(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134680
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240927BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03G15/00 460
B65H37/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044999
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】古場 遥
(72)【発明者】
【氏名】林 雄太
(72)【発明者】
【氏名】多田 涼馬
【テーマコード(参考)】
2H072
3F108
【Fターム(参考)】
2H072AB11
2H072AB17
2H072GA00
2H072HA08
3F108GA10
3F108GB01
3F108HA02
3F108HA12
(57)【要約】
【課題】通常印刷モードの後にラミネート印刷モードを続けて実行する場合であっても、無駄な消費電力を生じさせることなく、生産性が低下する不具合を軽減する。
【解決手段】画像形成装置1によって印刷され搬送されたシートPに対して、ラミネート処理を施すことなく排出する通常印刷モードと、ラミネート処理装置50によってラミネート処理を施して排出するラミネート印刷モードと、を実行可能に構成されている。そして、通常印刷モードの終了後に連続してラミネート印刷モードが実行される場合、又は、通常印刷モードの実行中にラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合、ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている通常印刷モードが終了するタイミングt1よりも、ヒータ51bの加熱に要する加熱時間Thの分だけ早く、ヒータ51bの加熱を開始している。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシートの表面に画像を印刷可能な画像形成装置と、
前記画像形成装置から搬送された前記シートを2枚のシートの間に挿入した状態の重合シートに対して、加熱手段によってラミネート処理を施すラミネート処理装置と、
を備え、
前記画像形成装置によって印刷され搬送された前記シートに対して、前記ラミネート処理を施すことなく排出する通常印刷モードと、前記ラミネート処理装置によって前記ラミネート処理を施して排出するラミネート印刷モードと、を実行可能に構成され、
前記通常印刷モードの終了後に連続して前記ラミネート印刷モードが実行される場合、又は、前記通常印刷モードの実行中に前記ラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合、前記ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている前記通常印刷モードが終了するタイミングよりも、前記加熱手段の加熱に要する加熱時間の分だけ早く、前記加熱手段の加熱を開始することを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記通常印刷モードが終了する前記タイミングは、前記ラミネート印刷モードが開始されるまでに実行される前記通常印刷モードの印刷枚数とシート搬送速度とに応じて求められることを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記画像形成装置から搬送された前記シートに対して後処理を施す後処理装置を備え、
前記ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている前記通常印刷モードが前記後処理をともなうものである場合、前記通常印刷モードが終了する前記タイミングは、前記後処理に要する時間を加味したものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記画像形成装置を調整するための調整モードが所定の条件で印刷動作とは別に実行され、
前記ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている前記通常印刷モードが前記調整モードをともなうものである場合、前記通常印刷モードが終了する前記タイミングは、前記調整モードに要する時間の分だけ遅れたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記通常印刷モードの実行中に前記ラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合、中断された前記通常印刷モードは、前記ラミネート印刷モードが終了した後に再開されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記通常印刷モードの終了後に連続して前記ラミネート印刷モードが実行される場合は、前記ラミネート印刷モードの実行中に前記通常印刷モードが割り込んで実行された後に、中断された前記ラミネート印刷モードが再開される場合も含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記ラミネート処理装置は、
前記2枚のシートが重ね合されて接合部で接合された前記重合シートの非接合部を剥離するシート剥離部と、
前記加熱手段を具備して、剥離された前記2枚のシートの間に前記シートが挿入された前記重合シートを加熱するラミネート処理部と、
を具備し、
前記シート剥離部は、前記ラミネート処理部に対して、前記シートが挿入された前記重合シートの搬送方向上流側に設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記ラミネート処理装置は、前記通常印刷モードが実行されるときに、前記画像形成装置から搬送された前記シートを前記シート剥離部と前記ラミネート処理部とを経由することなく排出するための排出経路を具備したことを特徴とする請求項7に記載の画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートに画像を印刷する画像形成装置と、ラミネート処理をおこなうラミネート処理装置と、を備えた画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、2枚のシートの間に中シートが挿入された状態のものに対してラミネート処理を施すラミネート処理装置と、中シートに画像を形成する画像形成装置と、からなる画像形成システムが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
詳しくは、画像形成システムにおけるラミネート処理装置は、一端側の1辺が接合されたラミネートシート(重合シート)における2枚のシートを分離(剥離)して、その間に画像形成装置で印刷した中紙(中シート)を挿入している。そして、中紙が挿入されたラミネートシートを、ヒータ(加熱手段)が設置されたラミネート処理部に搬送して、加熱・加圧してラミネート処理を施している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の画像形成システムは、画像形成装置によって印刷・搬送されたシートにラミネート処理を施すことなく排出する通常印刷モードをおこなった後に、画像形成装置によって印刷・搬送されたシートにラミネート処理装置によってラミネート処理を施して排出するラミネート印刷モードを続けて実行した場合に、通常印刷モード後のラミネート処理装置の加熱手段(ヒータ)による所定温度までの加熱(立ち上げ)に時間がかかってしまって、全体として画像形成システムの生産性が低下してしまうことがあった。
これに対して、このような不具合を解決するために、加熱手段の立ち上げを早めにおこなう方策も考えられるが、その立ち上げが早すぎてしまうと、無駄な消費電力が生じてしまうことになる。
【0004】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、通常印刷モードの後にラミネート印刷モードを続けて実行する場合であっても、無駄な消費電力を生じさせることなく、生産性が低下する不具合が軽減される、画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明における画像形成システムは、搬送されるシートの表面に画像を印刷可能な画像形成装置と、前記画像形成装置から搬送された前記シートを2枚のシートの間に挿入した状態の重合シートに対して、加熱手段によってラミネート処理を施すラミネート処理装置と、を備え、前記画像形成装置によって印刷され搬送された前記シートに対して、前記ラミネート処理を施すことなく排出する通常印刷モードと、前記ラミネート処理装置によって前記ラミネート処理を施して排出するラミネート印刷モードと、を実行可能に構成され、前記通常印刷モードの終了後に連続して前記ラミネート印刷モードが実行される場合、又は、前記通常印刷モードの実行中に前記ラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合、前記ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている前記通常印刷モードが終了するタイミングよりも、前記加熱手段の加熱に要する加熱時間の分だけ早く、前記加熱手段の加熱を開始するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、通常印刷モードの後にラミネート印刷モードを続けて実行する場合であっても、無駄な消費電力を生じさせることなく、生産性が低下する不具合が軽減される、画像形成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成システムを示す全体構成図である。
【
図2】
図1の画像形成システムにおけるラミネート処理装置を示す構成図である。
【
図3】(A)把持部材が把持位置に移動した状態を示す側面図と、(B)把持部材が退避位置に移動した状態を示す側面図と、である。
【
図4】(A)把持部材が把持位置に移動した状態を示す斜視図と、(B)把持部材が退避位置に移動した状態を示す斜視図と、である。
【
図5】画像形成システムの制御系を示すブロック図である。
【
図7】
図6に続くシート剥離装置の動作を示す図である。
【
図8】
図7に続くシート剥離装置の動作を示す図である。
【
図9】
図8に続くシート剥離装置の動作を示す図である。
【
図10】
図9に続くシート剥離装置の動作を示す図である。
【
図11】剥離爪が重合シートに挿入された状態を幅方向に示す図である。
【
図13】操作表示パネルにおける表示の一例を示す図である。
【
図14】画像形成システムでおこなわれる制御を示すフローチャートである。
【
図15】
図14に続く制御フローであって、ラミネート処理モード時の制御を示すフローチャートである。
【
図17】通常印刷モードの終了後にラミネート印刷モードが実行されるときの制御を示すタイミングチャートである。
【
図18】比較例としての、通常印刷モードの終了後にラミネート印刷モードが実行されるときの制御を示すタイミングチャートである。
【
図19】通常印刷モードの終了後にラミネート印刷モードが連続して実行されるときの制御の一例を示すシーケンス図である。
【
図20】通常印刷モードの終了後にラミネート印刷モードが連続して実行されるときの制御を示すフローチャートである。
【
図22】変形例1としての、ラミネート印刷モードの実行中に通常印刷モードが割り込んだ後にラミネート印刷モードが再開されるときの制御を示すタイミングチャートである。
【
図24】変形例2としての、画像形成システムを示す図である。
【
図25】変形例3としての、画像形成システムを示す図である。
【
図26】
図25の画像形成システムにおいて、通常印刷モードの終了後にラミネート印刷モードが実行されるときの制御を示すタイミングチャートである。
【
図27】
図26の制御に対して、別形態としての、ラミネート印刷モードの実行中に通常印刷モードが割り込んだ後にラミネート印刷モードが再開されるときの制御を示すタイミングチャートである。
【
図28】変形例4としての、通常印刷モードの終了後にラミネート印刷モードが実行されるときの制御を示すタイミングチャートである。
【
図29】
図28の制御に対して、別形態としての、ラミネート印刷モードの実行中に通常印刷モードが割り込んだ後にラミネート印刷モードが再開されるときの制御を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0009】
図1にて、本実施の形態における画像形成システム300において、特徴的な構成・動作について説明する。
図1に示すように、本実施の形態における画像形成システム300は、画像形成装置100の胴部(原稿読込装置102と作像部115との間に設けられた空間である。)に、ラミネート処理機能を備えたラミネート処理装置50が設置されている。
画像形成システム300において、画像形成装置100は、ラミネート処理装置50以外の部分であって、主として、作像部115、本体給送トレイ112、定着部120、原稿搬送装置110、原稿読込装置102、などで構成されている。
ラミネート処理装置50は、主として、ユニット給送トレイ11、シート剥離部1、ラミネート処理部51、第1排出トレイ13、排出経路としてのバイパス排出経路K7(
図2参照)、第2排出トレイ14、などで構成されている。
なお、画像形成システム300の外装部には、画像形成システム300における種々の情報を表示したり種々の指令を入力したりするための操作表示パネル49(操作表示部)が設置されている。
【0010】
ここで、シート剥離部1は、2枚のシートP1、P2が重ね合されて一端側が接合部Aとして接合された重合シートPJ(
図12等参照)の非接合部を剥離する機構である。シート剥離部1は、巻付けローラ20、第3搬送ローラ対6、移動機構30などで構成されているが、その詳細については後で
図2等を用いて説明する。
ユニット給送トレイ11は、重合シートPJをシート剥離部1に向けて給送する第1給送部として機能するものである。重合シートPJとしては、加熱接合可能なラミネートシートが用いられる。
ラミネート処理部51は、シート剥離部1によって剥離された2枚のシートP1、P2(重合シートPJを構成する2枚のシートである。)の間に中シートPM(後述するように画像形成装置100で所望の印刷が施されたものである。)が挿入された状態の重合シートPJにラミネート処理(熱と圧力とを加えて非接合部を接合する処理である。)を施す機構であって、シート剥離部1の下流側(順方向下流側であって、
図2の左方である。)に設置されている。ラミネート処理部51には、中シートPMが挿入された状態の重合シートPJを順方向に搬送しながら、その重合シートPJに熱と圧力とを与える熱加圧ローラ対51aが複数設置されている。また、第3搬送ローラ対6とラミネート処理部51との間には第4搬送経路K6が設けられている。
なお、ラミネート処理部51における複数の熱加圧ローラ対51aには、加熱手段としてのヒータ51bが内設されている。制御部による制御によってヒータ51b(加熱手段)が加熱されることによって、その加熱による輻射熱によって熱加圧ローラ対51aが加熱されて、加熱された熱加圧ローラ対51aによって重合シートPJ(中シートPMが挿入されたものである。)に対してラミネート処理が施されることになる。
第1排出トレイ13は、ラミネート処理装置50(画像形成装置100)から排出されたラミネート処理後の重合シートPJ(及び、中シートPM)が載置されるためのものである。
そして、これらシート剥離部1、ユニット給送トレイ11、ラミネート処理部51、第1、第2排出トレイ13、14などがラミネート処理装置50としてユニット化されている。そして、このラミネート処理装置50は、画像形成装置100の外部(胴部である。)に、露呈するように設置されている。そのため、ユーザーは、排出トレイ13に載置されたラミネート処理後の重合シートPJ(及び、中シートPM)を直接取り出すことが可能になる。
【0011】
一方、本体給送トレイ112は、画像形成装置100において引出し可能に設置されている。この本体給送トレイ112は、中シートPM(シート剥離部1において非接合部が剥離された状態の重合シートPJの2枚のシートP1、P2の間に挿入される用紙などのシートである。)を作像部115に向けて給送する第2給送部として機能する。
画像形成装置100の作像部115は、本体給送トレイ112(第2給送部)から給送されて所定の搬送方向(
図1の破線矢印方向である。)に搬送される中シートPMの表面に画像(トナー像)を形成可能(印刷可能)に構成されている。作像部115は、複数の作像部104Y、104M、104C、104Kなどで構成されている。特に、本実施の形態における画像形成装置100は、中シートPMの表面にトナー(乾式トナーである。)による画像を形成可能に構成されている。すなわち、本実施の形態における画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置である。
熱源としての定着部120は、作像部115に対して搬送方向(中シートPMの搬送方向である。)の下流側に配置されていて、中シートPMの表面に形成されたトナーによる画像(トナー像)を中シートPMに定着させる装置である。定着部120は、ヒータが内設された定着ローラ、定着ローラに圧接して定着ニップを形成する加圧ローラ、などで構成されていて、定着ニップに搬送されるシートの表面に担持されたトナー像を加熱するとともに加圧してシート上に定着させる。
【0012】
ここで、
図1に示すように、本実施の形態において、ラミネート処理装置50(シート剥離部1、ラミネート処理部51)は、画像形成装置100に対して搬送方向(中シートPMの搬送方向である。)の下流側に配置されている。具体的に、ラミネート処理装置50は、画像形成装置100の排出ローラ対131から排出された中シートPMが搬入されるように配置されている。
そして、本実施の形態における画像形成システム300では、ユニット給送トレイ11から給送された重合シートPJが画像形成装置100を経由することなくシート剥離部1に搬送される。詳しくは、ユニット給送トレイ11から給送された重合シートPJが作像部115や定着部120(熱源)を経由することなくシート剥離部1に搬送される。具体的には、重合シートPJは、画像形成装置100を経由することなく、ラミネート処理装置50においてユニット給送トレイ11からシート剥離部1に向けて直接的に搬送されることになる。
【0013】
このように構成することにより、画像形成装置100の内部に、シート剥離部を設けるとともに、画像が形成された中シートPMを一時滞留するためのスペースを設ける場合に比べて、画像形成装置100を小型化することができる。
また、本体給送トレイ112から中シートPMを給送して画像を形成する動作と、ユニット給送トレイ11から重合シートPJを給送して剥離する動作と、を並行しておこなうことが可能になるため、重合シートPJに中シートPMを挿入する工程が終了するまでに掛かる時間を短縮することができて生産性が向上する。
また、重合シートPJは、定着部120(熱源)を経由することなく、シート剥離部1にて非接合部を剥離した状態で、定着部を通過して画像が定着された状態の中シートPMを受け入れることになる。したがって、重合シートPJが、中シートPMが挿入される前に、加熱により接合されてしまって、剥離不良が生じてしまうようなこともない。
【0014】
なお、本実施の形態では、上述したように重合シートPJに中シートPMを挿入してラミネート処理を施すモード(以下、このようなモードを「ラミネート印刷モード」又は「ラミネート処理モード」と呼ぶ。)とは別に、「通常印刷モード」を選択可能に構成している。
「通常印刷モード」は、ユニット給送トレイ11(第1給送部)から重合シートPJを給送することなく、本体給送トレイ112(第2給送部)から給送された用紙などのシートPの表面に作像部115で画像を形成(印刷)した後に、そのシートPを定着部120(熱源)を経由させて、ラミネート処理をおこなうことなく、画像形成装置100から排出する制御モードである。
本実施の形態において、ユーザーは、操作表示パネル49において
図13に示すような表示画面を開いて、「通常印刷モード」をおこなう場合には「コピー・プリントモード」のボタンを押し、「ラミネート処理モード」をおこなう場合には「ラミネート処理モード」のボタンを押すことになる。そして、「通常印刷モード」がおこなわれる場合には、画像形成装置100から排出されてラミネート処理装置50に搬入されたシートPは、分岐爪18(
図2参照)によって排出経路としてのバイパス排出経路K7に導かれて、シート剥離部1やラミネート処理部51を経由することなく、ラミネート処理装置50からそのまま排出されて、第2排出トレイ14上に載置されることになる。
このようにバイパス排出経路K7をラミネート処理装置50に設けることで、画像形成装置100にバイパス排出経路を設ける場合に比べて、画像形成装置100をコンパクト化することができる。
【0015】
以下、
図1にて、画像形成システム300の画像形成装置100における、画像形成動作(印刷動作)について説明する。
画像形成装置100において、まず、原稿Dが、原稿搬送装置110の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送(給送)されて、原稿読込装置102上を通過する。このとき、原稿読込装置102では、上方を通過する原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、原稿読込装置102で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、書込み装置103に送信される。そして、書込み装置103から、その電気信号の画像情報に基づいたレーザ光が、色ごとに、それぞれの感光体ドラム105Y、105M、105C、105K上に向けて発せられ、露光工程がおこなわれる。
そして、それぞれの作像部104Y、104M、104C、104Kの感光体ドラム105Y、105M、105C、105K上で帯電工程、露光工程、現像工程がおこなわれて、感光体ドラム105Y、105M、105C、105K上に所望の画像がそれぞれ形成される。
その後、感光体ドラム105Y、105M、105C、105K上にそれぞれ形成された画像は、カラー画像として中間転写ベルト178上に重ねて転写される。さらに、中間転写ベルト178上に形成されたカラー画像は、2次転写ローラ189との対向位置で、本体給送トレイ112(第2給送部)から給送ローラ197によって給送され搬送されたシートP(中シートPMとなるシートである。)に転写される。
その後、カラー画像が転写されたシートP(中シートPM)は、熱源としての定着部120の位置に搬送される。そして、表面に転写されたカラー画像がシートP上に定着される。
【0016】
その後、シートPは排出ローラ対131によって画像形成装置100から排出されて、中シートPMとしてラミネート処理装置50に送入される。このとき、ラミネート処理装置50では、後で
図6~
図9を用いて説明する工程(重合シートPJを剥離する工程である。)がほぼ終了していて、ラミネート処理装置50に中シートPMが挿入された後に、
図10を用いて説明する工程(重合シートPJに中シートPMを挿入する工程である。)がおこなわれることになる。さらに、中シートPMが挿入された重合シートPMに対するラミネート処理がラミネート処理部51でおこなわれた後に、その重合シートPJが排出ローラ対7によって装置外に排出されて第1排出トレイ13上に載置されることになる。
こうして、画像形成装置100における一連の画像形成プロセス(印刷動作)と、画像形成(印刷)された中シートPMを用いた一連のシート剥離処理及びラミネート処理と、が完了することになる。
なお、ここではラミネート処理モード時の動作について説明したが、通常印刷モード時には、シートPに対してラミネート処理装置50での処理がおこなわれずにバイパス排出経路K7を経由して第2排出トレイ14に排出される点を除き、ラミネート処理モード時とほぼ同じ動作がおこなわれることになる。
【0017】
次に、
図2にて、ラミネート処理装置50における全体の構成・動作について説明する。
ラミネート処理装置50には、第1給送部としてのユニット給送トレイ11、シート剥離部1、ラミネート処理部51、第1排出トレイ13、第2排出トレイ14、第3排出トレイ55などが設けられている。
【0018】
シート剥離部1は、2枚のシートP1、P2が重ね合されて一端側が接合部Aとして接合された重合シートPJ(
図12等参照)の非接合部を剥離する機構である。
特に、本実施の形態において、重合シートPJとして、2枚のシートP1、P2を重ね合わせて、4辺のうち1辺を接合部Aとして接合したものを用いている。すなわち、重合シートPJ(2枚のシートP1、P2)は、1辺(接合部A)のみが熱溶着などによって繋がっていて、その他の部分は接合されていない。また、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2としては、透明なフィルムシート(ラミネートシート)を用いることができる。
そして、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2を剥離して(接合部Aの接合を維持した状態で2枚のシートP1、P2の接合部Aの反対側の他端側を分離して)、剥離した2枚のシートP1、P2の間に中シートPM(少なくとも1枚の普通紙、写真などのシートである。)を挿入する動作が、シート剥離部1でおこなわれることになる。
【0019】
図2に示すように、ラミネート処理装置50には、ユニット給送トレイ11、給送ローラ2、第1~第3搬送ローラ対4~6、第1排出ローラ対7、第1排出トレイ13、第3排出トレイ55、ラミネート処理部51、第1~第8センサ41~48、巻付けローラ20、移動機構30、剥離部材としての剥離爪16(
図8、
図12等参照)、分岐爪18、第4~第6搬送ローラ対71~73、第2排出ローラ対74、第2排出トレイ14、などが設けられている。
また、ラミネート処理装置50には、第1搬送経路K1、第2搬送経路K2、第3搬送経路K3、第1分岐搬送経路K4、第2分岐搬送経路K5、第4搬送経路K6、バイパス排出経路K7、などの複数の搬送経路が形成されている。これらの搬送経路K1~K7は、それぞれ、シートの搬送を案内するためのものであって、対向する2つの搬送ガイド部材(ガイド板)によって形成されている。
【0020】
詳しくは、ユニット給送トレイ11には、重合シートPJが積載されている。そして、ユニット給送トレイ11上の最上方の重合シートPJが給送ローラ2によって給送されて、第1搬送ローラ対4によって第1搬送経路K1に沿って搬送されることになる。
このように、ユニット給送トレイ11や給送ローラ2などが、重合シートPJを給送する第1給送部として機能することになる。そして、第1給送部は、ラミネート処理制御部200(制御手段であって、
図5参照)による制御によって、給送ローラ2を回転駆動して、ユニット給送トレイ11から重合シートPJを給送することになる。
【0021】
そして、本実施の形態における画像形成装置100は、第1給送部2によって重合シートPJが給送された後であって、重合シートPJの非接合部を剥離する動作が終了する前に、本体給送トレイ112及び給送ローラ197(第2給送部)によって中シートPMの給送が開始されるように制御している。
すなわち、本実施の形態では、重合シートPJの給送と中シートPMの給送とをそれぞれ別々の操作(ユーザーによる操作表示パネル49の操作である。)でおこなうのではなくて、それらを1回の操作でおこなうことができる。具体的に、ユーザーが、操作表示パネル49のボタンを1回押して処理動作を開始することで、その1回の指令に基づいて、重合シートPJが給送されておこなわれる剥離動作と、剥離された重合シートPMの間に中シートPMが挿入される挿入動作とが、自動で一括しておこなわれることになる。
そして、中シートPMが本体給送トレイ112から給送開始される動作は、重合シートPJの剥離動作が終了した後におこなわれるのではなくて、重合シートPJの剥離動作が終了する前におこなわれる。そのため、重合シートPJをユニット給送トレイ11から給送してから中シートPMの挿入が終了するまでの一連の工程に要する時間が効率的に短縮されて、装置の生産性が向上する。すなわち、ラミネート処理モードに要する時間が短縮されることになる。
【0022】
ここで、第1~第6搬送ローラ対4~6、71~73や第1、第2排出ローラ対7、74は、いずれも、駆動ローラと従動ローラとからなり、そのニップに挟持されたシートを搬送するものである。第3搬送経路K3には、上流側から、第2搬送ローラ対5、巻付けローラ20、第3搬送ローラ対6が設置されている。特に、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6とは、正転・逆転可能であって、第3搬送ローラ対6は、重合シートPJを順方向(
図2の左方向である。)にも逆方向(
図2の右方向である。)にも搬送可能に構成されている。また、第3搬送ローラ対6は、シートをラミネート処理部51又は第3排出トレイ55に向けて搬送する搬送ローラ対としても機能する。また、第1排出ローラ対7は、ラミネート処理後の重合シートPJ(中シートPMが挿入された重合シートPJである。)を第1排出トレイ13に向けて排出するための搬送ローラ対である。
なお、第3搬送ローラ対6の順方向下流側(
図2の左方である。)には、シートPを、ラミネート処理部51に向けて搬送したり、第3排出トレイ55に向けて搬送したり、切り替えるための切替爪17が設置されている。ユーザーによって選択されたモードによって、切替爪17が制御されて、シートPの搬送先(排出先)が切替えられることになる。
第3排出トレイ55は、シート剥離部1において剥離処理や挿入処理に失敗したシートPをスタックするためのトレイである。
【0023】
なお、画像形成装置100からシートPが送入される第2搬送経路K2には、そのシートPを第3搬送経路K3に向けて搬送したり、バイパス排出経路K7に向けて搬送したり、切り替えるための分岐爪18が設置されている。ユーザーによって選択されたモードによって、分岐爪18が回動制御されて、シートPの搬送先(排出先)が切替えられることになる。
具体的に、「ラミネート印刷モード」(ラミネート処理を施す印刷である。)が選択されている場合には、分岐爪18によって、第2搬送経路K2に送入されたシートPは第3搬送経路K3に導かれることになる。これに対して、「通常印刷モード」(ラミネート処理を施さない印刷である。)が選択されている場合には、分岐爪18によって、バイパス排出経路K7に送入されたシートPは第3搬送経路K3に導かれることになる。
なお、バイパス排出経路K7には、上流側から順に、第4~第6搬送ローラ対71~73、第2排出ローラ対74、が配置されている。
【0024】
シート検知センサとしての第1~第5センサ41~45は、いずれも、その位置にシートが存在するか否かを光学的に検知する反射型フォトセンサである。第1センサ41は第1搬送ローラ対4の下流側近傍に配置され、第2センサ42は排出ローラ対131の下流側近傍に配置され、第3センサ43は第2搬送ローラ対5の下流側近傍に配置され、第4センサ44は巻付けローラ20の下流側(
図2において巻付けローラ20の左側である。)近傍であって第3搬送ローラ対6の上流側(
図2において第3搬送ローラ対6の右側である。)に配置され、第5センサ45は第3搬送ローラ対6の下流側(
図2において第3搬送ローラ対6の左側である。)に配置されている。
【0025】
図3、
図4、
図7(B)~(D)、
図8(A)等を参照して、巻付けローラ20は、巻付け開始位置W(
図7(B)参照)で、重合シートPJの他端側(接合部Aが形成された側の反対側である。)を被把持部Bとして、把持部材32(把持部)によって被把持部Bを把持した状態で所定の回転方向(
図7において反時計回り方向である。)に回転して重合シートPJを巻き付けるローラ部材である。巻付けローラ20は、制御部によって制御される駆動モータの駆動によって、回転軸20aを中心に正逆方向に回転可能に構成されている。
具体的に、重合シートPJは、ユニット給送トレイ11から第1搬送経路K1を経由して、第2搬送ローラ対5によって第3搬送経路K3を順方向に搬送されて、一旦、巻付けローラ20の巻付け開始位置Wを通過して第3搬送ローラ対6の位置(重合シートPJの後端が、第4センサ44を通過して、第3搬送ローラ対6を通過する手前の位置である。)まで搬送される。その後、重合シートPJは、逆転された第3搬送ローラ対6によって巻き付けローラ20の位置(巻付け開始位置W)まで逆方向に搬送されて、把持部材32に把持される。そして、重合シートPJは、その把持された状態でさらに搬送されて、
図2の反時計回り方向に回転する巻付けローラ20によって巻き付けられることになる。
【0026】
そして、
図7(C´)等を参照して、巻付けローラ20によって重合シートPJが巻き付けられていくとき、巻付き長さがローラ径に比例するため、ローラ内周面側の第1のシートP1の巻付き長さがローラ外周面側の第2のシートP2の巻付き長さよりも短くなる。そのため、接合部A及び被把持部B以外の第1のシートP1と第2のシートP2とが密着している部分(張り付いている部分)にずれが生じて、そのずれによって第2のシートP2に対して第1のシートP1が撓み(弛み)、
図7(D)、
図8(A)等に示すように、重合シートPJの接合部Aの側(一端側)で2枚のシートP1、P2の間に隙間C(上方の第1のシートP1が上方に撓んでできる隙間Cである。)が形成されることになる。このようにして、2枚のシートP1、P2が、隙間なく密着した状態から、剥離(分離)した状態になる。
特に、本実施の形態では、上述したような隙間Cを顕著に形成する(シートP1、P2の巻付き長さの差を大きくする)ために、重合シートPJを巻付けローラ20に少なくとも1周以上巻き付けている。
このように、本実施の形態では、重合シートPJを巻き付ける巻付けローラ20を設置することで、ラミネート処理装置50がそれほど大型化・高コスト化することなく、重合シートPJの剥離を可能にしている。
【0027】
ここで、本実施の形態において、把持部材32は、
図7(B´)に示すように、重合シートPJの他端側(被把持部Bの側である。)の端面に接触することなく、被把持部Bを把持するように構成されている。
詳しくは、把持部材32は、重合シートPJの他端側の端面をいかなる部材に接触させることなく、巻付けローラ20の受部20bとの間で被把持部Bを挟み込んで把持するように構成されている。受部20bは、巻付けローラ20の外周部において、外側に露呈して把持部材32に対向可能に形成されている。
具体的に、重合シートPJは、その他端側端面(先端面)が特定の部材(例えば、把持部材32自体である。)に突き当たった状態で把持部材32と受部20bとに挟まれ把持されるのではなくて、その他端側端面(先端面)がいかなる部材にも突き当たることなく、外側の把持部材32と内側の受部20bとによって挟まれて把持されることになる。
そのため、先端面を突き当てる場合に比べて、重合シートPJ(特に、先端の部分である。)が傷ついてしまう不具合を軽減することができる。特に、重合シートPの先端面が傷ついてしまうと、その部分をラミネート処理しようとしても、しにくくなってしまうため、本発明の構成が有用になる。
なお、本実施の形態において、巻付けローラ20に巻き付けられる重合シートPJは、被把持部Bとなる他端側の反対側の一端側に接合部Aが形成されたものである。
【0028】
ここで、本実施の形態では、把持部材32(把持部)と受部20bとのうち少なくとも一方が、ゴムなどの弾性材料で形成されている。
これにより、把持部材32と受部20bとの双方を金属材料や樹脂材料などの剛体で形成する場合に比べて、重合シートPJに対する把持力を高めることができるとともに、重合シートPJの表面に傷をつけにくくなる。特に、把持部材32と受部20bとの双方を弾性材料で形成した場合には、そのような効果が顕著に得られる。
【0029】
図3、
図4に示すように、移動機構30は、把持部材32を、重合シートPJを把持可能な把持位置(
図3(A)、
図4(A)に示す位置である。)と、把持位置から退避した退避位置(
図3(B)、
図4(B)に示す位置である。)と、の間を移動させるものである。
詳しくは、移動機構30は、アーム部材31、付勢部材としての圧縮スプリング33、カム34、カム34を正逆方向に回転駆動するカムモータ205(
図5参照)、などで構成されている。
アーム部材31は、把持部材32を保持するとともに、支軸31aを中心に把持部材32とともに回動可能に巻付けローラ20に保持されている。本実施の形態では、把持部材32がアーム部材31の先端部に一体的に形成(保持)されている。これに対して、把持部材32をアーム部材31とは別部材にして、アーム部材31に把持部材32を設置(保持)するように構成することもできる。いずれにしても、把持部材32を保持したアーム部材31は、巻付けローラ20とともに回転軸20aを中心に回転することになる。
圧縮スプリング33は、把持部材32が
図3(B)に示す退避位置から
図3(A)に示す把持位置に移動するようにアーム部材31を付勢する付勢部材として機能している。具体的に、圧縮スプリング33は、その一端が回転軸20aの近傍の固定位置に接続され、その他端がアーム部材31の一端側(支軸31aを挟んで把持部材32が設けられた側の反対側である。)に接続されている。
カム34は、把持部材32が
図3(A)に示す把持位置から
図3(B)に示す退避位置に移動するように、圧縮スプリング33(付勢部材)の付勢に抗してアーム部材31を押動するものである。カム34は、制御部に制御されるカムモータ205によって所望の回転角度で正逆方向に回転駆動されることになる。カム34は、巻付けローラ20とは独立して、カム軸34aを中心に回転可能に装置筐体に保持されている。
【0030】
このように構成された移動機構30は、
図3(A)、
図4(A)に示すように、カム34がアーム部材31に接触していない状態では、アーム部材31が圧縮スプリング33に付勢されて、把持部材32が受部20bに圧接する状態(閉状態)になる。この閉状態は、重合シートPJを把持可能な状態である。
これに対して、
図3(B)、
図4(B)に示すように、カム34がアーム部材31を押圧した状態では、アーム部材31が圧縮スプリング33の付勢に抗するように、支軸31aを中心に
図3(B)の反時計回り方向に回転して、把持部材32が受部20bから離間した状態(開状態)になる。この開状態は、重合シートPJを把持できない状態(把持解除状態)である。
【0031】
なお、本実施の形態では、
図4に示すように、巻付けローラ20のローラ部を軸方向に複数(7つである。)に分割するとともに、その分割位置に合わせるように、カム34も軸方向に複数に分割している。
このように重合シートPJを把持する位置を、軸方向の全域とするのではなくて、軸方向に分割することで、重合シートPJを把持するために必要な負荷を分散することができる。このような構成は、必要な把持力が大きくなってしまう場合に有用である。
【0032】
ここで、
図5に示すように、ラミネート処理装置50における種々の部材の制御を担うラミネート処理制御部200は、画像形成装置100の制御管理部370に接続されている。
詳しくは、画像形成システム300は画像形成装置1とラミネート処理装置50とで構成されている。そして、画像形成装置100にはコントローラ350とエンジン360とが設けられ、ラミネート処理装置50にはラミネート処理制御部200が設けられている。
画像形成装置100のコントローラ350は、ユーザーからの印刷要求を受け付ける操作表示パネル49(操作部)と、その印刷要求を管理する要求管理部351と、で構成される。コントローラ350の要求管理部351は、印刷要求をエンジン360の制御管理部370(印刷制御管理部371、印刷時間管理部372、後処理要求部373で構成されている。)へ通知する。制御管理部370は、要求を受けたページごとにプロッタ制御部380とラミネート処理制御部200とに対して制御を要求する。プロッタ制御部380は、制御管理部370からの要求に従い、シートPを給送して画像を印刷・排紙する制御をおこなう。ラミネート処理制御部200は、ラミネート処理のための準備と画像形成装置100から搬送されたシートP(中シートPM)にラミネート処理を施す制御をおこなう。
本実施の形態において、エンジン360の制御管理部370における印刷制御管理部371は、コントローラ350の要求管理部351から印刷要求を受け、印刷時間管理部372と後処理要求部373とに対して制御を要求する。印刷時間管理部372は、コントローラ350の要求管理部351から印刷情報を取得して、印刷完了時間を演算する。後処理要求部373は、ラミネート処理制御部200に対して、ラミネート処理装置50の起動やシート処理等を要求する。
なお、本実施の形態では、通常印刷モードが終了した後に続けてラミネート印刷モードが実行されるときに、ラミネート印刷モードが適切なタイミングで開始されるように、印刷時間管理部372によって演算した印刷完了時間に基づいて後処理要求部373からラミネート処理制御部200に要求をおこなっているが、これについては後で
図17等を用いて詳しく説明する。
【0033】
ここで、
図2、
図6(D)、
図7(A)等に示すように、本実施の形態におけるラミネート処理装置50には、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間に搬送される重合シートPJを検知する第4センサ44(シート検知センサ)が設置されている。そして、第3搬送ローラ対6により巻付けローラ20に向けて搬送される重合シートPJの先端を検知する第4センサ44の検知結果に基づいて移動機構30が制御されている。
詳しくは、第4センサ44は、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間の搬送経路に配置されている。そして、
図6(D)、
図7(A)等に示すように、重合シートPJが、被把持部Bの側を先頭にして、第3搬送ローラ対6によって巻付けローラ20の位置に向けて逆方向に搬送されるときに、その先端(逆方向搬送時の先端である。)を第4センサ44によって検知する。そして、その検知タイミングをトリガにして、重合シートPJを把持位置に停止させるタイミングと、把持部材32によって被把持部Bを把持するタイミングと、を調整制御している。具体的に、重合シートPJの先端を第4センサ44によって検知してから、所定時間が経過した後に、第3搬送ローラ対6による重合シートPJの逆方向の搬送を停止して、把持部材32が
図3(B)に示す退避位置から
図3(A)に示す把持位置に移動するように、カム34を回動してアーム部材31(移動機構30)を回転させる。
このような制御をおこなうことで、重合シートPJの端面をいかなる部材に突き当てることなく把持部材32と受部20bとによって挟み込む動作が、精度良くおこなわれることになる。
【0034】
ここで、第3搬送ローラ対6は、先に説明したように、巻付けローラ20との間に形成された第3搬送経路K3(搬送経路)において巻付けローラ20(巻付け開始位置W)に向けて他端側(被把持部Bの側である。)を先頭にして重合シートPJを搬送する搬送ローラ対である。
【0035】
また、
図8(A)~(C)、
図11、
図12(A)~(E)、
図16等を参照して、剥離部材としての剥離爪16は、重合シートPJに対して所定位置で2枚のシートP1、P2の間に形成される隙間Cに、
図16に示す待機位置から移動して挿入される爪状の部材である。
さらに具体的に、剥離爪16は、巻付けローラ20によって他端側(被把持部Bの側)から巻き付けられて、第3搬送ローラ対6(搬送ローラ対)によって一端側(接合部Aの側)が挟持された状態の重合シートPJに対して、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間で2枚のシートP1、P2の間に形成される隙間Cに、幅方向端部の待機位置から挿入されるものである。
【0036】
さらに詳しくは、本実施の形態において、剥離爪16は、幅方向(
図8の紙面垂直方向であって、
図11、
図16の左右方向である。)の両端にそれぞれ配置された一対の剥離爪である。また、剥離爪16は、
図12に示すように、幅方向中央側の先端から幅方向外側の後端にかけて、その上下方向(重合シートPJの厚さ方向である。)の長さが徐々に増加するように形成されている。さらに、剥離爪16は、制御部により制御される移動機構76(
図16参照)によって、幅方向に移動可能に構成されている。
このように構成された剥離爪16は、通常時に、第3搬送経路K3において重合シートPJなどのシートの搬送を妨げない待機位置(
図12(A)に示すように、シートPの幅方向外側の位置である。)に待機している。そして、剥離爪16は、重合シートPJ(2枚のシートP1、P2)を分離するときに、
図11、
図12(B)等に示すように、重合シートPJの隙間Cに入り込んで、その隙間Cを確保することになる。
【0037】
図16に示すように、一対の剥離爪16をそれぞれ幅方向に移動する移動機構76は、モータ77、ギア・プーリ78、プーリ79、タイミングベルト80等で構成されている。ギア・プーリ78は、モータ77のモータ軸に設置されたモータギアに噛合するギアと、プーリ79とともにタイミングベルト80を張架・支持するプーリと、が段状に形成されている。一対の剥離爪16のうち、一方の剥離爪16の固定部16aはタイミングベルト80の一方のベルト面(
図16の上方のベルト面である。)の一部に固定されていて、他方の剥離爪16の固定部16aはタイミングベルト80の他方のベルト面(
図16の下方のベルト面である。)の一部に固定されている。
このように構成された移動機構76によって、モータ77のモータ軸が
図16の矢印方向(時計回り方向)に回転駆動されると、ギア・プーリ78が反時計回り方向に回転され、タイミングベルト80が反時計回り方向に回転され、一対の剥離爪16が幅方向外側から幅方向中央部に向けて移動することになる(一対の剥離爪16が互いに近づく方向への移動である。)。これに対して、モータ77のモータ軸が
図16の矢印方向に対して逆方向に回転駆動されると、一対の剥離爪16が幅方向中央側から幅方向外側に向けて移動することになる(一対の剥離爪16が互いに遠ざかる方向への移動である。)。
【0038】
この剥離爪16は、重合シートPJに対して隙間Cに挿入された状態で一端側(接合部Aの側である。)から他端側B(被把持部Bの側である。)に向けて相対的に移動した後に、重合シートPJの他端側の端部において2枚のシートP1、P2の間で幅方向に移動する。
詳しくは、制御部による移動機構76(
図16参照)の制御によって、一対の剥離爪16は、
図12(B)、(C)に示すように、重合シートPJに対して隙間Cの幅方向両端部にそれぞれ挿入された状態で他端側に向けて相対的に移動した後に、
図12(D)に示すように、重合シートPJの他端側端部において2枚のシートP1、P2の間で幅方向両端部から幅方向中央部にそれぞれ移動する。このような一対の剥離爪16の動作を可能にするため、移動機構76は、一対の剥離爪16が待機位置から互いに近接する位置まで移動できるように構成されている。
【0039】
このような巻付けローラ20による巻付けと、剥離爪16の挿入と、によって重合シートPJを剥離する機構は、バキュームなどの大掛かりな装置を用いて剥離する機構に比べて、装置を小型化することができる。すなわち、ラミネート処理装置50が大型化することなく、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2を良好に剥離することができる。
特に、本実施の形態では、重合シートPJの幅方向他端側(後端)において剥離爪16が幅方向のほぼ全域にわたって移動することになるため、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2に対して、接合部Aの反対側の他端側の端部を充分に剥離(分離)することができる。そのため、接合部Aの反対側の他端側端部が充分に剥離されずに、重合シートPJの他端側から中シートPM(
図12(E)参照)を挿入しようとしても挿入できない不具合なども生じにくくなる。さらに、次に説明する剥離爪16の切替部材としての機能(2枚のシートP1、P2を2つの分岐搬送経路K4、K5に別々に導く機能である。)が発揮されやすくなる。
【0040】
ここで、本実施の形態において、剥離部材としての剥離爪16は、剥離爪16によって剥離された2枚のシートP1、P2を、別々の方向に分岐する2つの分岐搬送経路K4、K5にそれぞれ別々に導く切替部材としても機能する。
詳しくは、
図9(C)等に示すように、2つの分岐搬送経路K4、K5は、剥離爪16(剥離部材)と巻付けローラ20との間で第3搬送経路K3を挟んで別々の方向に分岐している。具体的に、第1分岐搬送経路K4は第3搬送経路K3から上方に向けて分岐するように形成され、第2分岐搬送経路K5は第3搬送経路K3から下方に向けて分岐するように形成されている。
そして、
図9(A)~(C)に示すように、隙間Cに剥離爪16が挿入された後に、重合シートPJの他端側の巻付けローラ20への巻付けが解除されるように第3搬送ローラ対6によって重合シートPJを一端側(
図9の左側である。)に搬送する(
図12(A)~(C)参照)。その後、
図12(D)に示すように、剥離爪16を幅方向中央部に移動した後に、その状態を維持して、第3搬送ローラ対6によって重合シートPJを再び他端側(
図9の右側である。)に搬送して、剥離爪16によって剥離された2枚のシートP1、P2を剥離爪16によって2つの分岐搬送経路K4、K5にそれぞれ別々に導く。すなわち、第1のシートP1は第1分岐搬送経路K4に導かれ、第2のシートP2は第2分岐搬送経路K5に導かれる。そして、その後に、
図10(A)~(C)、
図12(E)に示すように、剥離爪16を待機位置に移動させて、剥離された状態の2枚のシートP1、P2の間に中シートPMが挿入されるように中シートPMを第3搬送経路K3の一端側に向けて搬送する。
【0041】
このように、本実施の形態における剥離爪16は、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2の非接合部を剥離(分離)する剥離部材として機能するとともに、その剥離した2枚のシートP1、P2を2つの分岐搬送経路K4、K5にそれぞれ別々に導く切替部材として機能する。そのため、剥離部材と切替部材とを別々に設ける場合に比べて、ラミネート処理装置50を小型化・低コスト化することができる。すなわち、重合シートJPを構成する2枚のシートP1、P2を効率的に良好に剥離することができる。
第7センサ47は、剥離された第1のシートP1が第1分岐搬送経路K4に正常に搬送された状態を光学的に検知するものである。また、第8センサ48は、剥離された第2のシートP2が第2分岐搬送経路K5に正常に搬送された状態を光学的に検知するものである。
なお、本実施の形態では、剥離爪16が剥離部材として機能するとともに切替部材としても機能するように構成したが、剥離部材として機能する剥離爪16とは別に切替部材として機能する部材を設置することもできる。
【0042】
ここで、
図8(A)、(C)等を参照して、第1ガイド部材25は、第3搬送経路K3において剥離爪16と巻付けローラ20との間で、重合シートPJの2つのシートP1、P2のうち巻付けローラ20において内側に巻きつけられる第1のシートP1の弛み量(撓み量)を制限する制限部材として機能している。
詳しくは、制限部材としての第1ガイド部材25は、第3搬送経路において仮想面S1(巻付けローラ20の巻付け開始位置Wと第3搬送ローラ対6のニップとを通る仮想平面であって、
図8(A)参照)に対して巻付けローラ20が配置された側(仮想面S1の上方である。)に配置された搬送ガイド部材である。また、第1ガイド部材25は、巻付けローラ20の外周に沿って所定の間隔をあけて、その外周の一部を覆うように略三角柱状に形成されていて、第3搬送経路K3と第1分岐搬送経路K4との搬送ガイド部材としても機能している。すなわち、第1ガイド部材25によって、第3搬送経路K3を搬送されるシートや、第1分岐搬送経路K4を搬送されるシートや、巻付けローラ20に巻き付けられるシートが、案内されることになる。
特に、第3搬送経路K3においては、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間で、重合シートPJの上方への撓み(特に、第1のシートP1の上方への撓みである。)が第1ガイド部材25によって制限されるため、第1ガイド部材25と第3搬送ローラ対6との間で、重合シートPJの隙間C(特に、第1のシートP1の上方への撓みである。)が集中的に形成されることになる。そのため、重合シートPJの巻付けローラ20への巻付け量を大きくしなくても隙間Cの間隔を大きくできて、隙間Cに剥離爪16を挿入して重合シートPJを剥離する動作を不具合なくおこなうことができる。
【0043】
また、
図8(A)、(C)等を参照して、第2ガイド部材26は、第3搬送経路K3において剥離爪16と巻付けローラ20との間で、重合シートPJの2つのシートP1、P2のうち巻付けローラ20において外側に巻きつけられる第2のシートP2を案内する案内部材として機能している。
詳しくは、案内部材としての第2ガイド部材26は、第3搬送経路において仮想面S1(
図8(A)参照)に対して巻付けローラ20が配置されていない側(仮想面S1の下方である。)に配置された搬送ガイド部材である。また、第2ガイド部材26は、第2搬送ローラ対5の上流側近傍から第3搬送ローラ対6の下流側近傍にかけて、シートの下面に対向するように配置されている。すなわち、第2ガイド部材26によって、第3搬送経路K3を搬送されるシートが案内されることになる。
特に、第3搬送経路K3においては、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間で、第1ガイド部材25と第2ガイド部材26との間隔が、最大のシート厚さのシートが搬送可能な値に設定されていて、第1ガイド部材25と第2ガイド部材26との間で重合シートPJのシートP1とシートP2との間隔が大きくならないように制限されるため、重合シートPJの隙間C(特に、第1のシートP1の上方への撓みである。)が集中的に形成されることになる。そのため、隙間Cに剥離爪16を挿入して重合シートPJを剥離する動作を不具合なくおこなうことができる。
【0044】
ここで、
図8等を参照して、第6センサ46(異常検知センサ)は、剥離爪16の待機位置からの移動(
図16に示す待機位置から
図11、
図12(A)に示す剥離位置への移動である。)がおこなわれる前に、所定位置(第3搬送ローラ対6と巻付けローラ20との間である。)で2枚のシートP1、P2の間に所定の間隔を超える隙間Cが形成されていない異常状態を検知する異常検知手段として機能するものである。すなわち、異常検知手段としての第6センサ46は、剥離爪16が隙間Cに挿入される前に、所定位置で2枚のシートP1、P2の間に所定の間隔を超える隙間Cが形成されていない異常状態を検知する。
さらに換言すると、異常検知手段としての第6センサ46は、
図7(D)、
図8(A)に示すように2枚のシートP1、P2の間に隙間Cが形成されるべきタイミングで、まったく隙間Cが形成されていない状態や、充分な間隔の隙間Cが形成されていない状態を、異常状態として検知するものである。
そして、本実施の形態では、第6センサ46(異常検知手段)によって異常状態が検知されたときに、異常状態が生じた旨を通知するようにしている。詳しくは、
図1に示すように、画像形成システム300の外装部には、画像形成システム300における種々の情報を表示したり種々の指令を入力したりするための操作表示パネル49(操作表示部)が設置されている。そして、第6センサ46によって重合シートPJに充分な間隔の隙間Cが形成されていない状態が検知されると、操作表示パネル49に異常が検知された旨が表示される。そのような表示は、例えば、「異常が生じたため、中シートを挿入する処理を中止します。ユニット給送トレイにおける重合シートのセット方向を確認してください。また、セット方向が正しくて、同じような異常が繰り返される場合にはサービスマンに連絡してください」などである。
このような第6センサ46(異常検知手段)としては、所定の間隔を超えた隙間Cが形成された重合シートPJ(上方の第1のシートP1である。)に接触するレバー式センサなどを用いることができる。
【0045】
以下、
図6~
図10を参照して、ラミネート処理装置50において重合シートPJを剥離する動作について説明する。
また、その動作説明において、適宜に、
図11、
図12を用いて剥離爪16の動作を説明するとともに、
図14、
図15のフローチャートを用いて制御フローを説明する。
【0046】
まず、印刷動作が指令されると、その印刷モードが「ラミネート処理モード(ラミネート印刷モード)」であるかが判別される(
図14:ステップS01)。その結果、ラミネート処理モード(ラミネート印刷モード)でないものと判別された場合には、通常印刷モードであるものとして「通常印刷モード」が開始される(ステップS02)。そして、本体給送トレイ112から給送されたシートPへの印刷がおこなわれ、ラミネート処理をおこなわずに、その印刷後のシートPがバイパス排出経路K7を経由して第2排出トレイ14に排出され(ステップS03)、本フローを終了する。
【0047】
これに対して、ステップS01にて、ラミネート処理モード(ラミネート印刷モード)であるものと判別された場合には、
図15の制御フローが実行される。
まず、重合シートPJがユニット給送トレイ11から給送ローラ2と第1搬送ローラ対4とによって給送されると(
図15:ステップS1)、
図6(A)に示すように、第3搬送経路K3において、接合部Aを先頭にして第2搬送ローラ対5によって順方向(
図6の右方から左方に向かう方向である。)に搬送される。
このとき、把持部材32が把持位置に位置するように移動機構30が制御されている。すなわち、カム34は、アーム部材31を押圧しない回転位置に移動している。このように把持部材32が把持位置に位置しているとき、把持部材32によって第3搬送経路K3におけるシートの搬送が妨げられることはない。また、剥離爪16は、第3搬送経路K3におけるシートの搬送を妨げない待機位置(
図12(A)の位置である。)に待機している。
そして、
図6(B)に示すように、重合シートPJの接合部A(順方向先端、一端側)が第3センサ43によって検知されるタイミングをトリガにして、重合シートPJの被把持部B(順方向後端、他端側)が巻付けローラ20の位置を通過するまで第3搬送ローラ対6で重合シートPJを所定量X1搬送させる(
図15:ステップS2、S3)。
そして、
図6(C)に示すように、その状態で一時的に第3搬送ローラ対6による重合シートPJの搬送を停止させるとともに、把持部材32を把持位置から退避位置へ移動する(
図15:ステップS4)。すなわち、カム34を、アーム部材31を押圧する回転位置に移動させる。この状態は、把持部材32と受部20bとの間に重合シートPJの被把持部Bを受入可能な状態である。
そして、
図6(D)に示すように、第3搬送ローラ対6を逆回転して、重合シートPJの逆方向の搬送を開始する(
図15:ステップS5)。このとき、第4センサ44によって、重合シートPJの被把持部B(逆方向先端、他端側)が検知される。
【0048】
そして、
図7(A)に示すように、重合シートPJの被把持部Bが第4センサ44によって検知されるタイミングをトリガにして、重合シートPJの被把持部Bが巻付けローラ20の位置(巻付け開始位置W)に達するまで第3搬送ローラ対6で重合シートPJを所定量X2搬送して停止する(
図15:ステップS6、S7)。
そして、
図7(B)に示すように、その状態で把持部材32を退避位置から把持位置へ移動させる(
図15:ステップS8)。すなわち、カム34を、アーム部材31を押圧しない回転位置に移動する。この状態は、
図7(B´)に示すように、重合シートPJの他端側端面がいかなる部材にも突き当たることなく、把持部材32と受部20bとの間で被把持部Bが把持された状態である。
そして、
図7(C)に示すように、把持部材32によって重合シートPJを把持した状態で巻付けローラ20を逆方向(反時計回り方向)に回転するとともに、第3搬送ローラ対6を再び逆転する。このとき、巻付けローラ20の回転が進められると、
図7(D)に示すように、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間で、重合シートPJの2枚のシートP1、P2の間に隙間Cが形成されていく。このとき、重合シートPJは、巻付けローラ20の近傍で第1、第2ガイド部材25、26によって、撓みが制限された状態になる。そのため、重合シートPJの隙間Cは、第3搬送ローラ対6に近い位置に集中的に形成されることになる。
【0049】
このように、第3搬送ローラ対6に対して逆方向下流側に配置された第4センサ44によって重合シートPJの逆方向先端を検知して、そのタイミングをトリガにして把持部材32によって重合シートPJを把持するタイミングを定めているため、必要なシート搬送量X2に対するシート長のばらつき(同じサイズのシートであっても存在する誤差である。)に関わらず、重合シートPJの被把持部Bを所望の把持位置に精度良く搬送することができる。
また、第4センサ44によって重合シートPJの逆方向先端を検知から必要なシート搬送量X2をシート長によらず短くすることができるので、搬送量X2のばらつきを抑えて、重合シートPJの被把持部Bを所望の把持位置に精度良く搬送することができる。
このようなことから、第4センサ44は、巻付けローラ20に近い位置に配置されることが好ましい。
【0050】
また、先に
図7(C´)を用いて、巻付けローラ20に重合シートPJを巻き付けることで、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間で重合シートPJに隙間Cが生じるメカニズムについて説明した。
以下、そのメカニズムについて、さらに重ねて補足説明する。
巻付けローラ20に巻き付けられる重合シートPJは、把持部材32に把持されてシートずれが規制された状態になるため、巻付けローラ20で周長差分のスリップが生じて、内側のシートP1の搬送量が外側のシートP2の搬送量に比べて少なくなる。その結果、第3搬送ローラ対6と巻付けローラ20のニップ間で、内側シートP1に撓み(弛み)が生じることになる。このとき、巻付けローラ20に重合シートPJを1周以上巻き付けることで、それ以降はシートの厚み分で内周と外周で周長差が生じて、同じように撓み(弛み)が発生することになる。
詳しくは、内側のシートP1の厚さをΔRとして、巻付けローラ20の回転軸20a(軸中心)から内側のシートP1までの距離をRとすると、巻付けローラ20の回転軸20a(軸中心)から外側のシートP2までの距離はR+ΔRとなる。内側のシートP1の厚みΔRだけ半径が異なるため、重合シートPJを巻付けローラ20に1周巻き付けると、内側シートP1と外側シートP2とに2×ΔR×πの周長差が生じる。したがって、巻付けローラ20に重合シートPJを巻き付ける回数をM回とすると、2×ΔR×π×Mだけ内側シートP1に弛みが生じることになる。
そして、最終的に、第3搬送ローラ対6と巻付けローラ20との間に撓み(弛み)が集まって、2枚のシートP1、P2の間に、2×ΔR×π×Mに相当する隙間Cが形成されることになる。
【0051】
その後、
図8(A)に示すように、巻付けローラ20による重合シートPJの巻付けが開始されてから、第3搬送ローラ対6による搬送量が所定量X3に達した時点で、第3搬送ローラ対6による搬送が停止されるとともに、巻付けローラ20による重合シートPJの巻付けが停止される(
図15:ステップS9)。この状態は、重合シートPJが巻付けローラ20に1周以上巻き付けられた状態であって、正常であれば、重合シートPJの隙間C(シートP1とシートP2との間の距離)が充分に広がった状態になる。
このとき、重合シートPJに所定の間隔F以上の間隔の隙間Cが形成されているものと第6センサ46によって検知されたかが判別される(
図15:ステップS29)。
その結果、所定の間隔F以上の充分な間隔の隙間Cが形成されているものと判別された場合には、その後に剥離爪16による剥離動作をおこなっても問題が生じないものとして、
図8(B)に示すように、充分に広げられた重合シートPJの隙間Cに剥離爪16が挿入される(
図15:ステップS10)。すなわち、
図11、
図12(A)に示すように、一対の剥離爪16が、それぞれ、待機位置から剥離位置に移動される。
そして、
図8(C)に示すように、剥離爪16が隙間Cに挿入された状態で、第3搬送ローラ対6の正転が開始されるとともに、巻付けローラ20の正方向(時計回り方向)の回転が開始される(
図15:ステップS11)。すなわち、
図12(A)~(C)に示すように、重合シートPJに対して隙間Cに挿入された剥離爪16が一端側Aから他端側Bに向けて相対的に移動することになる。なお、本実施の形態において、このような相対的な移動は、剥離爪16の搬送方向の位置は変化せずに、重合シートPJ自体が
図12(A)~(C)に示す矢印方向に移動することで達成されている。
【0052】
そして、
図9(A)に示すように、第3搬送ローラ対6に正転による重合シートPJの搬送が所定量X4おこなわれた後に、第3搬送ローラ対6の正転と巻付けローラ20の正転とがそれぞれ停止される(
図15:ステップS12)。このとき、重合シートPJの被把持部Bは、第3搬送経路K3(
図7(B)に示す巻付け開始位置W)上に位置した状態である(把持解除可能な状態である。)。また、
図12(C)に示すように、剥離爪16は、重合シートPJに対して隙間Cに挿入されて他端側Bに向けて相対的に移動した後に他端側端部で停止することになる。
そして、その状態で把持部材32を把持位置から退避位置へ移動させる(
図15:ステップS13)。すなわち、カム34を、アーム部材31を押圧しない回転位置に移動させる。この状態は、把持部材32による重合シートPJの把持が解除された状態である。なお、本実施の形態では、カム34(移動機構30)を移動させて把持部材32による把持を解除したが、把持部材32による把持力よりも第3搬送ローラ対6の搬送による引抜き力が大きい場合には、カム34(移動機構30)の移動をせずに、第3搬送ローラ対6の搬送による引抜きによって、把持部材32による把持を解除することもできる。
その後、
図9(B)に示すように、第3搬送ローラ対6を再び正転させて、重合シートPJの順方向の搬送を開始する(
図15:ステップS14)。また、重合シートPJの被把持部B(順方向後端、一端側)が、第3搬送経路K3と分岐搬送経路K4、K5との分岐部を通過した後に、把持部材32を退避位置から把持位置へ移動させる。さらに、このとき、第4センサ44によって、重合シートPJの被把持部B(順方向後端、他端側)が検知される。そして、重合シートPJの順方向後端が第4センサ44によって検知されるタイミングをトリガにして、第3搬送ローラ対6で重合シートPJを所定量X5搬送して停止した後に、
図12(D)に示すように剥離爪16の幅方向の移動をおこなう(
図15:ステップS15、S31)。これにより、
図9(B)に示すように、重合シートPJにおける2枚のシートP1、P2の順方向後端が大きく分離して開かれた状態になる(
図12(D)参照)。このとき、重合シートPJの剥離動作が開始されることになる。
そして、
図9(C)に示すように、第3搬送ローラ対6を逆転して重合シートPJの逆方向の搬送を開始する(
図15:ステップS16)。このとき、剥離爪16は、第3搬送経路K3への重合シートPJの進入を遮断する切替位置(
図12(D)に示す位置である。)に位置しているため、剥離された状態の2枚のシートP1、P2は、
図9(C)に示すように、2つの分岐搬送経路K4、K5にそれぞれ導かれていくことになる。このとき、第5センサ45(
図2参照)によって、重合シートPJの接合部A(逆方向後端、一端側)が検知される。そして、重合シートPJの逆方向後端がシート検知手段としての第5センサ45(
図2参照)によって検知されるタイミングをトリガにして、本体給送トレイ112からの給送ローラ197による中シートPMの給送が開始される(
図15:ステップS17、S18)。
なお、中シートPMの給送を開始するタイミングは、これに限定されることなく、画像形成装置100における中シートPMに対する印刷に要する時間によって、ラミネート処理モード(ラミネート印刷モード)に要する時間が短くなるように設定することが好ましい。
【0053】
そして、
図10(A)に示すように、重合シートPJの逆方向後端が第5センサ45(
図2参照)によって検知されるタイミングをトリガにして、第3搬送ローラ対6で重合シートPJを所定量X6搬送して停止する(
図15:ステップS19)。このとき、重合シートPJの接合部Aは、第3搬送ローラ対6のニップの位置か、ニップよりも僅かに左方の位置にある。すなわち、重合シートPJの一端側が第3搬送ローラ対6に挟持された状態である。そして、この状態が重合シートPJの剥離動作が終了した状態である。
また、中シートPMは、重合シートPJの剥離動作が終了する前に、既に本体給送トレイ112から給送開始され印刷がほぼ終了している。そのため、
図10(A)に示すように、重合シートPJの剥離動作が終了した時点では、中シートPMの先端(順方向先端、一端側)が、重合シートPJの間の挿入位置に近づいた状態になっている。
一方、第3センサ43によって、中シートPMの先端(順方向先端、一端側)が検知される。そして、その検知タイミングをトリガにして、
図10(B)に示すように、中シートPMに干渉しないタイミングで、剥離爪16を待機位置に移動させる。
さらに、
図10(C)、
図12(E)に示すように、中シートPMの順方向先端が第3センサ43によって検知されるタイミングをトリガにして、第2搬送ローラ対5で中シートPMを所定量X7搬送した後に、第3搬送ローラ対6による重合シートPJの順方向の搬送を再開する(
図15:ステップS20、S21)。このとき、中シートPMは、2枚のシートP1、P2の間の所望位置に、精度よく挟まれた状態になる。
こうして、重合シートPJにおける2枚のシートP1、P2の間に中シートPMを挿入する工程(挿入動作)が終了する(
図15:ステップS22)。
【0054】
その後、重合シートPJ(剥離後に中シートPMが挿入されたものである。)は、第3搬送ローラ対6によって第4搬送経路K6を通過してラミネート処理部51に搬送される。そして、ラミネート処理部51を通過した重合シートPJは、中シートPMが内部に挿入された状態で全域が接合されることになる(
図15:ステップS23)。そして、そのようにラミネート処理が施された重合シートPJは、第1排出ローラ対7によって装置外に排出されて、排出トレイ13上に載置されることになる。
このように、本実施の形態におけるラミネート処理装置50は、重合シートPJを給送する工程と、重合シートPJの2枚のシートP1、P2を剥離する工程と、剥離した2枚のシートP1、P2の間に中シートPMを挿入する工程と、中シートPMが挿入された状態の重合シートPJにラミネート処理を施す工程と、が一連の動作としておこなわれるため、ユーザーの利便性を高めることができる。
【0055】
一方、
図15のステップS29で、第6センサ46によって異常が検知されたものと判別された場合、すなわち、重合シートPJに所定の間隔F以上の充分な間隔の隙間Cが形成されていない場合には、その後に剥離爪16による剥離動作をおこなうと種々の問題が生じるものとして、剥離爪16の待機位置から剥離位置への移動はおこなわない。このとき、操作表示パネル49(
図2参照)に、異常が生じたことにより剥離動作や中シートPMの挿入動作を中止した旨を通知する(
図15:ステップS30)。
そして、このように異常が生じた場合に、異常に関与したシートPは、第3搬送ローラ対6によって第3排出トレイ55に向けて搬送されてスタックされることになる。
【0056】
以下、本実施の形態における画像形成システム300において、特徴的な制御について詳述する。
先に
図1等を用いて説明したように、本実施の形態における画像形成システム300は、画像形成装置100とラミネート処理装置50とが設置されたものであって、「通常印刷モード」と「ラミネート印刷モード(ラミネート処理モード)」とを実行可能に構成されている。
「通常印刷モード」は、画像形成装置100によって印刷され搬送されたシートPに対して、ラミネート処理を施すことなく排出する印刷モードである。具体的に、ラミネート処理装置50には、通常印刷モードが実行されるときに、画像形成装置100から搬送されたシートPをシート剥離部1とラミネート処理部51とを経由することなく排出するための排出経路としてのバイパス排出経路K7が設けられている。
これに対して、「ラミネート印刷モード」は、画像形成装置100によって印刷され搬送されたシートP(中シートPM)に対して、ラミネート処理装置50によってラミネート処理を施して排出する印刷モードである。
【0057】
ここで、
図17等を参照して、本実施の形態では、通常印刷モードの終了後に連続して前記ラミネート印刷モードが実行される場合に、ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている通常印刷モードが終了するタイミング(通常印刷モードが終了する所要時間t1が経過するタイミング)よりも、ラミネート処理部51(熱加圧ローラ対51a)における加熱手段としてのヒータ51bの加熱に要する加熱時間Th(熱加圧ローラ対51aの表面温度(定着温度)が狙いの温度T1に達するまでの時間である。)の分だけ早く、ヒータ51bの加熱を開始している。
すなわち、
図18に比較例として示す制御のように、通常印刷モードが終了する所要時間t1が経過してから、エンジン360の制御管理部370からラミネート処理制御部200に、ラミネート準備開始(ヒータ51bの加熱制御)の要求をするのではなくて、本実施の形態では、通常印刷モードが終了する所要時間t1が経過する前に、エンジン360の制御管理部370からラミネート処理制御部200に、ラミネート準備開始(ヒータ51bの加熱制御)の要求をしている。
【0058】
そして、上述した制御において、通常印刷モードが終了するタイミングは、ラミネート印刷モードが開始されるまでに実行される通常印刷モードの印刷枚数とシート搬送速度とに応じて求められる。
すなわち、本実施の形態では、ラミネート処理を要さない通常印刷モードと、ラミネート処理を要するラミネート印刷モードと、が連続で要求された場合、通常印刷モードの制御と並行して、ラミネート印刷モードにおける印刷枚数、搬送速度に応じてラミネート処理装置50の準備動作の開始タイミングを調整している。
【0059】
このような制御をおこなうことで、通常印刷モードの後にラミネート印刷モードを続けて実行する場合であっても、無駄な消費電力を生じさせることなく、生産性が低下する不具合を軽減することができる。
すなわち、先に
図18にて比較例として説明したように、通常印刷モード(ヒータ51bの加熱を要さない印刷モードである。)をおこなった後にラミネート印刷モード(ヒータ51bの加熱を要する印刷モードである。)を続けて実行する場合に、通常印刷モードが完全に終了するのを待って(所要時間t1が経過するのを待って)、ラミネート処理装置50の準備を開始してしまうと、ラミネート処理装置50のヒータ51bによる所定温度T1までの加熱(立ち上げ)に時間Thの分だけ、全体として画像形成システムの生産性が低下してしまう。
これに対して、このような不具合を解決するために、ヒータ51bの立ち上げを早めにおこなう方策(例えば、通常印刷モードの実行中からヒータ51bを立ち上げるような場合である。)も考えられるが、その立ち上げが早すぎてしまうと、無駄な消費電力が生じてしまうことになる。
これに対して、本実施の形態では、通常印刷モード後に連続してラミネート印刷モードが実行される場合に、通常印刷モードにおける印刷情報からラミネート処理装置50の準備開始タイミングを演算して、ラミネート処理装置50の準備動作を前倒しして適切なタイミングでおこなっているため、無駄な消費電力を生じさせることなく、画像形成システム300における全体的な生産性を向上させることができる。
【0060】
なお、本実施の形態において、通常印刷モードの実行中にラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合にも、ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている通常印刷モードが終了するタイミングよりも、ヒータ51b(加熱手段)の加熱に要する加熱時間Thの分だけ早く、ヒータ51bの加熱が開始されるように制御している。
例えば、3部の通常印刷モードの実行中に(3部の印刷が終了する前に)、2部のラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合、その直前に実行されていた通常印刷モード(例えば、2部目の通常印刷モードである。)が終了するタイミングよりも早く、加熱時間Thの分だけ早く、ヒータ51bの加熱が開始されるように制御している。
なお、そのように通常印刷モードの実行中にラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合、中断された通常印刷モードは、ラミネート印刷モードが終了した後に再開されることになる。
そして、そのような場合であっても、無駄な消費電力を生じさせることなく、画像形成システム300における全体的な生産性を向上させることができる。
【0061】
以下、
図19のシーケンス図と、
図20のフローチャートと、を用いて、通常印刷モードの終了後にラミネート印刷モードが連続して実行されるときの制御について説明する。
図19のシーケンス図は、ユーザーの操作表示パネル49への入力(指令)によって、通常印刷モードによる3部の印刷がおこなわれた後に、ラミネート印刷モードによる2部の印刷がおこなわれるシナリオとなっている場合の、コントローラ350の要求管理部351、エンジン360の制御管理部370、ラミネート処理制御部200(
図5参照)の制御シーケンスの一例を示すものである。
具体的に、
図19に示すように、要求管理部351からの印刷要求(3部の通常印刷モードに関する要求である。)に基づいて印刷制御管理部371によって画像形成装置100におけるシートPの給送から印刷、排出までの制御がおこなわれる。このとき、通常印刷モードの次に行われるラミネート印刷モードを準備開始(ヒータ51bの加熱を開始)するタイミングを演算するため、印刷制御管理部371から印刷時間管理部372に、印刷時間(3部の通常印刷モードに要する印刷時間である。)を取得するための要求がされると、印刷時間管理部372が要求管理部351から印刷情報を取得して、ラミネート印刷モードを準備開始するタイミングと待合せ時間とが求められる。そして、そのタイミングに到達すると、印刷制御管理部371から後処理要求部373に後処理(ラミネート処理)の準備をおこなう要求がされて、後処理要求部373からラミネート処理制御部200にラミネート処理を準備する要求がされる。そして、その要求に基づいて、ラミネート処理制御部200によって、ヒータ51bの加熱や重合シートPJの給送・剥離処理の準備がおこなわれる。そして、要求管理部351による印刷要求(2部のラミネート印刷モードに関する要求である。)に基づいて印刷制御管理部371によって画像形成装置100における中シートPMの給送から印刷、搬送の制御がおこなわれるとともに、後処理要求部373からラミネート処理制御部200への要求に基づいて、中シートPMを2枚のシートP1、P2の間に挿入した重合シートPJに対するラミネート処理がおこなわれる。
【0062】
このような制御は、
図20に示すような制御フローに基づいておこなうことができる。
図20に示すように、まず、ユーザーによる操作表示パネル49の操作により通常印刷モード後にラミネート印刷モードをおこなう入力がされて、通常印刷モードの要求がされると(ステップS40)、通常印刷モードが開始され、シートPに画像が印刷され、そのシートPが第2排出トレイ14に排出される(ステップS41~S43)。そして、このようなステップS41~S43のフローは、要求された印刷枚数(部数)の分だけ繰り返される。
そして、このような通常印刷モードの実行に並行して、通常印刷モードの印刷条件が取得されて、その情報がコントローラ350の要求管理部351に送信される(ステップS44)。そして、ラミネート処理装置50の準備開始タイミングが演算されて(ステップS45)、そのタイミングになると、その準備の要求がラミネート処理制御部200にされる(ステップS46、S47)。
その後、ラミネート印刷モードの要求がされると(ステップS48)、ステップS47で要求されたタイミングに基づいて、ラミネート印刷モードが開始される(ステップS49)。
【0063】
なお、通常印刷モードの実行中に、エンジン360の制御管理370内の印刷時間管理部372はコントローラ350の要求管理部351から割り込み印刷の情報を取得する。割り込み印刷の情報とは、枚数やシート搬送速度であって、印刷時間管理部372は、取得した情報を変換して割り込み印刷の所要時間を演算することになる。
【0064】
図21は、印刷の実行に要する時間を示す概念図である。
図21において、Lは、画像形成装置100においてシートPが本体給送トレイ112から給送されてから排出ローラ対131によって装置外に排出されるまでの搬送距離である。また、Vはシートの搬送速度であって、Nは印刷部数(枚数)であって、PPMは1分間に印刷されるシート枚数である。また、Tfはラミネート処理(後処理)に要する時間である。
図21に示すように、画像形成システム300に周辺機が接続されている場合には、その初期化に要する時間が印刷の実行時間に加算されることになる。
また、印刷開始1枚目のシート搬送時間は、L/Vとなる。シート搬送時間の合計は、1/PPMなる。したがって、通常印刷モードをN部おこなう場合、その印刷実行時間t1(印刷所要時間)は、
t1=L/V+1/PPM×(N-1) …(式A)
となる。
そして、
図17を参照して、通常印刷モードにおける印刷実行時間(印刷所要時間)をt1として、ヒータ51bの立ち上げに要する加熱時間をThとすると、印刷時間管理部372(
図5、
図19参照)は、印刷実行時間t1(印刷所要時間)に達するよりも加熱時間Thだけ早くに、印刷制御管理部371に対して、ラミネート処理装置50の準備開始タイミング到達を通知する。そして、通知を受けた印刷制御管理部371は、後処理要求部373に対して準備動作開始タイミングを通知して、通知を受けた後処理要求部373は、ラミネート処理制御部200に対してラミネート処理装置50の準備開始(ヒータ51bの加熱開始)を指示することになる。
【0065】
<変形例1>
図22、
図23は、ラミネート印刷モードの実行中に通常印刷モードが割り込んだ後にラミネート印刷モードが再開されるときの制御を示すものである。
変形例1では、
図22に示すように、ラミネート印刷モードの実行中に通常印刷モードが割り込んで実行された後に、中断された前記ラミネート印刷モードが再開される場合も、通常印刷モードの終了後に連続して前記ラミネート印刷モードが実行される場合と同様に、ラミネート印刷モード(再開されたものである。)の開始直前に実行されている通常印刷モードが終了するタイミングよりも、ヒータ51b(加熱手段)の加熱に要する加熱時間Thの分だけ早く、ヒータ51bの加熱を開始している。
ラミネート印刷モードの実行中に通常印刷モードが割り込んできた場合、コントローラ350の要求管理部351は、既に給送開始しているラミネート印刷より後のラミネート印刷を中断して、通常印刷モードを先行して実行するようにエンジン360の印刷制御管理部371に対して要求する。そして、要求管理部351は、印刷制御管理部371に対して、通常印刷モードの後に、連続して残りのラミネート印刷モードの実行を要求する。
【0066】
図23のシーケンス図は、ユーザーの操作表示パネル49への入力(指令)によって、ラミネート印刷モードによる3部の印刷中、2部目の途中で、割り込みによって通常印刷モードによる2部の印刷がおこなわれて、それが終了した後に中断していた3部目のラミネート印刷モードがおこなわれるシナリオとなっている場合の、コントローラ350の要求管理部351、エンジン360の制御管理部370、ラミネート処理制御部200(
図5参照)の制御シーケンスの一例を示すものである。
図23に示すように、後処理要求部373は、ラミネート印刷中に通常印刷が割り込んできた場合、既に給送開始しているラミネート印刷モードはラミネート処理までやり切り、ラミネート処理制御部200に対して停止を要求する。そして、印刷制御管理部371は、通常印刷モードと並行して、印刷時間管理部372に対してラミネート準備開始タイミングの算出を要求する。そうすると、印刷時間管理部372は、要求管理部351から割り込んだ通常印刷モードの情報を取得する。そして、印刷時間管理部372は、取得した情報を変換して通常印刷モードの所要時間t1を求める。このときの所要時間t1は、先に説明した式Aによるものである。
そして、印刷時間管理部372は、通常印刷モードの開始から時間(t1-Th)が経過した後に、印刷制御管理部371に対して、タイミング到達を通知する。そして、その通知を受けた印刷制御管理部371は、後処理要求部373に対してラミネート準備開始タイミングの到達を通知して、通知を受けた後処理要求部373からラミネート処理制御部200にラミネート準備開始が指示されることになる。このように、通常印刷モードと並行してラミネート処理の準備をおこなうことで、ラミネート処理制御部200の準備時間Thの分だけ、処理時間を短縮することができる。
【0067】
<変形例2>
図24に示すように、変形例2における画像形成システム300は、画像形成装置100の側方(画像形成後のシートPが排出される側の側方である。)に、縦搬送型のラミネート処理装置50が着脱可能に設置されている。この縦搬送型のラミネート処理装置50は、重合シートPJが積載されるユニット給送トレイ11が最上部に配置されて、上方から下方に向けてシート剥離部1(巻付けローラ20)、ラミネート処理部51、排出トレイ13などが順次配置されている。また、ラミネート処理装置50には、画像形成装置100から排出された中シートPMをシート剥離部1(巻付けローラ20)に導くための搬送経路とは別に、画像形成装置100から排出されたシートPをラミネート処理を施すことなく排出するためのバイパス排出経路K7(排出経路)が設けられている。このバイパス排出経路K7上には、
図24に示すように、搬送ローラ対58、59が設けられている。
また、画像形成システム300には、画像形成装置100から排出されたシートP(中シートPMとなるものも含む。)をラミネート処理装置50に導くための中継装置400が設置されている。
そして、このように構成された画像形成システム300においても、通常印刷モードの終了後に連続してラミネート印刷モードが実行される場合(ラミネート印刷モードの実行中に通常印刷モードが割り込んで実行された後に、中断されたラミネート印刷モードが再開される場合も含む。)や、通常印刷モードの実行中にラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合に、ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている通常印刷モードが終了するタイミングよりも、ヒータ51bの加熱に要する加熱時間Thの分だけ早く、ヒータ51bの加熱を開始している。
これにより、通常印刷モードの後にラミネート印刷モードを続けて実行する場合であっても、無駄な消費電力を生じさせることなく、生産性が低下する不具合を軽減することができる。
【0068】
<変形例3>
図25に示すように、変形例3における画像形成システム300は、画像形成装置100から搬送されたシートPに対して後処理(ラミネート処理以外の後処理である。)を施す後処理装置500が設けられている。
詳しくは、変形例3における画像形成システム300には、画像形成装置100からラミネート処理装置50を経由して搬送されたシートP(ラミネート処理が施されていない通常印刷モード時のものである。)に対して、パンチ処理やステイプル処理などの後処理を施す後処理装置500が、着脱可能に設置されている。
そして、変形例3における画像形成システム300においても、
図26に示すように、通常印刷モードの終了後に連続してラミネート印刷モードが実行される場合(
図27に示すように、ラミネート印刷モードの実行中に通常印刷モードが割り込んで実行された後に、中断されたラミネート印刷モードが再開される場合も含む。)や、通常印刷モードの実行中にラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合に、ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている通常印刷モードが終了するタイミングよりも、ヒータ51bの加熱に要する加熱時間Thの分だけ早く、ヒータ51bの加熱を開始している。
しかし、変形例3において、ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている通常印刷モードが後処理装置500による後処理をともなうものである場合、その通常印刷モードが終了する前記タイミングは、後処理装置500による後処理に要する時間Tfを加味したものとしている。
すなわち、後処理に要する時間をTfとした場合に、通常印刷モードをN部おこなう場合の印刷実行時間t1(印刷所要時間)は、先に説明した式Aとはならずに、
t1=L/V+(1/PPM+Tf)×(N-1) …(式B)
にて求められることになる。
これにより、通常印刷モードの後にラミネート印刷モードを続けて実行する場合であっても、無駄な消費電力を生じさせることなく、生産性が低下する不具合を軽減することができる。
【0069】
<変形例4>
図28、
図29に示すように、変形例4における画像形成システム300は、画像形成装置100を調整するための調整モードが所定の条件で印刷動作とは別に実行される。
このような調整モードとしては、例えば、所定枚数ごとに実行されるプロセスコントロール(作像部115における作像条件(現像バイアス、トナー濃度、帯電バイアス、露光量、転写バイアスなどである。)を適正化するもの、などがある。
そして、変形例4における画像形成システム300においても、
図28に示すように、通常印刷モードの終了後に連続してラミネート印刷モードが実行される場合(
図29に示すように、ラミネート印刷モードの実行中に通常印刷モードが割り込んで実行された後に、中断されたラミネート印刷モードが再開される場合も含む。)や、通常印刷モードの実行中にラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合に、ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている通常印刷モードが終了するタイミングよりも、ヒータ51bの加熱に要する加熱時間Thの分だけ早く、ヒータ51bの加熱を開始している。
しかし、変形例4において、ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている通常印刷モードが調整モードをともなうものである場合、通常印刷モードが終了するタイミングは、調整モードに要する時間Tadの分だけ遅れたものとしている。
すなわち、調整モードに要する時間をTadとした場合に、通常印刷モードをN部おこなう場合の印刷実行時間t1(印刷所要時間)に時間Tadを加算した時間から加熱時間Thを差し引いたタイミング(t1+Tad-Th)でヒータ51bの加熱開始(ラミネート準備開始)がされることになる。
これにより、通常印刷モードの後にラミネート印刷モードを続けて実行する場合であっても、無駄な消費電力を生じさせることなく、生産性が低下する不具合を軽減することができる。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態における画像形成システム300は、搬送されるシートPの表面に画像を印刷可能な画像形成装置1と、画像形成装置1から搬送されたシートP(中シートPM)を2枚のシートP1、P2の間に挿入した状態の重合シートPJに対してヒータ51b(加熱手段)によってラミネート処理を施すラミネート処理装置50と、が設けられている。また、画像形成装置1によって印刷され搬送されたシートPに対して、ラミネート処理を施すことなく排出する通常印刷モードと、ラミネート処理装置50によってラミネート処理を施して排出するラミネート印刷モードと、を実行可能に構成されている。そして、通常印刷モードの終了後に連続してラミネート印刷モードが実行される場合、又は、通常印刷モードの実行中にラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合、ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている通常印刷モードが終了するタイミングt1よりも、ヒータ51bの加熱に要する加熱時間Thの分だけ早く、ヒータ51bの加熱を開始している。
これにより、通常印刷モードの後にラミネート印刷モードを続けて実行する場合であっても、無駄な消費電力を生じさせることなく、生産性が低下する不具合を軽減することができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、カラーの画像形成装置100が設置された画像形成システム300に対して本発明を適用したが、モノクロの画像形成装置が設置された画像形成システムに対しても当然に本発明を適用することができる。また、本実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置100が設置された画像形成システム300に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の方式の画像形成装置(例えば、インクジェット方式の画像形成装置や、孔版印刷機などである。)が設置された画像形成システムに対しても本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、ラミネート処理部51における加熱手段としてヒータ51bを用いたが、ラミネート処理部における加熱手段はこれに限定されることなく、例えば、加熱手段として電磁誘導加熱方式(IH方式)のものを用いることもできるし、加熱手段として抵抗発熱体を用いることもできる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0072】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0073】
なお、本願明細書等において、重合シートの「端面」とは、重合シートのオモテ面とウラ面とに繋がる厚さ方向の面(側面)であるものと定義する。したがって、矩形の重合シートの端面は、前後左右4つあることになる。
【符号の説明】
【0074】
1 シート剥離部、
13、14 排出トレイ(排出部)、
49 操作表示パネル(操作表示部)、
50 ラミネート処理装置、
51 ラミネート処理部、
51a 熱加圧ローラ対、
51b ヒータ(加熱手段)、
100 画像形成装置、
300 画像形成システム、
500 後処理装置、
P、P1、P2 シート、
PM 中シート、
PJ 重合シート、 A 接合部、
K7 バイパス排出経路(排出経路)。
【0075】
なお、本発明における態様は、例えば、以下の通り付記1~8の組み合わせとすることもできる。
(付記1)
搬送されるシートの表面に画像を印刷可能な画像形成装置と、
前記画像形成装置から搬送された前記シートを2枚のシートの間に挿入した状態の重合シートに対して、加熱手段によってラミネート処理を施すラミネート処理装置と、
を備え、
前記画像形成装置によって印刷され搬送された前記シートに対して、前記ラミネート処理を施すことなく排出する通常印刷モードと、前記ラミネート処理装置によって前記ラミネート処理を施して排出するラミネート印刷モードと、を実行可能に構成され、
前記通常印刷モードの終了後に連続して前記ラミネート印刷モードが実行される場合、又は、前記通常印刷モードの実行中に前記ラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合、前記ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている前記通常印刷モードが終了するタイミングよりも、前記加熱手段の加熱に要する加熱時間の分だけ早く、前記加熱手段の加熱を開始することを特徴とする画像形成システム。
(付記2)
前記通常印刷モードが終了する前記タイミングは、前記ラミネート印刷モードが開始されるまでに実行される前記通常印刷モードの印刷枚数とシート搬送速度とに応じて求められることを特徴とする付記1に記載の画像形成システム。
(付記3)
前記画像形成装置から搬送された前記シートに対して後処理を施す後処理装置を備え、
前記ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている前記通常印刷モードが前記後処理をともなうものである場合、前記通常印刷モードが終了する前記タイミングは、前記後処理に要する時間を加味したものであることを特徴とする付記1又は付記2に記載の画像形成システム。
(付記4)
前記画像形成装置を調整するための調整モードが所定の条件で印刷動作とは別に実行され、
前記ラミネート印刷モードの開始直前に実行されている前記通常印刷モードが前記調整モードをともなうものである場合、前記通常印刷モードが終了する前記タイミングは、前記調整モードに要する時間の分だけ遅れたものであることを特徴とする付記1~付記3のいずれかに記載の画像形成システム。
(付記5)
前記通常印刷モードの実行中に前記ラミネート印刷モードが割り込んで実行される場合、中断された前記通常印刷モードは、前記ラミネート印刷モードが終了した後に再開されることを特徴とする付記1~付記4のいずれかに記載の画像形成システム。
(付記6)
前記通常印刷モードの終了後に連続して前記ラミネート印刷モードが実行される場合は、前記ラミネート印刷モードの実行中に前記通常印刷モードが割り込んで実行された後に、中断された前記ラミネート印刷モードが再開される場合も含むことを特徴とする付記1~付記5のいずれかに記載の画像形成システム。
(付記7)
前記ラミネート処理装置は、
前記2枚のシートが重ね合されて接合部で接合された前記重合シートの非接合部を剥離するシート剥離部と、
前記加熱手段を具備して、剥離された前記2枚のシートの間に前記シートが挿入された前記重合シートを加熱するラミネート処理部と、
を具備し、
前記シート剥離部は、前記ラミネート処理部に対して、前記シートが挿入された前記重合シートの搬送方向上流側に設けられたことを特徴とする付記1~付記6のいずれかに記載の画像形成システム。
(付記8)
前記ラミネート処理装置は、前記通常印刷モードが実行されるときに、前記画像形成装置から搬送された前記シートを前記シート剥離部と前記ラミネート処理部とを経由することなく排出するための排出経路を具備したことを特徴とする付記7に記載の画像形成システム。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開2021-176791号公報
【特許文献2】特開2015-25908号公報