(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135036
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045527
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 直希
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065BB05
2F065DD12
2F065FF10
2F065GG03
2F065GG04
2F065GG07
2F065GG24
2F065JJ02
2F065JJ03
2F065JJ25
2F065JJ26
2F065LL02
2F065LL28
2F065LL67
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】カラー共焦点法における不要な成分の光を遮る一方、測定精度の低下が抑制される、測定装置及び測定方法を提供する。
【解決手段】測定装置(10)は、多波長光を出射する光源(12)、多波長光に対して光軸(AX)に沿う色収差を発生させる第1光学部(56)、色収差を発生させた多波長光を測定対象物(W)の測定位置に対して集光させる第2光学部(56)、第1光学部へ入射する多波長光の一部を遮り、光軸が貫く位置に配置される減光部材(57)、減光部材が多波長光を遮る面積を可変させる減光調整部、減光部材を通過した多波長光の少なくとも一部を通過させる開口部(AP)、開口部を通過した多波長光のスペクトル情報を取得するための受光部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる波長を有する複数の光が含まれる多波長光を出射する光源と、
前記光源から出射される前記多波長光に対して、光軸に沿う色収差を発生させる第1光学部と、
前記色収差を発生させた前記多波長光を測定対象物の測定位置に対して集光させる第2光学部と、
前記第1光学部へ入射する前記多波長光の一部を遮る減光部材であり、前記光軸が貫く位置に配置される減光部材と、
前記減光部材が配置される位置における前記多波長光の断面積に対する、前記減光部材が前記多波長光を遮る面積比を可変させる減光調整部と、
前記減光部材を通過した前記多波長光の少なくとも一部を通過させる開口部と、
前記開口部を通過した前記多波長光のスペクトル情報を取得するための受光部と、
を備えた測定装置。
【請求項2】
前記減光調整部は、前記光軸に対して平行となる方向における前記減光部材の位置を調整する位置調整部を備えた請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
複数の前記減光部材を備え、
前記位置調整部は、前記光軸に対して平行となる方向において互いに異なる位置に支持される前記複数の減光部材の中から、前記多波長光を遮る位置へ配置させる前記減光部材を選択する選択部を備えた請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記位置調整部は、前記光軸に対して平行となる方向について前記減光部材を移動させる移動部を備えた請求項2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記減光部材は、前記第1光学部又は前記第2光学部と、前記開口部との間に配置される請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記減光調整部は、前記多波長光を遮る前記減光部材の面積を可変させるサイズ可変部を備えた請求項1に記載の測定装置。
【請求項7】
前記測定対象物を測定する際の測定条件を取得する測定条件取得部を備え、
前記減光調整部は、前記取得される測定条件に応じて、前記減光部材が配置される位置における前記多波長光の断面積に対する、前記減光部材が前記多波長光を遮る面積比を可変させる請求項1に記載の測定装置。
【請求項8】
前記色収差を発生させた前記多波長光を前記測定対象物の前記測定位置へ照射し、かつ、前記測定対象物へ照射された前記多波長光の反射光が入射するプローブを備え、
前記プローブは、
前記第1光学部と、
前記第2光学部と、
前記減光部材と、
を備えた請求項1に記載の測定装置。
【請求項9】
前記第1光学部と前記第2光学部とは一体に構成される請求項1に記載の測定装置。
【請求項10】
互いに異なる波長を有する複数の光が含まれる多波長光であり、光軸に沿う色収差を発生させた多波長光を測定対象物へ照射して、前記測定対象物の表面を測定する測定方法であって、
前記測定対象物の測定位置に対して前記色収差を発生させた前記多波長光を集光させ、
前記色収差を発生させる第1光学部へ入射する前記多波長光の一部を遮る減光部材であり、前記光軸が貫く位置に配置される減光部材が配置される位置における前記多波長光の断面積に対する、前記減光部材が前記多波長光を遮る面積比を可変させ、
前記減光部材を通過した前記多波長光の少なくとも一部を、前記測定対象物の合焦位置と共役の関係を有する開口部を通過させ、
前記開口部を通過させた前記多波長光のスペクトル情報を取得する測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー共焦点法を用いて計測対象物の表面性状などを計測する測定装置が知られている。カラー共焦点法は、屈折光学系の光軸に沿う方向の色収差を利用した測長原理である。色収差が発生する光学系では、焦点を結ぶ距離が波長に応じて異なる。
【0003】
測定対象物の表面を測定する際に、互いに異なる複数の波長が含まれる多波長光をコントローラから出力させ、光ファイバ及びプローブを介して測定対象物へ向けて多波長光を照射させる。
【0004】
プローブから出射させる多波長光は、色収差に起因して波長ごとに光軸上の異なる位置において焦点を結ぶ。コントローラに具備される分光器は、測定対象物へ照射された多波長光の反射光のうち、測定対象物の表面において合焦した波長を有する光を検出する。分光器を用いて検出された光の波長が距離に換算される。このようにして、非接触の距離測定が実現される。
【0005】
特許文献1は、カラー共焦点法を用いて測定対象物を測定する共焦点計測装置が記載される。同文献に記載の共焦点光学系は、回折レンズの中央部を通過する不要な光を遮る遮光物が具備され、クロストークが低減化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の装置のように光路上に遮光物が配置されると、測定対象物からの反射光の総量が減少する。反射光の総量の減少は、ピーク検出の精度低下に起因する測定精度低下の要因となり得る。特に、測定対象物に対して反射率が相対的に低い物質が用いられる場合には、ピーク検出そのものが困難になる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、カラー共焦点法における不要な反射光の入射が抑制され、かつ、ピーク検出に必要な反射光の光量が確保される、測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0010】
本開示の第1態様に係る測定装置は、互いに異なる波長を有する複数の光が含まれる多波長光を出射する光源と、光源から出射される多波長光に対して、光軸に沿う色収差を発生させる第1光学部と、色収差を発生させた多波長光を測定対象物の測定位置に対して集光させる第2光学部と、第1光学部へ入射する多波長光の一部を遮る減光部材であり、光軸が貫く位置に配置される減光部材と、減光部材が配置される位置における多波長光の断面積に対する、減光部材が多波長光を遮る面積比を可変させる減光調整部と、減光部材を通過した多波長光の少なくとも一部を通過させる開口部と、開口部を通過した多波長光のスペクトル情報を取得するための受光部と、を備えた測定装置である。
【0011】
本開示の第1態様に係る測定装置によれば、第1光学部へ入射する多波長光の一部を遮る減光部材であり、光軸が貫く位置に配置される減光部材が、減光部材が配置される位置における多波長光の断面積に対する、減光部材が多波長光を遮る面積比を可変させる。これにより、測定対象物の測定位置において合焦せずに反射した反射光の受光部への入射が抑制され、かつ、ピーク検出に必要な反射光の光量が確保される。
【0012】
光源から第1光学部へ向かう多波長光を第1光学部へ導光する第3光学部を備えてもよい。第3光学部は、第1光学部へ向かう平行光を生成すうるコリメータレンズが具備されてもよい。
【0013】
減光部材を通過した多波長光の例として、減光部材に遮られずに光軸方向における減光部材の位置を通過した多波長光が挙げられる。
【0014】
開口部は、測定対象物における多波長光の合焦位置と共役の関係を有する位置に配置され得る。
【0015】
第2態様に係る測定装置は、第1態様の測定装置において、減光調整部は、光軸に対して平行となる方向における減光部材の位置を調整する位置調整部を備えてもよい。
【0016】
かかる態様によれば、光軸に対して平行となる方向における減光部材の位置に応じて、減光部材が配置される位置における反射光の断面積に対する、減光部材が反射光を遮る面積比を可変させ得る。
【0017】
第3態様に係る測定装置は、第2態様の測定装置において、複数の減光部材を備え、位置調整部は、光軸に対して平行となる方向において互いに異なる位置に支持される複数の減光部材の中から、多波長光を遮る位置へ配置させる減光部材を選択する選択部を備えてもよい。
【0018】
かかる態様によれば、光軸に対して平行となる方向における規定の複数の位置のそれぞれに対して、減光部材を配置し得る。
【0019】
第4態様に係る測定装置は、第2態様の測定装置において、位置調整部は、光軸に対して平行となる方向について減光部材を移動させる移動部を備えてもよい。
【0020】
かかる態様によれば、光軸に対して平行となる方向における任意の位置に対して、減光部材を配置し得る。
【0021】
第5態様に係る測定装置は、第1態様から第4態様のいずれか一態様の測定装置において、減光部材は、第1光学部又は第2光学部と、開口部との間に配置されてもよい。
【0022】
かかる態様によれば、反射光のビーム径が変化する光路上に対して、減光部材を配置し得る。
【0023】
第6態様に係る測定装置は、第1態様から第5態様のいずれか一態様の測定装置において、減光調整部は、多波長光を遮る減光部材の面積を可変させるサイズ可変部を備えてもよい。
【0024】
かかる態様によれば、減光部材にサイズに応じた多波長光の遮蔽を実現し得る。
【0025】
第7態様に係る測定装置は、第1態様から第6態様のいずれか一態様の測定装置において、測定対象物を測定する際の測定条件を取得する測定条件取得部を備え、減光調整部は、取得される測定条件に応じて、減光部材が配置される位置における多波長光の断面積に対する、減光部材が多波長光を遮る面積比を可変させてもよい。
【0026】
かかる態様によれば、測定条件に応じた好ましい反射光のピーク検出を実現し得る。
【0027】
第8態様に係る測定装置は、第1態様から第7態様のいずれか一態様の測定装置において、色収差を発生させた多波長光を測定対象物の測定位置へ照射し、かつ、測定対象物へ照射された多波長光の反射光が入射するプローブを備え、プローブは、第1光学部と、第2光学部と、減光部材と、を備えてもよい。
【0028】
かかる態様によれば、多波長光を測定対象物の測定位置へ照射し、かつ、反射光が入射するプローブにおいて、反射光におけるピーク検出に不要な反射光の減光が実現される。
【0029】
第9態様に係る測定装置は、第1態様から第9態様のいずれか一態様の測定装置において、第1光学部と第2光学部とは一体に構成されてもよい。
【0030】
本開示に係る測定方法は、互いに異なる波長を有する複数の光が含まれる多波長光であり、光軸に沿う色収差を発生させた多波長光を測定対象物へ照射して、測定対象物の表面を測定する測定方法であって、測定対象物の測定位置に対して色収差を発生させた多波長光を集光させ、色収差を発生させる第1光学部へ入射する多波長光の一部を遮る減光部材であり、光軸が貫く位置に配置される減光部材が配置される位置における多波長光の断面積に対する、減光部材が多波長光を遮る面積比を可変させ、減光部材を通過した前記多波長光の少なくとも一部を、測定対象物の合焦位置と共役の関係を有する開口部を通過させ、開口部を通過させた前記多波長光のスペクトル情報を取得する測定方法である。
【0031】
本開示に係る測定方法によれば、本開示に係る測定装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る測定装置の構成要件は、他の態様に係る測定方法の構成要件へ適用し得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、測定対象物において反射した反射光の一部を遮る減光部材であり、光軸が貫く位置に配置される減光部材が、減光部材が配置される位置における反射光の断面積に対する、減光部材が反射光を遮る面積比を可変させる。これにより、測定対象物の測定位置において合焦せずに反射した反射光の分光器への入射が抑制され、かつ、ピーク検出に必要な反射光の光量が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1実施形態に係る測定装置の構成例を示す全体構成図である。
【
図4】カラー共焦点法の説明図であり、色収差発生の説明図である。
【
図5】対物レンズの周囲部を通過した反射光に対応する分光器の出力信号を示す模式図である。
【
図6】カラー共焦点法の課題の説明図であり、対物レンズの中央部を通過した光の模式図である。
【
図7】レンズの中央部を通過した反射光に対応する分光器の出力信号を示す模式図である。
【
図9】第1実施形態に係る測定装置に適用されるプローブの構成例を示す模式図である。
【
図10】第1実施形態に係る測定装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図11】第1実施形態に係る測定方法の手順を示すフローチャートである。
【
図12】第2実施形態に係る測定装置に適用されるプローブの構成例を示す模式図である。
【
図13】第2実施形態に係る測定装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】変形例に係るプローブの構成例を示す模式図である。
【
図15】減光部材のサイズ例を示す減光部材の正面図である。
【
図16】第3実施形態に係る測定装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図17】第3実施形態に係る測定方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0035】
[第1実施形態に係る測定装置の全体構成]
第1実施形態に係る測定装置の構成例を示す全体構成図である。同図に示す測定装置10は、屈折光学系の軸上色収差を利用した測定原理が適用されるカラー共焦点法が用いられる。軸上色収差とは、光軸に沿う方向に生じる色収差である。色収差が発生する光学系では、波長ごとに焦点を結ぶ距離が異なり、測定対象物Wの測定位置WPにおいて焦点を結んだ反射光が、主として光ファイバF3へ戻る。分光器20を用いて、測定対象物Wの測定位置WPにおいて焦点を結んだ反射光が読み取られ、反射光の波長が距離に換算される。このようにして、プローブ50と測定対象物Wの測定位置WPとの間の距離が導出され、非接触の測定対象物Wの測定が実現される。
【0036】
測定装置10は、コントローラ11を備える。コントローラ11は、光源12、導光部材14、光コネクタC1、光ファイバF1、光分岐器C2、光ファイバF2、光コネクタC3、光ファイバF4及び光コネクタC5を備える。
【0037】
光源12は、互いに異なる複数の波長が含まれる多波長光L1を出射させる光源である。光源12に適用される発光素子の例として、発光ダイオード、レーザダイオード及びハロゲンランプ等が挙げられる。発光ダイオードは、Light-Emitting Diodeの省略語であるLEDと称され得る。多波長光L1の例として、広帯域光及び白色光等が挙げられる。波長には、上記した色収差の色という概念が含まれ得る。
【0038】
導光部材14は、光源12から出射された光を、光ファイバF1の入光部である光コネクタC1へ向けて集光させる。
図1には導光部材14として1つのレンズを模式的に図示するが、導光部材14は複数のレンズなど複数の光学素子が含まれてもよい。
【0039】
光コネクタC1は光ファイバF1の一方の端として機能する。光ファイバF1は光分岐器C2を介して光ファイバF2の一方の端及び光ファイバF4の一方の端と接続される。光ファイバF2の他方の端は、光コネクタC3と接続される。
【0040】
光分岐器C2の合流側のポートは、光ファイバF2と接続される。光分岐器C2の分岐側の第1ポートは、光ファイバF1の他方の端と接続される。光分岐器C2の分岐側の第2ポートは、光ファイバF4の一方の端と接続される。光ファイバF4の他方の端は、光コネクタC5と接続される。光分岐器C2の例として、光カップラ、スプリッタ及び光サーキュレータ等が挙げられる。
【0041】
コントローラ11は、分光器20を備える。分光器20は、光コネクタC5を介して光ファイバF4と接続される。分光器20は、プローブ50、光ファイバF3及び光ファイバF4等を介して、測定対象物Wの反射光L2が入力される。
【0042】
プローブ50は、プローブ筐体52、集光レンズ54、対物レンズ56及び光コネクタC4を備える。プローブ50は、コントローラ11から出射される多波長光L1が、光ファイバF3を介して光コネクタC4から入力される。
【0043】
プローブ筐体52は、内部において集光レンズ54及び対物レンズ56を支持する。なお、集光レンズ54及び対物レンズ56を支持する構造の図示は省略される。プローブ筐体52は、対物レンズ56が支持される側と反対側の端へ光コネクタC4が取り付けられる。集光レンズ54の光コネクタC4の側には、集光レンズ54へ入射する多波長光L1の一部を遮る減光部材57が配置される。なお、減光部材57の詳細は後述する。
【0044】
図2は入射光の光路の模式図である。
図3は反射光の光路の模式図である。
図3には、開口APへ集光される反射光L2の光強度の分布を図示する。集光レンズ54は、多波長光L1を対物レンズ56へ入射させ、測定対象物Wから戻ってきた反射光L2を再び開口APへ入射させる。集光レンズ54は、多波長光L1のビームサイズを変更する機能を有してもよいし、コリメート機能を有してもよい。本実施形態における集光レンズ54は、色消しレンズとして機能し、かつ、コリメータレンズとして機能する。
【0045】
対物レンズ56は、多波長光L1に対して、多波長光L1の光軸AXに沿って色収差を生じさせ、色収差を生じさせた多波長光L1を測定対象物Wの測定位置へ集光させる。すなわち、プローブ50は、測定対象物Wの測定位置に対して多波長光L1のスポット光を照射する。色収差を発生させる機能は、屈折レンズ及び回折レンズの他、意図的に色収差を残存させたレンズ等の既知の部材を使用して達成できる。
図1から
図3では、対物レンズ56として、色収差を発生させる機能及び集光機能を有する1つのレンズが図示されるが、対物レンズ56は複数の機能のそれぞれに対応する複数のレンズを備えるレンズ群として構成されてもよい。例えば、多波長光L1の光軸に沿って色収差を発生させる第1レンズと、多波長光L1を測定対象物Wへ集光させる第2レンズとを備えてもよい。なお、実施形態に記載の対物レンズ56は、第1光学部の一例であり、第2光学部の一例である。
【0046】
図1へ戻り、測定対象物Wから戻ってきた反射光L2は、開口AP、光コネクタC4、光ファイバF3及び光コネクタC3を介してコントローラ11へ入力される。コントローラ11へ入力される反射光L2は、光ファイバF2、光分岐器C2、光ファイバF4及び光コネクタC5を介して分光器20へ入力される。
【0047】
分光器20は、分光素子22及び光検出器24を備える。分光素子22は、分光器20へ入力された反射光L2を波長ごとの単成分の光に分光する。なお、波長ごとの単成分の光は、単色光と称され得る。
図1には、分光素子22として反射型の回折格子を例示するが、分光素子22は透過型の回折格子であってもよいし、プリズムであってもよい。なお、実施形態に記載の分光素子22は、開口部を通過した前記多波長光のスペクトル情報を取得する受光部の一例である。
【0048】
光検出器24は、光強度が最大となる波長を検出する。すなわち、光検出器24は、単色光に分光された反射光L2を検出する光学素子である。光検出器24の例として、CCDイメージセンサ及びCMOSイメージセンサが挙げられる。なお、CCDは、Charge Coupled Deviceの省略語である。CMOSは、Complementary Metal Oxide Semiconductorの省略語である。なお、
図1に示す光検出器24へ入射する光は、
図1における左下に向かって波長が短くなり、右上に向かって波長が長くなる。
【0049】
プローブ50は、減光部材57を備える。減光部材57は、入射光である多波長光L1の光路上に配置される。減光部材57は、光コネクタC4を介してプローブ50へ入射され、集光レンズ54へ入射される多波長光L1の一部を遮る減光部材である。図示は省略されるが、減光部材57は支持構造を用いて支持される。
【0050】
図1に示す光検出器24は、分光素子22を用いて分光された光の照射方向に沿って、1次元状に画素が配置されるラインセンサが適用される。分光素子22を用いて分光された単色光は、波長ごとに互いに異なる角度で反射され、光検出器24の各画素へ入力される。
【0051】
光検出器24は、ラインセンサに代わり、複数の画素が2次元状に配置されたエリアセンサを適用してもよい。エリアセンサにおいて単色光ごとの光強度を求める場合は、反射光L2が分光される方向に対して直交する方向に並ぶ画素の画素値を加算してもよい。
【0052】
図1に示すグラフは、光検出器24の出力信号の例である。同図に示すグラフの横軸は反射光L2の波長であり、縦軸は光強度であり、同図に示すグラフは反射光L2の波長ごとの光強度を表す。横軸はラインセンサの画素位置として把握される。光強度はラインセンサの画素ごとの画素値として把握される。
【0053】
図1に示す光検出器24の読み出し信号処理は、光強度が最大となる画素が特定され、特定された画素に対応する反射光L2の波長が特定される。光強度が最大となる波長が距離に換算され、プローブ50から測定対象物Wの測定位置までの距離として算出される。プローブ50から測定対象物Wの基準位置までの距離が既知の場合は、測定対象物Wにおける基準位置から測定位置までの変位を算出し得る。このようにして、非接触式の測定において、高精度の測定対象物Wの測定が実現される。
【0054】
[カラー共焦点法の詳細な説明]
図4はカラー共焦点法の説明図であり、色収差発生の説明図である。多波長光L1のうち、対物レンズ56の周囲部56Aを通過する多波長光L10は、相対的に大きい色収差が発生し、光軸AXにおける焦点位置が波長ごとに異なる。ここで、対物レンズ56の周囲部56Aとは、対物レンズ56の光が入射する面又は出射する面において、対物レンズ56の光軸AXの位置が含まれない領域である。なお、対物レンズ56の光軸AXは、多波長光L1の光軸AXと一致する。
【0055】
例えば、対物レンズ56の光が入射する面又は出射する面において、光軸AXの位置を中心として、対物レンズ56における直径の20パーセントの直径を有する領域よりも、対物レンズ56の縁側の領域を、対物レンズ56の周囲部56Aとして規定し得る。
【0056】
また、対物レンズ56の光が入射する面又は出射する面において、光軸AXの位置を中心として、対物レンズ56における直径の20パーセントの直径を有する領域は、対物レンズ56の中央部56Bとして規定し得る。
図1に示すプローブ50において、対物レンズ56と集光レンズ54との間では、測定対象物Wに対する反射光L2は平行光となるので、対物レンズ56の周囲部56Aの規定は、集光レンズ54の周囲部の規定として採用し得る。同様に、対物レンズ56の中央部56Bの規定は、集光レンズ54の中央部の規定として採用し得る。すなわち、集光レンズ54の光が入射する面又は出射する面において、光軸AXの位置を中心として、集光レンズ54における直径の20パーセントの直径を有する領域よりも、集光レンズ54の縁側の領域を、集光レンズ54の周囲部として規定し得る。また、集光レンズ54の光が入射する面又は出射する面において、光軸AXの位置を中心として、集光レンズ54における直径の20パーセントの直径を有する領域は、集光レンズ54の中央部として規定し得る。
【0057】
図4には、測定対象物Wの表面WSにおいて合焦する入射光L11、測定対象物Wの表面WSにおいて合焦しない入射光L12及び入射光L13を図示する。ここでいう測定対象物Wの表面WSは、測定対象物Wのプローブ50の出射面と対向する面である。
【0058】
図4には、入射光L11の光軸AX上の合焦位置FP1、入射光L12の光軸AX上の合焦位置FP2及び入射光L13の光軸AX上の合焦位置FP3を図示する。
図4には、合焦位置FP1において反射した反射光L2のうち、対物レンズ56の周囲部56Aを通過する反射光L21を図示し、対物レンズ56の中央部などを通過する反射光L2光の図示は省略される。
【0059】
反射光L2のうち、測定対象物Wの表面WSの合焦位置FP1において反射した反射光L21は、
図1に示す光ファイバF4の開口APにおいて合焦する。そうすると、反射光L21の大半は光ファイバF4へ導光される。
【0060】
すなわち、測定対象物Wの表面WSの合焦位置FP1と光ファイバF4の開口APの位置とは、光学的に共役の関係となっている、光ファイバF4の開口APは、測定対象物Wの表面WSにおいて合焦した入射光に対応する反射光を選択的に通過させる空間フィルタ又はピンホールとして機能する。
【0061】
一方、測定対象物Wの表面WSにおいて合焦しない反射光L2は、光ファイバF4の開口APにおいて合焦しない。すなわち、測定対象物Wの表面WSにおいて合焦しない反射光L2は、光ファイバF4の開口APの付近で拡散する。そうすると、測定対象物Wの表面WSにおいて合焦しない反射光L2は、測定対象物Wの表面WSにおいて合焦する反射光L21と比較して光ファイバF4を通過する際の導光効率が低下する。
【0062】
したがって、反射光L2のうち、測定対象物Wの表面WSの合焦位置FP1において合焦した入射光L11に対応する反射光L21は、測定対象物Wの表面WSの合焦位置FP1において合焦しない入射光L12に対応する反射光L2と比較して光強度が高くなる。なお、実施形態に記載の反射光L21は、第1反射光の一例である。また、実施形態に記載の測定対象物Wの表面WSにおいて合焦しない反射光L2は、第2反射光の一例である。実施形態に記載の開口APは、減光部材を通過した多波長光の少なくとも一部を通過させる開口部の一例である。
【0063】
図5は対物レンズの周囲部を通過した反射光に対応する分光器の出力信号を示す模式図である。
図5には、グラフ形式を用いて
図1に示す分光器20の出力信号を図示する。
図5に示すグラフの横軸は波長であり、縦軸は光強度である。
図5におけるグラフの横軸は、左へ向かって波長が長くなり、右へ向かって波長が短くなる。
図3、
図7及び
図8に示すグラフについても同様である。
【0064】
図5に示す波長λ11は、反射光L21の波長を表す。波長λ12及び波長λ13のそれぞれは、入射光L12に対応する反射光L2の波長及び入射光L13に対応する反射光L2の波長を表す。波長λ11を有する反射光L21は、光強度を表す出力信号値が最大となる。
【0065】
図6はカラー共焦点法の課題の説明図であり、対物レンズの中央部を通過した光の模式図である。対物レンズ56の中央部56Bへ入射する多波長光L14のうち、入射光L15は、測定対象物Wの表面WSにおける合焦位置FP11で合焦する。一方、多波長光L14のうち、入射光L16及び入射光L17のそれぞれは、測定対象物Wの表面WSでない合焦位置FP12及び合焦位置FP13で合焦する。
【0066】
対物レンズ56の中央部56Bへ入射する多波長光L14は、色収差が発生するが、
図4に示す対物レンズ56の周囲部56Aへ入射する多波長光L10等と比較して、発生する色収差が小さい。
【0067】
また、入射光L15等の光軸AXが通過する対物レンズ56の中心56Cでは、理論上、色収差は発生しない。すなわち、対物レンズ56の中心56Cを通過する反射光L2は、測定対象物Wの位置に関係なく全ての波長が分光器20へ導光される。なお、符号L22は、対物レンズ56の中央部56Bへ入射する多波長光L14の反射光を表す。
【0068】
図7はレンズの中央部を通過した反射光に対応する分光器の出力信号を示す模式図である。
図7には、グラフ形式を用いて
図1に示す分光器20の出力信号を図示する。
図7に示すグラフの横軸は波長であり、縦軸は光強度である。
図7に示す光強度を表す曲線は、
図5に示す光強度を表す曲線と比較して、ピークに対応する波長帯域が広くなっている。
【0069】
図8は実際に観測される出力信号の模式図である。分光器20から実際に出力される信号SOは、対物レンズ56の周囲部56Aを通過した反射光に対応する分光器の出力信号SOPに対して、対物レンズ56の中央部56Bを通過した反射光に対応する分光器の出力信号SOCが重畳される。
【0070】
すなわち、分光器20から実際に出力される信号SOは、対物レンズ56の周囲部56Aを通過した反射光に対応する分光器の出力信号SOPと比較して、光強度のピークの波長帯域が広くなる。光強度のピークの波長帯域の相対的な広がりは、反射光L2の波長を計算する際の光強度のピーク検出の精度に影響し、測定分解能の低下の要因となり得る。
【0071】
そこで、実施形態に係る測定装置10は、プローブ50に減光部材57を具備し、減光部材57が調整される。プローブ50へ入力される多波長光L1のうち、
図1等に示す集光レンズ54の中央部を通過する多波長光L1の少なくとも一部が減光され、その結果、
図6に示す対物レンズ56の中央部56Bを通過する多波長光L14が減光される。対物レンズ56の中央部56Bを通過する多波長光L1の少なくとも一部が測定対象物Wの測定位置へ到達せず、
図6に示す対物レンズ56の中央部56Bを通過する反射光L22の少なくとも一部が減光され、集光レンズ54の中央部を通過する反射光L22の少なくとも一部が減光される。これにより、実施形態に係る測定装置10は、分光器20へ導光される反射光L2のうち、不要な光の光量が抑制され、かつ、必要な光の光量の減少が抑制され、規定の光強度の検出精度の確保に起因して規定の測定精度が確保される。
【0072】
[第1実施形態に係る測定装置に適用されるプローブの構成例]
図9は第1実施形態に係る測定装置に適用されるプローブの構成例を示す模式図である。同図に示すプローブ50は、多波長光L1のビーム径が変化する光路上の任意の位置に減光部材57を配置自在に構成される。
図9には、減光部材57を支持し、かつ、減光部材57の配置を選択的に変更するセレクタ100を模式的に図示する。
【0073】
セレクタ100は、複数の減光部材57を支持する支持部材101を備え、光軸AXに対して平行となる方向における互いに異なる減光位置P1、減光位置P2及び減光位置P3に対して複数の減光部材57のそれぞれを選択的に配置させる選択部材を備える。
図9には、3つの減光部材57を備え、3つの減光部材57のうち1つの減光部材57が多波長光L1の光路上に配置されるプローブ50が図示される。
【0074】
これにより、多波長光L1の光路上に配置される減光部材57のサイズを変えることと同じ効果を得ることが可能となる。例えば、減光位置P1に対して減光部材57が配置される場合は、減光位置P2及び減光位置P3に対して減光部材57が配置される場合と比較して、減光部材57が配置される位置における多波長光L1の断面積に対する、減光部材57が被覆する面積比が小さくなり、結果として、光ファイバF4の開口APへ到達する反射光L2の光量は、相対的に増加する。なお、多波長光L1の断面積は、多波長光L1の光軸と直交する面における多波長光L1の断面積を表す。
【0075】
同様に、減光位置P2に対して減光部材57が配置される場合は、減光位置P3に対して減光部材57が配置される場合と比較して、減光部材57が配置される位置における多波長光L1の断面積に対する、減光部材57が被覆する面積比が小さくなり、結果として、光ファイバF4の開口APへ到達する反射光L2の光量は、相対的に増加する。すなわち、集光レンズ54に対して相対的に近い位置に対して減光部材57が配置される場合は、光ファイバF4の開口APへ到達する反射光L2の光量が相対的に大きくなる。一方、集光レンズ54に対して相対的に遠い位置に対して減光部材57が配置される場合は、光ファイバF4の開口APへ到達する反射光L2の光量が相対的に小さくなる。一方、減光位置P1、減光位置P2及び減光位置P3のいずれに減光部材57が配置される場合であっても、集光レンズ54の中央部54Bを通過する反射光L2の光ファイバF4の開口APへの到達は抑制される。
【0076】
図9には、プローブ50の外部に支持される減光部材57をプローブ50の内部へ挿入させるセレクタ100の例が図示されるが、セレクタ100はプローブ50の内部に具備されてもよい。
【0077】
なお、実施形態に記載のセレクタ100は、減光部材が配置される位置における多波長光の断面積に対する、減光部材が多波長光を遮る面積比を可変させる減光調整部の構成要素の一例であり、光軸に対して平行となる方向における減光部材の位置を調整する位置調整部の構成要素の一例である。また、実施形態に記載のセレクタ100は、多波長光を遮る位置へ配置させる減光部材を選択する選択部の構成要素の一例である。
【0078】
[第1実施形態に係る測定装置の電気的構成例]
図10は第1実施形態に係る測定装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。測定装置10の制御部120は、コンピュータが適用される。コンピュータは、パーソナルコンピュータであってもよいし、ワークステーションであってもよいし、タブレット端末であってもよい。コンピュータは、仮想マシンであってもよい。
【0079】
制御部120は、非一時的な有体物である1つ以上のコンピュータ可読媒体122を備える。コンピュータ可読媒体122は、主記憶装置として機能するメモリ124及び補助記憶装置として機能するストレージ126が含まれる。
【0080】
コンピュータ可読媒体122は、半導体メモリ、ハードディスク装置及びソリッドステートドライブ装置等を適用し得る。コンピュータ可読媒体122は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。
【0081】
なお、ハードディスク装置は、英語表記のHard Disk Driveの省略語であるHDDと称され得る。ソリッドステートドライブ装置は、英語表記のSolid State Driveの省略語であるSSDと称され得る。
【0082】
コンピュータ可読媒体122のメモリ124は、プログラム130、測定データ132及び減光位置データ134が記憶される。コンピュータ可読媒体122は、プログラム130が記憶されるデバイス、測定データ132が記憶されるデバイス、及び減光位置データ134が記憶されるデバイスを備えてもよい。
【0083】
プログラム130は、測定装置10の各種の機能を実現する各種のプログラムが含まれる。測定データ132は
図1に示す測定対象物Wの測定が実施された際に取得された測定対象物Wの測定データが含まれる。測定データは、測定対象物Wの各測定位置の座標値が含まれ得る。減光位置データ134は、光軸AXに沿う方向における減光部材57の位置が含まれる。光軸AXに沿う方向における減光部材57の位置は、測定条件と関連付けされて記憶される。
【0084】
制御部120は、光源制御部140を備える。光源制御部140は、光源制御プログラムを実行して光源12の動作制御機能を実現する。光源12の動作制御は、光源12のオンオフ制御及び光源12の出射光量の制御などが含まれる。
【0085】
制御部120は、光検出信号処理部142を備える。光検出信号処理部142は、光検出信号処理プログラムを実行して光検出信号処理機能を実現する。光検出信号処理は、分光器20から取得した光検出信号から光強度が最大となるピーク波長を導出し、ピーク波長に基づき、測定対象物Wの測定位置ごとの測定値を導出する。光検出信号処理部142は、測定対象物Wの測定位置ごとの測定値を、測定位置と関連付けして、測定データ132としてメモリ124へ記憶する。なお、実施形態に記載の光検出信号処理部142は、分光器の検出結果に基づき、測定対象物の測定位置の測定結果を導出する信号処理部の一例である。
【0086】
制御部120は、プローブ駆動制御部144を備える。プローブ駆動制御部144は、プローブ駆動プログラムを実行して、プローブ駆動部160の動作制御機能を実現する。プローブ駆動部160は、プローブ50を支持する支持部材及びプローブ50と測定対象物Wとを相対的に移動させる相対移動部材とを備える。
【0087】
プローブ駆動部160は、固定された測定対象物Wに対してプローブ50を移動させてもよいし、固定されたプローブ50に対して測定対象物Wを移動させてもよい。また、プローブ駆動部160は、測定対象物W及びプローブ50の両者を移動させてもよい。
【0088】
制御部120は、測定条件取得部146を備える。測定条件取得部146は、測定対象物Wの種類などの測定条件が含まれる。測定条件の例として、測定対象物Wの物品名、測定対象物Wの材質、測定対象物Wの色、測定対象物Wの反射率及び測定対象物Wの表面処理の種類などが含まれ得る。
【0089】
制御部120は、セレクタ制御部148を備える。セレクタ制御部148は、セレクタ100の動作を制御する。すなわち、セレクタ制御部148は、測定対象物Wの測定条件をパラメータとして減光位置データ134を参照して、減光部材57の位置を設定する。セレクタ制御部148は、セレクタ100を動作させて、設定された減光部材57の位置に対応する減光部材57を選択し、選択された減光部材57を規定の位置へ配置させる。なお、セレクタ制御部148は、減光調整部の構成要素の一例であり、選択部の構成要素の一例である。
【0090】
制御部120は、入出力インターフェース150を備える。入出力インターフェース150は、外部装置とのデータ通信を実現する。入出力インターフェース150は、無線通信が適用されてもよいし、有線通信が適用されてもよい。入出力インターフェース150は、互いに異なる複数の規格に対応する複数の種類のポートが具備されてもよい。入出力インターフェース150に適用される規格の例としてUSB(登録商標)などが挙げられる。なお、USBは、Universal Serial Busの省略語である。
【0091】
入力信号取得部152は、入力装置162から送信される入力信号を取得する。入力装置162は、キーボード及びマウス等が含まれる。入力信号取得部152は、操作者が入力装置162を操作して入力した情報を入力信号として取得する。制御部120は、入力信号取得部152を用いて取得した入力情報に基づく指令信号を、各種の制御部へ送信する。
【0092】
制御部120は、表示制御部154を備える。表示制御部154は、ディスプレイ164に対して表示制御信号を送信し、ディスプレイ164へ各種の情報を表示させる。ディスプレイ164は、入力装置162と一体に構成されるタッチパネル方式を適用してもよい。
【0093】
制御部120に具備される各種の処理部は1つ以上のプロセッサが適用される。プロセッサは、CPUを適用してもよいし、専用のデバイスを適用してもよい。なお、CPUはCentral Processing Unitの省略語である。1つの処理部は1つのプロセッサを用いて構成されてもよいし、複数のプロセッサを用いて構成されてもよい。複数の処理部が1つのプロセッサを用いて構成されてもよい。複数のプロセッサは、同じ種類のデバイスが用いられてもよいし、互いに異なる種類のデバイスが用いられてもよい。
【0094】
[第1実施形態に係る測定方法の手順]
図11は第1実施形態に係る測定方法の手順を示すフローチャートである。測定開始指令取得工程S10では、
図10に示す制御部120は、測定対象物Wの測定開始を表す測定開始指令信号を取得する。制御部120は、測定開始指令信号を取得すると、
図1に示す測定対象物Wの測定を開始する。測定開始指令取得工程S10の後に、測定条件取得工程S12へ進む。
【0095】
測定条件取得工程S12では、測定条件取得部146は、測定対象物Wの種類等の測定条件を取得する。測定条件の取得は、測定対象物Wの設計情報から取得してもよいし、入力装置162を用いて操作者が入力した情報を取得してもよい。測定条件取得工程S12の後に減光位置設定工程S14へ進む。
【0096】
減光位置設定工程S14では、セレクタ制御部148は、測定条件取得工程S12において取得された測定条件に基づき、プローブ50における減光部材57の位置を決定し、減光部材57を配置する。減光位置設定工程S14の後に仮測定工程S16へ進む。
【0097】
仮測定工程S16では、制御部120は予め規定される測定対象物Wの仮測定位置に対してプローブ50から多波長光L1を照射させ、反射光L2のピーク検出が可能であるか否かを判定する。仮測定工程S16において、反射光L2のピーク検出が困難であると制御部120が判定する場合にはNo判定となる。No判定の場合は、減光位置変更工程S18へ進む。
【0098】
減光位置変更工程S18では、セレクタ制御部148は、減光位置設定工程S14において設定された減光部材57の位置を変更する。減光位置変更工程S18の後に仮測定工程S16へ進み、仮測定工程S16においてYes判定となるまで、仮測定工程S16及び減光位置変更工程S18が繰り返し実行される。仮測定工程S16において、減光部材57の全ての位置において、ピーク検出が困難であると制御部120が判定した場合には、その旨を表すエラーが報知されてもよい。エラーの報知は、ディスプレイ164へエラーメッセージを表示させもよいし、音声及びアラーム音等の音が用いられてもよい。
【0099】
一方、仮測定工程S16において、ピーク検出が可能であると制御部120が判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、本測定工程S20へ進む。
【0100】
本測定工程S20では、制御部120は測定対象物Wの本測定を実行させる。本測定では、測定対象物Wに規定される測定位置とプローブ50から照射させる多波長光L1の照射位置との位置合わせが実施され、測定対象物Wからの反射光L2が取得され、測定位置ごとの反射光L2のピーク検出結果に基づき、測定位置ごとの測定値が導出され、取得される。取得された測定値は、測定位置ごとの測定データ132としてメモリ124へ記憶される。
【0101】
本測定工程S20の実行中は、本測定終了判定工程S22が実行される。本測定終了判定工程S22では、制御部120は測定対象物Wの測定が終了したか否かを判定する。本測定終了判定工程S22において、測定対象物Wの測定が継続されると判定される場合はNo判定となる。No判定の場合は本測定終了判定工程S22が継続される。
【0102】
一方、本測定終了判定工程S22において、測定対象物Wの測定が終了されると判定される場合はYes判定となる。Yes判定の場合は終了処理工程S24へ進み、規定の終了処理が実行され、測定方法の手順が終了される。測定対象物Wの測定終了の例として、規定の測定位置の全てについて測定値が得られる場合、及び測定対象物Wの測定が強制的に終了される場合などが挙げられる。
【0103】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態に係る測定装置10及び測定方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0104】
〔1〕
測定装置10に具備されるプローブ50は、集光レンズ54と光ファイバF4の開口APとの間に配置される減光部材57であり、集光レンズ54の中央部54Bを通過する多波長光L1を減光する減光部材57を備える。減光部材57は、測定対象物Wの種類等が含まれる測定対象物Wの測定条件に応じて、光軸AXに沿う方向における位置が規定される。これにより、反射光L2のうち、対物レンズ56の中央部56Bを通過する多波長光L1の反射光である不要な反射光L2の分光器20への入射が抑制され、かつ、ピーク検出に必要な反射光L2の光量が確保され、ピーク検出の精度の低下が抑制される。
【0105】
〔2〕
測定装置10は、測定対象物Wの測定条件に応じて、光軸AXに沿う方向における複数の減光位置P1等のいずれかを設定し、設定された減光位置P1等に対して減光部材57を配置させるセレクタ100を備える。これにより、測定対象物Wの測定条件に応じた減光部材57の自動配置が実現される。
【0106】
〔3〕
測定装置10は、光ファイバF4の開口APへ到達する反射光L2の光量を相対的に大きくする場合、減光部材57は集光レンズ54へ相対的に近づけられる。一方、測定装置10は、光ファイバF4の開口APへ到達する反射光L2の光量を相対的に小さくする場合、減光部材57は集光レンズ54から相対的に遠ざけられる。これにより、光ファイバF4の開口APへ入力される反射光L2の光量を調整し得る。
【0107】
〔4〕
測定装置10は、測定対象物Wの本測定が実施される前に仮測定が実施され、好ましい反射光L2のピーク検出が実現される減光部材57の減光位置が規定される。これにより、測定対象物Wの測定条件に応じた高精度の測定が実現される。
【0108】
[第2実施形態に係る測定装置に適用されるプローブの構成例]
図12は第2実施形態に係る測定装置に適用されるプローブの構成例を示す模式図である。同図に示すプローブ250は、
図9に示すセレクタ100に代わり、
図12に示す移動機構210を用いて、減光部材57の位置が決められる。すなわち、移動機構210は、光軸AXに対して平行となる方法に延在するガイド212及びガイド212に沿って移動するキャリッジ214及びキャリッジ214に対して減光部材57を支持する減光支持部材216を備える。
【0109】
移動機構210は、光軸AXに対して平行となる方向に沿って減光部材57を移動させ、減光部材57を規定の減光位置へ配置する。移動機構210は、ボールネジ及びリニアスライダー等の直動移動機構が適用される。なお、実施形態に記載の移動機構210は、光軸に対して平行となる方向について減光部材を移動させる移動部の一例である。
【0110】
[第2実施形態に係る測定装置の電気的構成例]
図13は第2実施形態に係る測定装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。同図に示す測定装置200は、
図10に示す制御部120に代わり制御部220を備える。
図13に示す制御部220は、
図10に示すセレクタ制御部148に代わり移動機構制御部248を備える。
【0111】
移動機構制御部248は、測定対象物Wの測定条件に応じて移動機構210の動作を制御する。すなわち、移動機構制御部248は、測定対象物Wの測定条件に応じて規定される減光部材57の位置を設定し、移動機構210を動作させて減光部材57を規定の減光位置へ移動させる。移動機構210の移動分解能は、反射光L2のピーク検出の精度に応じて規定し得る。
【0112】
移動機構制御部248は、反射光L2のピーク検出が可能となる範囲において、反射光L2の減光が最大となる位置へ減光部材57を配置させると、ピーク検出におけるSN比を向上させ得る。例えば、移動機構制御部248は、光検出器24のダイナミックレンジの最大値に対して50パーセントを超える反射光L2が得られる位置へ減光部材57を配置させる。
【0113】
[第2実施形態に係る測定方法の手順]
第2実施形態に係る測定方法は、
図11に示すフローチャートの手順を適用してもよい。第2実施形態に係る測定方法では、本測定工程S20において、減光部材57の位置を変えながらピーク検出を実施してもよい。すなわち、仮測定を実施せずに、本測定において最適な減光部材57の位置を設定して、測定位置ごとの測定を実施してもよい。
【0114】
[第2実施形態の作用効果]
第2実施形態に係る測定装置200及び測定方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0115】
〔1〕
測定装置200は、集光レンズ54と光ファイバF4の開口APとの間において、光軸AXに対して平行となる方向に沿って、減光部材57を移動させる移動機構210を備える。測定装置200は、測定対象物Wの測定条件に応じて移動機構210の動作を制御する移動機構制御部248を備える。これにより、第1実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0116】
〔2〕
測定装置200は、
図1等に示す測定装置10と比較して、減光部材57の配置の自由度が向上し得る。
【0117】
〔3〕
測定装置200は、測定対象物Wの測定において、減光部材57が配置される減光位置を変えて、反射光L2のピーク検出を実施し得る。これにより、測定対象物Wの測定位置ごとに、減光部材57を最適な減光位置に調整し得る。
【0118】
[減光部材の配置の変形例]
図14は変形例に係るプローブの構成例を示す模式図である。
図1等には、集光レンズ54と光ファイバF4の開口APとの間に対して減光部材57が配置される測定装置10等を例示したが、減光部材57の配置はこれに限定されない。
【0119】
例えば、
図14に示すように、減光部材57Aは、プローブ50Aにおける対物レンズ56と集光レンズ54との間に配置されてもよい。また、減光部材57Bは、プローブ50Aにおける測定対象物Wと対物レンズ56との間に配置されてもよい。すなわち、減光部材57は、対物レンズ56の中央部56Bを通過する多波長光L1を遮り、集光レンズ54を通過した多波長光L1のビーム径を変化させることができれば、配置は限定されない。
【0120】
[減光部材の構成例]
図15は減光部材のサイズ例を示す減光部材の正面図である。同図には、集光レンズ54に対する減光部材57の配置及びサイズを模式的に図示する。なお、同図を垂直に貫く方向は集光レンズ54の光軸AXの方向である。
【0121】
図15には、集光レンズ54の直径D1に対して20パーセントの直径D2を有する減光部材57であり、集光レンズ54の平面形状と同一形状の円形状を有する減光部材57が図示される。また、同図には、多波長光L1の光軸AXが中心Oを貫く位置に配置される減光部材57を図示する。
【0122】
減光部材57の直径D2は、集光レンズ54の直径D1に対して20パーセント未満であってもよい。減光部材57の直径D2の最小値は、減光部材57の強度及び減光部材57のハンドリングの観点から規定し得る。例えば、減光部材57の直径D2は、集光レンズ54の直径D1に対して5パーセント以上、20パーセント未満の範囲で調整されてもよい。
【0123】
減光部材57の材料は、多波長光L1を減光できる材料であれば、材料は限定されない。例えば、減光部材57は、樹脂及び金属などの材料を適用し得る。また、減光部材57は、反射光L2を減光できる色であれば、色は限定されない。例えば、減光部材57は黒などの色を適用し得る。
【0124】
減光部材57の平面形状は円に限定されない。減光部材57の平面形状は、楕円、長方形及び半円と長方形とを組み合わせた形状など、様々な形状を適用し得る。減光部材57の厚みは、反射光L2を減光できれば特に限定されない。減光部材57の厚みは、減光部材57が配置される領域における光軸AXに沿う方向の全長に応じて規定し得る。
【0125】
[第3実施形態に係る測定装置の構成例]
図16は第3実施形態に係る測定装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。第3実施形態に係る測定装置300は、
図10に示す測定装置10に具備されるセレクタ100に代わり、減光サイズ変更部310を備える。減光サイズ変更部310は、測定対象物Wの測定条件に応じて減光部材57のサイズを選択的に切り替える。
【0126】
例えば、減光サイズ変更部310は、互いにサイズが異なる複数の減光部材57の中から、測定対象物Wの測定条件に応じて規定されたサイズを有する減光部材57を1つだけ選択し、規定の減光位置に対して、選択された減光部材57を配置させる態様を適用し得る。
【0127】
また、測定装置300は、
図10に示す制御部120に代わり、制御部320を備える。制御部320は、
図10に示すセレクタ制御部148に代わり、減光サイズ変更制御部348を備える。コンピュータ可読媒体122Aに具備されるメモリ124Aは、
図10等に示す減光位置データ134に代わり、減光サイズデータ134Aが記憶される。
【0128】
減光サイズ変更制御部348は、メモリ124Aに記憶される減光サイズデータ134Aを参照して、測定対象物Wの測定条件に応じた減光部材57のサイズを選択し、減光サイズ変更部310の動作を制御する。
【0129】
なお、実施形態に記載の減光サイズ変更部310は、多波長光L1を遮る減光部材の面積を可変させるサイズ可変部の構成要素の一例である。また実施形態に記載の減光サイズ変更制御部348は、サイズ可変部の構成要素の一例である。
【0130】
[第3実施形態に係る測定方法の手順]
図17は第3実施形態に係る測定方法の手順を示すフローチャートである。同図に示すフローチャートは、
図11に示す減光位置設定工程S14に代わり、減光サイズ変更工程S13が実行される。
【0131】
すなわち、測定条件取得工程S12において、測定対象物Wの測定条件が取得されると、減光サイズ変更工程S13が実行される。減光サイズ変更工程S13では、測定条件取得工程S12において取得される測定対象物Wの測定条件に応じたサイズを有する減光部材57が選択され、選択された減光部材が規定の減光位置へ配置される。
【0132】
また、
図17に示すフローチャートでは、
図11に示す減光位置変更工程S18に代わり、減光サイズ調整工程S19が実行される。減光サイズ調整工程S19では、仮測定工程S16においてNo判定の場合に、減光部材57のサイズ調整を実行する。減光部材57のサイズ調整は、仮測定工程S16においてYes判定となるまで繰り返し実行される。
【0133】
図17に示すフローチャートにおける本測定工程S20以降の各工程は、
図11に示すフローチャートと同様であり、ここでの説明は省略される。
【0134】
[第3実施形態の作用効果]
第3実施形態に係る測定装置300及び測定方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0135】
〔1〕
測定対象物Wの測定条件に応じて、集光レンズ54の中央部54Bを通過する多波長光L1の一部を遮る減光部材57のサイズが変更される。これにより、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0136】
〔2〕
第3実施形態に係る測定装置300及び測定方法は、光軸AXに対して平行となる方向へ減光部材57を移動させずに、集光レンズ54の中央部54Bを通過する多波長光L1の一部を遮る減光部材57のサイズが変更される。
【0137】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0138】
10…測定装置、11…コントローラ、12…光源、14…導光部材、20…分光器、22…分光素子、24…光検出器、50…プローブ、52…プローブ筐体、54…集光レンズ、54B…中央部、56…対物レンズ、56A…周囲部、56B…中央部、57…減光部材、57A…減光部材、57B…減光部材、100…セレクタ、101…支持部材、120…制御部、122…コンピュータ可読媒体、122A…コンピュータ可読媒体、124…メモリ、124A…メモリ、126…ストレージ、130…プログラム、132…測定データ、134…減光位置データ、134A…減光サイズデータ、140…光源制御部、142…光検出信号処理部、144…プローブ駆動制御部、146…測定条件取得部、148…セレクタ制御部、150…入出力インターフェース、152…入力信号取得部、154…表示制御部、160…プローブ駆動部、162…入力装置、164…ディスプレイ、200…測定装置、210…移動機構、212…ガイド、214…キャリッジ、216…減光支持部材、220…制御部、248…移動機構制御部、250…プローブ、300…測定装置、310…減光サイズ変更部、320…制御部、348…減光サイズ変更制御部、AP…開口、AX…光軸、C1…光コネクタ、C2…光分岐器、C3…光コネクタ、C4…光コネクタ、C5…光コネクタ、F1…光ファイバ、F2…光ファイバ、F3…光ファイバ、F4…光ファイバ、FP1…合焦位置、FP2…合焦位置、FP3…合焦位置、FP11…合焦位置、FP12…合焦位置、FP13…合焦位置、L1…多波長光、L2…反射光、L10…多波長光、L11…入射光、L12…入射光、L13…入射光、L14…多波長光、L15…入射光、L16…入射光、L17…入射光、L21…反射光、P1…減光位置、P2…減光位置、P3…減光位置、SO…信号、SOC…出力信号、SOP…出力信号、W…測定対象物、WP…測定位置、WS…表面、λ11…波長、λ12…波長、λ13…波長、S10…測定開始指令取得工程、S12…測定条件取得工程、S13…減光サイズ変更工程、S14…減光位置設定工程、S16…仮測定工程、S18…減光位置変更工程、S19…減光サイズ調整工程、S20…本測定工程、S22…本測定終了判定工程、S24…終了処理工程