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  • 特開-樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134767
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20240927BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L29/04 S
C08L23/06
B32B27/00 D
B32B27/28 102
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045121
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川戸 大輔
(72)【発明者】
【氏名】菊地 元三
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK69B
4F100AK69G
4F100AL05B
4F100AL05G
4F100AT00
4F100BA03
4F100CB00B
4F100CB00G
4F100GB15
4F100JD02
4F100JL11
4J002BB033
4J002BB053
4J002BB063
4J002BB22W
4J002BB22X
4J002BE03X
4J002GF00
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】 エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物とエチレン・ビニルアルコール共重合体を含み、ガスバリア性、接着性、フィルム外観、成形性、機械物性に優れた樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 酢酸ビニル含量が0.3~20mol%、ビニルアルコール含量が1~20mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)のマトリックス中にエチレン・ビニルアルコール共重合体(B)がドメインとして存在し、(B)の形態の50%以上が層状ドメイン又は層状ドメインの一部が三次元的に連結した構造を有しており、当該ドメインのアスペクト比が5以上であることを特徴とする樹脂組成物。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ビニル含量が0.3~20mol%、ビニルアルコール含量が1~20mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)のマトリックス中に、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)がドメインとして存在し、(B)の形態の50%以上が層状ドメイン、又は層状ドメインの一部が三次元的に連結した構造を有しており、当該ドメインのアスペクト比が5以上である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)とエチレン・ビニルアルコール共重合体(B)の重量比(A/B)が80/20~50/50である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)が、下記成分(a1)~(a3)及び当該(a1)~(a3)の架橋体を含む混練物の加水分解物であり、JIS K6922-1に基づき測定されたメルトマスフローレートが0.3~5.0g/分である、請求項1に記載の樹脂組成物。
(a1)酢酸ビニル含量が20重量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a2)酢酸ビニル含量が45重量%以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a3)相溶化剤
【請求項4】
前記エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)のエチレン含量が27~48mol%であり、JIS K6922-1に基づき190℃で測定されたメルトマスフローレートが1.5~30g/分である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
キャピラリーレオメータを用いて、200℃、オリフィス長さL/オリフィス直径D=20/1の条件下で、前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)と前記エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)のせん断速度と見かけのせん断粘度を測定した際の、せん断速度100~150sec-1における粘度比(A/B)が0.25~2.0である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)と前記エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)のJIS K6922-1に基づき測定されたメルトマスフローレート比(A/B)が0.01~3.5である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)とエチレン・ビニルアルコール共重合体(B)の合計は100重量部に対して、ポリエチレン(C)を1~60重量部含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7に記載の樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層、及び当該層に隣接するポリオレフィン樹脂層を少なくとも1層有する積層体であって、ポリオレフィン樹脂のメルトマスフローレートが0.1~3.0g/10分である積層体。
【請求項9】
請求項1~7に記載の樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層、及び当該層に隣接する両面にポリオレフィン樹脂層を有する積層体であって、ポリオレフィン樹脂のメルトマスフローレートが0.1~3.0g/10分である積層体。
【請求項10】
前記ポリオレフィン樹脂が、エチレン系重合体又はアイオノマー樹脂である、請求項8に記載の積層体。
【請求項11】
前記ポリオレフィン樹脂が、エチレン系重合体又はアイオノマー樹脂である、請求項9に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有する樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料、医薬品などの熱可塑性樹脂を素材とした包装材料は、内容物劣化の防止を目的として、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性などに優れるエチレン・ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHという場合がある)が、種々の用途で使用されている。しかしながらEVOHは親水性であり、吸湿によりガスバリア性等の低下が起こることから一般的にポリエチレンやポリプロピレンなどの耐水性に優れたポリオレフィン等との積層体の中間層に使用されることが知られている。
【0003】
EVOHは分子内に多くの水酸基を有するため、ポリエチレンやポリプロピレンなどの極性基をもたないポリオレフィンとの親和性は極めて低く、両者は一般に接着しない。そのため、ポリオレフィンと接着困難なEVOHに対し、不飽和カルボン酸またはその誘導体によってグラフトされたグラフト変性エチレン系樹脂組成物(例えば、特許文献1~2参照)やエチレン・酢酸ビニル共重合体加水分解物(例えば、特許文献3参照)を接着剤として、ポリオレフィン樹脂層とEVOH層の間に用いる手法が提案されている。
【0004】
しかし、前者の不飽和カルボン酸またはその誘導体によってグラフトされたグラフト変性エチレン系樹脂組成物は優れた接着性を備えているが、EVOHとの反応性が高いため、繰り返し混練したり、EVOHに添加すると、押出機やダイ内に滞留した樹脂が粘度上昇するとともに着色してゲル化し、その結果として製品中に多数のフィッシュアイやゲル状物質が混在することとなり、商品価値が低下する問題がある。また、後者のエチレン・酢酸ビニル共重合体加水分解物は繰り返し混練やEVOHに添加しても着色やゲル化は発生せず、エチレン・酢酸ビニル共重合体加水分解物に粘着性樹脂を加えることでEVOHに対する接着性が向上するものの、その効果は小さく、運搬中や使用中に小さい衝撃や摩擦を受けると剥離することが多く、十分な接着性が得られなかった。
【0005】
また、EVOHを含む包装材料は、少なくともポリオレフィン樹脂層/接着剤層/EVOH層/接着剤層/ポリオレフィン樹脂層を含む3種5層以上、或いは、ポリオレフィン樹脂層/接着剤層/EVOH層/接着剤層/リグラインド層/ポリオレフィン樹脂層を含む4種6層以上の構成とする必要がある。しかしながら、このような5層以上の多層積層体を製造するための多層成形機は、一般的に設備投資コストが非常に高い問題がある。
【0006】
そのため汎用成形機で製造可能な3層構成で製造可能な積層体の製造が従来より望まれている。例えば、特許文献4、5、6では、3層構成で製造可能とする手法として、熱可塑性樹脂、その熱可塑性樹脂よりもビニルエステル含量が5mol%以上多い、エチレン・ビニルエステル共重合体、並びにその熱可塑性樹脂とエチレン・ビニルエステル共重合体がグラフトされた変性体を含む溶融混練物の加水分解物を用いる手法があり、EVOH層に当該加水分解物をブレンドすることによりポリオレフィン樹脂層との接着性を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-161881号公報
【特許文献2】特開2000-248128号公報
【特許文献3】特開2001-200124号公報
【特許文献4】特開2018-154701号公報
【特許文献5】特開2018ー145401号広報
【特許文献6】特開2021ー154494号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献4,5に記載の樹脂組成物を用いて、実際のフィルム成形やダイレクトブロー成型等で作製した積層体を評価したところ、十分な接着強度やガスバリア性が得られない問題が発生した。また特許文献6に記載の方法は、成形時にバブルが揺れる等の成形不良トラブル、フィルムスジなどでフィルム外観が損なわれるといった問題も生じた。本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、ポリオレフィン樹脂層との接着性に優れ、且つガスバリア性、フィルム外観、成形性などを兼ね備えた樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物にEVOHを所定量配合することにより、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物のポリオレフィンに対する接着性を損なうことなく、EVOHの高いガスバリア性能を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の各態様は、以下の[1]~[]である。
[1] 酢酸ビニル含量が0.3~20mol%、ビニルアルコール含量が1~20mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)のマトリックス中に、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)がドメインとして存在し、(B)の形態の50%以上が層状ドメイン、又は層状ドメインの一部が三次元的に連結した構造を有しており、当該ドメインのアスペクト比が5以上である、樹脂組成物。
[2] 前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)とエチレン・ビニルアルコール共重合体(B)の重量比(A/B)が80/20~50/50である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)が、下記成分(a1)~(a3)及び当該(a1)~(a3)の架橋体を含む混練物の加水分解物であり、JIS K6922-1に基づき測定されたメルトマスフローレートが0.3~5.0g/分である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
(a1)酢酸ビニル含量が20重量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a2)酢酸ビニル含量が45重量%以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a3)相溶化剤
[4] 前記エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)のエチレン含量が27~48mol%であり、JIS K6922-1に基づき190℃で測定されたメルトマスフローレートが1.5~30g/分である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] キャピラリーレオメータを用いて、200℃、オリフィス長さL/オリフィス直径D=20/1の条件下で、前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)と前記エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)のせん断速度と見かけのせん断粘度を測定した際の、せん断速度100~150sec-1における粘度比(A/B)が0.25~2.0である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)と前記エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)のJIS K6922-1に基づき測定されたメルトマスフローレート比(A/B)が0.01~3.5である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 前記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)とエチレン・ビニルアルコール共重合体(B)の合計は100重量部に対して、ポリエチレン(C)を1~60重量部含む、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層、及び当該層に隣接するポリオレフィン樹脂層を少なくとも1層有する積層体であって、ポリオレフィン樹脂のメルトマスフローレートが0.1~3.0g/10分である積層体。
[9] [1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層、及び当該層に隣接する両面にポリオレフィン樹脂層を有する積層体であって、ポリオレフィン樹脂のメルトマスフローレートが0.1~3.0g/10分である積層体。
[10] 前記ポリオレフィン樹脂が、エチレン系重合体又はアイオノマー樹脂である、[8]に記載の積層体。
[11] 前記ポリオレフィン樹脂が、エチレン系重合体又はアイオノマー樹脂である、[9]に記載の積層体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物はフィルムにした場合に、ガスバリア性、接着性、フィルム外観、成形性、機械物性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る積層体の斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の一態様である樹脂組成物は、酢酸ビニル含量が0.3~20mol%、ビニルアルコール含量が1~20mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)のマトリックス中に、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B)がドメインとして存在し、(B)の形態の50%以上が層状ドメイン、又は層状ドメインの一部が三次元的に連結した構造を有しており、当該ドメインのアスペクト比が5以上である。
【0015】
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)(以下、(A)、(A)成分、成分(A)と略記することがある)は、主としてエチレン単位と酢酸ビニル単位とビニルアルコール単位とからなる三元共重合体である。
【0016】
(A)成分は、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体を構成する酢酸ビニルの一部を加水分解(ケン化)することにより得ることができる。エチレン・酢酸ビニル共重合体の加水分解方法は特に限定されるものではなく、例えば、公知の方法に従って、エチレン・酢酸ビニル共重合体を製造し、次いで、これを加水分解することによって(A)成分を製造することができる。エチレン・酢酸ビニル共重合体の加水分解には、酸触媒又はアルカリ触媒を使用することができ、エチレン・酢酸ビニル共重合体のペレットをアルカリ中で直接加水分解処理する方法、二軸押出機内でエチレン・酢酸ビニル共重合体をケン化反応押出する方法などを例示することができる。
【0017】
(A)成分のケン化度は、ケン化前のエチレン・酢酸ビニル共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)の酢酸ビニル含量を用いて下式より算出することができる。
式:ケン化度(mol%)=100×{(ケン化前のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量)-(エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル含量)}/(ケン化前のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量)
(A)成分のケン化度は、10mol%以上あれば、EVOHとの相溶性が良好であり、さらに好ましくは20mol%、最も好ましくは30mol%以上である。
【0018】
(A)成分は、ポリオレフィンとの接着性、EVOHとの相溶性を両立させるために、酢酸ビニル含量が0.3~20mol%、ビニルアルコール含量が1~20mol%であり、好ましくは酢酸ビニル含量が0.5~18mol%、ビニルアルコール含量が2~20mol%である。なかでも酢酸ビニル含量が1.0~15mol%、ビニルアルコール含量が3~20mol%、であることが最も好ましい。なお、エチレン含量と酢酸ビニル含量とビニルアルコ―ル含量の合計値は100mol%である。ビニルアルコール含量が1.0mol%未満の場合はEVOHに対する相溶性が低下し、樹脂組成物の機械物性が大幅に損なわれ、酢酸ビニル含量及び/又はビニルアルコール含量が20mol%を超える場合はポリオレフィンに対する接着性が低下するため好ましくない。(A)成分は、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いても構わない。
【0019】
(A)成分は、成形加工性の観点より、JIS K6924-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したメルトマスフローレート(以下、MFRと略記することがある)が0.3~5.0g/10分が好ましく、最も好ましくは0.5~5.0g/10分である。
【0020】
また(A)成分は、下記成分(a1)~(a3)及び当該(a1)~(a3)の架橋体を含む混練物の加水分解物であることが好ましい。
(a1)酢酸ビニル含量が20重量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a2)酢酸ビニル含量が45重量%以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体
(a3)相溶化剤
上記成分(a1)酢酸ビニル含量が20重量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレン単位と酢酸ビニル単位を有する共重合体である。成分(a1)の製造方法は、エチレン・酢酸ビニル共重合体の製造が可能であれば特に制限されるものではないが、公知の高圧ラジカル重合法やイオン重合法を例示することができる。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、高圧ラジカル重合法により製造されたエチレン・酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で市販されている。
【0021】
上記成分(a1)は、成形加工安定性及びEVOHとの分散性の観点より、JIS K6924-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したメルトマスフローレートが0.1~100g/10分が好ましく、より好ましくは0.1~10g/10分であり、最も好ましくは0.5~5.0g/10分である。
【0022】
上記成分(a2)エチレン・酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含量が45重量%以上であり、前記(a1)との相溶性の観点から、酢酸ビニル含量が45~85重量%の範囲であることが好ましく、最も好ましくは酢酸ビニル含量が48~80重量%の範囲である。
【0023】
成分(a2)におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体の製造方法は限定されないが、高圧法ラジカル重合、溶液重合やラテックス重合等の公知の製造方法が挙げられ、ARLANXEO社よりLEVAPRENやLEVAMELTの商品名で各々市販されている。
【0024】
上記成分(a3)を構成する相溶化剤は、(a1)と(a2)の相溶性を向上できるものであれば特に限定されず、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられ、(a1)と(a2)の相溶性やコストなどを考慮して適宜選択される。なかでも、酢酸ビニル含量が21~44重量%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体を用いることがコストの観点で好ましく、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよいが、酢酸ビニル含量の異なるエチレン・酢酸ビニル共重合体を2種以上用いた方が、各成分の酢酸ビニル含量差が小さくなるため、(a1)と(a2)の相溶性を向上させることができる。このようなエチレン・酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で、ARLANXEO社よりLEVAPRENやLEVAMELTの商品名で各々市販されている。
【0025】
(A)成分は、下記成分(a1)~(a3)及び当該(a1)~(a3)の架橋体を含む混練物は、成分(a1)~(a3)を含む組成物を架橋することにより得られる。成分(a1)~(a3)を含む組成物の架橋方法としては、架橋変性できるものであれば特に限定されず、反応性などを考慮して適宜選択されるが、生産性の観点から上記成分(a1)~(a3)に架橋剤(a4)を添加するのが好ましく、架橋剤(a4)としては有機過酸化物を使用することが好ましい。
【0026】
架橋剤(a4)の有機過酸化物としては有機過酸化物であれば特に限定されず、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1ージ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシドなどが挙げることができる。これらは単独で或いは2種類以上を混合して使用することができる。
【0027】
なかでも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1ージ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが反応性の観点から好ましく用いられる。また、前記架橋剤と共に、必要に応じて、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの架橋助剤を用いてもよい。
架橋剤(a4)の配合量は、成分(a1)~(a3)の合計100重量部に対して、0.005~1重量部の範囲であることが好ましい。これにより本発明のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)のポリオレフィンに対する接着性、EVOHとの相溶性を向上させることができる。
成分(a1)~(a3)及び(a1)~(a3)の架橋体を含む混練物の加水分解物である成分(A)の製造プロセスの具体例は次のとおりである。
【0028】
成分(a1)~(a3)及び架橋剤(a4)のドライブレンド物を、押出機のホッパーに投入する。成分(a1)~(a3)及び架橋剤(a4)の少なくとも一部をサイドフィーダー等から添加してもよい。さらに、二台以上の押出機を使用し、段階的に順次溶融混練してもよい。また事前に混合する際は、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどを使用してもよい。
【0029】
また、成分(A)は、必要に応じて架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤、臭気補足剤等、通常熱可塑性樹脂に使用される添加剤を配合していても構わない。
【0030】
上記EVOH(B)(以下、(B)、(B)成分、成分(B)と略記することがある)は、主としてエチレン単位とビニルアルコール単位からなる共重合体である。(B)成分のエチレン含有率としては、特に限定されるものではないが、製膜安定性とガスバリア性の観点から、27~48mol%であることが好ましい。また、EVOHのケン化度は96mol%以上であることが好ましい。EVOH中のエチレン含有率およびケン化度を上記範囲に保つことにより、良好なガスバリア性を維持できる。またEVOHには、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、少量であれば他の構成単位を有していてもよく、(B)成分は単独で或いは2種類以上を混合して使用することができる。このようなEVOHとして、株式会社クラレからエバールの商品名で、三菱ケミカル株式会社よりソアノールの商品名で市販されている。
【0031】
(B)成分のMFR(190℃、2160g荷重下で測定した値)は、高ガスバリア性と成形加工安定性の観点から、1.5~30g/10分であることが好ましく、最も好ましくは1.5~20g/10分である。
【0032】
本発明の一態様である樹脂組成物は、前述した成分(A)と成分(B)を含むものであり、接着性を維持する観点から成分(A)がマトリクス(海成分)、成分(B)ドメイン(島成分)が形成される必要がある。そのため、成分(A)と成分(B)の重量比(A/B)は80/20~50/50であることが好ましく、さらに好ましく75/25~50/50、最も好ましくは70/30~50/50である。
【0033】
また、高いガスバリア性を発現させるには、樹脂の流れ方向(MD方向)に対して垂直方向にカットして観察した場合において、マトリクスを形成した成分(A)に成分(B)が層状の形態で分散したドメイン、或いは層状のドメインの一部が三次元的に連結した構造を有している必要がある。また、ガスバリア性維持の観点から、成分(B)の50%以上が層状ドメイン、或いは層状のドメインの一部が三次元的に連結した構造である必要がある。このような分散構造を形成させるには、成分(A)と成分(B)が適切な溶融粘度比、MFR比の範囲内であることが好ましい。
【0034】
具体的な溶融粘度比は、キャピラリーレオメータを用いて、200℃、オリフィス長さL/オリフィス直径D=20/1の条件下で、前記ガスバリア樹脂層を構成する成分(A)と成分(B)のせん断速度と見かけのせん断粘度を測定した際の、成分(A)と成分(B)の溶融粘度比(A/B)は、0.25~2.0であることが好ましく、更に好ましくは0.3~1.8である。
【0035】
MFR比は、JIS K6922-1に基づき測定されたメルトマスフローレート比(A/B)が0.01~3.5であることが好ましく、更に好ましくはが0.1~2.5である。
【0036】
またマトリクスを形成した成分(A)内に形成する成分(B)由来の層状ドメインのアスペクト比(長径/短径)は5以上であり、より好ましくは10以上であり、最も好ましくは20以上である。アスペクト比が5未満の場合はガスバリア性が不十分であり好ましくない。また成分(B)の層状ドメインの短径は、フィルム外観維持の観点から、10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以下であり、最も好ましくは2.5μm以下である。
【0037】
また上記樹脂組成物は、成分(B)が層状の形態で分散したドメイン、或いは成分(B)のドメインが三次元的に連結した構造を有する範囲において、成分(A)、成分(B)以外の成分(C)が含まれていても構わない。例えば成分(C)として、ポリエチレンを含んでいても良い。ポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体が1種単独又は2種以上を含んでいてもよい。成分(C)の配合量としては、機械物性維持の観点より成分(A)と成分(B)の樹脂組成物((A)と(B)の合計が100重量部)に対して、1~60重量部の範囲で含んでいても問題ない((A)、(B)、(C)の合計が101~160重量部)。但し、成分(B)の配合割合が全体の20%を下回ると、成分(B)が層状の形態で分散せずガスバリア性が発現しない場合があるため、(C)の配合量が多い場合は、(B)の配合割合が20%以上であることが好ましい。
【0038】
また、成分(C)のMFR(190℃、2160g荷重下で測定した値)は、成分(B)を層状に分散させる必要があるため、0.01~20g/10分であることが好ましく、更に好ましくは0.1~10g/10分である。
【0039】
上記樹脂組成物((A)~(B)成分、又は(A)~(C)成分)の溶融混練の方法は、各成分を均一に分散しうる溶融混練装置であれば特に制限はなく、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダ-、回転ロール、ラボプラストミルなどの溶融混練装置が挙げられる。溶融温度は180~260℃程度が好ましい。
なお、当該樹脂組成物((A)~(B)成分、又は(A)~(C)成分)の混練方法は必ずしも溶融混練である必要はなく、単純なドライブレンド物でも構わない。ドライブレンドの方法としては、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどが例示される。
【0040】
また、上記樹脂組成物は、必要に応じて架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤、臭気補足剤等、通常熱可塑性樹脂に使用される添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0041】
本発明の一態様である積層体は、上記樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層、及び当該層に隣接するポリオレフィン樹脂層を少なくとも1層、又は当該層に隣接する両面に有する。
【0042】
上記樹脂組成物はガスバリア性に優れていることから、当該樹脂組成物を積層体のガスバリア樹脂層とすることが可能である。例えば、当該樹脂組成物からなるガスバリア樹脂層に必要に応じてポリオレフィン樹脂層を、少なくとも一層、或いはガスバリア樹脂層の両面にポリオレフィン樹脂層を配置しても構わない。
【0043】
ポリオレフィン樹脂層を構成するポリオレフィンは、成分(A)と良好な接着性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体、アイオノマー樹脂が挙げられ、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いることが好ましい。アイオノマー樹脂は、エチレン・メタクリル酸共重合体を亜鉛やナトリウム等の金属イオンで架橋させたものが好ましいが、詳細な構造は特に限定されない。ポリオレフィン樹脂層は、必要なヒートシール強度、水蒸気バリア性、機械物性、二次加工性に応じて適宜選択することができる。
【0044】
ポリオレフィン樹脂のJIS K6922-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したMFRは成形加工性の観点から、0.1~3.0g/10分であることが好ましく、更に好ましくは0.2~2.5g/10分である。なお、ポリオレフィン樹脂のMFRが3.0g/10分を超える場合はガスバリア樹脂層との溶融粘度比が一致せず不安定流動化が発生することがあり、積層体の外観が悪化する。ポリオレフィン樹脂のMFRが0.1g/10分未満の場合は生産性が低下することがある。
【0045】
また、ポリオレフィン樹脂は、必要に応じて架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤、臭気補足剤等、通常熱可塑性樹脂に使用される添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。また、補強、増量、着色などの目的で、必要に応じて無機充填剤や染顔料などを含有することができる。無機充填剤や染顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、合成珪素、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
【0046】
積層体は、公知の方法を用いて作製することができ、例えば共押出ブロー成形、共押出シート成形、共押出キャスト成形、共押出インフレーション成形、共押出ラミネート成形、共射出成形などの各種共押出成形などの任意の方法が挙げられ、シート状、フィルム状、パイプ状、ブロック状その他任意の形状に成形することができる。また、他の素材との積層構造を採用することによって、積層体に、ガスバリア性、水蒸気バリア性、機械物性、耐油性、耐候性など、他の素材の有する特性を付与することが可能である。
【0047】
上記樹脂組成物をガスバリア樹脂層とした積層体は、層数に制限のある成形機にも対応することが可能であり、高いガスバリア性が要求される食品、飲料、医薬品、農業、化粧品用途にとどまらず、臭気や香料成分を外部に出したくない多種多様な用途に使用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 樹脂の流れ方向
2 垂直方向
3 観察方向
4 ガスバリア樹脂層
5 ポリオレフィン樹脂層
A エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物
B エチレン・ビニルアルコール共重合体
【実施例0049】
以下、本発明を構成する樹脂組成物の効果を明確にするために実施した実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明の樹脂組成物は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
<ケン化度>
実施例より得られたエチレン・酢酸ビニル共重合体、又はエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)を用いてJIS K7192(1999年)に準拠して酢酸ビニル含量を測定し、下記計算式に従いケン化度(mol%)を求めた。
ケン化度(mol%)=100×{(ケン化前のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量)-(エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル含量)}/(ケン化前のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量)
<MFR>
MFRは、JIS K6922-1(1997年)、JIS K6924-2(1997年)若しくはISO1183-3に準拠して測定した。
<積層体の作製>
32/25/25mmφのスクリューを有した3層キャスト成形機((株)プラスチック工学研究所製)の中間層を形成する押出機(25mmφ)にガスバリア樹脂層を構成する樹脂組成物を供給し、内層及び外層を形成する2台の押出機(32mmφ及び25mmφ)にポリオレフィン樹脂層を構成するポリオレフィンを供給し、全層を220℃で押出し、引取速度10m/分で引取り、ポリオレフィン樹脂層/ガスバリア樹脂層/ポリオレフィン樹脂層=20μm/15μm/20μmとなる厚み55μmの積層体(2種3層フィルム)を得た。得られた2種3層フィルムを用いて、酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価した。
なお、上記/は隣接していることを意味する。
<アスペクト比>
得られた積層体(2種3層フィルム)を急速硬化タイプのエポキシ樹脂にて包埋し、切削用ブロックを調製した。各ブロックをクライオミクロトーム(ー50℃)により、断面を調製した。断面の調製方向は、樹脂の流れ方向(MD方向)に対して垂直方向とした。続いて、調製面にRuO染色を一晩施した後、再度、断面を調製した。最後に調製面にオスミウムコートを施した後、SEM(FE-SEM JSM-7100F、日本電子(株)製)を用いて観察した。観察された成分(B)のドメインの短径と長径よりアスペクト比を計算した。なお、成分(B)がドメインとして観測されないものは×と判断した。
<酸素透過度>
酸素透過度は、実施例により得られた2種3層フィルム(厚み55μm)を用い、23℃、湿度65%でJIS K7126-2(2006年)に準拠して測定し、単位はcc/(m2・24h・atm)とした。酸素透過度が50未満で〇、100未満50以上で△、100以上で×と判断した。
<ヒートシール強度>
2種3層フィルムのヒートシール強度は、実施例により得られた2種3層フィルムを横方向(TD方向)に100mm、縦方向(MD方向)に200mmに切り出し、フィルムの内層同士を重ね、ヒートシール試験機TP-701B(テスター産業(株)製)を用いて設定温度130℃、両面加熱、エアー圧力0.2MPa、ヒートシール時間1秒間で幅10mm、長さ300mmのシールバーでヒートシールを行った。この試験片を15mm幅に切り出し、引張試験機テンシロンRTE-1210((株)オリエンテック製)を用いて引張速度300mm/分、T型剥離の条件で剥離試験を行い、ヒートシール強度(N/15mm)を測定した。ヒートシール強度が10以上で〇、10未満5以上で△、5未満で×とした。
<フィルム外観>
2種3層フィルムを目視にて観察し、不安定流動化に伴う外観不良が認められない場合は〇、僅かにスジやムラが生じている場合は△、明確にスジやムラが生じている場合は×とした。
<製造例>
[エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)の製造例]
メルトマスフローレート3g/10分、酢酸ビニル含量15重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン626)(a1-1)を70重量部、メルトマスフローレート5g/10分、酢酸ビニル含量50重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ARLANXEO製、商品名LEVAPREN500)(a2-1)を10重量部、以下に示す相溶剤(a3)を20重量部、及び架橋剤(a4)である有機過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキサ25B)を100ppmの割合でドライブレンドし、溶融樹脂温度190℃で、二軸押出機で溶融混練しペレット状のサンプルを得た。続いて、本サンプルを5重量%の水酸化ナトリウムメタノール溶液中で65℃で加水分解処理を5時間実施し、 ケン化度50mol%、MFR3.0g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を得た。詳細な結果を表1および表2に示す。
(相溶剤(a3)の構成)
下記4種類のエチレン・酢酸ビニル共重合体を等量(1/1/1/1)でドライブレンドしたものを相溶化剤(a3)とした。
・メルトマスフローレート20g/10分、酢酸ビニル含量20重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン633)
・メルトマスフローレート18g/10分、酢酸ビニル含量28重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン710)
・メルトマスフローレート30g/10分、酢酸ビニル含量32重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン750)
・メルトマスフローレート70g/10分、酢酸ビニル含量42重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン760)
[エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A2)の製造例]
(a1-1)を50重量部、(a2-1)を30重量部、架橋剤(a4)を150ppmでドライブレンドし、加水分解処理を7時間実施した以外は(A1)と同様の方法で作製し、ケン化度50mol%、MFR0.5g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A2)を得た。詳細な結果を表1および表2に示す。
[エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A3)の製造例]
(a1-1)を50重量部、メルトマスフローレート5.0g/10分、酢酸ビニル含量80重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ARLANXEO製、商品名LEVAPREN800)(a2-2)をドライブレンドした以外は(A1)と同様の方法で作製し、ケン化度65mol%、MFR1.5g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A3)を得た。詳細な結果を表1および表2に示す。
[エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A4)の製造例]
メルトマスフローレート30g/10分、酢酸ビニル含量15重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(a1-2)を65重量部、(a2-1)を12重量部、(a3)を23重量部とし、1重量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液、反応温度55℃で加水分解を5時間実施した以外は、(A1)と同様の方法で作製し、ケン化度46mol%、MFR14g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A4)を得た。詳細な結果を表1および表2に示す。
[エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A5)の製造例]
(a1-1)を70重量部、(a2-1)を10重量部、(a3)を20重量部でドライブレンドし、1重量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液、反応温度40℃で加水分解を2時間実施した以外は、(A1)と同様の方法で作製し、ケン化度5mol%、MFR3.5g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A5)を得た。詳細な結果を表1および表2に示す。
[エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A6)の製造例]
(a1-1)を20重量部、(a2-2)を60重量部、(a3)を20重量部でドライブレンドした以外は、(A1)と同様の方法で作製し、ケン化度80mol%、MFR2.0g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A6)を得た。詳細な結果を表1および表2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
実施例1
ガスバリア樹脂層を構成する樹脂組成物として、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を70重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体としてメルトマスフローレート8.5、エチレン含量35mol%であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名エバールC109B)(B1)を30重量部ドライブレンドした後、単軸押出機を用いて溶融樹脂温度200℃でメルトブレンドした。
【0053】
ポリオレフィン樹脂層を構成するポリオレフィンとして、メルトマスフローレートが2.0g/10分、密度が905kg/mであるエチレン・1-へキセン共重合体(東ソー(株)製 商品名ニポロンZ、HF213K)を70重量部、メルトマスフローレートが0.3g/10分、密度が920kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン172)を30重量部のドライブレンド品(MFR1.1g/10分)を用いた。
【0054】
前述の3層キャスト成形機を用い、中間層を形成する押出機(25mmφ)にガスバリア樹脂層を構成する樹脂組成物を供給し、内層及び外層を形成する2台の押出機(32mmφ及び25mmφ)にポリオレフィン樹脂層を構成するポリオレフィン樹脂を供給し、220℃で成形し、内層/中間層/外層=20/15/20μmとなる厚み55μmの積層体を得た。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0055】
実施例2
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を50重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を50重量部とした以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0056】
実施例3
メルトマスフローレート1.7g/10分、エチレン含量32mol%であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名エバールF171B)(B2)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0057】
実施例4
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A2)を80重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を20重量部とした以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0058】
実施例5
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A3)を70重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を30重量部とした以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0059】
実施例6
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A4)を50重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B2)を50重量部とした以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0060】
実施例7
ポリオレフィン樹脂層を構成するポリオレフィン樹脂として、メルトマスフローレートが4.0g/10分、密度が905kg/mであるエチレン・1-へキセン共重合体(東ソー(株)製 商品名ニポロンZ、HF310R)を80重量部、メルトマスフローレートが0.3g/10分、密度が920kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン172)を20重量部のドライブレンド品(MFR2.1g/10分)を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0061】
実施例8
ポリオレフィン樹脂層を構成するポリオレフィン樹脂として、メルトマスフローレートが2.0g/10分、密度が905kg/mであるエチレン・1-へキセン共重合体(東ソー(株)製 商品名ニポロンZ、HF213K)を40重量部、メルトマスフローレートが0.3g/10分、密度が920kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン172)を60重量部のドライブレンド品(MFR0.6g/10分)を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価したところ、表3に示す通りだった。
【0062】
実施例9
ポリオレフィン樹脂層を構成するポリオレフィン樹脂として、メルトマスフローレートが4.0g/10分、密度が905kg/mであるエチレン・1-へキセン共重合体(東ソー(株)製 商品名ニポロンZ、HF310R)を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価した結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
実施例10
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を55重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を45重量部、成分(C)としてメルトマスフローレートが4.0g/10分、密度が905kg/mであるエチレン・1-へキセン共重合体(東ソー(株)製 商品名ニポロンZ、HF310R)(C1)を30重量部とした以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価したところ、表4に示す通りだった。
【0065】
実施例11
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を55重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を45重量部、(C1)を50重量部とした以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価したところ、表4に示す通りだった。
【0066】
【表4】
【0067】
比較例1
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を90重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を10重量部とした以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価した結果を表5に示す。本比較例の積層体は酸素透過度に劣っていた。
【0068】
比較例2
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を40重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体(B1)を60重量部とした以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価した結果を表5に示す。本比較例の積層体はヒートシール強度に劣っていた。
【0069】
比較例3
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A5)を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価した結果を表5に示す。本比較例の積層体はヒートシール強度に劣っていた。
【0070】
比較例4
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(A6)を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層体を作製した。得られた積層体の酸素透過度、ヒートシール強度、フィルム外観を評価した結果を表5に示す。本比較例の積層体はヒートシール強度に劣っていた。
【0071】
【表5】
図1