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特開2024-134868エマルジョン組成物及びコーティング剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134868
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エマルジョン組成物及びコーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240927BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20240927BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20240927BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240927BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K5/09
C09D167/00
C09D5/02
C09D11/00
C09J167/00
C09J11/06
C09D7/41
A61K8/85
A61K8/06
A61K8/36
A61K8/19
A61Q5/02
A61Q5/00
A61Q19/00
A61Q13/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045292
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】福田 純己
(72)【発明者】
【氏名】万代 修作
【テーマコード(参考)】
4C083
4J002
4J038
4J039
4J040
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AC241
4C083AD091
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC38
4C083CC39
4C083DD31
4J002CF031
4J002CF091
4J002EG036
4J002FD020
4J002FD206
4J002GA01
4J002GB00
4J002GH01
4J002GJ01
4J002HA07
4J038CE022
4J038DD001
4J038JC38
4J038KA06
4J038MA10
4J038MA14
4J038PC08
4J038PC10
4J039AE06
4J039BC59
4J039CA06
4J040DD022
4J040ED001
4J040HD41
4J040JA03
4J040KA23
4J040LA01
4J040MA09
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】
沈降安定性に優れると共に、造膜性にも優れるエマルジョン組成物等を提供する
【解決手段】
脂肪族多価アルコール単位と脂肪族多価カルボン酸単位を主たる構成単位として有する脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、金属化合物(B)とを含むエマルジョン用樹脂組成物を含有するエマルジョン組成物であって、前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量が、エマルジョン組成物の固形分全量に対して110ppm以下であるエマルジョン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族多価アルコール単位と脂肪族多価カルボン酸単位を主たる構成単位として有する脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、金属化合物(B)とを含むエマルジョン用樹脂組成物を含有するエマルジョン組成物であって、前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量が、前記エマルジョン組成物の固形分全量に対して110ppm以下であるエマルジョン組成物。
【請求項2】
前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量が、前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び前記金属化合物(B)の合計含有量に対して120ppm以下である、請求項1記載のエマルジョン組成物。
【請求項3】
前記金属化合物(B)が、脂肪酸金属塩である、請求項1又は2記載のエマルジョン組成物。
【請求項4】
分散粒子径が10μm以下である、請求項1又は2記載のエマルジョン組成物。
【請求項5】
請求項1又は2記載のエマルジョン組成物を含有するコーティング剤。
【請求項6】
被コーティング物が紙基材である、請求項5記載のコーティング剤。
【請求項7】
被コーティング物がプラスチック基材である、請求項5記載のコーティング剤。
【請求項8】
請求項1又は2記載のエマルジョン組成物を用いてなる成形体。
【請求項9】
請求項1又は2記載のエマルジョン組成物を用いてなるフィルム。
【請求項10】
請求項1又は2記載のエマルジョン組成物を含有する化粧料。
【請求項11】
請求項1又は2記載のエマルジョン組成物を含有する農業用組成物。
【請求項12】
請求項1又は2記載のエマルジョン組成物を含有する塗料。
【請求項13】
請求項1又は2記載のエマルジョン組成物を含有するインク。
【請求項14】
請求項1又は2記載のエマルジョン組成物を含有する粘着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂を含有するエマルジョン組成物に関する。詳細には、脂肪族ポリエステル系樹脂を含有するエマルジョン組成物及びコーティング剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負担の軽減要請を背景に、各種の生分解性樹脂に関する研究開発が進んでいる。なかでも、脱有機溶剤化を促進する観点から、生分解性樹脂を含有するエマルジョン用樹脂組成物が注目されている。
【0003】
例えば、生分解性に優れるエマルジョン用樹脂組成物として、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル系樹脂を、ポリビニルアルコール等の分散剤を用いて乳化したエマルジョン組成物が提案されており、接着剤、塗料、コーティング剤等の様々な用途への展開が期待されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-204038号公報
【特許文献2】特開2004-238579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の脂肪族ポリエステル系樹脂を含むエマルジョン組成物では、沈降安定性や造膜性が不十分な場合があり、その用途等が制限される場合もあるため、更なる改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みなされたものであり、沈降安定性に優れると共に、造膜性にも優れるエマルジョン組成物等を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定の脂肪族ポリエステル系樹脂と、特定微量の金属化合物を併用することにより、沈降安定性に優れると共に、造膜性にも優れるエマルジョン組成物等を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下の[1]~[14]を提供する。
[1]
脂肪族多価アルコール単位と脂肪族多価カルボン酸単位を主たる構成単位として有する脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、金属化合物(B)とを含むエマルジョン用樹脂組成物を含有するエマルジョン組成物であって、前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量が、前記エマルジョン組成物の固形分全量に対して110ppm以下であるエマルジョン組成物。
[2]
前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量が、前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び前記金属化合物(B)の合計含有量に対して120ppm以下である、[1]記載のエマルジョン組成物。
[3]
前記金属化合物(B)が、脂肪酸金属塩である、[1]又は[2]記載のエマルジョン組成物。
[4]
分散粒子径が10μm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のエマルジョン組成物。
[5]
[1]~[4]記載のエマルジョン組成物を含有するコーティング剤。
[6]
被コーティング物が紙基材である、[5]記載のコーティング剤。
[7]
被コーティング物がプラスチック基材である、[5]記載のコーティング剤。
[8]
[1]~[4]のいずれかに記載のエマルジョン組成物を用いてなる成形体。
[9]
[1]~[4]のいずれかに記載のエマルジョン組成物を用いてなるフィルム。
[10]
[1]~[4]のいずれかに記載のエマルジョン組成物を含有する化粧料。
[11]
[1]~[4]のいずれかに記載のエマルジョン組成物を含有する農業用組成物。
[12]
[1]~[4]のいずれかに記載のエマルジョン組成物を含有する塗料。
[13]
[1]~[4]のいずれかに記載のエマルジョン組成物を含有するインク。
[14]
[1]~[4]のいずれかに記載のエマルジョン組成物を含有する粘着剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、沈降安定性に優れると共に、造膜性にも優れるエマルジョン組成物等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0011】
なお、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」又は「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)又は「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」又は「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
更に、「X及び/又はY(X,Yは任意の構成)」とは、X及びYの少なくとも一方を意味し、Xのみ、Yのみ、X及びY、の3通りを意味する。
【0012】
本発明の実施形態の一例に係るエマルジョン組成物(以下、「本エマルジョン組成物」という場合がある)は、脂肪族多価アルコール単位と脂肪族多価カルボン酸単位を主たる構成単位として有する脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、金属化合物(B)とを含むエマルジョン用樹脂組成物(以下、「本エマルジョン用樹脂組成物」という場合がある)を含有するエマルジョン組成物であって、前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量が、エマルジョン組成物の固形分全量に対して110ppm以下であることを特徴とする。前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量が前記範囲内であることにより、沈降安定性に優れると共に、造膜性にも優れるエマルジョン組成物等を提供することができる。
【0013】
本エマルジョン組成物の実施形態の一例としては、例えば、(A)成分、(B)成分、ポリビニルアルコール系樹脂(C1)等の分散剤(C)、及び水等の分散媒(D)を含有する本エマルジョン用樹脂組成物を含有するのが好適である。
また、本エマルジョン組成物は本エマルジョン用樹脂組成物を用いて得られるものでああり、具体的には、本エマルジョン用樹脂組成物を用いた転相乳化法等の公知の製造方法によって得られるものである。
以下、本エマルジョン用樹脂組成物及び本エマルジョン組成物について詳しく説明する。
【0014】
〔(A)成分〕
(A)成分は、例えば、下記式(1)で表される脂肪族多価アルコール単位及び下記式(2)で表される脂肪族多価カルボン酸単位を主たる構成単位として有する脂肪族ポリエステル系樹脂である。
【0015】
-O-R11-O- (1)
[式(1)中、R11は、2価の鎖状脂肪族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
【0016】
-OC-R21-CO- (2)
[式(2)中、R21は、2価の鎖状脂肪族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
【0017】
なお、前記「単位」とは、脂肪族ポリエステル系樹脂の製造に用いた単量体成分に由来して脂肪族ポリエステル系樹脂中に含まれる構成単位を意味し、「主たる構成単位」とは、対象とする単量体成分に由来する構成単位を、(A)成分の全構成単位中に50モル%以上含むことを意味する。この対象とする単量体に由来する構成単位の含有量は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80~100モル%である。例えば、脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸成分とを、脂肪族ポリエステル系樹脂の重合反応に用いる全単量体成分中に50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80~100モル%含む原料を重合反応して製造されたものであることが好ましい。
【0018】
式(1)の多価アルコール単位を与える脂肪族多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数2~10の脂肪族多価アルコールが好ましく、より好ましくは炭素数4~6の脂肪族多価アルコールである。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。なかでも、1,4-ブタンジオールが好ましい。前記脂肪族多価アルコールは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
式(2)の脂肪族多価カルボン酸単位を与える脂肪族多価カルボン酸成分は、脂肪族多価カルボン酸或いはそのアルキルエステル等の脂肪族多価カルボン酸誘導体であり、その脂肪族多価カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2~40の脂肪族多価カルボン酸が好ましく、より好ましくは炭素数4~10の脂肪族多価カルボン酸である。具体的には、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。なかでも、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、コハク酸とアジピン酸がより好ましい。前記の脂肪族多価カルボン酸成分は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
(A)成分の具体例としては、例えば、1,4-ブタンジオールとコハク酸を含む脂肪族ポリエステル系樹脂、1,4-ブタンジオール、アジピン酸、及びコハク酸を含む脂肪族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。より具体的には、本発明の効果を顕著に奏する観点から、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等が好適な例として挙げられる。これらのなかでも、ポリブチレンサクシネートアジペートが好ましい。
【0021】
脂肪族多価カルボン酸がコハク酸である場合、脂肪族ポリエステル系樹脂の全多価カルボン酸単位中のコハク酸由来の構成単位の割合は、通常50~100モル%、好ましくは80~100モル%、より好ましくは90~100モル%である。
【0022】
また、脂肪族多価カルボン酸がコハク酸とアジピン酸である場合、脂肪族ポリエステル系樹脂の全多価カルボン酸単位中のコハク酸由来の構成単位の割合は、通常50~95モル%、好ましくは60~93モル%、より好ましくは70~90モル%であり、全多価カルボン酸単位中のアジピン酸由来の構成単位の割合は、通常5~50モル%、好ましくは7~40モル%、より好ましくは10~30モル%である。
【0023】
(A)成分は、以下の物性を有するものが好ましい。
【0024】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上、更に好ましくは50,000以上であり、また、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、更に好ましくは400,000以下である。
なお、前記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
【0025】
(A)成分のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、通常0.1g/10分以上であり、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上であり、また、通常1,000g/10分以下であり、好ましくは500g/10分以下、より好ましくは100g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下であり、特に好ましくは30g/10分以下である。
【0026】
(A)成分の融点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上であり、また、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が前記範囲内にあることが好ましい。
【0027】
本エマルジョン用樹脂組成物において、(A)成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、多価アルコール単位や多価カルボン酸単位の異なる脂肪族ポリエステル系樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
(A)成分の含有量は、特に制限されないが、エマルジョン組成物全量に対して、15質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、更により好ましくは30質量%以上である。また、70質量%以下が好ましく、より好ましくは65質量%以下、更により好ましくは60質量%以下である。
【0029】
〔(B)金属化合物〕
本エマルジョン用樹脂組成物は、特定微量の金属化合物(B)を含有することが重要である。すなわち、前記特定の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、金属化合物(B)とを含有するエマルジョン用樹脂組成物を含有するエマルジョン組成物であって、前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量が、エマルジョン組成物の固形分全量に対して110ppm以下であることが重要である。
前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量が前記範囲を上回ると、沈降安定性が劣る傾向があると共に、造膜性が低下する傾向がある。
【0030】
前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量は、前記の沈降安定性と、造膜性とを高度に両立させる観点からは、エマルジョン組成物の固形分全量に対して、100ppm以下が好ましく、より好ましくは91ppm以下、更により好ましくは77ppm以下である。
また、前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量は、前記の沈降安定性と、造膜性とを高度に両立させる観点から、9ppm以上が好ましく、より好ましくは14ppm以上、更により好ましくは18ppm以上、特に好ましくは23ppm以上である。
なお、前記「固形分」とは、エマルジョン組成物に含まれる揮発性成分以外の成分を意味する。具体的には、例えば、任意の支持体等にエマルジョン組成物を塗工し、乾燥させた際に、支持体上に塗膜として残る成分を意味する。
【0031】
金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量は、金属化合物の種別や添加量等を適宜設定することによって、前記範囲に調整することができる。なお、金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量は、ICP発光分光分析法等の公知の方法によって測定することができ、詳細には、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。
【0032】
本発明において、前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量を、エマルジョン組成物の固形分全量に対して110ppm以下とすることによって、沈降安定性に優れると共に造膜性にも優れるエマルジョン組成物等を提供することができる原理は必ずしも定かではないが、本発明者等は、特定の金属化合物(B)を加えることでエマルジョン化時の潤滑性の向上や造膜時の粒子同士のブロッキング性を抑制することができ、そのマグネシウム換算含有量を最適な添加量にすることで脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の架橋に伴うエマルジョン粒径の粗大化を抑制することが可能となったためと推察している。
【0033】
また、前記特定の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と、金属化合物(B)とを含有するエマルジョン用樹脂組成物を含有するエマルジョン組成物において、前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び金属化合物(B)の合計含有量(A+B)に対して120ppm以下であることが好ましい。前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量は、前記の沈降安定性と、造膜性とを高度に両立させる観点からは、110ppm以下が好ましく、より好ましくは100ppm以下、更により好ましくは90ppm以下、特に好ましくは85ppm以下である。また、前記金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量は、前記の沈降安定性と、造膜性とを高度に両立させる観点から、10ppm以上が好ましく、より好ましくは15ppm以上、更により好ましくは20ppm以上、特に好ましくは25ppm以上である。
【0034】
金属化合物(B)としては、金属としてマグネシウムを含む金属化合物であれば特に限定はされないが、例えば、脂肪酸金属塩が好ましい。前記脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸、又はその重合物等が挙げられる。飽和脂肪酸としては、例えば、炭素数1~30の直鎖飽和脂肪酸又は分岐飽和脂肪酸が挙げられる。直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、セロチン酸、メリシン酸等が挙げられる。分岐飽和脂肪酸としては、イソ酪酸、イソ吉草酸、ピバル酸、イソステアリン酸等が挙げられる。これらのなかでも、直鎖飽和脂肪酸が好ましく、酢酸、ステアリン酸が好ましい。
不飽和脂肪酸としては、例えば、炭素数3~30の直鎖不飽和脂肪酸又は分岐不飽和脂肪酸が挙げられる。直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、ヘプテン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、トリアコンテン酸等が挙げられる。分岐不飽和脂肪酸としては、例えば、メタクリル酸、イソミリストレイン酸及びイソオレイン酸等が挙げられる。
ヒドロキシ脂肪酸としては、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ポリヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0035】
金属化合物(B)の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ヒドロキシ脂肪酸マグネシウムが挙げられる。ヒドロキシ脂肪酸マグネシウムは、例えば、ヒドロキシ飽和又は不飽和脂肪酸カルボン酸とマグネシウムの塩であり、ヒドロキシ飽和又は不飽和脂肪酸のマグネシウム塩としては、例えば、ヒドロキシラウリン酸マグネシウム、ヒドロキシミリスチン酸マグネシウム、ヒドロキシパルミチン酸マグネシウム、ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシベヘン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0036】
また、金属化合物(B)の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム等が挙げられる。
【0037】
なお、従来、防湿性、透明性、耐熱安定性の観点から、エマルジョン組成物に対して脂肪酸金属塩を多量に配合することが提案されている。本発明者等が検討を進めたところ、特定の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を含有するエマルジョン組成物においては、金属化合物を配合すると、沈降安定性や造膜性に悪影響を及ぼす課題が生じることを新たに知得した。本発明者等は、かかる課題を解決するべく各種実験を重ね、鋭意検討した結果、特定の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を用いると共に、脂肪酸金属塩等の金属化合物のマグネシウム換算含有量を特定微量に制御することによって、沈降安定性及び造膜性を両立できることを見出したものである。
【0038】
〔(C)分散剤〕
本エマルジョン用樹脂組成物に用いることができる分散剤(C)としては、通常用いられる公知一般の分散剤を用いることができる。例えば、水溶性高分子、各種の界面活性剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
水溶性高分子としては、以下に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体類、デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタアクリル酸又はその塩、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、酢酸ビニルとマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等の不飽和酸との共重合体、スチレンと前記不飽和酸との共重合体、ビニルエーテルと前記不飽和酸との共重合体及び前記共重合体の塩類等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等が挙げられる。具体的には、以下に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル等が挙げられる。
これらのなかでも、本発明の効果を顕著に奏する観点から、PVA系樹脂(C1)が好適に用いられる。
【0040】
[PVA系樹脂(C1)]
本エマルジョン用樹脂組成物で用いることができるPVA系樹脂(C1)としては、未変性PVA樹脂、変性PVA系樹脂が挙げられる。
【0041】
未変性PVA樹脂は、ビニルエステル系化合物を重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することにより製造することができる。
【0042】
かかるビニルエステル系化合物としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられるが、酢酸ビニルが好ましい。前記ビニルエステル系化合物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
変性PVA系樹脂は、前記ビニルエステル系化合物と、ビニルエステル系化合物と共重合可能な不飽和単量体とを共重合させた後、ケン化することにより製造することができる。
【0044】
前記ビニルエステル系化合物と共重合可能な不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類及びそのアシル化物等の誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0045】
また、変性PVA系樹脂として、側鎖に一級水酸基を有するもので、例えば、側鎖の一級水酸基の数が、通常1~5個、好ましくは1~2個、特に好ましくは1個であるものが挙げられる。更には、変性PVA系樹脂として、一級水酸基以外にも二級水酸基を有することが好ましい。かかる変性PVA系樹脂としては、例えば、側鎖にヒドロキシアルキル基を有するPVA系樹脂、側鎖に1,2-ジオール構造単位を有するPVA系樹脂等が挙げられる。
【0046】
PVA系樹脂(C1)の平均ケン化度は、70モル%以上であることが好ましく、より好ましくは75~99モル%、更により好ましくは78~95モル%、特に好ましくは82~90モル%である。かかる平均ケン化度が小さすぎると、エマルジョン用樹脂組成物を用いて得られるフィルムの耐水性が低下する傾向がある。
【0047】
特に、PVA系樹脂(C1)として、未変性PVA樹脂を用いる場合には、その平均ケン化度は、75モル%以上であることが好ましく、より好ましくは78~95モル%、更により好ましくは82~90モル%である。かかる平均ケン化度が小さすぎると、エマルジョン用樹脂組成物を用いて得られるフィルムの耐水性が低下する傾向がある。
【0048】
また、PVA系樹脂(C1)として、変性PVA系樹脂を用いる場合には、その平均ケン化度は、72モル%以上であることが好ましく、より好ましくは75~99モル%、更により好ましくは80~95モル%である。かかる平均ケン化度が小さすぎると、エマルジョン用樹脂組成物を用いて得られるフィルムの耐水性が低下する傾向がある。
【0049】
前記の平均ケン化度は、JIS K 6726 3.5に準拠して測定される。
【0050】
また、PVA系樹脂(C1)の20℃における4質量%水溶液粘度は10~70mPa・sであることが好ましく、より好ましくは13~45mPa・s、更により好ましくは17~40mPa・sである。かかる粘度が小さすぎると、エマルジョン組成物の安定性が低下する傾向がある。
【0051】
PVA系樹脂(C1)として、未変性PVA樹脂を用いる場合には、未変性PVA樹脂の20℃における4質量%水溶液粘度は、5~50mPa・sであることが好ましく、より好ましくは13~45mPa・s、更により好ましくは17~40mPa・sである。かかる粘度が小さすぎると、エマルジョン組成物の安定性が低下する傾向がある。
【0052】
また、PVA系樹脂(C1)として、変性PVA系樹脂を用いる場合には、変性PVA系樹脂の20℃における4質量%水溶液粘度は、5~50mPa・sであることが好ましく、より好ましくは13~40mPa・s、更により好ましくは17~30mPa・sである。かかる粘度が小さすぎると、エマルジョン組成物の安定性が低下する傾向がある。
【0053】
前記4質量%水溶液粘度は、JIS K 6726 3.11.2に準じて測定される。
【0054】
PVA系樹脂(C1)の平均重合度としては、50~5,000であることが好ましく、より好ましくは150~4,000であり、更により好ましくは300~3,000である。
なお、平均重合度は、JIS K 6726に記載の平均重合度の算出方法にしたがって求めることができる。
【0055】
本エマルジョン用樹脂組成物において、前記PVA系樹脂(C1)はそれぞれ単独で用いることができ、また未変性PVA樹脂同士を併用すること、変性PVA系樹脂同士を併用すること、未変性PVA樹脂と変性PVA系樹脂を併用すること、更に、平均ケン化度、粘度、変性種、変性量等が異なる2種以上を併用すること等もできる。
【0056】
(A)成分及び(B)成分の合計含有量に対する(C)成分の質量比(C/(A+B))は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば、0.002~0.4であり、0.01~0.3が好ましく、より好ましくは0.02~0.24、更により好ましくは0.06~0.2である。
【0057】
また、(C)成分の含有量は、特に制限されないが、エマルジョン組成物全量に対して、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。また、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下、更により好ましくは12質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。かかる範囲を外れると、エマルジョン組成物の安定性が低下する傾向がある。
【0058】
〔(D)分散媒〕
本エマルジョン用樹脂組成物で用いることができる分散媒(D)は、通常、エマルジョン組成物の安定性に影響を与えない物質・濃度範囲においては、水溶性成分ならば特に限定されず、それらを含む水溶液であればよく、水のみ、多糖類水溶液、セルロース(CNF)水溶液等が挙げられ、少量ならば水溶性の有機溶媒を併用してもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。これらのなかでも分散媒としては水が最も好ましい。
【0059】
(A)成分に対する(D)成分の質量比(D/A)は、特に制限されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば、0.5~1.6であり、0.7~1.4が好ましく、より好ましくは0.8~1.2である。
【0060】
(D)成分の含有量は、特に制限されないが、エマルジョン組成物全量に対して、25質量%以上が好ましく、より好ましくは35質量%以上、更により好ましくは40質量%以上である。また、80質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下、更により好ましくは60質量%以下である。
【0061】
また、水と有機溶媒を併用した分散媒とする場合、当該分散媒全量に対する水の含有割合は60質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、更により好ましくは90質量%以上である。これらのなかでも、水のみを分散媒とするのが最も好ましい。
【0062】
〔その他の成分〕
本エマルジョン用樹脂組成物には、前記各成分以外に、その他の成分を含まないことが好ましいが、その他の成分として、エマルジョン用樹脂組成物に常用されている成分を、本発明の効果を損なわない範囲(例えば、エマルジョン組成物全量に対して10質量%以下)であれば、従来から、一般的に樹脂組成物に常用されている成分を含んでいても差し支えない。かかる成分としては、特に制限されないが、例えば、前記ポリエステル系樹脂(A)以外のポリエステル系樹脂、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、熱可塑性樹脂、各種安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防錆剤、硬化剤、充填剤等が挙げられる。
【0063】
(ポリエステル系樹脂(A)以外のポリエステル系樹脂)
前記ポリエステル系樹脂(A)以外のポリエステル系樹脂としては、例えば、脂肪族オキシカルボン酸単位を主たる構成単位として有する脂肪族ポリエステル系樹脂が挙げられる。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸成分の具体例としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、3-ヒドロキシ吉草酸、リンゴ酸、クエン酸等、又はこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステル等が挙げられる。また、ε-カプロラクトン等のラクトン化合物も本発明において脂肪族オキシカルボン酸に包含される。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液であってもよい。これらのなかでも、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、6-ヒドロキシカプロン酸、3-ヒドロキシ吉草酸が好ましい。これら脂肪族オキシカルボン酸は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記脂肪族オキシカルボン酸単位を主たる構成単位として有する脂肪族ポリエステル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ3-ヒドロキシブチレート、ポリ4-ヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレエート)、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
【0065】
ポリ乳酸に含まれる乳酸の構成としては、例えば、モル比で、D-乳酸:L-乳酸=100:0~85:15、又は、0:100~15:85である。また、D-乳酸とL-乳酸との構成割合が異なった他のポリ乳酸をブレンドすることも可能である。
【0066】
更には、ポリ乳酸は、前述のポリ乳酸と、他のオキシカルボン酸との共重合体であってもよく、また少量の鎖延長剤に由来する単位を含んでいてもよい。他のオキシカルボン酸としては、乳酸の光学異性体(L-乳酸に対してはD-乳酸、D-乳酸に対してはL-乳酸)、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-メチル乳酸、2-ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族オキシカルボン酸類、及びカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。このような他のオキシカルボン酸に由来する単位は、ポリ乳酸の全構成単位中15モル%未満で使用することができる。
【0067】
また、前記ポリエステル系樹脂(A)以外のポリエステル系樹脂としては、例えば、脂肪族多価アルコール単位、脂肪族多価カルボン酸単位、及び芳香族多価カルボン酸単位を主たる構成単位として有する脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂が挙げられる。
脂肪族多価アルコール単位、脂肪族多価カルボン酸単位、及び芳香族多価カルボン酸単位を主たる構成単位として有する脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂は、例えば、前記式(1)で表される脂肪族多価アルコール単位、前記式(2)で表される脂肪族多価カルボン酸単位、及び、下記式(3)で表される芳香族多価カルボン酸単位を主たる構成単位とするものである。更に、前述のオキシカルボン酸単位を有していてもよい。
【0068】
-OC-R31-CO- (3)
[式(3)中、R31は2価の芳香族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
【0069】
式(1)の多価アルコール単位を与える脂肪族多価アルコール及び式(2)の脂肪族多価カルボン酸単位を与える脂肪族多価カルボン酸成分については、前記(A)成分の説明で例示したものと同様である。
【0070】
式(3)の芳香族多価カルボン酸単位を与える芳香族多価カルボン酸成分としては、特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等が挙げられる。これらは酸無水物であってもよい。また、芳香族多価カルボン酸の誘導体として、これらの芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0071】
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリブチレンアジペートテレフタレート又はポリブチレンサクシネートテレフタレート等のポリブチレンアルキレートテレフタレートが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0072】
(可塑剤)
前記可塑剤としては、例えば、分子内にエステル結合を有するエステル系可塑剤が挙げられる。例えば、アジピン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、アゼライン酸エステル系可塑剤等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、グリコール酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、リシノール酸エステル系可塑剤、安息香酸エステル系可塑剤、酢酸エステル系可塑剤等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0073】
〔エマルジョン用樹脂組成物及びエマルジョン組成物の製造方法〕
本エマルジョン用樹脂組成物及び本エマルジョン組成物の製造方法は、例えば、脂肪族多価アルコール単位と脂肪族多価カルボン酸単位を主たる構成単位として有する脂肪族ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して、微量の金属化合物(B)を添加して溶融混錬し、得られる組成物(A+B)に含まれる金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量を特定量に調整し、マグネシウム換算含有量を固形分全量に対して110ppm以下に調整する工程を含む。
前記工程における金属化合物(B)の添加量は、以下に制限されないが、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して、例えば、0.001~0.2質量部程度であり、0.005~0.15質量部、更により好ましくは0.008~0.12質量部等である。
前記製造方法は、前記工程の後工程においては、例えば、得られた(A)成分及び(B)成分と、(C)分散剤及び(D)分散媒とを混合する転相乳化工程を含む。
【0074】
具体的には、混練機に、(A)成分及び(B)成分を投入し、必要ならば、任意に溶剤等を投入し、加熱条件下において溶融混練し、これにPVA系樹脂(C1)等の(C)分散剤、水等の(D)分散媒を投入し、これらの成分を混合・転相乳化する方法により製造される。加熱温度は、通常、40~250℃、好ましくは60~200℃、より好ましくは60~160℃、更により好ましくは80~150℃で行う。加熱時間は、通常、10~1,800秒間、好ましくは10~600秒間、より好ましくは20~300秒間である。
【0075】
前記混練機としては、例えば、押出機、ホモジナイザー(高圧)、ロールミル、ニーダー、インクロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。これらのなかでも、生産性の観点から、押出機が好ましく、二軸押出機等のように二本以上のスクリューを有する多軸押出機が特に好ましい。
【0076】
押出機を用いて製造する場合は、例えば、(A)成分及び(B)成分を押出機のホッパー又は、別系統の供給口より連続的に供給して加熱条件下において溶融混練し、PVA系樹脂(C1)等の(C)分散剤及び水等の(D)分散媒を押出機に設けられた他の供給口より添加し、混錬分散して転相乳化した後、ダイから連続的に押出すことにより、本エマルジョン組成物を得ることができる。
【0077】
また、例えば、(A)成分及び(B)成分を、押出機等を用いて加熱条件下において溶融混練して得られたペレットを用い、本エマルジョン組成物を得ることもできる。具体的には、(A)成分及び(B)成分を含有する組成物のペレットを押出機のホッパーより連続的に供給して加熱条件下において溶融混練し、PVA系樹脂(C1)等の(C)分散剤及び水等の(D)分散媒を同押出機に設けられた他の供給口より添加し、混練分散して転相乳化した後、ダイから連続的に押出すことにより、本エマルジョン組成物を得ることができる。
【0078】
〔エマルジョン用樹脂組成物及びエマルジョン組成物〕
前記のように、(A)成分、(B)成分、PVA系樹脂(C1)等の(C)分散剤、及び水等の(D)分散媒から得られた本エマルジョン用樹脂組成物は、水系のエマルジョン用樹脂組成物である。本発明の好ましい実施形態としては、かかる水系のエマルジョン用樹脂組成物から得られるエマルジョン組成物である。水系のエマルジョン組成物とは、粒子状物質が水系溶媒中で分散してエマルジョン化したものであり、具体的には、分散質が実質的に溶解しない若しくは分散質の溶解度が著しく低い水及び/又は有機溶媒等の水性液体を分散媒(即ち、連続相)とするエマルジョン系である。本エマルジョン組成物においては、(A)成分及び(B)成分が分散質であり、これらが水系溶媒中に分散した水系のエマルジョン組成物である。
【0079】
前記のようにして得られた本エマルジョン組成物は、安定性に優れるものである。エマルジョン組成物の安定性は、例えば、後記の実施例に記載の方法により評価することができる。例えば、後記の実施例に記載の方法により測定される沈降率が、10%以下が好ましく、より好ましくは8%以下、更により好ましくは6%以下、特に好ましく3%以下であり、最も好ましくは2%以下である。
【0080】
本エマルジョン組成物における分散質の分散粒子径は、沈降安定性の観点から、10μm以下であり、5μm以下が好ましく、より好ましくは2.5μm以下、更により好ましく3μm以下である。また、下限値は通常0.01μm程度である。
なお、当該分散粒子径は、体積基準で積算粒子径分布の値が50%に相当するメジアン径(d50)であり、例えば、レーザー回折粒子径測定装置(例えば、品番LA-950V2、堀場製作所社製)で測定することができる。
【0081】
本エマルジョン組成物は造膜性に優れるものである。造膜性の評価は、後記実施例に記載の方法により評価できる。
【0082】
本エマルジョン用樹脂組成物は、更に生分解性を向上させる観点から、(C)分散剤として生分解性を有する成分を用いるのが好ましく、なかでも、(C)分散剤としてPVA系樹脂(C1)を用いることがより好ましい。
【0083】
〔用途〕
本エマルジョン用樹脂組成物又は本エマルジョン組成物は、以下に制限されないが、公知の成形方法により得られる成形体(フィルム等)の形態として用いることができる。
また、本エマルジョン用樹脂組成物又は本エマルジョン組成物は、例えば、接着剤、粘着剤、これらの改質剤、コーティング剤、ヒートシール剤、塗料、塗料用プライマー、インク、バインダー等として、紙、フィルム、シート、構造材料、建築材料、自動車部品、電気・電子製品、包装材料、衣料、医薬品、化粧料(シャンプー、リンス、乳液、ローション、香水等)、農業用組成物(農薬乳剤等)、健康食品、食品等に使用することができる。なかでも、本エマルジョン用樹脂組成物又は本エマルジョン組成物を含有する化粧料、農業用組成物、塗料、インク、又は接着剤が好適である。
また、本エマルジョン用樹脂組成物又は本エマルジョン組成物は、被コーティング物(コーティングの対象物)のコーティング剤として好適に用いられる。
【0084】
本エマルジョン用樹脂組成物によりコーティングされる被コーティング物は、特に制限されないが、例えば、紙基材が好ましく、当該紙基材としては、感熱記録紙、離型紙、剥離紙、インクジェット紙、カーボン紙、ノンカーボン紙、紙コップ用原紙、耐油紙、マニラボール、白ボール、ライナー等の板紙、一般上質紙、中質紙、グラビア用紙等の印刷用紙、上・中・下級紙、新聞用紙等が挙げられる。例えば、紙基材からなる層と、前記紙基材にコーティングされてなるエマルジョン用樹脂組成物又は本エマルジョン組成物からなる層とを含む積層体も好適である。
【0085】
本エマルジョン用樹脂組成物によりコーティングされる被コーティング物は、特に制限されないが、例えば、紙基材が好ましく、当該紙基材としては、感熱記録紙、離型紙、剥離紙、インクジェット紙、カーボン紙、ノンカーボン紙、紙コップ用原紙、耐油紙、マニラボール、白ボール、ライナー等の板紙、一般上質紙、中質紙、グラビア用紙等の印刷用紙、上・中・下級紙、新聞用紙等が挙げられる。例えば、紙基材からなる層と、前記紙基材にコーティングされてなるエマルジョン用樹脂組成物からなる層とを含む積層体も好適である。
【0086】
また、被コーティング物は、プラスチック基材であることが好ましく、当該プラスチック基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂〔二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)〕、ナイロン樹脂、各種生分解性樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂〔低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)〕等が挙げられる。例えば、プラスチック基材からなる層と、前記プラスチック基材にコーティングされてなるエマルジョン用樹脂組成物からなる層とを含む積層体も好適である。
【0087】
本エマルジョン用樹脂組成物又は本エマルジョン組成物を用いたコーティング方法としては、特に制限されないが、例えば、ロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ノズルコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、カーテンコーティング法、フローコーティング法等が挙げられる。
【実施例0088】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
【0089】
まず、以下の成分を用意した。
<(A)成分>
・(a1)ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)
〔PTT MCC Biochem社製の「BiOPBS(FD72PM)」、メルトフローレート(MFR)22g/10分(190℃、2.16kg)、融点86℃〕
【0090】
<(B)成分>
・(b1)1,2-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム
〔勝田化工社製の「EM612B」〕
・(b2)酢酸マグネシウム
〔富士フィルム和光純薬社製〕
【0091】
<(C)成分>
・(c1)ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)
〔未変性PVA樹脂、平均重合度1,700、ケン化度87~89%、20℃における4質量%粘度20.5~24.5mPa・s〕
【0092】
<(D)成分>
・(d1)水
【0093】
[実施例1]
ポリブチレンサクシネートアジペート(a1)100質量部、1,2-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(b1)0.01質量部を、二軸押出機〔KZW15TW-60MG、テクノベル社製、L/D=60〕のホッパーより連続的に供給し、140℃条件下で溶融混錬して、(a1)成分及び(b1)成分からなる樹脂組成物(E1)を調製した。(a1)成分及び(b1)成分の合計量(前記樹脂組成物全量)に対する(b1)成分のマグネシウム換算含有量を測定した。その結果を表1に示す。
【0094】
前記で得られた(a1)成分及び(b1)成分からなる樹脂組成物(E1)を、二軸押出機〔KZW15TW-60MG、テクノベル社製、L/D=60〕のホッパーより連続的に供給し、同押出機に設けられた供給口より分散剤としてPVA系樹脂(c1)、及び分散媒として水(d1)を連続的に供給しながら、加熱温度(シリンダー温度)90~105℃、加熱時間180秒間の条件下にて連続的に押出し(スクリュー回転数:300rpm)、(a1)成分及び(b1)成分の合計100質量部(a1+b1)に対して、(c1)成分を10質量部、(d1)成分を90質量部含むエマルジョン組成物を得た。
【0095】
[実施例2]
1,2-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(b1)の添加量を0.05質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(E2)を調製した。(a1)成分及び(b1)成分の合計量(前記樹脂組成物全量)に対する(b1)成分のマグネシウム換算含有量を測定した。その結果を表1に示す。
樹脂組成物(E2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、(a1)成分及び(b1)成分の合計100質量部(a1+b1)に対して、(c1)成分を10質量部、(d1)成分を90質量部含むエマルジョン組成物を得た。
【0096】
[実施例3]
1,2-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(b1)の添加量を0.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(E3)を調製した。(a1)成分及び(b1)成分の合計量(前記樹脂組成物全量)に対する(b1)成分のマグネシウム換算含有量を測定した。その結果を表1に示す。
樹脂組成物(E3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、(a1)成分及び(b1)成分の合計100質量部(a1+b1)に対して、(c1)成分を10質量部、(d1)成分を90質量部含むエマルジョン組成物を得た。
【0097】
[実施例4]
1,2-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(b1)を、酢酸マグネシウム(b2)に変更し、酢酸マグネシウム(b2)の添加量を0.05質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(E4)を調製した。(a1)成分及び(b2)成分の合計量(前記樹脂組成物全量)に対する(b2)成分のマグネシウム換算含有量を測定した。その結果を表1に示す。
樹脂組成物(E4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、(a1)成分及び(b2)成分の合計100質量部(a1+b2)に対して、(c1)成分を10質量部、(d1)成分を90質量部含むエマルジョン組成物を得た。
【0098】
[比較例1]
1,2-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(b1)の添加量を0.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(E5)を調製した。(a1)成分及び(b1)成分の合計量(前記樹脂組成物全量)に対する(b1)成分のマグネシウム換算含有量を測定した。その結果を表1に示す。
樹脂組成物(E5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、(a1)成分及び(b1)成分の合計100質量部(a1+b1)に対して、(c1)成分を10質量部、(d1)成分を90質量部含むエマルジョン組成物を得た。
【0099】
[比較例2]
1,2-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(b1)の添加量を1.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(E6)を調製した。(a1)成分及び(b1)成分の合計量(前記樹脂組成物全量)に対する(b1)成分のマグネシウム換算含有量を測定した。その結果を表1に示す。
樹脂組成物(E6)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、(a1)成分及び(b1)成分の合計100質量部(a1+b1)に対して、(c1)成分を10質量部、(d1)成分を90質量部含むエマルジョン組成物を得た。
【0100】
[比較例3]
1,2-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(b1)を、酢酸マグネシウム(b2)に変更し、酢酸マグネシウム(b2)の添加量を1.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(E7)を調製した。(a1)成分及び(b2)成分の合計量(前記樹脂組成物全量)に対する(b1)成分のマグネシウム換算含有量を測定した。その結果を表1に示す。
樹脂組成物(E7)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、(a1)成分及び(b2)成分の合計100質量部(a1+b2)に対して、(c1)成分を10質量部、(d1)成分を90質量部含むエマルジョン組成物を得た。
【0101】
[マグネシウム換算含有量の測定方法]
サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のiCAP6300Duoを用いて、誘導結合プラズマ-発光分光分析(ICP-OES)を行い、マグネシウム金属イオン含有量を算出した。
【0102】
【表1】
【0103】
[沈降安定性試験(沈降率)]
実施例及び比較例のエマルジョン組成物を沈降管(底面積9.62cm2、高さ7.8cm)に入れ、50℃条件下に4週間静置した後、その分離層の体積を目視にて評価した。その際、沈降管の目盛りの読み値(分離層の高さ)に基づいて算出される沈降率を算出した。沈降率は下記式に基づいて算出する。その結果を表2に示す。
[式]沈降率=分離層の高さ(cm)/エマルジョン組成物全量の高さ(cm)×100
(評価基準)
〇・・・沈降しない(沈降率2%以下)
×・・・沈降する(沈降率2%超)
【0104】
[造膜性試験]
実施例及び比較例のエマルジョン組成物を、テフロン(登録商標)シート上にクリアランス100μmのアプリケーターを用いて塗工した後、80℃で10分間乾燥し、透明性ないし造膜するか否かを確認すると共に、テフロン(登録商標)シート上にエマルジョン組成物を造膜できた場合は、形成された塗膜の上からセロハン粘着テープ(CT-18S、ニチバン社製)を貼り付けた後に同テープを剥がして塗膜を剥離することにより、造膜性を評価した。評価基準は下記のとおりである。その結果を表2に示す。
(評価基準)
〇・・・造膜する。剥離の際にひび割れが発生しない。
△・・・造膜する。剥離の際にひび割れが発生する。
×・・・白濁した状態で造膜しない。
【0105】
[分散粒子径の測定試験]
実施例及び比較例に係るエマルジョン組成物における分散粒子径(メジアン径)を、レーザー回折粒子径測定装置〔堀場製作所社製、LA-950V2〕にて測定した。その結果を表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
表2に示すとおり、実施例のように、固形分全量に対する金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量が110ppm以下のエマルジョン組成物は、沈降安定性、及び造膜性に優れるものであった。
他方、比較例のように、固形分全量に対する金属化合物(B)のマグネシウム換算含有量が110ppmを上回るエマルジョン組成物は、実施例に比して、沈降安定性、造膜性のいずれにおいても劣るものであった。また、比較例は、実施例に比して、分散粒子径が大きいものであった。
【0108】
以上により、本発明によれば、沈降安定性に優れると共に、造膜性にも優れるエマルジョン組成物等を提供できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のエマルジョン用樹脂組成物及びエマルジョン組成物は、特に、各種のコーティング剤として有用であり、例えば、紙基材のコーティング剤、プラスチック基材のコーティング剤等として有用である。