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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134987
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】自動搬送車
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B61B13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045463
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 慧
(72)【発明者】
【氏名】前田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坂内 和典
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BB16
3D101BB24
(57)【要約】
【課題】操舵のためのモータを不要とした単純な構造で全方位移動を実現する。
【解決手段】本体部と、前記本体部に対して連結する連結軸を回転中心に設けた差動二輪駆動で動作する差動二輪駆動ユニットと、を備え、前記差動二輪駆動ユニットは、前記連結軸周りの前記本体部との相対角度について、任意の角度での固定および開放する固定開放部を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に対して連結する連結軸を回転中心に設けた差動二輪駆動で動作する差動二輪駆動ユニットと、
を備え、
前記差動二輪駆動ユニットは、前記連結軸周りの前記本体部との相対角度について、任意の角度での固定および開放する固定開放部を備える、
ことを特徴とする自動搬送車。
【請求項2】
前記本体部と前記差動二輪駆動ユニットとを連結する連結部を有し、
前記連結部は、前記連結軸方向に延在する縦穴部と、
前記連結軸方向に延在し前記縦穴部に挿入する軸部と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動搬送車。
【請求項3】
前記本体部と前記差動二輪駆動ユニットとを連結する連結部を有し、
前記連結部は、前記差動二輪駆動ユニットを前記連結軸方向に対し垂直な方向に軸支する軸支部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動搬送車。
【請求項4】
前記本体部と前記差動二輪駆動ユニットとを連結する連結部を有し、
前記連結部は、前記連結軸方向に延在する縦穴部と、
前記連結軸方向に延在し前記縦穴部に挿入する軸部と、
前記差動二輪駆動ユニットを前記連結軸方向に対し垂直な方向に軸支する軸支部と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動搬送車。
【請求項5】
前記本体部と前記差動二輪駆動ユニットとを連結する連結部を有し、
前記連結部は、前記本体部に対する連結軸周りの相対角度を検知する角度検知部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動搬送車。
【請求項6】
前記連結軸に、荷重を付加する荷重付加機構を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動搬送車。
【請求項7】
前記固定開放部は、前記差動二輪駆動ユニットと前記本体部との相対角度を固定する回転ブレーキ機構を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の自動搬送車。
【請求項8】
前記固定開放部は、前記連結軸から離れた位置に、前記差動二輪駆動ユニットと前記本体部との相対角度を固定するロック機構を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の自動搬送車。
【請求項9】
前記ロック機構は、
連結ピンと、
前記連結ピンが挿入される連結孔と、有し、
前記連結孔は、前記連結孔の中心と前記連結軸の中心とを通る直線の方向を、長手方向とする
ことを特徴とする請求項8に記載の自動搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
生産ラインや自動倉庫などで使用される搬送システムにおいては、物品の搬送のために、自動搬送車や移動ロボットがしばしば用いられる。また、近年では低床型の自動搬送車を用いて台車に潜り込んでの運搬や、自動搬送車の上部にコンベヤやロボットなどの移載部を設け、荷物の運搬や移載をすることも多い。
【0003】
上述したような自動搬送車では、様々な設備との連携や経路の都合などにより、全方向移動を要求される場面が多くある。既存技術としては、(1)オムニホイール式、(2)メカナムホイール式、(3)操舵駆動輪方式などが既に知られている。
【0004】
特許文献1には、台部を様々な姿勢で変化させながら走行させることができる無人搬送車の駆動操舵装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の(1),(2)のようにオムニホイールやメカナムホイールを用いる方式の場合、車輪そのものに全方向移動可能な複雑な機構を設けることになる。加えて、この種の無人搬送台車は、全方向に移動できる一方で、車輪形状の性質上、段差を登れなかったり、振動が大きく搬送物に衝撃を与えずに運搬したりすることができない。
【0006】
また、従来の(3)の操舵駆動輪方式を採用する場合についても、重量物である駆動輪を正確な角度で操舵するための機構を取り付けることになる。
【0007】
上記のように、従来の全方向移動を可能にする機構では、構造及び走行の制御が煩雑であるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操舵のためのモータを不要とした単純な構造で全方位移動を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、本体部と、前記本体部に対して連結する連結軸を回転中心に設けた差動二輪駆動で動作する差動二輪駆動ユニットと、を備え、前記差動二輪駆動ユニットは、前記連結軸周りの前記本体部との相対角度について、任意の角度での固定および開放する固定開放部を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操舵のためのモータを不要とした単純な構造で全方位移動を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】図1-1は、第1の実施の形態にかかる自動搬送車の概略構成を示す正面図である。
図1-2】図1-2は、自動搬送車の概略構成を示す側面図である。
図1-3】図1-3は、自動搬送車の概略構成を示す底面図である。
図2-1】図2-1は、自動搬送車が搬送台車と連結した状態を示す正面図である。
図2-2】図2-2は、自動搬送車が搬送台車と連結した状態を示す側面図である。
図3図3は、自動搬送車のハードウエア構成の一例を示すハードウエアブロック図である。
図4図4は、本体部と差動二輪駆動ユニットとの連結における自由度について説明する図である。
図5図5は、本体部と差動二輪駆動ユニットとの連結例を示す断面図である。
図6図6は、ヒンジ機構の一例を示す分解斜視図である。
図7-1】図7-1は、第2の実施の形態にかかる自動搬送車の概略構成を示す底面図である。
図7-2】図7-2は、第2の実施の形態にかかる本体部と差動二輪駆動ユニットとの連結例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、自動搬送車の実施の形態を詳細に説明する。各図面において、以下に記載されている構成部品の形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0013】
(第1の実施の形態)
まず、図1-1ないし図1-3を用いて、本実施形態に係る自動搬送車10の概略構成を説明する。図1-1は第1の実施の形態にかかる自動搬送車10の概略構成を示す正面図、図1-2は自動搬送車10の概略構成を示す側面図、図1-3は自動搬送車10の概略構成を示す底面図である。
【0014】
図1-1ないし図1-3では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸方向を用いて自動搬送車10の概略構成を説明する。X軸は、自動搬送車10の短手方向に沿う軸である。Y軸は、自動搬送車10の長手方向に沿う軸である。ここでは、Y軸負方向を自動搬送車10の正面、Y軸正方向を自動搬送車10の背面とする。Z軸は、自動搬送車10の上下方向に沿う軸である。
【0015】
自動搬送車10は、本体部11と、移動部12と、荷台部13と、測域センサ14a,14bとを備える。
【0016】
本体部11は、自動搬送車10の本体を構成する。本体部11は、他の構成部材を支持する支持部材である。本体部11は、更に、自動搬送車10の動力源となる、非図示のバッテリーを収容する。
【0017】
移動部12は、本体部11の下方に設けられて、本体部11を移動可能に支持する。具体的には、移動部12は、複数のタイヤで構成される。
【0018】
移動部12を構成する複数のタイヤのうち、本体部11の4か所の角部付近に設けられる4つのタイヤは、非駆動輪12aであり、回転方向を問わずに自由に回転する。
【0019】
また、移動部12を構成する複数のタイヤのうち、本体部11の中央付近に設けられる2つのタイヤは、差動二輪駆動ユニット50を構成する略円盤形状の基板51に設けられる駆動輪12bである。駆動輪12bは、それぞれの駆動輪12bに対応して設けられた車輪駆動モータ12cの回転力によって駆動されて、自動搬送車10を前進、後退又は旋回させる。また、駆動輪12bは、車輪駆動モータ12cの回転速度に応じて速度調整を行う。
【0020】
差動二輪駆動ユニット50は、詳細は後述するが、本体部11に対して回転可能に取り付けられる。
【0021】
差動二輪駆動ユニット50は、本体部11に対して連結する連結軸63(図6参照)を回転中心に、設けた差動二輪駆動によって回転動作する。より詳細には、差動二輪駆動ユニット50は、例えば左右の駆動輪12bの回転数を変える差動二輪駆動で動作することによって、自動搬送車10の進行方向を制御する。なお、差動二輪駆動ユニット50は、左右の駆動輪12bを逆回転させることによって、自動搬送車10の向きをその場で変更してもよい。
【0022】
加えて、差動二輪駆動ユニット50は、詳細は後述するが、Z軸方面に延びた軸を中心にしてYaw軸回転が可能である。そのため、自動搬送車10は、荷台部13の位置角度を保ちつつ、進行方向を変えることができる。また、詳細は後述するが、自動搬送車10は、任意のタイミングで、差動二輪駆動ユニット50のYaw軸回転を固定することができる。
【0023】
なお、図1-1ないし図1-3にはタイヤの数が6本の例を示すが、タイヤの本数は6本に限定されるものではない。
【0024】
荷台部13は、本体部11からの指令に応じて、上下に移動することによって、Z軸方向の高さを変更可能な部位である。荷台部13は、Z軸正方向に上昇することによって、搬送する搬送台車20と連結する(図2-1,図2-2参照)。また、荷台部13は、Z軸負方向に下降することによって、連結していた搬送台車20を切り離す。なお、図1-1,図1-2は、荷台部13が降下した状態を示す。このように、自動搬送車10と搬送台車20とは着脱可能に連結される。
【0025】
また、本体部11は、荷台部13の代わりにコンベア等の物品受け渡し用機器を備え、搬送台車20を介さず物品を搬送する構成としても良い。
【0026】
また、本体部11は、荷台部13を有する代わりに、搬送台車20と一体化させた構成としても良い。この場合、差動二輪駆動ユニット50を、搬送台車20を備えた本体部11に取り付ける構成となるため、差動二輪駆動ユニット50と、本体部11と、搬送台車20と、を総称して自動搬送車10と称する。
【0027】
測域センサ14a,14bは、自動搬送車10の周囲の障害物、及び自身が搬送している搬送台車20の脚部21(図2-1,図2-2参照)を検知する。測域センサ14a,14bは、例えば、超音波センサやカメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)等の測距機能を有するセンサである。測域センサ14aと測域センサ14bとは、同じ形式、同じ仕様のセンサである。測域センサ14aは、自動搬送車10の正面側に、正面方向(Y軸負方向)を向いて設置される。測域センサ14bは、自動搬送車10の背面側に、背面方向(Y軸正方向)を向いて設置される。
【0028】
次に、図2-1,図2-2を用いて、本実施形態に係る自動搬送車10の搬送形態の一つとして、搬送台車20を搬送している状態を説明する。図2-1は、自動搬送車10が搬送台車20と連結した状態を示す正面図である。図2-2は、自動搬送車10が搬送台車20と連結した状態を示す側面図である。
【0029】
搬送台車20は、脚部21と、キャスター22と、棚部23とを備える。
【0030】
脚部21は、搬送台車20を支持するとともに、キャスター22の設置部位となる。搬送台車20は複数の脚部21を有する。一般には、脚部21は、搬送台車20の四隅に4本備えられる。但し、大型の搬送台車20では脚部の数がより多い場合もある。
【0031】
キャスター22は、脚部21の先端に取り付けられた車輪である。キャスター22は用途に合わせて旋回式や固定式を用いる。自動搬送車10から降ろした搬送台車20を人力で移動させる際に、搬送台車20に加える力の方向に応じた向きに移動する。
【0032】
棚部23は、搬送台車20で搬送する物品を収容する。一般に、搬送台車20は、上下方向に複数段の棚部23を備える。また、棚部23の段数は1段であって、当該棚部23に収容される物品が複数段に重なっていてもよい。
【0033】
自動搬送車10は、搬送台車20の底部に潜り込んだ後、荷台部13を上昇させることによって、荷台部13の上面と搬送台車20の底面とを当接させる。そして、そのまま荷台部13が上昇すると、キャスター22が地面から浮き上がって、自動搬送車10と搬送台車20とが連結した状態となる。
【0034】
続いて、図3を用いて、自動搬送車10のハードウエア構成を説明する。図3は、自動搬送車10のハードウエア構成の一例を示すハードウエアブロック図である。
【0035】
自動搬送車10は、例えば、制御部31と、記憶部35と、周辺機器コントローラ40と、周辺機器コントローラ40に接続された各種周辺機器とを備える。制御部31と、記憶部35と、周辺機器コントローラ40とは、内部バス45で接続されている。
【0036】
なお、自動搬送車10は、図3に非図示のサーバ装置から、搬送台車20の連結地点、搬送台車20の離脱地点、移動経路等の指示を受信して動作するが、サーバ装置の構成の説明は省略する。
【0037】
制御部31は、自動搬送車10の各種制御動作を司る。制御部31は、CPU(Central Processing Unit)32と、ROM(Read Only Memory)33と、RAM(Random Access Memory)34とを備える。CPU32は、各種プログラムを実行することによって、自動搬送車10の各種制御動作を実行する。ROM33は、CPU32が各種プログラムを実行する際に必要な各種データ等を記憶する。RAM34は、CPU32が各種プログラムを実行する際に、一時的にデータやプログラムを記憶する。
【0038】
なお、図3に示す制御部31の一部又は全ては、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用ハードウエアで実現してもよい。
【0039】
記憶部35は、電源を切っても記憶情報が保持されるHDD(Hard Disc Drive)やフラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成される。記憶部35は、制御プログラム36と、経路データ39等を記憶する。
【0040】
制御プログラム36は、自動搬送車10の全体を制御するためのプログラムである。なお、制御プログラム36は、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、CD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、USBメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、制御プログラム36を、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。さらに、制御プログラム36をインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0041】
経路データ39は、自動搬送車10が走行する旋回位置、搬送台車離脱位置等を記載したデータである。また、制御部31は、経路データ39を参照することによって、搬送台車20の連結場所、及び搬送台車20の離脱場所等を設定する。
【0042】
周辺機器コントローラ40は、昇降アクチュエータ41と、測域センサ14a,14bと、車輪駆動モータ12cと、測位センサ43、電磁ブレーキ70(図5参照)と接続されて、制御部31からの指示に基づいて、これらの周辺機器の動作を制御する。
【0043】
昇降アクチュエータ41は、荷台部13の上下動を行う、モータ等のアクチュエータである。
【0044】
測域センサ14a,14bは、前記したように、自動搬送車10の周囲の障害物検知と、現在位置検出を補助する手段として使用するセンサである。
【0045】
車輪駆動モータ12cは、移動部12を構成する複数の車輪のうち、駆動輪12bに動力を供給する、例えば電動モータである。
【0046】
測位センサ43は、自動搬送車10の現在位置を測定するためのセンサである。測位センサ43は、例えば、GPS測位を行うためにGPS信号を受信するGPS受信機や、Wi-Fi測位を行うために無線LANのアクセスポイントから発信されたビーコン信号を受信する受信機等である。
【0047】
電磁ブレーキ70は、詳細は後述するが、差動二輪駆動ユニット50のYaw軸回転を抑制する回転ブレーキ機構である。
【0048】
また、図3には記載しないが、自動搬送車10は、前記したサーバ装置と通信を行うための無線通信ユニットを備えている。
【0049】
続いて、本体部11と差動二輪駆動ユニット50との連結について説明する。
【0050】
ここで、図4は本体部11と差動二輪駆動ユニット50との連結における自由度について説明する図である。本実施形態の自動搬送車10は、4つの非駆動輪12aで接地している本体部11に対して差動二輪駆動ユニット50が取付けられる。そして、自動搬送車10は、どのような起伏であった場合にも、差動二輪駆動ユニット50の駆動輪12bが必ず接地してトラクションを得ることが必要となっている。そのためには、自動搬送車10に対して差動二輪駆動ユニット50は、図4に示す3つの自由度を残した状態で連結する必要がある。ここで、3つの自由度とは、鉛直軸方向の自由度(Z軸方向自由度)、鉛直軸に垂直な第1軸(X軸)周りの回転自由度(Roll自由度)、鉛直軸及び第1軸に垂直な第2軸(Y軸)周りの回転自由度(Pitch自由度)を指す。また、鉛直軸(Z軸)周りの回転自由度は、Yaw自由度と称する。これにより、起伏がある状況下でも、要である駆動輪12bが必ず接地するため、トラクション抜けによるスリップのリスクが低下し、制御性や走行安定性が向上する。
【0051】
ここで、図5は本体部11と差動二輪駆動ユニット50との連結例を示す断面図である。図5に示すように、本体部11と差動二輪駆動ユニット50とは、本体部11に対して差動二輪駆動ユニット50を、任意の角度での固定および開放を操作可能である固定開放部として機能する電磁ブレーキ70を介して接続される。差動二輪駆動ユニット50は、本体部11に対して、差動二輪駆動ユニット50の進行方向軸を中心に回転する自由度を有するヒンジ機構60によって連結する。図5の状態の場合、前記自由度はRoll自由度である。ヒンジ機構60は、本体部11と差動二輪駆動ユニット50とをZ軸方向自由度、Roll自由度、及びPitch自由度を残して連結する連結部を構成する一例である。
【0052】
図5に示すヒンジ機構60を用いた構成は、本体部11と差動二輪駆動ユニット50の間に、前記3自由度(Roll自由度、Pitch自由度、Z軸方向自由度)のうち、Roll自由度、Z軸方向自由度を備える。残りのPitch自由度については、駆動輪12bが円形状であることで機能するため、構造の単純化が可能となる。
【0053】
また、連結部(特に連結軸81、または縦穴部11a)に、本体部11に対する差動二輪駆動ユニット50の連結軸周りの相対角度を検知する角度検知部(不図示)を設けることが好ましい。角度検知部には、例えば、レゾルバ、エンコーダ等を用いることができる。角度検知部を設けることで、検知した相対角度に基づいて、自動搬送車10の進行方向を把握し、管理することができる。
【0054】
図6は、ヒンジ機構60の一例を示す分解斜視図である。図6に示すように、ヒンジ機構60は、2つの固定部材61と、2つの支軸62と、連結軸63と、円柱形状のヒンジ本体64と、を備える。
【0055】
固定部材61は、T字形状に形成される。固定部材61は、孔61aと固定部61bとを設けている。固定部材61の孔61aは、支軸62の挿入を許容する。固定部材61の固定部61bは、差動二輪駆動ユニット50の基板51を固定する。
【0056】
2つの支軸62は、ヒンジ本体64の中心に対して対称に設けられる。2つの支軸62は、2つの固定部材61に設けられた孔61aにそれぞれ挿入される。2つの支軸62は、2つの固定部材61をそれぞれ回動可能に軸支する。2つの支軸62は、差動二輪駆動ユニット50を連結軸81方向に対し垂直な方向に軸支する軸支部である。
【0057】
連結軸63は、ヒンジ本体64に対してZ軸方向に延出する。連結軸63は、本体部11に設けられた縦穴部11a(図5参照)に挿入される軸部である。連結軸63は、縦穴部11a沿って移動可能である。なお、縦穴部11aは、ヒンジ機構60は、本体部11と差動二輪駆動ユニット50とをZ軸方向自由度、Roll自由度、及びPitch自由度を残して連結する連結部を構成する一例である。
【0058】
加えて、自動搬送車10は、図4に示す3つの自由度(Roll自由度、Pitch自由度、Z軸方向自由度)を残した状態で、差動二輪駆動ユニット50のZ軸周りの回転(Yaw回転)を固定する。図5に示すように、自動搬送車10は、Yaw軸回転を抑制する回転ブレーキ機構として、電磁ブレーキ70を備える。電磁ブレーキ70は、本体部11に設けられた縦穴部11aに挿入された軸33のYaw軸回転を抑制する。これにより、単純な構造で全方位移動を実現することができる。
【0059】
このような構成により、差動二輪駆動ユニット50の方向変更時の操舵は駆動輪12bの速度差を利用するため、自動搬送車10は、駆動輪の操舵に従来用いていた追加の操舵アクチュエータを必要としない。また、自動搬送車10は、差動二輪駆動ユニット50のYaw軸回転を固定する電磁ブレーキ70を備えることで、荷台部13の姿勢を決定することができる。これらの機構の追加によって、駆動輪の操舵に従来用いていたアクチュエータを省くことができる。
【0060】
また、従来技術によれば、操舵駆動輪を複数使用する場合、互いの操舵角や回転方向次第では成立しない条件が存在するため、走行制御を行う際はその点を考慮した制御を行う必要があった。一方、自動搬送車10では、車輪駆動モータ12cをどのように動かしても成立しない条件は存在しないため、シンプルに自動搬送車10を制御することができる。
【0061】
このように本実施形態によれば、本体部11に対して回転可能な差動2輪の差動二輪駆動ユニット50を、任意の角度での固定および開放を操作可能である固定開放部を備える。これにより、操舵のためのモータを必要とせず、従来の方式に比べてより単純な構造で全方位移動を実現することができる
【0062】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0063】
第2の実施の形態は、ヒンジ機構60に代えて、球面軸受けを備える点が、第1の実施の形態と異なる。また、差動二輪駆動ユニット50自体が自立できる車輪構成である点も、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0064】
ここで、図7-1は第2の実施の形態にかかる自動搬送車10の概略構成を示す底面図、図7-2は本体部11と差動二輪駆動ユニット50との連結例を示す断面図である。
【0065】
図7-1または図7-2に示すように、差動二輪駆動ユニット50は、第1の球面すべり軸受け82に、基板51の略中心に設けた連結軸81を挿入する。第1の球面すべり軸受け82は、内輪と外輪を球面で接触させた軸受である。連結軸81は、基板51に対してZ軸方向に延出する。連結軸81は、本体部11に設けられた縦穴部11aに挿入される軸部である。連結軸81は、縦穴部11aに沿って移動可能である。
【0066】
また、差動二輪駆動ユニット50の向きを固定するため、第2の球面すべり軸受け84に、基板51の周辺部に設けた連結ピン83を挿入する。第2の球面すべり軸受け84は、内輪と外輪を球面で接触させた軸受である。連結ピン83は、基板51に対してZ軸方向に延出する。第2の球面すべり軸受け84は、本体部11に設けられた長孔85に挿入される。連結ピン83および第2の球面すべり軸受け84は、長孔85の範囲で移動可能である。なお、長孔85は、連結ピン83が挿入される連結孔として機能するものであって、本体部11に複数設けられている。
【0067】
本実施形態においては、向きを固定するための連結ピン83において、第2の球面すべり軸受け84を使用するが、Pitch自由度を確保するため、長孔85で固定するようにしたものである。連結ピン83および長孔85は、ロック機構として機能する。これにより、操舵のためのモータを不要とした単純な構造で全方位移動を実現することができる。加えて、トラクション抜け防止による走行安定性の確保を実現することができる。
【0068】
また、本実施形態においては、基板51に、駆動輪86を備える。駆動輪86は、駆動輪12aの対向方向と交差する方向に設けられる。
【0069】
さらに図7-2の例では、自動搬送車10は、図7-2に示すように、連結軸81に荷重付加機構90を備える。自動搬送車10が重量物を運搬するためには、車輪駆動モータ12cの出力を上げるだけでは不十分である。駆動輪12bの力をスリップなく伝えるためには、第1に駆動輪12bの浮きが無いこと、第2に駆動輪12bに掛かる重量が大きいこと、が必要となる。そこで、自動搬送車10は、連結軸81に荷重付加機構90を備えることにより、荷台部13に積載した重量を駆動輪12bにより集中させることで、駆動輪12bの摩擦力を高め、より大きな重量の運搬物への対応が可能となる。
【0070】
なお、第1の実施の形態に係る自動搬送車10の連結軸63に対して、本実施形態の荷重付加機構90を備えるようにしてもよい。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した各実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、これらの実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
10 自動搬送車
11 本体部
11a 縦穴部
50 差動二輪駆動ユニット
60 固定開放部、連結部
62 軸支部
63,81 軸部
70 回転ブレーキ機構
83 固定開放部、ロック機構、連結ピン
85 固定開放部、ロック機構、連結孔
90 荷重付加機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開2019-109863号公報
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】