(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134805
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】研磨パッド及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/12 20120101AFI20240927BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240927BHJP
B24B 37/20 20120101ALI20240927BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20240927BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B24B37/12 D
B24B7/04 A
B24B37/20
B24B37/24 Z
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045183
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広志郎
(72)【発明者】
【氏名】堀田 秀児
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌照
【テーマコード(参考)】
3C043
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA12
3C043BA14
3C043BA16
3C043BA18
3C043CC04
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C158AA07
3C158AA14
3C158AA16
3C158AA19
3C158AB04
3C158AC04
3C158AC05
3C158CB01
3C158CB06
3C158DA17
3C158EA11
3C158EA26
3C158EB01
3C158EB09
5F057AA24
5F057AA37
5F057CA12
5F057DA02
5F057EB05
(57)【要約】
【課題】スピンドルへの装着時におけるパッド部の破損やパッド部への異物の付着を防ぐことができる研磨パッド及び研磨方法を提供すること。
【解決手段】回転可能なスピンドル23の先端に装着された円板状の基台25aと、該基台25aの一方の端面に固定されたパッド部25bと、を備える研磨パッド25は、スピンドル23に装着される前のパッド部25bの少なくとも研磨面を樹脂膜26で被覆したことを特徴とする。また、研磨パッド25によってウェーハ(被加工物)Wを研磨する研磨方法は、スピンドル23の先端に研磨パッド25を装着する研磨パッド装着ステップと、樹脂膜26をパッド部25bから剥離させる剥離ステップと、ウェーハWをチャックテーブル10の保持面11aで保持する保持ステップと、パッド部25bとウェーハWとを回転させながら接触させてウェーハWを研磨する研磨ステップと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なスピンドルの先端に装着された円板状の基台と、
該基台の一方の端面に固定されたパッド部と、
を備える研磨パッドであって、
該スピンドルに装着される前の該パッド部の少なくとも研磨面を樹脂膜で被覆したことを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
該樹脂膜は、水溶性樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
該樹脂膜は、熱可塑性樹脂シートで構成されていることを特徴とする請求項1記載の研磨パッド。
【請求項4】
請求項1記載の研磨パッドによって被加工物を研磨する研磨方法であって、
該スピンドルの先端に該研磨パッドを装着する研磨パッド装着ステップと、
該樹脂膜を該パッド部から剥離させる剥離ステップと、
該被加工物をチャックテーブルの保持面で保持する保持ステップと、
該パッド部と該被加工物とを回転させながら接触させて該被加工物を研磨する研磨ステップと、
を備えることを特徴とする研磨方法。
【請求項5】
該剥離ステップは、
水溶性樹脂で構成された該樹脂膜に向かって水を噴射して該樹脂膜を溶解させることによって、該パッド部から樹脂膜を剥離させることを特徴とする請求項4記載の研磨方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂シートで構成された該樹脂膜を該パッド部から引き剥がすことによって、該パッド部から該樹脂膜を剥離させることを特徴とする請求項4記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの被加工物を研磨するための研磨パッドと、この研磨パッドを用いて実施される被加工物の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSIなどの半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイスの小型化と軽量化のために、ウェーハの裏面が研削されて該ウェーハが所定の厚さまで薄化されている。特に、近年、電子機器の小型化と薄型化などの要求に応えるため、研削によってウェーハの厚みを100μm以下、50μm以下というように極めて薄くすることが求められている。
【0003】
ところで、ウェーハの研削は、研削装置によって行われるが、この研削装置においては、研削砥石を高速で回転させながらウェーハの裏面(加工状態においては、上面)に押圧することによって行われている。このような研削方式によってウェーハの裏面を研削すると、該ウェーハの裏面(研削面)に深さが1μm前後のマイクロクラック(研削痕)からなる歪み層が形成され、この歪み層がウェーハの抗折強度を低下させる原因となる。
【0004】
そこで、ウェーハの裏面(研削面)を研磨装置によって研磨して歪み層を除去することが行われている(例えば、特許文献1参照)。ここで、研磨装置においては、スピンドルの先端に取り付けられた研磨パッドを回転させながらこれをウェーハの裏面に押圧することによって、ウェーハの裏面が研磨される。
【0005】
ここで、スピンドルに装着される前の研磨パッドは、回転可能なスピンドルの先端に装着される円板状の基台と、該基台の一方の端面に固定されたパッド部によって構成されているが、当該研磨パッドがスピンドルに装着される前においては、研磨パッドは、そのパッド部を保護するためにポリプロピレンなどの合成樹脂製のケース内に収容されており、研磨加工に際しては、作業者がケースから研磨パッドを取り出し、取り出した研磨パッドを研磨装置のスピンドルの先端に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、スピンドルに装着される前の研磨パッドは、合成樹脂製のケース内に収容されており、ウェーハなどの被加工物の研磨に際しては、作業者がケースから研磨パッドを取り出し、取り出した研磨パッドをスピンドルに装着するが、研磨装置には、研磨中の被加工物を保持するチャックテーブル、研磨パッドのドレッシングを行うドレッシング部、加工室を形成する加工室カバーなどの種々の機構が設けられている。このため、作業者がケースから取り出した研磨パッドをスピンドルに装着する際に誤ってパッド部が各種機構に接触して破損し、或いは異物がパッド部に付着する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、スピンドルへの装着時におけるパッド部の破損やパッド部への異物の付着を防ぐことができる研磨パッド及び研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、回転可能なスピンドルの先端に装着された円板状の基台と、該基台の一方の端面に固定されたパッド部と、を備える研磨パッドであって、該スピンドルに装着される前の該パッド部の少なくとも研磨面を樹脂膜で被覆したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記研磨パッドによって被加工物を研磨する研磨方法であって、該スピンドルの先端に該研磨パッドを装着する研磨パッド装着ステップと、該樹脂膜を該パッド部から剥離させる剥離ステップと、該被加工物をチャックテーブルの保持面で保持する保持ステップと、該パッド部と該被加工物とを回転させながら接触させて該被加工物を研磨する研磨ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る研磨パッドによれば、当該研磨パッドがスピンドルに装着される前の状態において、研磨パッドのパッド部の少なくとも研磨面に樹脂膜を被覆して該パッド部を保護するようにしたため、被加工物の研磨に際して研磨パッドをケースから取り出してスピンドルに装着する際にパッド部がチャックテーブルやドレッシング部、加工室カバーなどの各種機構に接触したとしても、該パッド部の少なくとも研磨面が破損するなどの不具合が発生することがない。
【0012】
また、本発明に係る研磨方法によれば、パッド部の少なくとも研磨面が樹脂膜によって被覆された研磨パッドを研磨パッド装着ステップにおいてスピンドルの先端に装着した後、剥離ステップにおいて研磨パッドのパッド部の少なくとも研磨面を被覆する樹脂膜を剥離させるようにしたため、次の保持ステップにおいてチャックテーブルの保持面に保持された被加工物を次の研磨ステップにおいて研磨パッドのパッド部によって正常に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る研磨パッドを備える研磨装置の側断面図である。
【
図2】本発明に係る研磨パッドの上下を逆にして示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る研磨パッドの上下を逆にして示す図であって、(a)は側面図、(b)は側断面図である。
【
図4A】本発明に係る研磨方法における研磨パッド装着ステップを示す破断側面図である。
【
図4B】本発明に係る研磨方法における剥離ステップを示す破断側面図である。
【
図4C】本発明に係る研磨方法における保持ステップを示す破断側面図である。
【
図4D】本発明に係る研磨方法における研磨ステップを示す破断側面図である。
【
図5】本発明に係る研磨方法における研磨ステップの別形態を示す破断側面図である。
【
図6】本発明に係る研磨方法において熱可塑性樹脂シートで構成された樹脂膜を剥離させる状態を示す破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
[研磨装置の構成]
まず、本発明に係る研磨パッドを備える研磨装置の構成を
図1に基づいて説明する。
【0016】
図1に示す研磨装置1は、被加工物である円板状のウェーハW(
図4C及び
図4D参照)を研磨加工するものであって、次の構成要素を備えている。すなわち、研磨装置1は、ウェーハWを保持して軸中心回りに回転するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10に吸引保持されたウェーハWを研磨加工する研磨ユニット20と、該研磨ユニット20をチャックテーブル10の保持面11aに対して垂直方向に昇降させる研磨送り手段30と、純水を上方に向かって噴射する純水供給ユニット40と、研磨加工中に研磨剤であるスラリーを研磨パッド25の中心部からウェーハWに向けて供給するスラリー供給ユニット50と、チャックテーブル10の傾きを調整する傾き調整機構60を主要な構成要素として備えている。
【0017】
ここで、ウェーハW(
図4C及び
図4D参照)は、単結晶のシリコン母材で構成されており、
図4C及び
図4Dに示す状態において下方を向いている表面には、複数の不図示のデバイスが形成されており、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された不図示の保護テープによって保護されている。
【0018】
次に、研磨装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、研磨ユニット20、研磨送り手段30、純水供給ユニット40、スラリー供給ユニット50及び傾き調整機構60の構成についてそれぞれ説明する。
【0019】
(チャックテーブル)
チャックテーブル10は、円板状の部材であって、その上部中央部にはポーラス部材11が組み込まれている。ここで、ポーラス部材11は、多孔質のセラミックなどで構成されており、その上面が円板状のウェーハWを吸引保持する保持面11aを構成している。
【0020】
そして、チャックテーブル10は、その中心から垂直下方に延びる回転軸12に連結された回転駆動源である電動モータ13によって回転軸12の軸心回りに所定の速度で回転駆動される。なお、チャックテーブル10のポーラス部材11は、真空ポンプなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。
【0021】
また、本実施形態に係る研磨装置1は、前後方向(
図1の左右方向)に長い矩形ボックス状のベース2を備えており、このベース2内には、チャックテーブル10を保持面11aに対して水平方向(
図1の左右方向)に移動させる不図示の水平移動機構が設けられている。
【0022】
(研磨ユニット)
研磨ユニット20は、ホルダ21内に収容された回転駆動源であるスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回転駆動される垂直なスピンドル23と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された本発明に係る研磨パッド25とを備えている。
【0023】
ここで、本発明に係る研磨パッド25の詳細を
図2及び
図3に基づいて説明する。
【0024】
研磨パッド25は、アルミニウム合金などによって構成された円板状の基台25aと、該基台25aの下面に取り付けられた円板状のパッド部25bによって構成されており、これらの基台25aとパッド部25bの各中心部には、スラリーが通過するための円孔状の通路25a1,25b1がそれぞれ形成されている。ここで、パッド部25bは、砥粒を含んだ不織布やウレタンなどのパッド材によって構成されている。
【0025】
而して、研磨パッド25が後述の研磨パッド装着ステップにおいてスピンドル23の下端に取り付けられたマウント24に装着される前の状態においては、該研磨パッド25のパッド部25bの全表面は、水溶性樹脂または熱可塑性樹脂シートによって構成された樹脂膜26によって被覆されている。ここで、水溶性樹脂には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールポリアクリル酸ブロック共重合体、ポリビニルアルコールポリアクリル酸エステルブロック共重合体、ポリグリセリンなどが使用される。また、熱可塑性シートには、ポリエチレン(PE)シート、ポリプロピレン(PP)シート、ポリスチレン(PS)シートなどが使用される。
【0026】
(研磨送り手段)
研磨送り手段30は、研磨ユニット20をチャックテーブル10の保持面11aに対して垂直な方向(上下方向)に沿って昇降させるものであって、
図1に示すように、ベース2の上面の+Y軸方向端部(後端部)上に垂直に立設された矩形ボックス状のコラム3に配置されている。この研磨送り手段30は、研磨ユニット20のホルダ21を、該ホルダ21に保持されたスピンドルモータ22とスピンドル23及び研磨パッド25と共に左右一対のガイドレール31(
図1には、一方のみ図示)に沿って上下方向に昇降させるものである。ここで、「左右」とは、
図1の紙面垂直方向であって、一対のガイドレール31は、コラム3の端面(前面)に垂直且つ互いに平行に配設されている。
【0027】
また、ホルダ21の背面には、ブロック状のスライダ32が水平に突設されており、このスライダ32には、垂直なボールネジ33が螺合挿通している。そして、このボールネジ33の上端には、コラム3の上面にブラケット34を介して縦置き状態で取り付けられた回転駆動源であるサーボモータ35の出力軸が連結されており、同ボールネジ33の下端は、軸受36によってコラム3に回転可能に支持されている。なお、コラム3の側端面には、スケール37がボールネジ33に沿って垂直に取り付けられており、スライダ32の背面には、スケール37の目盛りを読み取る読み取り部38が取り付けられている。
【0028】
したがって、サーボモータ35を起動してボールネジ33を正逆転させれば、このボールネジ33に螺合するスライダ32が一対のガイドレール31に沿って研磨ユニット20と共に上下動するため、研磨ユニット20が昇降して研磨パッド25のウェーハWに対する研磨量(研磨代)が設定される。
【0029】
(純水供給ユニット)
純水供給ユニット40は、研磨パッド25のパッド部25bの表面全面を被覆する樹脂膜26(
図2及び
図3参照)が水溶性樹脂で構成されている場合において、樹脂膜26に向けて純水を噴射して該樹脂膜26を溶解させてこれをパッド部25bから剥離させるものであって、純水を上方に向かって噴射する噴射ノズル41と、該噴射ノズル41に純水を供給する純水供給源42を備えており、噴射ノズル41と純水供給源42とは、配管43によって接続されている。ここで、噴射ノズル41は、チャックテーブル10に設置されており、不図示の水平移動機構によってチャックテーブル10と共に
図1の左右方向に移動可能である。なお、本実施形態に係る研磨装置1においては、チャックテーブル10と、研磨ユニット20のスピンドル23の一部とマウント24及び研磨パッド25と、傾き調整機構60などは、ベース2上に配置された矩形ボックス状の加工室カバー4によって覆われた加工室Sに収容されている。
【0030】
(スラリー供給ユニット)
スラリー供給ユニット50は、研磨加工中において研磨パッド25の中心部から研磨剤であるスラリーをウェーハWに向けて供給するものであって、スラリー供給源51と、該スラリー供給源51からのスラリーを研磨パッド25の中心部に供給する供給経路を備えている。ここで、供給経路は、スピンドルモータ22とスピンドル23の各軸中心に垂直に貫設された供給路52と、マウント24の軸中心部に形成された供給路53と、研磨パッド25の基台25aとパッド部25bの各軸中心に形成された通路25a1,25b1によって構成されている。そして、スピンドルモータ22とスピンドル23の軸心に形成された供給路52とスラリー供給源51とは、配管55によって接続されている。なお、研削水には、純水が好適に用いられる。
【0031】
(傾き調整機構)
傾き調整機構60は、チャックテーブル10の傾きを調整する機構であって、
図1に示すように、チャックテーブル10とベース2との間に設けられている。具体的には、この傾き調整機構60は、2つのアクチュエータ61(
図1には1つのみ図示)と1つのピボット62によって構成されており、これらのアクチュエータ61とピボット62は、周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配置されている。
【0032】
ここで、各アクチュエータ61は、ネジ軸63を電動モータ64によって正逆転させて上下動させることによって、チャックテーブル10を、ピボット62を中心として傾動させてその保持面11aの水平面に対する傾きを調整するものである。
【0033】
[研磨方法]
次に、以上のように構成された研磨装置1において実施される本発明に係るウェーハWの研磨方法について説明する。
【0034】
本発明に係る研磨方法は、1)研磨パッド装着ステップと、2)剥離ステップと、3)保持ステップと、4)研磨ステップを順次経てウェーハWを研磨する方法である。以下、これらの各ステップについてそれぞれ説明する。
【0035】
1) 研磨パッド装着ステップ:
研磨パッド装着ステップは、ポリプロピレンなどの合成樹脂製の不図示のケースに収容された研磨パッド(パッド部25bの全表面が樹脂膜26によって被覆された研磨パッド)25を作業者がケースから取り出してスピンドル23の先端に固定されたマウント24に装着するステップである。
【0036】
すなわち、作業者は、ケースから取り出した研磨パッド25を、
図4Aに矢印にて示すように、マウント24に向けて持ち上げて該マウント24の下面に密着させる。ここで、マウント24の周方向複数箇所には、複数(
図4Aには、1つのみ図示)の円孔状のボルト挿通孔24aが貫設されており、研磨パッド25の基台25aのボルト挿通孔24aに対応する周方向複数箇所には、ボルト挿通孔24aと同数の雌ネジ穴25a2(
図4Aには、1つのみ図示)が形成されている。したがって、マウント24に形成された複数のボルト挿通孔24aに上方から挿通するボルト27(
図4Aには、2つのみ図示)を研磨パッド25の基台25aに形成された雌ネジ穴25a2にねじ込むことによって、研磨パッド25がマウント24の下面に装着される。なお、この状態においては、研磨パッド25のパッド部25bの全表面は、樹脂膜26によって被覆されている。
【0037】
而して、この研磨パッド装着工程において、作業者が不図示のケースから取り出した研磨パッド25のパッド部25bは、その全表面が樹脂膜26によって保護されているため、この研磨パッド25を前述のようにマウント24に装着する際にパッド部25bがチャックテーブル10や加工室カバー4などの各種機構に接触したとしても、該パッド部25bが破損するなどの不具合が発生することがない。
【0038】
2)剥離ステップ:
剥離ステップは、前記研磨パッド装着工程においてマウント24に装着された研磨パッド25のパッド部25bを被覆する樹脂膜26をパッド部25bから剥離させてこれを除去する工程であって、樹脂膜26が水溶性樹脂で構成されている場合には、
図4Bに示すように、純水供給ユニット40の純水供給源42から配管43を経て噴射ノズル41へと供給される純水を上方に向かって噴射する。このとき、噴射ノズル41の上方においては、スピンドルモータ22(
図1参照)によって研磨パッド25が図示矢印方向に所定の速度で回転するとともに、噴射ノズル41が不図示の水平移動機構によってチャックテーブル10と共に
図4Bの矢印方向(左右方向)に往復移動するため、噴射ノズル41から上方に向かって噴射する純水は、研磨パッド25のパッド部25bの全表面を被覆する樹脂膜26を溶解させてパッド部25bから剥離させて除去する。
【0039】
3)保持ステップ:
保持ステップは、研磨加工すべきウェーハWをチャックテーブル10の保持面11aに保持させる工程であって、この保持工程においては、
図4Cに示すように、ウェーハWが不図示の保護テープを下にしてチャックテーブル10の保持面11a上に載置される。そして、チャックテーブル10のポーラス部材11が真空ポンプなどの不図示の吸引源に接続され、該ポーラス部材11が真空引きされる。すると、ポーラス部材11に負圧が発生するため、この負圧に引かれてウェーハWがチャックテーブル10の保持面11a上に吸引保持される。
【0040】
4)研磨ステップ:
研磨ステップは、前記保持ステップにおいてチャックテーブル10の保持面11a上に保持されたウェーハWを、回転する研磨パッド25のパッド部25bによって研磨するステップであって、この研磨ステップにおいては、
図4Dに示すように、チャックテーブル10と研磨パッド25が共に矢印方向に所定の速度で回転駆動されるとともに、不図示の水平移動機構によってチャックテーブル10と研磨パッド25が
図4Dの矢印方向(左右方向)に往復移動する状態で、
図1に示す研磨送り手段30によって研磨パッド25が下降し、該研磨パッド25のパッド部25bがチャックテーブル10に保持されて回転するウェーハWに接触する。すると、パッド部25bによるウェーハWの裏面(
図4Dにおいては、上面)の研磨が行われる。
【0041】
そして、この研磨ステップにおけるウェーハCの研磨においては、
図1に示すスラリー供給ユニット50からスラリーが配管55と供給路52,53を経て通路25a1,25b1からウェーハWに向けて供給され、このスラリーの作用によってウェーハWの裏面が効果的に研磨される。
【0042】
この研磨ステップにおいて、ウェーハWに対する研磨パッド25による研磨加工が終了すると、
図1に示す研磨送り手段30によって研磨パッド25が上昇し、該研磨パッド25のパッド部25bがウェーハWから離間し、ウェーハWに対する一連の研磨加工が終了する。
【0043】
以上のように、本発明に係るウェーハWの研磨方法においては、研磨パッド25のパッド部25bの全表面が樹脂膜26によって被覆された研磨パッド25を研磨パッド装着ステップにおいてスピンドル23の先端(マウント24)に装着した後、剥離ステップにおいて研磨パッド25のパッド部25bの全表面を被覆する樹脂膜26を剥離させるようにしたため、次の保持ステップにおいてチャックテーブル10の保持面11aに保持されたウェーハWを次の研磨ステップにおいて研磨パッド25のパッド部25bによって正常に研磨することができる。
【0044】
ところで、
図5に示すように、チャックテーブル10にドレッシング部70が設置されている場合には、ドレッシングされる研磨パッド25のパッド部25bに向けて純水(洗浄水)を噴射する噴射ノズル41がチャックテーブル10に設けられているが、前述のウェーハWの研磨方法における剥離ステップにおいては、噴射ノズル41からパッド部25bに向けて純水を噴射し、該パッド部25bの全表面を覆う樹脂膜(水溶性樹脂膜)を溶解させてパッド部25bから剥離させるようにしてもよい。
【0045】
なお、以上説明した研削方法での剥離ステップにおいては、研磨パッド25のパッド部25bを被覆する樹脂膜26が水溶性樹脂で構成されているために該樹脂膜26に純水を噴射し、この樹脂膜26を純水で溶解させるようにしたが、樹脂膜26が熱可塑性樹脂シートで構成されている場合には、
図6に示すように、作業者が樹脂膜26を手で引き剥がすことによって、該樹脂膜(熱可塑性シート)26をパッド部25bから剥離させることができる。
【0046】
ところで、以上の実施形態では、研磨パッド25のパッド部25bの全表面を樹脂膜26によって被覆する構成を採用したが、パッド部25bの少なくとも研磨面(下面)を樹脂膜26によって被覆する構成を採用しても、本発明の前記効果を得ることができる。
【0047】
なお、以上は被加工物としてウェーハを研磨する研磨パッドとこの研磨パッドを用いるウェーハの研磨方法について説明したが、本発明は、ウェーハ以外の任意の被加工物の研磨に供される研磨パッド及び該研磨パッドを備える研磨装置において実施される被加工物の研磨方法に対しても同様に適用可能である。
【0048】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1:研磨装置、2:ベース、3:コラム、4:加工室カバー、
10:チャックテーブル、11:ポーラス部材、11a:保持面、12:回転軸、
13:電動モータ、20:研磨ユニット、21:ホルダ、22:スピンドルモータ、
23:スピンドル、24:マウント、24a:ボルト挿通孔、25:研磨パッド、
25a:基台、25a1:通路、25a2:雌ネジ穴、25b:パッド部、
25b1:通路、26:樹脂膜、27:ボルト、30:研磨送り手段、
31:ガイドレール、32:スライダ、33:ボールネジ、34:ブラケット、
35:サーボモータ、36:軸受、37:スケール、38:読み取り部、
40:純水供給ユニット、41:噴射ノズル、42:純水供給源、43:配管、
50:スラリー供給ユニット、51:スラリー供給源、52,53:供給路、
55:配管、60:傾き調整機構、61:アクチュエータ、62:ピボット、
63:ネジ軸、64:電動モータ、70:ドレッシング部、S:加工室、
W:ウェーハ(被加工物)