(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134901
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】圃場情報提供方法、圃場情報提供プログラム及び圃場情報提供装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240927BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045341
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 修一
(72)【発明者】
【氏名】中野 恵子
(72)【発明者】
【氏名】野見山 綾介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁康
(72)【発明者】
【氏名】渕山 律子
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】複数の圃場を類型化した結果に基づく情報を提供する
【解決手段】複数の圃場それぞれの状況変化を示す計測データと、前記複数の圃場それぞれの設備情報及び営農情報に含まれる所定種類の情報と、に基づいて、前記所定種類の情報を説明変数として前記圃場の類型を目的変数とする判別式を作成し、処理対象の圃場の前記所定種類の情報を前記判別式に入力することで、前記処理対象の圃場が割り当てられる類型を判別し、前記判別する処理において判別された、複数の前記処理対象の圃場それぞれが割り当てられた類型に基づく情報を出力する、処理をコンピュータが実行する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圃場それぞれの状況変化を示す計測データと、前記複数の圃場それぞれの設備情報及び営農情報に含まれる所定種類の情報と、に基づいて、前記所定種類の情報を説明変数として前記圃場の類型を目的変数とする判別式を作成し、
処理対象の圃場の前記所定種類の情報を前記判別式に入力することで、前記処理対象の圃場が割り当てられる類型を判別し、
前記判別する処理において判別された、複数の前記処理対象の圃場それぞれが割り当てられた類型に基づく情報を出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする圃場情報提供方法。
【請求項2】
前記出力する処理において、前記判別する処理で判別された前記類型の数を、前記複数の処理対象の圃場の状況変化を検出するセンサの必要最小数として出力する、ことを特徴とする請求項1に記載の圃場情報提供方法。
【請求項3】
前記出力する処理において、前記類型それぞれに割り当てられた圃場の情報を出力し、前記類型ごとに少なくとも1つのセンサを設置すべき旨を出力する、ことを特徴とする請求項2に記載の圃場情報提供方法。
【請求項4】
前記類型それぞれに割当てられた各圃場の計測データとして、前記類型ごとに設置されたセンサによる計測データを出力する、処理を前記コンピュータが実行する請求項3に記載の圃場情報提供方法。
【請求項5】
前記類型それぞれに割当てられた各圃場の計測データとして、前記類型ごとに設置されたセンサによる計測データを前記各圃場の測量結果に応じて補正したデータを出力する、処理を前記コンピュータが実行する請求項3に記載の圃場情報提供方法。
【請求項6】
前記作成する処理において、前記計測データそれぞれを単純化し、単純化した前記計測データをクラスタ分析して前記圃場を類型化し、当該類型化した結果と、前記複数の圃場それぞれの前記所定種類の情報と、に基づいて、前記所定種類の情報を説明変数として前記圃場の類型を目的変数とする判別式を作成する、ことを特徴とする請求項1に記載の圃場情報提供方法。
【請求項7】
前記圃場を類型化した結果と、前記複数の圃場それぞれの設備情報及び営農情報と、を用いた判別分析により、前記所定種類の情報を決定する、ことを特徴とする請求項6に記載の圃場情報提供方法。
【請求項8】
前記判別式を作成する際に用いる前記計測データは、前記処理対象の圃場とは異なる圃場の計測データ、又は前記処理対象の圃場に含まれる圃場の計測データである、ことを特徴とする請求項1に記載の圃場情報提供方法。
【請求項9】
前記圃場は水田であり、
前記計測データが示す状況変化は、前記水田の水位の変化である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の圃場情報提供方法。
【請求項10】
複数の圃場それぞれの状況変化を示す計測データと、前記複数の圃場それぞれの設備情報及び営農情報に含まれる所定種類の情報と、に基づいて、前記所定種類の情報を説明変数として前記圃場の類型を目的変数とする判別式を作成し、
処理対象の圃場の前記所定種類の情報を前記判別式に入力することで、前記処理対象の圃場が割り当てられる類型を判別し、
前記判別する処理において判別された、複数の前記処理対象の圃場それぞれが割り当てられた類型に基づく情報を出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする圃場情報提供プログラム。
【請求項11】
複数の圃場それぞれの状況変化を示す計測データと、前記複数の圃場それぞれの設備情報及び営農情報に含まれる所定種類の情報と、に基づいて、前記所定種類の情報を説明変数として前記圃場の類型を目的変数とする判別式を作成する判別式作成部と、
処理対象の圃場の前記所定種類の情報を前記判別式に入力することで、前記処理対象の圃場が割り当てられる類型を判別する類型化部と、
前記類型化部が判別した、複数の前記処理対象の圃場それぞれが割り当てられた類型に基づく情報を出力する出力部と、
を備える圃場情報提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場情報提供方法、圃場情報提供プログラム及び圃場情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業従事者の高齢化や労働力不足が進む中、大規模農業(例えば、耕作面積が20ha以上)を行う農業法人等の経営体が増加しつつある。このような経営体においては、ロボット技術やICT(Information and Communication Technology)を活用したスマート農業を取り入れることにより、規模拡大や省力化、コスト低減を図る場合がある。
【0003】
水稲栽培を行う経営体においては、水田の水位を適切に制御することが重要であるが、水位を人が管理する場合、その労力は水稲栽培全体の2~3割程度となる。このため、最近では、水田の水位を遠隔で監視するためのIoT(Internet of Things)センサとして、水位センサ(水位計)が利用されている(例えば、特許文献1~4等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-275501号公報
【特許文献2】特開2003-134949号公報
【特許文献3】特開2020-31627号公報
【特許文献4】特開平11-346581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水位センサの設置数が多くなると、センサ自体を用意する費用だけでなく、通信費やクラウド利用料などのランニングコストが高額となる。したがって、水位センサの設置数は必要最低限に抑えることが望ましい。
【0006】
しかしながら、従来は、水田の水位を適切に制御するために、各水田に少なくとも1つの水位センサを設置する必要があった。このため、経営体の規模が大きくなればなるほど、費用が高額となるおそれがあった。
【0007】
なお、水位センサに限らず、圃場のその他の状況変化(水温の変化や気温の変化など)を計測するセンサについても同様のことが言える。
【0008】
本発明は、かかる事情の下になされたものであり、複数の圃場を類型化した結果に基づく情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圃場情報提供方法は、複数の圃場それぞれの状況変化を示す計測データと、前記複数の圃場それぞれの設備情報及び営農情報に含まれる所定種類の情報と、に基づいて、前記所定種類の情報を説明変数として前記圃場の類型を目的変数とする判別式を作成し、処理対象の圃場の前記所定種類の情報を前記判別式に入力することで、前記処理対象の圃場が割り当てられる類型を判別し、前記判別する処理において判別された、複数の前記処理対象の圃場それぞれが割り当てられた類型に基づく情報を出力する、処理をコンピュータが実行する方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圃場情報提供方法、圃場情報提供プログラム及び圃場情報提供装置は、複数の圃場を類型化した結果に基づく情報を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る圃場情報提供システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2(a)は、サーバのハードウェア構成の一例を示す図であり、
図2(b)は、サーバの機能ブロック図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(h)は、水田水位の履歴データを示す図(その1)である。
【
図4】
図4(a)~
図4(g)は、水田水位の履歴データを示す図(その2)である。
【
図7】サーバによる事前処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8(a)、
図8(b)は、
図7のステップS10の処理を説明するための図である。
【
図9】
図7のステップS12の処理を説明するための図である。
【
図10】各水田を類型化した結果と、水田に関する情報をカテゴリ値に変換したものとをまとめた表である。
【
図12】サーバによる運用処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、圃場情報提供システムの一実施形態について、
図1~
図13に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1には、一実施形態に係る圃場情報提供システム100の構成が概略的に示されている。本実施形態の圃場情報提供システム100は、
図1に示すように、サーバ10と、利用者端末70と、水位センサ60と、を備える。サーバ10、利用者端末70、及び水位センサ60は、インターネットなどのネットワーク80に接続されており、サーバ10と利用者端末70との間のデータのやり取りや、水位センサ60からサーバ10への計測結果の送信が可能となっている。
【0014】
利用者端末70は、PC(Personal Computer)やスマートフォン、タブレット型端末など、農業法人などの経営体に所属する人(利用者)が利用可能な情報処理装置である。利用者端末70は、利用者が入力した情報をサーバ10に送信し、サーバ10から送信されてきた情報を受信して表示する。なお、経営体は、多数の圃場(本実施形態では水田)を管理しているものとする。
【0015】
水位センサ60は、水田の水位を所定時間ごとに計測するセンサであるものとする。水位センサ60によって計測された値(水位データ)は、サーバ10に送信され、サーバ10において管理される。
【0016】
サーバ10は、水位センサ60を経営体に提供(販売又は貸与)するベンダーが保有する情報処理装置である。サーバ10は、経営体が管理する多数の水田に対し、水位センサ60を何個設置すればよいかの情報や、水位センサ60をどこに設置すればよいかの情報を利用者端末70に提供する。また、サーバ10は、設置された水位センサ60の計測結果(水位データ)に基づいて、経営体が管理する各水田(水位センサ60が設置されていない水田を含む)の水位データを利用者端末70に提供する。
【0017】
図2(a)には、サーバ10のハードウェア構成の一例が示されている。
図2(a)に示すように、サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)90、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)94、ストレージ(ここではSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive))96、ネットワークインタフェース97、及び可搬型記憶媒体用ドライブ99等を備えている。これらサーバ10の構成各部は、バス98に接続されている。サーバ10では、ROM92あるいはストレージ96に格納されているプログラム(圃場情報提供プログラムを含む)、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ99が可搬型記憶媒体91から読み取ったプログラムをCPU90が実行することにより、
図2(b)に示す各部の機能が実現される。なお、
図2(b)の各部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0018】
図2(b)には、サーバ10の機能ブロック図が示されている。
図2(b)に示すように、サーバ10においては、CPU90がプログラムを実行することにより、判別式作成部20、水田情報取得部22、類型化部24、出力部26、センサデータ取得部28、及び水位情報出力部30、としての機能が実現されている。
【0019】
判別式作成部20は、履歴DB40に格納されている水位センサ60によって過去に計測された水位データと、水田情報テーブル42に格納されている水田に関する情報のうち所定種類の情報(規定要因と呼ぶ)と、を用いて、判別式を作成する(
図6の破線枠で囲む部分参照)。なお、規定要因の詳細については、後述する。
【0020】
判別式作成部20は、作成した判別式の情報を判別式DB46に格納する。ここで、判別式は、
図6に示すように、処理対象の水田(経営体が管理する水田)に関する情報のうち規定要因である情報を入力した場合に、その処理対象の水田の類型(クラスタ)を出力することが可能なものである。すなわち、判別式は、規定要因を説明変数とし、水田の類型(クラスタ)を目的変数とする判別式である。
【0021】
履歴DB40には、複数の水田それぞれの状況変化を示す計測データとして、
図3(a)~
図3(h)、
図4(a)~
図4(g)に示すような水位データが格納されている。なお、
図3(a)~
図3(h)、
図4(a)~
図4(g)の水位データは、ベンダーが1又は複数の経営体に対して提供した水位センサ60を用いて計測された所定時間(例えば1時間)ごとの水位データを日平均水位データに変換したものである。なお、図示は省略しているが、履歴DB40には、所定時間ごとの水位データ(
図3(a)~
図3(h)、
図4(a)~
図4(g)の日平均水位データの元データ)も格納されているものとする。
【0022】
水田情報テーブル42には、複数の水田それぞれに関する情報(設備情報や営農情報)が格納される。
図5には、水田情報テーブル42の一例が示されている。
図5の例では、水田情報テーブル42には、水田の情報(圃場名、住所、圃場面積、作付計画)や、営農情報(圃場の暗渠有無、作付する品種、水源、輪作に関する情報、圃場ブロック)が格納されている。なお、水田情報テーブル42には、
図5に示す情報以外の水田に関する情報が格納されていてもよい。
【0023】
図2(b)に戻り、水田情報取得部22は、利用者端末70において利用者が入力した処理対象の水田に関する情報(経営体が管理している水田に関する情報)の入力を受け付け、類型化部24に送信する。
【0024】
類型化部24は、判別式DB46に格納されている判別式(
図6参照)を読み出し、水田情報取得部22が取得した処理対象の水田に関する情報(経営体が管理している水田に関する情報)のうち規定要因である情報を判別式に投入することで、処理対象の水田を類型化する(複数の類型(クラスタ)のいずれかに割当てる)。類型化部24は、類型化の結果を類型化情報DB48(
図11参照)に格納する。
【0025】
出力部26は、類型化DB48を参照して、経営体が管理する複数の水田がいくつの類型(クラスタ)に割当てられたかを確認し、割り当てられた類型の数を、経営体が設置すべき最小限の水位センサ60の数として利用者端末70に出力する。また、出力部26は、各類型に割当てられた水田のリストを利用者端末70に出力する。利用者は、出力された情報に基づいて、水位センサ60を設置する。
【0026】
センサデータ取得部28は、利用者が水田に水位センサ60を設置した後から、水位センサ60が計測した水位データを取得する。センサデータ取得部28は、取得した水位データを履歴DB40に格納する。
【0027】
水位情報出力部30は、センサデータ取得部28が取得して履歴DB40に格納された水位データと、類型化情報DB48に格納されている類型に関する情報と、に基づいて、経営体が管理する各水田の水位データを利用者端末70に対して出力する。具体的には、水位情報出力部30は、ある類型に割当てられた水田に設置された水位センサ60により計測された水位データを、その類型に割当てられた各水田の水位データとして出力する。
【0028】
(具体的処理について)
次に、サーバ10による処理について、
図7、
図12のフローチャートに沿って詳細に説明する。サーバ10は、
図7に示す事前処理と、
図12に示す運用時の処理の2つの処理を実行する。
【0029】
(事前処理)
利用者は、経営体が水田に設置すべき水位センサ60の数を知りたいときに、利用者端末70にその旨を入力する。
図7の事前処理は、利用者端末70からサーバ10に対してその旨の情報が送信されてきた段階で開始される。
【0030】
図7の処理が開始されると、まず、ステップS10において、判別式作成部20が、履歴DB40に格納されている水位データを単純化する。具体的には、判別式作成部20は、履歴DB40から、水位センサ60を用いて計測された所定時間(例えば1時間)ごとの水位データを読み出し、
図3(a)~
図3(h)、
図4(a)~
図4(g)に示すような日平均水位データに変換する。あるいは、履歴DB40に
図3(a)~
図3(h)、
図4(a)~
図4(g)に示すような日平均水位データが格納されている場合には、判別式作成部20は、当該日平均水位データを読み出す。そして、判別式作成部20は、日平均水位データを水の有無を示すデータ(二値化データ)に変換する。具体的には、
図8(a)に示すような日平均水位データの場合、日平均水位が0より大きければ値「1」、日平均水位が0であれば値「0」というように二値化し、
図8(b)に示すような二値化データを得る。なお、日平均水位データを二値化データに変換する場合に限らず、日平均水位データをn値化データ(nは3以上)に変換してもよい。
【0031】
次いで、ステップS12において、判別式作成部20は、ステップS10で単純化したデータをクラスタ分析し、類型化する。例えば、
図3(a)~
図3(h)、
図4(a)~
図4(g)のデータを単純化したデータをクラスタ分析した結果、
図9に示すような分析結果が得られたとする。なお、
図9においては、枝分かれの距離が近いほど類似していることを意味している。本実施形態では、
図9から、4つの類型(クラスタ1~4)に分けることができたものとする。
【0032】
次いで、ステップS14において、判別式作成部20は、ステップS12の類型化の結果と、水田情報テーブル42に格納されている各水田に関する情報と、に基づいて機械学習(判別分析)を行い、規定要因を特定する。この場合、判別式作成部20は、水田に関する情報(営農情報等)のうち、どの種類の情報に基づけば、各圃場を各類型に分類できるかを判別分析により特定し、特定した種類の情報を規定要因とする。
【0033】
具体的には、判別式作成部20は、
図10に示すように、各水田を類型化した結果(クラスタ番号)と、水田に関する情報(営農情報)をカテゴリ値に変換したものとを対応付けて、表にまとめる。そして、判別式作成部20は、
図10の表のクラスタ番号とカテゴリ値とを利用して、判別分析を行う。なお、本実施形態では、一例として、「圃場の暗渠」、「品種」、「水源の種別」、「輪作の種別」の各情報が規定要因として特定されたものとする。
【0034】
次いで、ステップS16において、判別式作成部20は、ステップS14で特定した規定要因(圃場の暗渠、品種、水源の種別、輪作の種別それぞれのカテゴリ値)を説明変数、水田の類型(クラスタ番号)を目的変数とする判別式(
図6参照)を作成する。判別式作成部20は、作成した判別式を判別式DB46に格納する。
【0035】
次いで、ステップS18において、水田情報取得部22が、利用者端末70に処理対象の水田(経営体が管理する各水田)に関する情報が入力されるまで待機する。利用者端末70に処理対象の水田に関する情報が入力され、サーバ10に送信されてきた段階で、水田情報取得部22はステップS20に移行する。
【0036】
ステップS20に移行すると、水田情報取得部22は、利用者端末70に入力された情報を取得する。
【0037】
次いで、ステップS22において、類型化部24は、判別式DB46に格納されている判別式を用いて、処理対象の水田(経営体が管理する各水田)を類型化する。すなわち、各水田がどのクラスタ番号であるかを特定する。具体的には、類型化部24は、取得した情報の中から、処理対象の水田の規定要因(圃場の暗渠、品種、水源の種別、輪作の種別それぞれのカテゴリ値)を抽出し、抽出した規定要因を判別式に投入する。そして、類型化部24は、判別式から出力される類型(クラスタ番号)をその水田の類型(クラスタ番号)とする。類型化部24は、
図11に示す類型化情報DB48に、各水田の類型化結果(クラスタ番号)を格納する。
【0038】
次いで、ステップS24において、出力部26は、類型化の結果に基づく情報を出力する。本実施形態においては、1つの類型に割当てられた水田の少なくとも1つに水位センサ60を設置する必要があるため、出力部26は、処理対象の水田が割り当てられた類型(クラスタ)の数(種類数)Xを、水位センサ60の最少必要数Xとして利用者端末70に出力する。また、出力部26は、各類型に割当てられた水田のリストを生成し、利用者端末70に出力する。
【0039】
これにより、利用者は最低限何個の水位センサ60を用意すればよいかがわかる。また、利用者は、類型ごとに、その類型に割当てられた水田のうちの少なくとも1つに対して水位センサ60を設置する作業を行う。
【0040】
(運用時の処理)
次に、水位センサ60を利用した運用時の処理について、
図12のフローチャートに沿って説明する。なお、利用者は、水位センサ60の設置を行った後に、設置が完了した旨の情報(完了情報)を利用者端末70に入力する。ここで、利用者は、完了情報とともに、水位センサ60の識別情報と、水位センサ60を設置した水田の情報と、を利用者端末70に入力する。利用者端末70は、入力された情報をサーバ10に送信する。サーバ10は、利用者端末70から情報を受信すると、
図12の処理を開始する。
【0041】
図12の処理が開始されると、まず、ステップS42において、センサデータ取得部28は、水位センサ60による計測を開始する。センサデータ取得部28は、水位センサ60が計測した水位データを取得し、履歴DB40に格納する。
【0042】
次いで、ステップS44において、水位情報出力部30は、出力タイミングが到来したか否かを判断する。出力タイミングは、所定時間ごとであってもよいし、利用者からの要求があったタイミングであってもよい。出力タイミングが到来すると、水位情報出力部30はステップS46に移行する。
【0043】
ステップS46に移行すると、水位情報出力部30は、各類型の水田に設置された水位センサのデータを各類型に割当てられた水田それぞれの水位データとして出力する。例えば、ある類型(クラスタ1とする)の水田のうちの1つ(水田Aとする)に水位センサ60(水位センサ60Aとする)が設置された場合、水位情報出力部30は、水田Aの水位データとして、水位センサ60Aが計測した水位データを出力するとともに、水田A以外のクラスタ1に割当てられた水田の水位データとしても、水位センサ60Aが計測した水位データを出力する。同じ類型に割当てられた水田は、水位がほぼ同一の挙動を示す可能性が高いからである。これにより、経営体が管理する全ての水田に水位センサ60を設置しなくても、全ての水田の水位を利用者(経営体)が知ることができるようになっている。なお、利用者端末70は、水位データに基づいて、各水田に設けられた水門の開閉を自動的に制御することとしてもよい。また、利用者は、利用者端末70に表示された水位データに基づいて、各水田に設けられた水門を開閉してもよい。
【0044】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、判別式作成部20は、水位センサ60によって過去に計測された水位データと、水田情報テーブル42に格納されている水田に関する情報のうち規定要因とされる所定種類の情報と、に基づいて、規定要因を説明変数として、水田の類型を目的変数とする判別式を作成する。また、類型化部24は、経営体が管理する水田(処理対象の水田)の規定要因とされる情報を判別式に入力することで、処理対象の水田が割り当てられる類型(クラスタ番号)を判別する。更に、出力部26は、利用者端末70に対して、各水田が割り当てられた類型の数を経営体が設置すべき水位センサ60の最少必要数として出力する。これにより、本実施形態では、水位センサ60の設置数を減らすことができる。また、同一の類型に割当てられた水田の水位は、ほぼ同一であると見做すことができるため、水位センサ60の数を経営体が管理する水田の数より少なくしても、全ての水田の水位を把握することができる。これにより、水田の見回りに要する労力を軽減することができ、全水田の水位の見える化を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、出力部26が、利用者端末70に対して、各類型に割当てられた水田のリストを出力する。これにより、経営体は、各類型に割当てられた水田の少なくとも1つに水位センサ60を設置することができる。
【0046】
また、本実施形態では、所定の類型に割当てられた各水田の水位データとして、所定の類型に割当てられた水田の1つに設置された水位センサ60の水位データを出力する。同じ類型に割当てられた水田は、水位がほぼ同一の挙動を示す可能性が高いからである。これにより、水位センサ60が設置されない水田の水位データとして、適切なデータを出力することができる。なお、所定の類型に割当てられた水田の内の複数に水位センサ60を設置してもよい。この場合、複数の水位センサ60による水位データの平均値等を、所定の類型に割当てられた各水田の水位データとして出力するなどすればよい。
【0047】
また、本実施形態では、判別式作成部20は、水田水位データそれぞれを時別データから日別データにしたり、二値化するなどして単純化し、単純化したデータをクラスタ分析して水田を類型化する。そして、判別式作成部20は、水田を類型化した結果と、各水田の規定要因とに基づいて判別式を作成する。このように、水田水位データを単純化してクラスタ分析を行うことで、クラスタ分析の処理を簡素化することができる。
【0048】
また、本実施形態では、水田を類型化した結果と、水田に関する情報と、を用いた判別分析により、規定要因を特定する。これにより、規定要因として適切な種類の情報を特定することができる。ここで、実施例について説明する。本発明者は、ある経営体が管理する13筆の水田についての水田水位データと、履歴DB42に格納されている多数の過去データとを用いて、クラスタ分析を行った。その結果、
図13に示すように、13筆の水田のうちの6筆がクラスタAに割当てられ、4筆がクラスタBに割当てられ、3筆がクラスタCに割当てられた。また、本発明者は、判別分析により得られた規定要因(品種、直近の畑地利用状況、灌漑設備の有無、暗渠の有無)を説明変数とし、水田の類型(クラスタA、B、C、…)を目的変数とする判別式を作成し、作成した判別式を用いて上記13筆の水田それぞれの類型を判別した。その結果、
図13に示すように、クラスタ分析でクラスタAに割当てられた水田は全てクラスタAに割当てられ、クラスタ分析でクラスタBに割当てられた水田は全てクラスタBに割当てられた。また、クラスタ分析でクラスタCに割当てられた3筆の水田のうち2筆はクラスタCに割当てられた。すなわち、全体の判別的中率は、12/13×100≒92%となり、本実施形態のような判別式及び規定要因を用いた類型化が適切であることが実証された。
【0049】
なお、上記実施形態では、出力部26が、処理対象の水田が割り当てられた類型の数を、水位センサ60の最少必要数として出力したり、各類型に割当てられた水田のリストを出力する場合について説明した。ただし、これに限らず、出力部26は、例えば、各類型に割当てられた水田のうちの少なくとも1つ(1筆)の水田を、水位センサ60の設置を推奨する水田(設置候補)として出力してもよい。この場合、例えば、各類型に割当てられた水田の中で、事務所から最も近い水田を設置候補として出力してもよいし、各類型に割当てられた水田の中で面積が最も大きい水田、最も小さい水田、あるいは平均的な大きさの水田を設置候補として出力してもよい。
【0050】
なお、上記実施形態では、水位情報出力部30は、ステップS46において、各類型の水田に設置された水位センサのデータを各類型に割当てられた水田それぞれの水位データとして出力する場合について説明した。しかしながら、これに限らず、水位情報出力部30は、水位センサのデータを適宜補正して、各類型に割当てられた水田それぞれの水位データとして出力してもよい。例えば、水位情報出力部30は、各水田の測量結果に基づいて各水田の傾斜や凹凸等を特定し、特定した傾斜や凹凸等に基づいて、各類型の水田に設置された水位センサのデータを補正して出力してもよい。また、各水田の特性(入水量(灌漑設備の水圧差などに基づく満水までに要する時間の長短など)や減水量(作物の生育の良し悪しによる蒸発散量、水はけの良し悪し、減水深の大小など))を考慮して、各類型の水田に設置された水位センサのデータを補正して出力してもよい。また、面積が大きく、場所によって水位が異なる水田が存在する場合には、測量結果等に基づいて、水田を分割し、分割後の領域ごとに異なる水位データを出力してもよい。
【0051】
なお、上記実施形態では、規定要因を機械学習(判別分析)により特定する場合について説明したが、これに限らず、規定要因は、事前に設定されていてもよい。
【0052】
なお、上記実施形態では、ベンダーは、初年度に経営体に対して多数の水位センサ60を配布して、履歴DB42に水位センサ60の水位データを蓄積し、次年度以降は、履歴DB42に格納されたデータを用いて上記実施形態と同様に判別式を作成し、当該判別式を用いて、経営体が管理する各水田を類型化するようにしてもよい。このようにしても、精度よく各水田を類型化することができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、圃場の状況変化を検出するセンサが、水位センサである場合について説明したが、これに限らず、圃場の水位以外の状況変化(例えば気温や水温など)を検出するセンサであってもよい。
【0054】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。
【0055】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記憶媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0056】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記憶媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記憶媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0057】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 サーバ(圃場情報提供装置)
20 判別式作成部
22 水田情報取得部
24 類型化部
26 出力部
28 センサデータ取得部
30 水位情報出力部
60 水位センサ
70 利用者端末