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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134792
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】積層体および包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240927BHJP
   B65D 30/16 20060101ALI20240927BHJP
   B65D 33/38 20060101ALI20240927BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D30/16 A
B65D33/38
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045155
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064AA09
3E064AA11
3E064BA26
3E064BB03
3E064BC01
3E064BC10
3E064BC14
3E064BC18
3E064EA23
3E064EA30
3E064FA01
3E064FA04
3E064FA06
3E064GA04
3E064HA06
3E064HB05
3E064HD01
3E064HE04
3E064HP01
3E064HP02
3E064HS05
3E086AA23
3E086AC13
3E086AC15
3E086AD01
3E086AD08
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA33
3E086BB05
3E086BB23
3E086BB37
3E086BB52
3E086BB62
3E086CA11
3E086CA28
3E086CA29
3E086CA35
3E086DA08
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK04D
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100DC13
4F100EH17B
4F100EJ32
4F100EJ37D
4F100EJ38C
4F100EJ65B
4F100GB15
4F100HB31E
4F100JL12A
(57)【要約】
【課題】良好な手切れ性とともにリサイクル性が高い積層体および包装袋を提供する。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂から形成されたシーラントの最内層11と、二軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムから形成された第2層12と、ポリエチレン系樹脂フィルムから形成された第3層13と、を有し、第2層12が、ポリエチレン系樹脂の押出樹脂層14を介して最内層11に隣接して接合され、第3層13が、接着層15を介して第2層12に隣接して接合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂から形成されたシーラントの最内層と、二軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムから形成された第2層と、ポリエチレン系樹脂フィルムから形成された第3層と、を有し、
前記第2層が、ポリエチレン系樹脂の押出樹脂層を介して前記最内層に隣接して接合され、前記第3層が、接着層を介して前記第2層に隣接して接合されていることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記第2層は、前記二軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムが前記押出樹脂層に接する面に、印刷層を有することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記積層体が、最外層に耐熱ニス層を有することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記接着層が、ポリエチレン系樹脂の押出樹脂層と前記第3層に塗布されたアンカーコート剤からなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記接着層が、波長10.6μmの光線を吸収する物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記第3層が、一軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムから形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記一軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムがMD方向に延伸され、且つ、前記接着層に接する面に、印刷層を有することを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
少なくとも1の部材が、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体から形成されていることを特徴とする包装袋。
【請求項9】
包装袋の開封または切り取りを行う部位が、前記積層体に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の包装袋。
【請求項10】
請求項5に記載の積層体から形成される包装袋の、開封または切り取りを行う部位にレーザーハーフカットが設けられていることを特徴とする包装袋。
【請求項11】
詰め替え用であることを特徴とする請求項8に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の包装袋として、二つ折りにされた底部フィルムが一対の胴部フィルムの間に配置された自立性を有するスタンディングパウチが使用されている。特許文献1の段落0010には、シーラントを最内層とし、延伸フィルムを基材としたラミネートフィルムを用いることが記載されている。
【0003】
従来の包装袋に使用される複合フィルムは、内面にポリエチレン(PE)等の熱接着性樹脂(シーラント)層、外面には、シーラントよりも耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート(PET)等の基材が積層されている。しかし、異種の樹脂を含む包装袋は、プラスチック製容器包装としてのリサイクルが難しいという問題がある。
【0004】
近年、リサイクルを容易にするため、単一の樹脂を用いるモノマテリアルの容器包装が提唱されている。例えば、特許文献2の実施例1には、ポリエチレン3層の共押出フィルムを用いて包装袋を製造することが記載されている。しかし、単一の樹脂を用いたフィルムから包装袋を形成すると、良好な手切れ性が得られにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-7630号公報
【特許文献2】特許第4536457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、良好な手切れ性とともにリサイクル性が高い積層体および包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、下記の態様を提供する。
第1の態様は、ポリエチレン系樹脂から形成されたシーラントの最内層と、二軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムから形成された第2層と、ポリエチレン系樹脂フィルムから形成された第3層と、を有し、前記第2層が、ポリエチレン系樹脂の押出樹脂層を介して前記最内層に隣接して接合され、前記第3層が、接着層を介して前記第2層に隣接して接合されていることを特徴とする積層体である。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記第2層は、前記二軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムが前記押出樹脂層に接する面に、印刷層を有することを特徴とする。
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記積層体が、最外層に耐熱ニス層を有することを特徴とする。
第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記接着層が、ポリエチレン系樹脂の押出樹脂層と前記第3層に塗布されたアンカーコート剤からなることを特徴とする。
第5の態様は、第1~4のいずれか1の態様において、前記接着層が、波長10.6μmの光線を吸収する物質を含むことを特徴とする。
第6の態様は、第1~5のいずれか1の態様において、前記第3層が、一軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムから形成されていることを特徴とする。
第7の態様は、第6の態様において、前記一軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムがMD方向に延伸され、且つ、前記接着層に接する面に、印刷層を有することを特徴とする。
【0009】
第8の態様は、少なくとも1の部材が、第1~7のいずれか1の態様の積層体から形成されていることを特徴とする包装袋である。
第9の態様は、第8の態様において、包装袋の開封または切り取りを行う部位が、前記積層体に形成されていることを特徴とする。
第10の態様は、第5の態様の積層体から形成される包装袋の、開封または切り取りを行う部位にレーザーハーフカットが設けられていることを特徴とする包装袋である。
第11の態様は、第8~10のいずれか1の態様において、包装袋が、詰め替え用であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シーラントの最内層に隣接して、二軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムを接合しているので、良好な手切れ性が得られる。また、二軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムが、ポリエチレン系樹脂の押出樹脂層を介して最内層に接合されているので、リサイクル性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の積層体を例示する断面図である。
図2】第1改変例の積層体を例示する断面図である。
図3】第2改変例の積層体を例示する断面図である。
図4】第3改変例の積層体を例示する断面図である。
図5】実施形態の包装袋を例示する正面図である。
図6】フィルム成形された注出口を例示する部分正面図である。
図7】スパウトタイプの注出口を例示する部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0013】
図1に、実施形態の積層体を例示する。この積層体10は、ポリエチレン系樹脂から形成されたシーラントの最内層11と、二軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムから形成された第2層12と、ポリエチレン系樹脂フィルムから形成された第3層13と、を有する。第2層12は、ポリエチレン系樹脂の押出樹脂層14を介して最内層11に隣接して接合されている。第3層13は、接着層15を介して第2層12に隣接して接合されている。
【0014】
実施形態の積層体10は、少なくとも最内層11、第2層12、第3層13および押出樹脂層14が、ポリエチレン系樹脂を主体とするポリエチレン系樹脂層から形成されている。このため、実施形態の積層体10を用いて、モノマテリアルの容器包装を実現することができる。ポリエチレン系樹脂層が、最内層11、第2層12、第3層13、押出樹脂層14に限定されるものではなく、さらに他のポリエチレン系樹脂層を有してもよい。
【0015】
上述のポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、エチレンを主体とする共重合体(コポリマー)でもよい。エチレン以外のモノマー(コモノマー)としては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸等のビニル系モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。ポリエチレン系樹脂が、酢酸ビニル等のエステル基を有するモノマーを共重合している場合は、エステル基の一部がケン化されて、ビニルアルコールを含む共重合体となっていてもよい。
【0016】
ポリエチレン系樹脂の構成モノマーにおけるエチレンの割合は、50重量%以上が好ましく、例えば、80~100重量%でもよい。エチレンまたはコモノマーは、石油等の化石資源に由来する化合物でもよく、植物等のバイオマスに由来する化合物でもよい。ポリエチレン系樹脂層に含まれる樹脂が、ポリエチレン系樹脂のみでもよく、他の樹脂を含有してもよい。
【0017】
ポリエチレン系樹脂層は、樹脂以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤、架橋剤等が挙げられる。添加剤は、樹脂に相溶する成分でもよく、樹脂に相溶しない成分でもよい。
【0018】
ポリエチレン系樹脂の少なくとも一部が、リサイクルされたポリエチレン系樹脂を含んでもよい。リサイクルされたポリエチレン系樹脂は、使用済みのポリエチレン系樹脂をエチレン等のモノマー等に分解してから再度重合させたケミカルリサイクルによるポリエチレン系樹脂でもよい。使用済みのポリエチレン系樹脂をポリマーのまま、粉砕、選別等の工程を経て再生したメカニカルリサイクルによるポリエチレン系樹脂でもよい。リサイクルされたポリエチレン系樹脂と新品のポリエチレン系樹脂とを混合して使用してもよい。
【0019】
ポリエチレン系樹脂のモノマテリアル材料においては、積層体10全体に含まれるポリエチレン系樹脂が所定の割合以上であることが望ましい。積層体10に含まれるそれぞれのポリエチレン系樹脂層においては、ポリエチレン系樹脂の割合が80重量%以上であることが好ましく、90~100重量%でもよい。
【0020】
最内層11は、積層体10の接合に用いることができる。最内層11は、無延伸のポリエチレン系樹脂から形成されることが好ましい。最内層11を形成する材料の具体例としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等の相対的に密度が低いポリエチレン系樹脂が挙げられる。最内層11を形成する材料が、1種のポリエチレン系樹脂でもよく、2種以上のポリエチレン系樹脂のブレンドでもよい。最内層11の厚さは、特に限定されないが、例えば、60~180μm程度が挙げられる。
【0021】
第2層12は、積層体10の厚さ方向において、最内層11より外側に積層される。第2層12は、積層体10を長さ方向に搬送して使用する等に際して、積層体10の機械的強度を補強できることが好ましい。従来の積層フィルムでは、PETフィルム等を基材層としたが、実施形態の積層体10では、ポリエチレン系樹脂フィルムを第2層12とするため、リサイクル性が向上する。また、第2層12として、MDPEまたはHDPEのように、比較的密度が高い樹脂層を有する場合は、バリア性が向上する。
【0022】
第2層12は、二軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムから形成される。第2層12を形成する材料の具体例としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等の相対的に密度が低いポリエチレン系樹脂でもよく、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等の相対的に密度が高いポリエチレン系樹脂でもよい。第2層12を形成する材料が、1種のポリエチレン系樹脂でもよく、2種以上のポリエチレン系樹脂のブレンドでもよい。第2層12の厚さは、特に限定されないが、例えば、10~50μm程度が挙げられる。
【0023】
最内層11に隣接した第2層12が、二軸延伸されたポリエチレン系樹脂層であることにより、良好な手切れ性が得られる。二軸延伸における延伸方向、延伸倍率などは特に限定されないが、搬送(MD)方向および交差(TD)方向に延伸してもよい。延伸倍率は、MD方向、TD方向ともに、2~10倍の範囲内であることが好ましい。MD方向の延伸倍率とTD方向の延伸倍率とが、互いに等しくてもよく、異なってもよい。
【0024】
積層体10の手切れ性を向上するには、第2層12の外側に、ポリエチレン系樹脂フィルムから形成される第3層13を有することが好ましい。第3層13は、延伸されたポリエチレン系樹脂から形成されてもよく、無延伸のポリエチレン系樹脂から形成されてもよい。
【0025】
第3層13は、一軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムから形成されることが好ましい。これにより、一軸に延伸された方向に沿った引き裂きが容易になり、直進カット性を向上することができる。積層体10に第3層13が積層される場合は、最内層11のみがシーラント層であってもよく、最内層11および第2層12がシーラント層となってもよい。第3層13に印刷を行う場合、多色印刷のズレ防止や印刷ピッチのコントロールの観点から、一軸延伸ポリエチレン系樹脂フィルムをMD方向に延伸することが好ましい。
【0026】
第3層13を形成する材料の具体例としては、例えば、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等の相対的に密度が高いポリエチレン系樹脂が挙げられる。第3層13を形成する材料が、1種のポリエチレン系樹脂でもよく、2種以上のポリエチレン系樹脂のブレンドでもよい。第3層13の厚さは、特に限定されないが、例えば、10~50μm程度が挙げられる。
【0027】
最内層11と第2層12との間は、ポリエチレン系樹脂の押出樹脂層14を介して接合される。押出ラミネートを用いることにより、最内層11と第2層12との間で延伸の有無や方向が異なる場合でも、例えば最内層11が無延伸で、第2層12が二軸延伸の場合でも、積層が容易である。
【0028】
押出樹脂層14に用いられるポリエチレン系樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。押出樹脂層14の厚さは、特に限定されないが、3~30μm程度、5~25μm程度、7~20μm程度が挙げられる。
【0029】
押出樹脂層14は、例えばTダイを用いて、下方に押し出してもよい。最内層11または第2層12の一方の上に押出樹脂層14を押出ラミネートした後で、最内層11または第2層12の他方を積層してもよい。押出樹脂層14が溶融状態にある間に、最内層11および第2層12の双方と接触させることが好ましい。樹脂フィルムまたは溶融状態の押出樹脂に対して、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、放電処理、火炎処理等の表面処理を施してもよい。最内層11および第2層12のいずれかにアンカーコート剤を塗布してもよい。
【0030】
第2層12と第3層13との間は、接着層15を介在させて接合することが好ましい。モノマテリアル性をより高める場合にはポリエチレン系樹脂の押出樹脂層で接着層15を形成することが好ましく、生産性の向上や樹脂使用量の削減等の観点からは、ドライラミネートで接着層15を形成することが好ましい。第2層12と第3層13との間で延伸の有無や方向が異なる場合でも、例えば第2層12が二軸延伸で、第3層13が一軸延伸の場合でも、積層が容易である。
【0031】
ドライラミネートの接着層15は、接着剤から形成されてもよく、アンカーコート剤から形成されてもよい。接着層15を形成する材料としては、特に限定されないが、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、ポリエチレンイミン、チタンアルコキシド等の有機チタン化合物等が挙げられる。接着層15の厚さは、例えば、0.1~10μm程度、1~6μm程度、3~4μm程度が挙げられる。接着層15が樹脂を含んでもよく、樹脂を含まない接着層でもよい。接着剤等は溶剤型、無溶剤型いずれも使用可能である。
【0032】
押出樹脂層で接着層15を形成する場合は、上述した押出樹脂層14と同様にして、第2層12と第3層13との間を接合してもよい。第2層12と、アンカーコート剤を塗布した第3層13との間に、押出樹脂層を積層することが好ましい。この場合の接着層15は、ポリエチレン系樹脂の押出樹脂層と第3層13に塗布されたアンカーコート剤からなる。
【0033】
図2に示す積層体10Aのように、最内層11と第2層12との間に印刷層16が積層されてもよい。図3に示す積層体10Bのように、第2層12と第3層13との間に印刷層16が積層されてもよい。印刷層16の位置は、特に限定されないが、例えば、最内層11の外面、第2層12の内面または外面、第3層13の内面または外面などが挙げられる。
【0034】
印刷層16は、グラビア印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等の印刷方式でインキをベタ状またはパターン状に印刷することにより、形成することができる。印刷層16の厚さは、特に限定されないが、0.5~10μm程度が挙げられる。印刷層16は、積層体10A,10Bの全面に形成してもよく、積層体10A,10Bの面内の一部に形成してもよい。2層以上の印刷層16を重ね合わせてもよい。手切れ性の観点から、開封箇所の印刷層16を省略することが好ましい。
【0035】
印刷層16を形成するためのインキは、顔料、染料等の着色材と、バインダーを含んでもよい。バインダーとしては、特に限定されないが、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル系重合体、ポリブタジエン、環化ゴム等が挙げられる。インキは、水、有機溶剤、植物油などの溶剤を含有してもよい。印刷後は、溶剤の揮発やインキの硬化等によりインキを乾燥させることができる。インキの乾燥を促進するため、加熱、紫外線照射等を実施してもよい。印刷層16が樹脂を含んでもよく、樹脂を含まない印刷層16でもよい。印刷層16が、電子線硬化型のように無溶剤で形成されてもよい。
【0036】
図4に示す積層体10Cのように、最外層に耐熱ニス層を有してもよい。耐熱ニス層17は、第2層12または第3層13よりも耐熱性に優れる層であればよい。積層体10Cの最外層に耐熱ニス層17を積層することにより、積層体10Cの内面を加熱または発熱させて接合(シール)する際、積層体10Cの外面の付着(ブロッキング)を抑制することができる。
【0037】
耐熱ニス層17は、積層体10Cの外面にニスを塗布した後、乾燥、硬化等で塗膜の耐熱性を向上させて形成してもよい。ニスは、樹脂および溶剤を含有してもよく、無溶剤の樹脂を含有してもよい。ニスに使用される樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。ニスの溶剤は、ポリエチレン系樹脂に塗布する際の性能等を考慮して、適宜選択することができる。
【0038】
図示例の積層体10Cでは、耐熱ニス層17が第3層13との間に接着層等を介せず、直接に形成することができる。第3層13の外面に印刷層16を形成した場合は、印刷層16の上に耐熱ニス層17を重ねてもよい。この場合、最外層の耐熱ニス層17により、印刷層16を保護することができる。第3層13の全面に耐熱ニス層17が形成されてもよい。第3層13の一部の領域に耐熱ニス層17が形成されてもよい。
【0039】
耐熱ニス層17の厚さは、例えば、10μm以下であることが好ましい。耐熱ニス層17の厚さの具体例としては、特に限定されないが、10μm、8μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、0.5μm、0.2μm、0.1μm程度、あるいは、これらの中間値でもよい。
【0040】
実施形態の積層体10,10A,10B,10Cには、樹脂層以外の異種材料層として、接着層15、耐熱ニス層17、蒸着層、印刷層16、塗布層などが積層されていてもよい。異種材料としては、アルミニウム等の金属、シリカ、アルミナ等の無機化合物等が挙げられる。印刷層16、塗布層、接着層15等には、インキ、塗料、接着剤等の材料として、ポリエチレン以外の樹脂が含まれてもよい。各層の積層方法は、特に限定されないが、ドライラミネート、押出ラミネート、熱ラミネート、共押出、コーティング等が挙げられる。各層を積層するために、それぞれ異なる方法を用いてもよい。
【0041】
実施形態の積層体10,10A,10B,10Cの全重量に対し、ポリエチレン系樹脂の合計が90重量%以上であり、ポリエチレン系樹脂以外の材料の合計が10重量%以下であることが好ましい。さらにポリエチレン系樹脂の合計が95重量%以上であり、ポリエチレン系樹脂以外の材料の合計が5重量%以下であることがより好ましい。
【0042】
実施形態の積層体10,10A,10B,10Cは、包装袋等の包装体の作製に用いることができる。包装袋は、少なくとも1の部材が、実施形態の積層体10,10A,10B,10Cから形成されていればよい。包装袋の用途は、使い捨て用、詰め替え用、貯蔵用、物品等の収納用など、特に限定されないが、内容物を消費する際に使用される本体容器に対して、1回または複数回、内容物を詰め替える用途には特に好適である。この場合、本体容器を長期間の使用に耐久可能にして、詰め替え容器の包装を簡易にすることができ、内容物を使い終えた後の詰め替え容器を処分する際、リサイクルが容易になる。
【0043】
包装体としては、パウチ、バッグなどの包装袋、チューブ、コンテナ、スリーブ包装、ストリップ包装、蓋材等が挙げられる。包装袋の具体例としては、三方シール袋、四方シール袋、ピロー袋、ガセット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。積層体が柔軟な積層フィルムである場合は、軟包装の包装体を形成することができる。
【0044】
例えば、図5に示す包装袋100は、一対の胴部材101と、折り線103により二つ折りにした底部材102とから形成されたスタンディングパウチである。折り線103より上側では、左右の胴シール部104により、前後の胴部材101が接合されている。底部材102は、折り線103を上側にして、前後の胴部材101の間に挟み込まれている。折り線103より下側では、底部材102が胴部材101に接合されて底シール部105が形成されている。
【0045】
包装袋の開封または切り取りを行う部位が、実施形態の積層体10,10A,10B,10Cに形成されていることが好ましい。開封または切り取りを行う部位は、ミシン目、ノッチ、ハーフカット溝などのようにフィルムの厚さ方向に加工した構造を有してもよく、細く突出させた注出口のように、フィルムの面内に開封または切り取りを示唆する形状を有してもよく、印刷等による矢印、線、ドット等の表示であってもよい。包装袋の切り取りは、開封箇所の切り取りに限定されるものではなく、2以上の包装袋を連続して形成した箇所、包装袋の周囲にタグや表示部等を連続させた箇所等において、包装袋の間または周囲を切り取るために用いてもよい。
【0046】
実施形態の積層体10,10A,10B,10Cにおいて、包装袋の、開封または切り取りを行う部位にレーザーハーフカットが設けられていることが好ましい。この場合、接着層15が、レーザー光線を吸収する物質を含むことが好ましい。炭酸ガスレーザーを用いる場合は、波長10.6μmの光線を吸収する物質を含むことが好ましい。
【0047】
包装袋100が胴部材101と底部材102とを有する場合は、開封部を有する胴部材101に実施形態の積層体10,10A,10B,10Cを用いることが好ましい。包装袋100の開封を容易にするため、開封部の周縁にノッチ等の切れ目を形成してもよい。実施形態の積層体10,10A,10B,10Cの内面を接合したシール部に切れ目を形成すると、包装袋100の密封性を確保することができる。
【0048】
実施形態の積層体10,10A,10B,10Cから形成される包装袋の寸法は、特に限定されるものではないが、例えば詰め替え容器の用途では、上下方向の高さが100~500mm程度、左右方向の幅が70~300mm程度、充填量としては100cm~5000cm程度が挙げられる。内容物の状態としては、液体、粉体、粒体等の流体、あるいは物品等の固形物が挙げられる。内容物の種類としては、特に限定されないが、洗剤、薬剤、化粧品、医薬品、飲料、調味料、インキ、塗料、燃料等が挙げられる。
【0049】
包装袋は、充填口、注出口等を有してもよい。例えば、包装袋の上部で前後の胴部材の間が開口されて、内容物の充填または注出に用いることができる。内容物の充填後に胴部材の間を接合して、包装袋を密封してもよい。包装袋を開封する際には、積層体の手切れ性が良好であるため、胴部材の間が接合されていた箇所を容易に引き裂くことができる。例えば、図6に示すように、胴部材101からフィルム成形された注出口106が包装袋100Aの上部または隅部で細く突出する形状に形成されてもよい。
【0050】
図7に示すように、スパウトタイプの注出口107を有してもよい。注出口107の先端部107aは、包装袋100Bの外側に突出し、基端部107bは胴部材101に接合されている。注出口107の開封の際に胴部材101の引き裂きは必要ないが、包装袋100Bの廃棄の際に、胴部材101等のフィルムを引き裂いてもよい。
【0051】
実施形態の積層体10,10A,10B,10Cまたは包装袋100,100A,100Bを使用した後にリサイクルする方法は、特に限定されないが、回収時の状態等に応じて、適宜選択することができる。実施形態の積層体10,10A,10B,10Cは、ポリエチレン系樹脂の割合を高くすることができるので、上述したケミカルリサイクル、メカニカルリサイクルのいずれも可能である。実施形態の積層体10,10A,10B,10Cまたは包装袋100,100A,100Bのリサイクルにより、積層体または包装袋など、同種の製品に再生することも可能である。リサイクルして得られた材料を、塗料、成形品、炭化水素油等の製品に利用してもよい。
【0052】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【0053】
実施形態の積層体は、ポリエチレン系樹脂を主体とした積層フィルム状であり、パウチ、バッグ、コンテナ等の包装袋、包装フィルム等の包装用積層体に限られず、種々の用途に用いることができる。積層体が柔軟な積層フィルムである場合は、軟包装の包装袋を形成することができる。包装袋は、上述の積層体のみから形成してもよく、ラベル、タグ、ストロー、外箱等の付属部材と組み合わせてもよい。リサイクルの観点では、付属部材を包装袋から分離できることが好ましい。
【実施例0054】
以下、実施例として、より具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
無延伸PEフィルムから形成した最内層と、二軸延伸PEフィルムから形成した第2層との間をPEの押出樹脂層により接合する。さらに、一軸延伸PEフィルムから形成した第3層を、第2層に対し、接着層を介してドライラミネート法により積層して、実施例1の積層体を形成することができる。
【0056】
(実施例2)
無延伸PEフィルムから形成した最内層と、二軸延伸PEフィルムから形成した第2層との間をPEの押出樹脂層により接合する。さらに、一軸延伸PEフィルムから形成した第3層にアンカーコート剤を塗布し、第2層に対し、PEの押出樹脂層により積層して、実施例2の積層体を形成することができる。
【0057】
(比較例1)
無延伸PEフィルムから形成した最内層と、一軸延伸ポリエステル(PET)フィルムから形成した基材層とを、接着層を介して、ドライラミネート法により積層して、比較例1の積層体を形成する。
【0058】
(比較例2)
無延伸PEフィルムから形成した最内層と、一軸延伸PEフィルムから形成した基材層とを、接着層を介して、ドライラミネート法により積層して、比較例2の積層体を形成する。
【0059】
比較例1の積層体は、異なる種類の樹脂(PEとPET)が積層されるため、リサイクルが容易でない。比較例2の積層体は、一軸延伸PEフィルムを含んでいても、最内層の引き裂きが容易にならないため、手切れ性が良くない。これに対して、実施例1および2の積層体は、PE樹脂を主体としながらも、最内層に隣接して二軸延伸PEフィルムが積層されているため、手切れ性が良好であり、さらに第3層として、一軸延伸PEフィルムが積層されているため、直進カット性が優れている。
【符号の説明】
【0060】
10,10A,10B,10C…積層体、11…最内層、12…第2層、13…第3層、14…押出樹脂層、15…接着層、16…印刷層、17…耐熱ニス層、100,100A,100B…包装袋、101…胴部材、102…底部材、103…折り線、104…胴シール部、105…底シール部、106…フィルム成形された注出口、107…スパウトタイプの注出口、107a…先端部、107b…基端部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7