(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135116
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ヘリウム凝縮システム、不純物除去方法および計測システム
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20240927BHJP
H10N 60/81 20230101ALI20240927BHJP
A61B 5/245 20210101ALI20240927BHJP
C01B 23/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F25J1/00 C
H10N60/81
A61B5/245
C01B23/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045647
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊一
【テーマコード(参考)】
4C127
4D047
4M114
【Fターム(参考)】
4C127AA10
4C127CC01
4C127LL08
4C127LL13
4D047AA03
4D047AB03
4D047BA09
4D047CA15
4D047EA00
4M114AA40
4M114BB03
4M114CC09
4M114CC16
4M114DA33
(57)【要約】
【課題】新たな装置の追加をすることなく、不純物を除去する際にヘリウムガスの損失を低減することができるヘリウム凝縮システム、不純物除去方法および計測システムを提供する。
【解決手段】デュワに保持された液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスを回収するガス回収部と、デュワからガス回収部へヘリウムガスを送るための第1の配管と、ヘリウムガスを冷却して液体ヘリウムに凝縮する冷凍機と、ガス回収部から冷凍機まで前記ヘリウムガスを送るための第2の配管と、ヘリウムガスを外部へ排気するための排気弁と、冷凍機および排気弁の動作を制御する制御部と、を有し、制御部は、冷凍機を稼働させた状態で、デュワから第1の配管を介したガス回収部までのヘリウムガスの回収、および、ガス回収部から第2の配管を介した冷凍機までのヘリウムガスの導入を行い、冷凍機を停止させ、その後、所定時間だけ排気弁を開状状態にする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュワに保持された液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスを回収するガス回収部と、
前記デュワから前記ガス回収部へ前記ヘリウムガスを送るための第1の配管と、
前記ヘリウムガスを冷却して液体ヘリウムに凝縮する冷凍機と、
前記ガス回収部から前記冷凍機まで前記ヘリウムガスを送るための第2の配管と、
前記ヘリウムガスを外部へ排気するための排気弁と、
前記冷凍機および前記排気弁の動作を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記冷凍機を稼働させた状態で、前記デュワから前記第1の配管を介した前記ガス回収部までの前記ヘリウムガスの回収、および、該ガス回収部から前記第2の配管を介した前記冷凍機までの前記ヘリウムガスの導入を行い、
前記冷凍機を停止させ、
その後、所定時間だけ前記排気弁を開状状態にするヘリウム凝縮システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記回収および前記導入を同時に実行する請求項1に記載のヘリウム凝縮システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記回収と前記導入とを交互に実行する請求項1に記載のヘリウム凝縮システム。
【請求項4】
前記排気弁は、前記制御部により開度が調整可能である請求項1~3のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システム。
【請求項5】
前記制御部に対して、前記回収を行う前記ヘリウムガスの第1の量、および前記導入を行う前記ヘリウムガスの第2の量を設定可能とする請求項1~3のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1の配管を流通する前記ヘリウムガスの圧力に基づいて、設定された前記第1の量となるように前記回収を行い、前記第2の配管を流通する前記ヘリウムガスの圧力に基づいて、設定された前記第2の量となるように前記導入を行う請求項5に記載のヘリウム凝縮システム。
【請求項7】
前記制御部に対して、前記冷凍機の停止から前記排気弁を開状態にするまでの時間を設定可能とする請求項1~3のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システム。
【請求項8】
前記制御部に対して、前記排気弁が開状態となっている時間を設定可能とする請求項1~3のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システム。
【請求項9】
前記冷凍機の温度を検出する温度センサを、さらに有し、
前記制御部は、前記温度センサにより検出された前記温度に基づいて、前記冷凍機の停止から前記排気弁を開状態にするまでの時間、および、前記排気弁が開状態となっている時間を調整する請求項1~3のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システム。
【請求項10】
前記排気弁から排気されるガスのうち前記ヘリウムガスまたは該ヘリウムガス以外の不純物の純度を測定する測定装置を、さらに有し、
前記制御部は、前記測定装置により測定された前記純度に基づいて、前記排気弁を開状態にしてから閉状態にするまでの時間を調整する請求項1~3のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システム。
【請求項11】
前記冷凍機を加熱するヒータを、さらに有し、
前記制御部は、前記回収および前記導入後、前記冷凍機を停止した後に、前記ヒータの駆動により前記冷凍機を昇温させる請求項1~3のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システム。
【請求項12】
デュワに保持された液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスを回収するガス回収部と、前記デュワから前記ガス回収部へ前記ヘリウムガスを送るための第1の配管と、前記ヘリウムガスを冷却して液体ヘリウムに凝縮する冷凍機と、前記ガス回収部から前記冷凍機まで前記ヘリウムガスを送るための第2の配管と、前記ヘリウムガスを外部へ排気するための排気弁と、を有するヘリウム凝縮システムの不純物除去方法であって、
前記冷凍機を稼働させた状態で、前記デュワから前記第1の配管を介した前記ガス回収部までの前記ヘリウムガスの回収、および、該ガス回収部から前記第2の配管を介した前記冷凍機までの前記ヘリウムガスの導入を行うステップと、
前記冷凍機を停止させるステップと、
その後、所定時間だけ前記排気弁を開状状態にするステップと、
を有する不純物除去方法。
【請求項13】
請求項11に記載のヘリウム凝縮システムと、
前記ヘリウム凝縮システムで凝縮されたガスを利用して、被検者の脳の生体信号の測定および解析を行う生体磁気計測システムと、
を含む計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリウム凝縮システム、不純物除去方法および計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳磁(MEG:Magneto-encephalography)データ、および脳波(EEG:Electro-encephalography)データ等の生体信号を測定および解析する生体磁気計測システムで用いられる超電導量子干渉素子(SQUID
:Superconducting Quantum Interference Device)は、超電導状態を保つために冷媒として液体ヘリウムが使われる。このような液体ヘリウムは使用中に一部蒸発してしまうため、当該蒸発したヘリウム(以下、ヘリウムガスと称する場合がある)を再凝縮することによって高価なヘリウムを液体状態に戻して再利用するヘリウム再凝縮システムが必要となる。
【0003】
一般に、ヘリウム再凝縮システムでは、脳磁データ等の計測(以下、単に脳磁計測と称する)時の冷凍機のノイズの影響をなくすために、脳磁データ等の計測時には冷凍機をオフにし、その間の蒸発したヘリウムは、気体のままストレージタンクへコンプレッサ(圧縮機)により圧縮して蓄える。そして、脳磁計測を行わない時間帯に冷凍機をオンにし、ストレージタンクに蓄えたヘリウムガスを再凝縮する方式としている。
【0004】
ところで、ヘリウム再凝縮システムの再凝縮能力は冷凍機の冷却能力で決まり、再凝縮を効率的に行うためにヘリウムガスには高い純度が求められる。この冷却能力を劣化させる要因に、ヘリウムガス以外の窒素、酸素、水分等の不純物の存在がある。これらの不純物は、ヘリウム再凝縮システム内のあらゆる接続箇所から極微量ではあるが、混入する。または、ヘリウム再凝縮システムの循環系内に残留していたもの等がある。これらの不純物は、冷凍機の冷却部に凍り付き、ヘリウムガスとの熱交換率を劣化させてしまう。そのため、一般的にヘリウム再凝縮システムでは、不純物を取り除く機構が必要である。
【0005】
このようなヘリウム再凝縮システムから不純物を取り除くための機構に関する技術として、装置内に配置した精製器に蓄積した汚染物質を気化しながら効率よく取り除くために、液体ヘリウム貯留槽から気化したヘリウムガスを再凝縮ポンプで汲み上げて精製器で精製し、再び液化するものとし、精製器にヒータを取り付け、汚染物質が所定量以上蓄積されると、ヒータによって精製器を加熱し、蓄積された汚染物質を気化し、気化した汚染物質を装置内のポンプを利用して大気に放出する長期間連続運転を可能とする技術が開示されている(例えば特許文献1)。また、寒冷発生部を有する機械式冷凍機と、ヘリウムガスを圧縮する圧縮機、ヘリウムガス中の不純物を除去する精製器、寒冷発生部と熱交換する熱交換器、および低温出力部となる混合室を少なくとも有し、これらがこの順に設けられたヘリウムガスの循環経路と、真空断熱された内側の空間に、寒冷発生部、精製器、熱交換器、および混合室を格納する保冷外槽と、を備えた技術が開示されている(例えば特許文献2)。また、真空排気装置をヘリウム再凝縮システムの配管に接続し、配管内を真空引きした後に、高純度のヘリウムガスで置き換えるパージを繰り返し行う技術も既に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、不純物を除去するための精製器を設ける技術では、不純物を除去するための新たな装置の追加となるためシステムの大型化、複雑化およびコストの上昇を招くという問題がある。また、真空排気装置によるパージを行う技術では、不純物と共に、ヘリウムガスもシステム外に大量に排出しなければならないという問題がある。この場合、ヘリウム再凝縮システム内に存在することができるヘリウムガスの容積が大きいほど、パージによるヘリウムガスの損失が大きくなる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、新たな装置の追加をすることなく、不純物を除去する際にヘリウムガスの損失を低減することができるヘリウム凝縮システム、不純物除去方法および計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、デュワに保持された液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスを回収するガス回収部と、前記デュワから前記ガス回収部へ前記ヘリウムガスを送るための第1の配管と、前記ヘリウムガスを冷却して液体ヘリウムに凝縮する冷凍機と、前記ガス回収部から前記冷凍機まで前記ヘリウムガスを送るための第2の配管と、前記ヘリウムガスを外部へ排気するための排気弁と、前記冷凍機および前記排気弁の動作を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記冷凍機を稼働させた状態で、前記デュワから前記第1の配管を介した前記ガス回収部までの前記ヘリウムガスの回収、および、該ガス回収部から前記第2の配管を介した前記冷凍機までの前記ヘリウムガスの導入を行い、前記冷凍機を停止させ、その後、所定時間だけ前記排気弁を開状状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たな装置の追加をすることなく、不純物を除去する際にヘリウムガスの損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る生体磁気計測システムの全体構成の概略の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、従来のヘリウム再凝縮システムで精製器を用いて不純物を除去する動作の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、従来のヘリウム再凝縮システムで真空排気装置によるパージにより不純物を除去する動作の一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムのヘリウムガスの回収および導入の循環動作を説明する図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムのヘリウムガスの回収および導入の際に循環ポンプにより循環させる動作を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムにおいてヘリウムガスを圧縮機で回収して開閉弁で導入する動作を説明する図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムにおいて冷却部に凝集した不純物を排気させる動作を説明する図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムにおいて冷却部に凝集した不純物を排気させる際にヒータを用いる例を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの不純物除去動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの再凝縮能力の経時変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係るヘリウム凝縮システム、不純物除去方法および計測システムの実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0012】
(生体磁気計測システムの全体構成)
図1は、実施形態に係る生体磁気計測システムの全体構成の概略の一例を示す図である。
図1を参照しながら、本実施形態に係る生体磁気計測システム100の全体構成について説明する。
【0013】
図1に示す生体磁気計測システム100は、被検者110の臓器である脳の脳磁データ、脳波データ等を測定するシステムである。生体磁気計測システム100は、
図1に示すように、脳機能測定装置101と、情報処理装置102と、を含む。
【0014】
脳機能測定装置101は、測定対象である被検者110の臓器である脳の脳磁データを測定するための測定装置である。脳機能測定装置101は、
図1に示すように、被検者110の頭部が挿入されるデュワ1と、デュワ1の内部に配置された複数の磁気センサ2と、を備えている。
【0015】
デュワ1は、被検者110の頭部のほぼ全域を取り囲むヘルメット型のセンサ収納型デュワである。デュワ1は、液体ヘリウムを用いた極低温環境の真空断熱装置である。デュワ1は、その内部に脳磁測定用の多数の磁気センサ2が配置されている。
【0016】
磁気センサ2は、超電導量子干渉素子(SQUID)を用いたセンサである。
【0017】
脳機能測定装置101は、磁気センサ2から生体信号としての脳磁データを収集し、当該生体信号を情報処理装置102に出力する。脳磁データは、神経細胞の電気的な活動(シナプス伝達の際にニューロンの樹状突起で起きるイオン電荷の流れ)により生じた微小な磁場変動を表わす。
【0018】
情報処理装置102は、脳波計で測定された生体信号としての脳波データ、および複数の磁気センサ2からの生体信号としての脳磁データを解析する装置である。例えば、情報処理装置102は、脳波計で測定された脳波データ、および脳機能測定装置101から受信した脳磁データの波形を、時間軸上に表示する。
【0019】
図1に示すヘリウム再凝縮システム10(本発明の「ヘリウム凝縮システム」に相当)は、デュワ1内の液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスを回収して、生体磁気計測システム100で再利用できるように再凝縮するためのシステムである。
【0020】
(ヘリウム再凝縮システムの全体構成)
図2は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの全体構成の一例を示す図である。
図2を参照しながら、本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10の全体構成について説明する。
【0021】
ヘリウム再凝縮システム10は、
図2に示すように、冷凍機11と、ガス回収部13と、ガス回収管14と、ガス供給管15と、循環用配管16と、制御部19と、を備える。なお、ガス回収管14およびガス供給管15は、それぞれ本発明の「第1の配管」および「第2の配管」に相当する。
【0022】
冷凍機11は、ガス供給管15から供給されたヘリウムガスを冷却して再凝縮させ、再凝縮した液体ヘリウムをデュワ1へ戻す冷凍機である。冷凍機11は、冷却部21と、受部22と、保温部23と、移送管24と、駆動系循環部25と、温度センサ26と、を有する。冷凍機11のオン/オフ制御は、制御部19により制御される。
【0023】
冷却部21は、ガス供給管15から供給されたヘリウムガスを冷却して再凝縮させる部材である。冷却部21は、放熱部21Aと、円筒状の第1シリンダ部21Bと、円筒状の第2シリンダ部21Cと、円板状の第1コールドステージ21Dと、円板状の第2コールドステージ21Eと、を備える。
【0024】
放熱部21Aは、冷却部21の最上部に配置された、冷却部21の基部である。第1シリンダ部21Bは、放熱部21Aから下方に延びて設けられたシリンダである。第2シリンダ部21Cは、第1シリンダ部21Bよりも下方に延びて設けられたシリンダ。第1コールドステージ21Dは、第1シリンダ部21Bと第2シリンダ部21Cとの間に設けられた、冷熱を発生する円板状の部材である。第2コールドステージ21Eは、第2シリンダ部21Cの下端に設けられた、冷熱を発生する円板状の部材である。
【0025】
受部22は、上端が開放し、下端に底22Aを有する皿状の部材である。受部22は、冷却部21の直下に配置され、冷却部21で再凝縮された液体ヘリウムを受ける。
【0026】
保温部23は、例えば、ステンレスまたはガラス繊維強化樹脂により筒状に形成され、内部の温度を保つように真空断熱されたクライオスタットである。保温部23は、上端が開放し、下端に底23Aを有する。保温部23は、内部に冷却部21および受部22が収容され、冷却部21の外周を間隔を空けて囲むように設けられている。保温部23は、上端が冷却部21の放熱部21Aにより密閉される。保温部23の底23Aは、移送管24の外周を間隔を空けて囲むように移送管24と共に下方に延びて形成されている。
【0027】
移送管24は、受部22で受けた液体ヘリウムを、脳機能測定装置101のデュワ1へ移送するための管である。移送管24の上端24aは、受部22の底22Aに接続され、移送管24と受部22とが連通している。移送管24は、受部22の底22Aから下方に延び、保温部23の内部を通って下端24bが下方に向けて設けられている。移送管24の下端24bは、脳機能測定装置101のデュワ1に接続されている。
【0028】
駆動系循環部25は、冷却部21を駆動する部材である。駆動系循環部25は、圧縮機25Aと、バルブモータ25Bとを有する。
【0029】
圧縮機25Aは、ヘリウムガス等の圧縮ガスを圧縮し、バルブモータ25Bへ圧縮ガスを供給する圧縮機である。圧縮機25Aは、例えば水冷または空冷により排熱する。バルブモータ25Bは、冷却部21の放熱部21Aに対し、圧縮ガスを間欠供給するように開閉を切り替えるモータである。
【0030】
駆動系循環部25は、バルブモータ25Bの切り替えにより圧縮機25Aと冷却部21との間で圧縮ガスを循環させることによって、冷却部21を起動させ、第1コールドステージ21Dおよび第2コールドステージ21Eで冷熱を発生させる。
【0031】
温度センサ26は、保温部23の内部に収容された冷却部21の温度を計測するセンサである。
【0032】
このように構成された冷凍機11では、その駆動時に、保温部23の内部に収容された冷却部21にヘリウムガスが供給される。冷却部21に供給されたヘリウムガスは、第1コールドステージ21Dおよび第2コールドステージ21Eで発生する冷熱により冷却されることにより、凝縮して液体ヘリウムとなり、受部22の底22Aに至り滴下して纏められる。受部22の底22Aに纏められた液体ヘリウムは、移送管24を経由して、脳機能測定装置101のデュワ1の内部のヘリウム槽に供給される。これによって、脳機能測定装置101のデュワ1の液体ヘリウムが保持される。そして、デュワ1の内部の液体ヘリウムは外部からの熱侵入によって徐々に蒸発してヘリウムガスとなる。
【0033】
また、本実施形態では、後述するように、冷凍機11は、循環するヘリウムガスに含まれる不純物(例えば窒素、酸素、水分等)を凝集するための装置としても機能する。
【0034】
ガス回収部13は、デュワ1で蒸発したヘリウムガスを回収し、蓄えて保管するための圧力容器である。
【0035】
ガス回収管14は、デュワ1とガス回収部13との間を接続する配管である。ガス回収管14は、第1ガス回収管14Aと、第2ガス回収管14Bと、を有する。
有する。
【0036】
第1ガス回収管14Aは、一端14Aaがデュワ1に接続され、他端14Abがガス回収部13に接続されている。また、第1ガス回収管14Aには、デュワ1からガス回収部13にヘリウムガスを送るために、コンプレッサである圧縮機14Acが設けられている。また、第1ガス回収管14Aには、ヘリウムガスの流通経路を開閉するために、圧縮機14Acよりも一端14Aa側に、流量調整弁である第1開閉弁14Adが設けられている。圧縮機14Acおよび第1開閉弁14Adは、制御部19により制御される。
【0037】
第2ガス回収管14Bは、第1ガス回収管14Aの途中と、冷却部21の保温部23の内部との間を接続する配管である。第2ガス回収管14Bは、一端14Baが第1ガス回収管14Aの一端14Aaと第1開閉弁14Adとの間に接続され、他端14Bbが保温部23に接続されている。本実施形態では、第2ガス回収管14Bは、他端14Bbがガス供給管15の一部を介して保温部23に接続されている。第2ガス回収管14Bは、ヘリウムガスの流通経路を開閉するため、流量調整弁である第2開閉弁14Bcが設けられている。第2開閉弁14Bcは、制御部19により制御される。また、第2ガス回収管14Bは、第2開閉弁14Bcよりも他端14Bb側に排気弁14Bdが設けられている。排気弁14Bdは、制御部19により制御される。排気弁14Bdは、第2ガス回収管14Bおよびガス供給管15の一部を介して、保温部23に接続されている。なお、排気弁14Bdは、後述するように、冷凍機11の冷却部21で凝集された不純物を排気させるための弁としても機能する。
【0038】
ガス供給管15は、ガス回収部13と、冷却部21の保温部23の内部との間を接続する配管である。ガス供給管15は、一端15aがガス回収部13に接続され、他端15bが冷凍機11の保温部23に接続されている。ガス供給管15には、ガス回収部13から冷却部21にガス回収部13で保管されたヘリウムガスを送るため、ポンプ15cが設けられている。また、ガス供給管15には、ポンプ15cよりも他端15b側に、ヘリウムガスの流通経路を開閉するための流量調整弁である開閉弁15dが設けられている。また、ガス供給管15には、ポンプ15cよりも一端15a側に、ヘリウムガスの流通経路を開閉するための流量調整弁である開閉弁15eが設けられている。開閉弁15eは、ガス回収部13に回収されたヘリウムガスを、ヘリウム再凝縮システム10の循環系内に導入する役割を担う。ポンプ15c、開閉弁15dおよび開閉弁15eは、制御部19により制御される。
【0039】
循環用配管16は、ガス回収管14の途中と、ガス供給管15の途中とを接続する配管である。循環用配管16は、一端16aがガス回収管14の第1開閉弁14Adと第2開閉弁14Bcとの間に接続され、他端16bがガス供給管15の開閉弁15eとポンプ15cとの間に接続されている。循環用配管16は、デュワ1から冷却部21に直接ヘリウムガスを送るバイパス経路として機能する。
【0040】
制御部19は、ヘリウム再凝縮システム10全体を制御し、CPU(Central Processing Unit)および記憶装置等を備えた演算装置である。制御部19は、冷凍機11、圧縮機25A、ガス回収管14の圧縮機14Ac、第1開閉弁14Ad、第2開閉弁14Bcおよび排気弁14Bd、ならびに、ガス供給管15のポンプ15c、開閉弁15dおよび開閉弁15eの動作を制御する。また、制御部19は、冷凍機11の温度センサ26により計測された温度を取得する。ガス回収管14の第1開閉弁14Adおよび第2開閉弁14Bcは、制御部19の制御によって開度が調整され、ガス回収管14におけるヘリウムガスの流量を調整する。
【0041】
以上のようなヘリウム再凝縮システム10においては、生体磁気計測システム100で計測を行っていない夜間等においてガス回収部13で回収されたヘリウムガスをガス供給管15を経由して冷凍機11へ送り、冷凍機11でヘリウムガスを冷却して再凝縮させ、再凝縮した液体ヘリウムをデュワ1へ戻す。また、生体磁気計測システム100で計測を行っている場合には、冷凍機11をオフ状態にし、圧縮機14Acを駆動させることによって、デュワ1で蒸発したヘリウムガスを、ガス回収管14を介してガス回収部13に回収し、蓄えて保管する。また、生体磁気計測システム100で計測を行っていない期間を利用して、ガス回収部13への回収およびガス回収部13からの導入を繰り返して、ヘリウムガスを循環させ、冷凍機11の冷却部21でヘリウムガスに含まれる不純物を凝集して、外部へ排気させる動作を行う。以下、本実施形態におけるヘリウム再凝縮システム10における不純物除去動作について詳細に説明する。
【0042】
(従来のヘリウム再凝縮システムでの不純物の除去動作について)
図3は、従来のヘリウム再凝縮システムで精製器を用いて不純物を除去する動作の一例を説明する図である。
図4は、従来のヘリウム再凝縮システムで真空排気装置によるパージにより不純物を除去する動作の一例を説明する図である。
図3および
図4を参照しながら、従来のヘリウム再凝縮システムにおける不純物の除去動作について説明する。
【0043】
まず、
図3を参照しながら、精製器を含むヘリウム再凝縮システム10aでのヘリウムガスに含まれる不純物の除去動作について説明する。上述のように、ヘリウム再凝縮システムの再凝縮能力は冷凍機の冷却能力で決まり、再凝縮を効率的に行うためにヘリウムガスには高い純度が求められる。この冷却能力を劣化させる要因に、ヘリウムガス以外の窒素、酸素、水分等の不純物の存在がある。これらの不純物は、ヘリウム再凝縮システム内のあらゆる接続箇所から極微量ではあるが、混入する。または、ヘリウム再凝縮システムの循環系内に残留していたもの等がある。これらの不純物は、冷凍機111の冷却部121に凍り付き(凝縮して)、ヘリウムガスとの熱交換率を劣化させてしまう。このような不純物を除去するために、
図3に示す従来のヘリウム再凝縮システム10aは、不純物を凝集するための精製器118を含む。
【0044】
図3に、従来のヘリウム再凝縮システム10aの概略構成を示す。ヘリウム再凝縮システム10aは、
図3に示すように、ガス回収部113と、ガス回収管114と、ガス供給管115と、冷却部121を含む冷凍機111と、ガス放出口117と、精製器118と、制御部119と、を含む。なお、ガス回収部113、ガス回収管114、ガス供給管115、ガス放出口117、冷凍機111、冷却部121、および制御部119は、それぞれ上述の
図2に示したガス回収部13、ガス回収管14、ガス供給管15、排気弁14Bd、冷凍機11、冷却部21、および制御部19に対応するものである。
【0045】
精製器118は、制御部119の制御に従って、デュワ1a中の蒸発したヘリウムガスをガス回収管114を経由して回収したガス回収部113から、ガス供給管115を流通して導入されるヘリウムガスに含まれる不純物を凝集する機器である。そして、精製器118で不純物が凝集された後、当該精製器118を加熱等により昇温させ、ガス放出口117から外部に排気することにより、ヘリウム再凝縮システム10aの循環経路内から不純物を除去することができる。
【0046】
しかしながら、ヘリウム再凝縮システム10aでは、ヘリウムガスに含まれる不純物を除去するために精製器118という別装置を用意する必要があるため、システムの大型化、複雑化およびコストの上昇を招くという問題がある。また、精製器118はヘリウムガスの再凝縮に用いる冷凍機111を取り囲むコールドボックス内に設置することも可能ではあるが、いずれにしても、ヘリウムガスの再凝縮に用いる冷凍機111とは別の装置としての精製器118およびその制御が必要となることから、ヘリウム再凝縮システム10a全体の大型化、複雑化およびコストの上昇を招くことになる。
【0047】
次に、
図4を参照しながら、パージによりヘリウム再凝縮システム10bでのヘリウムガスに含まれる不純物の除去動作について説明する。ヘリウム再凝縮システム10bは、
図4に示すように、ガス回収部113と、ガス回収管114と、ガス供給管115と、冷却部121を含む冷凍機111と、ガス放出口117と、真空排気装置118aと、ガスボンベ118bと、制御部119と、を含む。なお、ガス回収部113、ガス回収管114、ガス供給管115、ガス放出口117、冷凍機111、冷却部121、および制御部119は、それぞれ上述の
図2に示したガス回収部13、ガス回収管14、ガス供給管15、排気弁14Bd、冷凍機11、冷却部21、および制御部19に対応するものである。
【0048】
図4に示すヘリウム再凝縮システム10bにおいて、まず、冷凍機111の冷却部121に付着している不純物をすべて気化させるために、冷凍機111を停止させ、不純物が蒸発する温度(例えば100[K]以上)にまで昇温させた後に、システム系内のすべてのガスを真空排気装置118aを用いてガス放出口117から排気(真空排気)する。その後、ガスボンベ118bからガス放出口117を介して高純度のヘリウムガスをシステム系内に導入する。このような真空排気と高純度のヘリウムガスの導入とを所定回数(例えば数回~10回以下程度)繰り返することによって、システム系内の不純物を除去する。なお、真空排気装置118aがヘリウム再凝縮システム10bに組み込まれている場合もあれば、真空排気の時にのみ真空排気装置118aをガス放出口117に接続する場合もある。
【0049】
しかしながら、真空排気装置118aで排気されるガスの量は、パージ対象となるヘリウム再凝縮システム10bのシステム系内の体積で定まり、当該体積が大きいほどヘリウムガスの損失が大きくなる。例えば、ヘリウムガスの循環経路における長い配管、大容量のガス回収部113、容積可変のガスバッグ等により、不純物の排出に伴うヘリウムガスの損失が大きくなってしまう。
【0050】
以下、上述の問題を解決するための本実施形態におけるヘリウム再凝縮システム10における不純物除去動作について詳細に説明する。
【0051】
(ヘリウム再凝縮システムの不純物除去動作)
図5は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムのヘリウムガスの回収および導入の循環動作を説明する図である。
図6は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムのヘリウムガスの回収および導入の際に循環ポンプにより循環させる動作を説明する図である。
図7は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムにおいてヘリウムガスを圧縮機で回収して開閉弁で導入する動作を説明する図である。
図8は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムにおいて冷却部に凝集した不純物を排気させる動作を説明する図である。
図9は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムにおいて冷却部に凝集した不純物を排気させる際にヒータを用いる例を説明する図である。
図5~
図9を参照しながら、本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10の不純物除去動作について説明する。本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10の不純物除去動作では、冷凍機11を、ガス中の不純物を凝集させる精製器として利用する制御を実行する。
【0052】
まず、制御部19は、
図5に示すように、冷凍機11をオン状態にさせる。次に、制御部19は、デュワ1に蓄積された液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスを、ガス回収管14を介してガス回収部13に回収させる。そして、制御部19は、ガス回収部13に蓄積されたヘリウムガスを、ガス供給管15を介してシステム系内に導入させ、冷凍機11へ送る。これによって、冷凍機11へ送られたヘリウムガスに含まれる不純物は、冷凍機11の冷却部21で固化し、凝集される。この場合、冷却部21の第1コールドステージ21Dの温度を例えば約40[K]とし、第2コールドステージ21Eの温度を例えば4.2[K]程度とする。このとき、冷凍機11へ送られたヘリウムガスは、高温側の第1コールドステージ21Dから低温側の第2コールドステージ21Eへ向けて、次第に凝縮され冷却部21に凍り付く。
【0053】
上述のように、デュワ1からのヘリウムガスをシステム系内で循環させるために、
図6に示すように、制御部19は、循環ポンプ15cを駆動させるものとしてもよい。この場合、ヘリウムガスのガス回収部13への回収、およびガス回収部13からガス供給管15への導入が同時に行われる。また、ガス回収部13に蓄積されたヘリウムガスの圧力が高い場合には、
図7に示すように、制御部19は、圧縮機14Acの駆動によりヘリウムガスを圧縮した状態でガス回収部13に回収させ、レギュレータとしての開閉弁15eにより圧力を下げた状態でガス供給管15にヘリウムガスを導入させるものとしてもよい。この場合、ヘリウムガスのガス回収部13への回収、およびガス回収部13からガス供給管15への導入を同時に行うこともでき、または、交互に行うこともできる。
【0054】
このとき、制御部19によるヘリウムガスの回収動作および導入動作については、制御部19でそれらの時間およびタイミングを設定できるようにしてもよい。例えば、ヘリウムガスの回収と導入とを同時に実行する場合であれば、同時に実行する時間を制御部19で設定可能であるものとし、制御部19は、設定された時間(例えば72時間)だけ、ヘリウムガスの回収および導入を同時に実行する。また、ヘリウムガスの回収と導入とを交互に行う場合であれば、回収動作を実行する時間、導入動作を実行する時間、交互に繰り返す回数をそれぞれ制御部19で設定可能であるものとし、制御部19は、設定された回収動作の時間(例えば1時間)、および設定された導入動作の時間(例えば2時間)のサイクルを設定回数(例えば24回)だけ行う。
【0055】
なお、制御部19において、ガス回収部13へ回収するヘリウムガスの量、およびガス回収部13から導入するヘリウムガスの量を設定できるものとしてもよい。これによって、システム系内の不純物を効率的に冷凍機11の冷却部21で凝集させつつ、システム系全体の安定性を保つことができる。この場合、制御部19は、ガス回収部13へ回収するヘリウムガスの量、およびガス回収部13から導入するヘリウムガスの量を、ガス回収管14およびガス供給管15に設置された圧力計等で計測されたヘリウムガスの圧力値によって算出するものとしてもよい。なお、上述のガス回収部13へ回収するヘリウムガスの量、およびガス回収部13から導入するヘリウムガスの量は、それぞれ本発明の「第1の量」および「第2の量」に相当する。
【0056】
そして、上述のような設定時間だけ冷凍機11で不純物が凝集された後、制御部19は、冷凍機11を停止させ、冷凍機11の冷却部21の温度を昇温させ、冷却部21に凝集した不純物を気化させる。そして、制御部19は、
図8に示すように、冷却部21で凝集された不純物をシステム系外に排気できるように、排気弁14Bdを開状態にして、気化した不純物をシステム系外に排気させる。このとき、冷凍機11の停止からどの程度の時間経過後に排気弁14Bdを開状態にするのか、どの程度の時間経過後に排気弁14Bdを閉状態にするのか、そのときの排気弁14Bdの開度はどの程度にするのか等によって、システム系外へ不純物と共に排出されるヘリウムガスの量が決まる。しかし、上述の
図4に示したヘリウム再凝縮システム10bのように、真空排気装置118aによりシステム系内からパージを行う必要がないため、本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10の不純物除去動作では、排気されるヘリウムガスの量を大幅に抑制することができるため、ヘリウムガスの損失を抑制することができる。なお、不純物を凝集させるためにシステム系全体にヘリウムガスを循環させる流量は、システム系が安定的な範囲内で多い方が望ましいが、排気弁14Bdからの排出量、すなわち排気弁14Bdの開度については、不純物が排気できるだけの必要最低限の開度であればよいため、排気弁14Bdを開度調整が可能なニードルバルブとしてもよい。
【0057】
なお、不純物としては空気の主成分である窒素および酸素等が想定されるため、制御部19は、これらの融点および沸点を基準として、例えば冷凍機11の停止直後から冷却部21の温度が100[K]になるまで排気弁14Bdを開状態にするものとしてもよい。この場合、予め冷却部21の昇温時間が分かっていれば、制御部19において、冷凍機11の停止から排気弁14Bdを開状態にするまでの時間を直接設定できるようにしてもよい。また、制御部19において、排気弁14Bdが開状態となっている時間を設定できるようにしてもよい。この場合の設定時間(本発明の「所定時間」に相当)は、例えば不純物がすべて気化する温度まで昇温させるために必要な時間とすればよい。また、制御部19は、温度センサ26により検出される冷却部21の温度に基づいて、冷凍機11の停止から排気弁14Bdを開状態にするまでの時間、および、開状態にしたときから閉状態にするまでの時間を調整するものとしてもよい。この温度センサ26は、通常、冷凍機11がヘリウムガスを再凝縮する際の冷却部21の温度のモニタ用等として取り付けられているものであるため、これを用いることにより新たな機器の追加を要することなく、ヘリウムガスの損失を抑制して不純物の排出が可能となる。
【0058】
また、ヘリウム再凝縮システム10は、排気弁14Bdから排気されるガスのうちヘリウムガスまたは不純物の純度を測定する測定装置を備えるものとしてもよく、制御部19は、当該測定装置により測定された純度に基づいて、排気弁14Bdを開状態にしたときから閉状態にするまでの時間を調整するものとしてもよい。
【0059】
また、ヘリウム再凝縮システム10は、
図9に示すように、冷凍機11の冷却部21を加熱するためのヒータ27を備えるものとしてもよい。この場合、制御部19は、冷凍機11を停止させた後、冷凍機11の冷却部21の温度を昇温させるためにヒータ27で冷却部21を加熱する。これによって、冷却部21の昇温時間を短縮でき、ヘリウムガスの損失を抑制することが可能となる。
【0060】
また、上述の制御部19に対する各種設定は、例えば、制御部19に備えられる入力手段を介して行われるものとしてもよく、外部装置からの操作により行われるものとしてもよい。
【0061】
(ヘリウム再凝縮システムの不純物除去動作の流れ)
図10は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの不純物除去動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図10を参照しながら、本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10の不純物除去動作の流れについて説明する。
【0062】
<ステップS11>
まず、生体磁気計測システム100により被検者110に対して脳磁計測を行っていない時間帯に、制御部19は、冷凍機11をオン状態にさせる。そして、制御部19は、デュワ1に蓄積された液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスを、ガス回収管14を介してガス回収部13に回収させる。そして、制御部19は、ガス回収部13に蓄積されたヘリウムガスを、ガス供給管15を介してシステム系内に導入させ、冷凍機11へ送る。このヘリウムガスの回収および導入により、システム系内でヘリウムガスが循環すると共に、冷凍機11へ送られたヘリウムガスに含まれる不純物は、冷凍機11の冷却部21で固化し、凝集される。そして、ステップS12へ移行する。
【0063】
<ステップS12>
次に、制御部19は、所定の設定時間が経過したか否かを判定する。この場合、設定時間としては、ヘリウムガスの回収と導入とを同時に実行する場合であれば、同時に実行する設定時間であり、ヘリウムガスの回収と導入とを交互に行う場合であれば、設定された回収動作および導入動作の時間、ならびに設定された繰り返す回数で定まる合計の時間である。所定の設定時間が経過した場合(ステップS12:Yes)、ステップS13へ移行し、経過していない場合、引き続き経過するまで待機する。
【0064】
<ステップS13>
制御部19は、冷凍機11を停止させる。そして、ステップS14へ移行する。
【0065】
<ステップS14>
そして、制御部19は、冷凍機11の冷却部21の温度を昇温させる。この場合、上述のように、制御部19は、冷凍機11の冷却部21の温度を昇温させるためにヒータ27で冷却部21を加熱するものとしてもよい。そして、ステップS15へ移行する。
【0066】
<ステップS15>
そして、制御部19は、上述した設定時間経過後に、排気弁14Bdを開状態(開放状態)にして、気化した不純物をシステム系外に排気させる。そして、制御部19は、上述した設定時間経過後に、排気弁14Bdを閉状態にする。
【0067】
以上のステップS11~S15の流れによって、ヘリウム再凝縮システム10の不純物除去動作が実行される。
【0068】
(ヘリウム再凝縮システムの再凝縮能力の経時変化について)
図11は、実施形態に係るヘリウム再凝縮システムの再凝縮能力の経時変化を説明する図である。
図11を参照しながら、本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10の再凝縮能力の経時変化について説明する。
【0069】
図11に示すグラフは、横軸をヘリウム再凝縮システム10の稼働開始からの経過日数とし、縦軸を、冷凍機11の再凝縮能力が最大である経過日数0日目の当該最大値を1.0として正規化した値としたものである。まず、グラフ上の「〇」で示すプロットは、経過日数0日目から、上述のヘリウム再凝縮システム10の不純物除去動作が行われる前までの各経過日数での再凝縮能力を示し、グラフ上の「×」で示すプロットは、不純物除去動作が行われた後の各経過日数での再凝縮能力を示す。
図11に示すように、ヘリウム再凝縮システム10の稼働が開始された後、日数の経過に伴い次第に冷凍機11の再凝縮能力が低下している。この要因としては、上述したように、システム系内を循環するガスにヘリウムガス以外の窒素、酸素、水分等の不純物が増加することにより、冷凍機111の冷却部121に凝縮した不純物が冷却部121でのヘリウムガスとの熱交換率を劣化させてしまうことによる。そこで、
図11に示す例では、ヘリウム再凝縮システム10の稼働開始から60日目に上述の不純物除去動作を実行している。また、この場合、約72時間の回収および導入の同時実行を行った後、100[K]まで冷凍機111を昇温させて、システム系内の不純物を排気弁14Bdから排気した。これにより、
図11に示すように、その後の再凝縮能力がほぼ回復していることが確認され、システム系内の不純物が除去されていることが把握される。
【0070】
以上のように、本実施形態に係るヘリウム再凝縮システム10は、デュワ1に保持された液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスを回収するガス回収部13と、デュワ1からガス回収部13へヘリウムガスを送るためのガス回収管14と、ヘリウムガスを冷却して液体ヘリウムに凝縮する冷凍機11と、ガス回収部13から冷凍機11までヘリウムガスを送るためのガス供給管15と、前記ヘリウムガスを外部へ排気するための排気弁14Bdと、冷凍機11および排気弁14Bdの動作を制御する制御部19と、を有し、制御部19は、冷凍機11を稼働させた状態で、デュワ1からガス回収管14を介したガス回収部13までのヘリウムガスの回収、および、当該ガス回収部13からガス供給管15を介した冷凍機11までのヘリウムガスの導入を行い、冷凍機11を停止させ、その後、所定時間だけ排気弁14Bdを開状状態にするものとしている。これによって、新たな装置の追加をすることなく、不純物を除去する際にヘリウムガスの損失を低減することができる。
【0071】
本発明の態様は、以下の通りである。
<1>デュワに保持された液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスを回収するガス回収部と、
前記デュワから前記ガス回収部へ前記ヘリウムガスを送るための第1の配管と、
前記ヘリウムガスを冷却して液体ヘリウムに凝縮する冷凍機と、
前記ガス回収部から前記冷凍機まで前記ヘリウムガスを送るための第2の配管と、
前記ヘリウムガスを外部へ排気するための排気弁と、
前記冷凍機および前記排気弁の動作を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記冷凍機を稼働させた状態で、前記デュワから前記第1の配管を介した前記ガス回収部までの前記ヘリウムガスの回収、および、該ガス回収部から前記第2の配管を介した前記冷凍機までの前記ヘリウムガスの導入を行い、
前記冷凍機を停止させ、
その後、所定時間だけ前記排気弁を開状状態にするヘリウム凝縮システムである。
<2>前記制御部は、前記回収および前記導入を同時に実行する前記<1>に記載のヘリウム凝縮システムである。
<3>前記制御部は、前記回収と前記導入とを交互に実行する前記<1>に記載のヘリウム凝縮システムである。
<4>前記排気弁は、前記制御部により開度が調整可能である前記<1>~<3>のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システムである。
<5>前記制御部に対して、前記回収を行う前記ヘリウムガスの第1の量、および前記導入を行う前記ヘリウムガスの第2の量を設定可能とする前記<1>~<4>のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システムである。
<6>前記制御部は、前記第1の配管を流通する前記ヘリウムガスの圧力に基づいて、設定された前記第1の量となるように前記回収を行い、前記第2の配管を流通する前記ヘリウムガスの圧力に基づいて、設定された前記第2の量となるように前記導入を行う前記<5>に記載のヘリウム凝縮システムである。
<7>前記制御部に対して、前記冷凍機の停止から前記排気弁を開状態にするまでの時間を設定可能とする前記<1>~<6>のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システムである。
<8>前記制御部に対して、前記排気弁が開状態となっている時間を設定可能とする前記<1>~<7>のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システムである。
<9>前記冷凍機の温度を検出する温度センサを、さらに有し、
前記制御部は、前記温度センサにより検出された前記温度に基づいて、前記冷凍機の停止から前記排気弁を開状態にするまでの時間、および、前記排気弁が開状態となっている時間を調整する前記<1>~<8>のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システムである。
<10>前記排気弁から排気されるガスのうち前記ヘリウムガスまたは該ヘリウムガス以外の不純物の純度を測定する測定装置を、さらに有し、
前記制御部は、前記測定装置により測定された前記純度に基づいて、前記排気弁を開状態にしてから閉状態にするまでの時間を調整する前記<1>~<9>のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システムである。
<11>前記冷凍機を加熱するヒータを、さらに有し、
前記制御部は、前記回収および前記導入後、前記冷凍機を停止した後に、前記ヒータの駆動により前記冷凍機を昇温させる前記<1>~<10>のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システムである。
<12>デュワに保持された液体ヘリウムから蒸発したヘリウムガスを回収するガス回収部と、前記デュワから前記ガス回収部へ前記ヘリウムガスを送るための第1の配管と、前記ヘリウムガスを冷却して液体ヘリウムに凝縮する冷凍機と、前記ガス回収部から前記冷凍機まで前記ヘリウムガスを送るための第2の配管と、前記ヘリウムガスを外部へ排気するための排気弁と、を有するヘリウム凝縮システムの不純物除去方法であって、
前記冷凍機を稼働させた状態で、前記デュワから前記第1の配管を介した前記ガス回収部までの前記ヘリウムガスの回収、および、該ガス回収部から前記第2の配管を介した前記冷凍機までの前記ヘリウムガスの導入を行うステップと、
前記冷凍機を停止させるステップと、
その後、所定時間だけ前記排気弁を開状状態にするステップと、
を有する不純物除去方法である。
<13>前記<1>~<11>のいずれか一項に記載のヘリウム凝縮システムと、
前記ヘリウム凝縮システムで凝縮されたガスを利用して、被検者の脳の生体信号の測定および解析を行う生体磁気計測システムと、
を含む計測システムである。
【符号の説明】
【0072】
1、1a デュワ
2 磁気センサ
10、10a、10b ヘリウム再凝縮システム
11 冷凍機
13 ガス回収部
14 ガス回収管
14A 第1ガス回収管
14Aa 一端
14Ab 他端
14Ac 圧縮機
14Ad 第1開閉弁
14B 第2ガス回収管
14Ba 一端
14Bb 他端
14Bc 第2開閉弁
14Bd 排気弁
15 ガス供給管
15a 一端
15b 他端
15c 循環ポンプ
15d 開閉弁
15e 開閉弁
16 循環用配管
16a 一端
16b 他端
19 制御部
21 冷却部
21A 放熱部
21B 第1シリンダ部
21C 第2シリンダ部
21D 第1コールドステージ
21E 第2コールドステージ
22 受部
22A 底
23 保温部
23A 底
24 移送管
24a 上端
24b 下端
25 駆動系循環部
25A 圧縮機
25B バルブモータ
26 温度センサ
27 ヒータ
100 生体磁気計測システム
101 脳機能測定装置
102 情報処理装置
110 被検者
111 冷凍機
113 ガス回収部
114 ガス回収管
115 ガス供給管
117 ガス放出口
118 精製器
118a 真空排気装置
118b ガスボンベ
119 制御部
121 冷却部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特許第4145673号公報
【特許文献2】特許第6432087号公報