固形状を呈する。本発明の油脂組成物の20℃での破断応力は、好ましくは80~800gf/cmであり、より好ましくは100~700gf/cmであり、さらに好ましくは120~600gf/cmである。油脂組成物の20℃の破断応力が上記程度の範囲であると、液状油を多く含む油脂組成物であっても、生地への練り込みが容易である。なお、油脂組成物の破断応力は、例えば、レオメーター(CREEP METER RE2-33005C(株式会社山電製)など)を用いて、直径7cm高さ3cmの円筒形の容器に70g充填された品温20℃の油脂組成物の破断荷重(単位gf)を、進入速度5mm/秒、進入距離(深度)10mm、プランジャーφ15mm(1.77cm)円柱、の条件で測定できる。
【0014】
本発明の油脂組成物に含まれるポリグリセリン脂肪酸エステルは、90~98.5質量%の液状油を含む油脂組成物の20℃における破断応力を50~1000gf/cmに調整できるものであれば、特に限定されない。しかし、本発明の好ましい形態の1つによれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、構成脂肪酸全量に占める飽和脂肪酸の割合が80質量%以上であり、好ましくは85~100質量%である。飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、などが挙げられる。飽和脂肪酸は、好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、である。飽和脂肪酸は、2種以上であってもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸全量に占めるベヘン酸の割合は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20~50質量%である。なお、縮合リシノール酸を構成脂肪酸とするポリグリセリン脂肪酸エステルは、一般に、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(以下、PGPRとも表記する)と称される。本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルには、構成脂肪酸全量に占める縮合リシノール酸の割合が20質量%以上であるものは含めない。
【0015】
本発明の好ましい形態の1つによれば、油脂組成物に含まれるポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、平均重合度2~50のポリグリセリンであり、好ましくは平均重合度10~40のポリグリセリンである。なお、ここで平均重合度とは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンの水酸基価より計算された値であり、例えば、次式(式1)及び(式2)から平均重合度(n)が導き出せる。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
また、本発明の好ましい形態の1つによれば、油脂組成物に含まれるポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。ここでエステル化率は、ポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリンに付加している脂肪酸のモル数(M)としたとき、以下の式で算出される。
エステル化率(%)=(M/(n+2))×100
【0016】
本発明の好ましい形態の1つによれば、油脂組成物に占めるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、好ましくは1.5~10質量%であり、より好ましくは2.5~8質量%であり、さらに好ましくは3.2~6.5質量%であり、ことさらに好ましくは3.5~5.5質量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、市販品でもよいし、従来公知の方法により製造してもよい。市販品としては太陽化学株式会社製のサンファットPS-68、阪本薬品工業株式会社のSYグリスターPS-3S、CV-23、三菱ケミカル株式会社製のリョートーTMポリグリエステルB-100D、などが挙げられる。
【0017】
本発明の好ましい形態の1つによれば、油脂組成物にはポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤が含まれてもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリソルベート、レシチン、などが挙げられる。しかし、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤は、好ましくはモノグリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)である。モノグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、好ましくは飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、などが挙げられる。飽和脂肪酸は、好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、である。飽和脂肪酸は、2種以上であってもよい。油脂組成物に含まれるポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤の含有量は、好ましくは0~4質量%であり、より好ましくは0~3質量%であり、さらに好ましくは0~2質量%であり、ことさらに好ましくは0~1質量%である。
【0018】
本発明の好ましい形態の1つによれば、油脂組成物にはポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤以外のその他成分が含まれてもよい。その他の成分としては、水、増粘安定剤、食塩、塩化カリウムなどの塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸などの酸味料、糖類、糖アルコール類、ステビア、アスパルテームなどの甘味料、β-カロテン、カラメル、紅麹色素などの着色料、トコフェロール、茶抽出物(カテキン)、ルチンなどの酸化防止剤、小麦蛋白、大豆蛋白などの植物蛋白、卵、卵加工品、香料、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳清蛋白などの乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料などの食品添加物、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類などの食品素材、が挙げられる。油脂組成物に含まれるその他成分の含有量は、好ましくは0~5質量%であり、より好ましくは0~3質量%であり、さらに好ましくは0~2量%である。
【0019】
本発明の油脂組成物は、20℃における破断応力を50~1000gf/cmに調製できれば、その製造方法は特に限定されない。通常の、ゲル状ないし固形状の油脂組成物を製造する方法が適用され得る。しかし、本発明の好ましい形態の1つによれば、90~98.5質量%の液状油とポリグリセリン脂肪酸エステルとを含む油脂組成物は、加熱により融液状態(油脂および乳化剤の結晶が融解して清澄な状態)とした後に、適度な環境温度下で静置冷却することにより、調製できる。加熱は、油脂および乳化剤の結晶が融解する温度でよく、好ましくは60~90℃、より好ましくは70~80℃であり得る。また、静置する環境温度は、好ましくは0~30℃、より好ましくは5~20℃であり得る。融液状態の油脂組成物は、ピロー包装などに充填された後で、静置冷却されてもよい。
【0020】
本発明のベーカリー食品は、本発明の油脂組成物を含むベーカリー食品であれば特に限定されない。しかし、本発明の好ましい形態の1つによれば、油脂組成物はベーカリー食品生地への練り込み用途に使用される。ベーカリー食品生地は、穀粉を主成分とする。穀粉は通常、穀物を挽くなどして粉状にしたものであり、ベーカリー生地に配合されるものであれば、特に限定されない。穀粉の具体例としては、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉などが挙げられる。穀粉は、澱粉やグルテンなどの化工粉末であってもよい。ベーカリー食品生地に対する油脂組成物の使用量は、ベーカリー食品の種類によって適宜設定されればよい。例えば、ベーカリー生地に配合される穀粉100質量部に対して、油脂組成物の使用量は、好ましくは0.5~40質量部であり、より好ましくは2~30質量部であり、最も好ましくは4~20質量部である。
【0021】
本発明の好ましい形態の1つによれば、ベーカリー食品は、油脂組成物が練り込まれたベーカリー食品生地を加熱焼成することで得られる。加熱焼成は、オーブン加熱、直焼きの他、電子レンジ調理、煮る、蒸す、揚げるなどの加熱調理を含む。例えばオーブンの場合、焼成温度は、好ましくは150~250℃であり、より好ましくは160~240℃であり、焼成時間は、好ましくは3~60分間であり、より好ましくは10~45分間である。
【0022】
本発明の好ましい形態の1つによれば、加熱焼成前のベーカリー食品生地は、発酵工程を経た生地である。発酵工程は、パン生地であれば、例えば、油脂組成物を練り込んだ後の生地の、15~40℃で10分~36時間程度のフロア発酵や、フロア発酵後に分割および成形されたパン生地の、17~40℃で10分~2時間程度のホイロ発酵、などが挙げられる。
【0023】
本発明の好ましい形態の1つによれば、ベーカリー食品には、油脂組成物、穀粉以外に、通常、ベーカリー食品に配合される食品素材であれば、特に制限なく配合できる。また、これらの配合量も、通常、ベーカリー食品に配合される範囲で特に制限なく配合できる。食品素材は、具体的には、水、糖、糖アルコール、卵、卵加工品、澱粉、食塩、可塑性油脂、乳化剤、乳化起泡剤(乳化油脂)、チーズ、生クリーム、合成クリーム、ヨーグルト、全脂粉乳、脱脂粉乳、牛乳、濃縮乳、合成乳、イースト、イーストフード、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、コーヒー、紅茶、抹茶、野菜類、果物類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、肉類、魚介類、豆類、きな粉、豆腐、豆乳、大豆粉、大豆蛋白、酵素、膨張剤、甘味料、調味料、香辛料、着色料、香料などが挙げられる。
【0024】
本発明のベーカリー食品は、本発明の油脂組成物を用いること以外は、公知の製造方法を適用して製造できる。本発明のベーカリー食品の具体例としては、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、カットパン、ウェハース、サブレ、ラングドシャ、マカロンなどの焼き菓子、バターケーキ類(パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラなど)、スポンジケーキ類(ショートケーキ、ロールケーキ、トルテ、デコレーションケーキ、シフォンケーキなど)、シュー菓子、発酵菓子、パイ、ワッフルなどの洋生菓子、食パン、菓子パン、フランスパン、シュトーレン、パネトーネ、ブリオッシュ、ドーナツ、デニッシュ、クロワッサン、ピザ、ナン、フォカッチャ、チャバタなどのパンが挙げられる。本発明の好ましい形態の1つによれば、本発明のベーカリー食品は、品温が低くてもソフトな食感を有するので、品温が-10℃~10℃の状態で保管および/または喫食され得る。本発明のベーカリー食品は、特に、0~10℃程度の品温で喫食されるベーカリー食品(例えば、チルドデザートなど)として好適である。
【実施例0025】
次に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に何ら限定されない。
【0026】
<測定方法>
(油脂組成物の破断応力(単位面積あたりの破断荷重))
レオメーター(CREEP METER RE2-33005C(株式会社山電製)など)を用いて、直径7cm高さ3cmの円筒形の容器に70g充填された品温20℃の油脂組成物の破断荷重(単位gf)を、進入速度5mm/秒、進入距離(深度)10mm、プランジャーφ15mm(1.77cm)円柱、の条件で測定して、破断応力(gf/cm)を求める。
【0027】
<原材料>
油脂組成物の調製のために、以下の原材料を準備した。
(液状油)
・菜種油(0℃、5.5時間以上清澄、日清オイリオグループ株式会社製)
(乳化剤)
・ポリグリセリン脂肪酸エステル1(略称:PGE1、炭素数16~22の飽和脂肪酸80質量%以上(ベヘン酸の含有量約40質量%))、エステル化率90%以上)
・ポリグリセリン脂肪酸エステル2(略称:PGE2、炭素数16および18の飽和脂肪酸97質量%以上、エステル化率90%以上)
・ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(略称:PGPR、平均重合度6)
・モノグリセリド(略称:MG、炭素数16および18の飽和脂肪酸97質量%以上)
【0028】
<油脂組成物の調製>
表1に示した配合にしたがって、例1から7の油脂組成物を調製した。すなわち、乳化剤を添加した液状油を80℃に加熱することにより、乳化剤を溶解した融液を得た。融液を直径7cm高さ3cmの円筒形の容器に70g充填し、10℃の雰囲気下に48時間静置することにより、ゲル化ないし固形化した油脂組成物を得た。また、例8(参考例)として、市販の製菓製パン用固形ショートニング(商品名:ピュアショート10、日清オイリオグループ株式会社製)を用いた。
【0029】
【表1】

【0030】
<食パンの調製>
表2の配合および表3の製造条件(中種法)でプルマン型(角形)食パンを製造した。焼成から1日後の各食パンの外観および食感を以下の評価基準で評価した。また、各食パンを六つ切りしてジッパー付き袋に入れ、5℃の冷蔵庫で保存した。冷蔵6日後の食感を焼成1日後と同様に評価した。なお、パンの製造および評価は、経歴10年以上の一級製パン製造技能士により行われた。
【0031】

〔パンの外観の評価基準〕
◎ :パンの角の立ちが適度で良好
○ :普通
△ :パンの角の立ちが不足あるいは立ちすぎ

〔食感の評価基準〕
例1を比較対照として以下の基準で評価した。
◎ :対照と比較して、しっとりソフトである
○ :対照と比較して、ソフトである
△ :対照と同程度である
× :対照と比較して、食感が硬いか、強いくちゃつきがある

〔パンの風味の評価基準〕
例1を比較対照として以下の基準で評価した。
◎ :対照と同程度である
○ :対照と比較して、乳化剤の風味が極僅かに残る
△ :対照と比較して、乳化剤の風味がはっきり残る
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】