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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134769
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】配管材
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20240927BHJP
   F16L 9/127 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08F10/02
F16L9/127
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045123
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春成 武
(72)【発明者】
【氏名】石原 広崇
【テーマコード(参考)】
3H111
4J100
【Fターム(参考)】
3H111AA04
3H111BA15
3H111BA34
3H111DA26
3H111DB21
3H111DB22
3H111EA02
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100AA15Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA19Q
4J100AA21Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA02
4J100FA09
4J100JA43
4J100JA50
(57)【要約】
【課題】
本発明は半導体装置産業分野、精密工業部品分野及び医薬品等に使用される高純度薬品又は超純水の輸送ラインを構成する配管、継手、バルブ等の配管材を提供する。
【解決手段】 下記(1)~(3)の要件を満たすポリエチレン樹脂からなることを特徴とする配管材。
(1)ポリエチレン樹脂をブロー成形することで得られた内容積800mL容器に、クリーンルーム内で600mLの超純水を充填し、蓋をして設定温度40℃にて35日間保管後、溶出する0.1μm以上の微粒子数が25個/mL以下
(2)ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて得られる分子量分布曲線において、分子量1,000以下の成分が0.50重量%以下
(3)含有金属量が20ppm以下
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(3)の要件を満たすポリエチレン樹脂からなることを特徴とする配管材。
(1)ポリエチレン樹脂をブロー成形することで得られた内容積800mL容器に、クリーンルーム内で600mLの超純水を充填し、蓋をして設定温度40℃にて35日間保管後、溶出する0.1μm以上の微粒子数が25個/mL以下
(2)ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて得られる分子量分布曲線において、分子量1,000以下の成分が0.50重量%以下
(3)含有金属量が20ppm以下
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置産業分野、精密工業部品分野及び医薬品等に使用される高純度薬品又は超純水の輸送ラインを構成する配管、継手、バルブ等の配管材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子工業分野の著しい発達に伴って、高純度薬品又は超純水の需要が高まっている。高純度薬品は、例えば、大規模化、集積化されたLSI等の電子回路の製造に不可欠の薬品として使用されている。高純度薬品として具体的には、ウエハー洗浄・エッチング用、配線・絶縁膜エッチング用、治具洗浄用、現像液、レジスト希釈液、レジスト剥離液、乾燥用等の用途として、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、過酸化水素水、イソプロピルアルコール、キシレン、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、メタノール、酢酸、リン酸、アンモニア水、PGMEA(酢酸プロピレングリコールメチルエーテル)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)等が用いられている。また、半導体装置又は液晶表示装置等の精密デバイスの製造において、洗浄等の湿式工程においても極めて高純度に精製された超純水が用いられている。高純度薬品又は超純水に含まれる有機不純物及び金属不純物などの微粒子は半導体デバイスの歩留まり低下、及び欠陥の原因となることから、近年、該微粒子の低減への要求は益々厳しくなっている。該高純度薬品又は超純水への不純物の混入は、該高純度薬品又は超純水の輸送ラインを構成する配管、継手、バルブ等の配管材からの溶出によっても生じる。
【0003】
通常、フッ素系樹脂は化学的に不活性であり、該高純度薬品又は超純水への不純物の溶出が極めて少ない特長を有するため、該高純度薬品又は超純水の輸送ラインを構成する配管、継手、バルブ等の配管材として一般的に使用されている(例えば、特許文献1参照。)。また、高密度ポリエチレンとフッ素系滑剤とを含むHDPE層を有する超純水用管材が提案されている(例えば、特許文献2~3参照。)。さらに、超純水用配管材に用いられるポリエチレン系樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0004】
特許文献1に提案されたフッ素樹脂製配管は、フッ素樹脂の成形の難易度が高いため、生産性が低く、設計の自由度も低いことが課題であり、また、フッ素樹脂は一般的な樹脂と比較して高価であるため、コストが高くなる問題があった。さらに、特許文献2~4に提案された超純水用管材又は超純水用配管材に用いられるポリエチレン系樹脂組成物は、超純水中への金属の溶出が少ないものであるが、該高純度薬品又は超純水に含まれる微粒子の原因物質である有機不純物及びその定量的評価については何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-234576号公報
【特許文献2】特開2022-159129号公報
【特許文献3】特開2022-157376号公報
【特許文献4】特開2022-145138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、有機不純物及び金属不純物などの微粒子の含有量が極めて低い高純度なポリエチレン樹脂からなる配管、継手、バルブ等の配管材を提供することを目的とするものであり、さらに詳しくは、半導体装置産業分野、精密工業部品分野及び医薬品等に使用される高純度薬品又は超純水の製造に用いられるからなる高純度薬品又は超純水の輸送ラインを構成する配管、継手、バルブ等の配管材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、有機不純物及び金属不純物などの微粒子の含有量が極めて低い高純度なポリエチレン樹脂からなる配管材が、半導体装置産業分野、精密工業部品分野及び医薬品等に使用される高純度薬品又は超純水の輸送において、有機不純物及び金属不純物などの微粒子の溶出を抑制し、好適に使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下に示す[1]である。
[1]下記(1)~(3)の要件を満たすポリエチレン樹脂からなることを特徴とする配管材。
(1)ポリエチレン樹脂をブロー成形することで得られた内容積800mL容器に、クリーンルーム内で600mLの超純水を充填し、蓋をして設定温度40℃にて35日間保管後、溶出する0.1μm以上の微粒子数が25個/mL以下
(2)ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて得られる分子量分布曲線において、分子量1,000以下の成分が0.50重量%以下
(3)含有金属量が20ppm以下
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高純度薬品又は超純水の輸送において、有機不純物及び金属不純物などの微粒子の溶出を抑制できる配管材を提供することができ、その産業的価値は極めて高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の配管材を構成するポリエチレン樹脂は、下記(1)~(3)の要件を満たすポリエチレン系樹脂であればいかなる制限を受けることなく用いることが可能である。
(1)ポリエチレン樹脂をブロー成形することで得られた内容積800mL容器に、クリーンルーム内で600mLの超純水を充填し、蓋をして設定温度40℃にて35日間保管後、溶出する0.1μm以上の微粒子数が25個/mL以下
(2)ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下の成分が0.50重量%以下
(3)含有金属量が20ppm以下
【0012】
該ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、鎖状低密度ポリエチレンおよび超高分子量ポリエチレンなどが挙げられ、この中でも、とりわけ機械的強度、耐久性などに優れた配管材が得られることから、高密度ポリエチレンであることが好ましい。また、該ポリエチレン樹脂の密度は特に制限されるものではないが、通常、0.925~0.975g/cmであることが好ましく、微粒子数が抑制され、力学的強度や耐久性が得られやすいことから0.935~0.965であることがより好ましい。なお、これらポリエチレン樹脂を単独あるいは混合、複合化して用いることも可能である。
【0013】
ここで、該ポリエチレン樹脂はエチレン単独重合体であっても、エチレン・α-オレフィン共重合体であっても良く、エチレン-α-オレフィン共重合体である場合、その際のα-オレフィンとしては、例えばプロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等挙げることができ、その際の高活性重合触媒としては、チーグラー系触媒が適している。具体例として、チーグラー系触媒としてはチタン、マグネシウム、ハロゲンを必須とする固体触媒成分と有機アルミニウム化合物からなる触媒が挙げられる。チーグラー系重合触媒を用い、ポリエチレンを製造することで含有金属が少ないポリエチレン系樹脂組成物とすることが可能となる。また、本発明の配管材を構成するポリエチレン樹脂は、2段重合法で製造することもできる。
【0014】
さらに、該ポリエチレン樹脂の190℃、21.6kg荷重のメルトフローレート(JIS K6922-1、以下、HLMFRと記す。)は特に制限されるものではないが、通常、0.1~50g/10分であることが好ましく、微粒子数が抑制され、成形加工性や成形品の表面平滑性が良好となることから1~30g/10分であることがより好ましい。
【0015】
また、該ポリエチレン樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)より求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは特に制限されるものではないが、通常、3~20であることが好ましく、微粒子数が抑制され、成形加工性が良好となることから5~15であることがより好ましい。
【0016】
本発明の配管材を構成するポリエチレン樹脂より溶出する0.1μm以上の微粒子数は25個/mL以下であり、さらに好ましくは20個/mL以下である。0.1μm以上の微粒子数が25個/mL以下であれば、高純度薬品又は超純水への配管材からの微粒子溶出量が少ないため、高純度薬品又は超純水中の不純物濃度を抑制することができる。微粒子数は、ポリエチレン樹脂をブロー成形することで得られた内容積800mL容器に、クリーンルーム内で600mLの超純水を充填し、蓋をして設定温度40℃にて35日間保管後、充填水中の0.1μm以上の微粒子数を微粒子カウンターで測定することにより計測することができる。
【0017】
また、本発明の配管材を構成するポリエチレン樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて得られる分子量分布曲線において、分子量1,000以下の成分が0.50重量%以下である。分子量1,000以下の成分が0.50重量%を超えると低分子量成分が増加し、高純度薬品又は超純水への配管材から溶出する微粒子溶出量が増加する。
【0018】
さらに、本発明の配管材を構成するポリエチレン樹脂の含有金属量は20ppmである。含有金属量が20ppm以下であれば、高純度薬品又は超純水の金属不純物濃度を抑制することができる。
【0019】
また、該ポリエチレン樹脂は、高純度薬品又は超純水中の微粒子となり得るため、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線防止剤、光安定剤、帯電防止剤などの添加物を含まないものであることが好ましい。
【0020】
該ポリエチレン樹脂は、成形品の表面平滑性をより優れたものとするため、本発明の目的を逸脱しない範囲でフッ素系樹脂を含有してもよい。該フッ素系樹脂としては、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンに代表されるフッ素化オレフィンを単独重合したもの、あるいは共重合したものを挙げることができる。該フッ素系樹脂の添加量としては、不純物濃度を低く抑制しつつ、成形品の表面平滑性がより優れたものとなることから、0.01~0.05重量%であることが好ましい。
【0021】
本発明の配管材は、配管、継手、バルブ等に用いることができす。
【0022】
また、本発明の配管材は、押出成形機、射出成形機、トランスファー成形機、圧縮成形機、ブロー成形機等を用いて任意の形状に成形することができる。
【実施例0023】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限
されるものではない。
【0024】
~ポリエチレン樹脂の溶出微粒子数の測定~
ポリエチレン樹脂をブロー成形することで得られた内容積800mL容器を使用した。クリーンルーム内で容器に600mLの超純水を充填し、蓋をして設定温度40℃のクリーンオーブン(ヤマト科学(株)製、DE411)内にて35日間保管後、充填水中の0.1μm以上の微粒子数を微粒子カウンター(リオン(株)製、コントローラー:KE-40B1、パーティクルセンサー:KS-42A)で測定した。水中の微粒子数は個/mLで示す。
【0025】
~ポリエチレン樹脂の含有金属量の評価~
試料を灰化したのちにアルカリ溶融を行い、溶液化したものを測定溶液とし、ICP-AES測定により、試料中の含有金属量を測定した。
【0026】
~配管材の溶出微粒子数の測定~
ポリエチレン樹脂を押出成形により肉厚3mm、外径50mmとなるよう円筒状に連続押出した後、長さ20cmとなるように切断してパイプを作製した。作成した該パイプにガラス製のキャップで蓋をした後、クリーンルーム内で200mLの超純水を充填し、設定温度40℃のクリーンオーブン(ヤマト科学(株)製、DE411)内にて35日間保管後、充填水中の0.1μm以上の微粒子数を微粒子カウンター(リオン(株)製、コントローラー:KE-40B1、パーティクルセンサー:KS-42A)で測定した。水中の微粒子数は個/mLで示す。
【0027】
<合成例1(ポリエチレン樹脂Aの合成)>
特開平7-41513号公報に記載の実施例1に従い調製したMg、Al、TiおよびClを主成分とするチーグラー系触媒と溶媒(ヘキサン)、エチレン(濃度9~10g/kg-溶媒)、水素(濃度0.1~0.3g/kg-溶媒)、トリイソブチルアルミニウム(濃度0.10~0.20g/kg-溶媒)を重合器に連続供給し、温度80~85℃、全圧3,000kPa、平均滞留時間2時間の条件下でエチレン重合を行った。そして、第1段目の該重合体を含むヘキサンスラリーは、フラッシュタンクにて未反応の水素およびエチレンを除去した後、別の第2段目重合器に連続供給した。第2段目重合器でさらにエチレン(濃度10~13g/kg-溶媒)、水素(0.03~0.05g/kg-溶媒)、1-ブテン(8.5~10g/kg-溶媒)を供給し、温度75~85℃、全圧2,000kPa、平均滞留時間2時間の条件下でエチレン重合を行った。第2段目重合器のヘキサンスラリーをフラッシュタンクに送り、未反応の水素、エチレン、1-ブテンを除去した後、乾燥工程を経てエチレン系共重合体の混合物パウダーを得た。上記の製造プロセスで2段重合したパウダーを添加剤無添加によりペレット化し、ポリエチレンAを得た。該ポリエチレン樹脂は密度が0.955g/cmであり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが10.5g/10分であり、微粒子数は8個であり、GPCを用いて得られる分子量分布曲線において、分子量1,000以下の成分が0.15重量%であり、GPCより求められるMw/Mnが10であり、含有金属量が8PPMであった。
<合成例2(ポリエチレン樹脂Bの合成)>
特開平7-41513号公報記載の実施例1にに従い調製したMg、Al、TiおよびClを主成分とするチーグラー系触媒と溶媒(ヘキサン)、エチレン(濃度9~10g/kg-溶媒)、水素(濃度0.1~0.3g/kg-溶媒)、トリイソブチルアルミニウム(濃度0.10~0.20g/kg-溶媒)を重合器に連続供給し、温度80~85℃、全圧3,000kPa、平均滞留時間2時間の条件下でエチレン重合を行った。そして、第1段目の該重合体を含むヘキサンスラリーは、フラッシュタンクにて未反応の水素およびエチレンを除去した後、別の第2段目重合器に連続供給した。第2段目重合器でさらにエチレン(濃度10~13g/kg-溶媒)、水素(0.01~0.015g/kg-溶媒)、1-ブテン(11~13g/kg-溶媒)を供給し、温度75~85℃、全圧2,000kPa、平均滞留時間2時間の条件下でエチレン重合を行った。第2段目重合器のヘキサンスラリーをフラッシュタンクに送り、未反応の水素、エチレン、1-ブテンを除去した後、乾燥工程を経てエチレン系共重合体の混合物パウダーを得た。上記の製造プロセスで2段重合したパウダーを添加剤無添加によりペレット化し、ポリエチレンBを得た。該ポリエチレン樹脂は密度が0.945g/cmであり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが15g/10分であり、微粒子数は10個であり、GPCを用いて得られる分子量分布曲線において、分子量1,000以下の成分が0.3重量%であり、GPCより求められるMw/Mnが12であり、含有金属量が9PPMであった。
【0028】
<合成例3(ポリエチレン樹脂Cの合成)>
第1段目の重合温度を70~80℃、重合圧力を全圧1,000kPaとしたこと以外は合成例1と同様の方法によりポリエチレン樹脂Cを得た。該ポリエチレン樹脂は密度が0.955g/cmであり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが20g/10分であり、微粒子数は40個であり、GPCを用いて得られる分子量分布曲線において、分子量1,000以下の成分が1.0重量%であり、GPCより求められるMw/Mnが18であり、含有金属量が55PPMであった。
【0029】
<合成例4(ポリエチレン樹脂Dの合成)>
重合体を含むヘキサンスラリーを、フラッシュタンクにて未反応の水素およびエチレンを除去した後、溶媒精製を行わなかったこと以外は合成例1と同様の方法によりポリエチレン樹脂Dを得た。該ポリエチレン樹脂は密度が0.96g/cmであり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが14.5g/10分であり、微粒子数は40個であり、GPCを用いて得られる分子量分布曲線において、分子量1,000以下の成分が2.1重量%であり、GPCより求められるMw/Mnが19であり、含有金属量が30PPMであった。
【0030】
<合成例5(ポリエチレン樹脂Eの合成)>
特開昭53-91092号公報に記載の実施例1に従い調製したCr及びSiO2を主成分とするフィリップス系触媒を用いたこと以外は合成例1と同様の方法によりポリエチレン樹脂Eを得た。該ポリエチレン樹脂は密度が0.955g/cmであり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが18g/10分であり、微粒子数は60個であり、GPCを用いて得られる分子量分布曲線において、分子量1,000以下の成分が0.8重量%であり、GPCより求められるMw/Mnが12.5であり、含有金属量が60PPMであった。
【0031】
実施例1
合成例1で得られたポリエチレン樹脂Aを用いて、ポリエチレン樹脂を押出成形により肉厚3mm、外径50mmとなるよう円筒状に連続押出した後、長さ20cmとなるように切断してパイプを作製した。そして、該パイプにイソプロピルアルコールを通液し、その後、超純水でイソプロパノールを置換し、該操作を3回繰り返してから試験に用いた。次いで、クリーンルーム内で液中の0.1μm以上の微粒子数を測定した。微粒子数は7個であり、該パイプは微粒子の少ない純度に優れるものであった。
【0032】
実施例2
合成例2で得られたポリエチレン樹脂Bを用いて、ポリエチレン樹脂を押出成形により肉厚3mm、外径50mmとなるよう円筒状に連続押出した後、長さ20cmとなるように切断してパイプを作製した。そして、該パイプにイソプロピルアルコールを通液し、その後、超純水でイソプロパノールを置換し、該操作を3回繰り返してから試験に用いた。次いで、クリーンルーム内で液中の0.1μm以上の微粒子数を測定した。微粒子数は9個であり、該パイプは微粒子の少ない純度に優れるものであった。
【0033】
実施例3
合成例1により得られたポリエチレン樹脂A100重量部に対し、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(商品名)ダイナマーFX5911(スリーエムジャパン(株)製)を0.03重量部添加して、実施例1と同様の方法により押出成形を行い、パイプを作製した。該パイプの微粒子数は7個であり、微粒子の少ない純度に優れるものであった。
【0034】
比較例1
合成例3で得られたポリエチレン樹脂Cを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によりパイプを作製し、微粒子数を測定した。該パイプの微粒子数は30個であり、微粒子の多い純度に劣るものであった。
【0035】
比較例2
合成例4で得られたポリエチレン樹脂Dを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によりパイプを作製し、微粒子数を測定した。該パイプの微粒子数は45個であり、微粒子の多い純度に劣るものであった。
【0036】
比較例3
合成例5で得られたポリエチレン樹脂Eを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法によりパイプを作製し、微粒子数を測定した。該パイプの微粒子数は45個であり、微粒子の多い純度に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
半導体装置産業分野、精密工業部品分野及び医薬品等に使用される高純度薬品又は超純水の輸送ラインを構成する配管、継手、バルブ等の配管材を提供するものである。