(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134746
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体を吐出する装置および液体吐出ヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240927BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20240927BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240927BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20240927BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/14 607
B41J2/14 613
B41J2/16 503
B05C5/00 101
B05C11/00
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045094
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】張 軍
(72)【発明者】
【氏名】川上 翔
(72)【発明者】
【氏名】杉本 泰規
(72)【発明者】
【氏名】金松 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】甘利 清志
【テーマコード(参考)】
2C057
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C057AF65
2C057AF93
2C057AG01
2C057AG12
2C057AG29
2C057AG44
2C057AG76
2C057AP12
2C057AP24
2C057BA03
2C057BA07
2C057BA08
4F041AA05
4F041AA07
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA17
4F041BA35
4F042AA06
4F042AA09
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB20
(57)【要約】
【課題】拡散接合によって接合する場合において、ノズル等の位置精度を高める。
【解決手段】
液体を吐出する複数のノズル孔を有するノズル板と、ノズル板を支持し、拡散接合を含む工程によってノズル板と接合されたハウジングを有する吐出ヘッドであって、ノズル板あるいはハウジングのいずれかに形成され、当接することでノズル板とハウジングとを連結し、ノズル孔の配列方向に配置される複数の連結部と、連結部に形成され、ノズル板のノズル孔と連通する流路と、互いに隣接する連結部間に形成された間隙と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズル孔を有するノズル板と、
当該ノズル板を支持し、拡散接合を含む工程によって前記ノズル板と接合されたハウジングとを有する液体吐出ヘッドであって、
前記ノズル板あるいは前記ハウジングのいずれかに形成され、当接することで前記ノズル板と前記ハウジングとを連結し、前記ノズル孔の配列方向に配置される複数の連結部と、
当該連結部に形成され、前記ノズル板のノズル孔と連通する流路と、
互いに隣接する前記連結部間に形成された間隙と、を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記複数の連結部を前記ハウジングに形成したことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記複数の連結部を前記ノズル板に形成したことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズル板の外縁部あるいは前記ハウジングの外縁部のいずれかに形成され、当接することで前記ノズル板と前記ハウジングとを連結する壁部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記連結部における前記ハウジングから前記ノズル板までの距離を高さとしたとき、
前記連結部と、前記連結部と同じ高さの前記壁部で接合支持され、前記壁部の側面に前記ハウジングの外部と連通する孔部は少なくとも1つ以上設けられていることを特徴する請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記連結部は前記流路を囲む部位である接合部を有し、
前記接合部の幅は、少なくとも前記ノズル板に付与する圧力が必要する最小板厚以上を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記ノズル板および前記ハウジングは、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系ステンレス合金のいずれかによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記ノズル板と前記ハウジングとは同じ材質で形成されていることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
前記連結部における前記ハウジングから前記ノズル板までの距離を前記連結部の高さとしたとき、
前記複数の連結部の高さは同じであることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
液体を吐出する複数のノズル孔を有するノズル板と、
当該ノズル板を支持するハウジングと、
前記ノズル板と前記ハウジングとの間に設けられ、前記ノズル板および前記ハウジングのそれぞれと拡散接合を含む工程によって接合される拡散接合用部材と、を有し、
前記拡散接合用部材は、
前記ノズル板および前記ハウジングに当接することで前記ノズル板と前記ハウジングとを連結し、前記ノズル孔の配列方向に配置される複数の連結部と、
当該連結部に形成され、前記ノズル板のノズル孔と連通する流路と、
互いに隣接する前記連結部間に形成された間隙と、
前記ノズル板および前記ハウジングに当接することで前記ノズル板と前記ハウジングとを連結し、前記ノズル板の外縁部を沿うように形成された壁部と、
を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記ノズル板と離接するように移動することで前記ノズル孔を開閉する弁体と、弁体を移動させる移動手段を有する請求項1または10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記弁体の先端部が弾性体であることを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項12に記載の液体吐出ヘッドを有する液体を吐出する装置。
【請求項14】
液体を吐出する複数のノズル孔を有するノズル板と、当該ノズル板を支持するハウジングとを有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
当接することで前記ノズル板と前記ハウジングとを連結し、前記ノズル孔の配列方向に配置される複数の連結部を前記ノズル板あるいは前記ハウジングのいずれかに形成する工程と、
前記ノズル板のノズル孔と連通する流路を前記連結部に形成する工程と、
互いに隣接する前記連結部間に間隙を形成する工程と、
前記ノズル板と前記ハウジングとが前記連結部とを介して拡散接合によって接合する工程と、
を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体を吐出する装置および液体吐出ヘッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にノズルからインクといった液滴を吐出し、ノズル(ノズル孔)に配設されたノズル開閉弁(ニードル弁)と、そのノズル開閉弁をノズルに対して離接するノズル開閉駆動手段(圧電素子、アクチュエータ)と、ノズル開閉駆動手段を制御する制御手段を用いてノズルを開閉することによって液体を吐出させる液体吐出ヘッドが知られている。このような液体吐出ヘッドは、吐出する液体をノズルに加圧供給し、その状態でノズル開閉弁をノズルに対して離接することにより、ノズル開閉弁がノズルから離間している間だけ、加圧供給されている液体がノズルから液滴として吐出される。また、ノズルからインクを含む液体を吐出する液体吐出ヘッドは、その内部にある液体流路が、積層状の複数枚の金属プレートとハウジングにより構成されているものがある。ここで、複数枚の金属プレートとハウジングとの接合する方法としては、接着剤による接着や、金属拡散接合が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、液滴を吐出する吐出口が形成される吐出口形成基板、吐出口に連通する圧力室の隔壁を形成する流路形成基板、及び振動板を積層して、圧力室を形成する際、振動板の表面を凹凸構造に形成し、圧力室内に圧力変化を生じさせる圧電体を、振動板表面の凹凸構造上に、エアロゾル法で形成することが開示されている。また、この文献には、ノズルプレート、流路プレート及び振動板を、ガラス溶着接合あるいは金属拡散接合により接合し、各プレートを積層して圧力室を形成する点が開示されている。そして、ガラス溶着の場合には、各プレート表面にガラス溶着用のガラス膜を形成して、これを重ねて加熱炉等内で加熱し、ガラスを溶融させ、これに対し加圧して溶融したガラス同士を接合させている。
【0004】
ここで、金属拡散接合により接合する場合は、複数枚の金属プレートとハウジングとをこれらの両面から平板状の治具で挟み込み、およそ1000℃程度の高温で熱しながら、1MPa以上で加圧することにより接合させているため、接合される金属プレート、あるいはハウジングは大きく変形する可能性がある。これに伴い、金属プレートであるノズルプレート(ノズル板)等は薄くなったり、あるいは長く伸びたりと変形する可能性がある。これによって、ノズルプレートに形成されたノズル(ノズル孔)間の位置、ピッチ距離が変化する可能性があり、ノズルの位置精度が低下する。これを防止するためには、当該変形を抑制する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、拡散接合によって接合する場合において、ノズル等の位置精度を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、液体を吐出する複数のノズル孔を有するノズル板と、当該ノズル板を支持し、拡散接合を含む工程によって前記ノズル板と接合されたハウジングを有する吐出ヘッドであって、前記ノズル板あるいは前記ハウジングのいずれかに形成され、当接することで前記ノズル板と前記ハウジングとを連結し、前記ノズル孔の配列方向に配置される複数の連結部と、当該連結部に形成され、前記ノズル板のノズル孔と連通する流路と、互いに隣接する前記連結部間に形成された間隙と、を有することを特徴するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、拡散接合によって接合する場合において、ノズル等の位置精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】ノズルとニードル弁との部位の位置関係を示した図。
【
図4】ノズル板とハウジングとの拡散接合について示した図。
【
図6】本発明に係る実施形態1(実施例1)を示した図。
【
図7】実施例1に係る液体吐出ヘッドのノズル板とハウジングとの接合部分の概略図。
【
図8】本発明に係る実施形態における拡散接合を施したノズル板とハウジングとを接合したものの実物写真。
【
図9】拡散接合前後でノズルの位置が変位する状態について示した図。
【
図10】実施例1と比較例とに係るノズル板に対して拡散接合前後の位置の距離の変位量の違いを計測した結果を示した図。
【
図11】実施例1に係る連結部の設定値を説明するための図。
【
図12】本発明に係る実施形態2(実施例2)を示した図。
【
図13】本発明に係る実施形態3(実施例3)を示した図。
【
図14】本発明に係る実施形態4(実施例4)を示した図。
【
図15】本発明に係る実施形態5(実施例5)を示した図。
【
図16】本発明に係る実施形態6(実施例6)を示した図。
【
図19】液体吐出装置の自動車に対する配置例を示す斜視図。
【
図20】液体吐出装置の自動車に対する他の配置例を示す斜視図。
【
図21】液体吐出装置により球面に液体を吐出した場合の説明図。
【
図22】実施形態に係る電極の製造方法を実現するための電極の製造装置の一例を示す模式図。
【
図23】実施形態に係る電極合材層の製造方法を実現するための電極の製造装置の他の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施形態を、図面を用いて、以下に説明をする。なお、本発明では、液体吐出ヘッドを吐出ヘッドとよぶこともある。
【0010】
また、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明に係る実施形態における吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)を示す図である。また、
図2は、本発明に係る実施形態における吐出ヘッドの主要な構成を示した図である。また、
図3は、本発明に係る実施形態における吐出ヘッドの主要な構成におけるノズルと開閉弁であるニードル弁との部位を拡大し、ノズルとニードル弁との位置関係を示す図である。また、
図3は、
図2において破線の丸で囲った部分を拡大して示した図でもある。
【0012】
まず、
図1を用いて説明する。ここで、
図1において、
図1の横方向をy方向、紙面に対して垂直に向かう方向をx方向、そして、
図1の縦方向をz方向とする。そして、z方向は、ニードル弁の開閉方向(上下方向、圧電素子の長手方向、圧電素子の伸縮方向)であると定義する。そして、これ以降の図もこの方向の定義は、特に断りがない限り同様であるとする。
図1から
図3に示すとおり、吐出ヘッド1(液体吐出ヘッドの一例)は、インク(液体の一例)が吐出されるノズル13(ノズル孔の一例、ノズル孔ともよぶ)を有するノズル板3(ノズル板の一例)と、ノズル13に加圧されたインクを供給する液室11と、液室11内に設けられていてノズル13の孔を開閉するニードル弁5(弁体の一例)と、ニードル弁5を駆動する圧電素子7(移動手段の一例)と、圧電素子7を収容する圧電素子収容空間12が形成されたハウジング(筐体ともよぶ)140と、を備える。この圧電素子7は、温度の変化によって線膨張係数に応じて伸縮する性質も持っている。また、圧電素子7は、常温または一般的な使用温度の範囲で負の線膨張係数を有するため、温度を上げると縮む性質を持つ。そして、液室11内のニードル弁5とハウジング140との間には、封止部材としてのOリング4が設置されおり、Oリング4によって液室11から圧電素子7へのインクの浸入を防いでいる。
【0013】
ノズル板3は、ハウジング140の液室11を形成する部位に接合される。そして、ノズル板3に形成されたノズル13とニードル弁5とは、ノズル13を閉塞するように当接される。ニードル弁5の先端挿入部2には、シール部材9が形成されている。そして、圧電素子7を駆動させることでニードル弁5が変位し、この変位によりシール部材9を押圧することによりノズル13を閉塞する。シール部材9は、樹脂部材(フッ素樹脂)やゴム部材といった弾性体が挙げられる。
【0014】
また、圧電素子7は、圧電素子保持部材6を介して圧電素子固定部材8とニードル弁5とに連結され、圧電素子固定部材8を介してハウジング140に固定される。そして、固定された固定基準を基準点10として圧電素子7が伸長または収縮し、ニードル弁5を変位させる。上記した構成において、ニードル弁5を圧電素子7の動作によってノズル13に当接する方向(z軸方向)に離間することによって加圧された液体を吐出することができる。また、
図1から3に示すノズル13、ニードル弁5、圧電素子7を含む吐出構造(CHまたはチャネルとも呼ぶ)を、
図1のy方向に配列することによって、複数のノズルより吐出する吐出ヘッドとすることができる。
図1は、一例として8CHのノズルを有する吐出ヘッドを示すものである。なお、本発明はこれに限らないものとする。そのため、CH数やノズルの配列方向もこれに限られない。
【0015】
ここで、
図3に示すように、ノズル13とニードル弁5との離接させることができるギャップは数μm~数十μmの隙間であり極めて小さいものである。ここで、本発明においては、ニードル弁5がノズル13と離接している隙間の距離をリフト量(あるいはギャップ量)とよぶことにする。なお、本実施形態ではノズル13とニードル弁5とのリフト量を、例えば、5~50μmに設定している。
【0016】
また、吐出ヘッド1について、液体を吐出する装置100に実装する場合に、吐出対象物へ移動するためのキャリッジ(吐出ヘッドを支持するための吐出ヘッド支持部の一例)1000や、あるいは可動ユニット等に取り付けられ吐出ユニットとなる。そして、キャリッジ1000への吐出ヘッド1の取付けに際しては、ハウジング140に形成されたネジの締結穴14にネジをキャリッジ取付面15へ取付けることによって締結する。なお、液体を吐出する装置100、キャリッジ1000の詳細な説明については、後述することとする。
【0017】
<拡散接合について>
ここで、拡散接合について説明する。なお、以下では、金属拡散接合のことを、単に拡散接合とよぶこととする。まず、拡散接合によって接合する場合には、複数枚の金属板(金属プレート)とハウジングとを両面から平板状の治具で挟み込み、部品の材料に因るが、金属の場合は、一般的に、真空条件下で高温(1000℃程度)に熱しながら加圧することにより接合する。そして、これによって、金属板同士の界面間、あるいは金属板とハウジングとの接合面において金属原子を相互に拡散させて接合させる。
【0018】
この拡散接合により接合する場合には、複数枚の金属板、そしてハウジングを一度に接合することができるため、工程を簡素化することが可能になる。また、拡散接合は、有機系の接着剤を用いての接合に対し、耐液性や耐食性にも優れている。そして、拡散接合は、金属の原子レベルで接合することから、有機系の接着剤を使用しての接合と比べて結合する力が強いというメリットも挙げられる。これらの優れた点を有するため、拡散接合での接合は期待が高いものとして、これまでに盛んに研究が行われてきた。
【0019】
そして、この拡散接合は吐出ヘッドに適用する場合においては、主に、ノズル板とハウジングとの接合に用いることが挙げられるが、接着剤等を用いて接合する必要がないため、吐出する液体による接合部の損傷がなくなる。そのため、接着剤等を溶解や腐食させるような液体についても吐出ヘッドによって吐出することが可能となる。また、拡散接合を用いることで、金属の原子レベルで接合ができるため、ノズル板とハウジングとの接合強度を大幅に向上させることができる。これより、液室内の液体の圧力を高めることができるので、吐出ヘッドは粘度の高い液体を吐出することができる。さらに、ノズル板とハウジングとの接合強度を高められるので、ノズル板を押圧するニードル弁といった弁体を用いた方式の液体吐出ヘッドの耐久性を高めることができる。
【0020】
<ノズル板とハウジングとの拡散接合について>
次に、ノズル板とハウジングとの拡散接合について説明する。なお、用語の符号についても説明の便宜上、改めて付与している。
図4は、ノズル板とハウジングとの拡散接合について示した図である。積層状となる複数枚の金属板(金属プレート)を有するノズル板とハウジングとにより構成されている(液滴を吐出する)吐出ヘッドは、その内部に液体の流路が形成されている。そして、
図4(a)は吐出ヘッドの簡易的な構造の例を示している。また、
図4(b)は、
図4(a)に係る構成を拡散接合で接合することを示した図である。
【0021】
図4(a)に示すように、インクといった液体を吐出する複数のノズル2313を有するノズル板2303は、2つのノズル板2303a、2303bを有し、ノズル2313は、ハウジング2340の内部に通る共通流路2304と連通している。また、ハウジング2340は、共通流路2304とつながる液体の流入側であるInlet2305と液体の流出側であるOutlet2306とを有している。
【0022】
そして、拡散結合は、
図4(b)に示すように、上記
図4(a)に係る構成において、ノズル板2303側とハウジング2340側との両端側(
図4(b)での上下側)から平面状の治具600で挟み込み、真空電気炉に入れ、
図4(b)の黒い矢印で示す方向(z軸方向)に圧力を付与しながら昇温して実施する。このとき、当該真空電気炉の真空度としては10
-3~10
-4Pa程度である。また、設定温度と付与する圧力としては、材質と内部構造にも因るが、一般的には、温度は約1000℃程度と、圧力は20MPa程度としている。このような条件下で、1枚あるいは複数ノズル板はハウジングと確実に接合され、液体吐出ヘッドの構成として得ることができる。
【0023】
ここで、ノズル板2303とハウジング2340とは、金属材料を材質としており、一般的にはステンレス材が選択される。また、ステンレス材としては、具体的にいえば、オーステナイト系、フェライト系あるいはマルテンサイト系が挙げられる。これは、液室内の液体の内圧に耐えることが可能な十分な強度を確保することで、液体吐出ヘッドの強度を保つことができることを考慮したからである。また、ステンレス材は、耐インク性、耐食性を有する。そして、吐出ヘッドの使用環境や使用時の発熱等を考慮し、材料を特化する場合がある。例えば、液体吐出ヘッドに使用する液体に対する耐食性等を重視すれば、オーステナイト系のSUS304やSUS316が挙げられる。また、発熱による熱膨張を抑制したい場合には、線膨張係数の小さいフェライト系、例えば、SUS430等が挙げられる。
【0024】
また、拡散接合では高温・高圧条件下で接合を行う。このような高温条件を鑑み、液体吐出ヘッドの部品については、熱特性を考慮しなければならない。例えば、SUS304の線膨張係数は17.3E-6/°Cであるのに対し、SUS430の線膨張係数は10.4E-6/°Cであり、両者には大きな差がある。このことから、両者を混在して使用すると、接合界面で大きな熱応力が生じ、液体吐出ヘッドの寸法を高精度に維持することは困難となるため、ノズル板とハウジングとは、可能な限り、同種のステンレス合金を選定するのが望ましい。
【0025】
金属板の接合面、あるいはハウジングの接合面は、平滑且つ清潔な面であることが望ましい。エッチング用ステンレス材は、均質で平坦度も優れているため、拡散接合を行う際にも用いられることが多い。一方で、ノズルの加工については、一般的に、半抜きプレス工程と研磨工程とを経ることによってノズルを形成する。そして、ノズルの孔の内径が200μmよりも大きい場合、直接ドリル加工を行うことが挙げられるが、そのとき発生したバリを除くバリ取り等の研磨工程は少なからず行う必要がある。このような機械加工の工程を経ると、特に薄いノズル板の部品は、機械加工によって変形が容易に生じる。また、その変形としては、例えば、反り、あるいは折れや打痕等といったものや局部的な変形も含まれる。そして、それらが接合界面に存在する場合における形状変形は、拡散接合には望ましくない。なぜならば、拡散接合は接合界面が平坦である必要があるものの、このような変形は、接合面の完全なる接触を阻害し、接合強度不足や液体漏れなどの品質不良をもたらすことにつながるからである。
【0026】
また、拡散接合時に、形状変形の存在により、接合界面で圧力不均一が発生しやすく、ノズル板の寸法精度を大きく低下させる。従って、接合圧力をより均一にし、且つより高い接合品質を得るためには、接合用部品は、極力部品の接合面における形状変形を防止する必要がある。
【0027】
<比較例について>
次に、比較対象となる構成(比較例)における拡散接合での課題を説明する。そして、それを踏まえて本発明に至った経緯について説明する。なお、用語の符号についても説明の便宜上、改めて付与している。
【0028】
図5には、比較例に係る構成を示した図である。まず、比較例に係る構成におけるノズル板1303の材質は、フェライト系ステンレスSUS430(JFEスチール社製)とし、ハウジング1340の材質は、フェライト系ステンレスSUS430(日鉄ステンレス社製)とした。すなわち、共に、フェライト系ステンレスSUS430を用いている。
【0029】
ノズル板1303は、板厚0.5mmで、ここでは8つのノズル孔であるノズル1313を有する。8つのノズル1313は、所定の距離をおいてノズル板1303の長手方向(
図5のy軸方向)に並んで配置されている。また、ノズル板1303には、この8つのノズル1313の配列方向の両側(
図5のy軸方向における両側)に接合時に位置決め用の孔となるノズル位置決め孔1307が設けられている。また、ノズル1313の孔の内径は0.2mmであり、ノズル位置決め孔1307の内径は1.0mmとしている。そして、これらの孔は、ドリルによって加工した後に、研磨工程で孔の開口部の周囲にできたバリ等を除去している。そして、この除去する際に、ノズル板1303における接合面の粗さRaを0.5μm以下に施している。
【0030】
次に、ハウジング1340についてだが、ハウジング1340のノズル板1303との接合面1309は、平面状としている。そして、接合面1309は、流路1311が8つのノズル1313に対応して、所定の距離をおいてハウジング1340の長手方向(
図5のy軸方向)に並んで配置されている。ここで、8つの流路1311は、内径が3mmの孔であり、ハウジング1340の中央部に設けられた図示しない共通流路と連通して、液体を通す経路を構成する。また、ハウジング1340は、この8つの流路1311の配列方向の両側(
図5のy軸方向における両側)に接合時に位置決め用の孔となるハウジング位置決め孔1308が設けられている。一方で、ハウジング位置決め孔1308の孔は、ハウジング1340の中央部に設けられた図示しない共通流路と連通していない。また、液体の流入側はInlet1305で、液体の流出側はOutlet1306となる。
【0031】
そして、このような構成において、ノズル位置決め孔1307およびハウジング位置決め孔1308を介して位置決めを行った上で、ノズル板1303とハウジング1340とを一体化して、
図4に示すような真空高温炉に入れて、拡散接合を実施した。このときの拡散接合の条件としては、温度を1000°C程にして、15分以上に保温した後、そのまま炉冷した。また、接合面における面圧は1MPa以上に設定し、真空度は10
-3Paとした。なお、本比較例に係る構成の場合は、接合面積が大きいため、上記面圧力になるように加圧力を調整している。
【0032】
ここで、金属の拡散接合は、高温・高圧の条件下で接合を行うものだが、接合面積が大きければ変形量も大きくなる。そして、比較例に係る構成においては、ノズル板とハウジングとがほぼ全面同士で接合を行うため、接合面積が大きくなる。そのため、ノズル板の変形量が大きいという課題が生じていた。このような課題に対して、拡散接合のプロセス中に発生する変形量に対し、設計時に予め変形量を補正するという対策が挙げられる。しかし、高温・高圧の条件下で、圧力や温度は部品に沿って均一に分布するとは限らない。特に、変形量が大きいほど、寸法の補正を実施しても、吐出ヘッドの形状寸法の精度、ノズル間同士の距離(ピッチ距離)の精度に大きなばらつきが生じる。
【0033】
一方で、このようなばらつきを防止するためには、接合面積を小さくすれば変形量も小さくなり、補正等も可能となる。そこで、本発明は、以下のようにした。これについて説明する。
【0034】
<実施例1について>
図6は、本発明に係る実施形態1(実施例1)を示した図である。そして、この図を用いて、本発明に係る実施形態について、以下に説明する。本発明においては、上記した課題に鑑みて、ハウジングのノズル板との接合面に円筒状の連結部を設けた構成とし、その上で、拡散接合によってノズル板とハウジングとを接合する製造方法とした。なお、それ以外の構成については、比較例に係る構成と同じであるものとする。また、用語の符号についても説明の便宜上、改めて付与している。
【0035】
まず、実施例1に係る構成は、比較例に係る構成と大きく異なる点は、ハウジング340の接合面309上に円筒状の連結部310(連結部の一例)を設けた点である。ここでは、連結部310の構成を中心に説明していく。なお、実施例1におけるその他のハウジングの構成やノズル板の構成、そして拡散接合での環境条件等は、比較例に係る構成で説明した場合と同じであるとする。
【0036】
本実施形態においては、
図6に示すように、ハウジング340のノズル板303との接合面309には、ノズル板303のノズル313およびノズル位置決め孔307の位置に対応して、機械加工により円筒状の連結部310が設けられている。この連結部310の高さ(
図6のz軸方向の大きさ)は0.1mmであり、外径は7mmとしている。なお、複数の連結部310の当該高さは、全て同じにしている。この理由としては、ノズル板303をより平坦にして、ハウジング340と接合することができるようにするためである。また、連結部310の接合部の接合幅(接合部の幅の一例)は、本実施例1では、2mmとしている。そして、連結部310は、本実施形態においては、8つ設けられている。これは、ノズル313の数が8つであり、それに対応しているからである。また、隣接する連結部310同士は、所定の距離である間隙312(間隙の一例)が設けられており、ハウジング340の長手方向(
図6のy軸方向)に並んで配置されている。そして、間隙312は、本実施例1では、0.1mmにしている。また、8つの円筒状の連結部310は、それぞれに流路311(流路の一例)が設けられている。この流路311は、内径が3mmの孔であり、ハウジング340の中央部に設けられた図示しない共通流路と連通して、液体を通す経路を構成する。このように連結部310の内部に流路311が形成されることから、ノズル313の周辺はすぐ接合部になり、流路311内の液体の内圧による変形が避けられる。そのため、ノズル313の位置が、より高精度に保つことが可能になり、併せて、高寿命化も実現できる。なお、連結部等の具体的な設計値についての詳細は、後述する。
【0037】
また、ハウジング340は、この8つの流路311の配列方向の両側(
図6のy軸方向における両側)に接合時に位置決め用の孔となるハウジング位置決め孔308が設けられている。このハウジング位置決め孔308は、位置決め精度を向上させるためには、本発明に係る実施形態においては、ノズル313と同じ高さ(
図6のz軸方向の大きさ)の円筒状の連結部としている。なお、ハウジング位置決め孔308の外径の大きさは、強度を連結部310ほど必要としないため、連結部310の外径よりも小さい。また、ハウジング位置決め孔308は、その内部には流路が形成されていない。そのため、ハウジング340の中央部に設けられた図示しない共通流路と連通していない。また、液体の流入側はInlet305で、液体の流出側はOutlet306となる。
【0038】
そして、このような構成において、ノズル位置決め孔307およびハウジング位置決め孔308を介して位置決めを行った上で、ノズル板303とハウジング340とを一体化して、
図4に示すような真空高温炉に入れて、拡散接合を実施した。なお、このときの拡散接合の条件としては、比較例のときと同じである。
【0039】
図7は、実施例1に係る液体吐出ヘッドのノズル板とハウジングとの接合部分の概略図である。この図からもわかるように、連結部310は、所定の間隔である間隙312おいて、ハウジング340の長手方向(
図7のy軸方向)に並んで配置されている。
【0040】
図8は、本発明に係る実施形態における拡散接合を施したノズル板とハウジングとを接合したものの実物写真である。
図8からわかるように、ノズル板303の上面にはノズル313の周辺を囲う輪状のものがみられ、これは、拡散接合時に圧力を受けた連結部310の形状が反映されたものである。すなわち、拡散接合された部分は、連結部の部分のみとなる。なお、このハウジング位置決め孔308は、本実施形態においては円筒状の連結部とする構成としたが、本発明においては連結部を設けない構成としてもよい。
【0041】
<実施例1と比較例との変位量の違いについて>
ここで、実施例1に係るノズル板と比較例に係るノズル板との拡散接合前後のノズルの位置の変位について説明する。そして、その前に、拡散接合前後でのノズルの位置の原理を説明する。
【0042】
図9は、拡散接合前後でノズルの位置が変位する状態について示した図である。この
図9を用いて、拡散接合後におけるノズルの位置の変位の原理について説明する。なお、この原理については、実施例1に係るノズル板と比較例に係るノズル板とで同じものとする。
【0043】
ここで、
図9(a)は、変位量を説明するためのノズル板の構成を示す図である。
図9(a)に係るノズル板は、2つの位置決め孔とそれらの間に位置する8つのノズル(ノズル孔)がノズル板の長手方向に一列に並ぶように配列している構成となっている。そして、ここでは8つのノズル孔を左側の位置決め孔(
図5におけるノズル位置決め孔1307や
図6におけるノズル位置決め孔307に相当)を基準としてNo1、No2、・・・No8とする。
【0044】
次に、
図9(b)だが、当該図は上記
図9(a)で示したNo1のノズルの拡散接合前後の変位を示す図である。まず、
図9(b)に示すように、拡散接合前におけるノズル板の左側の位置決め孔からNo1のノズルの位置までの距離をxとする。そして、拡散接合後におけるノズル板だが、拡散接合によって加圧加熱の環境下にあるため、ノズル板は伸びる。これによって、No1のノズルは、左側の位置決め孔から、拡散接合前の距離であるxに変位量であるΔxを加えたx+Δxの距離離れた位置になる。
【0045】
次に、
図9(c)だが、当該図は上記
図9(c)で示した複数のノズルの拡散接合前後の変位を示す図である。なお、ここでは、説明のため、No1~No3までのノズルを例にとって説明している。また、各ノズルは、左側の位置決め孔から等間隔で並んで配置されているとする。
【0046】
まず、
図9(c)に示すように、拡散接合前におけるノズル板の左側の位置決め孔から各ノズルの位置までの距離をx、2x、そして3xとする。また、同図に示すように、「位置決め孔-No1ノズル間」での変位量をΔx1、「No1ノズル-No2ノズル間」での変位量をΔx2、「No2ノズル-No3ノズル間」での変位量をΔx3とする。そして、拡散接合後におけるノズル板だが、拡散接合によってノズル板は伸びる。これによって、No1のノズルは、左側の位置決め孔から、拡散接合前の距離であるxに変位量であるΔx1を加えたx+Δx1の距離だけ離れた位置になる。また、No2のノズルは、左側の位置決め孔から、拡散接合前の距離である2xに変位量であるΔx1とΔx2とを加えた2x+Δx1+Δx2の距離だけ離れた位置になる。そして、No3のノズルは、左側の位置決め孔から、拡散接合前の距離である3xに変位量であるΔx1+Δx2+Δx3を加えた3x+Δx1+Δx2+Δx3の距離だけ離れた位置になる。
【0047】
ここで、拡散接合後におけるNo1のノズルの位置は、拡散接合前に比べて位置決め孔から変位量Δx1の距離だけ離れている。同様に、拡散接合後におけるNo2のノズルの位置は、拡散接合前に比べて位置決め孔から変位量Δx1+Δx2の距離だけ離れており、拡散接合後におけるNo3のノズルの位置は、拡散接合前に比べて位置決め孔から変位量Δx1+Δx2+Δx3の距離だけ離れていることがわかる。すなわち、拡散接合後において、ある番号における変位量は、位置決め孔を基準としてその番号のノズルが位置するまでの各ノズル間の変位量の累積値(累積伸び量)となる。そのため、位置決め孔から距離が離れたノズルほど変位量は大きくなる。
【0048】
そして、この原理を前提に、実施例1と比較例とに係るノズル板に対して、拡散接合前後の位置の距離の変位量の違いを計測した結果について以下に説明する。
図10は、実施例1と比較例とに係るノズル板に対して拡散接合前後の位置の距離の変位量の違いを計測した結果を示した図である。まず、拡散接合する前に予め(ノズル板の)位置決め孔を基準に、各々のノズルの位置を計測した。そして、拡散接合後には、再度位置決め孔から各々のノズル位置を計測し、接合前後の変化量を評価した。その評価結果を示したのが
図10である。
【0049】
図10は、2つの位置決め孔を結んだ直線を基準線とし、この基準線に沿って配列した複数のノズルについて、各ノズル位置の変化量を示したものである。そして、
図10では、実施例1に係るノズル板の変化量および比較例に係るノズル板の変化量の結果を示している。なお、ノズル板については、実施例1および比較例共に、
図9で示したような8つのノズルを有するノズル板を用いている。また、拡散接合における環境等の評価条件についても実施例1および比較例共に同じであるとする。
【0050】
そして、
図10に示すように位置決め孔からのノズル位置までの距離が離れるほど変位量は大きくなる。例えば、No3のノズルの変位量の累積値は、No1やNo2に比べて大きくなる。また、位置決め孔から最も離れた位置にあるNo8のノズルは、他のノズルの変位量に比べて最も大きいことがわかる。これは、
図9で説明した原理に基づくためである。
【0051】
ここで、実施例1の結果と比較例の結果とを比較したとき、どのノズルについても比較例の変位量に比べて実施例1の変位量は小さいことがわかる。例えば、No3のノズルの変位量についてみると、比較例の変位量に比べて実施例1の変位量は値が小さくなっている。また、別の例を挙げると、位置決め孔から最も離れた位置にあるNo8のノズルの変位量についても、比較例の変位量に比べて実施例1の変位量は値が小さくなっている。
【0052】
このような評価結果となった理由としては、実施例1に係る構成においては、円筒状の連結部を設けており、これによりノズル板とハウジングとが接合する面積が、比較例に係る構成に比べて小さくなっているためである。すなわち、実施例1に係る構成と比較例に係る構成とについて、同じ環境下で拡散接合を行った場合、間隙を有する連結部を設けることで、接合面積が減少し、これによりノズル板に設けられたノズル間の距離の変化量(伸び量)を抑制できることとなる。
【0053】
また、上記した評価を実施例1に係るノズル板と比較例に係るノズル板とでサンプルを10個ずつ作成し、各サンプルのそれぞれのNo8のノズルの伸び量の変化範囲を測定評価した。そして、各測定値の最小値(min)と最大値(max)との差(max-min)を算出し、その算出量を伸び量の変化範囲とした。その評価結果を表1に示す。この表1に示すように、結果としては、実施例1の伸び量の変化範囲も相応して、比較例の伸び量の変化範囲の約6割程度まで減少することが確認された。
【0054】
【0055】
<連結部の具体的な設定値について>
次に、実施例1の連結部の具体的な設定値について説明する。上記した実施例1に係る構成における連結部310は、ノズル板303の伸び量(変化量)を抑えることを考慮すると、接合部分の面積は極力小さくすることが望ましいといえる。その一方で、接合面積を減らすことは、接合強度が低下することにもつながる。特に、ノズルの開閉はニードル弁といった弁体により制御されるが、液室内の液体の内圧が非常に高圧の場合、製品安全の観点から一定の接合強度を確保する必要がある。
【0056】
図11は、実施例1に係る連結部の設定値を説明するための図である。この
図11を用いて実施例1に係る連結部の形状について具体的な設計方法や設定値について説明する。
【0057】
まず、
図11(a)は、ノズル板と接合した連結部の断面図を示している。そして、ノズル板303が連結部310と接合すると、連結部310と、流路311と、ノズル板303とがなす形状は、一種の圧力容器の形状に近似できる。そして、
図11(a)に示すように、連結部310は、円筒状となっているため、ノズル板303との接合幅は圧力容器の板厚に相当する。また、圧力容器の板厚の算定式は,JIS B 8265「圧力容器の構造-一般事項」1)の附属書1(規定)「圧力容器の胴および鏡板」に示されているものを用いている。
【0058】
ここで、薄肉構造は、直径に比べ厚さが十分小さい場合で、ほとんどのものが該当する。また、設計圧力は30MPa未満であり、許容引張応力の基本は引張強さの1/4であり、クリープ領域の許容引張応力設定基準も定めている。すなわち、安全率について4は必要と定められている。実施例1に係る連結部のような円筒状(円筒胴のモデル)の場合において最小板厚tは、以下数1(圧力容器の板厚算定式)のようになる。
【0059】
【0060】
ここで、Pは設計圧力であり、Diは内径であり、Sは材料の許容引張強さであり、ηは継手効率係数であり、そして、Cは腐れしろである。
【0061】
そして、実施例1に係る連結部の場合は、SUS430が材質として用いているが、この場合において引張強さは420MPaであり、安全係数を4にすると、許容引張強さSは105MPaになる。また、設計圧力10MPaにおいて、内径Diを3mmとし、継手効率係数ηを0.2とし、腐れしろを0とした場合では、最小板厚tは0.2mmの計算結果が得られる。すなわち、連結部310の接合幅、あるいはノズル板303の厚みは0.2mm以上あれば、安全性が確保できることになる。実施例1に係る連結部310の場合は、ノズル板303の板厚は0.5mmとし、連結部310の接合幅は強度確保の観点から2mmと10倍にすることで、より確実に拡散接合の接合強度を確保することができた。
【0062】
また、ノズル板303の伸び量を低減するためには、間隙312を極力大きくすることが望ましい。そこで、次に、実施例1に係る間隙312の設定値について説明する。
図11(b)は、実施例1に係る連結部の間隙の設定を説明するための図である。ここで、隣接する連結部310の外径端部同士の間隔(間隙312の大きさ)をD1、流路311のノズル313に対応する位置の間隔(ノズルピッチ間に対応するところ)をD2、連結部310の接合部の幅をD3、連結部310の外径をD4、そして、連結部310の内径は上記したようにDi=(D4-2×D3)となる。また、ノズル板303の伸び量を考慮すると、間隙312の大きさを大きくすることが望ましいが、一方で、強度確保の観点から連結部310の最小接合幅を考慮する必要がある。そこで、式(A):「0<D1≦D2-2×最小接合幅-Di」を満たすことが想定される。この式(A)を用いることで間隙312をどのくらい大きくすればよいか求めることができる。
【0063】
なお、実際には、式(A)をベースとして、ノズル数(累積ピッチ)と、要求される位置精度に応じて、間隙312の下限値は適宜設定されることとなる。これを踏まえて、実施例1においては、前述したように間隙312を1mmと設定した。そこで、位置精度を高める場合や、あるいはノズル数が多い場合等は、式(A)を満足する範囲で間隙312を1mmより大きくすればよい。例えば、位置精度を1/2とする場合には、間隙312の大きさを2mmにし、また、ノズル数を2倍に増加させる場合は隙間を2mmにする等が挙げられる。
【0064】
以上のように、ノズル板とハウジングとの接合は、間隙を有する連結部を設ける構成にすることで実施した。ノズル板とハウジングとの接合は、全面ではなく不連続的に区分けすることで、接合される部分の面積を減少させ、金属拡散接合の高温・高圧下でのノズル板の伸び量(変形量)を抑制し、より高精度な寸法を得ることができた。また、連結部の接合幅は、少なくとも使用する設計圧力が必要する最小板厚以上にすることで、確実に接合強度を確保することができた。
【0065】
上記のように本実施形態は、液体を吐出する複数のノズル孔313を有するノズル板303と、ノズル板303を支持し、拡散接合を含む工程によってノズル板303と接合されたハウジング340とを有する液体吐出ヘッド1であって、ハウジング340に形成され、当接することでノズル板303とハウジング340とを連結し、ノズル孔313の配列方向に配置される複数の連結部310と、連結部310に形成され、ノズル板303のノズル孔313と連通する流路311と、互いに隣接する連結部310間に形成された間隙312と、を有する。
【0066】
これによって、拡散接合によって接合する場合において、ノズル313等の位置精度を高めることができる。
【0067】
さらに、上記のように本実施形態は、連結部310は流路311を囲む部位である接合部を有し、接合部の幅は、少なくともノズル板303に付与する圧力が必要する最小板厚以上を有する。
【0068】
これによって、確実に拡散接合の接合強度を保証し、流路内の液体の内圧への耐久性を向上させ、接合部の剥がれを抑制し、ノズル板を含む液体吐出ヘッドの形状を保つことができる。
【0069】
さらに、上記のように本実施形態は、ノズル板303およびハウジング340は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系ステンレス合金のいずれかによって形成されている。
【0070】
これによって、流路内の液体内圧を耐えられる十分な強度をもたらし、液体吐出ヘッドの強度を確保することができる。また、耐インク性や耐食性を得ることができる。
【0071】
さらに、上記のように本実施形態は、ノズル板303とハウジング340とは同じ材質で形成されている。
【0072】
これによって、接合界面で大きな熱応力が生じることを防止し、液体吐出ヘッドの寸法を高精度に維持することが可能となる。
【0073】
さらに、上記のように本実施形態は、連結部310におけるハウジング340からノズル板303までの距離を連結部310の高さとしたとき、複数の連結部310の高さは同じである。
【0074】
これによって、ノズル板をより平坦にして、ハウジングと接合することができる。
【0075】
<実施例2について>
図12は、本発明に係る実施形態2(実施例2)を示した図である。そして、この図を用いて、本発明に係る実施形態について、以下に説明する。
【0076】
本実施例においては、ハウジングについて外縁部(周縁部)にノズル板との接合のために壁部を設けた構成とし、その上で、拡散接合によってノズル板とハウジングとを接合する製造方法とした点が実施例1と異なっている。なお、それ以外の構成については、実施例1に係る構成と同じであるものとする。そこで、以下では、主に、実施例1と異なる点について説明する。
【0077】
図12に示す実施例2に係る構成においては、ハウジング340の接合面309上であってハウジング340の周縁部にノズル板303との接合用の壁部(隔壁)314を設けている。この点で実施例1に係る構成と大きく異なっている。
【0078】
ここで、実施例2に係る構成は、この壁部314(壁部の一例)と、実施例1のときと同様に、ノズル313と連通する流路311を含む連結部310とを有している。壁部314は、連結部310と同じ高さ(z軸方向の大きさ)を有し、0.1mmとしている。このようにすることで、ノズル板303をより平坦にして、ハウジング340と接合することができる。また、壁部314は、その接合幅としては1mmとしている。さらに、実施例2に係る構成は、壁部314の一部に外気に通じる孔である壁部連通部315が形成されている。
【0079】
そして、このような構成において、ノズル位置決め孔307およびハウジング位置決め孔308を介して位置決めを行った上で、ノズル板303とハウジング340とを一体化して、
図4に示すような真空高温炉に入れて、拡散接合を実施した。なお、このときの拡散接合の条件としては、実施例1のときと同じである。
【0080】
そして、ノズル板303の周縁部を壁部314でハウジング340と接合することで、連結部310の隣接部の間隙312が閉空間にならないように、壁部連通部315を通じて、真空を引くようにした。なお、この壁部連通部315は、2以上設けてもよい。このように、壁部の側面に外気に通じる孔が、少なくとも1つ以上に設けることで、真空中での拡散接合時に、連結部の隣接部分は間隙を有する空間は閉じた空間(閉空間)にならずに、内部の空気を確実に逃がすことができる。そのため、ノズル板とハウジングとの積層体を加熱したときに連結部の隣接部分の間隙内の空気が膨張することがなく、ノズル板等に接合不良や、積層体の温度分布が不均一になり歪みが生じることを防止することができる。そして、このようなプロセスを経て拡散接合を行ったため、閉じ込められた空気は十分に排気することができ、ノズル板303は、連結部310に加え、外縁部(周縁部)も壁部314で確実にハウジング340と接合することができた。
【0081】
このように作成した液体吐出ヘッドにおいて、ノズル板位置決め孔307から各々のノズル313の距離の伸び量は、実施例1のときとほぼ同じ結果を得ることができた。
【0082】
ここで、ノズル板の外縁部(周縁部)は、ハウジングと接合していない場合だと、ワイピング洗浄時において洗浄工具のブラシやゴムローラ等により容易に巻き込まれて、捲られることがある。
【0083】
そこで、実施例2においては、ハウジングの外縁部(周縁部)に壁部を設けることにより、ノズルの外縁部(周縁部)がハウジングにより接合支持されるため、ワイピング洗浄時に発生するノズル板の捲れも抑えられる。これによって、実施例1の場合に比べて、吐出ヘッドの寿命を大きく延ばすことが可能となる。
【0084】
上記のように本実施形態は、ハウジング340の外縁部に形成され、当接することでノズル板303とハウジング340とを連結する壁部314を有する。
【0085】
これによって、ノズルの外縁部(周縁部)がハウジングにより接合支持されるため、ワイピング洗浄時に発生するノズル板の捲れも抑えられる。
【0086】
さらに、上記のように本実施形態は、連結部310におけるハウジング340からノズル板303までの距離を高さとしたとき、連結部310と、連結部310と同じ高さの壁部314で接合支持され、壁部314の側面にハウジング340の外部と連通する孔部は315少なくとも1つ以上に設けられている。
【0087】
これによって、真空中での拡散接合時に、連結部の隣接部分は間隙を有する空間は閉じた空間(閉空間)にならずに、内部の空気を確実に逃がすことができる。そのため、ノズル板とハウジングとの積層体を加熱したときに連結部の隣接部分の間隙内の空気が膨張することがなく、ノズル板等に接合不良や、積層体の温度分布が不均一になり歪みが生じることを防止することができる。
【0088】
<実施例3について>
図13は、本発明に係る実施形態3(実施例3)を示した図である。そして、この図を用いて、本発明に係る実施形態について、以下に説明する。
【0089】
本実施例においては、拡散接合用の連結部や接合用の壁部について、ハウジング側でなくノズル板側に設けた構成とし、その上で、拡散接合によってノズル板とハウジングとを接合する製造方法とした点が実施例1と異なっている。なお、それ以外の構成については、実施例1に係る構成と同じであるものとする。そこで、以下では、主に、実施例1と異なる点について説明する。なお、用語の符号についても説明の便宜上、改めて付与している。
【0090】
図13に示す実施例3に係る構成においては、ノズル板303aのノズル313aに対応する位置に円筒状の連結部310aと、ノズル板313aの外縁部(周縁部)にハウジング340aとの接合用の壁部(隔壁)314aを設けた点で実施例1に係る構成と大きく異なっている。そして、連結部310aは、本実施形態においては、8つ設けられている。これは、ノズル303aの数が8つであり、それに対応しているからである。
【0091】
また、隣接する連結部310a同士は、所定の距離である間隙312aが設けられており、ノズル板303の長手方向(
図13のy軸方向)に並んで配置されている。そして、壁部314aの一部に外気に通じる孔である壁部連通部315aが形成されている。壁部連通部315aは、拡散接合時に、連結部310aの隣接部の間隙312aが閉空間にならないように、壁部連通部315aを通じて、真空を引くようにできるために設けられている。
【0092】
そして、このような構成において、ノズル位置決め孔307aおよびハウジング位置決め孔308aを介して位置決めを行った上で、ノズル板303aとハウジング340aとを一体化して、
図4に示すような真空高温炉に入れて、拡散接合を実施した。なお、このときの拡散接合の条件としては、実施例1等と同じである。
【0093】
このように作成した液体吐出ヘッドにおいて、ノズル板位置決め孔307aから各々のノズル313aの距離の伸び量は、比較例に係る構成と比べて抑えることができた。
【0094】
ここで、ハウジング側に拡散接合用の連結部や壁部を設ける場合は、主に機械加工で最初にハウジング側に作成している。一方で、生産数が多い場合は、全部について機械加工で作り出すのは、非常にコストがかかる。そこで、本実施例(実施例3)のように、ノズル板側に拡散接合用の連結部や壁部を設ける場合は、エッチング手法で実現することが可能となるため、大量に生産でき、且つコストを抑えることが可能となる。
【0095】
上記のように本実施形態は、液体を吐出する複数のノズル313aを有するノズル板303aと、ノズル板303aを支持し、拡散接合を含む工程によってノズル板303aと接合されたハウジング340aとを有する液体吐出ヘッド10であって、ノズル板303aに形成され、当接することでノズル板303aとハウジング340aとを連結し、ノズル313aの配列方向に配置される複数の連結部310aと、連結部310aに形成され、ノズル板303aのノズル313aと連通する流路311aと、互いに隣接する連結部310a間に形成された間隙312aと、を有する。
【0096】
これによって、ノズル板側に拡散接合用の連結部や壁部を設ける場合は、エッチング手法で実現することが可能となるため、大量に生産でき、且つコストを抑えることが可能となる。
【0097】
また、上記のように本実施形態は、ノズル板303aの外縁部に形成され、当接することでノズル板303aとハウジング340aとを連結する壁部314aを有する。
【0098】
これによって、ノズルの外縁部(周縁部)がハウジングにより接合支持されるため、ワイピング洗浄時に発生するノズル板の捲れも抑えられる。
【0099】
さらに、上記のように本実施形態は、連結部310aにおけるハウジング340aからノズル板303aまでの距離を高さとしたとき、連結部310aと、連結部310aと同じ高さの壁部314aで接合支持され、壁部314aの側面にハウジング340aの外部と連通する孔部315aは少なくとも1つ以上設けられている。
【0100】
これによって、真空中での拡散接合時に、連結部の隣接部分は間隙を有する空間は閉じた空間(閉空間)にならずに、内部の空気を確実に逃がすことができる。そのため、ノズル板とハウジングとの積層体を加熱したときに連結部の隣接部分の間隙内の空気が膨張することがなく、ノズル板等に接合不良や、積層体の温度分布が不均一になり歪みが生じることを防止することができる。
【0101】
<実施例4について>
図14は、本発明に係る実施形態4(実施例4)を示した図である。そして、この図を用いて、本発明に係る実施形態について、以下に説明する。
【0102】
本実施例においては、ハウジング側に拡散接合用の連結部や接合用の壁部を設け、さらに連結部と壁部の一部とがつながっている(接続している)構成とし、その上で、拡散接合によってノズル板とハウジングとを接合する製造方法とした点が実施例1と異なっている。なお、それ以外の構成については、実施例1に係る構成と同じであるものとする。そこで、以下では、主に、実施例1と異なる点について説明する。なお、用語の符号についても説明の便宜上、改めて付与している。
【0103】
まず、本実施形態においては、
図14に示すように、ハウジング340bのノズル板303bとの連結部形成面309bには、ノズル板の303bのノズル313bおよびノズル板位置決め孔307bの位置に対応して、矩形の連結部310bが設けられている。
【0104】
そして、連結部310bは、本実施形態においては、8つ設けられている。これは、ノズル303bの数が8つであり、それに対応しているからである。また、隣接する連結部310b同士は、所定の距離である間隙312bが設けられており、ハウジング340bの長手方向(
図14のy軸方向)に並んで配置されている。
【0105】
また、本実施形態においては、ハウジング340bの連結部形成面309b上であってハウジング304bの周縁部にノズル板303との接合用の壁部(隔壁)314bを設けている。ここで、ノズル孔313bと連通する流路311bを含む連結部310bとを有している。また、壁部314bは、その一部に外気に通じる孔である壁部連通部315bが形成されている。
【0106】
そして、矩形の連結部310bは、その長手方向(
図14のx軸方向)の端部で壁部314bの一部とつながっている。なお、本実施形態においては、このようにつながった構成としているが、本発明は、つながっていない構成についても適用可能である。
【0107】
また、8つの矩形の連結部310bは、それぞれに流路311bが設けられている。この流路311bは、ハウジング340bの中央部に設けられた図示しない共通流路と連通して、液体を通す経路を構成する。また、ハウジング340bは、この8つの流路311bの
図14におけるy軸方向における両側に接合時に位置決め用の孔となるハウジング位置決め孔308bが設けられている。また、ハウジング位置決め孔308bは、その内部には流路が形成されていない。そのため、ハウジング340bの中央部に設けられた図示しない共通流路と連通していない。また、液体の流入側はInlet305bで、液体の流出側はOutlet306bとなる。
【0108】
なお、本実施形態においては、矩形の連結部310bは、その長手方向(
図14のx軸方向)の端部で壁部314bの一部とつながっているが、少なくとも変形量の大きい連結部310bの配列方向では間隙312bが設けられているため、例えば、比較例に係る構成と比べてノズル板303bの伸び量を抑えることは可能となる。
【0109】
そして、このような構成において、ノズル位置決め孔307bおよびハウジング位置決め孔308bを介して位置決めを行った上で、ノズル板303bとハウジング340bとを一体化して、
図4に示すような真空高温炉に入れて、拡散接合を実施した。なお、このときの拡散接合の条件としては、実施例1等と同じである。
【0110】
このように作成した液体吐出ヘッドにおいて、ノズル板位置決め孔307bから各々のノズル313bの距離の伸び量は、比較例に係る構成と比べて抑えることができた。
【0111】
<実施例5について>
図15は、本発明に係る実施形態5(実施例5)を示した図である。そして、この図を用いて、本発明に係る実施形態について、以下に説明する。
【0112】
本実施例においては、ハウジング側に設けた連結部やノズル板のノズルの配列が実施例2と異なっている。なお、それ以外の構成については、実施例2に係る構成と同じであるものとする。そこで、以下では、主に、実施例2と異なる点について説明する。なお、用語の符号についても説明の便宜上、改めて付与している。
【0113】
まず、本実施形態においては、
図15に示すように、
図15におけるハウジング340cの長手方向(
図15におけるy軸方向)に沿って8つの連結部310cを、上側(
図15におけるx軸の-方向側)と下側(
図15におけるx軸の+方向側)とに4つずつ複数列にわたって連結部形成面309c上に配置させて、千鳥配置にしている。なお、隣接する連結部310c同士は、互いに連続しないように間隙312cが設けられている。また、ノズル板303cについても同様に、ノズル313cが
図15に示すように、
図15におけるノズル板303cの長手方向(
図15におけるy軸方向)に沿って8つのノズル313cを、上側(
図15におけるx軸の-方向側)と下側(
図15におけるx軸の+方向側)とに4つずつ複数列にわたって配置させて、千鳥配置にしている。
【0114】
本発明は、この
図15に示すように、連結部とノズルとを複数列に配置する構成にすることも可能となる。なお、その他については、実施例2で説明した場合と同様になる。そのため、ハウジング340cは、連結用の壁部314cやその一部に外気に通じる孔である壁部連通部315c等も形成されている。
【0115】
そして、このような構成において、ノズル位置決め孔307cおよびハウジング位置決め孔308cを介して位置決めを行った上で、ノズル板303cとハウジング340cとを一体化して、
図4に示すような真空高温炉に入れて、拡散接合を実施した。なお、このときの拡散接合の条件としては、実施例1、2等と同じである。
【0116】
このように作成した液体吐出ヘッドにおいて、ノズル板位置決め孔307cから各々のノズル313cの距離の伸び量は、比較例に係る構成と比べて抑えることができた。
【0117】
<実施例6について>
図16は、本発明に係る実施形態6(実施例6)を示した図である。そして、この図を用いて、本発明に係る実施形態について、以下に説明する。
【0118】
本実施例においては、拡散接合用の連結部や接合用の壁部について、ハウジングやノズル板とは別の部材で形成し、それを両者の間に位置させる構成にし、その上で、拡散接合によってノズル板とハウジングとを接合する製造方法とした点がこれまでの実施例2と異なっている。なお、それ以外の構成については、実施例2に係る構成と同じであるものとする。そこで、以下では、主に、実施例2と異なる点について説明する。また、用語の符号についても説明の便宜上、改めて付与している。
【0119】
まず、
図16に示すように、本実施形態では、拡散接合用の連結部材であって、且つハウジング340dやノズル板303dとは別の部材である連結部別部材310P(拡散接合用部材ともよぶ、拡散接合用部材の一例)を設けている。そして、連結部別部材310Pは、拡散接合用の連結部310d、位置決め孔(別部材位置決め孔)316や接合用の壁部314dを有している。なお、円筒状の連結部310dは、所定の距離をおいて連結部別部材310Pの長手方向(
図16のy軸方向)に並んで配置されており、隣接する連結部310d同士は、互いに連続しないように間隙312dが設けられている。また、壁部314dは、その一部に外気に通じる孔である壁部連通部315dが形成されている。そして、連結部310dは、連結部別部材310Pの短手方向(
図16のx軸方向)で壁部314bの一部とつながっている。同様に、連結部別部材310Pの位置決め孔316が形成される部分は、連結部別部材310Pの長手方向(
図16のy軸方向)で壁部314dの一部とつながっている。
【0120】
そして、連結部別部材310Pは板状となっており、外形の大きさはノズル板303dと同じにしている。壁部314dは、ノズル板303dの外縁部(周縁部)に沿うように形成されている。また、板の厚み(
図16におけるz軸方向の大きさ)は、0.05mmとし、連結部の接合幅は2mmとし、壁部の接合幅は1mmとした。
【0121】
そして、本実施形態では、
図16に示すように、ハウジング340dとノズル板303dとの間に連結部別部材310Pを2枚重ねて配置し、ノズル位置決め孔307d、連結部別部材310Pの位置決め孔316およびハウジング位置決め孔308といった位置決め部により位置決めを行う。そして、当該位置決めを行い、ハウジング340dと、2枚の連結部別部材310Pと、ノズル板303dとを拡散接合を行うようにする。このようにして、本実施例は、流路311dを形成する連結部310dと、壁部314dと、そして外部と連通する孔部である壁部連通部315dとを複数の連結部別部材310Pの積層させることによって形成した。なお、ここでは、連結部別部材310Pを2枚重ねた場合を説明したが、本発明は1枚の場合でも、あるいは3枚以上の場合でも適用することは可能である。このように、本実施例は、いいかえると、比較例に係るハウジングとノズル板とに、拡散接合用の別部材(別体)である連結部別部材を用いて連結部や壁部を形成し、拡散接合でハウジングとノズルとを接合する構成ととらえることもできる。
【0122】
そして、本実施例では、このようにすることで、予めハウジング側あるいはノズル側に、拡散接合用の連結部等を設ける必要がなく、これとは別の連結用部材である連結部別部材310Pを積層する構成にすることにより、複雑な流路を連結部に形成することを可能にすることができる。
【0123】
上記した構成において、ノズル位置決め孔307d、連結部別部材310Pの位置決め孔316およびハウジング位置決め孔308dを介して位置決めを行った上で、ノズル板303dとハウジング340dと複数の連結部別部材310Pとを一体化して、
図4に示すような真空高温炉に入れて、拡散接合を実施した。なお、このときの拡散接合の条件としては、実施例1、2等と同じである。
【0124】
このように作成した液体吐出ヘッドにおいて、ノズル板位置決め孔307dから各々のノズル313dの距離の伸び量は、比較例に係る構成と比べて抑えることができた。また、実施例1や実施例2等と同等の品質を得ることができた。
【0125】
上記のように本実施形態は、液体を吐出する複数のノズル孔313dを有するノズル板303dと、ノズル板303dを支持するハウジング340dと、ノズル板303dとハウジング340dとの間に設けられ、ノズル板303dおよびハウジング340dのそれぞれと拡散接合を含む工程によって接合される拡散接合用部材(連結部別部材)310Pと、を有し、拡散接合用部材310Pは、ノズル板303dおよびハウジング340dに当接することでノズル板303dとハウジング340dとを連結し、ノズル孔313dの配列方向に配置される複数の連結部310dと、連結部310dに形成され、ノズル板303dのノズル孔313dと連通する流路311dと、互いに隣接する連結部310d間に形成された間隙312dと、ノズル板303dおよびハウジング340dに当接することでノズル板303dとハウジング340dとを連結し、ノズル板303dの外縁部を沿うように形成された壁部314dと、を含む。
【0126】
これによって、複雑な流路を連結部に形成することを可能にすることができる。
【0127】
<液体を吐出する装置の実施例の構成について>
次に、液体を吐出する装置の実施例の構成について、図を参照して説明する。なお、以下説明する構成は、上記した実施例に係る構成を適用することが可能である。また、本実施例以降の図で示すX,Y,X方向はこれまでの方向の定義と異なるものとする。
【0128】
図17は、液体を吐出する装置100(液体を吐出する装置の一例)の全体概略構成図である。
図17(a)は液体を吐出する装置の側面図、
図17(b)は同装置の平面図である。液体を吐出する装置100は、対象物の一例である液体付与対象500に対向して設置されている。液体を吐出する装置100は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101及びY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。特に、本実施形態においては、各レール101,102,103は互いに直交する方向に延在する。
【0129】
Y軸レール102は、X軸レール101がY軸方向に移動可能なようにX軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX軸方向に移動可能なようにZ軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1000(吐出ヘッド支持部の一例)がZ軸方向に移動可能なようにキャリッジ1000を保持する。
【0130】
液体を吐出する装置100は、キャリッジ1000をZ軸レール103に沿ってZ軸方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX軸方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、液体を吐出する装置100は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY軸方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、液体を吐出する装置100は、キャリッジ1000に対してヘッド保持体70をZ軸方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0131】
前述した吐出ヘッドは、吐出ヘッド1のノズル13が液体付与対象500に対向するようにヘッド保持体70に取り付けられる。このように構成された液体を吐出する装置100は、キャリッジ1000をX軸、Y軸及びZ軸の方向に動かしながら、ヘッド保持体70に取り付けられた吐出ヘッド1から液体付与対象500に向けて液体の一例であるインクを吐出し、液体付与対象500に描画を行う。
【0132】
次に、液体吐出装置の別の実施例であるインクジェットプリンタ201の構成について、図を参照して、以下に説明する。
【0133】
図18に示されるように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ201は、プリントヘッド202と、X-Yテーブル203と、カメラ204と、制御部209と、駆動部211などを備えている。
【0134】
プリントヘッド202は、被塗装物Mの被塗装面に向けてインク(液体)を吐出するインクジェット方式の液体吐出ヘッドである。なお、ここでいう「インク」には「塗料」も含まれるものとする。プリントヘッド202は、複数の弁型ノズルを備え、インクは各弁型ノズルからプリントヘッド202の吐出面とは垂直な方向に吐出される。すなわち、プリントヘッド202のインクの吐出面は、X-Yテーブル203の移動によって形成されるXY平面と平行であり、各弁型ノズルから吐出されるインクドットはX-Y平面に対して垂直な方向に吐出される。また、各弁型ノズルから吐出されるインクの吐出方向はそれぞれ平行に吐出される。各弁型ノズルは、それぞれ所定の色のインクタンクと連結されている。また、インクタンクが加圧装置によって加圧されていることにより、各弁型ノズルと被塗装物Mのプリント対象面との距離が20cm程度であれば、問題なく各弁型ノズルからインクドットをプリント対象面に吐出することができる。
【0135】
X-Yテーブル203は、プリントヘッド202及びカメラ204を互いに直交するX方向及びY方向に移動させる機構を備えている。具体的に、X-Yテーブル203は、プリントヘッド202及び後述のカメラ204を保持するスライダをX方向に移動させるX軸移動機構205と、X軸移動機構205を2つのアームで保持しつつY方向に移動させるY軸移動機構206とを備えている。また、Y軸移動機構206にはシャフト207が設けられており、このシャフト207をロボットアーム208が保持して駆動することにより、プリントヘッド202を被塗装物Mに対してプリントを行うべき所定位置に自由に配置できる。例えば、被塗装物Mが自動車である場合、ロボットアーム208は、プリントヘッド202を
図19に示されるような自動車の上部あるいは
図20に示されるような 自動車の横位置などに配置できる。なお、ロボットアーム208の動作は、予め制御部209に格納されたプログラムに基づいて制御される。
【0136】
カメラ204は、被塗装物Mのプリント対象面を撮影するデジタルカメラなどの撮像手段である。カメラ204は、X軸移動機構205及びY軸移動機構206によってX方向及びY方向に移動しながら被塗装物Mのプリント対象面の所定の範囲を一定の微小な間隔で撮影する。カメラ204のレンズ及び解像度などの仕様は、プリント対象面の所定の範囲について複数の細分割画像の撮影が可能なように適宜選択される。カメラ204による プリント対象面の複数の細分割画像の撮影は、後述の制御部209によって連続的、かつ、自動的に行われる。
【0137】
制御部209は、カメラ204によって撮影された画像を編集する画像編集ソフトウエアSと予め設定された制御プログラムに基づいてX-Yテーブル203を動作させてプリントヘッド202のプリント動作(インク吐出動作)を制御する。制御部209は、いわゆるマイクロコンピュータによって構成され、各種のプログラム及び撮影済みの画像のデータのほかプリントすべき画像のデータなどを記録保存する記憶装置、プログラムに従って各種の処理を実行する中央処理装置、キーボードやマウスなどの入力装置、必要に応じてDVDプレイヤーなどを備えている。さらに、制御部209は、モニタ210を備えている。モニタ210は、制御部209への入力情報や制御部209による処理結果などを表示する。
【0138】
制御部209は、カメラ204によって撮影された複数の細分割画像データを、画像処理ソフトを用いて画像処理を行い、被塗装物Mの平面でないプリント対象面を平面に投影された合成プリント面として生成する。また、制御部209は、既にプリント対象面にプリントされた画像に対して連続するようにプリントされる描画対象画像を、合成プリント面に重ね、描画対象画像がプリント済み画像の縁端部と連続するように編集を行い、描画対象編集画像を生成する。例えば、
図21(c)に示した描画対象画像であるプリント画像252bについて、隣接するプリント画像252aとの間に非プリント領域253が形成されないようにプリント画像252bを合成プリント面に整合するように編集することにより、描画対象編集画像を生成する。そして、生成された描画対象編集画像に基づいて プリントヘッド202からプリント対象面にインクが吐出されることにより、新しい画像がプリント済みの画像との間に隙間を生じることなくプリントされる。なお、カメラ204による複数の細分割画像の撮影及びプリントヘッド202の各ノズルからのインクの吐出によるプリントの動作は、制御部209によって動作制御された駆動部211によって行われる。
【0139】
図21(a)においては、球状物の液体付与対象251の球面状の表面にインクジェットノズルによって二次元の四角形を形成するような場合に、ノズルヘッド250に搭載された各インクジェットノズルから噴射されるインクの吐出方向が図示されている。
図21(b)においては、ノズルヘッド250に搭載された各インクジェットノズルから噴射されるインクはノズルヘッド250に対して垂直方向に吐出されるので、液体付与対象251の表面にプリントされたプリント画像252aが、周辺が歪んだ形状の四角形となることが図示されている。
【0140】
<電極の製造装置>
本発明に係る実施形態は、電極および電気化学素子の製造装置を含む。以下、電極の製造装置について説明する。
図22は、本実施形態に係る電極の製造装置の一例を示す模式図である。電極の製造装置は、上記した液体を吐出する装置を用いて液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を有する電極を製造する装置である。
【0141】
<電極材料を有する層形成手段、電極材料を有する層形成工程>
本実施形態における吐出手段は、上記した液体を吐出する装置である。前記吐出により、対象物上に液体組成物を付与して、液体組成物層を形成することができる。前記対象物(以下、「吐出対象物」と称することがある。)としては、電極材料を有する層を形成する対象であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電極基体(集電体)や活物質層、固体電極材料を有する層などが挙げられる。また、吐出手段及び吐出工程は、吐出対象物に対して電極材料を有する層を形成することが可能であれば、直接液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成であってもよく、間接的に液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成であってもよい。
【0142】
<その他の構成、その他の工程>
電極合材層の製造装置におけるその他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段などが挙げられる。電極合材層の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱工程などが挙げられる。
【0143】
<加熱手段、加熱工程>
前記加熱手段は、前記吐出手段により吐出された液体組成物を加熱する手段である。加熱工程は、前記吐出工程で吐出された液体組成物を加熱する工程である。前記加熱により、前記液体組成物層を乾燥させることができる。
【0144】
<直接液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成>
ここで、電極の製造装置の一例として、電極基体(集電体)上に活物質を含む電極合材層を形成する電極製造装置を説明する。電極製造装置は、吐出対象物を有する印刷基材704上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する工程を含む吐出工程部110と、液体組成物層を加熱して電極合材層を得る加熱工程を含む加熱工程部130を備える。電極製造装置は、印刷基材704を搬送する搬送部705を備え、搬送部705は、吐出工程部110、加熱工程部130の順に印刷基材704をあらかじめ設定された速度で搬送する。前記活物質層などの吐出対象物を有する印刷基材704の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。吐出工程部110は、印刷基材704上に液体組成物を付与する付与工程を実現する本発明の印刷装置281aと、液体組成物を収容する収容容器281bと、収容容器281bに貯留された液体組成物を印刷装置281aに供給する供給チューブ281cを備える。
【0145】
収容容器281bは液体組成物707を収容し、吐出工程部110は、印刷装置281aから液体組成物707を吐出して、印刷基材704上に液体組成物707を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器281bは、電極合材層の製造装置と一体化した構成であってもよいが、電極合材層の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、電極合材層の製造装置と一体化した収容容器や電極合材層の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0146】
収容容器281bや供給チューブ281cは、液体組成物707を安定して貯蔵及び供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0147】
加熱工程部130は、
図22に示すように、加熱装置703を有し、液体組成物層に残存する溶媒を、加熱装置703により加熱して乾燥させて除去する溶媒除去工程を含む。これにより電極合材層を形成することができる。加熱工程部130は、溶媒除去工程を減圧下で実施してもよい。
【0148】
加熱装置703としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱、IRヒータ、温風ヒータなどが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。また、加熱温度や時間に関しては、液体組成物707に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0149】
図23は、本実施形態に係る電極製造装置(液体を吐出する装置)の他の一例を示す模式図である。液体を吐出する装置100は、ポンプ810と、制御バルブ811、812を制御することにより、液体組成物が吐出ヘッド1、タンク807、チューブ808を循環することが可能である。また、液体を吐出する装置100は、外部タンク813が設けられており、タンク807内の液体組成物が減少した際に、ポンプ810と、制御バルブ811、812、814を制御することにより、外部タンク813からタンク807に液体組成物を供給することも可能である。本実施形態に係る電極製造装置を用いると、吐出対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。前記電極合材層は、例えば、電気化学素子の構成の一部として、好適に用いることができる。前記電気化学素子における前記電極合材層以外の構成としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、正極、負極、セパレータなどが挙げられる。
【0150】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0151】
[第1態様]
第1態様は、液体(例えば、インク)を吐出する複数のノズル孔(例えば、ノズル313、313a、313b、313c)を有するノズル板(例えば、ノズル板303、303a、303b、303c)と、当該ノズル板を支持し、拡散接合を含む工程によって前記ノズル板と接合されたハウジング(例えば、ハウジング340、340a、340b、340c)を有する液体吐出ヘッド(例えば、吐出ヘッド1)であって、前記ノズル板あるいは前記ハウジングのいずれかに形成され、当接することで前記ノズル板と前記ハウジングとを連結し、前記ノズル孔の配列方向に配置される複数の連結部(例えば、連結部310、310a、310b、310c)と、当該連結部に形成され、前記ノズル板のノズル孔と連通する流路(流路311、311a、311b、311c)と、互いに隣接する前記連結部間に形成された間隙(間隙312、312a、312b、312c)と、を有することを特徴としている。
【0152】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記複数の連結部を前記ハウジングに形成したことを特徴としている。
【0153】
[第3態様]
第3態様は、第1態様において、前記複数の連結部を前記ノズル板に形成したことを特徴としている。
【0154】
[第4態様]
第4態様は、第1態様乃至第3態様のいずれかにおいて、前記ノズル板の外縁部あるいは前記ハウジングの外縁部のいずれかに形成され、当接することで前記ノズル板と前記ハウジングとを連結する壁部(例えば、壁部314、314a、314b、314c)を有することを特徴としている。
【0155】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記連結部における前記ハウジングから前記ノズル板までの距離を高さとしたとき、前記連結部と、前記連結部と同じ高さの前記壁部で接合支持され、前記壁部の側面に前記ハウジングの外部と連通する孔部は少なくとも1つ以上設けられていることを特徴としている。
【0156】
[第6態様]
第6態様は、第1態様乃至第5態様のいずれかにおいて、前記連結部は前記流路を囲む部位である接合部を有し、前記接合部の幅(例えば、接合幅)は、少なくとも前記ノズル板に付与する圧力が必要する最小板厚以上を有することを特徴としている。
【0157】
[第7態様]
第7態様は、第1態様乃至第6態様のいずれかにおいて、前記ノズル板および前記ハウジングは、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系ステンレス合金のいずれかによって形成されていることを特徴としている。
【0158】
[第8態様]
第8態様は、第7態様において、前記ノズル板と前記ハウジングとは同じ材質で形成されていることを特徴としている。
【0159】
[第9態様]
第9態様は、第1態様乃至第8態様のいずれかにおいて、前記連結部における前記ハウジングから前記ノズル板までの距離を前記連結部の高さとしたとき、前記複数の連結部の高さは同じであることを特徴としている。
【0160】
[第10態様]
第10態様は、液体を吐出する複数のノズル孔(例えば、ノズル313d)を有するノズル板(例えば、ノズル板303d)と、当該ノズル板を支持するハウジング(例えば、ハウジング340d)と、前記ノズル板と前記ハウジングとの間に設けられ、前記ノズル板および前記ハウジングのそれぞれと拡散接合を含む工程によって接合される拡散接合用部材(例えば、連結部別部材310P)と、を有し、前記拡散接合用部材は、前記ノズル板および前記ハウジングに当接することで前記ノズル板と前記ハウジングとを連結し、前記ノズル孔の配列方向に配置される複数の連結部(例えば、連結部310d)と、当該連結部に形成され、前記ノズル板のノズル孔と連通する流路(例えば、流路311d)と、互いに隣接する前記連結部間に形成された間隙(例えば、312d)と、前記ノズル板および前記ハウジングに当接することで前記ノズル板と前記ハウジングとを連結し、前記ノズル板の外縁部を沿うように形成された壁部(例えば、壁部314d)と、を含むことを特徴としている。
【0161】
[第11態様]
第11態様は、第1態様乃至第10態様のいずれかにおいて、前記ノズル板と離接するように移動することで前記ノズル孔を開閉する弁体(例えば、ニードル弁5)と、弁体を移動させる移動手段(例えば、圧電素子7)を有することを特徴としている。
【0162】
[第12態様]
第12態様は、第11態様において、前記弁体の先端部が弾性体であることを特徴としている。
【0163】
[第13態様]
第13態様は、第1態様乃至第12態様のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを有する液体を吐出する装置(例えば、液体を吐出する装置100)である。
【0164】
[第14態様]
第14態様は、液体を吐出する複数のノズル孔を有するノズル板と、当該ノズル板を支持するハウジングとを有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、当接することで前記ノズル板と前記ハウジングとを連結し、前記ノズル孔の配列方向に配置される複数の連結部を前記ノズル板あるいは前記ハウジングのいずれかに形成する工程と、前記ノズル板のノズル孔と連通する流路を前記連結部に形成する工程と、互いに隣接する前記連結部間に間隙を形成する工程と、前記ノズル板と前記ハウジングとが前記連結部とを介して拡散接合によって接合する工程と、を含むことを特徴としている。
【符号の説明】
【0165】
1 吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)
2 先端挿入部
3 ノズル板
4 Oリング
5 ニードル弁
6 圧電素子保持部材
7 圧電素子(アクチュエータ)
8 圧電素子固定部材
9 シール部材
10 基準点(固定基準点)
11 液室
12 圧電素子収容空間
13 ノズル
14 締結穴
15 キャリッジ取付面
100 液体を吐出する装置
140 ハウジング(筐体)
303、303a、303b、303c、303d、2303、2303a、2303b ノズル板
305、305a、305b、305c、305d、1305、2305 InLet
306、306a、306b、306c、306d、1306、2306 OutLet
307、307a、1307 ノズル位置決め孔
308、308a、308b、308c、308d、1308 ハウジング位置決め孔
309、1309 接合面(ハウジング)
309b、309c 連結部形成面
310、310a、310b、310c、310d 連結部
310P 連結部別部材(拡散接合用部材)
311、311a、311b、311c、311d、1311 流路(連結部用流路)
312、312a、312b、312c、312d 間隙
313、313a、313b、313c、313d、1313 ノズル
314、314a、314b、314c、314d 壁部(隔壁)
315、315a、315b、315b、315c、315d 壁部連通部
316 位置決め孔(別部材位置決め孔)
340、340a、340b、340c、340d、1340、2340 ハウジング
平面加圧治具 600
共通流路 2304
【先行技術文献】
【特許文献】
【0166】