(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135070
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】剥離剤組成物、積層体、及び加工された半導体基板又は電子デバイス層の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240927BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240927BHJP
C09D 5/20 20060101ALI20240927BHJP
C09D 7/48 20180101ALI20240927BHJP
C09D 161/10 20060101ALI20240927BHJP
C09D 183/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/304 622J
H01L21/68 N
H01L21/78 M
H01L21/02 C
C09D5/20
C09D7/48
C09D161/10
C09D183/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045580
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(72)【発明者】
【氏名】若山 浩之
(72)【発明者】
【氏名】奥野 貴久
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博昭
【テーマコード(参考)】
4J038
5F057
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
4J038DA061
4J038DL012
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4J038PB09
5F057AA31
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5F063EE38
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5F131BA31
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5F131BA53
5F131CA21
5F131EC43
5F131EC54
5F131EC55
5F131EC63
5F131EC65
5F131EC73
(57)【要約】
【課題】良好な剥離性を備えるとともに、分子量変化を抑制するなどの長期保存安定性に優れた剥離剤組成物などの提供。
【解決手段】 半導体基板と、
支持基板と、
前記半導体基板と前記支持基板との間に設けられた接着層及び剥離層と、を有する積層体の前記剥離層を形成するための剥離剤組成物であって、
有機樹脂と、分岐鎖状ポリシランと、酸化防止剤と、溶媒とを含有する剥離剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
支持基板と、
前記半導体基板と前記支持基板との間に設けられた接着層及び剥離層と、を有する積層体の前記剥離層を形成するための剥離剤組成物であって、
有機樹脂と、分岐鎖状ポリシランと、酸化防止剤と、溶媒とを含有する剥離剤組成物。
【請求項2】
前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、及び、スルフィド系酸化防止剤のいずれか一種以上である請求項1に記載の剥離剤組成物。
【請求項3】
前記フェノール系酸化防止剤は、下記式(1)で表される基を有する化合物である請求項2に記載の剥離剤組成物。
【化1】
(式中、R
1は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R
2~R
4はそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、*は結合手を表す。)
【請求項4】
前記アミン系酸化防止剤は、下記式(2)で表される基を有する化合物である請求項2に記載の剥離剤組成物。
【化2】
(式中、R
5は水素原子、オキシラジカル基、炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数1~12のアルコキシ基を表し、*は結合手を表す。)
【請求項5】
前記リン酸系酸化防止剤は、下記式(3)又は(4)で表される化合物であり、前記スルフィド系酸化防止剤は、下記式(5)又は式(6)で表される化合物である請求項2に記載の剥離剤組成物。
【化3】
(式中、R
6~R
8は炭素原子数1~12のアルキル基、又は、アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表す。)
【化4】
(式中、R
9~R
10は炭素原子数1~12のアルキル基、又は、アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表す。)
【化5】
(式中、R
11~R
12は炭素原子数1~12のアルキル基を表す。)
【化6】
(式中、R
13~R
16は炭素原子数1~12のアルキル基を表す。)
【請求項6】
前記分岐鎖状ポリシランが、下記式(B)で表される構造を有する請求項1に記載の剥離剤組成物。
【化7】
(式中、R
Bは、水素原子、ヒドロキシル基、シリル基又は有機基を表す。)
【請求項7】
前記RBが、フェニル基である請求項6に記載の剥離剤組成物。
【請求項8】
前記有機樹脂が、ノボラック樹脂である請求項1に記載の剥離剤組成物。
【請求項9】
前記ノボラック樹脂が、式(C1-1)で表される単位、式(C1-2)で表される単位及び式(C1-3)で表される単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含むポリマーである請求項8に記載の剥離剤組成物。
【化8】
(式中、C
1は、窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基を表し、C
2は、第2級炭素原子、第4級炭素原子及び芳香族環からなる群から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する第3級炭素原子を含む基を表し、C
3は、脂肪族多環化合物に由来する基を表し、C
4は、フェノールに由来する基、ビスフェノールに由来する基、ナフトールに由来する基、ビフェニルに由来する基又はビフェノールに由来する基を表す。)
【請求項10】
架橋剤を含有する請求項1に記載の剥離剤組成物。
【請求項11】
半導体基板又は電子デバイス層と、
支持基板と、
前記半導体基板又は前記電子デバイス層と前記支持基板との間に設けられた、剥離剤層とを有し、
前記剥離剤層が、請求項1から10のいずれかに記載の剥離剤組成物から形成された剥離剤層である、積層体。
【請求項12】
前記半導体基板又は前記電子デバイス層と前記支持基板との間に設けられた、接着剤層を有する、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
加工された半導体基板又は電子デバイス層の製造方法であって、
請求項11に記載の積層体の前記半導体基板が加工される第5A工程、又は請求項11に記載の積層体の前記電子デバイス層が加工される第5B工程と、
前記第5A工程によって加工された前記半導体基板と前記支持基板とが分離される第6A工程、又は前記第5B工程によって加工された前記電子デバイス層と前記支持基板とが分離される第6B工程と、
を含む、加工された半導体基板又は電子デバイス層の製造方法。
【請求項14】
前記支持基板が光透過性であり、前記第6A工程又は第6B工程が、前記積層体に対して、前記支持基板側からレーザーを照射する工程を含む、請求項13に記載の加工された半導体基板又は電子デバイス層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離剤組成物、積層体、及び加工された半導体基板又は電子デバイス層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来2次元的な平面方向に集積してきた半導体ウエハーは、より一層の集積化を目的に平面を更に3次元方向にも集積(積層)する半導体集積技術が求められている。この3次元積層はシリコン貫通電極(TSV:through silicon via)によって結線しながら多層に集積していく技術である。多層に集積する際に、集積されるそれぞれのウエハーは形成された回路面とは反対側(即ち、裏面)を研磨によって薄化し、薄化された半導体ウエハーを積層する。
【0003】
薄化前の半導体ウエハー(ここでは単にウエハーとも呼ぶ)が、研磨装置で研磨するために支持体に接着される。その際の接着は研磨後に容易に剥離されなければならないため、仮接着と呼ばれる。この仮接着は支持体から容易に取り外されなければならず、取り外しに大きな力を加えると薄化された半導体ウエハーは、切断されたり変形したりすることがあり、その様なことが生じない様に、容易に取り外される。しかし、半導体ウエハーの裏面研磨時に研磨応力によって外れたりずれたりすることは好ましくない。従って、仮接着に求められる性能は研磨時の応力に耐え、研磨後に容易に取り外されることである。
【0004】
特許文献1には、上記した仮接着に用いられる剥離層を備えた積層体として、剥離層を提供する剥離組成物に分岐鎖状ポリシランを用いた積層体が開示されている。このような剥離組成物より形成された積層体は、研磨時において良好な接着性を維持できる一方、研磨後の洗浄等により良好な剥離性を示すものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/019211号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した剥離剤組成物について、さらなる要求特性として、例えば、長期間保存した際にも分子量の増加が少ない等の保存安定性の向上が期待されている。そこで本発明は、上記した研磨時における接着性の維持と、研磨後における良好な剥離性を維持しつつ、保存安定性も向上した剥離剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決する為、鋭意検討を行った結果、前記の課題を解決出来ることを見出し、以下の要旨を有する本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 半導体基板と、
支持基板と、
前記半導体基板と前記支持基板との間に設けられた接着層及び剥離層と、を有する積層体の前記剥離層を形成するための剥離剤組成物であって、
有機樹脂と、分岐鎖状ポリシランと、酸化防止剤と、溶媒とを含有する剥離剤組成物。
[2] 前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、及び、スルフィド系酸化防止剤のいずれか一種以上である[1]に記載の剥離剤組成物。
[3] 前記フェノール系酸化防止剤は、式(1)で表される基を有する化合物である[2]に記載の剥離剤組成物。
【化1】
(式中、R
1は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R
2~R
4はそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、*は結合手を表す。)
[4] 前記アミン系酸化防止剤は、式(2)で表される基を有する化合物である[2]又は[3]に記載の剥離剤組成物。
【化2】
(式中、R
5は水素原子、オキシラジカル基、炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数1~12のアルコキシ基を表し、*は結合手を表す。)
[5] 前記リン酸系酸化防止剤は、下記式(3)又は(4)で表される化合物であり、前記スルフィド系酸化防止剤は、下記式(5)又は式(6)で表される化合物である[2]~[4]のいずれかに記載の剥離剤組成物。
【化3】
(式中、R
6~R
8は炭素原子数1~12のアルキル基、又は、アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表す。)
【化4】
(式中、R
9~R
10は炭素原子数1~12のアルキル基、又は、アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表す。)
【化5】
(式中、R
11~R
12は炭素原子数1~12のアルキル基を表す。)
【化6】
(式中、R
13~R
16は炭素原子数1~12のアルキル基を表す。)
[6] 前記分岐鎖状ポリシランが、式(B)で表される構造を有する[1]~[5]のいずれかに記載の剥離剤組成物。
【化7】
(式中、R
Bは、水素原子、ヒドロキシル基、シリル基又は有機基を表す。)
[7] 前記R
Bが、フェニル基である[6]に記載の剥離剤組成物。
[8] 前記有機樹脂が、ノボラック樹脂である[1]~[7]のいずれかに記載の剥離剤組成物。
[9] 前記ノボラック樹脂が、式(C1-1)で表される単位、式(C1-2)で表される単位及び式(C1-3)で表される単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含むポリマーである[8]に記載の剥離剤組成物。
【化8】
(式中、C
1は、窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基を表し、C
2は、第2級炭素原子、第4級炭素原子及び芳香族環からなる群から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する第3級炭素原子を含む基を表し、C
3は、脂肪族多環化合物に由来する基を表し、C
4は、フェノールに由来する基、ビスフェノールに由来する基、ナフトールに由来する基、ビフェニルに由来する基又はビフェノールに由来する基を表す。)
[10] 架橋剤を含有する[1]~[9]のいずれかに記載の剥離剤組成物。
[11] 半導体基板又は電子デバイス層と、
支持基板と、
前記半導体基板又は前記電子デバイス層と前記支持基板との間に設けられた、剥離剤層とを有し、
前記剥離剤層が、[1]から[10]のいずれかに記載の剥離剤組成物から形成された剥離剤層である、積層体。
[12] 前記半導体基板又は前記電子デバイス層と前記支持基板との間に設けられた、接着剤層を有する、[11]に記載の積層体。
[13] 加工された半導体基板又は電子デバイス層の製造方法であって、
[11]又は[12]に記載の積層体の前記半導体基板が加工される第5A工程、又は[11]に記載の積層体の前記電子デバイス層が加工される第5B工程と、
前記第5A工程によって加工された前記半導体基板と前記支持基板とが分離される第6A工程、又は前記第5B工程によって加工された前記電子デバイス層と前記支持基板とが分離される第6B工程と、
を含む、加工された半導体基板又は電子デバイス層の製造方法。
[14] 前記支持基板が光透過性であり、前記第6A工程又は第6B工程が、前記積層体に対して、前記支持基板側からレーザーを照射する工程を含む、[13]に記載の加工された半導体基板又は電子デバイス層の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な剥離性を有するとともに長期保存安定性に優れる剥離剤組成物、並びに、当該剥離剤組成物を用いた積層体、及び加工された半導体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施態様における積層体の一例の概略断面図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施態様における一例を示す積層体の製造方法を説明するための概略断面図である(その1)。
【
図2B】
図2Bは、第1の実施態様における一例を示す積層体の製造方法を説明するための概略断面図である(その2)。
【
図2C】
図2Cは、第1の実施態様における一例を示す積層体の製造方法を説明するための概略断面図である(その3)。
【
図3】
図3は、第2の実施態様における積層体の一例の概略断面図である。
【
図4】
図4は、第2の実施態様における積層体の他の一例の概略断面図である。
【
図5A】
図5Aは、第2の実施態様における一例を示す積層体の製造方法を説明するための概略断面図である(その1)。
【
図5B】
図5Bは、第2の実施態様における一例を示す積層体の製造方法を説明するための概略断面図である(その2)。
【
図5C】
図5Cは、第2の実施態様における一例を示す積層体の製造方法を説明するための概略断面図である(その3)。
【
図5D】
図5Dは、第2の実施態様における一例を示す積層体の製造方法を説明するための概略断面図である(その4)。
【
図6A】
図6Aは、第1の実施態様における一例を示す積層体の加工方法を説明するための概略断面図である(その1)。
【
図6B】
図6Bは、第1の実施態様における一例を示す積層体の加工方法を説明するための概略断面図である(その2)。
【
図6C】
図6Cは、第1の実施態様における一例を示す積層体の加工方法を説明するための概略断面図である(その3)。
【
図6D】
図6Dは、第1の実施態様における一例を示す積層体の加工方法を説明するための概略断面図である(その4)。
【
図7A】
図7Aは、第2の実施態様における一例を示す積層体の加工方法を説明するための概略断面図である(その1)。
【
図7B】
図7Bは、第2の実施態様における一例を示す積層体の加工方法を説明するための概略断面図である(その2)。
【
図7C】
図7Cは、第2の実施態様における一例を示す積層体の加工方法を説明するための概略断面図である(その3)。
【
図7D】
図7Dは、第2の実施態様における一例を示す積層体の加工方法を説明するための概略断面図である(その4)。
【
図7E】
図7Eは、第2の実施態様における一例を示す積層体の加工方法を説明するための概略断面図である(その5)。
【
図7F】
図7Fは、第2の実施態様における一例を示す積層体の加工方法を説明するための概略断面図である(その6)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(剥離剤組成物)
本発明の剥離剤組成物は、有機樹脂と、分岐鎖状ポリシランと、酸化防止剤と、溶媒とを含有する。
剥離剤組成物は、半導体基板と、支持基板と、半導体基板と支持基板との間に設けられた接着層及び剥離層と、を有する積層体の剥離層を形成するための剥離剤組成物である。
【0012】
<酸化防止剤>
酸化防止剤は、有機樹脂等の種類、剥離剤組成物の保存環境温度等に応じて、適宜の種類のものを選択できる。酸化防止剤は、一種以上含有すればよく、二種以上を用いても良い。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、及び、スルフィド系酸化防止剤のいずれか一種以上が挙げられる。酸化防止剤を含有する本発明の剥離剤組成物は、2週間~1か月等の長期間保管した場合にも、剥離剤組成物の分子量等が大幅に増加することなく、良好な安定性を示す。
【0013】
本発明の剥離組成物における酸化防止剤の量は、適宜決定できる。酸化防止剤の量は、例えば、分岐鎖状ポリシランの量に対して、0.001~80質量としてよく、分岐鎖状ポリシランの分子量増加をより抑制する観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、より一層好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。また、30質量%以下であるとよく、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、より一層好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0014】
<<フェノール系酸化防止剤>>
フェノール系酸化防止剤は、フェノールで表される基を有する化合物であり、例えば、式(1)で表される基を有する化合物が挙げられる。
【化9】
(式中、R
1は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R
2~R
4はそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、*は結合手を表す。)
なお、式中の結合手*は、水素原子と結合していてもよいし、水素原子以外の原子又は基と結合していてもよい。
【0015】
式(1)中、R1~R4で表された炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、tert-アミル基、sec-イソアミル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
R1としては、tert-ブチル基が好ましい。
このような式(1)で表される基として、例えば、3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル基、3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル基等が挙げられる。なお、フェノール系酸化防止剤は、後述するフェノール系架橋剤とは異なる。
【0016】
フェノール系酸化防止剤の分子量としては、特に制限されないが、50~1,000が好ましく、100~300がより好ましい。
【0017】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、以下の構造を有する化合物が挙げられる。
【化10】
【化11】
【化12】
【0018】
<<アミン系酸化防止剤>>
アミン系酸化防止剤は、N、NH又はNO
・で表される基を有する化合物であり、例えば、ヒンダードアミンで表される基や、TEMPOと呼ばれるニトロキシルラジカル基を有する化合物が挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、式(2)で表される基を有する化合物が挙げられる。
【化13】
(式中、R
5は水素原子、オキシラジカル基(-O・)、炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素原子数1~12のアルコキシ基を表し、*は結合手を表す。)
なお、式中の結合手*は、水素原子と結合していてもよいし、水素原子以外の原子又は基と結合していてもよい。
【0019】
式(2)中、R5で表された炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、tert-アミル基、sec-イソアミル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
R5で表された炭素原子数1~12のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソアミルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-アミルオキシ基、sec-イソアミルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチル基オキシ、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基等が挙げられる。
R5としては、水素原子、オキシラジカル基、メチル基、シクロヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基が好ましく、水素原子、オキシラジカル基、又はメチル基が特に好ましい。
【0020】
アミン系酸化防止剤の分子量としては、特に制限されないが、50~1,000が好ましく、100~600がより好ましい。
【0021】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、以下の構造を有する化合物が挙げられる。
【化14】
【化15】
【0022】
<<リン酸系酸化防止剤>>
リン酸系酸化防止剤は、リン酸、ポリリン酸、メタリン酸等のリン酸又はリン酸類を有する化合物であり、例えば、式(3)又は(4)で表される基を有する化合物が挙げられる。
【化16】
(式中、R
6~R
8は炭素原子数1~12のアルキル基、又は、アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表す。)
【化17】
(式中、R
9~R
10は炭素原子数1~12のアルキル基、又は、アルキル基で置換されていてもよいアリール基を表す。)
【0023】
式(3)中のR6~R8、及び、式(4)中のR9~R10で表された炭素原子数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、tert-アミル基、sec-イソアミル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
R6~R10で表されたアルキル基で置換されていてもよいアリール基としては、少なくとも1つの環として芳香環を有していればよく、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ジ-tert-ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0024】
リン酸系酸化防止剤としては、例えば、以下の構造を有する化合物が挙げられる。
【化18】
【化19】
【0025】
<<スルフィド系酸化防止剤>>
スルフィド系酸化防止剤は、スルフィド(チオエーテル)で表される基を有する化合物であり、例えば、式(5)又は式(6)で表される基を有する化合物が挙げられる。
【化20】
(式中、R
11~R
12は炭素原子数1~12のアルキル基を表す。)
【化21】
(式中、R
13~R
16は炭素原子数1~12のアルキル基を表す。)
【0026】
式(5)中のR11~R12、及び、式(6)中のR13~R16で表された炭素原子数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、tert-アミル基、sec-イソアミル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
上記のR11~R16としては、n-ドデシル基が好ましい。
【0027】
スルフィド系酸化防止剤としては、例えば、以下の構造を有する化合物が挙げられる。
【化22】
【0028】
<有機樹脂>
上記剥離剤組成物は、有機樹脂を含む。このような有機樹脂は、好適な剥離能を発揮できるものが好ましく、剥離層に対する光照射によって半導体基板と支持基板との分離を行う場合には、当該有機樹脂は、光を吸収して剥離能向上に必要な変質、例えば分解が好適に生じるものである。
【0029】
有機樹脂の好ましい一例として、ノボラック樹脂を挙げることができる。
本発明の積層体が備える剥離層に光を照射して剥離をする場合、波長190nm~600nmの光を吸収し変質するノボラック樹脂が好ましく、波長が308nm、343nm、355nm又は365nmのレーザー等の光の照射によって変質するノボラック樹脂がより好ましい。
ノボラック樹脂は、芳香族環に直接結合したヒドロキシ基及び芳香族環に直接結合したカルボキシ基の少なくともいずれかを有する。
ノボラック樹脂は、例えば、フェノール性化合物、カルバゾール化合物、及び芳香族アミン化合物の少なくともいずれかと、アルデヒド化合物、ケトン化合物、及びジビニル化合物の少なくともいずれかとを酸触媒下で縮合反応させて得られる樹脂である。
【0030】
フェノール性化合物としては、例えば、フェノール類、ナフトール類、アントロール類、ヒドロキシピレン類などが挙げられる。フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ビスフェノールA、p-tert-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなどが挙げられる。ナフトール類としては、例えば、1-ナフトール、2-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシナフチル)フルオレンなどが挙げられる。アントロール類としては、例えば、9-アントロールなどが挙げられる。ヒドロキシピレン類としては、例えば、1-ヒドロキシピレン、2-ヒドロキシピレンなどが挙げられる。
カルバゾール化合物としては、例えば、カルバゾール、1,3,6,8-テトラニトロカルバゾール、3,6-ジアミノカルバゾール、3,6-ジブロモ-9-エチルカルバゾール、3,6-ジブロモ-9-フェニルカルバゾール、3,6-ジブロモカルバゾール、3,6-ジクロロカルバゾール、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、3-ブロモ-9-エチルカルバゾール、4,4’ビス(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル、4-グリシジルカルバゾール、4-ヒドロキシカルバゾール、9-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イルメチル)-9H-カルバゾール、9-アセチル-3,6-ジヨードカルバゾール、9-ベンゾイルカルバゾール、9-ベンゾイルカルバゾール-6-ジカルボキシアルデヒド、9-ベンジルカルバゾール-3-カルボキシアルデヒド、9-メチルカルバゾール、9-フェニルカルバゾール、9-ビニルカルバゾール、カルバゾールカリウム、カルバゾール-N-カルボニルクロリド、N-エチルカルバゾール-3-カルボキシアルデヒド、N-((9-エチルカルバゾール-3-イル)メチレン)-2-メチル-1-インドリニルアミン等が挙げられる。
芳香族アミン化合物としては、例えば、ジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
これらは、置換基を有していてもよい。例えば、これらは、芳香族環に置換基を有していてもよい。
【0031】
アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、7-メトキシ-3、7-ジメチルオクチルアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、3-メチル-2-ブチルアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド等の飽和脂肪族アルデヒド類、アクロレイン、メタクロレイン等の不飽和脂肪族アルデヒド類、フルフラール、ピリジンアルデヒド等のヘテロ環式アルデヒド類、ベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントリルアルデヒド、フェナントリルアルデヒド、サリチルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、3-フェニルプロピオンアルデヒド、トリルアルデヒド、(N,N-ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、アセトキシベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド類等が挙げられる。中でも、芳香族アルデヒドを好ましい。
ケトン化合物としては、例えば、ジフェニルケトン、フェニルナフチルケトン、ジナフチルケトン、フェニルトリルケトン、ジトリルケトン等のジアリールケトン化合物が挙げられる。
ジビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、5-ビニルノボルナ-2-エン、ジビニルピレン、リモネン、5-ビニルノルボルナジエン等が挙げられる。
これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
ノボラック樹脂は、例えば、支持基板側から照射された光を吸収し変質するノボラック樹脂である。当該変質は、例えば、光分解である。
【0033】
ノボラック樹脂は、例えば、下記式(C1-1)で表される構造単位、下記式(1-2)で表される構造単位、及び下記式(C1-3)で表される構造単位の少なくともいずれかを含む。
【0034】
【0035】
式中、C1は、窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基を表し、C2は、第2級炭素原子、第4級炭素原子及び芳香族環からなる群から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する第3級炭素原子を含む基を表し、C3は、脂肪族多環化合物に由来する基を表し、C4は、フェノールに由来する基、ビスフェノールに由来する基、ナフトールに由来する基、ビフェニルに由来する基又はビフェノールに由来する基を表す。
【0036】
すなわち、ノボラック樹脂は、例えば、以下の構造単位の1種又は2種以上を含む。
・窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基と第2級炭素原子、第4級炭素原子、及び芳香族環からなる群から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する第3級炭素原子を含む基との結合を有する構造単位(式(C1-1))
・窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基と脂肪族多環化合物に由来する基との結合を有する構造単位(式(C1-2))
・フェノールに由来する基、ビスフェノールに由来する基、ナフトールに由来する基、ビフェニルに由来する基又はビフェノールに由来する基と第4級炭素原子、及び芳香族環からなる群から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する第3級炭素原子を含む基との結合を有する構造単位((式(C1-3))
【0037】
好ましい一態様においては、ノボラック樹脂は、窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基と第2級炭素原子、第4級炭素原子、及び芳香族環からなる群から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する第3級炭素原子を含む基との結合を有する構造単位(式(C1-1))及び窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基と脂肪族多環化合物に由来する基との結合を有する構造単位(式(C1-2))のいずれか一方又は両方を含む。
【0038】
C1の窒素原子を含む芳香族化合物に由来する基は、例えば、カルバゾールに由来する基、N-フェニル-1-ナフチルアミンに由来する基、N-フェニル-2-ナフチルアミンに由来する基等にすることができるが、これらに限定されない。
C2の第2級炭素原子、第4級炭素原子及び芳香族環からなる群から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する第3級炭素原子を含む基は、例えば、1-ナフトアルデヒドに由来する基、1-ピレンカルボキシアルデヒドに由来する基、4-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドに由来する基、アセトアルデヒドに由来する基等とすることができるが、これらに限定されない。
C3の脂肪族多環化合物に由来する基は、ジシクロペンタジエンに由来する基とすることができるが、これに限定されない。
C4は、フェノールに由来する基、ビスフェノールに由来する基、ナフトールに由来する基、ビフェニルに由来する基又はビフェノールに由来する基である。
【0039】
好ましい態様においては、ノボラック樹脂は、式(C1-1)で表される構造単位として、例えば、下記式(C1-1-1)で表される構造単位を含む。
【0040】
【0041】
式(C1-1-1)中、R901及びR902は、環に置換する置換基を表し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいアリール基を表す。
R903は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいアリール基を表す。
R904は、水素原子、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
R905は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
R904の基とR905の基とは、互いに結合して2価の基を形成してもよい。
アルキル基及びアルケニル基の置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
アリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキル基、アルケニル基等が挙げられる。
h1及びh2は、それぞれ独立して、0~3の整数を表す。
【0042】
置換されていてもよいアルキル基及び置換されていてもよいアルケニル基の炭素数は、通常40以下であり、溶解性の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
置換されていてもよいアリール基及びヘテロアリール基の炭素数は、通常40以下であり、溶解性の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
【0043】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0044】
置換されていてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
置換されていてもよいアルケニル基の具体例としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-ターシャリーブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
置換されていてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-ニトロフェニル基、4-シアノフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
置換されていてもよいヘテロアリール基の具体例としては、2-チエニル基、3-チエニル基、2-フラニル基、3-フラニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、4-イソオキサゾリル基、5-イソオキサゾリル基、2-チアゾリル基、4-チアゾリル基、5-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、4-イソチアゾリル基、5-イソチアゾリル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
以下、式(C1-1-1)で表される構造単位の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0049】
【0050】
好ましい態様においては、ノボラック樹脂は、式(C1-1)で表される構造単位として、例えば、下記式(C1-1-2)で表される構造単位を含む。
【0051】
【0052】
式(C1-1-2)中、Ar901及びAr902は、それぞれ独立して、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環を表し、R901~R905並びにh1及びh2は、上記と同じ意味を表す。
【0053】
以下、式(C1-1-2)で表される構造単位の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0054】
【0055】
好ましい態様においては、ノボラック樹脂は、式(C1-2)で表される構造単位として、例えば、下記式(C1-2-1)又は(1-2-2)で表される構造単位を含む。
【0056】
【0057】
上記式中、R906~R909は、環に結合する置換基であり、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基及び置換されていてもよいアリール基の具体例及び好適な炭素数は、上述のものと同じものが挙げられ、h3~h6は、それぞれ独立して、0~3の整数を表し、R901~R903並びにh1及びh2は、上記と同じ意味を表す。
【0058】
以下、式(C1-2-1)及び(C1-2-2)で表される構造単位の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0059】
【0060】
以下、式(C1-3)で表される構造単位の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0061】
【0062】
前述の通り、ノボラック樹脂は、例えば、フェノール性化合物、カルバゾール化合物、及び芳香族アミン化合物の少なくともいずれかと、アルデヒド化合物、ケトン化合物、及びジビニル化合物の少なくともいずれかとを酸触媒下で縮合反応させて得られる樹脂である。
この縮合反応においては、例えば、カルバゾール化合物の環を構成するベンゼン環1当量に対して、通常、アルデヒド化合物又はケトン化合物を0.1~10当量の割合で用いる。
【0063】
<分岐鎖状ポリシラン>
本発明の剥離剤組成物は、分岐鎖状ポリシランを含有する。
分岐鎖状ポリシランは、Si-Si結合を有し、且つ、枝分かれ構造を有するものである。上記剥離剤組成物に分岐鎖状ポリシランが含まれることで、得られる膜からなる剥離剤層が、有機溶媒、酸及び半導体素子の製造で用いられる薬液(アルカリ現像液、過酸化水素水等)のいずれによっても好適に除去できないが、洗浄剤組成物によって好適に除去できるものとなり、その結果、積層体の半導体基板と支持基板を分離した後に各基板を洗浄剤組成物で洗浄することによって、基板上の剥離剤層の残渣を好適に除去可能となる。この理由は定かではないが、ポリシランの末端基(末端置換基(原子))の種類によっては、ポリシランは有機樹脂と反応して架橋することができ、また、分岐鎖状ポリシランは、直鎖状ポリシランよりも、より多くの末端基(末端置換基(原子))を有することから、分岐鎖状ポリシランは、直鎖状ポリシランよりも、より多くの架橋点を有すると考えられ、分岐鎖状ポリシラン中のこのようなより多くの架橋点を介した適度且つ好適な硬化によって、有機溶媒、酸及び半導体素子の製造で用いられる薬液(アルカリ現像液、過酸化水素水等)によって好適に除去されないという特性と、洗浄剤組成物によって好適に除去されるという特性の両立が実現できるものと推測される。
【0064】
分岐鎖状ポリシランは、好ましくは、式(B)で表される構造単位を含む。
【0065】
【0066】
式(B)中、RBは、水素原子、ヒドロキシ基、シリル基又は有機基を表し、このような有機基の具体例としては、炭化水素基(置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基)、これらの炭化水素基に対応するエーテル基(置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基等)等が挙げられるが、当該有機基は、通常、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基である場合が多い。また、水素原子やヒドロキシ基、アルコキシ基、シリル基等は、末端に置換している場合が多い。
【0067】
置換されていてもよいアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、ターシャリーブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常1~14、好ましくは1~10、より好ましくは1~6である。
置換されていてもよい環状アルキル基の具体例としては、シシクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等のシクロアルキル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等のビシクロアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常3~14、好ましくは4~10、より好ましくは5~6である。
【0068】
アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常2~14、好ましくは2~10、より好ましくは1~6である。
置換されていてもよい環状アルケニル基の具体例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常4~14、好ましくは5~10、より好ましくは5~6である。
【0069】
置換されていてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、4-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、2-メチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常6~20、好ましくは6~14、より好ましくは6~12である。
【0070】
置換されていてもよいアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。置換されていてもよいアラルキル基は、好ましくは炭素数1~4のアルキル基の水素原子の1つが炭素数6~20のアリール基で置換された基である。
【0071】
置換されていてもよいアルコキシ基は、そのアルキル部位が直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常1~14、好ましくは1~10、より好ましくは1~6である。
置換されていてもよい環状アルコキシ基の具体例としては、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常3~14、好ましくは4~10、より好ましくは5~6である。
【0072】
置換されていてもよいアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、2-ナフチルオキシ等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常6~20、好ましくは6~14、より好ましくは6~10である。
【0073】
置換されていてもよいアラルキルオキシ基の具体例としては、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、フェニルプロピルオキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。置換されていてもよいアラルキルオキシ基は、好ましくは炭素数1~4のアルキルオキシ基の水素原子の1つが炭素数6~20のアリール基に置換された基である。
【0074】
シリル基の具体例としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基等が挙げられるが、これらに限定されず、そのケイ素数は、通常1~10、好ましくは1~6である。
【0075】
RBが、上記有機基又はシリル基である場合、その水素原子の少なくとも1つが、置換基により置換されていてもよい。このような置換基の具体例としては、ヒドロキシ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0076】
積層体を有機溶媒、酸、半導体素子の製造で用いられる薬液(アルカリ現像液、過酸化水素水等)のいずれかに接触させた際の意図しない剥離を抑制する観点、積層体の半導体基板と支持基板とを分離した後に各基板を洗浄剤組成物で洗浄した場合において、基板上の剥離剤層の残渣を好適に除去する観点等から、RBは、好ましくはアルキル基又はアリール基であり、より好ましくはアリール基であり、より一層好ましくはフェニル基、1-ナフチル基又は2-ナフチル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0077】
分岐鎖状ポリシランは、式(B)で表される構造単位とともに、下記式(S)で表される構造単位や下記式(N)で表される構造単位を含んでもよいが、積層体を有機溶媒、酸、半導体素子の製造で用いられる薬液(アルカリ現像液、過酸化水素水等)のいずれかに接触させた際の意図しない剥離を抑制する観点、積層体の半導体基板と支持基板とを分離した後に各基板を洗浄剤組成物で洗浄した場合において、基板上の剥離剤層の残渣を好適に除去する観点等から、分岐鎖状ポリシラン中の式(B)で表される構造単位の含有量は、全構造単位中、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、より一層好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90%以上、更に一層好ましくは95モル%以上である。
【0078】
【化32】
(R
S1は及び
S2は、R
Bと同じ意味を表す。)
【0079】
分岐鎖状ポリシランの末端基(末端置換基(原子))は、通常、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(塩素原子等)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、シリル基等であってもよい。中でも、ヒドロキシ基、メチル基、フェニル基である場合が多く、なかでもメチル基が好ましく、末端基はトリメチルシリル基であってもよい。
【0080】
ある態様においては、分岐鎖状ポリシランの平均重合度は、ケイ素原子換算(すなわち、一分子あたりのケイ素原子の平均数)で、通常2~100、好ましくは3~80、より好ましくは5~50、より一層好ましくは10~30である。
ある態様においては、分岐鎖状ポリシランの重量平均分子量の上限値は、通常30,000、好ましくは20,000、より好ましくは10,000、より一層好ましくは5,000、更に好ましくは2,000、更に一層好ましくは1,500であり、その下限値は、通常50、好ましくは100、より好ましくは150、より一層好ましくは200、更に好ましくは300、更に一層好ましくは500である。
分岐鎖状ポリシランの平均重合度及び重量平均分子量は、例えば、GPC装置(東ソー(株)製EcoSEC,HLC-8220GPC)及びGPCカラム(昭和電工(株)製 Shodex KF-803L、KF-802及びKF-801をこの順序で使用)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を1.00mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(シグマアルドリッチ社製)を用いて、測定することができる。
用いる分岐鎖状ポリシランの重合度及び重量平均分子量が小さすぎると、剥離剤層である膜を形成する際や得られた剥離剤層を備える積層体に対する加工が施される際等の加熱によって分岐鎖状ポリシランが気化したり、膜の強度不良による不具合が生じたりする可能性があり、用いる分岐鎖状ポリシランの重合度及び分子量が大きすぎると、剥離剤組成物の調製に用いる溶媒の種類によっては十分な溶解性が確保できずに組成物中で析出が生じたり、樹脂との混合が不十分となって均一性の高い膜を再現性よく得られない可能性がある。
それ故、半導体素子の好適な製造に寄与する剥離剤層を備える積層体をより一層再現性よく得る観点からは、分岐鎖状ポリシランの重合度及び重量平均分子量は上述の範囲を満たすことが望ましい。
【0081】
分岐鎖状ポリシランの5%重量減少温度は、耐熱性に優れる剥離剤層を再現性よく得る観点から、通常300℃以上、好ましくは350℃以上、より好ましくは365℃以上、より一層好ましくは380℃以上、更に好ましくは395℃以上、更に一層好ましくは400℃以上である。
分岐鎖状ポリシランの5%重量減少温度は、例えば、NETZSCH社製 2010SRを用いて、空気下で、常温(25℃)から400℃まで10℃/分で昇温することで、測定することができる。
【0082】
積層体の半導体基板と支持基板とを分離した後に各基板を洗浄剤組成物で洗浄した場合において、基板上の剥離剤層の残渣を好適に除去する観点、均一性に優れる剥離剤組成物を再現性よく調製する観点等から、分岐鎖状ポリシランは、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物、トルエンの等の芳香族化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル化合物、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン化合物及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル化合物のいずれかに溶解するものが好ましい。なお、この場合における溶解とは、10質量%の溶液となるように、常温(25℃)下で振とう機を用いて溶解を試みた際に、1時間以内に溶解したことが目視で確認できる場合を意味する。
【0083】
分岐鎖状ポリシランは、常温で、固体状、液体状のいずれであってもよい。
【0084】
分岐鎖状ポリシランは、例えば特開2011-208054公報、特開2007-106894公報、特開2007-145879公報、WO2005/113648公報等に記載の公知の方法を参考に製造することもできるし、また、市販品として入手することもできる。市販品の具体例としては、大阪ガスケミカル(株)製 ケイ素材料 ポリシラン OGSOL SI-20-10,SI-20-14等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
分岐鎖状ポリシランの好適な一例としては以下が挙げられるが、これに限定されない。
【化33】
(Phは、フェニル基を表し、R
Eは、それぞれ独立して、末端置換基を表し、原子又は基を表し、n
bは、繰り返し単位数を示す。)
【0086】
上記剥離剤組成物中の分岐鎖状ポリシランの含有量は、膜構成成分に対して、通常10~90量%であるが、有機溶媒、酸又は半導体素子の製造で用いられる薬液(アルカリ現像液、過酸化水素水等)によっては好適に除去できないが、洗浄剤組成物によって好適に除去できる膜を再現性よく実現する観点等から、好ましくは15~80質量%、より好ましくは20~70質量%、より一層好ましくは25~60質量%、更に好ましく30~50質量%である。
【0087】
<架橋剤>
剥離剤組成物は、架橋剤を含んでもよい。
架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、ノボラック樹脂中に架橋性置換基が存在する場合は、それらの架橋性置換基と架橋反応を起こすことができる。
【0088】
架橋剤の具体例としては、特に限定されるものではないが、典型的には、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、ブトキシメチル基等のアルコキシメチル基等の架橋形成基を分子内に有する、フェノール系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、チオ尿素系架橋剤等が挙げられ、これらは低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。
剥離剤組成物が含む架橋剤は、通常、2個以上の架橋形成基を有するが、より好適な硬化を再現性よく実現する観点から、架橋剤である化合物に含まれる架橋形成基の数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~6である。
剥離剤組成物が含む架橋剤は、より高い耐熱性を実現する観点からは、好ましくは分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有し、そのような架橋剤の典型例としては、これに限定されるものではないが、フェノール系架橋剤が挙げられる。
【0089】
架橋形成基を有するフェノール系架橋剤とは、芳香族環に結合した架橋形成基を有し、かつ、フェノール性ヒドロキシ基及びフェノール性ヒドロキシ基から誘導されるアルコキシ基の少なくとも一方を有する化合物であり、このようなフェノール性ヒドロキシ基から誘導されるアルコキシ基としては、メトキシ基、ブトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
架橋形成基が結合する芳香族環とフェノール性ヒドロキシ基及び/又はフェノール性ヒドロキシ基から誘導されるアルコキシ基が結合する芳香族環はいずれも、ベンゼン環等の非縮環型芳香族環に限られず、ナフタレン環、アントラセン等の縮環型芳香族環であってもよい。
フェノール系架橋剤の分子内に芳香族環が複数存在する場合、架橋形成基とフェノール性ヒドロキシ基及びフェノール性ヒドロキシ基から誘導されるアルコキシ基とは、分子内の同じ芳香族環に結合していてもよく、異なる芳香族環に結合していてもよい。
架橋形成基やフェノール性ヒドロキシ基及びフェノール性ヒドロキシ基から誘導されるアルコキシ基が結合する芳香族環は、メチル基、エチル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基等の炭化水素基、フッ素原子等のハロゲン原子等で更に置換されていてもよい。
【0090】
例えば、架橋形成基を有するフェノール系架橋剤の具体例としては、式(L1)~(L4)のいずれかで表される化合物が挙げられる。
【0091】
【0092】
各式中、各R’は、それぞれ独立して、フッ素原子、アリール基又はアルキル基を表し、各R’’は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアルコキシアルキル基を表し、L1及びL2は、それぞれ独立して、単結合、メチレン基又はプロパン-2,2-ジイル基を表し、L3は、q1に応じて定まり、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、メタントリイル基又はエタン-1,1,1-トリイル基を表し、t11、t12及びt13は、2≦t11≦5、1≦t12≦4、0≦t13≦3、及びt11+t12+t13≦6を満たす整数であり、t21、t22及びt23は、2≦t21≦4、1≦t22≦3、0≦t23≦2、及びt21+t22+t23≦5を満たす整数であり、t24、t25及びt26は、2≦t24≦4、1≦t25≦3、0≦t26≦2、及びt24+t25+t26≦5を満たす整数であり、t27、t28及びt29は、0≦t27≦4、0≦t28≦4、0≦t29≦4、及びt27+t28+t29≦4を満たす整数であり、t31、t32及びt33は、2≦t31≦4、1≦t32≦3、0≦t33≦2、及びt31+t32+t33≦5を満たす整数であり、t41、t42及びt43は、2≦t41≦3、1≦t42≦2、0≦t43≦1、及びt41+t42+t43≦4を満たす整数であり、q1は、2又は3であり、q2は、繰り返し数を表し、0以上の整数であり、アリール基及びアルキル基の具体例としては、下記の具体例と同じものが挙げられるが、アリール基としてはフェニル基が好ましく、アルキル基としては、メチル基、t-ブチル基が好ましく、アルコキシアルキル基としては、2-メトキシ-1-メチルエチル基が好ましい。
【0093】
以下、式(L1)~(L4)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されない。なお、これらの化合物は、公知の方法で合成してもよく、例えば旭有機材工業(株)や本州化学工業(株)の製品として入手することもできる。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
架橋形成基を有するメラミン系架橋剤とは、そのトリアジン環に結合するアミノ基の水素原子の少なくとも1つが架橋形成基で置換された、メラミン誘導体、2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン誘導体又は2-アミノ-1,3,5-トリアジン誘導体であり、当該トリアジン環は、フェニル基等のアリール基等の置換基を更に有していてもよい。
架橋形成基を有するメラミン系架橋剤の具体例としては、N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’,N”,N”-ヘキサキス(ブトキシメチル)メラミン等のモノ、ビス、トリス、テトラキス、ペンタキス又はヘキサキスアルコキシメチルメラミン、N,N,N’,N’-テトラキス(メトキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N’,N’-テトラキス(ブトキシメチル)ベンゾグアナミン等のモノ、ビス、トリス又はテトラキスアルコキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
架橋形成基を有する尿素系架橋剤とは、尿素結合含有化合物の誘導体であって、尿素結合を構成するNH基の水素原子の少なくとも1つが架橋形成基で置換された構造を有するものである。
架橋形成基を有する尿素系架橋剤の具体例としては、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル等のモノ、ビス、トリス又はテトラキスアルコキシメチルグリコールウリル、1,3-ビス(メトキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキスメトキシメチル尿素等のモノ、ビス、トリス又はテトラキスアルコキシメチル尿素等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
架橋形成基を有するチオ尿素系架橋剤とは、チオ尿素結合含有化合物の誘導体であって、チオ尿素結合を構成するNH基の水素原子の少なくとも1つが架橋形成基で置換された構造を有するものである。
架橋形成基を有するチオ尿素系架橋剤の具体例としては、1,3-ビス(メトキシメチル)チオ尿素、1,1,3,3-テトラキスメトキシメチルチオ尿素等のモノ、ビス、トリス又はテトラキスアルコキシメチルチオ尿素等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
剥離剤組成物に含まれる架橋剤の量は、採用する塗布方法、所望の膜厚等に応じて異なるため一概に規定できないが、有機樹脂又は多核フェノール誘導体に対して、通常0.01~50質量%であり、好適な硬化を実現し、半導体基板と支持基板とが良好に分離可能な積層体を再現性よく得る観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、より一層好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、より一層好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0102】
<酸発生剤、及び酸>
架橋反応の促進等を目的として、上記剥離剤組成物は、酸発生剤や酸を含んでもよい。
【0103】
酸発生剤としては、例えば、熱酸発生剤と光酸発生剤が挙げられる。
熱酸発生剤は、熱により酸を発生する限り特に限定されるものではなく、その具体例としては、2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2-ニトロベンジルトシレート、K-PURE〔登録商標〕CXC-1612、同CXC-1614、同TAG-2172、同TAG-2179、同TAG-2678、同TAG2689、同TAG2700(King Industries社製)、及びSI-45、SI-60、SI-80、SI-100、SI-110、SI-150(三新化学工業(株)製)その他有機スルホン酸アルキルエステル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、及びジスルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられる。
【0105】
オニウム塩化合物の具体例としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフエート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロノルマルオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等のヨードニウム塩化合物、トリフェニルスルホニウムナイトレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のスルホニウム塩化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
スルホンイミド化合物の具体例としては、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(ノナフルオロノルマルブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタルイミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
ジスルホニルジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
酸の具体例としては、p-トルエンスルホン酸、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸(ピリジニウムパラトルエンスルホネート)、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、ピリジニウムフェノールスルホン酸、5-スルホサリチル酸、4-フェノールスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸等のアリールスルホン酸やピリジニウム塩等やその塩、サリチル酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等のアリールカルボン酸やその塩、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸等の鎖状又は環状アルキルスルホン酸やその塩、クエン酸等の鎖状又は環状アルキルカルボン酸やその塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
剥離剤組成物に含まれる酸発生剤及び酸の量は、ともに用いる架橋剤の種類、膜を形成する際の加熱温度等に応じて異なるため一概に規定できないが、膜構成成分に対して、通常0.01~5質量%である。
【0110】
<界面活性剤>
剥離剤組成物は、組成物自体の液物性や得られる膜の膜物性を調整することや、均一性の高い剥離剤組成物を再現性よく調製すること等を目的として、界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトツプEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製、商品名)、メガファックF171、F173、R-30、R-30N(DIC(株)製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製、商品名)、アサヒガードAG710、サーフロンSー382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製、商品名)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
界面活性剤は、一種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の量は、剥離剤組成物の膜構成成分に対して、通常2質量%以下である。
【0111】
<溶媒>
剥離剤組成物は、好ましくは溶媒を含む。
このような溶媒としては、例えば、前述の有機樹脂、多核フェノール誘導体、分岐鎖状ポリシラン、架橋剤等の膜構成成分を良好に溶解できる高極性溶媒を用いることができ、必要に応じて、粘度、表面張力等の調整等を目的に、低極性溶媒を用いてもよい。なお、本発明において、低極性溶媒とは周波数100kHzでの比誘電率が7未満のものを、高極性溶媒とは周波数100kHzでの比誘電率が7以上のものと定義する。溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0112】
また、高極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;エチルメチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のシアノ系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等の多価アルコール系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、3-フェノキシベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等の脂肪族アルコール以外の1価アルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒等が挙げられる。
【0113】
低極性溶媒としては、例えば、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系溶媒;トルエン、キシレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デシルベンゼン等のアルキルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール等の脂肪族アルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、4-メトキシトルエン、3-フェノキシトルエン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、マレイン酸ジブチル、シュウ酸ジブチル、酢酸ヘキシル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒等が挙げられる。
【0114】
溶媒の含有量は、所望の組成物の粘度、採用する塗布方法、作製する膜の厚み等を勘案して適宜決定されるものではあるが、組成物全体の99質量%以下であり、好ましくは、組成物全体に対して70~99質量%、すなわち、その場合における膜構成成分の量は、組成物全体に対して1~30質量%である。
【0115】
剥離剤組成物の粘度及び表面張力は、用いる塗布方法、所望の膜厚等の各種要素を考慮して、用いる溶媒の種類やそれらの比率、膜構成成分濃度等を変更することで適宜調整される。
【0116】
本発明のある態様においては、均一性の高い組成物を再現性よく得る観点、保存安定性の高い組成物を再現性よく得る観点、均一性の高い膜を与える組成物を再現性よく得る観点等から、剥離剤組成物は、グリコール系溶媒を含む。なお、ここでいう「グリコール系溶媒」とは、グリコール類、グリコールモノエーテル類、グリコールジエーテル類、グリコールモノエステル類、グリコールジエステル類及びグリコールエステルエーテル類の総称である。
【0117】
好ましいグリコール系溶媒の一例は、式(G)で表される。
【0118】
【0119】
式(G)中、RG1は、それぞれ独立して、炭素数2~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を表し、RG2及びRG3は、それぞれ独立し、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~8のアルキル基、又はアルキル部が炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であるアルキルアシル基を表し、ngは、1~6の整数である。
【0120】
炭素数2~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、1-メチルエチレン基、テトラメチレン基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、均一性の高い組成物を再現性よく得る観点、保存安定性の高い組成物を再現性よく得る観点、均一性の高い膜を与える組成物を再現性よく得る観点等から、炭素数2~3の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数3の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基がより好ましい。
【0121】
直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~8のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、ターシャリーブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、均一性の高い組成物を再現性よく得る観点、保存安定性の高い組成物を再現性よく得る観点、均一性の高い膜を与える組成物を再現性よく得る観点等から、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0122】
アルキル部が炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であるアルキルアシル基における炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であるの具体例としては、上述の具体例と同じものが挙げられる。
中でも、均一性の高い組成物を再現性よく得る観点、保存安定性の高い組成物を再現性よく得る観点、均一性の高い膜を与える組成物を再現性よく得る観点等から、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基が好ましく、メチルカルボニル基がより好ましい。
【0123】
ngは、均一性の高い組成物を再現性よく得る観点、保存安定性の高い組成物を再現性よく得る観点、均一性の高い膜を与える組成物を再現性よく得る観点等から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、より一層好ましくは2以下であり、最も好ましくは1である。
【0124】
均一性の高い組成物を再現性よく得る観点、保存安定性の高い組成物を再現性よく得る観点、均一性の高い膜を与える組成物を再現性よく得る観点等から、式(G)において、好ましくは、RG2及びRG3の少なくともいずれか一方は、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~8のアルキル基であり、より好ましくは、RG2及びRG3の一方は、直鎖状若しくは分岐鎖状の炭素数1~8のアルキル基であり、他方は、水素原子又はアルキル部が炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であるアルキルアシル基である。
【0125】
均一性の高い組成物を再現性よく得る観点、保存安定性の高い組成物を再現性よく得る観点、均一性の高い膜を与える組成物を再現性よく得る観点等から、グリコール系溶媒の含有量は、剥離剤組成物に含まれる溶媒に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より一層好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に一層好ましくは95質量%以上である。
均一性の高い組成物を再現性よく得る観点、保存安定性の高い組成物を再現性よく得る観点、均一性の高い膜を与える組成物を再現性よく得る観点等から、剥離剤組成物においては、膜構成成分は、溶媒に均一に分散又は溶解しており、好ましくは溶解している。
【0126】
<積層体>
本発明に係る積層体は、半導体基板又は電子デバイス層と、支持基板と、剥離剤層とを有する。
本発明に係る積層体は、さらに接着剤層を有し、半導体基板又は電子デバイス層と、支持基板と、剥離剤層と、接着剤層とを有する構成であることが好ましい。また、剥離剤層は、光照射剥離用の剥離剤層であることが好ましい。
なお、本発明に係る剥離剤層が、光照射により半導体基板又は電子デバイス層と支持基板とを剥離する剥離機能と、半導体基板又は電子デバイス層と支持基板とを接着する接着機能を併せ持つように形成されている場合には(つまり、両機能を発揮するような成分を含有する剥離剤組成物を用いて剥離剤層が形成されている場合には)、積層体は、剥離剤層と接着剤層との2層構成ではなく、接着性能を有する剥離剤層の1層構成で形成されていてもよい。
【0127】
支持基板は光透過性を有することが好ましい。
剥離剤層が、光照射剥離用の剥離剤層である場合、光照射剥離用の剥離剤層は、半導体基板又は電子デバイス層と支持基板との間に設けられている。
積層体は、支持基板側から照射された光を剥離剤層が吸収した後に半導体基板又は電子デバイス層と支持基板とが剥がされることに用いられる。
剥離剤層は、上述した本発明の剥離剤組成物から形成される層である。
【0128】
本発明の積層体は、半導体基板又は電子デバイス層を加工するため仮接着するために使用され、半導体基板又は電子デバイス層の薄化等の加工に好適に用いることができる。
半導体基板に薄化等の加工が施されている間は、半導体基板は、支持基板に支持されている。他方、半導体基板の加工後は、例えば、剥離剤層に光が照射され、その後は、支持基板と半導体基板とが離される。剥離剤組成物が含有する有機樹脂によって、当該剥離剤組成物から形成された剥離剤層において、ノボラック樹脂が光(例えば、レーザー光)を吸収して剥離剤層を変質(例えば、分離又は分解)させる。その結果、剥離剤層に光が照射された後は、半導体基板と支持基板とが剥がされやすくなる。光照射の他、層間の引きはがしにより半導体基板と支持基板とを剥がしてもよい。
また、電子デバイス層に薄化等の加工が施されている間は、電子デバイス層は、支持基板に支持されている。他方、電子デバイス層の加工後は、例えば、剥離剤層に光が照射され、その後は、支持基板と電子デバイス層とが離される。
本発明に係る剥離剤層により、半導体基板又は電子デバイス層と支持基板とが剥がされた後に半導体基板、電子デバイス層、又は支持基板に残る剥離剤層や接着剤層の残渣は、例えば、半導体基板等を洗浄するための洗浄剤組成物によって除去することができる。さらに、光照射剥離用の剥離層によれば、光が照射された後、半導体基板又は電子デバイス層と支持基板とが剥がされやすくなる。
【0129】
剥離に用いる光の波長は、例えば、250~600nmの波長であることが好ましく、250~370nmの波長であることがより好ましい。より好適な波長は、308nm、343nm、355nm、365nm、又は532nmである。剥離に必要な光の照射量は、ノボラック樹脂の好適な変質、例えば分解を引き起こせる照射量である。
剥離に用いる光は、レーザー光でもよく、紫外線ランプ等の光源から発される非レーザー光でもよい。
【0130】
積層体が、半導体基板を有している場合と、電子デバイス層を有している場合とで、それぞれ場合分けして、以下詳しく説明する。
積層体が半導体基板を有している場合を、下記<第1の実施態様>で説明し、積層体が電子デバイス層を有している場合を、下記<第2の実施態様>で説明する。
【0131】
<第1の実施態様>
半導体基板を有する積層体は、半導体基板の加工に使用される。半導体基板に加工が施されている間は、半導体基板は支持基板に接着されている。半導体基板の加工後は、例えば、剥離剤層に光を照射した後、半導体基板は支持基板から離される。
【0132】
<<半導体基板>>
半導体基板全体を構成する主な材質としては、この種の用途に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、化合物半導体などが挙げられる。
半導体基板の形状は、特に限定されないが、例えば、円盤状である。なお、円盤状の半導体基板は、その面の形状が完全な円形である必要はなく、例えば、半導体基板の外周は、オリエンテーション・フラットと呼ばれる直線部を有していてもよいし、ノッチと呼ばれる切込みを有していてもよい。
円盤状の半導体基板の厚さとしては、半導体基板の使用目的などに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、500~1,000μmである。
円盤状の半導体基板の直径としては、半導体基板の使用目的などに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、100~1,000mmである。
【0133】
半導体基板は、バンプを有していてもよい。バンプとは、突起状の端子である。
積層体において、半導体基板がバンプを有する場合、半導体基板は、支持基板側にバンプを有する。
半導体基板において、バンプは、通常、回路が形成された面上に形成されている。回路は、単層であってもよし、多層であってもよい。回路の形状としては特に制限されない。
半導体基板において、バンプを有する面と反対側の面(裏面)は、加工に供される面である。
半導体基板が有するバンプの材質、大きさ、形状、構造、密度としては、特に限定されない。
バンプとしては、例えば、ボールバンプ、印刷バンプ、スタッドバンプ、めっきバンプなどが挙げられる。
通常、バンプ高さ1~200μm程度、バンプ半径1~200μm、バンプピッチ1~500μmという条件からバンプの高さ、半径及びピッチは適宜決定される。
バンプの材質としては、例えば、低融点はんだ、高融点はんだ、スズ、インジウム、金、銀、銅などが挙げられる。バンプは、単一の成分のみで構成されていてもよいし、複数の成分から構成されていてもよい。より具体的には、SnAgバンプ、SnBiバンプ、Snバンプ、AuSnバンプ等のSnを主体とした合金めっき等が挙げられる。
また、バンプは、これらの成分の少なくともいずれかからなる金属層を含む積層構造を有してもよい。
【0134】
半導体基板の一例は、直径300mm、厚さ770μm程度のシリコンウエハーである。
【0135】
<<支持基板>>
支持基板としては、剥離剤層に照射される光に対して光透過性があり、半導体基板が加工される際に、半導体基板を支持できる部材が好ましい。支持基板として、特に限定されないが、例えば、ガラス製支持基板などが挙げられる。
【0136】
支持基板の形状としては、特に限定されないが、例えば、円盤状が挙げられる。
円盤状の支持基板の厚さとしては、半導体基板の大きさなどに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、500~1,000μmである。
円盤状の支持基板の直径としては、半導体基板の大きさなどに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、100~1,000mmである。
【0137】
支持基板の一例は、直径300mm、厚さ700μm程度のガラスウエハーである。
【0138】
<<剥離剤層>>
剥離剤層は、剥離剤組成物から形成される層である。
剥離剤層は、半導体基板と支持基板との間に設けられる。
剥離剤層は、支持基板と接していてもよく半導体基板と接していてもよい。
【0139】
本発明の剥離剤組成物は、半導体基板と、支持基板と、半導体基板と支持基板との間に設けられた剥離剤層とを有する積層体の剥離剤層を形成するために好適に用いることができる。積層体は、半導体基板と支持基板とが剥がされることに用いられる。
本発明の剥離剤組成物から得られる剥離剤層により、光照射後、半導体基板と支持基板とを容易に剥離することができる。
【0140】
剥離剤組成物から剥離剤層を形成する際に、ノボラック樹脂は、シロキサン骨格含有エポキシ樹脂と反応していると考えられる。
【0141】
剥離剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常0.01~10μmであり、膜強度を保つ観点から、好ましくは0.03μm以上、より好ましくは0.05μm以上、より一層好ましくは0.1μm以上であり、厚膜に起因する不均一性を回避する観点から、好ましくは8μm以下、より好ましくは5μm以下、より一層好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。
剥離剤組成物から剥離剤層を形成する方法については、以下で記載する<<第1の実施態様における積層体の一例の製造方法>>の説明箇所で詳しく述べる。
【0142】
<<接着剤層>>
接着剤層は、支持基板と半導体基板との間に設けられる。
接着剤層は、例えば、半導体基板と接している。接着剤層は、例えば、支持基板と接していてもよい。
接着剤層としては、特に限定されないが、接着剤組成物から形成される層であることが好ましい。
【0143】
<<接着剤組成物>>
接着剤組成物としては、例えば、ポリシロキサン系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリスチレン系接着剤、ポリイミド接着剤、フェノール樹脂系接着剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、半導体基板等の加工時は好適な接着能を示し、加工の後は好適に剥離可能であり、更に耐熱性にも優れるとともに、洗浄剤組成物によって好適に除去できるため、接着剤組成物としては、ポリシロキサン系接着剤が好ましい。
【0144】
好ましい態様においては、接着剤組成物は、ポリオルガノシロキサンを含有する。
また、他の好ましい態様においては、接着剤組成物は、ヒドロシリル化反応によって硬化する成分を含む。
【0145】
例えば、本発明で用いる接着剤組成物は、接着剤成分となる硬化する成分(A)を含有する。本発明で用いる接着剤組成物は、接着剤成分となる硬化する成分(A)と、硬化反応を起こさない成分(B)とを含有してもよい。ここで、硬化反応を起こさない成分(B)としては、例えば、ポリオルガノシロキサンが挙げられる。なお、本発明において「硬化反応を起こさない」とは、あらゆる硬化反応を起こさないことを意味するのではなく、硬化する成分(A)に生じる硬化反応を起こさないことを意味する。
好ましい態様においては、成分(A)は、ヒドロシリル化反応によって硬化する成分であってもよいし、ヒドロシリル化反応によって硬化するポリオルガノシロキサン成分(A’)であってもよい。
他の好ましい態様においては、成分(A)は、例えば、成分(A’)の一例としての、ケイ素原子に結合した炭素原子数2~40のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(a1)と、Si-H基を有するポリオルガノシロキサン(a2)と、白金族金属系触媒(A2)と、を含有する。ここで、炭素原子数2~40のアルケニル基は置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0146】
他の好ましい態様においては、ヒドロシリル化反応によって硬化するポリオルガノシロキサン成分(A’)は、SiO2で表されるシロキサン単位(Q単位)、R1R2R3SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、R4R5SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びR6SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、ポリシロキサン(A1)は、SiO2で表されるシロキサン単位(Q’単位)、R1’R2’R3’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R4’R5’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR6’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1’)と、SiO2で表されるシロキサン単位(Q”単位)、R1”R2”R3”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R4”R5”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR6”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a2’)とを含む。
なお、(a1’)は、(a1)の一例であり、(a2’)は、(a2)の一例である。
【0147】
R1~R6は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は水素原子を表す。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0148】
R1’~R6’は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアルケニル基を表すが、R1’~R6’の少なくとも1つは、置換されていてもよいアルケニル基である。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0149】
R1”~R6”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基又は水素原子を表すが、R1”~R6”の少なくとも1つは、水素原子である。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0150】
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、その炭素原子数は、特に限定されるものではないが、通常1~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
【0151】
置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、ターシャリーブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素原子数は、通常1~14であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~6である。中でもメチル基が特に好ましい。
【0152】
置換されていてもよい環状アルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等のシクロアルキル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等のビシクロアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素原子数は、通常3~14であり、好ましくは4~10、より好ましくは5~6である。
【0153】
アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、その炭素原子数は、特に限定されるものではないが、通常2~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
【0154】
置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素原子数は、通常2~14であり、好ましくは2~10、より好ましくは1~6である。中でも、エテニル基、2-プロペニル基が特に好ましい。
置換されていてもよい環状アルケニル基の具体例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素原子数は、通常4~14であり、好ましくは5~10、より好ましくは5~6である。
【0155】
上述の通り、ポリシロキサン(A1)は、ポリオルガノシロキサン(a1’)とポリオルガノシロキサン(a2’)を含むが、ポリオルガノシロキサン(a1’)に含まれるアルケニル基と、ポリオルガノシロキサン(a2’)に含まれる水素原子(Si-H基)とが白金族金属系触媒(A2)によるヒドロシリル化反応によって架橋構造を形成し硬化する。その結果、硬化膜が形成される。
【0156】
ポリオルガノシロキサン(a1’)は、Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a1’)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0157】
Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(Q’単位とM’単位)、(D’単位とM’単位)、(T’単位とM’単位)、(Q’単位とT’単位とM’単位)、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
また、ポリオルガノシロキサン(a1’)に包含されるポリオルガノシロキサンが2種以上含まれる場合、(Q’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(T’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(Q’単位とT’単位とM’単位)と(T’単位とM’単位)との組み合わせが好ましいが、これらに限定されない。
【0159】
ポリオルガノシロキサン(a2’)は、Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a2’)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0160】
Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(M”単位とD”単位)、(Q”単位とM”単位)、(Q”単位とT”単位とM”単位)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
ポリオルガノシロキサン(a1’)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又はアルケニル基が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R1’~R6’で表される全置換基中におけるアルケニル基の割合は、好ましくは0.1~50.0モル%、より好ましくは0.5~30.0モル%であり、残りのR1’~R6’はアルキル基とすることができる。
【0162】
ポリオルガノシロキサン(a2’)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又は水素原子が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R1”~R6”で表される全ての置換基及び置換原子中における水素原子の割合は、好ましくは0.1~50.0モル%、より好ましくは10.0~40.0モル%であり、残りのR1”~R6”はアルキル基とすることができる。
【0163】
成分(A)が(a1)と(a2)とを含む場合、本発明の好ましい態様においては、ポリオルガノシロキサン(a1)に含まれるアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)に含まれるSi-H結合を構成する水素原子とのモル比は、1.0:0.5~1.0:0.66の範囲である。
【0164】
ポリオルガノシロキサン(a1)、ポリオルガノシロキサン(a2)等のポリシロキサンの重量平均分子量は、特に限定されないが、それぞれ、通常500~1,000,000であり、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは5,000~50,000である。
なお、本発明において、ポリオルガノシロキサン(上記オルガノシロキサンポリマーを除く)の重量平均分子量及び数平均分子量並びに分散度は、例えば、GPC装置(東ソー(株)製EcoSEC,HLC-8320GPC)及びGPCカラム(東ソー(株)TSKgel SuperMultiporeHZ-N, TSKgel SuperMultiporeHZ-H)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を0.35mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(昭和電工(株)製、Shodex)を用いて、測定することができる。
【0165】
ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の粘度は、特に限定されないが、それぞれ、通常10~1000000(mPa・s)であり、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは50~10000(mPa・s)である。なお、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の粘度は、25℃においてE型回転粘度計で測定した値である。
【0166】
ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)は、ヒドロシリル化反応によって、互いに反応して膜となる。従って、その硬化のメカニズムは、例えばシラノール基を介したそれとは異なり、それ故、いずれのシロキサンも、シラノール基や、アルキルオキシ基のような加水分解によってシラノール基を形成する官能基を含む必要は無い。
【0167】
本発明の好ましい態様においては、接着剤組成物は、ポリオルガノシロキサン成分(A’)とともに、白金族金属系触媒(A2)を含む。
このような白金系の金属触媒は、ポリオルガノシロキサン(a1)のアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)のSi-H基とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。
【0168】
白金系の金属触媒の具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
白金とオレフィン類との錯体としては、例えばジビニルテトラメチルジシロキサンと白金との錯体が挙げられるが、これに限定されない。
白金族金属系触媒(A2)の量は、特に限定されないが、通常、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して、1.0~50.0ppmの範囲である。
【0169】
ポリオルガノシロキサン成分(A’)は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制する目的で、重合抑制剤(A3)を含んでもよい。
重合抑制剤は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制できる限り特に限定されるものではなく、その具体例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1,1-ジフェニル-2-プロピオン-1-オール等のアルキニルアルコール等が挙げられる。
重合抑制剤の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して、通常、その効果を得る観点から1000.0ppm以上であり、ヒドロシリル化反応の過度な抑制を防止する観点から10000.0ppm以下である。
【0170】
本発明で用いる接着剤組成物の一例は、硬化する成分(A)とともに剥離剤成分となる硬化反応を起こさない成分(B)を含んでもよい。このような成分(B)を接着剤組成物に含めることで、得られる接着剤層を再現性よく好適に剥離することができるようになる。
このような成分(B)として、典型的には、非硬化性のポリオルガノシロキサンが挙げられ、その具体例としては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、メチル基含有ポリオルガノシロキサン、フェニル基含有ポリオルガノシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、成分(B)としては、ポリジメチルシロキサンが挙げられる。当該ポリジメチルシロキサンは変性されていてもよい。変性されていてもよいポリジメチルシロキサンとしては、例えば、エポキシ基含有ポリジメチルシロキサン、無変性のポリジメチルシロキサン、フェニル基含有ポリジメチルシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
成分(B)であるポリオルガノシロキサンの好ましい例としては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、メチル基含有ポリオルガノシロキサン、フェニル基含有ポリオルガノシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
成分(B)であるポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、特に限定されないものの、通常100,000~2,000,000であり、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは200,000~1,200,000、より好ましくは300,000~900,000である。また、その分散度は、特に限定されないものの、通常1.0~10.0であり、好適な剥離を再現性よく実現する観点等から、好ましくは1.5~5.0、より好ましくは2.0~3.0である。なお、重量平均分子量及び分散度は、ポリオルガノシロキサンに関する上述の方法で測定することができる。
成分(B)であるポリオルガノシロキサンの粘度は、特に限定されないが、通常1,000~2,000,000mm2/sである。なお、成分(B)であるポリオルガノシロキサンの粘度の値は、動粘度で示され、センチストークス(cSt)=mm2/sである。粘度(mPa・s)を密度(g/cm3)で割って求めることもできる。すなわち、その値は、25℃で測定したE型回転粘度計で測定した粘度と密度から求めることができ、動粘度(mm2/s)=粘度(mPa・s)/密度(g/cm3)という式から算出することができる。
【0173】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R11R12SiO2/2で表されるシロキサン単位(D10単位)を含むものが挙げられる。
【0174】
R11は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、R12は、ケイ素原子に結合する基であり、エポキシ基又はエポキシ基を含む有機基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
エポキシ基を含む有機基におけるエポキシ基は、その他の環と縮合せずに、独立したエポキシ基であってもよく、1,2-エポキシシクロヘキシル基のように、その他の環と縮合環を形成しているエポキシ基であってもよい。
エポキシ基を含む有機基の具体例としては、3-グリシドキシプロピル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、エポキシ基含有ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0175】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D10単位)を含むものであるが、D10単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
本発明の好ましい態様においては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D10単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0176】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、エポキシ価が0.1~5であるエポキシ基含有ポリジメチルシロキサンが好ましい。また、その重量平均分子量は、特に限定されないものの、通常1,500~500,000であり、組成物中での析出抑制の観点から、好ましくは100,000以下である。
【0177】
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(E1)~(E3)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
【化40】
(m
1及びn
1は、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
【0179】
【化41】
(m
2及びn
2は、各繰り返し単位の数を示し、正の整数であり、Rは、炭素原子数1~10のアルキレン基である。)
【0180】
【化42】
(m
3、n
3及びo
3は、各繰り返し単位の数を示し、正の整数であり、Rは、炭素原子数1~10のアルキレン基である。)
【0181】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R210R220SiO2/2で表されるシロキサン単位(D200単位)を含むもの、好ましくはR21R21SiO2/2で表されるシロキサン単位(D20単位)を含むものが挙げられる。
【0182】
R210及びR220は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、アルキル基を表すが、少なくとも一方はメチル基であり、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
R21は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。中でも、R21としては、メチル基が好ましい。
本発明において、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
【0183】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D200単位又はD20単位)を含むものであるが、D200単位及びD20単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
【0184】
本発明のある態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D200単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0185】
本発明の好ましい態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D20単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0186】
メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(M1)で表されるものが挙げられるが、これに限定されない。
【0187】
【化43】
(n
4は、繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
【0188】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R31R32SiO2/2で表されるシロキサン単位(D30単位)を含むものが挙げられる。
【0189】
R31は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基又はアルキル基を表し、R32は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができるが、メチル基が好ましい。
【0190】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D30単位)を含むものであるが、D30単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
【0191】
本発明の好ましい態様においては、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D30単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【0192】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(P1)又は(P2)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0193】
【化44】
(m
5及びn
5は、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
【0194】
【化45】
(m
6及びn
6は、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
【0195】
剥離剤成分(B)であるポリオルガノシロキサンは、市販品であってもよいし、合成したものであってもよい。
ポリオルガノシロキサンの市販品としては、例えば、ワッカーケミ社製の製品であるWACKERSILICONE FLUID AK シリーズ(AK50、AK 350、AK 1000、AK 10000、AK 1000000)やGENIOPLAST GUM、信越化学工業(株)製 ジメチルシリコーンオイル(KF-96L、KF-96A、KF-96、KF-96H、KF-69、KF-965、KF-968)、環状ジメチルシリコーンオイル(KF-995);ゲレスト社製 エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(商品名CMS-227、ECMS-327)、信越化学工業(株)製 エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(KF-101、KF-1001、KF-1005、X-22-343)、ダウコーニング社製 エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(BY16-839);ゲレスト社製 フェニル基含有ポリオルガノシロキサン(PMM-1043、PMM-1025、PDM-0421、PDM-0821)、信越化学工業(株)製 フェニル基含有ポリオルガノシロキサン(KF50-3000CS)、MOMENTIVE社製 フェニル基含有ポリオルガノシロキサン(TSF431、TSF433)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0196】
ある態様においては、本発明で用いる接着剤組成物は、硬化する成分(A)とともに、硬化反応を起こさない成分(B)を含み、別の態様においては、成分(B)として、ポリオルガノシロキサンが含まれる。
【0197】
本発明で用いる接着剤組成物の一例は、成分(A)と成分(B)とを、任意の比率で含むことができるが、接着性と剥離性のバランスを考慮すると、成分(A)と成分(B)との比率は、質量比〔(A):(B)〕で、好ましくは99.995:0.005~30:70、より好ましくは99.9:0.1~75:25である。
すなわち、ヒドロシリル化反応によって硬化するポリオルガノシロキサン成分(A’)が含まれる場合、成分(A’)と成分(B)との比率は、質量比〔(A’):(B)〕で、好ましくは99.995:0.005~30:70、より好ましくは99.9:0.1~75:25である。
【0198】
本発明で用いる接着剤組成物の粘度は、特に限定されないが、25℃で、通常500~20,000mPa・sであり、好ましくは1,000~1,0000mPa・sである。
【0199】
本発明で用いる接着剤組成物の一例は、成分(A)と、用いる場合には成分(B)及び溶媒とを混合することによって製造できる。
その混合順序は特に限定されるものではないが、容易にかつ再現性よく接着剤組成物を製造できる方法の一例としては、例えば、成分(A)と成分(B)を溶媒に溶解させる方法や、成分(A)と成分(B)の一部を溶媒に溶解させ、残りを溶媒に溶解させ、得られた溶液を混合する方法が挙げられるが、これらに限定されない。なお、接着剤組成物を調製する際、成分が分解したり変質したりしない範囲で、適宜加熱してもよい。
本発明においては、異物を除去する目的で、接着剤組成物を製造する途中で又は全ての成分を混合した後に、用いる溶媒や溶液等をフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0200】
本発明の積層体が備える接着剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常5~500μmであり、膜強度を保つ観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、より一層好ましくは30μm以上であり、厚膜に起因する不均一性を回避する観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、より一層好ましくは120μm以下、更に好ましくは70μm以下である。
【0201】
接着剤組成物から接着剤層を形成する方法については、以下で記載する<<第1の実施態様における積層体の一例の製造方法>>の説明箇所で詳しく述べる。
【0202】
以下、第1の実施態様の積層体の構成の一例を、図を用いて説明する。
図1の積層体は、半導体基板1と、接着剤層2と、剥離剤層3と、支持基板4とをこの順で有する。
接着剤層2及び剥離剤層3は、半導体基板1と支持基板4との間に設けられている。接着剤層2は、半導体基板1に接する。剥離剤層3は、接着剤層2と支持基板4に接する。
【0203】
<<第1の実施態様における積層体の一例の製造方法>>
第1の実施態様における積層体のうち
図1で示される積層体を例に、以下積層体の製造方法について説明する。
本発明の積層体の一例は、例えば、以下の第1工程~第3工程を含む方法で製造することができる。
第1工程:半導体基板上に接着剤組成物を塗布し接着剤塗布層を形成する工程
第2工程:支持基板上に剥離剤組成物を塗布し剥離剤層を形成する工程
第3工程:接着剤塗布層と剥離剤層が接した状態で、接着剤塗布層が加熱され、接着剤層が形成される工程
【0204】
接着剤組成物の塗布方法は、特に限定されるものではないが、通常、スピンコート法である。なお、別途スピンコート法等で塗布膜を形成し、シート状の塗布膜を形成し、シート状の塗布膜を、接着剤塗布層として貼付する方法を採用し得る。
塗布した接着剤組成物の加熱温度は、接着剤組成物が含む接着剤成分の種類や量、溶媒が含まれるか否か、用いる溶媒の沸点、所望の接着剤層の厚さ等に応じて異なるため一概に規定できないが、通常80~150℃、その加熱時間は、通常30秒~5分である。
接着剤組成物が溶媒を含む場合、通常、塗布した接着剤組成物を加熱する。
接着剤組成物を塗布し、必要があればそれを加熱して得られる接着剤塗布層の膜厚は、通常5~500μm程度であり、最終的に、上述の接着剤層の厚さの範囲となるように適宜定められる。
【0205】
剥離剤組成物の塗布方法は、特に限定されるものではないが、通常、スピンコート法である。
塗布した剥離剤組成物の加熱温度は、剥離剤組成物が含む剥離剤成分の種類や量、所望の剥離剤層の厚さ等に応じて異なるため一概に規定できないが、好適な剥離剤層を再現性よく実現する観点から、80℃以上300℃以下であり、その加熱時間は、加熱温度に応じて、通常10秒~10分の範囲で適宜決定される。加熱温度は好ましくは100℃以上280℃以下であり、より好ましくは150℃以上250℃以下である。加熱時間は好ましくは30秒以上8分以下、より好ましくは1分以上5分以下である。
加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
剥離剤組成物を塗布し、必要があればそれを加熱して得られる剥離剤の膜厚は、通常5nm~100μm程度である。
【0206】
本発明においては、このような塗布層を互いに接するように合わせ、加熱処理若しくは減圧処理又はこれら両方を実施しながら、半導体基板及び支持基板の厚さ方向の荷重をかけて2つの層を密着させ、その後、後加熱処理を実施することによって、本発明の積層体を得ることができる。なお、加熱処理、減圧処理、両者の併用のいずれの処理条件を採用するかは、接着剤組成物の種類、剥離剤組成物の具体的組成、両組成物から得られる膜の相性、膜厚、求める接着強度等の各種事情を勘案した上で適宜決定される。
【0207】
加熱処理は、組成物から溶媒を除去する観点、接着剤塗布層を軟化させて剥離剤層との好適に貼り合せを実現する観点等から、通常20~150℃の範囲から適宜決定される。特に、接着剤成分(A)の過度の硬化や不要な変質を抑制又は回避する観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは90℃以下であり、その加熱時間は、加熱温度や接着剤の種類に応じて適宜決定されるものではあるが、好適な接着を確実に発現させる観点から、通常30秒以上であり、好ましくは1分以上であるが、接着剤層やその他の部材の変質を抑制する観点から、通常10分以下、好ましくは5分以下である。
【0208】
減圧処理は、互いに接する接着剤塗布層及び剥離剤層を10~10,000Paの気圧下にさらせばよい。減圧処理の時間は、通常1~30分である。
【0209】
基板が良好に分離可能な積層体を再現性よく得る観点から、互いに接する2つの層は、好ましくは減圧処理によって、より好ましくは加熱処理と減圧処理の併用によって、貼り合せられる。
【0210】
半導体基板及び支持基板の厚さ方向の荷重は、半導体基板及び支持基板とそれらの間の2つの層に悪影響を及ぼさず、かつこれらをしっかりと密着させることができる荷重である限り特に限定されないが、通常10~1000Nの範囲内である。
【0211】
後加熱の温度は、十分な硬化速度を実現する観点等から、好ましくは120℃以上であり、基板や各層の変質を防ぐ観点等から、好ましくは260℃以下である。
後加熱の時間は、積層体を構成する基板及び層の好適な接合を実現する観点から、通常1分以上、好ましくは5分以上であり、過度の加熱による各層への悪影響等を抑制又は回避する観点から、通常180分以下、好ましくは120分以下である。
加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。ホットプレートを用いて後加熱をする場合、積層体の半導体基板と支持基板のいずれを下にして加熱してもよいが、好適な剥離を再現性よく実現する観点から、半導体基板を下にして後加熱することが好ましい。
なお、後加熱処理の一つの目的は、より好適な自立膜である接着剤層と剥離剤層を実現することであり、特にヒドロシリル化反応による硬化を好適に実現することである。
【0212】
以下、
図1の積層体を製造する方法の一例を、
図2A~
図2Cを用いて、説明する。
図2A~
図2Cは、積層体の製造を行う一態様を説明するための図である。
まず、半導体基板1上に接着剤塗布層2aが形成された積層体を用意する(
図2A)。この積層体は、例えば、半導体基板1上に接着剤組成物を塗布し、加熱することで得ることができる。
また、別途、支持基板4上に剥離剤層3が形成された積層体を用意する(
図2B)。この積層体は、例えば、支持基板4上に剥離剤組成物を塗布し、加熱することで得ることができる。
次に、
図2Aに示す積層体と
図2Bに示す積層体とを、接着剤塗布層2aと剥離剤層3が接するように貼り合せる。そして、減圧下で半導体基板1と支持基板4との厚さ方向に荷重を掛けた後、半導体基板1の接着剤塗布層2aが接する面と反対側の面に、加熱装置(不図示;ホットプレート)を配し、加熱装置によって接着剤塗布層2aを加熱して硬化させ接着剤層2に転化する(
図2C)。
図2A~
図2Cで示した工程によって、積層体が得られる。
【0213】
尚、
図1では、積層体が、半導体基板1、接着剤層2、剥離剤層3、支持基板4の順で積層されているため、上記製造方法を例に挙げたが、例えば、半導体基板1、剥離剤層3、接着剤層2、支持基板4の順で積層されている積層体を製造する場合には、半導体基板の表面に剥離剤組成物を塗布し、必要があればそれを加熱して剥離剤層を形成する第1工程と、支持基板の表面に剥離剤組成物を塗布し、必要があればそれを加熱して接着剤塗布層を形成する第2工程と、半導体基板の剥離剤層と、支持基板の接着剤塗布層とを、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、半導体基板及び支持基板の厚さ方向の荷重をかけて密着させ、その後、後加熱処理を実施することによって、積層体とする第3工程と、を含む方法で、製造することができる。
なお、本発明の効果が損なわれない限り、いずれか一方の基板に、各組成物の塗布及び加熱をそれぞれ順次行ってもよい。
【0214】
<第2の実施態様>
電子デバイス層を有する積層体は、電子デバイス層の加工に使用される。電子デバイス層に加工が施されている間は、電子デバイス層は支持基板に接着されている。電子デバイス層の加工後は、剥離剤層に例えば光を照射した後、電子デバイス層は支持基板から離される。
【0215】
<<電子デバイス層>>
電子デバイス層とは、電子デバイスを有する層をいい、本発明においては、封止樹脂に複数の半導体チップ基板が埋め込まれた層、つまり複数の半導体チップ基板と該半導体チップ基板間に配された封止樹脂とからなる層をいう。
ここで、「電子デバイス」とは、電子部品の少なくとも一部を構成する部材を意味する。電子デバイスは、特に制限されず、半導体基板の表面に、各種機械構造や回路が形成されたものであることができる。電子デバイスは、好ましくは、金属又は半導体により構成される部材と、該部材を封止又は絶縁する樹脂と、の複合体である。電子デバイスは、後述する再配線層、及び/又は半導体素子若しくはその他素子が、封止材又は絶縁材で封止又は絶縁されたものであってもよく、単層又は複数層の構造を有してなる。
【0216】
<<支持基板>>
支持基板としては、上記<第1の実施態様>の上記<<支持基板>>の欄で説明したものと同様のものが例示される。
【0217】
<<剥離剤層>>
剥離剤層は、上述した本発明の剥離剤組成物を用いて形成される。
剥離剤層の詳しい説明は、上記<第1の実施態様>の上記<<剥離剤層>>の欄で説明したとおりである。
【0218】
<<接着剤層>>
接着剤層は、上述した接着剤組成物を用いて形成される。
接着剤層の詳しい説明は、上記<第1の実施態様>の上記<<接着剤層>>の欄で説明したとおりである。
【0219】
以下、第2の実施態様の積層体の構成の一例を、図を用いて説明する。
図3は、第2の実施態様の積層体の一例の概略断面図を示す。
図3の積層体は、支持基板24と、剥離剤層23と、接着剤層22と、電子デバイス層26とをこの順で有する。
電子デバイス層26は、複数の半導体チップ基板21と、該半導体チップ基板21間に配された封止材である封止樹脂25とを有してなる。
接着剤層22及び剥離剤層23は、電子デバイス層26と支持基板24との間に設けられている。接着剤層22は、電子デバイス層26に接する。剥離剤層23は、接着剤層22と支持基板24に接する。
また、第2の実施態様の積層体の構成の他の一例を、
図4に示す。
本発明に係る剥離剤層が、剥離機能と接着機能を併せ持つ接着性能を有する剥離剤層である場合には、積層体は、剥離剤層と接着剤層との2層構成ではなく、接着性能を有する剥離剤層の1層構成で形成されていてもよい。
図4は積層体の他の一例の概略断面図を示す。
図4の積層体は、支持基板24と、接着性能を有する剥離剤層27と、電子デバイス層26とをこの順で有する。
接着性能を有する剥離剤層27は、支持基板24と電子デバイス層26との間に設けられている。接着性能を有する剥離剤層27は、剥離剤を形成する剥離剤組成物の構成成分と接着剤層を形成する接着剤組成物の構成成分とを混合することにより作製することができる。
【0220】
<<第2の実施態様における積層体の一例の製造方法>>
第2の実施態様における積層体のうち
図3で示される積層体を例に、以下積層体の製造方法について説明する。
本発明の積層体は、例えば、以下の第1の工程~第5の工程を含む方法で製造することができる。
第1の工程:上記支持基板の表面に剥離剤組成物を塗布し剥離剤塗布層を形成する(必要に応じ、さらに加熱して剥離剤層を形成する)工程
第2の工程:上記剥離剤塗布層又は剥離剤層の表面に接着剤組成物を塗布し接着剤塗布層を形成する(必要に応じ、さらに加熱して接着剤層を形成する)工程
第3の工程:半導体チップ基板を接着剤塗布層又は接着剤層上に載置して、加熱処理及び減圧処理の少なくともいずれかを実施しながら、半導体チップ基板を接着剤塗布層又は接着剤層に貼り合わせる工程
第4の工程:接着剤塗布層を後加熱処理することにより硬化させ接着剤層を形成する工程
第5の工程:接着剤層上に固定された半導体チップ基板に対して封止樹脂を用いて封止する工程
第3の工程についてより詳しく説明すると、例えば、下記(i)の実施態様の工程が挙げられる。
(i)接着剤塗布層又は接着剤層上に半導体チップ基板を載置して、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、半導体チップ基板及び支持基板の厚さ方向の荷重をかけて密着させ、半導体チップ基板を接着剤塗布層又は接着剤層に貼り合わせる。
【0221】
尚、第4の工程は、第3の工程の半導体チップ基板を接着剤塗布層に貼り合わせた後に行ってもよいし、あるいは、第3の工程と併せて行うようにしてもよい。例えば、半導体チップ基板を接着剤塗布層上に載置して、半導体チップ基板及び支持基板の厚さ方向の荷重をかけながら、接着剤塗布層を加熱し硬化させることで、半導体チップ基板と接着剤塗布層との密着及び接着剤塗布層から接着剤層への硬化を一緒に行い、接着剤層と半導体チップ基板とを貼り合わせるようにしてもよい。
また、第4の工程は、第3の工程の前に行ってもよく、接着剤層上に半導体チップ基板を載置して、半導体チップ基板及び支持基板の厚さ方向の荷重をかけながら、接着剤層と半導体チップ基板とを貼り合わせてもよい。
【0222】
塗布方法、塗布した剥離剤組成物や接着剤組成物の加熱温度、加熱手段等は、上記<第1の実施態様>の上記<<第1の実施態様における積層体の一例の製造方法>>に記載したとおりである。
【0223】
第2の実施態様の積層体の製造方法について、以下、図を用いてその手順をさらに詳しく説明する。この製造方法では、
図3に示す積層体が製造される。
図5Aで示すように、支持基板24上に、剥離剤組成物からなる剥離剤塗布層23’を形成する。その際、剥離剤塗布層23’を加熱し、剥離剤層23を形成してもよい。
次に、
図5Bで示すように、剥離剤塗布層23’又は剥離剤層23上に、接着剤組成物からなる接着剤塗布層22’を形成する。その際、接着剤塗布層22’を加熱し、接着剤層22を形成してもよい。
次に、
図5Cで示すように、接着剤層22又は接着剤塗布層22’上に半導体チップ基板21を載置し、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方を実施しながら、半導体チップ基板21及び支持基板24の厚さ方向の荷重をかけて密着させ、半導体チップ基板21を接着剤層22又は接着剤塗布層22’に貼り合わせる。接着剤塗布層22’に半導体チップ基板21が貼り合わされている場合には、接着剤塗布層22’を後加熱処理することにより硬化させ接着剤層22とし、半導体チップ基板21を接着剤層22に固定する。
尚、接着剤塗布層22’に対して後加熱処理する際、剥離剤塗布層23’も併せて後加熱処理することにより、剥離剤層23を形成させるようにしてもよい。
次に、
図5Dで示すように、接着剤層22上に固定された半導体チップ基板21を、封止樹脂25を用いて封止する。
図5Dでは、接着剤層22を介して、支持基板24上に仮接着された複数の半導体チップ基板21が、封止樹脂25により封止されている。接着剤層22上に、半導体チップ基板21と半導体チップ基板21間に配された封止樹脂25とを有する電子デバイス層26が形成されており、このように、電子デバイス層26は、封止樹脂に複数の半導体チップ基板が埋め込まれた基材層となっている。
【0224】
<<<封止工程>>>
封止材を用いて、半導体チップ基板21を封止する。
半導体チップ基板21を封止するための封止材としては、金属または半導体により構成される部材を絶縁または封止可能な部材が用いられる。
本発明では、封止材として、例えば、樹脂組成物(封止樹脂)が用いられる。封止樹脂の種類としては、金属または半導体を封止および/または絶縁可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、エポキシ系樹脂又はシリコーン系樹脂等を用いることが好ましい。
封止材は、樹脂成分のほか、フィラー等の他の成分を含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば、球状シリカ粒子等が挙げられる。
封止工程においては、例えば130~170℃に加熱された封止樹脂が、高粘度の状態を維持しつつ、半導体チップ基板21を覆うように、接着剤層22上に供給され、圧縮成形されることによって、接着剤層22上に封止樹脂25からなる層が形成される。その際、温度条件は、例えば130~170℃である。また、半導体チップ基板21に加えられる圧力は、例えば50~500N/cm2である。
【0225】
(加工された半導体基板又は電子デバイス層の製造方法)
本発明に係る積層体を用いると、加工された半導体基板の製造方法、あるいは加工された電子デバイス層の製造方法を提供することができる。
「加工された半導体基板の製造方法」は、上記(積層体)の上記<第1の実施態様>の欄で記載した積層体を用いる。また、「加工された電子デバイス層の製造方法」は、上記(積層体)の上記<第2の実施態様>の欄で記載した積層体を用いる。
「加工された半導体基板の製造方法」について、下記<第3の実施態様>で説明し、「加工された電子デバイス層の製造方法」について、下記<第4の実施態様>で説明する。
【0226】
<第3の実施態様>
本発明の加工された半導体基板の製造方法は、下記第5A工程と、下記第6A工程とを含む。加工された電子デバイス層の製造方法は、更に、下記第7A工程を含んでいてもよい。
ここで、第5A工程は、上記<第1の実施態様>の欄で記載の積層体における半導体基板を加工する工程である。
また、第6A工程は、第5A工程によって加工された半導体基板と、支持基板とを分離する工程である。
また、第7A工程は、第6A工程の後に、加工された半導体基板を洗浄する工程である。
【0227】
第5A工程において半導体基板に施される加工とは、例えば、ウエハーの回路面の反対側の加工であり、ウエハー裏面の研磨によるウエハーの薄化が挙げられる。その後、例えば、シリコン貫通電極(TSV)等の形成を行い、その後に支持基板から薄化ウエハーを剥離してウエハーの積層体を形成し、3次元実装化される。また、例えば、それに前後してウエハー裏面電極等の形成も行われる。ウエハーの薄化とTSVプロセスには支持基板に接着された状態で250~350℃程度の熱が負荷される。本発明の積層体は、通常、接着剤層を含め、その負荷に対する耐熱性を備えるものである。
第5A工程において半導体基板に施される加工は、半導体基板をダイシング(個片化)する工程であってもよい。
なお、加工は、上述したものに限定されず、例えば、半導体部品を実装するための基材をサポートするために支持基板と仮接着した場合の半導体部品の実装プロセスの実施等も含まれる。
【0228】
第6A工程において、半導体基板と支持基板とを分離(剥離)する方法は、剥離剤層への光照射の後に、鋭部を有する機材による機械的な剥離、支持体と半導体ウエハーとの間で引きはがす剥離等が挙げられるが、これらに限定されない。
支持基板側から剥離剤層に光を照射することによって、上述の通りに剥離剤層の変質(例えば、剥離剤層の分離又は分解)を生じさせ、その後、例えば、いずれか一方の基板を引き上げて、容易に、半導体基板と支持基板とを分離することができる。
【0229】
剥離剤層に対する光の照射は、必ずしも剥離剤層の全領域に対してなされる必要はない。光が照射された領域と照射されていない領域とが混在していても、剥離剤層全体として剥離能が十分に向上していれば、例えば支持基板を引き上げる等のわずかな外力によって半導体基板と支持基板を分離できる。光を照射する領域と照射しない領域との比率及び位置関係は、用いる接着剤の種類やその具体的な組成、接着剤層の厚さ、接着剤層の厚さ、剥離剤層の厚さ照射する光の強度等によって異なるが、当業者であれば、過度の試験を要することなく、適宜条件を設定できる。このような事情のため、本発明の加工された半導体基板の製造方法によれば、例えば、用いる積層体の支持基板が光透過性を有する場合において支持基板側からの光照射によって剥離をする際に光照射時間を短くすることが可能となり、その結果、スループットの改善が期待できるだけでなく、剥離のための物理的な応力等を回避して、光の照射のみによって半導体基板と支持基板とを容易かつ効率的に分離できる。
通常、剥離のための光の照射量は、50~3,000mJ/cm2である。照射時間は、波長及び照射量に応じて適宜決定される。
【0230】
剥離に用いる光の波長は、上述したように、例えば、250~600nmの波長であることが好ましく、250~370nmの波長であることがより好ましい。より好適な波長は、308nm、343nm、355nm、365nm、又は532nmである。剥離に必要な光の照射量は、ノボラック樹脂の好適な変質、例えば分解を引き起こせる照射量である。
剥離に用いる光は、レーザー光でもよく、紫外線ランプ等の光源から発される非レーザー光でもよい。
【0231】
分離した半導体基板及び支持基板の少なくともいずれかの表面に、洗浄剤組成物を吹き付けたり、分離した半導体基板又は支持基板を洗浄剤組成物に浸漬したりして基板を洗浄することができる。
また、除去テープ等を用いて、加工された半導体基板等の表面を洗浄してもよい。
基板の洗浄の一例として、第6A工程の後に、加工された半導体基板を洗浄する第7A工程を行ってもよい。
洗浄に用いる洗浄剤組成物は、以下のものが挙げられる。
【0232】
洗浄剤組成物は、通常、塩と、溶媒を含む。
洗浄剤組成物の好適な一例としては、第四級アンモニウム塩と、溶媒とを含む洗浄剤組成物が挙げられる。
第四級アンモニウム塩は、第四級アンモニウムカチオンと、アニオンとから構成されるものであって、この種の用途に用いられるものであれば特に限定されるものではない。
このような第四級アンモニウムカチオンとしては、典型的には、テトラ(炭化水素)アンモニウムカチオンが挙げられる。一方、それと対を成すアニオンとしては、水酸化物イオン(OH-);フッ素イオン(F-)、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲンイオン;テトラフルオロホウ酸イオン(BF4
-);ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6
-)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0233】
第四級アンモニウム塩は、好ましくは含ハロゲン第四級アンモニウム塩であり、より好ましくは含フッ素第四級アンモニウム塩である。
第四級アンモニウム塩中、ハロゲン原子は、カチオンに含まれていても、アニオンに含まれていてもよいが、好ましくはアニオンに含まれる。
【0234】
好ましい一態様においては、含フッ素第四級アンモニウム塩は、フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムである。
フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムにおける炭化水素基の具体例としては、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数2~20のアルキニル基、炭素原子数6~20のアリール基等が挙げられる。
より好ましい一態様においては、フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウムは、フッ化テトラアルキルアンモニウムを含む。
フッ化テトラアルキルアンモニウムの具体例としては、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラプロピルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム(テトラブチルアンモニウムフルオリドともいう)等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、フッ化テトラブチルアンモニウムが好ましい。
【0235】
フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウム等の第四級アンモニウム塩は、水和物を用いてもよい。また、フッ化テトラ(炭化水素)アンモニウム等の第四級アンモニウム塩は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
第四級アンモニウム塩の量は、洗浄剤組成物に含まれる溶媒に溶解する限り特に制限されるものではないが、洗浄剤組成物に対して、通常0.1~30質量%である。
【0236】
洗浄剤組成物が含む溶媒は、この種の用途に用いられ、かつ第四級アンモニウム塩等の塩を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、優れた洗浄性を有する洗浄剤組成物を再現性よく得る観点、第四級アンモニウム塩等の塩を良好に溶解させて、均一性に優れる洗浄剤組成物を得る観点等から、好ましくは、洗浄剤組成物は、1種又は2種以上のアミド系溶媒を含む。
【0237】
アミド系溶媒の好適な一例としては、式(Z)で表される酸アミド誘導体が挙げられる。
【化46】
【0238】
式中、R0は、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基を表し、エチル基、イソプロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。RA及びRBは、それぞれ独立して、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。炭素原子数1~4のアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。これらのうち、RA及びRBとしては、メチル基又はエチル基が好ましく、ともにメチル基又はエチル基がより好ましく、ともにメチル基がより一層好ましい。
【0239】
式(Z)で表される酸アミド誘導体としては、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、N-エチル-N-メチルプロピオンアミド、N,N-ジメチル酪酸アミド、N,N-ジエチル酪酸アミド、N-エチル-N-メチル酪酸アミド、N,N-ジメチルイソ酪酸アミド、N,N-ジエチルイソ酪酸アミド、N-エチル-N-メチルイソ酪酸アミド等が挙げられる。これらのうち、特に、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミドが好ましく、N,N-ジメチルプロピオンアミドがより好ましい。
【0240】
式(Z)で表される酸アミド誘導体は、対応するカルボン酸エステルとアミンの置換反応によって合成してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0241】
好ましいアミド系溶媒の他の一例としては、式(Y)で表されるラクタム化合物が挙げられる。
【化47】
【0242】
式(Y)において、R101は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、R102は炭素原子数1~6のアルキレン基を表す。炭素原子数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等が挙げられ、炭素原子数1~6のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0243】
式(Y)で表されるラクタム化合物の具体例としては、α-ラクタム化合物、β-ラクタム化合物、γ-ラクタム化合物、δ-ラクタム化合物等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0244】
好ましい一態様においては、式(Y)で表されるラクタム化合物は、1-アルキル-2-ピロリドン(N-アルキル-γ-ブチロラクタム)を含み、より好ましい一態様においては、N-メチルピロリドン(NMP)又はN-エチルピロリドン(NEP)を含み、より一層好ましい一態様においては、N-メチルピロリドン(NMP)を含む。
【0245】
洗浄剤組成物は、上述のアミド化合物とは異なる、1種又は2種以上のその他の有機溶媒を含んでもよい。
このようなその他の有機溶媒は、この種の用途に用いられるものであって、上述のアミド化合物と相溶性がある有機溶媒であれば特に限定されるものではない。
好ましいその他の溶媒としては、アルキレングリコールジアルキルエーテル、芳香族炭化水素化合物、環状構造含有エーテル化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
上述のアミド化合物とは異なるその他の有機溶媒の量は、洗浄剤組成物に含まれる第四級アンモニウム塩が析出又は分離せず、かつ上述のアミド化合物と均一に混ざり合う限りにおいて、通常、洗浄剤組成物に含まれる溶媒中95質量%以下で適宜決定される。
なお、洗浄剤組成物は、溶媒として、水を含んでもよいが、基板の腐食等を回避する観点等から、通常、有機溶媒のみが、溶媒として意図して用いられる。なお、この場合において、塩の水和水や、有機溶媒に含まれる微量含まれる水が、洗浄剤組成物に含まれてしまうことまでもが、否定される訳ではない。洗浄剤組成物の含水量は、通常5質量%以下である。
【0246】
本発明の加工された半導体基板の製造方法の上述の工程に関する構成要素及び方法的要素については、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々変更しても差し支えない。
本発明の加工された半導体基板の製造方法は、上述の工程以外の工程を含んでもよい。
【0247】
本発明の剥離方法は、本発明の積層体の半導体基板又は支持基板が光透過性を有する場合に、半導体基板側又は支持基板側から剥離剤層に光を照射することで、積層体の半導体基板と支持基板とを分離するものである。
本発明の積層体の一例においては、半導体基板と支持基板とが接着剤層及び剥離剤層によって好適に剥離可能に仮接着されているので、例えば、支持基板が光透過性を有する場合には、積層体の支持基板側から光を剥離剤層に照射することで、半導体基板と支持基板とを容易に分離できる。通常、剥離は、積層体の半導体基板に加工が行われた後に実施される。
【0248】
第3の実施態様の一例を、
図6A~
図6Dを用いて、説明する。この一例は、薄化した半導体基板の製造の一例である。
まず、積層体を用意する(
図6A)。この積層体は、
図1及び
図2Cに示す積層体と同じ積層体である。
次に、研磨装置(不図示)を用いて半導体基板1の接着剤層2が接する面と反対側の面を研磨し、半導体基板1を薄化する(
図6B)。なお、薄化された半導体基板1に対して貫通電極の形成などが施されてもよい。
次に、支持基板4側から剥離剤層3に光照射をした後に、剥離装置(不図示)を用いて、薄化した半導体基板1と支持基板4とを離す(
図6C)。
そうすると、薄化された半導体基板1が得られる(
図6D)。
ここで、薄化された半導体基板1上には、接着剤層2及び剥離剤層3の残渣が残っていることがある。そこで、洗浄剤組成物を用いて薄化した半導体基板1を洗浄し、半導体基板1上から接着剤層2及び剥離剤層3の残渣を取り除くことが好ましい。
【0249】
<第4の実施態様>
本発明の加工された電子デバイス層の製造方法は、下記第5B工程と、下記第6B工程とを含む。加工された電子デバイス層の製造方法は、更に、下記第7B工程を含んでいてもよい。
ここで、第5B工程は、上記<第2の実施態様>の欄で記載の積層体における電子デバイス層を加工する工程である。
また、第6B工程は、第5B工程によって加工された電子デバイス層と、支持基板とを分離する工程である。
また、第7B工程は、第6B工程の後に、加工された電子デバイス層を洗浄する工程である。
以下、第4の実施態様の具体例について、
図7A~
図7Fを用いつつ、説明する。
【0250】
第5B工程において電子デバイス層に施される加工とは、例えば、研削工程や配線層形成工程等が挙げられる。
【0251】
<<研削工程>>
研削工程は、電子デバイス層26における封止樹脂25の層の樹脂部分を、半導体チップ基板21の一部が露出するように研削する工程である。
封止樹脂部分の研削は、例えば
図7Bに示すように、
図7Aに示す積層体の封止樹脂25の層を、半導体チップ基板21とほぼ同等の厚さになるまで削ることにより行う。なお、
図7Aに示す積層体は、
図3及び
図5Dに示す積層体と同じ積層体である。
【0252】
<<配線層形成工程>>
配線層形成工程は、上記研削工程の後、露出した半導体チップ基板21上に配線層を形成する工程である。
図7Cでは、半導体チップ基板21及び封止樹脂25の層からなる電子デバイス層26上に、配線層28が形成されている。
配線層28は、RDL(Redistribution Layer:再配線層)とも呼ばれ、基板に接続する配線を構成する薄膜の配線体であり、単層又は複数層の構造を有し得る。配線層は、誘電体(酸化シリコン(SiO
x)、感光性エポキシ等の感光性樹脂など)の間に導電体(例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッ ケル、金及び銀等の金属並びに銀一錫合金等の合金)によって配線が形成されたものであり得るが、これに限定されない。
配線層28を形成する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、封止樹脂25の層上に、酸化シリコン(SiO
x)、感光性樹脂等の誘電体層を形成する。酸化シリコンからなる誘電体層は、例えばスパッタ法、真空蒸着法等により形成することができる。感光性樹脂からなる誘電体層は、例えばスピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法により、封止樹脂25の層上に、感光性樹脂を塗布することで形成することができる。
続いて、誘電体層に、金属等の導電体によって配線を形成する。配線を形成する方法としては、例えば、フォトリソグラフィー(レジストリソグラフィー)等のリソグラフィー処理、エッチング処理等の公知の半導体プロセス手法を用いることができる。このような、リソグラフィー処理としては、例えば、ポジ型レジスト材料を用いたリソグラフィー処理、ネガ型レジスト材料を用いたリソグラフィー処理が挙げられる。
第4の実施態様に係る積層体の製造方法においては、さらに、配線層28上にバンプの形成、又は素子の実装を行うことができる。配線層28上への素子の実装は、例えば、チップマウンター等を用いて行うことができる。
第4の実施態様に係る積層体は、半導体チップ基板に設けられた端子がチップエリア外に広がる配線層に実装される、ファンアウト型技術に基づく過程において作製される積層体であってもよい。
【0253】
第6B工程において、電子デバイス層と支持基板とを分離(剥離)する方法は、剥離剤層への光照射の後に、鋭部を有する機材による機械的な剥離、支持体と電子デバイス層との間で引きはがす剥離等が挙げられるが、これらに限定されない。
支持基板側から剥離剤層に光を照射することによって、上述の通りに剥離剤層の変質(例えば、剥離剤層の分離又は分解)を生じさせ、その後、例えば、いずれか一方の基板を引き上げて、容易に、電子デバイス層と支持基板とを分離することができる。
【0254】
図7D~
図7Eは、積層体の分離方法を説明するための概略断面図であり、
図7Fは、積層体の分離後における洗浄方法を説明するための概略断面図である。
図7D~
図7Fにより、半導体パッケージ(電子部品)の製造方法の一実施態様を説明することができる。
積層体を分離する工程は、
図7Dで示すように、支持基板24を介して剥離剤層23に光(矢印)を照射して、剥離剤層23を変質させることにより、電子デバイス層26と支持基板24とを分離する工程である。
剥離剤層23に光(矢印)を照射して剥離剤層23を変質させた後、
図7Eで示すように、電子デバイス層26から支持基板24を分離する。
接着剤層に対する光照射の照射条件や照射方法等については、上記<第3の実施態様>の欄で説明した通りである。
【0255】
分離した電子デバイス層及び支持基板の少なくともいずれかの表面に、洗浄剤組成物を吹き付けたり、分離した電子デバイス層又は支持基板を洗浄剤組成物に浸漬したりして基板を洗浄することができる。
また、除去テープ等を用いて、加工された電子デバイス層等の表面を洗浄してもよい。
例えば、
図7Eでは、分離工程の後、電子デバイス層26に接着剤層22や剥離剤層23が付着しているが、酸又はアルカリ等の洗浄剤組成物を用いて、接着剤層22や剥離剤層23を分解することにより、接着剤層22や剥離剤層23を除去することができる。剥離剤層や接着剤層を除去することにより、
図7Fで示すような加工された電子デバイス層(電子部品)を好適に得ることができる。
【0256】
本発明の加工された電子デバイス層の製造方法の上述の工程に関する構成要素及び方法的要素については、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々変更しても差し支えない。
本発明の加工された電子デバイス層の製造方法は、上述の工程以外の工程を含んでもよい。
【0257】
本発明の積層体においては、電子デバイス層と支持基板とが接着剤層によって好適に剥離可能に仮接着されているので、例えば、支持基板が光透過性を有する場合には、積層体の支持基板側から光を剥離剤層に照射することで、電子デバイス層と支持基板とを容易に分離できる。通常、剥離は、積層体の電子デバイス層に加工が行われた後に実施される。
【実施例0258】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
【0259】
[装置]
(1)攪拌機:(株)シンキー製 自転公転ミキサー ARE―500
(2)レオメータ:(株)アントンパール・ジャパン製 粘弾性測定装置 MCR302
(3)真空貼り合わせ装置:ズースマイクロテック(株)製、マニュアルボンダー
(4)高剛性研削盤:(株)東京精密製 HRG300
(5)レーザー照射装置(コヒレント(株)製 Lambda SX)
【0260】
[分子量の測定条件]
重量平均分子量は、GPC装置(東ソー(株)製EcoSEC,HLC-8220GPC)及びGPCカラム(昭和電工(株)製 Shodex KF-803L、KF-802及びKF-801をこの順序で使用)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、流量(流速)を1.00mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(シグマアルドリッチ社製)を用いて、測定した。
【0261】
[1]接着剤組成物の調製
[調製例1]
攪拌機専用600mL容器に、ポリシロキサン骨格とビニル基とを含有するMQ樹脂(ワッカーケミ社製)80g、粘度100mPa・sのSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)2.52g、粘度70mPa・sのSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)5.89g、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ワッカーケミ社製)0.22gを入れ、攪拌機で5分間撹拌した。
得られた混合物に、白金触媒(ワッカーケミ社製)0.147gと粘度1,000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)5.81gを攪拌機で5分間撹拌して別途得られた混合物のうち3.96gを加え、攪拌機で5分間撹拌した。
最後に、得られた混合物をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤組成物を得た。
【0262】
[2]洗浄剤組成物の調製
[調製例2]
テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物(関東化学(株)製)5gを、N-メチル-2-ピロリドン95gと混合してよく撹拌し、洗浄剤組成物を得た。
【0263】
[3]有機樹脂(ノボラック樹脂)の合成
[合成例1]
フラスコ内に、N-フェニル-1-ナフチルアミン56.02g、1-ピレンカルボキシアルデヒド50.00g、4-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド6.67gおよびメタンスルホン酸2.46gを入れ、そこへ1,4-ジオキサン86.36g、トルエン86.36gを加え、窒素雰囲気下で18時間還流撹拌した。
反応混合物を放冷した後、テトラヒドロフラン96gを加えて希釈し、得られた希釈液をメタノール中に滴下させることで沈殿物を得た。得られた沈殿物をろ過で回収し、ろ物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥することで、ノボラック樹脂72.12gを得た。重量平均分子量を上述の方法で測定した結果、ポリマーであるノボラック樹脂の重量平均分子量は1,100であった。
【0264】
[4]分岐鎖状ポリシラン(ポリシラン)
大阪ガスケミカル社製ポリシラン(OGSOL SI-20-10及びOGSOL SI-20-14)は式(X-1)で表される分岐鎖状ポリシランであり、重量平均分子量を上述の方法で測定した結果、OGSOL SI-20-10は重量平均分子量が1,380、OGSOL SI-20-14は重量平均分子量が4,620であった。
【化48】
(Phは、フェニル基を表し、Rは、末端置換基を表し、原子又は基を表し、nは、繰り返し単位数を示す。)
【0265】
[5]剥離剤組成物の調整
[実施例1~18、比較例1~3]
上記合成例1、架橋剤、硬化触媒、ポリシラン化合物、酸化防止剤、溶媒、を表1に示す割合で混合し、0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、剥離剤組成物を得た。
【0266】
【0267】
表1中において略された化合物の対応関係は以下の通りである。
・PGME-BIP-A : フェノール,4,4’-(1-メチルエチリデン)ビス[2,6-ビス[(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)メチル]]-
・TMOM-BP : 3,3’,5,5’-テトラキス(メトキシメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール
・PyPTS : ピリジニウム-p-トルエンスルホン酸
・PyPSA : ピリジニウム-p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸
・PGME : プロピレングリコールモノメチルエーテル
・PGMEA : プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
また、表1中の酸化防止剤を以下に示す。
【0268】
【0269】
[熱安定性試験]
実施例1~14、比較例1~2で調製した剥離剤組成物を、溶液のまま90℃で24時間加熱した。加熱前後の剥離剤組成物1mLをTHF4mLで希釈して、GPCにより分子量の測定を行った。THF及び溶媒のピークは、剥離剤組成物とは離れた既知のピーク位に出現するため、下記ではTHF及び溶媒の影響を受けることなく、溶媒以外の成分の分子量を算出できる。
加熱前後の重量平均分子量を測定し、[(加熱後の重合平均分子量)/(加熱前の重合平均分子量)]×100で分子量変化を算出した。結果を表2に示す。
【0270】
【0271】
表2に示される通り、実施例1~14にある、酸化防止剤を含む剥離剤組成物は、加熱中でも分子量変化は105%以下に留まっており、加熱中でも安定であることが示された。一方で、酸化防止剤を含まない比較例1~2においては、加熱により分子量の増加が認められる。このことから、酸化防止剤を含む剥離剤組成物に酸化防止剤を添加することで、熱安定性の高い剥離剤組成物を得られることが確認できた。
【0272】
[保存定性試験]
実施例1、7、比較例1で調製した剥離剤組成物を、35℃で1カ月保管した。保管前、2週間後、及び1カ月後の重量平均分子量を測定し、保管前後の重合平均分子量/加熱前の重合平均分子量×100で分子量変化を算出した。結果を表3に示す。
【0273】
【0274】
表3に示される通り、酸化防止剤を含む剥離剤組成物は、比較例1の剥離剤組成物に対して、35℃で2週間及び1カ月の保管後も、より分子量変化が少なく、保存安定性が高いことが確認できた。
【0275】
[積層体の製造と光照射による剥離性及び洗浄剤組成物よる洗浄性の確認]
実施例15で調製した剥離剤組成物を、キャリア側の基板として301mmのガラスウエハー(EAGLE-XG、コーニング社製、厚さ700μm)に、最終的に得られる積層体中の膜厚が200nmとなるようにスピンコートし、支持基板であるガラスウエハー上に剥離剤塗布層を形成した。
一方、調製例1で得られた接着剤組成物を、デバイス側の基板として300mmのシリコンウエハー(厚さ775μm)に、最終的に得られる積層体中の膜厚が60μmとなるようにスピンコートし、半導体基板であるシリコンウエハー上に接着剤塗布層を形成した。
そして、貼り合せ装置を用いて、ガラスウエハーとシリコンウエハーを、剥離剤塗布層及び接着剤塗布層を挟み込むように貼り合わせた後、200℃10分間の後加熱処理をすることにより積層体を作製した。なお、貼り合せは、温度23℃、減圧度1,500Paで行った
【0276】
得られた積層体のシリコンウエハーを高剛性研削盤で50μmまで薄化した後、積層体をオーブンに入れて250℃1時間の高温処理を行った。そして、放冷した積層体を、薄化したシリコンウエハー側を下にダイシングテープ(日東電工(株)製、DU-300)に貼り付け、固定した。
レーザー照射装置を用いて、波長308nmのレーザーを、固定した積層体のガラスウエハー側から剥離層に照射し、剥離が生じた最も低い照射量を最適照射量とした。そして、最適照射量にて波長308nmのレーザーを固定した積層体のガラスウエハー側から剥離層全面に照射し、支持基板をマニュアルで持ち持ち上げることによって、剥離可否を確認した。
剥離し、固定した半導体基板を取り外した後、分離した半導体ウエハーとガラスウエハーをそれぞれ4cm×4cmにカットし、カットしたウエハーを調製例2で得られた洗浄剤組成物7mLに10分間浸漬し、ウエハー上の表面上に残った膜等の残渣の有無を目視で確認した(洗浄性試験)。また、ウエハーを洗浄した後の洗浄剤組成物を回収し、異物が組成物中に残存しているか否かを目視で確認した(異物確認)。
【0277】
実施例15で調製した剥離剤組成物の代わりに、それぞれ実施例16、実施例17、実施例18、比較例3で調製した剥離剤組成物を用いた以外は、同様の方法で積層体を製造し、剥離性を確認し、洗浄性試験及び異物確認を行った。
【0278】
【0279】
以上の通り、実施例15~18及び比較例3の剥離剤組成物を用いて得られた膜を剥離層として備える積層体の半導体基板と支持基板とを、剥離層に光を照射することによって分離した。表4に示される通り、いずれの実施例及び比較例も、分離した各基板を洗浄剤組成物で洗浄することで、基板上に残渣を残すことなく、好適に洗浄可能であった。また、各基板の洗浄に用いた洗浄剤組成物それぞれにおいて、異物は確認されなかった。この結果より、実施例15~18の酸化防止剤を含む剥離剤組成物では、比較例3の酸化防止剤を含んでいない剥離剤組成物と同様に、剥離後、特に光照射による剥離後であっても良好な除去性又は溶解性を示す剥離層として好適な膜が得られることが確認できた。
この事から、酸化防止剤を添加した剥離剤組成物は、剥離層形成後に良好な除去性又は溶解性を備えるとともに、溶液中での分子量変化を抑制し長期保存安定性に優れた剥離剤組成物であることを確認できた。