(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134741
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ポリアミック酸およびそれを用いた低誘電部材用組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045088
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安井 平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武
(72)【発明者】
【氏名】佐郷 弘毅
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA19
4J043QB26
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA54
4J043SA85
4J043TA22
4J043TA78
4J043UA022
4J043UA042
4J043UA082
4J043UA131
4J043UA141
4J043UB121
4J043UB352
4J043UB401
4J043UB402
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】 高耐熱性と低誘電正接を兼備するポリアミック酸およびそれを含む低誘電部材用組成物を提供する。また、本発明の低誘電部材組成物を硬化させて得られる硬化膜からなる低誘電基板、低誘電基板用層間絶縁膜、もしくは低誘電被覆材などの低誘電部材およびこれらを用いた電子回路、センサー、アンテナ、レーダーなどの電子デバイス、またはそれらの低誘電部材および電子デバイスを使用した電子機器を提供する。
【解決手段】 脂肪族テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物と籠状のシルセスキオキサン(完全)構造を有するジアミンとを反応させ、主鎖に脂肪族構造、好ましくは脂環式構造および籠状のシルセスキオキサン構造を同時に有するポリアミック酸。さらにこのポリアミック酸を用いた低誘電部材用組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを含む原料を反応させてなるポリアミック酸であり、前記テトラカルボン酸二無水物中、脂肪族テトラカルボン酸二無水物の含有量が2モル%以上であり、前記ジアミンが、籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミンを含有するポリアミック酸(A)。
【請求項2】
前記ジアミン中、籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミンの含有量が0.5モル%以上である、請求項1に記載のポリアミック酸(A)。
【請求項3】
前記脂肪族テトラカルボン酸二無水物が、式(1-1)~式(1-6)でそれぞれ表されるテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のポリアミック酸(A)。
式(1-4)中、R
1、R
2、R
3、およびR
4は独立して水素、メチルまたはフッ素である。
式(1-5)および式(1-6)中、Rは独立して炭素数1~45のアルキル、炭素数6~16のアリール、または炭素数7~16のアリールアルキルであり;この炭素数1~45のアルキルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;炭素数6~16のアリールおよび炭素数7~16のアリールアルキル中のベンゼン環において、少なくとも1つの水素はフッ素または炭素数1~6のアルキルで置き換えられてもよく;炭素数7~16のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、炭素数は1~10であり、そして少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよく;そしてR
5は独立してメチルまたはフェニルである。
【請求項4】
前記籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミンが、式(2-1)で表されるジアミンである、請求項1に記載のポリアミック酸(A)。
式(2-1)中、Xは独立して炭素数1~12のアルキレン、炭素数6~16のアリーレン、または炭素数7~16のアリーレンアルキレンであり;この炭素数1~12のアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、炭素数6~16のアリーレンおよび炭素数7~16のアリーレンアルキレン中のベンゼン環において、少なくとも1つの水素はフッ素または炭素数1~6のアルキルで置き換えられてもよく;Rは独立して炭素数1~45のアルキル、炭素数6~16のアリール、または炭素数7~16のアリールアルキルであり;この炭素数1~45のアルキルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの-CH
2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数6~16のアリールおよび炭素数7~16のアリールアルキル中のベンゼン環において、少なくとも1つの水素はフッ素または炭素数1~6のアルキルで置き換えられてもよく;炭素数7~16のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、炭素数は1~10であり、そして少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよく;そしてR
5は独立してメチルまたはフェニルである。
【請求項5】
請求項1に記載のポリアミック酸(A)を含む低誘電部材用組成物。
【請求項6】
低誘電部材用組成物に無機充填剤を添加しないで硬化した場合の硬化物の10GHzおよび28GHzにおける誘電正接が共に0.01より低い、請求項5に記載の低誘電部材用組成物。
【請求項7】
さらに、硬化剤(C)を含む、請求項5に記載の低誘電部材用組成物。
【請求項8】
さらに、重合性二重結合を有する化合物、界面活性剤、密着性向上剤および酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤(D)を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の低誘電部材用組成物。
【請求項9】
請求項5に記載の低誘電部材用組成物を硬化させて得られる硬化膜からなる、低誘電部材。
【請求項10】
請求項9に記載の低誘電部材と;
高周波を発信、変換、伝達、および信号処理する能力からなる群から選択される少なくとも1つの能力を有する電子デバイスと;を備えた、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸およびそれを用いた低誘電部材用組成物に関し、さらに詳しくは主鎖に籠状シルセスキオキサン構造および脂肪族構造、好ましくは脂環式構造を有するポリアミック酸、該ポリアミック酸を含む低誘電部材用組成物、ならびに該低誘電部材用組成物から得られる高耐熱性および低誘電正接特性を有する硬化膜からなる低誘電部材と、その硬化膜からなる低誘電部材を有する電子回路、センサー、アンテナ、レーダーなどの電子デバイス、またはそれらの低誘電部材および電子デバイスを使用した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報伝達の超高速化・大容量化の要求に伴い、信号周波数の高周波数化が進んでいる。高周波数化により、電子回路やアンテナの基板材料の伝送損失が大きくなり、プリント配線板の発熱や信号の減衰、遅延といった問題が生じる。伝送損失には、伝送回路を形成する導体によって生じる導体損失と絶縁体によって信号の電界エネルギーが消費されて起こる誘電損失が挙げられるが、高周波の領域では誘電損失の寄与が大きく、高周波回路のプリント配線板では絶縁体として誘電損失の低い低誘電損失材料が必要とされている。誘電損失は、基板材料や樹脂の誘電率の平方根や誘電正接に比例しているため、誘電損失の低減には誘電体である基板材料や樹脂の誘電正接の低減が最も効果的な方法と考えられる。
【0003】
従来から回路用基板など電子機器や電子部品には高い絶縁性および信頼性を有するポリイミドが多く用いられている。ポリイミドは極性基を多く含むことから低誘電損失化の達成が非常に難しい。フッ素の導入、ポリイミド多孔質化による誘電率や誘電正接を下げる方法が一般的に用いられているが、熱・溶剤耐性の低下、密着性や機械強度が著しく低下するといった大きな課題を有している。
【0004】
近年、ポリイミドに微細な空隙を有する籠状のシルセスキオキサン(Polyhedral Oligomeric Silsequioxanes(POSS))を導入する種々の手法が提案されている。
西浦らの報告(例えば、特許文献1、2参照)ではPOSSの部分開裂構造体をポリイミドと混合し用いて、従来のPOSSとポリイミド分散系におけるポリイミドフィルムの膜厚の均一性に欠ける問題を改善することで、誘電正接の低減に成功した。しかし、POSSの部分開裂構造体は開裂部分からの熱解離が進みやすく、耐熱性が懸念される。
また、籠状のシルセスキオキサンに炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合やジアリル(イソ)シアヌレート骨格を持たせることで、耐熱性や寸法安定性に有効であることが報告された(例えば、特許文献3、4参照)ものの、伝送損失に大きく寄与する誘電正接の低減に成功したとの報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-107121号公報
【特許文献2】特開2013-18806号公報
【特許文献3】特開2010-83917号公報
【特許文献4】特開2004-196958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の従来技術の有する問題点に鑑み、本発明の課題は、高耐熱性と低誘電正接を兼備するポリアミック酸およびそれを含む低誘電部材用組成物を提供することである。また、本発明の低誘電部材組成物を硬化させて得られる硬化膜からなる低誘電基板、低誘電基板用層間絶縁膜、もしくは低誘電被覆材などの低誘電部材およびこれらを用いた電子回路、センサー、アンテナ、レーダーなどの電子デバイス、またはそれらの低誘電部材および電子デバイスを使用した電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、脂肪族テトラカルボン酸二無水物と籠状のシルセスキオキサン(完全)構造を有するジアミンとを反応させ、ポリアミック酸主鎖に脂肪族構造、好ましくは脂環式構造および籠状のシルセスキオキサン構造を導入したポリアミック酸とすること、ならびにそのポリアミック酸を含む低誘電部材用組成物とすることにより、上記課題を解決することが可能になることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は以下の構成を含む。
[1] テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを含む原料を反応させてなるポリアミック酸であり、前記テトラカルボン酸二無水物中、脂肪族テトラカルボン酸二無水物の含有量が2モル%以上であり、前記ジアミンが、籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミンを含有するポリアミック酸(A)。
【0009】
[2] 前記ジアミン中、籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミンの含有量が0.5モル%以上である、[1]に記載のポリアミック酸(A)。
【0010】
[3] 前記脂肪族テトラカルボン酸二無水物が、式(1-1)~式(1-6)でそれぞれ表されるテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1つである、[1]または[2]に記載のポリアミック酸(A)。
式(1-4)中、R
1、R
2、R
3、およびR
4は独立して水素、メチルまたはフッ素である。
式(1-5)および式(1-6)中、Rは独立して炭素数1~45のアルキル、炭素数6~16のアリール、または炭素数7~16のアリールアルキルであり;この炭素数1~45のアルキルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;炭素数6~16のアリールおよび炭素数7~16のアリールアルキル中のベンゼン環において、少なくとも1つの水素はフッ素または炭素数1~6のアルキルで置き換えられてもよく;炭素数7~16のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、炭素数は1~10であり、そして少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよく;そしてR
5は独立してメチルまたはフェニルである。
【0011】
[4] 前記籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミンが、式(2-1)で表されるジアミンである、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリアミック酸(A)。
式(2-1)中、Xは独立して炭素数1~12のアルキレン、炭素数6~16のアリーレン、または炭素数7~16のアリーレンアルキレンであり;この炭素数1~12のアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、炭素数6~16のアリーレンおよび炭素数7~16のアリーレンアルキレン中のベンゼン環において、少なくとも1つの水素はフッ素または炭素数1~6のアルキルで置き換えられてもよく;Rは独立して炭素数1~45のアルキル、炭素数6~16のアリール、または炭素数7~16のアリールアルキルであり;この炭素数1~45のアルキルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの-CH
2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数6~16のアリールおよび炭素数7~16のアリールアルキル中のベンゼン環において、少なくとも1つの水素はフッ素または炭素数1~6のアルキルで置き換えられてもよく;炭素数7~16のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、炭素数は1~10であり、そして少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよく;そしてR
5は独立してメチルまたはフェニルである。
【0012】
[5] [1]~[4]のいずれか1項に記載のポリアミック酸(A)を含む低誘電部材用組成物。
【0013】
[6] 低誘電部材用組成物に無機充填剤を添加しないで硬化した場合の硬化物の10GHzおよび28GHzにおける誘電正接が共に0.01より低い、[5]に記載の低誘電部材用組成物。
【0014】
[7] さらに、硬化剤(C)を含む、[5]または[6]に記載の低誘電部材用組成物。
【0015】
[8] さらに、重合性二重結合を有する化合物、界面活性剤、密着性向上剤および酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤(D)を含む、[5]~[7]のいずれか1項に記載の低誘電部材用組成物。
【0016】
[9] [5]~[8]のいずれか1項に記載の低誘電部材用組成物を硬化させて得られる硬化膜からなる、低誘電部材。
【0017】
[10] [9]に記載の低誘電部材と;
高周波を発信、変換、伝達、および信号処理する能力からなる群から選択される少なくとも1つの能力を有する電子デバイスと;を備えた、
電子機器。
【発明の効果】
【0018】
本発明の低誘電部材用組成物は、上記ポリアミック酸主鎖に籠状のシルセスキオキサン構造および脂肪族構造、好ましくは脂環式構造を有するポリアミック酸を用いることで、低誘電部材用組成物の調製ができ、さらにその組成物を硬化させて得られる硬化膜は低誘電正接および高耐熱性を兼備する。このため、本発明のポリアミック酸を含む低誘電部材用組成物は、その組成物を硬化させて得られる硬化膜を用いれば、低誘電基板、低誘電基板用層間絶縁膜、もしくは低誘電被覆材などの低誘電部材、およびこれらを用いた電子回路、センサー、アンテナ、レーダーなどの電子デバイス、またはそれらの低誘電部材および電子デバイスを使用した電子機器を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容になんら限定されない。また、本発明の実施態様は適宜組み合わせることもできる。
1.本発明のポリアミック酸(A)
本発明のポリアミック酸(A)は、以下のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを含む原料を重縮合反応させることによって合成することができる。
【0020】
1-1.テトラカルボン酸二無水物
本発明では、ポリアミック酸(A)を得るための原料として、テトラカルボン酸二無水物を用いる。テトラカルボン酸二無水物として、脂肪族テトラカルボン酸二無水物と芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
本発明のポリアミック酸(A)は、低い誘電正接を与えるという観点から、原料のテトラカルボン酸二無水物中、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、好ましくは脂環式テトラカルボン酸二無水物、より好ましくは式(1-1)~式(1-6)でそれぞれ表されるテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1つである脂肪族テトラカルボン酸二無水物の含有量が2モル%以上であり、好ましくは10モル%以上であることを特徴とする。原料のテトラカルボン酸二無水物中、脂肪族テトラカルボン酸二無水物の含有量の好ましい上限値は、50モル%である。
【0021】
【0022】
式(1-4)中、R1、R2、R3、およびR4は独立して水素、メチルまたはフッ素である。
式(1-5)および式(1-6)中、Rは独立して炭素数1~45のアルキル、炭素数6~16のアリール、または炭素数7~16のアリールアルキルであり;この炭素数1~45のアルキルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;炭素数6~16のアリールおよび炭素数7~16のアリールアルキル中のベンゼン環において、少なくとも1つの水素はフッ素または炭素数1~6のアルキルで置き換えられてもよく;炭素数7~16のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、炭素数は1~10であり、そして少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく;そしてR5は独立してメチルまたはフェニルである。
「アリールアルキル中のアルキレンにおいて少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよい」の句の意味を一例で示す。-C4H8-において少なくとも1つの-CH2-を-O-で置き換えた基の一部は、-C3H6O-、-CH2-O-(CH2)2-および-CH2-O-CH2-O-である。このように「少なくとも1つの」語は、「区別なく選択された少なくとも1つの」を意味する。化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接した-CH2-O-O-CH2-よりも、酸素と酸素とが隣接しない-CH2-O-CH2-O-の方が好ましい。アルキルにおいても、-O-の置き換えについては同様である。
【0023】
脂肪族のテトラカルボン酸二無水物や嵩高いテトラカルボン酸二無水物を用いると、目的とする低誘電率のポリイミドが得られやすいが、物理的に脆くなりやすい。本発明のポリアミック酸(A)の効果が維持できる範囲において、耐熱性や成膜性の観点から、1種または複数種の芳香族のテトラカルボン酸二無水物を併用することが好ましい。
併用できる芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例として、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリト酸、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,3,2’,3’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、メタ-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、パラ-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、2,2-[ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)(商品名;TMEG-100、新日本理化株式会社製)、または式(1-7)で表される籠状のシルセスキオキサン構造を有するテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらの内、1つ以上を用いることができる。
【0024】
【0025】
式(1-7)中、Rは独立して炭素数1~45のアルキル、炭素数6~16のアリール、または炭素数7~16のアリールアルキルであり;この炭素数1~45のアルキルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;炭素数6~16のアリールおよび炭素数7~16のアリールアルキル中のベンゼン環において、少なくとも1つの水素はフッ素または炭素数1~6のアルキルで置き換えられてもよく;炭素数7~16のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、炭素数は1~10であり、そして少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく;そしてR5は独立してメチルまたはフェニルである。
これらの中でも、分子回転が少ない観点から無水ピロメリト酸が好ましい。
【0026】
1-2.ジアミン
本発明では、ポリアミック酸(A)を得るための原料として、籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミンを用いる。籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミンとして、脂肪族ジアミンと芳香族ジアミンが挙げられる。
本発明のポリアミック酸(A)は、分子の回転運動を抑え、低誘電正接を与えるという観点から、原料のジアミン中、好ましくは式(2-1)で表される籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミンの含有量が0.5モル%以上であることを特徴とする。
式(2-1)中、Xは独立して炭素数1~12のアルキレン、炭素数6~16のアリーレン、または炭素数7~16のアリーレンアルキレンであり;この炭素数1~12のアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、炭素数6~16のアリーレンおよび炭素数7~16のアリーレンアルキレン中のベンゼン環において、少なくとも1つの水素はフッ素または炭素数1~6のアルキルで置き換えられてもよく;Rは独立して炭素数1~45のアルキル、炭素数6~16のアリール、または炭素数7~16のアリールアルキルであり;この炭素数1~45のアルキルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの-CH
2-は-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよく;炭素数6~16のアリールおよび炭素数7~16のアリールアルキル中のベンゼン環において、少なくとも1つの水素はフッ素または炭素数1~6のアルキルで置き換えられてもよく;炭素数7~16のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、炭素数は1~10であり、そして少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよく;そしてR
5は独立してメチルまたはフェニルである。
【0027】
式(2-1)で表される籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミンの含有量は、原料のジアミン中、2モル%以上がより好ましく、5モル%以上がさらに好ましい。式(2-1)で表される籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミンの含有量の上限値は、原料のジアミン中、好ましくは100モル%であり、より好ましくは50モル%であり、さらに好ましくは30モル%である。
【0028】
本発明のポリアミック酸(A)の効果が維持できる範囲において、籠状のシルセスキオキサン構造を有するジアミン以外の任意のジアミンと併用することが可能である。併用するジアミンは脂肪族ジアミンと芳香族ジアミンのいずれでもよい。低誘電正接特性の観点からは、脂肪族ジアミンを併用することが好ましい。溶解性と成膜性の観点からは、芳香族ジアミンを併用することが好ましい。
【0029】
併用できる脂肪族ジアミンの例として、1,2-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロへキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルナンおよび1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0030】
併用できる芳香族ジアミンの例として、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5’-ジオキシド、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、および3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニルが挙げられる。
【0031】
1-3.テトラカルボン酸二無水物とジアミンの比率
本発明で用いられるポリアミック酸(A)は、前述のテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを反応させることで合成される。使用するテトラカルボン酸二無水物とジアミンのモル数の差が小さいと重合体の分子量が伸長し残存モノマーが少なくなり、誘電正接特性の向上につながる。よって原料中のテトラカルボン酸二無水物とジアミンの比率は、テトラカルボン酸二無水物をXモルとし、ジアミンをYモルとし、0.8≦X/Y≦1.2の関係が成立するような割合に定めることが好ましい。より好ましくは0.9≦X/Y≦1.1であり、さらに好ましくは0.95≦X/Y≦1.05である。
【0032】
1-4.末端封止剤
本発明のポリアミック酸(A)は、原料に末端封止剤を含んでいてもよい。末端封止剤としては、モノヒドロキシ化合物、モノアミン化合物または酸無水物が挙げられる。
【0033】
末端封止剤としてモノヒドロキシ化合物とモノアミン化合物から選択される少なくとも1つを用いると、ポリアミック酸の末端の酸無水物官能基を封止することができ、末端封止剤として酸無水物を用いると、ポリアミック酸の末端のアミノ官能基を封止することができる。これらの末端封止により得られたポリアミック酸(A)は、低誘電部材用組成物の保存安定性が向上する。
【0034】
モノヒドロキシ化合物の具体例として、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、ボルネオール、リナロール、テルピネオール、および3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンを挙げることができる。これらの内、1つ以上を用いることができる。
【0035】
これらの中でも、ベンジルアルコール、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンがより好ましい。
【0036】
原料組成物中のモノヒドロキシ化合物の含有量は、ジアミンの総量100モル部に対して、1~10モル部が好ましく、1~5モル部がより好ましく、1~2モル部がさらに好ましい。
【0037】
モノアミン化合物として、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、4-アミノブチルメチルジエトキシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルトリエトキシシラン、p-アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p-アミノフェニルメチルジエトキシシラン、m-アミノフェニルトリメトキシシラン、およびm-アミノフェニルメチルジエトキシシラン等のアミノシランを挙げることができる。これらの内、1つ以上を用いることができる。
【0038】
これらの中でも、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0039】
原料組成物中のモノアミン化合物の含有量が適量であると、重合体の分子量が伸長し、より分子量が大きい重合体が得られ、成膜性や誘電正接特性が向上する。原料組成物中のモノアミン化合物の含有量は、ジアミンの総量100モル部に対して、1~10モル部が好ましく、1~5モル部がより好ましく、1~2モル部がさらに好ましい。
【0040】
酸無水物の具体例として、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸を挙げることができる。これらの内、1つ以上を用いることができる。
【0041】
これらの中でも、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。
【0042】
前記と同様に、原料組成物中の酸無水物の含有量は、テトラカルボン酸二無水物の総量100モル部に対して、1~10モル部が好ましく、1~5モル部がより好ましく、1~2モル部がさらに好ましい。
【0043】
1-5.ポリアミック酸(A)の合成反応に用いる溶剤(B1)
ポリアミック酸(A)は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンそして必要に応じて末端封止剤を溶剤中で反応させて合成することができる。ポリアミック酸(A)を得るための合成反応に用いる溶剤を以下、反応溶剤(B1)と称することがある。
【0044】
反応溶剤(B1)の具体例として、4-ヒドロキシ-2-ブタノン、ジアセトンアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、N-メチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドおよびジメチルカーボネートを挙げることができる。これらの内、1つ以上を用いることができる。
【0045】
これらの中でも、ポリアミック酸の溶解性の観点からγ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、N-メチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドが好ましい。
【0046】
ハンドリング性の観点から、この反応溶剤(B1)をそのまま残してポリアミック酸溶液やゲル状物としてもよい。ポリアミック酸溶液の状態で低誘電部材用組成物の調製に使用することは、製造時間の短縮などから好ましい。
【0047】
1-6.ポリアミック酸(A)の合成方法
原料の反応系への添加順序は、特に限定されない。前記のモノヒドロキシ化合物、モノアミン化合物、酸無水物を用いて末端封止反応させる場合には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させた後に添加し、10~40℃で0.1~12時間反応させるとよい。
【0048】
得られたポリアミック酸(A)の重量平均分子量は1,000~2,000,000であることが好ましく、8,000~500,000がより好ましい。これらの範囲にあれば、溶解性および成膜性が良好である。
【0049】
前述のように、本発明におけるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを含む原料を反応させて得られた重合体である。本明細書においては反応の工程において一部が脱水環化してポリイミドになっている形態もポリアミック酸に含める。
【0050】
2.本発明の低誘電部材用組成物
本発明の低誘電部材用組成物は、ポリアミック酸(A)、必要に応じて溶剤(B2)を含む組成物であり、好ましくは該組成物に無機充填剤を添加しないで硬化した場合の硬化物の10GHzおよび28GHzにおける誘電正接が共に0.01より低い低誘電部材用組成物である。本発明の低誘電部材用組成物には、さらに硬化剤(C)、添加剤(D)等を含んでいてもよい。
【0051】
2-1.低誘電部材用組成物に用いる溶剤(B2)
本発明の低誘電部材用組成物に必要に応じて用いる溶剤(B2)は、ポリアミック酸(A)、硬化剤(C)、添加剤(D)等を溶解できる溶剤が好ましい。
【0052】
なお、ポリアミック酸(A)の合成で得られたポリアミック酸溶液からポリアミック酸固形物を取り出さずに、ポリアミック酸溶液の状態で低誘電部材用組成物に用いる場合には、ポリアミック酸溶液に含まれる反応溶剤(B1)も溶剤(B2)に含める。
【0053】
溶剤(B2)の具体例として、4-ヒドロキシ-2-ブタノン、ジアセトンアルコール、2-ブタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3-オキシプロピオン酸メチル、3-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、1,4-ブタンジオール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、γ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、重量平均分子量1,000以下のポリエチレングリコール、重量平均分子量1,000以下のポリプロピレングリコール、重量平均分子量1,000以下のポリ(ジプロピレングリコール)、重量平均分子量1,000以下のポリ(トリプロピレングリコール)、および重量平均分子量1,000以下のポリ(テトラプロピレングリコール)を挙げることができる。これらの内、1つ以上を用いることができる。
【0054】
これらの中、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、およびジエチレングリコールエチルメチルエーテルが好ましい。
【0055】
より溶解性を重視する場合には、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、1-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、およびN,N-ジエチルプロピオンアミドがより好ましい。
【0056】
溶剤(B2)の含有量は、低誘電部材用組成物全量中、60~99重量%であることが好ましい。より好ましくは70~96重量%である。
【0057】
2-2.硬化剤(C)
本発明の低誘電部材用組成物には、さらに硬化剤(C)を含有してもよい。硬化剤(C)を添加することにより、低誘電部材用組成物が硬化する過程で、低分子量のポリイミドやイミド化後残留しているモノマー成分と架橋反応が起こり、残留モノマーによる耐熱性の低下や誘電特性の低下などの悪影響が抑制され、より耐熱性が高い低誘電部材が期待できる。
【0058】
硬化剤(C)は、カルボキシル基と反応する官能基を1分子中に2個以上有する化合物であれば特に限定されない。
【0059】
カルボキシル基と反応する官能基の例はエポキシ官能基(オキシラン、オキセタン)およびオキサゾリン官能基である。
【0060】
カルボキシル基と反応する官能基を1分子当たり2個以上有する化合物として、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物、環式脂肪族エポキシ化合物、シロキサン結合部位を有するエポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物など1分子当たり2個以上のエポキシ基(オキシラン)を有するオキシラン化合物、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、3-エチル-3-(3-エチル-3-オキセタニルメチルオキシメチル)オキセタン、キシリレンビスオキセタンなど1分子当たり2個以上のエポキシ基(オキセタン)を有するオキセタン化合物、1分子当たり2個以上のオキサゾリン官能基を有する化合物、およびエポキシ官能基とオキサゾリン官能基の少なくとも1つを1分子当たり2個以上有する重合体を挙げることができる。
【0061】
1分子当たり2個以上のエポキシ基(オキシラン)を有する化合物の具体例として、ビスフェノールA型エポキシ化合物であるjER 828、jER 1004、jER 1009(いずれも商品名;三菱ケミカル(株)製)、ビスフェノールF型エポキシ化合物であるjER 806、jER 4005P(いずれも商品名;三菱ケミカル(株)製)、グリシジルエーテル型エポキシ化合物であるTECHMORE VG3101L(商品名;(株)プリンテック製)、EHPE3150(商品名;(株)ダイセル製)、EPPN-501H、EPPN-502H(いずれも商品名;日本化薬(株)製)、jER 1032H60(商品名;三菱ケミカル(株)製)、グリシジルエステル型エポキシ化合物であるデナコール EX-721(商品名;ナガセケムテックス(株)製)、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル(商品名;東京化成工業(株)製)、ビフェニル型エポキシ化合物であるjER YX4000、jER YX4000H、jER YL6121H(いずれも商品名;三菱ケミカル(株)製)、NC-3000、NC-3000-L、NC-3000-H、NC-3100(いずれも商品名;日本化薬(株)製)、フェノールノボラック型エポキシ化合物であるEPPN-201(商品名;日本化薬(株)製)、jER 152、jER 154(いずれも商品名;三菱ケミカル(株)製)、クレゾールノボラック型エポキシ化合物であるEOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1020(いずれも商品名;日本化薬(株)製)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物であるjER 157S65、jER 157S70(いずれも商品名;三菱ケミカル(株)製)、環式脂肪族エポキシ化合物であるセロキサイド2021P、セロキサイド3000、エポリードGT401(いずれも商品名;(株)ダイセル製)、シロキサン結合部位を有するエポキシ化合物である1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン(商品名;ジェレストインコ-ポレイテッド製)、TSL9906(商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マーテリアルズ・ジャパン合同会社製)、COATOSIL MP200(商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マーテリアルズ・ジャパン合同会社製)、コンポセラン SQ506(商品名;荒川化学工業(株)製)、ES-1023(商品名;信越化学工業(株)製)、グリシジルアミン型エポキシ化合物であるN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、スミエポキシELM-434(商品名;住友化学(株)製)、スミエポキシELM-100(商品名;住友化学(株)製)を挙げることができる。
【0062】
1分子当たり2個以上のエポキシ基(オキセタン)を有する化合物の具体例として、アロンオキセタンOXT-121(XDO)(商品名;東亞合成(株)製)、アロンオキセタンOXT-221(DOX)(商品名;東亞合成(株)製)を挙げることができる。
【0063】
1分子当たり2個以上のオキサゾリン官能基を有する化合物の具体例として、2,2’-(1,3-フェニレン)-ビス(2-オキサゾリン)を挙げることができる。
【0064】
硬化剤(C)の含有量は、ポリアミック酸(A)100重量部に対して、0.5~60重量部が好ましく、1~30重量部がより好ましい。
【0065】
2-3.添加剤(D)
本発明の低誘電部材用組成物には、耐傷性、塗布均一性、接着性などの膜物性を向上させるために各種の添加剤(D)を添加することができる。添加剤(D)には、重合性二重結合を有する化合物、界面活性剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、酸化防止剤、無機充填剤が主に挙げられる。
【0066】
2-3-1.重合性二重結合を有する化合物
本発明の低誘電部材用組成物には、重合性二重結合を有する化合物を用いてもよい。本発明の低誘電部材用組成物に用いられる重合性二重結合を有する化合物は、重合性二重結合を1分子当り2個以上有すれば、特に限定されない。
【0067】
上記重合性二重結合を有する化合物の内、重合性二重結合を1分子当り2個有する化合物の具体例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロキシネオペンチルグリコール]アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン・エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、およびイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。文中、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロキシ」は、アクリロキシまたはメタクリロキシを意味する。
【0068】
上記重合性二重結合を有する化合物の内、重合性二重結合を1分子あたり3個以上有する化合物の具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン・エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、およびカルボキシル基含有多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0069】
上記重合性二重結合を有する化合物は上記の化合物を単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0070】
上記重合性二重結合を有する化合物の中、耐傷性の観点から、エチレンオキシド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびカルボキシル基含有多官能(メタ)アクリレートから選択することが好ましい。
【0071】
上記重合性二重結合を有する化合物の含有量は、耐傷性と誘電正接特性のバランスが良好との観点から、本発明の低誘電部材用組成物におけるポリアミック酸(A)100重量部に対して、好ましくは1~60重量部である。より誘電正接特性を重視する場合には1~20重量部であることがより好ましい。
【0072】
2-3-2.界面活性剤
本発明の低誘電部材用組成物には、塗布均一性を向上させるためにアニオン系、カチオン系、ノニオン系、フッ素系またはシリコン系のレベリング剤・界面活性剤を添加してもよい。
【0073】
界面活性剤の具体例として、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(いずれも商品名;共栄社化学(株)製)、Disperbyk-161、Disperbyk-162、Disperbyk-163、Disperbyk-164、Disperbyk-166、Disperbyk-170、Disperbyk-180、Disperbyk-181、Disperbyk-182、BYK-300、BYK-306、BYK-310、BYK-320、BYK-330、BYK-342、BYK-346、BYK-361N、BYK-3560、BYK-UV3500、BYK-UV3570(いずれも商品名;ビックケミー・ジャパン(株)製)、KP-341、KP-368、KP-96-50CS、KP-50-100CS(いずれも商品名;信越化学工業(株)製)、サーフロンS611(商品名;AGCセイミケミカル(株)製)、フタージェント222F、フタージェント208G、フタージェント251、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント601AD、フタージェント650A、FTX-218(いずれも商品名;(株)ネオス製)、メガファックF-410、メガファックF-430、メガファックF-444、メガファックF-472SF、メガファックF-475、メガファックF-477、メガファックF-552、メガファックF-553、メガファックF-554、メガファックF-555、メガファックF-556、メガファックF-558、メガファックF-559、メガファックR-94、メガファックRS-75、メガファックRS-72-K、メガファックRS-76-NS、メガファックDS-21(いずれも商品名;DIC(株)製)、TEGO Twin 4000、TEGO Twin 4100、TEGO Flow 370、TEGO Flow 375、TEGO Glide 440、TEGO Glide 450、TEGO Rad 2200N(いずれも商品名;エボニックジャパン(株)製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、およびアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩を挙げることができる。これらの内、1つ以上を用いることができる。
【0074】
これらの中、高い塗布均一性の観点から、BYK-306、BYK-342、BYK-346、BYK-361N、BYK-3560、KP-341、サーフロンS611、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント650A、メガファックF-477、メガファックF-556、メガファックRS-72-K、メガファックDS-21、TEGO Twin 4000、TEGO Flow 375、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、およびフルオロアルキルアミノスルホン酸塩が好ましい。
【0075】
本発明の低誘電部材用組成物における界面活性剤の含有量は、低誘電部材用組成物全量中、0.005~1重量%であることが好ましい。
【0076】
2-3-3.密着性向上剤
本発明の低誘電部材用組成物は、形成される硬化膜と基板との密着性をさらに向上させる観点から、シラン系、アルミニウム系またはチタネート系のカップリング剤などの密着性向上剤をさらに含有してもよい。
【0077】
密着性向上剤として、3-グリシジルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤、およびテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤を挙げることができる。
【0078】
これらの中、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0079】
密着性向上剤の含有量は、低誘電部材用組成物全量中、0.01~10重量%であることが好ましい。
【0080】
2-3-4.酸化防止剤
本発明の低誘電部材用組成物は、透明性の向上、硬化膜が高温にさらされた場合の黄変を防止する観点から、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などの酸化防止剤をさらに含有してもよい。この中でも、安定性の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0081】
フェノール系酸化防止剤の具体例として、tert-ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT:2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)、ANTAGE SP(商品名;川口化学工業(株)製)、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、エチレンビス(オキシエチレン)-ビス(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロ桂皮酸、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、4-[[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、および2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’-ジイル=ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパノアート]を挙げることができる。
【0082】
この中でも、熱安定性の観点から、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]がより好ましい。溶解性の観点から、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT:2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロ桂皮酸がより好ましい。
【0083】
酸化防止剤の含有量は、ポリアミック酸(A)100重量部に対して、0.01~5.0重量部であることが好ましく、0.05~2.0重量部であることがより好ましい。
【0084】
2-3-5.無機充填剤
本発明の低誘電部材用組成物は、熱伝導率向上、機械強度向上、粘度調整などの観点から、無機充填剤をさらに含有してもよい。
誘電損失を抑えるためには、球状シリカ、粉砕シリカ、中空シリカ、ヒュームドシリカなどの珪素化合物、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどの金属酸化物、チタン酸カリウムなどの金属塩であってもよい。これらの内、球状シリカ、中空シリカ、酸化マグネシウム、チタン酸カリウムが好ましく、中空シリカがより好ましい。
基板や樹脂部品としての強度を高くするための、繊維状またはウイスカー状の無機充填剤として、繊維状補強剤が使用できる。ガラスクロス、低誘電ガラスクロス、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの無機繊維、珪酸塩ウイスカー、酸化マグネシウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカーなどの無機ウイスカーが好ましく、低誘電ガラスクロスがより好ましい。
機械的強度を高くするためには、無機充填剤の量が多い方が好ましいが、多すぎるとポリアミック酸(A)などの樹脂が無機充填剤の隙間を埋めることができない場合がある。また樹脂が多すぎても機械強度を高くする効果が表れない場合がある。また、無機充填剤を増やすと誘電率が高く、誘電正接が下がる傾向があるので、両者のバランスを取りながら組成を決めることが好ましい。また、無機物の繊維の他に、有機物の繊維を使用することもできる。機械強度の高い有機繊維として、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、液晶性ポリエステル繊維などが挙げられる。無機繊維に比べると軽量であり、携帯型機器の基板などに好ましい。
熱伝導率の高い無機充填剤としては、粉末状の窒化ホウ素、窒化珪素などの金属窒化物からなる窒化物充填剤、ダイヤモンド、黒鉛、炭化珪素などの炭化物、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化チタン、酸化錫、酸化ホルミニウム、酸化カルシウムなどの金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、およびコーディエライト、またはムライトなどの珪酸塩化合物であってもよい。誘電率が低い、窒化ホウ素、酸化珪素が好ましく、特に六方晶系の窒化ホウ素(h-BN)は誘電率が低く熱伝導率が高いのでより好ましい。熱伝導率などは無機充填剤が多いほど高くなるが、一般に無機充填剤は樹脂成分とくらべ、比誘電率が大きく誘電正接が小さいので、充填量を増やすと誘電率が大きくなる。したがって、充填量は目的とする誘電率を超えない範囲で必要量を充填することが好ましい。
本発明の低誘電部材用組成物は透明性が高く、低誘電だけでなく、低屈折光学材料に使用する場合は、中空シリカ、球状シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの粉末を加え、屈折率を調整することができる。
【0085】
無機充填剤の形状としては、球状、無定形、繊維状、ウイスカー状、筒状、板状などが挙げられる。無機充填剤の種類、形状、大きさ、含有量などは、目的に応じて適宜選択できる。本発明の低誘電部材用組成物から得られる硬化膜などの高分子成形体が絶縁性を必要とする場合、所望の絶縁性および機械強度、誘電率、誘電損失が保たれれば導電性を有する無機充填剤であっても構わない。
【0086】
球状または不定形状の無機充填剤の平均粒径は、0.1~200μmであることが好ましい。より好ましくは、1~100μmである。0.1μm以上であると熱伝導率が良好であり、200μm以下であると充填率を上げることができる。また、繊維状の無機充填剤に関しては、繊維長が長いほど引張強度は向上するが、混練や分散はできなくなる場合があるので、用途によって選択することが好ましい。分散させる場合は、繊維状無機充填剤の平均粒径は、0.01~200μmであることが好ましい。より好ましくは、0.1~100μmである。0.01μm以上であると熱伝導率が良好であり、200μm以下であると機械強度を上げることができる。
無機充填剤の含有量は、硬化後の高分子成形体中20~95重量%の無機充填剤を含有するようにすることが好ましい。より好ましくは、50~95重量%である。20重量%以上であると熱伝導率が高くなり好ましい。95重量%以下であると高分子成形体が脆くならず好ましい。
【0087】
無機充填剤としては、親和処理、易接着処理、分散処理、防水処理などの表面処理された市販品をそのまま用いてもよく、該市販品から表面処理剤を除去したものを用いてもよい。また、処理されていない無機充填剤を、シランカップリング剤、親和剤、表面張力調整剤、沈降防止剤、凝集防止剤などにより処理して用いてもよい。
【0088】
2-4.低誘電部材用組成物の調製
本発明の低誘電部材用組成物は、ポリアミック酸(A)、さらに、必要に応じて溶剤(B2)、硬化剤(C)、重合性二重結合を有する化合物、界面活性剤、密着性向上剤、酸化防止剤、無機充填剤、およびその他の添加剤等の添加剤(D)を選択して添加し、それらを均一に混合または溶解することにより得ることができる。
【0089】
2-5.低誘電部材用組成物の保存
本発明の低誘電部材用組成物は、-30℃~25℃の範囲で保存すると、組成物の経時安定性が良好となり好ましい。-20℃~10℃の範囲の保存がより好ましい。
【0090】
3.低誘電部材用組成物から得られる硬化膜からなる低誘電部材および電子機器
上記のようにして調製された低誘電部材用組成物を基材上に塗布する方法は、特に限定しないが、アプリケーター、コンマモーター、ドクターブレード、ディスペンサーなどやスキージ(スクイージー:squeegeeまたはsquilgee)を利用する方法、スピンコーターなどの回転機器を利用する方法、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷方法などが挙げられる。均一にコーティングするために、ウェットコーティング法を用いることが好ましい。ウェットコーティング法の内、少量を作製する場合には簡便で均質な製膜が可能であるスピンコート法が好ましい。生産性を重視する場合には、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、デップコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、バーコート法、リバースコート法、ロールコート法、スリットコート法、ディッピング法、スプレーコート法、メニスカスコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、フローコート法、プリント法、インクジェット法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ロッドコート法などが好ましい。ウェットコーティング法は、これらの方法から必要とする膜厚、粘度や硬化条件等に応じて適宜選択することができる。
【0091】
シートを製造する場合には、低誘電部材用組成物溶液を用いて離型処理した基材上に該組成物溶液を前記方法などでコーティングし剥離するキャスト成形法、構造物を製造する場合には原料粉末の混合物や、予め一部の重合性基を反応させプレポリマー化した樹脂を、必要に応じて金型を用い、プレス成形法、インジェクション(射出)成形法、各種3Dプリンター成形法(吐出積層法)などの樹脂成形法を用いることができる。成形後、金型を外して本硬化することも、金型に入れたまま本硬化することも、または金型を用いない成形法の場合には成形体をそのまま本硬化することも可能である。
【0092】
仮焼成条件は低誘電部材用組成物の調製に用いた各成分の種類および配合割合によって異なるが、通常60~100℃のホットプレート上またはオーブン中、1~60分間および120~180℃のホットプレート上またはオーブン中、5~90分間の二段階で溶剤を揮発させ、乾燥を行う。本硬化(本焼成)条件は、上記各成分の種類および配合割合によって異なるが、通常180~400℃のオーブン中、5~240分間で行う。
【0093】
低誘電部材用組成物が硬化剤(C)を含む場合は、本硬化(本焼成)工程においてポリアミック酸のカルボキシル基と硬化剤(C)のエポキシ官能基またはオキサゾリン官能基による架橋反応が起こる。そのため、得られる硬化膜は非常に強靭である。
【0094】
本発明の硬化膜からなる低誘電部材は、高周波数(10GHzおよび28GHz)における誘電正接が好ましくは0.01より低く、かつ、5%重量減温度が好ましくは450℃以上なので、低誘電正接および高耐熱性の特性が優れている。この硬化膜からなる低誘電部材を用いて、電子回路、センサー、アンテナ、レーダーなどの電子デバイス、またはそれらの低誘電部材および電子デバイスを使用した電子機器を製造することができる。
【実施例0095】
次に本発明を合成例、調製例、実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0096】
合成例、調製例、実施例および比較例中に記載している略号について、対応する化合物名、商品名等を以下に記載する。
<溶剤>
NMP:1-メチル-2-ピロリドン
EDM:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
KJCMPA:3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(KJCMPA(登録商標)-100;商品名;KJケミカルズ株式会社製)
<テトラカルボン酸二無水物>
BT-100:1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(リカシッドBT-100;商品名;新日本理化(株)製)
PMDA:無水ピロメリト酸
CBDA:シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物
<ジアミン>
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
DDE:4,4‘-ジアミノジフェニルエーテル
TFMB: 2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル
m-TB: 2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
XQ1251:式(2-2)で表される化合物(XQ1251;商品名;JNC(株)製)
<末端封止剤>
MA:無水マレイン酸
<硬化剤>
1,3-PBO:2,2’-(1,3-フェニレン)-ビス(2-オキサゾリン)
<添加剤>
F-477:メガファックF-477(商品名;DIC(株)製)
【0097】
実施例における測定項目の略称を以下に示す。
Mw:重量平均分子量
Mn:数平均分子量
【0098】
次に、実施例で使用した測定装置および分析条件を示す。
<GPC>
装置:Waters社製 2695セパレーションモジュール・2414示差屈折計
溶剤:リン酸-DMF混合溶液(リン酸/DMF=0.6/100重量比)
流速:0.40mL/min
カラム温度:50℃
使用カラム:Waters社製 HSPgel RT MB-M
校正曲線用標準試料:東ソー(株)製 TSK標準ポリスチレン
<誘電正接測定>
装置:(株)エーイーティー(AET, INC.)製 空洞共振器 TEモード10GHz用、28GHz用およびアンリツ(株)製 ベクトルネットワークアナライザー MS46522B-043型
<熱分解温度測定>
装置:(株)リガク製 TG-DTA8120/S
雰囲気:窒素
昇温条件:40℃→800℃,10℃/min
【0099】
[ポリアミック酸の合成]
[合成例1]ポリアミック酸(A1)の合成
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、ジアミンとしてXQ1251(5.00g;3.74mmol)およびDDE(6.75g;33.70mmol)、反応溶剤(B1)として脱水NMP(112.40g)を入れ、固体が完全に溶解した後、窒素雰囲気下にし、反応系内温度を0℃以下に下げ、テトラカルボン酸二無水物としてPMDA(7.35g;33.70mmol)およびCBDA(0.73g;3.74mmol)をさらに加え、16時間攪拌した後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A1)溶液を得た。ポリアミック酸(A1)のMwは107,500であり、Mnは43,800であった。
【0100】
[合成例2]ポリアミック酸(A2)の合成
ジアミンとしてDDEをBAPP(13.83g;33.70mmol)に、脱水NMPの量を152.56gにそれぞれ変更した以外は合成例1と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A2)溶液を得た。ポリアミック酸(A2)のMwは113,200であり、Mnは48,000であった。
【0101】
[合成例3]ポリアミック酸(A3)の合成
ジアミンとしてDDEをTFMB(10.79g;33.70mmol)に、脱水NMPの量を135.32gにそれぞれ変更した以外は合成例1と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A3)溶液を得た。ポリアミック酸(A3)のMwは126,300であり、Mnは58,300であった。
【0102】
[合成例4]ポリアミック酸(A4)の合成
ジアミンとしてDDEをm-TB(7.15g;33.70mmol)に、脱水NMPの量を114.70gにそれぞれ変更した以外は合成例1と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A4)溶液を得た。ポリアミック酸(A4)のMwは106,300であり、Mnは46,500であった。
【0103】
[合成例5]ポリアミック酸(A5)の合成
テトラカルボン酸二無水物としてCBDAをBT-100(0.74g;3.74mmol)に、脱水NMPの量を112.44gにそれぞれ変更した以外は合成例1と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A5)溶液を得た。ポリアミック酸(A5)のMwは105,400であり、Mnは41,300であった。
【0104】
[合成例6]ポリアミック酸(A6)の合成
テトラカルボン酸二無水物としてCBDAをBT-100(0.74g;3.74mmol)に、脱水NMPの量を152.60gにそれぞれ変更した以外は合成例2と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A6)溶液を得た。ポリアミック酸(A6)のMwは99,400であり、Mnは32,100であった。
【0105】
[合成例7]ポリアミック酸(A7)の合成
テトラカルボン酸二無水物としてCBDAをBT-100(0.74g;3.74mmol)に、脱水NMPの量を135.36gにそれぞれ変更した以外は合成例3と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A7)溶液を得た。ポリアミック酸(A7)のMwは89,400であり、Mnは30,400であった。
【0106】
[合成例8]ポリアミック酸(A8)の合成
テトラカルボン酸二無水物としてCBDAをBT-100(0.74g;3.74mmol)に、脱水NMPの量を114.75gにそれぞれ変更した以外は合成例4と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A8)溶液を得た。ポリアミック酸(A8)のMwは93,500であり、Mnは38,600であった。
【0107】
[合成例9]ポリアミック酸(A9)の合成
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、ジアミンとしてXQ1251(5.00g;3.74mmol)およびDDE(6.20g;30.94mmol)、反応溶剤(B1)として脱水NMP(105.78g)を入れ、固体が完全に溶解した後、窒素雰囲気下にし、反応系内温度を0℃以下に下げ、テトラカルボン酸二無水物としてPMDA(6.67g;30.60mmol)およびCBDA(0.67g;3.40mmol)をさらに加え、16時間で攪拌した。室温で末端封止剤としてMA(0.13g;1.36mmol)を加えさらに3時間攪拌し反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A9)溶液を得た。ポリアミック酸(A9)のMwは75,000であり、Mnは26,700であった。
【0108】
[合成例10]ポリアミック酸(A10)の合成
ジアミンとしてDDEをBAPP(12.70g;30.94mmol)に、脱水NMPの量を142.64gにそれぞれ変更した以外は合成例9と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A10)溶液を得た。ポリアミック酸(A10)のMwは66,300であり、Mnは23,800であった。
【0109】
[合成例11]ポリアミック酸(A11)の合成
ジアミンとしてDDEをTFMB(9.91g;30.94mmol)に、脱水NMPの量を126.82gにそれぞれ変更した以外は合成例9と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A11)溶液を得た。ポリアミック酸(A11)のMwは54,500であり、Mnは20,100であった。
【0110】
[合成例12]ポリアミック酸(A12)の合成
ジアミンとしてDDEをm-TB(6.57g;30.94mmol)に、脱水NMPの量を107.89gにそれぞれ変更した以外は合成例9と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A12)溶液を得た。ポリアミック酸(A12)のMwは60,500であり、Mnは23,800であった。
【0111】
[合成例13]ポリアミック酸(A13)の合成
ジアミンとしてXQ1251の量を10.00g;7.48mmolに、およびDDEの量を5.99g;29.93mmolに、テトラカルボン酸二無水物としてPMDAの量を7.34g;33.67mmolに、脱水NMPの量を136.38gにそれぞれ変更した以外は合成例1と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A13)溶液を得た。ポリアミック酸(A13)のMwは82,400であり、Mnは33,800であった。
【0112】
[合成例14]ポリアミック酸(A14)の合成
ジアミンとしてXQ1251の量を15.00g;11.23mmolに、およびDDEの量を2.25g;11.23mmolに、テトラカルボン酸二無水物としてPMDAの量を4.41g;20.21mmolに、およびCBDAの量を0.44g;2.25mmolに、脱水NMPの量を138.60gにそれぞれ変更した以外は合成例1と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A14)溶液を得た。ポリアミック酸(A14)のMwは90,300であり、Mnは39,600であった。
【0113】
[合成例15]ポリアミック酸(A15)の合成
ジアミンとしてXQ1251の量を20.00g;14.97mmolに、およびDDEの量を0g;0mmolすなわちDDEを使用せず、テトラカルボン酸二無水物としてPMDAの量を2.94g;13.47mmolに、およびCBDAの量を0.29g;1.50mmolに、脱水NMPの量を131.62gにそれぞれ変更した以外は合成例1と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A15)溶液を得た。ポリアミック酸(A15)のMwは84,300であり、Mnは34,500であった。
【0114】
[比較合成例1]ポリアミック酸(A16)の合成
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、ジアミンとしてDDE(11.01g;55.00mmol)および反応溶剤(B1)として脱水NMP(130.39g)を入れ、固体が完全に溶解した後、窒素雰囲気下にし、反応系内温度を0℃以下に下げ、テトラカルボン酸二無水物としてPMDA(12.00g;55.00mmol)をさらに加え、16時間攪拌した後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A16)溶液を得た。ポリアミック酸(A16)のMwは168,300であり、Mnは84,900であった。
【0115】
[比較合成例2]ポリアミック酸(A17)の合成
ジアミンとしてDDEをBAPP(15.05g;36.66mmol)に、テトラカルボン酸二無水物としてPMDAの量を8.00g;36.66mmolに、脱水NMPの量を130.59gにそれぞれ変更した以外は比較合成例1と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A17)溶液を得た。ポリアミック酸(A17)のMwは184,800であり、Mnは97,600であった。
【0116】
[比較合成例3]ポリアミック酸(A18)の合成
ジアミンとしてDDEをTFMB(14.69g;45.86mmol)に、テトラカルボン酸二無水物としてPMDAの量を10.00g;45.86mmolに、脱水NMPの量を139.90gにそれぞれ変更した以外は比較合成例1と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A18)溶液を得た。ポリアミック酸(A18)のMwは124,500であり、Mnは51,000であった。
【0117】
[比較合成例4]ポリアミック酸(A19)の合成
ジアミンとしてDDEをm-TB(11.68g;55.00mmol)に、テトラカルボン酸二無水物としてPMDAの量を12.00g;55.00mmolに、脱水NMPの量を134.14gにそれぞれ変更した以外は比較合成例1と同様にして反応させた後、固形分濃度が15.0重量%の均一な透明なポリアミック酸(A19)溶液を得た。ポリアミック酸(A19)のMwは162,200であり、Mnは43,700であった。
【0118】
表1-1~表1-5に、それぞれの合成に用いたテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、末端封止剤、使用した反応溶剤(B1)、得られたポリアミック酸とその分子量等を記載した。表1-1~表1-5において角カッコ内の数字はモル比を表している。すなわち、ジアミンの総量および末端封止剤の総量は、テトラカルボン酸二無水物の総量100モル部に対するモル部をそれぞれ表している。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
[低誘電部材用組成物の調製]
[調製例1]
ポリアミック酸(A1)溶液(10.0000g)、F-477(0.0015g)、およびKJCPMA(5.0000g)を混合溶解した後、組成物1を得た。
【0125】
[調製例2]
ポリアミック酸(A1)溶液をポリアミック酸(A2)溶液に変更した以外は調製例1と同様にして調製を行い、組成物2を得た。
【0126】
[調製例3]
ポリアミック酸(A1)溶液をポリアミック酸(A3)溶液に変更した以外は調製例1と同様にして調製を行い、組成物3を得た。
【0127】
[調製例4]
ポリアミック酸(A1)溶液をポリアミック酸(A4)溶液に変更した以外は調製例1と同様にして調製を行い、組成物4を得た。
【0128】
[調製例5]
ポリアミック酸(A5)溶液(10.0000g)、1,3-PBO(0.0300g)、F-477(0.0015g)、およびEDM(5.0000g)を混合溶解した後、組成物5を得た。
【0129】
[調製例6]
ポリアミック酸(A5)溶液をポリアミック酸(A6)溶液に変更した以外は調製例5と同様にして調製を行い、組成物6を得た。
【0130】
[調製例7]
ポリアミック酸(A5)溶液をポリアミック酸(A7)溶液に変更した以外は調製例5と同様にして調製を行い、組成物7を得た。
【0131】
[調製例8]
ポリアミック酸(A5)溶液をポリアミック酸(A8)溶液に変更した以外は調製例5と同様にして調製を行い、組成物8を得た。
【0132】
[調製例9]
ポリアミック酸(A9)溶液(10.0000g)、F-477(0.0015g)、および脱水NMP(5.0000g)を混合溶解した後、組成物9を得た。
【0133】
[調製例10]
ポリアミック酸(A9)溶液をポリアミック酸(A10)溶液に変更した以外は調製例9と同様にして調製を行い、組成物10を得た。
【0134】
[調製例11]
ポリアミック酸(A9)溶液をポリアミック酸(A11)溶液に変更した以外は調製例9と同様にして調製を行い、組成物11を得た。
【0135】
[調製例12]
ポリアミック酸(A9)溶液をポリアミック酸(A12)溶液に変更した以外は調製例9と同様にして調製を行い、組成物12を得た。
【0136】
[調製例13]
ポリアミック酸(A13)溶液(10.0000g)、F-477(0.0015g)、および脱水NMP(5.0000g)を混合溶解した後、組成物13を得た。
【0137】
[調製例14]
ポリアミック酸(A13)溶液をポリアミック酸(A14)溶液に変更した以外は調製例13と同様にして調製を行い、組成物14を得た。
【0138】
[調製例15]
ポリアミック酸(A13)溶液をポリアミック酸(A15)溶液に変更した以外は調製例13と同様にして調製を行い、組成物15を得た。
【0139】
[比較調製例1]
ポリアミック酸(A16)溶液(10.0000g)、F-477(0.0015g)、および脱水NMP(5.0000g)を混合溶解した後、組成物16を得た。
【0140】
[比較調製例2]
ポリアミック酸(A16)溶液をポリアミック酸(A17)溶液に変更した以外は比較調製例1と同様にして調製を行い、組成物17を得た。
【0141】
[比較調製例3]
ポリアミック酸(A16)溶液をポリアミック酸(A18)溶液に変更した以外は比較調製例1と同様にして調製を行い、組成物18を得た。
【0142】
[比較調製例4]
ポリアミック酸(A16)溶液をポリアミック酸(A19)溶液に変更した以外は比較調製例1と同様にして調製を行い、組成物19を得た。
【0143】
[実施例1]~[実施例15]、[比較例1]~[比較例4]
上記調製例で得られた組成物1~19のそれぞれについて、以下のようにして誘電正接および耐熱性の評価を行った。
【0144】
<誘電正接評価用硬化膜の作製>
組成物1~19をそれぞれ、洗浄済みのシリコン基板上にアプリケーターを用いて10cm×10cm以上の四角形に塗布し、ホットプレート上において80℃で30分溶剤を揮発させ、150℃オーブン中、15分加熱した後、1時間をかけてオーブンを350℃に昇温し、さらに350℃で30分加熱することにより本硬化(本焼成)を行い厚さ45μmのポリイミド硬化膜が得られた。この硬化膜をシリコン基板からはがし、誘電正接評価用の測定試料とした。
<誘電正接測定方法>
測定試料中の水分量による影響を少なくするため、測定試料を予め相対湿度10%RHに設定した電子デシケーター内で1日静置した。誘電正接特性の評価は温度20℃にエアコンを設定した実験室で、測定試料を60分以上静置した後に開始した。
測定試料の、共振周波数のシフト量と減衰量を測定し、(株)エーイーティー(AET, INC.)製ソフトウエアを用いて誘電正接(Df)を計算して10GHzおよび28GHzにおける誘電正接特性を求めた。結果は表2-1~2-5に示した。
<耐熱性評価方法>
耐熱性の評価は5%重量減少温度を用いた。その測定は、TG-DTAとして(株)リガク製 TG-DTA8120/Sを使用し、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで測定し、結果は表2-1~2-5に示した。
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
表2-1~表2-5に、低誘電部材用組成物のそれぞれの調製に用いたポリアミック酸(A)溶液、添加剤(D)、硬化剤(C)、使用した溶剤(B2)、得られた低誘電部材用組成物、硬化膜からなる低誘電部材とその誘電正接および耐熱性の評価結果を記載した。表2-1~表2-5において低誘電部材用組成物の調製に用いた各成分の数字は重量(単位:g)を表している。
表2-5に示した比較例1~4の硬化膜の誘電正接と比べ、表2-1~2-4の組成物から得られた実施例1~15の硬化膜は、実施例5を除き10GHzおよび28GHzにおける誘電正接が共に0.01より低い、優れた誘電正接特性を示すことが分かった。
本発明の主鎖に籠状のシルセスキオキサン構造を有するポリアミック酸は、脂肪族テトラカルボン酸二無水物とジアミン官能基(アミノ)を付与させた籠状のシルセスキオキサン構造を有する化合物とを反応させて得られる。本発明の低誘電部材用組成物は、上記主鎖に籠状のシルセスキオキサン構造を有するポリアミック酸を含むため、得られる硬化膜からなる低誘電部材は高周波数(10GHzおよび28GHz)における誘電正接が好ましくは0.01より低いことから、10GHz以上の高周波を取り扱う電子デバイスや電子機器の絶縁部材として好適に使用できる。