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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134834
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】尿素吸着材
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20240927BHJP
   C01B 39/48 20060101ALI20240927BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B01J20/18 B
C01B39/48
B01D15/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045235
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】中澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】河部 正
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 宏
(72)【発明者】
【氏名】土谷 和愛
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭太
(72)【発明者】
【氏名】荏原 充宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4D017AA01
4D017AA11
4D017BA04
4D017CA05
4D017CB01
4D017DA01
4D017DA09
4G066AA61B
4G066BA09
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA27
4G066DA07
4G066DA11
4G066EA13
4G066FA37
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA69
4G073BA75
4G073BB03
4G073BB14
4G073BB48
4G073BD21
4G073CZ17
4G073FB11
4G073FB21
4G073FB36
4G073FC19
4G073FD01
4G073FD08
4G073FD23
4G073GA01
4G073UA06
4G073UB60
(57)【要約】
【課題】
ゼオライトの単位質量当たりの尿素吸着量が高いゼオライトを含む尿素吸着材、及びそれを用いた尿素吸着方法の少なくともいずれかを提供する。
【解決手段】
最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有し、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が22超45以下であり、なおかつ酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%以下であるゼオライト、を含む尿素吸着材。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有し、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が22超45以下であり、なおかつ酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%以下であるゼオライト、を含む尿素吸着材。
【請求項2】
前記ゼオライトは、酸化物換算のカリウム含有量が1.0質量%以下である請求項1に記載の尿素吸着材。
【請求項3】
最大の細孔が酸素8員環である前記骨格構造が、CHA型、AEI型、AFX型又はLEV型である請求項1に記載の尿素吸着材。
【請求項4】
前記ゼオライトが、結晶性アルミノシリケートである請求項1に記載の尿素吸着材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の尿素吸着材に含まれるゼオライトと尿素とを接触させる、尿素の吸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゼオライトを含む尿素吸着材、及び尿素の吸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析は透析液を使用して血液から老廃物を人工的に除去する処理であり、半透膜を介して血液と透析液を接触することで血液中の老廃物、主として尿素、が取り除かれる。人工透析は、1回あたりに使用される透析液の量も多く、かつ、その頻度も高い。そのため、透析液は人工透析後、排液(透析排液)として大量に排出及び処理される。近年、QOL向上の観点から、透析患者が各家庭で人工透析を行う在宅透析が着目されているが、透析排液の取扱がその普及の妨げとなっている。
【0003】
そのため、透析排液の処理及び再生を目的に、ゼオライトを用いた尿素吸着材が検討されている。例えば、特許文献1では、水に不溶なポリマーとアルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が40のZSM-5とを含有する尿素吸着ファイバーが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2018/139047号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ゼオライトの単位質量当たりの尿素吸着量が、透析排液の処理及び再生を目的とした場合に十分ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、ゼオライトを用いた尿素吸着材について検討した。その結果、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有するゼオライトの内、特定の組成を有するゼオライトがゼオライトの単位質量当たりの尿素吸着量が高い尿素吸着材として適していることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は特許請求の範囲に記載のとおりであり、また、本開示の要旨は以下のとおりである。
[1] 最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有し、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が22超45以下であり、なおかつ酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%以下であるゼオライト、を含む尿素吸着材。
[2] 前記ゼオライトは、酸化物換算のカリウム含有量が1.0質量%以下である前記[1]に記載の尿素吸着材。
[3] 最大の細孔が酸素8員環である前記骨格構造が、CHA型、AEI型、AFX型又はLEV型である前記[1]又は[2]に記載の尿素吸着材。
[4] 前記ゼオライトが、結晶性アルミノシリケートである前記[1]から[3]のいずれか一つに記載の尿素吸着材。
[5] 前記[1]から[4]のいずれか一つに記載の尿素吸着材に含まれるゼオライトと尿素とを接触させる、尿素の吸着方法。
[6] 尿素吸着における使用のためのゼオライトであって、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有し、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が22超45以下であり、なおかつ酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%以下であるゼオライト。
[7] 尿素吸着における使用のための尿素吸着材であって、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有し、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が22超45以下であり、なおかつ酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%以下であるゼオライトを含む尿素吸着材。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、ゼオライトの単位質量当たりの尿素吸着量が高いゼオライトを含む尿素吸着材、及びそれを用いた尿素吸着方法の少なくともいずれかを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本明細書における各用語の意味について説明する。
【0010】
本明細書において、「ゼオライト」とは、骨格原子(以下、「T原子」ともいう。)が酸素(O)を介した規則的構造を有し、T原子が金属原子及び半金属原子の少なくともいずれかのみからなる化合物である。金属原子としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)及びスズ(Sn)からなる群から選ばれる1種以上が例示でき、アルミニウムが好ましい。半金属原子としては、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)からなる群から選ばれる少なくとも1種が例示でき、ケイ素が好ましい。
【0011】
「ゼオライト類似物質」とは、T原子が酸素を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子に少なくとも金属及び半金属以外の原子を含む化合物である。ゼオライト類似物質として、アルミノフォスフェート(AlPO)やシリコアルミノフォスフェート(SAPO)など、T原子としてリン(P)を含む複合リン化合物が例示できる。「ゼオライト類似物質」は、T原子が金属原子及び半金属原子の少なくともいずれかのみからなる「ゼオライト」とは区別される。
【0012】
なお、T原子がアルミニウム(Al)とケイ素(Si)からなるゼオライトは、結晶性アルミノシリケートに該当する。結晶性アルミノシリケートには、T原子がアルミニウムとケイ素のみからなる非置換型の結晶性アルミノシリケートと、T原子を構成するアルミニウムとケイ素の一部が他の金属原子及び半金属原子に置換した置換型の結晶性アルミノシリケートが含まれる。
【0013】
本明細書において、「結晶性アルミノシリケート」とは、T原子がアルミニウム(Al)とケイ素(Si)からなるゼオライトである。「結晶性アルミノシリケート」は、その粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンにおいて、結晶性のXRDピークを示し、結晶性のXRDピークを示さない「非晶質アルミノシリケート」とは区別される。
【0014】
本明細書において、ゼオライトにおける「規則的構造」とは、国際ゼオライト学会(International ZeoliteAssociation)のStructure Commissionが定めている構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)で特定される骨格構造である。例えば、「CHA型ゼオライト」は構造コード「CHA」で特定される骨格構造を有するゼオライトである。各ゼオライトの骨格構造(構造コード)は、例えば、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition(2007)に記載されたXRDパターン(以下、「参照パターン」ともいう。)との対比によって同定することができる。
【0015】
本明細書において、XRDパターンは以下の条件のXRD測定より得られるものが挙げられる。
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 40°/分
測定範囲 : 2θ=3°から43°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
検出器 : D/teX Ultra
Niフィルター使用
【0016】
結晶性のXRDピークは、一般的な解析ソフト(例えば、IGOR Pro 8、WaveMetrics社製や、SmartLab StudioII、リガク社製)を使用したXRDパターンの解析においてピークトップの2θが特定され検出されるピークである。特に限定されるものではないが、XRDピークの半値幅(半値全幅)としては、2θ=0.50°以下を例示できる。
【0017】
以下、本開示の一実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態の尿素吸着材は、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有し、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が22超45以下であり、なおかつ酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%以下であるゼオライトを含む。
【0019】
本実施形態の尿素吸着剤に含有されるゼオライトは、前述した条件を満足するゼオライトであれば特に限定されるものではないが、尿素をより吸着させる観点から、結晶性アルミノシリケートであることが好ましい。
【0020】
本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトは、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有する。最大の細孔が酸素8員環である骨格構造とは、骨格構造に形成される細孔(つまり、酸素とT原子によって形成される細孔)のうち、酸素数が最も多い細孔が酸素8員環である骨格構造を指す。最大の細孔が酸素8員環である骨格構造は、酸素8員環の細孔のみからなる骨格構造であってもよく、酸素8員環の細孔及び酸素数が8よりも少ない細孔(例えば、酸素6員環及び酸素4員環の少なくともいずれか)からなる骨格構造であってもよい。
【0021】
細孔の酸素数は、ゼオライトの骨格構造に依存するため、ゼオライトの骨格構造から特定することができる。各骨格構造における細孔の酸素数は、例えば、ATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES(6th Edition、Elsevier、Structure Commission of the International Zeolite Association、2007)に記載されている。
【0022】
本実施形態の尿素吸着材において、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造は、尿素をより吸着させる観点から、CHA型、AEI型、AFX型、又はLEV型であることが好ましく、CHA型であることがより好ましい。
【0023】
本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトは、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が22超45以下である。アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)は、尿素をより吸着させる観点から、22超35以下であることがより好ましく、23以上32以下であることがさらにより好ましく、23以上29以下であることが特に好ましい。
【0024】
本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトは、酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%以下である。酸化物換算のナトリウム含有量は、尿素をより吸着させる観点から、0.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%未満であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%未満であることがより更に好ましい。ゼオライトに含有されるナトリウムの状態は、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウムイオン、ナトリウム化合物(例えば、NaO)、又はそれら両方が含まれる状態であることを例示することができる。
【0025】
なお、酸化物換算のナトリウム含有量(質量%)は、ゼオライト100質量%に対する含有量であり、ゼオライトに含まれるナトリウム(Na)を酸化ナトリウム(NaO)として換算した質量の、ゼオライトの質量に対する百分率として求めることができる。また、本明細書において、ある成分の含有量が所定の含有量以下(又は所定の含有量未満)であるとは、所定の含有量以下(又は所定の含有量未満)でその成分を含むものであってもよく、その成分を含まないもの(すなわち、0質量%)であってもよい。
【0026】
本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトは、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有し、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が22超45以下であり、なおかつ、酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%以下であれば、それら以外の構成については特に限定されるものではない。
【0027】
本実施形態の尿素吸着材を透析排液の処理及び再生に適用する観点からは、本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトは、酸化物換算のカリウム含有量が1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%未満であることが特に好ましい。なお、酸化物換算のカリウム含有量(質量%)は、ゼオライト100質量%に対する含有量であり、ゼオライトに含まれるカリウム(K)を酸化カリウム(KO)として換算した質量の、ゼオライトの質量に対する百分率として求めることができる。
【0028】
本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトにおいて、酸化物換算のナトリウムと酸化物換算のカリウムの含有量の合計量は、尿素をより吸着させる観点から、1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以下であることが更により好ましく、0.02質量%未満であることが特に好ましい。
【0029】
本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトは、カチオンタイプについては任意であり、例えば、アンモニウム型(NH 型)、ナトリウム型(Na型)、カリウム型(K型)又はプロトン型(H型)であることが挙げられる。本実施形態の尿素吸着材を透析排液の処理及び再生に適用する観点からは、本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトは、プロトン型(H型)又はナトリウム型(Na型)であることが好ましく、プロトン型(H型)であることがより好ましい。
【0030】
本実施形態の尿素吸着材におけるゼオライトの含有量は、尿素吸着材100質量%に対して、例えば、20質量%以上100質量%以下とすることができる。
【0031】
本実施形態の尿素吸着材は、前述したゼオライトのみにより構成されていてもよいが、ゼオライト以外の他の物質を含んでいてもよい。ゼオライト以外の他の物質としては、例えば、バインダー、成形助剤及び水の群から選ばれる1以上を挙げることができる。
【0032】
バインダーは、有機バインダーであってもよく、無機バインダーであってもよく、これらの両方のバインダーであってもよい。有機バインダーとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルメチルセルロース、デンプン、コーンスターチ、糖蜜、乳糖、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸、ポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種を例示することができる。無機バインダーとしては、例えば、粘土、シリカ、アルミナ及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を例示することができる。本実施形態の尿素吸着材を透析排液の処理及び再生に適用する観点から、バインダーは、無機バインダーであることが好ましく、無機バインダーの中でもシリカ及びジルコニアの少なくともいずれかであることがより好ましく、シリカが特に好ましい。
【0033】
本実施形態の尿素吸着材におけるバインダーの含有量は、例えば、尿素吸着材100質量%に対して、5質量%以上70質量%以下とすることができる。
【0034】
成形助剤としては、例えば、カルボキシルメチルセルロース(以下、「CMC」ともいう。)、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース及びセルロースナノファイバーの群から選ばれる1以上などの水溶性又は非水溶性セルロース;グアーガム及びヒドロキシプロピルグアーガムの少なくともいずれかなどのグアーガム誘導体;バイオガムに属するキサンタンガム、ウエランガム及びジェランガムの群から選ばれる1以上などの多糖類;ポリエチレンイミン誘導体;ポリビニルビニリドン(以下、「PVP」ともいう。);グリセリン、ポリビニルアルコール及びエチレングリコール誘導体の群から選ばれる1以上などのアルコール類;カチオン系、アニオン系、又はノニオン系界面活性剤;水性ウレタン;ポリアクリル酸誘導体などが例示でき、これらは、1種単独のみならず、2種以上が含有されていてもよい。CMCとしては、ナトリウム型カルボキシメチルセルロース(以下、「Na-CMC」ともいう。)であってもよい。好ましい成形助剤としては、Na-CMC及びヒドロキシプロピルセルロースの少なくともいずれかが挙げられる。
【0035】
本実施形態の尿素吸着材における成形助剤の含有量は、例えば、尿素吸着材100質量%に対して、0.1質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0036】
本実施形態の尿素吸着材における水の含有量は、例えば、尿素吸着材100質量%に対して、0.1質量%以上40質量%以下とすることができる。
【0037】
本実施形態の尿素吸着材に、前述したゼオライトに加えてバインダーが含有されることで、本実施形態の尿素吸着材を所定の形状に成形しやすくなる。また、本実施形態の尿素吸着材に、前述したゼオライトとバインダーに加え、成形助剤や水が含有されることで、成形性が向上する。成形体の形態である尿素吸着材は、例えば、前述したゼオライトとバインダー(必要に応じて成形助剤や水)の混合物を所定の形状に成形し、これを焼成することにより製造することができる。成形体の形状は、特に限定されるものではないが、球状、略球状、楕円状、円柱状、多面体状及び不定形からなる群から選ばれる少なくとも1種を例示することができる。
【0038】
成形体の大きさは、尿素の吸着効率を向上させたり、尿素を含む流体を流通させるときの圧力損失を低減させたりする観点から、0.1mm以上4.0mm以下のメジアン径であることが好ましく、0.3mm以上2.0mm以下のメジアン径であることがより好ましい。なお、メジアン径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%となる粒径(d50)を指す。
【0039】
次に、本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトの製造方法について説明する。
【0040】
本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトの製造方法は、特に限定されるものではないが、一例としては、アルミニウム源、ケイ素源、構造指向剤、アルカリ源及び水を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化する結晶化工程を含む方法を例示することができる。
【0041】
原料組成物に含まれるアルミニウム源は、アルミニウム(Al)を含む化合物であり、アルミニウムイソプロポキシド、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、アルミナゾル及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1以上が例示できる。なお、非晶質アルミノシリケートなどのアルミニウム(Al)とケイ素(Si)を含む物質は、アルミナ源として用いられるだけでなく、後述するシリカ源として用いることができる。
【0042】
原料組成物に含まれるシリカ源は、ケイ素(Si)を含む化合物であり、シリカゾル、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降法シリカ、ケイ酸ナトリウム、無定形ケイ酸及び非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる1以上が例示できる。
【0043】
構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)源は、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造のゼオライトを指向する物質であればよく、製造しようとする骨格構造(構造コード)のゼオライトを指向可能な公知のSDAを用いることができる。例えば、CHA型ゼオライトを指向するSDAとしては、(1-アダマンチル)トリメチルアンモニウム(以下、「ATMA」ともいう。)カチオン、シクロヘキシルエチルアンモニウム(以下、「CDMEA」ともいう。)カチオン、N-メチル-3-キヌクリジノールカチオン、トリメチルベンジルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン及びN,N,N-トリメチルエキソアミノノルボルネンカチオンからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。なお、SDAは、塩の形態であってもよく、塩化物、臭化物、ヨウ化物及び水酸化物から選ばれる1以上の塩の形態を例示することができる。SDAとしてATMAの塩を用いる場合には、ATMAの塩は、ATMAの水酸化物であることが好ましい。
【0044】
原料組成物に含まれるアルカリ源は、アルカリ金属元素を含む化合物であり、ナトリウム、カリウム、セシウム及びルビジウムの群から選ばれる1以上のアルカリ金属元素を含む化合物を例示することができる。アルカリ源は、例えば、アルカリ金属元素を含む水酸化物、炭酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物及び硫酸塩からなる群から選択される1以上の塩の形態であってもよい。好ましいアルカリ源としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム及び硫酸ナトリウムからなる群の少なくとも1種以上を挙げることができる。なお、アルカリ源は、塩の形態に限定されるものではなく、ケイ酸ナトリウムなどの塩以外の形態であってもよい。
【0045】
原料組成物に含まれる水は、例えば、蒸留水、脱イオン水、純水、又はこれらの2種以上を用いることができる。なお、原料組成物に含まれる水以外の原料が、水和物、構造水、溶媒などの水を含むものである場合、水以外の原料に含まれる水を、原料組成物に含有される水とみなすことができる。
【0046】
原料組成物は、アルミニウム源、ケイ素源、構造指向剤源、アルカリ源及び水のみにより構成されていてもよいが、これらの原料以外の他の原料を含んでいてもよい。他の原料としては、例えば、種晶を例示することができる。
【0047】
原料組成物の組成は、製造しようとするゼオライトの骨格構造などに応じて適宜選択することができるが、好ましい組成の一例として、以下のモル組成を挙げることができる。なお、以下の組成における各比率はモル(mol)比であり、SiOはシリカ(mol)、Alはアルミナ(mol)、HOは水(mol)、Mはアルカリ金属元素(mol)、SDAは有機構造指向剤(mol)、OHは原料組成物中の水酸化物イオンの総量(mol)である。
SiO/Al比=22超、好ましくは24以上、かつ、
60以下、好ましくは45以下、より好ましくは35以下
SDA/SiO比 =0.01以上、好ましくは0.05以上、かつ、
0.30以下、好ましくは0.20以下
M/SiO比 =0.01以上、好ましくは0.05以上、かつ、
0.30以下、好ましくは0.20以下
O/SiO比 =2以上、好ましくは5以上、かつ
100以下、好ましくは50以下
OH/SiO比 =0.1以上、好ましくは0.15以上、かつ
0.35以下、好ましくは0.28以下
【0048】
原料組成物の結晶化処理は、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造(構造コード)のゼオライトが得られるように原料組成物を結晶化すればよく、その処理方法や処理条件は、製造しようとする骨格構造(構造コード)のゼオライトに応じて適宜選択することができる。好ましい処理方法としては、原料組成物を水熱処理することが挙げられる。水熱処理は、原料組成物を密閉耐圧容器に入れ、これを加熱すればよい。また、水熱処理条件としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
処理温度 :110℃以上、130℃以上又は150℃以上、かつ
210℃以下、200℃以下又は190℃以下
処理時間 :8時間以上、10時間以上、又は15時間以上、かつ
500時間以下又は300時間以下
処理圧力 :自生圧
【0049】
本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトの製造方法は、上述した結晶化工程に加え、洗浄工程、乾燥工程、SDA除去工程、アンモニウム処理工程、及び焼成処理工程からなる群から選択される1以上の工程を含むものであってもよい。
【0050】
洗浄工程は、結晶化して得られたゼオライトを洗浄する工程である。例えば、洗浄工程では、結晶化して得られたゼオライトを純水で洗浄すればよい。
【0051】
乾燥工程は、結晶化して得られたゼオライト、又は洗浄処理したゼオライトから水分を除去する工程である。乾燥処理の条件は、ゼオライトから水分を除去することができれば特に限定されるものではない。例えば、乾燥温度については、100℃以上150℃以下であることを例示することができる。また、例えば、乾燥時間については2時間以上20時間以下であることを例示することができる。また、例えば、乾燥時の雰囲気については、大気中であることを例示することができる。
【0052】
SDA除去工程は、結晶化して得られたゼオライト、洗浄処理したゼオライト、又は乾燥処理したゼオライトに含まれるSDAを除去する工程である。通常、SDAを用いて結晶化させたゼオライトは、その細孔内にSDAを含有している。SDA除去工程が含まれるにより、ゼオライトに含まれるSDAを除去することができる。
【0053】
SDA除去処理は、SDAが除去されれば任意の条件で行うことができる。SDAの除去方法としては、例えば、酸性水溶液を用いた液相処理、レジンなどを用いた交換処理、及び熱処理(熱分解)からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。製造効率の観点から、SDA除去処理は、熱処理(熱分解)であることが好ましい。熱処理(熱分解)の条件は、SDAが除去されれば特に限定されるものではない。例えば、熱処理温度については、400℃以上800℃以下であることを例示することができる。また、例えば、熱処理時間については、1時間以上5時間以下であることを例示することができる。また、例えば、熱処理時の雰囲気については、大気中であることを例示することができる。
【0054】
アンモニウム処理工程は、結晶化して得られたゼオライト、洗浄処理したゼオライト、乾燥処理したゼオライト、又はSDA除去処理したゼオライトに含有されるアルカリ金属を除去するための工程である。アンモニウム処理は公知の方法で行うことができ、例えば、アンモニウムイオンを含有する水溶液とゼオライトとを接触させることで行うことができる。アンモニウムイオンを含有する水溶液とゼオライトとを接触させる時間が長くなるほどゼオライトから除去されるアルカリ金属量が多くなり、ゼオライトと接触させる水溶液中のアンモニウムイオン濃度が高くなるほどゼオライトから除去されるアルカリ金属量が多くなる。アンモニウム処理の条件は、このような特性を考慮して、当該処理により得られるゼオライトの酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%以下となるように、適宜調整すればよい。
【0055】
焼成処理は、ゼオライトを焼成する(熱する)処理であり、結晶化して得られたゼオライト、洗浄処理したゼオライト、乾燥処理したゼオライト、SDA除去処理したゼオライト、又はアンモニウム処理したゼオライトに対して行うことができる。焼成処理の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、焼成処理温度については、400℃以上700℃以下であることを例示することができる。また、例えば、焼成処理時間については、1時間以上5時間以下であることを例示することができる。また、例えば、焼成処理時の雰囲気については、大気中であることを例示することができる。焼成処理するゼオライトがアンモニウム処理したゼオライト(すなわち、カチオンタイプがアンモニウム型(NH 型)のゼオライト)である場合、400℃以上700℃以下の焼成処理により、カチオンタイプがプロトン型(H型)のゼオライトとなる。
【0056】
上述した工程を含む製造方法により、本実施形態の尿素吸着材に含有されるゼオライトを製造することができる。製造されるゼオライトは、本実施形態の尿素吸着材として用いることができる。また、製造されるゼオライトを、必要に応じて、前述した他の成分(バインダーや成形助剤や水)と混合して、得られた混合物を成形及び焼成し、成形体の形態の尿素吸着材としてもよい。
【0057】
本実施形態の尿素吸着材は、尿素の吸着に用いることができる。本実施形態の尿素吸着材を用いた尿素の吸着は、本実施形態の尿素吸着材に含まれるゼオライトと尿素とを接触させることで行うことができる。尿素は、気体や液体などの流体に含まれた状態でゼオライトと接触させることができ、液体に含まれた状態でゼオライトと接触させることが好ましい。ゼオライトと尿素とを接触させる具体的な方法としては、例えば、本実施形態の尿素吸着材を固定床流通式反応管に充填し、これに尿素を含む流体を流通させる方法や、本実施形態の尿素吸着材を、尿素を含む流体に分散させて放置又は振とうさせる方法を例示することができる。
【0058】
本実施形態の尿素吸着材を用いた尿素の吸着は、本実施形態の尿素吸着材に含まれるゼオライトと尿素とを接触させれば進行するため、ゼオライトと尿素の接触条件については特に限定されない。一例としては、ゼオライトと尿素の接触温度は、10~45℃とすることができる。なお、ゼオライトと尿素の接触時間については、吸着させたい尿素の量に応じて適宜設定することができる。
【0059】
以上説明した本実施形態の尿素吸着材は、後述する実施例にも示されている通り、ゼオライトの単位質量当たりの尿素吸着量が高い。一例として、本実施形態の尿素吸着材は、1質量%以上の尿素吸着量(後述する式(1)で表される尿素吸着量)を示す。このため、本実施形態の尿素吸着材は、透析排液の処理や再生に有用である。
【0060】
本実施形態の尿素吸着材が高い尿素吸着量を示す理由は明らかになっていないが、本実施形態の尿素吸着材に含まれるゼオライトが酸素8員環の細孔によって尿素を補足し、尿素に対して静電相互作用を発揮する所定の密度でアルミニウムがゼオライトに含まれることから、酸素8員環の細孔によって補足された尿素がゼオライトから離脱しにくくなり、尿素吸着量が高くなるものと推察される。アルミナに対するシリカのモル比が22超45以下の範囲外であるゼオライトや、酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%を超えるゼオライトでは、尿素に対して静電相互作用が働きにくくなり、尿素吸着量が低下するものと推察される。
【0061】
以上説明した本実施形態の尿素吸着材のうち、好ましい形態としては、例えば、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有し、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が23以上30以下であり、なおかつ酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%以下であるゼオライト、を含む尿素吸着材を挙げることができる。
【0062】
また、別の好ましい一実施形態としては、例えば、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有し、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が22超45以下であり、なおかつ酸化物換算のナトリウムと酸化物換算のカリウムの含有量の合計量が1.0質量%以下であるゼオライト、を含む尿素吸着材を挙げることができる。
【0063】
また、別の好ましい一実施形態としては、例えば、最大の細孔が酸素8員環である骨格構造を有し、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al比)が22超45以下であり、なおかつ酸化物換算のナトリウム含有量が1.0質量%以下であり、なおかつプロトン型(H型)のゼオライト、を含む尿素吸着材を挙げることができる。
【実施例0064】
以下、実施例において本開示をさらに詳細に説明する。しかしながら、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
(結晶相の同定)
一般的な粉末X線回折装置(装置名:Ultima IV Protectus、リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。測定条件は以下のとおりである。
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 40°/分
測定範囲 : 2θ=3°から43°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
検出器 : D/teX Ultra
Niフィルター使用
【0066】
得られたXRDパターンを、測定装置付随の解析プログラム(商品名:IGOR Pro 8、WaveMetrics社製)を使用し、ベースラインの補正、及び、補正後の各XRDピークの検出及び強度解析を行った。補正後のXRDパターンと、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition(2007)に記載のXRDパターン(参照パターン)とを比較することで、試料の骨格構造(結晶構造)を同定した。また、同定した骨格構造における最大の細孔(酸素数が最も多い細孔)の酸素数を、ATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES(6th Edition、Elsevier、Structure Commission of the International Zeolite Association、2007)を用いて特定した。
【0067】
(組成分析)
フッ酸(HF濃度:48質量%)、硝酸(HNO濃度:60質量%)及び純水を混合して得られた酸溶液(HF:0.96質量%、HNO:1.2質量%)10mLに、測定試料2mgを溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。得られたSi、Al、Na及びKの測定値から、それらを酸化物(SiO、Al、NaO及びKO)として換算した換算値を算出し、算出した換算値から、試料のSAR(SiO/Al)、NaO含有量(質量%)及びKO含有量(質量%)を求めた。
【0068】
(尿素吸着評価)
尿素(富士フイルム和光純薬株式会社製)をリン酸緩衝液(ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水、ナカライテスク株式会社製)に溶解し、230mg/dLの尿素溶液(評価前の尿素溶液)を調製した。次に、5mLマイクロチューブに該尿素溶液3mLとゼオライト粉末10mgを投入した後、5秒間超音波処理し、ゼオライト粉末を尿素溶液中に分散させた。37℃で2時間、マイクロチューブ振とうした。振とう後、ゼオライト粉末と上澄み(尿素溶液)を遠心分離した後、回収した上澄み200μLを評価後の尿素溶液とした。
【0069】
評価前後の尿素溶液を、リン酸緩衝液でそれぞれ5倍希釈して反応溶液とした。各反応溶液を5μLずつマイクロプレート(96ウェルプレート)にそれぞれ分注し、これに尿素測定キット(Urea Assay Kit、BioChain Institute Inc.社製;100μLのオルトフタルアルデヒド溶液(濃度0.4質量%以下、硫酸:10質量%)、100μLのホウ酸溶液(濃度0.8質量%以下、硫酸:22質量%))を滴下した。滴下後、尿素との反応により橙色に着色させた反応溶液を、測定溶液とした。
【0070】
一般的なマイクロプレートリーダー(装置名:Infinite M Nano+、TECAN社製)を使用し、吸光分析法により、520nmにおける測定溶液の吸光度を測定し、検量線を用いて評価前後の尿素溶液の尿素濃度を算出し、下記の式(1)によりゼオライト単位重量あたりの尿素吸着量(質量%)を算出した。
尿素吸着量=(a-b)×c÷d×100 (質量%)・・・(1)
a:評価前の尿素溶液中の尿素濃度[mg/dL]
b:評価後の尿素溶液中の尿素濃度[mg/dL]
c:尿素溶液の体積[dL]
d:ゼオライト粉末の質量[mg]
検量線は尿素濃度が既知の標準試料(富士フイルム和光純薬株式会社製)を使用して作成した。
【0071】
実施例1
(1-アダマンチル)トリメチルアンモニウム(以下、「ATMA」ともいう。)水酸化物水溶液、純水、水酸化ナトリウム水溶液及び非晶質アルミノシリケート(SAR:25.3)を加えよく混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
SiO/Al = 25.3
ATMA/Si = 0.081
Na/Si = 0.084
K/Si = 0.084
O/Si = 18
OH/Si = 0.249
【0072】
原料組成物を、内容積80mlのステンレス製オートクレーブに密閉し、55rpmで回転させながら150℃で48時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、得られた固形分を5倍質量の純水で洗浄した。洗浄後の固形分を大気中で110℃で20時間乾燥した後、大気中、600℃、2時間で焼成し、一次焼成粉を得た。次に、得られた一次焼成粉を、5倍質量の20質量%塩化アンモニウム水溶液と混合することでイオン交換した後、固形分の10倍質量の純水で洗浄し、大気中、110℃、20時間で乾燥し、次いで大気中、600℃、1時間で焼成してゼオライトを得、本実施例の吸着材とした。
【0073】
得られたゼオライトはカチオンタイプがH、SARが24.7、NaO含有量が0.01質量%未満(検出限界以下)及びKO含有量が0.01質量%未満(検出限界以下)のCHA型ゼオライト(最大の細孔:酸素8員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))であった。
【0074】
実施例2
ナトリウム含有量を調整するため、実施例で得られたCHA型ゼオライトを、該CHA型ゼオライトの15倍質量の0.03質量%塩化ナトリウム水溶液を用いて洗浄した。その後、10倍質量の純水で洗浄し、大気中で110℃、20時間で乾燥し、ゼオライトを得、本実施例の吸着材とした。
【0075】
得られたゼオライトはカチオンタイプがH及びNa、SARが24.7、NaO含有量が0.36質量%及びKO含有量が0.01質量%未満(検出限界以下)のCHA型ゼオライト(最大の細孔:酸素8員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))であった。
【0076】
実施例3
ATMA水酸化物水溶液、純水、水酸化ナトリウム水溶液及び非晶質アルミノシリケート(SAR:29.5)を加えよく混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
SiO/Al = 29.5
ATMA/Si = 0.081
Na/Si = 0.094
K/Si = 0
O/Si = 12
OH/Si = 0.175
【0077】
得られた原料組成物を内容積80mlのステンレス製オートクレーブに密閉し、55rpmで回転させながら170℃で70時間加熱したこと以外は実施例1と同様な方法でゼオライトを得、本実施例の吸着材とした。
【0078】
得られたゼオライトはカチオンタイプがH、SARが29.2、NaO含有量が0.01質量%未満(検出限界以下)及びKO含有量が0.01質量%未満(検出限界以下)のCHA型ゼオライト(最大の細孔:酸素8員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))であった。
【0079】
比較例1
実施例1で得られたゼオライトを、固形分の15倍質量の20質量%塩化ナトリウム水溶液を用いて洗浄した後、固形分の10倍質量の純水で洗浄し、大気中で110℃、20時間で乾燥し、ゼオライトを得、本比較例の吸着材とした。
【0080】
得られたゼオライトはカチオンタイプがH及びNa、SARが24.7、NaO含有量が1.27質量%及びKO含有量が0.01質量%未満(検出限界以下)のCHA型ゼオライト(最大の細孔:酸素8員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))であった。
【0081】
比較例2
ATMA水酸化物水溶液、純水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び非晶質アルミノシリケート(SAR:23.3)を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法でゼオライトを得、本比較例の吸着材とした。
SiO/Al = 23.3
ATMA/Si = 0.081
Na/Si = 0.140
K/Si = 0.029
O/Si = 18
OH/Si = 0.250
【0082】
得られたゼオライトはカチオンタイプがH、SARが22.0、NaO含有量が0.01質量%未満(検出限界以下)及びKO含有量が0.01質量%未満(検出限界以下)のCHA型ゼオライト(最大の細孔:酸素8員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))であった。
【0083】
比較例3
ATMA水酸化物水溶液、純水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び非晶質アルミノシリケート(SAR:62.7)を混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法でゼオライトを得、本比較例の吸着材とした。
SiO/Al = 62.7
ATMA/Si = 0.081
Na/Si = 0.068
K/Si = 0.101
O/Si = 18
OH/Si = 0.250
【0084】
得られたゼオライトはカチオンタイプがH、SARが52.1、NaO含有量が0.01質量%未満(検出限界以下)及びKO含有量が0.01質量%未満(検出限界以下)のCHA型ゼオライト(最大の細孔:酸素8員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))であった。
【0085】
比較例4
ATMA水酸化物水溶液、純水、水酸化ナトリウム水溶液、非晶質シリカ(製品名:Nipsil LP、東ソー・シリカ社製)、水酸化アルミニウム、FAU型ゼオライト(製品名:320NAA、東ソー社製;SAR:18.0、NaO:7.3質量%、KO:0.01質量%未満(検出限界))を混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO/Al = 34.0
ATMA/Si = 0.190
Na/Si = 0.240
K/Si = 0
O/Si = 12
OH/Si = 0.430
【0086】
原料組成物を、内容積80mlのステンレス製オートクレーブに密閉し、55rpmで回転させながら150℃で64時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、得られた固形分を5倍質量の純水で洗浄した。洗浄後の固形分を大気中、110℃、20時間乾燥した後、大気中、600℃、2時間で焼成し、ゼオライトを得、本比較例の吸着材とした。
【0087】
得られたゼオライトはカチオンタイプがHかつNa、SARが22.3、NaO含有量が2.20質量%及びKO含有量が0.01質量%未満(検出限界以下)のCHA型ゼオライト(最大の細孔:酸素8員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))であった。
【0088】
比較例5
国際公開2018/139047の参考例2で使用されたMOR型ゼオライトと同じMOR型ゼオライト(製品名:640HOA、東ソー社製;SAR:18.0、NaO:0.05質量%、KO:0.01質量%未満(検出限界以下)、最大の細孔:酸素12員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))を本比較例の吸着材とした。
【0089】
比較例6
MFI型ゼオライト(製品名:822HOA、東ソー社製;SAR:23.9、NaO:0.05質量%、KO:0.01質量%未満(検出限界以下)、最大の細孔:酸素10員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))を本比較例の吸着材とした。
【0090】
比較例7
国際公開2018/139047の参考例3で使用されたMFI型ゼオライトと同じMFI型ゼオライト(製品名:840HOA、東ソー社製;SAR:38.7、NaO:0.02質量%、KO:0.01質量%未満(検出限界以下)、最大の細孔:酸素10員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))を本比較例の吸着材とした。
【0091】
比較例8
ベータ型ゼオライト(製品名:940HOA、東ソー社製;SAR:40.7、NaO:0.04質量%、KO:0.01質量%未満(検出限界以下)、最大の細孔:酸素12員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))を本比較例の吸着材とした。
【0092】
比較例9
LTL型ゼオライト(製品名:500KOA、東ソー社製;SAR:6.2、NaO:0.22質量%、KO:16.6質量%、最大の細孔:酸素12員環、ゼオライト:結晶性アルミノシリケート(非置換型))を本比較例の吸着材とした。
【0093】
実施例及び比較例の吸着材を尿素吸着評価した結果を下表に示す。
【表1】
【0094】
表1より、実施例の吸着材は比較例の吸着材より尿素吸着量が上回っていることがわかる。すなわち、実施例の吸着材は、ゼオライト単位質量当たりの尿素吸着量が、比較例の吸着材よりも高いことがわかった。