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特開2024-135126生体計測装置、生体計測方法、画像処理方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135126
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】生体計測装置、生体計測方法、画像処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240927BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240927BHJP
   A61B 5/248 20210101ALI20240927BHJP
【FI】
A61B6/00 390Z
A61B6/00 360B
A61B5/248
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045661
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(71)【出願人】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】竹田 遼二
(72)【発明者】
【氏名】内城 禎久
(72)【発明者】
【氏名】木下 彰
(72)【発明者】
【氏名】岡田 吉智
(72)【発明者】
【氏名】川端 茂▲徳▼
【テーマコード(参考)】
4C093
4C127
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093EB12
4C093EB13
4C093FF35
4C127AA10
4C127BB05
4C127EE00
4C127HH13
(57)【要約】
【課題】被検体を移動させることなく放射線撮影部を着脱可能な生体計測装置を提供にすること。
【解決手段】本開示の一態様に係る生体計測装置は、被検体に放射線を照射する照射部と、前記被検体の被検部位を放射線撮影可能な放射線検出部と、記放射線検出部と前記照射部との間に配置され、前記被検体の生体磁気を検出する磁気検出部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に放射線を照射する照射部と、
前記被検体の被検部位を放射線撮影可能な放射線検出部と、
前記放射線検出部と前記照射部との間に配置され、前記被検体の生体磁気を検出する磁気検出部と、を有する、生体計測装置。
【請求項2】
前記照射部は、前記磁気検出部との間に前記被検体を配置可能に前記磁気検出部から離隔して配置されている、請求項1に記載の生体計測装置。
【請求項3】
前記放射線検出部は、前記磁気検出部との間に前記被検体を配置可能に前記磁気検出部から離隔して配置されている、請求項1に記載の生体計測装置。
【請求項4】
前記放射線検出部によって、前記被検体と前記磁気検出部が重畳している放射線画像データを取得する、請求項1に記載の生体計測装置。
【請求項5】
前記照射部と前記放射線検出部との間に配置され、放射線により撮影されることが可能な標識部材をさらに有する、請求項1に記載の生体計測装置。
【請求項6】
前記磁気検出部は、複数の磁気センサを含み、請求項1に記載の生体計測装置。
【請求項7】
前記磁気検出部は、コイルが巻かれているセンサボビンを含み、
前記センサボビンは、中空構造を含む、請求項1に記載の生体計測装置。
【請求項8】
前記磁気検出部の少なくとも一部が、前記照射部を中心とした放射形状となっている、請求項1に記載の生体計測装置。
【請求項9】
処理部をさらに有し、
前記放射線検出部は、前記被検体と前記磁気検出部とを含む第1画像と、前記磁気検出部を含み、前記被検体を含まない第2画像と、を撮影し、
前記処理部は、前記第1画像と前記第2画像とに基づき、前記磁気検出部が差分処理された第3画像を生成する、請求項1に記載の生体計測装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記磁気検出部による検出結果に基づく生体磁気に関する情報と前記第3画像とを重ね合わせた第4画像を生成して出力する、請求項9に記載の生体計測装置。
【請求項11】
前記磁気検出部による検出結果に基づく生体磁気に関する情報は、磁場情報から電流源再構成を行うことにより得られた電流分布情報を含む、請求項10に記載の生体計測装置。
【請求項12】
前記処理部は、前記第1画像および前記第2画像の少なくとも一方の輝度を調整する調整部を含む、請求項9に記載の生体計測装置。
【請求項13】
前記調整部は、前記第2画像を領域分割した複数の画像領域ごとで前記輝度を調整する、請求項12に記載の生体計測装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記第3画像において、前記被検体の形態情報が欠落した画像領域を補完する補完部を有する、請求項9に記載の生体計測装置。
【請求項15】
生体計測装置による生体計測方法であって、前記生体計測装置が、
照射部により、被検体に放射線を照射し、
放射線検出部により、前記放射線検出部と前記照射部との間に被検体が配置されていない状態で撮影された第2画像を出力し、
前記放射線検出部により、前記放射線検出部と前記照射部との間に被検体が配置された状態で撮影された第1画像を出力し、
前記放射線検出部と前記照射部との間に配置された磁気検出部により、前記被検体の生体磁気を検出し、
処理部により、前記放射線検出部により得られた、前記被検体と前記磁気検出部とを含む前記第1画像と、前記放射線検出部により得られた、前記磁気検出部を含み、前記被検体を含まない前記第2画像と、に基づき、前記磁気検出部が差分処理された第3画像を生成し、
前記処理部により、前記磁気検出部による検出結果に基づく生体磁気に関する情報と前記第3画像とを重ね合わせた第4画像を生成して出力する、生体計測方法。
【請求項16】
被検体に放射線を照射する照射部と、
前記被検体の被検部位を放射線撮影可能な放射線検出部と、
前記放射線検出部と前記照射部との間に配置され、前記被検体の生体磁気を検出する磁気検出部と、を有する生体計測装置により得られる画像の画像処理方法であって、
処理部により、前記放射線検出部により得られた、前記被検体と前記磁気検出部とを含む第1画像と、前記放射線検出部により得られた、前記磁気検出部を含み、前記被検体を含まない第2画像と、に基づき、前記磁気検出部が差分処理された第3画像を生成し、
前記処理部により、前記磁気検出部による検出結果に基づく生体磁気に関する情報と前記第3画像とを重ね合わせた第4画像を生成して出力する、画像処理方法。
【請求項17】
被検体と磁気検出部とを含むようにして撮影された第1画像と、磁気検出部を含み、前記被検体を含まない第2画像と、に基づき、前記磁気検出部が差分処理された第3画像を生成する
処理を情報処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体計測装置、生体計測方法、画像処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の心臓や脊髄、末梢神経等を構成する細胞の興奮に伴う電流によって生じる微弱な生体磁気を計測する生体計測装置が知られている。
【0003】
上記の生体計測装置として、放射線感光体を用いた被検体の形態画像と、生体磁気検出部による検出結果に基づく生体磁気に関する情報と、を重ね合わせて表示するために、生体計測装置に放射線感光体を着脱可能にするものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、放射線感光体等の放射線検出部を着脱する際に被検体を移動させる。このため、被検体の移動機構が必要になるうえ、移動の際に被検体が位置ずれし、形態画像と生体磁気に関する情報とを正確に重ね合わせることができない場合がある。
【0005】
本開示は、被検体を移動させることなく放射線検出部を着脱可能な生体計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る生体計測装置は、被検体に放射線を照射する照射部と、前記被検体の被検部位を放射線撮影可能な放射線検出部と、記放射線検出部と前記照射部との間に配置され、前記被検体の生体磁気を検出する磁気検出部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、被検体を移動させることなく放射線検出部を着脱可能な生体計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る生体計測装置の構成例を示す側面図である。
図2A】第1実施形態に係る磁気検出部の構成例を模式的に示す断面図である。
図2B】変形例に係る磁気検出部の構成例を模式的に示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る処理部のハードウェア構成例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る処理部の機能構成例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る生体計測装置の動作の一例を示すフロー図である。
図6】被検体が配置されていない状態での放射線撮影の様子を示す図である。
図7】第1実施形態に係る生体計測装置の動作の他の例を示すフロー図である。
図8】第1実施形態に係る第2画像の一例を示す図である。
図9】第1実施形態に係る第1画像の一例を示す図である。
図10】第1実施形態に係る第3画像の一例を示す図である。
図11】第1実施形態に係る第4画像の一例を示す図である。
図12】放射線撮影実験における模擬被検体を示す図である。
図13-1】模擬被検体と磁気検出部が重ね合わせられた放射線撮影画像の一例を示す図である。
図13-2】磁気検出部を含み、模擬被検体を含まない第2画像の一例を示す図である。
図13-3】模擬被検体を放射線撮影した第3画像の一例を示す図である。
図14】第1変形例に係る生体計測装置の構成例を示す側面図である。
図15】第2変形例に係る生体計測装置の構成例を示す側面図である。
図16】第3変形例に係る生体計測装置の構成例を示す側面図である。
図17】第4変形例に係る生体計測装置の構成例を示す側面図である。
図18】第5変形例に係る生体計測装置の構成例を示す側面図である。
図19】第2実施形態に係る処理部の機能構成例を示す図である。
図20】第2実施形態に係る調整部により領域分割した複数の領域ごとでの輝度調整処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態に係る生体計測装置、生体計測方法、および画像処理方法について図面を参照しながら詳細に説明する。但し、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための生体計測装置、生体計測方法、および画像処理方法を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。
【0010】
各図面において、方向を表すために、X軸、Y軸およびZ軸を有する直交座標を用いる。Z軸方向は上下方向を表す。X軸方向およびY軸方向は、Z軸に直交する面内において直交する二方向を表す。X軸の矢印が向く方向を+X方向、+X方向とは反対方向を-X方向と表す。Y軸の矢印が向く方向を+Y方向、+Y方向とは反対方向を-Y方向と表す。Z軸の矢印が向く方向を+Z方向、+Z方向とは反対方向を-Z方向と表す。
【0011】
本明細書において、上面視とは上方(+Z方向)から対象を視ることをいう。さらに、但し、これら方向表現は、説明の便宜のためのものであり、本開示の実施形態の方向を限定するものではない。
【0012】
[第1実施形態]
<生体計測装置100の全体構成例>
図1を参照して、第1実施形態に係る生体計測装置100の構成について説明する。図1は、生体計測装置100の構成の一例を示す図である。また図1は、+X方向から視た磁気検出部3周辺の側面図である。
【0013】
図1に示すように、生体計測装置100は、照射部1と、放射線検出部2と、磁気検出部3と、を有する。生体計測装置100は、被検体Sが発する微弱な生体磁気を検出し、該生体磁気に基づいて、被検体Sの脊髄や末梢神経、心臓や骨格筋等の神経筋電気活動に関する情報を出力するものである。
【0014】
被検体Sは生体に対応する。本明細書では、被検体Sは人間とする。但し、被検体Sは人間以外の生体であってもよい。被検体Sは、架台4に載置される。架台4は、頭部用架台41と、胴部用架台42と、を含む。頭部用架台41は、人の頭部を載置する。胴部用架台42は、人の胴部を載置する。
【0015】
本実施形態では、生体計測装置100は、放射線検出部2により放射線撮影された被検体Sの形態画像と、磁気検出部3による検出結果に基づく生体磁気に関する情報と、を重ね合わせた重畳画像を生成して出力する。医師等の診断者は、この重畳画像を観察することにより、生体磁気に関する情報が被検体Sの身体のどの部分のものであるかを認識しやすくなる。なお、形態画像とは、被検体Sの器官の形態的な位置に関する情報を含む画像をいう。
【0016】
上記の重畳画像を生成するために、生体計測装置100は、放射線撮影と生体磁気検出とを異なるタイミングで行う。生体計測装置100は、放射線検出部2が生体計測装置100に取り付けられた状態で、放射線撮影を行う。一方、生体計測装置100は、放射線検出部2が生体計測装置100から取り外された状態で、生体磁気検出を行う。
【0017】
例えば、被検体と磁気検出部との間に放射線検出部が配置されるように、放射線検出部を生体計測装置に取り付けようとすると、放射線検出部を取り付ける際に、空間確保等を目的として被検体の移動が求められる場合がある。被検体Sを移動可能にするには、被検体Sの移動機構が必要になる。また被検体Sを移動可能にするには、生体計測装置が大型化したり、装置構成が複雑になったりする。さらに、被検体Sを移動させると、移動の際に被検体Sが位置ずれすることで、形態画像と生体磁気に関する情報とを正確に重ね合わせることが困難になる場合がある。
【0018】
本実施形態では、磁気検出部3は、放射線検出部2と照射部1との間に配置される。また、被検体Sおよび磁気検出部3は、放射線検出部2と照射部1との間に配置される。例えば被検体Sは、照射部1と磁気検出部3との間に配置される。磁気検出部3を放射線検出部2と照射部1との間に配置することで、磁気検出部3を挟んで被検体Sの反対側に放射線検出部2を配置でき、被検体Sと磁気検出部3との間に放射線検出部2を配置しなくてもよい。これにより、本実施形態では、被検体Sを移動させることなく放射線検出部2を着脱可能にすることができる。そして、被検体Sの移動機構を不要にするとともに被検体Sの位置ずれを低減することができる。以下、各構成部の詳細を説明する。
【0019】
照射部1は、被検体Sに放射線を照射する。照射部1は、架台4に載置された被検体Sの上方(+Z方向)に配置され、被検体Sに放射線を照射する。本明細書に示す例では、照射部1は、放射線として単純X線を照射可能なX線光源である。
【0020】
放射線検出部2は、被検体Sの被検部位を放射線撮影可能である。放射線検出部2は、放射線を受光する受光面を有し、照射部1から照射された単純X線に基づき被検体Sを撮影する。放射線検出部2は、被検体Sの被検部位Tを撮影可能な位置に、架台4とは独立して設けられる。放射線検出部2は、被検部位Tを透過した単純X線に基づき、被検部位Tの撮影画像を取得する。撮影画像はデジタル画像データである。放射線検出部2は、撮影画像に関する情報を処理部に出力する。
【0021】
放射線検出部2は、頭部用架台41と胴部用架台42との間に配置される。放射線検出部2は、被検体Sの被検部位Tが撮像可能な位置である支持部21により支持される。
【0022】
放射線検出部2には、フラットパネルディテクタ、またはイメージングプレートを使用できる。フラットパネルディテクタの変換方式には、直接変換方式、間接方式等がある。直接変換方式は、照射された放射線の線量に応じて検出素子としての受光面で電荷を発生させ、この電荷を電気信号に変換するものである。間接方式は、シンチレータ等の受光面により、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じて、フォトダイオード等の光電変換素子により電荷を発生させて電気信号に変換するものである。
【0023】
上記のイメージングプレートは、輝尽性蛍光体粉末を塗布したフィルムを受光面としてカセッテとよばれる筐体に収めたものである。被検体Sの被検部位Tを透過した放射線は、イメージングプレートに照射され、輝尽性を有する蛍光体に放射線のエネルギーが蓄えられる。その後、読取装置により、イメージングプレートに特定の波長のレーザ光を照射し、イメージングプレートによる照射レーザ光の反射光量または透過光量のどちらか一方を読み取ることによって、撮影画像が得られる。
【0024】
磁気検出部3は、被検体Sの生体磁気を検出する。磁気検出部3は、検出した磁気に関する情報を処理部に出力する。本実施形態では、磁気検出部3は、放射線検出部2と照射部1との間に配置される。また、被検体Sは、照射部1と磁気検出部3との間に配置される。磁気検出部3は、頭部用架台41と胴部用架台42との間に配置され、被検体Sの被検部位Tに向き合うように配置される。
【0025】
<磁気検出部3の構成例>
図2Aは、磁気検出部3の構成の一例を模式的に示す断面図である。図2Aは、Y軸とZ軸を含む仮想平面で切断した磁気検出部3の断面を示している。
【0026】
図2Aに示すように、磁気検出部3は、生体磁気を検出する複数の磁気センサ31をアレイ状に配置した磁気センサアレイを含む。複数の磁気センサ31は、温度調節機構を有する断熱容器32内に保持される。磁気センサ31は、被検体Sから生じる生体磁気を検出する。具体的に、磁気センサ31としては、超伝導量子干渉素子(Superconducting Quantum Interference Device:SQUID)や光ポンピング原子磁気センサ(Optically Pumped Atomic Magnetometer:OPAM)、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子、フラックスゲートセンサ等が挙げられる。これらSQUIDセンサや光ポンピング原子磁気センサは、10-18T程度の極めて弱い生体磁気も検出できるほどの検出感度を有する。
【0027】
断熱容器32は、内槽321と外槽322とを有する。断熱容器32の形状は、被検体Sと対向する先端面32aが、被検体Sの被検部位Tの体表面に沿った形状であることが好ましく、平面であっても、曲面状であってもよい。例えば、図1に示すように、磁気検出部3に被検体Sの頸部を当てて生体磁気計測をする場合には、先端面32aの形状は、頸髄の円弧に合わせた曲面形状であることが好ましい。
【0028】
複数の磁気センサ31それぞれから出力される信号は、処理部5に送られて磁気情報へ変換される。磁気検出部3は、複数の磁気センサ31を有することにより、多くの磁気情報を取得できるだけでなく、磁気情報を2次元マッピングすること等により、さらに詳細な生体情報を取得できる。また、磁気センサ31が常温でも動作する場合には、温度調節機構及び断熱容器32が不要となる。磁気センサ31の個数や配列方法は、特に制限されず、被検体Sの被検領域Tに応じて適宜設定可能である。
【0029】
磁気センサ31は、コイルが巻かれているセンサボビンを含む。センサボビンは、中空構造を含む。中空構造は、筒形状や多孔質形状等の構造である。また磁気センサ31は、放射線の透過性を高めるため密度の低い材料を含んで構成されることが好ましい。磁気センサ31は、密度の低い材料を含むこと、または中空構造を有することや断熱容器32の被検体Sと対向する先端面32aにおける磁気センサの占有面積を少なくすることで、放射線の透過性を高めることができる。
【0030】
低温で動作する磁気センサ31である場合には、冷却による亀裂を防ぐため、磁気センサ31は、熱伝導率が高く、かつ冷却による熱収縮を抑えるために線膨張係数の低い材料を含んで構成されることが好ましい。この材料には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:PolyEtherEtherKetone)樹脂、紙ベークライト、布ベークライト、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Poly Phenylene Sulfide Resin)樹脂、ポリオキシメチレン(POM:Polyoxymethylene)樹脂、アクリル(PMMA:Poly Methyl Methacrylate)樹脂、繊維強化樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plastics)等が挙げられる。
【0031】
図2Bは、変形例に係る磁気検出部3の構成例を模式的に示す断面図である。図2Bのように磁気センサ31および断熱容器32は、照射部1を中心とした放射状に配置することで、放射線検出部2からの撮影画像Im1に表れるそれぞれの影の面積を低減することができる。磁気センサ31のセンサボビンを放射の照射部1を焦点とする放射状に配置し、さらに断熱容器32の側面部分も照射部1を焦点とする放射状に配置することが望ましい。断熱容器32は通常、繊維強化樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plastics)や金属ステンレス等で構成される。そのようなX線透過率の低い材料を選定しても放射線方向の部材厚みが大きく、撮影画像Im1に濃く写ってしまうことでそこに重なった被検部位Tの形態情報は失われやすい。そのため、磁気センサ31や断熱容器32の影の面積をなるべく小さくすることが望ましい。
【0032】
<処理部5の構成例>
生体計測装置100は、図1の構成の他に処理部を有してもよい。本実施形態では、放射線検出部2は、被検体Sと磁気検出部3とを含む第1画像と、磁気検出部3を含み、被検体Sを含まない第2画像と、を撮影する。処理部は、これら第1画像と第2画像とに基づき、磁気検出部3が差分処理された第3画像を生成することができる。以下、図3および図4を参照して、本実施形態に係る処理部の構成について説明する。
【0033】
(ハードウェア構成)
図3は、処理部5のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。処理部5は、CPU(Central Processing Unit)501と、ROM(Read Only Memory)502と、RAM(Random Access Memory)503と、HDD(Hard Disk Drive)/SSD(Solid State Drive)504と、I/Oポート505と、外部I/F(Interface)506と、を有する。これらは、システムバスBを介して相互に通信可能に接続されている。
【0034】
CPU501は、各種の演算処理を含む制御処理を実行するプロセッサである。ROM502は、IPL(Initial Program Loader)等のCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶する不揮発性メモリである。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される揮発性メモリである。HDD/SSD504は、プログラム等の各種情報、放射線検出部2および磁気検出部3により検出された情報等を格納する不揮発性メモリである。
【0035】
I/Oポート505は、照射部1、放射線検出部2および磁気検出部3等と、処理部5と、を接続する入出力ポートである。ここでは、I/Oポート505は、照射部1に照射制御信号C1を出力し、磁気検出部3から磁気情報mを入力し、放射線検出部2から撮影画像Im1を入力することができる。
【0036】
外部I/F506は、処理部5が生体計測装置100の外部装置と通信するためのインターフェースである。処理部5は、外部I/F506を介して外部のコンピュータ等と通信できる。また、外部I/F506は、生体計測装置100の操作者が生体計測装置100の操作部を用いて入力した生体計測装置100に対する操作入力を受け付けることもできる。
【0037】
(機能構成)
図4は、処理部5の機能構成の一例を示すブロック図である。処理部5は、入力部51と、差分部52と、格納部53と、電流分布生成部54と、画像重畳部55と、照射制御部56と、放射線検出制御部57と、磁気検出制御部58と、出力部59と、を有する。
【0038】
入力部51および出力部59の各機能は、図3に示したI/Oポート505および外部I/F506の少なくとも1つにより実現される。差分部52、電流分布生成部54、画像重畳部55、照射制御部56、放射線検出制御部57および磁気検出制御部58の各機能は、図3に示したCPU501がROM502に記憶されたプログラムに規定された処理を実行することにより実現される。
【0039】
入力部51は、放射線検出部2との通信を制御することにより、放射線検出部2から放射線検出部2により放射線撮影された画像を入力する。また入力部51は、磁気検出部3との通信を制御することにより、磁気検出部3から磁気検出部3により検出された磁気情報mを入力する。
【0040】
本実施形態では、差分部52は、被検体Sと磁気検出部3とを含む第1画像Im1と、磁気検出部3を含み、被検体Sを含まない第2画像Im2と、に基づき、磁気検出部3が差分処理された第3画像Im3を取得して出力する。第1画像Im1および第2画像Im2は、放射線検出部2により放射線撮影された画像である。
【0041】
例えば差分部52は、放射線検出部2と照射部1との間に被検体Sが配置された状態で放射線撮影された第1画像Im1を、入力部51を介して取得する。また差分部52は、放射線検出部2と照射部1との間に被検体Sが配置されていない状態で放射線撮影された第2画像Im2を、入力部51を介して取得する。差分部52は、第1画像Im1から第2画像Im2を画像差分処理することにより、第3画像Im3を生成することができる。
【0042】
本実施形態では、差分部52は、格納部53に予め格納された第2画像Im2を格納部53から読み出すことにより取得してもよい。この場合には、第2画像Im2は、放射線検出部2により予め放射線撮影され、格納部53に格納される。生体計測装置100は、放射線検出部2と照射部1との間に被検体Sが配置されていない状態での放射線撮影を再度行う必要はない。また図4において、入力部51から差分部52に送られるデータには、第2画像Im2は含まれない。本実施形態では、格納部53から読み出して第2画像Im2を取得することで、撮影の手間を省略できるとともに、生体計測装置100による計測時間を短縮することができる。
【0043】
電流分布生成部54は、磁気検出部3による磁気情報mに基づいて、電流分布に関する電流分布情報Dを生成する。電流分布情報Dは、磁気検出部3による検出結果としての磁気情報mから電流源再構成を行うことにより得られる。本実施形態では、磁気検出部3による検出結果に基づく生体磁気に関する情報は、電流分布情報Dを含む。これにより、生体磁気を可視化することができる。電流分布生成部54は、生成した電流分布情報Dを画像重畳部55に出力する。
【0044】
画像重畳部55は、電流分布生成部54からの電流分布情報Dと第3画像Im3とが重ね合わされた重畳画像に対応する第4画像Im4を生成する。第4画像Im4は、磁気検出部3による生体磁気の検出結果と被検部位Tの形態画像とが対応づけられた情報である。画像重畳部55は、出力部59を介して、生成した第4画像Im4を出力する。
【0045】
照射制御部56は、出力部59を介して第1制御信号C1を照射部1に出力することにより、照射部1の動作を制御する。
【0046】
放射線検出制御部57は、出力部59を介して第2制御信号C2を放射線検出部2に出力することにより、放射線検出部2の動作を制御する。
【0047】
磁気検出制御部58は、出力部59を介して第3制御信号C3を磁気検出部3に出力することにより、磁気検出部3の動作を制御する。
【0048】
出力部59は、外部装置との通信を制御することにより、処理部5からデータまたは信号を外部装置に出力する。例えば、出力部59は、第4画像Im4をディスプレイに出力してディスプレイに表示させる。但し、これに限らず、出力部59は、第4画像Im4をその他の出力方法(例えば、メモリ出力、外部送信等)によって出力してもよい。
【0049】
上記の処理部5の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記した生体計測装置100の各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0050】
<生体計測装置100の動作例>
図5図7を参照して、生体計測装置100の動作について説明する。なお、図4の機能構成図等も適宜参照して説明する。図5は、生体計測装置100の動作の一例を示すフローチャートである。図6は、被検体が配置されていない状態での放射線撮影の様子を示す図である。
【0051】
図5において、生体計測装置100は、例えば放射線検出部2が生体計測装置100に取り付けられたタイミングで図5の動作を開始する。
【0052】
まず、ステップS11において、生体計測装置100は、照射制御部56により照射部1の動作を制御することで、単純X線の照射を開始する。
【0053】
続いて、ステップS12において、生体計測装置100は、放射線検出制御部57により放射線検出部2の動作を制御することで、被検体Sが配置されていない状態で放射線撮影し、第2画像Im2を取得する。図6に示すように、照射部1と放射線検出部2との間には、被検体Sが配置されておらず、磁気検出部3が配置されている状態になる。
【0054】
続いて、ステップS13において、生体計測装置100は、照射制御部56により照射部1の動作を制御することで、単純X線の照射を停止する。
【0055】
続いて、ステップS14において、被検体Sが生体計測装置100の架台4上に配置される。
【0056】
続いて、ステップS15において、生体計測装置100は、照射制御部56により照射部1の動作を制御することで、単純X線の照射を開始する。
【0057】
続いて、ステップS16において、生体計測装置100は、放射線検出制御部57により放射線検出部2の動作を制御することで、被検体Sが配置された状態で放射線撮影し、第1画像Im1を取得する。
【0058】
続いて、ステップS17において、生体計測装置100は、照射制御部56により照射部1の動作を制御することで、単純X線の照射を停止する。
【0059】
続いて、ステップS18において、放射線検出部2が生体計測装置100から取り外される。
【0060】
続いて、ステップS19において、生体計測装置100は、差分部52により第1画像Im1と第2画像Im2の画像差分処理を行い、第3画像Im3を生成する。
【0061】
続いて、ステップS20において、生体計測装置100は、磁気検出制御部58により磁気検出部3の動作を制御することで、被検体Sの生体磁気を検出する。また生体計測装置100は、電流分布生成部54は、磁気検出部3による磁気情報mに基づいて、電流分布に関する電流分布情報Dを生成する。
【0062】
続いて、ステップS21において、生体計測装置100は、画像重畳部55により、差分部52からの第3画像Im1と、電流分布生成部54からの電流分布情報Dと、の重ね合わせ処理を行い、第4画像Im4を取得する。
【0063】
続いて、ステップS22において、生体計測装置100は、出力部59により第4画像Im4を外部装置に出力する。
【0064】
以上のようにして、生体計測装置100は、生体磁気の計測結果として第4画像Im4を生成して出力することができる。
【0065】
本実施形態では、放射線検出部2を生体計測装置100に取り付ける際、並びに放射線検出部2を生体計測装置100から取り外す際に、被検体Sを移動させなくてよい。従って、本実施形態では、被検体を移動させることなく放射線検出部2を着脱可能な生体計測装置、生体計測方法、および画像処理方法を提供できる。
【0066】
一方、図7は、生体計測装置100の動作の他の例を示すフローチャートである。図7に示す例では、生体計測装置100が第2画像Im2を格納部53から読み出して取得する点が、図5に示す例と異なる。
【0067】
図7において、生体計測装置100は、例えば放射線検出部2が生体計測装置100に取り付けられたタイミングで図7の動作を開始する。なお、第2画像Im2は、動作開始前に予め取得され、格納部53に格納されている。
【0068】
ステップS31において、生体計測装置100は、差分部52により、格納部53に格納された第2画像Im2を読み出して取得する。ステップS32以降の動作は、図5のステップS14以降の動作と同じであるため、ここでは重複した説明を省略する。このように、生体計測装置100は、格納部53から取得した第2画像Im2を用いて第4画像Im4を生成して出力することもできる。この場合にも、図5に動作における効果とほぼ同じ効果を得ることができる。
【0069】
<第1~4画像の取得結果例>
図8~11を参照して、第1画像Im1、第2画像Im2、第3画像Im3および第4画像Im4それぞれの取得結果について説明する。図8は、第2画像Im2の一例を示す図である。図9は、第1画像Im1の一例を示す図である。図10は、第3画像Im3の一例を示す図である。図11は、第4画像Im4の一例を示す図である。
【0070】
図8は、図5のステップS12、または図7のステップS21において取得される第2画像Im2を示している。図8に示すように、第2画像Im2は、磁気検出部3を含み、被検体Sを含んでいない。第2画像Im2は、磁気検出部3の単純X線画像である。磁気検出部3は、上面視において略円形の外形形状を有する複数の磁気センサ31を含んでいる。なお、本特許請求の範囲および本明細書では、画像が磁気検出部3等の対象の像を含むことを、画像が磁気検出部3等の対象を含むと表現する場合がある。
【0071】
図9は、図5のステップS16、または図7のステップS24において取得される第1画像Im1を示している。図9に示すように、第1画像Im1は、磁気検出部3と被検体Sとを含んでいる。第1画像Im1は、磁気検出部3および被検体Sの単純X線画像である。
【0072】
図10は、図5のステップS19、または図7のステップS27において生成される第3画像Im3を示している。図9に示すように、第3画像Im3は、被検体Sを含み、磁気検出部3を含んでいない。第3画像Im3は、差分部52による第1画像Im1から第2画像Im2が画像差分処理され、第1画像Im1から磁気検出部3が取り除かれたものである。なお、図10における被検部位Tは、生体磁気計測を行う対象部位を示している。
【0073】
図11は、図5のステップS21、または図7のステップS29において生成される第4画像Im4を示している。第4画像Im4は、図10における被検部位Tの領域が拡大されたものである。図11に示すように、第4画像Im4は、電流分布情報Dと被検体Sとを含んでいる。医師等の診断者は、第4画像Im4を観察することで、電流分布情報Dが被検体Sの身体におけるどの部分のものであるかを容易に認識し、診断を行うことができる。
本実施形態では、
【0074】
本明細書で示す例では、第3画像Im3は、被検体Sの形態画像に対応する。第3画像Im3を形態画像として第4画像Im4を生成することで、診断者は、磁気検出部3が含まれない第4画像Im4を用いて診断できるため、診断が行いやすくなる。但し、本実施形態では、第1画像Im1を形態画像とし、第1画像Im1と電流分布情報Dとを重ね合わせて第4画像Im4を生成してもよい。この場合にも、被検体Sを移動させることなく放射線検出部2を着脱可能であるという効果を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、被検体Sが架台4上に横たわった状態で計測することができる。このため、被検体Sが起立または着座した状態で計測を行う場合と比較して、被検体Sが動きにくい状態で計測できる。これにより、被検体Sが動くことに伴う計測精度の低下を低減し、計測精度を高くすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、生体計測装置100は、照射部1と放射線検出部2との間に配置され、放射線により撮影されることが可能な標識部材を有してもよい。この標識部材には、例えば磁気マーカーを使用できる。生体計測装置100は、第1画像Im1と第2画像Im2の画像差分処理を行う際に、第1画像Im1と第2画像Im2に含まれる標識部材を目印にすることで、第1画像Im1と第2画像Im2の間の位置、倍率等を合わせる調整を容易に行うことができる。また、第1画像Im1と第2画像Im2の間の位置、倍率等の調整の結果、磁気検出部3が適切に取り除かれた第3画像Im3を生成することができる。
【0077】
<模擬被検体の放射線撮影実験結果例>
図12~13を参照して、模擬被検体の放射線撮影実験結果について説明する。図12は、模擬被検体の一例を示す図である。図13は、模擬被検体を放射線撮影した第1画像Im1の一例を示す図である。
【0078】
図12に示す模擬被検体S1として、人間の頸椎周辺を模したX線ファントムを用いた。また磁気検出部3を模して、断熱容器内に磁気センサを模した紙ベークライト製のパイプを44個設置し、図1に示した配置で単純X線を用いた放射線撮影を行った。パイプには、外径20mm、内径15mm、長さ120mmのものを用いた。単純X線の照射条件は管電圧値80kV、mAs値24.6mAsとした。
【0079】
図13-1に示すように、模擬被検体S1と磁気検出部3が重ね合わせられた放射線撮影画像(第1画像Im1)が得られた。また、磁気検出部3を含み、模擬被検体S1を含まない図13-2に示す第2画像Im2を図13-1に示す第1画像Im1から画像差分処理することにより、模擬被検体S1を含み、磁気検出部3が差分処理された図13-3に示す第3画像Im3を生成できた。
【0080】
<変形例>
実施形態に係る生体計測装置における照射部1、放射線検出部2、磁気検出部3および被検体Sの配置は、様々な変形が可能である。以下、変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同じ構成部には同じ符号を付し、重複する説明を適宜省略する。この点は、以降に示す他の変形例および実施形態においても同様である。
【0081】
(第1変形例)
図14は、第1変形例に係る生体計測装置100aの構成の一例を示す側面図である。本変形例では、被検体Sは、磁気検出部3と放射線検出部2との間に配置される点が、第1実施形態と主に異なる。また、架台4上に配置された被検体Sの上方に放射線検出部2が配置され、下方に照射部1が配置される点が、第1実施形態と主に異なる。
【0082】
本変形例においても、第1実施形態とほぼ同じ効果が得られる。また、本変形例では、照射部1と被検体Sとの間に磁気検出部3が配置されるため、照射部1からの単純X線が磁気検出部3で減衰されることで、単純X線による被検体Sの被爆量を低減することができる。
【0083】
(第2変形例)
図15は、第2変形例に係る生体計測装置100bの構成の一例を示す側面図である。本変形例では、被検体Sは、磁気検出部3と放射線検出部2との間に配置され、かつ架台4上に配置された被検体Sの下方に放射線検出部2が配置され、上方に照射部1が配置される点が、第1実施形態および第1変形例と主に異なる。
【0084】
本変形例においても、第1実施形態とほぼ同じ効果が得られる。また、本変形例では、照射部1と被検体Sとの間に磁気検出部3が配置されるため、照射部1からの単純X線が磁気検出部3で減衰されることで、単純X線による被検体Sの被爆量を低減することができる。
【0085】
また、例えば照射部1を下方に配置すると、照射部1と被検体Sとの間に照射距離を確保する場合に架台4を高くなるため、被検体Sに架台4へ上り下りする負担がかかる場合がある。本変形例では、照射部1を上方に配置することで、照射部1と被検体Sとの間に照射距離を確保する場合に架台4を高くしなくてもよいため、被検体Sに対する架台4への上り下り等の負担を低減することができる。
【0086】
(第3変形例)
図16は、第3変形例に係る生体計測装置100cの構成の一例を示す側面図である。本変形例では、被検体Sは、磁気検出部3と照射部1との間に配置され、かつ架台4上に配置された被検体Sの下方に照射部1が配置され、上方に放射線検出部2が配置される点が、第1実施形態および第1~2変形例と主に異なる。
【0087】
本変形例においても、第1実施形態とほぼ同じ効果が得られる。
【0088】
(第4変形例)
図17は、第4変形例に係る生体計測装置100dの構成の一例を示す側面図である。本変形例では、被検体Sは、磁気検出部3と照射部1との間に配置され、かつ被検体Sが起立または着座した状態で計測を行う点が、第1実施形態および第1~3変形例と主に異なる。
【0089】
本変形例においても、被検体Sが横たわった状態で計測する場合に得られる効果を除き、第1実施形態とほぼ同じ効果が得られる。また、本変形例では、照射部1と被検体Sとの間に照射距離を確保する場合に架台4を高くしなくてもよいため、被検体Sに対する架台4への上り下り等の負担を低減することができる。
【0090】
(第5変形例)
図18は、第5変形例に係る生体計測装置100eの構成の一例を示す側面図である。本変形例では、被検体Sは、磁気検出部3と放射線検出部2との間に配置され、かつ被検体Sが起立または着座した状態で計測を行う点が、第1実施形態および第1~4変形例と主に異なる。
【0091】
本変形例においても、被検体Sが横たわった状態で計測する場合に得られる効果を除き、第1実施形態とほぼ同じ効果が得られる。また、本変形例では、照射部1と被検体Sとの間に磁気検出部3が配置されるため、照射部1からの単純X線が磁気検出部3で減衰されることで、単純X線による被検体Sの被爆量を低減することができる。また、本変形例では、照射部1と被検体Sとの間に照射距離を確保する場合に架台4を高くしなくてもよいため、被検体Sに対する架台4への上り下り等の負担を低減することができる。
【0092】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る生体計測装置について説明する。本実施形態では、処理部が、第2画像の輝度を調整する調整部を有する点が、第1実施形態および第1~5変形例と主に異なる。また、本実施形態では、処理部が、補完部を有する点が、第1実施形態および第1~5変形例と主に異なる。補完部は、第3画像において、被検体の形態情報が欠落した画像領域を補完する。
【0093】
図19は、本実施形態に係る生体計測装置100fが有する処理部5fの機能構成の一例を示すブロック図である。図19に示すように、処理部5fは、調整部60と補完部61とを有する。
【0094】
調整部60および補完部61の各機能は、図3に示したCPU501がROM502に記憶されたプログラムに規定された処理を実行することにより実現される。
【0095】
調整部60は、第1画像Im1および第2画像Im2の少なくとも一方の輝度を調整する。図19に示す例では、第1画像Im1の輝度を調整する。但し、調整部60は、第2画像Im2の輝度を調整してもよいし、第1画像Im1および第2画像Im2のそれぞれの輝度を調整してもよい。調整部60は、輝度調整後の第2画像Im2-1を差分部52に出力する。
【0096】
例えば、第1画像Im1を取得するときと第2画像Im2を取得するときとで照射部1からの放射線強度が異なり、第1画像Im1と第2画像Im2との間で画像の平均輝度に差が生じる場合がある。このような平均輝度の差があると、第1画像Im1と第2画像Im2との画像差分処理を行った際に、磁気検出部3の画像を適切に取り除けず、第3画像Im3の磁気検出部3の画像が残る。診断者が第4画像Im4を観察して診断を行いやすくする観点では、第3画像Im3に残る磁気検出部3の画像は、適切に取り除かれることが好ましい。本実施形態では、調整部60により第2画像Im2の輝度を調整することにより、第3画像Im3に残る磁気検出部3の画像を低減し、磁気検出部3の画像を適切に取り除くことができる。
【0097】
補完部61は、第3画像Im3において、第1画像Im1と第2画像Im2との画像差分処理により磁気検出部3が取り除かれることで欠落した画像領域を補完する。例えば、補完部61は、欠落した画像領域を、その周辺の画素を用いて線形補間、スプライン補間等により補間処理することによって補完できる。補完部61は、補完後の第3画像Im3-1を画像重畳部55に出力する。本実施形態では、欠落した画像領域を補完部61で補完することにより、診断者が第4画像Im4を観察して診断を行いやすくすることができる。
【0098】
本実施形態では、調整部60は、第2画像Im2を領域分割した複数の画像領域ごとで輝度を調整してもよい。例えば、第1画像Im1と第2画像Im2の画像の輝度差は、画像全体にわたって一様ではなく、領域ごとで輝度差が異なる場合がある。本実施形態では、第2画像Im2を領域分割した複数の画像領域ごとで輝度を調整することで、第3画像Im3に残る磁気検出部3の画像を適切に取り除くことができる。
【0099】
ここで、図20は、調整部60により領域分割した複数の領域ごとでの輝度調整処理を説明する図である。図20において、領域10は、第1画像Im1を領域分割した複数の領域のうちの1つの領域を示している。例えば領域分割は、第1画像Im1に含まれる複数の磁気センサ31を個別に分割するように行われる。
【0100】
調整部60は、1つの磁気センサ31を含む領域10内における複数の画素の平均輝度に対して係数αを乗じてα倍する。調整部60は、複数の領域10を合成することにより輝度調整後の第2画像Im2-1を生成する。係数αの算出方法には、例えば以下の2つが挙げられる。
(1)複数の領域10を切り出し、各領域10それぞれにて差分画像を生成する。その後、生成したそれぞれの差分画像をフーリエ変換し、複数の領域10に対して、高周波領域のパワーの総和を求める。係数αを変更しながら前述処理を複数回実行し、高周波領域のパワーの総和が最小となる係数αを求めることによって決定する。
(2)複数の領域10を切り出し、各領域10それぞれにて差分画像を生成する。その後、生成したそれぞれの差分画像に対して放射線状に輝度分布を取得しそれぞれの輝度分布を微分して平均する。係数αを変更しながら前述処理を実行し、輝度分布の変化量が最大となる位置を注目位置とする。最後に注目位置における輝度分布の微分が最小となる係数αを求めることによって決定する。
【0101】
領域10を複数切り出す場合には、放射線検出部2と照射部1の光軸が交わる位置を原点とし、原点から近い位置の磁気センサ31が位置する領域10を複数切り出すことが好ましい。また、輝度が飽和値である部分等の一部の領域10を除外して、上記処理を行うこともできる。
【0102】
複数の磁気センサ31のそれぞれに対応する画像領域ごとに領域分割することで、磁気センサ31を取り除くための輝度調整を磁気センサ31ごとに適正化できるため、複数の磁気センサ31のそれぞれを適切に取り除くことができる。但し、領域分割は、必ずしも複数の磁気センサ31を個別に分割するように行われなくてもよい。
【0103】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0104】
実施形態は、上述した生体計測装置100を有する生体計測システムも含む。生体計測システムは、生体計測装置100のいずれか1つの他、PC(Personal Computer)等の情報処理装置や、表示装置、記憶装置等を有してもよい。
【0105】
本開示の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 被検体に放射線を照射する照射部と、前記被検体の被検部位を放射線撮影可能な放射線検出部と、前記放射線検出部と前記照射部との間に配置され、前記被検体の生体磁気を検出する磁気検出部と、を有する、生体計測装置である。
<2> 前記照射部は、前記磁気検出部との間に前記被検体を配置可能に前記磁気検出部から離隔して配置されている、前記<1>に記載の生体計測装置である。
<3> 前記放射線検出部は、前記磁気検出部との間に前記被検体を配置可能に前記磁気検出部から離隔して配置されている、前記<1>に記載の生体計測装置。
<4> 前記放射線検出部によって、前記被検体と前記磁気検出部が重畳している放射線画像データを取得する、前記<1>から前記<3>のいずれか1つに記載の生体計測装置である。
<5> 前記照射部と前記放射線検出部との間に配置され、放射線により撮影されることが可能な標識部材をさらに有する、前記<1>から前記<4>のいずれか1つに記載の生体計測装置である。
<6> 前記磁気検出部は、複数の磁気センサを含み、前記<1>から前記<5>のいずれか1つに記載の生体計測装置である。
<7> 前記磁気センサは、コイルが巻かれているセンサボビンを含み、前記センサボビンは、中空構造を含む、前記<1>から前記<6>のいずれか1つに記載の生体計測装置である。
<8> 前記磁気検出部の少なくとも一部が、前記照射部を中心とした放射形状となっている、前記<1>から前記<7>のいずれか1つに記載の生体計測装置である。
<9> 処理部をさらに有し、前記放射線検出部は、前記被検体と前記磁気検出部とを含む第1画像と、前記磁気検出部を含み、前記被検体を含まない第2画像と、を撮影し、前記処理部は、前記第1画像と前記第2画像とに基づき、前記磁気検出部が差分処理された第3画像を生成する、前記<1>から前記<8>のいずれか1つに記載の生体計測装置である。
<10> 前記処理部は、前記磁気検出部による検出結果に基づく生体磁気に関する情報と前記第3画像とを重ね合わせた第4画像を生成して出力する、前記<9>に記載の生体計測装置である。
<11> 前記磁気検出部による検出結果に基づく生体磁気に関する情報は、磁場情報から電流源再構成を行うことにより得られた電流分布情報を含む、前記<10>に記載の生体計測装置である。
<12> 前記処理部は、前記第1画像および前記第2画像の少なくとも一方の輝度を調整する調整部を含む、前記<9>から前記<11>のいずれか1つに記載の生体計測装置である。
<13> 前記調整部は、前記第2画像を領域分割した複数の画像領域ごとで前記輝度を調整する、前記<12>に記載の生体計測装置である。
<14> 前記処理部は、前記第3画像において、前記被検体の形態情報が欠落した画像領域を補完する補完部を有する、前記<9>から前記<13>のいずれか1つに記載の生体計測装置である。
<15> 生体計測装置による生体計測方法であって、前記生体計測装置が、照射部により、被検体に放射線を照射し、放射線検出部により、前記放射線検出部と前記照射部との間に被検体が配置されていない状態で撮影された第2画像を出力し、前記放射線検出部により、前記放射線検出部と前記照射部との間に被検体が配置された状態で撮影された第1画像を出力し、前記放射線検出部と前記照射部との間に配置された磁気検出部により、前記被検体の生体磁気を検出し、処理部により、前記放射線検出部により得られた、前記被検体と前記磁気検出部とを含む前記第1画像と、前記放射線検出部により得られた、前記磁気検出部を含み、前記被検体を含まない前記第2画像と、に基づき、前記磁気検出部が差分処理された第3画像を生成し、前記処理部により、前記磁気検出部による検出結果に基づく生体磁気に関する情報と前記第3画像とを重ね合わせた第4画像を生成して出力する、生体計測方法である。
<16> 被検体に放射線を照射する照射部と、前記被検体の被検部位を放射線撮影可能な放射線検出部と、前記放射線検出部と前記照射部との間に配置され、前記被検体の生体磁気を検出する磁気検出部と、を有する生体計測装置により得られる画像の画像処理方法であって、処理部により、前記放射線検出部により得られた、前記被検体と前記磁気検出部とを含む第1画像と、前記放射線検出部により得られた、前記磁気検出部を含み、前記被検体を含まない第2画像と、に基づき、前記磁気検出部が差分処理された第3画像を生成し、前記処理部により、前記磁気検出部による検出結果に基づく生体磁気に関する情報と前記第3画像とを重ね合わせた第4画像を生成して出力する、画像処理方法である。
<17> 被検体と磁気検出部とを含むようにして撮影された第1画像と、磁気検出部を含み、前記被検体を含まない第2画像と、に基づき、前記磁気検出部が差分処理された第3画像を生成する処理を情報処理装置に実行させるプログラムである。
【符号の説明】
【0106】
1 照射部
2 放射線検出部
21 支持部
3 磁気検出部
31 磁気センサ
31a パイプ
32 断熱容器
32a 先端面
321 内槽
322 外槽
4 架台
41 頭部用架台
42 胴部用架台
5、5a、5f 処理部
51 入力部
52 差分部
53 格納部
54 電流分布生成部
55 画像重畳部
56 照射制御部
57 放射線検出制御部
58 磁気検出制御部
59 出力部
60 調整部
61 補完部
501 CPU
502 ROM
503 RAM
504 HDD/SSD
505 I/Oポ-ト
506 外部I/F
10 領域
100、100a、100b、100c、100d、100e、100f 生体計測装置
B システムバス
C1 第1制御信号
C2 第2制御信号
C3 第3制御信号
D 電流分布情報
Im1 第1画像
Im2、Im2-1 第2画像
Im3 Im3-1 第3画像
Im4 第4画像
m 磁気情報
S 被検体
S1 模擬被検体
T 被検部位
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特許第6513798号公報
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図13-3】
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図15
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図20