(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134998
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240927BHJP
B41J 2/015 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B41J2/01 211
B41J2/015 101
B41J2/01 213
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045479
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】柳 裕之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正幸
(72)【発明者】
【氏名】岡本 卓也
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EC08
2C056EC31
2C056EC38
2C056EC71
2C056EC74
2C056EC78
2C056EC79
2C056ED03
2C056ED05
2C056FA10
2C057AF01
2C057AM11
2C057AM15
2C057AM16
2C057AM21
2C057AM22
2C057AN01
2C057AR08
2C057CA04
(57)【要約】
【課題】印刷時間を短縮できる液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドを有し、走査する液体吐出部と制御部を備える。液体吐出ヘッドは液滴を記録媒体に対して吐出する。制御部は、第1の駆動波形と、第2の駆動波形とを選択可能であり、液滴の吐出箇所に応じて、第1の駆動波形による吐出と、第2の駆動波形による吐出とを液体吐出ヘッドに行わせる。駆動波形における1周期は、記録媒体の1つの箇所に対して液滴を吐出する動作に相当する。1周期に相当する時間を印字速度としたとき、第2の駆動波形における印字速度は、第1の駆動波形における印字速度よりも速い。記録媒体の1つの箇所に対する液滴の着弾量を液体吐出量としたとき、第1の駆動波形及び第2の駆動波形ともに液体吐出量に上限が設けられており、第2の駆動波形における液体吐出量の上限は、第1の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低い。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが配列された液体吐出ヘッドを有し、走査する液体吐出部と、
前記液体吐出ヘッドを制御する制御部と、を備え、
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルから液滴を記録媒体に対して吐出し、
前記制御部は、前記液体吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動波形として、第1の駆動波形と、第2の駆動波形とを選択可能であり、液滴の吐出箇所に応じて、前記第1の駆動波形による吐出と、前記第2の駆動波形による吐出とを前記液体吐出ヘッドに行わせ、
前記駆動波形における1周期は、記録媒体の1つの箇所に対して液滴を吐出する動作に相当し、
前記1周期に相当する時間を印字速度としたとき、前記第2の駆動波形における印字速度は、前記第1の駆動波形における印字速度よりも速く、
記録媒体の1つの箇所に対する液滴の着弾量を液体吐出量としたとき、前記第1の駆動波形及び前記第2の駆動波形ともに液体吐出量に上限が設けられており、
前記第2の駆動波形における液体吐出量の上限は、前記第1の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低い
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1の駆動波形における液体吐出量をゼロ、小、中及び大に分類したとき、前記第2の駆動波形における液体吐出量は、ゼロ、前記小又は前記中が選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記液体吐出部が走査する方向を主走査方向とし、主走査方向に垂直な方向を副走査方向としたとき、
前記液体吐出部は、複数回の走査を行って画像を形成するインターレース方式で画像を形成し、該方式では、奇数回目の走査で吐出する液滴の位置と、偶数回目の走査で吐出する液滴の位置とが、前記副走査方向にずれており、
奇数回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行うか、又は、
奇数回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体吐出部は、2回の走査を行って画像を形成する1/2インターレース方式で画像を形成し、
1回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行い、かつ、2回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行うか、又は、
1回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行い、かつ、2回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出部が走査する方向を主走査方向とし、主走査方向に垂直な方向を副走査方向としたとき、
前記液体吐出部は、前記主走査方向に対してM箇所に吐出箇所をずらし、前記副走査方向に対してN箇所に吐出箇所をずらして吐出して画像を形成するとともに、M×N回の走査を行って画像を形成するマルチパス方式で画像を形成し、
前記M×N回の走査のうち、1回以上を前記第1の駆動波形による吐出を行い、1回以上を前記第2の駆動波形による吐出を行う(ただし、M及びNは2以上の整数である)
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体吐出部が走査する方向を主走査方向とし、主走査方向に垂直な方向を副走査方向としたとき、
前記液体吐出部は、複数回の走査を行って画像を形成するインターレース方式と、前記主走査方向に対してM箇所に吐出箇所をずらし、前記副走査方向に対してN箇所に吐出箇所をずらして吐出して画像を形成するとともに、M×N回の走査を行って画像を形成するマルチパス方式とを組み合わせて画像を形成し、
前記インターレース方式では、奇数回目の走査で吐出する液滴の位置と、偶数回目の走査で吐出する液滴の位置とが、前記副走査方向にずれており、該インターレース方式は、
奇数回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行うか、又は、
奇数回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行い、
前記マルチパス方式は、
前記M×N回の走査のうち、1回以上を前記第1の駆動波形による吐出を行い、1回以上を前記第2の駆動波形による吐出を行う(ただし、M及びNは2以上の整数である)
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出部が走査する方向を主走査方向としたとき、
前記制御部は、前記主走査方向の吐出位置に対して、前記第1の駆動波形による吐出と、前記第2の駆動波形による吐出とを前記液体吐出ヘッドに交互に行わせる
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記液体吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動波形として、前記第1の駆動波形と前記第2の駆動波形のほかに、第3の駆動波形を選択可能であり、液滴の吐出箇所に応じて、前記第1の駆動波形による吐出と、前記第2の駆動波形による吐出と、前記第3の駆動波形による吐出とを前記液体吐出ヘッドに行わせ、
前記第3の駆動波形における印字速度は、前記第2の駆動波形における印字速度よりも速く、
前記第3の駆動波形の液体吐出量に上限が設けられており、
前記第3の駆動波形における液体吐出量の上限は、前記第2の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低い
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記液体吐出部の1走査ごとに駆動波形の選択を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを走査させて印字する印字装置において、同一印字領域を複数回走査して印字するマルチパス方式やインターレース方式などが知られている。このような方式を用いることで画像品質の向上を図る。従来、このような方式を行う際、印刷品質を保ちつつ、印刷速度を向上させる技術が提案されている。
【0003】
特許文献1では、諸問題を引き起こすインクミストの発生量を抑えることを目的としたインクジェット記録装置の印字方法が提案されている。
特許文献1では、マルチパス印字方法で余白なし印刷(ふちなし印刷)を行うインクジェット記録装置において、記録媒体の端部外側および前記端部より既定長だけ内側に入った第一印字領域と、第1領域より内側に位置する記録媒体上の第二印字領域の両方に印字を行う際に、所定の階調値(濃度)で比較して、第一印字領域における単位時間あたりのインクの打ち込み量(インク吐出デューティ)が第二印字領域と比べて多くなるようにしている。
【0004】
特許文献2では、吐出したインクが被吐出媒体の所望の位置に着弾し易くなることを目的としたインク吐出装置が提案されている。
特許文献2では、ノズルと被吐出媒体との距離がローギャップとなるローギャップ印刷モードと、前記距離が前記ローギャップよりも大きいハイギャップとなるハイギャップ印刷モードとを判定する。そして、ハイギャップ印刷モードであると判定された場合に、前記複数のノズルによる単位時間当たりの総吐出発数を前記ローギャップ印刷モードの場合よりも減少させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同一印字領域を複数回走査して印字する際に、走査回数が増えるほど印刷時間がかかってしまう。そのため、印刷時間を短縮できる技術が求められている。
【0006】
そこで本発明は、印刷時間を短縮できる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の液体吐出装置は、
複数のノズルが配列された液体吐出ヘッドを有し、走査する液体吐出部と、
前記液体吐出ヘッドを制御する制御部と、を備え、
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルから液滴を記録媒体に対して吐出し、
前記制御部は、前記液体吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動波形として、第1の駆動波形と、第2の駆動波形とを選択可能であり、液滴の吐出箇所に応じて、前記第1の駆動波形による吐出と、前記第2の駆動波形による吐出とを前記液体吐出ヘッドに行わせ、
前記駆動波形における1周期は、記録媒体の1つの箇所に対して液滴を吐出する動作に相当し、
前記1周期に相当する時間を印字速度としたとき、前記第2の駆動波形における印字速度は、前記第1の駆動波形における印字速度よりも速く、
記録媒体の1つの箇所に対する液滴の着弾量を液体吐出量としたとき、前記第1の駆動波形及び前記第2の駆動波形ともに液体吐出量に上限が設けられており、
前記第2の駆動波形における液体吐出量の上限は、前記第1の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低い
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印刷時間を短縮できる液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】液体吐出装置の一例を説明するための概略図である。
【
図2】液体吐出装置の一例の要部を説明するための概略図である。
【
図6】1/2インターレース方式の一例を説明するための図である。
【
図7】マルチパス方式の一例を説明するための図である。
【
図9】誤差拡散法による階調処理の一例を説明するための図である。
【
図11】閾値処理の一例を説明するための図(A)及び(B)である。
【
図12】閾値処理の他の例を説明するための図(A)及び(B)である。
【
図13】第1~第3の駆動波形の一例を示す図(A)~(C)である。
【
図14】閾値処理の一例を説明するための図である。
【
図15】閾値処理の一例を説明するための図(A)~(C)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る液体吐出装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明の液体吐出装置は、
複数のノズルが配列された液体吐出ヘッドを有し、走査する液体吐出部と、
前記液体吐出ヘッドを制御する制御部と、を備え、
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルから液滴を記録媒体に対して吐出し、
前記制御部は、前記液体吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動波形として、第1の駆動波形と、第2の駆動波形とを選択可能であり、液滴の吐出箇所に応じて、前記第1の駆動波形による吐出と、前記第2の駆動波形による吐出とを前記液体吐出ヘッドに行わせ、
前記駆動波形における1周期は、記録媒体の1つの箇所に対して液滴を吐出する動作に相当し、
前記1周期に相当する時間を印字速度としたとき、前記第2の駆動波形における印字速度は、前記第1の駆動波形における印字速度よりも速く、
記録媒体の1つの箇所に対する液滴の着弾量を液体吐出量としたとき、前記第1の駆動波形及び前記第2の駆動波形ともに液体吐出量に上限が設けられており、
前記第2の駆動波形における液体吐出量の上限は、前記第1の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低い
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の液体吐出方法は、
複数のノズルが配列された液体吐出ヘッドを有し、走査する液体吐出部を備えた液体吐出装置の液体吐出方法であって、
前記液体吐出ヘッドを制御し、前記ノズルから液滴を記録媒体に対して吐出させる制御を行う制御工程を含み、
前記制御工程は、前記液体吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動波形として、第1の駆動波形と、第2の駆動波形とを選択可能であり、液滴の吐出箇所に応じて、前記第1の駆動波形による吐出と、前記第2の駆動波形による吐出とを前記液体吐出ヘッドに行わせ、
前記駆動波形における1周期は、記録媒体の1つの箇所に対して液滴を吐出する動作に相当し、
前記1周期に相当する時間を印字速度としたとき、前記第2の駆動波形における印字速度は、前記第1の駆動波形における印字速度よりも速く、
記録媒体の1つの箇所に対する液滴の着弾量を液体吐出量としたとき、前記第1の駆動波形及び前記第2の駆動波形ともに液体吐出量に上限が設けられており、
前記第2の駆動波形における液体吐出量の上限は、前記第1の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低い
ことを特徴とする。
【0013】
まず、本実施形態の液体吐出装置の基本構成について説明する。
図1は、本実施形態の液体吐出装置の一例を説明するための外観概略図である。液体吐出装置100は、例えば、手差し給紙部30から記録媒体が供給され、排出部31から記録媒体が排出される。
【0014】
図2は、液体吐出装置100の液体吐出部の一例を説明するための概略図である。
キャリッジ1は、液体吐出部の一例であり、図中の矢印方向(主走査方向)に走査する。キャリッジ1は、液体吐出ヘッドの一例である記録ヘッド2を有する。記録ヘッド2は、複数のノズルが配列されており、ノズルから液体(例えばインク)が吐出される。キャリッジ1は、複数の記録ヘッド2を搭載していてもよい。
【0015】
キャリッジ1は、例えばエンコーダセンサ3を搭載しており、エンコーダセンサ3によってキャリッジ1の位置を把握することができる。エンコーダセンサ3の配置場所は特に制限されない。キャリッジ1は、例えばプラテン22上を主走査方向に走査しながら、記録媒体Pに液体を吐出し、画像を形成する。プラテン22は、記録媒体Pを支持する支持部材の一例である。プラテン22は、例えば吸引孔を有しており、吸引ファン7が吸引孔を介して記録媒体Pを吸引する。これにより記録媒体Pはプラテン22に吸着する。
【0016】
記録媒体としては、適宜選択することができ、例えば普通紙などを用いることができる。記録媒体は、媒体、被吐出物、メディアなどと称してもよい。
【0017】
図3は、本例における制御ブロックを示す図である。
液体吐出装置100は、制御部10を有している。制御部10は、例えば、スキャナ9やPC18から受け取った画像データに基づいて、主走査ドライバ5、ヘッドドライバ6、吸引ファン7、副走査ドライバ8、カッターモータドライバ21を制御する。
【0018】
主走査ドライバ5は、キャリッジ1を走査させる。キャリッジ1がエンコーダセンサ3等を備えることで、制御部10は、キャリッジ1の位置情報を使用できる。ヘッドドライバ6は、記録ヘッド2の吐出を行う。吸引ファン7は、プラテンを介して記録媒体を吸引し、記録媒体をプラテンに吸着させる。副走査ドライバ8は、搬送部4を駆動させ、記録媒体の搬送を行う。カッターモータドライバ21は、カッター部20を駆動させ、記録媒体の切断を行う。
【0019】
画像処理部14は、制御部10から画像データを受け取り、画像データの処理を行う。画像処理部14は、副走査の余白位置情報を制御部10に送信する。画像処理部14は、必要に応じてRAM16に情報の読み書きを行う。
【0020】
制御部10は、必要に応じてROM13から情報を読み取る。また、制御部10は、操作部12と情報のやり取りを行う。例えば使用者が操作部12を介して装置に指示を行う。制御部10は、使用者からの指示に基づいて各制御を行う。また、制御部10は、操作部12に対して通知を行ってもよい。
【0021】
制御部10は、例えば駆動波形制御部11を有していてもよい。駆動波形制御部11は、例えば、液体吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動波形を選択する。
【0022】
次に、本実施形態の液体吐出装置及び液体吐出方法について詳細例を説明する。
従来技術では、1/2インターレース方式やマルチパス方式などのように同一印字領域を複数回走査して印字する際、走査回数が増えるほど印刷時間がかかってしまう。そのため、印刷時間を短縮できる技術が求められている。これに対して本実施形態によれば、同一印字領域を複数回走査して印字する場合でも、印刷時間を短縮することができる。
【0023】
本実施形態における制御部は、液体吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動波形として、第1の駆動波形と、第2の駆動波形とを選択可能であり、液滴の吐出箇所に応じて、第1の駆動波形による吐出と、第2の駆動波形による吐出とを前記液体吐出ヘッドに行わせる。
【0024】
図4は、第1の駆動波形の一例を示す図である。本実施形態において、第1の駆動波形を通常の駆動波形と称することがある。
【0025】
本実施形態では、駆動波形における1周期は、記録媒体の1つの箇所に対して液滴を吐出する動作に相当する。例えば
図4中の「1回の吐出周期」で示している箇所の波形が1周期に相当する。ここで示す例では、波形中の山(パルスなどとも称する)が4つ存在している。
【0026】
記録媒体の1つの箇所に対して複数の液滴を吐出してもよい。本実施形態において、駆動波形における1周期では、対象のノズルが記録媒体の1つの箇所に対して1又は複数の液滴を吐出する。厳密に一致するとは限らないが、波形中の1つの山により、対象のノズルは1滴の液滴を吐出する。
図4に示す例において、1周期に4つの山が存在しているため、対象のノズルが記録媒体の1つの箇所に対して4つの液滴が吐出されるイメージである。波形中の山の数と吐出される液滴の数は必ずしも一致するとはいえない場合があるが、1周期中の山の数が多くなるほど、対象のノズルから吐出される液滴の数が多くなる。そのため、1周期中の山の数が多いほど、記録媒体の1つの箇所に対して着弾する液体の量が大きくなる。
【0027】
記録媒体の1つの箇所に対する液滴の着弾量を液体吐出量とも称する。液体吐出量は、インク吐出量などと称されてもよい。液体吐出量は、1周期中の山の数(谷の数)を変更することで変更することができる。
【0028】
上記の説明では、波形中の山の観点で説明しているが、波形中の谷の観点で説明しても同様の内容になる。また、本実施形態では、押し出し-引き込み駆動であってもよいし、引き込み-押し出し駆動であってもよい。
【0029】
波形中の山(パルス)の大きさ、すなわち電圧の大きさは、例えば、液滴のスピードに影響する。
図4に示す例における1周期中の4つの山では、後の2つの山の高さが前の2つの山の高さよりも高くなっている。そのため、1周期で4滴の液滴を吐出したとすると、後に吐出される2滴の液滴のスピードが速くなり、場合によっては、前の2滴と合わさって空気中を飛翔する。ただし、本実施形態は、このような波形に限られるものではない。対象のノズルが記録媒体の1つの箇所に対して複数の液滴を吐出する場合、その箇所に1滴として着弾してもよいし、複数滴が順次着弾してもよい。
【0030】
後の説明で、小滴、中滴、大滴などと記載することがあり、これは記録媒体の1つの箇所に対する液体吐出量が小量(小)、中量(中)、大量(大)であるともいえる。ただしこれに限られず、小滴、中滴、大滴と記載した場合、空気中を飛翔する液滴のサイズが、小さい、中くらい、大きいであるともいえるし、この他にも、空気中を飛翔する液滴の体積や重量が、小量、中量、大量であるともいえる。
【0031】
図4に示す第1の駆動波形の例では、1回の吐出周期T1を100μsecとしている。これは、記録媒体の1つの箇所に対する液滴の吐出の動作が100μsecであるともいえる。本実施形態では、駆動波形における1周期に相当する時間を印字速度と称する。本例における第1の駆動波形では、印字速度が100μsecであるともいえる。ここでは印字速度の単位を時間としており、一般的な速度の概念とは異なっているかもしれない。本実施形態において、駆動波形における1周期は、記録媒体の1つの箇所に対して液滴を吐出する動作に相当するものとしている。そのため、記録媒体の1つの箇所に対して液体を吐出することを「1回の吐出」とし、本実施形態における印字速度は、1回の吐出に要する時間であるともいえる。本実施形態において、印字速度が速いとは、1回の吐出に要する時間が短い(小さい)ことに相当し、印字速度が遅いとは、1回の吐出に要する時間が多い(大きい)ことに相当する。また、1回の吐出にかかる時間が1回の吐出周期に相当する。
【0032】
本例のように、印字速度が100μsecである場合、1画素あたりの最高速度が100μsecであるともいえる。1画素を1回の吐出で形成する場合、印字速度がそのまま1画素を形成する速度(時間)に相当する。そのため、1画素を1回の吐出で形成する場合であり、印字速度が100μsecである場合、100μsecで1画素が形成される。一方、1画素を複数の打ち分けで形成する場合、つまり、1画素を複数回の吐出で形成する場合、1画素を形成する速度(時間)は、100μsecよりも小さくなる。例えば、1画素を4回に打ち分けて形成する場合、すなわち4回の吐出で形成する場合であり、印字速度が100μsecである場合、25μsecで1画素が形成されるイメージである。
【0033】
再度述べるが、「1回の吐出」は、1滴の吐出と一致する場合もあり、1滴の吐出と一致しない場合もある。記録媒体の1つの箇所に対して1滴の液滴を吐出する場合、1回の吐出は1滴の吐出に相当し、駆動波形における1周期中の山の数は例えば1つになる。一方、記録媒体の1つの箇所に対して複数の液滴を吐出する場合、1回の吐出は複数滴の吐出に相当し、駆動波形における1周期中の山の数は複数になる。
【0034】
更に再度述べるが、記録媒体の1つの箇所において、ノズルから吐出される液滴の数と、記録媒体に着弾する液滴の数は、一致するとは限らない。空気中で液滴が合わさった場合、ノズルから吐出される液滴の数と、記録媒体に着弾する液滴の数とが一致しない。
【0035】
記録媒体の1つの箇所とあるのは、1画素であってもよいし、1画素でなくてもよい。1画素を打ち分けて形成する場合、1画素中に液滴が着弾する位置は複数になる。
【0036】
図4に示す第1の駆動波形の例では、1回の吐出周期T1を100μsec(100×10
-6sec)としているため、本例の吐出周波数は10KHzである。吐出周波数を駆動周波数などと称してもよい。第1の駆動波形における印字速度を第1の印字速度などと称してもよいし、第1の駆動波形における吐出周波数(駆動周波数)を第1の吐出周波数(第1の駆動周波数)などと称してもよい。
【0037】
図5は、第2の駆動波形の一例を示す図である。本実施形態において、第2の駆動波形を高速の駆動波形などと称することがある。
【0038】
本例の第2の駆動波形では第1の駆動波形と異なり、1回当たりの吐出周期T2が67μsecになっている。そのため、本実施形態において、第2の駆動波形における印字速度は、第1の駆動波形における印字速度よりも速くなっている。換言すると、第2の駆動波形における1画素あたりの最高速度が、第1の駆動波形における1画素あたりの最高速度よりも速いといえる。
【0039】
このようなことから、第1の駆動波形を通常の駆動波形などとも称し、第2の駆動波形を高速の駆動波形などとも称する。
【0040】
なお、第1の駆動波形と第2の駆動波形を比較した際に、電圧の大きさの大小関係は特に規定する必要はない。図示する例では、第1の駆動波形で電圧が大きくなっているが、特に制限されるものではなく、第2の駆動波形で電圧が大きくなっていてもよい。上述したように、電圧の大きさは液滴の吐出スピードに影響するものであり、第1の駆動波形と第2の駆動波形のそれぞれで駆動波形中の電圧の大きさを適宜選択すればよい。
【0041】
同様に、第1の駆動波形と第2の駆動波形を比較した際に、駆動波形における1周期中の山(谷)の数の大小関係は特に規定する必要はない。
【0042】
図5に示す第2の駆動波形の例では、1回の吐出周期T2を67μsec(67×10
-6sec)としているため、本例の吐出周波数は約0.0149×10
6Hzとなり、約14.9KHzとなる。第2の駆動波形における印字速度を第2の印字速度などと称してもよいし、第2の駆動波形における吐出周波数(駆動周波数)を第2の吐出周波数(第2の駆動周波数)などと称してもよい。
【0043】
本実施形態において、第2の駆動波形における1回の吐出周期T2は、第1の駆動波形における1回の吐出周期T1よりも小さくなっている。そのため、第2の駆動波形における印字速度は、第1の駆動波形における印字速度よりも速くなっている。また、第2の吐出周波数は、第1の吐出周波数よりも高くなっている。
【0044】
図4及び
図5に示す例において、第2の駆動波形における印字速度(第2の印字速度)は、第1の駆動波形における印字速度(第1の印字速度)に対して約1.5倍になっている。そのため、本例において、第2の駆動波形による吐出は、第1の駆動波形による吐出よりも約1.5倍の速さで行うことができる。
なお、第1の駆動波形と第2の駆動波形における1回の吐出周期どうしを比較することで第1の印字速度と第2の印字速度とを比較することができる。例えば、第1の駆動波形における1回の吐出周期T1(100μsec)/第2の駆動波形における1回の吐出周期T2(67μsec)を求めると、1.4925・・・(約1.5)となり、第2の印字速度が第1の印字速度の約1.5倍の速さであることがわかる。
【0045】
本実施形態において、第1の駆動波形及び第2の駆動波形ともに液体吐出量に上限が設けられている。このことについて以下説明する。
普通紙などの記録媒体に対して液体(例えばインク)を吐出して画像を形成する際、液体吐出量に制限がなく、1つの箇所に対してインクを多量に吐出すると、インクの滲みなどが発生してしまう。インクの滲みが生じると、良好な品質の画像が得られない。そのため、本実施形態では、第1の駆動波形及び第2の駆動波形ともに液体吐出量に上限を設けることで、画像品質を確保する。
【0046】
本実施形態において、第2の駆動波形における液体吐出量の上限は、第1の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低くなっている。これは、第2の駆動波形における1回の吐出周期が、第1の駆動波形における1回の吐出周期よりも小さいためである。1回の吐出周期が小さい場合、1回の吐出周期中に存在できる山(谷)の数の上限が少なくなる。そのため、第2の駆動波形における液体吐出量の上限は、第1の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低くなる。つまり、第2の駆動波形は、第1の駆動波形に比べて吐出可能な液量は少ないという制約が生じている。
【0047】
従来技術のように、液滴を吐出する箇所の全てに対して同じ液体吐出量で吐出を行うと、同一印字領域を複数回走査して印字する際に、走査回数が増えるほど印刷時間がかかってしまう。そのため、本実施形態では、第1の駆動波形(通常の駆動波形)よりも印字速度が速い第2の駆動波形による吐出を選択できるようにし、液滴の吐出箇所に応じて、第1の駆動波形による吐出と、第2の駆動波形による吐出とを液体吐出ヘッドに行わせる。第2の駆動波形は、第1の駆動波形に比べて吐出可能な液量が少ないが、1回の吐出が速いため、画像形成速度と画像品質のバランスをとりつつ、印刷時間を短縮することができる。本実施形態では、吐出速度の速い印字を織り交ぜることにより、トータルとしての印刷時間を短縮することができる。
【0048】
第1の駆動波形における液体吐出量及び第2の駆動波形における液体吐出量は、狙いの画像を形成するために用いられる画像データの値に応じて適宜選択される。記録媒体の1つの箇所に対して、その箇所に相当する画像データの値に応じて液体吐出量を決定する。液体吐出量は、様々な値であってもよく、その箇所の画像データの値と1対1の値をとってもよい。この他にも、その箇所の画像データの値をグループ分けして、つまり閾値を設けて液体吐出量を決定してもよい。例えば、液体吐出量をゼロ、小、中、大のように分けて、記録媒体の1つの箇所に相当する画像データの値に対して閾値判定を行い、その箇所に吐出する液体吐出量を決定してもよい。
【0049】
第1の駆動波形における液体吐出量をゼロ、小、中及び大に分類したとき、第2の駆動波形における液体吐出量は、ゼロ、小又は中が選択されることが好ましい。このようにすることで、第2の駆動波形における液体吐出量の上限が、第1の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低いという関係を満たしつつ、駆動波形の生成の処理が複雑になることを防止できる。液体吐出量を例えば小中大のように分類することで、駆動波形における1回の吐出周期中の波形を生成しやすくなる。例えば、液体吐出量が小の場合は1回の吐出周期中の山(谷)の数を所定の数にする、といった処理にすることができる。
【0050】
次に、同一印字領域を液体吐出部(例えばキャリッジ)が複数回走査して印字する方式について例を挙げて説明する。また、第1の駆動波形による吐出と、第2の駆動波形による吐出とをどのように行うのか例を挙げて説明する。このように印字する方式としては、例えば、インターレース方式、マルチパス方式が挙げられる。
【0051】
本実施形態におけるインターレース方式では、1回の走査ごとに交互に第1の駆動波形による吐出と、第2の駆動波形による吐出を行い、複数回の走査により画像を形成する方式である。
すなわち、本実施形態におけるインターレース方式では、液体吐出部が走査する方向を主走査方向としたとき、液体吐出部は、複数回の走査を行って画像を形成するインターレース方式で画像を形成し、該方式では、奇数回目の走査で吐出する液滴の位置と、偶数回目の走査で吐出する液滴の位置とが、副走査方向にずれている。また、本実施形態のインターレース方式では、下記(1)又は(2)のように吐出する。
(1)奇数回目の走査では第1の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では第2の駆動波形による吐出を行う。
(2)奇数回目の走査では第2の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では第1の駆動波形による吐出を行う。
【0052】
従来技術では、複数回の走査で全て同じ駆動波形を用いて印字を行っている。そのため、従来技術では、印刷を行うのに時間がかかり、印刷時間を短縮することができない。一方、本実施形態におけるインターレース方式では、印字速度の速い第2の駆動波形による吐出を織り交ぜることにより、従来技術よりも印刷時間を短縮することができる。また、本実施形態では、第1の駆動波形による吐出と、第2の駆動波形による吐出を走査ごとに交互に行うため、マルチパス方式に比べて制御の処理を簡易にすることができる。
【0053】
なお、上記における、液体吐出部がインターレース方式で画像を形成するという記載について補足する。
図3のところでも説明したように、制御部10がキャリッジ1の走査と記録ヘッド2の吐出を制御する。そのため、上記の記載については、制御部が液体吐出部に複数回の走査をさせて画像を形成させると記載してもよい。この観点からすると、本実施形態におけるインターレース方式は、制御部が液体吐出部に複数回の走査をさせて画像を形成させる方式であるともいえる。下記のその他の例についても同様である。液体吐出部が画像を形成するという動作は、制御部が液体吐出部を制御して画像を形成させる動作であるともいえる。
【0054】
本実施形態におけるインターレース方式は、例えば1/2インターレース方式とすることができる。本例の1/2インターレース方式は以下のようにして行う。
液体吐出部は、2回の走査を行って画像を形成する。また、本例の1/2インターレース方式では、下記(3)又は(4)のように吐出する。
(3)1回目の走査では第1の駆動波形による吐出を行い、かつ、2回目の走査では第2の駆動波形による吐出を行う。
(4)1回目の走査では第2の駆動波形による吐出を行い、かつ、2回目の走査では第1の駆動波形による吐出を行う。
【0055】
本例では、第1の駆動波形による吐出と、第2の駆動波形による吐出を走査ごとに交互に行い、画像を2回の走査で形成するため、制御の処理を簡易にしやすくなる。
【0056】
図6は、本例の1/2インターレース方式を模式的に説明するための図である。図では、記録媒体Pにおける液体の吐出位置を模式的に示している。符号101は、1回目の走査における液滴の吐出箇所を示しており、符号102は、2回目の走査における液滴の吐出箇所を示している。1回目、2回目とあるのは、キャリッジ1の走査回数である。また、キャリッジ1の走査方向(主走査方向)と、記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)を矢印で示している。
【0057】
ここでは、説明のために記録媒体Pとして図示しているが、どのように吐出するかを説明することが目的であるため、記録媒体Pではなく、データとして図示してもよい。
【0058】
本例の1/2インターレース方式では、副走査方向に2度に打ち分けて画像形成する。1回目の走査の際に、符号101の箇所を紙面左右方向(主走査方向)に走査しながら吐出する。次いで、2回目の走査の際に、符号102の箇所を主走査方向に走査しながら吐出する。このようにして2回の走査で画像を形成する。特に制限されるものではないが、例えば、1回の走査による画像形成(符号101だけでの画像形成)が300dpiの場合、2回の走査を行って画像形成(符号102も画像形成)することで、600dpiの解像度で画像を形成することができる。そのため、インターレース方式では解像度を高くすることができる。
【0059】
本例では、例えば上記(3)のように、1回目の走査では第1の駆動波形による吐出を行い、かつ、2回目の走査では第2の駆動波形による吐出を行う。つまり、符号101の箇所に対して第1の駆動波形による吐出を行い、符号102の箇所に対して第2の駆動波形による吐出を行う。これにより、印刷時間を短縮できる。
【0060】
また、本例は上記(4)のように吐出してもよい。つまり、符号101の箇所に対して第2の駆動波形による吐出を行い、符号102の箇所に対して第1の駆動波形による吐出を行う。この場合も印刷時間を短縮できる。
【0061】
次に、本実施形態におけるマルチパス方式の例について説明する。
本実施形態におけるマルチパス方式は以下のようにして行う。
液体吐出部が走査する方向を主走査方向とし、主走査方向に垂直な方向を副走査方向としたとき、液体吐出部は、主走査方向に対してM箇所に吐出箇所をずらし、副走査方向に対してN箇所に吐出箇所をずらして吐出して画像を形成するとともに、M×N回の走査を行って画像を形成するマルチパス方式で画像を形成する。また、本実施形態におけるマルチパス方式では、M×N回の走査のうち、1回以上を第1の駆動波形による吐出を行い、1回以上を第2の駆動波形による吐出を行う。ただし、M及びNは2以上の整数である。
【0062】
従来技術では、全てのパスを同じ駆動波形を用いて印字を行っている。そのため、従来技術では、印刷を行うのに時間がかかり、印刷時間を短縮することができない。一方、本実施径たでは、印字速度の速い第2の駆動波形による吐出を織り交ぜることにより、従来のマルチパス方式よりも印刷時間を短縮することができる。
【0063】
本実施形態におけるマルチパス方式では、走査回数は適宜選択できるが、中でも、主走査方向と副走査方向をそれぞれ2回、合計4回に打ち分けることが好ましい。つまり、M=2及びN=2である。この場合、画像品質を良好にできるとともに、打ち分け処理が複雑になることを抑制できる。以下、4回に打ち分ける場合のマルチパス方式の例について説明する。
【0064】
図7は、本例のマルチパス方式を模式的に説明するための図である。
図7(A)は記録媒体Pにおける、ある程度の領域を説明するための図であり、
図7(B)は1画素の打ち分けの順番を説明するための図である。
図7(A)では、記録媒体Pにおける液体の吐出位置を模式的に示している。
【0065】
本例では、主走査方向と副走査方向をそれぞれ2回、合計4回に打ち分けて1画素を形成する。説明のため、図では、4a+1回目~4a+4回目の吐出箇所で表示している。4a+1回目~4a+4回目とあるのは、パスの回数であり、キャリッジ1の走査の回数を表している。aは0以上の整数である。
【0066】
4a+1回目の走査では、符号111の位置に対して吐出を行う。
4a+2回目の走査では、符号112の位置に対して吐出を行う。
4a+3回目の走査では、符号113の位置に対して吐出を行う。
4a+4回目の走査では、符号114の位置に対して吐出を行う。
【0067】
例えば、a=0の場合、1回目の走査(1パス目)で符号111の位置に対して吐出を行う。次いで、2回目の走査(2パス目)で符号112の位置に対して吐出を行う。次いで、3回目の走査(3パス目)で符号113の位置に対して吐出を行う。次いで、4回目の走査(4パス目)で符号114の位置に対して吐出を行う。
【0068】
本実施形態のマルチパス方式では、M×N回の走査のうち、1回以上を第1の駆動波形による吐出を行い、1回以上を第2の駆動波形による吐出を行う。本例において、第1の駆動波形による吐出と第2の駆動波形による吐出の組み合わせは、適宜選択することができ、例えば下記(ア)~(ウ)が挙げられる。
【0069】
(ア)奇数回目(4a+1回目及び4a+3回目)の走査で、第1の駆動波形による吐出を行い、偶数回目(4a+2回目及び4a+4回目)の走査で、第2の駆動波形による吐出を行う。
(イ)奇数回目(4a+1回目及び4a+3回目)の走査で、第2の駆動波形による吐出を行い、偶数回目(4a+2回目及び4a+4回目)の走査で、第1の駆動波形による吐出を行う。
(ウ)4回の走査のうち1回のみ第1の駆動波形による吐出を行い、残りの走査を第2の駆動波形による吐出を行う。
4a+1回目~4a+4回目のうちのいずれか1回目で第1の駆動波形による吐出を行い、残りの走査を第2の駆動波形による吐出を行う。
【0070】
第2の駆動波形による吐出は、第1の駆動波形による吐出よりも印字速度が速いため、第2の駆動波形による吐出を増やすほど印刷時間が短縮される。一方、第2の駆動波形による吐出は、第1の駆動波形による吐出よりも液体吐出量の上限が低いため、液体吐出量に制限が生じる。そのため、印刷にかかる時間と画像品質のバランスも考慮して、適宜、第1の駆動波形による吐出と第2の駆動波形による吐出を組み合わせる。
【0071】
本実施形態では、インターレース方式とマルチパス方式を組み合わせて画像形成を行うことも可能である。この場合、例えば画像データに応じて部分的に方式を変更して画像形成を行うことができ、印刷時間の短縮と画像品質について所望のバランスで実現することができる。
【0072】
このような例について以下、改めて記載する。
液体吐出部が走査する方向を主走査方向とし、主走査方向に垂直な方向を副走査方向とする。
液体吐出部は、複数回の走査を行って画像を形成するインターレース方式と、主走査方向に対してM箇所に吐出箇所をずらし、副走査方向に対してN箇所に吐出箇所をずらして吐出して画像を形成するとともに、M×N回の走査を行って画像を形成するマルチパス方式とを組み合わせて画像を形成する。
本例のインターレース方式では、奇数回目の走査で吐出する液滴の位置と、偶数回目の走査で吐出する液滴の位置とが、副走査方向にずれている。また、該インターレース方式は、
奇数回目の走査では第1の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では第2の駆動波形による吐出を行うか、又は、
奇数回目の走査では第2の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では第1の駆動波形による吐出を行う。
本例のマルチパス方式は、
M×N回の走査のうち、1回以上を第1の駆動波形による吐出を行い、1回以上を第2の駆動波形による吐出を行う。ただし、M及びNは2以上の整数である。
【0073】
本例におけるインターレース方式とマルチパス方式では、上記で説明した構成、例えば
図6、
図7で説明した構成等を適用することができる。
【0074】
次に、本実施形態におけるフローの一例について
図8を用いて説明する。
図8は、本例のフローである。
例えばPC18やスキャナ9から液体吐出装置100に対してデータが入力されると、液体吐出装置100は、データに対して階調処理を実行する(S1、S2)。階調処理は、例えば画像処理部14が行う。階調処理については、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。階調処理の一例を後述している。
【0075】
階調処理を実行することにより、液体吐出量を決定する。液体吐出量は、液滴のサイズ、滴サイズなどと称してもよい。
【0076】
次いで、打ち分けデータを生成する(S3)。打ち分けデータの生成は、例えば画像処理部14が行う。打ち分けデータの生成では、例えば、1/2インターレース方式やマルチパス方式の設定等に応じた吐出箇所の打ち分けを設定する。
【0077】
次いで、駆動波形を選択する(S4)。ここでは、第1の駆動波形を用いるか、第2の駆動波形を用いるか選択する。上述したように、第1の駆動波形による吐出と、第2の駆動波形による吐出とでは印字速度が異なるため、駆動波形の選択は印字速度の選択であるともいえる。
【0078】
駆動波形の選択では、上記で説明したインターレース方式やマルチパス方式が考慮される。例えば、何回目の走査であるか、どの位置に対しての吐出であるか等を判定し、駆動波形を選択する。例えば、1/2インターレース方式において1回目の走査である場合、第1の駆動波形を選択する等の処理が行われる。
【0079】
第1の駆動波形(通常の駆動波形)を選択した場合、S5に分岐し、第2の駆動波形(高速の駆動波形)を選択した場合、S6に分岐する。
【0080】
次いで、印字処理を行う(S7)。本例におけるここで印字処理は、キャリッジを1回走査することに相当する。なお、印字処理を行うことを、出力するなどと称してもよい。
【0081】
次いで、残りの印字があるかどうかの判定を行う(S8)。残りの印字がない場合、フローが終了する。残りの印字がある場合、S4以降の処理を繰り返す。
【0082】
なお、上記S2、S3では、例えば画像処理部14が行うと説明した。
図3のブロック図では、説明のため制御部10と画像処理部14を分けて図示しているが、画像処理部14は制御部10に含まれていてもよい。また、上記S4の駆動波形の選択処理は、制御部10が行うと称してもよいし、駆動波形制御部11が行うと称してもよい。また、S7の印字処理では、例えば、制御部10が主走査ドライバ5やヘッドドライバ6を制御し、キャリッジ1を走査させ、記録ヘッド2に吐出させる。
【0083】
上記のフローの例において、制御部は、液体吐出部(キャリッジ1)の1走査ごとに、第1の駆動波形を用いるか、又は、第2の駆動波形を用いるかを選択する。このような処理は、S4~S8の一連の処理に対応しているともいえる。このように、1走査ごとに駆動波形(印字速度)を選択する場合、処理が複雑化することを抑制できる。
【0084】
次に、階調処理の例について説明する。本実施形態において、階調処理は、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。
【0085】
以下、誤差拡散法による階調処理の例について
図9、
図10を用いて説明する。
誤差拡散法では、注目画素の階調値と、周りの階調値の誤差積和マトリクスに記載の数字の割合で積和した結果と、を足し合わせたものを用いる。
【0086】
図9(A)は、誤差積和マトリクスの一例を示す図である。横方向をiとし、縦方向をjとしている。iは主走査方向であり、jは副走査方向である。図中の1マスは、記録媒体における1つの吐出箇所に該当する。色のついたマスの値は、誤差拡散の重み付けの割合である。白マスの*が注目画素である。注目画素*の隣の白マスは、マトリクス外であるため、数値を記載せず、空欄にしている。
【0087】
本例では、注目画素の階調値(画像データ値などとも称することがある)と、周辺誤差データとの積和結果(S)を算出する。誤差マトリクスで導いた周辺誤差値と注目画素の階調値との積和結果をS値などとも称する。S値を単にSとも称する。
【0088】
図9(B)は、注目画素*の階調処理を実施した後のデータをD(i,j)としたときの周辺画素の階調値Eをiとjで表したものである。S値は、D(i,j)と、各Eの値に重み付けしたものとを足し合わせたものである。
【0089】
本例における注目画素*でのS値は、
図10の式(1)のように表すことができる。
図9(A)と
図9(B)をあわせて考慮すると以下のようになる。下記の左側は、周辺画素の階調値Eであり、下記の右側は、各Eに対応する誤差マトリクスの値である。
E(i-2,j-1):0
E(i-1,j-1):1
E(i,j-1):2
E(i+1,j-1):1
E(i+2,j-1):0
E(i-2,j):2
E(i-1,j):2
【0090】
上記の左側と右側とを掛け合わせると、誤差マトリクスの値が0のものは、算出されないことになる。そのため、本例のおける注目画素*でのS値は、
図10の式(1)のようになる。また、式(1)では、誤差マトリクスの合計値で除している。すなわち、合計値8で除している。
【0091】
なお、
図10の式(2)は、参考として本例のS値の算出を一般化した式である。周辺画素E(x,y)について、x、yが0以下の場合に算出しないのは、単にその画素が存在しないからである。
【0092】
次に、上記のようにして求めたS値を用いて、液体吐出量を決定する処理の一例を説明する。本例では、求めたS値に対して閾値の判定を行うため、閾値処理などとも称する。
【0093】
図11は、本例の閾値処理を説明するための図である。
図11(A)は、第1の駆動波形を用いて吐出する箇所についての閾値処理の一例であり、
図11(B)は、第2の駆動波形を用いて吐出する箇所についての閾値処理の一例である。
【0094】
まず
図11(A)について説明する。本例の閾値処理では、S値に対して、どの閾値の範囲に該当するかを判定する。このような処理を階調処理などと称してもよい。例えば、S値が閾値小よりも小さい場合、その箇所(例えば画素)については吐出を行わない。つまり、液体吐出量はゼロである。これは、図中の(1)に該当する。
【0095】
S値が閾値小よりも大きく、閾値中よりも小さい場合、その箇所については小滴の吐出を行う。これは、図中の(2)に該当する。ただし、小滴とあるのは、液体を吐出箇所に対する液体吐出量を意味するものであり、1滴の液滴として記録媒体に着弾してもよいし、複数の液滴として記録媒体に着弾してもよい。
【0096】
同様に、S値が閾値中~閾値大の範囲である場合、その箇所については中滴の吐出を行う。これは、図中の(3)に該当する。同様に、S値が閾値大~閾値最大値の範囲である場合、その箇所については大滴の吐出を行う。これは、図中の(4)に該当する。
【0097】
なお、小滴で述べたことと同様に、中滴、大滴においても、液体を吐出箇所に対する液体吐出量を意味するものであり、1滴の液滴として記録媒体に着弾してもよいし、複数の液滴として記録媒体に着弾してもよい。
【0098】
このようにして、第1の駆動波形による吐出を行う位置について、液体吐出量を決定することができる。本例における第1の駆動波形では、階調処理として4値化する場合の例であり、つまり、液体吐出量がゼロ、小量(小)、中量(中)、大量(大)に分けられている場合の例である。本実施形態は、4値化に限られず、その他の値を適宜選択することができる。
【0099】
第1の駆動波形により吐出する際の液体吐出量を、第1の駆動波形における液体吐出量などと称することがあり、その他にも、第1の駆動波形の液体吐出量と称することがある。同様に、第2の駆動波形により吐出する際の液体吐出量を、第2の駆動波形における液体吐出量などと称することがあり、その他にも、第2の駆動波形の液体吐出量と称することがある。
【0100】
次いで
図11(B)について説明する。第2の駆動波形を用いて吐出する箇所についても、第1の駆動波形と同様に閾値処理を行う。ただし、本実施形態においては、上述したように、第2の駆動波形における液体吐出量の上限は、第1の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低くなっている。
【0101】
本例における第1の駆動波形での液体吐出量は大滴まで選択可能であるのに対し、図示するように、本例における第2の駆動波形での液体吐出量は、中滴までの選択に制限されている。上述したように、このように液体吐出量の上限が制限され、印字速度が速い第2の駆動波形による吐出を織り交ぜることで、印刷時間を短縮することができる。
【0102】
本例は、本例における第2の駆動波形では、階調処理として3値化する場合の例であり、つまり、液体吐出量がゼロ、小量(小)、中量(中)に分けられている場合の例である。本例のように、第1の駆動波形における液体吐出量をゼロ、小、中及び大に分類したとき、第2の駆動波形における液体吐出量は、ゼロ、前記小又は前記中が選択されることが好ましい。上述したように、駆動波形における1回の吐出周期中の波形を生成しやすくなる。
【0103】
本例の一例を説明する。例えば、1/2インターレース方式において奇数回目の走査に第1の駆動波形を選択した場合、1回目の走査では、液体吐出量としてゼロ、小、中及び大を選択可能になる。一方、2回目の走査では、液体吐出量としてゼロ、小及び中を選択可能になる。
【0104】
図8~
図11を用いてした上記の説明は、マルチパス方式においても適用できる。マルチパス方式においても誤差拡散法等により注目画素のS値を求めて閾値処理を行う。また、マルチパス方式の場合、例えば主走査方向の座標の位置によって閾値の判定を組み合わせる。例えば、
図7(B)の打点1、2に対して第1の駆動波形による吐出を行う場合、
図11(A)の閾値処理を行う。一方、例えば、
図7(B)の打点3、4に対して第2の駆動波形による吐出を行う場合、
図11(B)の閾値処理を行う。このようにすることで、マルチパス方式においても液体吐出量を決定することができる。
【0105】
また、上記では、誤差拡散法を一例として用いて説明したが、本実施形態はこれに限られず、その他にも例えばディザ法などを用いることができる。ディザ法による階調処理においても、誤差拡散法による階調処理と同様に、閾値処理を行うことができる。ディザ法では例えば、あらかじめ決めている閾値パターンと比較して液体吐出量を決定することができる。
【0106】
また、マルチパス方式においても、誤差拡散法に限られず、ディザ法等の階調処理を用いてもよい。マルチパス方式において、例えばディザ法を用いた場合も、例えば主走査方向の座標の位置によって閾値の判定を組み合わせることができるため、簡易に処理を行うことができる。
【0107】
次に、
図11の変形例を
図12に示す。
図12に示す例は、傾斜型の閾値を用いた場合の例である。例えば、注目画素の階調処理前の入力データ(0~255)に対して、閾値が変わるようにしてもよい。図示するように、例えば、注目画素の階調処理前の入力データ(階調値)が、ある領域では、増加するにつれて判定に用いる閾値の値も増加させる。そして、入力データがある値以上の領域では、閾値を一定にする。本実施形態ではこのような構成も可能である。
【0108】
本実施形態の他の例について説明する。液体吐出部が走査する方向を主走査方向としたとき、制御部は、主走査方向の吐出位置に対して、第1の駆動波形による吐出と、第2の駆動波形による吐出とを液体吐出ヘッドに交互に行わせるようにしてもよい。つまり、1走査において、第1の駆動波形による吐出と、第2の駆動波形による吐出とを交互に繰り返す。この場合、1走査中、半分もしくは略半分の吐出箇所に対して、高速である第2の駆動波形による吐出が行われることになるため、印刷時間がより短縮される。
【0109】
次に、本発明に係るその他の実施形態について説明する。上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
上記実施形態では、制御部が選択可能な駆動波形として、第1の駆動波形と第2の駆動波形である場合について説明した。本発明はこれに限られず、更にその他の駆動波形を選択できるようにしてもよい。
【0110】
本実施形態は、例えば以下である。
制御部は、液体吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動波形として、第1の駆動波形と第2の駆動波形のほかに、第3の駆動波形を選択可能であり、液滴の吐出箇所に応じて、第1の駆動波形による吐出と、第2の駆動波形による吐出と、第3の駆動波形による吐出とを前記液体吐出ヘッドに行わせる。
第3の駆動波形における印字速度は、第2の駆動波形における印字速度よりも速い。
第3の駆動波形の液体吐出量に上限が設けられており、第3の駆動波形における液体吐出量の上限は、第2の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低い。
【0111】
第3の駆動波形における印字速度は、第2の駆動波形における印字速度よりも速いため、このような第3の駆動波形を用いることにより、更に印刷時間を短縮することができる。第2の駆動波形に加えて第3の駆動波形も用いて画像を形成することにより、画像形成速度と画像品質のバランスをとりつつ、印刷時間を更に短縮することができる。本実施形態では、吐出速度の速い複数の印字を織り交ぜることにより、トータルとしての印刷時間を短縮することができる。
【0112】
図13は、第3の駆動波形の例を説明するための図である。説明のため、第1の駆動波形と第2の駆動波形もあわせて図示している。
図13(A)は、第1の駆動波形の例であり、
図13(B)は、第2の駆動波形の例であり、
図13(C)は、第1の駆動波形の例である。
【0113】
図13(C)に示す第3の駆動波形の例では、1回の吐出周期T3を50μsec(50×10
-6sec)としているため、本例の吐出周波数は約0.02×10
6Hzとなり、20KHzとなる。第3の駆動波形における印字速度を第3の印字速度などと称してもよいし、第3の駆動波形における吐出周波数(駆動周波数)を第3の吐出周波数(第3の駆動周波数)などと称してもよい。
【0114】
本実施形態において、第3の駆動波形における1回の吐出周期T3は、第2の駆動波形における1回の吐出周期T2よりも小さくなっている。そのため、第3の駆動波形における印字速度は、第2の駆動波形における印字速度よりも速くなっている。また、第3の吐出周波数は、第2の吐出周波数よりも高くなっている。
【0115】
図13に示す例において、第3の駆動波形における印字速度(第3の印字速度)は、第2の駆動波形における印字速度(第2の印字速度)に対して1.34倍になっている。そのため、本例において、第3の駆動波形による吐出は、第2の駆動波形による吐出よりも1.34倍の速さで行うことができる。
【0116】
なお、第2の駆動波形と第3の駆動波形における1回の吐出周期どうしを比較することで第2の印字速度と第3の印字速度とを比較することができる。例えば、第2の駆動波形における1回の吐出周期T1(67μsec)/第3の駆動波形における1回の吐出周期T3(50μsec)を求めると、1.34となり、第3の印字速度が第2の印字速度の1.34倍の速さであることがわかる。
同様に、第3の印字速度は、第1の印字速度の2倍の速さになる。
【0117】
本実施形態では、第3の駆動波形の液体吐出量にも上限が設けられており、第3の駆動波形における液体吐出量の上限は、第2の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低い。第3の駆動波形は、第3の駆動波形に比べて吐出可能な液量が少ないが、1回の吐出が速いため、画像形成速度と画像品質のバランスをとりつつ、印刷時間を更に短縮することができる。
【0118】
第3の駆動波形における液体吐出量の一例について、
図14を用いて説明する。
図14は、上記の
図11と同様の例における図であり、第3の駆動波形を用いて吐出する箇所についての閾値処理の一例を示す図である。
【0119】
図11に示す例において、第1の駆動波形での液体吐出量は大滴まで選択可能であり、第2の駆動波形での液体吐出量は中滴まで選択可能である。一方、
図14に示すように、本例における第3の駆動波形での液体吐出量は、小滴に制限されている。S値が閾値小を超える箇所では小滴を吐出し、S値が閾値小を超えない箇所では吐出しないといった判定が可能である。
【0120】
次に、液体吐出量についてその他の例を説明する。
図15は、本例を説明するための図であり、
図14等と同様の図である。
図11及び
図14に示す例では、第1の駆動波形の液体吐出量を4値化し、第2の駆動波形の液体吐出量を3値化し、第3の駆動波形の液体吐出量を2値化した。本実施形態はこれに限られず、
図15に示す例のように、第1の駆動波形の液体吐出量を4値化し、第2の駆動波形の液体吐出量を2値化し、第3の駆動波形の液体吐出量を2値化してもよい。この場合、第2の駆動波形の液体吐出量として、吐出なし(1)と中滴(3)を選択可能とし、第3の駆動波形の液体吐出量として、吐出なし(1)と小滴(2)を選択可能とする。この場合でも、第3の駆動波形における液体吐出量の上限は、第2の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低いといえる。
【0121】
本実施形態においても、上記実施形態と同様に、インターレース方式、マルチパス方式等を用いることが可能であり、誤差拡散法、ディザ法等を用いることが可能である。本実施形態において、1/2インターレース方式を用いる場合、第1~第3の駆動波形による吐出を適宜選択して組み合わせる。例えば、1回目の走査では第1の駆動波形による吐出を行い、2回目の走査では第2の駆動波形による吐出を行ってもよい。この逆でもよく、1回目の走査では第2の駆動波形による吐出を行い、2回目の走査では第1の駆動波形による吐出を行ってもよい。この他にも例えば、1回目の走査では第2の駆動波形による吐出を行い、2回目の走査では第3の駆動波形による吐出を行ってもよい。この他にも例えば、1回目の走査では第1の駆動波形による吐出を行い、2回目の走査では第3の駆動波形による吐出を行ってもよい。
【0122】
主走査方向の吐出位置に対して、第1~第3の駆動波形による吐出を適宜組みわせて行うようにしてもよい。例えば、主走査方向の吐出位置に対して、第1~第3の駆動波形による吐出を順番に行うようにしてもよいし、第1~第3の駆動波形による吐出を任意の順番で行うようにしてもよい。
【0123】
次に、本実施形態におけるフローの一例について
図16を用いて説明する。
図16は、本例のフローであり、
図8と同様の事項については説明を省略する。
【0124】
S11~S13は、S1~S3と同様に、データを受け取り、階調処理を行い、打ち分けデータを生成する。
次いで、駆動波形を選択する(S14)。ここでは、第1の駆動波形を用いるか、第2の駆動波形を用いるか、第3の駆動波形を用いるかを選択する。第1~第3の駆動波形による吐出は印字速度が異なるため、駆動波形の選択は印字速度の選択であるともいえる。
【0125】
駆動波形の選択では、上記で説明したインターレース方式やマルチパス方式が考慮される。例えば、何回目の走査であるか、どの位置に対しての吐出であるか等を判定し、駆動波形を選択する。例えば、1/2インターレース方式において1回目の走査である場合、第1の駆動波形を選択する等の処理が行われる。
【0126】
第1の駆動波形(通常の駆動波形)を選択した場合、S15に分岐し、第2の駆動波形(高速の駆動波形)を選択した場合、S16に分岐する。第3の駆動波形(最高速の駆動波形)を選択した場合、S19に分岐する。第3の駆動波形における印字速度は、第2の駆動波形における印字速度よりも速いため、わかりやすさの観点からS19では、駆動波形:最高速と表記している。
【0127】
S17、S18は、S7、S8と同様に、印字処理を行い、残りの印字があるかどうかの判定を行う。
【0128】
本実施形態では、第1の駆動波形、第2の駆動波形、第3の駆動波形を選択可能としているが、本発明は、更にその他の駆動波形を選択できるようにしてもよい。例えば、第4の駆動波形を選択できるようにしてもよい。この場合、第4の駆動波形における印字速度は、第3の駆動波形における印字速度よりも速くなるようにし、第4の駆動波形の液体吐出量にも上限を設け、第4の駆動波形における液体吐出量の上限は、第3の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低くなるようにする。例えば、第4の駆動波形における液体吐出量は、小滴よりも更に小さい液体吐出量(液滴サイズ)を定義し、これが選択されるようにする。
【0129】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出する装置と称してもよい。この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0130】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0131】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0132】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0133】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0134】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
複数のノズルが配列された液体吐出ヘッドを有し、走査する液体吐出部と、
前記液体吐出ヘッドを制御する制御部と、を備え、
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルから液滴を記録媒体に対して吐出し、
前記制御部は、前記液体吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動波形として、第1の駆動波形と、第2の駆動波形とを選択可能であり、液滴の吐出箇所に応じて、前記第1の駆動波形による吐出と、前記第2の駆動波形による吐出とを前記液体吐出ヘッドに行わせ、
前記駆動波形における1周期は、記録媒体の1つの箇所に対して液滴を吐出する動作に相当し、
前記1周期に相当する時間を印字速度としたとき、前記第2の駆動波形における印字速度は、前記第1の駆動波形における印字速度よりも速く、
記録媒体の1つの箇所に対する液滴の着弾量を液体吐出量としたとき、前記第1の駆動波形及び前記第2の駆動波形ともに液体吐出量に上限が設けられており、
前記第2の駆動波形における液体吐出量の上限は、前記第1の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低い
ことを特徴とする液体吐出装置。
<2>
前記第1の駆動波形における液体吐出量をゼロ、小、中及び大に分類したとき、前記第2の駆動波形における液体吐出量は、ゼロ、前記小又は前記中が選択される
ことを特徴とする<1>に記載の液体吐出装置。
<3>
前記液体吐出部が走査する方向を主走査方向とし、主走査方向に垂直な方向を副走査方向としたとき、
前記液体吐出部は、複数回の走査を行って画像を形成するインターレース方式で画像を形成し、該方式では、奇数回目の走査で吐出する液滴の位置と、偶数回目の走査で吐出する液滴の位置とが、前記副走査方向にずれており、
奇数回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行うか、又は、
奇数回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行う
ことを特徴とする<1>又は<2>に記載の液体吐出装置。
<4>
前記液体吐出部は、2回の走査を行って画像を形成する1/2インターレース方式で画像を形成し、
1回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行い、かつ、2回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行うか、又は、
1回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行い、かつ、2回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行う
ことを特徴とする<3>に記載の液体吐出装置。
<5>
前記液体吐出部が走査する方向を主走査方向とし、主走査方向に垂直な方向を副走査方向としたとき、
前記液体吐出部は、前記主走査方向に対してM箇所に吐出箇所をずらし、前記副走査方向に対してN箇所に吐出箇所をずらして吐出して画像を形成するとともに、M×N回の走査を行って画像を形成するマルチパス方式で画像を形成し、
前記M×N回の走査のうち、1回以上を前記第1の駆動波形による吐出を行い、1回以上を前記第2の駆動波形による吐出を行う(ただし、M及びNは2以上の整数である)
ことを特徴とする<1>又は<2>に記載の液体吐出装置。
<6>
前記液体吐出部が走査する方向を主走査方向とし、主走査方向に垂直な方向を副走査方向としたとき、
前記液体吐出部は、複数回の走査を行って画像を形成するインターレース方式と、前記主走査方向に対してM箇所に吐出箇所をずらし、前記副走査方向に対してN箇所に吐出箇所をずらして吐出して画像を形成するとともに、M×N回の走査を行って画像を形成するマルチパス方式とを組み合わせて画像を形成し、
前記インターレース方式では、奇数回目の走査で吐出する液滴の位置と、偶数回目の走査で吐出する液滴の位置とが、前記副走査方向にずれており、該インターレース方式は、
奇数回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行うか、又は、
奇数回目の走査では前記第2の駆動波形による吐出を行い、かつ、偶数回目の走査では前記第1の駆動波形による吐出を行い、
前記マルチパス方式は、
前記M×N回の走査のうち、1回以上を前記第1の駆動波形による吐出を行い、1回以上を前記第2の駆動波形による吐出を行う(ただし、M及びNは2以上の整数である)
ことを特徴とする<1>又は<2>に記載の液体吐出装置。
<7>
前記液体吐出部が走査する方向を主走査方向としたとき、
前記制御部は、前記主走査方向の吐出位置に対して、前記第1の駆動波形による吐出と、前記第2の駆動波形による吐出とを前記液体吐出ヘッドに交互に行わせる
ことを特徴とする<1>又は<2>に記載の液体吐出装置。
<8>
前記制御部は、前記液体吐出ヘッドに液滴を吐出させるための駆動波形として、前記第1の駆動波形と前記第2の駆動波形のほかに、第3の駆動波形を選択可能であり、液滴の吐出箇所に応じて、前記第1の駆動波形による吐出と、前記第2の駆動波形による吐出と、前記第3の駆動波形による吐出とを前記液体吐出ヘッドに行わせ、
前記第3の駆動波形における印字速度は、前記第2の駆動波形における印字速度よりも速く、
前記第3の駆動波形の液体吐出量に上限が設けられており、
前記第3の駆動波形における液体吐出量の上限は、前記第2の駆動波形における液体吐出量の上限よりも低い
ことを特徴とする<1>に記載の液体吐出装置。
<9>
前記制御部は、前記液体吐出部の1走査ごとに駆動波形の選択を行う
ことを特徴とする<1>から<8>のいずれかに記載の液体吐出装置。
【符号の説明】
【0135】
1 キャリッジ
2 記録ヘッド
10 制御部
100 液体吐出装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0136】
【特許文献1】特開2011-126110号公報
【特許文献2】特開2022-79108号公報